(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-06
(45)【発行日】2023-07-14
(54)【発明の名称】人流制御評価装置、人流制御評価方法、および人流制御評価プログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/01 20060101AFI20230707BHJP
【FI】
G08G1/01 A
G08G1/01 F
(21)【出願番号】P 2023512483
(86)(22)【出願日】2022-08-19
(86)【国際出願番号】 JP2022031439
【審査請求日】2023-02-20
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度、国立研究開発法人科学技術振興機構 未来社会創造事業、探索加速型(探索研究)、研究題目「個人及びグループの属性を考慮した群集シミュレーションと情報提供」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002491
【氏名又は名称】弁理士法人クロスボーダー特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西川 博文
(72)【発明者】
【氏名】西成 活裕
【審査官】西畑 智道
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-41897(JP,A)
【文献】特開2000-259603(JP,A)
【文献】特開2020-46759(JP,A)
【文献】国際公開第2013/069195(WO,A1)
【文献】特開2020-123128(JP,A)
【文献】萩原 良信, 野澤 満明, 崔 龍雲, 渡辺 一弘,View Based Navigationを応用したスマートフォンによる屋内歩行者案内システムの開発,電気学会論文誌C,日本,一般社団法人電気学会 The Institute of Electrical Engineers of Japan,2014年01月01日,第134巻 第1号,p.112-120
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
G01C 21/00-21/36
G01C 23/00-25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
目的位置に向かう人流を制御する人流制御の効果を評価する人流制御評価装置において、
前記人流制御が実施された人流を表す人流情報から、前記人流に含まれる人物である対象人物の位置を時系列に抽出し、時系列に抽出された前記対象人物の位置を時系列位置情報として記憶する位置取得部と、
前記時系列位置情報に基づいて前記対象人物における移動方向を時系列に算出し、時系列に算出された前記対象人物における移動方向を時系列移動方向として記憶する方向算出部と、
前記目的位置と前記時系列移動方向とに基づいて、前記対象人物における移動方向と前記対象人物の位置から前記目的位置に向かう方向との角度差を時系列に算出し、時系列に算出された角度差の時系列変化を用いて
前記対象人物が前記目的位置に到達したか否かを判定し、前記対象人物が前記目的位置に到達したか否かの判定結果を用いて前記人流制御の効果を評価する効果評価部と
を備える人流制御評価装置。
【請求項2】
前記効果評価部は、
前記角度差の時系列変化がゼロに収束することで前記対象人物が前記目的位置に到達したと判
定する請求項1に記載の人流制御評価装置。
【請求項3】
前記効果評価部は、
前記角度差の時系列変化がゼロに収束する場合、前記時系列に算出された角度差の絶対値和を算出し、前記絶対値和を前記人流制御の効果を評価する評価指標として用いる請求項2に記載の人流制御評価装置。
【請求項4】
前記効果評価部は、
前記角度差の時系列変化がゼロに収束する場合、前記時系列に算出された角度差の2乗和を算出し、前記2乗和を前記人流制御の効果を評価する評価指標として用いる請求項2に記載の人流制御評価装置。
【請求項5】
前記効果評価部は、
前記角度差の時系列変化がゼロに収束する場合、前記時系列に算出された角度差の時間的な変化度の差異を算出し、算出された角度差の時間的な変化度の差異を前記人流制御の効果を評価する評価指標として用いる請求項2に記載の人流制御評価装置。
【請求項6】
前記人流情報は、前記人流を撮影した人流映像データである請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の人流制御評価装置。
【請求項7】
目的位置に向かう人流を制御する人流制御の効果を評価する人流制御評価装置に用いられる人流制御評価方法において、
コンピュータが、前記人流制御が実施された人流を表す人流情報から、前記人流に含まれる人物である対象人物の位置を時系列に抽出し、時系列に抽出された前記対象人物の位置を時系列位置情報として記憶し、
コンピュータが、前記時系列位置情報に基づいて前記対象人物における移動方向を時系列に算出し、時系列に算出された前記対象人物における移動方向を時系列移動方向として記憶し、
コンピュータが、前記目的位置と前記時系列移動方向とに基づいて、前記対象人物における移動方向と前記対象人物の位置から前記目的位置に向かう方向との角度差を時系列に算出し、時系列に算出された角度差の時系列変化を用いて
前記対象人物が前記目的位置に到達したか否かを判定し、前記対象人物が前記目的位置に到達したか否かの判定結果を用いて前記人流制御の効果を評価する人流制御評価方法。
【請求項8】
目的位置に向かう人流を制御する人流制御の効果を評価する人流制御評価装置に用いられる人流制御評価プログラムにおいて、
前記人流制御が実施された人流を表す人流情報から、前記人流に含まれる人物である対象人物の位置を時系列に抽出し、時系列に抽出された前記対象人物の位置を時系列位置情報として記憶する位置取得処理と、
前記時系列位置情報に基づいて前記対象人物における移動方向を時系列に算出し、時系列に算出された前記対象人物における移動方向を時系列移動方向として記憶する方向算出処理と、
前記目的位置と前記時系列移動方向とに基づいて、前記対象人物における移動方向と前記対象人物の位置から前記目的位置に向かう方向との角度差を時系列に算出し、時系列に算出された角度差の時系列変化を用いて
前記対象人物が前記目的位置に到達したか否かを判定し、前記対象人物が前記目的位置に到達したか否かの判定結果を用いて前記人流制御の効果を評価する効果評価処理と
をコンピュータに実行させる人流制御評価プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、人流制御評価装置、人流制御評価方法、および人流制御評価プログラムに関する。特に、人流を制御あるいは誘導するシステムの効果を評価する人流制御評価装置、人流制御評価方法、および人流制御評価プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
人流制御システムとは、駅、ビル、あるいは商業施設といった人流が発生する場所において、人流を制御あるいは誘導するシステムである。人流制御システムは人流誘導システムとも呼ばれる。近年、このような人流制御システムによる人流制御を評価する手法が用いられている。
【0003】
特許文献1には、鉄道の駅あるいはビル内における人流制御システムの人流制御効果を評価する技術が開示されている。特許文献1の技術では、人流情報と人流制御情報から制御関数を計算し、人流情報と制御関数から人流をシミュレーション処理し、人流シミュレーション結果に基づいて人流制御効果を評価する。このとき、人流制御効果を評価するための評価値として、「エリア別の混雑度」、「経路別の遅延時間」、および「損失時間」が用いられる。「エリア別の混雑度」は、空間内において予め定義されたエリアが収容できる人数に対して実際にどれぐらいの人数の旅客が存在するかを示す度合いである。「経路別の遅延時間」は、出発地と目的地毎の標準移動時間と実際の移動時間との差を示す度合いである。「損失時間」は、出発地と目的地のすべての組み合わせおよびすべての旅客に対する損失時間をある時間帯にわたって合計した時間である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開2017/175551号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1における評価値は、エリア全体の人流がどのように分布しているか、および、人流が時間的にどのように変化したか、を測定することが可能である。しかし、与えた人流制御がどれだけ人の行動変化に影響したのかを評価することができない。すなわち、人流制御の効果を正しく評価することはできないという課題がある。
【0006】
本開示では、人流制御の効果をより正しく評価することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る人流制御評価装置は、目的位置に向かう人流を制御する人流制御の効果を評価する人流制御評価装置において、
前記人流制御が実施された人流を表す人流情報から、前記人流に含まれる人物である対象人物の位置を時系列に抽出し、時系列に抽出された前記対象人物の位置を時系列位置情報として記憶する位置取得部と、
前記時系列位置情報に基づいて前記対象人物における移動方向を時系列に算出し、時系列に算出された前記対象人物における移動方向を時系列移動方向として記憶する方向算出部と、
前記目的位置と前記時系列移動方向とに基づいて、前記対象人物における移動方向と前記対象人物の位置から前記目的位置に向かう方向との角度差を時系列に算出し、時系列に算出された角度差の時系列変化を用いて前記人流制御の効果を評価する効果評価部と
を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示では、効果評価部が、目的位置と時系列移動方向とに基づいて、対象人物における移動方向と、前記対象人物の位置から前記目的位置に向かう方向との角度差を時系列に算出する。そして、効果評価部が、時系列に算出された角度差の時系列変化を用いて人流制御の効果を評価する。本開示によれば、人流制御が実施された人流に含まれる対象人物が目的位置に到達したか否かを角度差の時系列変化により表すことができるので、人流制御の効果をより正しく評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1に係る人流制御評価装置の構成例を示す図。
【
図2】実施の形態1に係る人流制御評価装置の動作を示すフロー図。
【
図3】実施の形態1に係る人流制御評価処理を表す模式図。
【
図4】実施の形態1の変形例に係る人流制御評価装置の構成例を示す図。
【
図5】実施の形態2に係る人流制御評価装置の動作を示すフロー図。
【
図6】実施の形態2から4に係る人流制御評価処理を表す模式図。
【
図7】実施の形態3に係る人流制御評価装置の動作を示すフロー図。
【
図8】実施の形態4に係る人流制御評価装置の動作を示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本実施の形態について、図を用いて説明する。各図中、同一または相当する部分には、同一符号を付している。実施の形態の説明において、同一または相当する部分については、説明を適宜省略または簡略化する。図中の矢印はデータの流れまたは処理の流れを主に示している。また、以下の図では各構成部材の大きさの関係が実際のものとは異なる場合がある。また、実施の形態の説明において、上、下、左、右、前、後、表、裏といった向きあるいは位置が示されている場合がある。これらの表記は、説明の便宜上の記載であり、装置、器具、あるいは部品等の配置、方向および向きを限定するものではない。
【0011】
実施の形態1.
***構成の説明***
図1は、本実施の形態に係る人流制御評価装置100の構成例を示す図である。
人流制御評価装置100は、目的位置に向かう人流に対し人流制御を実施した際における人流制御の効果を評価する装置である。人流制御は、人流誘導とも呼ばれる。
【0012】
人流制御評価装置100は、コンピュータである。人流制御評価装置100は、プロセッサ910を備えるとともに、メモリ921、補助記憶装置922、入力インタフェース930、出力インタフェース940、および通信装置950といった他のハードウェアを備える。プロセッサ910は、信号線を介して他のハードウェアと接続され、これら他のハードウェアを制御する。
【0013】
人流制御評価装置100は、機能要素として、位置取得部110と方向算出部120と効果評価部130と記憶部140とを備える。記憶部140には、時系列位置情報41と時系列移動方向42と評価結果43が記憶される。また、図示は無いが、記憶部140には、人流の目的位置Oが予め記憶されている。目的位置Oは、人流を制御あるいは誘導する目的地である。目的位置Oは、位置情報あるいは位置情報の範囲により表される。
【0014】
位置取得部110と方向算出部120と効果評価部130の機能は、ソフトウェアにより実現される。記憶部140は、メモリ921に備えられる。なお、記憶部140は、補助記憶装置922に備えられていてもよいし、メモリ921と補助記憶装置922に分散して備えられていてもよい。
【0015】
プロセッサ910は、人流制御評価プログラムを実行する装置である。人流制御評価プログラムは、位置取得部110と方向算出部120と効果評価部130の機能を実現するプログラムである。
本実施の形態では、プロセッサ910として、例えば、画像処理プロセッサが用いられる。
プロセッサ910は、演算処理を行うICである。プロセッサ910の具体例は、CPU、DSP、GPUである。ICは、Integrated Circuitの略語である。CPUは、Central Processing Unitの略語である。DSPは、Digital Signal Processorの略語である。GPUは、Graphics Processing Unitの略語である。
【0016】
メモリ921は、データを一時的に記憶する記憶装置である。メモリ921の具体例は、SRAM、あるいはDRAMである。SRAMは、Static Random Access Memoryの略語である。DRAMは、Dynamic Random Access Memoryの略語である。
補助記憶装置922は、データを保管する記憶装置である。補助記憶装置922の具体例は、HDDである。また、補助記憶装置922は、SD(登録商標)メモリカード、CF、NANDフラッシュ、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ブルーレイ(登録商標)ディスク、DVDといった可搬の記憶媒体であってもよい。なお、HDDは、Hard Disk Driveの略語である。SD(登録商標)は、Secure Digitalの略語である。CFは、CompactFlash(登録商標)の略語である。DVDは、Digital Versatile Diskの略語である。
【0017】
入力インタフェース930は、マウス、キーボード、あるいはタッチパネルといった入力装置と接続されるポートである。入力インタフェース930は、具体的には、USB端子である。なお、入力インタフェース930は、LANと接続されるポートであってもよい。USBは、Universal Serial Busの略語である。LANは、Local Area Networkの略語である。
図1では、1つの入力インタフェース930が記載されているが、複数の入力インタフェース930が存在してもよい。
本実施の形態では、入力インタフェース930として画像入力インタフェースを有する。人流制御評価装置100の位置取得部110は、画像入力インタフェースを介して人流映像データ40を取得する。
【0018】
出力インタフェース940は、ディスプレイといった出力機器のケーブルが接続されるポートである。出力インタフェース940は、具体的には、USB端子またはHDMI(登録商標)端子である。ディスプレイは、具体的には、LCDである。出力インタフェース940は、表示器インタフェースともいう。HDMI(登録商標)は、High Definition Multimedia Interfaceの略語である。LCDは、Liquid Crystal Displayの略語である。
図1では、1つの出力インタフェース940が記載されているが、複数の出力インタフェース940が存在してもよい。
【0019】
通信装置950は、レシーバとトランスミッタを有する。通信装置950は、LAN、インターネット、あるいは電話回線といった通信網に接続している。通信装置950は、具体的には、通信チップまたはNICである。通信装置950は、ネットワークインタフェースともいう。
【0020】
人流制御評価プログラムは、人流制御評価装置100において実行される。人流制御評価プログラムは、プロセッサ910に読み込まれ、プロセッサ910によって実行される。メモリ921には、人流制御評価プログラムだけでなく、OSも記憶されている。OSは、Operating Systemの略語である。プロセッサ910は、OSを実行しながら、人流制御評価プログラムを実行する。人流制御評価プログラムおよびOSは、補助記憶装置922に記憶されていてもよい。補助記憶装置922に記憶されている人流制御評価プログラムおよびOSは、メモリ921にロードされ、プロセッサ910によって実行される。なお、人流制御評価プログラムの一部または全部がOSに組み込まれていてもよい。
【0021】
人流制御評価装置100は、プロセッサ910を代替する複数のプロセッサを備えていてもよい。これら複数のプロセッサは、人流制御評価プログラムの実行を分担する。それぞれのプロセッサは、プロセッサ910と同じように、人流制御評価プログラムを実行する装置である。
【0022】
人流制御評価プログラムにより利用、処理または出力されるデータ、情報、信号値および変数値は、メモリ921、補助記憶装置922、または、プロセッサ910内のレジスタあるいはキャッシュメモリに記憶される。
【0023】
位置取得部110と方向算出部120と効果評価部130の各部の「部」を「回路」、「工程」、「手順」、「処理」、あるいは「サーキットリー」に読み替えてもよい。人流制御評価プログラムは、位置取得処理と方向算出処理と効果評価処理を、コンピュータに実行させる。位置取得処理と方向算出処理と効果評価処理の「処理」を「プログラム」、「プログラムプロダクト」、「プログラムを記憶したコンピュータ読取可能な記憶媒体」、または「プログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体」に読み替えてもよい。また、人流制御評価方法は、人流制御評価装置100が人流制御評価プログラムを実行することにより行われる方法である。
人流制御評価プログラムは、コンピュータ読取可能な記録媒体に格納されて提供されてもよい。また、人流制御評価プログラムは、プログラムプロダクトとして提供されてもよい。
【0024】
***動作の説明***
次に、本実施の形態に係る人流制御評価装置100の動作である人流制御評価処理について説明する。人流制御評価装置100の動作手順は、人流制御評価方法に相当する。また、人流制御評価装置100の動作を実現するプログラムは、人流制御評価プログラムに相当する。
【0025】
図2は、本実施の形態に係る人流制御評価装置100の動作を示すフロー図である。
人流制御評価装置100は、目的位置Oに向かう人流を制御する人流制御の効果を評価する。
【0026】
<位置取得処理>
ステップS101において、位置取得部110は、人流制御が実施された人流を表す人流情報20から、人流に含まれる対象人物の位置を時系列に抽出し、時系列に抽出された対象人物の位置を時系列位置情報41として記憶部140に記憶する。
人流情報20とは、具体的には、人流制御が実施されている人流を撮影した人流映像データ40である。
具体的には、以下の通りである。
【0027】
位置取得部110は、入力インタフェース930を介して人流映像データ40を取得する。位置取得部110は、プロセッサ910により、人流映像データ40から対象人物の位置を時系列に抽出し、記憶部140の時系列位置情報41に記憶する。
対象人物とは、人流制御が実施されている人流に含まれる人物である。
【0028】
図3は、本実施の形態に係る人流制御評価処理を表す模式図である。
図3の左図では、実線と点線の各々が、対象人物の移動を表している。対象人物30の位置Pt0は、制御ポイントである。制御ポイントは人流に対して何らかの制御を実施した位置である。制御は誘導ともいう。実線の対象人物30は、目的位置Oに到達していることを示している。点線の対象人物30は、目的位置Oに到達していないことを示している。
ここでは、実線を対象人物30について説明する。位置取得部110は、対象人物30について、時系列に位置Pt0,Pt1,Pt2,Pt3,Pt4,Pt5を抽出し、時系列位置情報41に記憶する。
【0029】
<方向算出処理>
ステップS102において、方向算出部120は、プロセッサ910により、時系列位置情報41に基づいて対象人物30における移動方向を時系列に算出する。方向算出部120は、時系列に算出された対象人物30における移動方向を時系列移動方向42として記憶部140に記憶する。
具体的には、以下の通りである。
【0030】
目的位置Oは、上述したように、図示は無いが予め記憶部140に記憶されているものとする。
方向算出部120は、時系列位置情報41を用いて、各位置における移動方向を算出する。
図3の左図の例では、方向算出部120は、時系列位置情報41に記憶されているPt0,Pt1,Pt2,Pt3,Pt4,Pt5を用いて、各位置における移動方向Dt0,Dt1,Dt2,Dt3,Dt4,Dt5を算出する。
図3の左図の例では、実線の矢印が各位置における移動方向Dt0,Dt1,Dt2,Dt3,Dt4,Dt5を表している。方向算出部120は、時系列の移動方向Dt0,Dt1,Dt2,Dt3,Dt4,Dt5を時系列移動方向42に記憶する。
【0031】
<効果評価処理>
ステップS103において、効果評価部130は、目的位置Oと時系列移動方向42とに基づいて、プロセッサ910により、対象人物30における移動方向と、対象人物30の位置から目的位置Oに向かう方向との角度差δθを時系列に算出する。
【0032】
図3の左図の例では、効果評価部130は、各位置Pt0,Pt1,Pt2,Pt3,Pt4,Pt5から、目的位置Oに向かう方向dt0,dt1,dt2,dt3,dt4,dt5を算出する。そして、効果評価部130は、移動方向Dt0,Dt1,Dt2,Dt3,Dt4,Dt5と、目的位置Oに向かう方向dt0,dt1,dt2,dt3,dt4,dt5との角度差δθを算出する。角度差は
図3の左図におけるδθt0,δθt1,δθt2,δθt3,δθt4,δθt5である。
【0033】
ステップS104において、効果評価部130は、人流に含まれる対象人物の処理を終了するか否かを判定する。
対象人物の処理を終了する場合は、ステップS105に進む。
対象人物の処理を終了しない場合は、ステップS101に戻り、次の対象人物に対してステップS101からステップS103の処理を実施する。
【0034】
例えば、効果評価部130は、予め定められたルールにしたがって対象人物の処理を終了するか否かを判定する。例えば、人流に含まれる対象人物のすべてについて角度差δθの算出処理が終了した場合に、対象人物の処理を終了するとしてもよい。あるいは、人流に含まれる対象人物のうち所定の割合の人数の対象人物について角度差δθの算出処理が終了した場合に、対象人物の処理を終了するとしてもよい。あるいは、所定の時間内に所定人数の対象人物について角度差δθの算出処理が終了した場合に、対象人物の処理を終了するとしてもよい。予め定められたルールは、人流制御の効果を評価することができるものであれば、どのようなルールであっても構わない。このようなルールを設定することにより、人流制御評価装置100の処理負荷を制御することができる。
【0035】
ステップS105において、効果評価部130は、時系列に算出された角度差δθの時系列変化を用いて、プロセッサ910により、人流制御の効果を評価する。
具体的には、効果評価部130は、角度差の時系列変化がゼロに収束することで対象人物30が目的位置Oに到達したと判定する。そして、効果評価部130は、人流に含まれる対象人物30が目的位置Oに到達したか否かの判定結果を用いて人流制御の効果を評価し、評価結果43を作成する。
【0036】
図3の右図は、制御ポイントPt0で制御が行われた人物の角度差δθの時系列変化を表すグラフである。
角度差δθの時系列変化は、最終的に制御が成功する、すなわち対象人物が目的位置Oに到達した場合には、ゼロに収束する。一方、最終的に制御が失敗する、すなわち対象人物が目的位置Oに到達できなかった場合には、角度差δθの時系列変化はゼロに収束しない。このように、効果評価部130は、角度差δθの時系列変化を用いて、制御ポイントから目的位置Oまで正しく到達できたか否かを表現することができる。
【0037】
図3の左図では、実線で表された対象人物は、角度差δθの時系列変化がゼロに収束している。点線で表された対象人物は、角度差δθの時系列変化がゼロに収束していない。すなわち、実線で表された対象人物は目的位置Oに到達しており、点線で表された対象人物は目的位置Oに到達していない。
【0038】
例えば、効果評価部130は、人流において角度差δθの時系列変化がゼロに収束した人数の割合を用いて、人流制御の効果を評価してもよい。効果評価部130は、角度差δθの時系列変化がゼロに収束した人数の割合に対して、予め設定された閾値により評価の高低を判定し、評価結果43として作成する。その他、角度差δθの時系列変化を用いて人流制御の効果を評価できる方法であれば、どのような方法で人流制御の効果を評価しても構わない。
【0039】
ステップS106において、効果評価部130は、出力インタフェース940を介して、評価結果43を出力する。効果評価部130は、ディスプレイといった表示機器に評価結果43を出力してもよい。あるいは、効果評価部130は、通信装置950を介して、他の装置に評価結果43を送信してもよい。
【0040】
***本実施の形態の効果の説明***
以上のように、本実施の形態に係る人流制御評価装置100では、人流制御が実施された人流に含まれる対象人物が目的位置に到達したか否かを、目的地への方向と移動方向との角度差の時系列変化により表現することができる。これにより、本実施の形態に係る人流制御評価装置100によれば、人流制御の効果をより正しく評価することが可能となる。
【0041】
***他の構成***
本実施の形態では、位置取得部110と方向算出部120と効果評価部130の機能がソフトウェアで実現される。変形例として、位置取得部110と方向算出部120と効果評価部130の機能がハードウェアで実現されてもよい。
具体的には、人流制御評価装置100は、プロセッサ910に替えて電子回路909を備える。
【0042】
図4は、本実施の形態の変形例に係る人流制御評価装置100の構成を示す図である。
電子回路909は、位置取得部110と方向算出部120と効果評価部130の機能を実現する専用の電子回路である。電子回路909は、具体的には、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ロジックIC、GA、ASIC、または、FPGAである。GAは、Gate Arrayの略語である。ASICは、Application Specific Integrated Circuitの略語である。FPGAは、Field-Programmable Gate Arrayの略語である。
【0043】
位置取得部110と方向算出部120と効果評価部130の機能は、1つの電子回路で実現されてもよいし、複数の電子回路に分散して実現されてもよい。
【0044】
別の変形例として、位置取得部110と方向算出部120と効果評価部130の一部の機能が電子回路で実現され、残りの機能がソフトウェアで実現されてもよい。また、位置取得部110と方向算出部120と効果評価部130の一部またはすべての機能がファームウェアで実現されてもよい。
【0045】
プロセッサと電子回路の各々は、プロセッシングサーキットリとも呼ばれる。つまり、位置取得部110と方向算出部120と効果評価部130の機能は、プロセッシングサーキットリにより実現される。
【0046】
実施の形態2.
本実施の形態では、主に、実施の形態1と異なる点および実施の形態1に追加する点について説明する。
本実施の形態において、実施の形態1と同様の機能を有する構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0047】
***構成の説明***
本実施の形態に係る人流制御評価装置100のハードウェア構成例および機能構成例については実施の形態1と同様である。
本実施の形態では、効果評価部130は、角度差δθの時系列変化がゼロに収束する場合に時系列に算出された角度差δθの絶対値和を算出する。そして、効果評価部130は、絶対値和を人流制御の効果を評価する評価指標として用いる。
【0048】
***動作の説明***
次に、本実施の形態に係る人流制御評価装置100の動作である人流制御評価処理について説明する。人流制御評価装置100の動作手順は、人流制御評価方法に相当する。また、人流制御評価装置100の動作を実現するプログラムは、人流制御評価プログラムに相当する。
【0049】
図5は、本実施の形態に係る人流制御評価装置100の動作を示すフロー図である。
本実施の形態に係る人流制御評価処理において、ステップS101からステップS103、およびステップS106については、実施の形態1と同様である。
ステップS104aとステップS105aについては、基本的な動作は実施の形態1で説明したステップS104とステップS105と同様である。異なる部分については後述する。
また、本実施の形態では、ステップS103とステップS104aの間にステップS201とステップS202が追加される。
【0050】
ステップS201において、効果評価部130は、角度差δθの時系列変化がゼロに収束するか否か、すなわち、対象人物30が目的位置Oに到達するか否かを判定する。
角度差δθの時系列変化がゼロに収束する場合、ステップS202に進む。
角度差δθの時系列変化がゼロに収束しない場合、ステップS104aに進む。
【0051】
ステップS202において、効果評価部130は、時系列に算出された角度差δθの各角度差δθの絶対値を算出し、各角度差δθの絶対値の和を絶対値和として算出する。
【0052】
図6は、本実施の形態に係る人流制御評価処理を表す模式図である。
図6では、実線の対象人物と点線の対象人物のいずれもが目的位置Oに到達している。しかし、点線で示す経路の方がより遠回りをしており、制御ポイントでの人流制御効果が低いと考えられる。このように経路による人流制御効果の高低を表現するために、本実施の形態では、時系列に算出された角度差δθの絶対値を算出し、絶対値の累積を求める。この絶対値の累計、すなわち絶対値和の大小は、
図6の右図のグラフの面積の大小に対応する。
図6の例では、実線で移動した対象人物における絶対値和に比べ、点線で移動した対象人物の絶対値和が大きくなる。この絶対値和の大小により人流制御の効果を正しく評価することが可能になる。
【0053】
ステップS104aにおいて、効果評価部130は、人流に含まれる対象人物の処理を終了するか否かを判定する。
対象人物の処理を終了する場合は、ステップS105aに進む。
対象人物の処理を終了しない場合は、ステップS101に戻り、次の対象人物に対してステップS101からステップS202の処理を実施する。
【0054】
例えば、効果評価部130は、予め定められたルールにしたがって対象人物の処理を終了するか否かを判定する。実施の形態1と同様に、例えば、人流に含まれる対象人物のすべてについて角度差δθの算出処理、および、必要に応じて絶対値和の算出処理が終了した場合に、対象人物の処理を終了するとしてもよい。あるいは、人流に含まれる対象人物のうち所定の割合の人数の対象人物について角度差δθの算出処理、および、必要に応じて絶対値和の算出処理が終了した場合に、対象人物の処理を終了するとしてもよい。あるいは、所定の時間内に所定人数の対象人物について角度差δθの算出処理、および、必要に応じて絶対値和の算出処理が終了した場合に、対象人物の処理を終了するとしてもよい。予め定められたルールは、人流制御の効果を評価することができるものであれば、実施の形態1と同様にどのようなルールであっても構わない。
【0055】
ステップS105aにおいて、効果評価部130は、時系列に算出された角度差δθの時系列変化と、絶対値和が算出されている場合はその絶対値和とを用いて、プロセッサ910により、人流制御の効果を評価する。
効果評価部130は、例えば、人流において、角度差δθの時系列変化がゼロに収束した人数の割合と、角度差δθの時系列変化がゼロに収束した人物の絶対値和とを用いて、制御効果を評価する。例えば、効果評価部130は、角度差δθの時系列変化がゼロに収束した人数の割合と、角度差δθの時系列変化がゼロに収束した人の絶対値和の平均との組み合わせにより、制御効果を評価する。
より具体的には、角度差δθの時系列変化がゼロに収束した人数の割合が80%以上、かつ、角度差δθの時系列変化がゼロに収束した人の絶対値和の平均が所定値以下の場合に、「制御効果が非常に高い」と評価するとしてもよい。その他、時系列に算出された角度差δθの時系列変化と、絶対値和が算出されている場合は絶対値和とを用いて制御効果を評価できる方法であれば、どのような方法で制御効果を評価しても構わない。
【0056】
***本実施の形態の効果の説明***
以上のように、本実施の形態に係る人流制御評価装置100では、目的位置に到達するまでの角度差の絶対値和を評価指標として使用することで、人流制御の効果をより正しく評価することが可能になる。
【0057】
実施の形態3.
本実施の形態では、主に、実施の形態1と異なる点および実施の形態1に追加する点について説明する。
本実施の形態において、実施の形態1と同様の機能を有する構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0058】
***構成の説明***
本実施の形態に係る人流制御評価装置100のハードウェア構成例および機能構成例については実施の形態1と同様である。
本実施の形態では、効果評価部130は、角度差δθの時系列変化がゼロに収束する場合に、時系列に算出された角度差δθの2乗和を算出する。そして、効果評価部130は、2乗和を人流制御の効果を評価する評価指標として用いる。
【0059】
***動作の説明***
次に、本実施の形態に係る人流制御評価装置100の動作である人流制御評価処理について説明する。人流制御評価装置100の動作手順は、人流制御評価方法に相当する。また、人流制御評価装置100の動作を実現するプログラムは、人流制御評価プログラムに相当する。
【0060】
図7は、本実施の形態に係る人流制御評価装置100の動作を示すフロー図である。
本実施の形態に係る人流制御評価処理において、ステップS101からステップS103、およびステップS106については、実施の形態1と同様である。
ステップS104bとステップS105bについては、基本的な動作は実施の形態1で説明したステップS104とステップS105と同様である。異なる部分については後述する。
また、本実施の形態では、ステップS103とステップS104bの間にステップS301とステップS302が追加される。
【0061】
ステップS301において、効果評価部130は、角度差δθの時系列変化がゼロに収束するか否か、すなわち、対象人物30が目的位置Oに到達するか否かを判定する。
角度差δθの時系列変化がゼロに収束する場合、ステップS302に進む。
角度差δθの時系列変化がゼロに収束しない場合、ステップS104bに進む。
【0062】
ステップS302において、効果評価部130は、時系列に算出された角度差δθの各角度差の2乗を算出し、各角度差の2乗の和を2乗和として算出する。
【0063】
図6では、実線の対象人物と点線の対象人物のいずれもが目的位置Oに到達している。しかし、点線で示す経路の方がより遠回りをしており、制御ポイントでの人流制御効果が低いと考えられる。このように経路による人流制御効果の高低を表現するために、本実施の形態では、時系列に算出された角度差δθの2乗を算出し、2乗の累積を求める。この2乗の累計、すなわち2乗和の大小は、
図6の右図のグラフの面積の大小に対応する。
図6の例では、実線で移動した対象人物における2乗和に比べ、点線で移動した対象人物の2乗和が大きくなる。この2乗和の大小により人流制御の効果を正しく評価することが可能になる。
【0064】
ステップS104bにおいて、効果評価部130は、人流に含まれる対象人物の処理を終了するか否かを判定する。
対象人物の処理を終了する場合は、ステップS105bに進む。
対象人物の処理を終了しない場合は、ステップS101に戻り、次の対象人物に対してステップS101からステップS302の処理を実施する。
【0065】
例えば、効果評価部130は、予め定められたルールにしたがって対象人物の処理を終了するか否かを判定する。実施の形態1と同様に、例えば、人流に含まれる対象人物のすべてについて角度差δθの算出処理、および、必要に応じて2乗和の算出処理が終了した場合に、対象人物の処理を終了するとしてもよい。あるいは、人流に含まれる対象人物のうち所定の割合の人数の対象人物について角度差δθの算出処理、および、必要に応じて2乗和の算出処理が終了した場合に、対象人物の処理を終了するとしてもよい。あるいは、所定の時間内に所定人数の対象人物について角度差δθの算出処理、および、必要に応じて2乗和の算出処理が終了した場合に、対象人物の処理を終了するとしてもよい。予め定められたルールは、人流制御の効果を評価することができるものであれば、実施の形態1と同様にどのようなルールであっても構わない。
【0066】
ステップS105bにおいて、効果評価部130は、時系列に算出された角度差δθの時系列変化と、2乗和が算出されている場合は2乗和とを用いて、プロセッサ910により、人流制御の効果を評価する。
効果評価部130は、例えば、人流において、角度差δθの時系列変化がゼロに収束した人数の割合と、さらに、角度差δθの時系列変化がゼロに収束した人物の2乗和とを用いて、制御効果を評価する。例えば、効果評価部130は、角度差δθの時系列変化がゼロに収束した人数の割合と、角度差δθの時系列変化がゼロに収束した人の2乗和の平均との組み合わせにより、制御効果を評価する。
より具体的には、角度差δθの時系列変化がゼロに収束した人数の割合が80%以上、かつ、角度差δθの時系列変化がゼロに収束した人の2乗和の平均が所定値以下の場合に、「制御効果が非常に高い」と評価する。その他、時系列に算出された角度差δθの時系列変化と、2乗和が算出されている場合は2乗和とを用いて制御効果を評価できる方法であれば、どのような方法で制御効果を評価しても構わない。
【0067】
***本実施の形態の効果の説明***
以上のように、本実施の形態に係る人流制御評価装置100では、目的位置に到達するまでの角度差の2乗和を評価指標として使用することで、人流制御の効果をより正しく評価することが可能になる。
【0068】
実施の形態4.
本実施の形態では、主に、実施の形態1と異なる点および実施の形態1に追加する点について説明する。
本実施の形態において、実施の形態1と同様の機能を有する構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0069】
***構成の説明***
本実施の形態に係る人流制御評価装置100のハードウェア構成例および機能構成例については実施の形態1と同様である。
本実施の形態では、効果評価部130は、角度差δθの時系列変化がゼロに収束する場合、時系列に算出された角度差δθの変化度を算出する。具体的には、効果評価部130は、角度差δθの時系列変化がゼロに収束する場合に、時系列に算出された角度差δθの時間的な変化度の差異を算出する。そして、効果評価部130は、角度差δθの時間的な変化度の差異を人流制御の効果を評価する評価指標として用いる。
【0070】
***動作の説明***
次に、本実施の形態に係る人流制御評価装置100の動作である人流制御評価処理について説明する。人流制御評価装置100の動作手順は、人流制御評価方法に相当する。また、人流制御評価装置100の動作を実現するプログラムは、人流制御評価プログラムに相当する。
【0071】
図8は、本実施の形態に係る人流制御評価装置100の動作を示すフロー図である。
本実施の形態に係る人流制御評価処理において、ステップS101からステップS103、およびステップS106については、実施の形態1と同様である。
ステップS104cとステップS105cについては、基本的な動作は実施の形態1で説明したステップS104とステップS105と同様である。異なる部分については後述する。
また、本実施の形態では、ステップS103とステップS104cの間にステップS401とステップS402が追加される。
【0072】
ステップS401において、効果評価部130は、角度差δθの時系列変化がゼロに収束するか否か、すなわち、対象人物30が目的位置Oに到達するか否かを判定する。
角度差δθの時系列変化がゼロに収束する場合、ステップS402に進む。
角度差δθの時系列変化がゼロに収束しない場合、ステップS104cに進む。
【0073】
ステップS402において、効果評価部130は、時系列に算出された角度差δθの時間的な変化度の差異を算出する。
【0074】
図6では、実線の対象人物と点線の対象人物のいずれもが目的位置Oに到達している。しかし、点線で示す経路の方がより遠回りをしている。これは、点線の人物移動において、制御ポイントでの制御効果が時間経過を伴って表出したとも考えられる。このように、制御ポイントでの制御効果が時間経過を伴って表出したことを表現するために、本実施の形態では、角度差を時系列に算出し(ステップS103)、角度差の変化量を観測し、予め設定した閾値処理を行う。例えば、大きな角度から急に小さな角度に変化した場合、制御の効果がそのタイミングで発現したと考えられる。このように、角度変化の閾値処理により、制御の効果を正しく評価することが可能になる。
【0075】
ステップS104cにおいて、効果評価部130は、人流に含まれる対象人物の処理を終了するか否かを判定する。
対象人物の処理を終了する場合は、ステップS105cに進む。
対象人物の処理を終了しない場合は、ステップS101に戻り、次の対象人物に対してステップS101からステップS402の処理を実施する。
【0076】
例えば、効果評価部130は、予め定められたルールにしたがって対象人物の処理を終了するか否かを判定する。実施の形態1と同様に、例えば、人流に含まれる対象人物のすべてについて角度差δθの算出処理、および、必要に応じて角度差δθの時間的な変化度の差異の算出処理が終了した場合に、対象人物の処理を終了するとしてもよい。あるいは、効果評価部130は、人流に含まれる対象人物のうち所定の割合の人数の対象人物について角度差δθの算出処理、および、必要に応じて角度差δθの時間的な変化度の差異の算出処理が終了した場合に、対象人物の処理を終了するとしてもよい。あるいは、所定の時間内に所定人数の対象人物について角度差δθの算出処理、および、必要に応じて角度差δθの時間的な変化度の差異の算出処理が終了した場合に、対象人物の処理を終了するとしてもよい。予め定められたルールは、人流制御の効果を評価することができるものであれば、実施の形態1と同様にどのようなルールであっても構わない。
【0077】
ステップS105cにおいて、効果評価部130は、時系列に算出された角度差δθの時系列変化と、角度差δθの時間的な変化度の差異が算出されている場合は当該変化度の差異とを用いて、プロセッサ910により、人流制御の効果を評価する。
効果評価部130は、例えば、人流において、角度差δθの時系列変化がゼロに収束した人数の割合と、さらに、角度差δθの時系列変化がゼロに収束した人物の角度差δθの時間的な変化度の差異とを用いて、制御効果を評価する。
例えば、効果評価部130は、角度差δθの時系列変化がゼロに収束した人数の割合が80%以上で「人流制御効果が高い」と評価し、かつ、角度差δθの時間的な変化度の差異の閾値処理により効果が表れたタイミングを特定する。そして、効果評価部130は、人流制御について「人流制御効果が高く、かつ、特定のタイミングにおいてより効果が表れる」とする評価結果43を作成する。その他、時系列に算出された角度差δθの時系列変化と、角度差δθの時間的な変化度の差異の閾値処理とを用いて制御効果を評価できる方法であれば、どのような方法で制御効果を評価しても構わない。
【0078】
***本実施の形態の効果の説明***
以上のように、本実施の形態に係る人流制御評価装置100では、角度差δθの時間的な変化度の差異の閾値処理を用いることで、人流制御の効果をよりきめ細かく評価することが可能になる。
【0079】
以上の実施の形態1から4では、人流制御評価装置の各部を独立した機能ブロックとして説明した。しかし、人流制御評価装置の構成は、上述した実施の形態のような構成でなくてもよい。人流制御評価装置の機能ブロックは、上述した実施の形態で説明した機能を実現することができれば、どのような構成でもよい。また、人流制御評価装置は、1つの装置でなく、複数の装置から構成されたシステムでもよい。
また、実施の形態1から4のうち、複数の部分を組み合わせて実施しても構わない。あるいは、これらの実施の形態のうち、1つの部分を実施しても構わない。その他、これらの実施の形態を、全体としてあるいは部分的に、どのように組み合わせて実施しても構わない。
すなわち、実施の形態1から4では、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
【0080】
なお、上述した実施の形態は、本質的に好ましい例示であって、本開示の範囲、本開示の適用物の範囲、および本開示の用途の範囲を制限することを意図するものではない。上述した実施の形態は、必要に応じて種々の変更が可能である。例えば、フロー図あるいはシーケンス図を用いて説明した手順は、適宜に変更してもよい。
【符号の説明】
【0081】
20 人流情報、30 対象人物、40 人流映像データ、41 時系列位置情報、42 時系列移動方向、43 評価結果、100 人流制御評価装置、110 位置取得部、120 方向算出部、130 効果評価部、140 記憶部、909 電子回路、910 プロセッサ、921 メモリ、922 補助記憶装置、930 入力インタフェース、940 出力インタフェース、950 通信装置。
【要約】
人流制御評価装置(100)は、人流制御の効果を評価する。位置取得部(110)は、人流情報(20)から対象人物の位置を時系列に抽出し、時系列位置情報(41)として記憶する。方向算出部(120)は、時系列位置情報(41)に基づいて対象人物における移動方向を時系列に算出し、時系列移動方向(42)として記憶する。効果評価部(130)は、対象人物における移動方向と対象人物の位置から目的位置に向かう方向との角度差を時系列に算出し、時系列に算出された角度差の時系列変化を用いて人流制御の効果を評価する。