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特許7307100基板取扱い用担持リングを有するCVDリアクタ及びCVDリアクタでの担持リングの使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】基板取扱い用担持リングを有するCVDリアクタ及びCVDリアクタでの担持リングの使用
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/205 20060101AFI20230704BHJP
   C23C 16/42 20060101ALI20230704BHJP
   C23C 16/458 20060101ALI20230704BHJP
【FI】
H01L21/205
C23C16/42
C23C16/458
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020567849
(86)(22)【出願日】2019-06-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-27
(86)【国際出願番号】 EP2019064392
(87)【国際公開番号】W WO2019233965
(87)【国際公開日】2019-12-12
【審査請求日】2022-06-01
(31)【優先権主張番号】102018113400.2
(32)【優先日】2018-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】502010251
【氏名又は名称】アイクストロン、エスイー
(74)【代理人】
【識別番号】100095267
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 高城郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124176
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 典子
(72)【発明者】
【氏名】ライト、ベンジャミン・デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】オニール、バリイ
【審査官】高柳 匡克
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-122837(JP,A)
【文献】特開2007-109771(JP,A)
【文献】特開2002-141397(JP,A)
【文献】特開2001-270789(JP,A)
【文献】特表2020-506290(JP,A)
【文献】国際公開第2009/060912(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0014005(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/205
C23C 16/42
C23C 16/458
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセスチャンバ(2)に対向しポケット(17)を具備する少なくとも1つの主面(15’)を有してリアクタハウジング(1)に配置されたサセプタアセンブリ(3)と、基板(10)を担持しかつ取り扱うために少なくとも1つの前記ポケット(17)内に位置する担持要素(20)と、を備えた装置の使用であって、前記主面(15’)に平行に延在する前記担持要素(20)の上面が、前記基板(10)が配置される凹部(11)の境界面に隣接しており、前記境界面における円筒内側面上に延在するセクション(24)が、丸めエッジ(25)又は面取り(25’)を形成しつつ前記担持要素(20)の上面(26)へと移行することによって、ケイ素及び炭素を含むガス状開始物質の分解生成物からなる層を1又は複数の基板(10)上に堆積させる、前記使用において、
前記境界面における円筒内側面上に延在するセクション(24)が、前記基板(10)の材料厚さ(d)よりも大きい高さ(a)を有し、前記境界面が丸めエッジ(25)を形成する場合は前記丸めエッジ(25)の半径(R)が0.4mmより大きく、又は、前記境界面が面取り(25’)を形成する場合は前記面取り(25’)の幅が0.4mmより大きくかつ前記面取り(25’)の高さが0.4mmより大きいことを特徴とする使用。
【請求項2】
前記担持要素(20)の径方向内方領域(22)により形成された前記基板(10)の周縁を支持するための支持面(23)が、前記基板(10)の材料厚さ(d)よりも大きい距離(b)だけ前記上面(26)から離間していることを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記セクション(24)の高さ(a)が、前記支持面(23)が延在する面と前記上面(26)が延在する面との間の距離(b)の半分よりも小さいことを特徴とする請求項に記載の使用。
【請求項4】
前記セクション(24)の高さ(a)が、前記丸めエッジ(25)の半径(R)又は前記面取り(25’)の高さよりも大きいことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の使用。
【請求項5】
前記基板(10)と前記境界面における円筒内側面上に延在するセクション(24)との間の距離が、前記丸めエッジ(25)の半径(R)又は前記面取り(25’)の幅よりも小さいことを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の使用。
【請求項6】
前記丸めエッジ(25)の半径(R)又は前記面取り(25’)の幅が、少なくとも0.5mmであることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の使用。
【請求項7】
前記担持要素(20)の径方向内方領域(22)が基板ホルダー(12)の支持フランク(13)上に載っており、前記基板ホルダー(12)がサセプタ(14)の上面上に載っておりかつ前記サセプタアセンブリ(3)を加熱可能な加熱装置(6)の上方に配置されており、前記基板ホルダー(12)を、それが担持する前記担持要素(20)及び前記担持要素(20)により担持された前記基板(10)と共に前記基板ホルダー(12)の幾何学的軸の周りで回転させる手段が設けられていることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の使用。
【請求項8】
前記基板ホルダー(12)の周壁(19)に対向して位置する前記ポケット(17)の内壁(18)が、担持体を形成する前記サセプタ(14)上に載ったカバープレート(15)で構成され、前記カバープレート(15)の上面が前記サセプタアセンブリ(3)の主面(15’)を構成しており、前担持要素(20)の径方向外方領域(21)の上面(26)が、所定の距離(e)だけ前記主面(15’)を超えて突出していることを特徴とする請求項7に記載の使用。
【請求項9】
前記主面の面法線方向に延在する前記面取り(16)の高さが、前記担持要素(20)の下面における前記基板ホルダー(12)の支持フランク(13)上に載った支持面と前記担持要素(20)の上面(26)との間の同じ方向に延在する距離よりも大きいことを特徴とする請求項7に記載の使用。
【請求項10】
ス状開始物質の分解生成物から構成される層を1又は複数の基板(10)上に堆積するための装置であって、プロセスチャンバ(2)に対向しかつポケット(17)を具備する少なくとも1つの主面(15’)を有してリアクタハウジング(1)内に配置されたサセプタアセンブリ(3)と、前記基板(10)を担持しかつ取り扱うために少なくとも1つの前記ポケット内に位置する担持要素(20)とを備え、前記主面(15’)に並行に延在する前記担持要素(20)の上面が、前記基板(10)を配置可能な凹部(11)の境界面(24)に隣接しており、前記境界面(24)が、丸めエッジ(25)又は面取り(25’)を形成しつつ前記担持要素(20)の前記上面(26)へと移行する、前記装置において、
前記担持要素(20)の径方向内方領域(22)により形成された、前記基板(10)のエッジを支持するための支持面(23)が、1mm又は前記基板(10)の材料厚さ(d)よりも大きい距離(b)だけ前記上面(26)から離間しており、かつ、前記境界面が丸めエッジ(25)を形成する場合は、前記丸めエッジ(25)の半径(R)が0.4mmより大きく、又は、前記境界面が面取り(25’)を形成する場合は前記面取り(25’)の幅が0.4mmより大きくかつ前記面取り(25’)の高さが0.4mmより大きいことを特徴とする装置。
【請求項11】
境界面における円筒内側面に沿って延在するセクション(24)の有する高さ(a)が、前記基板(10)の材料厚さ(d)より大きくかつ/又は前記丸めエッジ(25)の半径(R)又は前記面取り(25’)の高さより大きく、かつ/又は、前記支持面(23)が延在する面と前記上面(26)が延在する面との間の距離(b)の半分よりも小さいことを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記基板(10)の周縁(10’)と境界面における円筒内側面に沿って延在するセクション(24)との間の距離が、前記丸めエッジ(25)の半径(R)又は前記面取り(25’)の幅よりも小さいことを特徴とする請求項10又は11に記載の装置。
【請求項13】
前記丸めエッジ(25)の半径(R)又は前記面取り(25’)の幅が少なくとも0.5mmであり、かつ/又は、前記上面(26)が第2の丸めコーナー(29)又は第2の面取りを形成しつつ周面(30)へと移行し、前記第2の丸めコーナー(29)の半径又は前記第2の面取りが少なくとも0.4mmであることを特徴とする請求項10~12のいずれかに記載の装置。
【請求項14】
前記担持要素(20)の径方向内方領域(22)が基板ホルダー(12)の支持フランク(13)上に載っており、前記基板ホルダー(12)がサセプタ(14)の上面に載りかつサセプタアセンブリ(3)を加熱可能な加熱装置(6)の上方に配置されており、前記基板ホルダー(12)を、それが担持する前記担持要素(20)及び前記担持要素(20)により担持される前記基板(10)と共に前記基板ホルダー(12)の幾何学的軸の周りで回転させる手段が設けられていることを特徴とする請求項10~13のいずれかに記載の装置。
【請求項15】
前記基板ホルダー(12)の周壁(19)に対向して位置する前記ポケット(17)の内壁(18)が、担持体を形成する前記サセプタ(14)上に載ったカバープレート(15)で構成され、前記カバープレート(15)の上面は前記サセプタアセンブリ(3)の主面(15’)を構成しており、担持要素(20)の径方向外方領域(21)の上面(26)が、所定の距離(e)だけ前記主面(15’)を超えて突出していることを特徴とする請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記主面(15’)が、面取り(16)を形成しつつ円筒内側面に沿って延在する前記ポケット(17)の内面(18)へと移行し、前記主面の面法線の方向に延在する前記面取り(16)の高さが、前記担持要素(20)の下面における基板ホルダー(12)の支持フランク(13)上に載った支持面と前記担持要素(20)の上面(26)との間の同じ方向に延在する距離よりも大きいことを特徴とする請求項10~15のいずれかに記載の装置。
【請求項17】
請求項10~16のいずれかに記載の装置で用いるための、又、ガス状開始物質の分解生成物から構成される層を1又は複数の基板(10)上に堆積する方法で使用するための担持要素(20)であって
担持要素(20)が径方向外方領域(21)と径方向内方領域(22)とを有し、前記径方向内方領域(22)が前記基板(10)の周縁を支持するための支持面(23)を形成し、かつ前記径方向外方領域(21)が前記基板(10)の周縁(10’)に対向する境界面(24)と、前記支持面(23)に対し少なくともほぼ平行な面内に延在する上面(26)とを有する、前記担持要素(20)において、
前記境界面(24)が、丸めエッジ(25)又は面取り(25’)を形成しつつ前記上面(26)へと移行し、かつ、前記丸めエッジ(25)の半径(R)が少なくとも0.4mm、かつ/又は、前記境界面における円筒内側面に沿って延在するセクション(24)が、前記支持面(23)の面法線の方向に延在する高さ(a)を有し、その高さ(a)が前記半径(R)よりも大きいことを特徴とする担持要素。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にケイ素及び炭素を含む特にガス状開始物質の分解生成物から構成される層を1又は複数の基板上に堆積するために、プロセスチャンバに対向しポケットをもつ少なくとも1つの主面を具備してリアクタハウジング内に配置されたサセプタアセンブリを有すると共に、基板を担持しかつ取り扱うために少なくとも1つのポケット内に位置する担持リングを有し、主面に平行に延在する担持リングの上面が、基板を配置可能な凹部の境界面の隣に位置する装置に関する。
【0002】
さらに、本発明はまた、特にケイ素及び炭素からなる層を堆積するためのそのような装置又は方法に使用するための担持リングに関する。
【0003】
さらに、本発明は、そのような担持リングの使用に関する。
【背景技術】
【0004】
特にSiCを堆積するために適切な一般的な装置は、リアクタハウジング内に配置され特に真空引きも可能であるプロセスチャンバを有する。プロセスチャンバの床は、サセプタアセンブリから構成されている。サセプタアセンブリは、下方から加熱されることができる。サセプタアセンブリの上方に配置されたプロセスチャンバは、上方からプロセスチャンバカバーを結合されている。ガス入口部材がプロセスチャンバ内に開口し、特に炭素及びケイ素を含むガス状開始物質を受け入れるために用いられる。プロセスチャンバ又はプロセスチャンバに対向するサセプタアセンブリの主面が、シラン及びメタン又はその他のケイ素-水素又は炭素-水素とすることができる開始物質が分解するプロセス温度に加熱されることによって、サセプタアセンブリにより担持される基板上に炭化ケイ素層が堆積させられる。これは、約1000℃以上、特に1300℃又は1500℃以上の温度で起こる。
【0005】
サセプタアセンブリのポケット内に位置する担持リングは、基板を取り扱うために設けられており、少なくとも基板を取扱う間、実質的に円形の基板の周縁が担持リングの支持面上に載置される。担持リングの径方向外方部分の下側に到達するために、互いに平行に延在する2つの把持指をもつグリッパを用いることができ、それによってサセプタアセンブリのポケットから担持リングを持ち上げる。このためにサセプタアセンブリは、好ましくは周縁に向かって開いたチャネルを有し、その中に把持指が係合することができる。
【0006】
先行技術は、以下の特許文献1~7を含む。
現在SiCを堆積させるために使用されているタイプの装置では、担持リングの上面が、実質的に鋭利なエッジの態様で基板の周縁を取り囲む円筒内面へと移行する。担持リング上で基板の周縁を支持するための支持面と担持リングの上面との間の距離は、実質的に基板の材料厚さに対応するので、基板表面は、担持リングの上面も延在する同じレベルに延在する。
【0007】
担持リングのこのような実施形態では、SiC層を堆積するためのその使用中に担持リングの周縁上で粒子形成が観察される。これらの「ウィスカー」、「デンドライト」又は歯状寄生物は、堆積結果に悪影響を及ぼす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】独国特許出願公開第102 32 731号明細書
【文献】独国特許出願公開第10 2016 103 530号明細書
【文献】独国特許出願公開第10 2005 018 161号明細書
【文献】米国特許出願公開第2016/0172165号明細書
【文献】独国特許出願公開第10 2012 106 796号明細書
【文献】独国特許出願公開第10 2005 018 161号明細書
【文献】独国特許出願公開第10 2017 101 648号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、担持リングの端部にこのような堆積物が形成されるのを防止するための対策を講じることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、請求の範囲に記載された本発明により達成される。その場合、従属項には、独立請求項の有利なさらなる展開だけでなく、対象物に対する独立した解決策も記載されている。
【0011】
先ずそして本質的に、担持リングから構成される担持要素の周縁が、そこでの粒子堆積を低減するために、丸められ又は面取りされることが提示される。先行技術では担持要素の実質的に1つの上面が、鋭利な、おそらくは面取りされただけの境界線を形成して、円筒内側面に沿って延在する境界面へと移行するのとは対照的に、本発明によるエッジは、丸め又は面取りとして設計されている。担持要素の実質的に平坦な上面は、好ましくはいかなるキンクも無しに環状面へと移行する。その環状面は丸みを帯びた領域を呈し、キンクが無いという意味で面一に、円筒内側面に沿って延在する境界面へと移行する。丸めの半径は、少なくとも0.1mmと計測される。好適な実施形態では、丸めの半径が、0.2mm、0.3mm、0.4mm、又は0.5mmより大きい。上面が境界面へと移行していく丸められた周囲エッジは、基板の周縁が載った支持面に直接的に隣接することができる。しかしながら、好ましい実施形態では、丸めエッジが円筒内側面領域へと移行することが提供される。境界面が面取りを形成しつつリングの上面に移行する別の実施形態では、その面取りが、0.2mm、0.3mm、0.4mm、又は0.5mmの幅を有することが好ましい。基板の周縁は、円筒内側面に沿って延在する境界面のセクションに対向して位置することが好ましい。
担持要素の上面が延在する平面と担持要素の支持面が延在する第2の平面との間の距離は、基板の材料厚さよりも大きいことが好ましい。担持要素は、閉じたリングとすることができる。それは円形の輪郭を有することができ、又は非円形の輪郭を有することもできる。しかしながら、担持要素は、複数の部品から構成することもできる。基板の材料厚さが約0.5mmの場合、その距離は少なくとも1mmとすることが好ましい。支持面の面法線の方向に計測された円筒内側面上に延在する境界面のセクションの高さは、基板の材料厚さよりも大きいことが好ましい。しかしながら、それは、基板の材料厚さに対応することもでき、又は、基板の材料厚さよりも僅かに小さくすることもできる。境界面のこのセクションの高さは、丸めコーナーの半径又は面取りの幅よりも大きく又は小さくすることができる。特に、境界面の円筒内側面セクションの高さが、担持リングの支持面と上面との間の距離の半分よりも小さいことが提供される。境界面の直径は、基板の直径よりも僅かに大きく、具体的には、基板の周縁と境界面との間、特に境界面の円筒内側面セクションとの間の距離が、丸めコーナーの半径又は面取りよりも小さくなるようにする。
担持リングは、径方向内方領域と径方向外方領域とを有することができる。担持リングの径方向内方領域は、少なくとも部分的に、基板ホルダーの支持フランク上に位置する。基板ホルダーは、サセプタの上面上に載っており、ここでは台座状の、特に円形ディスク状の物体で構成されている。サセプタの上面上には、基板ホルダーが上面に対して相対的に吊り下げられた状態で保持される手段、例えばガス出口孔を配置することができる。例えば、ガス流がガス出口孔から出て、基板ホルダーが載置されるガスクッションを形成する。ガス出口ノズルの適切な方向によって基板ホルダーをその幾何学的軸の周りで回転させることができる。したがって、基板ホルダー上に載っている担持リング及び担持リングにより担持された基板は、堆積プロセスの実行中に回転駆動される。基板は、その周縁により担持リング上に載ることができる。しかしながら、それは、基板ホルダー上にも載ることができる。特に、基板ホルダーの上面は、円弧ライン上に配置された支持突起を有することができ、それらの上に基板が載ることによって、基板は特定の点上でのみ搭載される。
基板ホルダーは、サセプタ上に載置された1又は複数のカバープレートにより形成することができるポケット内に位置している。ポケットの内壁は、基板ホルダーの周壁から離間することができる。直径の反対側にある2つの側面上で担持リングに正接するチャネルが、好ましくは円形のサセプタアセンブリの径方向外方の周縁から延びることができる。把持アームの指がこれらのチャネルに係合することができ、それによって担持リングにより担持された基板と共に担持リングを持ち上げ、プロセスチャンバから取り出すことができる。
本発明のさらなる態様では、ポケットのエッジが面取りにより形成されることが提供される。その面取りは、サセプタアセンブリの主面に隣接すると共に、円筒内側面から構成されるポケットの内壁に隣接している。また、主面の面法線方向に計測される面取りの高さは、担持リングの高さの長さよりも大きいことが好ましい。
【0012】
本発明による担持リングは、主面内に延在する上面と、それに対して平行に延在する下面とを有し、その上面は特に径方向外方領域に割り当てられ、そしてその下面は特に径方向内方領域に割り当てられている。径方向内方領域はさらに、基板の周縁を支持するための支持面を有し、その支持面は基板の材料厚さよりも大きい距離で担持リングの上面から離間している。本発明によれば、その上面は、丸めコーナー又は面取りを形成しつつ基板の周縁の周囲において周方向に延在する境界面へと移行し、その境界面は内側円筒の円筒ジャケット壁に沿って延在するセクションを有することができる。特に、本発明は、CVDリアクタ、サセプタアセンブリ、担持リング又は担持リングの使用に関し、その場合、リングの中心軸を通る径方向断面の表面において、丸めエッジが円弧断面に沿ってキンク無しに延在している。それは少なくとも0.3mm、0.4mm、0.5mm、又は0.6mmの長さであり、少なくとも平坦な上面と円筒境界面とに隣接する端点の領域では湾曲して延在している。ここで、円弧部が、その端点においていかなるキンクも無しに円滑に上面又は境界面へと延在することが有利である。
本発明は、例示的実施形態に基づいて以下にさらに詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、サセプタアセンブリの斜視図である。
図2図2は、CVDリアクタの概略断面図である。
図3図3は、図2のIII-III断面におけるサセプタアセンブリの概略平面図である。
図4図4は、図2の切り出しIVの図である。
図5図5は、第1の例示的実施形態の図4の切り出しVの拡大図である。
図6図6は、第2の例示的実施形態の図4に相当する図である。
図7図7は、第2の例示的実施形態の図5に相当する図である。
図8図8は、図5に相当する図であるが従来技術である。
図9図8は、図3のラインIX-IXの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図2は、ステンレス鋼から作製されたハウジングを備えたCVDリアクタ1を示す。ハウジングは、その中に配置されたプロセスチャンバを外部に対して気密性をもって密封し、真空引きすることができる。例えばケイ素-水素及び炭素-水素であるプロセスガスを、例えばHである搬送ガスと共に、ガス入口部材5を通してプロセスチャンバ内に供給することができる。プロセスチャンバ2は、プロセスチャンバカバー4により頂部を覆われている。プロセスガスの供給は、実質的に回転対称のプロセスチャンバ2の中心で行われる。プロセスチャンバ2の床は、図1及び図3に示されたタイプのサセプタアセンブリ3から構成されている。サセプタアセンブリ3は、特にグラファイト又はコーティングされたグラファイトからなるサセプタ14を有し、サセプタ14は円形ディスク状の担持体を形成し、その上に複数の基板10が、サセプタアセンブリ3の中心の周りに円形に配置されている。サセプタアセンブリ3を回転軸7の周りで回転駆動するために回転駆動部9が設けられている。サセプタアセンブリ3の下方には加熱装置6が配置されており、それを用いてサセプタアセンブリ3をプロセス温度に加熱することができる。このプロセス温度で、ガス入口部材を通してプロセスチャンバ2内に供給された開始物質が、基板10上に炭化ケイ素層を堆積させるために分解する。その後、反応生成物は、ガス出口8を通って搬送ガスと共にプロセスチャンバ2から出る。
【0015】
外側のカバープレート15と内側のカバープレート27は、担持体を形成するサセプタ14の上面上に配置されている。カバープレート15、27の上面は、サセプタアセンブリ3の広い方の面である主面15’を形成する。この主面15’内に複数の開口部が配置されている。それらの開口部は、ポケット17から構成されている。各ポケット内には基板ホルダー12が配置され、基板ホルダー12は、サセプタ14の上面と基板ホルダー12の下面との間のガスクッション(図示せず)上に載っている。ガスクッションは、サセプタ上面内のガス出口孔から出る搬送ガスからなる。ガス出口孔は、基板ホルダー12をその幾何学的軸の周りで回転させるように配列されている。
【0016】
円形ディスク状の基板ホルダー12の周縁領域は支持フランク13を形成し、支持フランク13の上に担持リング20の径方向内方領域22が載っている。担持リング20の内壁22’は、ここでは、支持フランク13に隣接する段状壁に対して当接している。担持リング20の径方向内方領域22は支持面23を有し、図6及び図7に示した例示的実施形態では、支持面23の上に基板10の径方向外方周縁部が載っている。基板10の下面は、ここでは基板ホルダーの中心領域の上面から距離cだけ離間している。距離cは、基板10の材料厚さdよりも僅かに大きく又は小さくすることができ、1mm未満とすることができる。
【0017】
図4及び図5に示す例示的実施形態では、基板ホルダー12が複数の支持突起32を有し、それらの支持突起が、基板ホルダー12の中心の周りに円弧ライン上に配置されて基板10を支持することによって、基板10は基板ホルダー12の上面からの距離cを有する。支持面23が、ここでは、基板ホルダー12の上面が延在するのと同じ面内に延在することによって、基板10の下面が、支持面23から僅かに離間している。図4及び図5の例示的実施形態では、担持リング20が基板10を搬送するための要素として用いられたときにのみ、基板10の周縁領域が支持面23と接触する。
【0018】
支持面23は、径方向外方において境界面24に隣接している。支持面23内の周方向の溝が、境界面24に隣接する領域において延在している。
【0019】
境界面24における支持面23に隣接するセクションは円筒内側面上に延在しており、基板10の材料厚さdよりも大きい高さを有する。その高さは好ましくは少なくとも0.5mmである。
【0020】
図6及び図7に示す例示的実施形態は、好適な例示的実施形態である。主面15’に平行な平面内に延在する担持リング20の上面26及び、特に担持リング20の径方向外方領域21の上面26が、環状面を形成しつつ円筒内側面上に延在する境界面24へと面一に移行する。したがって、その環状面は、丸めコーナー25を形成する。丸めコーナー25の丸め半径Rは0.4mmより大きく、好ましくは0.5mmより大きい。高さaと半径Rの和は、上面26が延在する第1の平面と、支持面23が延在する第2の平面との距離bに対応する。距離bは、距離aの2倍よりも小さい。支持面23と上面26との間の高低差は、少なくとも1mmであることが好ましい。
【0021】
図4及び図5に示す例示的実施形態では、上面26が、円錐面上に延在する面取り25’を形成しつつ内壁24へと移行する。その面取りの幅は、ここでは0.4mmより大きいこと、又は、0.5mmより大きいことが好ましい。その面取りの高さは、ここでは、半径Rに対応する。それは距離aよりも小さい。距離bは、ここでも、距離aの2倍よりも小さい。面取り25’もまた、いかなるキンクも無く内壁24又は上面26へと続くことができる。面取り25’はまた、それに隣接する複数の面取りを有することができ、それによって断面が多角形状に延在することもできる。
【0022】
担持リング20の径方向外方領域は、基板ホルダー12の周壁19を超えて突出している。図示しないグリッパは、担持リング20の全周に亘って延在する結果的に形成されたオーバーハングの下方に到達することができる。このために把持アームは、互いに平行に延在する2つの把持指を有し、それらが、直径の反対側領域において担持リングの径方向のオーバーハングの下方に到達することができる。
【0023】
カバープレート15は、チャネル31を形成し、その中に把持アームの把持指が係合することができる。
【0024】
さらに、上面26が延在している平面が、主面15’が延在している平面に対して距離を有することが提供される。距離eは、おおよそ丸めコーナー25の丸め半径R又は面取り25’の幅若しくは高さに対応するが、半径Rより小さくすることもできる。特に、上面26とサセプタ14の上面との間の距離が、主面15’とサセプタ14の上面との間の距離よりも大きいことが提供される。したがって、担持リング20の径方向外方領域21は、主面15’からの円形の立ち上がりを有し、この立ち上がりの内周縁25及びこの立ち上がりの外周縁29の両方が丸められるか又は面取りされる。丸めコーナー25、29の2つの丸め半径は、同じとすることができる。しかしながら、コーナー25、29は、丸め領域に替えて面取りを形成することもできる。
【0025】
さらに、円筒内側壁に沿って延在するポケット17の内壁18が、円筒外側壁上に延在するサセプタホルダー12の周壁19に対向して所定の距離で位置することが提供される。カバープレート15の内壁18は、面取り16に隣接することができる。面取り16は、主面15’に隣接している。主面15’の面法線の方向で計測した面取り16の高さは、担持リング20の材料厚さよりも大きくすることができる。特に、周壁19の高さが、内壁18における円筒内側壁上に延在するセクションの高さよりも大きいことが提供される。担持リング20の材料厚さは、約3mmとすることができる。円筒側壁上に延在しかつ担持リング20の外側境界を形成する外側面30は、面取り16に対向して位置することができる。
【0026】
図8は、図7に示したアセンブリと類似のアセンブリを示すが、従来技術によるものである。主面15’と境界面24との間の移行エッジは、ここでは鋭いエッジとなっている。1300℃を超える温度でSiCを堆積するとき、寄生堆積物28が移行エッジ25”で形成され、それは基板10又はカバープレート15及び27の表面に亘ってプロセスガスの流れに影響を与える。
【0027】
図5又は図7に示したエッジ領域の構成は、そのような寄生堆積物32の形成を低減させる。寄生堆積物28の形成の低減は、図7に示す丸め領域において顕著である。
【0028】
本発明によれば、丸め領域又は丸めエッジ又は丸めコーナーの用語は、平坦面と環状に延在する円筒内側面との間の移行領域すなわち4分の1の円弧のような形状の断面を有する領域のみと理解すべきではなく、断面が多角形ラインである移行領域も含む。角度90を超えて延在する多角形ラインの個々のライン要素が丸みを帯びた態様で互いに合わさることによって、平坦面と円筒内側面との間の移行領域がキンク無しで延在する。
【0029】
上記の記載は、本願によって包含される発明を全体として説明するためのものであり、それぞれがまた、それぞれ独立して、少なくとも以下の特徴の組合せによって先行技術をさらに発展させるものであり、具体的には以下の通りである。
【0030】
境界面24が、丸めエッジ25又は面取り25’を形成しつつリング20の上面26へと移行することを特徴とする装置。
【0031】
担持リング20の径方向内方領域22により形成された基板10の周縁を支持するための支持面23が、基板10の材料厚さより大きい距離bだけ上面26から離間していることを特徴とする装置。
【0032】
円筒内側面に沿って実質的に延在する境界面のセクション24が、基板10の材料厚さdよりも大きくかつ/又は丸めコーナー25の半径又は面取り25’よりも大きくかつ/又は支持面23が延在するメント上面26が延在する面との間の距離bの半分よりも小さい高さaを有することを特徴とする装置。
【0033】
基板10の周縁10’と境界面における円筒内側面に沿って延在するセクション24との間の距離が、丸めコーナー25の半径R又は面取り25’の幅より小さいことを特徴とする装置。
【0034】
丸めコーナー25の半径R又は面取り25’の幅が少なくとも0.4mm、好ましくは少なくとも0.5mmであり、かつ/又は、上面26が第2の丸めコーナー29又は第2の面取りを形成しつつ周面30へと移行し、第2の丸めコーナー29の半径又は第2の面取りが少なくとも0.4mm、好ましくは少なくとも0.5mmであることを特徴とする装置。
【0035】
担持リング20の径方向内方領域22が基板ホルダー12の支持フランク13上に載っており、その場合、基板ホルダー12がサセプタ14の上面上に載っておりかつサセプタアセンブリ3を加熱可能な加熱装置6の上方に配置されており、その場合、基板ホルダー12を、それが担持する担持リング20及び担持リング20により担持された基板10と共に基板ホルダー12の幾何学的軸の周りで回転させる手段が設けられていることを特徴とする装置。
【0036】
基板ホルダー12の周壁19に対向して位置するポケット7の内壁18が、担持体を形成するサセプタ14上に載ったカバープレート15で構成され、そのカバープレートの上面がサセプタアセンブリ3の主面15’を構成しており、特に、担持リング20の径方向外方領域21の上面26が、距離eだけ主面15’を超えて突出していることを特徴とする装置。
【0037】
主面15’が、面取り16を形成しつつ特に円筒内側面に沿って延在するポケット17の内面18へと移行し、その場合、特に、主面の面法線方向に延在する面取り16の高さが、担持リング20の下面特に基板ホルダー12の支持フランク13上に載った支持面と担持リングの上面26との間の同じ方向に延在する距離よりも大きいことを特徴とする装置。
【0038】
境界面24が、丸めコーナー25又は面取り25’を形成しつつ上面26へと移行することを特徴とする担持リング。
【0039】
丸めコーナー25の半径Rが少なくとも0.4mm、好ましくは少なくとも0.5mmであり、かつ/又は、境界面における円筒内側面に沿って延在するセクション24が支持面23の面法線の方向に延在する高さaを有し、その高さが半径Rよりも大きいことを特徴とする担持リング。
【0040】
開示された全ての特徴は、(それ自体のために、また互いに組み合わされて)本発明に不可欠である。ここでの出願の開示は、関連する/追加された優先権書類(先の出願の写し)の開示内容をその内容全体に含み、それはこれらの書類の特徴を本願の請求項に組み込む目的でもある。従属請求項は、特にこれらの請求項に基づいて分割出願を行うために、引用される請求項の特徴がなくても、先行技術の独立した発明性のあるさらなる発展を特徴とする。各請求項で特定された発明は、前述の説明で特定された、特に参照符号が付与された、及び/又は符号の説明で特定された、1つ以上の機能を追加で有することができる。本発明はまた、特に、それらがそれぞれの使用目的に明らかに不要であるか、または技術的に同じ効果を有する他の手段で置き換えることができる限り、前述の説明で述べた特徴の個々のものが実装されない実施形態に関する。
【符号の説明】
【0041】
1 CVDリアクタハウジング
2 プロセスチャンバ
3 サセプタアセンブリ
4 プロセスチャンバカバー
5 ガス入口
6 加熱装置
7 温度制御ユニット
8 ガス出口
9 回転駆動部
10 基板
10’ 基板周縁
11 凹部
12 基板ホルダー
13 支持フランク
14 担持体
15 カバープレート上面
16 面取り
17 ポケット
18 内壁
19 周壁
20 担持要素
21 径方向外方領域
22 径方向内方領域 内壁
23 支持面
24 内壁
25 丸めコーナー
25’ 面取り
26 上面
27 カバープレート
28 堆積
29 丸めエッジ
30 外側面
31 チャネル
32 突出片
a 高さ
b 距離
c 距離
d 材料厚さ
e 距離
R 半径
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9