(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-05
(45)【発行日】2023-07-13
(54)【発明の名称】導電体付き積層体
(51)【国際特許分類】
B32B 7/025 20190101AFI20230706BHJP
B32B 7/12 20060101ALI20230706BHJP
H01P 3/08 20060101ALI20230706BHJP
H01P 3/00 20060101ALI20230706BHJP
【FI】
B32B7/025
B32B7/12
H01P3/08
H01P3/00 100
(21)【出願番号】P 2020555984
(86)(22)【出願日】2019-10-29
(86)【国際出願番号】 JP2019042379
(87)【国際公開番号】W WO2020095761
(87)【国際公開日】2020-05-14
【審査請求日】2022-08-30
(31)【優先権主張番号】P 2018209011
(32)【優先日】2018-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】510191919
【氏名又は名称】エージーシー グラス ユーロップ
【氏名又は名称原語表記】AGC GLASS EUROPE
【住所又は居所原語表記】Avenue Jean Monnet 4, 1348 Louvain-la-Neuve, Belgique
(73)【特許権者】
【識別番号】507090421
【氏名又は名称】エージーシー フラット グラス ノース アメリカ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】AGC FLAT GLASS NORTH AMERICA,INC.
【住所又は居所原語表記】11175 Cicero Dr. Suite 400, Alpharetta, GA 30022, U.S.A.
(73)【特許権者】
【識別番号】516170945
【氏名又は名称】エージーシー ヴィドロ ド ブラジル リミターダ
【氏名又は名称原語表記】AGC Vidros do Brasil Ltda.
【住所又は居所原語表記】Estrada Municipal Doutor Jaime Eduardo Ribeiro Pereira, n 500, Jardim Vista Alegre, Guaratingueta, Sao Paulo, CEP 12523-671, Brasil
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】平松 徹也
(72)【発明者】
【氏名】園田 龍太
(72)【発明者】
【氏名】生熊 良行
(72)【発明者】
【氏名】堀江 昌輝
(72)【発明者】
【氏名】奥田 崚太
【審査官】川井 美佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-066692(JP,A)
【文献】特開2006-287729(JP,A)
【文献】特開2014-216449(JP,A)
【文献】特開2012-151829(JP,A)
【文献】特開2014-168272(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
H01P 3/00-3/20
H01Q 1/00-1/10
H01Q 1/27-1/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面である第1面及び裏面である第2面を有する基板と、
前記基板の前記第1面に、少なくとも第1接着層を有する第1機能層と、第1導電体と、第1保護材とがそれぞれ厚さ方向に順に積層され、
前記基板の前記第2面に、少なくとも第2接着層を有する第2機能層と、第2導電体と、第2保護材とがそれぞれ厚さ方向に順に積層され、
前記第1機能層及び第2機能層の厚さが0.300mm以下であ
り、
前記基板はガラス板である、導電体付き積層体。
【請求項2】
前記第1機能層は、前記第1接着層と、前記第1導電体を補強する第1補強層とを備え、
前記第2機能層は、前記第2接着層と、前記第2導電体を補強する第2補強層とを備える、請求項
1に記載の導電体付き積層体。
【請求項3】
前記第1補強層は、樹脂板を備え、
前記第2補強層は、樹脂板を備える、請求項2に記載の導電体付き積層体。
【請求項4】
前記第1接着層及び前記第2接着層は光学透明粘接着剤である、請求項
1から3のいずれか1項に記載の導電体付き積層体。
【請求項5】
前記第1保護材及び前記第2保護材はガラス板である、請求項
1から4のいずれか1項に記載の導電体付き積層体。
【請求項6】
前記第1保護材及び前記第2保護材は樹脂である、請求項
1から4のいずれか1項に記載の導電体付き積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電体付き積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線通信の高速化及び大容量化を図るため、第4世代移動通信システム(4Generation)及び第5世代移動通信システム(5Generation)用の周波数帯のように、使用する周波数帯域の高周波化が進められている。アンテナ、送信機又は受信機等で用いられる高周波伝送路(高速伝送線路とも言う。)として、絶縁性の基板の片面に伝導体(信号線とグランド線)が備えられたコプレーナ型伝送路、又は基板の一方の片面に信号線が備えられ、他方の片面にグランド線が備えられたマイクロストリップ型伝送路等が知られている(特許文献1等参照)。
【0003】
また、特許文献2には、アンテナ又は電波吸収体を被覆する3層構造の電波透過体が開示されている。この電波透過体は、最外層の第1層に一般の表面仕上げ材が配され、第2層に比誘電率1から1.5の空気又は発砲スチロールが配され、第3層にアクリル樹脂又は塩化ビニル樹脂等の低誘電率材が配されて構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-227720号公報
【文献】特開平6-196915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、上記のような高周波伝送路は、一例として、ポリビニルブチラール(PVB:Polyvinyl Butylal)又はエチレン酢酸ビニル(EVA:Ethylene-Vinyl Acetate)等のいわゆる中間膜を介して基板と導電体とを積層することにより構成される場合がある。しかしながら、上記の中間膜は厚さが最も薄いものでも0.37mmの厚さがあることが知られており、製造上、厚さが最も薄い部分と最も厚い部分との差が、カタログ値に対して10%程度のばらつきがある。このばらつきが大きい場合には、高周波の伝送の際に電波の指向性が悪化したり、周波数がずれたりして十分な高周波伝送特性を得ることができないという問題があった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、十分な高周波伝送特性を得ることができる導電体付き積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の形態は、本発明の目的を達成するために、基板と、少なくとも接着層を有する機能層と、導電体と、保護材とがそれぞれ厚さ方向に順に積層された導電体付き積層体であって、機能層の厚さが0.300mm以下である、導電体付き積層体を提供する。
【0008】
本発明の第2の形態は、本発明の目的を達成するために、表面である第1面及び裏面である第2面を有する基板と、基板の第1面に、少なくとも第1接着層を有する第1機能層と、第1導電体と、第1保護材とがそれぞれ厚さ方向に順に積層され、基板の第2面に、少なくとも第2接着層を有する第2機能層と、第2導電体と、第2保護材とがそれぞれ厚さ方向に順に積層され、第1機能層及び第2機能層の厚さが0.300mm以下である、導電体付積層体を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、十分な高周波伝送特性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態に係る導電体付き積層体が適用されたアンテナユニットの平面図
【
図2】
図1の2-2線に沿う導電体付き積層体の拡大断面図
【
図4】第2実施形態に係る導電体付き積層体の要部拡大断面図
【
図5】第3実施形態に係る導電体付き積層体の要部拡大断面図
【
図6】第4実施形態に係る導電体付き積層体の要部拡大断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面に従って本発明に係る導電体付き積層体の好ましい実施形態を説明する。
【0012】
図1は、第1実施形態に係る導電体付き積層体10が適用されたアンテナユニット12の平面図である。
図2は、
図1の2-2線に沿う導電体付き積層体10の拡大断面図である。
【0013】
以下の説明では、理解の容易のため、図面における各部材の縮尺が実際とは異なる場合がある。また、本明細書では、3軸方向(X軸方向、Y軸方向、Z軸方向)の三次元直交座標系を用い、全体形状として長方形に構成されたアンテナユニット12の長辺12Aと平行な方向をX軸方向とし、X軸方向に直交する短辺12Bと平行な方向をY軸方向とし、X軸方向及びY軸方向にそれぞれ直交するアンテナユニット12の厚さ方向と平行な方向をZ軸方向とする。なお、アンテナユニット12の全体形状は、長方形に限定されるものではなく、用途に応じた形状に加工されるものである。
【0014】
図1に示す導電体付き積層体10は、主としてガラス板からなるアンテナユニット12において、アンテナ14とコネクタ16とを接続するための伝送路に適用されたものであるが、導電体付き積層体10の適用箇所はアンテナ14の伝送路に限定されるものではなく、アンテナ14以外の送信機又は受信機等に用いられる高周波伝送路に適用可能である。なお、アンテナ14はアンテナユニット12を構成する一部材である。アンテナ14を構成する金属材料としては、金、銀又は銅等の導電性材料を適用可能である。また、アンテナ14は、光透過性を有することが好ましい。光透過性を有するアンテナ14であれば、意匠性がよく、また、平均日射吸収率を低下させることができるので好ましい。
【0015】
コネクタ16は、例えば同軸ケーブル(不図示)を介して外部機器(不図示)に接続されており、
図3に示すアンテナユニット12の要部斜視図に示すように、アンテナユニット12の端部に位置する導電体付き積層体10に取り付けられる。
図2に示すように、コネクタ16は、コネクタ本体18と、コネクタ本体18からY軸方向に延設されてアンテナユニット12を厚さ方向(Z軸方向)で挟持する二対の脚部20、20…(
図3参照)と、コネクタ本体18からY軸方向に延設された導電ピン22と、を備える。コネクタ16が上記の位置に取り付けられると、導電ピン22が導電体付き積層体10の導電体36に接続される。導電体36については後述する。
【0016】
図2に示す導電体付き積層体10は、以下に説明する第2乃至第4実施形態の基本となる構成要素を備えるものである。その構成は、基板30と、少なくとも接着層32を有する機能層34と、導電体36と、保護材38とがそれぞれ厚さ方向(Z軸方向)に順に積層されており、機能層34の厚さTが0.300mm以下に構成されている。
【0017】
具体的な構成について説明すると、基板30としては、高周波用途、アンテナ用途、電子用途に使われる基板であれば使用可能であり、例えば、ガラス、樹脂、ガラス樹脂複合体(例えば、繊維強化プラスチック)又はセラミックスを適用可能である。基板30の厚さは、一例として0.5mm~10.0mmであり、好ましくは2.5~5.0mmであり、さらに好ましくは3.0mm~3.5mmである。基板30の厚さは、実装における機械的特性、電気的特性により選定することができる。本実施形態では、基板30として、ガラス板が適用されている。なお、本明細書において、数値範囲を示す「~」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
【0018】
基板30に適用されるガラス板としては、透明な無機ガラスを例示することができる。無機ガラスとしては、通常のソーダライムガラス、ホウ珪酸ガラス、無アルカリガラス又は石英ガラス等を例示することができる。成形法についても特に限定されないが、例えば、フロート法によって製造されたフロート板ガラスを例示することができる。また、着色成分を添加しない無色透明な材質を用いてもよく、あるいは、着色された着色透明な材質を用いてもよい。
【0019】
基板30に適用される樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリイミドを例示することができる。
【0020】
機能層34は、主として接着層32を有し、この接着層32によって導電体36が基板30に接着される。
図2に示すように、機能層34が接着層32のみによって構成されている場合には、機能層34の厚さは、0.010mm以上が好ましく、0.020mm以上がより好ましい。機能層34の厚さが0.010mm以上であれば、十分な機械的強度(例えば、せん断破壊強度)がある。また、機能層34の厚さの上限は特に限定されないが、0.10mm以下であってよく、0.050mm以下であってよく、0.030mm以下であってよい。本実施形態では、接着層32として、光学透明粘接着剤が適用されている。接着層32として光学透明粘接着剤を用いることにより、接着層32は透明性、透視性を有し、導電体付き積層体10の意匠性がよい。光学透明粘接着剤としては、OCA(Optical Clear Adhesive)と呼ばれるシート状のアクリル系、シリコーン系、ウレタン系等の材料が挙げられる。
【0021】
導電体36としては、例えば金、銀、銅、アルミニウム、クロム又はモリブデン等の導電性材料により構成された導電体を適用可能である。導電体36の厚さは、特に限定されるものではないが、一例として0.002mm~0.020mmである。導電体36の厚さが0.002mm以上であれば、アンテナを含む高周波回路に適した低い抵抗値を得ることができる。また、導電体36の厚さが0.020mm以下であれば、エッチング等によるパターニングがしやすい。本実施形態では、導電体36として、銅製の導電体が適用されている。
【0022】
導電体36は、メッシュ状に形成されてもよい。ここで、メッシュとは、導電体36の平面に網目状の透孔が空いた状態をいう。導電体36をメッシュ状に形成することにより、導電体36は透視性、透光性を有し、導電体付き積層体10の意匠性がよい。
【0023】
導電体36がメッシュ状に形成される場合、メッシュの目は方形であってもよく、菱形であってもよい。メッシュの目を方形に形成する場合、メッシュの目は正方形であることが好ましい。メッシュの目が正方形であれば、意匠性が良い。また、自己組織化法によるランダム形状でもよい。ランダム形状にすることでモアレを防ぐことができる。メッシュの線幅は、5~30μmが好ましく、6~15μmがより好ましい。メッシュの線間隔は、50~500μmが好ましく、100~300μmがより好ましい。
【0024】
導電体36がメッシュ状に形成され、接着層32が光学透明粘接着剤である場合、接着層32の厚さは、導電体36の厚さよりも厚いことが好ましい。接着層32の厚さが導電体36の厚さよりも厚ければ、メッシュの目に光学透明粘接着剤が入り込みやすく、導電体付き積層体10の透明性、透視性が向上し、導電体付き積層体10の意匠性がよい。
【0025】
導電体36の開口率は、80%以上が好ましく、90%以上がより好ましい。開口率は、導電体36の開口部を含めた面積当たりの開口部の面積の割合である。
【0026】
保護材38は、導電体36を保護する板状体であり、例えば、ポリビニルブチラール又はエチレン酢酸ビニル等の中間膜40を介して導電体36に接着される。すなわち、導電体付き積層体10によれば、導電体36を保護するために中間膜40を介して保護材38が導電体36に積層されている。なお、中間膜40に限定されず、光学透明粘接着剤等のような他の粘着剤を用いて保護材38を導電体36に接着してもよい。中間膜40を使用した場合の中間膜40の厚さは、例えば0.37mmである。また、中間膜40または光学透明粘接着剤等のような他の粘着剤には、紫外線吸収剤を含んでもよい。紫外線吸収剤を含むことにより、紫外線による機能層34の劣化を防ぐことができる。
【0027】
保護材38としては、例えば、ソーダライムガラス、無アルカリガラス、ボロシリケートガラス等のガラス、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン等の樹脂、ガラス樹脂複合体(例えば、繊維強化プラスチック)又はセラミックスを適用可能である。保護材38により、紫外線、湿気(水蒸気)、水による機能層34の劣化、機械的接触による機能層34の損傷、破壊を防ぐことができる。この保護材38の厚さは、一例として0.05mm~5.0mmである。保護材38の厚さが0.05mm以上であれば、上述した機能層34の劣化、機械的接触による機能層34の損傷、破壊を防ぐことができる。保護材38の厚さは、0.10mm以上であってもよく、0.50mm以上であってもよく、1.0mm以上であってもよい。また、保護材38の厚さが5.0mm以下であれば、保護材を設けることにより生じる空気とのインピーダンスの不整合の影響を抑えることができる。保護材38の厚さは、3.0mm以下であってもよく、2.0mm以下であってもよい。本実施形態では、保護材38として、ガラス板が適用されている。なお、保護材38に適用されるガラス板の材質も、基板30に適用されるガラス板の材質と同様なので説明は省略する。
【0028】
また、保護材38としては、厚さが0.05mm~0.20mmのフィルム状のポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン等の樹脂を適用してもよい。
【0029】
ここで、第1実施形態の導電体付き積層体10と、中間膜によって導電体を基板に接着する従来の導電体付き積層体とを比較する。
【0030】
従来の中間膜に対応する導電体付き積層体10の構成要素は機能層34である。この機能層34の厚さTは、0.020mm~0.050mmであり、0.300mm以下の厚さに構成されているので、中間膜の厚さ(0.37mm以上)よりも薄く、その厚さのばらつきも小さい。したがって、このような機能層34を有する第1実施形態の導電体付き積層体10によれば、中間膜を使用する従来の導電体付き積層体と比較して、高周波伝送の電波の指向性が改善され、また周波数のずれも抑えることができるので、十分な高周波伝送特性を得ることができる。
【0031】
なお、接着剤として中間膜を使用した場合、中間膜は伸縮するため中間膜の端部にダレ(基板の面に対して傾斜した部分)が生じたり、伸長して基板の端部から外側にはみ出したり、収縮して基板の端部から内側に引っ込んだりする場合がある。このようなダレ、はみだし、引っ込みが生じると、導電体と導電ピン22との接続に不具合が生じる場合があるが、本実施形態のように接着層32として光学透明粘接着剤を使用したものは接着層32が伸縮しないので、導電体36と導電ピン22とを確実に接続することができる。
【0032】
図4は、第2実施形態に係る導電体付き積層体50の要部拡大断面図である。この導電体付き積層体50を説明するに際し、
図2で説明した第1実施形態に係る導電体付き積層体10と同一若しくは類似の部材については同一の符号を付して説明する。
【0033】
図4に示す導電体付き積層体50は、厚さが20μm以下(例えば、10μm)の導電体36が適用されている。このように厚さの薄い導電体36の場合には、この導電体36を基板30に接着層32を介して直接接着して伝送路の形態にパターニングすることは難しい。そこで、このような場合には、樹脂板52に導電体36を接着剤54により接着した積層体56が用いられる。導電体36は、積層体56の状態で伝送路の形態にパターニングされ、その後、樹脂板52が接着層32を介して基板30に接着される。導電体36が10μm未満(例えば、5μm)の場合、接着剤54を用いる代わりに、樹脂板52に導電体36を蒸着などにより、直接設けてもよい。第2実施形態の導電体付き積層体50では、接着層32、樹脂板52及び接着剤54によって機能層34が構成され、樹脂板52及び接着剤54によって導電体36に対する補強層58が構成される。
【0034】
樹脂板52としては、例えば、ポリエチレンテレフタラート製、ポリエチレン製又はポリイミド製で厚さが0.05~0.20mmの板状体を適用可能である。本実施形態では0.10mmのポリエチレンテレフタラートの板状体を用いた。導電体付き積層体50が導電体36と保護材38との間に中間膜40を有する場合に、導電体付き積層体50の製造工程において、樹脂板52は高温になる。樹脂板52は、高温下で変形しないように、融点が高く、耐熱性の良い材料が好ましく、ポリエチレンテレフタラート(融点は約225℃)、ポリイミドがより好ましい。また、接着剤54としては、厚さが0.005mm~0.02mm(例えば、0.01mm)のアクリル系接着剤を例示することができる。また、接着剤54としては、他にシリコーン系接着剤、ウレタン系材料接着剤を例示することができる。
【0035】
補強層58の厚さは、0.06mm~0.22mmが好ましい。
【0036】
第2実施形態の導電体付き積層体50においても、接着層32、樹脂板52及び接着剤54からなる機能層34の厚さは例えば0.135mmであり、0.300mm以下なので、中間膜の厚さ(0.37mm以上)よりも薄く、その厚さのばらつきも小さい。したがって、第2実施形態の導電体付き積層体50においても、中間膜を使用する従来の導電体付き積層体と比較して、高周波伝送の電波の指向性が改善され、また周波数のずれも抑えることができるので、十分な高周波伝送特性を得ることができる。
【0037】
図5は、第3実施形態に係る導電体付き積層体60の要部拡大断面図である。この導電体付き積層体60を説明するに際し、
図2で説明した第1実施形態に係る導電体付き積層体10と同一若しくは類似の部材については同一の符号を付して説明する。
【0038】
導電体付き積層体60は、基板30の表面(本発明の第1面に相当)30Aに、少なくとも接着層(本発明の第1接着層に相当)32を有する機能層(本発明の第1機能層に相当)34と、導電体(本発明の第1導電体に相当)36と、保護材(本発明の第1保護材に相当)とがそれぞれ厚さ方向に順に積層されている。また、基板30の裏面(本発明の第2面に相当)30Bに、少なくとも接着層(本発明の第2接着層に相当)32を有する機能層(本発明の第2機能層に相当)34と、導電体(本発明の第2導電体に相当)36と、保護材(本発明の第2保護材に相当)38とがそれぞれ厚さ方向に順に積層されている。そして、各々の機能層34、34の厚さが0.300mm以下に構成されている。
【0039】
また、導電体付き積層体60の機能層34、34は、接着層32のみから構成されているので、その厚さは0.020mm~0.030mmであり、好適には0.025mmである。
【0040】
第3実施形態の導電体付き積層体60においても、機能層34、34の各々の厚さは例えば0.025mmであり、0.300mm以下なので、第1及び第2実施形態の導電体付き積層体10、50と同様に十分な高周波伝送特性を得ることができる。
【0041】
図6は、第4実施形態に係る導電体付き積層体70の要部拡大断面図である。この導電体付き積層体70を説明するに際し、
図4で説明した第2実施形態に係る導電体付き積層体50、及び
図5で説明した第3実施形態に係る導電体付き積層体60と同一若しくは類似の部材については同一の符号を付して説明する。
【0042】
導電体付き積層体70は、基板30の表面30A側に、機能層34が備えられている。この機能層34は、接着層32と、樹脂板52及び接着剤54からなる補強層(本発明の第1補強層に相当)58と、を備えている。また、基板30の裏面30B側に、機能層34が備えられている。この機能層34は、接着層32と、樹脂板52及び接着剤54からなる補強層(本発明の第2補強層に相当)58と、を備えている。そして、各々の機能層34、34の厚さが0.300mm以下に構成されている。
【0043】
第4実施形態の導電体付き積層体70においても、接着層32、樹脂板52及び接着剤54からなる機能層34の厚さは例えば0.135mmであり、0.300mm以下なので、第1乃至第3実施形態の導電体付き積層体10、50、60と同様に十分な高周波伝送特性を得ることができる。
【0044】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。
【0045】
本国際特許出願は、2018年11月6日に出願した日本国特許出願第2018-209011号に基づきその優先権を主張するものであり、日本国特許出願第2018-209011号の全内容を参照によりここに援用する。
【符号の説明】
【0046】
10…導電体付き積層体、12…アンテナユニット、14…アンテナ、16…コネクタ、18…コネクタ本体、20…脚部、22…導電ピン、30…基板、30A…表面、30B…裏面、32…接着層、34…機能層、36…導電体、38…保護材、40…中間膜、50…導電体付き積層体、52…樹脂板、54…接着剤、56…積層体、58…補強層、60…導電体付き積層体、70…導電体付き積層体