(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-07
(45)【発行日】2023-07-18
(54)【発明の名称】マレイミド化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 8/46 20060101AFI20230710BHJP
【FI】
C08F8/46
(21)【出願番号】P 2019064748
(22)【出願日】2019-03-28
【審査請求日】2021-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】海老澤 和明
【審査官】堀内 建吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-048285(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1744925(KR,B1)
【文献】特開2014-169384(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 8/46
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(a1):
【化1】
((a1)中、R
a01およびR
a02は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数3以上8以下のシクロアルキル基または炭素原子数6以上12以下のアリール基である。)
で表される基を有するマレイミド化合物の製造方法であって、
第一級アミノ基を有する原料化合物における前記第一級アミノ基と、下記式(a2):
【化2】
(式(a2)中、R
a01およびR
a02は、式(a1)中のR
a01およびR
a02と同様であり、
R
a1~R
a6は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1以上4以下のアルキル基、又は炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基であり、R
a1とR
a5とは、互いに結合して-O-、-S-、-CH
2-、又は-CR
a7R
a8-を形成してもよく、R
a3とR
a4とは、互いに結合して炭素数6以上12以下の環を構成してもよく、
R
a7及びR
a8は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基又は炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基である。)
で表されるジカルボン酸無水物とを縮合させて、下記式(a3):
【化3】
(式(a3)中、R
a01およびR
a02は、式(a1)中のR
a01およびR
a02と同様であり、R
a1~R
a6は、式(a2)中のR
a1~R
a6と同様である。)
で示される基を生成させる第1工程と、
前記第1工程で生成した、前記式(a3)で表される基を有する化合物を加熱して、前記式(a3)で表される基を前記式(a1)で表される基に変換する第2工程と、
を含み、
前記原料化合物が樹脂である、マレイミド化合物の製造方法。
【請求項2】
前記樹脂が、不飽和二重結合を有する単量体の重合体である、請求項1に記載のマレイミド化合物の製造方法。
【請求項3】
前記樹脂が、側鎖末端に第一級アミノ基を有する(メタ)アクリル樹脂、又は側鎖末端に第一級アミノ基を有するポリスチレン系樹脂である、請求項1又は2に記載のマレイミド化合物の製造方法。
【請求項4】
前記第一級アミノ基を有するモノマーを単独重合するか、前記第一級アミノ基を有するモノマーと、コモノマーとを共重合して、前記樹脂である前記原料化合物を製造することを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のマレイミド化合物の製造方法。
【請求項5】
前記R
a01および前記R
a02が、それぞれ水素原子である、請求項1~4のいずれか1項に記載のマレイミド化合物の製造方法。
【請求項6】
前記式(a2)で表される化合物が、下記式(a2-1):
【化4】
(式(a2-1)中、R
a01、R
a02、R
a2、R
a3、R
a4およびR
a6は、式(a2)中のR
a01、R
a02、R
a2、R
a3、R
a4およびR
a6と同様である。)
で表される化合物である、請求項1~5のいずれか1項に記載のマレイミド化合物の製造方法。
【請求項7】
前記第1工程において、前記式(a3)で示される基を生成させる際に、カルボニルジイミダソールを用いて縮合反応を行う、請求項1~6のいずれか1項に記載のマレイミド化合物の製造方法。
【請求項8】
下記式(a1):
【化5】
((a1)中、R
a01およびR
a02は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数3以上8以下のシクロアルキル基または炭素原子数6以上12以下のアリール基である。)
で表される基を有するマレイミド化合物の製造方法であって、
第一級アミノ基を有する原料化合物における前記第一級アミノ基と、下記式(a2):
【化6】
(式(a2)中、R
a01およびR
a02は、式(a1)中のR
a01およびR
a02と同様であり、
R
a1~R
a6は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1以上4以下のアルキル基、又は炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基であり、R
a1とR
a5とは、互いに結合して-O-、-S-、-CH
2-、又は-CR
a7R
a8-を形成してもよく、R
a3とR
a4とは、互いに結合して炭素数6以上12以下の環を構成してもよく、
R
a7及びR
a8は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基又は炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基である。)
で表されるジカルボン酸無水物とを縮合させて、下記式(a3):
【化7】
(式(a3)中、R
a01およびR
a02は、式(a1)中のR
a01およびR
a02と同様であり、R
a1~R
a6は、式(a2)中のR
a1~R
a6と同様である。)
で示される基を生成させる第1工程と、
前記第1工程で生成した、前記式(a3)で表される基を有する化合物を加熱して、前記式(a3)で表される基を前記式(a1)で表される基に変換する第2工程と、
を含み、
前記第1工程において、前記式(a3)で示される基を生成させる際に、カルボニルジイミダソールを用いて縮合反応を行う、マレイミド化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マレイミド化合物の製造方法、化合物及び固体状の樹脂に関する。
に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の官能基を種々の低分子化合物や高分子化合物に導入することにより、種々の化合物に所望の特性を付与することが知られている。例えば、化合物へのマレイミド基の導入がしばしば行われる。マレイミド基の導入により、化合物にラジカル重合性が付与される。
例えば、マレイミド基が導入された樹脂を得る場合、マレイミド基を有する化合物を含むモノマーを重合する方法が考えられる(例えば、非特許文献1を参照)。しかしながら、この方法では、マレイミド基を有する化合物を含むモノマーを重合する際の重合形態がカチオン重合に限定されるため、長時間かかる等簡便に合成することができない。また、重合に金属触媒を用いるため、得られるマレイミド基含有樹脂を、金属の存在を嫌う用途に適用する場合には、マレイミド基含有樹脂を高度に精製する必要があるという問題がある。
また、マレイミド基をスチレン樹脂に導入する方法として、第一級アミノ基を有するスチレン樹脂にマレイン酸無水物を反応させて閉環する方法も考えられる。しかしながら、この方法では、ゲル化が生じてしまい固体状の樹脂が得られないという問題や、閉環反応でマレイミド基を形成しにくいという問題が生じる。これは、上記のマレイミド基の導入方法においては、所望するマレイミド化以外の副反応が生じやすいことに起因すると考えられる。
したがって、マレイミド化以外の副反応を抑制しつつ、金属触媒を使用することなく短時間で簡便にマレイミド基を有する樹脂を得ることができる製造方法が求められている。
なお、アミノ基を有するスチレン樹脂に限らず、アミノ基を有する種々のその他の化合物にマレイミド基を導入する場合においても同様にマレイミド化以外の副反応を抑制しつつ簡便にマレイミド化合物を得ることができる製造方法が求められる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】Shigeo Kuroda; Tokio Hagiwara, Polymer Volume51, Issue13 Pages2843-2848
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、マレイミド化以外の副反応を抑制しつつ簡便にマレイミド化合物を得ることができるマレイミド化合物の製造方法、及び化合物並びに固体状の樹脂の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、第一級アミノ基を有する原料化合物における第一級アミノ基と、下記式(a2)で表されるジカルボン酸無水物とを縮合させて、下記式(a3)で示される基を生成させ、生成した式(a3)で表される基を有する化合物を加熱して、式(a3)で表される基を式(a1)で表される基に変換することを含む製造方法により、マレイミド化以外の副反応を抑制しつつ簡便にマレイミド化合物を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明の第1の態様は、下記式(a1):
【化1】
((a1)中、R
a01およびR
a02は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数3以上8以下のシクロアルキル基または炭素原子数6以上12以下のアリール基である。)
で表される基を有するマレイミド化合物の製造方法であって、
第一級アミノ基を有する原料化合物における第一級アミノ基と、下記式(a2):
【化2】
(式(a2)中、R
a01およびR
a02は、式(a1)中のR
a01およびR
a02と同様であり、
R
a1~R
a6は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1以上4以下のアルキル基、又は炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基であり、R
a1とR
a5とは、互いに結合して-O-、-S-、-CH
2-、又は-CR
a7R
a8-を形成してもよく、R
a3とR
a4とは、互いに結合して炭素数6以上12以下の環を構成してもよく、
R
a7及びR
a8は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基又は炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基である。)
で表されるジカルボン酸無水物とを縮合させて、下記式(a3):
【化3】
(式(a3)中、R
a01およびR
a02は、式(a1)中のR
a01およびR
a02と同様であり、R
a1~R
a6は、式(a2)中のR
a1~R
a6と同様である。)
で示される基を生成させる第1工程と、
第1工程で生成した、式(a3)で表される基を有する化合物を加熱して、式(a3)で表される基を式(a1)で表される基に変換する第2工程と、
を含むマレイミド化合物の製造方法である。
【0007】
本発明の第2の態様は、
下記式(a3):
【化4】
(式(a3)中、R
a01およびR
a02は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数3以上8以下のシクロアルキル基または炭素原子数6以上12以下のアリール基であり、
R
a1~R
a6は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1以上4以下のアルキル基、又は炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基であり、R
a1とR
a5とは、互いに結合して-O-、-S-、-CH
2-、又は-CR
a7R
a8-を形成してもよく、R
a3とR
a4とは、互いに結合して炭素数6以上12以下の環を構成してもよく、
R
a7及びR
a8は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基又は炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基である。)
で表される基を有する化合物である。
【0008】
本発明の第3の態様は、側鎖末端に下記式(a1):
【化5】
((a1)中、R
a01およびR
a02は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数3以上8以下のシクロアルキル基または炭素原子数6以上12以下のアリール基である。)
で表される基を含み、不飽和二重結合を有する単量体の重合体である、固体状の樹脂である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、副反応を抑制しつつ簡便にマレイミド化合物を得ることができるマレイミド化合物の製造方法、及び化合物並びに固体状の樹脂の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】保護体1の
13C NMR測定結果を示す図である。
【
図2】樹脂P1の
13C NMR測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
マレイミド化合物の製造方法は、下記式(a1):
【化6】
((a1)中、R
a01およびR
a02は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数3以上8以下のシクロアルキル基または炭素原子数6以上12以下のアリール基である。)
で表される基を有するマレイミド化合物の製造方法である。
なお、本出願の明細書及び特許請求の範囲において、式(a1)で表される置換又は無置換の環状イミド基を、便宜的に「マレイミド基」と称する。また、式(a1)で表されるマレイミド基を有する化合物を「マレイミド化合物」と称する。
【0012】
上記のマレイミド化合物の製造方法は、第一級アミノ基を有する原料化合物における第一級アミノ基と、下記式(a2):
【化7】
(式(a2)中、R
a01およびR
a02は、式(a1)中のR
a01およびR
a02と同様であり、
R
a1~R
a6は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1以上4以下のアルキル基、又は炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基であり、R
a1とR
a5とは、互いに結合して-O-、-S-、-CH
2-、又は-CR
a7R
a8-を形成してもよく、R
a3とR
a4とは、互いに結合して炭素数6以上12以下の環を構成してもよく、
R
a7及びR
a8は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基又は炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基である。)
で表されるジカルボン酸無水物とを縮合させて、下記式(a3):
【化8】
(式(a3)中、R
a01およびR
a02は、式(a1)中のR
a01およびR
a02と同様であり、R
a1~R
a6は、式(a2)中のR
a1~R
a6と同様である。)
で示される基を生成させる第1工程と、
第1工程で生成した、式(a3)で表される基を有する化合物を加熱して、式(a3)で表される基を式(a1)で表される基に変換する第2工程と、を含む。
【0013】
式(a1)中のRa01及びRa02としての炭素原子数1以上6以下のアルキル基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、イソヘキシル基が挙げられる。
式(a1)中のRa01及びRa02としての炭素原子数3以上8以下のシクロアルキル基の具体例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基が挙げられる。
式(a1)中のRa01及びRa02としての炭素原子数6以上12以下のアリール基の具体例としては、フェニル基、ビフェニル基、1-ナフチル基及び2-ナフチル基が挙げられる。
式(a1)中のRa01及びRa02は、いずれも水素原子であることが好ましい。Ra01及びRa02がいずれも水素原子であると、単独光重合性が高いため、式(a1)で表される基を有するマレイミド化合物は例えば感光性樹脂に好適である。Ra01及びRa02がいずれも水素原子の場合は、式(a1)で表される基は、無置換のマレイミド基となる。
【0014】
式(a2)中のRa1~Ra6としてのハロゲン原子の具体例としては、塩素原子、フッ素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。
式(a2)中のRa1~Ra6としての炭素原子数1以上4以下のアルキル基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基が挙げられる。
式(a2)中のRa1~Ra6としての炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基は、直鎖でも分岐鎖状でもよく、具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、及びn-ブトキシ基が挙げられる。
Ra7及びRa8としての炭素数1以上4以下のアルキル基及び炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基は、Ra1~Ra6としての炭素数1以上4以下のアルキル基及び炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基と同様である。
【0015】
第1工程では、第一級アミノ基を有する原料化合物における第一級アミノ基と、上記式(a2)で表されるジカルボン酸無水物とを縮合させて、上記式(a3)で示される基を生成させる。これにより、式(a3)で表される基を有する化合物が得られる。
【0016】
第一級アミノ基を有する原料化合物は特に限定されず、樹脂でも樹脂以外の化合物でもよい。
本明細書において、「樹脂」とは、質量平均分子量(Mw)が4000以上である化合物を意味する。樹脂の質量平均分子量(Mw)は、5000以上であることがより好ましく、1万以上であることがさらに好ましい。樹脂(A)の分子量は、質量平均分子量(Mw)として、10万以下であることが好ましく、8万以下がより好ましい。
本明細書において質量平均分子量(Mw)はゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)のポリスチレン換算による測定値である。
【0017】
第一級アミノ基を有する原料化合物としての樹脂としては、不飽和二重結合を有する単量体の重合体が挙げられる。かかる樹脂としては、例えば、第一級アミノ基を有する(メタ)アクリル樹脂や、第一級アミノ基を有するポリスチレン系樹脂が挙げられる。より具体的な例としては、側鎖末端に第一級アミノ基を有する(メタ)アクリル樹脂や、側鎖末端に第一級アミノ基を有するポリスチレン系樹脂が挙げられる。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び「メタクリル」の両者を意味する。
「(メタ)アクリル樹脂」とは、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、及びN置換体であってもよい(メタ)アクリルアミドからなる群より選択される1種以上の単量体に由来する構成単位を含む樹脂である。(メタ)アクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル及びN置換体であってもよい(メタ)アクリルアミド以外の単量体に由来する構成単位を含んでいてもよい。
「第一級アミノ基を有する(メタ)アクリル樹脂」とは、第一級アミノ基を有する構成単位を含む(メタ)アクリル樹脂である。第一級アミノ基を有する構成単位は、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位であってもよく、(メタ)アクリルアミドのN置換体に由来する構成単位であってもよく、これらの構成単位以外の構成単位であってもよい。第一級アミノ基を有する構成単位は、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位、及び/又は(メタ)アクリルアミドのN置換体に由来する構成単位であるのが好ましい。
「ポリスチレン系樹脂」とは、スチレン及び/又はスチレン誘導体に由来する構成単位を含む樹脂である。「第一級アミノ基を有するポリスチレン系樹脂」とは、第一級アミノ基を有する構成単位を含むポリスチレン系樹脂である。第一級アミノ基を有する構成単位は、p-アミノスチレン、m-アミノスチレン、及びo-アミノスチレン等のアミノスチレンに由来する構成単位であってもよく、p-アミノメチルスチレン、m-アミノメチルスチレン、及びo-アミノメチルスチレン等のアミノ基を有するスチレン誘導体に由来する構成単位であってもよく、これらの構成単位以外の構成単位であってもよい。第一級アミノ基を有する構成単位は、アミノスチレンに由来する構成単位、及び/又はアミノ基を有するスチレン誘導体に由来する構成単位であるのが好ましい。
第一級アミノ基を有する(メタ)アクリル樹脂や、第一級アミノ基を有するポリスチレン系樹脂等の第一級アミノ基を有する樹脂は、側鎖末端に第一級アミノ基を有するのが好ましい。
側鎖末端に第一級アミノ基を有する(メタ)アクリル樹脂や、側鎖末端に第一級アミノ基を有するポリスチレン系樹脂において、側鎖が分岐鎖の場合の第一級アミノ基が結合する側鎖末端は、該分岐鎖が有する2以上の枝鎖のいずれの末端でもよい。また、側鎖の末端の構造が環構造である場合は、該環構造を構成する環の任意の位置が、第一級アミノ基が結合する側鎖末端である。
例えば、側鎖がα-ナフチル基やβ-ナフチル基からなる場合、ナフタレン環上の任意の位置が側鎖末端である。また、側鎖を構成する基が、分岐鎖状である1-フェニルエチル基である場合、2つの枝鎖の末端に相当するメチル基と、フェニル基上の任意の位置とが側鎖末端である。
【0018】
なお、本出願の明細書では、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、及びN置換体であってもよい(メタ)アクリルアミドからなる群より選択される1種以上の単量体に由来する構成単位と、スチレン及び/又はスチレン誘導体に由来する構成単位とを含む樹脂について、便宜的に、(メタ)アクリル樹脂として扱う。
【0019】
原料化合物として第一級アミノ基を有する樹脂を用いる場合、上記のマレイミド化合物の製造方法は、第一級アミノ基を有するモノマーを単独重合することにより樹脂である原料化合物を製造すること、または、第一級アミノ基を有するモノマーと、コモノマーとを共重合して、樹脂である原料化合物を製造することを含むのが好ましい。
第一級アミノ基を有するモノマーとしては、アミノメチル(メタ)アクリレート、2-アミノエチル(メタ)アクリレート、3-アミノプロピル(メタ)アクリレート、4-アミノフェニル(メタ)アクリレート、3-アミノフェニル(メタ)アクリレート、2-アミノフェニル(メタ)アクリレート、4-アミノフェニルメチル(メタ)アクリレート、3-アミノフェニルメチル(メタ)アクリレート、及び2-アミノフェニルメチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート類;N-2-アミノエチル(メタ)アクリルアミド、N-3-アミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N-4-アミノフェニル(メタ)アクリルアミド、N-3-アミノフェニル(メタ)アクリルアミド、及びN-2-アミノフェニル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類;p-アミノスチレン、m-アミノスチレン、及びo-アミノスチレン等のアミノスチレン;p-アミノメチルスチレン、m-アミノメチルスチレン、及びo-アミノメチルスチレン等のアミノアルキルスチレン等が挙げられる。
【0020】
コモノマーは、第一級アミノ基を有するモノマー以外のモノマーである。コモノマーとしては、例えば、下記式(a-I)で表される化合物が挙げられる。
CH2=CRa11-CO-O-Ra10・・・(a-I)
式(a-I)中、Ra10は、1価の有機基であり、Ra11は、水素原子又はメチル基である。この有機基は、該有機基中にヘテロ原子等の炭化水素基以外の結合や置換基を含んでいてもよい。また、この有機基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよい。
【0021】
Ra10の有機基中の炭化水素基以外の置換基としては、本発明の効果が損なわれない限り特に限定されず、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シアノ基、イソシアノ基、シアナト基、イソシアナト基、チオシアナト基、イソチオシアナト基、シリル基、シラノール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、チオカルバモイル基、ニトロ基、ニトロソ基、カルボキシ基、カルボキシラート基、アシル基、アシルオキシ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、ヒドロキシイミノ基、アルキルエーテル基、アルキルチオエーテル基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、N-モノ置換アミノ基、及びN,N-ジ置換アミノ基等が挙げられる。上記置換基に含まれる水素原子は、炭化水素基によって置換されていてもよい。また、上記置換基に含まれる炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれでもよい。
【0022】
Ra10としては、アルキル基、アリール基、アラルキル基、又は複素環基が好ましい。これらの基は、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、又は複素環基で置換されていてもよい。また、これらの基がアルキレン部分を含む場合、アルキレン部分は、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合により中断されていてもよい。
【0023】
アルキル基が、直鎖状又は分岐鎖状のものである場合、その炭素原子数は、1以上20以下が好ましく、1以上15以下がより好ましく、1以上10以下が特に好ましい。好適なアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、sec-オクチル基、tert-オクチル基、n-ノニル基、イソノニル基、n-デシル基、イソデシル基等が挙げられる。
【0024】
アルキル基が、脂環式基、又は脂環式基を含む基である場合、アルキル基に含まれる好適な脂環式基としては、シクロペンチル基、及びシクロヘキシル基等単環の脂環式基や、アダマンチル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、トリシクロノニル基、トリシクロデシル基、及びテトラシクロドデシル基等の多環の脂環式基が挙げられる。
【0025】
コモノマーの他の好ましい例としては、(メタ)アクリルアミド類、不飽和カルボン酸類、アリル化合物、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、スチレン類等が挙げられる。これらのコモノマーは、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0026】
(メタ)アクリルアミド類としては、(メタ)アクリルアミド;N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-n-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、及びN-n-ブチル(メタ)アクリルアミド等のN-アルキル(メタ)アクリルアミド;N-フェニル(メタ)アクリルアミド、N-α-ナフチル(メタ)アクリルアミド、及びN-β-ナフチル(メタ)アクリルアミド等のN-アリール(メタ)アクリルアミド;N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ-n-プロピル(メタ)アクリルアミド、及びN,N-ジ-n-ブチル(メタ)アクリルアミド等のN,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド;N,N-ジフェニル(メタ)アクリルアミド等のN,N-ジアリール(メタ)アクリルアミド;N-メチル-N-フェニル(メタ)アクリルアミド、及びN-ヒドロキシエチル-N-メチル(メタ)アクリルアミド等のその他のN,Nジ置換(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
【0027】
不飽和カルボン酸類としては、クロトン酸等のモノカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸等のジカルボン酸;これらジカルボン酸の無水物;等が挙げられる。
【0028】
アリル化合物としては、酢酸アリル、カプロン酸アリル、カプリル酸アリル、ラウリン酸アリル、パルミチン酸アリル、ステアリン酸アリル、安息香酸アリル、アセト酢酸アリル、乳酸アリル等のアリルエステル類;アリルオキシエタノール;等が挙げられる。
【0029】
ビニルエーテル類としては、ヘキシルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、デシルビニルエーテル、エチルヘキシルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、クロロエチルビニルエーテル、1-メチル-2,2-ジメチルプロピルビニルエーテル、2-エチルブチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールビニルエーテル、ジメチルアミノエチルビニルエーテル、ジエチルアミノエチルビニルエーテル、ブチルアミノエチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、テトラヒドロフルフリルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル;ビニルフェニルエーテル、ビニルトリルエーテル、ビニルクロロフェニルエーテル、ビニル-2,4-ジクロロフェニルエーテル、ビニルナフチルエーテル、ビニルアントラニルエーテル等のビニルアリールエーテル;等が挙げられる。
【0030】
ビニルエステル類としては、ビニルブチレート、ビニルイソブチレート、ビニルトリメチルアセテート、ビニルジエチルアセテート、ビニルバレレート、ビニルカプロエート、ビニルクロロアセテート、ビニルジクロロアセテート、ビニルメトキシアセテート、ビニルブトキシアセテート、ビニルフェニルアセテート、ビニルアセトアセテート、ビニルラクテート、ビニル-β-フェニルブチレート、安息香酸ビニル、サリチル酸ビニル、クロロ安息香酸ビニル、テトラクロロ安息香酸ビニル、ナフトエ酸ビニル等が挙げられる。
【0031】
スチレン類としては、スチレン;メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、ヘキシルスチレン、シクロヘキシルスチレン、デシルスチレン、ベンジルスチレン、クロロメチルスチレン、トリフルオロメチルスチレン、エトキシメチルスチレン、アセトキシメチルスチレン等のアルキルスチレン;メトキシスチレン、4-メトキシ-3-メチルスチレン、ジメトキシスチレン等のアルコキシスチレン;クロロスチレン、ジクロロスチレン、トリクロロスチレン、テトラクロロスチレン、ペンタクロロスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、ヨードスチレン、フルオロスチレン、トリフルオロスチレン、2-ブロモ-4-トリフルオロメチルスチレン、4-フルオロ-3-トリフルオロメチルスチレン等のハロスチレン;等が挙げられる。
【0032】
第一級アミノ基を有するモノマーと、コモノマーとを共重合する場合の第一級アミノ基を有するモノマーとコモノマーとの割合は特に限定されないが、例えば、モル基準で、第一級アミノ基を有するモノマー:コモノマー=5~50:50~95である。
【0033】
樹脂でない第一級アミノ基を有する原料化合物としては、例えば、エチルアミン、n-プロピルアミン、イソプロピルアミン、n-ブチルアミン、n-ペンチルアミン、n-ヘキシルアミン、n-オクチルアミン、エチレンジアミン、1,2-プロパンジアミン、1,3-プロパンジアミン、1,4-ブタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、及びヘキサメチレンテトラミン等の脂肪族アミン;アニリン、4-メチルアニリン、3-メチルアニリン、2-メチルアニリン、4-クロロアニリン、3-クロロアニリン、2-クロロアニリン、p-アミノスチレン、m-アミノスチレン、o-アミノスチレン、p-アミノメチルスチレン、m-アミノメチルスチレン、o-アミノメチルスチレン、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、o-フェニレンジアミン、2,4-ジアミノトルエン、3,3’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジアミノビフェニル、4,3’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノ-2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルケトン、3,4’-ジアミノジフェニルケトン、2,2-ビス(p-アミノフェニル)プロパン、2,2’-ビス(p-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4-メチル-2,4-ビス(p-アミノフェニル)-1-ペンテン、4-メチル-2,4-ビス(p-アミノフェニル)-2-ペンテン、イミノジアニリン、4-メチル-2,4-ビス(p-アミノフェニル)ペンタン、ビス(p-アミノフェニル)ホスフィンオキシド、4,4’-ジアミノアゾベンゼン、4,4’-ジアミノジフェニル尿素、4,4’-ジアミノジフェニルアミド、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルフォン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルフォン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、1,3-ビス(m-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(p-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(p-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,5-ジアミノナフタレン、及び2,6-ジアミノナフタレン等の芳香族アミンを挙げることができる。
【0034】
式(a2)で表される化合物としては、下記式(a2-1):
【化9】
(式(a2-1)中、R
a01、R
a02、R
a2、R
a3、R
a4およびR
a6は、式(a2)中のR
a01、R
a02、R
a2、R
a3、R
a4およびR
a6と同様である。)
で表される化合物が挙げられる。
【0035】
式(a2)で表される化合物は、例えば、下記式で表される化合物と、式(a2)で表される化合物の構造に対応する共役ジエン化合物とのディールスアルダー反応により得ることができる。
このディールスアルダー反応の条件は、用いる原料の種類などに応じて適宜設定すればよく、また、有機溶剤中での反応を行ってもよい。
【化10】
【0036】
当該ディールスアルダー反応に用いられる有機溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテートなどのエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、イソブチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、マロン酸ジエチル等のエステル類;N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド等のアミド類;ジエチルエーテル、エチルシクロペンチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカヒドロナフタレンなどの脂肪族炭化水素類、メチレンクロリド、エチレンクロリドなどのハロゲン化炭化水素類;ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホアミドなどが挙げられる。用いる有機溶剤は、1種類の溶剤を使用してもよいし、2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
採用できる反応温度としては、たとえば-10℃~200℃の範囲であり、好ましくは0℃~150℃の範囲であり、より好ましくは5℃~120℃の範囲である。
採用できる反応時間としては、たとえば5分以上12時間以下であり、10分以上10時間以下であり、30分以上8時間以下である。
【0037】
第1工程における縮合は、通常縮合剤を用いて行われる。脱水縮合剤としては、カルボニルジイミダソール、カルボジイミド系化合物等が挙げられる。
この縮合剤の添加は、前述したディールスアルダー反応を行った反応容器中に対して行ってもよいし、ディールスアルダー反応における生成物を別途単離したうえで、再度有機溶剤などに溶解して添加を行ってもよい。
この縮合の際に用いられる有機溶剤は、ディールスアルダー反応において用いられる有機溶剤と同様のものを採用できる。
採用できる反応温度としては、たとえば-10℃~200℃の範囲であり、好ましくは0℃~150℃の範囲であり、より好ましくは5℃~120℃の範囲である。
採用できる反応時間としては、たとえば5分以上12時間以下であり、10分以上10時間以下であり、30分以上8時間以下である。
【0038】
なお、第1工程を実施することで得られる上記式(a3)で表される基を有する化合物は、第1工程を実施した後に単離してもよい。
上記式(a3)で表される基を有する化合物が樹脂である場合、この単離はたとえば第1工程における縮合が終わったあとの反応液を貧溶媒に注ぐことで固体化させ、これをろ取することで行われる。
【0039】
第2工程では、第1工程で生成した、上記式(a3)で表される基を有する化合物を加熱して、上記式(a3)で表される基を上記式(a1)で表される基に変換する(逆ディールスアルダー反応)。これにより、上記式(a1)で表される基を有するマレイミド化合物が得られる。
上記式(a1)で表される基は、式(a2)で表される化合物の使用量に応じて、原料化合物である第一級アミノ基を有するモノマー由来のアミノ基の全て又は一部に導入され得る。
【0040】
第2工程における逆ディールスアルダー反応は、たとえば有機溶剤中で行われる。用いられる有機溶剤は前述したディールスアルダー反応において用いられる有機溶剤と同様のものを採用できるが、加熱による反応を実施するため、沸点が60℃以上であることが好ましく、沸点が80℃以上であることがより好ましく、沸点が100以上であることがさらに好ましい。沸点の上限値は特に制限がないが、たとえば350℃以下である。
第2工程の加熱について、採用できる反応温度としては、たとえば60℃~280℃の範囲であり、好ましくは80℃~250℃の範囲であり、より好ましくは100℃~225℃の範囲である。
採用できる反応時間としては、たとえば5分以上12時間以下であり、好ましくは10分以上10時間以下であり、より好ましくは30分以上8時間以下である。
【0041】
また、第2工程を実施することで得られる上記式(a1)で表される基を有する化合物は、第2工程を実施した後に単離してもよい。
上記式(a1)で表される基を有する化合物が樹脂である場合、この単離はたとえば第2工程における縮合が終わったあとの反応液を貧溶媒(たとえばアルコール系溶剤)に注ぐことで固体化させ、これをろ取することで行われる。
【0042】
マレイミド化合物の製造方法の一例として、第一級アミノ基を有する原料化合物として、第一級アミノ基を有するモノマーであるアミノスチレンと、コモノマーであるスチレンとを共重合したものを用いた場合の反応式を以下に示す。下記反応式において、第2工程は、トルエン中で還流した例を示している。また、下記反応式におけるm及びnは、それぞれ構成単位の繰り返し数である。
【化11】
【0043】
このような本発明の製造方法によれば、マレイミド化以外の副反応が抑制される。副反応が抑制される結果、原料化合物が第一級アミノ基を有する樹脂である場合、式(a1)で表される基を有するマレイミド化合物を固体状の樹脂として得ることができる。したがって、例えば各種組成物に、固体状の樹脂として、式(a1)で表される基を有するマレイミド化合物を配合することができる。例えば、側鎖末端に上記式(a1)で表される基を含む、不飽和二重結合を有する単量体の重合体は、上記ゲル化の問題があったため、従来、固体状の樹脂として得ることができなかった。しかし、上記の製造方法によれば、式(a1)で表される基を含む、不飽和二重結合を有する単量体の重合体を固体状の樹脂として得られる。なお、式(a1)で表される基を有するマレイミド化合物が樹脂ではない化合物である場合も、同様に固体状の化合物として得ることができる。
【0044】
また、上記の製造方法によれば、式(a1)で表される基を有するマレイミド化合物が樹脂の場合、あらかじめ重合したポリマーを原料化合物として用い、ポリマーの第一級アミノ基を反応させることにより式(a1)で表される基を導入するため、重合が、時間のかかるカチオン重合に制限されない。よって、本発明の製造方法は、簡便な方法である。
【0045】
また、第一級アミノ基と式(a2)で表されるジカルボン酸無水物とを縮合させ式(a3)で示される基を生成させた後に、加熱することにより式(a3)で表される基を式(a1)で表される基に変換するため、閉環反応による不具合が生じることなく、式(a1)で表される基を確実に導入することができる。
【0046】
なお、第1工程で生成する、式(a3)で表される基を有する化合物は新規化合物である。
【実施例】
【0047】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0048】
<第一級アミノ基を有する原料化合物の調製>
[P1前駆体の調製]
三口フラスコにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)(242g)を加え、窒素雰囲気下で80℃に加熱した。スチレン(85g)、4-アミノスチレン(97g)と、アゾ重合開始剤(製品名:V-601、富士フィルム和光純薬社製)(29g)を、PGMEA(242g)に溶解し、これを三口フラスコに4時間かけて滴下した。滴下完了後、2時間で80℃撹拌し、得られた重合液をメタノール-水混合液(メタノール/水=4/1(質量基準))(2.5kg)に滴下し、再沈殿することで、スチレンと4-アミノスチレンとの共重合体(P1前駆体)を72.8g得た。得られたP1前駆体の共重合比は、スチレン/4-アミノスチレン=70/30(モル基準)であった。
【0049】
[P2前駆体の調製]
モノマーの配合割合を変更した以外は、[P1前駆体の調製]と同様にして、共重合比がスチレン/4-アミノスチレン=80/20(モル基準)のP2前駆体を得た。
【0050】
[P3前駆体の調製]
モノマーの配合割合を変更した以外は、[P1前駆体の調製]と同様にして、共重合比がスチレン/4-アミノスチレン=90/10(モル基準)のP3前駆体を得た。
【0051】
モノマーとしてノルマルブチルスチレンも用いた以外は、[P1前駆体の調製]と同様にして、共重合比がスチレン/4-アミノスチレン/ノルマルブチルスチレン=60/30/10(モル基準)のP4前駆体を得た。
【0052】
[P5前駆体の調製]
アミノスチレンの代わりに4-(アミノメチル)スチレンを用いた以外は、[P1前駆体の調製]と同様にして、共重合比がスチレン/4-(アミノメチル)スチレン=70/30(モル基準)のP5前駆体を得た。
【0053】
<樹脂(A)の調製>
[樹脂P1の調製]
(第1工程)
P1前駆体(72.8g)と下記式で表されるオキソノルボルネン酸無水物(41g)をテトラヒドロフラン(THF)(300g)に溶解し、窒素雰囲気下で4時間撹拌した。続いて、カルボニルジイミダゾール(61g)を加え、6時間撹拌した後に、ヘプタン(1.5kg)に滴下し、再沈殿することで、保護体1(式(3)で表される基を有する化合物)を得た。
得られた保護体の組成比を
13C NMRから算出した。算出した組成比を下記構造式に示す。下記構造式における各構成単位中の括弧の右下の数字は、各保護体中の構成単位の含有量(モル%)を表す。
また、
13C NMRから、下記構造であることを確認した。保護体1の
13C NMR測定結果を
図1に示す。なお、
13C NMRの測定溶媒は、アセトン-d6とした。
【化12】
【化13】
【0054】
(第2工程)
得られた保護体1を、20質量%のトルエン溶液とし、リフラックスさせながら4時間撹拌し、その後、ヘプタンで再沈殿することで、固体状の樹脂P1(17.8g)を得た。
得られた樹脂の組成比を
13C NMRから算出した。算出した組成比を下記構造式に示す。下記構造式における各構成単位中の括弧の右下の数字は、各樹脂中の構成単位の含有量(モル%)を表す。
また、
13C NMRにおいて、カルボニルピーク及び二重結合のピークから、マレイミド構造を確認した。樹脂P1の
13C NMR測定結果を
図2に示す。なお、
13C NMRの測定溶媒は、アセトン-d6とした。
また、得られた樹脂質量平均分子量(Mw)を、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)のポリスチレン換算により求めた。樹脂P1の質量平均分子量(Mw)は、15000であった。
【化14】
【0055】
[樹脂P2~P5の調製]
P1前駆体の代わりに、それぞれ前駆体P2~P5を用いた以外は、[樹脂P1の調製]と同様にして、第1工程でそれぞれ保護体2~4を得て、第2工程でそれぞれ固体状の樹脂P2~P5を得た。
得られた樹脂P2~P5の質量平均分子量(Mw)は、それぞれ15000であった。
【0056】
[脱水閉環による樹脂の調製1]
P1前駆体(20.0g)とマレイン酸無水物(6.7g)を、N-メチルピロリドン(NMP)(100g)に溶解させ、トルエン(10g)とメタンスルホン酸(1g)を加えた。その後、150℃で加熱しながら4時間撹拌したところ、ゲル化して、反応液中に多量の不溶物が発生し、固体状の樹脂を得ることができなかった。
【0057】
[脱水閉環による樹脂の調製2]
P1前駆体(20.0g)とマレイン酸無水物(6.7g)を、無水酢酸(100g)に溶解させ、リフラックスさせながら4時間撹拌したところ、ゲル化して、反応液中に多量の不溶物が発生し、固体状の樹脂を得ることができなかった。
【0058】
[カルボニルジイミダゾールを用いた閉環による樹脂の調製]
P1前駆体(20.0g)とマレイン酸無水物(6.7g)を、THF(100g)に溶解させ、カルボニルジイミダゾール(10g)を加え、室温で4時間撹拌した。得られた反応液を、メタノール-水混合液(メタノール/水=1/1(質量基準))で再沈殿することで、白色固体(18g)を得た。
得られた白色固体について、13C NMR測定したところ、二重結合ピークが消失し、樹脂P1のマレイミドにイミダゾールが付加したと推測されるポリマーであった。