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特許7307586パーフルオロ(2,4-ジメチル-2-フルオロホルミル-1,3-ジオキソラン)の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-04
(45)【発行日】2023-07-12
(54)【発明の名称】パーフルオロ(2,4-ジメチル-2-フルオロホルミル-1,3-ジオキソラン)の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 317/42 20060101AFI20230705BHJP
【FI】
C07D317/42
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019086628
(22)【出願日】2019-04-26
(65)【公開番号】P2020183344
(43)【公開日】2020-11-12
【審査請求日】2022-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】301005614
【氏名又は名称】東ソー・ファインケム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】宮内 英紀
(72)【発明者】
【氏名】松尾 啓史
(72)【発明者】
【氏名】近藤 典久
(72)【発明者】
【氏名】三村 英之
【審査官】早川 裕之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第03321517(US,A)
【文献】米国特許第03404162(US,A)
【文献】米国特許第03450716(US,A)
【文献】米国特許第03467702(US,A)
【文献】米国特許第03475456(US,A)
【文献】特開昭52-142072(JP,A)
【文献】特開昭58-180449(JP,A)
【文献】特開昭55-113775(JP,A)
【文献】特表2015-525757(JP,A)
【文献】米国特許第03962279(US,A)
【文献】米国特許第03308107(US,A)
【文献】英国特許出願公開第01051647(GB,A)
【文献】仏国特許出願公開第01422169(FR,A1)
【文献】Izvestiya Akademii Nauk SSSR, Seriya Khimicheskaya,1988年,2,392-395,ISSN: 0002-3353
【文献】Journal of Fluorine Chemistry,1982年,21,107-132
【文献】Bulletin of the Chemical Society of Japan,1982年,55,3345-3346
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 317/42
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘキサフルオロプロピレンオキシドからトリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーを合成するダイマー合成工程と、
有機溶剤中、フッ化物存在下、トリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーとヘキサフルオロプロピレンオキシドとを反応させるダイマー反応工程と、
を有し、
前記ダイマー合成工程により得られた二層に層分離した反応液の両層を分離操作を行わず前記ダイマー反応工程に付す、パーフルオロ(2,4-ジメチル-2-フルオロホルミル-1,3-ジオキソラン)の製造方法。
【請求項2】
前記ダイマー合成工程は、ヘキサフルオロプロピレンオキシドをアルデヒド類と反応させることを含む、請求項1に記載のパーフルオロ(2,4-ジメチル-2-フルオロホルミル-1,3-ジオキソラン)の製造方法。
【請求項3】
前記ダイマー合成工程は、ヘキサフルオロプロピレンオキシドをケトン類と反応させることを含む、請求項1に記載のパーフルオロ(2,4-ジメチル-2-フルオロホルミル-1,3-ジオキソラン)の製造方法。
【請求項4】
前記ダイマー反応工程後に異性化工程を更に含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のパーフルオロ(2,4-ジメチル-2-フルオロホルミル-1,3-ジオキソラン)の製造方法。
【請求項5】
前記有機溶剤は、エーテル系溶剤である、請求項1~4のいずれか1項に記載のパーフルオロ(2,4-ジメチル-2-フルオロホルミル-1,3-ジオキソラン)の製造方法。
【請求項6】
前記エーテル系溶剤は、ジエチレングリコールジメチルエーテルである、請求項5に記載のパーフルオロ(2,4-ジメチル-2-フルオロホルミル-1,3-ジオキソラン)の製造方法。
【請求項7】
前記フッ化物は、アルカリ金属フッ化物である、請求項1~6のいずれか1項に記載のパーフルオロ(2,4-ジメチル-2-フルオロホルミル-1,3-ジオキソラン)の製造方法。
【請求項8】
前記アルカリ金属フッ化物は、フッ化セシウムである、請求項7に記載のパーフルオロ(2,4-ジメチル-2-フルオロホルミル-1,3-ジオキソラン)の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーフルオロ(2,4-ジメチル-2-フルオロホルミル-1,3-ジオキソラン)の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、パーフルオロ(2,4-ジメチル-2-フルオロホルミル-1,3-ジオキソラン)の製造方法として、トリフルオロピルビン酸フルオリドを原料とし、フッ化セシウム存在下、ジエチレングリコールジメチルエーテル溶剤中、ヘキサフルオロプロピレンオキシドを反応させる方法が開示されている。
【0003】
一方、特許文献2には、ヘキサフルオロプロピレンオキシドとベンゾフェノンとを反応させてトリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーを製造することが開示されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第3308107号明細書
【文献】英国特許第1051647号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
パーフルオロ(2,4-ジメチル-2-フルオロホルミル-1,3-ジオキソラン)から誘導されるパーフルオロ(2-メチレン-4-メチル-1,3-ジオキソラン)を重合することにより、ポリ[パーフルオロ(2-メチレン-4-メチル-1,3-ジオキソラン)]を得ることができる。ポリ[パーフルオロ(2-メチレン-4-メチル-1,3-ジオキソラン)]は、ガス分離膜用樹脂、光ファイバー用透明樹脂等として有望なポリマーである。したがって、かかる有望なポリマーの原料であるパーフルオロ(2,4-ジメチル-2-フルオロホルミル-1,3-ジオキソラン)の新たな製造方法を提供できることは、工業的に望ましい。
【0006】
そこで本発明者らは、トリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーを合成原料として、パーフルオロ(2,4-ジメチル-2-フルオロホルミル-1,3-ジオキソラン)を製造することを検討した。この本発明者らの検討の結果、トリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーを合成原料とする製造方法では、パーフルオロ(2,4-ジメチル-2-フルオロホルミル-1,3-ジオキソラン)の収率について改善が望まれることが明らかとなった。
【0007】
以上に鑑み本発明は、トリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーを原料として、パーフルオロ(2,4-ジメチル-2-フルオロホルミル-1,3-ジオキソラン)を良好な収率で製造可能な製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、以下の製造方法により、トリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーを原料として、パーフルオロ(2,4-ジメチル-2-フルオロホルミル-1,3-ジオキソラン)を良好な収率で製造することが可能であることを新たに見出した。
【0009】
即ち、本発明は、以下の通りである。
[1]ヘキサフルオロプロピレンオキシドからトリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーを合成するダイマー合成工程と、
有機溶剤中、フッ化物存在下、トリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーとヘキサフルオロプロピレンオキシドとを反応させるダイマー反応工程と、
を有し、
上記ダイマー合成工程により得られた二層に層分離した反応液の両層を上記ダイマー反応工程に付す、パーフルオロ(2,4-ジメチル-2-フルオロホルミル-1,3-ジオキソラン)の製造方法。
[2]上記ダイマー合成工程は、ヘキサフルオロプロピレンオキシドをアルデヒド類と反応させることを含む、[1]に記載のパーフルオロ(2,4-ジメチル-2-フルオロホルミル-1,3-ジオキソラン)の製造方法。
[3]上記ダイマー合成工程は、ヘキサフルオロプロピレンオキシドをケトン類と反応させることを含む、[1]に記載のパーフルオロ(2,4-ジメチル-2-フルオロホルミル-1,3-ジオキソラン)の製造方法。
[4]上記ダイマー反応工程後に異性化工程を更に含む、[1]~[3]のいずれかに記載のパーフルオロ(2,4-ジメチル-2-フルオロホルミル-1,3-ジオキソラン)の製造方法。
[5]上記有機溶剤は、エーテル系溶剤である、[1]~[4]のいずれかに記載のパーフルオロ(2,4-ジメチル-2-フルオロホルミル-1,3-ジオキソラン)の製造方法。
[6]上記エーテル系溶剤は、ジエチレングリコールジメチルエーテルである、[5]に記載のパーフルオロ(2,4-ジメチル-2-フルオロホルミル-1,3-ジオキソラン)の製造方法。
[7]上記フッ化物は、アルカリ金属フッ化物である、[1]~[6]のいずれかに記載のパーフルオロ(2,4-ジメチル-2-フルオロホルミル-1,3-ジオキソラン)の製造方法。
[8]上記アルカリ金属フッ化物は、フッ化セシウムである、[7]に記載のパーフルオロ(2,4-ジメチル-2-フルオロホルミル-1,3-ジオキソラン)の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、トリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーを原料として、パーフルオロ(2,4-ジメチル-2-フルオロホルミル-1,3-ジオキソラン)を良好な収率で製造可能な製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のパーフルオロ(2,4-ジメチル-2-フルオロホルミル-1,3-ジオキソラン)の製造方法(以下、単に「製造方法」とも記載する。)は、ヘキサフルオロプロピレンオキシドからトリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーを合成するダイマー合成工程と、有機溶剤中、フッ化物存在下、トリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーとヘキサフルオロプロピレンオキシドとを反応させるダイマー反応工程とを有する。そして上記ダイマー合成工程により得られた二層に層分離した反応液の両層を上記ダイマー反応工程に付す。このことが、ダイマー反応工程を経て得られるパーフルオロ(2,4-ジメチル-2-フルオロホルミル-1,3-ジオキソラン)の収率向上に寄与することが本発明者らの鋭意検討の結果、新たに見出された。
以下、製造方法について、更に詳細に説明する。
【0012】
[ダイマー合成工程]
トリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーとしては、4-フルオロ-5-オキソ-2,4-ビス(トリフルオロメチル)-1,3-ジオキソラン-2-カルボニルフルオリドを例示することができる。4-フルオロ-5-オキソ-2,4-ビス(トリフルオロメチル)-1,3-ジオキソラン-2-カルボニルフルオリドは、下記式1により示すことができる。
【0013】
【化1】
【0014】
ダイマー合成工程で行う反応としては、ヘキサフルオロプロピレンオキシドとケトン類との密閉系での反応を例示することができる。かかるダイマー合成工程については、例えば英国特許第1051647号明細書(特許文献2)を参照できる。
【0015】
ケトン類とは、1種または2種以上のケトンを意味する。ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン、ベンゾフェノン、2-メチルベンゾフェノン、3-メチルベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、2-エチルベンゾフェノン、3-エチルベンゾフェノン、4-エチルベンゾフェノン、4,4´-ジメチルベンゾフェノン、4,4´-ジエチルベンゾフェノン、2-メトキシベンゾフェノン、3-メトキシベンゾフェノン、4-メトキシベンゾフェノン、4,4´-ジメトキシベンゾフェノン、2-エトキシベンゾフェノン、3-エトキシベンゾフェノン、4-エトキシベンゾフェノン、4,4´-ジエトキシベンゾフェノン、2-フルオロベンゾフェノン、3-フルオロベンゾフェノン、4-フルオロベンゾフェノン、2-クロロベンゾフェノン、3-クロロベンゾフェノン、4-クロロベンゾフェノン、2-ブロモベンゾフェノン、3-ブロモベンゾフェノン、4-ブロモベンゾフェノン、1-ナフチルフェニルケトン、2-ナフチルフェニルケトン等を挙げることができ、トリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーの収率等の観点からは、ベンゾフェノン等の芳香族ケトンを使用することが好ましく、電子供与基置換芳香族ケトンを使用することがより好ましい。ケトン類は、反応に供されるヘキサフルオロプロピレンオキシドに対して、0.8モル倍量~1.2モル倍量使用することが好ましい。
【0016】
また、ダイマー合成工程で行う反応としては、ヘキサフルオロプロピレンオキシドとアルデヒド類との反応も例示できる。より詳細には、ヘキサフルオロプロピレンオキシドとアルデヒド類を反応させ、ヘキサフルオロプロピレンオキシドへのアルデヒド類付加体を生成させ、更に反応を進めることにより、トリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーを得ることができる。アルデヒド類付加体としては、ヘキサフルオロプロピレンオキシドへのアルデヒド類への付加する様式により、環化型および直鎖型が生成され得る。アルデヒド類付加体としては、下記アルデヒド類付加体1、2または3を挙げることができる。
【0017】
【化2】
【0018】
【化3】
【0019】
【化4】
【0020】
(上記において、Rは、置換もしくは未置換のアルキル基またはアリール基を示す)。
【0021】
ヘキサフルオロプロピレンオキシドとアルデヒド類とを反応させるダイマー合成反応では、耐圧容器に室温以下でヘキサフルオロプロピレンオキシドおよびアルデヒド類を仕込み、まず、0℃~100℃、好ましくは0℃~99℃、より好ましくは0℃~90℃で0.5時間~24時間反応させ、ヘキサフルオロプロピレンオキシドへのアルデヒド類付加体を生成させた後、次いで、100℃以上、好ましくは100℃以上、より好ましくは100℃~150℃に昇温し、5時間~48時間反応させることが好ましい。室温とは、例えば20℃~25℃の範囲の温度である。なお、アルデヒド類付加体を生成させる際、アルデヒドをあらかじめ耐圧容器に仕込んでおき、0℃~100℃の温度でヘキサフルオロプロピレンオキシドを0.5時間~24時間かけて連続的または断続的に供給して反応させてもよい。なお本明細書に記載の温度は、特記しない限り、反応液の液温である。
【0022】
アルデヒド類とは、1種または2種以上のアルデヒドを意味する。アルデヒド類としては、具体的には例えば、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、バレルアルデヒド、イソバレルアルデヒド、ピバルアルデヒド、1-アダマンタンカルボアルデヒド、ベンズアルデヒド、2-メチルベンズアルデヒド、3-メチルベンズアルデヒド、4-メチルベンズアルデヒド、2-エチルベンズアルデヒド、3-エチルベンズアルデヒド、4-エチルベンズアルデヒド、2-メトキシベンズアルデヒド、3-メトキシベンズアルデヒド、4-メトキシベンズアルデヒド、2-エトキシベンズアルデヒド、3-エトキシベンズアルデヒド、4-エトキシベンズアルデヒド、2-フルオロベンズアルデヒド、3-フルオロベンズアルデヒド、4-フルオロベンズアルデヒド、2-クロロベンズアルデヒド、3-クロロベンズアルデヒド、4-クロロベンズアルデヒド、2-ブロモベンズアルデヒド、3-ブロモベンズアルデヒド、4-ブロモベンズアルデヒド、1-ナフトアルデヒド、5-メトキシ-1-ナフトアルデヒド、5-クロロ-1-ナフトアルデヒド、2-ナフトアルデヒド、5-メトキシ-2-ナフトアルデヒド、5-クロロ-2-ナフトアルデヒド等が挙げられる。好ましくは、ベンズアルデヒド、2-メチルベンズアルデヒド、3-メチルベンズアルデヒド、4-メチルベンズアルデヒド、2-エチルベンズアルデヒド、3-エチルベンズアルデヒド、4-エチルベンズアルデヒド、2-メトキシベンズアルデヒド、3-メトキシベンズアルデヒド、4-メトキシベンズアルデヒド、2-エトキシベンズアルデヒド、3-エトキシベンズアルデヒド、4-エトキシベンズアルデヒド等が挙げられる。トリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーの収率等の観点からは、芳香族アルデヒドを使用することが好ましく、電子供与基置換芳香族アルデヒドを使用することがより好ましい。アルデヒド類は、反応に供されるヘキサフルオロプロピレンオキシドに対して、0.8モル倍量~1.2モル倍量使用することが好ましい。
【0023】
ヘキサフルオロプロピレンオキシドとケトン類またはアルデヒド類との反応は、無溶剤下で実施可能であるが、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、メシチレン、イソプロピルベンゼン、アニソール、クロロベンゼン等の溶剤を一種単独または二種以上を任意の割合で混合して用いてもよい。その際の溶剤の使用量は、反応に供されるヘキサフルオロプロピレンオキシドに対して、0.1質量倍量~5.0質量倍量の範囲とすることができる。上記反応は、耐圧容器内で、3.5MPa以下の条件で行うことが好ましく、1.2MPa以下の条件で行うことがより好ましい。
【0024】
[ダイマー反応工程]
上記ダイマー合成工程後の反応液を、必要に応じて静置して-20℃~30℃程度に冷却することにより、上層と下層との二層に分離した反応液が得られる。目的物であるトリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーは、主に下層に含まれる。これに対し、上層には主に副生物が含まれる。例えば、ヘキサフルオロプロピレンオキシドとアルデヒド類との反応によりトリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーを合成する反応では、アルデヒド類のフッ素化体が副生し得る。また、ヘキサフルオロプロピレンオキシドとケトン類との反応によりトリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーを合成する反応では、ケトン類のフッ素化体が副生し得る。
【0025】
上記製造方法では、上記の上層と下層の両層をダイマー反応工程に付す。これにより、トリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーを主に含む層である下層のみをダイマー反応工程に付す場合と比べてパーフルオロ(2,4-ジメチル-2-フルオロホルミル-1,3-ジオキソラン)の収率を向上させることができる。即ち、ダイマー合成工程とダイマー反応工程とを、ダイマー合成工程での目的物を副生物と分離する工程を経ることなく、いわゆるワンポットで行うことにより、パーフルオロ(2,4-ジメチル-2-フルオロホルミル-1,3-ジオキソラン)の収率向上が可能になることが、本発明者らの鋭意検討の結果、新たに見出された。ダイマー合成工程後に得られた上層と下層との二層に分離した反応液から上層の一部と下層の一部を同時または別々に取り出しダイマー反応工程に付してもよく、ダイマー合成工程後に得られた上層と下層との二層に分離した反応液をそのまままたは撹拌混合してダイマー反応工程に付してもよい。
【0026】
ダイマー反応工程では、有機溶剤中、フッ化物存在下、トリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーとヘキサフルオロプロピレンオキシドとを反応させる。有機溶剤としては、反応に不活性なものであれば特に限定されるものではない。有機溶剤としては、例えば、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、メシチレン等の芳香族系溶剤、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶剤が挙げられる。有機溶媒は、一種単独で使用してもよく、二種以上を任意の割合で混合して使用してもよい。有機溶剤としては、フッ化物の溶解性の観点からは、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶剤を一種単独または二種以上任意の割合で混合して使用することが好ましい。反応に使用する有機溶剤の量は、特に限定されないが、通常、反応に供される合成原料に対して、0.3質量倍量~5.0質量倍量使用することができる。
【0027】
ダイマー反応工程に使用するフッ化物は、フッ化物であれば特に限定されないが、具体的には、例えば、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化セシウム等のアルカリ金属フッ化物、フッ化ベリリウム、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、フッ化ストロンチウム、フッ化バリウム等のアルカリ土類金属フッ化物、テトラメチルアンモニウムフルオリド、テトラエチルアンモニウムフルオリド、テトラプロピルアンモニウムフルオリド、テトラ-n-ブチルアンモニウムフルオリド、フェニルトリメチルアンモニウムフルオリド等の有機アンモニウムフルオリド等を挙げることができる。フッ化物は、有機溶剤への溶解性および反応活性の観点から、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化セシウム、テトラメチルアンモニウムフルオリド、テトラエチルアンモニウムフルオリド、テトラプロピルアンモニウムフルオリドおよびテトラ-n-ブチルアンモニウムフルオリドからなる群から選択される一種以上が好ましい。フッ化物は、一種単独または二種以上を任意の割合で混合して使用することができる。反応に使用するフッ化物の量は、反応に供されるトリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーに対して、例えば0.05モル倍量~1.00モル倍量の範囲とすることができる。あまりにも少量の添加では反応が遅く、また大量の使用は経済的でないため、0.1モル倍量~0.8モル倍量使用することが好ましい。
【0028】
ダイマー反応工程に使用するヘキサフルオロプロピレンオキシドの量は、トリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーに対して、2.00モル倍量以上とすることが好ましく、2.05モル倍量~2.50モル倍量とすることがより好ましい。
【0029】
ダイマー反応工程では、反応に供される各種成分の添加順序は特に限定されるものではないが、ダイマー合成工程により得られた反応液の上層と下層の両層、フッ化物および有機溶剤の混合物を調製し、この混合物にヘキサフルオロプロピレンオキシドを添加することが好ましい。例えば、ダイマー合成工程により得られた反応液の上層と下層の両層、フッ化物および有機溶剤の混合物を調製し、この混合物を-20℃~60℃の範囲の温度に調整して、ヘキサフルオロプロピレンオキシドを、0.5時間~48時間かけて添加する。ヘキサフルオロプロピレンオキシドの添加後、ダイマー反応工程での目的物であってパーフルオロ(2,4-ジメチル-2-フルオロホルミル-1,3-ジオキソラン)生成のための中間体であるパーフルオロ(3,5-ジメチル-2-オキソ-1,4-ジオキサン)の生成を完結させるために、上記範囲の温度に2時間~24時間保持してもよい。反応工程は、好ましくは耐圧容器内で行うことができる。
【0030】
[異性化工程]
ダイマー反応工程後、好ましくは異性化工程が行われる。異性化工程は、パーフルオロ(3,5-ジメチル-2-オキソ-1,4-ジオキサン)を、パーフルオロ(2,4-ジメチル-2-フルオロホルミル-1,3-ジオキソラン)へ異性化反応させる工程である。パーフルオロ(2,4-ジメチル-2-フルオロホルミル-1,3-ジオキソラン)は、下記式2で表され、ジアステレオマーの混合物として得られてもよい。
【化5】
【0031】
異性化工程において、通常、ダイマー反応工程後の反応液を、100℃~150℃で4時間~48時間加熱することにより、異性化反応を進行させて異性化を完結させることができる。異性化工程は耐圧容器内で行うことが好ましい。異性化工程を行う容器内の圧力は、0.1MPa~1.0MPaの範囲にすることが好ましい。
【0032】
異性化工程後、例えば、室温までの冷却および脱圧の後にろ過および上層の有機溶剤層の分離除去を行うことにより、目的物のパーフルオロ(2,4-ジメチル-2-フルオロホルミル-1,3-ジオキソラン)を得ることができる。
【0033】
上記製造方法により得られるパーフルオロ(2,4-ジメチル-2-フルオロホルミル-1,3-ジオキソラン)は、例えば、米国特許3308107号明細書に記載された気相で加熱分解する方法、またはMacromolecules 2005,38,4237-4245に記載されたカルボン酸カリウム塩に変換後、加熱分解する方法により、パーフルオロ(2-メチレン-4-メチル-1,3-ジオキソラン)へ誘導可能である。
【実施例
【0034】
以下、本発明を実施例により更に説明する。但し、本発明は実施例に示す態様に限定されるものではない。以下に記載の温度は、特記しない限り、反応液の液温である。
【0035】
以下の分析では、下記機器を使用した。
19F-NMR:ブルカー社(BRUKER)製AVANCE II 400
【0036】
[実施例1]
<ダイマー合成工程における生成物の確認>
耐圧が8MPaの撹拌機を備えたSUS316製500mLオートクレーブにベンゾフェノン(118.1g、0.648mol)を仕込み、氷浴上で0℃に冷却した後、これにヘキサフルオロプロピレンオキシド(120.0g、0.723mol)を添加した。
次いで、上記オートクレーブを密閉した後、攪拌しながら160℃まで加熱し10時間反応を行った。この間の最高圧力は3.8MPaであった。
反応終了後、0℃まで冷却した後、層分離した上層(褐色、155.0g)および下層(淡黄色、72.0g)のそれぞれについて、ベンゾトリフルオリドを内部標準物質として用いた19F-NMRでの定量分析を行い、目的物のトリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーが上層に4.9g(0.0170mol、収率5%、ベンゾフェノン基準)、下層に67.0g(0.233mol、収率72%、ベンゾフェノン基準)含まれていることを確認した。なお、上層中の主成分は以下のベンゾフェノンのフッ素化体であった。
【0037】
【化6】
【0038】
<ダイマー合成工程、ダイマー反応工程、異性化工程>
耐圧が8MPaの撹拌機を備えたSUS316製500mLオートクレーブにベンゾフェノン(118.1g、0.648mol)を仕込み、氷浴上で0℃に冷却した後、これにヘキサフルオロプロピレンオキシド(120.0g、0.723mol)を添加した。
次いで、上記オートクレーブを密閉した後、攪拌しながら160℃まで加熱し10時間反応を行った。この間の最高圧力は3.8MPaであった。
反応終了後、0℃まで冷却し、上層と下層との二層に分離した反応液を得た。引き続きオートクレーブにおいて、得られた反応液(液量227.0g(トリフルオロピルビン酸ダイマー計71.9g、0.250mol))に、フッ化セシウム(11.4g、0.0750mol)およびジエチレングリコールジメチルエーテル(113.7g、0.847mol)を添加し、氷浴上で0℃に冷却した。これにヘキサフルオロプロピレンオキシド(87.0g、0.524mol)を6時間かけて添加した。この間温度を0~10℃に保った。更に、同温度範囲で4時間保持して熟成した後、オートクレーブを再度130℃まで加熱し、24時間異性化反応を行った。
反応終了後、室温まで冷却、分液し、粗パーフルオロ(2,4-ジメチル-2-フルオロホルミル-1,3-ジオキソラン)を得た(淡黄色液体、125.1g)。ベンゾトリフルオリドを内部標準物質として用いた19F-NMRでの定量において、目的物のパーフルオロ(2,4-ジメチル-2-フルオロホルミル-1,3-ジオキソラン)は104.1g(0.336mol)生成していた(収率52%、ベンゾフェノン基準)。なお、得られた目的物は、2種類の光学異性体の混合物で、その比は6/4(モル比)であった。
19F-NMR(neat,376MHz)(異性体1)δ23.63,-77.76(d,J=131.6Hz),-80.13,-81.57,-83.56(d,J=135.4Hz),-124.91。(異性体2)δ23.16,-78.45(d,J=131.6Hz),-80.37,-81.56,-84.05(d,J=139.1Hz),-123.72。
【0039】
[比較例1]
実施例1と同じ装置を用い、実施例1と同様の操作を行い、ダイマー合成工程、ダイマー反応工程および異性化工程を行った。ただし、ダイマー合成反応後、層分離操作を行い、反応液の上層を除き下層のみを用いてダイマー反応工程および異性化工程を行った。異性化工程後、室温まで冷却、分液し、粗パーフルオロ(2,4-ジメチル-2-フルオロホルミル-1,3-ジオキソラン)を得た(淡黄色液体、118.1g)。ベンゾトリフルオリドを内部標準物質として用いた19F-NMRでの定量において、目的物のパーフルオロ(2,4-ジメチル-2-フルオロホルミル-1,3-ジオキソラン)は96.0g(0.310mol)生成していた(収率48%、ベンゾフェノン基準)。
【0040】
以上の結果から、ダイマー合成工程後に層分離操作を行うことなく反応液の上層と下層の両層をダイマー反応工程に付した実施例1では、比較例1と比べてパーフルオロ(2,4-ジメチル-2-フルオロホルミル-1,3-ジオキソラン)の収率向上が達成されたことが確認できる。
【0041】
[実施例2]
<ダイマー合成工程における生成物の確認>
耐圧が8MPaの撹拌機を備えたSUS316製500mLオートクレーブに4-メトキシベンズアルデヒド(91.6g、0.673mol)を仕込み、氷浴上で0℃に冷却した後、これにヘキサフルオロプロピレンオキシド(115.1g、0.693mol)を添加した。
次いで、上記オートクレーブを密閉した後、攪拌しながら55℃で3時間加熱した後、150℃まで加熱し8時間反応を行った。この間の最高圧力は0.9MPaであった。
反応終了後、0℃まで冷却した後、層分離した上層(褐色、114.3g)および下層(淡黄色、88.1g)のそれぞれについて、ベンゾトリフルオリドを内部標準物質として用いた19F-NMRでの定量分析を行い、目的物のトリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーがそれぞれ上層に8.0g(0.0278mol、収率8%、4-メトキシベンズアルデヒド基準)、下層に81.5g(0.283mol、収率84%、4-メトキシベンズアルデヒド基準)含まれていることを確認した。なお、上層中の主成分は以下の4-メトキシベンズアルデヒドのフッ素化体であった。
【0042】
【化7】
【0043】
<ダイマー合成工程、ダイマー反応工程、異性化工程>
耐圧が8MPaの撹拌機を備えたSUS316製500mLオートクレーブに4-メトキシベンズアルデヒド(91.6g、0.673mol)を仕込み、氷浴上で0℃に冷却した後、これにヘキサフルオロプロピレンオキシド(115.1g、0.693mol)を添加した。
次いで、上記オートクレーブを密閉した後、攪拌しながら55℃で3時間加熱した後、150℃まで加熱し8時間反応を行った。この間の最高圧力は0.9MPaであった。
反応終了後、0℃まで冷却し、上層と下層との二層に分離した反応液を得た。引き続きオートクレーブにおいて、得られた反応液(液量202.4g(トリフルオロピルビン酸ダイマー計89.5g、0.311mol))に、フッ化セシウム(14.2g、0.0935mol)およびジエチレングリコールジメチルエーテル(141.5g、1.05mol)を添加し、氷浴上で0℃に冷却した。これにヘキサフルオロプロピレンオキシド(108.3g、0.652mol)を6時間かけて添加した。この間温度を0~10℃に保った。さらに、同温度範囲で4時間保持して熟成した後、オートクレーブを再度130℃まで加熱し、24時間異性化反応を行った。
反応終了後、室温まで冷却、分液し、粗パーフルオロ(2,4-ジメチル-2-フルオロホルミル-1,3-ジオキソラン)を得た(淡黄色液体、157.8g)。ベンゾトリフルオリドを内部標準物質として用いた19F-NMRでの定量において、目的物のパーフルオロ(2,4-ジメチル-2-フルオロホルミル-1,3-ジオキソラン)は130.6g(0.421mol)生成していた(収率63%、4-メトキシベンズアルデヒド基準)。なお、得られた目的物は、2種類の光学異性体の混合物で、その比は6/4(モル比)であった。
19F-NMR(neat,376MHz)(異性体1)δ23.63,-77.76(d,J=131.6Hz),-80.13,-81.57,-83.56(d,J=135.4Hz),-124.91。(異性体2)δ23.16,-78.45(d,J=131.6Hz),-80.37,-81.56,-84.05(d,J=139.1Hz),-123.72。
【0044】
[比較例2]
実施例2と同じ装置を用い、実施例2と同様の操作を行い、ダイマー合成工程、ダイマー反応工程および異性化工程を行った。ただし、ダイマー合成反応後、層分離操作を行い、反応液の上層を除き下層のみを用いてダイマー反応工程および異性化工程を行った。異性化工程後、室温まで冷却、分液し、粗パーフルオロ(2,4-ジメチル-2-フルオロホルミル-1,3-ジオキソラン)を得た(淡黄色液体、136.3g)。ベンゾトリフルオリドを内部標準物質として用いた19F-NMRでの定量において、目的物のパーフルオロ(2,4-ジメチル-2-フルオロホルミル-1,3-ジオキソラン)は109.3g(0.353mol)生成していた(収率52%、4-メトキシベンズアルデヒド基準)。
【0045】
以上の結果から、ダイマー合成工程後に層分離操作を行うことなく反応液の上層と下層の両層をダイマー反応工程に付した実施例2では、比較例2と比べてパーフルオロ(2,4-ジメチル-2-フルオロホルミル-1,3-ジオキソラン)の収率向上が達成されたことが確認できる。
【0046】
[実施例3]
<ダイマー合成工程における生成物の確認>
耐圧が8MPaの撹拌機を備えたSUS316製500mLオートクレーブに4-メトキシベンズアルデヒド(91.6g、0.673mol)及びトルエン(45.8g、0.497mol)を仕込み、氷浴上で0℃に冷却した後、これにヘキサフルオロプロピレンオキシド(115.1g、0.693mol)を添加した。
次いで、上記オートクレーブを密閉した後、攪拌しながら55℃で3時間加熱した後、150℃まで加熱し8時間反応を行った。この間の最高圧力は0.9MPaであった。
反応終了後、0℃まで冷却した後、層分離した上層(褐色、159.8g)および下層(淡黄色、83.4g)のそれぞれについて、ベンゾトリフルオリドを内部標準物質として用いた19F-NMRでの定量分析を行い、目的物のトリフルオロピルビン酸フルオリドダイマーがそれぞれ上層に14.6g(0.0507mol、収率15%、4-メトキシベンズアルデヒド基準)、下層に72.6g(0.252mol、収率75%、4-メトキシベンズアルデヒド基準)含まれていることを確認した。なお、上層中の主成分はトルエン及び4-メトキシベンズアルデヒドのフッ素化体であった。
【0047】
<ダイマー合成工程、ダイマー反応工程、異性化工程>
耐圧が8MPaの撹拌機を備えたSUS316製500mLオートクレーブに4-メトキシベンズアルデヒド(91.6g、0.673mol)及びトルエン(45.8g、0.497mol)を仕込み、氷浴上で0℃に冷却した後、これにヘキサフルオロプロピレンオキシド(115.1g、0.693mol)を添加した。
次いで、上記オートクレーブを密閉した後、攪拌しながら55℃で3時間加熱した後、150℃まで加熱し8時間反応を行った。この間の最高圧力は0.9MPaであった。
反応終了後、0℃まで冷却し、上層と下層との二層に分離した反応液を得た。引き続きオートクレーブにおいて、得られた反応液(液量243.2g(トリフルオロピルビン酸ダイマー計87.2g、0.303mol))に、フッ化セシウム(11.5g、0.0757mol)およびジエチレングリコールジメチルエーテル(115.0g、0.857mol)を添加し、氷浴上で0℃に冷却した。これにヘキサフルオロプロピレンオキシド(105.6g、0.636mol)を6時間かけて添加した。この間温度を0~10℃に保った。さらに、同温度範囲で4時間保持して熟成した後、オートクレーブを再度130℃まで加熱し、24時間異性化反応を行った。
反応終了後、室温まで冷却、分液し、粗パーフルオロ(2,4-ジメチル-2-フルオロホルミル-1,3-ジオキソラン)を得た(淡黄色液体、155.7g)。ベンゾトリフルオリドを内部標準物質として用いた19F-NMRでの定量において、目的物のパーフルオロ(2,4-ジメチル-2-フルオロホルミル-1,3-ジオキソラン)は129.0g(0.416mol)生成していた(収率62%、4-メトキシベンズアルデヒド基準)。
【0048】
[比較例3]
実施例3と同じ装置を用い、実施例3と同様の操作を行い、ダイマー合成工程、ダイマー反応工程および異性化工程を行った。ただし、ダイマー合成反応後、層分離操作を行い、反応液の上層を除き下層のみを用いてダイマー反応工程および異性化工程を行った。異性化工程後、室温まで冷却、分液し、粗パーフルオロ(2,4-ジメチル-2-フルオロホルミル-1,3-ジオキソラン)を得た(淡黄色液体、122.2g)。ベンゾトリフルオリドを内部標準物質として用いた19F-NMRでの定量において、目的物のパーフルオロ(2,4-ジメチル-2-フルオロホルミル-1,3-ジオキソラン)は98.7g(0.318mol)生成していた(収率47%、4-メトキシベンズアルデヒド基準)。
【0049】
以上の結果から、ダイマー合成工程後に層分離操作を行うことなく反応液の上層と下層の両層をダイマー反応工程に付した実施例3では、比較例3と比べてパーフルオロ(2,4-ジメチル-2-フルオロホルミル-1,3-ジオキソラン)の収率向上が達成されたことが確認できる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、パーフルオロ(2,4-ジメチル-2-フルオロホルミル-1,3-ジオキソラン)の製造分野、更にはパーフルオロ(2,4-ジメチル-2-フルオロホルミル-1,3-ジオキソラン)を合成原料として得られるパーフルオロ(2-メチレン-4-メチル-1,3-ジオキソラン)の製造分野において有用である。