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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-05
(45)【発行日】2023-07-13
(54)【発明の名称】フラワーペースト
(51)【国際特許分類】
   A23L 9/20 20160101AFI20230706BHJP
   A23G 3/34 20060101ALI20230706BHJP
   A23L 7/10 20160101ALI20230706BHJP
   A21D 13/31 20170101ALI20230706BHJP
   A21D 13/32 20170101ALI20230706BHJP
【FI】
A23L9/20
A23G3/34
A23L7/10 Z
A21D13/31
A21D13/32
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019018513
(22)【出願日】2019-02-05
(65)【公開番号】P2020124157
(43)【公開日】2020-08-20
【審査請求日】2022-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福釜 佳行
(72)【発明者】
【氏名】田村 岳文
【審査官】正 知晃
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-208297(JP,A)
【文献】特開2005-065512(JP,A)
【文献】特開2008-245590(JP,A)
【文献】特開2013-021964(JP,A)
【文献】国際公開第00/024273(WO,A1)
【文献】特開2014-093947(JP,A)
【文献】特開2011-223899(JP,A)
【文献】特開2010-268751(JP,A)
【文献】特開平06-178659(JP,A)
【文献】国際公開第2009/004711(WO,A1)
【文献】特開2010-252668(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A23G
A21D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油分含量が1~30質量%、糖アルコールの含量が固形分として3~38質量%、イヌリン及び/又はイソマルトデキストリンを1~20質量%含有するフラワーペースト。
【請求項2】
澱粉類の含量が1~8質量%である請求項1のフラワーペースト。
【請求項3】
糖類を実質的に含有しない請求項1又は2のフラワーペースト。
【請求項4】
油分含量が1~30質量%、糖アルコールの含量が固形分として3~38質量%、イヌリン及び/又はイソマルトデキストリンを1~20質量%含有するフラワーペースト原料を均質化処理した後、加熱し、冷却する工程を有するフラワーペーストの製造方法。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか一項に記載のフラワーペーストを用いたベーカリー食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糖質や糖類の含量が低い、フラワーペーストに関する。
【背景技術】
【0002】
澱粉の糊化によるボディ感を有するフラワーペーストは、パン類や菓子類のトッピング、フィリングとして広く利用されてきた。このフラワーペーストは、一般的に、小麦粉や穀物澱粉等の澱粉類、ミルク、砂糖、卵、水等を混合した後、加熱して糊化させることによって得られるもので、一般に粘弾性に富んだ物性と食感を示すものである。
【0003】
近年、血糖値上昇を抑制する観点や、肥満、糖尿病等の生活習慣病の予防の観点、低カロリー志向などから、飲食品中の糖質や糖類を低減する要求、所謂、低糖質化や低糖類化に対する要求が強まっており、フラワーペーストについても含有される糖質や糖類を低減することが求められている。
【0004】
しかし、一般的にフラワーペーストにおいて、糖質や糖類は甘味料として風味に寄与するだけでなく、その食感のなめらかさや、離水の抑制・防止といった経時的な物性の安定性などに大きな役割を果たしていることが知られており、フラワーペーストの糖質や糖類を低減する観点から、単に澱粉類や砂糖等の使用量を低減すると、得られるフラワーペーストの食感や風味の低下や、経日的な離水等の物性悪化が生じ、商品価値を著しく損ねてしまう。このため、フラワーペーストの糖質や糖類を低減することは困難であった。
【0005】
このような事情に鑑み、糖質や糖類を低減したフラワーペーストとして、特許文献1においてはフラワーペーストの主要成分である澱粉、加工澱粉及び小麦粉を大豆粉に置換した、糖質の含量の低いフラワーペーストが提案されている。
【0006】
糖質とは炭水化物のうち、食物繊維以外を指し、単糖類、二糖類、澱粉等の多糖類、糖アルコールを指すことが知られている(非特許文献1)。また、糖類とは、糖質のうち、単糖類と二糖類を指すことが知られている(非特許文献2)。本発明においては、「糖質」及び「糖類」を、これらの文献と同様の意味で用いる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第6230740号
【非特許文献】
【0008】
【文献】「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定委員会」報告書、炭水化物(厚生労働省)
【文献】e-ヘルスネット、炭水化物/糖質(厚生労働省)、URL https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-018.html
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1記載のフラワーペーストでは、糖質が低減されているものの、大豆粉特有の青臭みが生じる場合があり、また、高甘味度甘味料を用いる必要性があることから、得られるフラワーペーストの風味については、さらなる改良の余地があった。
したがって、本願が解決しようとする課題は次の(イ)~(ハ)である。
(イ)含有される糖質や糖類を低減した場合であっても、良好な食感を有するフラワーペーストを得ること。
(ロ)含有される糖質や糖類を低減した場合であっても、良好な風味を有するフラワーペーストを得ること。
(ハ)含有される糖質や糖類を低減した場合であっても、良好な物性を有するフラワーペーストを得ること。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らの鋭意検討により、フラワーペーストに含有される油分、糖アルコール、食物繊維の量を特定範囲とすることにより、含有される糖質や糖類を低減した場合であっても、経時的な離水等、物性の悪化が生じることなく、良好な風味と食感のフラワーペーストとすることができるとの知見が得られた。
【0011】
すなわち、本発明は以下の(1)~(5)に関するものである。
(1)油分含量が1~30質量%、糖アルコールの含量が固形分として3~38質量%、食物繊維を1~20質量%含有するフラワーペースト。
(2)澱粉類の含量が1~8質量%である(1)のフラワーペースト。
(3)糖類を実質的に含有しない(1)又は(2)のフラワーペースト。
(4)油分含量が1~30質量%、糖アルコールの含量が固形分として3~38質量%、食物繊維を1~20質量%含有するフラワーペースト原料を、均質化処理した後、加熱し、冷却する工程を有するフラワーペーストの製造方法。
(5)(1)~(3)のいずれか一項に記載のフラワーペーストを用いたベーカリー食品
【発明の効果】
【0012】
本発明により、得られる効果は以下の3点である。
(イ)含有される糖質や糖類を低減した場合であっても、良好な食感を有するフラワーペーストを得ることができる。
(ロ)含有される糖質や糖類を低減した場合であっても、良好な風味を有するフラワーペーストを得ることができる。
(ハ)含有される糖質や糖類を低減した場合であっても、良好な物性を有するフラワーペーストを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳述する。
<油分含量>
本発明のフラワーペーストの油分含量について述べる。
本発明のフラワーペースト中の油分含量は、1~30質量%であり、好ましくは1~26質量%、より好ましくは1.5~18質量%である。
フラワーペースト中の油分含量が1質量%未満であると、良好なスプレッド性や伸展性を有するフラワーペーストが得られない、フラワーペーストの食感がワキシーになる等の問題が発生する。また、30質量%を超えると、油分が分離しやすい、フラワーペーストの食感がなめらかさに欠ける等の問題が発生する。
なお、本発明のフラワーペーストに、油脂を含有する副原料を使用した場合、上記の油分含量には、それらの副原料に含まれる油脂分も含めるものとする。
【0014】
本発明のフラワーペーストに用いられる油脂としては、例えば、パーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、綿実油、大豆油、ナタネ油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、オリーブ油、キャノーラ油、牛脂、乳脂、豚脂、カカオ脂、魚油、鯨油等の各種植物油脂及び動物油脂、並びにこれらに水素添加、分別及びエステル交換から選択される1又は2以上の処理を施した加工油脂等が挙げられる。これらの油脂は、単独で用いることもでき、又は2種以上を組合せて用いることもできる。これらの中でも、良好な可塑性を得る観点から、パーム系油脂を用いることが好ましい。
なお、本発明においてパーム系油脂とは、パーム油、パームオレイン、パームスーパーオレイン、パームオレインのランダムエステル交換油脂、パームスーパーオレインのランダムエステル交換油脂のうちの1種又は2種以上を混合したものを指す。
【0015】
本発明のフラワーペーストは、健康への影響の観点から実質的にトランス脂肪酸を含まないことが好ましい。ここでいう「実質的にトランス脂肪酸を含まない」とは、油相中、トリグリセリドを構成する脂肪酸残基としてのトランス脂肪酸の含量が5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、最も好ましくは2質量%以下であることを意味する。
このため、水素添加した油脂を原料の一つとして用いる場合には、トランス脂肪酸の低減、また、その増加を抑制する観点から、ヨウ素価5以下となるように水素添加を施した極度硬化油を用いることが好ましい。
【0016】
<糖アルコール>
本発明のフラワーペーストに含有される糖アルコールについて述べる。
糖アルコールとは、糖質に該当するものであり、単糖、単糖が2~10分子結合したオリゴ糖、デキストリン、水飴、デンプン等を、発酵や水素添加により還元して得られるものである。
【0017】
具体的には、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、パラチニット、ラクチトール、直鎖オリゴ糖アルコール、分岐オリゴ糖アルコール、高糖化還元水飴、還元麦芽糖水飴、還元水飴等が挙げることができる。
本発明においては、これらの糖アルコールを単独で用いることができ、又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0018】
これらの中でも、得られるフラワーペーストの食感や風味を維持しながら低糖質化を図る観点から、エリスリトールを使用することが好ましい。エリスリトールは糖質に該当するものの、体内で代謝されずに排泄されるためエネルギー値が0kcal/gであり、また、血糖値を上昇させないことから、実質的に糖質としてカウントされず、本願の目的を達成し得るため、特に好ましく用いられる。
【0019】
また、本発明のフラワーペースト中に、エリスリトールに加えて他の糖アルコールを更に加える場合には、特に得られるフラワーペーストの味質の観点から、マルチトールを選択することが好ましい。
【0020】
糖アルコールとしてエリスリトールとマルチトールを選択して、本発明のフラワーペーストに含有させる場合、後述のフラワーペースト中の水分に対する、エリスリトールの対水濃度を好ましく満たす範囲であれば、任意の比率で含有させることが出来る。
【0021】
本発明のフラワーペーストに使用される糖アルコールの形態は、粉末状でもよく、糖アルコールを水に溶解させてシロップ状とした糖アルコール組成物でもよい。粉末状糖アルコールやシロップ状の糖アルコール組成物は、単独で用いることができ、又は組み合わせて用いることもできる。
【0022】
本発明のフラワーペースト中の糖アルコールの含量は、固形分として、3~38質量%である。本発明のフラワーペースト中の他の副原料の種類や配合量によって、糖アルコールの含量は適宜調整されるが、良好な風味や食感、物性を保ちながら、糖質・糖類の含量を低減させる観点から、好ましくは、フラワーペースト中に、固形分として5~35質量%、より好ましくは8~35質量%含有される。
【0023】
本発明のフラワーペースト中の糖アルコールとして、エリスリトールが含有される場合の含量は、低糖質化と風味の両立を図る観点や、フラワーペースト中でのエリスリトールの析出を避ける観点から、フラワーペースト中の水分に対する、エリスリトールの対水濃度が35%以下となることが好ましい。
【0024】
本発明のフラワーペースト中には、糖アルコール以外の糖質、糖類、高甘味度甘味料を含有させることができる。なお、本発明において、高甘味度甘味料とは、ショ糖の甘味度を1とした場合に、50以上の相対甘味度を有する非糖質系甘味料を指す。
【0025】
糖アルコール以外の糖質としては、例えば、オリゴ糖やデキストリン、澱粉などの三糖類以上の多糖類が挙げられる。
糖類としては、例えば、ブドウ糖(グルコース)、果糖(フルクトース)、ガラクトース等の単糖類、ショ糖、麦芽糖、乳糖等の二糖類が挙げられる。
【0026】
高甘味度甘味料としては、天然物、人工物を問わず、食品や医薬品用として一般に用いられているものを選択することができる。例えば、アセスルファムカリウム、スクラロース、ステビア、アスパルテーム、サッカリン、ネオテーム、甘草、羅漢果、グリチルリチン、グリチルリチン酸塩、ジヒドロカルコン、ソーマチン、モネリン等が挙げられ、これらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。通常、ステビア、甘草及び羅漢果は、適宜、抽出物として用いられ、サッカリンはナトリウム塩として用いられる。
【0027】
本発明のフラワーペーストにおける、糖アルコール以外の糖質、糖類、高甘味度甘味料の含量は、特に制限されないが、低糖質化を図る観点から、より少量である方が好ましく、40質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることが最も好ましい。
【0028】
本発明のフラワーペーストを製造する際の、上記糖アルコールの配合方法としては、糖アルコールの形態が粉末の場合、油相中に分散させる方法や、水相中に溶解させた後に油相中に乳化させる方法等が挙げられる。糖アルコールの形態がシロップ状の糖アルコール組成物の場合は、必要に応じて他の水溶性成分とともに、油相中に乳化させる方法等が挙げられる。
【0029】
<食物繊維>
本発明のフラワーペーストに含有される食物繊維について述べる。
食物繊維とは、栄養学的に「ヒトの消化酵素で消化されない食物中の難消化性成分の総体」と定義され、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維に分類される。
【0030】
本発明では水溶性食物繊維や不溶性食物繊維の種類を問わず使用することができる。水溶性食物繊維としては、例えば、ポリデキストロース、アルギン酸、アルギン酸塩、ペクチン、グルコマンナン、アガロース(寒天)、キサンタンガム、カラギーナン、ローカストビーンガム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、グアーガム、イヌリン、イソマルトデキストリン、難消化性デキストリン等が挙げられる。また、不溶性食物繊維としては、小麦フスマ、セルロース、リグニン、キチン、キトサン、ヘミセルロース、コーンファイバー、穀物ファイバー、果実ファイバー、バンブーファイバー、バガスファイバー等が挙げられる。
【0031】
本発明においては、得られるフラワーペーストの食感のなめらかさを損なわない観点や、フラワーペーストの物性の維持の観点から、食物繊維として水溶性食物繊維を選択することが好ましい。また、水溶性食物繊維の中でもイヌリン及び/又はイソマルトデキストリンを選択して使用することが好ましい。
本発明で用いることのできるイヌリンとは、通常末端にブドウ糖が結合している、主に果糖の重合体である。
【0032】
イヌリンを用いる場合、その由来は特に限定されず、チコリ由来であってもキクイモ由来であっても、その他植物由来であってもよい。また、酵素反応により合成されたイヌリンであってもよい。イヌリン中の果糖の重合度は2~60の範囲であることが好ましい。また、イヌリン中の果糖の平均重合度は10~25であることが好ましく、10~17であることがより好ましい。
【0033】
イソマルトデキストリンを用いる場合、分岐の多い構造を有するものであることが、経時的な離水等の物性の悪化を抑制し、良好な食感を得る観点から好ましく、3つのα結合を有するグルコース残基の比率が8%以上であることがより好ましい。
本発明において、「3つのα結合を有するグルコース残基」とは、例えば、グルコース残基の1位と3位と6位の水酸基にα結合を有するものや、グルコース残基の1位と4位と6位の水酸基にα結合を有するものなど、グルコース残基中の3か所で他の構成糖とのα結合を形成しているものを指す。また、「3つのα結合を有するグルコース残基の比率」とは、構成糖残基組成において、上記3つのα結合を有するグルコース残基が占める比率を意味する。
本発明で用いるイソマルトデキストリンの構成糖は、グルコースが90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましい。
【0034】
水溶性食物繊維として、イソマルトデキストリンを含有する製剤を用いてもよい。上記条件を満たす市販のイソマルトデキストリンを含有する製剤としては、ファイバリクサ(株式会社林原製)等が挙げられる。
【0035】
本発明のフラワーペーストに含有される食物繊維の量は、水溶性の有無や種類、フラワーペーストに求める物性や食感によって異なるが、良好な食感を得る観点と、経時的な品質の劣化を抑制する観点から、1~20質量%である。食物繊維の含量は、フラワーペースト中に2.5~18質量%であることがより好ましく、4~15質量%であることが最も好ましい。
【0036】
<その他成分>
本発明のフラワーペーストは、上記の油脂や糖アルコール、食物繊維の他に、フラワーペーストに通常用いられる澱粉類やその他成分を含有していてもよい。
その他成分としては、例えば、ゲル化剤や安定剤、乳化剤、金属イオン封鎖剤、多糖類、蛋白質、乳や乳製品、卵製品、無機塩、有機酸塩、キモシン等の蛋白質分解酵素、トランスグルタミナーゼ、ラクターゼ(β-ガラクトシダーゼ)、α-アミラーゼ、グルコアミラーゼ等の糖質分解酵素、ジグリセライド、植物ステロール、植物ステロールエステル、果汁、濃縮果汁、果汁パウダー、乾燥果実、果肉、野菜、野菜汁、香辛料、香辛料抽出物、ハーブ、カカオ及びカカオ製品、コーヒー及びコーヒー製品、その他各種食品素材、着香料、苦味料、高甘味度甘味料、調味料等の呈味成分、着色料、保存料、酸化防止剤、pH調整剤等が挙げられ、本発明の効果を損なわない範囲で配合してもよい。
【0037】
<澱粉類>
本発明のフラワーペーストに含有される澱粉類について述べる。
澱粉類としては、例えば、強力粉、準強力粉、中力粉、薄力粉、デュラム粉、全粒粉等の小麦粉類、ライ麦粉、大麦粉、米粉等のその他の穀粉類、アーモンド粉、へーゼルナッツ粉、カシュ―ナッツ粉、オーナッツ粉、松実粉等の堅果粉、コーンスターチ、タピオカ澱粉、小麦澱粉、甘藷澱粉、サゴ澱粉、米澱粉等の澱粉や、これらの澱粉をアミラーゼ等の酵素で処理したものや、α化処理、分解処理、エーテル化処理、エステル化処理、架橋処理、グラフト化処理等の中から選ばれた1種又は2種以上の処理を施した化工澱粉等を挙げることができ、この中から1種又は2種以上を含有することができる。
【0038】
通常、澱粉類は糖質を多く含有するため、本発明のフラワーペーストにおいては、糖質の含量を抑える観点から、澱粉類の含量を少なくすることが望まれる。
このため、本発明においては、少量の含量であっても離水を抑制する効果や糊化に伴う良好な食感を得ることができる観点から、化工澱粉を選択して用いることが好ましい。
【0039】
化工澱粉の中でも、架橋処理された澱粉が、工業生産を行う際に耐せん断性を付与することができる点、及び高温殺菌しても澱粉粒の損壊が起きにくい点から好ましい。架橋処理された澱粉の中でも、リン酸架橋澱粉が好ましく、離水を特に抑制する観点からヒドロキシル化されたリン酸架橋澱粉が最も好ましい。
【0040】
本発明のフラワーペーストに含有される澱粉類の含量は、フラワーペーストに対して求める物性や食感によって、任意の含量とすることができるが、本発明の課題である糖質含量が低減されたフラワーペーストを得るという観点、良好な食感を得る観点、離水現象等の物性悪化を抑制する観点から、好ましくは1~8質量%であり、より好ましくは1.5~7質量%、最も好ましくは2~6質量%である。
澱粉類の含量が1質量%未満である場合には、フラワーペースト中の固形分含量が乏しくなる他、糊化の効果が十分に得られずに、離水等の経日的な品質の悪化が起こりやすい上、フラワーペーストとしての良好な食感を得られにくい。また、澱粉類の含量が8質量%超の場合は、得られるフラワーペーストの食感が糊のようなべとついた食感となりやすい上、糖質含量が低減されたフラワーペーストを得るという目的を達成し難くなってしまう。
なお、上記の固形分とは、本発明においては、水分以外の成分の総和を意味し、その主体は蛋白質と炭水化物、油脂分、灰分である。
【0041】
<糖質の含量>
本発明のフラワーペースト中の糖質の含量について述べる。
糖質・糖類の含量を低減させたフラワーペーストを得るという本発明の観点から、本発明のフラワーペーストにおける糖質の含量は、好ましくは45質量%以下である。近年の低糖質志向に合わせて、より低糖質であることが望ましいため、糖質の含量は、40質量%以下がより好ましく、最も好ましくは38質量%以下である。
本発明のフラワーペースト中の糖質の含量の下限は、低糖質化とフラワーペーストの良好な風味、食感、物性のバランスをとる観点から、25質量%である。
【0042】
上述のとおり、エリスリトールは糖質に該当するものの、実質的には糖質としてカウントされない。そのため、このエリスリトールの特性を勘案した、本発明のフラワーペーストにおける実質的な糖質の含量は、好ましくは44質量%以下であり、より好ましくは30質量%以下であり、最も好ましくは20質量%以下である。なお、エリスリトールの特性を勘案した、本発明のフラワーペーストにおける実質的な糖質の含量の下限は、0質量%である。
【0043】
また、本発明のフラワーペーストにおける糖類の含量は、低糖質化の観点から低減されることが望ましく、好ましくは25質量%以下であり、より好ましくは15質量%以下であるが、糖類を実質的に含有しないことが最も好ましい。ここでいう「糖類を実質的に含有しない」とは、糖類の含量が5質量%以下であることを意味する。
【0044】
<製造方法>
本発明のフラワーペーストの製造方法について述べる。
本発明のフラワーペーストは、油分含量が1~30質量%、糖アルコールの含有量が固形分として3~38質量%、食物繊維を1~20質量%含有するフラワーペースト原料を、均質化処理した後、加熱することによって製造することができる。
【0045】
具体的には、まず、水を60℃に加熱して、糖アルコール、食物繊維、澱粉類、その他水溶性原料を加えて攪拌・混合し、水相を調製する。次に、油脂を60℃に加熱して融解した後、必要に応じて油溶性原料を加えて攪拌・混合し、油相を調製する。
得られた油相と水相を混合して攪拌し、予備乳化物を得る。この際、水相と油相の比率(水相:油相、質量基準)を99:1~60:40とすることが、得られるフラワーペーストの経時的な油水分離を避ける観点から好ましい。
澱粉類や食物繊維は、作業性の点から、油相に添加してもよい。
【0046】
得られた予備乳化組成物は、バルブ式ホモジナイザー、ホモミキサー、コロイドミル等の均質化装置により、好ましくは圧力0~80MPaの範囲で均質化した後、加熱する。加熱は、インジェクション式、インフュージョン式等の直接加熱方式、あるいはプレート式、チューブラー式、掻き取り式等の間接加熱方式を用いたUHT、HTST、バッチ式、レトルト、マイクロ波加熱等の加熱滅菌若しくは加熱殺菌処理、あるいは直火等を用いた加熱調理により行なうことができる。加熱温度や加熱時間は、選択する加熱方式等により異なるが、加熱温度は60~160℃が好ましく、加熱時間は0.01~30分が好ましい。
【0047】
このようにして得られたフラワーペーストは、必要により、再度均質化してもよい。また、必要により、加熱後に急速冷却、徐冷却等の冷却操作を施してもよく、エージングを行ってもよい。さらに、得られたフラワーペーストは、必要により、冷蔵状態もしくは冷凍状態で保存してもよい。
【0048】
本発明のフラワーペーストは、その形状を、シート状、ブロック状、円柱状、ダイス状等としてもよい。各々の形状についての好ましいサイズは、シート状:縦50~1000mm、横50~1000mm、厚さ1~50mm、ブロック状:縦50~1000mm、横50~1000mm、厚さ50~500mm、円柱状:直径1~25mm、長さ5~100mm、ダイス状:縦5~50mm、横5~50mm、厚さ5~50mmである。
【0049】
本発明のフラワーペーストは、フィリング、トッピング、練り込み用、ロールイン用として、クッキー、パイ、シュー、サブレ、スポンジケーキ、バターケーキ、ケーキドーナツ等の菓子類、食パン、フランスパン、デニッシュ、スイートロール、イーストドーナツ等のパン類等に広く用いることができる。
【0050】
<ベーカリー食品>
本発明のベーカリー食品について述べる。
本発明のベーカリー食品は、本発明のフラワーペーストを用いたものである。
具体的には、本発明のベーカリー食品は、ベーカリー生地に、本発明のフラワーペーストをフィリングとして包餡したり、トッピングしたり、練り込んだり、ロールインする等の方法で複合させた複合生地を、必要に応じ圧延、成形、ホイロ、ラックタイムをとった後、焼成やフライ等の加熱を処理して得られたものであってもよく、加熱処理により得られたベーカリー食品に対して、フィリングとして本発明のフラワーペーストを注入やトッピング等して得られたものであってもよいが、特に前者が好ましい。
【0051】
上記のベーカリー生地としては、例えば、クッキー生地、パイ生地、シュー生地、サブレ生地、スポンジケーキ生地、バターケーキ生地、ケーキドーナツ生地、食パン生地、フランスパン生地、デニッシュ生地、スイートロール生地、イーストドーナツ生地等の菓子生地やパン生地が挙げられる。
【0052】
上記の複合生地としては、例えば、ベーカリー生地にペースト状のフラワーペーストを包餡した包餡生地、ベーカリー生地にペースト状のフラワーペーストをトッピング又はサンドした積層生地、ベーカリー生地にシート状のフラワーペーストをロールインした積層生地等が挙げられる。
【0053】
本発明のベーカリー食品に用いられる生地は、通常の小麦粉を主体とした生地であってもよく、水溶性食物繊維や不溶性食物繊維を多く含有させることで糖質含量が低減された生地であってもよく、例えば大豆粉やライ麦粉等の比較的糖質含量が少ない穀粉類を使用することで糖質含量が低減された生地であってもよい。
【0054】
上記複合生地を焼成する場合、ホイロは、イーストを含まないベーカリー生地を使用する場合は必要なく、イーストを配合したベーカリー生地を使用する場合のみ必要である。体積が大きく、層剥れの少ないベーカリー食品を得るためには、ホイロは、好ましくは25~40℃、相対湿度50~80%で20~90分、さらに好ましくは32~38℃、相対湿度50~80%で30~60分で行う。
【0055】
上記複合生地の焼成は、通常のベーカリー食品と同様、160~250℃、特に170~220℃で行なうのが好ましい。160℃未満であると、火通りが悪くなりやすく、また良好な食感が得られにくい。また、250℃を超えると、フラワーペースト類の水分が飛びすぎて色艶が悪化しやすい上、焦げを生じて食味が悪くなりやすい。
【0056】
上記複合生地をフライする場合、ラックタイムは特に有効である。ラックタイムをとることにより、ベーカリー生地の水分を飛ばし、表面を固化させることができ、結果として、ベーカリー生地の水分を減少させること及びフライ操作時の吸油を減少させることができる点で、ラックタイムをとることが望ましく、時間にして10~40分、相対湿度50%以下の環境中で静置することにより好ましい効果が得られる。
【0057】
フライ操作は、通常のドーナツ等と同様、160~250℃、特に170~220℃で行なうのが好ましい。160℃未満であると吸油が多く、良好な食感が得られにくい。250℃を超えると、焦げを生じて食味が悪くなりやすい。
【0058】
なお、上記焼成とフライとを併用する場合は、フライした後に焼成しても、焼成した後にフライしてもよい。
【実施例
【0059】
以下、実施例を基に本発明を更に詳述するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
以下のコントロール、比較例、実施例においては、油脂としてパーム油、糖類として水あめ及び砂糖、糖アルコールとしてエリスリトール及びマルチトール、澱粉類としてヒドロキシル化リン酸架橋澱粉、食物繊維として水溶性食物繊維であるイヌリンとイソマルトデキストリン、その他の原料として脱脂粉乳、ゼラチン、ミルク香料を使用した。
これらの糖質含量、及び水分含量を表1に示した。また、以下のコントロール、比較例、実施例の配合については表2にまとめて示した。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
(コントロール品)
60℃に加温したパーム油5質量部に対して、ゼラチン0.2質量部を添加・混合したものを油相とした。また、水49.7質量部に対して、水あめ20質量部、砂糖15質量部、ヒドロキシプロピルリン酸架橋澱粉(イングレディオンジャパン社製「サームテックス」)4質量部、脱脂粉乳6質量部、ミルク香料0.1質量部を添加・混合したものを水相とした。
上記油相と水相を60℃の加熱下で混合し、予備乳化物を得た。この予備乳化物を圧力3MPaで均質化し、加熱殺菌して厚さ0.2mmポリエチレン製の包材にピロー充填した。これを22℃まで冷却し、ペースト状である、コントロールのフラワーペースト(以下、コントロール品と記載する場合がある)を得た。得られたコントロール品の詳細は表3に示した。
【0063】
(比較例1)
水を64.7質量部とし、砂糖を添加しないこと以外は、コントロール品と同様に製造し、ペースト状である、比較例1のフラワーペースト(以下、比較例1品と記載する場合がある)を得た。得られた比較例1品の詳細は表3に示した。
【0064】
(比較例2)
水を54.7質量部とし、砂糖を添加せず、更にエリスリトール10質量部を水相に添加した以外は、コントロール品と同様に製造し、ペースト状である、比較例2のフラワーペースト(以下、比較例2品と記載する場合がある)を得た。得られた比較例2品の詳細は表3に示した。
【0065】
(実施例1)
60℃に加温したパーム油5質量部に対して、ゼラチン0.2質量部を添加・混合したものを油相とした。また、水49.7質量部に対して、水あめ20質量部、エリスリトール10質量部、イヌリン(Beneo-Orafti S.a.社製「オラフティGR」)5質量部、ヒドロキシプロピルリン酸架橋澱粉(イングレディオンジャパン社製「サームテックス」)4質量部、脱脂粉乳6質量部、ミルク香料0.1質量部を添加・混合したものを水相とした。
上記油相と水相を60℃の加熱下で混合し、予備乳化物を得た。この予備乳化物を圧力3MPaで均質化し、加熱殺菌して厚さ0.2mmポリエチレン製の包材にピロー充填した。これを22℃まで冷却し、ペースト状である、実施例1のフラワーペースト(以下、実施例1品と記載する場合がある)を得た。得られた実施例1品の詳細は表3に示した。
【0066】
(実施例2)
水あめの含量を17質量部、イヌリンの含量を8質量部とした以外は、実施例1品と同様に製造し、ペースト状である、実施例2のフラワーペースト(以下、実施例2品と記載する場合がある)を得た。得られた実施例2品の詳細は表3に示した。
【0067】
(実施例3)
水あめの含量を13質量部、イヌリンの含量を12質量部とした以外は、実施例1品と同様に製造し、ペースト状である、実施例3のフラワーペースト(以下、実施例3品と記載する場合がある)を得た。得られた実施例3品の詳細は表3に示した。
【0068】
(実施例4)
水あめの含量を15質量部とし、イヌリンの代わりにイソマルトデキストリン(株式会社林原製「ファイバリクサ」)10質量部を添加した以外は、実施例1品と同様に製造し、ペースト状である、実施例4のフラワーペースト(以下、実施例4品と記載する場合がある)を得た。得られた実施例4品の詳細は表3に示した。
【0069】
(比較例3)
水54.7質量部に対して、水あめ20質量部、エリスリトール10質量部、イヌリン(Beneo-Orafti S.a.社製「オラフティGR」)5質量部、ヒドロキシプロピルリン酸架橋澱粉(イングレレディオンジャパン社製「サームテックス」)4質量部、脱脂粉乳6質量部、ゼラチン0.2質量部、ミルク香料0.1質量部を添加・混合したものを水相とした。
上記水相を圧力3MPaで均質化し、加熱殺菌して厚さ0.2mmポリエチレン製の包材にピロー充填した。これを22℃まで冷却し、ペースト状である、油脂を含有しない、比較例3のフラワーペースト(以下、比較例3品と記載する場合がある)を得た。得られた比較例3品の詳細は表3に示した。
【0070】
(実施例5)
60℃に加温したパーム油2質量部に対して、ゼラチン0.2質量部を添加・混合したものを油相とした。また、水52.7質量部に対して、水あめ20質量部、エリスリトール10質量部、イヌリン(Beneo-Orafti S.a.社製「オラフティGR」)5質量部、ヒドロキシプロピルリン酸架橋澱粉(ナショナルスターチアンドケミカル社製「サームテックス」)4質量部、脱脂粉乳6質量部、ミルク香料0.1質量部を添加・混合したものを水相とした。
上記油相と水相を60℃の加熱下で混合し、予備乳化物を得た。この予備乳化物を圧力3MPaで均質化し、加熱殺菌して厚さ0.2mmポリエチレン製の包材にピロー充填した。これを22℃まで冷却し、ペースト状である、実施例5のフラワーペースト(以下、実施例5品と記載する場合がある)を得た。得られた実施例5品の詳細は表3に示した。
【0071】
(実施例6)
パーム油の含量を15質量部とし、水分含量を39.7質量部とした以外は、実施例5品と同様に製造し、ペースト状である、実施例6のフラワーペースト(以下、実施例6品と記載する場合がある)を得た。得られた実施例6品の詳細は表3に示した。
【0072】
(実施例7)
パーム油の含量を25質量部とし、水分含量を29.7質量部とした以外は、実施例5品と同様に製造し、ペースト状である、実施例7のフラワーペースト(以下、実施例7品と記載する場合がある)を得た。得られた実施例7品の詳細は表3に示した。
【0073】
(比較例4)
パーム油の含量を35質量部とし、水分含量を19.7質量部とした以外は、実施例5品と同様に製造し、ペースト状である、比較例4のフラワーペースト(以下、比較例4品と記載する場合がある)を得た。得られた比較例4品の詳細は表3に示した。
【0074】
(実施例8)
60℃に加温したパーム油5質量部に対して、ゼラチン0.2質量部を添加・混合したものを油相とした。また、水49.7質量部に対して、エリスリトール10質量部、マルチトール20質量部、イヌリン(Beneo-Orafti S.a.社製「オラフティGR」)5質量部、ヒドロキシプロピルリン酸架橋澱粉(イングレディオンジャパン社製「サームテックス」)4質量部、脱脂粉乳6質量部、ミルク香料0.1質量部を添加・混合したものを水相とした。
上記油相と水相を60℃の加熱下で混合し、予備乳化物を得た。この予備乳化物を圧力3MPaで均質化し、加熱殺菌して厚さ0.2mmポリエチレン製の包材にピロー充填した。これを22℃まで冷却し、ペースト状である、実施例8のフラワーペースト(以下、実施例8品と記載する場合がある)を得た。得られた実施例8品の詳細は表4に示した。
【0075】
(実施例9)
マルチトールの含量を22質量部とし、イヌリンの含量を3質量部とした以外は、実施例8品と同様に製造し、ペースト状である、実施例9のフラワーペースト(以下、実施例9品と記載する場合がある)を得た。得られた実施例9品の詳細は表4に示した。
【0076】
(実施例10)
エリスリトールの含量を15質量部、マルチトールの含量を17質量部とし、イヌリンの含量を3質量部とした以外は、実施例8品と同様に製造し、ペースト状である、実施例10のフラワーペースト(以下、実施例10品と記載する場合がある)を得た。得られた実施例10品の詳細は表4に示した。
【0077】
(実施例11)
エリスリトールの含量を17質量部、マルチトールの含量を15質量部とし、イヌリンの含量を3質量部とした以外は、実施例8品と同様に製造し、ペースト状である、実施例11のフラワーペースト(以下、実施例11品と記載する場合がある)を得た。得られた実施例11品の詳細は表4に示した。
【0078】
(実施例12)
エリスリトールの含量を25質量部、マルチトールの含量を7質量部とし、イヌリンの含量を3質量部とした以外は、実施例8品と同様に製造し、ペースト状である、実施例12のフラワーペースト(以下、実施例12品と記載する場合がある)を得た。得られた実施例12品の詳細は表4に示した。
【0079】
(実施例13)
エリスリトールの含量を32質量部、イヌリンの含量を3質量部とし、マルチトールを添加しない以外は、実施例8品と同様に製造し、ペースト状である、実施例13のフラワーペースト(以下、実施例13品と記載する場合がある)を得た。得られた実施例13品の詳細は表4に示した。
【0080】
(実施例14)
水の含量を48.7質量部、ヒドロキシル化リン酸架橋澱粉の含量を2質量部、イヌリンの含量を8質量部とした以外は、実施例8品と同様に製造し、ペースト状である、実施例14のフラワーペースト(以下、実施例14品と記載する場合がある)を得た。得られた実施例14品の詳細は表4に示した。
【0081】
(実施例15)
水の含量を48.7質量部、ヒドロキシル化リン酸架橋澱粉の含量を7質量部、イヌリンの含量を3質量部とした以外は、実施例8品と同様に製造し、ペースト状である、実施例15のフラワーペースト(以下、実施例15品と記載する場合がある)を得た。得られた実施例15品の詳細は表4に示した。
【0082】
上記のようにして得られたコントロール品、実施例1~15品、比較例1~4品について、製造から1日経過後に、下記の評価基準で評価を行った。評価結果を表3に示した。
保形性試験においては、フラワーペーストを絞り袋に入れて菊型口金でポリカップに花型に絞り、蓋をして5℃の恒温槽に24時間おき、ダレの状況を観察した。

◆風味
+ コントロールと比較して、より厚みのある風味を有している。
± コントロールと同様の風味を有している。
- コントロールと比較して、味の厚みに乏しい。
-- コントロールと比較して味に厚みがなく、風味が不良である。

◆食感
+ コントロールよりも滑らかな口当たりである。
± コントロールと同様の口当たりである。
- コントロールと比較して、糊感があり、べとつく口当たりである。

◆保型性
+ コントロールと比較して、より保型性が良好である。
± コントロールと同様の保型性である
- コントロールと比較して、保型性にやや乏しい。
-- コントロールと比較して、保型性に乏しい。
【0083】
【表3】
【0084】
【表4】
【0085】
比較例1~2品、実施例1~4品について述べる。
食物繊維とエリスリトールを含有しない比較例1品は、実施例1~4品やコントロール品と比較して、粘弾性に乏しく、保型性に欠ける物性となることを確認した。比較例1品の配合にエリスリトールを加えた比較例2品においても、程度の差はあるが、同様の傾向がみられた他、比較例1品と比較例2品では製造後1週間で経時的な離水がみられた。
このことから、フラワーペーストを低糖質化した場合であっても、食物繊維と糖アルコールを併用することで、風味や食感、保型性が維持されることが示唆された。
また、コントロールと実施例1~3品を比較すると、水あめに代えて糖アルコールであるエリスリトールを使用した場合であっても、食物繊維の量を適宜調整することで、風味や食感、保型性を損ねることなく、コントロール品と比して、低糖質化されたフラワーペーストが得られることが分かった。
さらに、実施例4より、食物繊維の種類を変えても、低糖質化されたフラワーペーストを得られることが分かった。
【0086】
油分含量について検討を行った、比較例3~4品、実施例1品、実施例5~7品について述べる。
実施例1品、実施例5~7品、比較例4品を比較すると、フラワーペースト中の油脂の含有量が増加するほどに、より厚みのある風味が得られることを確認した。一方、フラワーペースト中の油脂の含有量が一定量を超えて含有されると、保型性が悪化する傾向がみられた。
実施例5品とコントロール品とを比較して、油脂の含量が少ない範囲であっても、食物繊維を使用することにより、コントロール品と同様の風味や食感、物性を有するフラワーペーストを得ることができることが確認された。
一方で、実施例1品、実施例5~7品、コントロール品を比較すると、油脂の含量が最も少ない実施例5品については、24時間以降、継続的に評価すると、保型性が損なわれやすい傾向にあることが確認された。
また、油脂を含有しない比較例3品は、コントロール品や実施例1品と比較して、フラワーペースト特有のボディ感や厚みのある風味が乏しかった。また、他のフラワーペーストと比較して糊感が強く、食感も不良であった。また、保型性も不良であった。
【0087】
糖類の含量を低減させた、実施例8~13品について述べる。
実施例8~13品においては、糖アルコール中のエリスリトールの含有比率を変化させても、風味や食感、保型性について、コントロール同様の性状を得られることを確認した。このことから、エリスリトール含量を高めることで得られるフラワーペーストの性状を損ねることなく、実質的な糖質含量を大きく低減できることが示唆された。
一方、実施例12品と実施例13品においては、製造後2週間時点でエリスリトールの結晶と思しきものが表面に析出し、また、風味が低下しており、商品価値が低下しやすいことが確認された。
【0088】
実施例8品、実施例14~15品について述べる。
これらの検討から、フラワーペースト中の澱粉の含有量を低減させた場合であっても、例えば食物繊維の含有量を適宜調整することにより、コントロール品同様の性状を得ることが可能であることが確認された。
【0089】
<ベーカリー試験>
コントロール品、実施例1~15品、及び比較例1~4品のペースト状のフラワーペーストを使用し、下記配合・製法により、フラワーペーストを包餡したベーカリー生地を焼成して、ブッセをそれぞれ得た。
得られたブッセについて、下記の評価基準で評価を行なった。評価結果を表5に示した。

◆保型性評価基準
○:コントロールと同様に良好である。
△:コントロールと比較すると、ダレ気味で、やや生地との間に空隙がある。
×:コントロールと比較すると、激しいダレがみられ、大きな空洞が生じている。

◆食感評価基準
○:コントロールと同様に、良好な口当たりである。
△:コントロールと比較すると、やや糊感があり、僅かにべとつく口当たりである。
×:コントロールと比較すると、強く糊感があり、べとつく口当たりである。
【0090】
(ブッセ用生地の配合)
ブッセ用生地の原料として、薄力粉100質量部、グラニュー糖120質量部、全卵(正味)160質量部、ケーキ用起泡剤(株式会社ADEKA製「ジェノワーズ」)6質量部、製菓用液状油(株式会社ADEKA製「グラシュー」)10質量部、ベーキングパウダー1質量部を用いた。
【0091】
(ブッセ用生地の製法)
全卵、グラニュー糖、ケーキ用起泡剤をミキサーボールに入れ、縦型ミキサーを用いて中速で比重が0.35程度になるまで攪拌した後、薄力粉、ベーキングパウダーを加え、低速でよく混ぜ合わせた。この後、製菓用液状油を加え、比重が0.45程度になるまで攪拌し生地を調製した。
【0092】
(ブッセの製法)
上記のようにして得られたブッセ用生地を、ロール紙を敷いた天板に流して、上火200℃、下火170℃で10分間焼成した。
焼成した生地をφ9.5cmのセルクルで抜き、ここにコントロール品、実施例1~15品、比較例1~4品のフラワーペーストを絞り、未焼成のブッセ用生地でフタをした。
これを、95℃、6分30秒の条件で蒸し、ブッセを得た。
【0093】

【表5】