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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-07
(45)【発行日】2023-07-18
(54)【発明の名称】亜麻仁ペースト組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 25/00 20160101AFI20230710BHJP
   A23L 27/60 20160101ALI20230710BHJP
【FI】
A23L25/00
A23L27/60 A
A23L27/60 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019074573
(22)【出願日】2019-04-10
(65)【公開番号】P2020171221
(43)【公開日】2020-10-22
【審査請求日】2022-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000231637
【氏名又は名称】株式会社ニップン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100156982
【弁理士】
【氏名又は名称】秋澤 慈
(72)【発明者】
【氏名】栗山 龍之介
【審査官】澤田 浩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-184632(JP,A)
【文献】特開2007-037470(JP,A)
【文献】特開2008-167723(JP,A)
【文献】特表2003-528642(JP,A)
【文献】特開2001-275613(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜麻仁粉砕物及び食用油からなる亜麻仁ペーストに、水または水溶液を添加してなる、亜麻仁ペースト組成物であって、亜麻仁粉砕物と食用油の質量比が3:7~9:1であり、B型粘度計で測定した25℃における亜麻仁ペースト組成物の粘度(dPa・s)が57以上である、前記亜麻仁ペースト組成物(ただし、亜麻仁ペースト組成物を含む食品を除く)
【請求項2】
水または水溶液の量が、亜麻仁ペースト組成物の全量に対して1~10質量%である、請求項1に記載の亜麻仁ペースト組成物。
【請求項3】
B型粘度計で測定した25℃における水溶液の粘度(dPa・s)が10以下である、請求項1または2に記載の亜麻仁ペースト組成物。
【請求項4】
亜麻仁と食用油を質量比3:7~9:1の割合で混合する工程
該混合物をペースト化処理して亜麻仁粉砕物と食用油からなる亜麻仁ペーストを得る工程、及び、
該亜麻仁ぺーストに、水または水溶液を添加し、混合する工程
を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の亜麻仁ペースト組成物の製造方法。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1項に記載の亜麻仁ペースト組成物を含む食品。
【請求項6】
ドレッシング又はスプレッドである、請求項5に記載の食品。
【請求項7】
請求項1~3のいずれか1項に記載の亜麻仁ペースト組成物を食品原料に添加する工程を含む、食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は亜麻仁ペースト組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アマ科植物の亜麻の種子である亜麻仁はα-リノレン酸を豊富に含有しており、品種及び栽培条件等によるが、その含有量は亜麻仁油あたり約30~60重量%(亜麻仁あたり約10~20重量%)であり、含有量が高いものでは約75%にも達する。α-リノレン酸が栄養機能及び健康機能を有していることから、亜麻仁及び亜麻仁油はその食としての価値に注目されている。
【0003】
α-リノレン酸は、n-3系列の多価不飽和脂肪酸であり、分子内に3つの不飽和結合を有している。多価不飽和脂肪酸とは、分子内に2つ以上の不飽和結合を有している不飽和脂肪酸の総称であり、n-3系列にはα-リノレン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)等が含まれ、n-6系列にはリノール酸、γ-リノレン酸、アラキドン酸等が含まれ、n-9系列にはミード酸等が含まれる。
【0004】
亜麻仁にはα-リノレン酸のほか、リグナン(セコイソラリシレジノールジグルコシド;SDGと略す)や食物繊維等の健康機能成分が含まれており、これらを有効に利用することが望まれている。しかしながら、亜麻仁は穀粒の状態でもその構成成分である多価不飽和脂肪酸(α-リノレン酸)が酸化され易いことから味や臭いが経時的に劣化すること、亜麻仁は硬い殻に覆われているために粉砕加工の歩留が悪く硬い殻を主成分とした副産物が得られること、粉砕加工の歩留が悪いため、前記の様な健康機能成分が十分に得られ難いこと等の問題があった。
【0005】
このような問題を解決するために、特許文献1では亜麻の種子と油とを微粒化して製造した亜麻仁ペーストが提案されている。このような亜麻仁ペーストは10日程度静置保存しておいても固形成分と油分とに分離することはないが、長期間静置保存しておくと固形分と油分に分離し、使用する前に固形分と油分をほぐす作業が必要となる。特に30日以上静置保存しておくと、固形分は硬い塊状になり、手で揉み解すことが極めて困難になるといった問題点があった。
【0006】
焙煎された胡麻粒を石臼状又はロール状の磨砕機で磨砕して製造される胡麻ペースト(練りごま)においても同様に長期保存すると固形分と油分が分離することが知られており、約2ヶ月程度で完全に分離して固形分が硬い塊状になる。このような問題を解決するために、特許文献2では練り胡麻にエタノールを添加することにより、粘度が低く、貯蔵による粘度上昇が少なくかつ貯蔵時に分離しにくいという相反する事象の改善を行なった練り胡麻調合品を提供することができること、特許文献3では胡麻をすりつぶしたペースト内に硬化油またはショートニングを添加することで、胡麻本来の風味を備えると共に、長期間保存しても油分と固形分との分離が起こり難く、分散性がよく、大変使い勝手の良い胡麻ペーストを提供することができること、特許文献4では、ねり胡麻に多糖類を添加することで練りごまの油の分離を抑制することができることが開示されている。また、特許文献5では固形分の50%以上の粒子径が0.01~20μmになるように微粒化することで、ペースト状黒ごまにおける固形分と油分の分離を抑制できることが開示されている。
亜麻仁は非常に硬い殻に覆われており、それに対して胡麻の殻は比較的柔らかい。そのためか、亜麻仁ペーストの分離した固形分は胡麻ペーストの分離した固形分よりも硬く固結しており、分離した亜麻仁ペーストを揉み解すことは分離した胡麻ペーストよりも極めて困難である。胡麻ペーストにおける上記のような手段が必ずしも亜麻仁ペーストに有効では無かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2017-184632号公報
【文献】特開2006-25658号公報
【文献】特開2005-204568号公報
【文献】特公平02-31943号公報
【文献】特開2008-220276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
長期保存しても固形分と油分の分離が起こらない亜麻仁ペースト組成物及びそれを含む食品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、亜麻仁粉砕物及び食用油からなる亜麻仁ペーストに、水または水溶液を添加してなる、亜麻仁ペースト組成物であって、亜麻仁粉砕物と食用油の質量比が3:7~9:1であり、B型粘度計で測定した25℃における亜麻仁ペースト組成物の粘度(dPa・s)が57以上である、前記亜麻仁ペースト組成物によって長期保存しても固形分と油分の分離が起こらない亜麻仁ペースト組成物及びそれを含む食品を提供することが出来ることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明は以下の通りである。
[1]亜麻仁粉砕物及び食用油からなる亜麻仁ペーストに、水、または水溶液を添加してなる、亜麻仁ペースト組成物であって、亜麻仁粉砕物と食用油の質量比が3:7~9:1であり、B型粘度計で測定した25℃における亜麻仁ペースト組成物の粘度(dPa・s)が57以上である、前記亜麻仁ペースト組成物。
[2]B型粘度計で測定した25℃における水溶液の粘度(dPa・s)が10以下である、[1]に記載の亜麻仁ペースト組成物。
[3]亜麻仁と食用油を質量比3:7~9:1の割合で混合する工程及び該混合物をペースト化処理して亜麻仁粉砕物と食用油からなる亜麻仁ペーストを得る工程を含む、前記[1]又は[2]のいずれか1項に記載の亜麻仁ペースト組成物の製造方法。
[4]さらに亜麻仁ぺーストと水または水溶液を添加混合する工程を含む、前記[3]に記載の亜麻仁ペースト組成物の製造方法。
[5]前記[1]又は[2]に記載の亜麻仁ペースト組成物を含む食品。
[6]ドレッシング又はスプレッドである、前記[5]に記載の食品。
[7]前記[1]又は[2]に記載の亜麻仁ペースト組成物を食品原料に添加する工程を含む、食品の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、長期間、例えば60日以上静置保存しても、固形分と油分の分離が起こり難い亜麻仁ペースト組成物を提供することができる。また、長期間、例えば30日以上静置保存しても、固形分と油分の分離が起こり難い亜麻仁ペースト組成物含有食品を提供することができる。長期間静置保存して固形分と油分の分離が生じたとしても、手で容易に揉み解して均質化することできる亜麻仁ペースト組成物を提供することができる。これにより、亜麻仁ペーストを使用した食品、特にドレッシング、マヨネーズ、ディップ、ソース、麺類や鍋物用のスープ、ベーカリー製品用のクリーム、フラワーペースト等のフィリング材、スプレッド等の液状又はペースト状の食品を容易に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の亜麻仁ペースト組成物は亜麻仁粉砕物及び食用油からなる亜麻仁ペーストに水または水溶液を添加してなる。
アマニ(亜麻仁)は、欧州の地中海地方原産の自生植物である亜麻科植物アマ(亜麻、学名:Linum usitatissimum)の種子(仁)のことであり、英名 Flax Seed (フラックスシード)、学名 Linum Usitatissimumと呼ばれる。
本発明において、亜麻仁は、国内産、外国産などの産地や品種を問わず原料として使用できる。
未処理、乾燥処理、湿熱処理、乾熱処理等、種子形状が維持された亜麻仁を使用することができる。好ましくは焙煎処理亜麻仁である。焙煎処理することで、胡麻等と同様に風味並びに芳香を得ることができるためである。焙煎処理は、例えば30秒~120分、100~400℃で加熱することによって行う。
【0013】
本発明において食用油としては常温で液体の食用油脂であれば何れも使用可能である。
食用油は好ましくは多価不和脂肪酸含有油である。多価不飽和脂肪酸含有油は多価不飽和脂肪酸を構成成分として含有する好ましくはヨウ素価60以上の不飽和脂肪酸含有油である。具体的に示すと、好ましくは亜麻仁油、エゴマ油、魚油、サフラワー油、大豆油、ヒマワリ油、胡麻油、コーン油、米油、シソ油、オリーブ油、菜種油等であり、より好ましくは亜麻仁油、エゴマ油である。エゴマ油の中でも、α-リノレン酸含量が約60質量%で、亜麻仁油と同等のヨウ素価を有するものが好ましい。
【0014】
本発明の亜麻仁ペースト組成物は、亜麻仁ペーストに、水または水溶液を添加してなる。亜麻仁ペーストに水を加えることにより、亜麻仁に含まれる水溶性食物繊維を膨潤させ、粘度を上げて、ペーストの分離を防止することができる。
本発明において使用する水溶液は、食用であり、水を含む液体であれば特に限定されない。好ましくはB型粘度計で測定した25℃における水溶液の粘度(dPa・s)が10以下、さらに好ましくは5以下、より好ましくは2以下、最も好ましくは1以下である。水溶液の例としては、日本酒、ワインなどの酒類、食塩水、砂糖水、酢、ソース、醤油、みりんなどの調味料、りんごジュースなどのジュース類などが挙げられる。保存性の観点から、アルコールを含む水溶液、例えばみりんや日本酒などを使用することが好ましい。水溶液としてアルコール水溶液を使用する場合、亜麻二ペースト組成物の全量に対するアルコール含量が35質量%未満であることが好ましい。
水または水溶液の亜麻二ペースト組成物の全量に対する含有率に上限は特にないが、亜麻仁ペースト組成物を使用した食品等に十分に亜麻仁の風味を付与するためにも50質量%を上限の目安にするのが好ましい。
【0015】
本発明において、B型粘度計で測定した25℃における亜麻仁ペースト組成物の粘度(dPa・s)が57以上、好ましくは60以上、より好ましくは70以上、さらに好ましくは80以上、なお好ましくは90以上である。亜麻仁ペースト組成物の粘度の上限は特に限定されないが、他の食品への混合の操作性の観点から500dPa・s以下であることが好ましい。
【0016】
本発明において、亜麻仁ペースト組成物は、亜麻仁粉砕物と食用油を質量比3:7~9:1、好ましくは4:6~8:2で含有する。
【0017】
本発明において、亜麻仁粉砕物の粒度分布は好ましくは2つのピークに分かれ、小さい粒径のピークの粒径範囲は好ましくは2μm~100μm、さらに好ましくは3μm~70μm、最も好ましくは4μm~50μmであり、大きい粒径のピークの粒径範囲は好ましくは50μm~2010μm、さらに好ましくは50μm~1600μm、最も好ましくは60μm~1200μmである。
【0018】
本発明において、亜麻仁粉砕物の50%積算径は好ましくは15.5μm~300μm、さらに好ましくは15.5μm~50μm、もっとも好ましくは15.5μm~30μmである。また、亜麻仁ペーストの固形分の90%積算径は好ましくは200μm~1000μm、さらに好ましくは300μm~1000μm、もっとも好ましくは300μm~750μmの範囲である。なお、本明細書において粒度分布及び粒径は体積基準であり、例えば80%積算径は粒子径積算分布曲線において粒子の小さい方から積算した積算80%における粒径を表す。体積基準の粒子径の測定は、公知のレーザー回折・散乱法で測定することができ、その様な装置として、具体的には例えば堀場製作所社製のLA-950V2等を使用することができる。
【0019】
本発明の亜麻仁ペースト組成物の製造方法は、亜麻仁と食用油を質量比3:7~9:1の割合で混合する工程及び該混合物をペースト化処理して亜麻仁粉砕物と食用油からなる亜麻仁ペーストを得る工程を含む。本発明の亜麻仁ペースト組成物の製造方法は、好ましくは亜麻仁ぺ-ストと水または水溶液を添加混合する工程を含む。
本発明において、亜麻仁と食用油を含む混合物のペースト化工程において、亜麻仁と食用油の質量比は3:7~9:1、好ましくは4:6~8:2である。亜麻仁の量が亜麻仁と食用油の質量比3:7よりも少なくなるとペースト化処理により得られるペーストが固液分離する傾向がある。亜麻仁の量が亜麻仁と食用油の質量比9:1よりも多くなるとペースト化の効率が低下する傾向にある。
【0020】
本発明において、ペースト化処理は湿式微粒化又は湿式粉砕を行うことをいう。なお、ここで湿式微粒化又は湿式粉砕とは対象物を水や油などの液体中で微粒化又は粉砕する方式を意味する。このような処理としては磨石式(砥石式)、切刃式、胴搗式、媒体攪拌式、圧縮式、衝撃式、すり潰式等の湿式微粒化又は湿式粉砕方法及びそれらの組合せを例示することができ、好ましくは磨石式湿式微粒化法又は切り刃式湿式微粒化法、最も好ましくは磨石式湿式微粒化法である。
【0021】
ペースト化処理の条件は適宜変更することができる。例えば、磨石式湿式微粒化法に用いる磨砕装置(増幸産業社製、スーパーマスコロイダー、型式MKCA6-2JR)であれば、回転速度1000~3000rpm、と磨石間隔0~200μmで処理することができる。ペースト化処理は1回のみでも良いが、2回以上複数回繰り返すこともできる。
【0022】
また切り刃式湿式微粒化法に用いられるカッターミキサー(Stephan food process machinery社製、型式U1500006、切刃No.3D0024-02及びNo.3D0024-1使用)であれば、回転数300~3500rpm、処理時間2~20分で処理することが出来る。
この設定は、所望されるペーストの食感や粘度等により適宜変更可能である。
【0023】
本発明の亜麻仁ペースト組成物は、様々な食品に添加することが可能である。このような食品としてはドレッシング、マヨネーズ、ディップ、ソース、麺類や鍋物用のスープ、ベーカリー製品用のクリーム、フラワーペーストなどのフィリング材、スプレッド等の液状又はペースト状の食品などが挙げられるがこれらに限定されない。
【実施例
【0024】
以下本発明を具体的に説明する為に実施例を示すが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0025】
製造例1 亜麻仁ペーストの製造
80質量部の焙煎亜麻仁(日本製粉社製)と20質量部の亜麻仁油(日本製粉社製)を容器に投入し(合計約1~5kg)、ヘラを用いて全体が十分に馴染むように混合した。
混合物を磨砕装置(増幸産業社製、スーパーマスコロイダー、型式MKCA6-2JR)に投入し、磨石回転数1500rpm、砥石間隔100μmの条件で亜麻仁ペーストを得た。
【0026】
製造例2 亜麻仁ペースト組成物の製造
製造例1で得られた亜麻仁ペーストと各種水溶液を所定の割合でミキサー(愛工舎製作所製、25S)に投入し、1000rpmで1分間撹拌し、亜麻仁ペースト組成物を得た。
【0027】
評価例1 保存した亜麻仁ペースト組成物の分散性評価
亜麻仁ペースト組成物を樹脂製の透明な袋に100gずつ分取し、脱気密封した後、25℃で静置保存した。保存開始後、10名のパネラーにより10日、30日、60日にペーストの状態を確認し、固形分と油分とに分離している亜麻仁ペースト組成物については転倒混和して再分散するか確認した。転倒混和で再分散しない場合、手で揉み解して再分散させた。
なお、一度分散性試験に供した試料は、本試験用に再利用しないものとした。
【0028】
評価基準表
【0029】
試験例1 水添加による亜麻仁ペースト組成物の分離抑制試験
製造例1において90質量部の焙煎亜麻仁(日本製粉社製)と10質量部の亜麻仁油(日本製粉社製)を使用した以外は同様の方法で亜麻仁ペーストを製造し、製造例2に従い、表1の割合で亜麻仁ペーストと水を混合して亜麻仁ペースト組成物を得た。亜麻仁ペースト組成物を作製した直後に粘度を測定した。B型粘度計(RION社製、VISCOTESTER VT-04)を使用し、No.1ローター又はNo.2ローターを装着して、室温25℃において62.5rpmで60秒間攪拌した後の粘度を測定した。なお水のB型粘度計で測定した25℃における粘度は0.01dPa・sであった。
その後室温で静置保存し、評価例1に従って10日後、30日後、60日後の亜麻仁ペースト組成物の状態を評価基準表に従って評価した。結果(粘度及び評点の平均と標準偏差(SD))を表1に示す。
【0030】
表1
*1亜麻仁ペースト組成物全量に対する濃度
【0031】
亜麻仁ペースト組成物の粘度が57dPa・s以上となる場合に分離防止効果が確認された。ただし、水を50質量%以上添加すると亜麻仁ペーストとしての風味が失われるので、添加量としては1~50質量%程度が好ましいと考えられる。
【0032】
試験例2 水添加による亜麻仁ペースト組成物の分離抑制試験
製造例1において50質量部の焙煎亜麻仁(日本製粉社製)と50質量部の亜麻仁油(日本製粉社製)を使用した以外は同様の方法で亜麻仁ペーストを製造し、製造例2に従い、表2の割合で亜麻仁ペーストと水を混合して亜麻仁ペースト組成物を得た。亜麻仁ペースト組成物を作製した直後に粘度を測定した。B型粘度計(RION社製、VISCOTESTER VT-04)を使用し、No.1ローター又はNo.2ローターを装着して、室温25℃において62.5rpmで60秒間攪拌した後の粘度を測定した。
その後室温で静置保存し、評価例1に従って10日後、30日後、60日後の亜麻仁ペースト組成物の状態を評価基準表に従って評価した。結果(粘度及び評点の平均と標準偏差(SD))を表2に示す。
【0033】
表2
*1亜麻仁ペースト組成物全量に対する濃度
【0034】
亜麻仁ペースト組成物の粘度が57dPa・s以上となる場合に分離防止効果が確認された。ただし、水を50質量%以上添加すると亜麻仁ペーストとしての風味が失われるので、添加量としては3~50質量%程度が好ましいと考えられる。
【0035】
試験例3 みりん添加による亜麻仁ペースト組成物の分離抑制試験
製造例1に従って亜麻仁ペーストを製造し、製造例2に従い、表3の割合で亜麻仁ペーストとみりん(エタノール含有量10%、水分47%、B型粘度計で測定した25℃における粘度0.08dPa・s)を混合して亜麻仁ペースト組成物を得た。亜麻仁ペースト組成物を作製した直後に粘度を測定した。B型粘度計(RION社製、VISCOTESTER VT-04)を使用し、No.1ローター又はNo.2ローターを装着して、室温25℃において62.5rpmで60秒間攪拌した後の粘度を測定した。
その後室温で静置保存し、評価例1に従って10日後、30日後、60日後の亜麻仁ペースト組成物の状態を評価基準表に従って評価した。結果(粘度及び評点の平均と標準偏差(SD))を表3に示す。
【0036】
表3
*1亜麻仁ペースト組成物全量に対する濃度
【0037】
亜麻仁ペースト組成物の粘度が57dPa・s以上となる場合に分離防止効果が確認された。ただし、みりんを50質量%以上添加すると亜麻仁ペーストとしての風味が失われるので、添加量としては2~50質量%程度が好ましい。
【0038】
試験例4 アルコール水溶液添加による亜麻仁ペースト組成物の分離抑制試験
製造例1に従って亜麻仁ペーストを製造し、製造例2に従い、表4の割合で亜麻仁ペーストとアルコール水溶液を混合して亜麻仁ペースト組成物を得た。亜麻仁ペースト組成物を作製した直後に粘度を測定した。B型粘度計(RION社製、VISCOTESTER VT-04)を使用し、No.1ローター又はNo.2ローターを装着して、室温25℃において62.5rpmで60秒間攪拌した後の粘度を測定した。なおいずれのアルコール水溶液もB型粘度計で測定した25℃における粘度は0.01dPa・sであった。
その後室温で静置保存し、評価例1に従って10日後、30日後、60日後の亜麻仁ペースト組成物の状態を評価基準表に従って評価した。結果(粘度及び評点の平均と標準偏差(SD))を表4に示す。
【0039】

*1亜麻仁ペースト組成物全量に対する濃度
*2亜麻仁ペーストとアルコール水溶液が混合しなかったため測定しなかった。
【0040】
亜麻仁ペースト組成物の粘度が57dPa・s以上となる場合に分離防止効果が確認された。
亜麻仁ペースト組成物中の亜麻仁ペーストの割合が50質量%未満になると亜麻仁の風味がなくなるため、試験は添加物量が50質量%までしか行わなかった(以後の試験も同じ)。
【0041】
試験例5 砂糖の飽和水溶液添加による亜麻仁ペースト組成物の分離抑制試験
製造例1に従って亜麻仁ペーストを製造し、製造例2に従って表5の割合で亜麻仁ペーストと飽和砂糖水(20℃における67質量%砂糖水、B型粘度計で測定した25℃における粘度6dPa・s)を混合して亜麻仁ペースト組成物を得た。
亜麻仁ペースト組成物を作製した直後に粘度を測定した。B型粘度計(RION社製、VISCOTESTER VT-04)を使用し、No.1ローター又はNo.2ローターを装着して、室温25℃において62.5rpmで60秒間攪拌した後の粘度を測定した。その後室温で静置保存し、評価例1に従って10日後、30日後、60日後の亜麻仁ペースト組成物の状態を評価基準表に従って評価した。結果(粘度及び評点の平均と標準偏差(SD))を表5に示す。
【0042】
表5
*1亜麻仁ペースト組成物全量に対する濃度
水溶液が砂糖の飽和水溶液であった場合についても、亜麻仁ペースト組成物の粘度が57dPa・s以上となる場合に分離防止効果が確認された。
【0043】
試験例6 食塩水添加試験
製造例1に従って亜麻仁ペーストを製造し、製造例2に従って表6の割合で亜麻仁ペーストと飽和食塩水(20℃における26質量%食塩水、B型粘度計で測定した25℃における粘度0.1dPa・s)を混合し亜麻仁ペースト組成物を得た。
亜麻仁ペースト組成物を作製した直後に粘度を測定した。B型粘度計(RION社製、VISCOTESTER VT-04)を使用し、No.1ローター又はNo.2ローターを装着して、室温25℃において62.5rpmで60秒間攪拌した後の粘度を測定した。その後室温で静置保存し、評価例1に従って10日後、30日後、60日後の亜麻仁ペースト組成物の状態を評価基準表にしたがい評価した。結果(粘度及び評点の平均と標準偏差(SD))を表6に示す。
【0044】
表6
*1亜麻仁ペースト組成物全量に対する濃度
水溶液が食塩の飽和水溶液であった場合についても、亜麻仁ペースト組成物の粘度が57dPa・s以上となる場合に分離防止効果が確認された。