(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-06
(45)【発行日】2023-07-14
(54)【発明の名称】舌機能評価装置、舌機能訓練装置、舌機能評価装置の作動方法、及び舌機能訓練装置の作動方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/11 20060101AFI20230707BHJP
A61B 5/22 20060101ALI20230707BHJP
A61H 1/02 20060101ALI20230707BHJP
A63B 23/03 20060101ALI20230707BHJP
【FI】
A61B5/11 320
A61B5/22 200
A61H1/02 Z
A63B23/03
(21)【出願番号】P 2020123571
(22)【出願日】2020-07-20
【審査請求日】2023-02-16
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504165591
【氏名又は名称】国立大学法人岩手大学
(74)【代理人】
【識別番号】100098545
【氏名又は名称】阿部 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100189717
【氏名又は名称】太田 貴章
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 誠
【審査官】藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-028581(JP,A)
【文献】特開2018-187088(JP,A)
【文献】特開2018-042925(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0183107(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/11
A61B 5/22
A61H 1/00-1/02
A61H 99/00
A63B 23/03
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
舌部を接触させる面材と、
前記舌部が前記面材に加えた合力の作用点
の位置を検出するセンサと
を備えた舌機能評価装置であって、
前記
作用点における前記舌部による接触力が設定値以上である前記作用点の
前記位置の時間経過に伴う運動軌跡
が、前記舌部を動作させる目標運動軌跡にどれだけ沿っているかによって、前記舌部の運動機能を評価する
ことを特徴とする舌機能評価装置。
【請求項2】
前記センサでは、前記作用点における
前記接触力の大きさを検出する
ことを特徴とする請求項1に記載の舌機能評価装置。
【請求項3】
前記運動軌跡を表示する表示部を備え、
前記表示部に
、前記接触力が
前記設定値以上であるときの前記作用点を表示する
ことを特徴とする
請求項1又は請求項2に記載の舌機能評価装置。
【請求項4】
前記表示部に、前記舌部を動作させる
前記目標運動軌跡を表示する
ことを特徴とする請求項3に記載の舌機能評価装置。
【請求項5】
前記面材を、前記舌部を接触させる舌接触側面材と、前記センサを設置するセンサ側面材とで形成した
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の舌機能評価装置。
【請求項6】
舌部を接触させる面材と、
前記舌部が前記面材に加えた合力の作用点
の位置を検出するセンサと、
前記
作用点における前記舌部による接触力が設定値以上である前記作用点の
前記位置の時間経過に伴う運動軌跡
、及び前記舌部を動作させる目標運動軌跡を表示する表示部と
を備え
、
前記舌部の動作方向を意識させ、前記舌部を訓練させる
ことを特徴とする舌機能訓練装置。
【請求項7】
前記センサでは、前記作用点における
前記接触力の大きさを検出し、
前記表示部では、前記接触力の
前記大きさについても表示する
ことを特徴とする請求項6に記載の舌機能訓練装置。
【請求項8】
前記接触力を、前記センサで検出される前記接触力が設定値以上であるときに表示する
ことを特徴とする請求項7に記載の舌機能訓練装置。
【請求項9】
前記表示部に、前記舌部を動作させる
前記目標運動軌跡を表示する
ことを特徴とする請求項6から請求項8のいずれか1項に記載の舌機能訓練装置。
【請求項10】
前記面材を、前記舌部を接触させる舌接触側面材と、前記センサを設置するセンサ側面材とで形成した
ことを特徴とする請求項6から請求項9のいずれか1項に記載の舌機能訓練装置。
【請求項11】
舌部を接触させる面材と、
前記舌部が前記面材に加えた合力の作用点の位置を検出するセンサと
を備えた舌機能評価装置の作動方法であって、
前記舌機能評価装置が、
前記作用点
の前記位置を検出し、
前記作用点における前記舌部による接触力が設定値以上である前記作用点
の前記位置の時間経過に伴う運動軌跡
が、前記舌部を動作させる目標運動軌跡にどれだけ沿っているかによって、前記舌部の運動機能を評価する
ことを特徴とする舌機能評価
装置の作動方法。
【請求項12】
前記舌機能評価装置が、
前記作用点における
前記接触力の大きさについても評価する
ことを特徴とする請求項11に記載の舌機能評価
装置の作動方法。
【請求項13】
前記舌機能評価装置では、
前記目標運動軌跡
があらかじめ設定
され、
前記運動軌跡と前記目標運動軌跡との一致度合いから前記舌機能を評価する
ことを特徴とする請求項11又は請求項12に記載の舌機能評価
装置の作動方法。
【請求項14】
舌部を接触させる面材と、
前記舌部が前記面材に加えた合力の作用点の位置を検出するセンサと
を備えた舌機能訓練装置の作動方法であって、
前記舌機能訓練装置が、
前記作用点
の位置を検出し、
前記作用点における前記舌部による接触力が設定値以上である前記作用点
の前記位置の時間経過に伴う運動軌跡
、及び前記舌部を動作させる目標運動軌跡を表示
し、
前記舌機能訓練装置では、前記舌部の動作方向を意識させ、前記舌部を訓練させる
ことを特徴とする舌機能訓練
装置の作動方法。
【請求項15】
前記舌機能訓練装置では、前記作用点における
前記舌部による接触力の大きさについても表示する
ことを特徴とする請求項14に記載の舌機能訓練
装置の作動方法。
【請求項16】
前記舌機能訓練装置では、前記目標運動軌跡
があらかじめ設定
され、
前記目標運動軌跡を表示する
ことを特徴とする請求項14又は請求項15に記載の舌機能訓練
装置の作動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、舌機能を評価する舌機能評価装置、舌機能評価装置の作動方法、舌機能を高める訓練を行える舌機能訓練装置、舌機能訓練装置の作動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
咀嚼・摂食・嚥下・構音などのあらゆる口腔運動において、舌は重要な役割を担っている。
そこで本発明者らは、舌部の力の発揮能力や調整能力を評価することができ、例えば嚥下障害などの機能低下を多面的に定量評価することができる舌機能評価方法、及びビジュアルフィードバックによって被訓練者に目標値に沿って舌部の力を調整することを促すことができ、瞬発力、巧緻性、筋力、又は持久力を高める訓練を効果的に行うことができる舌機能訓練方法を提案している(特許文献1)。
また本発明者らは、任意の方向への舌力の測定を正確に行うことができる舌接触器具を提案している(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-42925号公報
【文献】特開2020-28581号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1及び特許文献2で提案した発明は、舌力の大きさや、その調整能力を正確に測ることを目的としてきたが、舌部の位置を変えずに、力の大きさのみを変化させる能力を評価、又は訓練するものであり、舌部の移動、すなわち舌部の運動軌跡を評価する又は舌部の動かし方を訓練するものではない。
【0005】
本発明は、舌部の運動軌跡から舌部の運動機能を評価することができる舌機能評価装置及び舌機能評価装置の作動方法を提供することを目的とする。
また本発明は、被訓練者に舌部の実際の運動軌跡を見せることができる舌機能訓練装置及び舌機能訓練装置の作動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の本発明の舌機能評価装置は、舌部を接触させる面材10と、前記舌部が前記面材10に加えた合力の作用点の位置を検出するセンサ20とを備えた舌機能評価装置であって、前記作用点における前記舌部による接触力が設定値以上である前記作用点の前記位置の時間経過に伴う運動軌跡が、前記舌部を動作させる目標運動軌跡にどれだけ沿っているかによって、前記舌部の運動機能を評価することを特徴とする。
請求項2記載の本発明は、請求項1に記載の舌機能評価装置において、前記センサ20では、前記作用点における前記接触力の大きさを検出することを特徴とする。
請求項3記載の本発明は、請求項1又は請求項2に記載の舌機能評価装置において、前記運動軌跡を表示する表示部30を備え、前記表示部30に、前記接触力が前記設定値以上であるときの前記作用点を表示することを特徴とする。
請求項4記載の本発明は、請求項3に記載の舌機能評価装置において、前記表示部30に、前記舌部を動作させる前記目標運動軌跡を表示することを特徴とする。
請求項5記載の本発明は、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の舌機能評価装置において、前記面材10を、前記舌部を接触させる舌接触側面材12と、前記センサ20を設置するセンサ側面材11とで形成したことを特徴とする。
請求項6記載の本発明の舌機能訓練装置は、舌部を接触させる面材10と、前記舌部が前記面材10に加えた合力の作用点の位置を検出するセンサ20と、前記作用点における前記舌部による接触力が設定値以上である前記作用点の前記位置の時間経過に伴う運動軌跡、及び前記舌部を動作させる目標運動軌跡を表示する表示部30とを備え、前記舌部の動作方向を意識させ、前記舌部を訓練させることを特徴とする。
請求項7記載の本発明は、請求項6に記載の舌機能訓練装置において、前記センサ20では、前記作用点における前記接触力の大きさを検出し、前記表示部30では、前記接触力の前記大きさについても表示することを特徴とする。
請求項8記載の本発明は、請求項7に記載の舌機能訓練装置において、前記接触力を、前記センサ20で検出される前記接触力が設定値以上であるときに表示することを特徴とする。
請求項9記載の本発明は、請求項6から請求項8のいずれか1項に記載の舌機能訓練装置において、前記表示部30に、前記舌部を動作させる前記目標運動軌跡を表示することを特徴とする。
請求項10記載の本発明は、請求項6から請求項9のいずれか1項に記載の舌機能訓練装置において、前記面材10を、前記舌部を接触させる舌接触側面材12と、前記センサ20を設置するセンサ側面材11とで形成したことを特徴とする。
請求項11記載の本発明の舌機能評価装置の作動方法は、舌部を接触させる面材と、前記舌部が前記面材に加えた合力の作用点の位置を検出するセンサとを備えた舌機能評価装置の作動方法であって、前記舌機能評価装置が、前記作用点の前記位置を検出し、前記作用点における前記舌部による接触力が設定値以上である前記作用点の前記位置の時間経過に伴う運動軌跡が、前記舌部を動作させる目標運動軌跡にどれだけ沿っているかによって、前記舌部の運動機能を評価することを特徴とする。
請求項12記載の本発明は、請求項11に記載の舌機能評価装置の作動方法において、前記舌機能評価装置が、前記作用点における前記接触力の大きさについても評価することを特徴とする。
請求項13記載の本発明は、請求項11又は請求項12に記載の舌機能評価装置の作動方法において、前記舌機能評価装置では、前記目標運動軌跡があらかじめ設定され、前記運動軌跡と前記目標運動軌跡との一致度合いから前記舌機能を評価することを特徴とする。
請求項14記載の本発明の舌機能訓練装置の作動方法は、舌部を接触させる面材と、前記舌部が前記面材に加えた合力の作用点の位置を検出するセンサとを備えた舌機能訓練装置の作動方法であって、前記舌機能訓練装置が、前記作用点の位置を検出し、前記作用点における前記舌部による接触力が設定値以上である前記作用点の前記位置の時間経過に伴う運動軌跡、及び前記舌部を動作させる目標運動軌跡を表示し、前記舌機能訓練装置では、前記舌部の動作方向を意識させ、前記舌部を訓練させることを特徴とする。
請求項15記載の本発明は、請求項14に記載の舌機能訓練装置の作動方法において、前記舌機能訓練装置では、前記作用点における前記舌部による接触力の大きさについても表示することを特徴とする。
請求項16記載の本発明は、請求項14又は請求項15に記載の舌機能訓練装置の作動方法において、前記舌機能訓練装置では、前記目標運動軌跡があらかじめ設定され、前記目標運動軌跡を表示することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の舌機能評価装置及び舌機能評価装置の作動方法によれば、舌部の運動機能を評価することができる。
また本発明の舌機能訓練装置及び舌機能訓練装置の作動方法によれば、被訓練者に舌部の実際の運動軌跡を見せることで、舌部の動作方向を意識させることができ、訓練を効果的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施例による舌機能評価・訓練装置を機能実現手段で表したブロック図
【
図3】
図2に示す装置を用いた場合のセンサの座標と作用点の座標を示す説明図
【
図4】
図2に示す装置による計測中の表示部での表示イメージを示す図
【
図5】円運動及び往復直進運動における舌機能評価
装置の作動方法を示す説明図
【
図6】目標運動軌跡を円とした場合の計測結果の一実験例を示す図
【
図7】目標運動軌跡を円とした場合の被験者5名の計測結果であり、各象限ごとの円誤差の平均を示す図
【
図8】目標運動軌跡を円とした場合の被験者5名の計測結果であり、円形度の平均を示す図
【
図9】目標運動軌跡を往復直進とした場合の計測結果の一実験例を示す図
【
図10】目標運動軌跡を往復直進とした場合の被験者5名の計測結果を示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の第1の実施の形態による舌機能評価装置は、舌部を接触させる面材と、舌部が面材に加えた合力の作用点の位置を検出するセンサとを備え、作用点における舌部による接触力が設定値以上である作用点の位置の時間経過に伴う運動軌跡が、舌部を動作させる目標運動軌跡にどれだけ沿っているかによって、舌部の運動機能を評価するものである。本実施の形態によれば、舌部の運動機能を評価することができる。
【0010】
本発明の第2の実施の形態は、第1の実施の形態による舌機能評価装置において、センサでは、作用点における接触力の大きさを検出するものである。本実施の形態によれば、接触力の大きさを検出することで、舌部の運動機能と舌力とをあわせて評価することができる。
【0011】
本発明の第3の実施の形態は、第1又は第2の実施の形態による舌機能評価装置において、運動軌跡を表示する表示部を備え、表示部に、接触力が設定値以上であるときの作用点を表示するものである。本実施の形態によれば、接触していない状態で出されるセンサのノイズを除去することで評価を正しく行うことができ、運動機能と舌力とをあわせて評価した結果を表示することができる。
【0012】
本発明の第4の実施の形態は、第3の実施の形態による舌機能評価装置において、表示部に、舌部を動作させる目標運動軌跡を表示するものである。本実施の形態によれば、目標運動軌跡を表示することで、目標運動軌跡に沿って舌部の移動を促すことができ、目標運動軌跡と舌部の運動軌跡とを比較することで舌機能を評価することができる。
【0013】
本発明の第5の実施の形態は、第1から第4のいずれかの実施の形態による舌機能評価装置において、面材を、舌部を接触させる舌接触側面材と、センサを設置するセンサ側面材とで形成したものである。本実施の形態によれば、舌部に対して安全面や衛生面を舌接触側面材で担保することができ、例えば凹凸によって舌部に対する感覚を付与することができる。
【0014】
本発明の第6の実施の形態による舌機能訓練装置は、舌部を接触させる面材と、舌部が面材に加えた合力の作用点の位置を検出するセンサと、作用点における舌部による接触力が設定値以上である作用点の位置の時間経過に伴う運動軌跡、及び舌部を動作させる目標運動軌跡を表示する表示部とを備え、舌部の動作方向を意識させ、舌部を訓練させるものである。本実施の形態によれば、被訓練者に舌部の実際の運動軌跡、及び舌部を動作させる目標運動軌跡を見せることで、舌部の動作方向を意識させることができ、訓練を効果的に行うことができる。
【0015】
本発明の第7の実施の形態は、第6の実施の形態による舌機能訓練装置において、センサでは、作用点における接触力の大きさを検出し、表示部では、接触力の大きさについても表示するものである。本実施の形態によれば、被訓練者に舌力を動作方向とあわせて意識させることで、舌力の調整を促すことができる。
【0016】
本発明の第8の実施の形態は、第7の実施の形態による舌機能訓練装置において、接触力を、センサで検出される接触力が設定値以上であるときに表示するものである。本実施の形態によれば、舌力の調整を促しつつ、舌部の動作方向を意識させることができる。
【0017】
本発明の第9の実施の形態は、第6から第8のいずれかの実施の形態による舌機能訓練装置において、表示部に、舌部を動作させる目標運動軌跡を表示するものである。本実施の形態によれば、ビジュアルフィードバックによって被訓練者に舌部の動作方向を促すことで、舌部の動かし方を訓練することができる。
【0018】
本発明の第10の実施の形態は、第6から第9のいずれかの実施の形態による舌機能訓練装置において、面材を、舌部を接触させる舌接触側面材と、センサを設置するセンサ側面材とで形成したものである。本実施の形態によれば、舌部に対して安全面や衛生面を舌接触側面材で担保することができ、例えば凹凸によって舌部に対する感覚を付与することができる。
【0019】
本発明の第11の実施の形態による舌機能評価装置の作動方法は、舌部を接触させる面材と、舌部が面材に加えた合力の作用点の位置を検出するセンサとを備え、舌機能評価装置が、作用点の位置を検出し、作用点における舌部による接触力が設定値以上である作用点の位置の時間経過に伴う運動軌跡からが、舌部を動作させる目標運動軌跡にどれだけ沿っているかによって、舌部の運動機能を評価するものである。本実施の形態によれば、舌部の運動機能を評価することができる。
【0020】
本発明の第12の実施の形態は、第11の実施の形態による舌機能評価装置の作動方法において、舌機能評価装置が、作用点における接触力の大きさについても評価するものである。本実施の形態によれば、舌部の運動機能と舌力とをあわせて評価することができる。
【0021】
本発明の第13の実施の形態は、第11又は第12の実施の形態による舌機能評価装置の作動方法において、舌機能評価装置では、目標運動軌跡があらかじめ設定され、運動軌跡と目標運動軌跡との一致度合いから舌機能を評価するものである。本実施の形態によれば、目標運動軌跡と舌部の運動軌跡とを比較することで舌機能を評価することができる。
【0022】
本発明の第14の実施の形態による舌機能訓練装置の作動方法は、舌部を接触させる面材と、舌部が面材に加えた合力の作用点の位置を検出するセンサとを備え、舌機能訓練装置が、作用点の位置を検出し、作用点における舌部による接触力が設定値以上である作用点の位置の時間経過に伴う運動軌跡、及び舌部を動作させる目標運動軌跡を表示し、舌機能訓練装置では、舌部の動作方向を意識させ、舌部を訓練させるものである。本実施の形態によれば、被訓練者に舌部の実際の運動軌跡、及び舌部を動作させる目標運動軌跡を見せることで、舌部の動作方向を意識させることができ、訓練を効果的に行うことができる。
【0023】
本発明の第15の実施の形態は、第14の実施の形態による舌機能訓練装置の作動方法において、舌機能訓練装置では、作用点における舌部による接触力の大きさについても表示するものである。本実施の形態によれば、被訓練者に舌力を動作方向とあわせて意識させることで、舌力の調整を促すことができる。
【0024】
本発明の第16の実施の形態は、第14又は第15の実施の形態による舌機能訓練装置の作動方法において、舌機能訓練装置では、舌部を動作させる目標運動軌跡があらかじめ設定され、目標運動軌跡を表示するものである。本実施の形態によれば、ビジュアルフィードバックによって被訓練者に舌部の動作方向を促すことで、舌部の動かし方を訓練することができる。
【実施例】
【0025】
以下本発明の実施例について図面とともに説明する。
図1は本実施例による舌機能評価・訓練装置を機能実現手段で表したブロック図である。
本実施例による舌機能評価・訓練装置は、舌部を接触させる面材10と、舌部が面材10に加えた合力の作用点(舌部の接触領域における圧力中心)を検出するセンサ20と、センサ20で検出される作用点の時間経過に伴う運動軌跡を表示する表示部30とを備えている。
センサ20では、作用点における接触力の大きさと方向を検出する。
計測部21では、センサ20で検出されるデータを時間の経過とともに計測する。計算部22では計測したデータを基に作用点を算出する。算出された作用点は記憶部23に記憶するとともにデータ出力部24から表示部30に出力する。
設定部40では、接触力の設定値や目標運動軌跡をあらかじめ設定して記憶部23に記憶し、この設定値によってデータ出力部24からの出力を制御し、又は設定した目標運動軌跡のデータをデータ出力部24から表示部30に出力する。
本実施例による装置は、舌機能評価と舌機能訓練とを備えたものとして説明するが、舌機能評価を行うだけの舌機能評価装置、又は舌機能訓練を行うだけの舌機能訓練装置であってもよく、舌機能評価には舌部の検査を含み、舌機能訓練にはリハビリが含まれる。
【0026】
図2は同舌機能検査・訓練装置を示す写真であり、
図2(a)は全体構造を示し、
図2(b)は正面から見た使用状態を示し、
図2(c)は側面から見た使用状態を示し、
図2(d)及び
図2(e)は面材を示している。なお、舌部は一般には舌体と舌根とに分けられ、舌体の先端部を舌尖というが、本実施例では舌尖を舌部としている。
【0027】
図2(a)に示すように、同舌機能検査・訓練装置は、面材10を固定する固定部51と、被検査者又は被訓練者の顔を固定する顔固定部52とを備えている。表示部30としてのモニターは、面材10から約50cm離れた位置に設置している。表示部30には、目標運動軌跡を表示し、舌部の作用点をリアルタイムで表示する。表示部30には、センサ20で検出される接触力が設定値以上であるときの作用点をプロット表示する。
【0028】
図2(a)、
図2(b)、
図2(c)に示すように、顔固定部52は、両耳を固定する耳固定部52aと、眉間を固定する額固定部52bとを備えている。耳固定部52aには耳栓を用いている。眉間を決定して額固定部52bに額を当接し、フランクフルト平面が水平となるように耳固定部52aで顔を固定する。ここでフランクフルト平面とは、左右の外耳上縁と眼窩下の3点を結んでできる水平面である。
面材10は、面材10の舌部接触面が挺舌長さ(最大突出し時の切歯から舌尖までの長さ)の中間位置で、挺舌長さを測った際の舌尖の高さに位置させる。
【0029】
面材10は、
図2(d)に示すセンサ側面材11と、
図2(e)に示す舌接触側面材12とで形成している。
面材10は、顔を固定した状態で舌部、特に舌尖が十分に移動できる面領域を有していればよく、平面でも曲面でもよく、平面と曲面とで構成されてもよい。
図2(d)に示すセンサ側面材11は、高さ60mm、幅70mm、厚さ5mmのアルミ材を用い、中央部にセンサ20として6軸力覚センサ(TFSA12-25、日本リニアックス株式会社製)を設置している。
なお、本実施例のように6軸力覚センサを用いれば一つのセンサで作用点や作用点における接触力の大きさと方向を検出できるが、1軸力覚センサや3軸力覚センサ、又はひずみゲージなどを複数個配置して用いてもよい。例えば、面材10の四隅にそれぞれ1軸の力覚センサ(ロードセル)を設けることで、作用点と面材10に垂直方向の接触力が求められる。また、重心動揺計のように3つのセンサを配置してもよい。
また、3軸力覚センサを複数個配置することでも作用点と接触力の大きさと方向を求めることができる。また、センサ20として触覚センサ(面圧センサ)素子を用いることもできる。触覚センサ素子を用いる場合には、複数の触覚センサ素子と面材10とで触覚アレイセンサが構成される。
図2(e)に示す舌接触側面材12は、高さ60mm、幅70mm、厚さ3mmの樹脂材を用いている。
このように、舌接触側面材12を設けることで、舌部に対して安全面や衛生面を担保することができる。また、舌接触側面材12の舌接触面に例えば凹凸を形成することで、舌部に対する感覚を付与することができ、舌部を接触させる基準点や移動軌跡の案内とすることができる。
なお、舌接触側面材12に更にラップフィルムやシリコンシートなど生体適合性のある安全かつ衛生的な材料を設けることで、更に衛生面を担保することができる。
【0030】
図3は、
図2に示す装置を用いた場合のセンサの座標と作用点の座標を示す説明図である。
図2に示す装置では、舌部の発揮力とモーメントを計測する。計測した発揮力及びモーメントから舌部が接触する作用点P(Px、Py、Pz)を導出する。
図3(a)、
図3(b)に示すように、センサ20のXs、Ys、Zs軸方向の発揮力と各軸まわりのモーメントをそれぞれFx、Fy、Fzと、Mx、My、Mzとする。
舌の力の作用点P(Px、Py、Pz)は
図3(c)に示す式で求めた。
センサ20は、面材10の舌部接触面と反対の面に取り付けており、面材10の厚さを8mm、センサ20の原点から面材10までを7.5mmとしているためz=15.5mmとなる。
なお、軸方向の発揮力Fx、Fy、Fzは、接触力の大きさと方向を示すベクトルである。
【0031】
図4は、
図2に示す装置による計測中の表示部での表示イメージを示している。
図4に示すように、目標運動軌跡と、接触力が設定値以上であるときの舌部の作用点がプロットにより表示される。目標運動軌跡は計測開始時から計測終了時まで表示し、作用点は計測中リアルタイムに順次表示される。
【0032】
図4(a)は、目標運動軌跡を円とし、円運動における舌機能を評価する方法を示している。
図4(a)では、目標円の軌跡をどれだけ正確に舌部でなぞることができるかを計測するものである。
目標円の中心を原点として半径を例えば10mmとする。計測開始点は目標円の上端点とし、上端点を中心とした半径3mmの円の範囲内に舌部の作用点が所定時間維持されると計測を開始し、舌部が面材10から離れると計測を終了する。計測開始における所定時間は例えば3秒間とし、計測終了は接触力がゼロを検出したタイミング、又は接触力ゼロ検出が所定時間経過したタイミングとすることができる。
【0033】
図4(b)及び
図4(c)は、目標運動軌跡を直線とし、往復直進運動における舌機能を評価する方法を示している。
図4(b)及び
図4(c)では、決められた2点(目標点)間を所定時間にどれだけ早く正確に往復できるかを計測するものである。
各目標点は、例えば、原点から左右(X軸上)又は上下(Y軸上)にプラスマイナスそれぞれ10mm(目標点間の距離は20mm)とし、所定時間を15秒とする。計測開始点は、
図4(b)では左右いずれかの目標点、
図4(c)では上下いずれかの目標点とし、計測開始点を中心とした半径3mmの円の範囲内に舌部の作用点が所定時間維持されると計測を開始し、所定時間が経過すると計測を終了する。
【0034】
図5は円運動及び往復直進運動における舌機能評価
装置の作動方法を示す説明図である。
図5(a)に示すように、円運動では、プロットされた作用点P(Px、Py)と目標円(半径10mm)との最短距離を円誤差Ec[mm]とし、作用点が目標円の外側にある場合は正方向、内側にある場合は負方向とすると、円誤差Ecは式1で表される。
Ec=√(Px
2+Py
2)-10 (式1)
【0035】
Ecの絶対値を絶対円誤差[mm]とする。
そして、円運動計測においてプロットされた点を10[deg]ごとに平均化してできた点を結んでできる多角形の面積をS[mm2]、周囲長をL[mm]、円形度をCとすると、円形度Cは式2で表される。
C=4πS/L2 (式2)
円形度Cは、最大値を1とし、1に近いほど円に近い図形となる。
【0036】
図5(b)に示すように、往復運動では、折り返し点と目標点との差(左右の計測はx方向、上下の計測はy方向)を往復誤差Er[mm]とし、折り返し点が目標点より原点側にある場合は負方向とし、反対側にある場合は正方向とする。
図5(b)では、縦軸をX座標[cm]又はY座標[cm]、横軸をプロット番号(時間)としている。
左右の場合には、
Er=|Px|-10
上下の場合には、
Er=|Py|-10
とする。|Px|はPxの絶対値、|Py|はPyの絶対値である。
往復直進運動が左右方向であれば、どれだけ縦方向に目標点から離れたか(上方向を正方向、下方向を負方向)、往復直進運動が上下方向であれば、どれだけ横方向に目標点から離れたか(右方向を正方向、左方向を負方向)を、往復垂直誤差Erv[mm]として表す。
往復直進運動が左右方向の場合には、
Erv=y
往復直進運動が上下方向の場合には、
Erv=x
とする。
【0037】
図6は、目標運動軌跡を円とした場合の計測結果の一実験例を示す図である。
図6(a)は開眼で右回りの舌部の作用点の運動軌跡、
図6(b)は閉眼で右回りの舌部の作用点の運動軌跡、
図6(c)は開眼で左回りの舌部の作用点の運動軌跡、
図6(d)は閉眼で左回りの舌部の作用点の運動軌跡を示し、1目盛りは10mmである。
図6(a)に示すように、右回り開眼では概ね目標円をなぞることができているが、
図6(b)に示すように、右回り閉眼では第4象限に入ったあたりから、目標円の外側に膨らみはじめ、第3象限に入るあたりから目標円に近づく軌跡を描いている。
また
図6(c)に示すように、左回り開眼は概ね目標円をなぞることはできているが、
図6(d)に示すように、左回り閉眼では第3象限に入るあたりから目標円の外側に膨らみはじめ、第4象限に入るあたりから目標円に近づく軌跡を描いている。
【0038】
図7及び
図8は、目標運動軌跡を円とした場合の被験者5名の計測結果を示す図である。
図7は各象限ごとの円誤差の平均を示す図、
図8は円形度の平均を示す図である。
被験者は、健常若年者5名(男性4名、女性1名、年齢23.2±0.45歳、身長164.7±6.5cm、体重59.7±11.4kg、mean±SD)である。
被験者は、開眼状態で右回り1周を3回行い、閉眼状態で右回り1周を3回行う。これを左回りでも同様に行って1セットとし、被験者1人当たり3セット計測した。閉眼状態の計測では、開始点を合わせて作用点が黒から赤になるまでは開眼状態で行った。接触力が0.4N以上のときの作用点を計測し、舌部が面材10から離れると計測終了とした。
【0039】
図7に示すように、右回り、左回りどちらも開眼に比べ閉眼のほうが円誤差は大きくなった。また第1、2象限に比べ第3、4象限では右回り左回り両方とも開眼、閉眼の円誤差の差が大きくなっており、右回り閉眼では第4象限(右下)、左回り閉眼では第3象限(左下)のときに円誤差(正方向)が最大となっている。
図8に示すように、円形度は右回り開眼、右回り閉眼、左回り開眼、左回り閉眼で大差は見られなかった。正方形の円形度はおよそ0.785で、正五角形の円形度はおよそ0.865となっているため、円運動の計測で描かれた図形は正方形もしくは正五角形に近い図形となったと考えられる。
【0040】
図9は、目標運動軌跡を往復直進とした場合の計測結果の一実験例を示す図である。
図9(a)は開眼で左右方向の舌部の作用点の運動軌跡、
図9(b)は閉眼で左右方向の舌部の作用点の運動軌跡、
図9(c)は開眼で上下方向の舌部の作用点の運動軌跡、
図9(d)は閉眼で上下方向の舌部の作用点の運動軌跡を示し、1目盛りは10mmである。
【0041】
図10は、目標運動軌跡を往復直進とした場合の被験者5名の計測結果を示す図である。
被験者は、健常若年者5名(男性4名、女性1名、年齢23.2±0.45歳、身長164.7±6.5cm、体重59.7±11.4kg、mean±SD)である。
被験者は、開眼状態と閉眼状態で、左右方向と上下方向、原点から10mm離れた2点の目標点の往復動作をそれぞれ15秒行った。
図10に示すように、左右、上下どちらとも開眼に比べ閉眼のほうが往復誤差は大きくなる傾向を示した。
【0042】
以上のように、本実施例によれば、舌機能評価装置として用いる場合には、舌部を接触させる面材10と、舌部が面材10に加えた合力の作用点を検出するセンサ20とを備え、センサ20で検出される作用点の時間経過に伴う運動軌跡から舌機能を評価することで、舌部の運動機能を評価することができる。
また、舌機能評価装置として用いる場合には、センサ20で作用点における接触力の大きさを検出することで、舌部の運動機能と舌力とをあわせて評価することができる。
また、舌機能評価装置として用いる場合には、センサ20で検出される接触力が設定値以上であるときの作用点を表示し、又は評価対象とすることで、接触していない状態で出力されるセンサ20のノイズを除去することで評価を正しく行うことができ、運動機能と舌力とをあわせて表示又は評価できる。
また、舌機能評価装置として用いる場合には、表示部30に、舌部を動作させる目標運動軌跡を表示することで、目標運動軌跡に沿って舌部の移動を促すことができ、目標運動軌跡と舌部の運動軌跡とを比較することで舌機能を評価することができる。
また、舌機能訓練装置として用いる場合には、舌部を接触させる面材10と、舌部が面材10に加えた合力の作用点を検出するセンサ20と、センサ20で検出される作用点の時間経過に伴う運動軌跡を表示する表示部30とを備え、被訓練者に舌部の実際の運動軌跡を見せることで、舌部の動作方向を意識させることができ、訓練を効果的に行うことができる。
また、舌機能訓練装置として用いる場合には、センサ20では、作用点における接触力の大きさを検出し、表示部30では、接触力の大きさについても表示することで、被訓練者に舌力を動作方向とあわせて意識させ、舌力の調整を促すことができる。
また、舌機能訓練装置として用いる場合には、接触力の表示を、センサ20で検出される接触力が設定値以上であるときに作用点を表示することで行うことで、舌力の調整を促しつつ、舌部の動作方向を意識させることができる。
また、舌機能訓練装置として用いる場合には、表示部30に、舌部を動作させる目標運動軌跡を表示することで、ビジュアルフィードバックによって被訓練者に舌部の動作方向を促すことができ、舌部の動かし方を訓練できる。
また、本実施例による舌機能評価装置の作動方法によれば、面材10に接触させた状態で舌部を移動させ、舌部が面材10に加えた合力の作用点を検出し、検出される作用点の時間経過に伴う運動軌跡から舌機能を評価することで、舌部の運動機能を評価することができる。
また、本実施例による舌機能評価装置の作動方法によれば、作用点における接触力の大きさについても評価することで、舌部の運動機能と舌力とをあわせて評価することができる。
また、本実施例による舌機能評価装置の作動方法によれば、舌部を動作させる目標運動軌跡をあらかじめ設定し、運動軌跡と目標運動軌跡との一致度合いから舌機能を評価することで、目標運動軌跡と舌部の運動軌跡とを比較して舌機能を評価することができる。
また、本実施例による舌機能訓練装置の作動方法によれば、面材10に接触させた状態で舌部を移動させ、舌部が面材10に加えた合力の作用点を検出し、検出される作用点の時間経過に伴う運動軌跡を表示することで、被訓練者に舌部の実際の運動軌跡を見せることができ、舌部の動作方向を意識させ、訓練を効果的に行うことができる。
また、本実施例による舌機能訓練装置の作動方法によれば、作用点における接触力の大きさについても表示することで、被訓練者に舌力を動作方向とあわせて意識させ、舌力の調整を促すことができる。
また、本実施例による舌機能訓練装置の作動方法によれば、舌部を動作させる目標運動軌跡をあらかじめ設定し、目標運動軌跡を表示することで、ビジュアルフィードバックによって被訓練者に舌部の動作方向を促すことができ、舌部の動かし方を訓練することができる。
【0043】
また、本実施例では、目標運動軌跡を、舌部でなぞるラインとして円と直線を示したが、点滅のように、時間経過とともに表示されるポイントであってもよく、更には、点滅表示されるポイントの位置を異ならせて表示するものであってもよい。例えば、もぐら叩きゲームのように、舌部の目標位置を、ランダムな位置に表示し、表示した目標位置を舌部でタップし、指定された舌力を加えると、次の目標位置を表示するという繰り返しを行うことで、規定時間内での正確性やクリアした数を評価する又は訓練に用いることができる。また、反復横跳びのように、左右位置を繰り返しタッピングさせ、どの程度再現性高く、どの程度早く目標位置をタッチできるかを評価する又は訓練に用いることもできる。このような舌部によるタッピングも、時間経過に伴う運動軌跡の一例である。
更には、目標運動軌跡は、舌部でなぞるラインや作用点を示す表示ではなく、舌部で描く文字や図形を表示するものであってもよい。例えば、「ア」「イ」「ウ」のような文字、「☆」「△」「〇」「□」「◇」のような図形を表示し、表示した文字や図形を、舌部でどれだけ大きく描けるか、どれだけ正確な形状を描けるかを評価する又は訓練に用いることができる。
また、各往復の切り替えし点の値の標準偏差や変動係数を用いることで,運動のバラツキ,再現性,(巧緻性)を評価することもできる。例えば、左右往復を繰り返す場合に、左右の切り替えし点の目標位置が同一であっても、ヒトの運動は必ずばらつく。このように到達位置が大きくばらつく人は運動の再現性の低い人と考えることができる。このばらつきは、複数回の到達位置の値の標準偏差又はそれを平均値で除して求める変動係数として数値化することができる。
また,舌部の左右上下方向など各方向への最大到達位置がわかれば、舌部の可動範囲(可動域)も評価でき、舌部をできるだけ遠くに延ばすリーチングのように、可動域を広げる訓練が可能になる。ここで、リーチングでは、舌部をなぞりながら行うか、なぞらずに最大到達位置でタッチする方法でもよい。
また、舌部の運動軌跡の時間変化を、評価対象とし、又は訓練の対象とすることもできる。運動軌跡の時間変化は、速度又は加速度であり、任意の速度で動作させ、速度を規定し、又は可能な限り早く動作させることで、俊敏性や瞬発力を評価し、又は訓練することができる。
また、表示部30において、接触力の大きさと方向とを表示する場合には、ベクトルとして表示することができる他、X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向の力の成分として表示することができる。
また、表示部30では、運動軌跡の他に、目標運動軌跡との誤差、速度、加速度、タッピング回数などの舌機能の評価結果や訓練結果を表示することが好ましく、過去において既に評価や訓練が行われている場合には、過去の評価結果や訓練結果との比較を表示することが更に好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、少なくとも舌部の検査及び舌部の訓練のいずれかを行う舌機能評価・訓練装置に適している。
【符号の説明】
【0045】
10 面材
11 センサ側面材
12 舌接触側面材
20 センサ
21 計測部
22 データ出力部
30 表示部
40 設定部
51 固定部
52 顔固定部
52a 耳固定部
52b 額固定部