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特許7307290組成物、組成物を生産するための方法、反応装置、重合体を生産するための方法
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  • 特許-組成物、組成物を生産するための方法、反応装置、重合体を生産するための方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-03
(45)【発行日】2023-07-11
(54)【発明の名称】組成物、組成物を生産するための方法、反応装置、重合体を生産するための方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 61/00 20060101AFI20230704BHJP
   C08F 2/00 20060101ALI20230704BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20230704BHJP
【FI】
C08L61/00
C08F2/00 G
C08F2/44 B
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2023011004
(22)【出願日】2023-01-27
【審査請求日】2023-01-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山中 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】土屋 嘉克
(72)【発明者】
【氏名】薄 雅浩
【審査官】北田 祐介
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-013613(JP,A)
【文献】国際公開第2009/093502(WO,A1)
【文献】特開2005-082641(JP,A)
【文献】特開2005-097601(JP,A)
【文献】国際公開第2005/087815(WO,A1)
【文献】特開2023-015772(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00-2/60
C08G 8/00-10/06
C08L 61/00-61/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒中に複数の粒子が分散した組成物であって、
組成物は、
前記溶媒と
芳香族化合物及びカルボニル化合物の付加縮合物ある第1化合物及び/又は前記第1化合物の塩と、
有機概念図法を用いて導出されるHLB値が15以上50以下の化合物であって、前記第1化合物及び前記第1化合物の塩とは異なる化合物である第2化合物と、
を含み、
前記第1化合物は、前記芳香族化合物及び前記カルボニル化合物の組み合わせが同一である1以上の種類の付加縮合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物であり、
前記組成物における溶媒の含有率は、95質量%以下であり
前記芳香族化合物は、ナフトール類であり、
前記カルボニル化合物は、アルデヒド化合物であり、
前記第2化合物は、(i)スルホン酸基若しくは硫酸エステル基を有するアニオン性界面活性剤、又は、(ii)ピロリドン類であり、
前記複数の粒子は、
(a)前記第1化合物及び/又は前記第1化合物の塩を含み、
(b)(i)25℃においてキュムラント法により測定される平均粒子径が10nm未満である、又は、(ii)25℃においてキュムラント法により測定される平均粒子径が10nm以上であり、且つ、25℃において動的光散乱法により測定される散乱強度から導出される個数基準の粒度分布における0.6nm以上10nm未満の粒子数の割合が90%以上である、若しくは、個数基準の粒度分布における累積90%粒子径が10nm未満である、
組成物。
【請求項2】
前記複数の粒子における前記第1化合物の含有量と、前記複数の粒子における前記第1化合物の塩の含有量との合計は、10~100質量%である、
請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記複数の粒子の少なくとも一部は、前記芳香族化合物及び前記カルボニル化合物の付加縮合物の異性体の混合物を含む、
請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記複数の粒子は、
前記芳香族化合物及び前記カルボニル化合物の鎖状縮合物の粒子と、
前記芳香族化合物及び前記カルボニル化合物の環状縮合物の粒子と、
を含む、
請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記第1化合物は、
前記芳香族化合物及び前記カルボニル化合物の鎖状縮合物と、
前記芳香族化合物及び前記カルボニル化合物の環状縮合物と、
を含む、
請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記付加縮合物は、前記芳香族化合物に由来する2個以上の構成単位のそれぞれが、前記カルボニル化合物に由来する1個の構成単位を介して結合している芳香族化合物多量体である、
請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記付加縮合物は、触媒及び界面活性剤の存在下で、前記芳香族化合物及び前記カルボニル化合物を反応させて得られ、
前記組成物は、前記芳香族化合物に対して0.01当量以上の前記第2化合物を含む、
請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記芳香族化合物は、下記の一般式(1)で表される化合物であり、
【化1】
前記カルボニル化合物は、下記の一般式(2)で表されるアルデヒド化合物であり、
-CHO (2)
一般式(1)及び一般式(2)において、R1、R2、R3は、それぞれ水素原子又は炭化水素基である、
請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記芳香族化合物は、α-ナフトールであり、
前記カルボニル化合物は、ホルムアルデヒドである、
請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
溶媒中に複数の粒子が分散した組成物を生産するための方法であって、
前記複数の粒子は、
(a)芳香族化合物及びカルボニル化合物の付加縮合物である第1化合物及び/又は前記第1化合物の塩を含み、
(b)(i)25℃においてキュムラント法により測定される平均粒子径が10nm未満である、又は、(ii)25℃においてキュムラント法により測定される平均粒子径が10nm以上であり、且つ、25℃において動的光散乱法により測定される散乱強度から導出される個数基準の粒度分布における0.6nm以上10nm未満の粒子数の割合が90%以上である、若しくは、個数基準の粒度分布における累積90%粒子径が10nm未満であり、
前記第1化合物は、前記芳香族化合物及び前記カルボニル化合物の組み合わせが同一である1以上の種類の付加縮合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物であり、
前記方法は、
前記溶媒、前記芳香族化合物及び前記カルボニル化合物の混合物を準備する段階と、
前記溶媒中において、触媒及び第2化合物の存在下で、前記芳香族化合物及び前記カルボニル化合物を反応させて、前記複数の粒子を得る段階と、
を有し、
前記第2化合物は、有機概念図法を用いて導出されるHLB値が15以上50以下の化合物であって、前記第1化合物及び前記第1化合物の塩とは異なる化合物であり、
前記溶媒中における前記第2化合物の含有量は、前記芳香族化合物に対して0.01当量以上であり、
前記芳香族化合物は、ナフトール類であり、
前記カルボニル化合物は、アルデヒド化合物であり、
前記第2化合物は、(i)スルホン酸基若しくは硫酸エステル基を有するアニオン性界面活性剤、又は、(ii)ピロリドン類である、
組成物を生産するための方法。
【請求項11】
前記芳香族化合物は、α-ナフトールであり、
前記カルボニル化合物は、ホルムアルデヒドであり、
前記触媒は、アルカリ金属水酸化物である、
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
単量体を重合させるための反応装置であって、
前記単量体を含む溶液を貯留可能に構成される反応器を備え、
前記反応器は、前記溶液と接触する側の面である内壁面の少なくとも一部に、請求項1から請求項までの何れか一項に記載の組成物に由来する付加縮合物を含む縮合物層を有する、
反応装置。
【請求項13】
前記反応器の外部に取り付けられ、前記単量体の重合反応中に前記反応器に貯留された前記溶液から蒸発する前記単量体の一部を凝縮させるための凝縮部をさらに備える、
請求項12に記載の反応装置。
【請求項14】
前記単量体は、エチレン性不飽和基含有単量体である、
請求項12に記載の反応装置。
【請求項15】
請求項12に記載の反応装置を準備する段階と、
前記反応装置の前記反応器の内部に、前記単量体を含む前記溶液を仕込む段階と、
前記反応器の内部における前記単量体の重合反応を開始する段階と、
前記反応器の内部における前記単量体の重合反応を終了する段階と、
を有する、重合体を生産するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物、組成物を生産するための方法、反応装置、重合体を生産するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、アルデヒド化合物ヒドロキシナフタリン系化合物とを溶媒の存在下で縮合反応させて得られた縮合反応生成物を、重合容器の内部に重合体スケールが付着することを防止するためのスケール防止剤として利用することが開示されている。特許文献2には、芳香族化合物とカルボニル化合物との付加縮合物を、上記のスケール防止剤として利用することが開示されている。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1]特許第5445142号公報
[特許文献2]特許第6916400号公報
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明の第1の態様においては、組成物が提供される。上記の組成物は、例えば、溶媒中に複数の粒子が分散した組成物である。上記の組成物は、例えば、溶媒を含む。上記の組成物は、例えば、界面活性剤を含む。上記の組成物は、例えば、芳香族化合物及びカルボニル化合物の付加縮合物ある第1化合物及び/又は前記第1化合物の塩を含む。上記の組成物において、第1化合物は、例えば、芳香族化合物及びカルボニル化合物の組み合わせが同一である1以上の種類の付加縮合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物である。上記の組成物における溶媒の含有率は、例えば、95質量%以下である。上記の組成物において、界面活性剤は、例えば、第2化合物を含む。第2化合物は、例えば、有機概念図法を用いて導出されるHLB値が15以上50以下の化合物である。第2化合物は、例えば、第1化合物及び/又は前記第1化合物の塩とは異なる化合物である。上記の組成物において、複数の粒子は、例えば、(i)25℃においてキュムラント法により測定される平均粒子径が19nm未満である、及び/又は、(ii)25℃において動的光散乱法により測定される散乱強度から導出される個数基準の粒度分布における0.6nm以上10nm未満の粒子数の割合が90%以上である、若しくは、個数基準の粒度分布における累積90%粒子径が10nm未満である。
【0004】
上記の組成物の何れかにおいて、複数の粒子における第1化合物の含有量と、複数の粒子における第1化合物の塩の含有量との合計は、10~100質量%であってよい。上記の組成物の何れかにおいて、複数の粒子の少なくとも一部は、芳香族化合物及びカルボニル化合物の付加縮合物の異性体の混合物を含んでよい。上記の組成物の何れかにおいて、複数の粒子は、芳香族化合物及びカルボニル化合物の鎖状縮合物の粒子と、芳香族化合物及びカルボニル化合物の環状縮合物の粒子とを含んでよい。
【0005】
上記の組成物の何れかにおいて、第1化合物は、芳香族化合物及びカルボニル化合物の鎖状縮合物と、芳香族化合物及びカルボニル化合物の環状縮合物とを含んでよい。上記の組成物の何れかにおいて、付加縮合物は、芳香族化合物に由来する2個以上の構成単位のそれぞれが、カルボニル化合物に由来する1個の構成単位を介して結合している芳香族化合物多量体であってよい。上記の組成物の何れかにおいて、付加縮合物は、触媒及び界面活性剤の存在下で、芳香族化合物及びカルボニル化合物を反応させて得られる化合物であってよい。上記の組成物において、界面活性剤は、芳香族化合物に対して0.01当量以上の第2化合物を含んでよい。
【0006】
上記の組成物の何れかにおいて、芳香族化合物は、ナフトール類であってよい。上記の組成物の何れかにおいて、カルボニル化合物は、アルデヒド化合物又はケトン化合物であってよい。
【0007】
上記の組成物の何れかにおいて、芳香族化合物は、下記の一般式(1)で表される化合物であってよい。上記の組成物の何れかにおいて、カルボニル化合物は、下記の一般式(2)で表されるアルデヒド化合物であってよい。一般式(1)及び一般式(2)において、R1、R2、R3は、それぞれ水素原子又は炭化水素基であってよい。
(一般式1)
【化1】
(一般式2)
-CHO (2)
【0008】
上記の組成物の何れかにおいて、芳香族化合物は、α-ナフトールであってよい。上記の組成物の何れかにおいて、カルボニル化合物は、ホルムアルデヒドであってよい。
【0009】
上記の組成物の何れかにおいて、界面活性剤は、アニオン性界面活性剤であってよい。上記の組成物の何れかにおいて、第2化合物は、HLB値が15以上50以下のピロリドン類又はその誘導体であってよい。
【0010】
本発明の第2の態様においては、組成物を生産するための方法が提供される。上記の方法において、組成物は、例えば、溶媒中に複数の粒子が分散した組成物である。上記の方法において、複数の粒子は、例えば、芳香族化合物及びカルボニル化合物の付加縮合物の一種である第1化合物及び/又は第1化合物の塩を含む。複数の粒子は、例えば、(i)25℃においてキュムラント法により測定される平均粒子径が19nm未満である、及び/又は、(ii)25℃において動的光散乱法により測定される散乱強度から導出される個数基準の粒度分布における0.6nm以上10nm未満の粒子数の割合が90%以上である、若しくは、個数基準の粒度分布における累積90%粒子径が10nm未満である。
【0011】
上記の方法は、例えば、溶媒、芳香族化合物及びカルボニル化合物の混合物を準備する段階を有する。上記の方法は、例えば、溶媒中において、触媒及び界面活性剤の存在下で、芳香族化合物及びカルボニル化合物を反応させて、付加縮合物を主成分とする複数の粒子を得る段階を有する。
【0012】
上記の方法において、界面活性剤は、例えば、第2化合物を含む。界面活性剤は、例えば、芳香族化合物に対して0.01当量以上の第2化合物を含む。第2化合物は、例えば、有機概念図法を用いて導出されるHLB値が15以上50以下の化合物である。第2化合物は、例えば、第1化合物及び第1化合物の塩とは異なる化合物である。
【0013】
上記の方法の何れかにおいて、芳香族化合物は、α-ナフトールであってよい。上記の方法の何れかにおいて、カルボニル化合物は、ホルムアルデヒドであってよい。上記の方法の何れかにおいて、触媒は、アルカリ金属水酸化物であってよい。上記の方法の何れかにおいて、界面活性剤は、アニオン性界面活性剤であってよい。
【0014】
本発明の第3の態様においては、反応装置が提供される。上記の反応装置は、例えば、単量体を重合させるための装置であってよい。上記の反応装置は、例えば、単量体を含む溶液を貯留可能に構成される反応器を備える。上記の反応装置において、反応器は、例えば、溶液と接触する側の面である内壁面の少なくとも一部に、上記の第1の態様に係る組成物の何れかに由来する付加縮合物を含む縮合物層を有する。
【0015】
上記の反応装置は、凝縮部を備えてよい。上記の反応装置において、凝縮部は、反応器の外部に取り付けられてよい。凝縮部は、単量体の重合反応中に反応器に貯留された溶液から蒸発する単量体の一部を凝縮させるために用いられてよい。上記の反応装置において、単量体は、エチレン性不飽和基含有単量体であってよい。
【0016】
本発明の第4の態様においては、重合体を生産するための方法が提供される。上記の方法は、例えば、上記の第3の態様に係る何れかの反応装置を準備する段階を有する。上記の方法は、例えば、上記の第3の態様に係る何れかの反応装置の反応器の内部に、単量体を含む溶液を仕込む段階を有する。上記の方法は、例えば、反応器の内部における単量体の重合反応を開始する段階を有する。上記の方法は、例えば、反応器の内部における単量体の重合反応を終了する段階を有する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】重合装置100の一例を概略的に示す。
図2】組成物の製造方法の一例を概略的に示す。
図3】重合体の製造方法の一例を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。本明細書において、数値範囲が「A~B」と表記される場合、当該表記はA以上B以下を意味する。
【0019】
(重合装置100の概要)
図1を用いて、重合装置100の一例が説明される。重合装置100は、例えば、単量体を重合させて重合体を生産する用途に用いられる。重合装置100は、懸濁重合の用途に用いられてもよい。上記の単量体は、エチレン性不飽和基含有単量体であってよい。
【0020】
上記のエチレン性不飽和基含有単量体としては、塩化ビニル等のハロゲン化ビニル;塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;アクリル酸、メタクリル酸及びこれらのエステル又は塩;マレイン酸、フマル酸及びこれらのエステル又は酸無水物;ブタジエン、クロロプレン、イソプレン等の共役ジエン系単量体;スチレン;アクリロニトリル;ビニルエーテルなどが例示される。上記のエチレン性不飽和基含有単量体は、ビニル系単量体であってよい。上記のビニル系単量体は、塩化ビニルであってよい。重合装置100を用いて重合体を生産する方法の詳細は後述される。
【0021】
特許文献1~2に記載されているように、反応容器の内部で単量体を重合させて重合体を生産する場合、当該重合体の一部が当該反応容器の内部に重合体スケールとして付着し得る。例えば、重合バッチ数の増加に伴って重合体スケールの付着の度合いが大きくなると、重合体の収率、反応容器の冷却能力などが低下する。また、反応容器に付着していた重合体スケールが、重合体の製造中に当該反応容器から剥離すると、製品として得られた重合体の品質が低下し得る。
【0022】
反応容器に重合体スケールが付着している場合、当該重合体スケールを除去するための作業が実施される。反応容器に付着した重合体スケールの除去する場合、重合体スケール中に含まれる未反応の単量体から作業者を保護しながら、各種の作業が実施される。そのため、重合体スケールの除去には多くの労力及び時間が必要となる。そこで、除去作業に要する労力及び時間を軽減させることを目的として、各種のスケール付着防止剤が開発されている。
【0023】
しかしながら、本発明者らは、特許文献1~2に記載のスケール付着防止剤の製造過程において、例えば、反応系中の触媒量又は有機溶媒量によっては、芳香族化合物及びカルボニル化合物の縮合物が凝集し、当該縮合物が凝集した状態で縮合反応(局所的高濃度反応と称される場合がある。)が進行することにより、反応生成物が塊化する場合のあることを見出した。重合装置の内部をスケール付着防止剤によりコーティングする場合、スケール付着防止剤は、縮合反応生成物の均一な溶液として得られることが好ましい。
【0024】
さらに、本発明者らは、特許文献1に記載のスケール付着防止剤を用いて重合体を製造する場合に、重合バッチ数がある程度増加すると、反応容器の総括伝熱係数が著しく低下したり、重合体製品にフィッシュアイが発生したりする場合のあることを見出した。反応容器の内壁面に吸着したスケール付着防止剤と、重合助剤及び未反応カルボニル化合物とが原因となり、重合バッチを重ねる毎に当該内壁面に重合体スケールが堆積した結果、反応容器の総括伝熱係数が低下したと推定される。また、重合バッチ数が増加するにつれて、反応容器の内壁面に形成されたスケール付着防止剤の塗膜の表面に存在する凹凸箇所に重合体スケールが付着し、当該重合体スケールが成長する。重合体スケールの成長の度合いが大きくなると、当該重合体スケールが反応容器の内壁面から剥離し、重合反応により得られた重合体の本体に混入する。その結果、重合体製品にフィッシュアイが発生したと推定される。
【0025】
具体的には、重合バッチ数が約1000バッチ程度になると、反応容器の内壁面に付着したスケールの厚さが50μmとなり、このときの総括伝熱係数は、スケールが付着していないときの総括伝熱係数の15%程度にまで減少する。重合バッチ数が約1000バッチ以上になると、上述されたスケール付着防止剤の塗膜の凹凸箇所における重合体スケールの付着及び成長が観察される。
【0026】
特に、特許文献1~2に記載のスケール付着防止剤を用いて調製された塗布剤を、洗瓶を用いて、塗り残しがないように、反応容器の直胴部の内壁面にかけ流すことで、当該内壁面に当該スケール付着防止剤を塗布する場合、当該内壁面への塗膜付着量が比較的多くなる。この場合、塗布液の塗布と、単量体の重合とが繰り返されることによって、反応容器の内壁面に、塗膜及び重合体スケールの蓄積物が形成される。上述されたとおり、上記の蓄積物は、比較的大きな厚さを有し、反応容器の総括伝熱係数の低下、及び/又は、重合体製品のフィッシュアイの原因となり得る。
【0027】
また、上述のとおり、特許文献1~2に記載のスケール付着防止剤を縮合反応生成物の均一な溶液として得ることが難しい。そのため、上記のスケール付着防止剤を用いて調製された塗工液を、スプレー塗布などの手法を用いて反応容器の内壁面に塗布(塗工と称される場合がある。)する場合、塗工液中の塊又は凝集物によるノズルのつまり、塗工液の分散不良による塗布ムラなどが発生し得る。
【0028】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、溶媒と、芳香族化合物及びカルボニル化合物の縮合物と、界面活性剤とを含む組成物を調製することで、当該縮合物の凝集及び/又は塊化が抑制され、当該縮合物の均一な溶液が得られることを見出した。上記の組成物中において、上記の縮合物は複数の粒子からなる粒子群として存在しており、本発明者らは、当該縮合物の粒子群の平均粒子径及び/又は粒度分布が特定の条件を満足する場合に、当該縮合物の凝集及び/又は塊化が、特に抑制されることを見出した。
【0029】
また、本発明者らは、上記の組成物を、反応容器の内部に塗布することで、従来のスケール付着防止剤と比較して小さな厚さを有する塗膜が形成されることを見出した。上記の反応容器としては、単量体を重合させて重合体を生産するための反応容器が例示される。単量体としては、エチレン性二重結合を有する単量体が例示される。
【0030】
さらに、本発明者らは、上記の塗膜により、反応容器の内部における重合体スケールの付着が十分に抑制されることを見出した。これにより、反応容器の総括伝熱係数の低下が抑制される。また、塗膜及び重合体スケールの蓄積物の形成が抑制される。
【0031】
なお、本明細書において、「塊化」とは、(i)大きな凝集物、(ii)反応容器内の液体の攪拌を不安定にさせるほどの凝集物、(iii)反応容器内の液体の攪拌によっても再分散せず、反応容器からの回収時に液体から分離されても凝集状態を維持している凝集物などが生成されることを意味する。一方、単に「凝集」が生じた場合であっても、凝集物の大きさが十分に小さい場合には、反応容器内の液体の攪拌は不安定化せず、反応が進行するにつれて、当該凝集物が液体中に溶解又は分散する。
【0032】
例えば、組成物が界面活性剤を含む場合、重合反応の進行中に「塊化」の発生が抑制される。また、組成物が界面活性剤を含む場合、重合反応の進行中に一時的に「凝集」が生じる場合もあるが、反応の進行に伴って凝集物が溶解又は分散し、反応生成物の粒子が略均一に分散した液体が得られる。
【0033】
(重合装置100の各部の概要)
図1は、重合装置100の断面図の一例を概略的に示す。本実施形態において、重合装置100は、反応容器110と、攪拌機120と、1又は複数の(単に、1以上と称される場合がある。)バッフル130と、1以上の冷却管140と、ジャケット170と、還流コンデンサ180とを備える。
【0034】
本実施形態において、反応容器110は、本体112と、本体112の内面114の少なくとも一部に形成されるスケール防止層116とを有する。本実施形態において、攪拌機120は、攪拌軸122と、攪拌翼124と、動力機構126とを有する。本実施形態において、バッフル130は、本体132と、1以上のサポート134とを有する。本実施形態において、ジャケット170は、熱媒体の流路172を有する。本実施形態において、還流コンデンサ180は、熱媒体の流路182を有する。
【0035】
本実施形態において、攪拌軸122及び攪拌翼124は、反応容器110の内部に配される。本実施形態において、1以上のバッフル130のそれぞれは、反応容器110の内部に配される。本実施形態において、1以上の冷却管140のそれぞれは、反応容器110の内部に配される。
【0036】
本実施形態において、動力機構126は、反応容器110の外部に配される。本実施形態において、ジャケット170は、反応容器110の外部に配される。本実施形態において、還流コンデンサ180は、反応容器110の外部に配される。
【0037】
本実施形態において、反応容器110は、合成反応(例えば、重合反応である。)の原料を貯留可能に構成される。合成反応としては、単量体を重合させて重合体を生産するための重合反応が例示される。重合装置100が重合体の製造に用いられる場合、反応容器110は、単量体を含む溶液を貯留する。
【0038】
重合装置100が重合体の製造に用いられる場合、まず、反応容器110の内部に、例えば、重合性の単量体、重合開始剤、水性媒体及び分散助剤を含む溶液が仕込まれる。次に、重合が開始される。その後、重合が停止される。これにより、重合体が生産される。分散助剤としては、任意の界面活性剤が使用され得る。
【0039】
本実施形態において、反応容器110の本体112は、例えば、筒状の形状を有する直胴部と、直胴部に接続された底板とを備える。本体112は、直胴部に接続された天板をさらに備えてもよい。底板及び天板は、鏡板と称される場合がある。本実施形態においては、直胴部の一方の端部に天板が接続され、直胴部の他方の端部に底板が接続される。反応容器110は、例えば、直胴部の延伸方向(図中、z方向である。)が鉛直方向となるように設置される。このとき、天板は、底板よりも上方に配置される。
【0040】
直胴部を、直胴部の延伸方向に垂直な面(図中、xy平面である。)で切断した断面(横断面と称される場合がある。)の形状としては、円形、楕円形、多角形などが例示される。なお、反応容器110の横断面の形状は、実質的に、円形、楕円形、多角形とみなすことのできる形状であってもよい。多角形としては、四角形、6角形、8角形などが例示される。
【0041】
本体112の内容量(反応容器110の容量と称される場合がある。)は特に限定されるものではないが、本体112の内容量は、0.01m以上であってよく、再現性の観点から0.01~600mであることが好ましい。
【0042】
本体112の内容量は、例えば、1~300mである。本体112の内容量の下限値は、40mであってもよく、80mであってもよく、100mであってもよく、120mであってもよく、130mであってもよく、150mであってもよく、200mであってもよく、250mであってもよい。本体112の内容量の上限値は、300m以上であってもよい。本体112の内容量の上限値は、350mであってもよく、400mであってもよい。
【0043】
本体112の内容量は、本体112が、本体112の予め定められた上限位置まで液体を貯留した場合における容量として定められる。本体112の内容量は、例えば、本体112の内部に撹拌軸、翼、バッフル、コイル等の内部構造物が配されていない場合における、本体112の内部の体積である。
【0044】
上述されたとおり、本実施形態において、本体112の内面114の少なくとも一部には、スケール防止層116が形成される。内面114は、反応容器110の内部に液体が貯留される場合に当該液体と接触する側の面である。スケール防止層116は、例えば、本体112の内面114のうち、少なくとも、重合装置100が重合体の製造に用いられる場合に液相に没する領域に形成される。
【0045】
本実施形態において、スケール防止層116は、溶媒と、芳香族化合物及びカルボニル化合物の縮合物と、界面活性剤とを含む組成物を用いて形成される。例えば、上記の組成物を用いて調製された塗布液が、本体112の内面114の少なくとも一部に塗布されることで、スケール防止層116が形成される。スケール防止層116は、上記の組成物に由来する縮合物を含む。上記の縮合物は、付加縮合物であってよい。
【0046】
一実施形態において、スケール防止層116は、芳香族化合物及びカルボニル化合物の縮合物を主成分とする粒子を含み得る。他の実施形態において、スケール防止層116は、芳香族化合物及びカルボニル化合物の縮合物の膜を含み得る。
【0047】
しかしながら、スケール防止層116における縮合物の状態を調べることは実際的ではない。例えば、(i)組成物中において粒子として存在していた縮合物が、スケール防止層116においても粒子として存在しているか否かを決定することが実際的ではない場合がある。また、スケール防止層116において上記の縮合物が粒子として存在している場合であっても、スケール防止層116に含まれる縮合物の平均粒子径及び/又は粒度分布を特定することは実際的ではない。
【0048】
つまり、スケール防止層116に含まれる縮合物の平均粒子径及び/又は粒度分布を特定するためには、適切な溶剤を用いてスケール防止層116の塗膜を取得し、適切な手法により当該塗膜を分析する必要がある。しかしながら、例えば、塗膜を取得する過程において、塗膜に含まれる縮合物の一部が溶剤に溶解したり、大気中の酸素により酸化したりすることにより、当該縮合物の形態(例えば、粒子径である。)が変化し得る。
【0049】
上記の組成物の詳細は後述される。また、スケール防止層116の形成手順の詳細は後述される。
【0050】
本実施形態において、攪拌機120は、反応容器110の内部に貯留された液体を攪拌する。本実施形態において、攪拌軸122は、攪拌翼124を保持し、攪拌翼124を回転させる。本実施形態において、攪拌翼124は、攪拌軸122に取り付けられ、反応容器110の内部に貯留された液体を攪拌する。
【0051】
攪拌翼124の形状は特に限定されるものではないが、攪拌翼124の形状としては、ファウドラー翼、ブルーマージン翼、パドル翼、傾斜パドル翼、タービン翼、プロペラ翼、及び、これらの組み合わせが例示される。これにより、攪拌軸122が回転することにより、攪拌軸122から放射状に外周へ向う吐出流が発生する。攪拌翼124が有する翼の枚数は特に限定されるものではないが、上記の翼の枚数としては、2~6枚が例示される。攪拌翼124の設置位置及び設置数量は特に限定されるものではないが、攪拌翼124は、多段に設置されることが好ましい。攪拌翼124の段数としては、2~6段が例示される。
【0052】
本実施形態において、動力機構126は、攪拌軸122を回転させる。動力機構126は、例えば、動力を発生させる動力部(図示されていない。)と、動力部が発生させた動力を攪拌軸122に伝達する動力伝達部(図示されていない。)動力部としては、電動機が例示される。動力伝達部としては、減速機が例示される。
【0053】
攪拌軸122の回転数、並びに、攪拌翼124の形状、大きさ、翼の枚数、設置位置、設置数量及び設置間隔Piは、重合装置100の用途に応じて、適宜決定される。攪拌軸122の回転数、並びに、攪拌翼124の形状、大きさ、翼の枚数、設置位置、設置数量及び設置間隔は、例えば、反応容器110の内容量、反応容器110の形状、反応容器110の内部に配された内部構造物、除熱手段の構成、除熱能力、及び、重合のために仕込まれる原材料の組成を考慮して決定される。
【0054】
例えば、重合装置100が懸濁重合の用途に用いられる場合、内容物(例えば、水性懸濁混合物である。)に加えられる撹拌エネルギーが、80~200kgf・m/s・m3となるように、攪拌軸122の回転数が決定される。ここで、内容物に加えられる「撹拌エネルギー」は、重合装置100の運転中に、動力機構126に配された撹拌機用駆動モーターに負荷されるエネルギーAから、モーター効率及び伝導ロス、メカニカルロス等の各種のエネルギーロスBを差し引いた、内容物の単位量(単位内容量と称される場合がある。)当りの撹拌に要する正味のエネルギーとして定められる。上記の単位量としては、単位質量、単位体積などが例示される。
【0055】
本実施形態において、バッフル130は、重合装置100の混合性能を向上させる。例えば、バッフル130は、反応容器110の内部における上下方向の混合性能を向上させる。バッフル130の設置位置は特に限定されるものではないが、例えば、バッフル130は、反応容器110の内壁の近傍に配される。バッフル130は、反応容器110の側壁により支持されてよい。他の実施形態において、バッフル130は、反応容器110の天板又は底板により支持され、攪拌翼124の近傍に配される。バッフル130は、重合装置100が重合体の製造に用いられる場合に、バッフル130の上端が液相に没するように配されてもよく、バッフル130の上端が液相に没しないように配されてもよい。
【0056】
バッフル130の個数は、1~12本程度であることが好ましく、2~8本程度であることが好ましく、3~6本程度であることがより好ましく、4~6本程度であることがさらに好ましい。偶数個のバッフル130が、反応容器110の延伸軸(中心軸と称される場合がある。)の周りに略対称的に配置されることが好ましい。これにより、重合装置100の混合性能がさらに向上し、液体の滞留が抑制される。その結果、スケールの発生が抑制され得る。
【0057】
本実施形態において、バッフル130の本体132は、重合装置100の混合性能を向上させる。本体132の形状は特に限定されるものではないが、本体132は、例えば、反応容器110の延伸方向に略平行に延伸する板状又は筒状の形状を有する。本体132が円筒状の形状を有する場合、本体132の直径は、40~500mmであってよい。
【0058】
本体132の延伸方向(図中、z方向である。)の長さ(本体132の高さと称される場合がある。)は、特に限定されない。本体132の延伸方向に略垂直な方向(図中、x又はy方向である。)の長さ(本体132の幅と称される場合がある。)は、特に限定されない。反応容器110の内径に対する、本体132の幅の割合は、1~10%であってよく、2.5~7.5%であってよく、3~7%であってよい。
【0059】
本体132が筒状の形状を有する場合、反応容器110の直胴部の横断面の面積に対する、それぞれが筒状の形状を有する1以上の本体132の横断面の面積の合計値の割合は、0.4~3%であってよい。上記の割合が0.4%未満である場合、邪魔板としての機能が不足し、反応容器110の内部における上下方向の混合が不十分になる可能性がある。例えば、重合装置100が単一のバッフル130を備える場合、上記の割合が0.4%未満になり得る。例えば、塩化ビニル系単量体の懸濁重合において、反応容器110の内部における上下方向の混合が不十分となった場合、生産された重合体の粒度分布がブロードとなり得る。その結果、生産された重合体をシート状に成形した場合に、例えば、フィッシュアイが増加して、成形製品の品質が低下する可能性がある。
【0060】
一方、上記の割合が3%を超えた場合、攪拌機120の所要動力が過度に増加する。また、バッフル130と、反応容器110の内面114との間における液体の流動性が低下し得る。その結果、反応容器110又は反応容器110の内部の構造物にスケールが付着しやすくなる可能性がある。例えば、重合装置100が8本を超えるバッフル130を備える場合、重合装置100の設計によっては上記の割合が3%を超え得る。
【0061】
少なくとも1つのバッフル130の本体132は、熱媒体を流通させるための流路を有してよい。上記の流路は、本体132の内部に形成されてもよく、本体132の外部に配されてもよい。上記の流路は、一重管であってもよく、二重管構造を有してもよい。
【0062】
熱媒体は、公知の冷媒であってよい。冷媒としては、水、ブライン、フレオン、その他の液化ガスなどが例示される。冷媒として液化ガスが用いられる場合、当該液化ガスは、冷却管140の内部で蒸発することで、冷媒として機能してよい。冷媒の線速は、0.1~6.0m/s程度であってよい。
【0063】
本体132は、例えば、サポート134を介して、反応容器110に接続される。本体132と、重合装置100の内壁面との距離は、40mm以上であることが好ましい。上記の距離が40mm未満の場合、反応容器110の内部の気液界面付近において、反応容器110の内面114と、バッフル130との間に重合体のスケールが付着しやすくなる場合がある。
【0064】
本実施形態において、サポート134は、本体132を保持する。例えば、サポート134の一端は、反応容器110の内面114に接し、サポート134の他端は、本体132に接する。上述されたとおり、サポート134は、本体132と、反応容器110の内面114との距離が40mm以上となるように、本体132を保持してよい。
【0065】
本実施形態において、冷却管140は、その内部に、熱媒体を流通させるための流路を有する。熱媒体は、公知の冷媒であってよい。冷媒としては、水、ブライン、フレオン、その他の液化ガスなどが例示される。冷媒として液化ガスが用いられる場合、当該液化ガスは、冷却管140の内部で蒸発することで、冷媒として機能してよい。冷媒の線速は、0.1~6.0m/s程度であってよい。
【0066】
冷却管140の形状及び配置は、特に限定されない。冷却管140としては、複数のリング状の配管が連通した構造を有するリング配管、螺旋状に延伸する螺旋配管、蛇行しながら延伸する蛇行配管などが例示される。
【0067】
本実施形態において、ジャケット170は、反応容器110の外部から、反応容器110を加熱したり、冷却したりする。上述されたとおり、ジャケット170は、熱媒体が流通可能に構成された流路172を有する。ジャケット170は、流路172を流れる熱媒体の温度及び流量の少なくとも一方を制御することで、反応容器110の加熱量及び除熱量を調整する。
【0068】
熱媒体は、公知の冷媒であってよい。冷媒としては、水、ブライン、フレオン、各種の液化ガスなどが例示される。冷媒として、液状の冷媒が用いられることが好ましい。冷媒として液化ガスが用いられる場合、当該液化ガスは、冷却管140の内部で蒸発することで、冷媒として機能してよい。冷媒の線速は、0.1~6.0m/s程度であってよい。
【0069】
本実施形態において、還流コンデンサ180は、反応容器110の除熱に用いられる。還流コンデンサ180は、反応容器110の外部に取り付けられる。還流コンデンサ180は、単量体の重合反応中に反応容器110に貯留された溶液から蒸発する単量体の一部を凝縮させる。
【0070】
例えば、還流コンデンサ180には、反応容器110からの蒸気が供給される。還流コンデンサ180は、上記の蒸気を冷却して液化する。還流コンデンサ180は、上記の冷却により生じた液体を反応容器110に返送する。上述されたとおり、還流コンデンサ180は、熱媒体が流通可能に構成された流路182を有する。還流コンデンサ180は、流路182を流通する熱媒体と、反応容器110からの蒸気との間の熱交換により、反応容器110からの蒸気を冷却する。流路182を流れる熱媒体の温度及び流量の少なくとも一方を制御することで、反応容器110の除熱量が調整され得る。
【0071】
(スケール防止層116の形成に用いられる組成物)
本実施形態において、上記の組成物は、例えば、溶媒中に複数の粒子(粒子群と称される場合がある。)が分散した組成物である。上記の組成物は、(i)溶媒及び粒子群を含む溶液であってもよく、(ii)溶媒及び粒子群を含むゲルであってもよい。
【0072】
上記の組成物は、例えば、(i)溶媒と、(ii)界面活性剤と、(iii)芳香族化合物及びカルボニル化合物の付加縮合物及び/又は当該付加縮合物の塩とを含む。上記の組成物は、(i)溶媒と、(ii)界面活性剤と、(iii)芳香族化合物及びカルボニル化合物の付加縮合物の一種である特定の付加縮合物及び/又は当該特定の付加縮合物の塩とを含んでもよい。この場合において、界面活性剤は、芳香族化合物及びカルボニル化合物の付加縮合物であって、上記の特定の付加縮合物以外の付加縮合物(第3化合物と称される場合がある。)を含んでもよい。本願明細書において、上記の特定の付加縮合物が、単に付加縮合物と称される場合がある。
【0073】
上記の特定の付加縮合物は、例えば、芳香族化合物及びカルボニル化合物の組み合わせが同一である1以上の種類の付加縮合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物である。1以上の種類の付加縮合物としては、(i)芳香族化合物及びカルボニル化合物の組成比率が異なる付加縮合物、(ii)芳香族化合物及びカルボニル化合物の付加縮合物の異性体などが例示される。上記の異性体としては、鎖状縮合物、環状縮合物などが例示される。
【0074】
上記の特定の付加縮合物は、ナフトール類及びカルボニル化合物の付加縮合物であってもよい。上記の特定の付加縮合物は、α-ナフトール及びカルボニル化合物の付加縮合物であってもよい。上記の特定の付加縮合物は、芳香族化合物(2ーナフタレンスルホン酸を含む化合物を除く。)と、カルボニル化合物の付加縮合物であってもよい。上記の特定の付加縮合物は、芳香族化合物及びカルボニル化合物の付加縮合物であって、2-ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物とは異なる付加縮合物であってもよい。2-ナフタレンスルホン酸は、β-ナフタレンスルホン酸と称される場合がある。これらの特定の付加縮合物において、カルボニル化合物は、アルデヒド化合物であってよい。
【0075】
上記の特定の付加縮合物は、芳香族化合物及びカルボニル化合物の付加縮合物であって、粒子群中に10質量%以上含まれる付加縮合物であってもよい。上記の特定の付加縮合物は、芳香族化合物及びカルボニル化合物の付加縮合物であって、粒子群中に30質量%以上含まれる付加縮合物であってもよい。上記の特定の付加縮合物は、粒子群中に含まれる芳香族化合物及びカルボニル化合物の付加縮合物のうち、含有量が最も大きな付加縮合物であってもよい。
【0076】
(粒子群)
複数の粒子は、芳香族化合物及びカルボニル化合物の付加縮合物及び/又は当該付加縮合物の塩を含む。例えば、複数の粒子は、上述された特定の付加縮合物及び/又は当該特定の付加縮合物の塩を含む。複数の粒子は、界面活性剤を含んでもよい。
【0077】
複数の粒子における特定の付加縮合物の含有量と、複数の粒子における特定の付加縮合物の塩の含有量との合計は、例えば、10~100質量%である。上記の含有量の合計は、30~100質量%であってもよく、50~100質量%であってもよい。
【0078】
上記の含有量は、例えば、粒子群の質量に対する、当該粒子群に含まれる特定の付加縮合物及び当該特定の付加縮合物の塩の質量の合計の割合として導出される。粒子群に含まれる特定の付加縮合物及び当該特定の付加縮合物の塩の質量は、例えば、下記の手順により導出される。まず、組成物に含まれる粒子群の一部が、分析用のサンプルとして採取される。次に、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、質量分析法、核磁気共鳴分光法(NMR)、赤外分光法(IR)などの各種の分析手法により、サンプル中に存在する付加縮合物成分が定性的に同定される。また、高速液体クロマトグラフィーによりサンプルが分析される際に、クロマトグラム上のピーク位置に基づいて、HPLCにて分析され排出される液体が分取される。これにより、実質的に各ピーク成分のみが含まれる1以上の液体が得られる。その後、上記の1以上の液体のそれぞれについて、ピーク成分の含有量が同定される。上記の液体に対して適切な前処理工程が実施された後、ピーク成分の含有量を同定する工程が実施されてもよい。前処理としては、濃縮、精製などが例示される。これにより、上記の液体中における各ピーク成分の含有量に基づいて、粒子群に含まれる特定の成分の質量が導出され得る。また、上記の液体中における各ピーク成分の含有量に基づいて、組成物中における各ピーク成分の含有量が導出され得る。
【0079】
複数の粒子は、芳香族化合物及びカルボニル化合物の付加縮合物の粒子、及び/又は、当該付加縮合物の塩の粒子を含んでよい。複数の粒子は、上述された特定の付加縮合物の粒子、及び/又は、当該特定の付加縮合物の塩の粒子を含んでよい。これらの付加縮合物の粒子は、当該付加縮合物を主成分とする粒子であってよい。これらの付加縮合物の塩の粒子は、当該付加縮合物の塩を主成分とする粒子であってよい。粒子の主成分としては、(i)粒子中の存在比率が50質量%を超える成分、又は、(ii)粒子中の存在比率が最も大きな成分が例示される。
【0080】
一実施形態において、複数の粒子の少なくとも一部は、芳香族化合物及びカルボニル化合物の付加縮合物(例えば、上述された特定の付加縮合物である。)の異性体の混合物を含む。上記の付加縮合物は、粒子中に塩として存在していてもよい。この場合、例えば、上記の異性体の混合物が単一の粒子を構成している。他の実施形態において、複数の粒子は、芳香族化合物及びカルボニル化合物の鎖状縮合物の粒子と、芳香族化合物及びカルボニル化合物の環状縮合物の粒子とを含む。上記の縮合物は、粒子中に塩として存在していてもよい。
【0081】
複数の粒子は、界面活性剤の粒子を含んでもよい。界面活性剤の粒子は、界面活性剤を主成分とする粒子であってよい。
【0082】
本実施形態において、複数の粒子は、例えば、平均粒子径が19nm未満である。複数の粒子の平均粒子径が、粒子群の平均粒子径と称される場合がある。粒子群の平均粒子径は、25℃における動的光散乱法の測定結果をキュムラント法により解析して得られる粒子径(キュムラント径と称される場合がある。)であってよい。
【0083】
複数の粒子は、例えば、個数基準の粒度分布における0.6nm以上10nm未満の粒子数の割合が90%以上である。複数の粒子は、例えば、個数基準の粒度分布における累積90%粒子径が10nm未満である。個数基準の粒度分布における累積90%粒子径が、粒子群のD90、個数基準のD90などと称される場合がある。粒子群の粒度分布は、25℃における動的光散乱法の測定結果をContin法により解析して得られる粒度分布であってよい。
【0084】
より具体的には、複数の粒子は、(i)25℃においてキュムラント法により測定される平均粒子径が19nm未満である、及び/又は、(ii)25℃において動的光散乱法により測定される散乱強度から導出される個数基準の粒度分布における0.6nm以上10nm未満の粒子数の割合が90%以上である、若しくは、個数基準の粒度分布における累積90%粒子径が10nm未満である。複数の粒子は、例えば、(i)上記の平均粒子径が19nm未満であり、且つ、(ii)上記の粒度分布における0.6nm以上10nm未満の粒子数の割合が90%以上である、又は、上記の累積90%粒子径が10nm未満である。
【0085】
動的光散乱法を測定原理とする平均粒子径及び/又は粒度分布の測定(DLS測定と称される場合がある。)において、平均粒子径及び/又は粒度分布の解析手法としては、キュムラント法、Contin法、Marquardt法、NNLS法などが例示される。DLS測定では、懸濁液中の微粒子から得られる後方散乱光の散乱強度の揺らぎが測定される。上述された各種の解析手法によれば、上記の散乱強度の揺らぎから粒度分布が導出される。具体的には、まず、散乱強度基準の粒度分布が得られる。次に、散乱強度基準の粒度分布が散乱強度に関する重みを考慮して補正されることにより、個数基準の粒度分布(個数分布と称される場合がある)及び/又は体積基準の粒度分布(体積分布と称される場合がある)が得られる。このように、DLS測定装置と解析ソフトとが協働することで、キュムラント径及び/又は個数分布が出力される。また、上記の解析ソフトを用いることで、上記の個数分布における0.6nm以上10nm未満の粒子数の割合、上記の個数分布における累積90%粒子径などが導出される。
【0086】
個数基準の累積90%粒子径は、個数基準の粒度分布の積算値が90%に相当する粒子径を示す。個数基準の累積90%粒子径は、例えば、個数基準の累積粒度分布曲線において、小粒子側からの累積個数割合が90%となる粒子径として導出される。例えば、粒子群のD90が10nm未満である場合、当該粒子群における10nm未満の粒子の割合は、個数基準で90%以上である。
【0087】
本実施形態に係る組成物は、界面活性剤を含む。これにより、当該組成物がスケール付着防止剤として用いられた場合に、組成物中の付加縮合物(例えば、上述された特定の付加縮合物である。)の反応容器110への付着が抑制される。また、組成物の塗膜の水溶性が向上する。その結果、スケールの蓄積の少ない塗膜(低蓄積性に優れた塗膜と称される場合がある。)が得られる。
【0088】
本実施形態によれば、付加縮合物の付着量が抑制されることから、重合バッチ数が増加した場合であっても、スケール付着防止剤、重合防止剤及び未反応のカルボニル化合物に起因する堆積物の生成が抑制される。その結果、反応容器110の総括伝熱係数の低下が効果的に防止され得る。また、本実施形態によれば、従来と比較して厚さの小さなスケール防止層116が形成され得る。これにより、優れたスケール付着抑制効果が得られる。界面活性剤の詳細は後述される。
【0089】
本実施形態によれば、粒子群の平均粒子径及び/又はD90が特定の条件を満足する。これにより、スケール防止層116として緻密な塗膜が形成され得る。その結果、反応容器110の総括伝熱係数の低下が効果的に防止され得る。また、優れたスケール付着抑制効果が得られる。
【0090】
(付加縮合物の付着量)
なお、組成物中の付加縮合物の反応容器110への付着量は、例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により得られた測定結果(クロマトグラムと称される場合がある。)のピーク面積に基づいて決定される。高速液体クロマトグラフィーに用いられる装置(クロマトグラフと称される場合がある。)及び測定条件の詳細は、例えば、下記のとおりである。
【0091】
(クロマトグラム及び測定条件の詳細の一例)
クロマトグラフとしては、例えば、株式会社島津製作所製の汎用HPLCであるProminenceが用いられる。上記のクロマトグラフのシステムコントローラーとしては、例えば、CBM-20A(株式会社島津製作所製)が用いられる。上記のクロマトグラフの送液ユニットとしては、例えば、2台のLC-20AD(株式会社島津製作所製)が用いられる。試料の注入量は、例えば、20μLに設定される。
【0092】
上記のクロマトグラフのオンライン脱気装置としては、例えば、DGU-20A3(株式会社島津製作所製)が用いられる。上記のクロマトグラフのオートサンプラとしては、例えば、SIL-20ACHT(株式会社島津製作所製)が用いられる。上記のクロマトグラフのカラムオーブンとしては、例えば、CTO-20A(株式会社島津製作所製)が用いられる。カラムオーブンの温度は、例えば、40℃に設定される。上記のクロマトグラフのUV‐VIS検出器としては、例えば、SPD-20A(株式会社島津製作所製)が用いられる。検出波長は、例えば、288nmに設定される。
【0093】
ガードカラムとしては、例えば、Waters社製のPuresil(登録商標)C18ガードカラム(100Å,5μm,3.9mm×20mm×1本)が用いられる。分析カラムとしては、例えば、Waters社製のμ-Bondasphere/DeltaPak(登録商標)C18カラム(100Å、5μm,3.9mm×150mm×1本)が用いられる。
【0094】
溶離液として、2種類の溶液(溶離液A及び溶離液Bと称される。)が準備される。例えば、溶離液Aとして、蒸留水1Lあたり酢酸2mLを添加した溶液が準備される。また、溶離液Bとして、アセトニトリル1Lあたり酢酸1mLを添加した溶液が準備される。溶離液A及び溶離液Bの流量の合計値は、1.0mL/分に設定される。溶離液のグラジエント条件としては、まず、溶離液全量に対する溶離液Bの割合を40体積%に設定する。次に、30分かけて、溶離液全量に対する溶離液Bの割合を40体積%から100体積%にまで直線的に変化させる。次に、溶離液全量に対する溶離液Bの割合を100体積%としたまま10分間保持する。
【0095】
(測定手順の詳細の一例)
(塗膜の採取)
まず、反応容器110の内部を目視で確認することにより、塗膜が付着している領域(例えば、内壁の一部である。)を特定する。次に、塗膜が付着している領域に含まれる10cm×10cmの正方形の範囲に、N-メチル-2-ピロリドン(NMPと称される場合がある。)を含侵させたスワブを擦りつけることにより、塗膜のサンプルを取得する。塗膜に含まれる縮合物はNMPに溶解するので、スワブには、縮合物を含むNMP溶液が保持される。
【0096】
(試料の調製)
まず、スワブから上記のNMP溶液を回収するための溶剤を準備する。具体的には、10.0mLのNMPと、20μLの0.5N塩酸とを混合することで、上記の溶剤を準備する。次に、上記の溶剤を100μLずつ10回に分けて上記のスワブに滴下し、洗液を回収する。これにより、縮合物を含む試料が得られる。
【0097】
(付着量の導出)
まず、上述の試料を孔径0.45μmのポリテトラフルオロエチレンフィルタで濾別し、濾液を得る。濾別処理後、直ちに、上記の濾液を上述されたクロマトグラフにセットし、測定を開始する。測定が開始された後、0~35分までのピーク面積の合計値を、縮合物の付着量の値として算出する。
【0098】
(A.溶媒)
組成物に用いられる溶媒(反応溶媒と称される場合がある。)としては、上記の付加縮合物(例えば、上述された特定の付加縮合物である。)を生成するための反応条件において液体である化合物であればよく、その詳細は特に限定されない。上記の反応条件としては、反応温度、反応圧力などが例示される。
【0099】
反応溶媒としては、水、又は、有機溶媒が例示される。有機溶媒としては、アルコール類、ケトン類、エステル類、アミド類などが例示される。アルコール類としては、メタノール、エタノール、プロパノールなどが例示される。ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトンなどが例示される。エステル類としては、酢酸メチル、酢酸エチルなどが例示される。アミド類としては、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンなどが例示される。
【0100】
組成物中における溶媒の含有率は、例えば、95質量%以下である。これにより、溶媒以外の組成物の成分が効率よく塗布され得る。組成物中における溶媒の含有率は、50質量%以上95質量以下であってもよい。
【0101】
(B.界面活性剤)
本実施形態において、界面活性剤は、上述された特定の付加縮合物とは異なる化合物(界面活性化合物と称される場合がある)を含む。界面活性化合物は、上記の特定の付加縮合物の塩とは異なる化合物であってもよい。
【0102】
組成物は、例えば、芳香族化合物に対して0.01当量以上の界面活性化合物を含む。組成物は、芳香族化合物に対して0.1当量以上の5.0当量以下の界面活性化合物を含んでもよく、0.5当量以上の2.0当量以下の界面活性化合物を含んでもよい。これにより、当該組成物がスケール付着防止剤として用いられた場合に、組成物中の付加縮合物の反応容器110への付着が抑制される。また、組成物の塗膜の水溶性が向上する。
【0103】
組成物中における界面活性剤化合物の含有量は、例えば、特定の付加縮合物に含まれる芳香族化合物に由来する構造単位に対して0.01当量以上である。組成物中における界面活性剤化合物の含有量は、特定の付加縮合物に含まれる芳香族化合物に由来する構造単位に対して0.1当量以上の5.0当量以下であってよく、0.5当量以上の2.0当量以下であってもよい。
【0104】
界面活性剤は、例えば、特定の付加縮合物の製造過程において、縮合反応用の触媒とともに反応系に投入される。界面活性剤は、例えば、芳香族化合物に対して0.01当量以上の界面活性化合物が添加されるように反応系に投入される。界面活性剤は、芳香族化合物に対して0.1当量以上の5.0当量以下の界面活性化合物が添加されるように反応系に投入されてよい。界面活性剤は、芳香族化合物に対して0.5当量以上の2.0当量以下の界面活性化合物が添加されるように反応系に投入されてよい。
【0105】
界面活性化合物は、有機概念図法を用いて導出されるHLB(Hydrophile Lipophile Balance)の値(HLB値と称される場合がある。)が15以上50以下の化合物であってよい。一実施形態において、界面活性化合物のHLB値は、20以上50以下であってもよく、25以上50以下であってもよい。他の実施形態において、界面活性化合物のHLB値は、15以上26以下であってもよく、20以上26以下であってもよい。界面活性化合物の具体例は後述される。
【0106】
HLB値は、化合物に含まれる無機性基又は親水基の性質と、当該化合物に含まれる有機性基又は疎水基の性質との相対的な強さの比を表す。上記の有機概念図法は、「藤田、小田らによる有機概念図法」であってよい。「藤田、小田らによる有機概念図法」は、藤田穆により提案されたものであり、その詳細は「Pharmaceutical Bulletin」、vol.2、2、pp.163-173(1954)、「化学の領域」、vol.11、10、pp.719-725(1957)、「フレグランスジャーナル」、vol.50、pp.79-82(1981)などにおいて説明されている。
【0107】
各化合物のHLB値は、各化合物の無機性の指標値(無機性値と称される場合がある。)と、各化合物の有機性の指標値(有機性値と称される場合がある。)とを用いて、下記の式(3)により導出される。上記の指標値の詳細は、例えば、著者:堀内照夫、書名:乳化基礎理論、巻数:44巻1号、発行所:日本化粧品技術者会誌、発行年月日:(Published)2010年3月20日,(Released)2010年4月26日、ページ:2-22(https://www.jstage.jst.go.jp/browse/sccj/44/1/_contents/-char/en)の表1に示されている。
【0108】
【数1】
【0109】
有機概念図法によれば、あらゆる物質のHLB値が導出され得る。そのため、芳香族化合物及びカルボニル化合物の付加縮合物及び/又は当該付加縮合物の塩も界面活性剤と見做され得る。しかしながら、上述されたとおり、本実施形態に係る組成物において、界面活性化合物は、(i)粒子群中に含まれる上記の特定の付加縮合物とは異なる化合物又は(ii)上記の特定の付加縮合物の塩とは異なる化合物であることに留意すべきである。界面活性剤は、(i)上記の特定の付加縮合物とは異なる化合物、(ii)上記の特定の付加縮合物の塩とは異なる化合物、又は、(iii)上記の特定の付加縮合物及び当該付加縮合物の塩の混合物とは異なる組成物であることに留意すべきである。
【0110】
この点につき、上記の特定の付加縮合物は、組成物中において、化合物又は当該化合物の塩として存在している。組成物に含まれる粒子は、付加縮合物と、当該付加縮合物の塩との混合物であり得る。例えば、芳香族化合物が1-ナフトールであり、カルボニル化合物がホルムアルデヒドであり、触媒が水酸化ナトリウムである場合、芳香族化合物及びカルボニル化合物の付加縮合物のモノマー単位のHLB値は約7であり、当該付加縮合物のナトリウム塩のモノマー単位のHLB値は約30となる。一般的に混合物のHLB値は、当該混合物を構成する各成分のHLB値の加重平均として表される。そのため、上記の付加縮合物及び当該付加縮合物の塩の混合物のHLB値は、当該混合物に含まれる付加縮合物及び当該付加縮合物の塩の存在比率によって、約7~約30となり得る。
【0111】
上述されたとおり、芳香族化合物及びカルボニル化合物の反応生成物も、「HLB値が15以上50以下を満たす界面活性剤」に該当し得る。例えば、β-ナフタリンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩のHLB値は15以上50以下の範囲内であるが、上記の1-ナフトール及びホルムアルデヒドの縮合物の粒子を分散させるための界面活性剤としても用いられ得る。そのため、組成物によっては、(i)当該組成物中に複数の付加縮合物が含まれており、且つ、(ii)当該複数の付加縮合物の他に「HLB値が15以上50以下を満たす界面活性剤」に該当する化合物が、当該組成物中に含まれていないことも想定され得る。本実施形態に係る組成物において、界面活性化合物は、上記の特定の付加縮合物及び当該特定の付加縮合物の塩とは異なる化合物であるので、上記のような場合であっても、当該複数の付加縮合物の一種が界面活性剤として組成物中に含まれ得る。
【0112】
本実施形態において、界面活性剤は、アニオン性界面活性剤であってよい。界面活性剤は、ピロリドン系界面活性剤を含んでもよい。界面活性化合物は、非高分子の化合物であってよい。上記の非高分子の化合物は、重量平均分子量(ポリスチレン換算値である。)が10000未満の化合物であってよい。上記の重量平均分子量は、例えば、テトラヒドロフラン(THF)を用いたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定される。上記の非高分子の化合物は、重合度又は縮合度で表される値にモノマー単位の分子量を乗じて得られる値(平均分子量と称される場合がある。)が10000未満の重合体又は縮合体であってもよい。
【0113】
界面活性化合物としては、ポリビニルアルコール、セルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデカンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、セチル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム、フェニルフェノールナトリウム、スクロース、マルトース、グルコース、フルクトース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、安息香酸ナトリウム、直鎖型ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、分岐型ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデカン酸ナトリウム、オクタン酸ナトリウム、ブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム、1-ナフタレンスルホン酸ナトリウム、ヘキサデカンスルホン酸ナトリウム、オクタンスルホン酸ナトリウム、エタノール、エトキシエタノール、t-ブタノール、プロパノール、メトキシエタノール、グリセリン、酢酸、リンゴ酸、サリチル酸、プロピオン酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、クエン酸、アスコルビン酸、エチレンジアミン四酢酸、ヒスチジン、エタノールアミン、デキストリン、ラウリルベタイン、ナイアシンアミド、トリイソプロパノールアミン、クオタニウム-22、クオタニウム-45などが例示される。界面活性剤は、ドデシル硫酸ナトリウム、ヘキサデカンスルホン酸ナトリウム、ドデカン酸ナトリウム、ブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム、オクタンスルホン酸ナトリウム、1-ナフタレンスルホン酸ナトリウム、プロパノール、エタノール、及び、1-メトキシエタノールからなる群から選択される少なくとも1つの化合物であってよい。
【0114】
界面活性化合物は、HLB値が15以上26以下のピロリドン類又はその誘導体であってよい。界面活性化合物は、上述された反応溶媒及び/又は後述される触媒として用いられる化合物のうち、HLB値が15以上50以下の化合物であってよい。
【0115】
組成物は、1種又は2種以上の界面活性化合物を含んでよい。界面活性化合物は、組成物の製造工程において混合されてもよく、組成物の製造工程において生成されてもよい。
【0116】
(C.付加縮合物の粒子群)
上述されたとおり、粒子群を構成する複数の粒子の少なくとも一部は、芳香族化合物及びカルボニル化合物の付加縮合物(例えば、上述された特定の付加縮合物である。)を含む。上記の付加縮合物は、(i)芳香族化合物及びカルボニル化合物の鎖状縮合物であってもよく、(ii)芳香族化合物及びカルボニル化合物の環状縮合物であってもよく、(iii)当該鎖状縮合物及び当該環状縮合物の混合物であってもよい。
【0117】
上記の付加縮合物は、芳香族化合物由来の構成単位2個以上が、それぞれ、カルボニル化合物由来の構成単位1個を介して結合している芳香族化合物多量体であってよい。具体的には、芳香族化合物は、付加縮合物中で芳香族化合物由来の構成単位(A)を構成する部分を有する。また、カルボニル化合物は、付加縮合物中でカルボニル化合物由来の構成単位(B)を構成する部分を有する。芳香族化合物二量体は、例えば、A-B-Aの構造を有する化合物である。芳香族化合物多量体は、例えば、「A」と「B」とが交互に並んだA-B-A-…-B-Aの構造を有する化合物である。
【0118】
付加縮合物は、例えば、芳香族化合物及びカルボニル化合物を、触媒及び界面活性剤の存在下で反応させることで得られる。付加縮合物は、例えば、上述された反応溶媒中で、芳香族化合物及びカルボニル化合物を、触媒及び界面活性剤の存在下で反応させることで得られる。
【0119】
(芳香族化合物)
芳香族化合物としては、ベンゼン誘導体、ナフタリン誘導体、多核芳香族化合物、非ベンゼン系芳香族化合物などが例示される。芳香族化合物は、ベンゼン誘導体、ナフタリン誘導体、多核芳香族化合物及び非ベンゼン系芳香族化合物からなる群から選択される化合物であって、3~20個の共役π結合を含む化合物であってよい。単一の種類の芳香族化合物が用いられてもよく、2種類以上の芳香族化合物が併用されてもよい。
【0120】
ベンゼン誘導体としては、(i)フェノール類及びそれらの誘導体、(ii)芳香族アミン類及びそれらの誘導体、(iii)ニトロ及びニトロソ誘導体、(iv)芳香族アルデヒド、(v)アルデヒド基以外に更に1種の置換基を有する、ベンゼン誘導体、(vi)アシル基以外に更に1種の置換基を有する、ベンゼン誘導体、(vii)3種類以上異なった置換基を有する、ベンゼン又はトルエンの誘導体、(viii)アラルキル化合物、並びに、(ix)ジアゾ化合物及びアゾ化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物が例示される。フェノール類及びそれらの誘導体としては、フェノール、2-メチルフェノール、3-メチルフェノール、4-メチルフェノール、3,5-ジメチルフェノールなどが例示される。芳香族アミン類及びそれらの誘導体としては、ピリジン、キノリン、カルバゾール、o-フェナントロリン、p-フェナントロリン、3,6-ジアミノアクリジン、3-アミノフェノチアジン、2-アミノフェナジン、フェノチアジン、2-ヒドロキシ-4-メチルキノリンなどが例示される。ニトロ及びニトロソ誘導体としては、ニトロベンゼン、フェナジン、フェナジンオキシド、1-フェニルアゾ-2-ナフトール、トリフノジオキサジン、4-ニトロキサントンなどが例示される。芳香族アルデヒドとしては、ベンズアルデヒド、ベンゾフラビンなどが例示される。アルデヒド基以外に更に1種の置換基を有するベンゼン誘導体としては、1-ヒドロキシ-2,4-メチルフルオロン、3-フェニルクマロン、クマリン-3-カルボン酸エチルエステル、3-アセチルクマリン、5-クロロ-3-(4-ヒドロキシフェニル)アントラニル、3-ニトロアクリドンなどが例示される。アシル基以外に更に1種の置換基を有するベンゼン誘導体としては、キサントン、2-ベンゾイルキサントン、キサンテン、フルオレンなどが例示される。3種類以上異なった置換基を有するベンゼン又はトルエンの誘導体としては、7-アセトキシ-8-メトキシ-3-(2-ニトロフェニル)カルボステリルなどが例示される。アラルキル化合物としては、9-ベンジルアクリジンが例示される。ジアゾ化合物及びアゾ化合物としては、1,1'-アゾナフタリン、アゾキシフェノールなどが例示される。
【0121】
ナフタリン誘導体としては、(i)アルキル、アルケニル及びフェニルナフタリン類、(ii)ジナフチル類、(iii)ナフチルアリールメタン類、(iv)ナフチルアリールエタン類、(v)ヒドロナフタリン類、(vi)ニトロナフタリン及びその誘導体、(vii)ハロゲン化ナフタリン類、(viii)ナフチルヒドロキシルアミン、ナフチルピラジン及びナフチル尿素類、(ix)ナフタリン系アラルキル化合物、(x)ナフトアルデヒド類及びその誘導体、(xi)アセトナフテン及びベンゾイルナフタリン類、並びに、(xii)ナフトール類からなる群から選択される少なくとも1種の化合物が例示される。アルキル、アルケニル及びフェニルナフタリン類としては、2-メチルナフタリン、1-エチルナフタリン、2-エチルナフタリン、1,2-ジメチルナフタリンなどが例示される。ジナフチル類としては、1,1'-ジナフチル、1,2'-ジナフチル、2,2'-ジナフチルなどが例示される。ナフチルアリールメタン類としては、1-ベンジルナフタリン、2-ベンジルナフタリン、1-(α,α-ジクロールベンジル)ナフタリン、ジフェニル-α-ナフチルメタン、ジフェニル-β-ナフチルメタン、ジ-α-ナフチルメタンなどが例示される。ナフチルアリールエタン類としては、1,2-ジ-α-ナフチルエタン、1,2-ジ-β-ナフチルエタンなどが例示される。ヒドロナフタリン類としては、1,2-ジヒドロナフタリン、1,4-ジヒドロナフタリン、1,2,3,4-テトラヒドロナフタリンなどが例示される。ニトロナフタリンとその誘導体としては、ニトロメチルナフタリン、ニトロアルキルナフタリン、ニトロフェニルナフタリン、ハロニトロナフタリン、ハロジニトロナフタリン、ニトロソナフタリン、ジアミノナフタリン、トリアミノナフタリン、テトラアミノナフタリンなどが例示される。ハロゲン化ナフタリン類としては、1-フルオルナフタリン、1-クロールナフタリン、1-クロール-3,4-ジヒドロナフタリンなどが例示される。ナフチルヒドロキシルアミン、ナフチルピラジン及びナフチル尿素類としては、α-ナフチルヒドロキシルアミン、β-ナフチルチオヒドロキシルアミン、N-ニトロソ-α-ナフチルヒドロキシルアミン、α-ナフチルヒドラジン、1,2-ジベンゾカルバゾールなどが例示される。ナフタリン系アラルキル化合物としては、ジベンゾアントラセン、アセナフテン、ジフェニルナフチルクロールメタン、ニトロメチルナフタリンなどが例示される。ナフトアルデヒド類及びその誘導体としては、α-ナフトアルデヒド、2-(2,4-ジニトロフェニル)-1-(α-ナフチル)エチレンなどが例示される。アセトナフテン及びベンゾイルナフタリン類としては、(1,2又は5,6-)ジベンズアントラセン、2'-メチル-2,1'-ジナフチルケトン、2-メチル-1,1'-ジナフチルケトン、スチリル-2-ナフチルケトンなどが例示される。ナフトール類としては、1-ナフトール(α-ナフトール)、2-ナフトール、1,3-ジヒドロキシ-ナフタレン、1,5-ジヒドロキシナフタレン及び1,7-ジヒドロキシナフタレン、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、2-ヒドロキシ-1-ナフトエ酸、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、1-ヒドロキシ-8-ナフトエ酸などが例示される。
【0122】
多核芳香族化合物としては、(i)アントラセン類及びその誘導体、(ii)フェナントレン類及びその誘導体、並びに、(iii)その他の多核芳香族化合物及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種の化合物が例示される。アントラセン類及びその誘導体としては、アントラセン、1,2-ジヒドロアントラセン、1-クロールアントラセン、1,4-ジクロールアントラセン、1-ニトロアントラセン、9,10-ジニトロアントラセン、1-アミノアントラセン、2-ジメチルアミノアントラセン、2-アニリノアントラセン、9-メチルアミノアントラセン、1,4-ジアミノアントラセンなどが例示される。フェナントレン類及びその誘導体としては、フェナントレン、9,10-ジヒドロフェナントレン、1,2,3,4-テトラヒドロフェナントレン、1-クロールフェナントレンなどが例示される。その他の多核芳香族化合物及びその誘導体としては、例えば、ペンタセン、ヘキサセン、ベンゾフェナントレン、ベンゾ〔a〕アントラセン、ピレン、コロネンなどが例示される。
【0123】
非ベンゼン系芳香族化合物としては、アズレン、シクロデカペンタン、シクロテトラデカヘプタン、シクロオクタデカノナエン、シクロテトラコサドデカエン、ヘプタレン、フルバレン、セスキフルバレン、ヘプタフルバレン、ペリナフテンなどが例示される。非ベンゼン系芳香族化合物は、上記の化合物の誘導体であってもよい。
【0124】
芳香族化合物として、ナフトール類が用いられてよい。これにより、温和な条件で付加縮合物が生成され得る。その結果、付加縮合物の製造コストが低減され得る。芳香族化合物として、下記の一般式(1)で表される化合物が用いられてもよい。芳香族化合物として、α-ナフトールが用いられることが好ましい。
【0125】
(一般式1)
【化2】
【0126】
一般式(1)において、R1、R2、R3は、それぞれ水素原子又は炭化水素基である。炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、n-オクチル基などが例示される。
【0127】
(カルボニル化合物)
カルボニル化合物は、カルボニル基を有する有機化合物であればよく、その詳細は特に限定されない。単一の種類のカルボニル化合物が用いられてもよく、2種類以上のカルボニル化合物が併用されてもよい。カルボニル化合物としては、アルデヒド類(アルデヒド化合物と称される場合がある)、ケトン類(ケトン化合物と称される場合がある)などが例示される。アルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、テレフタルアルデヒドなどが例示される。ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン、アセチルアセトンなどが例示される。
【0128】
カルボニル化合物として、下記の一般式(2)で表されるアルデヒド化合物が用いられてよい。カルボニル化合物として、ホルムアルデヒド及び/又はアセトアルデヒドが用いられてよい。これにより、付加縮合物の製造コストが低減され得る。カルボニル化合物として、ホルムアルデヒドが用いられることが好ましい。
【0129】
(一般式2)
1-CHO
上記一般式(2)において、R1は、水素原子又は炭化水素基である。炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、n-オクチル基などが例示される。
【0130】
(芳香族化合物及びカルボニル化合物の組み合わせに関する具体例)
一実施形態において、芳香族化合物は上記の一般式(1)で表される化合物であり、カルボニル化合物は上記の一般式(2)で表されるアルデヒド化合物であってよい。他の実施形態において、芳香族化合物はα-ナフトールであり、カルボニル化合物はホルムアルデヒドであってよい。
【0131】
(触媒)
触媒としては、ブレンステッド酸、ルイス酸、塩基などが例示される。ブレンステッド酸としては、塩酸、硫酸、りん酸、クエン酸などが例示される。ルイス酸としては、塩化アルミニウム、モノボラン、ジボラン、三フッ化ホウ素、アルミナなどが例示される。塩基としては、アンモニア、トリエチルアミン、アルカリ金属水酸化物などが例示される。アルカリ金属水酸化物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが例示される。触媒として、アルカリ金属水酸化物が用いられることが好ましい。
【0132】
(その他の添加物)
付加縮合物を含む溶液又はゲルは、還元剤、水溶性高分子、pH調整剤、及び/又は、その他の添加物をさらに含んでよい。その他の添加物としては、無機コロイド、アルカリ金属ケイ酸塩、酸化防止剤などが例示される。還元剤、水溶性高分子、pH調整剤、及び/又は、その他の添加物は、組成物の目的及び効果を損なわない範囲で、必要に応じて添加される。還元剤、水溶性高分子、pH調整剤、及び/又は、その他の添加物は、組成物の製造工程における任意のタイミングで、組成物に添加されてよい。
【0133】
(還元剤)
還元剤としては、亜硫酸塩、亜りん酸塩、亜硝酸塩、還元糖類、二酸化チオ尿素などが例示される。単一の種類の還元剤が用いられてもよく、2種類以上の還元剤が併用されてもよい。還元剤として、亜硫酸塩及び/又は二酸化チオ尿素が用いられてよい。
【0134】
亜硫酸塩としては、亜硫酸アンモニウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素アンモニウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜二チオン酸ナトリウム(Na)、ロンガリットなどが例示される。
【0135】
亜りん酸塩としては、亜りん酸アンモニウム、亜りん酸ナトリウム、亜りん酸カリウム、亜りん酸カルシウム、亜りん酸ウラニル、亜りん酸コバルト、亜りん酸第一鉄、亜りん酸第二鉄、亜りん酸銅、亜りん酸バリウム、亜りん酸ヒドラジニウム、亜りん酸水素アンモニウム、亜りん酸水素ナトリウム、亜りん酸水素カリウム、亜りん酸水素カリウム、亜りん酸水素カルシウム、亜りん酸水素コバルト、亜りん酸水素第一銅、亜りん酸水素第二銅、亜りん酸水素第一鉄、亜りん酸水素第二鉄、亜りん酸水素鉛、亜りん酸水素バリウム、亜りん酸水素マグネシウム、亜りん酸水素マンガン、亜りん酸水素ヒドラジニウムなどが例示される。
【0136】
亜硝酸塩としては、亜硝酸アンモニウム、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸カルシウム、亜硝酸亜鉛、亜硝酸銀、亜硝酸コバルトカリウム、亜硝酸コバルトナトリウム、亜硝酸ストロンチウム、亜硝酸セシウム、亜硝酸セリウム、亜硝酸第二銅、亜硝酸ニッケル、亜硝酸バリウム、亜硝酸マグネシウム、亜硝酸リチウム、亜硝酸ルビジウムなどが例示される。
【0137】
還元糖類は、遊離のアルデヒド基又はカルボニル基を有し、かつ還元性を示す糖類である。還元糖類としては、マルトース、ラクトース、ぶどう糖(グルコース)などが例示される。
【0138】
組成物中における還元剤の含有量は、付加縮合物(例えば、上述された特定の付加縮合物である。)100質量部に対して0.01~10質量部であってよい。組成物中における還元剤の含有量は、付加縮合物(例えば、上述された特定の付加縮合物である。)100質量部に対して0.1~3質量部程度であることが好ましい。
【0139】
組成物に還元剤が添加されることにより、縮合反応によって得られる縮合反応生成物を含む当該組成物の均一安定性が向上する。また、組成物に還元剤が添加されることにより、当該組成物中におけるゲル化物の生成が抑制される。これにより、組成物の保存可能期間が長くなる。また、ゲル化物の重合体製品中への混入が未然に防止され得る。さらに、組成物中に還元剤が添加されることにより、当該組成物を用いて形成されるスケール防止層116(単に、組成物の塗膜と称される場合がある。)のスケール付着防止効果が向上し得る。
【0140】
(水溶性高分子)
水溶性高分子としては、アニオン性高分子化合物、両性高分子化合物、カチオン性高分子化合物、ノニオン性高分子化合物及びヒドロキシル基含有高分子などが例示される。水溶性高分子は、上述された界面活性化合物とは異なる種類の化合物であってよい。
【0141】
水溶性高分子は、重量平均分子量(ポリスチレン換算値である。)が10000以上の化合物であってよい。上記の重量平均分子量は、例えば、テトラヒドロフラン(THF)を用いたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定される。上記の重量平均分子量が10000未満の化合物は、上記の水溶性高分子に該当しないと判断されてよい。
【0142】
水溶性高分子のK値は、組成物の塗膜の親水性を十分に向上させることができ、且つ、組成物に含まれる溶媒に対する溶解性が十分に大きくなるように調整され得る。上記のK値は、例えば、25℃におけるFikentscherの式に基づくK値である。具体的には、水溶性高分子のK値は、10以上200以下であることが好ましく、80以上150以下であることがより好ましい。
【0143】
組成物中における水溶性高分子の含有量は、例えば、組成物の粘度を考慮して調整される。組成物中における水溶性高分子の含有量は、例えば、組成物の取扱いに問題が出ないように調整される。具体的には、水溶性高分子の含有量は、0.001質量%以上50質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.01質量%以上30質量%以下である。
【0144】
組成物に水溶性高分子が添加されることにより、組成物の塗膜の親水性が向上する。これにより、当該塗膜スケール付着防止性能が向上する。
【0145】
(pH調整剤)
組成物のpH調整が必要な場合、pH調整剤として、各種の酸及び/又はアルカリ化合物が用いられる。組成物のpHは、組成物を構成する化合物の種類、及び/又は、組成物の原材料の種類により適宜調整される。組成物のpHが調整される場合、組成物のpHは6~14に調整されることが好ましく、より好ましくは8~13に調整される。
【0146】
酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、りん酸、二りん酸、myo-イノシトール-1,2,3,4,5,6-六りん酸などが例示される。アルカリ化合物としては、アルカリ金属化合物、アミン系化合物などが例示される。アルカリ金属化合物としては、LiOH、NaOH、KOH、NaCO、NaHPOなどが例示される。アミン系化合物としては、NH、メチルアミン、エチルアミン、エチレンジアミンなどが例示される。
【0147】
(組成物の製造方法)
芳香族化合物及びカルボニル化合物の付加縮合物(例えば、上述された特定の付加縮合物である。)を含む組成物は、例えば、下記の手順により生産される。まず、溶媒、芳香族化合物及びカルボニル化合物の混合物(原料溶液と称される場合がある。)が準備される。原料溶液は、界面活性剤を含んでいてもよい。次に、溶媒中で、芳香族化合物及びカルボニル化合物を、触媒及び界面活性剤の存在下で反応させる。これにより、芳香族化合物及びカルボニル化合物の付加縮合物(例えば、上述された特定の付加縮合物である。)を含む粒子群が生成される。上述されたとおり、上記の粒子群は、芳香族化合物及びカルボニル化合物の付加縮合物(例えば、上述された特定の付加縮合物である。)を主成分として含む粒子群であってよい。
【0148】
上記の組成物の製造方法の詳細は後述される。なお、界面活性化合物に関連して説明されたとおり、上述された特定の付加縮合物及び当該付加縮合物の塩は、界面活性化合物に該当しないことに留意されたい。
【0149】
上述されたとおり、上記の製造方法により得られる組成物に含まれる粒子群は、(i)25℃においてキュムラント法により測定される平均粒子径(上述されたとおり、キュムラント径と称される場合がある。)が19nm未満である、及び/又は、(ii)25℃において動的光散乱法により測定される散乱強度から導出される個数基準の粒度分布(個数分布と称される場合がある。)における0.6nm以上10nm未満の粒子数の割合(小粒子の割合と称される場合がある。)が90%以上である、若しくは、個数基準の粒度分布における累積90%粒子径(上述されたとおり、D90と称される場合がある。)が10nm未満である。上記の平均粒子径は、10nm未満であってよく、0.6nm以上10nm未満であってもよく、0.6nm以上5nm未満であってもよい。
【0150】
上記の平均粒子径は、付加縮合物の生成反応が終了した状態の溶液(付加縮合物の原液と称される場合がある。)において、19nm未満であってもよく、10nm未満であってよく、0.6nm以上10nm未満であってもよく、0.6nm以上5nm未満であってもよい。上記の小粒子の割合は、付加縮合物の原液において90%以上であってよい。上記のD90は、付加縮合物の原液において10nm未満であってよい。
【0151】
上記の平均粒子径は、付加縮合物の生成反応が終了した後、1年が経過する前の期間において、19nm未満であってもよく、10nm未満であってよく、0.6nm以上10nm未満であってもよく、0.6nm以上5nm未満であってもよい。上記の小粒子の割合は、付加縮合物の生成反応が終了した後、1年が経過する前の期間において、90%以上であってよい。上記のD90は、付加縮合物の生成反応が終了した後、1年が経過する前の期間において、10nm未満であってよい。
【0152】
(i)反応系のpH、反応温度、反応時間などの反応条件、及び/又は、(ii)芳香族化合物に対するカルボニル化合物の当量が調整されることにより、組成物に含まれる粒子群の平均粒子径及び/又は粒度分布が制御される。反応系のpHは1~14であってよい。反応系のpHは好ましくは7~14である。反応温度は30~150℃であってよい。反応温度は好ましくは50~100℃である。反応時間は30秒~10時間であってよい。反応時間は好ましくは1~5時間である。芳香族化合物に対するカルボニル化合物の当量は0.01~10.00であってよい。芳香族化合物に対するカルボニル化合物の当量は好ましくは0.4~3.0当量である。
【0153】
例えば、反応系(つまり、付加縮合物を含む溶液である。)のpHが大きくなるほど、組成物に含まれる粒子群の平均粒子径が大きくなり得る。また、反応系のpHが大きくなるほど、組成物に含まれる粒子群のD90が大きくなり得る。一方、反応系のpHが大きくなるほど、粒度分布における0.6nm以上10nm未満の粒子数の割合が小さくなり得る。このように、本願明細書の記載に接した当業者であれば、反応条件、及び/又は、芳香族化合物に対するカルボニル化合物の当量を適切に組み合わせることで、過度の試行錯誤を要することなく、組成物に含まれる粒子群の特徴(例えば、平均粒子径及び/又は粒度分布である。)を適切に制御することができる。
【0154】
(組成物のスケール付着防止剤としての利用)
上述されたとおり、本実施形態に係る組成物は、スケール付着防止剤として利用される。特に、上記の組成物は、塩化ビニル又は塩化ビニルを主体とする単量体混合物を重合させて重合体を生産する場合に、重合体スケール付着防止剤として利用される。上述されたとおり、本実施形態に係る組成物に含まれる付加縮合物(例えば、上述された特定の付加縮合物である。)の粒子群は、特定の平均粒子径又はD90を有する。つまり、本実施形態に係る組成物においては、粗大な粒子の含有量が非常に小さい。これにより、上記の組成物に由来するスケール防止層116として、付加縮合物の緻密な塗膜が形成される。その結果、スケール付着防止性能に優れたスケール防止層116が形成され、重合体の生産性が向上する。
【0155】
一実施形態によれば、付加縮合物(例えば、上述された特定の付加縮合物である。)の原液が、スケール付着防止剤として用いられる。この場合において、上記の原液中における付加縮合物の含有量は、0.1質量%以上15質量%以下であってよい。他の実施形態によれば、付加縮合物の原液に任意の溶媒(調整溶媒と称される場合がある。)が添加された溶液(調整済溶液と称される場合がある。)が、スケール付着防止剤として用いられる。調整済溶液は、付加縮合物の原液に、調整溶媒と、pH調整剤、還元剤及び水溶性高分子の少なくとも1つとが添加されることで作製されてもよい。調整済溶液中における付加縮合物の含有量は、0.1質量%以上15質量%以下であってよい。調整済溶液に含まれる粒子群は、組成物に関連して説明された粒子群と同様のキュムラント径を有してよい。調整済溶液に含まれる粒子群における小粒子の割合は、組成物に関連して説明された粒子群と同様であってよい。調整済溶液に含まれる粒子群は、組成物に関連して説明された粒子群と同様のD90を有してよい。
【0156】
上述されたとおり、本実施形態に係る組成物は、ゲル状であってもよい。一実施形態において、付加縮合物(例えば、上述された特定の付加縮合物である。)を含むゲルは、例えば加熱により液体となる。液体状の付加縮合物は、スケール付着防止剤として用いられ得る。液体状の付加縮合物に任意の調整溶媒が添加された溶液が、スケール付着防止剤として用いられてもよい。他の実施形態において、付加縮合物を含むゲルに任意の調整溶媒が添加された溶液が、スケール付着防止剤として用いられる。この場合、スケール付着防止剤の調整工程において、付加縮合物のゲルとしての性質が消失し得る。これにより、液体状のスケール付着防止剤が得られる。
【0157】
上述された付加縮合物(例えば、上述された特定の付加縮合物である。)を含む塗布液は、例えば、オレフィン系重合体を製造する工程において上記重合反応器内に塗布される。上記の塗布液は、特に、エチレン性不飽和基含有単量体を重合する工程の中で好適に用いられる。上記の塗布液は、塩化ビニル等のハロゲン化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン、或いは、これらを主体とし他の単量体も含む単量体混合物を、水性媒体中において懸濁重合又は乳化重合に供することにより、エチレン性不飽和基含有単量体の重合体、共重合体又は上記単量体混合物の共重合体を製造する工程の中で好適に用いられる。
【0158】
懸濁重合又は乳化重合においては、必要に応じて、重合系に種々の添加剤が加えられてもよい。添加剤としては、懸濁安定剤、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、安定剤、連鎖移動剤、pH調整剤などが例示される。懸濁安定剤としては、部分けん化ポリビニルアルコール、メチルセルロースなどが例示される。アニオン性乳化剤としては、ラウリル硫酸ナトリウムが例示される。ノニオン性乳化剤としては、ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンアルキルエーテルなどが例示される。安定剤としては、三塩基性硫酸鉛、ステアリン酸カルシウム、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズメルカプチドなどが例示される。連鎖移動剤としては、トリクロロエチレン、メルカプタン類などが例示される。上述された付加縮合物を含む塗布液に由来する塗膜は、これらの添加剤が重合系に存在する場合であっても、重合体スケールの付着を効果的に抑制し得る。
【0159】
上述された付加縮合物を含む塗布液を用いて形成された塗膜は、従来から公知の重合体スケールの付着防止性能を有する塗膜に対して高い溶解能を有する単量体、例えば、α-メチルスチレン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリロニトリル、酢酸ビニル等の重合に適用しても、高い耐久性を示す。そのため、上述された付加縮合物を含む塗布液は、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル等の重合体ビーズ又はラテックスの製造、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(IIR)等の合成ゴムの製造(なお、これらの合成ゴムは通常乳化重合によって製造される。)、ABS樹脂の製造に際しても好適に用いられる。
【0160】
(スケール防止層116の形成手順)
例えば、上記の手順に従って調整された組成物が、反応容器110の内面114に塗布されることで、上記の付加縮合物(例えば、上述された特定の付加縮合物である。)の塗膜が形成される。これにより、付加縮合物が、反応容器110の内面114に付着する。
【0161】
上記の組成物を塗布する方法は、特に限定されない。例えば、まず、上記の組成物を含む塗布液が調整される。上述されたとおり、塗布液としては、(i)縮合反応によって得られた原液、(ii)当該原液に、pH調整剤、還元剤、水溶性高分子及び水の少なくとも一つを添加して得られる調整済溶液などが例示される。次に、上記の塗布液がノズルから噴射されることにより、当該塗布液が反応容器110の内部に塗布される。例えば、塗布液が、反応容器110の内面114の少なくとも一部に塗布される。上記の塗布液をノズルから噴射するためのキャリアとしては、窒素、空気、水蒸気などが例示される。上記のノズルは、反応容器110の比較的上方(上段と称される場合がある。)に設けられた噴出口に配されてよい。組成物を塗布する手順の詳細は後述される。
【0162】
(重合装置100の各部の材質)
重合装置100の各部の材質は、機械的強度、耐食性、伝熱生などを考慮して適宜決定される。例えば、攪拌軸122、攪拌翼124、バッフル130及び/又は冷却管140に用いられる材料としては、高クロム高純度フェライト系ステンレス鋼、2相ステンレス鋼、オーステナイト系ステンレス鋼などのステンレス鋼が例示される。これらの材料は、伝熱性及び耐食性に優れる。
【0163】
反応容器110の本体112の材料としては、炭素鋼、ステンレス鋼、ニッケル合金、チタン合金、アルミ合金などが例示される。反応容器110の内面114の材料としては、炭素鋼、ステンレス鋼、ニッケル合金、チタン合金、アルミ合金などが例示される。反応容器110の内面114の材料は、ステンレスを含むクラッド鋼であってもよい。上記のクラッド鋼の外層の材料は炭素鋼であることが好ましく、当該クラッド鋼の内層の材料はステンレス鋼であることが好ましい。
【0164】
反応容器110の本体112及び/又は内面114の表面には、必要に応じて、研磨加工が施されてよい。研磨加工としては、機械研磨、電解研磨などが例示される。反応容器110の本体112及び/又は内面114の表面には、必要に応じて、メッキ加工が施されてもよい。
【0165】
(重合装置100の用途)
上述されたとおり、重合装置100は、重合体の製造に用いられる。重合方式としては、懸濁重合、乳化重合、塊状重合、溶液重合などが例示される。重合体の製造においては、乳化剤、安定剤、滑剤、可塑剤、pH調整剤、連鎖移動剤などの各種の添加剤が用いられてもよい。これにより、例えば、重合体スケールの付着がより効果的に防止され得る。
【0166】
懸濁重合においては、例えば、まず、反応容器110に水及び分散剤が仕込まれた後、反応容器110に重合開始剤が仕込まれる。水、分散剤及び重合開始剤の量は、例えば、後述される単量体100質量部に対して水20~500質量部、分散剤0.01~30質量部及び重合開始剤0.01~5質量部である。
【0167】
次に、反応容器110の内部が排気される。一実施例によれば、反応容器110の内部が、約0.001~101kPa・G(約0.01~760mmHg)に減圧される。他の実施例によれば、反応容器110の内部が大気圧に調整される。次に、反応容器110の内圧が、例えば、49~2940kPa・G(0.5~0.5kgf/cm・G)となる量の単量体が仕込まれる。
【0168】
その後、反応容器110の内部の温度が予め定められた反応温度に調整される。これにより、重合反応が開始する。上記の反応温度は、例えば、30~150℃である。重合時の反応温度は、重合される単量体の種類によって異なる。例えば、塩化ビニルの重合の場合、反応温度は30~80℃である。例えば、スチレンの重合の場合、反応温度は50~150℃である。
【0169】
重合反応が進行している間、必要に応じて、水、分散剤及び重合開始剤の一種又は二種以上が添加される。その後、反応容器110の内圧が0~686kPa・G(0~7kgf/cm・G)にまで低下した時点、又は、ジャケット170の流路172に流入及び流出させる冷却水の入口温度と出口温度との差が予め定められた値よりも小さくなった時点(つまり、重合反応による発熱がなくなった時点である。)で、重合反応が終了したと見做される。
【0170】
溶液重合においては、重合媒体として水の代わりに有機溶媒が用いられる。有機溶媒としては、トルエン、キシレン、ピリジンなどが例示される。溶液重合においても、必要に応じて分散剤が用いられる。その他の条件及び手順は、懸濁重合と同様であってよい。
【0171】
塊状重合においては、懸濁重合と同様の手順により反応容器110の内部が排気され、反応容器110に単量体及び重合開始剤が仕込まれた後、反応容器110の内部の温度が予め定められた反応温度に調整される。上記の反応温度は、例えば、-10~250℃である。なお、例えば、塩化ビニルの重合の場合、反応温度は30~80℃である。例えば、スチレンの重合の場合、反応温度は50~150℃である。
【0172】
より具体的には、重合装置100は、各種のビニル系単量体、例えば、エチレン、プロピレン等のオレフィン類、塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニル類、酢酸ビニル等のビニルエステル類、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル類、メタクリル酸メチル等の(メタ)アクリル酸エステル類、マレイン酸もしくはフマル酸の金属塩もしくはエステル類、スチレン等の芳香族ビニル類、ブタジエン、クロロプレン、イソプレン等のジエン系単量体、アクリロニトリル等を重合して重合体を生産する用途に用いられる。重合装置100は、塩化ビニル又はこれを主体とする単量体混合物を重合して重合体を生産する用途に、特に好適に用いられる。
【0173】
重合装置100を用いて重合体が生産される場合、各原料を重合装置の供給口(図示せず)より供給し、反応容器110の内部に仕込まれた反応化合物の温度が予め定められた温度に到達した時点で、バッフル130、冷却管140、及び、ジャケット170のそれぞれに冷媒を流通させて、当該反応化合物の除熱が開始される。一方、還流コンデンサ180による除熱を開始する時期は、重合転化率が4%に達した以後であることが好ましく、重合転化率が4~20%の時点であることがより好ましい。
【0174】
重合装置100を用いて重合体が生産される場合であっても、各種の重合条件は、公知の重合条件と同様であってよい。上記の重合条件としては、原料などの仕込み割合、原料などの仕込み方法、重合温度などが例示される。
【0175】
例えば、重合装置100を用いて、懸濁重合により塩化ビニル系重合体が生産される場合、水性媒体、塩化ビニル単量体、場合によっては他のコモノマー、分散助剤、重合開始剤等の仕込みは、公知の塩化ビニル系重合体の製造方法と同様にして実行される。また、重合条件も、公知の塩化ビニル系重合体の製造方法と同様であってよい。
【0176】
重合される単量体としては、塩化ビニル単独のほか、塩化ビニルを主体とする単量体混合物(塩化ビニル50質量%以上)を用いることができる。塩化ビニルと共重合されるコモノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル等のアクリル酸エステルもしくはメタクリル酸エステル;エチレン、プロピレン等のオレフィン;無水マレイン酸;アクリロニトリル;スチレン;塩化ビニリデン;その他塩化ビニル共重合可能な単量体が例示される。
【0177】
上記の分散助剤としては、塩化ビニルの水性媒体中での重合の際に通常使用される化合物が用いられる。上記の分散助剤としては、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等の水溶性セルロースエーテル;部分ケン化ポリビニルアルコール、アクリル酸重合体;ゼラチン等の水溶性ポリマーなどが例示される。上記の分散助剤は、単独で使用されてもよく、2種以上が組み合わされて使用されてもよい。分散助剤は、例えば、仕込まれる単量体100質量部あたり0.01~5質量部で添加される。
【0178】
重合開始剤としては、塩化ビニル系の重合において通常使用される化合物が用いられる。上記の重合開始剤としては、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジエトキシエチルパーオキシジカーボネート等のパーカーボネート化合物;α-クミルパーオキシネオデカネート、t-ブチルパーオキシネオデカネート、t-ブチルパーオキシネオヘプタノエート、ヘキシルパーオキシネオデカネート、オクチルパーオキシネオデカネート等のパーエステル化合物;アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキシド、2,4,4-トリメチルペンチル-2-パーオキシフェノキシアセテート等の過酸化物;アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物などが例示される。重合開始剤の他の例としては、ビス(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、t-ブチルパーオキシピバレート、ビス(2-エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、ジベンゾイルパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、2,4-ジクロルベンゾイルパーオキサイド、α,α'-アゾビスイソブチロニトリル、α,α'-アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、ジ-2-エチルヘキシルジパーオキシイソフタレート、過硫酸カリウム及び過硫酸アンモニウムなどが例示される。
【0179】
上記の重合開始剤は、単独で使用されてもよく、2種以上が組み合わされて使用されてもよい。重合開始剤は、例えば、単量体100質量部あたり0.01~3質量部で添加されてもよく、単量体100質量部あたり0.05~3質量部添加されることが好ましい。
【0180】
さらに必要に応じて、塩化ビニルの重合に適宜使用される重合調整剤、連鎖移動剤、pH調整剤、緩衝剤、ゲル化改良剤、帯電防止剤、スケール防止剤等を添加することできる。なお、本発明で得られる塩化ビニル重合体の還元粘度(K値)については、本発明の装置を使用することで、所望の範囲の重合体を得ることができるが、好ましくは40~90の範囲になる重合体を得ることができる。
【0181】
pH調整剤又は緩衝剤としては、クエン酸、クエン酸三ナトリウム、クエン酸二アンモニウム、クエン酸三アンモニウム、フタル酸水素カリウム、硝酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸二カリウム、リン酸三カリウムなどが例示される。上記のpH調整剤又は緩衝剤は、単独で使用されてもよく、2種以上が組み合わされて使用されてもよい。
【0182】
重合装置100は、反応装置の一例であってよい。反応容器110は、反応器の一例であってよい。反応容器110の内面114は、反応器の内壁面の一例であってよい。スケール防止層116は、縮合物層の一例であってよい還流コンデンサ180は、凝縮部の一例であってよい。付加縮合物の原液は、組成物の一例であってよい。調整済溶液は、組成物の一例であってよい。特定の付加縮合物は、第1化合物の一例であってよい。界面活性化合物は、第2化合物の一例であってよい。
【0183】
(別実施形態の一例)
本実施形態においては、反応容器110の内面114にスケール防止層116が形成される場合を例として、重合装置100の詳細が説明された。しかしながら、重合装置100は本実施形態に限定されない。他の実施形態において、反応容器110の内面114に加えて、攪拌機120、バッフル130及び冷却管140の少なくとも1つの表面に、スケール防止層116が形成されていてもよい。
【0184】
図2は、組成物の製造方法の一例を概略的に示す。本実施形態によれば、まず、ステップ222(ステップが、単にSと省略される場合がある。)において、原料溶液が準備される。また、S224において、カルボニル化合物が準備される。
【0185】
原料溶液は、例えば、溶媒と、芳香族化合物と、触媒と、界面活性剤とを含む。界面活性剤は、芳香族化合物に対して0.01当量以上の量となるように調整される。界面活性剤は、芳香族化合物に対して0.01~5当量の量となるように調整されてもよい。
【0186】
芳香族化合物及びカルボニル化合物との比は、使用する芳香族化合物、カルボニル化合物、反応溶媒及び触媒の種類、反応時間、反応温度等により適宜選定される。原料溶液は、例えば、芳香族化合物1モルに対して0.1~10モルのカルボニル化合物を含む。原料溶液は、芳香族化合物1モルに対して0.5~3.0モルのカルボニル化合物を含んでもよい。
【0187】
なお、原料溶液に界面活性剤が添加されるタイミングは、縮合反応が終了する前であればよく、特に限定されない。界面活性剤が添加されていない状態で芳香族化合物及びカルボニル化合物が混合された場合、芳香族化合物及びカルボニル化合物が塊化する場合があり得る。そのため、界面活性剤は、芳香族化合物及びカルボニル化合物が混合される前に、溶媒中に添加されることが好ましい。
【0188】
次に、S232において、原料溶液と、カルボニル化合物とが混合される。また、S234において、触媒及び界面活性剤の存在下において、溶媒中で、芳香族化合物及びカルボニル化合物を反応させる。これにより、芳香族化合物及びカルボニル化合物の縮合反応が起こり、芳香族化合物及びカルボニル化合物の付加縮合物(例えば、上述された特定の付加縮合物である。)が形成される。S234においては、反応溶媒中で、触媒及び界面活性剤の存在下において、芳香族化合物及びカルボニル化合物(反応成分と称される場合がある。)を反応させる。
【0189】
上記の反応は、温度及び/又は時間に関する予め定められた条件を満たすように実施される。上記の反応を開始、進行及び又は停止させることを目的として、温度及び/又は時間に関する条件の異なる複数の工程が実施されてもよい。上記の反応が開始された後、温度及び時間に関する条件の異なる複数の工程が実施されてもよい。
【0190】
温度に関する条件は特に限定されるものではないが、温度に関する条件としては、室温~200℃という条件、30~150℃という条件などが例示される。時間に関する条件は特に限定されるものではないが、時間に関する条件としては、1~100時間という条件、1~30時間という条件などが例示される。温度及び時間に関する条件は、温度に関する任意の条件と、時間に関する任意の条件との組み合わせであってよい。温度及び時間に関する条件としては、室温~200℃で1~100時間という条件が例示される。
【0191】
上記の縮合反応を行う媒体のpHは、1~14の範囲であってよい。上記の媒体のpHは、任意のpH調整剤により調整され得る。pH調整剤としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物が用いられる。これにより、縮合物の溶解性が良好に保たれる。
【0192】
これにより、付加縮合物(例えば、上述された特定の付加縮合物である。)を含む組成物が得られる。組成物中の付加縮合物は、芳香族化合物由来の構成単位2個以上(好ましくは2個~50個)が、それぞれ、カルボニル化合物由来の構成単位1個を介して結合している芳香族化合物多量体である。付加縮合物には、例えば、芳香族化合物二量体とともに、芳香族化合物三量体(例えば、A-B-A-B-Aで表される化合物である。)から、芳香族化合物50量体(例えば、A-B-A-…-B-Aで表され、Aが50個含まれる化合物である。)までが含まれる。
【0193】
本実施形態によれば、原料溶液に界面活性剤が添加されていることから、付加縮合物の粗大な粒子の生成が抑制される。その結果、上述されたキュムラント径が19nm未満である付加縮合物の粒子群、及び/又は、上述された小粒子の割合が90%以上である付加縮合物の粒子群、若しくは、上述されたD90が10nm未満である付加縮合物の粒子群が得られる。上記の付加縮合物は、例えば、上述された特定の付加縮合物である。
【0194】
図3は、重合体の製造方法の一例を概略的に示す。本実施形態によれば、まず、S322において、重合装置100が準備される。例えば、反応容器110の内面114に、スケール防止層116が形成される。スケール防止層116は、例えば、下記の手順に従って形成される。
【0195】
まず、ジャケット170の流路172に熱水、水蒸気などの加熱媒体を流入させることで、反応容器110の内面114を予熱する。例えば、内面114が20℃以上、好ましくは30~95℃となるように、内面114の予熱処理を実施する。
【0196】
また、上述された組成物を含む塗布液を準備する。例えば、芳香族化合物とカルボニル化合物との付加縮合物(例えば、上述された特定の付加縮合物である。)を含む組成物を、エタノール及び及び脱イオン水で希釈することで、塗布液を調整する。塗布液は、例えば、塗布液の質量に対する、上記の付加縮合物の作製に用いられた芳香族化合物の質量が0.2wt%となるように調整される。エタノールは、例えば、塗布液中のエタノール濃度が6wt%となるように添加される。
【0197】
次に、例えば、洗瓶を用いて、塗布液のかけ流し塗布を実施する。例えば、塗り残しのないように、反応容器110の内面114の全面に塗布液を塗布する。その後、反応容器110の内面114の温度を維持したまま、1~60分間程度放置し、塗布液を乾燥させる。塗布液が乾燥し、塗膜が形成されていることを確認した後、水を用いて反応容器110の内面114を洗浄する。これにより、反応容器110の内面114に、スケール防止層116が形成される。
【0198】
また、S324において、単量体を含む混合物(原材料混合物と称される場合がある)が準備される。S326において、原材料混合物が反応容器110の内部に貯留される。これにより、重合反応の仕込処理が完了する。
【0199】
次に、S332において、単量体の重合反応が開始される。また、S334において、単量体の重合反応が終了される。これにより、重合体が得られる。
【0200】
上述されたとおり、本実施形態によれば、反応容器110の内面114に、上述された組成物に由来するスケール防止層116が形成されている。組成物は粗大な粒子の含有量が非常に小さく、スケール防止層116は、芳香族化合物及びカルボニル化合物の縮合物の緻密な塗膜を有する。これにより、重合体スケールの形成及び蓄積が抑制される。その結果、重合体の生産性が向上する。
【実施例
【0201】
以下、実施例を示し、本発明を具体的に説明する。なお、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0202】
(合成例1)
下記の手順に従って、付加縮合物の原液及び調整済溶液を作製した。まず、窒素を流して十分窒素置換しておいた反応器に脱イオン水1395mLを仕込み、脱イオン水を攪拌しながら反応器内を35℃に昇温することで、予備昇温を実施した。反応器内の脱イオン水に、水酸化ナトリウム22g、ドデシル硫酸ナトリウム150g及びα-ナフトール150gを添加した後、30分間撹拌した。その後、反容器内の混合物に、37重量%ホルムアルデヒド水溶液90.0gを添加した。
【0203】
次に、反応器内の温度を55℃に昇温し、当該反応器内の混合物を2.5時間反応させた。その後、反応器内の温度を85℃に昇温し、当該反応器内の混合物を1.5時間反応させた。その後、反応器の冷却を開始し、反応器内の温度を40℃にまで下げた。これにより、原液(原液No.1と称される場合がある。)を得た。原液中の溶媒の含有率は95質量%以下であった。
【0204】
また、反応器内の温度が40℃にまで下がった時点で、当該反応器内の混合物に、水酸化ナトリウム7.8g、50重量%myo-イノシトール-1,2,3,4,5,6-六りん酸水溶液20.0g、脱イオン水155mL、及び、亜二チオン酸ナトリウム10gの混合溶液を添加した。その後、反応器内の混合物を90分間撹拌した。これにより、調整済溶液(調整済溶液No.1と称される場合がある。)を得た。なお、myo-イノシトール-1,2,3,4,5,6-六りん酸水溶液のHLB値は150.8程度であり、亜二チオン酸ナトリウムのHLB値は167.5程度である。
【0205】
(合成例2)
予備昇温前の脱イオン水の仕込量が1445mLであった点、及び、ドデシル硫酸ナトリウム150gの代わりに1-オクタンスルホン酸ナトリウム100gが添加された点を除き、合成例1と同様の手順により、付加縮合物の原液(原液No.2と称される場合がある。)及び調整済溶液(調整済溶液No.2と称される場合がある。)を作製した。原液中の溶媒の含有率は95質量%以下であった。
【0206】
(合成例3)
予備昇温前の脱イオン水の仕込量が1245mLであった点、及び、ドデシル硫酸ナトリウム150gの代わりに、40%水溶液-ブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム300gが添加された点を除き、合成例1と同様の手順により、付加縮合物の原液(原液No.3と称される場合がある。)及び調整済溶液(調整済溶液No.3と称される場合がある。)を作製した。原液中の溶媒の含有率は95質量%以下であった。
【0207】
(合成例4)
予備昇温前の脱イオン水の仕込量が1405mLであった点、及び、ドデシル硫酸ナトリウム150gの代わりに、ラウリン酸ナトリウム140gが添加された点を除き、合成例1の原液No.1と同様の手順により、付加縮合物を作製した。合成例4において、付加縮合物はゲル(組成物No.4と称される場合がある。)として得られた。また、上記の相違点を除き、合成例1の調整済溶液No.1と同様の手順により、組成物No.4を調整した。これにより、ゲル状の組成物(調整済組成物No.4と称される場合がある。)を得た。組成物No.4中の溶媒の含有率は95質量%以下であった。
【0208】
なお、組成物No.4を40℃に加熱したところ、ゲル化の性質が消失し、液体の組成物(調整済溶液No.4と称される場合がある。)が得られた。また、調整済組成物No.4を希釈することでゲル化の性質が消失し、上述された塗布液を調整することができた。以上のことから、組成物No.4及び調整済組成物No.4は、スケール付着防止剤として利用可能であることがわかる。
【0209】
(合成例5)
予備昇温前の脱イオン水の仕込量が1185mLであった点、及び、ドデシル硫酸ナトリウム150gの代わりに、N-メチルピロリドン(NMP)360gが添加された点を除き、合成例1と同様の手順により、付加縮合物の原液(原液No.5と称される場合がある。)及び調整済溶液(調整済溶液No.5と称される場合がある。)を作製した。原液中の溶媒の含有率は95質量%以下であった。
【0210】
(合成例6)
予備昇温前の脱イオン水の仕込量が1210mLであった点、及び、37重量%ホルムアルデヒド水溶液の添加量が65.0gであった点を除き、合成例5と同様の手順により、付加縮合物の原液(原液No.6と称される場合がある。)及び調整済溶液(調整済溶液No.6と称される場合がある。)を作製した。原液中の溶媒の含有率は95質量%以下であった。
【0211】
(合成例7)
予備昇温前の脱イオン水の仕込量が1225mLであった点、及び、37重量%ホルムアルデヒド水溶液の添加量が50.0gであった点を除き、合成例5と同様の手順により、付加縮合物の原液(原液No.7と称される場合がある。)及び調整済溶液(調整済溶液No.7と称される場合がある。)を作製した。原液中の溶媒の含有率は95質量%以下であった。
【0212】
(合成例8)
予備昇温前の脱イオン水の仕込量が1235mLであった点、及び、37重量%ホルムアルデヒド水溶液の添加量が40.0gであった点を除き、合成例5と同様の手順により、付加縮合物の原液(原液No.8と称される場合がある。)及び調整済溶液(調整済溶液No.8と称される場合がある。)を作製した。原液中の溶媒の含有率は95質量%以下であった。
【0213】
(比較例1)
予備昇温前の脱イオン水の仕込量が1545mLであった点、及び、ドデシル硫酸ナトリウムが添加されなかった点を除き、合成例1と同様の手順により、付加縮合物の原液及び調整済溶液を作製した。
【0214】
(比較例2)
ドデシル硫酸ナトリウム150gの代わりに、1-ドデシルピリジニウムクロリド150gが添加された点を除き、合成例1と同様の手順により、付加縮合物の原液及び調整済溶液を作製した。
【0215】
(比較例3)
予備昇温前の脱イオン水の仕込量が1455mLであった点、及び、ドデシル硫酸ナトリウム150gの代わりに、ヘキサン酸ナトリウム90gが添加された点を除き、合成例1と同様の手順により、付加縮合物の原液及び調整済溶液を作製した。
【0216】
(比較例4)
予備昇温前の脱イオン水の仕込量が1445mLであった点、及び、ドデシル硫酸ナトリウム150gの代わりに、1-ブタンスルホン酸ナトリウム100gが添加された点を除き、合成例1と同様の手順により、付加縮合物の原液及び調整済溶液を作製した。
【0217】
(比較例5)
予備昇温前の脱イオン水の仕込量が1240mLであった点、及び、37重量%ホルムアルデヒド水溶液の添加量が35.0gであった点を除き、合成例5と同様の手順により、付加縮合物の原液(原液No.9と称される場合がある。)及び調整済溶液(調整済溶液No.9と称される場合がある。)を作製した。
【0218】
(比較例6)
予備昇温前の脱イオン水の仕込量が1245mLであった点、及び、37重量%ホルムアルデヒド水溶液の添加量が30.0gであった点を除き、合成例5と同様の手順により、付加縮合物の原液(原液No.10と称される場合がある。)及び調整済溶液(調整済溶液No.10と称される場合がある。)を作製した。
【0219】
(各化合物のHLB値)
表1に、合成例1~8及び比較例2~6において界面活性剤として用いられた化合物のHLB値を示す。上述されたとおり、HLB値は上記の式(3)に基づいて導出された値である。また、表1に、各化合物による付加縮合物の不溶化防止の可否を示す。表1において、「可能」は、当該化合物の添加により付加縮合物の塊化が防止されたことを示す。表1において、「不可能」は、当該化合物の添加によっても、付加縮合物が塊化したことを示す。付加縮合物の塊化の有無は、目視により確認された。
【0220】
【表1】
【0221】
表1によれば、スルホン酸基、カルボキシ基、硫酸エステル基、アミド基を有する界面活性剤が塊化防止に有効であることがわかる。また、表1によれば、塊化防止には、特定の置換基を有する界面活性剤を添加するよりも、HLB値が11超54未満(例えば、12~53である)の界面活性剤を添加することが重要であることがわかる。表1によれば、界面活性剤のHLB値は、15~50であることが好ましく、20~50であることがさらに好ましいことがわかる。
【0222】
特に、反応溶媒の温度が、芳香族化合物及びカルボニル化合物の縮合反応が進行し始める温度になる前に、HLB値が12~53である界面活性剤が反応溶媒に添加されることで、縮合反応生成物の塊化が顕著に防止される。縮合反応が進行し始める温度は反応条件に依存するが、上記の界面活性剤は、例えば、反応系の温度が35℃以下の状態で添加されることが好ましい。上記の反応条件としては、反応系のpH、芳香族化合物及びカルボニル化合物のモル比などが例示される。また、塊化の防止に必要な界面活性剤の量は、界面活性剤と芳香族化合物との相性によるが、例えば、芳香族化合物に対して0.01当量以上の界面活性剤が添加されることが望ましい。
【0223】
(原液及び調整済溶液の評価)
(評価項目及び評価手法)
合成例1~8及び比較例1~6のそれぞれにおいて作製された調整済溶液の25℃における屈折率、25℃における粘度、及び、25℃におけるキュムラント径を測定した。各物性は、下記の手順に従って測定された。また、下記の手順により、合成例1~8及び比較例1~6のそれぞれにおいて作製された調整済溶液の均一性を評価した。なお、調整済溶液が均一である場合、当該調整済溶液に対応する原液も均一であると推定される。
【0224】
(屈折率)
デジタル屈折計(RX-7000i、株式会社アタゴ製)を用いて、各調製済溶液の屈折率を測定した。RX-7000iを用いた測定において、モードは1に設定された。測定温度は25.0℃に設定された。連続測定回数は1に設定された。設定待ち時間は0に設定された。
【0225】
まず、蒸留水または脱イオン水を用いてRX-7000iを校正した。次に、蒸留水または脱イオン水の屈折率を測定し、屈折率nD=1.33250±0.00002以内であることを確認した。蒸留水または脱イオン水の屈折率が上記の範囲内であることが確認された場合、サンプルステージを洗浄した後、各調製済溶液の屈折率を測定した。
【0226】
(粘度)
デジタル回転粘度計(DV3T、AMETEK.Inc.製)と、循環恒温槽(MPCコントローラー搭載モデルMPC-K6、Peter Huber Kaltemaschinenbau AG製)とを用いて、各調製済溶液の粘度を測定した。DV3Tを用いた測定において、アダプターは少量サンプルアダプターを用いた。スピンドルはSC4-18を用いた。サンプルチャンバーはSC4-13RPを用いた。ウォータージャケットはSC4-45Yを用いた。ロケーティングチャンネルアッセンブリーはSC4-46Yを用いた。MPC-K6のジャケット温度は25.0℃に設定された。MPC-K6の回転数は250RPMに設定された。サンプルの粘度が大きい場合には、スピンドルまたは回転数を調整した。
【0227】
まず、サンプルチャンバーSC4-13RPに調製済溶液6.7mLを投入した。次に、上記のサンプルチャンバーに温度プローブを接続した。その後、粘度計が取り付けられたウォータージャケットに、上記のサンプルチャンバーを取り付けた。また、サンプルチャンバーの中にスピンドルを入れ、スピンドルを粘度計にセットした。その後、サンプルチャンバー内の温度が設定温度になるまで待機した。
【0228】
サンプルチャンバー内の温度が設定温度になった後、粘度の測定を開始した。粘度の測定値が安定した時点における値を読み取り、当該サンプルの粘度として記録した。粘度の測定値が、10秒間にわたって±0.01mPa・sの範囲に収まっている場合に、粘度の測定値が安定したと判断した。
【0229】
(キュムラント径及び粒度分布)
ゼータ電位・粒径・分子量測定システム(ELSZ-2000ZS、大塚電子株式会社製)を用いて、各調製済溶液に含まれる粒子群のキュムラント径及び粒度分布を測定した。ELSZ-2000ZSにおける測定及び解析用のソフトウエアとして、ELSZ-2000を用いた。
【0230】
ELSZ-2000ZSを用いた測定において、測定温度は25.0℃に設定された。散乱角度は165℃(後方散乱)に設定された。積算回数は50回に設定された。繰り返し測定回数は1回に設定された。測定光源は、高出力半導体レーザー(665.3nm)であった。溶媒パラメータとしては、溶媒ではなく各サンプルの屈折率および粘度を用いた。
【0231】
解析手法は、キュムラント法による平均粒子径解析(キュムラント法解析と称される場合がある。)及びCONTIN法による粒度分布解析であった。相関チャンネル数は、475chであった。相関方法は、TDを用いた。ピンホールは50μmであった。解析範囲は、サンプルにより調整された。解析範囲は、例えば、0.1~1000.0nmまたは0.1~100000nmであった。フィッティング範囲は、1.003-2に設定された。ノイズカットレベルは、0.3%に設定された。散乱ファクタは、RGDに設定された。サイドカットは、Left=0及びRight=0に設定された。測定待ち時間は、60秒に設定された。ダストカットは、10回に設定された。
【0232】
各調製済溶液のサンプルを蓋つきの1cm角セルに窒素雰囲気下で充填した。上記のセルの蓋を閉めて、サンプルを当該セルの内部に密閉した。上記のセルの表面の汚れをふき取った後、当該セルをELSZ-2000ZSのセルをサンプルホルダーに設置した。
【0233】
次に、上述された測定及び解析用のソフトウエアであるELSZ-2000を操作して、キュムラント径の測定を開始した。測定が終了した時点で、ELSZ-2000から出力された平均粒径の値を読み取り、記録した。ELSZ-2000から出力された平均粒径の値が10nm以上であった場合には、ELSZ-2000を操作して、個数基準の粒度分布(粒子径分布と称される場合がある。)を表示させ、0.6nm以上10nm未満の粒子の存在割合を確認した。
【0234】
(溶液の均一性)
まず、孔径20μmのナイロンフィルターの質量を測定した。次に、上記のナイロンフィルターを用いて各調整済溶液をろ過した。また、ろ過後のナイロンフィルターの質量を測定した。次に、ろ過の前後におけるフィルターの質量の変化を確認した。上記のろ過の前後においてフィルターの質量に変化がなかった場合、サンプルには20μm以上の沈殿物又は凝集物が含まれていないと見做し、当該サンプルは均一な溶液であったと判断した。なお、孔径20μmのナイロンフィルターを用いてサンプルをろ過した場合において、当該ろ過の前後における当該ナイロンフィルターの質量の差が1%以下である場合、ろ過の前後においてフィルターの質量に変化がなかったものと判断した。
【0235】
(評価結果)
(合成例1)
調整済溶液No.1の25℃での屈折率は、1.3737であった。調整済溶液No.1の25℃での粘度は、3.05mPa・sであった。調整済溶液No.1の25℃でのキュムラント径は、2.0nmであった。個数基準の粒度分布を確認したところ、0.6nm以上10nm未満の粒子の存在割合は90%以上であった。また、調整済溶液No.1は均一であった。
【0236】
(合成例2)
調整済溶液No.2の25℃での屈折率は、1.3740であった。調整済溶液No.2の25℃での粘度は、3.28mPa・sであった。調整済溶液No.2の25℃でのキュムラント径は、3.2nmであった。個数基準の粒度分布を確認したところ、0.6nm以上10nm未満の粒子の存在割合は90%以上であった。また、調整済溶液No.2は均一であった。
【0237】
(合成例3)
調整済溶液No.3の25℃での屈折率は、1.3788であった。調整済溶液No.3の25℃での粘度は、3.54mPa・sであった。調整済溶液No.3の25℃でのキュムラント径は、2.0nmであった。個数基準の粒度分布を確認したところ、0.6nm以上10nm未満の粒子の存在割合は90%以上であった。また、調整済溶液No.3は均一であった。
【0238】
(合成例4)
上述されたとおり、組成物No.4及び調整済組成物No.4は、25℃では均一にゲル化した。そのため、調整済組成物No.4の屈折率、粘度及びキュムラント径を測定することはできなかった。
【0239】
(合成例5)
調整済溶液No.5の25℃での屈折率は、1.3780であった。調整済溶液No.5の25℃での粘度は、4.56mPa・sであった。調整済溶液No.5の25℃でのキュムラント径は、1.8nmであった。個数基準の粒度分布を確認したところ、0.6nm以上10nm未満の粒子の存在割合は90%以上であった。また、調整済溶液No.5は均一であった。
【0240】
(合成例6)
調整済溶液No.6の25℃での屈折率は、1.3774であった。調整済溶液No.6の25℃での粘度は、3.10mPa・sであった。調整済溶液No.6の25℃でのキュムラント径は、3.8nmであった。個数基準の粒度分布を確認したところ、0.6nm以上10nm未満の粒子の存在割合は90%以上であった。また、調整済溶液No.6は均一であった。
【0241】
(合成例7)
調整済溶液No.7の25℃での屈折率は、1.3766であった。調整済溶液No.7の25℃での粘度は、3.34mPa・sであった。調整済溶液No.7の25℃でのキュムラント径は、6.9nmであった。個数基準の粒度分布を確認したところ、0.6nm以上10nm未満の粒子の存在割合は90%以上であった。また、調整済溶液No.7は薄く白濁していたが、20μm以上の沈殿物又は凝集物は観察されなかった。つまり、調整済溶液No.7は均一であった。
【0242】
(合成例8)
調整済溶液No.8の25℃での屈折率は、1.3695であった。調整済溶液No.8の25℃での粘度は、3.25mPa・sであった。調整済溶液No.8の25℃でのキュムラント径は、11.2nmであった。個数基準の粒度分布を確認したところ、0.6nm以上10nm未満の粒子の存在割合は、90%以上であった。また、調整済溶液No.8は薄く白濁していたが、20μm以上の沈殿物又は凝集物は観察されなかった。つまり、調整済溶液No.8は均一であった。
【0243】
(比較例1~4)
反応途中に、撹拌を不安定にさせるほどの大きな凝集物が発生した。反応が進行しても上記の凝集物は再度分散することはなく、塊化した。つまり、原液及び調整済溶液は不均一であった。また、屈折率、粘度及びキュムラント径を測定することはできなかった。
【0244】
(比較例5)
調整済溶液No.9の25℃での屈折率は、1.3735であった。調整済溶液No.9の25℃での粘度は、2.58mPa・sであった。調整済溶液No.9の25℃でのキュムラント径は、19.9nmであった。個数基準の粒度分布を確認したところ、0.6nm以上10nm未満の粒子の存在割合は、90%未満であった。また、調整済溶液No.9は薄く白濁していたが、20μm以上の沈殿物又は凝集物は観察されなかった。つまり、調整済溶液No.9は均一であった。
【0245】
(比較例6)
調整済溶液No.10の25℃での屈折率は、1.3679であった。調整済溶液No.10の25℃での粘度は、2.4mPa・sであった。調整済溶液No.10の25℃でのキュムラント径は、2303nmであった。個数基準の粒度分布を確認したところ、0.6nm以上10nm未満の粒子の存在割合は、90%未満であった。また、調整済溶液No.10は薄く白濁していたが、20μm以上の沈殿物又は凝集物は観察されなかった。つまり、調整済溶液No.10は均一であった。
【0246】
(組成物によるスケール付着防止効果)
(スケール防止層116の形成)
上記の調整済溶液No.1~No.10を用いて、下記の手順により、反応容器110の内面114に、調整済溶液No.1~No.10に由来する塗膜を有するスケール防止層116を形成した。
【0247】
まず、調整済溶液No.1~No.10のそれぞれを、α-ナフトール及び/又はエタノールにより希釈して、塗布液No.A~Jを調整した。塗布液No.A~Jは、塗布液中のα-ナフトール含有量が0.2wt%であり、塗布液中のエタノール含有量が6.0wt%となるように調製された。
【0248】
具体的には、α-ナフトール含有量が7.5wt%の調製済溶液を用いて、下記の手順により、20kgの塗布液を調製した。まず、脱イオン水18.26kg、エタノール1.20kgを混合し、十分に攪拌した。次に、脱イオン水及びエタノールの混合溶液と、各調製済溶液0.54kgとを混合し、十分に攪拌した。これにより、各塗布液が調整された。表2に、調製済溶液No.1~10のそれぞれに対応する塗布液A~Jの組成を示す。
【0249】
【表2】
【0250】
次に、反応容器110として、内容積0.04mのステンレス製重合器を準備した。ジャケット170の流路172に熱水を流入させて、反応容器110の内面114の温度を50℃に加熱した。
【0251】
塗布液No.A~Jのそれぞれについて、洗瓶を用いてかけ流し塗布を実施することで、反応容器110の内面114に各塗布液を塗布した。塗布された塗布液を15分間乾燥させた後、反応容器110の内面114を水洗した。これにより、反応容器110の内面114に塗膜が形成された。
【0252】
(スケール付着防止効果の評価)
下記の手順により、塗布液No.A~Jのそれぞれに由来する塗膜のスケール付着防止効果を確認した。塗布液No.A~Jのそれぞれに由来する塗膜を有するスケール防止層116が形成された反応容器110の内部に、脱イオン水200重量部、部分けん化ポリビニルアルコール0.020重量部及び2-ヒドロキシプロピルメチルセルロース(商品名:メトローズ、信越化学工業社製)0.026重量部を投入した。また、反応容器110の内部を50mmHgになるまで脱気した後、反応容器110の内部に、塩化ビニル単量体(VCM)100重量部を仕込んだ。
【0253】
なお、信越化学工業社製のメトローズは、メトキシル基置換度が1.9であり、2-ヒドロキシプロポキシル基置換度が0.25であった。メトキシル基置換度は、セルロースのグルコース環単位中の水酸基がメトキシル基で置換された平均個数を示す。2-ヒドロキシプロポキシル基置換度は、セルロースのグルコース環単位当たりに付加したヒドロキシアルコキシル基のモル数を示す。
【0254】
次に、反応容器110の内部に貯留された反応混合物を攪拌しながら、t-ブチルパーオキシネオデカネート0.03重量部をポンプで圧入した。その後、反応容器110の内部に貯留された原材料を攪拌しながら、ジャケット170の流路172に熱水を通水して原材料を加熱した。反応容器110の内部の温度が52℃に到達した時点で、ジャケット170の流路172に冷却水を通水し、反応容器110の内部の温度を52℃に維持しながら、重合反応を進行させた。反応容器110の内部の圧力が5kgf/cm・G(0.49MPa・G)に到達した時点で、重合反応を終了させた。未反応単量体を回収した後、反応混合物であるスラリーを反応容器110のから取り出した。反応混合物を脱水乾燥して、塩化ビニル重合体を得た。
【0255】
(評価項目及び評価手法)
重合反応が終了した後、反応容器110の内面114における塗膜の蓄積の程度、及び、スケール量を目視により観察した。塗膜の蓄積の程度は、反応容器110の内面114における干渉模様の有無により判断した。上記の干渉模様は、薄膜が引き起こす現象により観察される模様であり、一般的に目視では、当該箇所の膜厚によって様々な色が観察される。干渉模様が観察された場合、塗膜が蓄積していると判断することができる。
【0256】
表3に、塗布液No.A~Jに由来する塗膜のスケール付着防止効果を示す。塗布液No.A~Jに由来する塗膜は、調整済溶液No.1~No.10(合成例1~8及び比較例5~6で得られた調整済溶液である。)に由来する塗膜、又は、組成物No.1~No.10に由来する塗膜の一例であってよい。上述されたとおり、合成例4で得られた組成物No.4及び調整済組成物No.4は25℃でゲル化したが、組成物No.4を40℃に加熱することで調整済溶液No.4が得られた。調整済溶液No.4を用いて作製された塗布液を塗布及び乾燥して得られた塗膜は、組成物No.4に由来する塗膜の一例であってよい。
【0257】
表3の「蓄積」において、「あり」は、重合後の缶壁に、塗布液の塗膜による干渉模様が確認されたことを示す。表3の「蓄積」において、「なし」は、重合後の缶壁に、塗布液の塗膜による干渉模様が確認されず、重合缶容器の色そのものであったことを示す。表3の「スケール」において、「あり」は、重合後の缶壁の液層部面積に対し、付着したスケールの面積が5%以上であったことを示す。表3の「スケール」において、「微量」は、重合後の缶壁の液層部面積に対し、付着したスケールの面積が1%以上5%未満であったことを示す。表3の「スケール」において、「なし」は、重合後の缶壁の液層部面積に対し、付着したスケールの面積が1%未満であったことを示す。
【0258】
なお、表3において「蓄積」が「なし」である場合、塗布液の塗布及び乾燥が実施された後の時点では、目視により干渉模様が確認されるほどの厚みを有する塗膜が形成されていた。しかしながら、塗布液の乾燥後の水洗において当該塗膜の大部分が流れ落ちた。その結果、塗布液の塗布、乾燥及び水洗が実施された後、重合が開始される前の時点においては、極めて薄い塗膜が形成されていた。一方、表3において「蓄積」が「あり」である場合、塗布液の塗布、乾燥及び水洗が実施された後、重合が開始される前の時点においても、目視により干渉模様が確認されるほどの厚みを有する塗膜が形成されていた。
【0259】
また、表3に、各調整済溶液又は各塗布液に含まれる粒子群のキュムラント径と、各調整済溶液又は各塗布液に含まれる粒子群における0.6nm以上10nm未満の粒子の割合(個数基準)と、各調整済溶液又は各塗布液に含まれる界面活性剤のHLB値とを示す。上述されたとおり、合成例4で得られた組成物No.4及び調整済組成物No.4は25℃でゲル化した。そのため、塗布液Dについては、25℃におけるキュムラント径及び粒度分布を測定していない。
【0260】
なお、合成例1~8においては0.6nm未満の粒子が比較的少なく、0.6nm以上10nm未満の粒子の割合が90%以上である場合、D90は10nm未満であった。また、比較例5~6において、D90は10nmよりも大きかった。
【0261】
【表3】
【0262】
表3によれば、調整済溶液又は塗布液に含まれる粒子群のキュムラント径が0.6nm以上10nm未満である場合には、良好なスケール付着防止効果が得られることがわかる。また、上記のキュムラント径は、例えば、0.6nm以上6.5nm以下であることが好ましく、0.6nm以上5nm以下であることがより好ましく、0.6nm以上5nm未満(例えば、3.1nm以下である。)であることがさらに好ましいことがわかる。キュムラント径は、粒子群の平均粒子径の一例であってよい。
【0263】
ここで、粒子径分析においては、粒子径が大きい粒子ほど散乱強度が強くなる。散乱強度は粒子径の6乗に比例することから、例えば1.0×10nmの粒子1個の散乱強度と、1.0nmの粒子1.0×10個の散乱強度とが、おおよそ同程度となる。そのため、組成物、調整済溶液などのスケール防止剤中に極めて少量の大粒子が混在している場合には、当該スケール防止剤が十分なスケール付着防止効果を有しているにもかかわらず、当該スケール防止剤に含まれる粒子群の平均粒子径(例えば、上述されたキュムラント径である。)が10nm以上であるという事態が生じ得る。
【0264】
そこで、スケール防止剤に含まれる粒子群の粒度分布と、スケール付着防止効果とを検討すると、合成例8に示されるとおり、調整済溶液又は各塗布液に含まれる粒子群のキュムラント径が10nm以上であっても、0.6nm以上10nm未満の粒子の割合が個数基準で90%以上であれば、良好なスケール付着防止効果が得られることがわかる。
【0265】
合成例1~3および合成例5~8の全てにおいて、粒子径分布を個数分布で確認すると0.6nm以上10nm未満の領域に90%以上が存在していたことから、0.6nm以上10nm未満の粒子が緻密な塗膜を形成し、良好なスケール付着防止効果を発揮するために重要であると考えられる。一方、比較例5及び比較例6の粒子径分布を個数分布で表すと、0.6nm以上10nm未満の粒子は90%未満であった。また、比較例5及び比較例6においては、良好なスケール付着防止効果が得られなかった。
【0266】
表3によれば、合成例5~8及び比較例5~6において同一の種類の界面活性剤が用いられているにもかかわらず、合成例5~8の組成物に由来する塗膜は、比較例5~6の組成物に由来する塗膜よりも優れたスケール付着防止効果を有していることがわかる。また、合成例5~6の組成物に由来する塗膜のスケール付着防止効果と、合成例7~8の組成物に由来する塗膜のスケール付着防止効果とを比較すると、組成物に含まれる粒子群の平均粒子径及び/又は粒度分布による塗膜のスケール付着防止効果への影響は、組成物に含まれる界面活性剤のHLB値による塗膜のスケール付着防止効果への影響よりも大きいことが推測される。
【0267】
表1~表3によれば、組成物又は調整済溶液に含まれる界面活性剤のHLB値は20~50であることが好ましく、25~50であることがより好ましいことがわかる。また、表3によれば、特に、組成物又は調整済溶液に含まれる界面活性剤のHLB値が22以上である場合には、さらに塗膜の蓄積も抑制されていることがわかる。これにより、界面活性剤のHLB値は22以上であることが好ましく、22以上50以下であることがより好ましく、25以上50以下であることがさらに好ましいことがわかる。
【0268】
例えば、表3によれば、合成例1~4において「蓄積」が「なし」であったことがわかる。上述されたとおり、上記の蓄積がなしであった場合には、極めて薄い塗膜が形成されていた。これにより、組成物又は調整済溶液に含まれる界面活性剤のHLB値が25~50である場合、当該組成物又は調整済溶液を含む塗布液を用いて、蓄積の少ない極めて薄い塗膜が形成され得ることがわかる。
【0269】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、技術的に矛盾しない範囲において、特定の実施形態について説明した事項を、他の実施形態に適用することができる。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0270】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【0271】
本願明細書には、例えば、下記の事項が開示されている。
[項目A1]
溶媒と、
界面活性剤と、
芳香族化合物及びカルボニル化合物の付加縮合物を主成分とする複数の粒子と、
を含む組成物であって、
上記組成物における上記溶媒の含有率は、95質量%以下であり、
上記界面活性剤は、有機概念図法を用いて導出されるHLB値が15以上50以下の化合物であって、上記付加縮合物及び上記付加縮合物の塩とは異なる化合物である第2化合物を含み、
上記複数の粒子は、
(i)25℃においてキュムラント法により測定される平均粒子径が19nm未満である、及び/又は、
(ii)25℃において動的光散乱法により測定される散乱強度から導出される個数基準の粒度分布における0.6nm以上10nm未満の粒子数の割合が90%以上である、若しくは、上記個数基準の粒度分布における累積90%粒子径が10nm未満である、
組成物。
[項目A2]
上記複数の粒子は、
(i)上記平均粒子径が19nm未満であり、且つ、
(ii)上記個数基準の粒度分布における0.6nm以上10nm未満の粒子数の割合が90%以上である、又は、上記個数基準の粒度分布における累積90%粒子径が10nm未満である、
項目A1に記載の組成物。
[項目A3]
上記複数の粒子の少なくとも一部は、上記芳香族化合物及び上記カルボニル化合物の上記付加縮合物の異性体の混合物を含む、
項目A1に記載の組成物。
[項目A4]
上記複数の粒子は、
上記芳香族化合物及び上記カルボニル化合物の鎖状縮合物の粒子と、
上記芳香族化合物及び上記カルボニル化合物の環状縮合物の粒子と、
を含む、
項目A1に記載の組成物。
[項目A5]
上記付加縮合物は、
上記芳香族化合物及び上記カルボニル化合物の鎖状縮合物と、
上記芳香族化合物及び上記カルボニル化合物の環状縮合物と、
を含む、
項目A1に記載の組成物。
[項目A6]
上記付加縮合物は、上記芳香族化合物に由来する2個以上の構成単位のそれぞれが、上記カルボニル化合物に由来する1個の構成単位を介して結合している芳香族化合物多量体である、
項目A1に記載の組成物。
[項目A7]
上記付加縮合物は、触媒及び上記界面活性剤の存在下で、上記芳香族化合物及び上記カルボニル化合物を反応させて得られ、
上記界面活性剤は、上記芳香族化合物に対して0.01当量以上の上記第2化合物を含む、
項目A6に記載の組成物。
[項目A8]
上記芳香族化合物は、ナフトール類である、
項目A1に記載の組成物。
[項目A9]
上記カルボニル化合物は、アルデヒド化合物又はケトン化合物である、
項目A1に記載の組成物。
[項目A10]
上記芳香族化合物は、下記の一般式(1)で表される化合物であり、
【化3】
上記カルボニル化合物は、下記の一般式(2)で表されるアルデヒド化合物であり、
-CHO (2)
一般式(1)及び一般式(2)において、R1、R2、R3は、それぞれ水素原子又は炭化水素基である、
項目A1に記載の組成物。
[項目A11]
上記芳香族化合物は、α-ナフトールであり、
上記カルボニル化合物は、ホルムアルデヒドである、
項目A1に記載の組成物。
[項目A12]
上記界面活性剤は、アニオン性界面活性剤である、
項目A1に記載の組成物。
[項目A13]
上記第2化合物は、上記HLB値が15以上50以下のピロリドン類又はその誘導体である、
項目A1に記載の組成物。
[項目A14]
芳香族化合物及びカルボニル化合物の付加縮合物を主成分とする複数の粒子を含む組成物を生産するための方法であって、
溶媒、上記芳香族化合物及び上記カルボニル化合物の混合物を準備する段階と、
上記溶媒中において、触媒及び界面活性剤の存在下で、上記芳香族化合物及び上記カルボニル化合物を反応させて、上記付加縮合物を主成分とする上記複数の粒子を得る段階と、
を有し、
上記付加縮合物は、上記芳香族化合物に由来する2個以上の構成単位のそれぞれが、上記カルボニル化合物に由来する1個の構成単位を介して結合している芳香族化合物多量体を含み、
上記界面活性剤は、有機概念図法を用いて導出されるHLB値が15以上50以下の化合物であって、上記付加縮合物及び上記付加縮合物の塩とは異なる化合物である第2化合物を、上記芳香族化合物に対して0.01当量以上含み、
上記複数の粒子は、(i)25℃においてキュムラント法により測定される平均粒子径が19nm未満である、及び/又は、(ii)25℃において動的光散乱法により測定される散乱強度から導出される個数基準の粒度分布における0.6nm以上10nm未満の粒子数の割合が90%以上である、若しくは、上記個数基準の粒度分布における累積90%粒子径が10nm未満である、
組成物を生産するための方法。
[項目A15]
上記芳香族化合物は、α-ナフトールであり、
上記カルボニル化合物は、ホルムアルデヒドであり、
上記触媒は、アルカリ金属水酸化物である、
項目A14に記載の組成物を生産するための方法。
[項目A16]
上記界面活性剤は、アニオン性界面活性剤である、
項目A14に記載の組成物を生産するための方法。
[項目A17]
単量体を重合させるための反応装置であって、
上記単量体を含む溶液を貯留可能に構成される反応器を備え、
上記反応器は、上記溶液と接触する側の面である内壁面の少なくとも一部に、項目A1から項目A13までの何れか一項に記載の組成物に由来する上記付加縮合物を含む縮合物層を有する、
反応装置。
[項目A18]
上記反応器の外部に取り付けられ、上記単量体の重合反応中に上記反応器に貯留された上記溶液から蒸発する上記単量体の一部を凝縮させるための凝縮部をさらに備える、
項目A17に記載の反応装置。
[項目A19]
上記単量体は、エチレン性不飽和基含有単量体である、
項目A18に記載の反応装置。
[項目A20]
項目A17に記載の反応装置を準備する段階と、
項目A17に記載の反応装置の上記反応器の内部に、上記単量体を含む上記溶液を仕込む段階と、
上記反応器の内部における上記単量体の重合反応を開始する段階と、
上記反応器の内部における上記単量体の重合反応を終了する段階と、
を有する、重合体を生産するための方法。
【0272】
本願明細書には、例えば、下記の事項が開示されている。
[項目B1]
芳香族化合物とカルボニル化合物との付加縮合物と、溶媒とを含む組成物であって、
上記付加縮合物は、上記芳香族化合物由来の構成単位2個以上が、それぞれ、上記カルボニル化合物由来の構成単位1個を介して結合している芳香族化合物多量体であり、上記溶媒中で、触媒及び上記芳香族化合物に対して0.01当量以上の界面活性剤(但し、上記付加縮合物を除く)の存在下、上記芳香族化合物と上記カルボニル化合物とを反応させて得られ、
上記界面活性剤は「藤田&小田らによる有機概念図法を用いたHLB値算出方法」に基づき算出されるHLB値が15以上50以下を満たす界面活性剤であり、
上記溶媒は上記組成物中95質量%以下の量で含まれ、
25℃において粒子径(キュムラント径)が10nm未満であるか、または/及び粒子径分布を個数分布で表示させたときに10nm未満に90%以上の粒子が存在していることを特徴とする付加縮合物を含む組成物。
[項目B2]
上記芳香族化合物がナフトール類である項目B1に記載の付加縮合物を含む組成物。
[項目B3]
上記カルボニル化合物がアルデヒド化合物又はケトン化合物である項目B1~2のいずれか1項に記載の付加縮合物を含む組成物。
[項目B4]
上記芳香族化合物が下記一般式(1)で表される化合物であり、上記カルボニル化合物が下記一般式(2)で表されるアルデヒド化合物である項目B1~3のいずれか1項に記載の付加縮合物を含む組成物。
【化4】
-CHO (2)
(上記一般式(1)、(2)において、R、R、Rは、それぞれ水素原子又は炭化水素基である。)
[項目B5]
上記芳香族化合物がα-ナフトールであり、上記カルボニル化合物がホルムアルデヒドである項目B1~4のいずれか1項に記載の付加縮合物を含む組成物。
[項目B6]
上記界面活性剤が、アニオン性界面活性剤である項目B1~5のいずれか1項に記載の付加縮合物を含む組成物。
[項目B7]
芳香族化合物とカルボニル化合物との付加縮合物と、溶媒とを含む組成物を製造するための製造方法であって、
反応溶媒中で、触媒及び上記芳香族化合物に対して0.01当量以上の界面活性剤(但し、上記付加縮合物を除く)の存在下、上記芳香族化合物と上記カルボニル化合物とを付加縮合反応させ、上記付加縮合物を得る工程を有し、
上記付加縮合物は、上記芳香族化合物由来の構成単位2個以上が、それぞれ、上記カルボニル化合物由来の構成単位1個を介して結合している芳香族化合物多量体であり、上記界面活性剤は、「藤田&小田らによる有機概念図法を用いたHLB値算出方法」に基づき算出されるHLB値が15以上50以下を満たす界面活性剤であり、上記付加縮合物を含む組成物は、上記溶媒を95質量%以下の量で含み、
25℃において粒子径(キュムラント径)が0.6nm以上10nm未満であるか、または粒子径分布を個数分布で表示させたときに0.6nm以上10nm未満に90%以上の粒子が存在していることを特徴とする付加縮合物を含む組成物の製造方法。
[項目B8]
上記芳香族化合物がα-ナフトールであり、上記カルボニル化合物がホルムアルデヒドであり、上記触媒がアルカリ金属水酸化物である項目B7に記載の付加縮合物を含む組成物の製造方法。
[項目B9]
上記界面活性剤が、アニオン性界面活性剤である項目B7又は8に記載の付加縮合物を含む組成物の製造方法。
[項目B10]
単量体を重合する際に使用される重合反応器であって、上記単量体が接触する内壁面表面に項目B1~6のいずれか1項に記載の付加縮合物を含む組成物に含まれる上記付加縮合物が付着していることを特徴とする重合反応器。
[項目B11]
更に、重合反応中に単量体を凝縮させるためのリフラックスコンデンサを備えた項目B10に記載の重合反応器。
[項目B12]
上記単量体がエチレン性不飽和基含有単量体である項目B10又は11に記載の重合反応器。
[項目B13]
上記エチレン性不飽和基含有単量体が塩化ビニルである項目B12に記載の重合反応器。
[項目B14]
項目B10~13のいずれか1項に記載の重合反応器内において、上記単量体を重合することを特徴とする重合体の製造方法。
[項目B15]
項目B1~6のいずれか1項に記載の付加縮合物を含む組成物の塩化ビニル又は塩化ビニルを主体とする単量体混合物を重合する際に用いる重合体スケール付着防止剤としての利用。
【符号の説明】
【0273】
100 重合装置
110 反応容器
112 本体
114 内面
116 スケール防止層
120 攪拌機
122 攪拌軸
124 攪拌翼
126 動力機構
130 バッフル
132 本体
134 サポート
140 冷却管
170 ジャケット
172 流路
180 還流コンデンサ
182 流路
【要約】
【解決手段】組成物が、溶媒と、界面活性剤と、芳香族化合物及びカルボニル化合物の付加縮合物を主成分とする複数の粒子とを含む。組成物における溶媒の含有率は、95質量%以下である。界面活性剤は、有機概念図法を用いて導出されるHLB値が15以上50以下の化合物であって、付加縮合物及び付加縮合物の塩とは異なる化合物である第2化合物を含む。複数の粒子は、(i)25℃においてキュムラント法により測定される平均粒子径が19nm未満である、及び/又は、(ii)25℃において動的光散乱法により測定される散乱強度から導出される個数基準の粒度分布における0.6nm以上10nm未満の粒子数の割合が90%以上である、若しくは、個数基準の粒度分布における累積90%粒子径が10nm未満である。
【選択図】図1
図1
図2
図3