(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-06
(45)【発行日】2023-07-14
(54)【発明の名称】軸方向追従部を備える可変音響式屈折率分布型レンズ
(51)【国際特許分類】
G02B 3/14 20060101AFI20230707BHJP
【FI】
G02B3/14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019228137
(22)【出願日】2019-12-18
【審査請求日】2022-11-16
(32)【優先日】2018-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム トッド ワトソン
(72)【発明者】
【氏名】アイゼア フェアクセン
【審査官】中村 説志
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-106127(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0177376(US,A1)
【文献】特開昭63-180901(JP,A)
【文献】特表2009-542958(JP,A)
【文献】特表2002-529801(JP,A)
【文献】国際公開第2018/139897(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0259463(US,A1)
【文献】特開2020-021049(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 3/14
G02B 7/02- 7/16
G02B 7/28- 7/40
G02B15/00
G02B26/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変音響式屈折率分布型(TAG)レンズであって、
制御可能な音波発生要素と、
屈折性流体と、
内部に空洞を持ったレンズケースと、
を備え、
前記屈折性流体の動作ボリュームが前記空洞に収容され、前記制御可能な音波発生要素は前記レンズケースの内部において前記動作ボリュームを貫通する光路を中心として配置され、前記TAGレンズの軸方向は前記光路の光軸に対して平行であると規定され、
前記屈折性流体の前記動作ボリュームは、前記音波発生要素による音波の発生に応答して前記光路に沿って屈折率の変化を生じることによって、
前記TAGレンズは、前記音波発生要素に周期的駆動信号が印加された場合に、前記TAGレンズの周期的に変調される光学パワーに変動を与えるよう制御され、
前記レンズケースは、
概ね前記軸方向に沿って設けられるケース壁部と、
概ね前記軸方向を横断する方向に設けられる第1及び第2のケース端部と、
を備え、
各ケース端部は、ウィンドウ搭載部において前記光路に沿って搭載されたウィンドウを含む中央配置ウィンドウ構成と、少なくとも部分的に前記ケース壁部に位置合わせされて前記ケース壁部に密閉されたケース端縁部と、を含み、
各ウィンドウ搭載部は、前記光軸に直交する前記ウィンドウ搭載部の最も遠い内面、及び外面にそれぞれ一致する、2つの平行なウィンドウ実装境界面の間に画定されたウィンドウ実装面厚みを有し、
前記各ケース端部は、更に、関連付けられた前記ウィンドウ搭載部と前記ケース端縁部との間に結合されて、それらに密閉された軸方向追従部を含み、
前記軸方向追従部は、関連付けられた前記ウィンドウ搭載部を所定位置に保持し、前記音波発生要素に前記周期的駆動信号が印加された場合に、関連付けられた前記ケース端縁部に対する関連付けられたウィンドウ搭載部の軸方向偏向振幅を増大させるように構成され、
前記各ケース端部において、その軸方向追従部は、関連付けられた前記ウィンドウ搭載部の前記ウィンドウ実装面厚みの最大で75%である、前記軸方向に沿った低減材料厚さによって特徴付けられる第1の低減厚さ領域を含み、
前記第1の低減厚さ領域は、前記光軸を中心として少なくとも270度の対応する角度にわたって、関連付けられた前記ウィンドウの周りに設けられている、TAGレンズ。
【請求項2】
各ケース端部において、前記第1の低減厚さ領域は、関連付けられたウィンドウ搭載部の前記ウィンドウ実装面厚みの最大で65%である前記軸方向に沿った低減材料厚さによって特徴付けられる、請求項1に記載のTAGレンズ。
【請求項3】
各ケース端部において、前記第1の低減厚さ領域は、関連付けられたウィンドウ搭載部の前記ウィンドウ実装面厚みの最大で55%である前記軸方向に沿った低減材料厚さによって特徴付けられる、請求項1に記載のTAGレンズ。
【請求項4】
各ケース端部において、前記第1の低減厚さ領域は、前記第1の低減厚さ領域と同一の広がりを持つか又は前記第1の低減厚さ領域よりも大きい第1のくぼみ表面を含み、前記第1のくぼみ表面は、関連付けられたケース端部の隣接表面に対して前記軸方向にくぼみ、前記第1の低減厚さ領域の前記低減材料厚さを前記軸方向に沿って画定する、
請求項1に記載のTAGレンズ。
【請求項5】
前記ケース端部のうち少なくとも1つは、ウィンドウ搭載部と、ケース端縁部と、軸方向追従部とを含み、これらは全て単一の連続した材料片で形成され、前記第1のくぼみ表面は前記単一の連続した材料片に形成された溝の表面部分を含む、
請求項4に記載のTAGレンズ。
【請求項6】
前記TAGレンズは概ね円筒形の形状を有し、前記単一の連続した材料片に形成された前記溝は環状溝である、
請求項5に記載のTAGレンズ。
【請求項7】
少なくとも1つのケース端部の前記第1のくぼみ表面は、当該ケース端部の内面に位置付けられている、
請求項4に記載のTAGレンズ。
【請求項8】
内面に位置付けられた前記第1のくぼみ表面を含む少なくとも1つのケース端部の前記軸方向追従部は、更に、そのケース端部の外面に位置付けられた第2のくぼみ表面を含み、前記第2のくぼみ表面は、関連付けられたケース端部の隣接面に対して前記軸方向にくぼみ、前記光軸を中心として少なくとも270度の対応する角度にわたって、関連付けられたウィンドウ搭載部の周りに設けられている、
請求項7に記載のTAGレンズ。
【請求項9】
前記第2のくぼみ表面は、前記軸方向に沿って前記第1のくぼみ表面の少なくとも一部と位置合わせされるように構成され、前記第2のくぼみ表面は、前記軸方向に沿って前記第1の低減厚さ領域の少なくとも一部の前記低減材料厚さを画定する、
請求項8に記載のTAGレンズ。
【請求項10】
前記第2のくぼみ表面は、前記軸方向に沿って前記第1のくぼみ表面のどの部分とも位置合わせしないように構成され、
前記第1及び第2のくぼみ表面の最も遠いくぼみ部分にそれぞれ一致する第1及び第2の面の間の前記軸方向に沿った分離距離は、最大で、関連付けられたウィンドウ搭載部の前記ウィンドウ実装面厚みの55%である、
請求項8に記載のTAGレンズ。
【請求項11】
前記第1及び第2のくぼみ表面は、それぞれ前記光軸を中心として360度の対応する角度にわたって設けられる環状くぼみ表面を含む、
請求項8に記載のTAGレンズ。
【請求項12】
各ケース端部において、
関連付けられたケース端縁部は、前記光軸にノミナルで直交する当接面を画定する部分を含み、
関連付けられたウィンドウ搭載部の全ての外面は、この関連付けられたウィンドウ搭載部の前記増大した軸方向偏向振幅よりも大きい前記軸方向の距離だけ、前記当接面に対して前記軸方向にくぼんでいる、
請求項1に記載のTAGレンズ。
【請求項13】
少なくとも1つのケース端部において、
関連付けられたケース端縁部はその外周を取り囲む搭載表面を含み、
前記搭載表面は、前記光軸に直交する半径方向に沿って前記搭載表面に力を加える搭載要素を受容するように構成され、
少なくとも1つのケース端部は、更に、半径方向ひずみ吸収路又は半径方向追従曲げ要素のうち少なくとも一方を含む半径方向ひずみ分離構成を含み、
前記半径方向ひずみ分離構成は、前記光軸を中心として少なくとも270度の対応する角度にわたって設けられ、その搭載表面と関連付けられた軸方向追従部の前記第1の低減厚さ領域との間に前記半径方向に沿って位置付けられている、
請求項1に記載のTAGレンズ。
【請求項14】
前記TAGレンズは概ね円筒形の形状を有し、
前記第1の低減厚さ領域は環状領域であり、
前記半径方向ひずみ吸収路は、その少なくとも1つのケース端部の外面に形成された環状溝を含む、
請求項13に記載のTAGレンズ。
【請求項15】
前記半径方向ひずみ吸収路を形成する前記環状溝は、前記ケース端縁部と前記第1の低減厚さ領域との間に位置付けられている、
請求項14に記載のTAGレンズ。
【請求項16】
前記半径方向ひずみ吸収路を形成する前記環状溝は、前記ケース端縁部に位置付けられ、隣接する半径方向追従曲げ要素の内壁を形成するように構成され、
前記半径方向追従曲げ要素は、環状の形状を有し、搭載面である外周面を有する、
請求項14に記載のTAGレンズ。
【請求項17】
各ケース端部の少なくとも前記軸方向追従部及び前記中央配置ウィンドウ構成は、関連付けられたケース端縁部に対する前記ウィンドウ搭載部の軸方向並進を含む前記TAGレンズの共振モードを与えるように構成され、
関連付けられたケース端縁部に対する前記ウィンドウ搭載部の前記軸方向並進の振幅で示されるその共振モードの共振帯域幅は、前記音波発生要素に印加される前記周期的駆動信号の周波数を含む、
請求項1に記載のTAGレンズ。
【請求項18】
可変音響式屈折率分布型(TAG)レンズであって、
制御可能な音波発生要素と、
屈折性流体と、
内部に空洞を持ったレンズケースと、
を備え、
前記屈折性流体の動作ボリュームが前記空洞に収容され、前記制御可能な音波発生要素は前記レンズケースの内部において前記動作ボリュームを貫通する光路を中心として配置され、前記TAGレンズの軸方向は前記光路の光軸に対して平行であると規定され、
前記屈折性流体の前記動作ボリュームは、前記音波発生要素による音波の発生に応答して前記光路に沿って屈折率の変化を生じることによって、
前記TAGレンズは、前記音波発生要素に周期的駆動信号が印加された場合に、前記TAGレンズの周期的に変調される光学パワーに変動を与えるよう制御され、
前記レンズケースは、
概ね前記軸方向に沿って設けられるケース壁部と、
概ね前記軸方向を横断する方向に設けられる第1及び第2のケース端部と、
を備え、
各ケース端部は、ウィンドウ搭載部において前記光路に沿って搭載されたウィンドウを含む中央配置ウィンドウ構成と、少なくとも部分的に前記ケース壁部に位置合わせされて前記ケース壁部に密閉されたケース端縁部と、を含み、
前記各ケース端部は、更に、関連付けられたウィンドウ搭載部とケース端縁部との間に結合されて、それらに密閉された軸方向追従部を含み、
前記軸方向追従部は、関連付けられたウィンドウ搭載部を所定位置に保持し、前記音波発生要素に前記周期的駆動信号が印加された場合に、関連付けられたケース端縁部に対する関連付けられたウィンドウ搭載部の軸方向偏向振幅を増大させるように構成され、
各ケース端部において、少なくともその軸方向追従部は、平均密度を無孔密度の最大で75%に低減させた多孔度を含む金属組成の材料領域を含み、
前記材料領域は、前記光軸を中心として少なくとも270度の対応する角度にわたって、関連付けられたウィンドウ搭載部を取り囲んで設けられている、
TAGレンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、可変音響式屈折率分布型レンズ(tunable acoustic gradient)に関し、更に具体的には、検査及び寸法計測に用いられる可変焦点距離レンズシステムにおける可変音響式屈折率分布型レンズの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
様々なタイプのマルチレンズ可変焦点距離(VFL:variable focal length)光学システムは、表面高さの観察及び精密測定のため利用することができ、例えば米国特許第9,143,674号に開示されているように、顕微鏡及び/又は精密マシンビジョン検査システムに含めることができる。簡潔に述べると、VFLレンズは複数の焦点距離で複数の画像をそれぞれ取得することができる。既知のVFLレンズの1つのタイプは、流体媒質中で音波を用いてレンズ効果を生成する可変音響式屈折率分布型(TAG)レンズである。流体媒質を取り囲む振動部材(例えば圧電チューブ)にTAGレンズ共振周波数の電界を印加することで音波を生成し、時間によって変動する密度及び屈折率のプロファイルをレンズの流体中に生成することができる。これがレンズの光学パワーを変調し、これによってビジョンシステムの焦点距離又は有効合焦位置を変調する。TAGレンズを用いて、最大で数百kHzの共振周波数、すなわち高速に、合焦位置を周期的に変調できる。このようなレンズは、論文「High speed varifocal imaging with a tunable acoustic gradient index of refraction lens」(Optics Letters, Vol.33, No.18, 2008年9月15日)、並びに、米国特許第8,194,307号、9,213,175号、及び9,256,009号の教示によって更に詳しく理解することができる。可変音響式屈折率分布型レンズ及びこれに関連した制御可能な信号発生器は、例えばTAG Optics, Inc.(ニュージャージー州プリンストン)から入手可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
TAGレンズの光学性能(例えば合焦範囲)及び/又は動作安定性における限界が、TAGレンズを含むシステムの性能を制限する可能性がある。そのような限界は、単純な撮像用途において(例えば主な目的が観察である場合)は、あまり重大になり得ない。しかしながら、計測システム(例えば、特定の光学パワー(又は合焦距離)を共振サイクルの特定の位相に相関付けるようにTAGレンズが精密に較正される顕微鏡システム)では、そのような限界は、特定の検査及び寸法計測機能を実行するためのシステムの精度及び範囲に関して比較的重大になり得る。このような用途について、TAGレンズの光学性能(例えば合焦範囲)及び/又は動作安定性の改善を達成できる構成が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この概要は、以下で「発明を実施するための形態」において更に記載するいくつかの概念を簡略化した形態で紹介するために提示する。この概要は、特許請求される主題の重要な特徴(features)を識別することを意図しておらず、特許請求される主題の範囲の決定に役立てるため用いることも意図していない。
【0005】
制御可能な音波発生要素と、屈折性流体と、内部に空洞を持ったレンズケースと、を含む可変音響式屈折率分布型(TAG)レンズが提供される。屈折性流体の動作ボリュームはケース空洞に収容され、制御可能な音波発生要素は、レンズケースの内部において動作ボリュームを貫通する光路を中心として配置されている。TAGレンズの軸方向は光路の光軸に対して平行であると規定される。屈折性流体の動作ボリュームは、音波発生要素による音波の発生に応答して光路に沿って屈折率の変化を生じることができ、これに従ってTAGレンズは、音波発生要素に周期的駆動信号が印加された場合にTAGレンズの周期的に変調される光学パワー変動を与えるよう制御される。様々な実施例において、TAGレンズはビジョンシステムの一部として含まれ、このため、周期的に変調される光学パワー変動をTAGレンズに与えるためのTAGレンズの制御は、ビジョンシステムに合焦距離変動を与える。
【0006】
様々な実施例において、レンズケースは、概ね軸方向に沿って設けられるケース壁部(側面部)と、概ね軸方向を横断する方向に設けられる第1及び第2のケース端部(上下面部)と、を含む。各ケース端部は、ウィンドウ搭載部において光路に沿って搭載されたウィンドウを含む中央配置ウィンドウ構成と、少なくとも部分的にケース壁部に位置合わせされてケース壁部に密閉されたケース端縁部と、を含む。各ウィンドウ搭載部は、光軸に直交するウィンドウ搭載部の最も遠い内面、及び外面にそれぞれ一致する、2つの平行なウィンドウ実装境界面の間に画定された(軸方向に沿った)ウィンドウ実装面厚みを有する。本明細書に開示される原理に従って、各ケース端部は更に、関連付けられたウィンドウ搭載部とケース端縁部との間に結合されてそれらに密閉された軸方向追従部を含み、軸方向追従部は、関連付けられたウィンドウ搭載部を所定位置に保持し、音波発生要素に周期的駆動信号が印加された場合に関連付けられたケース端縁部に対する関連付けられたウィンドウ搭載部の軸方向偏向振幅を増大させるように構成されている。各ケース端部において、その軸方向追従部は、関連付けられたウィンドウ搭載部のウィンドウ実装面厚みの最大で75%である軸方向に沿った低減材料厚さによって特徴付けられる第1の低減厚さ領域(例えば、いくつかの実施例ではケース端部の環状溝に対応する)を含む。第1の低減厚さ領域は概ね、光軸を中心として少なくとも270度の対応する角度にわたって、関連付けられたウィンドウの周りに設けられている。様々な実施例において、第1の低減厚さ領域は概ね環状の形状を有し、270度から360度の範囲内の対応する角度にわたって設けられることができる。本発明者等は、このような構成が、TAGレンズの合焦範囲及び/又は動作安定性(例えば合焦範囲の安定性及び/又は周期駆動信号に関連付けられた共振周波数の安定性)を改善し、その光学パワーの安定性及び精度及び/又はその周期駆動信号の位相に対する合焦距離較正を維持することを見出した。そのような改善は、どんなに小さくても、TAGレンズに基づく計測システムの有用性及び精度の向上にとって重大である。
【0007】
いくつかの実施例において、第1の低減厚さ領域は、関連付けられたウィンドウ搭載部のウィンドウ実装面厚みの最大で65%又は最大で55%(又はそれ未満)である軸方向に沿った低減材料厚さによって特徴付けることができる。
【0008】
いくつかの実施例において、第1の低減厚さ領域は、第1の低減厚さ領域と同一の広がりを持つか又は第1の低減厚さ領域よりも大きい第1のくぼみ表面を含み、第1のくぼみ表面は、関連付けられたケース端部の隣接表面に対して軸方向にくぼみ、第1の低減厚さ領域の低減材料厚さを軸方向に沿って画定する。第1の低減厚さ領域は、ケース端部の材料に形成された溝の表面部分を含むことができる。いくつかの実施例において、TAGレンズは概ね円筒形の形状を有し、ケース端部の材料に形成された溝は概ね環状の形状を有することができる。
【0009】
様々な実施例において、いずれかのケース端部の第1のくぼみ表面はそのケース端部の外面又は内面に位置付けることができる。様々な実施例において、いずれかのケース端部の外面又は内面のいずれかに、そのケース端部の第2のくぼみ表面を位置付けることができる。いくつかの実施例では、第1のくぼみ表面が内面に位置付けられている場合は第2のくぼみ表面が外面に位置付けられる。しかしながら、このような実施例は単なる例示であって、限定ではない。
【0010】
いくつかの実施例では、各ケース端部において、関連付けられたケース端縁部は、光軸にノミナルで直交する当接面を画定する部分を含み、関連付けられたウィンドウ搭載部の全ての外面は、この関連付けられたウィンドウ搭載部の増大した軸方向偏向振幅よりも大きい軸方向の距離だけ、当接面に対して軸方向にくぼんでいる。
【0011】
いくつかの実施例では、少なくとも1つのケース端部において、関連付けられたケース端縁部はその外周を取り囲む搭載表面を含むことができ、搭載表面は、光軸に直交する半径方向に沿って搭載表面に力を加える搭載要素(例えば搭載クランプ)を受容するように構成されている。少なくとも1つのケース端部は更に、半径方向ひずみ吸収路又は半径方向追従曲げ要素のうち少なくとも一方を含む半径方向ひずみ分離構成を含むことができ、半径方向ひずみ分離構成は、光軸を中心として少なくとも270度の対応する角度にわたって設けられ、その搭載表面と関連付けられた軸方向追従部の第1の低減厚さ領域との間に半径方向に沿って位置付けられている。様々な実施例において、TAGレンズは概ね円筒形の形状を有し、第1の低減厚さ領域は環状領域であり、半径方向ひずみ吸収路は、その少なくとも1つのケース端部の外端面に形成された環状溝を含むことができる。
【0012】
いくつかの実施例において、各ケース端部の少なくとも軸方向追従部及びウィンドウ構成は、関連付けられたケース端縁部に対するウィンドウ搭載部の軸方向並進を含むTAGレンズの共振モードを与えるように、本明細書に開示される様々な原理に従って構成されている。関連付けられたケース端縁部に対するウィンドウ搭載部の軸方向並進の振幅で示されるその共振モードの共振帯域幅は、音波発生要素に印加される周期的駆動信号の周波数を含む。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】TAGレンズを含む撮像/検査システムの光学撮像部及び制御システム部のブロック図である。
【
図2】共振で発生する定在波音波を含む、既知の要素を含むTAGレンズの断面の図である。
【
図3】各ケース端部において軸方向追従部を用いる第1の例示的な実施例を含むレンズケースの第1の例示的な実施例を備えたTAGレンズの断面図である。
【
図4】各ケース端部において軸方向追従部を用いる第2の例示的な実施例を含むレンズケースの第2の例示的な実施例を備えたTAGレンズの断面図である。
【
図5】各ケース端部において半径方向ひずみ分離構成と組み合わせて軸方向追従部を用いる第3の例示的な実施例を含むレンズケースの第3の例示的な実施例を備えたTAGレンズの断面図である。
【
図6A】外部貯蔵部の一般的な実施例を含む、
図5に示されているTAGレンズの等角投影図である。
【
図6B】外部貯蔵部の一般的な実施例を含む、
図5に示されているTAGレンズの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1及び
図2の記載は、ワークピース検査システムで用いられるTAGレンズの様々な動作原理及び用途に関して簡単な背景を与える。この簡単な背景をより綿密な説明及び理解によって補足するため、そのような動作原理及び用途の様々な態様が、前述の本願に含めた引用文献、並びに、米国特許第9,930,243号、9,736,355号、及び7,627,162号に記載されている。
【0015】
図1は、光学撮像システム105、照明源130、ワークピースステージ110、及び制御システム部101を含む撮像/検査システム10のブロック図である。様々な実施例において、撮像/検査システム10は、マシンビジョンホストシステムに適合させるか又はスタンドアロンのシステムとして使用することができ、本明細書及び本願に含まれる引用文献に開示された原理に従って動作できる。光学撮像システム105、照明源130、及びワークピースステージ110を含む撮像/検査システム10は、ワークピース20を撮像又は検査するため、全体として制御システム部101によって制御することができる。
【0016】
光学撮像システム105は、画像検出器160(例えばカメラ)、1つ以上のフィールドレンズ150(例えば交換可能対物レンズを含む)、及びTAGレンズ170Aを含む。制御システム部101は、システムマネージャ回路/ルーチン125を含むことができ、これは入出力インタフェース139及び撮像マネージャ回路/ルーチン180を管理できる。入出力インタフェース139に、ホストシステム又は様々な個別のディスプレイデバイスもしくは入力デバイス等を接続することができる。いくつかの実施例において、ワークピースステージ110は、光学撮像システム105に対してワークピースを移動させる(任意選択的な)移動制御システムを備え得る。そのような実施例では、システムマネージャ回路及びルーチン125はワークピースプログラム発生器及び実行器(図示せず)を含むことができ、これは本願に含まれる引用文献に開示されているようにワークピース20を自動的に検査するよう撮像/検査システム10の移動制御システム及び他の要素を動作させる。
図1に示されているように、撮像マネージャ回路/ルーチン180は、照明制御インタフェース132、カメラ制御インタフェース162、及びTAGレンズ制御インタフェース172を含むか又はこれらを管理する。TAGレンズ制御インタフェース172は、TAGレンズ170Aによって与えられる周期的合焦位置変調と同期して様々な画像露光を制御するための回路及び/又はルーチンを含むTAGレンズ制御部(例えば撮像マネージャ回路/ルーチン180の一部にある)を含むか又はこれに接続することができる。いくつかの実施例において、TAGレンズ制御インタフェース172及びTAGレンズ制御部はマージされる及び/又は区別できない場合がある。照明制御インタフェース132は、適用可能な場合、例えば、対応する照明源(例えば照明源130)の選択、パワー、オン/オフスイッチ、及びストロボパルスタイミングを制御することができる。いくつかの実施例において、照明制御インタフェース132は、露光(ストロボ)時間制御部を含むか、又は他の方法でストロボタイミング信号を(例えば照明源130に)提供して、TAGレンズ合焦位置変調の所望の位相タイミングと同期した画像露光ストロボタイミングを与えることができる。カメラ制御インタフェース162は、適用可能な場合、例えばカメラの設定、露光タイミング、及びデータ出力等を制御できる。いくつかの実施例において、カメラ制御インタフェース162はタイミング制御部を含み、カメラ画像露光タイミングをTAGレンズ合焦位置変調の所望の位相タイミング及び/又は照明タイミングと同期させることができる。これらのコンポーネント及び以下で説明する追加のコンポーネントの各々は、1つ以上のデータ/制御バス及び/又はアプリケーションプログラミングインタフェースによって、又は様々な要素間の直接接続によって、相互接続することができる。
【0017】
以下で更に詳しく記載されるように、(光軸OAに沿った)撮像光路OPATHは、ワークピース20から画像検出器160までワークピース撮像光155を伝達する様々な光学コンポーネントを含む。例えば、フィールドレンズ150、TAGレンズ170A、及び画像検出器160は全て、それらの光軸がワークピース20の表面と交差する同一の光軸OA上で位置合わせされるように配置できる。しかしながら、この実施例は例示のみを意図しており、限定でないことは認められよう。より一般的には、撮像光路OPATHはミラー及び/又は他の光学要素を含むことができ、既知の原理に従って画像検出器(例えば画像検出器160)を用いてワークピース20を撮像するよう動作できる任意の形態をとり得る。図示されている実施例では、撮像光路OPATHはTAGレンズ170Aを含み、1回以上のワークピース画像露光を用いてワークピース20の表面を撮像及び/又は測定するために使用することができる。
【0018】
前述のように、共振駆動信号(例えば、制御システム部101のTAGレンズ制御インタフェース172から信号線171に入力される)に応答して、TAGレンズ170Aの光学パワーは高周波数で連続的に変化する。これに応じて有効合焦位置EFPが変化する。様々な実施例において、駆動信号は、TAGレンズ170Aの動作の共振周波数の正弦波AC信号である。TAGレンズ170Aの光学パワーが正弦波状に変化している間の対応する時点又は「位相タイミング」において、有効合焦位置EFPに対応する焦点距離Dfを利用できる。ノミナルの又は「ミッドレンジ(midrange)」の有効合焦位置は、光学パワーがゼロである状態のTAGレンズと組み合わせた、フィールドレンズ150(例えば対物レンズ)の(固定された)焦点距離であると考えられる。照明源130又は画像検出器160を、共振サイクルの特定の位相又は「位相タイミング」で「ストロボ発光」させて、対応する有効合焦位置又は合焦距離で合焦された画像露光を得ることができる。光源光134はワークピース光155として反射又は伝送され、撮像に用いられるワークピース光はフィールドレンズ150及びTAGレンズ170Aを通過し、画像検出器160(例えばカメラ)によって集光される。ワークピース20の画像を含むワークピース画像露光は、画像検出器160によってキャプチャされ、信号線161上で(例えばカメラ制御インタフェース162を介して)撮像マネージャ回路/ルーチン180に出力される。様々な実施例において、画像検出器160は、既知の電荷結合素子(CCDカメラ)イメージセンサ又は他の形態のカメラとすることができ、入射画像IMGを受信して、所定の信号形態を有する検出画像DIMGを撮像マネージャ回路/ルーチン180に出力することができる。
【0019】
既知のコントラストベースの合焦解析方法を用いて、得られた1又は複数の画像を解析し、それらが合焦状態であるか否かを判定すること、及び/又はシステムマネージャ回路及びルーチン125又は撮像マネージャ回路/ルーチン180で使用して、ワークピース20の合焦画像を与える「自動合焦」動作を行うためにストロボ位相タイミングを調整することができる。この代わりに又はこれに加えて、そのようなコントラストベースの合焦解析方法を用いて、既知の位相タイミングセットで取得された画像セットからベストフォーカス画像を識別し、その「ベストフォーカス」位相タイミング値を出力することができる。各Z高さ又は有効合焦位置を各「ベストフォーカス」位相タイミングに関連付けるZ高さ(有効合焦位置)較正データを利用できる。このため、「ベストフォーカス」画像に関連付けられた位相タイミングに基づいて、ワークピース20の撮像された表面部分の表面高さ座標を決定できる。従って、所望の場合、光学撮像システム105及び/又は撮像/検査システム10を用いて、ワークピース20をスキャンすることによってこれを測定又はプロファイリングできる。そのような測定プロセスの様々な態様は、本願に含まれる引用文献において更に詳しく記載されている。
【0020】
前述の記載に基づき、TAGレンズの光学パワー及び/又は合焦範囲及び/又は動作安定性(例えば合焦範囲の安定性及び/又は周期駆動信号に関連付けられた共振周波数の安定性)に関して、これらの特性のいずれかの性能及び/又は安定性を改善させると、TAGレンズを含む撮像システム又は他のシステムの全体的な性能が改善し得ること、及び/又は計測システムで使用される場合に精度が向上し得ることは認められよう。以下、
図2を参照して、いくつかの既知の要素を有するTAGレンズ構成について更に詳しく記載する。
図3から
図6を参照して、本明細書に開示される原理に従った、TAGレンズの性能及び/又は安定性の改善を達成する構成について、後で更に詳しく記載する。
【0021】
図2は、いくつかの既知の要素を含むTAGレンズ170Bの断面図である。TAGレンズ170Bは、ケース端部210A(ケース端部CEPtとも称される)及び一体化ケース壁/ケース端部210Bを備えたレンズケース210を含む。
図2に示されているように、レンズケース210は、ケース端部CEPb及びケース壁部CWPを含む。レンズケース210はケース空洞CCを取り囲んでいる。TAGレンズ170Bは更に、制御可能な音波発生要素220及び屈折性流体250を含む。
図2に示されているように、レンズケース210のケース空洞CCは屈折性流体250の動作ボリュームOPVを含み、音波発生要素220(例えば圧電振動子)は、レンズケース210の内部において動作ボリュームOPVを貫通する光路OPATHを中心として配置されている。様々な実施例において(例えば本明細書に図示されているように)、レンズケース210は中空の円筒形ケースであり、制御可能な音波発生要素220は、レンズケース210の内部に設置された中空の円筒形圧電振動子であり得る。
【0022】
本明細書で用いられる慣例に従って、添え字「t」は概ね「上部」ケース端部CEPtの要素を示し、添え字「b」は概ね「下部」ケース端部CEPbの要素を示す。「上部」及び「下部」の使用は、本明細書の様々な図の記載においてケース端部の一方を他方から区別するため便宜上用いられるに過ぎないことは認められよう。一般的に言うと、TAGレンズは所望の場合に逆の位置又は回転させた位置で使用することができる。
【0023】
種々の代替的な実施例において、レンズケース210は他の形状を有することも可能である(例えば中空の六角形又は正方形等)。様々な実施例において、制御可能な音波発生要素220は、スペーサ260、261、及び262(例えば、機械的支持のためだけに使用される、エラストマから作製されたオーリング等)によって支持することができる。様々な実施例において、1つ以上のスペーサ260は、制御可能な音波発生要素220の外周面230とレンズケース210の内周空洞壁215との間(例えば間隔SP1を形成する)に配置できる。同様に、1つ以上のスペーサ261は、制御可能な音波発生要素220の上面231とレンズケース210の上部内面217tとの間(例えば間隔SP2を形成する)に配置でき、1つ以上のスペーサ262は、制御可能な音波発生要素220の下面232とレンズケース210の下部内面217bとの間(例えば間隔SP3を形成する)に配置できる。
【0024】
様々な実施例において、制御可能な音波発生要素220は、駆動信号(例えば、外周面230と内周面240との間に印加されるAC電圧)によって半径方向に振動する。様々な実施例において、駆動信号は、信号線(例えば制御システム部101のTAGレンズ制御インタフェース172から与えられる
図1の信号線171)を介し、更に電気コネクタ225を介して、音波発生要素220に印加される。
【0025】
様々な実施例において、信号線171に与えられる駆動信号(例えばAC電圧を含む)は、制御可能な音波発生要素220の内側の(すなわち、内周面240によって囲まれたケース空洞の部分内の)屈折性流体250に定在波音波Wを生成する共振周波数に調整することができる。このような場合、代表的な振動矢印VAで示されるように制御可能な音波発生要素220が振動すると、屈折性流体250に定在波音波Wが生じる(すなわち、屈折率が上昇及び低下する同心円状の波の領域が生じる)。定在波音波Wは、この定在波音波Wにほぼ対応した屈折率分布を与える密度勾配を生成することは理解されよう。その屈折率分布の中央部が、垂直方向の破線間の光路OPATHとして表されており、これを撮像のために使用することができる。
【0026】
上述のように、ケース空洞CC(例えば、内周空洞壁215並びに上部内面217t及び下部内面217bによって形成される)には、屈折性流体250が充填されている。様々な実施例において、屈折性流体250は、1つ以上の入口/出口ポート(例えば入口/出口ポート211を含む)を介してケース空洞CCに投入することができ、その後これらのポートは密閉される。様々な実施例では、所望の動作条件下で、制御可能な音波発生要素220の全体が屈折性流体250に浸されて、中空の円筒形の制御可能な音波発生要素220内の空洞(すなわち内周面240で囲まれている)に屈折性流体250が充填されるようになっている。レンズケース210の垂直方向のスロット又は路219及び半径方向のスロット又は路218によって、屈折性流体250は、充填時及び充填後に様々なスペーサ(例えばOリング)を通り過ぎて音波発生要素220の外周面230を取り囲むように流れることができる。音波発生要素220の外周全体を囲むように設けられる間隔SP1とは異なり、半径方向及び垂直方向の路218及び219は離散的な路であることは認められよう(例えば、ドリル穿孔又は他のプロセスによってレンズケース210に形成された水平方向及び垂直方向のスロットである)。屈折性流体250は、内周面240内の空洞から1又は複数の半径方向の路218内へ、また、スペーサ(例えばスペーサ260及び262)によって生成された間隔SP(例えば間隔SP1及びSP3)を介して1又は複数の垂直方向の路219内へ流れることができる。このようにして屈折性流体250は、音波発生要素220の外側を取り囲むように、音波発生要素220とレンズケース210のケース空洞CCの内周空洞壁215、上部内面217t、下部内面217bとの間の間隔SP1、SP2、及びSP3を充填することができる。また、TAGレンズ170Bは、ケース空洞CCの上部及び下部にそれぞれ配置されて密閉された上部ウィンドウ214t及び下部ウィンドウ214bも含む。TAGレンズ170Bの中心を通る(例えば光軸OAに沿って中央にある)光路OPATHは、上部ウィンドウ214t及び下部ウィンドウ214bを貫通する。
【0027】
前述の共振周波数はシステム全体の特性であることは認められよう。2018年6月5日に出願された「External Reservoir Configuration For Tunable Acoustic Gradient Lens」と題する同時係属中の、本発明の譲受人に譲渡された米国特許出願第16/000,319号(以降「319号出願」と記す)に更に詳しく記載されているように、共振周波数は、温度、及び/又は圧力、及び/又は機械的応力のようなファクタの変動に対して敏感である可能性がある。得られる定在波音波Wのレンズ効果特性(lensing characteristics)もそのようなファクタの変動に対して同様に敏感であり得る。従って、TAGレンズ170Bは、上述の較正データ(有効合焦位置EFP又は光学パワーと位相タイミング値とを特徴付けるデータ)を確立するために使用される動作状態から変動する可能性があり、その結果として高さ測定の誤差が生じる恐れがある。生じる誤差は小さいかもしれないが、精密測定の用途にとっては重大である。319号出願に開示されている様々な原理及び構成は、上述の駆動ファクタにおける変動を低減させること、及び、すでに使用されている既知のタイプの圧縮性要素IGV/ICEの移動及び/又は欠陥による変動を低減すること等を対象としている。
【0028】
圧縮性要素IGV/ICEに関して、
図2では、対応する環状くぼみ内に拘束されるよう意図された環状圧縮性要素の概略的な断面を表す破線の外形によって、1つの構成が示されている。環状圧縮性要素IGV/ICEは、意図的に封入された気泡又は独立気泡フォーム(closed-cell foam)要素等であることが既知である。環状圧縮性要素IGV/ICEに対応するものとして示されている環状くぼみは、圧縮性要素IGV/ICEに望ましいと考えられる寸法のみを基準とした寸法を有することが既知であると強調するべきである。概して、319号出願に開示されているように、既知の環状圧縮性要素IGV/ICEは意図された目的のためには不充分であり、従ってそれらの寸法は具体的な値の範囲も正当な根拠(justification)も持たない。このため、
図2に示されている環状圧縮性要素IGV/ICEに対応するものとして示されている環状くぼみは、説明の目的のための(例えば319号出願に開示されている説明に従った)概略的な表現に過ぎない。同様に、
図2に示されているケース端部CEPtの表面216tに示すくぼみの寸法は、具体的な値の範囲も正当な根拠も持たない。このようなくぼみの1つの目的は、入口/出口ポート211を介したケースキャビティCC内への流体の充填を容易に及び/又は適切に行うことである。従って、
図2のケース端部CEPtの表面216tに示されているくぼみは概略的な表現に過ぎない。
【0029】
以下で
図3から
図6Bに示されている様々な環状くぼみとは異なり、
図2に示されている様々なくぼみの例示的な寸法は、本明細書に開示される点において指定されたものでも意味のあるものでもない。それらの機能は、ケース端部CEPt(210A)の軸方向追従に影響を及ぼすことを対象としていない。混乱を避けるため、本明細書の他の箇所で記載されているように、
図2に破線の外形で示す個別の半径方向スロット218は、環状くぼみでなく、スペーサ262の下方の薄い半径方向流路を示していることは理解されよう。ケース端部CEPtの軸方向追従増大を与える望ましさは本明細書の開示前は未知であり、この点で従来技術のケース端部CEPにおけるくぼみの寸法及び配置は単に偶発的なものであって、意味のあるものではない。
【0030】
319号出願に記載されているように、環状圧縮性要素IGV/ICE及び対応する環状くぼみを排除し、これらに取って代わる改良された構成を達成するため、ケース空洞CCを、流路FLC(例えば本明細書の
図3、
図4、及び
図5に示されている)によって、屈折性流体250の予備体積を収容する変形可能な外部流体貯蔵部を含む外部貯蔵部280(例えば本明細書の
図6A及び
図6Bに示されている)に接続することができる。流路FLCによって、屈折性流体250は、屈折性流体の(例えば温度変化による)膨張及び収縮に従って、ケース空洞CCと変形可能な外部流体貯蔵部との間で行ったり来たりすることが可能となる。これは、319号出願に記載されているような様々な問題に対処するためいくつかの利点を有する。
【0031】
以下で
図3から
図6Bを参照して更に詳しく記載されるように、TAGレンズの光学性能の改善を対象とする様々な原理が本明細書で開示される。光学性能に関して、上述したように、TAGレンズ170の光学的レンズ効果は、音波発生要素220(例えば圧電シリンダ)の振動運動による屈折性流体250(例えばシリコーンオイル)の周期的収縮によって達成することができる。屈折性流体250に圧力変化が生じると、これに応じて屈折性流体250の屈折率が変化し、TAGレンズ170の光学パワーの変化が生じる(例えば、いくつかの実施例で最も重要なのはTAGレンズ170の中心光軸OAの近傍である)。様々な実施例において、光学パワーは、光軸OAの長さに沿った屈折性流体250の収縮の積分に比例し、光軸OAの全長に沿った屈折性流体250の平均ピーク収縮が大きくなると、生じる光学パワーが大きくなる/改善されるようになっている。
【0032】
図3から
図6Bの構成の概要として、様々な実施例では、音波発生要素220を光軸OAの全長に沿ってより大きい平均変位で振動させることにより、屈折性流体250のより大きい収縮を達成することができる。レンズケース210は、屈折性流体250を収容し、音波発生要素220を光軸OAと位置合わせして保持し、TAGレンズ170を光学システムに搭載するための構造を提供する(例えば、レンズケース210、特にケース端部CEPを、光学システムの支持構造又は他のコンポーネント等にクランプする及び/又は他の方法で取り付けることができる)ように機能する。音波発生要素220は、屈折性流体250と、音波発生要素220の側縁、上縁、及び下縁に沿って配置されたスペーサ260、261、及び262(例えば、機械的支持のために使用される、エラストマから作製されたオーリング等)との双方によって、レンズケース210に機械的に結合されている。様々な実施例において、音波発生要素220が大きい変位を達成するため、光軸OAに沿って屈折性流体250を収縮させる際に音波発生要素220の動きをサポートするモード又はやり方でレンズケース210が振動及び/又は偏向することが望ましい場合がある。
【0033】
以下で
図3から
図6Bに関連して更に詳しく説明するように、本発明者等は、音波発生要素220の動き及びこれに伴う流体圧力に応答して、ケース端部CEPの一方又は双方の中央部(例えばウィンドウ構成WCF)が軸方向に沿ってわずかに偏向することが望ましいと判断した。これによりウィンドウ構成WCFは、音波発生要素220の動きに対する剛性の抵抗として作用するのでなく、音波発生要素220の動きと連携してわずかに移動すること(例えば数十から数百ナノメートルのオーダーの軸方向偏向増大)ができる(例えば、音波発生要素220の動き/振動を補強すると共に動き/振動の全振幅を増大するように)。以下で更に詳しく記載されるように、様々な実施例において、そのような動き及びそれに対応した効果は、(例えば
図3及び
図4に示されているように)ケース端部CEPt及びCEPbのいずれかに又は好ましくはそれら双方に軸方向追従部ACPを含めることによって、可能となる/増大する/強化される可能性がある。上記のように、様々な実施例では、(例えば319号出願の教示に従った)外部貯蔵部も含めることができる(例えば
図6A及び/又は
図6Bに示されている)。
【0034】
本明細書に記載されている様々な構成のいずれかに関して(例えば
図3から
図6BのTAGレンズ170C~170Fのいずれかに関して)、いくつかの実施例では、ウィンドウ構成WCFの一方又は双方及びそれらに関連付けられた1又は複数の軸方向追従部ACPの質量及び剛性を、TAGレンズシステム全体の残り部分と共に調整することで、システムが必然的に、TAGレンズ170の駆動に利用される1又は複数の周波数における音波発生要素220の動き/振動をサポート(例えばそれによって共振)できるようにすることが望ましい場合がある。様々な実施例において、ウィンドウ構成WCF及び/又はこれを支持する軸方向追従部ACPは、TAGレンズ170の動作周波数に少なくとも部分的に応答できる共振周波数を有するように構成できる。このような検討事項に関して、様々な実施例では、(例えば所与の駆動周波数に対して)軸方向に沿ったウィンドウ構成WCFの所望の偏向/振動振幅を達成するように、軸方向追従部ACPの構成剛性と相互作用するウィンドウ構成WCFの大きさ又は質量(例えばウィンドウ214の相対的な大きさを含む)を調整/利用することが望ましい場合がある。様々な実施例では、1つの設計方法に従って、各ケース端部CEPの少なくとも軸方向追従部ACP及びウィンドウ構成WCFは、関連付けられたケース端縁部に対するウィンドウ搭載部の軸方向並進を含むTAGレンズの共振モードを与えるように構成されている。関連付けられたケース端縁部に対するウィンドウ搭載部の軸方向並進の振幅で示されるその共振モードの共振帯域幅は、音波発生要素に印加される周期的駆動信号の周波数を含む。一般に、開示される実施例は、望ましくは、音波発生要素220の大きい平均変位/動き/振動を達成する効率的な共振システム(例えば、最小限の入力電気エネルギを用いる等)を提供することができる。
【0035】
図3は、各ケース端部CEPにおいて軸方向追従部ACPを用いる第1の例示的な実施例を含むレンズケース210の第1の例示的な実施例を備えたTAGレンズ170Cの断面図である。
図3及び
図2において同様に付番又は指定された要素は類似の又は同一の機能及び/又は構成を有し得ること、更に、記載又は文脈によって指示される場合を除いて前述の記載に対する類推によって理解され得ることは認められよう。従って、以下では、著しい相違点及び/又は新たな特徴についてのみ詳しく説明する。類似の機能及び/又は構成を有する要素を示すこの番号付けスキームは、以下の
図4から
図6Bにも適用される。場合によっては、後の図では明らかに同様の又は同一の要素の参照番号を省略して、視覚的な混乱を避けると共に、それらの後の図に導入された新たな要素又は異なる要素をより明確に図示し強調する。そのような同様の又は同一の要素は様々な図において認識され、記載又は文脈によって指示される場合を除いて前述の記載に対する類推によって理解することができる。
【0036】
TAGレンズ170A及び
図170Bと同様、
図3のTAGレンズ170Cは制御可能な音波発生要素220及び屈折性流体250を含み、レンズケース210がケース空洞CCを取り囲んでいる。ケース空洞CC内に屈折性流体250の動作ボリュームOPVが収容され、制御可能な音波発生要素220は、レンズケース210の内部において動作ボリュームOPVを貫通する光路OPATHを中心として配置されている。屈折性流体250の動作ボリュームOPVは、音波発生要素220による音波の発生に応答して光路OPATHに沿って屈折率の変化を生じることができ、これに従ってTAGレンズ170Cは、音波発生要素に周期的駆動信号が印加された場合にTAGレンズ170Cの周期的に変調される光学パワー変動を与えるよう制御される。上述したように、様々な実施例において、TAGレンズ170Cはビジョンシステム10の一部として含めることができ、このため、周期的に変調される光学パワー変動をTAGレンズ170Cに与えるためのTAGレンズ170Cの制御は、ビジョンシステム10に合焦距離変動を与える。
【0037】
以下で更に詳しく記載されるように、
図2のTAGレンズ170Bとの1つの主な相違点は、
図3のTAGレンズ170Cが、ケース端部CEPbに軸方向追従部ACPbを及びケース端部CEPtに軸方向追従部ACPtを含むことである。これについては以下で更に詳しく記載する。本明細書に示されるTAGレンズは概ね円筒形の形状を有し、以下で概説される要素の多くは、部分的に又は完全に環状の領域の断面として図示されていると理解できる。図示されたTAGレンズの左右に同様に標示された指示子(designator)(例えば
図3のCERt)は、同一の「環状の」領域又は要素における直径方向の反対側の部分を指すものと理解される。
【0038】
レンズケースは、概ね軸方向に沿って設けられるケース壁部CWPと、概ね軸方向を横断する方向に設けられる上部及び下部のケース端部CEPt及びCEPbと、を含む。上部ケース端部CEPtは、ウィンドウ搭載部WMPt(概ね図示されたブラケットに対応する)において光路OPATHに沿って搭載されたウィンドウ214tを含む中央配置ウィンドウ構成WCFtと、例えば既知の方法に従ってケース壁部CEPとの間の接合部で固定し密閉することによって少なくとも部分的にケース壁部CWPに位置合わせされて密閉されたケース端縁部CERt(概ね図示されたブラケットに対応する)と、を含む。同様に、下部ケース端部CEPbは、ウィンドウ搭載部WMPb(概ね図示されたブラケットに対応する)において光路OPATHに沿って搭載されたウィンドウ214bを含む中央配置ウィンドウ構成WCFbと、例えば破線299においてケース壁部CWPと一体的に形成されて接続されることによってケース壁部CWPに少なくとも部分的に位置合わせされて密閉されたケース端縁部CERb(概ね図示されたブラケットに対応する)と、を含む。
【0039】
各ウィンドウ搭載部WMPt(又はWMPb)は、光軸に直交すると共にそのウィンドウ搭載部の最も遠い内面及び外面にそれぞれ一致する2つの平行なウィンドウ実装境界面の間に画定されたウィンドウ実装面厚みOWMDt(又はOWMDb)を有する。
【0040】
上部ケース端部CEPtは更に、関連付けられたウィンドウ搭載部WMPtとケース端縁部CERtとの間に(例えば図示のようにそれらと一体的に形成されることにより)結合されて密閉された軸方向追従部ACPt(概ね図示されたブラケットに対応する)を含む。軸方向追従部ACPtは、関連付けられたウィンドウ搭載部WMPtを所定位置に保持し、音波発生要素220に周期的駆動信号が印加された場合に関連付けられたケース端縁部CERtに対する関連付けられたウィンドウ搭載部WMPtの軸方向偏向振幅を増大させるように構成されている。同様に、下部ケース端部CEPbは更に、関連付けられたウィンドウ搭載部WMPbとケース端縁部CERbとの間に(例えば図示のようにそれらと一体的に形成されることにより)結合されて密閉された軸方向追従部ACPb(概ね図示されたブラケットに対応する)を含む。軸方向追従部ACPbは、関連付けられたウィンドウ搭載部WMPbを所定位置に保持し、音波発生要素220に周期的駆動信号が印加された場合に関連付けられたケース端縁部CERbに対する関連付けられたウィンドウ搭載部WMPbの軸方向偏向振幅を増大させるように構成されている。
【0041】
本明細書に開示されている原理に従って、各ケース端部CEPt(又はCEPb)では、その軸方向追従部ACPt(又はACPb)は第1の低減厚さ領域RTR1t(又はRTR1b)を含む。第1の低減厚さ領域RTR1t(又はRTR1b)は、関連付けられたウィンドウ搭載部WMPt(又はWMPb)のウィンドウ実装面厚みOWMDt(又はOWMDb)の最大で75%である軸方向に沿った低減材料厚さRMT1t(又はRMT1b)によって特徴付けられ、光軸を中心として少なくとも270度の対応する角度にわたって、関連付けられたウィンドウ搭載部の周りに設けられている(例えば
図6A及び
図6Bにいっそう明確に図示されている)。概して、TAGレンズの最良の光学性能のためには、軸方向追従部が軸対称であり、360の角度に対応することが好ましい。しかしながら、実施上の検討事項(例えばコネクタ及び/又は搭載における検討事項等)のため、全ての実施例でこれが可能であるわけではない。そのような実施例では、360度全体にわたって設けられていない「不完全な」又は妥協した軸方向追従部であっても、本明細書に記載されている利点のいくつかを提供することができる。
【0042】
ウィンドウ搭載部のウィンドウ実装面厚みOWMDt及びOWMDbは、壊れやすいウィンドウ214t及び214bに比較的剛性の保護マウントを与えると共にそれらをウィンドウ搭載部WMPt及びWMPbに対して密閉するため、比較的厚い(例えば8ミリメートル以上である)ことが望ましい場合がある。本発明者等は、各ケース端部CEPt及びCEPbに軸方向追従部を含める場合、低減材料厚さRMT1t(又はRMT1b)をウィンドウ実装面厚みOWMDt(又はOWMDb)の最大で75%に低減させた場合に、TAGレンズ動作の向上が得られると判断した。いくつかの実施例では、低減材料厚さRMT1t(又はRMT1b)をウィンドウ実装面厚みOWMDt(又はOWMDb)の最大で65%又は最大で55%に低減させた場合、更に有利となる可能性がある。これは例えば、第1の低減厚さ領域RTR1t(又はRTR1b)の幅及び/又は形状、軸方向追従部ACPt(又はACPb)における2つ以上の軸方向厚さ低減要素又は溝の存在等によって影響され得る。TAGレンズは数十又は数百kHzの周波数で動作し、そのような周波数では比較的剛性で安定したレンズ構造が必要であると共に望ましいことは認められよう。従って「追従増大」は、本明細書に開示され特許請求される原理に従って、(既知のTAGレンズ構造に比べて)TAGレンズ動作周波数におけるウィンドウ搭載部WMPt及びWMPbの軸方向偏向振幅を数十から数百ナノメートルのオーダーで増大させることに関連付けられることが意図された相対的な用語であることは理解されよう。
【0043】
図3に示されている実施例において、各ケース端部CEPt(又はCEPb)では、その低減厚さ領域RTR1t(又はRTR1b)は、対応する第1の低減厚さ領域と同一の広がりを持つか又はそれよりも大きい第1のくぼみ表面RS1t(又はRS1b)を含む。第1のくぼみ表面RS1t(又はRS1b)は、関連付けられたケース端部CEPt(又はCEPb)の隣接表面に対して軸方向にくぼみ、対応する第1の低減厚さ領域RTR1t(又はRTR1b)の低減材料厚さを軸方向に沿って画定する。
図3に示されている特定の実施例において、第1のくぼみ表面RS1t(RS1b)は、対向する表面216t(217b)に対して平行な平面であり、従って対応する第1の低減厚さ領域と同一の広がりを持つ。他の実施形態では、第1のくぼみ表面(例えばRS1t又はRS1bと同様)は、所望の場合に湾曲面又は傾斜面を含み得ることは認められよう。そのような場合、第1のくぼみ表面は対応する第1の低減厚さ領域よりも大きく、対応する第1の低減厚さ領域の厚さが関連付けられたウィンドウ実装面厚みの最大で75%であるという条件を満たすのは第1のくぼみ表面のうち「奥行きの大きい」部分のみである可能性がある。更に、第1のくぼみ表面の形状又はプロファイルに応じて、第1の低減厚さ領域の異なる部分がそれぞれ異なる材料厚さを有し得ることは理解されよう。任意のそのような部分の異なる材料厚さが、関連付けられたウィンドウ実装面厚み(例えばウィンドウ実装面厚みOWMDt又はOWMDb)の最大で75%であることを条件として、そのような部分が、本明細書に開示される原理に従った軸方向追従部ACPt又はACPbの定義及び要件に関する前述の基準を満たすことは理解されよう。
【0044】
図3に示されている実施例において、ケース端部CEPt(又はCEPb)は、ウィンドウ搭載部WMPt(又はWMPb)と、ケース端縁部CERt(又はCERb)と、軸方向追従部ACPt(又はACPb)とを含み、これらは全て単一の連続した材料片で形成されている。第1のくぼみ表面RS1t(又はRS1b)は、この単一の連続した材料片に形成された溝の表面部分を含む。図示されている実施例において、TAGレンズ170Cは概ね円筒形の形状を有し(例えば
図6A及び
図6Bに示されているように)、単一の連続した材料片に形成された溝は環状溝とすることができる(例えば、360度の全体又は大部分にわたって設けられている)。しかしながら、本明細書に開示されている原理に従った任意の構成の様々な他の実施例では、所望の場合、ケース端部CEPt(又はCEPb)の様々な要素を個別の要素として形成し、溶接、ろう付け、又は既知の方法に従った他のやり方で接合することで、動作可能なケース端部を形成できることは認められよう。
図3に示されている実施例では、第1のくぼみ表面RS1tはケース端部CEPtの内面217tに位置付けられ、第1のくぼみ表面RS1bはケース端部CEPbの外面216bに位置付けられている。しかしながら、このような構成は単なる例示であって、限定ではない。より一般的には、第1のくぼみ表面は、いずれかのケース端部の内面又は外面のいずれかに位置付ければよい。
【0045】
図3に示されているように、様々な実施例において、TAGレンズ170(例えば170C)は、光学設計目的のため軸方向に沿って指定された間隔又は既知の間隔を与えるために、光学システム内で、ケース端部CEPt及び/又はCEPbの当接面ASPにおいてレンズケース210の下端及び/又は上端が光学システムの他のコンポーネントに当接するように組み立てることができる。
図6A及び
図6Bには当接面ASPも示されている。本明細書に開示されている原理に従って、関連付けられたウィンドウ構成WCFt及びWCFtのウィンドウ搭載部WMPt又はWMPbの全ての外面は、そのウィンドウ搭載部の増大した軸方向偏向振幅よりも大きい軸方向の距離だけ、当接面ASPに対して軸方向にくぼませることができる。このような構成によって、ウィンドウ構成WCFt又はWCFbは、当接面ASPに当接する可能性のある係合面と接触することなく、(例えば音波発生要素220と共振して)ケース端縁部CERt又はCERbに対して移動/振動/偏向することができる。
【0046】
図3に示されているように、TAGレンズ170(例えば170C)は、密閉されたシステムにおいて屈折性流体250が外部貯蔵部(例えば
図6A及び
図6Bに示されているような外部貯蔵部280)との間で行ったり来たりすることを可能とする流路FLCを含み得る。これは、前述の本願に含まれる319号出願に記載されているようないくつかの問題に対処するための利点を有する。
図3の例示的な実施例において、図示されている流路FLCは、外部貯蔵部とレンズケース210Cとの間に設けられる(例えば貯蔵部交換路REC内に設けられる)チューブTBを含み、これを介して屈折性流体250はケース空洞CCと外部貯蔵部との間を行ったり来たりすることができる。1つ以上の密閉要素SL(例えば密閉リング)を含ませて(例えば、レンズケース210と外部貯蔵部との間の接続を密閉するためチューブTBの周りに位置付けられる)、屈折性流体250を密閉して閉じ込めることを保証する。流路FLC及び外部貯蔵部に関する他の態様は、319号出願を参照することによって理解できる。
【0047】
図4は、各ケース端部CEPtにおいて軸方向追従部ACPtを用いる第2の例示的な実施例を含むレンズケース210の第2の例示的な実施例を備えたTAGレンズ170Dの断面図である。前述の(例えば
図2及び
図3の)TAGレンズ構成において同様に付番又は図示されているTAGレンズ170Dの様々な要素は、以下に他の指示がない限り、前述の対応する要素と同様又は類似であると理解できる。
【0048】
図4に示されているように、ケース端部CEPtの軸方向追従部ACPは更に、ケース端部CEPtの外面216tに位置付けられた第2のくぼみ表面RS2tを含む。第2のくぼみ表面RS2tは、関連付けられたケース端部の隣接面(例えば表面216t)に対して軸方向にくぼみ、光軸を中心として少なくとも270度の対応する角度にわたって、関連付けられたウィンドウ搭載部WMPtの周りに設けられている。いくつかの実施例では、第1及び第2のくぼみ表面RS1t及びRS2tの双方が光軸を中心として360度の対応する角度にわたって設けられて、できる限り最良の収差のない光学性能を与えることが望ましい場合がある。
【0049】
図4に示されている実施例において、第2のくぼみ表面RS2tは、軸方向に沿って第1のくぼみ表面RS1tの一部と位置合わせされるように構成され、第2のくぼみ表面RS2tは、軸方向に沿って第1の低減厚さ領域RTR1tの一部(例えば
図4に示されている寸法SEPに対応する部分)の低減材料厚さを画定する。従って、第1の低減厚さ領域RTR1tの一部はウィンドウ実装面厚みOWMDtの最大で75%である材料厚さRMT1tを有し、第1の低減厚さ領域RTR1tの一部は材料厚さRMT1tよりも小さい材料厚さSEPを有することは理解されよう。一般的に言えば、このような構成は、軸方向追従部を構成する設計自由度の向上を可能とすることは理解されよう。例えば図示されている実施例では、
図3に示されているTAGレンズ170Cの軸方向追従部ACPtに比べ、TAGレンズ170Dの軸方向追従部ACPtの軸方向追従が更に増大する。また、これは、TAGレンズ170Dの軸方向追従部ACPtの中立曲げ軸(neutral bending axis)の位置を、関連付けられたウィンドウ搭載部WMPtの質量中心といっそう緊密に位置合わせするように変化させる。これは、望ましくない非対称(例えばねじれ)共振モード形状等を低減させるために有用であり得る。しかしながら、
図4に示されている実施例は単なる例示であって限定ではない。他の実施例では、第2のくぼみ表面RS2tと同様の第2のくぼみ表面は、軸方向に沿って第1のくぼみ表面RS1tと完全に位置合わせする(対応する低減材料厚さをどの場所でも寸法SEPと同一にする)ように構成するか、又は、軸方向に沿って第1のくぼみ表面RS1tのどの部分とも位置合わせしないように構成することができる。後者の構成では、分離距離SEPは、光軸OAに直交すると共に第1及び第2のくぼみ表面の最も遠いくぼみ部分にそれぞれ一致する第1及び第2の面の間の軸方向に沿った寸法又は距離として規定できる。いくつかのそのような構成において本発明者等は、分離距離SEPが、関連付けられたウィンドウ搭載部WMPtのウィンドウ実装面厚みOWMDtの最大で55%であると有利になり得ると判断した。
【0050】
図4は、関連付けられたケース端縁部CERtにおいて(電気コネクタ225及びこれに付随するカバーの近傍を除いて)ケース端部CEPtの外周を取り囲んで設けられる搭載表面MStを示している。また、
図4は、関連付けられたケース端縁部CERbにおいてケース端部CEPbの外周を取り囲んで設けられる搭載表面MSbも示している。様々な実施例において、TAGレンズはこのような搭載表面のいずれか一方又は双方を含むことができる。搭載表面MSt(又はMSb)は、半径方向に沿って搭載表面MSt(又はMSb)に力を加える搭載要素(例えば搭載表面に接続する圧縮搭載クランプ)を受容するように構成できる。そのような搭載要素によって加えられる力は、ケース端縁部CERt(もしくはCERb)又はケース端部CEPt(又はCERb)全体に応力を加えるか又はこれを変形させる可能性があるが、この応力又は変形は、システム較正条件とは異なるように発生し、経時的に不安定である、及び/又は動作温度変動等に起因して変化する。このような不安定さは、TAGレンズを精密計測システムで使用する場合、得られた光学測定値において検出可能である(例えばミクロン範囲内の測定ドリフト)。
【0051】
図4において第2のくぼみ表面RS2tは上部ケース端部CEPtにのみ示されているが、この実施例は単なる例示であって限定でないことは認められよう。様々な実施例において、いずれかのケース端部の第1のくぼみ表面は、そのケース端部の外面又は内面のいずれかに位置付けることができる。様々な実施例において、いずれかのケース端部の第2のくぼみ表面は、そのケース端部の外面又は内面のいずれかに位置付けることができる。いくつかの実施例では、第1のくぼみ表面が内面に位置付けられている場合は第2のくぼみ表面が外面に位置付けられる。軸方向追従部ACPに追加のくぼみ表面を含むこれら及びその他の実施例は、本明細書に開示され特許請求される原理に従って実施可能である。
【0052】
本発明者等は、
図4に示されているケース端部CEPtの外面216tに位置付けられた第2のくぼみ表面RS2tが、軸方向追従部ACPtにおける機能に加えて、第2の機能を有し得ることを確定した。第2のくぼみ表面RS2tは、ケース端縁部CERt(これは搭載表面MStを含む)と軸方向追従部ACPtの第1の低減厚さ領域RTR1tとの間に半径方向に沿って位置付けられた半径方向ひずみ分離構成RSICとして作用する。1つのタイプの説明又は記載に従って、第2のくぼみ表面RS2tに関連付けられた溝又は路を半径方向ひずみ吸収路RSACと見なすことができる。半径方向ひずみ吸収路RSACは、隣接するケース端縁部CERtの微小なひずみ(例えば半径方向の偏向又は「ローリング(rolling)」)を少なくとも部分的に吸収又は分離することで、比較的追従の高い(compliant)軸方向追従部ACPt又は半径方向ひずみ吸収路RSACの半径方向内側にあるケース端部CEPtの他の構造に応力を加えるか又はこれをゆがませるように伝達されるはずのひずみを、著しく低減することができる。これは、TAGレンズ170Dの動作をいっそう安定させ、本明細書に開示されている軸方向追従部ACPの使用と相乗作用を有する。まとめると、半径方向ひずみ分離構成RSICを強調するTAGレンズ170Dの代替的な記載に従い、1つの実施例では、TAGレンズ170Dは概ね円筒形の形状を有し、第1の低減厚さ領域RTR1tは環状領域とすることができ、これは、ケース端縁部CERtと軸方向追従部ACPtの第1の低減厚さ領域RTR1tとの間に半径方向に沿って位置付けられた半径方向ひずみ分離構成RSICを含む。特に、図示されている実施例では、半径方向ひずみ分離構成RSICは半径方向ひずみ吸収路RSACを含み、これは、ケース端部CEPtの外面216tに形成され、ケース端縁部CERtと軸方向追従部ACPtの第1の低減厚さ領域RTR1tとの間に半径方向に沿って位置付けられた環状溝(第2のくぼみ表面RS2tに対応する)である。
【0053】
上記で概説した記載及び/又は説明に基づいて、
図4に示されている半径方向ひずみ分離構成RSICは単なる例示であって限定でないことは認められよう。
図4に示されている半径方向ひずみ分離構成RSICは、ケース端縁部CERtと軸方向追従部ACPtの第1の低減厚さ領域RTR1tとの間に半径方向に沿って位置付けられている。しかしながら、上記で概説した搭載表面MSを含む本明細書に開示されているようなTAGレンズにおいて、半径方向ひずみ分離構成RSICは、より一般的には、ケース端部CEP内で、搭載表面MSと軸方向追従部ACPの第1の低減厚さ領域RTR1との間の半径方向に沿った任意の所望の位置に配置すればよい。様々な実施例において、(例えば上記で概説したように)外周を取り囲んだ搭載表面MSを含むケース端部は、半径方向ひずみ吸収路RSAC又は半径方向追従曲げ要素RCBE(以下で更に説明する)のうち少なくとも一方を含む半径方向ひずみ分離構成RSICを含むことができ、これは、光軸OAを中心として少なくとも270度の対応する角度にわたって設けられ、搭載表面MSと関連する軸方向追従部ACPの第1の低減厚さ領域RTR1との間に半径方向に沿って位置付けられている。以下で、上記で概説した記載と一致する1つの代替的な半径方向ひずみ分離構成が開示される。
【0054】
図5は、ケース端部CEPの一方又は双方で使用できる半径方向ひずみ分離構成RSICと組み合わせて、各ケース端部CEPにおいて軸方向追従部ACPを用いる第3の例示的な実施例を含むレンズケース210の第3の例示的な実施例を備えたTAGレンズ170Eの断面図である。
図5に示されているケース端部CEPt及びCEPbにおける要素及び特徴の大部分は
図4に示したものと同様であり、同様に理解することができる。従って、以下では、
図5に示されている半径方向ひずみ分離構成RSICに関連した著しい相違点のみを説明する。
【0055】
図5に示されているように、半径方向ひずみ分離構成RSICは、半径方向ひずみ吸収路RSAC及び半径方向追従曲げ要素RCBEを含み、これらは各々、光軸を中心として少なくとも270度の対応する角度にわたって設けられていると理解される。半径方向追従曲げ要素RCBEは、いくつかの実施例では対応する角度を取り囲む1つの連続セクションを含み、又は、他の実施例では複数のセクションRCBE’のセットを含み、対応する角度をセットとして取り囲んで設けられ得ることは理解されよう(例えば
図6A及び
図6Bに示されている)。半径方向ひずみ吸収路RSAC及び/又は半径方向追従曲げ要素RCBEの各々は、ケース端部CEPt(又はCEPb)において、搭載表面MSと関連する軸方向追従部ACPt(又はACPb)の第1の低減厚さ領域との間に半径方向に沿って位置付けられている。図示されている実施例では、TAGレンズ170Eは概ね円筒形の形状を有し、第1の低減厚さ領域RTR1t及びRTR1bは環状領域とすることができ、半径方向ひずみ吸収路RASCはケース端部CEPt又はCEPbの外面に形成された環状溝を含むことができる。具体的には、半径方向ひずみ吸収路RASCを形成する環状溝は、ケース端縁部CERt又はCERbに位置付けられ、隣接する半径方向追従曲げ要素RCBEの内壁を形成するように構成されている。この半径方向追従曲げ要素RCBEは、概ね環状の形状又は構成を有し(例えば
図6A及び
図6Bに示されているように)、搭載面MSt又はMSbである外周面を有する。
【0056】
図4に関して上記で概説したものと同様の1つのタイプの説明又は記載によると、
図5の半径方向ひずみ吸収路RASCを形成する環状溝は、隣接する半径方向追従曲げ要素RCBEの微小なひずみ(例えば半径方向の偏向又は「ローリング」)を少なくとも部分的に吸収又は分離することで、比較的追従の高い軸方向追従部ACP又は半径方向ひずみ吸収路RSACの半径方向内側にあるケース端部CEPの他の構造に応力を加えるか又はこれをゆがませるように伝達されるはずのひずみを、著しく低減することができることは認められよう。これは、TAGレンズ170Eの動作をいっそう安定させ、本明細書に開示されている軸方向追従部ACPの使用と相乗作用を有する。
【0057】
図6A及び
図6Bは、それぞれ、
図5に示されているTAGレンズ170Eと実質的に同様又は同一であるTAGレンズ170Fの等角投影図及び上面図であり、前述の本願に含まれる319号出願に含まれる開示に基づいて理解され得る外部貯蔵部280の一般的な実施例を含む。従って
図6A及び
図6Bは、本明細書の前述の図を参照して記載された同様の番号を有する様々な要素及び特徴の異なる図示を含む明解な図として、更に説明を行わなくても理解することができる。
【0058】
上記で概説した軸方向追従部ACPは、それらの「幾何学的セクション(geometric section)」特性を変更及び低減させて軸方向追従部ACPの軸方向剛性を低減させる「低減厚さ」構成によって軸方向追従増大を達成したが、軸方向に沿った厚さを不必要に低減することなく軸方向追従部ACPの弾性率を低減させることによっても同様の結果を達成できることは認められよう。例えば、米国特許出願第2006/0211802A1号及び/又は第2010/0137990A1号に開示されているように、ケース端部CEPのような部分を3D印刷及び焼結金属粉末から製造して、所望の領域に所望の量の多孔度を与えることが知られている。既知の方法に従って実用的な所望の多孔率を与える製造技法によって密度が達成される場合、金属材料の弾性率は極めて大まかに密度に比例し得ることが知られている。従って、このような製造技法を使用し、本明細書に開示されている原理に従った1つの実施例では、各ケース端部における少なくとも軸方向追従部は、平均密度を無孔密度(non-porous density)の最大で75%に低減させた多孔度を含む金属組成の材料領域を含み、この材料領域は、光軸を中心として少なくとも270度の対応する角度にわたって、関連付けられたウィンドウ搭載部を取り囲んで設けられている。記載の目的のため、そのような軸方向追従増大領域は、本明細書に開示されている様々なくぼみ表面の形状に概ね一致する軸方向に沿った形状又は突起を有し得るが、その追従は断面でなく材料の弾性率低減によって増大されるので、くぼみ表面を含む必要はないことは理解されよう。その多孔度又は密度はいくつかの実施例では比較的均一であり、又は、他の実施例では所望の場合に軸方向もしくは半径方向に沿って徐々に変化させ得ることは理解されよう。密度を低減させた多孔性材料の使用は、軸方向追従部ACPに限定される必要はなく、所望の場合はケース端部CEPの一部又は全部において使用できる。
【0059】
本開示の好適な実施例について図示及び記載したが、本開示に基づいて、図示及び記載した要素の構成及び動作のシーケンスにおける多数の変形が当業者には明らかであろう。種々の代替的な形態を用いて本明細書に開示された原理を実施することができる。更に、上述の様々な実施例を組み合わせて別の実施例を提供することも可能である。これらの様々な特許及び出願の概念を用いて更に別の実施例を提供するために必要な場合は、上述の実施例の態様は変更可能である。
【0060】
前述の記載に照らして、実施例にこれら及び他の変更を行うことができる。一般に、以下の特許請求の範囲において、使用される用語は本明細書に開示される特定の実施例に特許請求の範囲を限定するものとして解釈されず、そのような特許請求の範囲の権利が与えられる(entitled)均等物の全範囲に加えて、本明細書に開示される原理及び教示に基づく全ての可能な実施例を包含するものとして解釈されるべきである。