IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本放送協会の特許一覧

特許7307613送信サーバ、送信装置、受信装置及びプログラム
<>
  • 特許-送信サーバ、送信装置、受信装置及びプログラム 図1
  • 特許-送信サーバ、送信装置、受信装置及びプログラム 図2
  • 特許-送信サーバ、送信装置、受信装置及びプログラム 図3
  • 特許-送信サーバ、送信装置、受信装置及びプログラム 図4
  • 特許-送信サーバ、送信装置、受信装置及びプログラム 図5
  • 特許-送信サーバ、送信装置、受信装置及びプログラム 図6
  • 特許-送信サーバ、送信装置、受信装置及びプログラム 図7
  • 特許-送信サーバ、送信装置、受信装置及びプログラム 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-04
(45)【発行日】2023-07-12
(54)【発明の名称】送信サーバ、送信装置、受信装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 21/238 20110101AFI20230705BHJP
   H04N 21/438 20110101ALI20230705BHJP
   H04H 20/24 20080101ALI20230705BHJP
   H04H 60/82 20080101ALI20230705BHJP
   H04H 60/12 20080101ALI20230705BHJP
   H03M 13/27 20060101ALI20230705BHJP
   H03M 13/19 20060101ALI20230705BHJP
   H04L 1/00 20060101ALI20230705BHJP
【FI】
H04N21/238
H04N21/438
H04H20/24
H04H60/82
H04H60/12
H03M13/27
H03M13/19
H04L1/00 B
H04L1/00 F
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019125638
(22)【出願日】2019-07-04
(65)【公開番号】P2021013078
(43)【公開日】2021-02-04
【審査請求日】2022-06-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100143568
【弁理士】
【氏名又は名称】英 貢
(72)【発明者】
【氏名】小泉 雄貴
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 陽一
(72)【発明者】
【氏名】阿部 晋矢
(72)【発明者】
【氏名】横畑 和典
(72)【発明者】
【氏名】筋誡 久
【審査官】川中 龍太
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-528682(JP,A)
【文献】特開2013-085293(JP,A)
【文献】国際公開第2013/114496(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/199603(WO,A1)
【文献】特開2019-036940(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 21/00 - 21/858
H04H 20/00 - 60/98
H03M 13/27
H03M 13/19
H04L 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放送番組の送信データを可変長パケットの形式で入力し、IPパケット化して受信装置に向けて送信する送信サーバであって、
送信装置により放送伝送路経由で伝送する放送番組の送信データを、可変長パケットの形式で入力順に蓄積し、それぞれの可変長パケットの先頭にパケット順序を示すシーケンスヘッダを付加して、入力順の所定数の可変パケットの並び替えを規則的に行う可変長パケット整列手段と、
規則的な並び替え後の当該所定数の可変パケットのうち、最長のパケット長を基準にすると空きの生じるパケット長の可変長パケットに対し、送受間で既知のパターンからなるスタッフィングビットを付加するスタッフィングビット付加手段と、
前記スタッフィングビットが付加された当該所定数の可変パケットに対し、可変パケットの長さ方向と直交する方向に、前記シーケンスヘッダも含めて、前記送信装置で用いる符号長が一定の誤り訂正フレームで処理する誤り訂正符号化方式と同一の符号化方式に基づき、且つ前記送信装置とは独立した符号化率で誤り訂正フレームを構成して誤り訂正符号化処理を行う誤り訂正符号化手段と、
誤り訂正符号化処理後に前記スタッフィングビットを除去し、前記シーケンスヘッダを含めた可変パケット及び前記誤り訂正符号化処理により付加されたパリティビットの領域の情報を可変パケットの長さ方向に抽出するスタッフィングビット除去手段と、
当該可変パケットの長さ方向に抽出されたシーケンスヘッダを含めた可変パケット及びパリティビットの領域の情報を順次、IPパケット化してIP網経由で前記送信装置からの送信データを受信可能とする受信装置に向けて送信するIPパケット生成手段と、
を備えることを特徴とする送信サーバ。
【請求項2】
前記可変長パケット整列手段は、前記スタッフィングビットの付加を前記受信装置側で予測可能にするよう、当該入力順の所定数の可変パケットの並び替えをパケット長に基づいて降順又は昇順に行うことを特徴とする、請求項に記載の送信サーバ。
【請求項3】
前記送信装置で用いる誤り訂正符号化方式は、LDPC符号を含み、
前記誤り訂正符号化手段は、前記LDPC符号と同一の処理に基づき、且つ前記送信装置とは独立した符号化率で誤り訂正フレームを構成して誤り訂正符号化処理を行うことを特徴とする、請求項1又は2のいずれか一項に記載の送信サーバ。
【請求項4】
デジタル放送に係る送信装置であって、
請求項1からのいずれか一項に記載の送信サーバを装置内部に備えることを特徴とする送信装置。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか一項に記載の送信サーバから、IP網経由で当該放送番組に係るIPパケットを受信し、前記シーケンスヘッダを参照して、前記送信サーバで用いられた誤り訂正フレームを再構成するための所定数のIPパケットを順次抽出するIPパケット受信手段と、
当該所定数のIPパケットから順次、格納されている符号化データとして、前記シーケンスヘッダ及び可変長パケット、並びにパリティビットの情報を抽出し、各可変長パケットの並びの規則性から、前記送信サーバで用いられたスタッフィングビットを予測して付加するスタフィングビット付加手段と、
該スタフィングビットが付加された符号化データについて前記送信サーバで用いられた誤り訂正フレームを再構成し、尤度判定を行い、前記送信サーバにおける誤り訂正符号化処理に対応する符号化率に応じた復号処理を行って誤り訂正復号後のデータを生成する誤り訂正復号手段と、
誤り訂正復号後のデータから、該スタッフィングビットを除去して誤り訂正後の可変長パケットを抽出するスタフィングビット除去手段と、
前記シーケンスヘッダを参照して、前記送信サーバによる規則的な並び替えを元に戻し当該送信データの可変長パケットを復元するように並び替え、各可変長パケットに付加されていたシーケンスヘッダを削除して受信データを抽出する可変長パケット整列手段と、
前記送信装置から放送伝送路経由で得られる放送受信による受信データと、可変長パケット整列手段から得られるIP網経由の受信データの切り替え、又は合成を行って再生可能に外部出力する受信データ切替/合成手段と、
を備えることを特徴とする受信装置。
【請求項6】
前記誤り訂正復号手段は、前記送信装置から放送伝送路経由で得られる放送受信に係る誤り訂正符号化方式の復号処理と共有して用いる、予め定められた種類の符号化率に応じた検査行列テーブルを参照して、符号化率に応じた復号処理を行うことを特徴とする、請求項に記載の受信装置。
【請求項7】
コンピュータを、請求項1からのいずれか一項に記載の送信サーバとして機能させるためのプログラム。
【請求項8】
コンピュータを、請求項又はに記載の受信装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛星放送及び地上放送並びに固定通信及び移動通信の技術分野に関するものであり、特に、放送と通信を連携し、データを送信可能とする送信サーバ、デジタル放送に係る送信装置及び受信装置、並びにプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
衛星放送及び地上放送のデジタル伝送方式では、各サービスで利用可能な周波数帯域幅において、より多くの情報が伝送可能なよう、多値変調方式がよく用いられる。周波数利用効率を高めるには、変調信号1シンボル当たりに割り当てるビット数(変調次数)を高めるのが有効であるが、周波数1Hzあたりに伝送可能な情報速度の上限値と信号対雑音比の関係はシャノン限界で制限される。衛星伝送路を用いた情報の伝送形態の一例として、衛星デジタル放送が挙げられる。
【0003】
衛星放送及び地上放送のデジタル放送方式では、白色雑音下での伝送性能を向上させる技術として、誤り訂正符号が用いられる。例えば、現在利用されている衛星デジタル放送では、誤り訂正符号を用いた受信装置における情報訂正が行われている。パリティビットと呼ばれる冗長信号を送るべき情報に付加することで信号の冗長度(符号化率)を制御し、雑音に対する耐性を上げることが可能である。
【0004】
誤り訂正符号と変調方式は密接に関わっており、信号対雑音比に対する周波数利用効率の理論的な上限値はシャノン限界と呼ばれる。シャノン限界に迫る性能を有する強力な誤り訂正符号の一つとしてLDPC(Low Density Parity Check)符号が1962年にギャラガーによって提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0005】
そして、次世代の放送サービスである4K・8Kスーパーハイビジョンの衛星放送の伝送方式を規定するARIB STD-B44(以下、「高度衛星放送方式」と呼ぶ。)では、信号対雑音比に対する利用効率の理論的な上限値であるシャノン限界に迫る性能を有する強力な誤り訂正符号であるLDPC(Low Density Parity Check)符号が利用される(例えば、非特許文献2参照)。
【0006】
LDPC符号は、非常に疎な検査行列H(検査行列の要素が0と1からなり、且つ1の数が非常に少ない)により定義される線形符号である。
【0007】
LDPC符号は符号長を大きくし、適切な検査行列を用いることによりシャノン限界に迫る伝送特性が得られる強力な誤り訂正符号であり、次世代の放送サービスである4K・8Kのスーパーハイビジョンの衛星放送の伝送方式を規定するARIB STD-B44(以下、高度衛星放送方式と呼ぶ。例えば、非特許文献2参照)においてもLDPC符号が採用されている。多値変調とLDPC符号をはじめとする強力な誤り訂正符号を組み合わせることで、より高い周波数利用効率の伝送が可能となってきている。
【0008】
高度衛星放送方式を例にした場合、本方式におけるLDPC符号の符号長は、前方向誤り訂正方式(FEC:Forward Error Correction)フレームで構成され、44880ビットであり、BPSK限界(信号点配置をBPSKとした場合の信号対雑音比に対する周波数利用効率の理論的な上限値)から約1dB以内の性能を有することが示されている(例えば、非特許文献3参照)。
【0009】
また、高度衛星放送方式においては、LDPC符号化率として、41/120(≒1/3)、49/120(≒2/5)、61/120(≒1/2)、73/120(≒3/5)、81/120(≒2/3)、89/120(≒3/4)、93/120(≒7/9)、97/120(≒4/5)、101/120(≒5/6)、105/120(≒7/8)、及び、109/120(≒9/10)の11種類が定められている。
【0010】
更に、近年では、現行の衛星・地上放送による2Kの放送サービスや、衛星放送による4K・8Kのスーパーハイビジョンに加え、新たに地上放送による4K・8Kのスーパーハイビジョンの提供が期待されている。
【0011】
ここで、衛星放送で使用される12GHz帯に着目すると、利用可能な周波数はひっ迫しており、4K・8Kのハイビジョンサービスの伝送容量を超える次世代コンテンツの伝送にむけては十分な周波数帯域幅を確保することが困難な状況にある。そのような状況の中で、ITU-Rで日本に衛星放送用周波数帯(BSS)として分配されている21GHz帯が注目されている。この周波数帯は600MHzの広帯域を持っているため、2K、或いは4K・8Kのスーパーハイビジョンだけでなく、4K・8Kのハイビジョンサービスの伝送容量を超える次世代コンテンツの伝送サービスとして考えられるAR(Augmented Reality)、VR(Virtual Reality)、立体テレビ等の大容量伝送の利用に期待できる。
【0012】
しかし、衛星デジタル放送では降雨による減衰、地上デジタル放送ではフェージングなど、デジタル放送では、誤り訂正符号のみでは信号を復旧できないほど伝送条件が悪化する場合がある。特に、21GHz帯で伝送を行う場合、降雨減衰の影響が12GHz帯のdB値で約3倍発生することが想定される。
【0013】
一方、昨今、放送に係る放送番組を、送信側からIP(Internet Protocol)網を経て受信装置に送信するといった放送と通信を連携したサービスが可能となっている。
【0014】
ただし、一般的なIP網は、回線が混雑しているなどの何らかの障害により情報が消失する消失通信路(PEC:Packet Erasure Channel)が想定される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0015】
【文献】R. G. Gallager, “Low-Density Parity-Check Codes,” in Research Monograph series Cambridge, MIT Press, 1963年12月
【文献】“高度広帯域衛星デジタル放送の伝送方式(ISDB-S3) 標準規格 ARIB STD-B44 2.1版”、[online]、平成28年3月25日改定、ARIB、[令和01年6月12日検索]、インターネット<URL:https://www.arib.or.jp/kikaku/kikaku_hoso/std-b44.html>
【文献】鈴木他, “高度BSデジタル放送用LDPC符号の設計”、映像情報メディア学会誌、一般社団法人映像情報メディア学会、映像情報メディア vol.62、No.12、2008年12月1日、pp.1997-2004
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上述したように、昨今、2K、或いは4K・8Kのスーパーハイビジョンだけでなく、4K・8Kのハイビジョンサービスの伝送容量を超える次世代コンテンツの伝送サービスとして考えられるAR、VR、立体テレビ等の大容量伝送のサービスが期待されている。
【0017】
一方で、衛星デジタル放送では降雨による減衰、地上デジタル放送ではフェージングなど、デジタル放送では、誤り訂正符号のみでは信号を復旧できないほど伝送条件が悪化する問題がある。
【0018】
このため、放送番組の大容量伝送のサービスを可能とし、尚且つ放送伝送路に係る伝送条件の悪化による受信不良を補償する技法が望まれる。
【0019】
そこで、放送に係る放送番組を、送信側からIP網を経て受信装置に送信するといった放送と通信を連携する技法を応用することが考えられるが、一般的なIP網は情報が消失する消失通信路(PEC)であることを考慮した技法とする必要がある。
【0020】
特に、今後の衛星放送においては、送信装置は、12GHz帯における衛星放送用周波数のひっ迫に基づき、大容量伝送を可能とする21GHz帯衛星周波数の放送伝送路を利用して、且つ高度衛星放送方式のように符号長が一定の誤り訂正フレームで処理する誤り訂正符号(LDPC符号)を用いて白色雑音に対する耐性の高い態様で、放送番組の送信データを受信装置に向けて送信するように構成することが想定される。この場合に、その放送伝送路の降雨減衰による受信側の受信不良を補償するためにIP伝送を利用するには、放送とIP伝送の親和性を高い態様で、尚且つIP網で生じるIPパケットの消失を補償するように、IP網を利用して当該放送番組の送信データを受信装置に向けて送信する送信サーバが望まれる。また、受信装置は、放送伝送路及びIP網を経て受信したデータを基に放送番組を精度よく復元する工夫が必要である。
【0021】
従って、本発明の目的は、上述の問題に鑑みて、親和性の高い態様で放送と通信を連携して放送番組の大容量伝送を可能とし、尚且つ放送伝送路に係る伝送条件の悪化による受信側の受信不良、並びにIP網上のパケット損失を補償してデータを伝送可能とする送信サーバ、デジタル放送に係る送信装置及び受信装置、並びにプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
また、本発明の送信サーバは、放送番組の送信データを可変長パケットの形式で入力し、IPパケット化して受信装置に向けて送信する送信サーバであって、送信装置により放送伝送路経由で伝送する放送番組の送信データを、可変長パケットの形式で入力順に蓄積し、それぞれの可変長パケットの先頭にパケット順序を示すシーケンスヘッダを付加して、入力順の所定数の可変パケットの並び替えを規則的に行う可変長パケット整列手段と、規則的な並び替え後の当該所定数の可変パケットのうち、最長のパケット長を基準にすると空きの生じるパケット長の可変長パケットに対し、送受間で既知のパターンからなるスタッフィングビットを付加するスタッフィングビット付加手段と、前記スタッフィングビットが付加された当該所定数の可変パケットに対し、可変パケットの長さ方向と直交する方向に、前記シーケンスヘッダも含めて、前記送信装置で用いる符号長が一定の誤り訂正フレームで処理する誤り訂正符号化方式と同一の符号化方式に基づき、且つ前記送信装置とは独立した符号化率で誤り訂正フレームを構成して誤り訂正符号化処理を行う誤り訂正符号化手段と、誤り訂正符号化処理後に前記スタッフィングビットを除去し、前記シーケンスヘッダを含めた可変パケット及び前記誤り訂正符号化処理により付加されたパリティビットの領域の情報を可変パケットの長さ方向に抽出するスタッフィングビット除去手段と、当該可変パケットの長さ方向に抽出されたシーケンスヘッダを含めた可変パケット及びパリティビットの領域の情報を順次、IPパケット化してIP網経由で前記送信装置からの送信データを受信可能とする受信装置に向けて送信するIPパケット生成手段と、を備えることを特徴とする。
【0024】
また、本発明の送信サーバにおいて、前記可変長パケット整列手段は、前記スタッフィングビットの付加を前記受信装置側で予測可能にするよう、当該入力順の所定数の可変パケットの並び替えをパケット長に基づいて降順又は昇順に行うことを特徴とする。
【0025】
また、本発明の送信サーバにおいて、前記送信装置で用いる誤り訂正符号化方式は、LDPC符号を含み、前記誤り訂正符号化手段は、前記LDPC符号と同一の処理に基づき、且つ前記送信装置とは独立した符号化率で誤り訂正フレームを構成して誤り訂正符号化処理を行うことを特徴とする。
【0026】
更に、本発明の送信装置は、デジタル放送に係る送信装置であって、本発明の送信サーバを装置内部に備えることを特徴とする。
【0028】
また、本発明の受信装置は、本発明の送信サーバから、IP網経由で当該放送番組に係るIPパケットを受信し、前記シーケンスヘッダを参照して、前記送信サーバで用いられた誤り訂正フレームを再構成するための所定数のIPパケットを順次抽出するIPパケット受信手段と、当該所定数のIPパケットから順次、格納されている符号化データとして、前記シーケンスヘッダ及び可変長パケット、並びにパリティビットの情報を抽出し、各可変長パケットの並びの規則性から、前記送信サーバで用いられたスタッフィングビットを予測して付加するスタフィングビット付加手段と、該スタフィングビットが付加された符号化データについて前記送信サーバで用いられた誤り訂正フレームを再構成し、尤度判定を行い、前記送信サーバにおける誤り訂正符号化処理に対応する符号化率に応じた復号処理を行って誤り訂正復号後のデータを生成する誤り訂正復号手段と、誤り訂正復号後のデータから、該スタッフィングビットを除去して誤り訂正後の可変長パケットを抽出するスタフィングビット除去手段と、前記シーケンスヘッダを参照して、前記送信サーバによる規則的な並び替えを元に戻し当該送信データの可変長パケットを復元するように並び替え、各可変長パケットに付加されていたシーケンスヘッダを削除して受信データを抽出する可変長パケット整列手段と、前記送信装置から放送伝送路経由で得られる放送受信による受信データと、可変長パケット整列手段から得られるIP網経由の受信データの切り替え、又は合成を行って再生可能に外部出力する受信データ切替/合成手段と、を備えることを特徴とする。
【0029】
また、本発明の受信装置において、前記誤り訂正復号手段は、前記送信装置から放送伝送路経由で得られる放送受信に係る誤り訂正符号化方式の復号処理と共有して用いる、予め定められた種類の符号化率に応じた検査行列テーブルを参照して、符号化率に応じた復号処理を行うことを特徴とする。
【0030】
また、本発明のプログラムは、コンピュータを、本発明の送信サーバとして機能させるためのプログラムとして構成する。
【0031】
また、本発明のプログラムは、コンピュータを、本発明の受信装置として機能させるためのプログラムとして構成する。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、親和性の高い態様で放送とIP伝送の連携で放送番組の大容量伝送が可能となり、放送伝送路に係る伝送条件の悪化による受信側の受信不良、並びにIP網上のパケット損失を補償してデータを伝送可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明による一実施形態の送信サーバ、送信装置及び受信装置を備える伝送システムの概略構成を示すブロック図である。
図2】本発明による一実施形態の送信サーバ及び送信装置の概略構成を示すブロック図である。
図3】本発明による一実施形態の受信装置の概略構成を示すブロック図である。
図4】本発明による一実施例の送信サーバ、21GHz帯衛星周波数の高度広帯域衛星デジタル放送の送信装置及び受信装置を備える伝送システムの概略構成を示すブロック図である。
図5】(a),(b)は、それぞれ本発明による一実施例の送信サーバにおける可変長パケット整列部、及びスタッフィングビット付加部の各処理の説明図である。
図6】(a),(b)は、それぞれ本発明による一実施例の送信サーバにおける誤り訂正符号化部、スタッフィングビット除去部、及びIPパケット生成部の各処理の説明図である。
図7】(a),(b)は、それぞれ本発明による一実施例の受信装置におけるIPパケット受信部、スタッフィングビット付加部、及び誤り訂正復号部の各処理の説明図である。
図8】(a),(b)は、それぞれ本発明による一実施例の受信装置におけるスタッフィングビット除去部、及び可変長パケット整列部の各処理の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
〔伝送システム〕
図1は、本発明による一実施形態の送信サーバ6、送信装置2,3及び受信装置5を備える伝送システム1の概略構成を示すブロック図である。図1に示す伝送システム1は、送信装置2,3、受信装置5、及び送信サーバ6を備える。
【0035】
送信装置2は、放送番組の送信データに対し、符号長が一定の誤り訂正フレームで処理する誤り訂正符号化処理を施して誤り訂正符号パリティを付与することにより符号化データを生成し、その符号化データを所定の変調方式でデジタル変調して変調波信号を生成し、送信アンテナ2aを介して放送衛星4を含む衛星放送伝送路経由で、デジタル放送に係る電波を放射する装置である。例えば、送信装置2は、21GHz帯衛星周波数で運用する高度広帯域衛星デジタル放送の送信装置とすることができる。
【0036】
送信装置3は、放送番組の送信データに対し、符号長が一定の誤り訂正フレームで処理する誤り訂正符号化処理を施して誤り訂正符号パリティを付与することにより符号化データを生成し、その符号化データを所定の変調方式でデジタル変調して変調波信号を生成し、送信アンテナ3aを介して地上放送伝送路経由で、デジタル放送に係る電波を放射する装置である。例えば、送信装置3は、符号長が一定の誤り訂正フレームで処理する誤り訂正符号化処理を用いる次世代の地上デジタル放送の送信装置とすることができる。
【0037】
尚、送信装置2に入力される放送番組の送信データは、放送TS(Transport Stream)における固定長のTSパケットで入力される以外にも、可変長のTSパケット、TLV(Type-Length-Value)パケット、MPEG2-TSに基づいたMMTP(MPEG Media Transport Protocol)パケット、IPパケット等の可変長パケットの形式で入力される。ただし、可変長パケットは固定長であってもよいことから、送信装置2は、送信データを可変長パケットの形式で入力できるように構成されている。
【0038】
送信サーバ6は、送信装置2(又は送信装置3)から伝送するものと同一の放送番組の送信データ(可変長パケット)に対し、パケット順序を示すシーケンスヘッダを付加し、誤り訂正符号化の符号化率に依存する所定数の可変パケットの並び替えを規則的に行うことで、送受間(送信装置2(又は送信装置3)と受信装置5との間)で既知のパターンからなるスタッフィングビットを受信装置5側で予測可能にして付加する機能、可変パケットの長さ方向と直交する方向に送信装置2(又は送信装置3)で用いる誤り訂正符号化方式と同一の符号化方式に基づき、且つ放送に係る送信装置2(又は送信装置3)とは独立した符号化率で誤り訂正符号化処理を行う機能、及び、当該スタッフィングビットを除去して当該誤り訂正符号化後の情報を可変パケットの長さ方向に順次、IPパケット化して、IP網8経由で受信装置5に向けて送信する機能を有するコンピュータである。
【0039】
受信装置5は、受信アンテナ5aを介して送信装置2から電波放射された変調波信号を受信して復調し、誤り訂正符号の符号長を構成する誤り訂正フレームを再構成し送信装置2における誤り訂正符号化処理に対応する復号処理を行って受信データを生成し再生可能とする機能、及び、受信アンテナ5bを介して送信装置3から電波放射された変調波信号を受信して復調し、誤り訂正符号の符号長を構成する誤り訂正フレームを再構成し送信装置3における誤り訂正符号化処理に対応する復号処理を行って受信データを生成する機能を有する装置である。
【0040】
また、受信装置5は、送信装置2(又は送信装置3)からの放送受信とは別に、送信サーバ6からIP網8経由で当該放送番組に係るIPパケットを受信し、誤り訂正フレームを構成するための予め定められたパケット数のIPパケットから順次、格納されている符号化データとして、当該シーケンスヘッダ及び可変長パケット、並びにパリティビットの情報を抽出し、各可変長パケットの並びの規則性から、送信サーバ6側と対応する送受間で既知のパターンからなるスタッフィングビットを予測して付加する機能、送信サーバ6における誤り訂正符号化に対応する誤り訂正復号を行う機能、誤り訂正復号後に受信側で付加したスタッフィングビットを除去して、シーケンスヘッダの情報を基に送信サーバ6による規則的な並び替えを元に戻す並び替えを行う機能、及び当該並び替え後の可変パケットから受信データを抽出し、放送受信による受信データとIP網8経由の受信データの切り替え、又は合成を行って再生可能に外部出力する機能を有する。
【0041】
尚、図1に例示する伝送システム1では、送信装置2及び送信装置3を備えるとして説明したが、送信装置2と送信装置3のいずれか一方のみとしてもよい。また、図1に例示する伝送システム1では、送信装置2(又は送信装置3)と送信サーバ6とを別体として説明したが、送信装置2(又は送信装置3)が送信サーバ6を備える形態としてもよい。
【0042】
以下、より具体的に、送信装置2(又は送信装置3)、送信サーバ6、受信装置5について順に説明する。
【0043】
〔送信装置〕
図2は、本発明による一実施形態の送信サーバ6及び送信装置2(又は送信装置3)の概略構成を示すブロック図である。尚、図2に示す送信装置2(又は送信装置3)は、本発明に係る主要な構成要素のみを図示しており、エネルギー拡散処理等のその他の構成要素の説明は省略する。
【0044】
送信装置2及び送信装置3は、それぞれの放送伝送路(衛星放送伝送路又は地上放送伝送路)に適した誤り訂正符号化処理及び変調方式が採用されるが、図2に示すように、誤り訂正符号化部21、及び変調部22を備えるとして包括して説明する。
【0045】
誤り訂正符号化部21は、放送番組の送信データに対し、符号長が一定の誤り訂正フレームで処理する誤り訂正符号化処理を施して誤り訂正符号パリティを付与することにより符号化データを生成し、変調部22に出力する符号化器である。ここで、誤り訂正符号化処理は、符号長が一定の誤り訂正フレームであれば任意の処理とすることができるが、好適には高度広帯域衛星デジタル放送の伝送方式(ISDB-S3)で規定されるように、内符号としてのLDPC符号と、外符号としてのBCH符号との連接符号とし、予め定められた種類のLDPC符号化率を設定できるものとする。
【0046】
変調部22は、誤り訂正符号化部21から得られる符号化データを所定の変調方式でデジタル変調して変調波信号を生成し、放送伝送路経由でデジタル放送に係る電波を放射する。
【0047】
放送番組の送信データは、上述したように、可変長パケットの形式で送信装置2(又は送信装置3)に入力することができ、例えば地上放送伝送路を経由して送信するときはARIB STD-B31に記載され地上デジタル放送で使用されるMPEG2-TSに基づいたMMTPパケット、衛星放送伝送路を経由して送信するときはARIB STD-B44に記載され高度広帯域衛星デジタル放送で使用されるTLVパケット又はMMTPパケット、或いはIPパケットの形式とすることができる。
【0048】
〔送信サーバ〕
図2に示す送信サーバ6は、可変長パケット整列部61、スタッフィングビット付加部62、誤り訂正符号化部63、スタッフィングビット除去部64、及びIPパケット生成部65を備える。
【0049】
可変長パケット整列部61は、送信装置2(又は送信装置3)から伝送するものと同一の放送番組の送信データを可変長パケットの形式で入力順に蓄積し、それぞれの可変長パケットの先頭にパケット順序を示すシーケンスヘッダを付加し、後段の誤り訂正符号化部63における誤り訂正符号化の符号化率に対応して整列するパケット数を定めることで誤り訂正符号化の符号化率に依存する所定数の可変パケットを入力順に決定する。
【0050】
尚、各可変長パケットに付加するシーケンスヘッダには、少なくとも当該放送番組の送信データにおける各可変長パケットの入力順を示すシーケンス番号を含み、好適には誤り訂正符号化の符号化率の情報、及びいずれの放送番組の可変パケットであるかを識別する情報を含む。ここで、誤り訂正符号化の符号化率の情報、及びいずれの放送番組の可変パケットであるかを識別する情報は、送受間で予め定めているときは省略してもよい。シーケンス番号から、当該放送番組の送信データにおけるいずれの可変長パケットであるかを識別できる。
【0051】
そして、可変長パケット整列部61は、入力順の当該所定数の可変パケットの並び替えを規則的に行い(例えば、パケット長に基づいて降順又は昇順に各可変長パケットを並び替え)、順次、スタッフィングビット付加部62に出力する。また、可変長パケット整列部61は、同一パケット長の可変長パケットが複数あるときは、時系列で先行順(又は後行順とすることも可能)とする送受間で予め定めた順序で並び替える。
【0052】
スタッフィングビット付加部62は、規則的な並び替え後の当該所定数の可変パケットのうち、最長のパケット長を基準にすると空きの生じるパケット長の可変長パケットに対し、送受間で既知のパターン(全て“0”又は“1”のビット、或いは“0”と“1”の規則的なビットパターン)からなるスタッフィングビットを付加して誤り訂正符号化部63に出力する。
【0053】
誤り訂正符号化部63は、スタッフィングビットが付加された当該所定数の可変パケットに対し、可変パケットの長さ方向と直交する方向に、シーケンスヘッダも含めて、送信装置2(又は送信装置3)における誤り訂正符号化部21で用いる誤り訂正符号化方式と同一の符号化方式に基づき、且つ放送に係る送信装置2(又は送信装置3)とは独立した符号化率で誤り訂正フレームを構成して誤り訂正符号化処理を行い(即ち符号化率に応じて誤り訂正符号化のパリティビットを付与して)、スタッフィングビット除去部64に出力する。
【0054】
スタッフィングビット除去部64は、誤り訂正符号化処理後に、スタッフィングビット付加部62により付加したスタッフィングビットを除去し、シーケンスヘッダを含めた可変パケット及び誤り訂正符号化部63の処理により付加されたパリティビットの領域の情報を可変パケットの長さ方向に抽出して、IPパケット生成部65に出力する。
【0055】
IPパケット生成部65は、可変パケットの長さ方向に抽出されたシーケンスヘッダを含めた可変受信装置5に向けて送信する。尚、可変長パケットとしてTLVパケット又はMMTPパケットを扱うときに、個々のTLVパケット又はMMTPパケットは1つのIPパケットに格納できる。また、1つのIPパケット内にMMTPのパケットヘッダを付与した態様でTLVパケットを格納することもできる。
【0056】
〔受信装置〕
図3は、本発明による一実施形態の受信装置5の概略構成を示すブロック図である。受信装置5は、復調部51、誤り訂正復号部52、検査行列テーブル格納部53、IPパケット受信部54、スタフィングビット付加部55、誤り訂正復号部56、スタフィングビット除去部57、可変長パケット整列部58、及び受信データ切替/合成部59を備える。
【0057】
復調部51は、放送伝送路(衛星放送伝送路又は地上放送伝送路)経由で送信装置2(又は送信装置3)から電波放射された変調波信号を受信して復調し、この復調処理で得られる符号化データを誤り訂正復号部52に出力する。
【0058】
誤り訂正復号部52は、復調部51から得られる符号化データについて送信装置2(又は送信装置3)側の誤り訂正符号化部21に対応する誤り訂正フレームを再構成し、LLR(Log-likelihood ratio;対数尤度比)に基づく各ビット“0”及び“1”の尤度判定を行い、検査行列テーブル格納部53を参照し、送信装置2(又は送信装置3)における誤り訂正符号化処理に対応する符号化率に応じた検査行列テーブルに基づく復号処理を行って受信データを生成し受信データ切替/合成部59に出力する。
【0059】
検査行列テーブル格納部53は、誤り訂正符号の符号化率に応じた線形符号の復号情報を示す検査行列テーブルを格納している。誤り訂正復号部52及び後述する誤り訂正復号部56において異なる符号化率であってもよいが、この検査行列テーブルは、予め定められた種類の符号化率に応じたものとして共有して用いられ、これにより実装上の効率化を図っている。例えば、誤り訂正復号部52,56に共通の誤り訂正符号としてLDPC符号を用いるときに、誤り訂正復号部52及び後述する誤り訂正復号部56において、その符号化率に応じた検査行列テーブルを共有して用いることができる。
【0060】
IPパケット受信部54は、送信サーバ6からIP網8経由で当該放送番組に係るIPパケットを受信して、IPパケットのヘッダ情報を基にパケット列の列番号順に蓄積し、シーケンスヘッダに記述されるシーケンス番号を参照して、送信サーバ6で用いられた誤り訂正フレームを再構成するための所定数のIPパケットを順次抽出し、スタフィングビット付加部55に出力する。ここで、IPパケット受信部54は、IP網8における一部のIPパケットの消失を許容している。シーケンス番号から、当該放送番組の送信データにおけるいずれの可変長パケットであるかを識別できる。
【0061】
スタフィングビット付加部55は、当該所定数のIPパケットから順次、格納されている符号化データとして、当該シーケンスヘッダ及び可変長パケット、並びにパリティビットの情報を抽出し、各可変長パケットの並びの規則性から(上述したように、送信サーバ6側で、例えばパケット長に基づいて各可変長パケットの並びが降順又は昇順の規則性を持つ)、送信サーバ6で用いられたスタッフィングビットを予測して付加し、誤り訂正復号部56に出力する。ここで、スタフィングビット付加部55は、消失したIPパケットを含み当該スタッフィングビットを予測して付加する。
【0062】
誤り訂正復号部56は、スタフィングビット付加部55によりスタフィングビットが付加された符号化データについて送信サーバ6で用いられた誤り訂正フレームを再構成し、LLRに基づく各ビット“0”及び“1”の尤度判定を行い、検査行列テーブル格納部53を参照し、送信サーバ6における誤り訂正符号化処理に対応する符号化率に応じた検査行列テーブルに基づく復号処理を行って誤り訂正復号後のデータを生成しスタフィングビット除去部57に出力する。
【0063】
スタフィングビット除去部57は、誤り訂正復号後のデータから、スタフィングビット付加部55で付加したスタッフィングビットを除去して誤り訂正後の可変長パケットを抽出し、可変長パケット整列部58に出力する。
【0064】
可変長パケット整列部58は、可変長パケット毎に付加されていたシーケンスヘッダに記述されるシーケンス番号に基づき、送信サーバ6側の可変パケット整列部61による規則的な並び替えを元に戻し送信データの可変長パケットを復元するように並び替え、各可変長パケットに付加されていたシーケンスヘッダを削除して受信データを抽出し、受信データ切替/合成部59に出力する。また、可変長パケット整列部58は、同一パケット長の可変長パケットが複数あるときは、時系列で先行順(又は後行順とすることも可能)とする送受間で予め定めた順序で並び替える。
【0065】
受信データ切替/合成部59は、誤り訂正復号部52から放送伝送路経由で得られる放送受信による受信データと、可変長パケット整列部58から得られるIP網8経由の受信データの切り替え、又は合成を行って再生可能に外部出力する。例えば、受信データ切替/合成部59は、放送受信による受信データを主として出力し、放送受信に係る受信品質(例えば変調誤差比に基づく受信品質)が所定値以下とである時に、自動的にIP網8経由の受信データに切り替えるか、又は受信装置5のユーザー指定で切り替える形態とすることができる。更に、受信データ切替/合成部59は、誤り訂正復号部52の処理後の尤度判定、及び誤り訂正復号部56の処理後の尤度判定等を利用した各事後尤度値(又は評価値)の大小から自動的に切り替える構成や、その各事後尤度値(又は評価値)の比較を基に放送受信による受信データにおける尤度の低いビットを、IP網8経由の受信データにおける尤度の高いビットに置き換えることで合成する形態とすることができる。
【0066】
〈実施例〉
以下、伝送システム1を21GHz帯衛星周波数で運用する高度広帯域衛星デジタル放送用に構成した、より具体的な一実施例を説明する。
【0067】
図4は、本発明による一実施例の送信サーバ6、送信装置2及び受信装置5を備える伝送システム1の概略構成を示すブロック図である。尚、同様な構成要素には、同一の参照番号を付して説明する。
【0068】
図4に示す一実施例の伝送システム1において、送信装置2は、ARIB STD-B44に記載される高度広帯域衛星デジタル放送を例にした実施例である。一方、本実施例における送信サーバ6は、LDPC符号とBCH符号の連接符号としてもよいが、伝送効率の観点、及び誤り訂正に係る処理の軽減の観点から、ARIB STD-B44に記載されるLDPC符号のみを誤り訂正符号化処理として利用する。
【0069】
即ち、図4に示す送信装置2は、内符号としてのLDPC符号と、外符号としてのBCH符号との連接符号とし、ARIB STD-B44に記載される予め定められた種類のLDPC符号化率を設定できるものとする。
【0070】
ARIB STD-B44に記載される誤り訂正フレームは、符号長が44880ビットで固定のスロットとして扱われ、送信装置2は、LDPC符号化率61/120(≒1/2)のとき、スロットヘッダ:176ビット(固定)、送信データの割り当て長:22440ビット(LDPCの符号化率に応じて可変)、BCH符号パリティ長:192ビット(固定)、スタッフビット:6ビット(固定)、及びLDPC符号パリティ長:22066ビット(LDPCの符号化率に応じて可変)となる。
【0071】
一方、図4に示す送信サーバ6は、LDPC符号のみを誤り訂正符号化処理として利用するが、ARIB STD-B44に記載される予め定められた種類のLDPC符号化率を設定できるものとする。
【0072】
つまり、送信サーバ6は、同じく符号長が44880ビットで固定の誤り訂正フレームで、高度広帯域衛星デジタル放送と同様にLDPC符号化率を設定するときは、LDPC符号パリティ長を除く全てのビットを送信データの割り当てに用いる情報長とすることができ、即ち、例えばLDPC符号化率61/120のとき、情報長は22814ビットとなる。尚、送信装置2及び送信サーバ6のいずれにおいても、符号長が44880ビットで固定とするため、LDPC符号化率が決定すれば送信データの割り当て長及びLDPC符号パリティ長も自ずと定まる。
【0073】
従って、図4に例示する送信装置2は、上述した図2と同様に構成され、放送番組の送信データに対し、符号長が44880ビットで一定の誤り訂正フレームで処理するLDPC符号及びBCH符号の連接符号からなる誤り訂正符号化処理を施して符号化データを生成し、その符号化データを所定の変調方式でデジタル変調して変調波信号を生成し、送信アンテナ2aを介して放送衛星4を含む衛星放送伝送路経由で、デジタル放送に係る電波を放射する。
【0074】
図4に例示する送信サーバ6は、上述した図2と同様に構成され、送信装置2から伝送するものと同一の放送番組の送信データ(可変長パケット)に対し、シーケンスヘッダを付加し、誤り訂正符号化の符号化率に依存する所定数の可変パケットの並び替えを規則的に行うことで、送受間で既知のパターンからなるスタッフィングビットを受信装置5側で予測可能にして付加する。そして、送信サーバ6は、可変パケットの長さ方向と直交する方向に、放送に係る送信装置2とは独立した符号化率で誤り訂正符号化(LDPC符号化)処理を行い、当該スタッフィングビットを除去して当該誤り訂正符号化後の情報を可変パケットの長さ方向に順次、IPパケット化して、IP網8経由で受信装置5に向けて送信する。
【0075】
図4に例示する受信装置5は、上述した図3と同様に構成され、受信アンテナ5aを介して送信装置2から電波放射された変調波信号を受信して復調し、誤り訂正符号の符号長を構成する誤り訂正フレームを再構成し送信装置2における誤り訂正符号化処理に対応する復号処理を行って受信データを生成する。
【0076】
また、図4に例示する受信装置5は、送信装置2からの放送受信とは別に、送信サーバ6からIP網8経由で当該放送番組に係るIPパケットを受信し、誤り訂正フレームを構成するための予め定められたパケット数のIPパケットから順次、格納されている符号化データとして、当該シーケンスヘッダ及び可変長パケット、並びにパリティビットの情報を抽出する。そして、受信装置5は、各可変長パケットの並びの規則性から、送信サーバ6側と対応する送受間で既知のパターンからなるスタッフィングビットを予測して付加し、送信サーバ6における誤り訂正符号化に対応する誤り訂正復号を行う。最終的に、受信装置5は、誤り訂正復号後に受信側で付加したスタッフィングビットを除去して、シーケンスヘッダの情報を基に、送信サーバ6による規則的な並び替えを元に戻し、シーケンスヘッダを削除して当該並び替え後の可変パケットから受信データを抽出し、放送受信による受信データとIP網8経由の受信データの切り替え、又は合成を行って再生可能に外部出力する。
【0077】
(送信サーバ6の動作)
以下、図5及び図6を参照して、本実施例における送信サーバ6の具体的な動作について説明する。図5(a),(b)は、それぞれ本発明による一実施例の送信サーバ6における可変長パケット整列部61、及びスタッフィングビット付加部62の各処理の説明図である。また、図6(a),(b)は、それぞれ本発明による一実施例の送信サーバ6における誤り訂正符号化部63、スタッフィングビット除去部64、及びIPパケット生成部65の各処理の説明図である。
【0078】
まず、図5(a)に示すように、送信サーバ6における可変長パケット整列部61は、送信装置2から伝送するものと同一の放送番組の送信データを可変長パケットの形式で入力順に蓄積し、それぞれの可変長パケットの先頭に2バイトのシーケンスヘッダを付加する。尚、各可変長パケットに付加するシーケンスヘッダには、少なくとも各可変長パケットの入力順を示すシーケンス番号(図示する例では、“1”~“22814”として例示)を含み、好適には誤り訂正符号化の符号化率の情報、及びいずれの放送番組の可変パケットであるかを識別する情報を含む。ここで、誤り訂正符号化の符号化率の情報、及びいずれの放送番組の可変パケットであるかを識別する情報は、送受間で予め定めているときは省略してもよい。シーケンス番号から、当該放送番組の送信データにおけるいずれの可変長パケットであるかを識別できる。
【0079】
更に、図5(a)に示すように、可変長パケット整列部61は、後段の誤り訂正符号化部63における誤り訂正符号化の符号化率(図示する例では、LDPC符号化率61/120)に対応して整列するパケット数を定めることで誤り訂正符号化の符号化率に依存する所定数の可変パケット(図示横方向の符号長44880ビットからLDPC符号パリティ長22066ビットを除いた情報長22814ビットに対応するパケット数22814)を決定する。
【0080】
続いて、図5(b)に示すように、可変長パケット整列部61は、図5(b-1)に示すようにパケット長に基づいて降順に並び替えるか、又は図5(b-2)に示すようにパケット長に基づいて昇順に並び替えることで、シーケンスヘッダを付加した各可変長パケットの並び替えを規則的に行う。つまり、図5(b)に示す好適例において、可変長パケット整列部61は、情報長としての可変長パケットをパケット長に応じて階段状の左詰め又は右詰めとして並び替える。
【0081】
尚、個々の可変長パケットを並び替える一例として、可変長パケットの最大パケット長を1000バイトとし、可変長パケットの可変サイズを固定種類としてもよい。例えば50バイトステップ、即ち300,350,400,…、950,1000バイトの降順又は昇順の段階的な並び替えを行うとすると、350,400,…,950,1000バイトのパケット長の可変長パケットについてはいずれもパケット数1800個、300バイトのパケット長の可変パケットについてはパケット数1214個とすれば、符号化率61/120の情報長22814ビットに対応するパケット数22814個となる。
【0082】
次に、図5(b)に示すように、送信サーバ6におけるスタッフィングビット付加部62は、規則的な並び替え後の当該所定数の可変パケットのうち、最長のパケット長(例えば、1000バイトの可変パケットが最長)を基準にすると空きの生じるパケット長の可変長パケットに対し、送受間で既知のパターン(全て“0”又は“1”のビット、或いは“0”と“1”の規則的なビットパターン)からなるスタッフィングビットを付加する。
【0083】
続いて、図6(a)に示すように(図6(a-1)は降順の並び替え例、図6(a-2)は昇順の並び替え例)、送信サーバ6における誤り訂正符号化部63は、スタッフィングビットが付加された当該所定数の可変パケット(情報長に対応するパケット数の22814)に対し、可変パケットの長さ方向と直交する方向に、シーケンスヘッダも含めてLDPC符号化率に応じた検査行列により固定長44880ビットのブロックサイズでLDPC符号化処理を行う。本例では、誤り訂正符号化部63は、送信装置2における誤り訂正符号化部21で用いるLDPC符号と同一の処理に基づき、且つ放送に係る送信装置2とは独立したLDPC符号化率で誤り訂正フレームを構成してLDPC符号化処理を行い、例えばLDPC符号化率61/120のときLDPC符号のパリティビット22066ビットを付与する。
【0084】
包括的には、誤り訂正符号化部63は、符号化対象の可変長パケットのパケット長の最大サイズがNバイトのとき、2バイトのシーケンスヘッダを含め、可変長パケットの長さ方向と直交する方向に(N+2)×8回のLDPC符号化処理を行う。このため、例えば、符号化率61/120、符号化対象の可変長パケットのパケット長の最大サイズが1000バイトのとき、可変長パケットの長さ方向と直交する方向に(1000+2)×8=8016回のLDPC符号化を行う。このとき、LDPC符号化により生成されるパリティビットの領域の総数は22066×(1002×8)ビットとなる。
【0085】
続いて、図6(b)に示すように(図6(b-1)は降順の並び替え例、図6(b-2)は昇順の並び替え例)、送信サーバ6におけるスタッフィングビット除去部64は、誤り訂正符号化部63による誤り訂正符号化処理後に、スタッフィングビット付加部62により付加したスタッフィングビットを除去し、シーケンスヘッダを含めた可変パケット及びパリティビットの領域の情報を可変パケットの長さ方向に抽出する。
【0086】
最後に、図6(b)に示すように(図6(b-1)は降順の並び替え例、図6(b-2)は昇順の並び替え例)、送信サーバ6におけるIPパケット生成部65は、可変パケットの長さ方向に抽出されたシーケンスヘッダを含めた可変パケット及びパリティビットの領域の情報を順次、IPパケット化してIP網8経由で受信装置5に向けて送信する。
【0087】
(受信装置の動作)
以下、図7及び図8を参照して、本実施例における受信装置5の具体的な動作について説明する。図7(a),(b)は、それぞれ本発明による一実施例の受信装置5におけるIPパケット受信部54、スタッフィングビット付加部55、及び誤り訂正復号部56の各処理の説明図である。また、図8(a),(b)は、それぞれ本発明による一実施例の受信装置5におけるスタッフィングビット除去部57、及び可変長パケット整列部58の各処理の説明図である。
【0088】
まず、本実施例における受信装置5は、放送番組の放送受信については、ARIB STD-B44に記載されるものと同様に動作し、復調部51により受信アンテナ5aを介して送信装置2から電波放射された変調波信号を受信して復調し、誤り訂正復号部52により誤り訂正符号の符号長を構成する誤り訂正フレームを再構成し送信装置2における誤り訂正符号化部21の誤り訂正符号化処理に対応する復号処理を行って受信データを生成する。
【0089】
一方、本実施例における受信装置5は、IP網8経由で当該放送番組に係るIPパケットを受信できる。
【0090】
まず、図7(a)に示すように(図7(a-1)は降順に並び替えられている例、図7(a-2)は昇順に並び替えられている例)、受信装置5におけるIPパケット受信部54は、送信サーバ6からIP網8経由で当該放送番組に係るIPパケットを受信し、IPパケットのヘッダ情報を基に、誤り訂正復号部56における誤り訂正フレームを構成するための予め定められたパケット数で順番に区切り、スタフィングビット付加部55に出力する。ここで、IP網8上で、送信サーバ6から送信されたIPパケットが消失・破棄されることがあり、図7(a)に示すように、IPパケット受信部54には送信サーバ6から送信されたIPパケットが全て受信できるとは限らず、一部のIPパケットが消失した状態で入力されることがあるが、IPパケット受信部54は、IP網8における一部のIPパケットの消失を許容している。
【0091】
続いて、図7(b)に示すように、受信装置5におけるスタフィングビット付加部55は、誤り訂正フレームを構成するための予め定められたパケット数のIPパケットから順次、格納されている符号化データとして、当該シーケンスヘッダ及び可変長パケット、並びにパリティビットの情報を抽出し、各可変長パケットの並びの規則性から(図7(b-1)は降順に並び替えられている例、図7(b-2)は昇順に並び替えられている例)、送信サーバ6側と対応する送受間で既知のパターンからなるスタッフィングビットを予測して付加する。ここで、スタフィングビット付加部55は、消失したIPパケットを含み当該スタッフィングビットを予測して付加する。
【0092】
続いて、図7(b)に示すように(図7(b-1)は降順に並び替えられている例、図7(b-2)は昇順に並び替えられている例)、受信装置5における誤り訂正復号部56は、スタフィングビット付加部55から得られる符号化データについて、可変パケットの長さ方向と直交する方向に、送信サーバ6側の誤り訂正符号化部63に対応する誤り訂正フレームを再構成し、尤度判定を行い、送信サーバ6におけるLDPC符号の誤り訂正符号化処理に対応する符号化率に応じた検査行列テーブルを基に復号処理を行って誤り訂正復号後のデータを生成する。
【0093】
このように、スタフィングビット付加部55によるスタッフィングビットの付加と、誤り訂正復号部56による、可変パケットの長さ方向と直交する方向にLDPC復号処理により、IP網8上で消失したIPパケットのビット部分を既知のスタッフィングビットで高い尤度で補償することができ、並び替え及びスタッフィングビットの付加を行わない場合と比較して、既知情報が増えるためLDPC復号性能を向上させることが可能となり、消失したIPパケットを復元することができる。
【0094】
続いて、図8(a)に示すように(図8(a-1)は降順に並び替えられている例、図8(a-2)は昇順に並び替えられている例)、受信装置5におけるスタフィングビット除去部57は、誤り訂正復号後のデータから、スタフィングビット付加部55で付加したスタッフィングビットを除去して誤り訂正後の可変長パケットを抽出する。
【0095】
続いて、図8(b)に示すように、受信装置5における可変長パケット整列部58は、可変長パケット毎に付加されていたシーケンスヘッダに記述されるシーケンス番号(図示する例では、“1”~“22814”として例示)に基づき、送信サーバ6側の可変パケット整列部61による規則的な並び替えを元に戻す処理を行い、即ち送信データの可変長パケットを復元するように並び替え、各可変長パケットに付加されていたシーケンスヘッダを削除して受信データを抽出し、受信データ切替/合成部59に出力する。また、可変長パケット整列部58は、同一パケット長の可変長パケットが複数あるときは、時系列で先行順(又は後行順とすることも可能)とする送受間で予め定めた順序で並び替える。
【0096】
最後に、受信装置5における受信データ切替/合成部59は、誤り訂正復号部52から放送伝送路経由で得られる放送受信による受信データと、可変長パケット整列部58から得られるIP網8経由の受信データの切り替え、又は合成を行って再生可能に外部出力する。
【0097】
(補足)
ところで、上述した実施形態の例では、可変長パケット整列部61において、入力順の所定数の可変パケットの並び替えを規則的に行うとして説明したが、当該入力順の所定数の可変パケットが全て同一のパケット長である場合、当該並び替えを行わず、パケット順序を示すシーケンスヘッダを付加した上で、単に当該入力順の所定数の可変パケットを抽出して、時系列で先行順(又は後行順とすることも可能)とする送受間で予め定めた順序で誤り訂正符号化部63に出力する。つまり、当該入力順の所定数の可変パケットが全て同一のパケット長であるため、スタッフィングビット付加部62の処理を省略できる。また、スタッフィングビット付加部62の処理を省略したときはスタッフィングビット除去部64の処理も省略することができる。そして、IPパケット生成部65は、上述したように、誤り訂正処理後のデータからなるIPパケットを順次、受信装置5に向けて送信する。
【0098】
この場合の受信装置5においても、IPパケット受信部54にて順次受信したIPパケットのうちシーケンスヘッダを参照して当該所定数の可変パケットを抽出し、スタッフィングビット付加部55の処理を省略して誤り訂正復号部56に出力する。このときの誤り訂正復号部56は、当該所定数の可変パケットについて誤り訂正復号処理を行い、誤り訂正復号後のデータについて、スタッフィングビット除去部57の処理は省略し、可変長パケット整列部58に出力する。そして、可変長パケット整列部58では、当該所定数の可変パケットの並び順で受信データ切替/合成部59に出力する。
【0099】
従って、処理対象とする当該所定数の可変パケットが全て同一のパケット長である時は、スタッフィングビットの付加及び除去に係る処理は省略することができる。更に、送信サーバ6及び受信装置5間で、伝送される放送番組の送信データを構成する全てのIPパケットが全て同一のパケット長であると予め分かっており、且つ誤り訂正符号に使用されている符号化率も分かっている場合には、送信サーバ6によるシーケンスヘッダの付加及び受信装置5によるシーケンスヘッダの除去に関する処理も省略することができる。
【0100】
以上のように、本発明による一実施形態による送信サーバ6は、送信装置2(或いは送信装置3)により放送伝送路経由で伝送する放送番組の送信データを、可変長パケットの形式で入力し、送信装置2(或いは送信装置3)で用いる符号長が一定の誤り訂正フレームで処理する誤り訂正符号化方式と同一の符号化方式に基づき、且つ送信装置2(或いは送信装置3)とは独立した符号化率で誤り訂正符号化処理を行い、IPパケット化して、IP網8経由で、受信装置5に向けて送信する。
【0101】
また、送信サーバ6は、入力した当該可変長パケットに対し、パケット順序を示すシーケンスヘッダを付加し、誤り訂正符号化の符号化率に依存する所定数の可変パケットの並び替えを規則的(降順又は昇順)に行うことでスタッフィングビットを受信装置5側で予測可能にして付加し、可変パケットの長さ方向と直交する方向に誤り訂正符号化処理を行い、当該スタッフィングビットを除去して当該誤り訂正符号化後の情報を可変パケットの長さ方向に順次、IPパケット化して、IP網8経由で受信装置5に向けて送信する。
【0102】
特に、送信装置2において、12GHz帯における衛星放送用周波数のひっ迫に基づき、大容量伝送を可能とする21GHz帯衛星周波数の放送伝送路を利用して、且つ高度衛星放送方式のように一定の符号長44880ビットのLDPC符号を用いて、放送番組の送信データを受信装置5に向けて送信することが想定される。このような場合に、本発明による一実施例による送信サーバ6は、IP網8経由で伝送する送信データに対し、送信装置2におけるLDPC符号と同一の処理に基づき、且つ送信装置2(或いは送信装置3)とは独立した符号化率で誤り訂正符号化を行う。
【0103】
このため、放送番組の送信データの伝送容量が大容量を要する場合でも伝送可能となり、放送とIP伝送との間で共通する誤り訂正符号化方式とすることで放送とIP伝送の親和性の高くなり、更に、放送伝送路に係る伝送条件の悪化による受信装置5側の受信不良を補償しつつ、IP網8で生じるIPパケットの消失を補償することができる。
【0104】
そして、本発明による一実施形態による受信装置5は、送信装置2(又は送信装置3)からの放送受信とは別に、送信サーバ6からIP網8経由で当該放送番組に係るIPパケットを受信し、誤り訂正フレームを構成するための予め定められたパケット数のIPパケットから順次、格納されている符号化データとして、当該シーケンスヘッダ及び可変長パケット、並びにパリティビットの情報を抽出する。続いて、受信装置5は、各可変長パケットの並びの規則性から、送信サーバ6側と対応するスタッフィングビットを予測して付加し、送信サーバ6における誤り訂正符号化に対応する誤り訂正復号を行う。そして、受信装置5は、誤り訂正復号後に受信側で付加したスタッフィングビットを除去して、シーケンスヘッダの情報を基に、送信サーバ6による規則的な並び替えを元に戻す並び替えを行い、当該並び替え後の可変パケットから受信データを抽出し、放送受信による受信データとIP網8経由の受信データの切り替え、又は合成を行って再生可能に外部出力する。
【0105】
従って、本発明による一実施形態による受信装置5は、放送受信とは別に、送信サーバ6から受信したデータに対し、誤り訂正の訂正精度を高めるように作用するスタッフィングビットを、パケット消失しているにも関わらず容易に予測し、分断することなく連続するスタッフィングビットを付加することが可能となり、送信側に対応する誤り訂正復号を行うことができる。
【0106】
これにより、本発明による一実施形態による受信装置5は、スタッフィングビットを用いずに誤り訂正処理を施したIPパケットを受信する形態と比較して、IP網8で消失した当該放送番組に係るIPパケットからの受信データの復号性能を向上させることができる。従って、本発明に係る受信装置は、放送伝送路で受信不良となった放送番組に係る受信データや、IP網で消失した当該放送番組に係るIPパケットからの受信データを基に、効率よく、且つ精度よく、放送番組のデータを復元することができる。
【0107】
上述した一実施形態及び一実施例に関して、送信サーバ6として機能するコンピュータの各手段を機能させるためのプログラムを好適に用いることができる。また、受信装置5におけるIPパケットの受信処理に係るIPパケット受信部54、スタフィングビット付加部55、誤り訂正復号部56、スタフィングビット除去部57、可変長パケット整列部58、及び受信データ切替/合成部59の各手段をコンピュータにより機能させるためのプログラムを好適に用いることができる。具体的には、各手段を制御するための制御部をコンピュータ内の中央演算処理装置(CPU)で構成でき、且つ、各手段を動作させるのに必要となるプログラムを適宜記憶する記憶部を少なくとも1つのメモリで構成させることができる。即ち、そのようなコンピュータに、CPUによって該プログラムを実行させることにより、上述した各手段の有する機能を実現させることができる。更に、各手段の有する機能を実現させるためのプログラムを、前述の記憶部(メモリ)の所定の領域に格納させることができる。そのような記憶部は、装置内部のRAM又はROMなどで構成させることができ、或いは又、外部記憶装置(例えば、ハードディスク)で構成させることもできる。また、そのようなプログラムは、コンピュータで利用されるOS上のソフトウェア(ROM又は外部記憶装置に格納される)の一部で構成させることができる。更に、そのようなコンピュータに、各手段として機能させるためのプログラムは、コンピュータが読取り可能な記録媒体に記録することができる。また、上述した各手段をハードウェア又はソフトウェアの一部として構成させ、各々を組み合わせて実現させることもできる。
【0108】
上述の実施例については代表的な例として説明したが、本発明の趣旨及び範囲内で、多くの変更及び置換することができることは当業者に明らかである。従って、本発明は、上述の一実施形態及び一実施例によって制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲によってのみ制限される。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明によれば、放送番組の大容量伝送のサービスを可能とし、放送伝送路に係る伝送条件の悪化による受信不良を補償してデータを伝送可能とする伝送システムを構成することができるので、放送番組の大容量伝送を行う用途に有用である。
【符号の説明】
【0110】
1 伝送システム
2 衛星放送伝送路用の送信装置
2a 衛星放送伝送路用の送信アンテナ
3 地上放送伝送路用の送信装置
3a 地上放送伝送路用の送信アンテナ
4 放送衛星
5 受信装置
5a 衛星放送伝送路用の受信アンテナ
5b 地上放送伝送路用の受信アンテナ
6 送信サーバ
8 IP網
21 誤り訂正符号化部
22 変調部
51 復調部
52 誤り訂正復号部
53 検査行列テーブル格納部
54 IPパケット受信部
55 スタフィングビット付加部
56 誤り訂正復号部
57 スタフィングビット除去部
58 可変長パケット整列部
59 受信データ切替/合成部
61 可変長パケット整列部
62 スタッフィングビット付加部
63 誤り訂正符号化部
64 スタッフィングビット除去部
65 IPパケット生成部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8