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特許7307904超高圧湿式微粒子化装置及びその制御方法及び超高圧湿式微粒子化方法
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  • 特許-超高圧湿式微粒子化装置及びその制御方法及び超高圧湿式微粒子化方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-05
(45)【発行日】2023-07-13
(54)【発明の名称】超高圧湿式微粒子化装置及びその制御方法及び超高圧湿式微粒子化方法
(51)【国際特許分類】
   B02C 19/06 20060101AFI20230706BHJP
   B01J 3/00 20060101ALI20230706BHJP
   B02C 25/00 20060101ALI20230706BHJP
   B02C 19/18 20060101ALI20230706BHJP
【FI】
B02C19/06 A
B01J3/00 A
B02C25/00 B
B02C19/18 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019119935
(22)【出願日】2019-06-27
(65)【公開番号】P2021003688
(43)【公開日】2021-01-14
【審査請求日】2022-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】311006559
【氏名又は名称】吉田工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100069431
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 成則
(74)【代理人】
【識別番号】100102761
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 元也
(72)【発明者】
【氏名】吉田 敏
(72)【発明者】
【氏名】吉田 悟
(72)【発明者】
【氏名】加藤 晴久
(72)【発明者】
【氏名】中村 文子
(72)【発明者】
【氏名】清水 美貴子
【審査官】高橋 成典
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-270891(JP,A)
【文献】実開昭56-018400(JP,U)
【文献】特開2005-120150(JP,A)
【文献】特開2015-142900(JP,A)
【文献】国際公開第2017/199876(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第1618959(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B02C 9/00 - 11/08
19/00 - 25/00
B01J 3/00 - 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子が混濁された処理対象流体を1又は2のノズルから超高圧で噴出させることにより前記処理対象流体に含まれる粒子を微粒子化する超高圧湿式微粒子化部を有する超高圧湿式微粒子化装置であって、
前記処理対象流体を収容する処理対象流体収容容器と、
内周壁を摺動するプランジャを備えたシリンダと、
前記処理対象流体収容容器と前記シリンダとの間に設けられた逆止弁と、
を備え、
前記プランジャを後退させることにより前記処理対象流体収容容器内の前記処理対象流体を前記逆止弁を介して前記シリンダ内に収容し、前記プランジャを前進させることにより前記シリンダ内に収容された前記処理対象流体を前記超高圧湿式微粒子化部の前記ノズルから超高圧で噴出させて前記処理対象流体収容容器内に戻す循環処理を少なくとも一回実行する超高圧湿式微粒子化装置において、
前記処理対象流体収容容器に併設された併設容器と、
前記併設容器を前記処理対象流体収容容器と置換するように前記併設容器の配設位置を移動制御する移動制御手段と、
を更に具備し、
前記循環処理の終了後若しくは前記循環処理の間に前記移動制御手段により前記併設容器を前記処理対象流体収容容器の配設位置に移動させ、前記循環処理により処理された処理対象流体の一部をサンプリングする
ことを特徴とする超高圧湿式微粒子化装置。
【請求項2】
前記プランジャの後退及び前進は該プランジャに接続された螺子軸に係合するナット部をサーボモータにより回動することにより制御されることを特徴とする請求項1に記載の超高圧湿式微粒子化装置。
【請求項3】
前記移動制御手段は、一軸電動アクチュエータから構成される
ことを特徴とする請求項1に記載の超高圧湿式微粒子化装置。
【請求項4】
前記処理対象流体収容容器の底部に設けられ、前記処理対象流体の前記循環処理に先立って前記処理対象流体に含まれる粒子の超音波分散処理を実行する超音波発振装置、
を更に具備することを特徴とする請求項1に記載の超高圧湿式微粒子化装置。
【請求項5】
粒子が混濁された処理対象流体を収容する処理対象流体収容容器と、前記処理対象流体を1又は2のノズルから超高圧で噴出させる超高圧湿式微粒子化部と、内周壁を摺動するプランジャを備えたシリンダと、前記処理対象流体収容容器と前記シリンダとの間に設けられた逆止弁とを有する高圧湿式微粒子化装置の制御方法であって、
前記プランジャを後退させることにより前記処理対象流体収容容器内の前記処理対象流体を前記逆止弁を介して前記シリンダ内に収容する収容ステップと、
前記プランジャを前進させることにより前記シリンダ内に収容された前記処理対象流体を前記超高圧湿式微粒子化部の前記ノズルから超高圧で噴出させ前記処理対象流体に含まれる粒子を微粒子化する微粒子化ステップと、
前記微粒子化ステップで微粒子化された微粒子を含む前記処理対象流体を前記処理対象流体収容容器内に回収する回収ステップと、
前記収容ステップ、前記微粒子化ステップ、前記回収ステップからなる循環処理を少なくとも一回実行する循環ステップと、
を具備し、
前記循環処理の終了後若しくは前記循環処理の間に、前記処理対象流体収容容器に併設された併設容器を前記処理対象流体収容容器の配設位置に移動させ、前記循環処理により処理された処理対象流体の一部をサンプリングするサンプリングステップ、
を更に具備することを特徴とする超高圧湿式微粒子化装置の制御方法。
【請求項6】
前記処理対象流体収容容器の底部に設けられた超音波発振装置により、前記処理対象流体の前記循環処理に先立って前記処理対象流体に含まれる粒子の超音波分散処理を実行する超音波分散ステップ、
を更に具備することを特徴とする請求項5に記載の超高圧湿式微粒子化装置の制御方法。
【請求項7】
前記循環処理に先立って該循環処理に係る前記処理対象流体の循環流路を純水で満たし、前記循環処理に伴って前記純水を前記処理対象流体収容容器の配設位置に移動させた前記併設容器内に回収する
ことを特徴とする請求項5に記載の超高圧湿式微粒子化装置の制御方法。
【請求項8】
前記併設容器は、前記処理対象流体収容容器と同一の容量からなり、
前記循環処理が終了する毎に前記併設容器を前記処理対象流体収容容器の配設位置に移動させ、前記微粒子化ステップで微粒子化された微粒子を含む処理終了流体を前記併設容器内に回収する処理終了流体回収ステップ、
を具備し、前記処理終了流体回収ステップを前記処理対象流体収容容器が空になり、前記併設容器が満杯になるまで繰り返すことを特徴とする請求項5に記載の超高圧湿式微粒子化装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超高圧湿式微粒子化装置及びその制御方法及び超高圧湿式微粒子化方法に関し、詳しくは、超高圧湿式微粒子化処理を繰り返し循環実行することによって処理対象流体の高度な微粒子化を可能にした超高圧湿式微粒子化装置及びその制御方法及び超高圧湿式微粒子化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、粒子が混濁された処理対象流体を1又は2のノズルから超高圧で噴出させることにより処理対象流体に含まれる粒子を微粒子化する湿式ジェットミル処理部を備えた装置としては、特許文献1に記載されたものが知られている。
【0003】
特許文献1には、溶媒と粉末を混合することによって混合槽11で形成されたスラリー前駆体を給液ポンプ13によって混合槽11から排出し、増圧機14で例えば10MPa以上の圧力に加圧して、衝突ユニット( 湿式ジェットミル処理部)15中に噴出させ、ここで湿式ジェットミル処理を行った後そのスラリー前駆体を循環ポンプ(循環部)17によって混合槽11に導き、混合槽11で、再び少量の粉末を混合して、上記処理を所定回数繰り返すことによって所望の粉末濃度のスラリーを製造し、その後、バルブ18を切り換えて製造したスラリーをスラリー槽19に導くようにしたスラリーの製造装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-77001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1に記載されたスラリーの製造装置は、給液ポンプ13と循環ポンプ17の2つのポンプを用いることに加えて、給液ポンプ13の後段に増圧器14を設ける必要があるものであり、更に、溶媒と粉末を混合する混合槽11、製造したスラリーを導くスラリー槽19を別位置に設ける必要があるものであり、その結果、装置が大型化し、かつ高価になり、また、給液ポンプ13と増圧機14を用いてスラリー前駆体の噴出処理を行っているため、高度な微粒子化が難しいという問題があった。
【0006】
本発明はこのような問題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、小型化可能であり、かつ処理対象流体に含まれる粒子を高度に微粒子化することができる超高圧湿式微粒子化装置及びその制御方法及び超高圧湿式微粒子化方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、粒子が混濁された処理対象流体を1又は2のノズルから超高圧で噴出させることにより前記処理対象流体に含まれる粒子を微粒子化する超高圧湿式微粒子化部を有する超高圧湿式微粒子化装置であって、前記処理対象流体を収容する処理対象流体収容容器と、内周壁を摺動するプランジャを備えたシリンダと、前記処理対象流体収容容器と前記シリンダとの間に設けられた逆止弁と、を備え、前記プランジャを後退させることにより前記処理対象流体収容容器内の前記処理対象流体を前記逆止弁を介して前記シリンダ内に収容し、前記プランジャを前進させることにより前記シリンダ内に収容された前記処理対象流体を前記超高圧湿式微粒子化部の前記ノズルから超高圧で噴出させて前記処理対象流体収容容器内に戻す循環処理を少なくとも一回実行する超高圧湿式微粒子化装置において、前記処理対象流体収容容器に併設された併設容器と、前記併設容器を前記処理対象流体収容容器と置換するように前記併設容器の配設位置を移動制御する移動制御手段と、を更に具備し、前記循環処理の終了後若しくは前記循環処理の間に前記移動制御手段により前記併設容器を前記処理対象流体収容容器の配設位置に移動させ、前記循環処理により処理された処理対象流体の一部をサンプリングすることを特徴とする
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記プランジャの後退及び前進は該プランジャに接続された螺子軸に係合するナット部をサーボモータにより回動することにより制御されることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記移動制御手段は、一軸電動アクチュエータから構成されることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記処理対象流体収容容器の底部に設けられ、前記処理対象流体の前記循環処理に先立って前記処理対象流体に含まれる粒子の超音波分散処理を実行する超音波発振装置、を更に具備することを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、粒子が混濁された処理対象流体を収容する処理対象流体収容容器と、前記処理対象流体を1又は2のノズルから超高圧で噴出させる超高圧湿式微粒子化部と、内周壁を摺動するプランジャを備えたシリンダと、前記処理対象流体収容容器と前記シリンダとの間に設けられた逆止弁とを有する高圧湿式微粒子化装置の制御方法であって、前記プランジャを後退させることにより前記処理対象流体収容容器内の前記処理対象流体を前記逆止弁を介して前記シリンダ内に収容する収容ステップと、前記プランジャを前進させることにより前記シリンダ内に収容された前記処理対象流体を前記超高圧湿式微粒子化部の前記ノズルから超高圧で噴出させ前記処理対象流体に含まれる粒子を微粒子化する微粒子化ステップと、前記微粒子化ステップで微粒子化された微粒子を含む前記処理対象流体を前記処理対象流体収容容器内に回収する回収ステップと、前記収容ステップ、前記微粒子化ステップ、前記回収ステップからなる循環処理を少なくとも一回実行する循環ステップと、を具備し、前記循環処理の終了後若しくは前記循環処理の間に、前記処理対象流体収容容器に併設された併設容器を前記処理対象流体収容容器の配設位置に移動させ、前記循環処理により処理された処理対象流体の一部をサンプリングするサンプリングステップ、を更に具備することを特徴とする。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の発明において、前記処理対象流体収容容器の底部に設けられた超音波発振装置により、前記処理対象流体の前記循環処理に先立って前記処理対象流体に含まれる粒子の超音波分散処理を実行する超音波分散ステップ、を更に具備することを特徴とする。
【0015】
請求項7に記載の発明は、請求項5に記載の発明において、前記循環処理に先立って該循環処理に係る前記処理対象流体の循環流路を純水で満たし、前記循環処理に伴って前記純水を前記処理対象流体収容容器の配設位置に移動させた前記併設容器内に回収することを特徴とする。
【0016】
請求項8に記載の発明は、請求項5に記載の発明において、前記併設容器は、前記処理対象流体収容容器と同一の容量からなり、前記循環処理が終了する毎に前記併設容器を前記処理対象流体収容容器の配設位置に移動させ、前記微粒子化ステップで微粒子化された微粒子を含む処理終了流体を前記併設容器内に回収する処理終了流体回収ステップ、を具備し、前記処理終了流体回収ステップを前記処理対象流体収容容器が空になり、前記併設容器が満杯になるまで繰り返すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、粒子が混濁された処理対象流体を1又は2のノズルから超高圧で噴出させることにより前記処理対象流体に含まれる粒子を微粒子化する超高圧湿式微粒子化部を有する超高圧湿式微粒子化装置であって、前記処理対象流体を収容する処理対象流体収容容器と、内周壁を摺動するプランジャを備えたシリンダと、前記処理対象流体収容容器と前記シリンダとの間に設けられた逆止弁と、を備え、前記プランジャを後退させることにより前記処理対象流体収容容器内の前記処理対象流体を前記逆止弁を介して前記シリンダ内に収容し、前記プランジャを前進させることにより前記シリンダ内に収容された前記処理対象流体を前記超高圧湿式微粒子化部の前記ノズルから超高圧で噴出させて前記処理対象流体収容容器内に戻す循環処理を少なくとも一回実行する超高圧湿式微粒子化装置において、前記処理対象流体収容容器に併設された併設容器と、前記併設容器を前記循環処理流路内にある前記処理対象流体収容容器と置換するように前記併設容器の配設位置を移動制御する移動制御手段と、を更に具備し、前記循環処理の終了後若しくは前記循環処理の間に前記移動制御手段により前記併設容器を前記処理対象流体収容容器の配設位置に移動させ、前記循環処理により処理された処理対象流体の一部をサンプリングするように構成したので、小型化可能であり、かつ処理対象流体に含まれる粒子を高度に微粒子化することができる超高圧湿式微粒子化装置を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明に係る超高圧湿式微粒子化装置の一実施例の正面図である。
図2図2は、図1に示した超高圧湿式微粒子化装置の上面図である。
図3図3は、図1に示した超高圧湿式微粒子化装置の側面図である。
図4図4は、図1に示した超高圧湿式微粒子化装置の要部拡大図である。
図5図5は、本発明に係る超高圧湿式微粒子化装置の動作の一例を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施例について、願書に添付した図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
図1は、本発明に係る超高圧湿式微粒子化装置の一実施例の正面図であり、図2は、図1に示した超高圧湿式微粒子化装置の上面図、図3は、図1に示した超高圧湿式微粒子化装置の側面図、図4は、図1に示した超高圧湿式微粒子化装置の要部拡大図である。
【0022】
図1乃至図4において、この実施例の超高圧湿式微粒子化装置100は、処理対象流体を1又は複数回循環させることにより、循環路内の超高圧湿式微粒子化部70により超高圧湿式微粒子化処理を繰り返し行う循環処理を実行して、この循環処理により、処理対象流体に含まれる粒子を微粒子化するものである。
【0023】
ここで、超高圧湿式微粒子化部70は、図4に示すように2つのノズル71a及び71bを有するノズル板71を有しており、このノズル板71の2つのノズル71a及び71bから処理対象流体を超高圧で噴出させることにより処理対象流体に含まれる粒子を微粒子化する処理を行う。
【0024】
なお、図4においては、ノズル板71に2つのノズル71a及び71bを設けた超高圧湿式微粒子化部70を示したが、この超高圧湿式微粒子化部70としてはノズル板に1つのノズルを設けた構成のものを用いても同様に構成することができる。
【0025】
さて、この実施例の超高圧湿式微粒子化装置100においては、処理対象流体を収容する容器(処理対象流体収容容器)Aと、容器Aに併設され容器Aと同容量の容器(併設容器)Bとを備えている。
【0026】
容器A及び容器Bは、一軸電動アクチュエータ20によりその位置が移動可能に構成されており、容器Aは、この実施例の超高圧湿式微粒子化装置100の上記循環処理に際して処理対象流体が収容されるもので、上記循環処理に際しては、一軸電動アクチュエータ20により循環路の直下位置である循環位置に移動される。また、容器Bは、上記循環路の清掃のための純水の収容及び上記循環処理による超高圧湿式微粒子化処理が完了した処理対象流体を収容するために用いられる。
【0027】
容器Aの下面には超音波発振装置10が設けられている。この超音波発振装置10は、この実施例の超高圧湿式微粒子化装置100の超高圧湿式微粒子化処理に先立って容器Aに収容された処理対象流体の超音波分散処理を行うものである。
【0028】
この超音波分散処理は、処理対象流体に含まれる粒子の径を超高圧湿式微粒子化装部70のノズル71a、71bの径より小さくするための処理で、この処理を行わないと、処理対象流体に含まれる粒子が超高圧湿式微粒子化部70のノズル71a、71bを通過せず、最悪の場合は詰まってしまうことがあり、この場合は、超高圧湿式微粒子化部70による超高圧湿式微粒子化処理を有効に行うことができないことになる。
【0029】
なお、超高圧湿式微粒子化装置100の超高圧湿式微粒子化処理に先立つ処理対象流体の上記超音波分散処理は、上記実施例においては、処理対象流体が容器Aに収容された状態で行うように構成したが、処理対象流体の超音波分散処理は上記超高圧湿式微粒子化装置100の外部で行い、その後、超音波分散処理された処理対象流体を容器Aに収容するように構成してもよい。この場合、上記実施例の超高圧湿式微粒子化装置100から超音波発振装置10を除外することができる。
【0030】
超高圧湿式微粒子化部70におけるノズル板71の2つのノズル71a、71bからの処理対象流体の超高圧噴出は、シリンダ40内のプランジャ41の往復動により制御される。ここで、プランジャ41は、シリンダ40の内周壁に摺接して往復動し、このシリンダ40内のプランジャ41の往復動は、サーボモータ30により制御される。
【0031】
すなわち、サーボモータ30の回動軸には第1のプーリ31が接続され、この第1のプーリ31には、ベルトを介して第2のプーリ32が接続され、この第2のプーリ32には内壁に螺子が形成されたナット部33が固定されている。そして、このナット部33の孔にはシリンダ40の内周壁を摺動するプランジャ41に接続された螺子軸42が挿入され、この螺子軸42の螺子は、ナット部33の孔の内壁に形成された螺子に係合する。
【0032】
したがって、サーボモータ30の回動により、プランジャ41をシリンダ40内で往復動させることができ、ここで、プランジャ41の往復動は、螺子軸42の一端に接続され、ガイド51上を移動するスライダ52の位置から制御される。すなわち、スライダ52が図1に示す第1のフォットセンサ53-1の位置にあるときは、プランジャ41は、シリンダ40の前進端位置にあり、スライダ52が図1に示す第2のフォットセンサ53-2の位置にあるときは、プランジャ41は、シリンダ40の後退端位置にあるので、第1のフォットセンサ53-1の出力及び第2のフォットセンサ53-2の出力に基づきサーボモータ30を回動制御することで、シリンダ40内のプランジャ41を前進端位置と後退端位置との間で往復動制御することができる。
【0033】
シリンダ40の先端には処理対象流体流入口61、処理対象流体流出口62が設けられている。そして、処理対象流体流入口61は、逆止弁60、管継手63、チューブ64を経由して容器A内に導かれ、処理対象流体流出口62は、超高圧湿式微粒子化部70、管継手65を経由して容器Aに導かれている。
【0034】
そして、容器Aが処理対象流体で満たされ、図3に示す位置にあるとき、サーボモータ30の回動により、プランジャ41をシリンダ40内で後退させると、容器A内の処理対象流体は、チューブ64、管継手63、逆止弁60を経由して処理対象流体流入口61からシリンダ40内に導かれ、スライダ52が第2のフォットセンサ53-2の位置に達してプランジャ41をシリンダ40内で前進させると、シリンダ40内の処理対象流体は、処理対象流体流出口62から超高圧湿式微粒子化部70に押し出され、これにより超高圧湿式微粒子化部70のノズル71a、71bから処理対象流体が超高圧で噴出され、これにより処理対象流体に含まれる粒子の微粒子化が行われる。この微粒子化された処理対象流体は、管継手65を経由して容器A内に戻され、上記処理を、1回若しくは複数回行うことで、容器A内の処理対象流体の所望の微粒子化を行うことが可能になる。
【0035】
図3に示す圧力センサ80は、シリンダ40内の圧力をモニタするもので、この圧力センサ80により超高圧湿式微粒子化部70に対する供給圧力を知ることができる。なお、この圧力センサ80は、図1及び図2では図示が省略されている。
【0036】
なお、上記実施例の超高圧湿式微粒子化装置100においては、上記循環処理の終了後若しくは、上記循環処理の間に、容器Bを用いて上記循環処理をした処理対象流体のサンプリングを行うことができる。このサンプリングは、一軸電動アクチュエータ20により容器Bを容器Aが配置されていた設循環位置に移動させ、管継手65から流出される処理済み処理対象流体を容器B内に導くことにより行われる。
【0037】
図5は、図1乃至図4に示した本発明に係る超高圧湿式微粒子化装置の動作の一例を説明するフローチャートである。
【0038】
この実施例の超高圧湿式微粒子化装置100においては、処理対象流体の超高圧湿式微粒子化に先立って循環路の清掃処理を行い、これにより、循環路内を純水で満たす。すなわち、純水を容器Bに収容し、この容器Bを図3で容器Aが配置されていた循環位置に移動させ、チューブ64を容器Bに挿入し、サーボモータ30を駆動させて、シリンダ40内のプランジャ41を往復動させる。ここで、プランジャ41をシリンダ40内で後退させると、容器B内の純水は、チューブ64、管継手63、逆止弁60を経由して処理対象流体流入口61からシリンダ40内に導かれ、プランジャ41を前進させると、シリンダ40内の純水は、処理対象流体流出口62から超高圧湿式微粒子化部70、管継手65を経由して容器B内に戻され、この処理を繰り返すことにより、循環路の清掃処理が行われる。そして、この清掃処理が終了すると循環路内は純水で満たされることになる。
【0039】
この状態で、容器Aに処理対象流体を収容し、空の容器Bを循環位置に移動させる(ステップ501)。
【0040】
次に、チューブ64を容器Aに挿入し、サーボモータ30を駆動して循環処理を実行する(ステップ502)。この循環処理はシリンダ40内のプランジャ41の3から5往復、すなわち3~5ショット行われ、この処理により循環路の純水は処理対象流体で置き換えられ、循環路は処理対象流体で満たされる。このとき、循環路の純水は空の容器Bに回収される。
【0041】
その後、処理対象流体が収納された容器Aを循環位置に移動させ(ステップ503)、超音波発振装置10を起動し、容器A内の処理対象流体の超音波分散処理を行う(ステップ504)。そして、サーボモータ30を駆動し、循環処理を開始して、処理対象流体の超高圧湿式微粒子化処理が行われる(ステップ505)。
【0042】
処理対象流体の循環処理による超高圧湿式微粒子化処理は、例えば10パス程度行われる。ここで1パスは、容器A内の処理対象流体の超高圧湿式微粒子化処理が一巡する例えば3~5ショットに対応する。
【0043】
次に、上記循環処理循環処理がサンプル処理に対応して設定された設定パス行われたか、すなわち設定パス経過かが調べられる(ステップ506)。ここで、設定パスが経過してない場合は(ステップ506でNO)、ステップ506に戻り、設定パスが経過するまで循環処理を繰り返すが、設定パスが経過したと判断されると(ステップ506でYES)、空の容器Bを循環位置に移動させ、循環処理による超高圧湿式微粒子化処理された後の処理対象流体を空の容器B内に導き、そのサンプリング処理を行う(ステップ507)。
【0044】
ステップ508では、このサンプリング処理に基づき、処理対象流体の循環処理による超高圧湿式微粒子化処理を終了するか否かの判断を行う。ここで、超高圧湿式微粒子化処理の継続が必要であり、超高圧湿式微粒子化処理が終了していないと判断されると(ステップ508でNO)、ステップ508に戻り処理対象流体の循環処理による超高圧湿式微粒子化処理を続ける。また、ステップ508で、超高圧湿式微粒子化処理を終了すると判断されると(ステップ508でYES)、空の容器Bを循環位置に移動させ、処理終了流体を空の容器B内に回収する処理終了流体回収処理を実行する(ステップ509)。
【0045】
この処理終了流体回収処理は、容器Aが空になり、容器Bが満タンになるまで続けられ、容器Aが空になり、容器Bが満タンになると処理終了流体回収処理と判断され(ステップ501でYES)。この超高圧湿式微粒子化装置100の処理を終了する。
【0046】
以上が本発明の一実施例の説明であるが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内であれば、当業者の通常の創作能力によって多くの変形が可能である。
【符号の説明】
【0047】
10…超音波発振装置
20…一軸電動アクチュエータ
30…サーボモータ
31…第1のプーリ
32…第2のプーリ
33…ナット部
40…シリンダ
41…プランジャ
42…螺子軸
51…ガイド
52…スライダ
53-1…第1のフォットセンサ
53-2…第2のフォットセンサ
60…逆止弁
61…処理対象流体流入口
62…処理対象流体流出口
63…管継手
64…チューブ
65…管継手
70…超高圧湿式微粒子化部
71…ノズル板
71a…ノズル
71b…ノズル
80…圧力センサ
図1
図2
図3
図4
図5