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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-04
(45)【発行日】2023-07-12
(54)【発明の名称】RGMa結合タンパク質及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20230705BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20230705BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20230705BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230705BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20230705BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20230705BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230705BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230705BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20230705BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230705BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230705BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20230705BHJP
   A61P 21/04 20060101ALI20230705BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20230705BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20230705BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20230705BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20230705BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20230705BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20230705BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20230705BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20230705BHJP
   A61P 27/06 20060101ALI20230705BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20230705BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20230705BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230705BHJP
   A61P 7/06 20060101ALI20230705BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20230705BHJP
   A61P 7/04 20060101ALI20230705BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20230705BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20230705BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20230705BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20230705BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
C07K16/46
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
A61K39/395 N
A61P25/00
A61P37/02
A61P21/04
A61P17/02
A61P17/00
A61P25/28
A61P25/14
A61P25/18
A61P25/16
A61P27/02
A61P9/10
A61P27/06
A61P17/06
A61P19/02
A61P29/00 101
A61P7/06
A61P1/04
A61P7/04
A61P11/06
A61P37/08
A61P13/12
A61P3/10
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022201081
(22)【出願日】2022-12-16
(62)【分割の表示】P 2021047826の分割
【原出願日】2016-04-27
(65)【公開番号】P2023030057
(43)【公開日】2023-03-07
【審査請求日】2022-12-21
(31)【優先権主張番号】P 2015091095
(32)【優先日】2015-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22~24年度、独立行政法人科学技術振興機構、研究成果最適展開支援事業/本格研究開発「中枢神経回路の修復を促進する抗体治療薬の実用化」および平成17~21年度、独立行政法人医薬基盤研究所、保険医療分野における基礎研究推進事業「再生阻害シグナルの制御による中枢神経再生誘導薬の創製」に係る委託業務、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002956
【氏名又は名称】田辺三菱製薬株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(73)【特許権者】
【識別番号】304021831
【氏名又は名称】国立大学法人千葉大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 元範
(72)【発明者】
【氏名】山下 俊英
【審査官】北村 悠美子
(56)【参考文献】
【文献】特許第6497760(JP,B2)
【文献】国際公開第2011/071059(WO,A1)
【文献】特表2010-537655(JP,A)
【文献】The Journal of Cell Biology,2006年,Vol.173, No.1,pp.47-58
【文献】Biochemical and Biophysical Research Communications,2007年,Vol.360,pp.868-873
【文献】Journal of Neuroscience Research,2008年,Vol.86,pp.125-135
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 16/00-16/46
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軽鎖の相補性決定領域1(LCDR1)のアミノ酸配列がRASQDISSYLN(配列表の配列番号30)を含み、
軽鎖の相補性決定領域2(LCDR2)のアミノ酸配列がYTSRLHS(配列表の配列番号31)を含み、
軽鎖の相補性決定領域3(LCDR3)のアミノ酸配列がQQLNTLP(配列表の配列番号32)を含み、
重鎖の相補性決定領域1(HCDR1)のアミノ酸配列がDAWMD(配列表の配列番号33)を含み、
重鎖の相補性決定領域2(HCDR2)のアミノ酸配列がEIRSKANNHATYYAESVKG(配列表の配列番号34)を含み、且つ、
重鎖の相補性決定領域3(HCDR3)のアミノ酸配列がRDGAY(配列表の配列番号35)を含み、
ヒトRGMaに対する解離定数(Kd)が10 -8 M以下である、単離された抗RGMa抗体、またはその抗原結合断片。
【請求項2】
軽鎖の相補性決定領域1(LCDR1)のアミノ酸配列がRSSQSLVHSNGNTYLH(配列表の配列
番号36)を含み、
軽鎖の相補性決定領域2(LCDR2)のアミノ酸配列がKVSNRFS(配列表の配列番号37)を含み、
軽鎖の相補性決定領域3(LCDR3)のアミノ酸配列がSQSTHVP(配列表の配列番号38)を含み、
重鎖の相補性決定領域1(HCDR1)のアミノ酸配列がTSYYWN(配列表の配列番号39)
を含み、
重鎖の相補性決定領域2(HCDR2)のアミノ酸配列がYISYDGTNNYNPSLKN(配列表の配列
番号40)を含み、且つ、
重鎖の相補性決定領域3(HCDR3)のアミノ酸配列がSFGを含み、
ヒトRGMaに対する解離定数(Kd)が10 -8 M以下である、単離された抗RGMa抗体、またはその抗原結合断片。
【請求項3】
抗RGMa抗体がヒト化抗体である、請求項1または2に記載の抗RGMa抗体またはその抗原結合断片。
【請求項4】
抗RGMa抗体がヒトIgGの定常領域を有する、請求項1からのいずれか1項に記載の抗RGMa抗体またはその抗原結合断片。
【請求項5】
請求項1からのいずれか1項に記載の抗RGMa抗体またはその抗原結合断片のタンパク質部分をコードする核酸分子。
【請求項6】
請求項に記載の核酸分子を含む組み換えベクター。
【請求項7】
請求項に記載の組み換えベクターを含む宿主細胞。
【請求項8】
請求項1からのいずれか1項に記載の抗RGMa抗体またはその抗原結合断片の製造方法であって、請求項に記載の宿主細胞を培養する工程を含む方法。
【請求項9】
請求項1からのいずれか1項に記載の抗RGMa抗体またはその抗原結合断片を含む、医薬組成物。
【請求項10】
神経学的疾患または免疫学的疾患の予防、治療または再発予防用の請求項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
神経学的疾患が、筋萎縮性側索硬化症、上腕神経叢損傷、外傷性脳損傷を含む脳損傷、脳性麻痺、ギランバレー、大脳白質萎縮症、再発寛解型多発性硬化症、一次性進行型多発性硬化症、二次性進行型多発性硬化症を含む多発性硬化症、ポリオ後症候群、二分脊椎、脊髄損傷、脊髄性筋萎縮症、脊椎腫瘍、横断性脊髄炎、老年性認知症、軽度認知機能障害、アルツハイマー病、アルツハイマー関連認知症を含む認知症、ハンチントン舞踏病、遅発性ジスキネジー、そう病、パーキンソン病、スティール-リチャード症候群、ダウン症、重症筋無力症、視神経外傷を含む神経外傷、血管アミロイド症、アミロイド症を伴う大脳出血、脳梗塞、脳炎、急性混乱障害、緑内障、及び統合失調症からなる群から選択される、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
免疫学的疾患が、再発寛解型多発性硬化症、一次性進行型多発性硬化症、二次性進行型多発性硬化症を含む多発性硬化症、乾癬、関節リウマチ、変形性関節症、乾癬性関節炎を含む関節炎、ギランバレー症候群、神経ベーチエツト病、悪性貧血、I型(インスリン依存型)糖尿病、全身エリテマトーデス(SLE) 、炎症性腸疾患(IBD) 、シェーグレン症候群、
グッドバスチャー症候群、グレーブス病、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性血小板減少性紫斑病、喘息、花粉症、アトピー性皮膚炎、糸球体腎炎、重症筋無力症、橋本病、及びサルコイドーシスからなる群から選択される、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項13】
神経学的疾患または免疫学的疾患が、脊髄損傷、視神経外傷を含む神経外傷、及び再発寛解型多発性硬化症、一次性進行型多発性硬化症、二次性進行型多発性硬化症を含む多発性硬化症からなる群から選択される、請求項10に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RGMa結合タンパク質及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
RGM(repulsive guidance molecule)は、分子量が約33kDaのGPIアンカー型膜タンパク質であり、当初、視覚系の軸索誘導分子として同定された膜タンパク質である(非特許文献1参照)。RGMファミリーには、RGMa、RGMbおよびRGMcと呼ばれる3種類のメンバーが
含まれるが、その中でも、RGMaが発生段階に加えて、成人ヒトおよびラットの中枢神経系損傷後に再発現すること、ラットにおいてRGMa阻害が脊髄損傷後の神経突起成長を亢進し、機能回復を促進することから(非特許文献2参照)、RGMaは中枢神経系損傷後の神経突起阻害物質であると考えられている。
【0003】
RGMaには免疫系における作用も報告されている。RGMaは樹状細胞上に発現し、T細胞に
作用することでT細胞のICAM-1・フィブロネクチンへの接着性を高めたり、サイトカイン
の産生を誘導する(特許文献4)。多発性硬化症モデルマウスにおいて、抗RGMa抗体を投与すると、脳脊髄炎による症状が抑制され、発症、再発を抑制する効果も示す。抗RGMa抗体は、樹状細胞に発現するRGMaに結合することで、T細胞の活性化を抑制し、多発性硬化
症に効果を示すものと考えられている。
【0004】
RGMaのシグナル伝達機構も解明されつつあり、RGMaの受容体としてNeogeninタンパク質が報告されている(特許文献3)。Neogeninは、一回膜貫通型のタンパク質で、神経細胞やT細胞上で発現している。
RGMaは、細胞膜上のNeogeninに結合して、細胞内のRhoAの活性化、Rasの不活性化を誘導
することで、神経突起成長阻害効果をもたらす。一方で、発生途上のニワトリの脳において、RGMaが結合していない場合、Neogeninはアポトーシスを引き起こすことが知られている(Matsunagaら、Dev.Growth Differ.46, 481, 2004)。すなわち、RGMa/Neogenin経路
は、神経細胞の生存を促進する、神経再生にとって好ましい作用、および神経突起成長を阻害する負の作用の二つの相反する作用を有していると考えられる。
【0005】
RGMを標的とした医薬として、特許文献1には抗RGM中和抗体を有効成分として含有する軸索再生促進剤が開示されている。また、特許文献2および3には、Neogenin受容体へのRGMの結合を調節する抗RGM抗体の脳及び脊髄への機械的損傷の治療剤が開示されている。また、特許文献4には、抗RGM抗体の多発性硬化症などの医薬用途が開示されている。ま
た、特許文献5には、抗RGM抗体の多発性硬化症、哺乳動物の脳外傷、脊髄損傷、卒中、
神経変性疾患及び統合失調症を含む疾患への治療用途が開示されている。さらに、特許文献6には、抗RGM抗体などのRGMモデュレーターの脊髄損傷や多発性硬化症への治療用途が開示されており、非特許文献3には進行型多発性硬化症への治療用途が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開 WO2005/087268号パンフレット
【文献】特表2010-537655号公報
【文献】特表2009-510002号公報
【文献】国際公開 WO2011/071059号パンフレット
【文献】特表2011-512806号公報
【文献】特表2004-525875号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】Neuron 5, 735-743 (1990)
【文献】J. Cell Biol. 173, 47-58 (2006)
【文献】Cell Reports 10, 1-12 (2015)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のように、抗RGMa抗体の神経学的疾患や免疫学的疾患に対する治療用途は開示されているが、従来の抗体は活性が不十分であったり、RGMa本来の機能も損なう恐れがあり、副作用の問題などがあった。特に、従来の抗体は、RGMaとNeogenin間の結合を阻害することで、RGMaと結合したNeogeninが有するアポトーシス抑制などの好ましい作用をも阻害する恐れがあった。
そこで、本発明は、RGMa/Neogeninの相互作用を阻害せず、かつRGMaの神経突起成長阻害
活性を中和するRGMa結合タンパク質を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を行った。その結果、RGMaとNeogeninの結合を阻害せず、かつRGMaの神経突起成長阻害活性を中和するRGMa結合タンパク質を得ることに成功し、それが神経学的疾患や免疫学的疾患に対する医薬として使用し得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
本発明は以下のとおりである。
[1]RGMaとNeogeninの結合を阻害せず、かつRGMaの神経突起成長阻害活性を中和する、単離されたRGMa結合タンパク質。
[2]ヒトRGMa、ラットRGMa及び/又はマウスRGMaと結合する、[1]に記載のRGMa結合タンパク質。
[3]EEVVNAVEDWDSQG(配列表の配列番号26)、NQQIDFQAFHTNAE(配列表の配列番号27)、PTAPETFPYET(配列表の配列番号28)、及び/又はKLPVEDLYYQA(配列表の配列番号29)のペプチドに結合する、[1]または[2]に記載のRGMa結合タンパク質。
[4]配列表の配列番号26及び配列番号27のペプチドに結合する、[1]から[3]のいずれかに記載のRGMa結合タンパク質。
[5]配列表の配列番号26、配列表の配列番号27及び配列表の配列番号28のペプチドに結合する、[1]から[4]のいずれかに記載のRGMa結合タンパク質。
[6]配列表の配列番号26、配列表の配列番号27及び配列表の配列番号29のペプチドに結合する、[1]から[4]のいずれかに記載のRGMa結合タンパク質。
[7]RGMa結合タンパク質がヒト抗体、ヒト化抗体またはキメラ抗体、またはこれらの抗原結合断片である、[1]から[6]のいずれかに記載のRGMa結合タンパク質。
[8][1]から[7]のいずれかに記載のRGMa結合タンパク質のタンパク質部分をコードする核酸分子。
[9][8]に記載の核酸分子を含む組み換えベクター。
[10][9]に記載の組み換えベクターを含む宿主細胞。
[11][1]から[7]のいずれかに記載のRGMa結合タンパク質の製造方法であって、[10]に記載の宿主細胞を培養する工程を含む方法。
[12][1]から[7]のいずれかに記載のRGMa結合タンパク質を含む、医薬組成物。[13]神経学的疾患または免疫学的疾患の予防、治療または再発予防用の[12]に記載の医薬組成物。
[14]神経学的疾患が、筋萎縮性側索硬化症、上腕神経叢損傷、脳損傷(外傷性脳損傷を含む)、脳性麻痺、ギランバレー、大脳白質萎縮症、多発性硬化症(再発寛解型多発性硬化症、一次性進行型多発性硬化症、二次性進行型多発性硬化症を含む)、視神経脊髄炎、ポリオ後症候群、二分脊椎、脊髄損傷、脊髄性筋萎縮症、脊椎腫瘍、横断性脊髄炎、認
知症(老年性認知症、軽度認知機能障害、アルツハイマー病、アルツハイマー関連認知症を含む)、ハンチントン舞踏病、遅発性ジスキネジー、そう病、パーキンソン病、スティール-リチャード症候群、ダウン症、重症筋無力症、神経外傷(視神経外傷を含む)、血管アミロイド症、アミロイド症を伴う大脳出血、脳梗塞、脳炎、急性混乱障害、緑内障、統合失調症及び網膜神経線維層変性(糖尿病性網膜症、虚血性視神経症、X染色体連鎖性網膜分離症、薬物誘発性視神経症、網膜ジストロフィー、加齢黄斑変性、視神経乳頭ドルーゼンにより特徴づけられる眼病、光受容器変性の遺伝的決定因子により特徴づけられる眼病、常染色体劣性錐体-桿性ジストロフィー、視神経症を伴うミトコンドリア障害を含む)を含む群から選択される、[13]に記載の医薬組成物。
[15]免疫学的疾患が、多発性硬化症(再発寛解型多発性硬化症、一次性進行型多発性硬化症、二次性進行型多発性硬化症を含む)、視神経脊髄炎、乾癬、関節炎(関節リウマチ、変形性関節症、乾癬性関節炎を含む)、ギランバレー症候群、神経ベーチエツト病、悪性貧血、I型(インスリン依存型)糖尿病、全身エリテマトーデス(SLE) 、炎症性腸疾患(IBD) 、シェーグレン症候群、グッドバスチャー症候群、グレーブス病、自己免疫性溶血
性貧血、自己免疫性血小板減少性紫斑病、喘息、花粉症、アトピー性皮膚炎、糸球体腎炎、重症筋無力症、橋本病、及びサルコイドーシスを含む群から選択される、[13]に記載の医薬組成物。
[16]神経学的疾患または免疫学的疾患が、脊髄損傷、神経外傷(視神経外傷を含む)及び多発性硬化症(再発寛解型多発性硬化症、一次性進行型多発性硬化症、二次性進行型多発性硬化症を含む)を含む群から選択される[13]に記載の医薬組成物。
[17]軽鎖の相補性決定領域1(LCDR1)、軽鎖の相補性決定領域2(LCDR2)、軽鎖の相補性決定領域3(LCDR3)、重鎖の相補性決定領域1(HCDR1)、重鎖の相補性決定領域2(HCDR2)及び重鎖の相補性決定領域3(HCDR3)のそれぞれのアミノ酸配列が、
LCDR1:RASQDISSYLN(配列表の配列番号30)
LCDR2:YTSRLHS(配列表の配列番号31)
LCDR3:QQLNTLP(配列表の配列番号32)
HCDR1:DAWMD(配列表の配列番号33)
HCDR2:EIRSKANNHATYYAESVKG(配列表の配列番号34)及び
HCDR3:RDGAY(配列表の配列番号35)を含む、
または、
LCDR1:RSSQSLVHSNGNTYLH(配列表の配列番号36)
LCDR2:KVSNRFS(配列表の配列番号37)
LCDR3:SQSTHVP(配列表の配列番号38)
HCDR1:TSYYWN(配列表の配列番号39)
HCDR2:YISYDGTNNYNPSLKN(配列表の配列番号40)及び
HCDR3:SFGを含み、
各CDR配列においては、1または数個のアミノ酸が置換、欠失、及び/または付加されて
いてもよい、単離された抗RGMa抗体、またはその抗原結合断片。
[18]重鎖可変領域(VH)が
VH:EVQLVESGGGLVQPGRSLRLSCTASGFTFSDAWMDWVRQAPGKGLEWVAEIRSKANNHATYYAESVKGRFTISRDDSKSIVYLQMNSLRTEDTALYYCTRRDGAYWGKGTTVTVSS(配列表の配列番号41)または該アミノ酸配列に少なくとも90%の同一性のあるアミノ酸配列を含み、
軽鎖可変領域(VL)が
VL:DIQMTQSPSSVSASVGDRVTITCRASQDISSYLNWYQQKPGKAPKLLIYYTSRLHSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFASYFCQQLNTLPWTFGGGTKVEME(配列表の配列番号42)または該アミノ酸配列に少
なくとも90%の同一性のあるアミノ酸配列を含む、[17]に記載の抗RGMa抗体またはその抗原結合断片。
[19]抗RGMa抗体がヒト化抗体である、[17]または[18]に記載の抗RGMa抗体またはその抗原結合断片。
[20]抗RGMa抗体がヒトIgGの定常領域を有する、[17]から[19]のいずれかに
記載の抗RGMa抗体またはその抗原結合断片。
[21]RGMaとの結合が[17]または[18]に記載の抗RGMa抗体と競合する、RGMa結合タンパク質。
[22][17]から[20]のいずれかに記載の抗RGMa抗体またはその抗原結合断片のタンパク質部分をコードする核酸分子。
[23]VH及びVLのアミノ酸配列をコードする核酸配列が
VH:gaagtgcagctggtggaatctggcggcggactggtgcagcctggcagatccctgagactgtcctgtaccgcctccggcttcaccttctccgacgcctggatggattgggtgcgacaggctcctggcaagggcctggaatgggtggccgagatccggtccaaggccaacaaccacgccacctactacgccgagtctgtgaagggccggttcaccatctcccgggacgactccaagtccatcgtgtacctgcagatgaactccctgcggaccgaggacaccgccctgtactactgcaccagaagggacggcgcctactggggcaagggcaccacagtgacagtgtcctcc(配列表の配列番号43)、及び
VL:gacatccagatgacccagtccccctcctccgtgtctgcttccgtgggcgacagagtgaccatcacctgtcgggcctcccaggacatctcctcctacctgaactggtatcagcagaagcccggcaaggcccccaagctgctgatctactacacctcccggctgcactccggcgtgccctctagattttccggctctggctccggcaccgactttaccctgaccatctccagcctgcagcccgaggacttcgcctcctacttctgtcagcagctgaacaccctgccctggacctttggcggaggcaccaaggtggaaatggaa(配列表の配列番号44)を含む核酸配列である、[22]に記載の核酸分子。
[24][22]または[23]に記載の核酸分子を含む組み換えベクター。
[25][24]に記載の組み換えベクターを含む宿主細胞。
[26][17]から[20]のいずれかに記載の抗RGMa抗体またはその抗原結合断片の製造方法であって、[25]に記載の宿主細胞を培養する工程を含む方法。
[27][17]から[20]のいずれかに記載の抗RGMa抗体またはその抗原結合断片を含む、医薬組成物。
[28]神経学的疾患または免疫学的疾患の予防、治療または再発予防用の[27]に記載の医薬組成物。
[29]神経学的疾患が、筋萎縮性側索硬化症、上腕神経叢損傷、脳損傷(外傷性脳損傷を含む)、脳性麻痺、ギランバレー、大脳白質萎縮症、多発性硬化症(再発寛解型多発性硬化症、一次性進行型多発性硬化症、二次性進行型多発性硬化症を含む)、視神経脊髄炎、ポリオ後症候群、二分脊椎、脊髄損傷、脊髄性筋萎縮症、脊椎腫瘍、横断性脊髄炎、認知症(老年性認知症、軽度認知機能障害、アルツハイマー病、アルツハイマー関連認知症を含む)、ハンチントン舞踏病、遅発性ジスキネジー、そう病、パーキンソン病、スティール-リチャード症候群、ダウン症、重症筋無力症、神経外傷(視神経外傷を含む)、血管アミロイド症、アミロイド症を伴う大脳出血、脳梗塞、脳炎、急性混乱障害、緑内障、統合失調症及び網膜神経線維層変性(糖尿病性網膜症、虚血性視神経症、X染色体連鎖性網膜分離症、薬物誘発性視神経症、網膜ジストロフィー、加齢黄斑変性、視神経乳頭ドルーゼンにより特徴づけられる眼病、光受容器変性の遺伝的決定因子により特徴づけられる眼病、常染色体劣性錐体-桿性ジストロフィー、視神経症を伴うミトコンドリア障害を含む)を含む群から選択される、[28]に記載の医薬組成物。
[30]免疫学的疾患が、多発性硬化症(再発寛解型多発性硬化症、一次性進行型多発性硬化症、二次性進行型多発性硬化症を含む)、視神経脊髄炎、乾癬、関節炎(関節リウマチ、変形性関節症、乾癬性関節炎を含む)、ギランバレー症候群、神経ベーチエツト病、悪性貧血、I型(インスリン依存型)糖尿病、全身エリテマトーデス(SLE) 、炎症性腸疾患(IBD) 、シェーグレン症候群、グッドバスチャー症候群、グレーブス病、自己免疫性溶血
性貧血、自己免疫性血小板減少性紫斑病、喘息、花粉症、アトピー性皮膚炎、糸球体腎炎、重症筋無力症、橋本病、及びサルコイドーシスを含む群から選択される、[28]に記載の医薬組成物。
[31]神経学的疾患または免疫学的疾患が、脊髄損傷、神経外傷(視神経外傷を含む)及び多発性硬化症(再発寛解型多発性硬化症、一次性進行型多発性硬化症、二次性進行型多発性硬化症を含む)を含む群から選択される[28]に記載の医薬組成物。
[32][1]から[7]のいずれかに記載のRGMa結合タンパク質を、それを必要とする対象に、有効量投与する工程を含む、神経学的疾患または免疫学的疾患の予防、治療また
は再発予防方法。
[33][17]から[20]のいずれかに記載の抗RGMa抗体またはその抗原結合断片を、それを必要とする対象に、有効量投与する工程を含む、神経学的疾患または免疫学的疾患の予防、治療または再発予防方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明のRGMa結合タンパク質は、RGMaとNeogeninの相互作用を阻害しないことにより、RGMaと結合したNeogeninの有する神経細胞等へのApoptosisの阻害等の作用を維持できる
ので、神経細胞の保護効果が強く、神経細胞減少に伴う副作用の心配が少ない。また、本発明のヒト化抗RGMa抗体は、従来の抗体よりもヒトRGMaとの結合性および熱安定性などの特性に優れている。したがって、薬効に優れ、副作用の少ない神経学的疾患や免疫学的疾患に対する医薬として使用し得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】RGMaポリクローナル抗体(AF2459)、比較例抗体(r5F9)、及び本発明の抗体(r70E4、116A3)を用いた、RGMa-Neogenin結合阻害試験の結果を示す図。
図2】コントロールマウスIgG、及び本発明の抗体(B5.70E4、B5.116A3)を用いた、RGMa-BMP2結合阻害試験の結果を示す図。
図3】比較例抗体(rH5F9)、本発明のキメラ抗体(r116A3C)及び本発明のヒト化抗体(HE/KA、HA/KC)を用いた、抗体の熱安定性試験の結果を示す図。
図4】本発明の抗体(B5.70E4(左)、B5.116A3(右))を用いた、神経突起成長試験の結果を示す図。
図5】コントロールマウスIgG(mo-IgG2bk)、及び本発明の抗体(r70E4、r116A3)を用いた、脊髄損傷モデルラットを用いた効力試験の結果を示す図。(A) 脊髄圧挫モデル、(B) 脊髄半側切断モデルでの効力試験の結果を示す。
図6】PLP139-151ペプチドで惹起した多発性硬化症モデルマウスを用いた本発明の抗体(B5.116A3)の効力試験の結果を示す図。左側がEAEスコア、右側が体重の変化を表し、上段が被験抗体を7日及び10日後に投与した場合、下段が被験抗体を18日及び21日後に投与した場合の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の理解を容易にするため、以下に本発明に用いられる用語を説明する。
【0014】
[RGMa]
RGMaは中枢神経系における神経突起成長阻害タンパク質であり、ヒトRGMaタンパク質は配列表の配列番号1に示すように450アミノ酸からなる前駆タンパク質として生合成される。N末端に存在するシグナルペプチドMet1~Pro47(N末端側から1番目のメチオニン残基から47番前のプロリン残基までのペプチドを指す、以後同様に
記載)が除去され、Asp168とPro169の間のペプチド結合が切断され、C末端ペプチドArg423~Cys450が除去されるとともに、C末端となったGly422のC末端カルボキシル基にGPIアンカーが付加される。ヒトRGMaタンパク質は、N末側ドメイン(Cys48~Asp168)とC末側ドメイン(Pro169~Ala424)がジスルフィド結合により繋がった成熟タンパク質として、GPIアンカーを介して細胞膜上に発現する。マウスのRGMaの前駆タンパク質は配列表の配列番号2に示すアミノ酸配列、ラットのRGMaの前駆タンパク質は配列表の配列番号3に示すアミノ酸配列からなるが、C末端ペプチドが除去されるため、成熟タンパク質としては同一のアミノ酸配列となる。本発明では、RGMaは後述するNeogeninに結合して作用するものであれば、前駆タンパク質、成熟タンパク質またはその活性型断片のいずれかを指してもよいし、それらの誘導体若しくは変異体であってもよい。また、ヒトRGMaでも他の生物由来のRGMaでもよいが、ヒトRGMaが好ましい。
【0015】
[Neogenin]
Neogeninは中枢神経の神経細胞等に発現し、RGMaの受容体の1つとして機能している。ヒトNeogeninタンパク質は配列表の配列番号10に示すように、1461アミノ酸からなり、シグナルペプチドMet1~Ala33が除かれ成熟した膜タンパク質として発現する。本発明では、NeogeninはRGMaに結合するものであれば、前駆タンパク質、成熟タンパク質またはそのRGMa結合断片のいずれかを指してもよいし、それらの誘導体若しくは変異体であってもよい。また、ヒトNeogeninでも他の生物由来のNeogeninでもよいが、ヒトNeogeninが好ましい。
【0016】
[中和]
本願において「中和」とは目的の標的に結合し、かつ、その標的のいずれかの機能を阻害することができる作用のことをいう。すなわち、「RGMaの神経突起成長阻害活性を中和する」とは、RGMa結合タンパク質がRGMaに結合することにより、RGMaの神経突起成長阻害活性を阻害することをいう。神経突起成長阻害活性は、当分野において知られたいくつかのin vitroまたはin vivo分析の1つまたはそれ以上によって評価することができるが、例えば、本願明細書に記載の神経突起成長阻害試験により評価することができる。
【0017】
[単離された]
単離されたRGMa結合タンパク質等の「単離された」とは、同定され、かつ、分離された、及び/または、自然状態での成分から回収された、という意味である。自然状態での不純物は、その抗体の診断的または治療的使用を妨害し得る物質であり、酵素、ホルモン及びその他の蛋白質性のまたは非蛋白質性の溶質が挙げられる。一般的に、RGMa結合タンパク質等を単離するには、少なくとも1つの精製工程によって精製すればよく、少なくとも1つの精製工程により精製されたRGMa結合タンパク質を「単離されたRGMa結合タンパク質」ということができる。
【0018】
[RGMa結合タンパク質]
本願において「RGMa結合タンパク質」とはRGMaに結合するタンパク質を含む分子をいう。RGMa結合タンパク質としては、抗RGMa抗体及びその抗原結合断片、並びにRGMa結合スキャフォールドタンパク質、並びにNeogeninの細胞外ドメインなどの可溶性RGMa受容体タンパク質、並びにこれらの融合タンパク質があげられる。RGMa結合スキャフォールドタンパク質とは、セリンプロテアーゼ阻害剤のKunitzドメインやヒトのファイブロネクチンの細胞外ドメイン、アンキリン、リポカリンなどに変異を導入することにより、RGMaとの結合機能を実現するタンパク質をいう。融合タンパク質とは、RGMa結合タンパク質にポリエチレングリコール(PEG)等の非ペプチド性ポリマー、放射性物質、毒素、低分子化合物、サイトカイン、成長因子(TGF-β、NGF、Neurotrophinなど)、アルブミン、酵素、他の抗体などの本願のRG
Ma結合タンパク質以外の機能分子を化学的または遺伝子工学的に結合したRGMa結合タンパク質をいう。
【0019】
[ヒト抗体]
ヒト抗体とは、軽鎖、重鎖ともにヒト免疫グロブリン由来の抗体をいう。ヒト抗体は、重鎖の定常領域の違いにより、γ鎖の重鎖を有するIgG(IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4を含む)、μ鎖の重鎖を有するIgM、α鎖の重鎖を有するIgA(IgA1,IgA2を含む)、δ鎖の重鎖を有するIgD、またはε鎖の重鎖を有するIgEを含む。また原則として軽鎖は、κ鎖とλ鎖のどちらか一方を含む。
【0020】
[ヒト化抗体]
ヒト化抗体は、非ヒト動物由来抗体の相補性決定領域と、ヒト抗体由来のフレームワーク領域とからなる可変領域、及びヒト抗体由来の定常領域からなる抗体をいう。
【0021】
[キメラ抗体]
キメラ抗体とは、軽鎖、重鎖、またはその両方が、非ヒト由来の可変領域と、ヒト由来の定常領域からなる抗体をいう。
【0022】
[抗RGMa抗体]
本願において抗RGMa抗体は、RGMaに結合する免疫グロブリン分子またはその改変分子のことをいう。改変分子には、マルチスペシフィック抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、機能改変抗体、及びコンジュゲート抗体を含むものとする。
【0023】
[マルチスペシフィック抗体]
マルチスペシフィック抗体とは、2つ以上の異なる抗原特異性を有する2つ以上の独立した抗原認識部位を持ち合わせた非対称の抗体であり、2つの抗原特異性を有するバイスペシフィック抗体、3つの抗原特異性を有するトリスペシフィック抗体などが挙げられる。
【0024】
[機能改変抗体]
本願において機能改変抗体とは、主に抗体のFc領域のアミノ酸や糖鎖を改変することにより、抗体の有する抗原結合機能以外の機能、例えば細胞殺傷機能、補体活性化機能や血中半減期延長機能を改変した抗体をいう。
【0025】
[コンジュゲート抗体]
本願においてコンジュゲート抗体とは、抗体にポリエチレングリコール(PEG)等の非ペプチド性ポリマー、放射性物質、毒素、低分子化合物、サイトカイン、成長因子(TGF-β、NGF、Neurotrophinなど)、アルブミン、酵素などの抗体以外の機能分子
を化学的または遺伝子工学的に結合した抗体をいう。
【0026】
[抗原結合断片]
本願において抗原結合断片とは、抗体の一部分を含む蛋白質であり、抗原に結合できるものをいう。抗原結合断片の例としては、F(ab')2 、Fab'、Fab 、Fv(variable fragment of antibody)、ジスルフィド結合Fv、一本鎖抗体(scFv)、およびこれらの
重合体等が挙げられる。さらに、抗原結合断片は、ポリエチレングリコール(PEG)等の非ペプチド性ポリマー、放射性物質、毒素、低分子化合物、サイトカイン、成長因子(TGF-β、NGF、Neurotrophinなど)、アルブミン、酵素、他の抗体などの本願の
抗RGMa抗体以外の機能分子を化学的または遺伝子工学的に結合しているコンジュゲート抗原結合断片を含むものとする。
【0027】
[相補性決定領域]
相補性決定領域(CDR)とは免疫グロブリン分子の可変領域のうち、抗原結合部位を形成する領域をいい、超可変領域とも呼ばれ、免疫グロブリン分子ごとに特にアミノ酸配列の変化が大きい部分をいう。CDRには軽鎖及び重鎖それぞれに3つのCDR(LCDR1、LCDR2、LCDR3、及びHCDR1、HCDR2、HCDR3)がある。本願では、免疫グロブリン分子のCDRはカバット(Kabat)の番号付けシステム(Kab
atら、1987、Sequences of Proteins of Immunological Interest、US Department of Health and Human Services、NIH、USA)に従って決定される。
【0028】
[アミノ酸配列のパーセント(%)同一性]
ここで可変領域等の、同定した参照ポリペプチド配列に関する「パーセント(%)同一性」とは、配列を整列させ、最大の%同一性を得るために必要ならば間隙を導入し、如何なる保存的置換も配列同一性の一部と考えないとした後の、特定の参照ポリペプチド配列のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセントとして定義される。%同一性を測定する目的のためのアラインメントは、当業者の技量の範囲にある種々の方法、例えばBLAST、BLAST-2、ALIGN、又はMegalign(DNASTAR)ソフトウエアのような公に入手可能なコンピュータソフトウエアを使用することによ
り達成可能である。当業者であれば、比較される配列の完全長に対して最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、配列をアラインメントするための適切なパラメータを決定することができる。しかし、ここでの目的のためには、%同一性値は、ペアワイズアラインメントにおいて、配列比較コンピュータプログラムBLASTを使用することによって得られる。
アミノ酸配列比較にBLASTが用いられる状況では、与えられたアミノ酸配列Aの、与えられたアミノ酸配列Bとの%同一性は次のように計算される:
分率X/Yの100倍
ここで、Xは配列アラインメントプログラムBLASTのA及びBのプログラムアラインメントによって同一であると一致したスコアのアミノ酸残基の数であり、YはBの全アミノ酸残基数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと異なる場合、AのBに対する%同一性は、BのAに対する%同一性とは異なることは理解されるであろう。特に断らない限りは、ここでの全ての%同一性値は、直ぐ上のパラグラフに示したようにBLASTコンピュータプログラムを用いて得られる。
【0029】
[競合する]
本願において、本発明の抗RGMa抗体と「競合する」とは、本明細書に記載された表面プラズモン共鳴(SPR)法によって測定した場合に、該抗RGMa抗体またはその抗原結
合断片の存在により、有意差をもって本発明の抗RGMa抗体とRGMaとの結合が低下することをいう。
【0030】
以下、本発明を詳細に説明する。
<RGMa結合タンパク質>
本発明のRGMa結合タンパク質は、RGMaとNeogeninの結合を阻害せず、かつRGMaの神経突起成長阻害活性を中和する、単離されたRGMa結合タンパク質である。
【0031】
RGMaタンパク質としては、哺乳類由来のRGMaタンパク質が好ましく、例えば、ヒトのRGMaタンパク質としては配列表の配列番号1のアミノ酸配列を有するタンパク質が挙げられ、マウスのRGMaタンパク質としては配列表の配列番号2のアミノ酸配列を有するタンパク質が挙げられ、ラットのRGMaタンパク質としては配列表の配列番号3のアミノ酸配列を有するタンパク質が挙げられる。また、これらの配列において、1または数個(好ましくは1~20個、より好ましくは1~10個、より好ましくは1~5個)のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列を含んでなり、かつ、RGMaタンパク質と実質的に同じ活性を有する、ポリペプチドや前記アミノ酸配列に対して90%以上(好ましくは95%以上)の同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドであってもよい。
【0032】
ここで、「RGMaタンパク質と実質的に同じ活性を有する」とは、そのポリペプチドが、神経突起成長阻害作用を有するものであればいかなるものも含まれる。
【0033】
上記アミノ酸の置換は保存的置換が好ましい。ここで「保存的置換」とは、ペプチドの活性を実質的に改変しないように、アミノ酸残基を、別の化学的に類似したアミノ酸残基で置換えることを意味する。例えば、ある疎水性残基を別の疎水性残基によって置換する
場合、ある極性残基を同じ電荷を有する別の極性残基によって置換する場合等が挙げられる。このような置換を行うことができる機能的に類似のアミノ酸の例として、非極性(疎水性)アミノ酸としては、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、プロリン、トリプトファン、フェニルアラニン、メチオニン等が挙げられる。極性(中性)アミノ酸としては、グリシン、セリン、スレオニン、チロシン、グルタミン、アスパラギン、システイン等が挙げられる。陽電荷をもつ(塩基性)アミノ酸としては、アルギニン、ヒスチジン、リジン等が挙げられる。また、負電荷をもつ(酸性)アミノ酸としては、アスパラギン酸、グルタミン酸等が挙げられる。
【0034】
本発明のRGMa結合タンパク質がRGMaに結合するとは、RGMa特異的な結合を意味するが、ヒトRGMaに対する解離定数(Kd)が低いものがさらに好ましく、上限値として例えば10-8M以下、より好ましくは10-9M以下、さらにより好ましくは10-10M以下で
あり、下限値としては特に限定されないが、例えば10-14M以上、より好ましくは10-13以上であるRGMa結合タンパク質が挙げられる。
【0035】
RGMaタンパク質は成熟タンパク質として、N末側ドメインとC末側ドメインからなるが、C末側ドメイン単独でも神経突起成長阻害活性を有する。本発明のRGMa結合タンパク質は、RGMaのC末側ドメインのみにも結合して神経突起成長阻害活性を中和することが好ましい。ヒトRGMaのC末側ドメインに対する解離定数(Kd)が低いものがさらに好ましく、上限値として例えば10-8M以下、より好ましくは10-9M以下、さらにより好ましくは10-10M以下であり、下限値としては特に限定されないが、例えば10-14M以上、より好ましくは10-13以上であるRGMa結合タンパク質が挙げられる。
【0036】
本発明のRGMa結合タンパク質は、RGMaとNeogeninとの結合を阻害しない。ここで、「RGMaとNeogeninとの結合を阻害しない」とは、後述の実施例に示される、RGMaとNeogeninとの結合系において、RGMa結合タンパク質の濃度を増加させてもRGMaとNeogeninとの結合が実質的に減少しないことを意味する。例えば、RGMaとNeogeninとの結合系にRGMa結合タンパク質を添加し、その濃度を増加させた場合において、IC50を示すRGMa結合タンパク質濃度が10μg/mL以上、より好ましくは50μg/mL以上、最も好ましくは100μg/mL以上であれば、該RGMa結合タンパク質はRGMaとNeogeninとの結合を阻害しないということができる。
【0037】
RGMaとの結合試験に使用されるNeogeninとしては、RGMaと同種のNeogeninが好ましい。すなわち、マウスのRGMaに対してはマウスのNeogeninを、ヒトのRGMaに対してはヒトのNeogeninを用いることが好ましい。ヒトNeogeninの一例としては配列表の配列番号10のアミノ酸配列を有するタンパク質が例示されるが、RGMaと結合し得るものであれば、配列表の配列番号10と90%以上(好ましくは95%以上)の同一性を有するアミノ酸配列を有するものでもよい。
【0038】
本発明のRGMa結合タンパク質は、RGMaの神経突起成長阻害活性を中和する。神経突起成長阻害活性は、後述の実施例に示される、神経突起成長試験によって評価できる。RGMaを添加すると神経突起の成長が抑制されるところ、RGMa結合タンパク質を添加することで、RGMaによる神経突起成長抑制が起こらなくなる。本発明のRGMa結合タンパク質はRGMa添加による神経突起成長の抑制が50%以上、より好ましくは80%以上、最も好ましくは90%以上中和することができる。
【0039】
RGMaタンパク質のアミノ酸配列は動物種によって異なるため、配列表の配列番号1で示されるヒトRGMaと配列表の配列番号2で示されるマウスRGMa、配列表の配列番号3で示されるラットRGMaでもアミノ酸配列に違いがある。一般に、抗体医薬等のタンパク質製剤の薬理試験や安全性試験では、マウスやラットなどのげっ歯類が実験材料
として用いられるため、本発明のRGMa結合タンパク質は、マウスやラットのRGMaに結合することが好ましく、マウスやラットのRGMaに対するKdが低いものがさらに好ましい。Kdの上限値として例えば5x10-7M以下、より好ましくは10-8M以下、さらにより好ましくは10-9M以下であり、下限値としては特に限定されないが、例えば10-12M以上、より好ましくは10-11以上であるRGMa結合タンパク質が挙げられる。
【0040】
本発明のRGMa結合タンパク質は熱安定性に優れていることが好ましい。熱安定性は加熱処理によるRGMaとの結合の低下により評価することができるが、60℃以上の熱処理によっても安定であることが好ましく、65℃以上の熱処理によっても安定であることがより好ましく、70℃以上の熱処理によっても安定であることが最も好ましい。
【0041】
本発明のRGMa結合タンパク質がRGMaに結合する際の結合部位は特に限定されないが、例えば、ヒトRGMaでいうと、EEVVNAVEDWDSQG(配列表の配列番号26)(配列表の配列番号1のアミノ酸番号298-311)、NQQIDFQAFHTNAE(配列表の配列番号27)(配列表の配列番号1のアミノ酸番号322-335)、PTAPETFPYET(配列表の配列番号28)
(配列表の配列番号1のアミノ酸番号349-359)、KLPVEDLYYQA(配列表の配列番
号29)(配列表の配列番号1のアミノ酸番号367-377)の1つ以上のペプチドに
結合することが好ましい。配列表の配列番号26と27に結合することがより好ましく、配列表の配列番号26と27、かつ配列表の配列番号28または29に結合することがより好ましい。
【0042】
RGMa結合タンパク質としては、具体的には、抗RGMa抗体、RGMa結合スキャフォールドタンパク質、及びこれらの融合タンパク質が挙げられる。
【0043】
<抗RGMa抗体>
本発明の抗RGMa抗体は、RGMaタンパク質またはその部分断片(例えば、上記配列表の配列番号26~29の一つ以上を含む断片)を抗原として、該抗原をマウス等の哺乳動物に免疫して得られるポリクローナル抗体やモノクローナル抗体、遺伝子組換え技術を用いて製造されるキメラ抗体およびヒト化抗体、並びにヒト抗体産生トランスジェニック動物等を用いて製造されるヒト抗体などが含まれる。本発明の抗体を医薬としてヒトに投与する場合は、副作用の観点から、ヒト化抗体またはヒト抗体が望ましい。
【0044】
抗原はそのまま免疫に使用してもよいし、キャリアタンパク質との複合体として用いてもよい。抗原とキャリアタンパク質の複合体の調製にはグルタルアルデヒド、カルボジイミド、マレイミド活性エステル等の縮合剤を用いることができる。キャリアタンパク質は牛血清アルブミン、サイログロブリン、ヘモシアニン、KLH等が例示される。
【0045】
免疫される哺乳動物としては、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、ネコ、イヌ、ブタ、ヤギ、ウマあるいはウシが挙げられ、接種方法は皮下、筋肉あるいは腹腔内の投与が挙げられる。投与に際しては完全フロイントアジュバンドや不完全フロイントアジュバンドと混和して投与してもよく、投与は通常2~5週毎に1回ずつ行われる。免疫された動物の脾臓あるいはリンパ節から得られた抗体産生細胞は骨髄腫細胞と細胞融合させ、ハイブリドーマとして単離される。骨髄腫細胞としては哺乳動物由来、例えばマウス、ラット、ヒト等由来のものが使用される。
【0046】
<ポリクローナル抗体>
ポリクローナル抗体は、既存の一般的な製造方法によって取得することができる。即ち、例えば、前述のような抗原を、必要に応じてフロイントアジュバント(Freund's Adjuvant)とともに、上記のような哺乳動物に免疫することで該免疫感作動物から得た血清か
ら取得することができる。
【0047】
<モノクローナル抗体>
モノクローナル抗体は、具体的には下記のようにして取得することができる。即ち、前述のような抗原を免疫原とし、該免疫原を、必要に応じてフロイントアジュバント(Freund's Adjuvant)とともに、上記のような哺乳動物の皮下、筋肉内、静脈内、フッドパッ
ド内あるいは腹腔内に1~数回注射するかあるいは移植することにより免疫感作を施す。通常、初回免疫から約1~14日毎に1~4回免疫を行って、最終免疫より約1~5日後に免疫感作された該哺乳動物から抗体産生細胞が取得される。
【0048】
モノクローナル抗体は、当業者に周知方法を用いて得ることができる(例えば、『Current Protocols in Molecular Biology』(John Wiley & Sons(1987))、Antibodies:A Laboratory Manual, Ed.Harlow and David Lane, Cold Spring Harbor Laboratory(1988))。
【0049】
モノクローナル抗体を分泌する「ハイブリドーマ」の調製は、ケーラー及びミルシュタインらの方法(ネイチャー(Nature) , 256,495, 1975)及びそれに準じる修飾方法に従って行うことができる。即ち、免疫感作された哺乳動物から取得される脾臓等に含まれる抗体産生細胞と、哺乳動物、好ましくはマウス、ラットまたはヒト由来の自己抗体産生能のないミエローマ細胞を細胞融合させることにより調製される。
【0050】
細胞融合に用いられるミエローマ細胞としては、例えばマウス由来ミエローマP3/X63-AG8.653(653)、P3/NSI/1-Ag4-1(NS-1)、P3/X63-Ag8.U1(P3U1)、SP2/0-Ag14(Sp2/O、Sp2)、PAI、F0あるいはBW5147、ラット由来ミエローマ210RCY3-Ag.2.3.、ヒト由来ミエローマU-266AR1、GM1500-6TG-A1-2、UC729-6、CEM-AGR、D1R11あるいはCEM-T15等を使用することができる。
【0051】
融合促進剤としてはポリエチレングリコール等が挙げられ、通常には、20~50%程度の濃度のポリエチレングリコール(平均分子量1000~4000)を用いて20~40℃、好ましくは30~37℃の温度下、抗体産生細胞数と骨髄腫細胞数の比は通常1:1~10:1程度、約1~10分間程度反応させることにより細胞融合を実施することができる。
【0052】
モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマクローンのスクリーニングは、ハイブリドーマを、例えばマイクロタイタープレート中で培養し、ウェルの培養上清の免疫抗原に対する反応性をELISA等の免疫化学的方法によって測定することにより行うことができる。
【0053】
抗体産生ハイブリドーマのスクリーニングにおいては、RGMaタンパク質との結合アッセイに加えて、該抗体がRGMaタンパク質とNeogeninの結合を阻害しないかの評価と、該抗体がRGMaタンパク質の機能(神経突起成長阻害活性)を中和するかの評価も行う。これらのスクリーニング方法により、本発明の抗RGMa抗体を選択することができる。
【0054】
目的の抗体を産生するハイブリドーマを含むウェルから更に、限界希釈法によってクローニングを行い、クローンを得ることができる。ハイブリドーマの選別、育種は、通常、HAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン)を添加して、10~20%牛胎児血清を含む動物細胞用培地で行われる。
【0055】
ハイブリドーマからのモノクローナル抗体の製造は、ハイブリドーマをインビトロで培
養するか、またはマウス、ラット等の哺乳動物の腹水中等でのインビボで増殖させ、得られた培養上清、または哺乳動物の腹水から単離することにより行うことができる。
【0056】
インビトロで培養する場合には、培養する細胞種の特性及び培養方法等の種々条件に合わせて、ハイブリドーマを増殖、維持及び保存させ、培養上清中にモノクローナル抗体を産生させるのに適した栄養培地を用いることが可能である。
【0057】
基本培地としては、例えば、Ham’F12培地、MCDB153培地あるいは低カルシウムMEM培地等の低カルシウム培地及びMCDB104培地、MEM培地、D-MEM培地、RPMI1640培地、ASF104培地あるいはRD培地等の高カルシウム培地等が挙げられ、該基本培地は、目的に応じて、例えば血清、ホルモン、サイトカイン及び/または種々の無機あるいは有機物質等を含有させることができる。
【0058】
モノクローナル抗体の単離、精製は、上述の培養上清あるいは腹水を、飽和硫酸アンモニウム、ユーグロブリン沈澱法、カプロイン酸法、カプリル酸法、イオン交換クロマトグラフィー(DEAEまたはDE52等)、抗イムノグロブリンカラムあるいはプロテインAカラム等のアフィニティカラムクロマトグラフィーに供すること等により行うことができる。具体的には、モノクローナル抗体の精製は免疫グロブリンの精製法として既知の方法を用いればよく、たとえば、硫安分画法、PEG分画法、エタノール分画法、陰イオン交換体の利用、さらにRGMaタンパク質を用いるアフィニティークロマトグラフィー等の手段により容易に達成することができる。
【0059】
モノクローナル抗体はファージディスプレイ法により取得することもできる。ファージディスプレイ法では、任意のファージ抗体ライブラリより選別したファージを、目的の免疫原を用いてスクリーニングを行い、免疫原に対する所望の結合性を有するファージを選択する。次に、ファージ内に含まれる抗体対応配列を単離又は配列決定し、単離された配列又は決定された配列情報に基づき、抗体または抗原結合ドメインをコードする核酸分子を含む発現ベクターを構築する。そしてかかる発現ベクターをトランスフェクションされた細胞株を培養することにより、モノクローナル抗体を産生させることができる。ファージ抗体ライブラリとして、ヒト抗体ライブラリを用いることにより、所望の結合性を有するヒト抗体を生成することができる。
【0060】
スキャフォールドタンパク質としてはヒトのセリンプロテアーゼ阻害剤のKunitzドメインやヒトのファイブロネクチンの細胞外ドメインなどが利用され、スキャフォールド上の標的結合部位の配列を改変すればRGMaに結合するスキャフォールドタンパク質を生成することができる(Clifford Mintz et.al BioProcess International, 2013, Vol.11(2), pp40-48)。
【0061】
融合タンパク質としては、RGMa結合タンパク質にポリエチレングリコール(PEG)等の非ペプチド性ポリマー、放射性物質、毒素、低分子化合物、サイトカイン、成長因子(TGF-β、NGF、Neurotrophinなど)、アルブミン、酵素、他の抗体などの本願のRGMa結合タンパク質以外の機能分子を化学的または遺伝子工学的に結合したRGMa結合タンパク質があげられる。
【0062】
機能分子としてPEGを結合する場合、PEGは非限定的に分子量2000から100000Da、より好ましくは10000から50000Daのものが使用でき、直鎖型でもよく、ブランチ型のものでもよい。PEGは、例えばNHS活性基を用いることにより、RGMa結合タンパク質のアミノ酸のN末端アミノ基等に結合することができる。
【0063】
機能分子として放射性物質を用いる場合、131I、125I、90Y、64Cu、99Tc、77
uまたは211Atなどが用いられる。放射性物質は、ク口ラミンT法などによってRGM
a結合タンパク質に直接結合させることができる。
【0064】
機能分子として毒素を用いる場合、細菌毒素(例えば、ジフテリア毒素)、植物毒素(例えば、リシン)、低分子毒素(例えば、ゲルダナマイシン)、メイタンシノイド、及びカリケアマイシン等が用いられる。
【0065】
機能分子として低分子化合物を用いる場合、ダウノマイシン、ドキソルビシン、メトロレキサート、マイトマイシン、ネオカルチノスタチン、ビンデシン及びFITC等の蛍光色素等が挙げられる。
【0066】
機能分子として、酵素を用いる場合、ルシフェラーゼ(例えば、ホタルルシフェラーゼ及び細菌ルシフェラーゼ;米国特許第4737456号)、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ウレアーゼ、ペルオキシダーゼ(例えば、西洋わさびペルオキシダーゼ(HRPO))、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、サッカライドオキシダーゼ(例えば、グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、及びグルコース-6-ホスフェートデヒドロゲナーゼ)、複素環式オキシダーゼ(例えば、ウリカーゼ及びキサンチンオキシダーゼ等)、ラクトペルオキシダーゼ、マイクロペルオキシダーゼ等が用いられる。
【0067】
毒素、低分子化合物または酵素を化学的に結合する時に使用するリンカーとしては、二価ラジカル(例えば、アルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン)、-(CR2)nO
(CR2)n-(Rは任意の置換基、nは正の整数)で表されるリンカーやアルコキシの
反復単位(例えば、ポリエチレンオキシ、PEG、ポリメチレンオキシ等)及びアルキルアミノ(例えば、ポリエチレンアミノ、JeffamineTM)、並びに、二酸エステル及びアミド(スクシネート、スクシンアミド、ジグリコレート、マロネート及びカプロアミド等が挙げられる)が挙げられる。機能分子を結合させる化学的修飾方法はこの分野において既に確立されている (D.J.King., Applications and Engineering of Monoclonal antibodies., 1998 T.J. International Ltd, Monoclonal Antibody-Based Therapy of
Cancer., 1998 Marcel Dekker Inc; Chari et al., Cancer Res., 1992 Vol152:127; Liu et al., Proc Natl Acad Sci USA., 1996 Vol 93:8681)。
【0068】
本発明のRGMa結合タンパク質の好ましい態様としてキメラ抗体が挙げられる。「キメラ抗体」としては、可変領域が、非ヒト動物(マウス、ラット、ハムスター、ニワトリ等)のイムノグロブリン由来の可変領域であり、定常領域がヒトイムノグロブリン由来の定常領域である、キメラ抗体が例示される。例えば、抗原をマウスに免疫し、そのマウスモノクローナル抗体の遺伝子から抗原と結合する可変領域を切り出し、ヒト骨髄由来の抗体定常領域と結合して作製することができる。ヒトイムノグロブリン由来の定常領域は、IgG(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)、IgM、IgA(IgA1、IgA2)、IgD及びIgE等のアイソタイプにより各々固有のアミノ酸配列を有するが、本発明における組換キメラ抗体の定常領域はいずれのアイソタイプに属するヒトイムノグログリンの定常領域であってもよい。好ましくは、ヒトIgGの定常領域である。このように作製したキメラ抗体の遺伝子を用いて発現ベクターを作製することができる。該発現ベクターで宿主細胞を形質転換することによりキメラ抗体産生形質転換細胞を得、該形質転換細胞を培養することにより培養上清中から目的のキメラ化抗体を得る。
【0069】
本発明のRGMa結合タンパク質の別の好ましい態様としてヒト化抗体が挙げられる。本発明における「ヒト化抗体」は、マウスなどの非ヒト動物抗体の抗原結合部位(CDR;相補性決定領域)のDNA配列だけをヒト抗体遺伝子に移植(CDRグラフティング)した抗体である。例えば、特表平4-506458号公報および特許2912618号明
細書等に記載の方法を参照して作製することができる。具体的には、そのCDRの一部または全部が非ヒト哺乳動物(マウス、ラット、ハムスター等)のモノクローナル抗体に由来するCDRであり、その可変領域のフレームワーク領域がヒトイムノグロブリン由来の可変領域のフレームワーク領域であり、かつその定常領域がヒトイムノグロブリン由来の定常領域であることを特徴とするヒト化抗体を意味する。
【0070】
本発明におけるヒト化抗体は、例えば以下のようにして製造することができる。しかしながら、そのような製造方法に限定されるものでないことは言うまでもない。
【0071】
例えば、マウスモノクローナル抗体に由来する組換えヒト化抗体は、特表平4-506458号公報及び特開昭62-296890号公報等を参照して、遺伝子工学的に作製することができる。即ち、マウスモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマから、マウス重鎖CDR部分のDNAとマウス軽鎖CDR部分のDNAを単離し、ヒトイムノグロブリン遺伝子からヒト重鎖CDR以外の全領域のヒト重鎖遺伝子と、ヒト軽鎖CDR以外の全領域のヒト軽鎖遺伝子を単離する。
【0072】
単離したマウス重鎖CDR部分のDNAを移植したヒト重鎖遺伝子を発現可能なように適当な発現ベクターに導入し、同様にマウス軽鎖CDR部分のDNAを移植したヒト軽鎖遺伝子を発現可能なように適当なもう1つの発現ベクターに導入する。または、マウスのCDRを移植したヒトの重鎖及び軽鎖遺伝子を同一の発現ベクターに発現可能なように導入することもできる。このようにして作製された発現ベクターで宿主細胞を形質転換することによりヒト化抗体産生形質転換細胞を得、該形質転換細胞を培養することにより培養上清中から目的のヒト化抗体を得る。
【0073】
本発明のRGMa結合タンパク質の別の好ましい態様としてヒト抗体が挙げられる。ヒト抗体とは、イムノグロブリンを構成する重鎖の可変領域及び重鎖の定常領域並びに軽鎖の可変領域及び軽鎖の定常領域を含むすべての領域がヒトイムノグロブリンをコードする遺伝子に由来するイムノグロブリンとなっている抗体であって、ヒト抗体遺伝子をマウスに導入して作製することができる。具体的には、例えば、少なくともヒトイムノグロブリン遺伝子をマウス等のヒト以外の哺乳動物の遺伝子座中に組込むことにより作製されたトランスジェニック動物を、抗原で免疫感作することにより、前述したポリクローナル抗体あるいはモノクローナル抗体の作製法と同様にして製造することができる。
【0074】
例えば、ヒト抗体を産生するトランスジェニックマウスは、Nature Genetics, Vol.7, p. 13-21, 1994;Nature Genetics, Vol.15, p.146-156, 1997;特表平4-504365号公報;特表平7-509137号公報;国際公開WO94/25585号パンフレット;Nature, Vol.368, p.856-859, 1994;及び特表平6-500233号公報等に記載の方法に従って作製することができる。より具体的には、HuMab(登録商標)マウス(Medarex, Princeton NJ)、KMTMマウス (Kirin Pharma Company, Japan)、KM(FCγRIIb-KO)マウス等が挙げられる。
【0075】
本発明のモノクローナル抗体として具体的には、重鎖可変領域のCDRに配列表の配列番
号33(HCDR1)、34(HCDR2)および35(HCDR3)のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変
領域のCDRに配列表の配列番号30(LCDR1)、31(LCDR2)および32(LCDR3)のアミノ酸配列を含むものが挙げられる。
なお、RGMa との結合能を有し、RGMa とNeogeninの結合を阻害せず、RGMaの神経突起成長阻害活性を中和するという本発明の抗体の特性が維持される限り、これらのCDRの1つ
以上において、1~数個のアミノ酸が置換されてもよい。ここで、1~数個とは、例えば、1個または2個である。なお、該アミノ酸置換は本発明の特性を維持するために保存的置換であることが好ましい。抗体の特性が維持されるとは、これらの特性がCDRのアミノ
酸配列改変前と比較して同程度、例えば、80%以上、好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上に維持されることをいう。なお、維持は向上も含む。
【0076】
CDR以外の領域は抗体としての構造を維持し、機能を発揮できる配列であれば特に制限
されず、マウス由来の配列、ヒト由来の配列、他の哺乳動物由来の配列、それらのキメラ配列、人工配列のいずれであってもよい。定常領域を含む場合においては、重鎖および軽鎖の定常領域のアミノ酸配列は、Nucleic Acids Research vol.14, p1779, 1986、The Journal of Biological Chemistry vol.257, p1516, 1982 およびCell vol.22, p197, 1980に記載のものが例示される。
【0077】
これらのCDRを有するマウス抗体としては、軽鎖に配列表の配列番号4のアミノ酸配列
を、重鎖に配列表の配列番号5のアミノ酸配列を有する抗体が例示される。なお、これらのアミノ酸配列においては、RGMa との結合能を有し、RGMa とNeogeninの結合を阻害せず、RGMaの神経突起成長阻害活性を中和するという特性が維持される限り、1または数個のアミノ酸(1~20個、1~10個または1~5個)の置換、欠失、付加又は挿入があってもよい。このような置換、欠失、付加はCDRに導入されてもよいが、CDR以外の領域に導入されることが好ましい。また、該アミノ酸置換は本発明の特性を維持するために保存的置換であることが好ましい。
【0078】
また、上記マウス抗体において、定常領域をヒト由来としたマウス/ヒトキメラ抗体も例示される。このようなマウス/ヒトキメラ抗体としては、軽鎖に配列表の配列番号8のアミノ酸配列(可変領域は1~107)を、重鎖に配列表の配列番号9のアミノ酸配列(可変領域は1~116)を有する抗体が例示される。なお、これらのアミノ酸配列において、RGMa との結合能を有し、RGMa とNeogeninの結合を阻害せず、RGMaの神経突起成長阻害活性を中和するという特性が維持される限り、1または数個のアミノ酸(1~20個、1~10個または1~5個)の置換、欠失、付加又は挿入があってもよい。このような置換、欠失、付加はCDRに導入されてもよいが、CDR以外の領域に導入されることが好ましい。また、該アミノ酸置換は本発明の特性を維持するために保存的置換であることが好ましい。
【0079】
さらに、CDR以外をヒト由来としたヒト化抗体も例示される。このようなヒト化抗体と
しては、重鎖に配列表の配列番号11~18(可変領域はN末端側116残基まで)のいずれかのアミノ酸配列を有し、軽鎖に配列表の配列番号19~25(可変領域はN末端側1~107残基まで)のいずれかのアミノ酸配列を有する抗体が例示される。
なお、ヒト化抗体のアミノ酸配列(重鎖:配列表の配列番号11~18、軽鎖:配列表の配列番号19~25)においては、RGMa との結合能を有し、RGMa とNeogeninの結合を阻害せず、RGMaの神経突起成長阻害活性を中和するという特性が維持される限り、1または数個のアミノ酸(1~20個、1~10個または1~5個)の置換、欠失、付加又は挿入があってもよい。このような置換、欠失、付加はCDRに導入されてもよいが、CDR以外の領域に導入されることが好ましい。また、該アミノ酸置換は本発明の特性を維持するために保存的置換であることが好ましい。
【0080】
重鎖アミノ酸配列と軽鎖アミノ酸配列はこれらの任意の組み合わせでよいが、特に好ましいのは、重鎖に配列表の配列番号15のアミノ酸配列、軽鎖に配列表の配列番号19のアミノ酸配列を有する抗体である。配列表の配列番号15のアミノ酸配列のうち、重鎖可変領域に相当するアミノ酸配列を配列表の配列番号41に,軽鎖可変領域に相当するアミノ酸配列を配列表の配列番号42に示す。すなわち、本発明の特に好ましい抗体は、重鎖可変領域に配列表の配列番号41のアミノ酸配列を有し,軽鎖可変領域に配列表の配列番号42のアミノ酸配列を有する抗体である。
なお、これらのアミノ酸配列において、RGMa との結合能を有し、RGMa とNeogeninの結
合を阻害せず、RGMaの神経突起成長阻害活性を中和するという特性が維持される限り、1または数個のアミノ酸(1~20個、1~10個または1~5個)の置換、欠失、付加又は挿入があってもよい。このような置換、欠失、付加はCDRに導入されてもよいが、CDR以外の領域に導入されることが好ましい。また、該アミノ酸置換は本発明の特性を維持するために保存的置換であることが好ましい。
このような配列表の配列番号41および/または配列表の配列番号42のアミノ酸配列において置換、欠失等が含まれた本発明の抗体のアミノ酸配列は、重鎖可変領域が配列表の配列番号41と90%以上(より好ましくは95%、96%、97%、98%、99%以上、)の同一性を有するアミノ酸配列であり,軽鎖可変領域が配列表の配列番号42と90%以上(より好ましくは95%、96%、97%、98%、99%以上)の同一性を有するアミノ酸配列である。
【0081】
本発明のモノクローナル抗体の他の具体例として、重鎖可変領域のCDRに配列表の配列
番号39(HCDR1)、40(HCDR2)およびSFG(HCDR3)のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域のCDRに配列表の配列番号36(LCDR1)、37(LCDR2)および38(LCDR3)のアミノ酸配列を含むものが挙げられる。なお、RGMa との結合能を有し、RGMa とNeogeninの結合を阻害せず、RGMaの神経突起成長阻害活性を中和するという本発明の抗体の特性が維持される限り、これらのCDRの1つ以上において、1~数個のアミノ酸が置換されてもよい
。ここで、1~数個とは、例えば、1個または2個である。なお、該アミノ酸置換は本発明の特性を維持するために保存的置換であることが好ましい。
CDR以外の領域は抗体としての構造を維持し、機能を発揮できる配列であれば特に制限
されず、マウス由来の配列、ヒト由来の配列、他の哺乳動物由来の配列、それらのキメラ配列、人工配列のいずれであってもよい。定常領域を含む場合においては、重鎖および軽鎖の定常領域のアミノ酸配列は、Nucleic Acids Research vol.14, p1779, 1986、The Journal of Biological Chemistry vol.257, p1516, 1982 およびCell vol.22, p197, 1980に記載のものが例示される。
【0082】
これらのCDRを有するマウス抗体としては、軽鎖に配列表の配列番号6のアミノ酸配列
を、重鎖に配列表の配列番号7のアミノ酸配列を有する抗体が例示される。なお、これらのアミノ酸配列において、RGMa との結合能を有し、RGMa とNeogeninの結合を阻害せず、RGMaの神経突起成長阻害活性を中和するという特性が維持される限り、1または数個のアミノ酸(1~20個、1~10個または1~5個)の置換、欠失、付加又は挿入があってもよい。このような置換、欠失、付加はCDRに導入されてもよいが、CDR以外の領域に導入されることが好ましい。また、該アミノ酸置換は本発明の特性を維持するために保存的置換であることが好ましい。
【0083】
また、上記マウス抗体において、定常領域をヒト由来としたキメラ抗体も例示される。さらに、CDR以外をヒト由来としたヒト化抗体も例示される。
【0084】
本発明の抗RGMa抗体には、特定のアミノ酸配列からなるCDR(例えば、LCDR1として配列表の配列番号30、LCDR2として配列表の配列番号31、LCDR3として配列表の配列番号32、HCDR1として配列表の配列番号33、HCDR2として配列表の配列番号34、HCDR3として配列表の配列番号35のアミノ酸配列)、または特定のアミノ酸配列からなる可変領域(例えば、重鎖可変領域として配列表の配列番号41、軽鎖可変領域として42のアミノ酸配列)を有するマルチスペシフィック抗体、機能改変抗体、コンジュゲート抗体が含まれる。
【0085】
本発明の抗RGMa抗体は、それ自体にRGMa以外の別の抗原結合特異性を有する抗体を遺伝子工学的な手法により結合することにより、バイスペシフィック抗体などのマルチスペシフィック抗体を作製することができる。該遺伝子工学的な手法はこの分野におい
て既に確立されている。例えば、可変領域を直列に連結したDVD-Ig(Wuら、Nature
Biotechnology 25(11), 1290(2007))や、抗体のFc領域を改変することにより、異な
った抗原に結合する2種類の抗体の重鎖が組み合わされるART-Igの技術(Kitazawaら、Nature Medicine 18(10), 1570(2012))を利用すれば所望のバイスペシフィック抗体が
取得できる。RGMa以外の別の抗原としては、非限定的にNogo、MAG、Omgp、CSPG、Sema3A、Lingo-1等の神経突起成長を阻害する因子や、TNF―α、IL―6受容体、CD3、CD20、α4インテグリン、BLys、Thymic
Stromal Lymphopoietin、IgE、IL-1、IL-2,IL-4、IL-5、IL-6,IL-13、IL-17、IL-23、IL-25等の免疫関連分子が挙げられる。
【0086】
本発明の抗RGMa抗体の改変分子として機能改変抗体が挙げられる。機能改変抗体は、主にFc領域等を改変することにより、細胞殺傷機能や補体活性化機能、血中半減期延長機能等の機能を改変した抗体を意味する(設楽研也、藥學雜誌、2009、Vol.129(1), p3;石井明子ら、日本薬理學雜誌、2010、Vol.136(5), p280;橋口周平ら、生化学、2010、Vol.82(8),p710)。
【0087】
抗RGMa抗体の機能改変抗体は、以下のような方法で調製される。例えば、本願抗RGMa抗体を、宿主細胞としてα1,6―フコース転移酵素(FUT8)遺伝子を破壊したCHO細胞を用いて製造すると、糖鎖のフコース含量が低下して細胞殺傷機能が高まった抗体が得られ、FUT8遺伝子を導入したCHO細胞を宿主細胞として製造すると、細胞殺傷機能が低い抗体が得られる(国際公開第2005/035586号、国際公開第2002/31140号、国際公開第00/61739号)。また、Fc領域のアミノ酸残基を改変することで補体活性化機能を調節することができる(米国特許第6737056号、米国特許第7297775号、米国特許第7317091号)。さらに、Fc受容体の1つであるFcRnへの結合を高めたFc領域の変異体を使用することにより、血中半減期の延長を図ることができる(橋口周平ら、生化学、2010、Vol.82(8), p710)。
これらの機能改変抗体は、遺伝子工学的に製造することができる。
【0088】
本発明の抗RGMa抗体の改変分子としてコンジュゲート抗体が挙げられる。コンジュゲート抗体としては、抗RGMa抗体にポリエチレングリコール(PEG)等の非ペプチド性ポリマー、放射性物質、毒素、低分子化合物、サイトカイン、成長因子(TGF-β、NGF、Neurotrophinなど)、アルブミン、酵素、他の抗体などの本願の抗RGMa
抗体以外の機能分子を化学的または遺伝子工学的に結合したコンジュゲート抗体があげられる。
【0089】
機能分子としてPEGを結合する場合、PEGは非限定的に分子量2000から100000Da、より好ましくは10000から50000Daのものが使用でき、直鎖型でもよく、ブランチ型のものでもよい。PEGは、例えばNHS活性基を用いることにより、抗体のアミノ酸のN末端アミノ基等に結合することができる。
【0090】
機能分子として放射性物質を用いる場合、131I、125I、90Y、64Cu、99Tc、77Luまたは211Atなどが用いられる。放射性物質は、ク口ラミンT法などによって抗体に
直接結合させることができる。
【0091】
機能分子として毒素を用いる場合、細菌毒素(例えば、ジフテリア毒素)、植物毒素(例えば、リシン)、低分子毒素(例えば、ゲルダナマイシン)、メイタンシノイド、及びカリケアマイシン等が用いられる。
【0092】
機能分子として低分子化合物を用いる場合、ダウノマイシン、ドキソルビシン、メトロ
レキサート、マイトマイシン、ネオカルチノスタチン、ビンデシン及びFITC等の蛍光色素等が挙げられる。
【0093】
機能分子として、酵素を用いる場合、ルシフェラーゼ(例えば、ホタルルシフェラーゼ及び細菌ルシフェラーゼ;米国特許第4737456号)、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ウレアーゼ、ペルオキシダーゼ(例えば、西洋わさびペルオキシダーゼ(HRPO))、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、サッカライドオキシダーゼ(例えば、グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、及びグルコース-6-ホスフェートデヒドロゲナーゼ)、複素環式オキシダーゼ(例えば、ウリカーゼ及びキサンチンオキシダーゼ等)、ラクトペルオキシダーゼ、マイクロペルオキシダーゼ等が用いられる。
【0094】
毒素、低分子化合物または酵素を化学的に結合する時に使用するリンカーとしては、二価ラジカル(例えば、アルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン)、-(CR2)nO
(CR2)n-(Rは任意の置換基、nは正の整数)で表されるリンカーやアルコキシの
反復単位(例えば、ポリエチレンオキシ、PEG、ポリメチレンオキシ等)及びアルキルアミノ(例えば、ポリエチレンアミノ、JeffamineTM)、並びに、二酸エステル及びアミド(スクシネート、スクシンアミド、ジグリコレート、マロネート及びカプロアミド等が挙げられる)が挙げられる。機能分子を結合させる化学的修飾方法はこの分野において既に確立されている (D.J.King., Applications and Engineering of Monoclonal antibodies., 1998 T.J. International Ltd, Monoclonal Antibody-Based Therapy of
Cancer., 1998 Marcel Dekker Inc; Chari et al., Cancer Res., 1992 Vol152:127; Liu et al., Proc Natl Acad Sci USA., 1996 Vol 93:8681)。
【0095】
本発明における抗体の「抗原結合断片」とは、前述のような抗体の、抗原結合性を有する一部分の領域を意味し、具体的にはF(ab')2 、Fab'、Fab 、Fv(variable fragment of antibody)、ジスルフィド結合Fv、一本鎖抗体(scFv)、およびこれらの重合
体等が挙げられ、さらに、抗原結合断片にはポリエチレングリコール(PEG)等の非ペプチド性ポリマー、放射性物質、毒素、低分子化合物、サイトカイン、成長因子(TGF-β、NGF、Neurotrophinなど)、アルブミン、酵素、他の抗体などの本願の抗RG
Ma抗体以外の機能分子を化学的または遺伝子工学的に結合しているコンジュゲート抗原結合断片が含まれる。
【0096】
ここで、「F(ab')2」及び「Fab」とは、イムノグロブリンを、蛋白分解酵素であるペプシンあるいはパパイン等で処理することにより製造され、ヒンジ領域中の2本の重鎖間に存在するジスルフィド結合の前後で消化されて生成される抗体フラグメントを意味する。例えば、IgGをパパインで処理すると、ヒンジ領域中の2本の重鎖間に存在するジスルフィド結合の上流で切断されてVL(軽鎖可変領域)とCL(軽鎖定常領域)からなる軽鎖、及びVH(重鎖可変領域)とCHγ1(重鎖定常領域中のγ1領域)とからなる重鎖フラグメントがC末端領域でジスルフィド結合により結合した相同な2つの抗体フラグメントを製造することができる。これら2つの相同な抗体フラグメントを各々Fabという。ま
たIgGをペプシンで処理すると、ヒンジ領域中の2本の重鎖間に存在するジスルフィド結合の下流で切断されて前記2つのFabがヒンジ領域でつながったものよりやや大きい抗
体フラグメントを製造することができる。この抗体フラグメントをF(ab')2という。
【0097】
本発明の抗RGMa抗体の抗原結合断片の改変分子としてコンジュゲート抗原結合断片が挙げられる。コンジュゲート抗原結合断片としては、抗RGMa抗体の抗原結合性を有する一部分の領域にポリエチレングリコール(PEG)等の非ペプチド性ポリマー、放射性物質、毒素、低分子化合物、サイトカイン、成長因子(TGF-β、NGF、Neurotrophinなど)、アルブミン、酵素、他の抗体などの本願の抗RGMa抗体以外の機能分子
を化学的または遺伝子工学的に結合したコンジュゲート抗原結合断片があげられる。
【0098】
機能分子としてPEGを結合する場合、PEGは非限定的に分子量2000から100000Da、より好ましくは10000から50000Daのものが使用でき、直鎖型でもよく、ブランチ型のものでもよい。PEGは、例えばNHS活性基を用いることにより、抗RGMa抗体の抗原結合性を有する一部分の領域のN末端アミノ基等に結合することができる。
【0099】
機能分子として放射性物質を用いる場合、131I、125I、90Y、64Cu、99Tc、77Luまたは211Atなどが用いられる。放射性物質は、ク口ラミンT法などによって抗RG
Ma抗体の抗原結合性を有する一部分の領域に直接結合させることができる。
【0100】
機能分子として毒素を用いる場合、細菌毒素(例えば、ジフテリア毒素)、植物毒素(例えば、リシン)、低分子毒素(例えば、ゲルダナマイシン)、メイタンシノイド、及びカリケアマイシン等が用いられる。
【0101】
機能分子として低分子化合物を用いる場合、ダウノマイシン、ドキソルビシン、メトロレキサート、マイトマイシン、ネオカルチノスタチン、ビンデシン及びFITC等の蛍光色素等が挙げられる。
【0102】
機能分子として、酵素を用いる場合、ルシフェラーゼ(例えば、ホタルルシフェラーゼ及び細菌ルシフェラーゼ;米国特許第4737456号)、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ウレアーゼ、ペルオキシダーゼ(例えば、西洋わさびペルオキシダーゼ(HRPO))、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、サッカライドオキシダーゼ(例えば、グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、及びグルコース-6-ホスフェートデヒドロゲナーゼ)、複素環式オキシダーゼ(例えば、ウリカーゼ及びキサンチンオキシダーゼ等)、ラクトペルオキシダーゼ、マイクロペルオキシダーゼ等が用いられる。
【0103】
毒素、低分子化合物または酵素を化学的に結合する時に使用するリンカーとしては、二価ラジカル(例えば、アルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレン)、-(CR2)nO
(CR2)n-(Rは任意の置換基、nは正の整数)で表されるリンカーやアルコキシの
反復単位(例えば、ポリエチレンオキシ、PEG、ポリメチレンオキシ等)及びアルキルアミノ(例えば、ポリエチレンアミノ、JeffamineTM)、並びに、二酸エステル及びアミド(スクシネート、スクシンアミド、ジグリコレート、マロネート及びカプロアミド等が挙げられる)が挙げられる。機能分子を結合させる化学的修飾方法はこの分野において既に確立されている (D.J.King., Applications and Engineering of Monoclonal antibodies., 1998 T.J. International Ltd, Monoclonal Antibody-Based Therapy of
Cancer., 1998 Marcel Dekker Inc; Chari et al., Cancer Res., 1992 Vol152:127; Liu et al., Proc Natl Acad Sci USA., 1996 Vol 93:8681)。
【0104】
本発明の、特定のアミノ酸配列を有するCDRまたは可変領域を含む抗RGMa抗体は、血中半減期を長く維持したいとから該定常領域がヒトIgG(IgG1,IgG2、IgG3、IgG4)の定常領域であることが好ましい。
【0105】
本発明には、上記のような特定のCDRのアミノ酸配列を有する抗体と、RGMaタンパク質
との結合において競合する抗RGMa抗体、及びその抗原結合断片も含まれる。
上記のような特定のCDRのアミノ酸配列を有する抗体とRGMaとの結合において競合する抗
体としては、エピトープとして、Glu298~Gly311、Asn322~Glu335、Lys367~Ala377、およびPro349~Thr359から選ばれる領域にエピトープを有する抗体が例示される。
該抗体は、上記のようなCDR配列を有する抗体とRGMaタンパク質との結合系において、
共存させることにより、取得(スクリーニング)したり、評価したりすることができる。例えば、以下の表面プラズモン共鳴(SPR)法によりスクリーニングすることにより取得で
きる。
【0106】
アビジンが固定されたセンサーチップにビオチン化したヒトRGMa蛋白質(4μg/mL)をリガンドとしてロードすることで、1300から1600RU相当のヒトRGMa蛋白質を固定する。次に任意の抗RGMa抗体(15μg/mL)をアナライトとしてロードし、センサーチップ上に固定されたヒトRGMa蛋白質に結合させる。これを複数回繰り返すことで、センサーチップ上のヒトRGMa蛋白質の全ての分子に任意の抗RGMa抗体が結合している状態(飽和状態)を作り、飽和状態での結合量(飽和結合量1)を求める。
同様の実験を本発明の特定のCDRのアミノ酸配列を含む抗RGMa抗体でも実施し、飽和状態での結合量(飽和結合量2)を求める。
続いて、センサーチップ上のヒトRGMa蛋白質を本発明の特定のCDRのアミノ酸配列を含む抗RGMa抗体で飽和させた後、任意の抗RGMa抗体(15μg/mL)をアナライトとしてロードし、本発明の特定のCDRのアミノ酸配列を含む抗RGMa抗体で飽和されたヒトRGMa蛋白質に追加される形で結合するかどうかを調べる。
任意の抗RGMa抗体が、本発明の特定のCDRのアミノ酸配列を含む、抗RGMa抗体で飽和されたヒトRGMa蛋白質に追加される形で、上記で算出した任意の抗RGMa抗体の飽和結合量1を示しながら結合できる場合は、その抗体は「競合しない」と判断される。一方、任意の抗RGMa抗体が、本発明の特定のCDRのアミノ酸配列を含む、抗RGMa抗体で飽和されたヒトRGMa蛋白質に追加される形で結合できない場合は、その抗体は「競合する」と判断される。また任意の抗RGMa抗体が、本発明の特定のCDRのアミノ酸配列を含む、抗RGMa抗体で飽和されたヒトRGMa蛋白質に追加される形で結合できる場合でも、追加される結合量が有意差をもって飽和結合量1に達しない場合は、その抗体は「競合する」と判断される。有意差は一般的な検定方法(例えば、スチューデントのt検定)で調べ、有意水準は5%以下とする。
【0107】
上記の特定のCDRのアミノ酸配列を含む抗RGMa抗体に対し、RGMaとの結合が競合する、抗RGMa抗体は、マウス抗体、ヒト抗体、ラット抗体、ウサギ抗体、ヤギ抗体、ラクダ抗体など、任意の動物由来の抗体であってもよいし、これらの抗体の組み合わせであるキメラ抗体やヒト化抗体であってもよいが、キメラ抗体、ヒト化抗体、またはヒト抗体であることが好ましい。
【0108】
<本発明の核酸分子>
本発明の核酸分子は本発明のモノクローナル抗体をコードするポリヌクレオチドであるが、例として、重鎖可変領域をコードする領域が配列表の配列番号33、34、および35のアミノ酸配列(1または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入または付加されてよい)をコードする塩基配列をそれぞれ含み、かつ、軽鎖可変領域をコードする領域が配列表の配列番号30、31、および32のアミノ酸配列(1または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入または付加されてよい)をコードする塩基配列をそれぞれ含むポリヌクレオチドや、重鎖可変領域をコードする領域が配列表の配列番号39、40、およびSFGのアミノ酸
配列(1または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入または付加されてよい)をコードする塩基配列をそれぞれ含み、かつ、軽鎖可変領域をコードする領域が配列表の配列番号36、37、および38のアミノ酸配列(1または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入または付加されてよい)をコードする塩基配列をそれぞれ含むポリヌクレオチドが挙げられる。
【0109】
本発明の核酸分子の他の例として、重鎖をコードする領域が配列表の配列番号5のアミノ酸配列をコードする塩基配列を含み、かつ、軽鎖をコードする領域が配列表の配列番号
4のアミノ酸配列をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドや、重鎖をコードする領域が配列表の配列番号7のアミノ酸配列をコードする塩基配列を含み、かつ、軽鎖をコードする領域が配列表の配列番号6のアミノ酸配列をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドが挙げられる。
【0110】
本発明の核酸分子の他の例として、重鎖をコードする領域が配列表の配列番号9のアミノ酸配列をコードする塩基配列を含み、かつ、軽鎖をコードする領域が配列表の配列番号8のアミノ酸配列をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドが挙げられる。
【0111】
本発明の核酸分子の他の例として、重鎖をコードする領域が配列表の配列番号11~18のいずれかのアミノ酸配列をコードする塩基配列を含み、軽鎖をコードする領域が配列表の配列番号19~25のいずれかのアミノ酸配列をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドが例示される。
【0112】
本発明の核酸分子の特に好ましい例として、重鎖をコードする領域が配列表の配列番号15のアミノ酸配列をコードする塩基配列を含み、軽鎖をコードする領域が配列表の配列番号19のアミノ酸配列をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドが例示される。
【0113】
本発明の核酸分子の他の例として、重鎖可変領域をコードする領域が配列表の配列番号41のアミノ酸配列をコードする塩基配列を含み、軽鎖可変領域をコードする領域が配列表の配列番号42のアミノ酸配列をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドが例示される。
【0114】
本発明の核酸分子の具体例として、重鎖可変領域をコードする領域が配列表の配列番号43の塩基配列を含み、軽鎖可変領域をコードする領域が配列表の配列番号44の塩基配列を含むポリヌクレオチドが挙げられる。
【0115】
なお、本発明の核酸分子は、RGMa との結合能を有し、RGMa とNeogeninの結合を阻害せず、RGMaの神経突起成長阻害活性を中和するというモノクローナル抗体をコードする限り、配列表の配列番号43の塩基配列の相補鎖DNAとストリンジェントな条件下でハイブリ
ダイズするポリヌクレオチド及び配列表の配列番号44の塩基配列の相補鎖DNAとストリ
ンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドを含むものであってもよい。ここで、ストリンジェントな条件としては、例えば、サザンハイブリダイゼーションの後、68℃、0.1×SSC、0.1%SDSに相当する塩濃度で洗浄を行う条件が挙げられる。
【0116】
本発明の核酸分子は重鎖と軽鎖の定常領域と可変領域の全てをコードするものであってもよいが、重鎖と軽鎖の可変領域のみをコードするものであってもよい。定常領域と可変領域の全てをコードする場合における重鎖および軽鎖の定常領域の塩基配列は、Nucleic Acids Research vol.14, p1779, 1986、The Journal of Biological Chemistry vol.257,
p1516, 1982 および Cell vol.22, p197, 1980 に記載のものが好ましい。
【0117】
本発明の核酸分子は例えば、以下の方法によって得ることができる。まず、ハイブリドーマ等の細胞から、市販のRNA抽出キットを用いて全RNAを調製し、ランダムプライマー等を用い、逆転写酵素によりcDNAを合成する。次いで、既知のヒト抗体重鎖遺伝子、軽鎖遺伝子の可変領域において、それぞれ保存されている配列のオリゴヌクレオチドをプライマーに用いたPCR法によって、抗体をコードするcDNAを増幅させる。定常領域をコードする配列については、既知の配列をPCR法で増幅することによって得ることができる。DNAの塩基配列は、配列決定用プラスミドに組み込むなどして、常法により決定することができる。
あるいは、可変領域又はその一部の配列を化学合成し、定常領域を含む配列に結合することによっても本発明のモノクローナル抗体をコードするDNAを得ることができる。
【0118】
本発明はまた、本発明の核酸分子を含む組換えベクター及び該組換えベクターを含む形質転換体(宿主細胞)を提供する。組換えベクターとしては、大腸菌(Echerichia coli
)のような原核細胞において発現可能なベクター(例えば、pBR322、pUC119又はこれらの派生物)であってもよいが、真核細胞において発現可能なベクターが好ましく、哺乳動物由来の細胞において発現可能なベクターがより好ましい。哺乳動物由来の細胞において発現可能なベクターとしては、例えば、pcDNA3.1(Invitrogen社製)、pConPlus、pcDM8、pcDNA I/Amp、pcDNA3.1、pREP4のようなプラスミドベクター、pDON-AI DNA(宝バイオ社製)などのウイルスベクターを挙げることができ
る。重鎖コード配列と軽鎖コード配列を含む1つのベクターでもよいし、重鎖コード配列含むベクターと軽鎖コード配列を含むベクターの2つのベクターでもよい。
【0119】
本発明の組換えベクターを導入する形質転換体は、大腸菌、枯草菌のような原核細胞であってもよいが、真核細胞が好ましく、哺乳動物由来の細胞がより好ましい。哺乳動物由来の細胞としては、例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)、COS、ミ
エローマ、BHK、HeLa、Vero、293、NS0、Namalwa、YB2/0などを挙げることができる。
【0120】
得られた抗RGMa抗体やその抗原結合断片は、均一になるまで精製することができる。抗体等の分離、精製は通常の蛋白質で使用されている分離、精製方法を使用すればよい。例えばアフィニティークロマトグラフィー等のクロマトグラフィーカラム、フィルター、限外濾過、塩析、透析、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動、等電点電気泳動等を適宜選択、組み合わせれば、抗体を分離、精製することができる(Antibodies:A Laboratory Manual. Ed Harlow and David L
ane, Cold Spring Harbor Laboratory, 1988)が
、これらに限定されるものではない。アフィニティークロマトグラフィーに用いるカラムとしては、プロテインAカラム、プロテインGカラム、抗免疫グロブリン抗体結合カラム、抗原結合カラム等が挙げられる。例えばプロテインAカラムとして、Hyper D, POROS, Sepharose F. F.(Amersham Biosciences)等が挙げられる。
【0121】
<免疫学的疾患および神経学的疾患の予防または治療薬>
本発明のRGMa結合タンパク質、特に抗RGMa抗体またはその抗原結合断片は、RGMaの神経突起成長阻害活性を中和することで神経機能の修復を促すことから、神経学的疾患の予防、治療または再発予防薬として使用することができる。
本発明のRGMa結合タンパク質、特に抗RGMa抗体またはその抗原結合断片はまた、RGMaによるT細胞活性化を中和することから、免疫学的疾患の予防、治療または再発予防薬として
使用することができる。
【0122】
神経学的疾患としては、筋萎縮性側索硬化症、上腕神経叢損傷、脳損傷(外傷性脳損傷を含む)、脳性麻痺、ギランバレー、大脳白質萎縮症多発性硬化症(再発寛解型多発性硬化症、一次性進行型多発性硬化症、二次性進行型多発性硬化症を含む)、視神経脊髄炎、ポリオ後症候群、二分脊椎、脊髄損傷、脊髄性筋萎縮症、脊椎腫瘍、横断性脊髄炎、認知症(老年性認知症、軽度認知機能障害、アルツハイマー病、アルツハイマー関連認知症を含む)、ハンチントン舞踏病、遅発性ジスキネジー、そう病、パーキンソン病、スティール-リチャード症候群、ダウン症、重症筋無力症、神経外傷(視神経外傷を含む)、血管アミロイド症、アミロイド症を伴う大脳出血、脳梗塞、脳炎、急性混乱障害、緑内障、統合失調症及び網膜神経線維層変性(糖尿病性網膜症、虚血性視神経症、X染色体連鎖性
網膜分離症、薬物誘発性視神経症、網膜ジストロフィー、加齢黄斑変性、視神経乳頭ドルーゼンにより特徴づけられる眼病、光受容器変性の遺伝的決定因子により特徴づけられる眼病、常染色体劣性錐体-桿性ジストロフィー、視神経症を伴うミトコンドリア障害を含む)が例示される。好ましくは脊髄損傷、神経外傷(視神経外傷を含む)である。
【0123】
免疫学的疾患としては、多発性硬化症(再発寛解型多発性硬化症、一次性進行型多発性硬化症、二次性進行型多発性硬化症を含む)、視神経脊髄炎、乾癬、関節炎(関節リウマチ、変形性関節症、乾癬性関節炎を含む)、ギランバレー症候群、神経ベーチエツト病、悪性貧血、I型(インスリン依存型)糖尿病、全身エリテマトーデス(SLE) 、炎症性腸疾患(IBD) 、シェーグレン症候群、グッドバスチャー症候群、グレーブス病、自己免疫性溶血
性貧血、自己免疫性血小板減少性紫斑病、喘息、花粉症、アトピー性皮膚炎、糸球体腎炎、重症筋無力症、橋本病、及びサルコイドーシスが例示される。好ましくは、多発性硬化症である。
【0124】
本発明のRGMa結合タンパク質、特に抗RGMa抗体またはその抗原結合断片は神経学的疾患/免疫学的疾患の予防、治療または再発予防薬として使用することができるが、好ましい神経学的疾患/免疫学的疾患としては、脊髄損傷、神経外傷(視神経外傷を含む)、多発性硬化症(再発寛解型多発性硬化症、一次性進行型多発性硬化症、二次性進行型多発性硬化症を含む)があげられる。
【0125】
ここで、「治療」とは、哺乳動物、特にヒトの疾患の任意の治療を含み、疾患症状を阻害する、即ち、その進行を阻止または疾病または症状を消滅させること、および疾患症状を軽減すること、即ち、疾病または症状の後退、または症状の進行の遅延を引き起こすことを含む。
【0126】
また、「予防」とは、哺乳動物、特にヒトにおいて、上記疾患の発症を防止することを含む。
【0127】
また、「再発予防」とは、哺乳動物、特にヒトにおいて、寛解、再発を繰り返す上記疾患の再発を防止することを含む。
【0128】
本発明のRGMa結合タンパク質(抗RGMa抗体またはその抗原結合断片)は、神経学的疾患または免疫学的疾患の予防または治療のための医薬組成物とすることができる。
【0129】
本発明のRGMa結合タンパク質(抗RGMa抗体またはその抗原結合断片)の投与形態は特に制限されず、経口投与、非経口投与(例えば静脈注射、筋肉注射、皮下投与、直腸投与、経皮投与、脳内投与、脊髄内投与、その他局所投与)のいずれかの投与経路でヒトを含む哺乳類に投与することができる。
【0130】
経口投与および非経口投与のための剤型およびその調製方法は当業者に周知であり、本発明による抗体を、薬学的に許容される坦体等と配合することにより医薬組成物を製造することができる。
非経口投与のための剤型は、注射用製剤(例えば、点滴注射剤、静脈注射剤、筋肉注射剤、皮下注射剤、皮内注射剤、脳内投与製剤、脊髄内投与製剤)、外用剤(例えば、軟膏剤、パップ剤、ローション剤)、坐剤吸入剤、眼剤、眼軟膏剤、点鼻剤、点耳剤、リポソーム剤等が挙げられる。特に、中枢神経組織に直接作用させたい場合は浸透圧ポンプの医療用マイクロポンプを利用して持続的に注入することもできるし、フィブリン糊などと混合し徐放製剤としたうえで患部組織に留置することもできる。
【0131】
例えば、注射用製剤は、通常、抗体を注射用蒸留水に溶解して調製するが、必要に応じ
て溶解補助剤、緩衝剤、pH調整剤、等張化剤、無痛化剤、保存剤、安定化剤等を添加することができる。また、用事調製用の凍結乾燥製剤とすることもできる。
【0132】
経口投与のための剤型は、固体または液体の剤型、具体的には錠剤、被覆錠剤、丸剤、細粒剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、シロップ剤、乳剤、懸濁剤、注射剤、トローチ剤等が挙げられる。
【0133】
本発明の医薬組成物は、治療上有効な他の薬剤を更に含有していてもよく、また、必要に応じて、殺菌剤、消炎剤、ビタミン類、アミノ酸等の成分を配合することもできる。
【0134】
薬理学的に許容される担体としては、例えば固形製剤における賦形剤、滑沢剤、結合剤及び崩壊剤、あるいは液状製剤における溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤及び無痛化剤等が挙げられる。更に必要に応じ、通常の防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤、吸着剤、湿潤剤等の添加物を適宜、適量用いることもできる。
【0135】
本発明による抗体の投与量は、例えば、投与経路、疾患の種類、症状の程度、患者の年齢、性別、体重、疾患の重篤度、薬物動態および毒物学的特徴等の薬理学的知見、薬物送達系の利用の有無、並びに他の薬物の組合せの一部として投与されるか、など様々な因子を元に、医師により決定されるが、通常、成人(体重60kg)あたり、経口投与では1~5000μg/日、好ましくは10~2000μg/日、さらに好ましくは50~2000μg/日を、注射投与では1~5000μg/日、好ましくは5~2000μg/日、さらに好ましくは50~2000μg/日を、1回または数回に分けて投与することができる。全身への非経口投与では体重あたり10~100000μg/kg、より好ましくは100~50000μg/kg、さらに好ましくは500~20000μg/kgを1日、1週間、1月間に1回、または1年間に1~7回の間隔で投与することができる。浸透圧ポンプなどを利用した局所投与では、通常、成人(体重60kg)あたり、10~100000μg/日、より好ましくは100~10000μg/日、さらに好ましくは500~5000μg/日の速度で持続注入することができる。
【実施例
【0136】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例の態様に限定されるものではない。
【0137】
実施例1:ヒトRGMaタンパク質(C末側ドメイン)の調製
ヒトRGMaタンパク質(配列表の配列番号1)のPro169~Gly422(N末端側から169番目のプロリン残基から422番目のグリシン残基までを指す、以後同様に記載)のC末端にヒスチジン
タグを融合した組換えヒトRGMaタンパク質発現するCHO細胞を樹立した。
CHO細胞の培養上清中に含まれるヒトRGMaタンパク質C末側ドメインを、ニッケルカラム(GE Healthcare 社製、17-5247-01)に吸着させた後、100mMイミダゾール溶液で溶出した。透析により、イミダゾール溶出画分からPhosphate bufferd saline(PBS)に置換し、免疫
原として用いた。
【0138】
実施例2:マウス抗ヒトRGMaモノクローナル抗体の作製
実施例1で調製した組換えヒトRGMaタンパク質10μgを、完全フロイントアジュバント(
シグマ社製)と混合してエマルジョンを作製し、BALB/cマウス(日本チャールス・リバー株式会社)の背部皮下の数か所に免疫した。その後1~2週間おきに不完全フロイントアジュ
バント(シグマ社製)でエマルジョンを作製した組換えヒトRGMaタンパク質10μgを同様に
免疫し、数回免疫後に採血した。後述するヒトまたはマウスRGMaタンパク質を固相化したELISA法にて抗体価を測定した。抗体価の上昇が認められた個体について、ヒトRGMaタン
パク質10μgを静脈内投与してブーストし、2~3日後に脾細胞を回収した。
細胞融合は前記脾細胞とその半数のマウスミエローマ細胞(SP2/0、大日本住友製薬)を
混合し、遠心して得た沈殿画分にポリエチレングリコール(ロシュ・ダイアグノスティッ
ク社製)を加えて細胞融合させた。次いで遠心した細胞をD-MEM(インビトロジェン社製)で2回洗浄した。細胞を10%ウシ胎児血清(インビトロジェン社製)、1% BM condimed(ロシ
ュ・ダイアグノスティック社製)およびHAT(シグマアルドリッチ社製)を含むGIT培地(日本製薬製)に再懸濁し、各ウェル5 ×104ミエローマ細胞/wellで96穴プレートに播種した。
培養上清を回収し、実施例3のヒトRGMaタンパク質固相化ELISA法により、抗体産生細胞
のスクリーニングを行った。
スクリーニングで得られた抗体産生細胞を限界希釈法によりクローニングし、2種類の
モノクローナル抗体(B5.116A3およびB5.70E4)を産生するハイブリドーマ細胞を選定した
。アイソタイピングキット(Mouse MonoAB ID/SP KIT、ZYMED社製、93-6550)を用いて判定した両モノクローナル抗体のアイソタイプは、いずれも重鎖はマウスIgG2b、軽鎖はκで
あった。
モノクローナル抗体の精製は、ハイブリドーマの培養上清から、抗マウスIgG抗体を固
定したアガロース(Sigma社製 Anti-Mouse IgG -Agarose)を用いたアフィティークロマト
グラフィーにより行った。抗体をカラムに結合させた後、PBSでカラムを洗浄し、次いで10mMグリシン塩酸(pH2.7)で溶出し、すみやかに中和した。その後、溶出中和液を限外濾過膜によりPBSに置換した。
【0139】
実施例3:ヒトまたはマウスRGMaタンパク質を固相化したELISA
PBSで2μg/mLに調製したヒトRGMaタンパク質(R&D systems社製、2459-RM)またはマウスRGMaタンパク質(R&D systems社製、2458-RG)を96穴プレートに50μL/wellずつ分注し、室温で1時間静置した。液を除去後、PBSで5倍希釈したApplieBlock(生化学バイオビジネス
社製、200150)を200μL/wellずつ分注し室温で1時間静置し、非特異結合をブロックした
。PBST (0.05% Tween20を含むPBS)で3回洗浄後、PBSで段階希釈した検体(マウス血清、
ハイブリドーマ培養上清、後述する組換え抗体発現培養上清、または精製抗体など)を、50μL/wellずつ添加し、室温で1時間静置した。その後PBSTで3回洗浄し、次いでPBSで希
釈したペルオキシダーゼ標識ヒツジ抗マウスIgG抗体(GE Healthcare社製、NA9310V)を50
μL/wellずつ分注し、室温で1時間静置した。3回洗浄した後、ペルオキシダーゼ発色キット(住友ベークライト社製、ML-1130O)を添加して一定時間発色させ、プレートリーダーにて492nmの吸光度を測定した。
【0140】
実施例4:抗体のエピトープ解析
抗体が結合するエピトープは、ペプチドスキャン法にて決定した。ヒトRGMaタンパク質
(配列表の配列番号1)のArg172~Ala424に含まれる、3残基ずつずらした連続する11残基から成るアミノ酸配列のN末端側に、N末端をビオチン化したスペーサ―配列(SGSG) (配列表の配列番号46)を融合した計83種類のペプチドを合成した。ペプチドをアビジンプレートに固定した後、被験抗体(B5.116A3、B5.70E4)を反応させた。次いで、ペルオキシ
ダーゼ標識ウサギ抗マウスIg抗体(Dako社、P026002)を反応させ、基質溶液を添加して一
定時間発色させた後、プレートリーダーにて吸光度を測定した。
その結果、B5.116A3は、Glu298~Gly311(Glu298~Asp308、Val301~Gly311の2種類の
ペプチド)、Asn322~Glu335(Asn322~Thr332、Ile325~Glu335の2種類のペプチド)、およびLys367~Ala377のヒトRGMa由来のペプチドに結合し、B5.70E4はGlu298~Gly311(Glu298~Asp308、Val301~Gly311の2種類のペプチド)、Asn322~Glu335(Asn322~Thr332、Ile325~Glu335の2種類のペプチド)、およびPro349~Thr359のヒトRGMa由来のペプチドに結合した。
【0141】
実施例5:マウス抗体遺伝子の配列解析とクローニング
マウスモノクローナル抗体(B5.116A3、B5.70E4)を産生するハイブリドーマ細胞から、total RNAを抽出した。Total RNAを鋳型にして、逆転写反応によりcDNAを合成した。cDNA
を鋳型に、軽鎖可変領域および定常領域、並びに重鎖可変領域および定常領域の遺伝子をPCR増幅し、DNA配列を決定した。次いで、決定した可変領域遺配列および定常領域配列に基づき、抗体全長遺伝子をPCRにより増幅し、クローニングした。これらの抗体遺伝子が
コードするアミノ酸配列は、以下の通りであった。
【0142】
(1)B5.116A3軽鎖アミノ酸配列(配列表の配列番号4)
DIQMTQTTSSLSASLGDRVTISCRASQDISSYLNWYQQKPDGTVKLLIYYTSRLHSGVPSRFSGSGSGTDYSLTISNLEQEDIATYFCQQLNTLPWTFGGGTKLEIKRADAAPTVSIFPPSSEQLTSGGASVVCFLNNFYPKDINVKWKIDGSERQNGVLNSWTDQDSKDSTYSMSSTLTLTKDEYERHNSYTCEATHKTSTSPIVKSFNRNEC
【0143】
(2)B5.116A3重鎖アミノ酸配列(配列表の配列番号5)
EVKLEESGGGLVQPGGSMKLSCAASGFTFSDAWMDWVRQSPEKGLEWVAEIRSKANNHATYYAESVKGRFTISRDDSKRSVYLQMNNLRAEDTGIYYCTRRDGAYWGQGTLVTVSAAKTTPPSVYPLAPGCGDTTGSSVTLGCLVKGYFPESVTVTWNSGSLSSSVHTFPALLQSGLYTMSSSVTVPSSTWPSQTVTCSVAHPASSTTVDKKLEPSGPISTINPCPPCKECHKCPAPNLEGGPSVFIFPPNIKDVLMISLTPKVTCVVVDVSEDDPDVQISWFVNNVEVHTAQTQTHREDYNSTIRVVSTLPIQHQDWMSGKEFKCKVNNKDLPSPIERTISKIKGLVRAPQVYILPPPAEQLSRKDVSLTCLVVGFNPGDISVEWTSNGHTEENYKDTAPVLDSDGSYFIYSKLNMKTSKWEKTDSFSCNVRHEGLKNYYLKKTISRSPGK
【0144】
(3)B5.70E4軽鎖アミノ酸配列(配列表の配列番号6)
DVVMTQTPLSLPVSLGDQASISCRSSQSLVHSNGNTYLHWYLQRPGQSPKLLIYKVSNRFSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDLGLYFCSQSTHVPYTFGGGTKLEIKRADAAPTVSIFPPSSEQLTSGGASVVCFLNNFYPKDINVKWKIDGSERQNGVLNSWTDQDSKDSTYSMSSTLTLTKDEYERHNSYTCEATHKTSTSPIVKSFNRNEC
【0145】
(4)B5.70E4重鎖アミノ酸配列(配列表の配列番号7)
DVKLQESGPGLVKPSQSLSLTCSVTGYSITTSYYWNWIRQFPGNKLEWMGYISYDGTNNYNPSLKNRISITRDTSKNQFFLRLNSVTTEDTATYYCAGSFGYSQGTLVTVSAAKTTPPSVYPLAPGCGDTTGSSVTLGCLVKGYFPESVTVTWNSGSLSSSVHTFPALLQSGLYTMSSSVTVPSSTWPSQTVTCSVAHPASSTTVDKKLEPSGPISTINPCPPCKECHKCPAPNLEGGPSVFIFPPNIKDVLMISLTPKVTCVVVDVSEDDPDVQISWFVNNVEVHTAQTQTHREDYNSTIRVVSTLPIQHQDWMSGKEFKCKVNNKDLPSPIERTISKIKGLVRAPQVYILPPPAEQLSRKDVSLTCLVVGFNPGDISVEWTSNGHTEENYKDTAPVLDSDGSYFIYSKLNMKTSKWEKTDSFSCNVRHEGLKNYYLKKTISRSPGK
【0146】
実施例6:組換えマウス抗体および組換えラットマウスキメラ抗体の調製
ハイブリドーマ由来の2種類の抗RGMa抗体B5.116A3またはB5.70E4の組換えマウス抗体を調製した(それぞれ以後、「r116A3」、「r70E4」と記載する。)。
また、比較例として、特許文献1(WO2009/106356)に基づき、ラット抗体5F9の可変領域とマウス抗体(IgG2bκ)の定常領域(軽鎖定常領域は配列表の配列番号4のArg108~Cys214、
重鎖定常領域は配列表の配列番号5のAla117~Lys452)を融合し組換えラットマウスキメラ抗体(以後、「r5F9」と記載する。)を調製した。
それぞれの抗体の軽鎖および重鎖をコードするDNAを、pcDNA3.3(Life Technologies社
製)に挿入し、発現ベクターを作製した。発現ベクターを、HEK293F細胞(Life Technologies社製)にNeofection 293(アステック社製)を用いて導入した。細胞を37℃、8%炭酸ガス
条件下で6日間培養した後、培養上清を回収した。組換え抗体の精製は、培養上清を、Protein AまたはProtein Gを固定化したアフィニティーカラム(GE healthcare社製)にアプライし、カラムに結合した抗体を10mMグリシン塩酸(pH2.8)で溶出し、すみやかに中和した
後、PBSに置換した。
使用目的により、精製純度を高める必要がある場合は、Protein Aカラム精製後の抗体
を、Ceramic Hydroxyapatite Type1(CHT)カラム(BIORAD社製)にて精製した。CHTカラムに結合した抗体を10 mM KH2PO4(pH6.5)で洗浄後、20 mM KH2PO4(pH6.5),0.5 M NaClで溶出した。溶出画分を回収後、PBSに置換した。
【0147】
実施例7: RGMaタンパク質発現細胞に対する結合試験
全長ヒトRGMaタンパク質(配列表の配列番号1のMet1~Cys450)、ヒトRGMaタンパク質C
末側ドメイン(配列表の配列番号1のPro169~Cys450)、全長マウスRGMaタンパク質(配列表の配列番号2のMet1~Trp454)、またはラットRGMaタンパク質C末側ドメイン(配列表の配
列番号3のPro170~Trp449)を発現するベクターを、CHO細胞またはHEK293細胞に導入し、
抗原発現細胞を作製した。
尚、RGMaタンパク質は、GPIアンカー付加反応の際にC末端ペプチドがプロセッシングを受ける。マウスRGMaタンパク質およびラットRGMaタンパク質は、いずれもAla427で切断され、C末端側のペプチドは除去される。従って、GPIアンカーを介して細胞上に発現する全長タンパク質およびC末側ドメインのアミノ酸配列は、マウスとラットでは同一である。
終濃度10μg/mLの被験抗体(r116A3およびr70E4)及びr5F9(比較例)を、上記の抗原
発現細胞と反応させた後、0.1%ウシ血清アルブミン、0.05%NaN3を含むPBSにて細胞を洗浄した。FITC標識抗マウスイムノグロブリン抗体(DAKO社製)を反応させ、細胞を洗浄した。フローサイトメトリー(ベクトン・ディッキンソン社製、ファックスキャリバー)にて蛍光を測定し、被験抗体の抗原発現細胞への結合性を評価した(表1)。
その結果、r116A3およびr70E4は、r5F9と異なり、ヒトおよびラットRGMaタンパク質の
C末側ドメインにも結合することが分かった。RGMaタンパク質はC末側ドメインのみでも神経突起成長阻害作用が認められており、r116A3およびr70E4は、全長RGMaタンパク質お
よびC末側ドメインの両者を阻害する。
【0148】
【表1】
【0149】
実施例8:RGMaタンパク質に対する解離定数測定
被験抗体(r116A3, r70E4)及びr5F9(比較例)のRGMaタンパク質に対する親和性は、Proteon XPR36(バイオラッド社製)を用いた表面プラズモン共鳴(SPR)法により測定した。
10mM 酢酸バッファー(pH4.5)で10μg/mLに希釈したヒトRGMaタンパク質(R&D Systems社製、2459-RM)、ヒトRGMaタンパク質C末端側ドメイン(実施例1にて調製)、またはマウスRGMaタンパク質(R&D Systems社製、2458-RG)を、アミンカップリング法によりGLCセンサー
チップに固定した。アナライトとして段階希釈した被験抗体を流速100 μL/minで60 秒間アプライし、解離定数(Kd値)を測定した。
表2に示すように、r116A3およびr70E4は、r5F9と異なり、ヒトRGMaタンパク質のC末側ドメインにも結合した。r116A3はr5F9よりも、ヒトRGMaタンパク質に対して32倍、マウスRGMaタンパク質に対しては44倍強く結合した。
【0150】
【表2】
【0151】
実施例9:RGMa-Neogenin結合阻害試験
組換えヒトNeogeninタンパク質(配列表の配列番号10)の細胞外ドメイン(Ala34~Leu1105)を精製した。ヒトNeogeninタンパク質細胞外ドメインを発現するCHO細胞株を樹立し
た。C末端にヒスチジンタグを融合した。CHO細胞の培養上清から、ニッケルカラム(GE Healthcare 社製、17-5247-01) に吸着させた後、100mMイミダゾール溶液で溶出した。透析により、イミダゾール溶出画分からPBSに置換した。
ChromaLink Biotin Labeling Kit(Solulink社製)を用いて、ヒトRGMaタンパク質(R&D systems社製、2459-RM)をビオチン標識した。2μg/mLに調製したビオチン標識ヒトRGMaタ
ンパク質を、2倍段階希釈した被験抗体(r116A3、r70E4)と等量混和し、室温で2時間反
応させ、混合溶液を調製した。
同時に、PBSで2μg/mLに調製したヒトNeogeninタンパク質細胞外ドメインを96穴プレートに50μL/wellずつ加えて室温で1時間静置し、Neogenin固相プレートを作製した。液を
除去後、2.5%ウシ血清アルブミン溶液を添加し、1時間静置することで非特異結合をブロックした。このNeogenin固相プレートに、上記の混合溶液を50μL/wellで添加し、室温で1時間静置した。その後洗浄操作を行い、ペルオキシダーゼ標識Avidin(VECTASTAIN ABC
システム、ベクターラボラトリーズ社製)を添加し、室温で1時間静置した。その後洗浄操作を行い、基質溶液を添加して一定時間発色させ、プレートリーダーにて吸光度を測定した。抗体が存在しない場合の吸光度比を1としてプロットし、抗体による濃度依存的なRGMa-Neogeninの結合阻害を評価した(図1)。
その結果、抗ヒトRGMaポリクローナル抗体(R&D Systems社製、AF2459)およびr5F9と
は異なり、r116A3およびr70E4は、RGMa-Neogeninの結合を阻害しなかった。
【0152】
実施例10:RGMa-BMP2結合阻害試験
PBSで2μg/mLに調製したヒトRGMaタンパク質(R&D systems社製、2459-RM)を96穴プレートに50μL/wellずつ加えて室温で1時間静置した。2.5%ウシ血清アルブミン溶液を添加し
、1時間静置することで非特異結合をブロックし、RGMaタンパク質固相化プレートを調製
した。このRGMaタンパク質固相プレートに0.01~10μg/mLに段階希釈した被験抗体(B5.116A3、B5.70E4)を加えて室温で1時間静置した。その後洗浄操作を行い、0.5μg/mLに希
釈したヒトBMP2タンパク質(R&D systems社製、355-BM)を加え室温で1時間静置した。
ビオチン標識抗BMP2抗体を反応させ、更にペルオキシダーゼ標識Avidin(VECTASTAIN ABCシステム、ベクターラボラトリーズ社製)、基質溶液を添加して一定時間発色させ、プレートリーダーにて吸光度を測定した(図2)。
その結果、特に、抗RGMa抗体(B5.116A3)は、濃度依存的にRGMa-BMP2の結合を弱く阻害した(0.01μg/mL で吸光度0.45、0.1μg/mL で吸光度0.4、1μg/mL で吸光度0.32、10μg/mLで吸光度0.1)。
【0153】
実施例11:ヒト化抗体の設計
マウスモノクローナル抗体B5.116A3のヒト化は、特許第2912618号公報に記載のWinter
らの方法に従い、相補性決定領域(CDR)移植法にて行った。
まず、マウスモノクローナル抗体B5.116A3の軽鎖および重鎖可変領域の3D homology modelを作成し、フレームワーク(FW)領域で、CDR近傍に位置するアミノ酸残基を特定した。これらアミノ酸が可能な限り維持されるヒト抗体FWを選択し、マウス抗体のCDRを移植し
、ヒト化抗体配列を設計した。設計したヒト化抗体配列は、重鎖はHA(配列表の配列番号11)、軽鎖はKA(配列表の配列番号19)と記載する。更に、可変領域の構造安定性に関与するFW内のアミノ酸に追加の変異導入を行い、複数のヒト化抗体配列を設計した(重鎖はHAを
含めHB~HHまで計8種、軽鎖はKAを含めKB~KGの計7種)。
【0154】
【表3】
【0155】
実施例12:組換えマウスヒトキメラおよび組換えヒト化抗体の調製
(1)実施例6に準じて、以下のアミノ酸配列を有する組換えマウスヒトキメラ抗RGMa抗体116A3(r116A3C)を調製した。
【0156】
軽鎖(配列表の配列番号8)
DIQMTQTTSSLSASLGDRVTISCRASQDISSYLNWYQQKPDGTVKLLIYYTSRLHSGVPSRFSGSGSGTDYSLTISNLEQEDIATYFCQQLNTLPWTFGGGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
【0157】
重鎖(配列表の配列番号9)
EVKLEESGGGLVQPGGSMKLSCAASGFTFSDAWMDWVRQSPEKGLEWVAEIRSKANNHATYYAESVKGRFTISRDDSKRS
VYLQMNNLRAEDTGIYYCTRRDGAYWGQGTLVTVSAASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
【0158】
(2)実施例6に準じて、以下の重鎖および軽鎖の組み合わせから成る計20種のヒト化抗RGMa抗体を調製した。
【0159】
重鎖/軽鎖の組み合わせ;
HA/KA、HA/KB、HA/KC、HA/KG、HB/KC、HC/KA、HC/KB、HD/KA、HD/KB、HD/KC、HD/KD、HE/KA、HF/KA、HF/KF、HF/KG、HG/KD、HG/KH、HH/KA、HH/KD、HH/KF
【0160】
(3) 実施例6に準じて、組換えヒト化抗RGMa抗体(以後、rH5F9と記載)を調製した(比較
例)。
特許文献1(WO2009/106356)に記載されたヒト化抗RGMaモノクローナル抗体h5F9の可変
領域(軽鎖は特許文献1のseq ID_53、重鎖は特許文献1のseq ID_50)を、ヒト抗体定常領
域(軽鎖は配列表の配列番号26のArg108~Cys214、重鎖は配列表の配列番号27のAla117~Lys446)と連結した。
【0161】
実施例13:抗体の熱安定性試験
実施例12に記載の組換え抗体を発現する培養上清を20μLずつ分取し,サーマルサイク
ラー(Takara bio社製、TP600)を用いて、40、45、50、55、60、65、70、75℃の8点の温度でそれぞれ10分間熱処理した。
抗体終濃度が125ng/mLになるよう培養上清をPBSで希釈した。その後、実施例3に記載したヒトRGMaタンパク質を固相化したELISAに供し、抗体の抗原結合性を評価した(図3
。その結果、重鎖HE、軽鎖KAの組み合わせから成るヒト化抗体(以下、「rH116A3」と称
する。)、およびマウスヒトキメラ抗体(r116A3C)は、ヒト化抗体(rH5F9)より優れた熱安定性を示した。以後、このHE/KAの組み合わせから成るヒト化抗体をrH116A3と記載する。
尚、熱処理をしなかった場合、マウスヒトキメラ抗体(r116A3C)とヒト化抗体(rH116A3)は同等の抗原結合性を示し、ヒト化に伴う抗原結合性の低下は無かった。
【0162】
実施例14:ヒト化抗RGMa抗体(rH116A3)産生CHO安定発現株の樹立
ヒト化抗RGMa抗体(rH116A3)を生産するCHO安定発現株は、Lonza GS Xceedシステム(Lonza社)にて樹立した。ヒト化抗RGMa抗体(rH116A3)の軽鎖コード配列(配列表の配列番号44)および重鎖コード配列(配列表の配列番号43)を含むpXCダブルジーンベクターを
、CHOK1SV GS knock out親細胞株に導入し、methionine sulphoximine (MSX)選択下にて
形質転換細胞プールを取得した。フローサイトメトリーにて単一細胞に分離した後、培養上清中への抗体産生量、細胞増殖性などを評価し、CHO安定発現株を取得した。
【0163】
実施例15:神経突起成長試験
ラット新生仔(P7)より小脳を摘出し、トリプシン溶液(0.2%DNaseを含む0.25%トリプシ
ンPBS溶液)に懸濁し、37℃で10~15分間消化した。続いて10%ウシ胎児血清含有DMEM培地
を加えて遠心分離した。同培地にて再懸濁して遠心分離し、同様に操作を2回繰り返し細
胞を洗浄した。更に、この細胞懸濁液を70μmセルストレーナーで濾過後、遠心分離して
沈殿画分を同培地にて再懸濁した。細胞浮遊液にB27 supplement(GIBCO社製)を加えてラ
ット新生仔小脳顆粒細胞を調製した。
次に、細胞プレートにラット新生仔小脳顆粒細胞を播種し、37℃で1日間培養を行った
。終濃度2μg/mLの組換えRGMaタンパク質(R&D systems社製、2459-RM)を添加して37℃、2日間培養した。神経突起長を顕微鏡観察により測定したところ、図4に示すように、RG
Maの添加により、左図の実験では神経突起長が37μmから26μmとなり、右図では38μmから27μmとなり、神経突起成長が阻害された。被験抗体(B5.116A3、B5.70E4)のみを終濃度10μg/mLで添加しても、神経突起長に変化は見られなかったが、組換えRGMaタンパク質と同時に被験抗体を添加した場合には、対照(RGMa非添加)と同程度に神
経突起が成長し、抗体によるRGMaタンパク質の中和作用が認められた。
【0164】
実施例16:脊髄損傷モデルラットを用いた効力試験
ハロタン(武田薬品工業社製)にて吸引麻酔したWistar系ラット(雌、8週齢、体重約200g)に、脊椎レベルT9を中心に前後1椎骨分(T8~T10)の椎弓切除術を施し、脊髄を露出さ
せた。脊髄圧挫モデルを用いて評価する場合には、IH impactor(Precision System社製)
を用いて、露出した脊髄に200 kdynの圧力をかけた。
前記のように脊髄を損傷させた直後に、400μg/mLの被験抗体(r116A3, r70E4)または対照マウス抗体(mo-IgG2bκ)を満たした浸透圧ミニポンプ(200μL液量、0.5μL/時間、14日間送達)(Alzet社製、model 2002)をラットの背中の皮下に置いた。浸透圧ミニポンプの出口に接続されたシリコン製チューブの先端は、脊髄損傷部位の硬膜下に置いた。該チューブは、椎弓切除術部位の直下肢側の棘突起に縫いつけて固定し、筋肉及び皮膚層を縫合して、飼育した。
脊髄損傷モデルラットの運動機能は、Basso-Beattie-Bresnahan(BBB)スコア(Basso, D.
M., Beattie, M.S., & Bresnahan, J.C., A sensitive and reliable locomotor rating
scale for open field testing in rats. J Neurotrauma 12, 1-21 (1995))を用い、損
傷後0、1、3、7日目、以降1週間毎に最長8週間に亘り、評価した。その結果、図5(A)に示すように、r116A3またはr70E4は、対照抗体(mo-IgG2bκ)と比較してそれぞれ投与後4
または3週間以後に有意にBBBスコアを改善した(p<0.05, Student's t-検定)。
脊髄半側切断モデル用いて評価する場合には、露出させた脊髄の背側部を1.8mm~2.0mmの深さに切断した。上記と同様に被検抗体(B5.116A3)または対照マウス抗体(mo-IgG2bκ)を浸透圧ミニポンプを用いて投与し、損傷後0、1、3、7日目、以降1週間毎に最長10
週間に亘り、BBBスコアを用いて評価した。図5(B)に示すように、B5.116A3は対照抗体(mo-IgG2bκ)と比較して投与後4週間以後に有意にBBBスコアを改善した(p<0.01, Student's t-検定)。
【0165】
実施例17:多発性硬化症モデルマウスを用いた効力試験
PLP139-151ペプチド(HSLGKWLGHPDKF:配列表の配列番号45、ペプチド研究所製) を生理食塩液(大塚製薬工場製)で溶解し、結核死菌H37 Ra (Difco Laboratories社製) を加えた不完全フロイントアジュバント (シグマ社製) と混合し、エマルジョンを作製した。PLP139-151ペプチドとして50 μg/headでSJL/JorllcoCrj (SJL/J) マウス (日本チャールス・リバー) の背部皮下に免疫し、EAEスコア(H. Kataoka, K Sugahara, K. Shimano, K. Teshima, M. Koyama, A. Fukunari and K. Chiba. FTY720, sphingosine 1-phosphate receptor modulator, ameliorates experimental autoimmune encephalomyelitis by inhibition of T cell infiltration. Cellular & Molecular Immunology 6, 439-448, 2005.) および体重変化を評価した(図6)。
生理食塩液に希釈した被験抗体 (B5.116A3)を、PLP139-151ペプチドで免疫した7日及び10日後 または18日及び21日後にそれぞれ20 mg/kgで腹腔内に投与した。
その結果、図6に示すように、抗RGMaマウスモノクローナル抗体 (B5.116A3) は、対照
抗体(mo-IgG2bκ)と比較して、発症前の投与でEAEスコアの悪化を抑制し(図6上段)、発症後の投与で再発予防効果を示した(図6下段)。
【0166】
実施例18:抗体の免疫原性試験
51名の健常人ドナー由来の末梢血中に含まれる未分化樹状細胞を顆粒球単球コロニー刺激因子(GM-CSF)およびInterleukin-4刺激により成熟させた。成熟樹状細胞に終濃度50μg/mLの被験抗体(rH116A3)を添加し、4、5日間培養することで、抗体を樹状細胞に取り込ま
せた。ここへ、同一ドナー由来の末梢血CD4+T細胞(ヘルパーT細胞)を混合し、更に1週間
共培養した後、T細胞の増殖をフローサイトメトリーにて測定した。被験抗体のT細胞増殖活性を指標として、ヒトにおける免疫原性リスクを評価した。その結果、51名のドナーのうち、4名(7.8%)についてT細胞の増殖が認められ、免疫原性リスクは低かった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【配列表】
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