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特許7308699熱電対構造、熱処理装置及び熱電対構造の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-06
(45)【発行日】2023-07-14
(54)【発明の名称】熱電対構造、熱処理装置及び熱電対構造の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01K 7/02 20210101AFI20230707BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20230707BHJP
【FI】
G01K7/02 E
G01K7/02 C
H01L21/31 B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019160679
(22)【出願日】2019-09-03
(65)【公開番号】P2021039008
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-07-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000136561
【氏名又は名称】株式会社フルヤ金属
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】井上 久司
(72)【発明者】
【氏名】小林 正寿
(72)【発明者】
【氏名】菊池 康晃
(72)【発明者】
【氏名】山口 達也
(72)【発明者】
【氏名】吉井 弘治
(72)【発明者】
【氏名】森田 健介
(72)【発明者】
【氏名】板橋 淳
【審査官】細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-125851(JP,U)
【文献】実公昭45-011103(JP,Y1)
【文献】実開昭57-086439(JP,U)
【文献】国際公開第2015/041315(WO,A1)
【文献】実開昭60-083933(JP,U)
【文献】特開2017-032406(JP,A)
【文献】特開2008-058089(JP,A)
【文献】特開2009-075003(JP,A)
【文献】特開2016-157930(JP,A)
【文献】特開2011-151055(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 7/02
H01L 21/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の熱電対素線と、
前記第1の熱電対素線の先端又は途中の異なる位置に接合され、前記第1の熱電対素線と異なる材料により形成された複数の第2の熱電対素線と、
前記第1の熱電対素線及び前記複数の第2の熱電対素線の少なくともいずれかを被覆する絶縁性の被覆部材と、
前記第1の熱電対素線及び前記複数の第2の熱電対素線を収容する保護管と、
を有
前記複数の第2の熱電対素線の少なくとも1つは、先端が前記第1の熱電対素線の途中の部分と共に圧着接合されている、
熱電対構造。
【請求項2】
前記被覆部材は、少なくとも前記第2の熱電対素線を被覆する、
請求項1に記載の熱電対構造。
【請求項3】
前記被覆部材は、1つの前記第2の熱電対素線を被覆する第1の被覆部材と、複数の前記第2の熱電対素線を被覆する第2の被覆部材と、を含む、
請求項2に記載の熱電対構造。
【請求項4】
前記第1の熱電対素線及び前記複数の第2の熱電対素線を保持する絶縁性の保持部材を有する、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の熱電対構造。
【請求項5】
2本の第1の熱電対素線と、
前記2本の第1の熱電対素線の先端と共に先端が圧着接合され、前記第1の熱電対素線と異なる材料により形成された第2の熱電対素線と、
を有する、
熱電対構造。
【請求項6】
縦長の処理容器と、
前記処理容器の周囲に設けられた加熱手段と、
前記処理容器内又は前記処理容器と前記加熱手段との間の空間に設けられた熱電対構造と、
を備え、
前記熱電対構造は、
第1の熱電対素線と、
前記第1の熱電対素線の先端又は途中の異なる位置に接合され、前記第1の熱電対素線と異なる材料により形成された複数の第2の熱電対素線と、
前記第1の熱電対素線及び前記複数の第2の熱電対素線の少なくともいずれかを被覆する被覆部材と、
前記第1の熱電対素線及び前記複数の第2の熱電対素線を収容する保護管と、
を有
前記複数の第2の熱電対素線の少なくとも1つは、先端が前記第1の熱電対素線の途中の部分と共に圧着接合されている、
熱処理装置。
【請求項7】
前記加熱手段は、前記処理容器の長手方向において独立して制御できる複数の加熱領域に区分されており、
前記第1の熱電対素線と前記第2の熱電対素線とが接合されて形成された複数の測温部は、前記複数の加熱領域の各々に対応して設けられる、
請求項に記載の熱処理装置。
【請求項8】
第1の熱電対素線と、前記第1の熱電対素線と異なる材料により形成された複数の第2の熱電対素線と、を準備する工程と、
前記第1の熱電対素線の先端に、前記複数の第2の熱電対素線の1つを圧着接合する工程と、
前記第1の熱電対素線の途中に、前記複数の第2の熱電対素線の別の1つの先端を前記第1の熱電対素線の途中の部分と共に圧着接合する工程と、
を有する、
熱電対構造の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱電対構造、熱処理装置及び熱電対構造の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の測温部を有する熱電対構造が知られている(例えば、特許文献1~3参照)。また、2本の素線と挟持部材とを有し、挟持部材が2本の素線の先端部同士を並列に接触させた状態で挟持することで測温接点部が設けられた熱電対が知られている(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-151055号公報
【文献】特開昭58-222582号公報
【文献】実開昭61-110135号公報
【文献】特開2018-25525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、複数の測温部を有する熱電対構造を省スペース化できる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様による熱電対構造は、第1の熱電対素線と、前記第1の熱電対素線の先端又は途中の異なる位置に接合され、前記第1の熱電対素線と異なる材料により形成された複数の第2の熱電対素線と、前記第1の熱電対素線及び前記複数の第2の熱電対素線の少なくともいずれかを被覆する絶縁性の被覆部材と、前記第1の熱電対素線及び前記複数の第2の熱電対素線を収容する保護管と、を有前記複数の第2の熱電対素線の少なくとも1つは、先端が前記第1の熱電対素線の途中の部分と共に圧着接合されている
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、複数の測温部を有する熱電対構造を省スペース化できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施形態の熱電対構造の構成例を示す図
図2】熱電対構造を利用した温度測定方法の一例の説明図
図3】熱電対構造の測温部の一例を示す図
図4】熱電対構造の測温部の別の例を示す図
図5】熱電対構造の測温部の更に別の例を示す図
図6】熱電対構造を備える熱処理装置の構成例を示す図
図7図6の熱処理装置の処理容器を説明する図
図8】第2の実施形態の熱電対構造の構成例を示す図
図9】第3の実施形態の熱電対構造の構成例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付の図面を参照しながら、本開示の限定的でない例示の実施形態について説明する。添付の全図面中、同一又は対応する部材又は部品については、同一又は対応する参照符号を付し、重複する説明を省略する。
【0009】
〔第1の実施形態〕
(熱電対構造)
第1の実施形態の熱電対構造の構成例について説明する。図1は、第1の実施形態の熱電対構造の構成例を示す図である。図2は、熱電対構造を利用した温度測定方法の一例の説明図である。
【0010】
図1及び図2に示されるように、熱電対構造100は、第1の熱電対素線110と、第2の熱電対素線120と、被覆部材130と、保護管140と、計測器150と、切替装置160と、を有する。なお、図1においては、計測器150及び切替装置160の図示を省略している。また、図2においては、被覆部材130及び保護管140の図示を省略している。
【0011】
第1の熱電対素線110は、第2の熱電対素線120と熱電対を構成する。第1の熱電対素線110は、一端(先端)が第2の熱電対素線120と接合され、他端が計測器150と接続されている。第1の熱電対素線110は、1本の素線により形成されていてもよく、複数の素線が接合されて形成されていてもよい。第1の熱電対素線110の材料としては、特に限定されないが、例えば白金、白金ロジウム合金等の金属導体を利用できる。
【0012】
第2の熱電対素線120は、第1の熱電対素線110と異なる材料により形成されており、第1の熱電対素線110と熱電対を構成する。第2の熱電対素線120は、第2の熱電対素線120a,120b,120cを含む。
【0013】
第2の熱電対素線120aは、一端が第1の熱電対素線110の先端に接合されており、第1の熱電対素線110と共に測温部A1を形成する。第2の熱電対素線120bは、一端が第1の熱電対素線110の先端から第1の熱電対素線110の他端の側に所定の長さだけ離れた位置に接合されており、第1の熱電対素線110と共に測温部A2を形成する。第2の熱電対素線120cは、第1の熱電対素線110と第2の熱電対素線120bとが接合されている位置から第1の熱電対素線110の他端の側に所定の長さだけ離れた位置に接合されており、第1の熱電対素線110と共に測温部A3を形成する。
【0014】
第2の熱電対素線120aと第2の熱電対素線120bとの間隔、及び第2の熱電対素線120bと第2の熱電対素線120cとの間隔は、温度計測部位の位置に応じて設定され、同じであってもよく、異なっていてもよい。第2の熱電対素線120a,120b,120cの他端は、それぞれ切替装置160を介して計測器150と接続される。
【0015】
第2の熱電対素線120a,120b,120cの材料は、特に限定されないが、例えば白金、白金ロジウム合金等の金属導体を利用できる。一例としては、第1の熱電対素線110の材料が白金である場合、第2の熱電対素線120a,120b,120cの材料として白金ロジウム合金を利用できる。
【0016】
なお、第2の熱電対素線120の本数は、上記の3本に限定されるものではなく、温度計測部位の数に応じて定められ、例えば2本であってもよく、4本以上であってもよい。
【0017】
被覆部材130は、第2の熱電対素線120を被覆する絶縁部材である。被覆部材130は、第1の熱電対素線110と第2の熱電対素線120との接触を防止する。被覆部材130は、被覆部材130a,130b,130cを含む。
【0018】
被覆部材130a,130b,130cは、それぞれ内部に第2の熱電対素線120a,120b,120cを挿通して被覆する絶縁管である。絶縁管の材料としては、特に限定されないが、例えばアルミナ(Al)、マグネシア(MgO)、ジルコニア(ZrO)、チタン酸アルミニウム(Al・TiO)等のセラミックス、石英、炭化珪素(SiC)を利用できる。
【0019】
なお、被覆部材130としては、第2の熱電対素線120を被覆できる絶縁部材であればよく、例えば絶縁ビーズ、絶縁シートを利用してもよい。絶縁ビーズを利用する場合、第2の熱電対素線120に複数の絶縁ビーズを取り付けることにより、第2の熱電対素線120を被覆して絶縁できる。絶縁シートを利用する場合、第2の熱電対素線120を覆うように絶縁シートを巻き付けることにより、第2の熱電対素線120を被覆して絶縁できる。
【0020】
また、被覆部材130は、第2の熱電対素線120に代えて第1の熱電対素線110を被覆してもよく、第1の熱電対素線110と第2の熱電対素線120aの両方を被覆してもよい。
【0021】
保護管140は、第1の熱電対素線110及び第2の熱電対素線120を収容する。保護管140は、例えば石英、SiCにより形成されている。
【0022】
計測器150は、第1の熱電対素線110及び第2の熱電対素線120の熱起電力に基づいて温度を計測する。計測器150としては、例えばデータロガーを利用できる。
【0023】
切替装置160は、計測器150と第2の熱電対素線120a,120b,120cとの接続状態を切り替える。計測器150と第2の熱電対素線120a,120b,120cとの接続状態を切り替えることにより、測温部A1~A3の温度を切り替えて測定できる。例えば、切替装置160を切り替えて第2の熱電対素線120aと計測器150とを接続させると、測温部A1の温度を計測できる。計測器150と切替装置160とは、第2の熱電対素線120と同じ材料の熱電対素線により接続されている。ただし、計測器150と切替装置160とは、補償導線により接続されていてもよい。
【0024】
以上に説明した熱電対構造100によれば、第1の熱電対素線110と、該第1の熱電対素線110と熱電対を構成する3つの第2の熱電対素線120とによって、3つの測温部A1~A3を有する多岐熱電対が形成されている。これにより、多点測定する場合の熱電対素線の数を低減できるので、省スペース化でき、製造コストを削減できる。具体的には、一対の熱電対素線により形成される熱電対を用いると6本の熱電対素線が必要となるが、熱電対構造100を用いると1本の第1の熱電対素線110及び3本の第2の熱電対素線120の合計4本の熱電対素線でよく、熱電対素線の数を低減できる。
【0025】
(測温部)
図1の熱電対構造100の測温部A1~A3の構成例について、測温部A2を例に挙げて説明する。
【0026】
図3は、熱電対構造100の測温部A2の一例を示す図である。図3に示されるように、測温部A2は、2本の第1の熱電対素線110と、該第1の熱電対素線110の各々の先端110pに溶接接合された第2の熱電対素線120とにより形成されている。言い換えると、2本の第1の熱電対素線110の各々の先端110pと、第2の熱電対素線120の先端120pとが溶接接合されることにより、測温部A2が形成される。
【0027】
溶接接合を形成する方法は特に限定されないが、例えばガス溶接、スポット溶接を利用できる。図3では、ガス噴出部Gから吹き出される燃焼炎Fを用いたガス溶接の例を示す。
【0028】
図4は、熱電対構造100の測温部A2の別の例を示す図である。図4に示されるように、測温部A2は、第1の熱電対素線110と、第2の熱電対素線120と、挟持部材170とにより形成されている。
【0029】
挟持部材170は、第1の熱電対素線110の途中の部分と第2の熱電対素線120の先端とを接触させた状態で挟持して、測温部A2を形成する。挟持部材170は、例えば筒状部材であってよく、板状部材を筒状に丸めた部材であってもよい。挟持部材170は、例えば白金、白金ロジウム等の金属導体により形成されている。挟持部材170の材料は、異種材料の接触による熱起電力の発生を抑制するという観点から、第1の熱電対素線110又は第2の熱電対素線120の材料と同じであることが好ましい。
【0030】
挟持部材170を用いて測温部A2を形成する方法は特に限定されないが、例えば圧着接合を利用できる。具体的には、まず、第1の熱電対素線110の途中の部分と第2の熱電対素線120の先端とを並列させた状態で、第1の熱電対素線110及び第2の熱電対素線120を挟持部材170の筒内に配置する。続いて、挟持部材170を押しつぶして測温部A2を形成する。
【0031】
このように、図4に示される例では、第1の熱電対素線110と、該第1の熱電対素線110の途中に圧着接合された第2の熱電対素線120とにより測温部A2が形成される。そのため、熱による熱電対素線の伸縮に起因する第1の熱電対素線110及び第2の熱電対素線120の断線リスクを低減できる。
【0032】
また、第1の熱電対素線110と第2の熱電対素線120とを並列させた状態で挟持部材170の筒内に配置した後、挟持部材170を押しつぶして測温部A2を形成する。そのため、所望の位置に測温部A2を形成しやすく、位置出し精度が向上する。
【0033】
図5は、熱電対構造100の測温部A2の更に別の例を示す図である。図5に示されるように、測温部A2は、2本の第1の熱電対素線110a,110bと、第2の熱電対素線120と、挟持部材170とにより形成されている。
【0034】
挟持部材170は、2本の第1の熱電対素線110a,110bの各々の先端と第2の熱電対素線120の先端とを接触させた状態で挟持して、測温部A2を形成する。
【0035】
挟持部材170を用いて測温部A2を形成する方法は特に限定されないが、例えば圧着接合を利用できる。具体的には、まず、第1の熱電対素線110aと第1の熱電対素線110bの各々の先端を突き合わせると共に第2の熱電対素線120の先端と並列させた状態で、挟持部材170の筒内に配置する。続いて、挟持部材170を押しつぶして測温部A2を形成する。
【0036】
このように、図5に示される例では、2本の第1の熱電対素線110の先端と、第2の熱電対素線120の先端とが圧着接合されることにより測温部A2が形成される。そのため、熱による熱電対素線の伸縮に起因する第1の熱電対素線110及び第2の熱電対素線120の断線リスクを低減できる。
【0037】
また、第1の熱電対素線110aと第1の熱電対素線110bの各々の先端を突き合わせると共に第2の熱電対素線120の先端と並列させた状態で、挟持部材170の筒内に配置した後、挟持部材170を押しつぶして測温部A2を形成する。そのため、所望に位置に測温部A2を形成しやすく、位置出し精度が向上する。
【0038】
(熱処理装置)
熱電対構造100を備える熱処理装置について、処理容器内において、基板保持具に複数の基板を多段に保持した状態で、複数の基板に対し熱処理を実行できるバッチ式の熱処理装置を例に挙げて説明する。ただし、熱電対構造100を備える熱処理装置は、バッチ式の熱処理装置に限定されるものではなく、例えば枚葉式の熱処理装置にも適用可能である。図6は、熱電対構造100を備える熱処理装置の構成例を示す図である。図7は、図6の熱処理装置の処理容器を説明する図である。
【0039】
図6に示されるように、熱処理装置1は、処理容器34と、蓋体36と、ウエハボート38と、ガス供給手段40と、排気手段41と、ヒータ42とを有する。
【0040】
処理容器34は、ウエハボート38を収容する縦長の容器である。ウエハボート38は、多数枚の半導体ウエハ(以下「ウエハW」という。)を所定の間隔で保持する基板保持具である。処理容器34は、下端が開放された有天井の円筒形状の内管44と、下端が開放されて内管44の外側を覆う有天井の円筒形状の外管46とを有する。内管44及び外管46は、石英等の耐熱性材料により形成されており、同軸状に配置されて二重管構造となっている。
【0041】
内管44の天井部44Aは、例えば平坦になっている。内管44の一側には、その長手方向(上下方向)に沿ってガス供給管を収容するノズル収容部48が形成されている。例えば図7に示されるように、内管44の側壁の一部を外側へ向けて突出させて凸部50を形成し、凸部50内をノズル収容部48として形成している。ノズル収容部48に対向させて内管44の反対側の側壁には、その長手方向(上下方向)に沿って矩形状の開口52が形成されている。
【0042】
開口52は、内管44内のガスを排気できるように形成されたガス排気口である。開口52の長さは、ウエハボート38の長さと同じであるか、又は、ウエハボート38の長さよりも長く上下方向へそれぞれ延びるようにして形成されている。
【0043】
処理容器34の下端は、例えばステンレス鋼により形成される円筒形状のマニホールド54によって支持されている。マニホールド54の上端にはフランジ部56が形成されており、フランジ部56上に外管46の下端を設置して支持するようになっている。フランジ部56と外管46との下端との間にはOリング等のシール部材58を介在させて外管46内を気密状態にしている。
【0044】
マニホールド54の上部の内壁には、円環状の支持部60が設けられており、支持部60上に内管44の下端を設置してこれを支持するようになっている。マニホールド54の下端の開口には、蓋体36がOリング等のシール部材62を介して気密に取り付けられており、処理容器34の下端の開口、即ち、マニホールド54の開口を気密に塞ぐようになっている。蓋体36は、例えばステンレス鋼により形成される。
【0045】
蓋体36の中央部には、磁性流体シール部64を介して回転軸66が貫通させて設けられている。回転軸66の下部は、ボートエレベータよりなる昇降手段68のアーム68Aに回転自在に支持されている。
【0046】
回転軸66の上端には回転プレート70が設けられており、回転プレート70上に石英製の保温台72を介してウエハWを保持するウエハボート38が載置されるようになっている。従って、昇降手段68を昇降させることによって蓋体36とウエハボート38とは一体として上下動し、ウエハボート38を処理容器34内に対して挿脱できるようになっている。
【0047】
ガス供給手段40は、マニホールド54に設けられており、内管44内へ成膜ガス、エッチングガス、パージガス等のガスを導入する。ガス供給手段40は、複数(例えば3本)の石英製のガス供給管76,78,80を有している。各ガス供給管76,78,80は、内管44内にその長手方向に沿って設けられると共に、その基端がL字状に屈曲されてマニホールド54を貫通するようにして支持されている。
【0048】
ガス供給管76,78,80は、図7に示されるように、内管44のノズル収容部48内に周方向に沿って一列になるように設置されている。各ガス供給管76,78,80には、その長手方向に沿って所定の間隔で複数のガス孔76A,78A,80Aが形成されており、各ガス孔76A,78A,80Aより水平方向に向けて各ガスを放出できるようになっている。所定の間隔は、例えばウエハボート38に支持されるウエハWの間隔と同じになるように設定される。また、高さ方向の位置は、各ガス孔76A,78A,80Aが上下方向に隣り合うウエハW間の中間に位置するように設定されており、各ガスをウエハW間の空間部に効率的に供給できるようになっている。ガスの種類としては、成膜ガス、エッチングガス、及びパージガスが用いられ、各ガスを流量制御しながら必要に応じて各ガス供給管76,78,80を介して供給できるようになっている。
【0049】
マニホールド54の上部の側壁であって、支持部60の上方には、ガス出口82が形成されており、内管44と外管46との間の空間部84を介して開口52より排出される内管44内のガスを排気できるようになっている。ガス出口82には、排気手段41が設けられる。排気手段41は、ガス出口82に接続された排気通路86を有しており、排気通路86には、圧力調整弁88及び真空ポンプ90が順次介設されて、処理容器34内を真空引きできるようになっている。
【0050】
外管46の周囲には、外管46を覆うように円筒形状のヒータ42が設けられている。ヒータ42は、処理容器34内に収容されるウエハWを加熱する加熱手段である。ヒータ42は、複数の加熱領域に区分されており、鉛直方向の上側から下側に向かって、ヒータ42a~42eが設けられている。ヒータ42a~42eは、それぞれ電力制御器43a~43eによって独立して発熱量が制御される。
【0051】
また、内管44の内壁の近傍には、ヒータ42a~42eに対応して設けられた測温部A1~A5を有する熱電対構造100が設けられている。
【0052】
熱処理装置1の全体の動作は、制御部95により制御される。制御部95は、熱電対構造100により計測される温度に基づいて、電力制御器43a~43eを制御することにより、ヒータ42a~42eの発熱量を制御する。制御部95は、例えばコンピュータ等であってよい。また、熱処理装置1の全体の動作を行うコンピュータのプログラムは、記憶媒体に記憶されている。記憶媒体は、例えばフレキシブルディスク、コンパクトディスク、ハードディスク、フラッシュメモリ、DVD等であってよい。
【0053】
以上に説明した熱処理装置1によれば、省スペース化された熱電対構造100を有するので、内管44とウエハボート38との間の狭い空間に熱電対構造100を容易に配置できる。
【0054】
〔第2の実施形態〕
第2の実施形態の熱電対構造の構成例について説明する。図8は、第2の実施形態の熱電対構造の構成例を示す図である。
【0055】
図8に示されるように、第2の実施形態の熱電対構造200は、第2の熱電対素線120a,120bがまとめて1つの被覆部材230bによって被覆されている点で、第1の実施形態の熱電対構造100と異なる。なお、その他の構成については、熱電対構造100と同様の構成である。以下、熱電対構造100と異なる点を中心に説明する。
【0056】
熱電対構造200は、第1の熱電対素線110と、第2の熱電対素線120と、被覆部材230と、保護管140と、計測器150と、切替装置160と、を有する。なお、図8においては、計測器150及び切替装置160の図示を省略している。
【0057】
被覆部材230は、被覆部材230a,230b,230cを含む。被覆部材230aは、内部に第2の熱電対素線120aを挿通して被覆する絶縁管である。被覆部材230bは、内部に第2の熱電対素線120a,120bを挿通して被覆する絶縁管である。被覆部材230cは、内部に第2の熱電対素線120cを挿通して被覆する絶縁管である。なお、被覆部材230a,230cは第1の被覆部材の一例であり、被覆部材230bは第2の被覆部材の一例である。
【0058】
以上に説明した熱電対構造200によれば、第1の熱電対素線110と、該第1の熱電対素線110と熱電対を構成する3本の第2の熱電対素線120とによって、3つの測温部A1~A3を有する多岐熱電対が形成されている。これにより、多点測定する場合の熱電対素線の数を低減できるので、省スペース化でき、製造コストを削減できる。
【0059】
また、熱電対構造200によれば、2つの第2の熱電対素線120a,120bを1つの被覆部材130bによって被覆している。これにより、熱電対構造200をより省スペース化できる。
【0060】
なお、熱電対構造200においても、熱電対構造100と同様に、溶接接合、圧着接合等によって測温部A1~A3を形成できる。また、熱電対構造200は、熱電対構造100と同様、バッチ式の熱処理装置1の温度計測用に好適である。
【0061】
〔第3の実施形態〕
第3の実施形態の熱電対構造の構成例について説明する。図9は、第3の実施形態の熱電対構造の構成例を示す図である。図9(a)は熱電対構造の概略を示す図であり、図9(b)は保持部材の平面図である。
【0062】
図9(a)に示されるように、第3の実施形態の熱電対構造300は、第1の熱電対素線110及び第2の熱電対素線120a,120b,120cを保持する絶縁性の保持部材380を有する点で、第2の実施形態の熱電対構造200と異なる。なお、その他の構成については、熱電対構造200と同様の構成である。以下、熱電対構造200と異なる点を中心に説明する。
【0063】
熱電対構造300は、第1の熱電対素線110と、第2の熱電対素線120と、被覆部材230と、保護管140と、計測器150と、切替装置160と、保持部材380と、を有する。なお、図9(a)においては、計測器150及び切替装置160の図示を省略している。
【0064】
保持部材380は、図9(b)に示されるように、第1の熱電対素線110及び第2の熱電対素線120a,120b,120cを挿通できる4つの挿通穴380hが形成された円板形状の絶縁部材である。保持部材380の挿通穴380hに第1の熱電対素線110及び第2の熱電対素線120a,120b,120cを挿通することで、第1の熱電対素線110及び第2の熱電対素線120a,120b,120c間の位置関係が保持される。そのため、第1の熱電対素線110及び第2の熱電対素線120a,120b,120cを保護管140に挿入する際に、第1の熱電対素線110及び第2の熱電対素線120a,120b,120c間の位置関係のずれが生じることを抑制できる。
【0065】
以上に説明した熱電対構造300によれば、第1の熱電対素線110と、該第1の熱電対素線110と熱電対を構成する3本の第2の熱電対素線120とによって、3つの測温部A1~A3を有する多岐熱電対が形成されている。これにより、多点測定する場合の熱電対素線の数を低減できるので、省スペース化でき、製造コストを削減できる。
【0066】
また、熱電対構造300によれば、2つの第2の熱電対素線120a,120bを1つの被覆部材130bによって被覆している。これにより、熱電対構造300をより省スペース化できる。
【0067】
また、熱電対構造300によれば、保持部材380によって第1の熱電対素線110及び第2の熱電対素線120a,120b,120c間の位置関係が保持される。そのため、第1の熱電対素線110及び第2の熱電対素線120a,120b,120cを保護管140に挿入する際に、第1の熱電対素線110及び第2の熱電対素線120a,120b,120c間の位置関係にずれが生じることを抑制できる。
【0068】
なお、熱電対構造300においても、熱電対構造100と同様に、溶接接合、圧着接合等によって測温部A1~A3を形成できる。また、熱電対構造300は、熱電対構造100と同様、バッチ式の熱処理装置1の温度計測用に好適である。
【0069】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0070】
1 熱処理装置
34 処理容器
42 ヒータ
100 熱電対構造
110 第1の熱電対素線
120 第2の熱電対素線
130 被覆部材
140 保護管
200 熱電対構造
230 被覆部材
300 熱電対構造
380 保持部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9