(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法、プログラム、基板処理装置および基板処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/285 20060101AFI20230704BHJP
C23C 16/455 20060101ALI20230704BHJP
【FI】
H01L21/285 C
C23C16/455
(21)【出願番号】P 2020158209
(22)【出願日】2020-09-23
【審査請求日】2021-09-24
(73)【特許権者】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110000039
【氏名又は名称】特許業務法人アイ・ピー・ウィン
(72)【発明者】
【氏名】定田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】小川 有人
(72)【発明者】
【氏名】水野 謙和
(72)【発明者】
【氏名】早坂 省吾
(72)【発明者】
【氏名】栗林 幸永
【審査官】早川 朋一
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-332426(JP,A)
【文献】特開2014-208883(JP,A)
【文献】特開2013-133521(JP,A)
【文献】国際公開第2019/058608(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/168600(WO,A1)
【文献】特開2015-138913(JP,A)
【文献】特開2012-104720(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3205-21/3215
H01L 21/768
H01L 23/52
H01L 23/522-23/532
H01L 21/28-21/288
H01L 21/44-21/445
H01L 29/40-29/51
C23C 16/00-16/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)基板に対して第1元素含有ガス
の供給
中にシリコン含有ガスを供給する工程と、
(b)前記基板に対して第1の還元ガスを複数回供給する工程と、
(c)(a)
、(b)
及び前記基板に対して前記シリコン含有ガスを供給する工程を順に1回以上実行し、前記基板に対して第1の層を形成する工程と、
(d)(c)の後であって、
(e)前記基板に対して第2元素含有ガスを供給する工程と、
(f)前記基板に対して第2の還元ガスを供給する工程と、
(g)(e)及び(f)を順に1回以上実行し、前記第1の層の上に第2の層を形成する工程と、を行う工程と、
を有
し、前記第1元素含有ガスの第1元素と前記第2元素含有ガスの第2元素は同じ元素である基板処理方法。
【請求項2】
(c)は、(a)の後に、前記基板に対して
前記シリコン含有ガスを供給する工程を有する
請求項
1に記載の
基板処理方法。
【請求項3】
(b)は、前記第1の還元ガスを複数回供給する間で、パージ工程を行う
請求項1
又は2に記載の
基板処理方法。
【請求項4】
前記パージ工程は、不活性ガスの供給と排気とを順に行わせる
請求項
3に記載の
基板処理方法。
【請求項5】
(c)は、(b)の後に、不活性ガスの供給と排気とを複数回行う工程を有する
請求項1乃至
4のいずれか一項に記載の
基板処理方法。
【請求項6】
(d)は、(e)において、前記基板に対してシリコン含有ガスを供給する工程を有する
請求項1乃至
5のいずれか一項に記載の
基板処理方法。
【請求項7】
(d)は、(e)の後に、前記基板に対してシリコン含有ガスを供給する工程を有する
請求項1乃至
6のいずれか一項に記載の
基板処理方法。
【請求項8】
(c)は、前記第1の層の厚さが5Å以上となるまで繰り返し行う
請求項1乃至
7のいずれか一
項に記載の
基板処理方法。
【請求項9】
(c)の(a)
、(b)
及び前記基板に対して前記シリコン含有ガスを供給する工程の繰り返し回数は、(g)の(e)及び(f)の繰り返し回数よりも少ない
請求項1乃至
8のいずれか一項に記載の
基板処理方法。
【請求項10】
(a)基板に対して第1元素含有ガス
の供給
中にシリコン含有ガスを供給させる手順と、
(b)前記基板に対して第1の還元ガスを複数回供給させる手順と、
(c)(a)
、(b)
及び前記基板に対して前記シリコン含有ガスを供給させる手順を順に1回以上実行し、前記基板に対して第1の層を形成させる手順と、
(d)(c)の後であって、
(e)前記基板に対して第2元素含有ガスを供給させる手順と、
(f)前記基板に対して第2の還元ガスを供給させる手順と、
(g)(e)及び(f)を順に1回以上実行し、前記第1の層の上に第2の層を形成させる手順と、を行わせる手順と、をコンピュータによって基板処理装置に実行させるプログラムであって、
前記第1元素含有ガスの第1元素と前記第2元素含有ガスの第2元素は同じ元素であるプログラム。
【請求項11】
基板を収容する処理室と、
前記処理室内に第1元素含有ガス、第1の還元ガス、
シリコン含有ガス、第2元素含有ガス及び第2の還元ガスを供給するガス供給系と、
前記処理室内を排気する排気系と、
前記ガス供給系及び前記排気系を制御して、
前記処理室内において、
(a)前記基板に対して第1元素含有ガス
の供給
中に前記シリコン含有ガスを供給する処理と、
(b)前記基板に対して第1の還元ガスを複数回供給する処理と、
(c)(a)
、(b)
及び前記基板に対して前記シリコン含有ガスを供給する処理を順に1回以上実行し、前記基板に対して第1の層を形成する処理と、
(d)(c)の後であって、
(e)前記基板に対して第2元素含有ガスを供給する処理と、
(f)前記基板に対して第2の還元ガスを供給する処理と、
(g)(e)及び(f)を順に1回以上実行し、前記第1の層の上に第2の層を形成する処理と、を行う処理と、
を有し、前記第1元素含有ガスの第1元素と前記第2元素含有ガスの第2元素は同じ元素である処理を行うよう制御することが可能なように構成される制御部と、
を有する基板処理装置。
【請求項12】
(a)基板に対して第1元素含有ガス
の供給
中にシリコン含有ガスを供給する工程と、
(b)前記基板に対して第1の還元ガスを複数回供給する工程と、
(c)(a)
、(b)
及び前記基板に対して前記シリコン含有ガスを供給する工程を順に1回以上実行し、前記基板に対して第1の層を形成する工程と、
(d)(c)の後であって、
(e)前記基板に対して第2元素含有ガスを供給する工程と、
(f)前記基板に対して第2の還元ガスを供給する工程と、
(g)(e)及び(f)を順に1回以上実行し、前記第1の層の上に第2の層を形成する工程と、を行う工程と、
を有
し、前記第1元素含有ガスの第1元素と前記第2元素含有ガスの第2元素は同じ元素である半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置の製造方法、プログラム及び基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
3次元構造を持つNAND型フラッシュメモリやDRAMのワードラインとして例えば低抵抗なタングステン(W)膜が用いられている。また、このW膜と絶縁膜との間にバリア膜として例えば、窒化チタン(TiN)膜が用いられることがある(例えば特許文献1及び特許文献2参照)。TiN膜は、W膜と絶縁膜の密着性を高める役割を有し、このTiN膜上にW膜を成長させる核形成膜が形成されることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-66263号公報
【文献】国際公開第2019/058608号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、W膜を形成する溝の埋め込み幅が微細となっており、バリア膜が平坦でないとW膜の体積が減少し、W膜の低抵抗化が難しくなる。
【0005】
本開示は、平坦性を有する膜を形成することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によれば、
(a)基板を処理室に搬入する工程と、
(b)前記基板に対して第1元素含有ガスを供給する工程と、
(c)前記基板に対して第1の還元ガスを複数回供給する工程と、
(d)(b)及び(c)を順に1回以上実行し、前記基板に対して第1の層を形成する工程と、
(e)(d)の後であって、
(f)前記基板に対して第2元素含有ガスを供給する工程と、
(g)前記基板に対して第2の還元ガスを供給する工程と、
(h)(f)及び(g)を順に1回以上実行し、前記第1の層の上に第2の層を形成する工程と、
を行う工程と、
を有する技術が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、平坦性を有する膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の一実施形態における基板処理装置の縦型処理炉の概略を示す縦断面図である。
【
図3】本開示の一実施形態における基板処理装置のコントローラの概略構成図であり、コントローラの制御系をブロック図で示す図である。
【
図4】本開示の一実施形態における基板処理工程のシード層形成工程を示す図である。
【
図5】本開示の一実施形態における基板処理工程のTiN層形成工程を示す図である。
【
図6】
図6(A)は、本開示の一実施形態における基板処理工程を用いて基板上に形成されたTiN膜表面のTEM画像を示す図である。
図6(B)は、比較例における基板上に形成されたTiN膜表面のTEM画像を示す図である。
【
図7】
図7(A)及び
図7(B)は、本開示の他の実施形態における基板処理装置の処理炉の概略を示す縦断面図である。
【
図8】
図8(A)~
図8(D)は、それぞれTiN膜中のTiN層の割合が100%、75%、50%、25%の場合のSi基板の断面を示す図であり、
図8(E)~
図8(H)は、それぞれ
図8(A)~
図8(D)におけるSi基板上に形成されたTiN膜のTEM画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、
図1~5を参照しながら説明する。なお、以下の説明において用いられる図面は、いずれも模式的なものであり、図面に示される、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。また、複数の図面の相互間においても、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は必ずしも一致していない。
【0010】
(1)基板処理装置の構成
基板処理装置10は、加熱手段(加熱機構、加熱系)としてのヒータ207が設けられた処理炉202を備える。ヒータ207は円筒形状であり、保持板としてのヒータベース(図示せず)に支持されることにより垂直に据え付けられている。
【0011】
ヒータ207の内側には、ヒータ207と同心円状に反応容器(処理容器)を構成するアウタチューブ203が配設されている。アウタチューブ203は、例えば石英(SiO2)、炭化シリコン(SiC)などの耐熱性材料で構成され、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。アウタチューブ203の下方には、アウタチューブ203と同心円状に、マニホールド(インレットフランジ)209が配設されている。マニホールド209は、例えばステンレス(SUS)などの金属で構成され、上端及び下端が開口した円筒形状に形成されている。マニホールド209の上端部と、アウタチューブ203との間には、シール部材としてのOリング220aが設けられている。マニホールド209がヒータベースに支持されることにより、アウタチューブ203は垂直に据え付けられた状態となる。
【0012】
アウタチューブ203の内側には、反応容器を構成するインナチューブ204が配設されている。インナチューブ204は、例えば石英(SiO2)、炭化シリコン(SiC)などの耐熱性材料で構成され、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。主に、アウタチューブ203と、インナチューブ204と、マニホールド209とにより処理容器(反応容器)が構成されている。処理容器の筒中空部(インナチューブ204の内側)には処理室201が形成されている。
【0013】
処理室201は、基板としてのウエハ200を後述するボート217によって水平姿勢で鉛直方向に多段に配列した状態で収容可能に構成されている。
【0014】
処理室201内には、ノズル410,420,430がマニホールド209の側壁及びインナチューブ204を貫通するように設けられている。ノズル410,420,430には、ガス供給管310,320,330が、それぞれ接続されている。ただし、本実施形態の処理炉202は上述の形態に限定されない。
【0015】
ガス供給管310,320,330には上流側から順に流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)312,322,332がそれぞれ設けられている。また、ガス供給管310,320,330には、開閉弁であるバルブ314,324,334がそれぞれ設けられている。ガス供給管310,320,330のバルブ314,324,334の下流側には、不活性ガスを供給するガス供給管510,520,530がそれぞれ接続されている。ガス供給管510,520,530には、上流側から順に、流量制御器(流量制御部)であるMFC512,522,532及び開閉弁であるバルブ514,524,534がそれぞれ設けられている。
【0016】
ガス供給管310,320,330の先端部にはノズル410,420,430がそれぞれ連結接続されている。ノズル410,420,430は、L字型のノズルとして構成されており、その水平部はマニホールド209の側壁及びインナチューブ204を貫通するように設けられている。ノズル410,420,430の垂直部は、インナチューブ204の径方向外向きに突出し、かつ鉛直方向に延在するように形成されているチャンネル形状(溝形状)の予備室201aの内部に設けられており、予備室201a内にてインナチューブ204の内壁に沿って上方(ウエハ200の配列方向上方)に向かって設けられている。
【0017】
ノズル410,420,430は、処理室201の下部領域から処理室201の上部領域まで延在するように設けられており、ウエハ200と対向する位置にそれぞれ複数のガス供給孔410a,420a,430aが設けられている。これにより、ノズル410,420,430のガス供給孔410a,420a,430aからそれぞれウエハ200に処理ガスを供給する。このガス供給孔410a,420a,430aは、インナチューブ204の下部から上部にわたって複数設けられ、それぞれ同一の開口面積を有し、さらに同一の開口ピッチで設けられている。ただし、ガス供給孔410a,420a,430aは上述の形態に限定されない。例えば、インナチューブ204の下部から上部に向かって開口面積を徐々に大きくしてもよい。これにより、ガス供給孔410a,420a,430aから供給されるガスの流量をより均一化することが可能となる。
【0018】
ノズル410,420,430のガス供給孔410a,420a,430aは、後述するボート217の下部から上部までの高さの位置に複数設けられている。そのため、ノズル410,420,430のガス供給孔410a,420a,430aから処理室201内に供給された処理ガスは、ボート217の下部から上部までに収容されたウエハ200の全域に供給される。ノズル410,420,430は、処理室201の下部領域から上部領域まで延在するように設けられていればよいが、ボート217の天井付近まで延在するように設けられていることが好ましい。
【0019】
ガス供給管310からは、処理ガスとして、第1元素を含む原料ガス(第1元素含有ガスとも呼ぶ)が、MFC312、バルブ314、ノズル410を介して処理室201内に供給される。
【0020】
ガス供給管320からは、処理ガス(第3の還元ガスとも呼ぶ)が、MFC322、バルブ324、ノズル420を介して処理室201内に供給される。
【0021】
ガス供給管330からは、処理ガスとして、還元ガス(第1の還元ガス、第2の還元ガス)が、MFC332、バルブ334、ノズル430を介して処理室201内に供給される。
【0022】
ガス供給管510,520,530からは、不活性ガスとして、例えば窒素(N2)ガスが、それぞれMFC512,522,532、バルブ514,524,534、ノズル410,420,430を介して処理室201内に供給される。以下、不活性ガスとしてN2ガスを用いる例について説明するが、不活性ガスとしては、N2ガス以外に、例えば、アルゴン(Ar)ガス、ヘリウム(He)ガス、ネオン(Ne)ガス、キセノン(Xe)ガス等の希ガスを用いてもよい。
【0023】
主に、ガス供給管310,320,330、MFC312,322,332、バルブ314,324,334、ノズル410,420,430により処理ガス供給系が構成されるが、ノズル410,420,430のみを処理ガス供給系と考えてもよい。処理ガス供給系は単にガス供給系と称してもよい。ガス供給管310から原料ガスを流す場合、主に、ガス供給管310、MFC312、バルブ314により原料ガス供給系が構成されるが、ノズル410を原料ガス供給系に含めて考えてもよい。また、ガス供給管320からSi含有ガスを流す場合、主に、ガス供給管320、MFC322、バルブ324によりSi含有ガス供給系が構成されるが、ノズル420をSi含有ガス供給系に含めて考えてもよい。また、ガス供給管330から還元ガスを流す場合、主に、ガス供給管330、MFC332、バルブ334により還元ガス供給系が構成されるが、ノズル430を還元ガス供給系に含めて考えてもよい。ガス供給管330から還元ガスとしてN含有ガスを供給する場合、還元ガス供給系をN含有ガス供給系と称することもできる。また、主に、ガス供給管510,520,530、MFC512,522,532、バルブ514,524,534により不活性ガス供給系が構成される。
【0024】
本実施形態におけるガス供給の方法は、インナチューブ204の内壁と、複数枚のウエハ200の端部とで定義される円環状の縦長の空間内の予備室201a内に配置したノズル410,420,430を経由してガスを搬送している。そして、ノズル410,420,430のウエハと対向する位置に設けられた複数のガス供給孔410a,420a,430aからインナチューブ204内にガスを噴出させている。より詳細には、ノズル410のガス供給孔410a、ノズル420のガス供給孔420a、ノズル430のガス供給孔430aにより、ウエハ200の表面と平行方向に向かって処理ガス等を噴出させている。
【0025】
排気孔(排気口)204aは、インナチューブ204の側壁であってノズル410,420,430に対向した位置に形成された貫通孔であり、例えば、鉛直方向に細長く開設されたスリット状の貫通孔である。ノズル410,420,430のガス供給孔410a,420a,430aから処理室201内に供給され、ウエハ200の表面上を流れたガスは、排気孔204aを介してインナチューブ204とアウタチューブ203との間に形成された隙間からなる排気路206内に流れる。そして、排気路206内へと流れたガスは、排気管231内に流れ、処理炉202外へと排出される。
【0026】
排気孔204aは、複数のウエハ200と対向する位置に設けられており、ガス供給孔410a,420a,430aから処理室201内のウエハ200の近傍に供給されたガスは、水平方向に向かって流れた後、排気孔204aを介して排気路206内へと流れる。排気孔204aはスリット状の貫通孔として構成される場合に限らず、複数個の孔により構成されていてもよい。
【0027】
マニホールド209には、処理室201内の雰囲気を排気する排気管231が設けられている。排気管231には、上流側から順に、処理室201内の圧力を検出する圧力検出器(圧力検出部)としての圧力センサ245,APC(Auto Pressure Controller)バルブ243,真空排気装置としての真空ポンプ246が接続されている。APCバルブ243は、真空ポンプ246を作動させた状態で弁を開閉することで、処理室201内の真空排気及び真空排気停止を行うことができ、更に、真空ポンプ246を作動させた状態で弁開度を調節することで、処理室201内の圧力を調整することができる。主に、排気孔204a,排気路206,排気管231,APCバルブ243及び圧力センサ245により、排気系が構成される。真空ポンプ246を排気系に含めて考えてもよい。
【0028】
マニホールド209の下方には、マニホールド209の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ219が設けられている。シールキャップ219は、マニホールド209の下端に鉛直方向下側から当接されるように構成されている。シールキャップ219は、例えばSUS等の金属で構成され、円盤状に形成されている。シールキャップ219の上面には、マニホールド209の下端と当接するシール部材としてのOリング220bが設けられている。シールキャップ219における処理室201の反対側には、ウエハ200を収容するボート217を回転させる回転機構267が設置されている。回転機構267の回転軸255は、シールキャップ219を貫通してボート217に接続されている。回転機構267は、ボート217を回転させることでウエハ200を回転させるように構成されている。シールキャップ219は、アウタチューブ203の外部に垂直に設置された昇降機構としてのボートエレベータ115によって鉛直方向に昇降されるように構成されている。ボートエレベータ115は、シールキャップ219を昇降させることで、ボート217を処理室201内外に搬入及び搬出することが可能なように構成されている。ボートエレベータ115は、ボート217及びボート217に収容されたウエハ200を、処理室201内外に搬送する搬送装置(搬送系)として構成されている。
【0029】
基板支持具としてのボート217は、複数枚、例えば25~200枚のウエハ200を、水平姿勢で、かつ、互いに中心を揃えた状態で鉛直方向に間隔を空けて配列させるように構成されている。ボート217は、例えば石英やSiC等の耐熱性材料で構成される。ボート217の下部には、例えば石英やSiC等の耐熱性材料で構成される断熱板218が水平姿勢で多段(図示せず)に支持されている。この構成により、ヒータ207からの熱がシールキャップ219側に伝わりにくくなっている。ただし、本実施形態は上述の形態に限定されない。例えば、ボート217の下部に断熱板218を設けずに、石英やSiC等の耐熱性材料で構成される筒状の部材として構成された断熱筒を設けてもよい。
【0030】
図2に示すように、インナチューブ204内には温度検出器としての温度センサ263が設置されており、温度センサ263により検出された温度情報に基づきヒータ207への通電量を調整することで、処理室201内の温度が所望の温度分布となるように構成されている。温度センサ263は、ノズル410,420,430と同様にL字型に構成されており、インナチューブ204の内壁に沿って設けられている。
【0031】
図3に示すように、制御部(制御手段)であるコントローラ121は、CPU(Central Processing Unit)121a,RAM(Random Access Memory)121b,記憶装置121c,I/Oポート121dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM121b,記憶装置121c,I/Oポート121dは、内部バスを介して、CPU121aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ121には、例えばタッチパネル等として構成された入出力装置122が接続されている。
【0032】
記憶装置121cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成されている。記憶装置121c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラム、後述する半導体装置の製造方法の手順や条件などが記載されたプロセスレシピなどが、読み出し可能に格納されている。プロセスレシピは、後述する半導体装置の製造方法における各工程(各ステップ)をコントローラ121に実行させ、所定の結果を得ることができるように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、このプロセスレシピ、制御プログラム等を総称して、単に、プログラムともいう。本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、プロセスレシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、プロセスレシピ及び制御プログラムの組み合わせを含む場合がある。RAM121bは、CPU121aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0033】
I/Oポート121dは、上述のMFC312,322,332,512,522,532、バルブ314,324,334,514,524,534、圧力センサ245、APCバルブ243、真空ポンプ246、ヒータ207、温度センサ263、回転機構267、ボートエレベータ115等に接続されている。
【0034】
CPU121aは、記憶装置121cから制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置122からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置121cからレシピ等を読み出すように構成されている。CPU121aは、読み出したレシピの内容に沿うように、MFC312,322,332,512,522,532による各種ガスの流量調整動作、バルブ314,324,334,514,524,534の開閉動作、APCバルブ243の開閉動作及びAPCバルブ243による圧力センサ245に基づく圧力調整動作、温度センサ263に基づくヒータ207の温度調整動作、真空ポンプ246の起動及び停止、回転機構267によるボート217の回転及び回転速度調節動作、ボートエレベータ115によるボート217の昇降動作、ボート217へのウエハ200の収容動作等を制御するように構成されている。
【0035】
コントローラ121は、外部記憶装置(例えば、磁気テープ、フレキシブルディスクやハードディスク等の磁気ディスク、CDやDVD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリやメモリカード等の半導体メモリ)123に格納された上述のプログラムを、コンピュータにインストールすることにより構成することができる。記憶装置121cや外部記憶装置123は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成されている。以下、これらを総称して、単に、記録媒体ともいう。本明細書において記録媒体は、記憶装置121c単体のみを含む場合、外部記憶装置123単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。コンピュータへのプログラムの提供は、外部記憶装置123を用いず、インターネットや専用回線等の通信手段を用いて行ってもよい。
【0036】
(2)基板処理工程
半導体装置(デバイス)の製造工程の一工程として、ウエハ200上に、TiN膜を形成する工程の一例について、
図4及び
図5を用いて説明する。TiN膜を形成する工程は、上述した基板処理装置10の処理炉202を用いて実行される。以下の説明において、基板処理装置10を構成する各部の動作はコントローラ121により制御される。
【0037】
本実施形態による基板処理工程(半導体装置の製造工程)では、
(a)ウエハ200を処理室201に搬入する工程と、
(b)ウエハ200に対して第1元素含有ガスとして金属含有ガスを供給する工程と、
(c)ウエハ200に対して第1の還元ガスを複数回供給する工程と、
(d)(b)及び(c)を順に1回以上実行し、ウエハ200に対してシード層である第1の層を形成する工程と、
(e)(d)の後であって、
(f)ウエハ200に対して第2元素含有ガスとして金属含有ガスを供給する工程と、
(g)ウエハ200に対して第2の還元ガスを供給する工程と、
(h)(f)及び(g)を順に1回以上実行し、第1の層の上に第2の層を形成する工程と、
を行う工程と、有する。
【0038】
(d)は、(b)において、ウエハ200に対して第3の還元ガスを供給する工程を有する。
【0039】
また、(d)は、(b)の後に、ウエハ200に対して第3の還元ガスを供給する工程を有する。
【0040】
本明細書において「ウエハ」という言葉を用いた場合は、「ウエハそのもの」を意味する場合や、「ウエハとその表面に形成された所定の層や膜等との積層体」を意味する場合がある。本明細書において「ウエハの表面」という言葉を用いた場合は、「ウエハそのものの表面」を意味する場合や、「ウエハ上に形成された所定の層や膜等の表面」を意味する場合がある。本明細書において「基板」という言葉を用いた場合も、「ウエハ」という言葉を用いた場合と同義である。
【0041】
(ウエハ搬入)
複数枚のウエハ200がボート217に装填(ウエハチャージ)されると、
図1に示されているように、複数枚のウエハ200を支持したボート217は、ボートエレベータ115によって持ち上げられて処理室201内に搬入(ボートロード)される。この状態で、シールキャップ219はOリング220を介して反応管203の下端開口を閉塞した状態となる。
【0042】
(圧力調整および温度調整)
処理室201内、すなわち、ウエハ200が存在する空間が所望の圧力(真空度)となるように真空ポンプ246によって真空排気される。この際、処理室201内の圧力は、圧力センサ245で測定され、この測定された圧力情報に基づき、APCバルブ243がフィードバック制御される(圧力調整)。真空ポンプ246は、少なくともウエハ200に対する処理が完了するまでの間は常時作動させた状態を維持する。また、処理室201内が所望の温度となるようにヒータ207によって加熱される。この際、処理室201内が所望の温度分布となるように、温度センサ263が検出した温度情報に基づきヒータ207への通電量がフィードバック制御される(温度調整)。ヒータ207による処理室201内の加熱は、少なくともウエハ200に対する処理が完了するまでの間は継続して行われる。
【0043】
[第1の層(シード層)形成工程]
(第1元素含有ガス供給、第1ステップ)
バルブ314を開き、ガス供給管310内に第1元素含有ガスを流す。第1元素含有ガスは、MFC312により流量調整され、ノズル410のガス供給孔410aから処理室201内に供給され、排気管231から排気される。このとき、ウエハ200に対して第1元素含有ガスが供給される。このとき同時にバルブ514を開き、ガス供給管510内に不活性ガスを流してもよい。このとき、ノズル420,430内への第1元素含有ガスの侵入を防止するために、バルブ524,534を開き、ガス供給管520,530内に不活性ガスを流してもよい。
【0044】
このときAPCバルブ243を調整して、処理室201内の圧力を、例えば1~3990Paの範囲内の圧力とする。MFC312で制御する第1元素含有ガスの供給流量は、例えば0.1~2.0slmの範囲内の流量とする。以下において、ヒータ207の温度は、ウエハ200の温度が、例えば300~550℃の範囲内の温度となるような温度に設定して行う。なお、本開示における「1~3990Pa」のような数値範囲の表記は、下限値および上限値がその範囲に含まれることを意味する。よって、例えば、「1~3990Pa」とは「1Pa以上3990Pa以下」を意味する。他の数値範囲についても同様である。
【0045】
このとき、ウエハ200に対して第1元素含有ガスが単独で供給されることとなる。ここで、第1元素含有ガスとしては、第1元素として例えばチタン(Ti)を含み、ハロゲンを含むハロゲン系原料(ハロゲン化物、ハロゲン系チタン原料)としての四塩化チタン(TiCl4)が用いられる。第1元素含有ガスの供給により、ウエハ200(表面の下地膜)上に第1元素含有層が形成される。ここで、第1元素含有ガスがTiCl4ガスの場合、Ti含有層は、Ti元素を含む層である。また、Clを含むTi層であってもよいし、TiCl4の吸着層であってもよいし、それらの両方を含んでいてもよい。
【0046】
(第1元素含有ガスと第3の還元ガスの同時供給、第2ステップ)
第1元素含有ガスの供給開始から所定時間経過後であって例えば0.01~5秒後に、バルブ324を開き、ガス供給管320内に第3の還元ガスを流す。第3の還元ガスは、MFC322により流量調整され、ノズル420のガス供給孔420aから処理室201内に供給され、排気管231から排気される。このとき、同時にバルブ524を開き、ガス供給管520内にN2ガス等の不活性ガスを流してもよい。このとき、ノズル430内への第1元素含有ガスと第3の還元ガスの侵入を防止するために、バルブ534を開き、ガス供給管530内に不活性ガスを流してもよい。このとき、ウエハ200に対して第1元素含有ガスと第3の還元ガスとが同時に供給されることとなる。すなわち少なくとも第1元素含有ガスと第3の還元ガスとは同時に供給されるタイミングを有する。言い換えれば第1元素含有ガス供給中に、ウエハ200に対して第3の還元ガスを供給する工程を有する。このとき、2サイクル目以降の第1元素含有ガス供給中に発生する反応副生成物が除去されて、第1元素の吸着サイトを増加させることが可能となる。なお、第3の還元ガスとしては、例えば、シリコン(Si)含有ガスが用いられる。Si含有ガスとしては、例えばシラン系ガス又はクロロシラン系ガスを用いることができる。シラン系ガスとしては、シラン(SiH4)系のガスを用いることができる。また、クロロシラン系ガスとしては、ヘキサクロロジシラン(Si2Cl6)系のガスを用いることができる。ここでシラン系のガスやクロロシラン系のガスとは、上記ガスのSi、H、Clの数が異なるガスである。シラン系ガスとしては、例えば、ジシラン(Si2H6)ガス、トリシラン(Si3H8)ガス、テトラシラン(Si4H10)ガス等を用いることができる。クロロシラン系のガスとしては、例えば、モノクロロシラン(SiH3Cl)ガス、ジクロロシラン(SiH2Cl2)ガス、トリクロロシラン(SiHCl3)ガス等を用いることができる。
【0047】
このときAPCバルブ243を調整して、処理室201内の圧力を、例えば130~3990Paの範囲内の圧力とする。MFC322で制御する第3の還元ガスの供給流量は、例えば0.1~5slmの範囲内の流量とする。
【0048】
(第3の還元ガス供給、第3ステップ)
第1元素含有ガスの供給を開始してから所定時間経過後であって例えば0.01~10秒後に、ガス供給管310のバルブ314を閉じて、第1元素含有ガスの供給を停止する。このとき、ノズル410,430内への第3の還元ガスの侵入を防止するために、バルブ514,534を開いて、ガス供給管510,530内に不活性ガスを流してもよい。このとき、ウエハ200に対して第3の還元ガスが単独で供給されることとなる。このとき、さらに2サイクル目以降の第1元素含有ガス供給中に発生する反応副生成物が除去されて、第1元素の吸着サイトを増加させることが可能となる。
【0049】
(パージ、第4ステップ)
次に、パージ工程(第4ステップ)として、不活性ガス供給(第4-1ステップ)と、排気(第4-2ステップ)と、不活性ガス供給(第4-3ステップ)と、をこの順に行う。
【0050】
<不活性ガス供給、第4-1ステップ>
第3の還元ガスの供給を開始してから所定時間経過後であって例えば0.01~60秒後にバルブ324を閉じて、第3の還元ガスの供給を停止する。このときバルブ514,524,534を開いて、不活性ガスの処理室201内への供給を開始する。このとき排気管231のAPCバルブ243の開度は約50%からフルオープンにして、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留する未反応もしくは第1元素含有層形成に寄与した後の第1元素含有ガスと第3の還元ガスを処理室201内から排除する。不活性ガスはパージガスとして作用する。ここで、第1元素含有ガスとして、TiCl4ガスを用い、第3の還元ガスとしてSiH4ガスを用いる場合、成長阻害要因であるHClがSiH4と反応し、四塩化ケイ素(SiCl4)とH2として処理室201内から排出される。MFC512,522,532で制御する不活性ガスの供給流量は、それぞれ例えば1~10slmとする。不活性ガスをウエハ200に対して供給する時間は、例えば0.1~10秒とする。
【0051】
<排気、第4-2ステップ>
第4-1ステップにおける不活性ガスの供給を開始してから所定時間経過後であって例えば0.1~10秒後に、バルブ514,524,534を閉じて、不活性ガスの供給を停止する。このとき排気管231のAPCバルブ243の開度は約50%からフルオープンのままにして、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気する。これにより、処理室201内に残留する未反応もしくは第1元素含有層形成に寄与した後の第1元素含有ガスと第3の還元ガスや反応副生成物を処理室201内から排除する効果が高まる。不活性ガスの供給を停止して排気する時間は、例えば2秒とする。
【0052】
<不活性ガス供給、第4-3ステップ>
第4-2ステップにおける排気を開始してから所定時間経過後であって例えば2秒後にバルブ514,524,534を開いて、不活性ガスの処理室201内への供給を開始する。このとき排気管231のAPCバルブ243の開度は約50%からフルオープンのままにして、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気し、処理室201内を不活性ガス雰囲気に置換する。このとき不活性ガスはパージガスとして作用する。MFC512,522,532で制御する不活性ガスの供給流量は、それぞれ例えば3.6slmとする。不活性ガスをウエハ200に対して供給する時間は、例えば2秒とする。
【0053】
(第1の還元ガス供給、第5ステップ)
次に、第1の還元ガス供給工程(第5ステップ)として、第1の還元ガス供給(第5-1ステップ)と、パージ(第5-2ステップ)と、を順に行うサイクルを所定回数(例えば4回)行う。すなわち、第5ステップでは、ウエハ200に対して第1の還元ガスを複数回供給する。
【0054】
<第1の還元ガス供給、第5-1ステップ>
第4-3ステップにおける不活性ガスの供給を開始してから所定時間経過後であって例えば0.1~10秒後にバルブ514,524,534を閉じて、不活性ガスの処理室201内への供給を停止する。このときバルブ334を開き、ガス供給管330内に、第1の還元ガスを流す。第1の還元ガスは、MFC332により流量調整され、ノズル430のガス供給孔430aから処理室201内に供給され、排気管231から排気される。このときウエハ200に対して、第1の還元ガスが供給される。なお、このとき同時にバルブ534を開き、ガス供給管530内に不活性ガスを流してもよい。また、ノズル410,420内への第1の還元ガスの侵入を防止するために、バルブ514,524を開き、ガス供給管510,520内に不活性ガスを流してもよい。
【0055】
このときAPCバルブ243を調整して、処理室201内の圧力を、例えば1~3990Paの範囲内の圧力とする。MFC332で制御する第1の還元ガスの供給流量は、例えば0.1~30slmの範囲内の流量とする。第1の還元ガスをウエハ200に対して供給する時間は、例えば0.01~30秒の範囲内の時間とする。
【0056】
このとき、ウエハに対して第1の還元ガスが単独で供給されることとなる。ここで、第1の還元ガスとしては、例えば窒素(N)を含み、水素(H)を含むガスであるアンモニア(NH3)ガス、ジアゼン(N2H2)ガス、ヒドラジン(N2H4)ガス、トリアゼン(N3H3)ガスを用いることができる。第1の還元ガスとしてNH3ガスを用いる場合、NH3ガスは、ウエハ200上に形成されたTi含有層の少なくとも一部と置換反応する。置換反応の際には、Ti含有層に含まれるTiとNH3ガスに含まれるNとが結合して、ウエハ200上にTiN層が形成される。
【0057】
<パージ、第5-2ステップ>
第1の還元ガスの供給を開始してから所定時間経過後であって例えば0.01~60秒後にバルブ334を閉じて、第1の還元ガスの供給を停止する。そして、パージ工程(第5-2ステップ)として、不活性ガス供給と、排気と、を順に行う。
【0058】
すなわち、バルブ514,524,534を開いて、不活性ガスを処理室201内へ供給する不活性ガス供給と、バルブ514,524,534を閉じて、処理室201内への不活性ガスの供給を停止して、処理室201内を排気する排気と、を順に行う。このとき排気管231のAPCバルブ243は開いたままとして、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留する未反応もしくは第1元素含有層の形成に寄与した後の第1の還元ガスや反応副生成物を処理室201内から排除する。不活性ガスはパージガスとして作用する。不活性ガス供給と排気とを連続して行って、処理室201内の圧力を下げることで、第1の還元ガスが、ウエハ200上に吸着している未反応の第1元素含有ガスの分子と接触する確率を向上させることができる。
【0059】
<所定回数実施>
上記した第5-1ステップと第5-2ステップを順に行うサイクルを所定回数であって例えば4回行うことにより、ウエハ200上に、第1元素含有層を形成する。すなわち、第1の還元ガスを複数回供給する間で、パージ工程を行う。なお、本ステップにおける4回目の第5-2ステップは、後述する1回目の第6ステップと重複するため、行わない。
【0060】
(パージ、第6ステップ)
次に、パージ工程(第6ステップ)として、不活性ガス供給(第6-1ステップ)と、排気(第6-2ステップ)と、を順に行うサイクルを所定回数(例えば4回)行う。
【0061】
<不活性ガス供給、第6-1ステップ>
すなわち、バルブ514,524,534を開いて、不活性ガスを処理室201内へ供給する。このとき排気管231のAPCバルブ243は開いたままとして、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留する未反応もしくは第1元素含有層の形成に寄与した後の第1の還元ガスを処理室201内から排除する。不活性ガスはパージガスとして作用する。ここで、第1の還元ガスとして、NH3ガスを用いている場合、成長阻害要因であるHClがNH3と反応し、NH4Clとして処理室201内から排出される。MFC512,522,532で制御する不活性ガスの供給流量は、それぞれ例えば0.1~50slmとする。このときの不活性ガスをウエハ200に対して供給する時間は、例えば1~10秒とする。
【0062】
<排気、第6-2ステップ>
第6-1ステップにおける不活性ガスの供給を開始してから所定時間経過後であって5秒後に、バルブ514,524,534を閉じて、不活性ガスの供給を停止する。このとき排気管231のAPCバルブ243は開いたままとして、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気する。不活性ガスの供給を停止して排気する時間は、例えば1~10秒とする。
【0063】
<所定回数実施>
上記した第6-1ステップと第6-2ステップを順に行うサイクルを所定回数であって例えば4回行う。これにより、本工程における2回目以降の第1ステップにおける第1元素含有ガスを供給する前に、処理室201内に残留する未反応もしくは第1元素含有層の形成に寄与した後の第1の還元ガスの濃度を低減させ、第1元素含有ガス供給時に生成される副生成物の発生量を低減することができる。すなわち、処理室201内の環境をリセットすることができる。
【0064】
(第3の還元ガス供給、第7ステップ)
次に、バルブ324を開き、ガス供給管320内に第3の還元ガスを流す。第3の還元ガスは、MFC322により流量調整され、ノズル420のガス供給孔420aから処理室201内に供給され、排気管231から排気される。このとき同時にバルブ524を開き、ガス供給管520内に不活性ガスを流す。
【0065】
このときAPCバルブ243を約フルオープンにする。MFC322で制御する第3の還元ガスの供給流量は、例えば0.1~5slmとする。このとき同時にMFC522で制御する不活性ガスの供給流量は、例えば0.1~5slmとする。第3の還元ガスをウエハ200に対して供給する時間は、例えば0.1~20秒とする。
【0066】
このとき、ウエハ200に対して第3の還元ガスと不活性ガスが供給されこととなる。これにより、ウエハ200上の第1元素含有層が、第3の還元ガスが含む第3元素の含有層であり結晶粒(粒子径)が小さく高密度の第1の層に改質され、ウエハ200上に第1の層が形成される。ここで、第1元素含有層がTiN層であり、第3の還元ガスがSiH4ガスの場合、ウエハ200の表面(ウエハ200上に形成されたTiN層の表面)に第1の層として、TiSiN層が形成される。
【0067】
(パージ、第8ステップ)
次に、パージ工程(第8ステップ)として、不活性ガス供給(第8-1ステップ)と、排気(第8-2ステップ)と、不活性ガス供給(第8-3ステップ)と、をこの順に行う。
【0068】
<不活性ガス供給、第8-1ステップ>
第3の還元ガスの供給を開始してから所定時間経過後であって例えば0.1~20秒後にバルブ324を閉じて、第3の還元ガスの供給を停止する。このときバルブ514,524,534を開いたままにして、不活性ガスを処理室201内へ供給する。このとき排気管231のAPCバルブ243の開度は約フルオープンにして、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留する未反応もしくは第1の層形成に寄与した後の第3の還元ガスや反応副生成物を処理室201内から排除する。不活性ガスはパージガスとして作用する。ここで、成長阻害要因である副生成物が第3の還元ガスと反応し、処理室201内から排出される。ここで、第3の還元ガスが、SiH4ガスの場合、四塩化ケイ素(SiCl4)とH2として処理室201内から排出される。MFC512,522,532で制御する不活性ガスの供給流量は、それぞれ例えば1~50slmとする。不活性ガスをウエハ200に対して供給する時間は、例えば0.1~10秒とする。
【0069】
<排気、第8-2ステップ>
第8-1ステップにおける不活性ガスの供給を開始してから所定時間経過後であって例えば0.1~10秒後に、バルブ514,524,534を閉じて、不活性ガスの供給を停止する。このとき排気管231のAPCバルブ243の開度はフルオープンにして、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気する。不活性ガスの供給を停止して排気する時間は、例えば0.1~10秒とする。これにより、処理室201内に残留する未反応もしくは第1の層の形成に寄与した後の第3の還元ガスや反応副生成物を処理室201内から排除する効果が高まる。
【0070】
<不活性ガス供給、第8-3ステップ>
第8-2ステップにおける排気を開始してから所定時間経過後であって例えば5秒後にバルブ514,524,534を開いて、不活性ガスを処理室201内へ供給する。このとき排気管231のAPCバルブ243の開度は約フルオープンにして、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気し、処理室201内を不活性ガス雰囲気に置換する。このとき不活性ガスはパージガスとして作用する。MFC512,522,532で制御する不活性ガスの供給流量は、それぞれ例えば1~50slmとする。不活性ガスをウエハに対して供給する時間は、例えば5秒とする。これにより、反応副生成物が処理室201内から除去されて、処理室201内の雰囲気が不活性ガス雰囲気に置換される。また、次サイクルの第1元素含有ガスの吸着を促進させることができる。
【0071】
(所定回数実施)
上記した第1ステップ~第8ステップを順に行うサイクルを所定回数(n回)、1回以上行う(繰り返し行う)ことにより、ウエハ200上に、所定厚さであって例えば約5Å以上の厚さの、シード層である第1の層を形成する。本工程(第1ステップ~第8ステップ)は、1回以上行えば効果があるが、好ましくは、第1の層の厚さが約5Å以上となるまで行う。更に好ましくは、約10Å以上となるまで行う。なお、第1の層として、第1元素と第3元素とを含む場合を例示したが、第3元素は含まれない第1元素を含む層であってもよい。ここで、第1元素含有ガスとして、TiCl4ガスを用いて、第3の還元ガスとしてSiH4ガスを用いて、第1の還元ガスとしてNH3ガスを用いる場合、第1の層としてTiSiN層が形成される。
【0072】
[第2の層形成工程]
上述したシード層形成工程によりシード層として第1の層を形成した後、以下の第9ステップ~第14ステップを繰り返し行う。なお、本工程における第9ステップから第14ステップは、上述したシード層形成工程における第1ステップ~第6ステップとそれぞれ同様の処理手順であり、簡略化して説明する。
【0073】
(第2元素含有ガス供給、第9ステップ)
上述したシード層形成工程の第1ステップにおける第1元素含有ガス供給と同様の処理手順により、第2元素を含む第2元素含有ガスを処理室201内に供給する。このとき、処理室201内には第2元素含有ガスが単独で供給されることとなる。ここで、第2元素含有ガスとしては、第2元素として例えばチタン(Ti)を含み、ハロゲンを含むハロゲン系原料(ハロゲン化物、ハロゲン系チタン原料)としての四塩化チタン(TiCl4)が用いられる。TiCl4ガスの供給により、第1の層の形成されたウエハ200上に第2元素含有層が形成される。
【0074】
(第2元素含有ガスと第3の還元ガスの同時供給、第10ステップ)
上述したシード層形成工程の第2ステップにおける第1元素含有ガスと第3の還元ガスの同時供給と同様の処理手順により、第3の還元ガスを処理室201内に供給する。このとき、ウエハ200に対して第2元素含有ガスと第3の還元ガスが同時に供給されることとなる。すなわち少なくとも第2元素含有ガスと第3の還元ガスとは同時に供給されるタイミングを有する。言い換えれば、第2元素含有ガス供給中に、ウエハ200に対して第3の還元ガスを供給する工程を有する。このとき、本工程における2サイクル目以降の第2元素含有ガス供給中に発生する反応副生成物が除去されて、第2元素等の元素の吸着サイトを増加させることが可能となり、被覆率向上に寄与されることとなる。
【0075】
このときAPCバルブ243を調整して、処理室201内の圧力を、例えば130~3990Paの範囲内の圧力とする。処理室201内の圧力が130Paより低いと、第3の還元としてSiH4ガスを用いて、第2元素含有ガスとしてTiCl4ガスを用いた場合、SiH4ガスに含まれるSiが第2元素含有層としてのTi含有層に進入し、成膜されるTiN膜に含まれる膜中のSi含有率が高くなってTiSiN膜となってしまう可能性がある。処理室201内の圧力が3990Paより高い場合も同様に、SiH4ガスに含まれるSiがTi含有層に進入し、成膜されるTiN膜に含まれる膜中のSi含有率が高くなってTiSiN膜となってしまう可能性がある。このように、処理室201内の圧力は低すぎても高すぎても、成膜される膜の元素組成が変化してしまう。
【0076】
(第3の還元ガス供給、第11ステップ)
上述したシード層形成工程の第3ステップにおける第3の還元ガス供給と同様の処理手順により第2元素含有ガスの供給を停止し、処理室201内に第3の還元ガスを単独で供給する。このとき、本工程における2サイクル目以降の第2元素含有ガス供給中に発生する反応副生成物が除去されて、第2元素等の元素の吸着サイトを増加させることが可能となり、被覆率向上に寄与されることとなる。
【0077】
(パージ、第12ステップ)
上述したシード層形成工程の第4ステップにおけるパージ工程の不活性ガス供給(第4-1ステップ)と、排気(第4-2ステップ)と、不活性ガス供給(第4-3ステップ)と、それぞれ同様の処理手順により、不活性ガス供給(第12-1ステップ)と、排気(第12-2ステップ)と、不活性ガス供給(第12-3ステップ)と、をこの順に行う。
【0078】
不活性ガスはパージガスとして作用し、処理室内に残留する未反応もしくは第2元素含有層形成に寄与した後の第2元素含有ガスと第3の還元ガスが処理室201内から排出される。また、第3の還元ガスとしてSiH4ガスを用いる場合、成長阻害要因である反応副生成物(HCl)がSiH4と反応し、SiCl4とH2として処理室201内から排出される。
【0079】
(第2の還元ガス供給、第13ステップ)
次に、上述したシード層形成工程の第5ステップにおける第1の還元ガス供給工程の第1の還元ガス供給(第5-1ステップ)と、パージ(第5-2ステップ)と、それぞれ同様の処理手順により、第2の還元ガス供給(第13-1ステップ)と、パージ(第13-2ステップ)と、を順に行うサイクルを所定回数(例えば4回)行う。すなわち、パージ(第13-2ステップ)は、上述した第5-2ステップと同様に、不活性ガス供給と、排気と、を順に行う。第2の還元ガスとしてNH3ガスを用いた場合、ウエハ200に対して、NH3ガスを供給することにより、第1の層上に形成されたTi含有層に含まれるTiとNH3ガスに含まれるNとが結合し、第2の層としてのTiN層が形成される。NH3ガスは、窒素含有ガスとも称する。そして、第13-1ステップと第13-2ステップとを順に行うサイクルを所定回数行うことにより、第1の層上に、所定の厚さの第2の層を形成する。なお、本ステップにおける4回目の第13-2ステップは、後述する第14ステップと重複するため、行わない。
【0080】
(パージ、第14ステップ)
次に、上述したシード層形成工程の第6ステップにおけるパージ工程の不活性ガス供給(第6-1ステップ)と、排気(第6-2ステップ)と、それぞれ同様の処理手順により、不活性ガス供給(第14-1ステップ)と、排気(第14-2ステップ)と、を順に行うサイクルを所定回数(例えば4回)行う。
【0081】
すなわち、処理室201内に残留する未反応もしくは第2の層の形成に寄与した後の第2の還元ガスや反応副生成物を処理室201内から排除する。不活性ガスはパージガスとして作用する。
【0082】
(所定回数実施)
上記した第9ステップ~第14ステップを順に行うサイクルを所定回数(m回)、1回以上実行することにより、第1の層上に、所定の厚さの第2の層を形成する。なお、mはnよりも大きく設定される。即ち、nはmよりも小さい。すなわち、第1の層形成工程における第1ステップ~第8ステップを順に行うサイクルの回数は、第2の層形成工程における第9ステップ~第14ステップを順に行うサイクルの回数よりも少ない。ここで、第2元素含有ガスとして、TiCl4ガスを用いて、第3の還元ガスとしてSiH4ガスを用いて、第2の還元ガスとしてNH3ガスを用いる場合、第1の層としてのTiSiN層の上に、所定厚さの第2の層としてのTiN層を形成してTiN膜が形成される。
【0083】
(アフターパージおよび大気圧復帰)
ガス供給管510~530のそれぞれから不活性ガスを処理室201内へ供給し、排気管231から排気する。不活性ガスはパージガスとして作用し、これにより処理室201内が不活性ガスでパージされ、処理室201内に残留するガスや副生成物が処理室201内から除去される(アフターパージ)。その後、処理室201内の雰囲気が不活性ガスに置換され(不活性ガス置換)、処理室201内の圧力が常圧に復帰される(大気圧復帰)。
【0084】
(ウエハ搬出)
その後、ボートエレベータ115によりシールキャップ219が下降されて、反応管203の下端が開口される。そして、処理済ウエハ200がボート217に支持された状態で反応管203の下端から反応管203の外部に搬出(ボートアンロード)される。その後、処理済のウエハ200は、ボート217より取り出される(ウエハディスチャージ)。
【0085】
図6(A)は、上述した基板処理工程を用いてウエハ200上に形成されたTiN膜を透過型電子顕微鏡(TEM)用いて投影したTEM画像を示す図である。
図6(B)は、ウエハ200上にシード層を形成しないで形成されたTiN膜表面のTEM画像を示す図である。
【0086】
シード層(TiSiN層)を形成しないTiN膜は、
図6(B)に示すように、ウエハ200上へのTiCl
4の吸着が不十分となり、被覆率が悪くなる。これに対して、本実施形態における基板処理工程では、シード層形成工程によりシード層を形成した後、TiN層形成工程によりシード層上にTiN層を形成してTiN膜を形成する。本実施形態では、結晶粒が小さく高密度のTiSiN層が形成され、そのTiSiN層上にTiN層を形成してTiN膜を形成することにより、
図6(A)に示すように、高密度で平坦化されたTiN膜を形成することができ、ウエハ200上にTiCl
4を十分に吸着させて被覆率を向上させることができる。すなわち、TiN膜の表面に形成されるW膜を低抵抗化することが可能となる。
【0087】
(3)本実施形態による効果
本実施形態によれば、以下に示す1つまたは複数の効果を得ることができる。
(a)高密度で平坦性を有する膜を形成することができる。
(b)被覆率を向上させることができ、例えば高密度で平坦性を有するTiN膜上に形成されるW膜の抵抗率を下げることができる。
(c)成長阻害要因となる反応副生成物を除去して、Ti等の元素の吸着サイトを増加させることが可能となる。
【0088】
なお、上記実施形態では、ウエハ200上にTiN膜を形成する場合に、シード層(第1の層)としてTiSiN層を形成する場合を用いて説明したが、本開示はこれに限定されるものではなく、窒化ホウ素(BN)膜、窒化モリブデン(MoN)膜等を形成する場合に、それぞれシード層として窒化珪化ホウ素(BSiN)層、窒化珪化モリブデン(MoSiN)層、窒化アルミニウム(AlN)層を形成してもよい。これらの場合にも上述の実施形態と同様の効果が得られる。
【0089】
また、上記実施形態では、第1元素含有ガスとして第1元素としてのTiを含むTiCl4ガスを用いる場合を用いて説明したが、本開示はこれに限定されるものではなく、第1元素としてのホウ素(B)またはモリブデン(Mo)のいずれかとハロゲンを含むガスであって、例えば、三塩化ホウ素(BCl3)ガス、ジボラン(B2H6)ガス、モリブデンジクロリドジオキシド(MoO2Cl2)ガス,五塩化モリブデン(MoCl5),モリブデンテトラクロリドオキシド(MoOCl4)、トリメチルアルミニウム((CH3)3Al)、塩化アルミニウム(AlCl3)等のガスを用いる場合にも、好適に適用できる。
【0090】
また、上記実施形態では、第2元素含有ガスとして第2元素としてのTiを含むTiCl4ガスを用いる場合を用いて説明したが、本開示はこれに限定されるものではなく、第2元素としてのホウ素(B)またはモリブデン(Mo)のいずれかとハロゲンを含むガスであって、例えば、三塩化ホウ素(BCl3)ガス、ジボラン(B2H6)ガス、モリブデンジクロリドジオキシド(MoO2Cl2)ガス,五塩化モリブデン(MoCl5),モリブデンテトラクロリドオキシド(MoOCl4)トリメチルアルミニウム((CH3)3Al)、塩化アルミニウム(AlCl3)等のガスを用いる場合にも、好適に適用できる。
【0091】
すなわち、第1元素含有ガスの第1元素と第2元素含有ガスの第2元素は、同じ元素であっても異なる元素であってもよい。
【0092】
また、上記実施形態では、シード層形成工程における第1の還元ガス及びTiN層形成工程における第2の還元ガスとして、NH3ガスを用いる場合を用いて説明したが、本開示はこれに限定されるものではない。
【0093】
すなわち、シード層形成工程において成膜工程と異なるガス種を用いてもよい。
【0094】
また、上記実施形態では、Si含有ガスとしてSiH4ガスを用いる場合を用いて説明したが、本開示はこれに限定されるものではなく、シラン系ガス又はヘキサクロロジシラン(Si2Cl6)ガス等のクロロシラン系のガスを用いる場合に適用可能である。
【0095】
また、上述の実施の形態では、一度に複数枚の基板を処理するバッチ式の縦型装置である基板処理装置を用いて成膜する例について説明したが、本開示はこれに限定されず、一度に1枚または数枚の基板を処理する枚葉式の基板処理装置を用いて成膜する場合にも、好適に適用できる。
【0096】
例えば、
図7(A)に示す処理炉302を備えた基板処理装置を用いて膜を形成する場合にも、本開示は好適に適用できる。処理炉302は、処理室301を形成する処理容器303と、処理室301内にガスをシャワー状に供給するシャワーヘッド303sと、1枚または数枚のウエハ200を水平姿勢で支持する支持台317と、支持台317を下方から支持する回転軸355と、支持台317に設けられたヒータ307と、を備えている。シャワーヘッド303sのインレット(ガス導入口)には、上述の原料ガスを供給するガス供給ポート332aと、上述の反応ガスを供給するガス供給ポート332bと、上述の酸素含有ガス、シリコン含有ガス又はハロゲン含有ガスを供給するガス供給ポート332cが接続されている。ガス供給ポート332aには、上述の実施形態の原料ガス供給系と同様の原料ガス供給系が接続されている。ガス供給ポート332bには、上述の実施形態の反応ガス供給系と同様の反応ガス供給系が接続されている。ガス供給ポート332cには、上述の酸素含有ガス、シリコン含有ガス又はハロゲン含有ガス供給系と同様のガス供給系が接続されている。シャワーヘッド303sのアウトレット(ガス排出口)には、処理室301内にガスをシャワー状に供給するガス分散板が設けられている。処理容器303には、処理室301内を排気する排気ポート331が設けられている。排気ポート331には、上述の実施形態の排気系と同様の排気系が接続されている。
【0097】
また例えば、
図7(B)に示す処理炉402を備えた基板処理装置を用いて膜を形成する場合にも、本開示は好適に適用できる。処理炉402は、処理室401を形成する処理容器403と、1枚または数枚のウエハ200を水平姿勢で支持する支持台417と、支持台417を下方から支持する回転軸455と、処理容器403のウエハ200に向けて光照射を行うランプヒータ407と、ランプヒータ407の光を透過させる石英窓403wと、を備えている。処理容器403には、上述の原料ガスを供給するガス供給ポート432aと、上述の反応ガスを供給するガス供給ポート432bと、上述の酸素含有ガス、シリコン含有ガス又はハロゲン含有ガスを供給するガス供給ポート432cが接続されている。ガス供給ポート432aには、上述の実施形態の原料ガス供給系と同様の原料ガス供給系が接続されている。ガス供給ポート432bには、上述の実施形態の反応ガス供給系と同様の反応ガス供給系が接続されている。ガス供給ポート432cには、上述の実施形態の酸素含有ガス、シリコン含有ガス又はハロゲン含有ガス供給系と同様のガス供給系が接続されている。処理容器403には、処理室401内を排気する排気ポート431が設けられている。排気ポート431には、上述の実施形態の排気系と同様の排気系が接続されている。
【0098】
これらの基板処理装置を用いる場合においても、上述の実施形態と同様なシーケンス、処理条件にて成膜を行うことができる。
【0099】
これらの各種薄膜の形成に用いられるプロセスレシピ(処理手順や処理条件等が記載されたプログラム)は、基板処理の内容(形成する薄膜の膜種、組成比、膜質、膜厚、処理手順、処理条件等)に応じて、それぞれ個別に用意する(複数用意する)ことが好ましい。そして、基板処理を開始する際、基板処理の内容に応じて、複数のプロセスレシピの中から、適正なプロセスレシピを適宜選択することが好ましい。具体的には、基板処理の内容に応じて個別に用意された複数のプロセスレシピを、電気通信回線や当該プロセスレシピを記録した記録媒体(外部記憶装置123)を介して、基板処理装置が備える記憶装置121c内に予め格納(インストール)しておくことが好ましい。そして、基板処理を開始する際、基板処理装置が備えるCPU121aが、記憶装置121c内に格納された複数のプロセスレシピの中から、基板処理の内容に応じて、適正なプロセスレシピを適宜選択することが好ましい。このように構成することで、1台の基板処理装置で様々な膜種、組成比、膜質、膜厚の薄膜を汎用的に、かつ、再現性よく形成できるようになる。また、オペレータの操作負担(処理手順や処理条件等の入力負担等)を低減でき、操作ミスを回避しつつ、基板処理を迅速に開始できるようになる。
【0100】
また、本開示は、例えば、既存の基板処理装置のプロセスレシピを変更することでも実現できる。プロセスレシピを変更する場合は、本開示に係るプロセスレシピを電気通信回線や当該プロセスレシピを記録した記録媒体を介して既存の基板処理装置にインストールしたり、また、既存の基板処理装置の入出力装置を操作し、そのプロセスレシピ自体を本開示に係るプロセスレシピに変更したりすることも可能である。
【0101】
また、本開示は、例えば、3次元構造を持つNAND型フラッシュメモリやDRAM等のワードライン部分に用いることができる。
【0102】
以上、本開示の種々の典型的な実施形態を説明してきたが、本開示はそれらの実施形態に限定されず、適宜組み合わせて用いることもできる。
【0103】
以下、実施例について説明する。
【実施例1】
【0104】
上述した基板処理装置10を用いて、上述した
図4及び
図5の基板処理工程により、TiSiN層の厚さとTiN層の厚さの割合がそれぞれ異なる20Åの厚さのTiN膜をSi基板上に形成したサンプル1~4を用意した。
図8(A)~
図8(D)は、それぞれサンプル1~4の断面を示し、それぞれTiN膜におけるTiN層の割合が100%、75%、50%、25%の断面を示す図である。
図8(E)~
図8(H)は、
図8(A)~
図8(D)に示すサンプル1~4のTiN膜の表面を透過型電子顕微鏡(TEM)用いて投影したTEM画像を示す図である。
【0105】
図8(E)~
図8(H)に示すように、サンプル2,3,4のTiN膜は、サンプル1のTiN膜と比較して、高密度で平坦性を有することが確認された。すなわち、TiSiN層上にTiN層を形成したTiN膜の方が、TiSiN層を形成しないTiN膜と比較して、高密度で平坦性を有することが確認された。さらにサンプル3とサンプル4のTiN膜は、サンプル2のTiN膜と比較して、より高密度で平坦性を有することが確認された。すなわち、TiN膜の平坦性は、TiSiN層の膜厚に依存することが確認され、20Åの厚さのTiN膜を形成する場合には、TiSiN層の厚さを5Å以上、さらに好ましくは10Å以上とすることにより、より高密度で平坦性を有するTiN膜が形成されることが確認された。
【0106】
すなわち、ウエハ200上にTiN膜を形成する際に、シード層を形成し、このシード層の上にTiN層を形成することにより、高密度で平坦性を有するTiN膜を形成することができることが確認された。
【0107】
<本開示の好ましい態様>
以下に、本開示の好ましい態様について付記する。
【0108】
(付記1)
本開示の一態様によれば、
(a)基板を処理室に搬入する工程と、
(b)前記基板に対して第1元素含有ガスを供給する工程と、
(c)前記基板に対して第1の還元ガスを複数回供給する工程と、
(d)(b)及び(c)を順に1回以上実行し、前記基板に対して第1の層を形成する工程と、
(e)(d)の後であって、
(f)前記基板に対して第2元素含有ガスを供給する工程と、
(g)前記基板に対して第2の還元ガスを供給する工程と、
(h)(f)及び(g)を順に1回以上実行し、前記第1の層の上に第2の層を形成する工程と、
を行う工程と、
を有する半導体装置の製造方法が提供される。
【0109】
(付記2)
付記1に記載の方法であって、
(d)は、(b)において、前記基板に対してシリコン含有ガスを供給する工程を有する。
【0110】
(付記3)
付記1または2に記載の方法であって、
(d)は、(b)の後に、前記基板に対してシリコン含有ガスを供給する工程を有する。
【0111】
(付記4)
付記1~3のいずれか1項に記載の方法であって、
(d)は、(c)の後に、前記基板に対してシリコン含有ガスを供給する工程を有する。
【0112】
(付記5)
付記1~4のいずれか1項に記載の方法であって、
(c)は、前記第1の還元ガスを複数回供給する間で、パージ工程を行う。
【0113】
(付記6)
付記5に記載の方法であって、
前記パージ工程は、不活性ガスの供給と排気とを順に行わせる。
【0114】
(付記7)
付記1~6のいずれか1項に記載の方法であって、
(d)は、(c)の後に、不活性ガスの供給と排気とを複数回行う工程を有する。
【0115】
(付記8)
付記1~7のいずれか1項に記載の方法であって、
(e)は、(f)において、前記基板に対してシリコン含有ガスを供給する工程を有する。
【0116】
(付記9)
付記1~8のいずれか1項に記載の方法であって、
(e)は、(f)の後に、前記基板に対してシリコン含有ガスを供給する工程を有する。
【0117】
(付記10)
付記1~9のいずれか1項に記載の方法であって、
(d)は、前記第1の層の厚さが5Å以上となるまで繰り返し行う。
【0118】
(付記11)
付記1~10のいずれか1項に記載の方法であって、
前記第1元素含有ガスの第1元素と前記第2元素含有ガスの第2元素は同じ元素である。
【0119】
(付記12)
付記1~10のいずれか1項に記載の方法であって、
前記第1元素含有ガスの第1元素と前記第2元素含有ガスの第2元素は異なる元素である。
【0120】
(付記13)
付記1~12のいずれか1項に記載の方法であって、
(d)の(b)及び(c)の繰り返し回数は、(h)の(f)及び(g)の繰り返し回数よりも少ない。
【0121】
(付記14)
本開示の他の態様によれば、付記1における各手順(各工程)をコンピュータによって基板処理装置に実行させるプログラムが提供される。
【0122】
(付記15)
本開示のさらに他の態様によれば、
基板を収容する処理室と、
前記処理室内に前記基板を搬送する搬送系と、
前記処理室内に第1元素含有ガス、第1の還元ガス、第2元素含有ガス及び第2の還元ガスを供給するガス供給系と、
前記処理室内を排気する排気系と、
前記搬送系、前記ガス供給系及び前記排気系を制御して、
前記処理室内において、付記1における各処理(各工程)を行うよう制御することが可能なように構成される制御部と、
を有する基板処理装置が提供される。
【符号の説明】
【0123】
10 基板処理装置
121 コントローラ
200 ウエハ(基板)
201 処理室