IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 田中貴金属工業株式会社の特許一覧

特許7307862金ナノシェルを持つコアシェルナノ粒子及びその製造方法
<>
  • 特許-金ナノシェルを持つコアシェルナノ粒子及びその製造方法 図1
  • 特許-金ナノシェルを持つコアシェルナノ粒子及びその製造方法 図2
  • 特許-金ナノシェルを持つコアシェルナノ粒子及びその製造方法 図3
  • 特許-金ナノシェルを持つコアシェルナノ粒子及びその製造方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-04
(45)【発行日】2023-07-12
(54)【発明の名称】金ナノシェルを持つコアシェルナノ粒子及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 1/18 20220101AFI20230705BHJP
   B22F 1/102 20220101ALI20230705BHJP
   B22F 9/00 20060101ALI20230705BHJP
   B22F 9/18 20060101ALI20230705BHJP
   B82Y 30/00 20110101ALI20230705BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20230705BHJP
   B22F 1/00 20220101ALN20230705BHJP
   B22F 1/0545 20220101ALN20230705BHJP
【FI】
B22F1/18
B22F1/102
B22F9/00 A
B22F9/00 B
B22F9/18
B82Y30/00
B82Y40/00
B22F1/00 K
B22F1/0545
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022575200
(86)(22)【出願日】2022-08-26
(86)【国際出願番号】 JP2022032179
【審査請求日】2022-12-06
(31)【優先権主張番号】P 2021138003
(32)【優先日】2021-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】509352945
【氏名又は名称】田中貴金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100189131
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 拓郎
(74)【代理人】
【識別番号】100182486
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 正展
(74)【代理人】
【識別番号】100147289
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 裕子
(72)【発明者】
【氏名】岸 寛
【審査官】中西 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-104751(JP,A)
【文献】国際公開第2017/086452(WO,A1)
【文献】特開2014-083109(JP,A)
【文献】特開2012-102345(JP,A)
【文献】国際公開第2018/038086(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/116812(WO,A2)
【文献】特開2008-038180(JP,A)
【文献】特開2008-037884(JP,A)
【文献】特開2008-045024(JP,A)
【文献】TANG, Mingyi et. al.,A facile approach to fabricate Au nanoparticles loaded SiO2 microspheres for catalytic reduction of,Materials Chemistry and Physics,NL,ELSEVIER,2015年06月02日,Vol. 162,p.31-40
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00 - 9/30
Science Direct
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア粒子表面に金ナノシェル及び保護剤を有するコアシェル粒子の製造方法であって、 (a)コア粒子の溶液と金ナノクラスターの溶液を混合する工程、
(b)保護剤及び還元剤を加えて攪拌し、金錯体を加えてコア粒子表面に金ナノシェルを形成する工程
(c)前記工程(b)で生成したコアシェル粒子を回収する工程
を含み、
前記還元剤が、化学式(1)
NR ・・・(1)
(式中、RはC~Cヒドロキシアルキル基であり、RはC~Cカルボキシアルキル基であり、RはC~Cヒドロキシアルキル基、又はC~Cカルボキシアルキル基である。)
の化合物であることを特徴とする、コア粒子表面に金ナノシェルをもつコアシェル粒子の製造方法。
【請求項2】
前記還元剤が、ビシン又はN,N-ビス(カルボキシメチル)エタノールアミンである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記還元剤が、ビシンである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記保護剤が、平均重合度300~700の部分けん化型ポリビニルアルコールであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記保護剤が、平均重合度300~700の部分けん化型のスルホン酸基を導入した変性ポリビニルアルコールであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記工程(b)コア粒子表面に金ナノシェルを形成する工程が、金イオン濃度5mM以上で行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記工程(b)コア粒子表面に金ナノシェルを形成する工程が、室温で10分以内に行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記コア粒子の直径が50nm~300nmであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記金ナノシェルの厚さが15nm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
コア粒子表面に金ナノシェル及び保護剤を有するコアシェル粒子であって、前記金ナノシェルの厚さが15nm以下であり、前記コア粒子の直径が50nm~300nmであり、前記保護剤が平均重合度300~700の部分けん化型ポリビニルアルコールであることを特徴とするコアシェルナノ粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金ナノシェルを持つコアシェルナノ粒子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金ナノシェルを持つコアシェルナノ粒子は所定の波長、特に赤色光から近赤外光に対する表面プラズモン共鳴を示す呈色剤として知られており、特許文献1には光学材料としての金ナノシェルを持つコアシェルナノ粒子が開示されている。また、非特許文献1にはバイオマーカーとしての金ナノシェルを持つコアシェルナノ粒子が開示されている。
【0003】
しかしながら、従来の金ナノシェルを持つコアシェルナノ粒子の製造方法では、非特許文献1のように製造時の反応系における粒子濃度が非常に希薄であるという問題点がある。コアシェルナノ粒子製造において高い粒子濃度での製造法が重要である理由は、コアシェルナノ粒子を高濃度で製造するほどロット当たり得られるコアシェルナノ粒子が多くなり、コスト面及び環境負荷面において長所を有するからである。
【0004】
また、従来の金ナノシェルを持つコアシェルナノ粒子の製造方法では、コアシェルナノ粒子を分散安定化するための保護剤の検討が不十分であり、十分な分散安定性及び光学特性を示すコアシェルナノ粒子が得られるように最適化されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-212268
【非特許文献】
【0006】
【文献】Chem.Sci.,2017,8,3038
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の金ナノシェルを持つコアシェルナノ粒子の製造方法は粒子濃度が希薄な、すなわち原料となる金イオン濃度が希薄な反応系として設計されていた。本発明は、従来の製造方法よりも原料となる金イオン濃度が高濃度な反応系で行える金ナノシェルを持つコアシェルナノ粒子の製造方法、及び当該製造方法によって製造される高い分散安定性を有する金ナノシェルを持つコアシェルナノ粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題を解決するため、本発明者らは、金ナノシェルを持つコアシェルナノ粒子の原料となる金イオンを還元する還元剤の選定を行い、また、選定した還元剤を使用した場合に得られるコアシェルナノ粒子を分散安定化する保護剤を鋭意検討し、本発明に至った。
すなわち、本発明は保護剤を有する金ナノシェルを持つコアシェルナノ粒子であって、水溶液中もしくは水と任意に混和する極性溶媒中での分散安定性が高く、赤色光から近赤外光に対する表面プラズモン共鳴を示す金ナノシェルを持つコアシェルナノ粒子及びその製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一つの態様では、本発明の金ナノシェルを持つコアシェルナノ粒子の製造方法は、製造過程で用いる還元剤が次の化学式(1):
NR ・・・(1)
(式中、RはC~Cヒドロキシアルキル基であり、RはC~Cカルボキシアルキル基であり、RはC~Cヒドロキシアルキル基、又はC~Cカルボキシアルキル基である。)
の化合物であることを特徴とする。また、別の態様では、本発明の金ナノシェルを持つコアシェルナノ粒子は、前記還元剤を使用した時に製造される金ナノシェルを持つコアシェルナノ粒子を分散安定化するための保護剤が平均重合度約500の部分けん化型ポリビニルアルコールであることを特徴とする。
本発明の方法で製造された金ナノシェルを持つコアシェルナノ粒子は水中及び水と任意に混和する極性溶媒中での分散安定性に優れ、赤色光から近赤外光に対する表面プラズモン共鳴を示す。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明のコアシェルナノ粒子、及び比較例の粒子の吸光度スペクトルである。
図2図2は、本発明のコアシェルナノ粒子、及び比較例の粒子のTEM像である。
図3図3は、本発明のコアシェルナノ粒子、及び比較例の粒子の吸光度スペクトルである。
図4図4は、本発明のコアシェルナノ粒子、及び比較例の粒子の吸光度スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
一つの態様では、本発明は以下の通りである。
[1]
コア粒子表面に金ナノシェル及び保護剤を有するコアシェル粒子の製造方法であって、 (a)コア粒子の溶液と金ナノクラスターの溶液を混合する工程、
(b)保護剤及び還元剤を加えて攪拌し、金錯体を加えてコア粒子表面に金ナノシェルを形成する工程
(c)前記工程(b)で生成したコアシェル粒子を回収する工程
を含み、
前記還元剤が、化学式(1)
NR ・・・(1)
(式中、RはC~Cヒドロキシアルキル基であり、RはC~Cカルボキシアルキル基であり、RはC~Cヒドロキシアルキル基、又はC~Cカルボキシアルキル基である。)
の化合物であることを特徴とする、コア粒子表面に金ナノシェルをもつコアシェル粒子の製造方法。
[2]
前記還元剤が、ビシン又はN,N-ビス(カルボキシメチル)エタノールアミンである、[1]に記載の方法。
[3]
前記還元剤が、ビシンである、[1]に記載の方法。
[4]
前記保護剤が、平均重合度300~700の部分けん化型ポリビニルアルコールであることを特徴とする、[1]に記載の方法。
[5]
前記保護剤が、平均重合度300~700の部分けん化型のスルホン酸基を導入した変性ポリビニルアルコールであることを特徴とする、[1]に記載の方法。
[6]
前記工程(b)コア粒子表面に金ナノシェルを形成する工程が、金イオン濃度5mM以上で行われることを特徴とする、[1]に記載の方法。
[7]
前記工程(b)コア粒子表面に金ナノシェルを形成する工程が、室温で10分以内に行われることを特徴とする、[1]に記載の方法。
[8]
前記コア粒子の直径が50nm~300nmであることを特徴とする、[1]に記載の方法。
[9]
前記金ナノシェルの厚さが15nm以下であることを特徴とする、[1]に記載の方法。
[10]
コア粒子表面に金ナノシェル及び保護剤を有するコアシェル粒子であって、前記金ナノシェルの厚さが15nm以下であり、前記コア粒子の直径が50nm~300nmであり、前記保護剤が平均重合度300~700の部分けん化型ポリビニルアルコールであることを特徴とするコアシェルナノ粒子。
【0012】
本明細書において、「金ナノシェル」とは、コア粒子表面に形成された金のシェルの厚さが15nm以下のシェルを意味する。
【0013】
本明細書において、「コアシェルナノ粒子」とは、ある材料からなるコア粒子表面に別の材料からなるシェルが形成された、粒子径が1μm以下の粒子を意味する。
【0014】
本明細書において、「還元剤」とは、金錯体と還元反応を起こすことで金ナノシェルを析出させる有機化合物である。
【0015】
本明細書において、「保護剤」とは、金ナノシェルを持つコアシェルナノ粒子表面に吸着することで水溶液中でのナノ粒子の分散安定性を保持する水溶性高分子化合物である。
水溶性高分子化合物としては、これらに限定されるものではないが、ポリビニルアルコール、デキストラン、イヌリン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリオキサゾリンなどが挙げられる。
本明細書において、高分子化合物の例として挙げられる化合物にはそれぞれ置換基を有している化合物が含まれる。高分子化合物の置換基としては、カルボニル基、スルホン酸基などが挙げられる。
保護剤の重合度は公知の方法により測定することができる。一例として、ポリビニルアルコールの重合度はJIS K6726-1994に準じて溶液粘度測定法によって測定することができる。
【0016】
本明細書において、「コア粒子」とは、金ナノシェルを形成するためのテンプレート粒子である無機物もしくは有機ポリマーである。無機物もしくは有機ポリマーとしては、これらに限定されるものではないが、二酸化ケイ素、二酸化チタン、硫化亜鉛、銀、銅、ポリスチレンなどが挙げられる。
本明細書において、「コア粒子の直径」とは、透過型電子顕微鏡(TEM)によって観察される所定数のコア粒子の粒径の平均値である。
【0017】
本明細書において、「種粒子」とは、コア粒子表面にてナノシェルを形成するための出発点となる粒子径2nm程度の粒子であり、好ましくは粒子径2nm程度の金ナノクラスターである。
【0018】
本発明の一つの実施態様は、金ナノシェルを持つコアシェルナノ粒子の製造方法であって、下記工程(a)~(c):
(a)コア粒子の溶液と金ナノクラスターの溶液を混合する工程、
(b)保護剤及び還元剤を加えて攪拌し、金錯体を加えてコア粒子表面に金ナノシェルを形成する工程
(c)前記工程(b)で生成したコアシェルナノ粒子を回収する工程
をこの順に含む。
【0019】
前記工程(b)の「還元剤」は、式(1)
NR ・・・(1)
(式中、RはC~Cヒドロキシアルキル基であり、RはC~Cカルボキシアルキル基であり、RはC~Cヒドロキシアルキル基、又はC~Cカルボキシアルキル基である。)
の化合物が好ましく、より好ましくはビシン又はN,N-ビス(カルボキシメチル)エタノールアミンであり、さらに好ましくはビシンである。
前記工程(b)の還元剤の投入量は、金に対する物質量比で、好ましくは6.7~40倍であり、より好ましくは10~25倍である。
前記工程(b)の還元剤のpHは、好ましくは7.7~8.6であり、より好ましくは7.7~8.3である。
前記工程(b)の「保護剤」は、好ましくはポリビニルアルコール、デキストラン、イヌリン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリオキサゾリンであり、より好ましくはポリビニルアルコールである。
保護剤であるポリビニルアルコールは部分けん化型であることが好ましく、また平均重合度1000以下が好ましく、平均重合度300~700がより好ましく、平均重合度500が更に好ましい。
一つの実施態様では、本発明のポリビニルアルコールは日本酢ビ・ポバール株式会社製のASP-05(平均重合度500部分けん化型、スルホン酸基導入変性ポリビニルアルコール)である。
前記工程(b)の完了時の溶液全体に対する保護剤の重量%(以下、保護剤終濃度と呼ぶ)は、好ましくは0.01%~2%であり、より好ましくは0.4%~1%である。
前記工程(b)の「金錯体」は好ましくは塩化金酸、シアノ金酸塩、亜硫酸金であり、より好ましくは塩化金酸である。
前記工程(b)の金錯体濃度は好ましくは2mM~14mM、より好ましくは2mM~10mMである。
【0020】
本発明の一つの実施態様は、ビシンを還元剤として使用して製造された、保護剤で被覆された金ナノシェルを持つコアシェルナノ粒子であって、前記保護剤がポリビニルアルコールであるコアシェルナノ粒子に関する。
前記保護剤は好ましくは部分けん化型ポリビニルアルコールであり、より好ましくは前述の特徴を持つスルホン酸化変性ポリビニルアルコールである。
【0021】
本発明の別の実施態様は、金ナノシェルを持つコアシェルナノ粒子が水溶液中に分散した分散液に関する。
【0022】
[シェル厚の見積り]
本明細書において、「シェル厚」とは、以下の手法により見積もられる値である。
本発明の金ナノシェルを持つコアシェルナノ粒子が水溶液中に分散した分散液は赤色光から近赤外光に対する表面プラズモン共鳴を示す。
本発明のコアシェルナノ粒子分散液のプラズモン共鳴は可視光~近赤外光までの吸光度スペクトルを測定することによって定量化でき、例えば極大吸収波長の実測値と計算値とを比較することで、狙いのシェル厚のコアシェルナノ粒子が形成されているかを見積もることができる。
例えばコア粒子として直径55nmのSiOを用いた際、極大吸収波長の計算値は、シェル厚9nmの場合は644nmであり、シェル厚10nmの場合は632nmであり、シェル厚11nmの場合は624nmである。よって、吸光度スペクトルを測定した結果、コアシェルナノ粒子分散液の極大吸収波長が624nm~644nmの間にあれば、おおよそ9nm~11nmの厚さの金ナノシェルが形成されていることが示唆される。
また、例えばコア粒子として直径80nmのSiOを用いた際、極大吸収波長の計算値は、シェル厚9nmの場合は724nmであり、シェル厚10nmの場合は706nmであり、シェル厚11nmの場合は694nmである。よって、吸光度スペクトルを測定した結果、コアシェルナノ粒子分散液の極大吸収波長が694nm~724nmの間にあれば、おおよそ9nm~11nmの厚さの金ナノシェルが形成されていることが示唆される。
また、例えばコア粒子として直径200nmのSiOを用いた際、極大吸収波長の計算値は、シェル厚9nmの場合は790nmであり、シェル厚10nmの場合は772nmであり、シェル厚11nmの場合は754nmである。よって、吸光度スペクトルを測定した結果、コアシェルナノ粒子分散液の極大吸収波長が754nm~790nmの間にあれば、おおよそ9nm~11nmの厚さの金ナノシェルが形成されていることが示唆される。
【0023】
本発明の金ナノシェルを持つコアシェルナノ粒子は、産業上有用な様々な用途に用いることができ、例えばプラズモン共鳴を利用した呈色センサー及びバイオマーカー、赤色光~近赤外光を吸収する光学特性を利用した光電変換材料及び光熱変換材料、水分解反応における光触媒のための近赤外光集光材料、フォトアップコンバージョン用担体として用いることができる。
本明細書及び請求項において使用される成分及び属性などの数量を表す数字は、「約」という修飾子によって修飾していると解釈され得る。用語「約」は、本発明の本質を変更しない範囲で誤差又は変動を含み得ることを意味し、特段の説明がない限りにおいて、数値の±10%の変動を許容することを意味する。
【実施例
【0024】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明の範囲は下記の実施例に示す態様に限定されることはない。
本明細書の実施例及び比較例において、特記がない限り、温度は液温を意味する。また、特記が無い限り、%は重量%を意味する。
【0025】
実施例中、特記がない限り、以下の会社製の試薬を使用した。
エタノール(富士フイルム和光純薬株式会社製)
オルトけい酸テトラエチル(東京化成工業株式会社製)
アンモニア水(富士フイルム和光純薬株式会社製)
塩酸(富士フイルム和光純薬株式会社製)
3-アミノプロピルトリメトキシシラン(東京化成工業株式会社製)
塩化金酸水溶液(田中貴金属工業株式会社製)
水素化ホウ素ナトリウム(富士フイルム和光純薬株式会社製)
ビシン(株式会社同仁化学研究所製)
【0026】
実施例中、特記がない限り、以下の機器を使用した。
ロータリーエバポレーター(東京理化機械株式会社製、N-1300)
乾燥機(ヤマト科学株式会社製、DV600)
遠心分離機(久保田商事株式会社製、モデル3500)
【0027】
[実施例1]
(SiOコア粒子の合成工程)
エタノール150mL、オルトけい酸テトラエチル7.5mLを混合した溶液を、50℃で30分間攪拌した。前記溶液を50℃で攪拌しながら、重量濃度3%アンモニア水を30mL投入し、50℃で2時間攪拌し、粗製のSiO粒子分散液を得た。
前記SiO粒子分散液に超純水を50mL加え、ロータリーエバポレーターにて減圧濃縮し、アンモニアとエタノールを除去した。濃縮後の溶液を脱イオン水にて一晩透析し、粒子径約55nmのSiO粒子分散液を得た。
(SiOコア粒子表面へのアミノ基導入工程)
エタノール7mL、濃度1M塩酸2mL、及び3-アミノプロピルトリメトキシシラン0.35mLを混合した溶液を、25℃にて攪拌しながら塩酸0.1mmol、および0.2gのSiO粒子を含むSiO粒子分散液を投入した。
混合溶液を70℃に設定した乾燥機中にて4時間攪拌を行い反応させた。
反応終了後、反応液を室温にて静置し放熱させた。
反応液を遠心分離機にて遠心加速度1万5千Gで5分間遠心分離を行い、沈殿を回収した後、濃度10mM酢酸1mLに再分散させた。この洗浄作業を3回実施し、最終的に濃度10mM酢酸に分散したアミノ基導入SiO粒子分散液を得た。
(種粒子の合成工程)
超純水1.78mL、重量濃度5%のポリビニルアルコール(シグマアルドリッチジャパン合同会社製、分子量10,000)0.55mL、及び濃度15mMの塩化金酸水溶液0.17mLを投入し、4℃で10分間攪拌を行った。
前記溶液に対し、濃度0.1M水素化ホウ素ナトリウム0.25mLを投入し、4℃の氷浴中で90分間攪拌を継続した。
反応液を脱イオン水にて一晩透析し、種粒子分散液を得た。
(コア粒子表面での金ナノシェル合成工程)
容量1.5mLのマイクロチューブに種粒子分散液を500μL、重量濃度1%に調製したアミノ基導入SiO粒子分散液を70μL投入し、30秒間超音波照射を行った。
超音波分散処理後の溶液100μLを容量6mLのガラスバイアル中に投入し、磁気攪拌子で攪拌しながら脱イオン水を100μL、重量濃度5%のポリビニルアルコール(日本酢ビ・ポバール株式会社製JP-10、平均重合度1000部分けん化型)を200μL、pH8に調製した濃度0.6Mビシン(還元剤1、株式会社同仁化学研究所製)を250μL投入した。
前記溶液に対して、濃度15mMの塩化金酸水溶液を0.5mL投入し、25℃で10分間攪拌を継続した。
反応溶液に対して、遠心分離機にて遠心加速度4,000Gで5分間遠心分離を行って沈殿を回収し、脱イオン水0.5mLに再分散させる洗浄操作を3回繰り返した。最終的に脱イオン水0.5mLに分散させ、金ナノシェルを持つコアシェルナノ粒子分散液を得た。
得られたコアシェルナノ粒子分散液の吸光度を計測した。
【0028】
[実施例2]
(コア粒子表面での金ナノシェル合成工程)の、ビシン(還元剤1)をN,N-ビス(カルボキシメチル)エタノールアミン(還元剤2)としたこと、以外は実施例1と同様に調製し、金ナノシェルを持つコアシェルナノ粒子分散液を得た。
【0029】
[比較例1]
(コア粒子表面での金ナノシェル合成工程)の、ビシン(還元剤1)を2-ヒドロキシ-3-モルホリノプロパンスルホン酸(還元剤3、株式会社同仁化学研究所製)としたこと、以外は実施例1と同様に調製し、金ナノシェルを持つコアシェルナノ粒子分散液を得た。
【0030】
[比較例2]
(コア粒子表面での金ナノシェル合成工程)の、ビシン(還元剤1)をビス(2-ヒドロキシエチル)アミノトリス(ヒドロキシメチル)メタン(還元剤4、株式会社同仁化学研究所製)としたこと、以外は実施例1と同様に調製し、金ナノシェルを持つコアシェルナノ粒子分散液を得た。
【0031】
[比較例3]
(コア粒子表面での金ナノシェル合成工程)の、ビシン(還元剤1)を1,3-ジアミノ-2-プロパノール-N,N,N‘,N’-四酢酸(還元剤5、東京化成工業株式会社製)としたこと、以外は実施例1と同様に調製し、金ナノシェルを持つコアシェルナノ粒子分散液を得た。
【0032】
[比較例4]
(コア粒子表面での金ナノシェル合成工程)の、ビシン(還元剤1)をN-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン-N,N’,N’-三酢酸(還元剤6、東京化成工業株式会社製)としたこと、以外は実施例1と同様に調製し、金ナノシェルを持つコアシェルナノ粒子分散液を得た。
【0033】
[比較例5]
(コア粒子表面での金ナノシェル合成工程)の、ビシン(還元剤1)を1,3-ビス[トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ]プロパン(還元剤7、東京化成工業株式会社製)としたこと、以外は実施例1と同様に調製し、金ナノシェルを持つコアシェルナノ粒子分散液を得た。
【0034】
[比較例6]
(コア粒子表面での金ナノシェル合成工程)の、ビシン(還元剤1)をN,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-アミノエタンスルホン酸(還元剤8、株式会社同仁化学研究所製)としたこと、以外は実施例1と同様に調製し、金ナノシェルを持つコアシェルナノ粒子分散液を得た。
【0035】
[比較例7]
(コア粒子表面での金ナノシェル合成工程)の、ビシン(還元剤1)をN-(2-アセトアミド)イミノ二酢酸(還元剤9、株式会社同仁化学研究所製)としたこと、以外は実施例1と同様に調製し、金ナノシェルを持つコアシェルナノ粒子分散液を得た。
【0036】
[比較例8]
(コア粒子表面での金ナノシェル合成工程)の、ビシン(還元剤1)を4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンプロパンスルホン酸(還元剤10、株式会社同仁化学研究所製)としたこと、以外は実施例1と同様に調製し、金ナノシェルを持つコアシェルナノ粒子分散液を得た。
【0037】
[比較例9]
(コア粒子表面での金ナノシェル合成工程)の、ビシン(還元剤1)を4-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-1-イルエタンスルホン酸(還元剤11、株式会社同仁化学研究所製)としたこと、以外は実施例1と同様に調製し、金ナノシェルを持つコアシェルナノ粒子分散液を得た。
【0038】
[比較例10]
(コア粒子表面での金ナノシェル合成工程)の、ビシン(還元剤1)を4-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-1-(2-ヒドロキシプロパン-3-スルホン酸)水和物(還元剤12、株式会社同仁化学研究所製)としたこと、以外は実施例1と同様に調製し、金ナノシェルを持つコアシェルナノ粒子分散液を得た。
【0039】
[比較例11]
(コア粒子表面での金ナノシェル合成工程)の、ビシン(還元剤1)をN-トリス(ヒドロキシメチル)メチルグリシン(還元剤13、株式会社同仁化学研究所製)としたこと、以外は実施例1と同様に調製し、金ナノシェルを持つコアシェルナノ粒子分散液を得た。
【0040】
[比較例12]
(コア粒子表面での金ナノシェル合成工程)の、ビシン(還元剤1)をトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(還元剤14、富士フイルム和光純薬株式会社)としたこと、以外は実施例1と同様に調製し、金ナノシェルを持つコアシェルナノ粒子分散液を得た。
【0041】
[比較例13]
(コア粒子表面での金ナノシェル合成工程)の、ビシン(還元剤1)をL-セリン(還元剤15、東京化成工業株式会社製)としたこと、以外は実施例1と同様に調製し、金ナノシェルを持つコアシェルナノ粒子分散液を得た。
【0042】
[比較例14]
(コア粒子表面での金ナノシェル合成工程)の、ビシン(還元剤1)をL(+)-アスコルビン酸ナトリウム(還元剤16、富士フイルム和光純薬株式会社)としたこと、以外は実施例1と同様に調製し、金ナノシェルを持つコアシェルナノ粒子分散液を得た。
【0043】
[実施例3]
(SiOコア粒子の合成工程)
反応温度を45℃とした以外は実施例1と同様に行い、粒子径80nmのSiO粒子分散液を得た。
(SiOコア粒子表面へのアミノ基導入工程)
前記粒子径80nmのSiO粒子分散液を用いる以外は実施例1と同様に実施し、アミノ基導入SiO粒子分散液を得た。
(種粒子の合成工程)
実施例1と同様に実施し、種粒子分散液を得た。
(コア粒子表面での金ナノシェル合成工程)
容量1.5mLのマイクロチューブに種粒子分散液を500μL、重量濃度1%に調製したアミノ基導入SiO粒子分散液を100μL投入し、30秒間超音波照射を行った。
超音波分散処理後の溶液100μLを容量6mLのガラスバイアル中に投入し、磁気攪拌子で攪拌しながら脱イオン水を390μL、重量濃度5%のポリビニルアルコール(日本酢ビ・ポバール株式会社製DM-17、平均重合度1700部分けん化型、カルボニル基導入変性ポリビニルアルコール)を10μL、pH8に調製した濃度1Mビシンを150μL投入した。
前記溶液に対して、濃度15mMの塩化金酸水溶液を0.5mL投入し、25℃で1時間攪拌を継続した。
反応溶液に対して、遠心分離機にて遠心加速度4,000Gで5分間遠心分離を行って沈殿を回収し、脱イオン水0.5mLに再分散させる洗浄操作を3回繰り返した。最終的に脱イオン水0.5mLに分散させ、金ナノシェルを持つコアシェルナノ粒子分散液を得た。
得られたコアシェルナノ粒子分散液の吸光度を計測した。
【0044】
[実施例4]
(コア粒子表面での金ナノシェル合成工程)の脱イオン水を300μL、重量濃度5%のポリビニルアルコール(日本酢ビ・ポバール株式会社製DM-17、平均重合度1700部分けん化型、カルボニル基導入変性ポリビニルアルコール)を100μLとしたこと、以外は実施例3と同様に調製し、金ナノシェルを持つコアシェルナノ粒子分散液を得た。
【0045】
[実施例5]
(コア粒子表面での金ナノシェル合成工程)の脱イオン水を200μL、重量濃度5%のポリビニルアルコール(日本酢ビ・ポバール株式会社製DM-17、平均重合度1700部分けん化型、カルボニル基導入変性ポリビニルアルコール)を200μLとしたこと、以外は実施例3と同様に調製し、金ナノシェルを持つコアシェルナノ粒子分散液を得た。
【0046】
[実施例6]
(コア粒子表面での金ナノシェル合成工程)の脱イオン水を50μL、重量濃度5%のポリビニルアルコール(日本酢ビ・ポバール株式会社製DM-17、平均重合度1700部分けん化型、カルボニル基導入変性ポリビニルアルコール)を350μLとしたこと、以外は実施例3と同様に調製し、金ナノシェルを持つコアシェルナノ粒子分散液を得た。
【0047】
[実施例7]
(コア粒子表面での金ナノシェル合成工程)の保護剤を重量濃度5%のポリビニルアルコール(日本酢ビ・ポバール株式会社製ASP-05、平均重合度500部分けん化型、スルホン酸基導入変性ポリビニルアルコール)に変更し、脱イオン水を225μL、pH8に調製した濃度1Mビシンを125μLとしたこと、以外は実施例5と同様に調製し、金ナノシェルを持つコアシェルナノ粒子分散液を得た。
【0048】
[実施例8]
(コア粒子表面での金ナノシェル合成工程)の脱イオン水を200μL、pH8に調製した濃度1Mビシンを150μLとしたこと、以外は実施例7と同様に調製し、金ナノシェルを持つコアシェルナノ粒子分散液を得た。
【0049】
[実施例9]
(コア粒子表面での金ナノシェル合成工程)の脱イオン水を150μL、pH8に調製した濃度1Mビシンを200μLとしたこと、以外は実施例7と同様に調製し、金ナノシェルを持つコアシェルナノ粒子分散液を得た。
【0050】
[実施例10]
(コア粒子表面での金ナノシェル合成工程)の脱イオン水を0μL、pH8に調製した濃度1Mビシンを350μLとしたこと、以外は実施例7と同様に調製し、金ナノシェルを持つコアシェルナノ粒子分散液を得た。
【0051】
[実施例11]
(コア粒子表面での金ナノシェル合成工程)の濃度1MビシンのpHを7.7としたこと、以外は実施例8と同様に調製し、金ナノシェルを持つコアシェルナノ粒子分散液を得た。
【0052】
[実施例12]
(コア粒子表面での金ナノシェル合成工程)の濃度1MビシンのpHを8.3としたこと、以外は実施例8と同様に調製し、金ナノシェルを持つコアシェルナノ粒子分散液を得た。
【0053】
[実施例13]
(コア粒子表面での金ナノシェル合成工程)の濃度1MビシンのpHを8.6としたこと、以外は実施例8と同様に調製し、金ナノシェルを持つコアシェルナノ粒子分散液を得た。
【0054】
[実施例14]
(コア粒子表面での金ナノシェル合成工程)の塩化金酸水溶液の濃度を5mMにとしたこと、以外は実施例8と同様に調製し、金ナノシェルを持つコアシェルナノ粒子分散液を得た。
【0055】
[実施例15]
(コア粒子表面での金ナノシェル合成工程)の脱イオン水を10μLとし、塩化金酸溶液の濃度を25mMに、投入量を300μLとしたこと、以外は実施例8と同様に調製し、金ナノシェルを持つコアシェルナノ粒子分散液を得た。
【0056】
[実施例16]
(コア粒子表面での金ナノシェル合成工程)の脱イオン水を0μLとし、塩化金酸溶液の濃度を75mMに、投入量を100μLとしたこと、以外は実施例8と同様に調製し、金ナノシェルを持つコアシェルナノ粒子分散液を得た。
【0057】
[実施例17]
(コア粒子表面での金ナノシェル合成工程)の保護剤を重量濃度5%のポリビニルアルコール(日本酢ビ・ポバール株式会社製JP-05、平均重合度500部分けん化型)としたこと、以外は実施例8と同様に調製し、金ナノシェルを持つコアシェルナノ粒子分散液を得た。
【0058】
[比較例15]
(コア粒子表面での金ナノシェル合成工程)の脱イオン水を325μL、pH8に調製した濃度1Mビシンを25μLとしたこと、以外は実施例7と同様に調製し、金ナノシェルを持つコアシェルナノ粒子分散液を得た。
【0059】
[比較例16]
(コア粒子表面での金ナノシェル合成工程)の脱イオン水を300μL、pH8に調製した濃度1Mビシンを50μLとしたこと、以外は実施例7と同様に調製し、金ナノシェルを持つコアシェルナノ粒子分散液を得た。
【0060】
[比較例17]
(コア粒子表面での金ナノシェル合成工程)の脱イオン水を250μL、pH8に調製した濃度1Mビシンを100μLとしたこと、以外は実施例7と同様に調製し、金ナノシェルを持つコアシェルナノ粒子分散液を得た。
【0061】
[比較例18]
(コア粒子表面での金ナノシェル合成工程)の濃度1MビシンのpHを7.4としたこと、以外は実施例8と同様に調製し、金ナノシェルを持つコアシェルナノ粒子分散液を得た。
【0062】
[比較例19]
(コア粒子表面での金ナノシェル合成工程)の保護剤を重量濃度5%のポリビニルアルコール(日本酢ビ・ポバール株式会社製JF-05、平均重合度500完全けん化型)としたこと、以外は実施例8と同様に調製し、金ナノシェルを持つコアシェルナノ粒子分散液を得た。
【0063】
[比較例20]
(コア粒子表面での金ナノシェル合成工程)の保護剤を重量濃度5%のポリビニルアルコール(日本酢ビ・ポバール株式会社製JF-10、平均重合度1000部分けん化型)としたこと、以外は実施例8と同様に調製し、金ナノシェルを持つコアシェルナノ粒子分散液を得た。
【0064】
[試験例1]
実施例1~2、比較例1~14で得られた金ナノシェルを持つコアシェルナノ粒子分散液の吸光度スペクトルを吸光光度計(株式会社島津製作所、UV-1850)にて計測した。結果を表1に示す。計測した極大吸収波長の値と、前記[シェル厚の見積り]での極大吸収波長の計算値から、シェル厚9nm~11nmの金ナノシェルを持つコアシェルナノ粒子が形成されているのは実施例1~2、比較例2、比較例14であった。
【0065】
【表1】
表中の保護剤種類は、
JP-10:日本酢ビ・ポバール株式会社製ポリビニルアルコールJP-10、平均重合度1000部分けん化型
を意味する。
表中のN.D.はデータなしを意味する。
【0066】
実施例1~2、比較例2、比較例14で得られたコアシェルナノ粒子分散液の吸光度スペクトルを図1に示す。
図1に示されるように、実施例1~2で得られたコアシェルナノ粒子分散液の吸光度スペクトルは、比較例2及び比較例14のものに比べてシャープなピークを有する。これは実施例1~2のコアシェルナノ粒子のシェル厚が比較例2及び比較例14よりも均一であることを示している。
【0067】
[試験例2]
実施例1~2、比較例2、比較例14で得られたコアシェルナノ粒子の透過型電子顕微鏡像を図2に示す。透過型電子顕微鏡は日本電子株式会社、JEM2010を使用した。
実施例1~2で得られたコアシェルナノ粒子は、比較例2、比較例14で得られたコアシェルナノ粒子と比較してより緻密な金ナノシェルを有していることが分かる。
【0068】
[試験例3]
実施例3~17、比較例15~20で得られた金ナノシェルを持つコアシェルナノ粒子分散液の吸光度スペクトルを吸光光度計(日本分光株式会社、V-770)にて計測した。結果を表2に示す。
【0069】
【表2】
表中の保護剤種類は、それぞれ
DM-17:カルボニル基導入変性ポリビニルアルコール(日本酢ビ・ポバール株式会社製DM-17、平均重合度1700部分けん化型)
ASP-05:スルホン酸基導入変性ポリビニルアルコール(日本酢ビ・ポバール株式会社製ASP-05、平均重合度500部分けん化型)
JP-10:ポリビニルアルコール(日本酢ビ・ポバール株式会社製JP-10、平均重合度1000部分けん化型)
JP-05:ポリビニルアルコール(日本酢ビ・ポバール株式会社製JP-05、平均重合度500部分けん化型)
JF-05:ポリビニルアルコール(日本酢ビ・ポバール株式会社製JF-05、平均重合度500完全けん化型)
を意味する。
【0070】
実施例8、実施例17、比較例19、比較例20で得られたコアシェルナノ粒子分散液の吸光度スペクトルを図3に示す。極大吸収波長における吸光度は、実施例8が1.65、実施例17が1.57、比較例19が1.25、比較例20が1.37であった。得られたコアシェルナノ粒子の水溶液中での分散安定性が高いほど回収率が高い、つまりロスが少ないため吸光度が高くなる。本発明の特徴である高濃度での製造工程において、完全けん化型よりも部分けん化型のポリビニルアルコールが(実施例17と比較例19)、平均重合度1000よりも平均重合度500のポリビニルアルコールが(実施例17と比較例20)、保護剤として適していることが分かる。実施例8で使用している保護剤は平均重合度500部分けん化型、スルホン酸基導入変性ポリビニルアルコールであるが、スルホン酸基により通常のポリビニルアルコールよりもさらに高度にコアシェルナノ粒子が分散安定化されていることが分かる。
【0071】
[実施例18]
(SiOコア粒子の合成工程)
反応温度を4℃とした以外は実施例1と同様に行い、粒子径200nmのSiO粒子分散液を得た。
(SiOコア粒子表面へのアミノ基導入工程)
前記粒子径200nmのSiO粒子分散液を用いる以外は実施例1と同様に実施し、アミノ基導入SiO粒子分散液を得た。
(種粒子の合成工程)
実施例1と同様に実施し、種粒子分散液を得た。
(コア粒子表面での金ナノシェル合成工程)
容量1.5mLのマイクロチューブに種粒子分散液を220μL、重量濃度1%に調製したアミノ基導入SiO粒子分散液を100μL投入し、30秒間超音波照射を行った。
超音波分散処理後の溶液100μLを容量6mLのガラスバイアル中に投入し、磁気攪拌子で攪拌しながら脱イオン水を200μL、重量濃度5%のポリビニルアルコール(日本酢ビ・ポバール株式会社製JP-05、平均重合度500部分けん化型)を200μL、pH8に調製した濃度1Mビシンを150μL投入した。
前記溶液に対して、濃度15mMの塩化金酸を0.5mL投入し、25℃で1時間攪拌を継続した。
反応溶液に対して、遠心分離機にて遠心加速度1,500Gで5分間遠心分離を行って沈殿を回収し、重量濃度0.1%のポリビニルアルコール(日本酢ビ・ポバール株式会社製JP-05、平均重合度500部分けん化型)水溶液0.5mLに再分散させる洗浄操作を3回繰り返した。最終的に重量濃度0.1%のポリビニルアルコール水溶液0.5mLに分散させ、金ナノシェルを持つコアシェルナノ粒子分散液を得た。
得られたコアシェルナノ粒子分散液の吸光度を計測した。
【0072】
[実施例19]
(コア粒子表面での金ナノシェル合成工程)の脱イオン水を275μL、pH8に調製した濃度1Mビシンを75μL、濃度15mMの塩化金酸と濃度15mMの炭酸カリウムの混合水溶液を0.5mL投入したこと、以外は実施例18と同様に調製し、金ナノシェルを持つコアシェルナノ粒子分散液を得た。
【0073】
[実施例20]
(コア粒子表面での金ナノシェル合成工程)の脱イオン水を300μL、pH8に調製した濃度1Mビシンを50μL、濃度15mMの塩化金酸と濃度20mMの炭酸カリウムの混合水溶液を0.5mL投入したこと、以外は実施例18と同様に調製し、金ナノシェルを持つコアシェルナノ粒子分散液を得た。
【0074】
[比較例21]
(コア粒子表面での金ナノシェル合成工程)の脱イオン水を320μL、pH8に調製した濃度1Mビシンを30μL、濃度15mMの塩化金酸と濃度24mMの炭酸カリウムの混合水溶液を0.5mL投入したこと、以外は実施例18と同様に調製し、金ナノシェルを持つコアシェルナノ粒子分散液を得た。
【0075】
[試験例4]
実施例18~20、比較例21で得られた金ナノシェルを持つコアシェルナノ粒子分散液の吸光度スペクトルを吸光光度計(日本分光株式会社、V-770)にて計測した。結果を表3に示す。計測した極大吸収波長の値と、前記[シェル厚の見積り]での極大吸収波長の計算値から、シェル厚9nm~11nmの金ナノシェルを持つコアシェルナノ粒子が形成されているのは実施例18~20、比較例21であったが、比較例21の極大吸収波長は実施例18~20の極大吸収波長よりも短波長側に大きくシフトしていた。また、吸光度の大きさに関しては比較例21が実施例18~20よりも低いことが確認できた。
【0076】
【表3】
【0077】
実施例18、実施例19、実施例20、比較例21で得られたコアシェルナノ粒子分散液の吸光度スペクトルを図4に示す。極大吸収波長における吸光度は、実施例18が1.04、実施例19が1.18、実施例20が0.99、比較例21が0.83であった。また、極大吸収波長は実施例18が776nm、実施例19が777nm、実施例20が771nm、比較例21が755nmであった。炭酸カリウムを投入することで塩化金酸を中和し、還元剤兼pH緩衝剤であるビシンの塩化金酸に対する比率を下げられることが確認できた。実施例20での塩化金酸とビシンの比率である1:6.7を下回ると、極大吸収波長及び吸光度が大きく変化した。得られたコアシェルナノ粒子の水溶液中での分散安定性が高いほど回収率が高い、つまりロスが少ないため吸光度が高くなる。本発明の特徴である高濃度での製造工程において、中和剤として炭酸カリウムを使用した場合でも塩化金酸に対するビシンの比率が7以上必要であることが分かる。
【要約】
高い分散安定性を有する金ナノシェルを持つコアシェルナノ粒子及びその製造方法を提供する。
コア粒子表面に金ナノシェル及び保護剤を有するコアシェル粒子の製造方法であって、 (a)コア粒子の溶液と金ナノクラスターの溶液を混合する工程、
(b)保護剤及び還元剤を加えて攪拌し、金錯体を加えてコア粒子表面に金ナノシェルを形成する工程
(c)前記工程(b)で生成したコアシェル粒子を回収する工程
を含む製造方法。
図1
図2
図3
図4