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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-07
(45)【発行日】2023-07-18
(54)【発明の名称】液晶ポリエステル樹脂組成物及び成形体
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/00 20060101AFI20230710BHJP
   C08K 3/34 20060101ALI20230710BHJP
   C08K 9/02 20060101ALI20230710BHJP
   A47J 36/04 20060101ALI20230710BHJP
【FI】
C08L67/00
C08K3/34
C08K9/02
A47J36/04
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019161352
(22)【出願日】2019-09-04
(65)【公開番号】P2021038332
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-06-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100196058
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 彰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】枌 宏充
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開平7-70422(JP,A)
【文献】特表2005-537379(JP,A)
【文献】国際公開第2018/124145(WO,A1)
【文献】特開平4-202557(JP,A)
【文献】国際公開第2016/153048(WO,A1)
【文献】特開平2-95843(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L67/
C08K3/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(P)成分:液晶ポリエステル樹脂と、
(M)成分:非金属粉系のメタリック調顔料と、
(F)成分:前記(M)成分以外の無機充填剤と、
を含有し、
前記(M)成分は、板状無機充填剤粒子が金属酸化物で被覆されたものであり、
前記(M)成分における板状無機充填剤粒子は、合成マイカを含み、
前記(M)成分の含有量は、前記(P)成分100質量部に対して4~50質量部であり、
前記(F)成分は、タルクフィラーを含み、
前記(F)成分の含有量は、前記(P)成分100質量部に対して10~80質量部である、液晶ポリエステル樹脂組成物。
【請求項2】
前記(F)成分は、板状粒子である、請求項1に記載の液晶ポリエステル樹脂組成物。
【請求項3】
前記(M)成分のメジアン径(D50)は、5~100μmである、請求項1又は2に記載の液晶ポリエステル樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1~のいずれか一項に記載の液晶ポリエステル樹脂組成物を用いて作製された成形体。
【請求項5】
オーブンウェアである、請求項に記載の成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ポリエステル樹脂組成物及び該液晶ポリエステル樹脂組成物を用いて作製された成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ポリエステル樹脂組成物は、外観部品の材料としても使用されるようになってきている。
液晶ポリエステル樹脂は、特に耐熱性の点で優れることから、高温で使用される食器用途で採用されている。食器用途の成形体においては、高い意匠性が求められており、例えば、メタリック調の外観付与の要求がある。
この要求に対して、液晶ポリエステル樹脂組成物に含有するための、金属系のフィラーを使用したメタリック調の材料等が開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、金属顔料(アルミニウム、亜鉛、鉄、マグネシウム、銅、ニッケル等の金属粒子)を含む液晶ポリマー組成物を用いて作製された成形体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願公開第2014/0099459号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
液晶ポリエステル樹脂組成物において、特許文献1に記載されている金属顔料のような金属系のフィラーを含有させた場合、液晶ポリエステル樹脂組成物の絶縁抵抗が低下する。そのため、電子部品、電磁誘導加熱用の周辺部材、又はマイクロウェーブ加熱用容器若しくはその周辺部材の材料として用いる場合には、使用が制限されてしまうという問題がある。
【0006】
かかる問題に対して、金属系のフィラーに代えて、非金属系のメタリック調フィラーを用いる方法が考えられる。しかしながら、液晶ポリエステル樹脂組成物に非金属系のメタリック調フィラーを含有させた場合、メタリック調の外観を呈するものの、フローマークが発生しやすくなるという問題がある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、意匠性が高く、かつ、フローマークの発生を抑制することのできる液晶ポリエステル樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は以下の構成を採用した。
[1](P)成分:液晶ポリエステル樹脂と、(M)成分:非金属粉系のメタリック調顔料と、(F)成分:前記(M)成分以外の無機充填剤と、を含有する、液晶ポリエステル樹脂組成物。
[2]前記(M)成分は、板状無機充填剤粒子が金属酸化物で被覆されたものである、[1]に記載の液晶ポリエステル樹脂組成物。
[3]前記(M)成分における板状無機充填剤粒子は、マイカを含む、[2]に記載の液晶ポリエステル樹脂組成物。
[4]前記(M)成分における板状無機充填剤粒子は、合成マイカを含む、[3]に記載の液晶ポリエステル樹脂組成物。
[5]前記(M)成分の含有量は、前記(P)成分100質量部に対して4~50質量部である、[1]~[4]のいずれか一項に記載の液晶ポリエステル樹脂組成物。
[6]前記(F)成分は、板状粒子である、[1]~[5]のいずれか一項に記載の液晶ポリエステル樹脂組成物。
[7]前記(F)成分の含有量は、前記(P)成分100質量部に対して10~80質量部である、[1]~[6]のいずれか一項に記載の液晶ポリエステル樹脂組成物。
[8]前記(M)成分のメジアン径(D50)は、5~100μmである、[1]~[7]のいずれか一項に記載の液晶ポリエステル樹脂組成物。
[9][1]~[8]のいずれか一項に記載の液晶ポリエステル樹脂組成物を用いて作製された成形体。
[10]オーブンウェアである、[9]に記載の成形体。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、意匠性が高く、かつ、フローマークの発生を抑制することのできる液晶ポリエステル樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(液晶ポリエステル樹脂組成物)
本実施形態の液晶ポリエステル樹脂組成物は、(P)成分:液晶ポリエステル樹脂と、(M)成分:非金属粉系のメタリック調顔料と、(F)成分:前記(M)成分以外の無機充填剤と、を含有する。
【0011】
以下本実施形態の液晶ポリエステル樹脂組成物に含有される各成分について、詳細に説明する。
【0012】
<(P)成分:液晶ポリエステル樹脂>
本実施形態の(P)成分:液晶ポリエステル樹脂は、ヒドロキシカルボン酸に由来する繰返し単位をメソゲン基として有するものである。ここで、「ヒドロキシカルボン酸」とは、一分子中にヒドロキシ基(-OH)及びカルボキシ基(-C(=O)-OH)を共に有する化合物を意味する。
【0013】
(P)成分は、溶融状態で液晶性を示すポリエステル樹脂であり、450℃以下の温度で溶融するものが好ましい。液晶ポリエステル樹脂は、原料モノマーとして芳香族化合物のみを用いてなる全芳香族液晶ポリエステル樹脂であることが好ましい。
【0014】
(P)成分の典型的な例としては、芳香族ヒドロキシカルボン酸と、芳香族ジカルボン酸と、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミン及び芳香族ジアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物と、を重合(重縮合)させてなるもの、複数種の芳香族ヒドロキシカルボン酸を重合させてなるもの、並びにポリエチレンテレフタレート等のポリエステルと、芳香族ヒドロキシカルボン酸と、を重合させてなるものが挙げられる。ここで、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミン及び芳香族ジアミンは、互いに独立に、その一部又は全部に代えて、重合可能な誘導体が用いられてもよい。
【0015】
芳香族ヒドロキシカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸のようなカルボキシ基を有する化合物の重合可能な誘導体の例としては、カルボキシ基をアルコキシカルボニル基又はアリールオキシカルボニル基に変換してなるもの(エステル)、カルボキシ基をハロホルミル基に変換してなるもの(酸ハロゲン化物)、及びカルボキシ基をアシルオキシカルボニル基に変換してなるもの(酸無水物)が挙げられる。
【0016】
芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジオール及び芳香族ヒドロキシアミンのようなヒドロキシ基を有する化合物の重合可能な誘導体の例としては、ヒドロキシ基をアシル化してアシルオキシル基に変換してなるもの(アシル化物)が挙げられる。
芳香族ヒドロキシアミン及び芳香族ジアミンのようなアミノ基を有する化合物の重合可能な誘導体の例としては、アミノ基をアシル化してアシルアミノ基に変換してなるもの(アシル化物)が挙げられる。
【0017】
(P)成分は、下記式(1)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(1)」ということがある。)を有するものが好ましい。繰返し単位(1)は、上述のメソゲン基に相当する。
【0018】
(1)-O-Ar-CO-
[式(1)中、Arは、フェニレン基、ナフチレン基又はビフェニリレン基を表し、Arで表される前記基中の1個以上の水素原子は、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基又は炭素数6~20のアリール基で置換されていてもよい。]
【0019】
Arで表される前記基中の1個以上の水素原子と置換可能なハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。
【0020】
Arで表される前記基中の1個以上の水素原子と置換可能な炭素数1~10のアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ヘキシル基、n-へプチル基、2-エチルヘキシル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基等が挙げられる。
【0021】
Arで表される前記基中の1個以上の水素原子と置換可能な炭素数6~20のアリール基の例としては、フェニル基、o-トリル基、m-トリル基、p-トリル基等の単環式芳香族基;1-ナフチル基、2-ナフチル基等の縮環式芳香族基が挙げられる。
【0022】
Arで表される前記基中の1個以上の水素原子がこれらの基で置換されている場合、その置換数は、好ましくは1個又は2個であり、より好ましくは1個である。
【0023】
繰返し単位(1)は、所定の芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する繰返し単位である。
繰返し単位(1)としては、Arが1,4-フェニレン基であるもの(4-ヒドロキシ安息香酸に由来する繰返し単位)、及びArが2,6-ナフチレン基であるもの(6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸に由来する繰返し単位)が好ましい。
すなわち、好ましい(P)成分の例としては、パラヒドロキシ安息香酸、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸のいずれか一方又は両方に由来する繰返し単位を有するものが好ましい。
【0024】
(P)成分は、下記式(2)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(2)」ということがある。)を有するものが好ましい。
また、(P)成分は、下記式(3)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(3)」ということがある。)を有するものが好ましい。中でも、繰返し単位(1)(好ましくは、Arが1,4-フェニレン基又は2,6-ナフチレン基であるもの)、繰返し単位(2)及び繰返し単位(3)を有するものがより好ましい。
【0025】
(2)-CO-Ar-CO-
[式(2)中、Arは、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニリレン基又は下記式(4)で表される基を表す。Arに含まれる1個以上の水素原子は、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基又は炭素数6~20のアリール基で置換されていてもよい。]
【0026】
(4)-Ar-Z-Ar
[式(4)中、Ar及びArは、互いに独立に、フェニレン基又はナフチレン基を表す。
Zは、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基又は炭素数1~10のアルキリデン基を表す。]
(3)-X-Ar-Y-
[式(3)中、Arは、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニリレン基又は式(4)で表される基を表す。
X及びYは、互いに独立に、酸素原子又はイミノ基(-NH-)を表す。
Arに含まれる1個以上の水素原子は、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基又は炭素数6~20のアリール基で置換されていてもよい。]
【0027】
(4)-Ar-Z-Ar
[式(4)中、Ar及びArは、互いに独立に、フェニレン基又はナフチレン基を表す。
Zは、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基又は炭素数1~10のアルキリデン基を表す。]
【0028】
Ar又はArで表される前記基中の1個以上の水素原子と置換可能なハロゲン原子、アルキル基及びアリール基は、Ar表される前記基中の1個以上の水素原子と置換可能なハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基及び炭素数6~20のアリール基と同じものである。
【0029】
Ar又はArで表される前記基中の1個以上の水素原子がこれらの基で置換されている場合、その置換数は、Ar又はArで表される前記基毎に、互いに独立に、好ましくは1個又は2個であり、より好ましくは1個である。
【0030】
前記炭素数1~10のアルキリデン基の例としては、メチレン基、エチリデン基、イソプロピリデン基、n-ブチリデン基及び2-エチルヘキシリデン基等が挙げられ、その炭素数は1~10であることが好ましい。
【0031】
繰返し単位(2)は、所定の芳香族ジカルボン酸に由来する繰返し単位である。
繰返し単位(2)としては、Arが1,4-フェニレン基であるもの(テレフタル酸に由来する繰返し単位)、Arが1,3-フェニレン基であるもの(イソフタル酸に由来する繰返し単位)、Arが2,6-ナフチレン基であるもの(2,6-ナフタレンジカルボン酸に由来する繰返し単位)、Arが4,4’-ビフェニリレン基であるもの(4,4’-ジカルボキシビフェニルに由来する繰返し単位)、又はArがジフェニルエーテル-4,4’-ジイル基であるもの(4,4’-ジカルボキシジフェニルエーテルに由来する繰返し単位)が好ましく、Arが1,4-フェニレン基、1,3-フェニレン基、2,6-ナフチレン基又は4,4’-ビフェニリレン基であるものがより好ましい。
【0032】
繰返し単位(3)は、所定の芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシルアミン又は芳香族ジアミンに由来する繰返し単位である。
繰返し単位(3)としては、Arが1,4-フェニレン基であるもの(ヒドロキノン、p-アミノフェノール又はp-フェニレンジアミンに由来する繰返し単位)、Arが1,3-フェニレン基であるもの(1,3-ベンゼンジオール、m-アミノフェノール(例えば、4-アセトキシアミノフェノール)又はm-フェニレンジアミンに由来する繰返し単位)、Arが2,6-ナフチレン基であるもの(2,6-ジヒドロキシナフタレンに由来する繰返し単位、2-ヒドロキシ-6-アミノナフタレンに由来する繰返し単位又は2,6-ジアミノナフタレンに由来する繰返し単位)、Arが4,4’-ビフェニリレン基であるもの(4,4’-ジヒドロキシビフェニル、4-アミノ-4’-ヒドロキシビフェニル又は4,4’-ジアミノビフェニルに由来する繰返し単位)、又はArがジフェニルエーテル-4,4’-ジイル基であるもの(4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテルに由来する繰返し単位、4-ヒドロキシ-4’-アミノジフェニルエーテルに由来する繰返し単位又は4,4’-ジアミノジフェニルエーテルに由来する繰返し単位)が好ましく、Arが1,4-フェニレン基、1,3-フェニレン基、2,6-ナフチレン基又は4,4’-ビフェニリレン基であるものがより好ましい。
【0033】
(P)成分は、繰返し単位(3)として、X及びYがそれぞれ酸素原子であるものを有すること、すなわち、所定の芳香族ジオールに由来する繰返し単位を有することが好ましく、繰返し単位(3)として、X及びYがそれぞれ酸素原子であるもののみを有することが、より好ましい。
【0034】
すなわち、(P)成分は、下記式(21)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(21)」ということがある。)と、下記式(31)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(31)」ということがある。)と、を有するものがより好ましく、繰返し単位(1)(好ましくは、Arが1,4-フェニレン基又は2,6-ナフチレン基であるもの)、繰返し単位(21)及び繰返し単位(31)を有するものがさらに好ましい。
【0035】
(21)-CO-Ar21-CO-
(31)-O-Ar31-O-
[式(21)及び式(31)中、Ar21及びAr31は、互いに独立に、1,4-フェニレン基、1,3-フェニレン基、2,6-ナフチレン基又は4,4’-ビフェニリレン基を表す。Ar21又はAr31で表される前記基中の1個以上の水素原子は、互いに独立に、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基又は炭素数6~20のアリール基で置換されていてもよい。]
【0036】
(P)成分における繰返し単位(1)の含有率は、繰返し単位(1)、繰返し単位(2)及び繰返し単位(3)の合計100モル%に対して、好ましくは30モル%以上、より好ましくは40モル%以上80モル%以下、さらに好ましくは50モル%以上70モル%以下、とりわけ好ましくは55モル%以上70モル%以下である。
【0037】
また、(P)成分の繰返し単位(1)がパラヒドロキシ安息香酸に由来する繰返し単位である場合、パラヒドロキシ安息香酸に由来する繰返し単位の含有率は、繰返し単位(1)、繰返し単位(2)及び繰返し単位(3)の合計100モル%に対して、好ましくは40モル%以上、より好ましくは45モル%以上80モル%以下、さらに好ましくは50モル%以上70モル%以下、とりわけ好ましくは55モル%以上65モル%以下である。
【0038】
繰返し単位(1)の含有率が80モル%以下であると、加工温度が高温となりにくく、フローマークを生じにくくなるため、好ましい。
【0039】
(P)成分における繰返し単位(2)の含有率は、繰返し単位(1)、繰返し単位(2)及び繰返し単位(3)の合計100モル%に対して、好ましくは35モル%以下、より好ましくは10モル%以上35モル%以下、さらに好ましくは15モル%以上30モル%以下、とりわけ好ましくは17.5モル%以上27.5モル%以下である。
【0040】
(P)成分の繰返し単位(2)がテレフタル酸に由来する繰返し単位である場合、テレフタル酸に由来する繰返し単位の含有率は、繰返し単位(1)、繰返し単位(2)及び繰返し単位(3)の合計100モル%に対して、好ましくは35モル%以下、より好ましくは10モル%以上35モル%以下、さらに好ましくは10モル%以上20モル%以下、とりわけ好ましくは11モル%以上18モル%以下である。
【0041】
繰返し単位(2)の含有率が前記の範囲にあると、成形体に十分な耐熱性が付与でき、オーブンで使用した際の強度を高くすることができる。
【0042】
(P)成分における繰返し単位(3)の含有率は、繰返し単位(1)、繰返し単位(2)及び繰返し単位(3)の合計100モル%に対して、好ましくは35モル%以下、より好ましくは10モル%以上35モル%以下、さらに好ましくは15モル%以上30モル%以下、とりわけ好ましくは17.5モル%以上27.5モル%以下である。
【0043】
なお、(P)成分は、繰返し単位(1)~(3)を、互いに独立に、2種以上有してもよい。また、(P)成分は、繰返し単位(1)~(3)以外の繰返し単位を有してもよいが、その含有率は、全繰返し単位の合計に対して、好ましくは0モル%以上10モル%以下、より好ましくは0モル%以上5モル%以下である。
【0044】
(P)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
2種類の液晶ポリエステル樹脂を併用して用いる場合には、作製する成形体により適宜選択すればよく、例えば前記繰返し単位(1)~(3)の配合比が異なる液晶ポリエステル樹脂(1)及び液晶ポリエステル樹脂(2)を、[液晶ポリエステル樹脂(1)の含有量]/[液晶ポリエステル樹脂(2)の含有量](質量部/質量部)で表した場合に、90/10~10/90が好ましく、80/20~20/80がより好ましく、60/40~40/60がさらに好ましい。
【0045】
(P)成分は、これを構成する繰返し単位に対応する原料モノマーを溶融重合させ、得られた重合物(プレポリマー)を固相重合させることにより、製造することが好ましい。これにより、耐熱性や強度・剛性が高い高分子量の液晶ポリエステル樹脂を操作性よく製造できる。溶融重合は触媒の存在下で行ってもよく、前記触媒の例としては、酢酸マグネシウム、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸鉛、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、三酸化アンチモン等の金属化合物や、N,N-ジメチルアミノピリジン、N-メチルイミダゾール等の含窒素複素環式化合物が挙げられ、好ましくは含窒素複素環式化合物が挙げられる。
【0046】
(P)成分は、その流動開始温度が、好ましくは270℃以上、より好ましくは270℃以上400℃以下、さらに好ましくは280℃以上380℃以下である。
(P)成分の流動開始温度が前記の範囲にあると、耐熱性や強度・剛性が良好であり、成形時に熱劣化しにくく、また、溶融時の粘度が高くなりにくいために流動性が低下しにくくなる傾向がある。
【0047】
なお、流動開始温度は、フロー温度又は流動温度とも呼ばれ、毛細管レオメーターを用いて、9.8MPa(100kgf/cm)の荷重下、4℃/分の速度で昇温しながら、液晶ポリエステル樹脂を溶融させ、内径1mm及び長さ10mmのノズルから押し出すときに、4800Pa・s(48000ポイズ)の粘度を示す温度であり、液晶ポリエステル樹脂の分子量の目安となるものである(小出直之編、「液晶ポリマー-合成・成形・応用-」、株式会社シーエムシー、1987年6月5日、p.95参照)。
【0048】
<(M)成分:非金属粉系のメタリック調顔料>
本実施形態の液晶ポリエステル樹脂組成物は、(M)成分:非金属粉系のメタリック調顔料を含有する。ここで、「非金属粉系のメタリック調顔料」とは、金属的な光輝を発現する顔料であって、金属粉からなる顔料(アルミニウム粉、ブロンズ粉等)を除いたものをいう。
本実施形態の液晶ポリエステル樹脂組成物は、(M)成分を含有することにより、メタリック調の外観、金属的な光輝が付与されて意匠性を向上させることができる。
【0049】
(M)成分としては、板状無機充填剤粒子が無機材料で被覆されたもの、オキシ塩化ビスマス、魚鱗箔等が挙げられる。その中でも、板状無機充填剤粒子が無機材料で被覆されたものであることが好ましい。
【0050】
板状無機充填剤粒子が無機材料で被覆されたものとして、具体的には、母材である板状無機充填剤粒子が、酸化チタン等の屈折率の高い無機材料で被覆されたものである。
母材である板状無機充填剤粒子としては、マイカ、合成マイカ(合成金雲母)、ガラスフレーク等が挙げられる。
前記無機材料としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化鉄、フェロシアン鉄、酸化アルミ、フッ化カルシウム、シリカ、酸化マグネシウム等が挙げられる。
板状無機充填剤粒子が無機材料で被覆されたものとしては、板状無機充填剤粒子が、無機材料1種単独で被覆されたものでもよく、2種以上の無機材料で被覆されたものでもよい。
【0051】
上記板状無機充填剤粒子が無機材料で被覆されたものの中でも、板状無機充填剤粒子が金属酸化物で被覆されたものが好ましい。
【0052】
上記板状無機充填剤粒子が金属酸化物で被覆されたものとして、より具体的には、マイカが酸化チタンで被覆された酸化チタン被覆マイカ、マイカが酸化鉄で被覆された後、さらに酸化チタンで被覆された酸化鉄・酸化チタン被覆マイカ、合成マイカが酸化チタンで被覆された酸化チタン被覆合成マイカ、合成マイカが酸化鉄で被覆された後、さらに酸化チタンで被覆された酸化鉄・酸化チタン被覆合成マイカ、ガラスフレークが酸化チタンで被覆された酸化チタン被覆ガラスフレーク、ガラスフレークが酸化鉄で被覆された後、さらに酸化チタンで被覆された酸化鉄・酸化チタン被覆ガラスフレーク、ガラスフレークが酸化チタンで被覆された後、さらにシリカで被覆された酸化チタン・シリカ被覆ガラスフレーク等が挙げられる。
【0053】
(M)成分は上記の中でも、酸化チタン被覆マイカ、酸化チタン被覆合成マイカが好ましく、酸化チタン被覆合成マイカがより好ましい。
【0054】
(M)成分のメジアン径(D50)は、5~120μmであることが好ましく、5~100μmであることがより好ましく、8~80μmであることがさらに好ましく、8~60μmであることがよりさらに好ましく、9~30μmであることが特に好ましい。
(M)成分のメジアン径(D50)が前記の好ましい範囲の下限値以上であれば意匠性がより向上する。
(M)成分のメジアン径(D50)が前記の好ましい範囲の上限値以下であれば、成形の際のフローマークの発生をより抑制することができる。
なお、メジアン径(D50)は、(M)成分の粒子径分布において、小径側から体積累積分布曲線を描いた場合に、累積50%となるときの粒子径である。
また、(M)成分が、板状無機充填剤粒子が無機材料で被覆されたものの場合、液晶ポリエステル樹脂や他無機充填剤との混合、混錬や、その後の成形時においてメジアン径(D50)が変化しないことが分かっている。そのため、液晶ポリエステル樹脂組成物中の(M)成分のメジアン径(D50)は、他成分と混合、混錬する前の段階で(M)成分を水に分散させ、レーザー回折式粒子径分布測定装置(堀場製作所社製、商品名:LA-950V2等)で測定することによってもとめることができる。
【0055】
また、(M)成分のメジアン径(D50)が前記の好ましい範囲内である場合、(M)成分の粒子径分布がシャープな場合には、より金属的な光輝が強くなり、(M)成分の粒子径分布がブロードな場合には、ぎらつきが抑えられたメタリック調の外観を呈する。このように、(M)成分の粒子径を適宜調整することにより、所望の外観を付与することができる。
【0056】
(M)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(M)成分の含有量は、上記(P)成分100質量部に対して、4~50質量部であることが好ましく、6~45質量部であることがより好ましく、8~40質量部であることがさらに好ましい。
(M)成分の含有量が前記の好ましい範囲の下限値以上であれば意匠性がより向上する。
(M)成分の含有量が前記の好ましい範囲の上限値以下であれば、成形の際のフローマークの発生をより抑制することができる。
【0057】
<(F)成分:前記(M)成分以外の無機充填剤>
本実施形態の液晶ポリエステル樹脂組成物は、(F)成分:上記(M)成分以外の無機充填剤を含有する。
本実施形態の液晶ポリエステル樹脂組成物は、(F)成分を含有することにより、成形の際のフローマークの発生を抑制することができる。
【0058】
(F)成分:前記(M)成分以外の無機充填剤は、板状充填材であってもよいし、板状以外の粒状充填材であってもよい。
(F)成分は上記の中でも、板状粒子であることが好ましい。
(F)成分としては、例えば、タルクフィラー、酸化チタンフィラー、顔料が挙げられる。
【0059】
≪タルクフィラー≫
タルクフィラーは、好ましくは含水ケイ酸マグネシウムを粉砕したものである。含水ケイ酸マグネシウムの分子の結晶構造は、パイロフィライト型三層構造であり、タルクフィラーはこの構造が積み重なったものである。タルクフィラーとして、より好ましくは含水ケイ酸マグネシウムの分子の結晶を単位層程度にまで微粉砕した平板状のものである。
【0060】
タルクフィラーは、未処理のものでもよく、処理されたものでもよい。
処理されたタルクフィラーとしては、液晶ポリエステル樹脂との界面接着性、分散性を向上させるために、公知の界面活性剤で表面処理したものが挙げられる。該界面活性剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸塩類等が挙げられる。
【0061】
タルクフィラーのメジアン径(D50)としては、5~30μmが好ましく、10~25μmがより好ましい。
タルクフィラーのメジアン径(D50)が上記範囲内であると、フローマークが発生することをより抑制することができる。
【0062】
タルクフィラーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
タルクフィラーの含有量は、上記(P)成分100質量部に対して、4~80質量部であることが好ましく、8~75質量部であることがより好ましく、10~70質量部であることがさらに好ましい。
タルクフィラーの含有量が上記範囲内であると、フローマークが発生することをより抑制することができる。
【0063】
≪酸化チタンフィラー≫
酸化チタンフィラーとしては、特に限定されず、樹脂充填用の酸化チタンフィラーとして公知のものを使用することができる。
【0064】
酸化チタンフィラーの結晶構造は、特に限定されず、ルチル型であってもよく、アナターゼ型であってもよく、両者を混合したものであってもよい。本発明においては、アナターゼ型酸化チタンフィラーよりも屈折率が高いルチル型酸化チタンフィラーを採用することが好ましい。
【0065】
また、酸化チタンフィラーは、表面処理を施したものを用いてもよい。
例えば、無機金属酸化物を用いて表面処理を施すことにより、分散性等の特性を向上できる。無機金属酸化物としては、例えば、酸化アルミニウムが挙げられる。
【0066】
酸化チタンフィラーのメジアン径は、好ましくは0.1~1μmであり、より好ましくは0.15~0.25μmである。
【0067】
酸化チタンフィラーの含有量は、上記(P)成分100質量部に対して、1~20質量部が好ましく、1~15質量部がより好ましい。
【0068】
≪顔料≫
顔料としては、アルミナ、酸化鉄、酸化コバルト、酸化クロム、酸化マンガン、カーボンブラック等が挙げられる。その中でも、よりメタリック調の外観にすることができるため、カーボンブラックが好ましい。
【0069】
顔料の含有量は、上記(P)成分100質量部に対して、0.01~5質量部が好ましく、0.02~1質量部がより好ましく、0.02~0.5質量部がさらに好ましい。
【0070】
本実施形態における(F)成分は、上記の中でも、フローマーク発生の抑制効果の観点からは、タルクフィラーが好ましく、意匠性の向上の観点からは、顔料(好ましくはカーボンブラック)が好ましい。
【0071】
(M)成分と(F)成分との配合比(質量比)((F)成分/(M)成分)は、0.8~10が好ましく、1.0~9.0がより好ましく、1.2~8.0がさらに好ましい。
(M)成分と(F)成分との配合比(質量比)((F)成分/(M)成分)が、前記の好ましい範囲の下限値以上であれば成形の際のフローマークの発生をより抑制することができる。
(M)成分と(F)成分との配合比(質量比)((F)成分/(M)成分)が、前記の好ましい範囲の上限値以下であれば、意匠性がより向上する。
【0072】
以上説明した本実施形態の液晶ポリエステル樹脂組成物は、(P)成分:液晶ポリエステル樹脂に、(M)成分:非金属粉系のメタリック調顔料と、(F)成分:前記(M)成分以外の無機充填剤とを併有する。非金属粉系である(M)成分を含有することにより、金属的な光輝を発現し、意匠性が向上する。一方で、(P)成分に(M)成分を含有すると、フローマークが顕著に発生しやすくなる。ところが、ここに(F)成分を併用することにより、フローマークの発生が抑制される。このように、本実施形態の液晶ポリエステル樹脂組成物によれば意匠性の向上、及び、フローマーク発生の抑制効果の両立が図られる。
【0073】
(成形体)
本実施形態の成形体は、上述した液晶ポリエステル樹脂組成物を形成材料とする。
上述した液晶ポリエステル樹脂組成物により作製されているため、意匠性が高く、かつ、フローマークの発生が抑制されている。
【0074】
本実施形態の液晶ポリエステル樹脂組成物の成形法としては、溶融成形法が好ましく、例えば、射出成形法、Tダイ法やインフレーション法等の押出成形法、圧縮成形法、ブロー成形法、真空成形法、プレス成形が挙げられる。その中でも、射出成形法が好ましい。
【0075】
成形体の製品・部品の例としては、光ピックアップボビン、トランスボビン等のボビン;リレーケース、リレーベース、リレースプルー、リレーアーマチャー等のリレー部品;RIMM、DDR、CPUソケット、S/O、DIMM、Board to Boardコネクター、FPCコネクター、カードコネクター等のコネクター;ランプリフレクター、LEDリフレクター等のリフレクター;ランプホルダー、ヒーターホルダー等のホルダー;スピーカー振動板等の振動板;コピー機用分離爪、プリンター用分離爪等の分離爪;カメラモジュール部品;スイッチ部品;モーター部品;センサー部品;ハードディスクドライブ部品;オーブンウェア等の食器;車両部品;航空機部品;および半導体素子用封止部材、コイル用封止部材等の封止部材が挙げられる。
【0076】
また、これら以外の例としては、分離爪、ヒーターホルダー等の複写機、印刷機関連部品;インペラー、ファン歯車、ギヤ、軸受け、モーター部品、ケース等の機械部品;自動車用機構部品、燃料関係・排気系・吸気系各種パイプ、排気ガス、冷却水、油温系各種センサー、エアコン用サーモスタットベース、エアコン用モーターインシュレーター、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ワイパーモーター関係部品、デュストリビュター、スタータースィッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、エアコンパネルスィッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ヒューズ用コネクター、ECUコネクター、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、点火装置ケースなどの自動車・車両関連部品;マイクロ波調理用鍋、耐熱食器等の調理用器具;床材、壁材等の断熱もしくは防音用材料、梁もしくは柱等の支持材料、屋根材等の建築資材または土木建築用材料;航空機、宇宙機、宇宙機器用部品;原子炉等の放射線施設部材;海洋施設部材;洗浄用治具;光学機器部品;バルブ類;パイプ類;ノズル類;フィルター類;膜;医療用機器部品および医療用材料;センサー類部品;サニタリー備品;スポーツ用品;レジャー用品等が挙げられる。
【0077】
本実施形態の成形体は、意匠性の高さをより活かすことができる観点から、オーブンウェア等の食器用として有用である。さらに、本実施形態の成形体は、シリコーン製の成形体等に比べて、より高温で使用可能であること、金属系のフィラーを含まないため電子レンジで使用可能であることから、オーブンウェア用として特に好適である。
【0078】
本実施形態の成形体は、上述した液晶ポリエステル樹脂組成物を用いて作製されているため、意匠性が高く、かつ、フローマークの発生が抑制される。
【実施例
【0079】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0080】
<液晶ポリエステル樹脂1の製造方法>
撹拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、パラヒドロキシ安息香酸994.5g(7.2モル)、4,4’-ジヒドロキシビフェニル446.9g(2.4モル)、テレフタル酸299.0g(1.8モル)、イソフタル酸99.7g(0.6モル)及び無水酢酸1347.6g(13.2モル)を仕込み、1-メチルイミダゾール0.2gを添加し、反応器内を十分に窒素ガスで置換した。
その後、窒素ガス気流下で室温から150℃まで30分かけて昇温し、同温度を保持して1時間還流させた。
次いで、副生酢酸や未反応の無水酢酸を留去しながら150℃から320℃まで2時間50分かけて昇温し、トルクの上昇が認められる時点を反応終了としてプレポリマーを得た。
得られたプレポリマーは室温まで冷却し、粗粉砕機で粉砕した。得られたプレポリマー粉末を、窒素雰囲気下、室温から250℃まで1時間かけて昇温し、250℃から285℃まで5時間かけて昇温し、285℃で3時間保持することで、固相重合を行い、液晶ポリエステル樹脂1を得た。得られた液晶ポリエステル樹脂1の流動開始温度は327℃であった。
【0081】
(実施例1~9、比較例1~4)
<液晶ポリエステル樹脂組成物の製造方法>
上記で得られた液晶ポリエステル樹脂1((P)成分)に対し、下記表1に示す配合比にて、(M)成分と(F)成分とを配合した後、2軸押出機(池貝鉄工株式会社製、PCM-30)を用いて各例の液晶ポリエステル樹脂組成物を得た。
【0082】
【表1】
【0083】
表1中、各略号はそれぞれ以下の意味を有する。[ ]内の数値は配合量(質量部)である。
LCP-1:上記液晶ポリエステル樹脂1
(M)-1:酸化チタン被覆合成マイカ(日本光研工業社製、商品名:TWINCLEPEARL SXD、メジアン径(D50):21μm)
(M)-2:酸化チタン被覆合成マイカ(日本光研工業社製、商品名:TWINCLEPEARL SX、メジアン径(D50):90μm)
(M)-3:酸化チタン被覆合成マイカ(日本光研工業社製、商品名:TWINCLEPEARL SXA、メジアン径(D50):9μm)
(M)-4:酸化チタン被覆合成マイカ(日本光研工業社製、商品名:TWINCLEPEARL BXB、メジアン径(D50):13μm)
【0084】
(F)-1:タルク(日本タルク社製、商品名:MS-KY、メジアン径(D50):25μm)
(F)-2:ガラス繊維(セントラル硝子社製、商品名:ミルドファイバー EFH75-01)
(F)-3:カーボンブラック(Cabot社製、商品名:Black pearls 4350)
【0085】
なお、上記(M)-1~(M)-4のメジアン径(D50)は、測定装置として、散乱式粒子径分布測定装置(堀場製作所社製、商品名:LA-950V2)を用い、(M)-1~(M)-4のそれぞれを水に分散させた状態で、以下の測定条件にて測定した。
[条件]
粒子屈折率:1.59-0.1i(マイカ)
分散媒:水
分散媒屈折率:1.33
【0086】
<試験片の製造>
各例の液晶ポリエステル樹脂組成物を、それぞれ射出成形機を用いて330℃~350℃にて成形し、60mm×40mm×2mmtの大きさの試験片を得た。
【0087】
[メタリック調の評価]
上記実施例1~9及び比較例1、2の試験片について、変角光度計(日本電色工業株式会社製、商品名:GC5000L)を用いて、入射角45°で入射して、該試験片の表面で反射した光の検出角30°での500nm反射率を測定した。
上記反射率が高いほど、金属的な光輝が強くなり、メタリック調の外観であることを意味する。
その結果を表2、3に示す。
【0088】
【表2】
【0089】
【表3】
【0090】
表2、3に示す結果から、実施例の液晶ポリエステル樹脂組成物は、反射率が高く、意匠性が高いことが確認できる。
また、上記実施例の中でも、(F)-3:カーボンブラックを含有する実施例7~9の液晶ポリエステル樹脂組成物は、反射率は他の実施例と同等であったが、目視評価では、より金属的な色調を発現し、金属の外観を模した意匠性に優れていることが確認された。
【0091】
[フローマーク発生の抑制効果の評価]
各例の試験片の外観を目視で観察し、下記の基準で評価した。
その結果を表4、5に示す。
A:観察面に対して1メートル以内に近づき、どの角度からでもフローマークがほとんど見えない
B:観察面に対して1メートル以内に近づき、垂直方向からはあまり見えないが、45度の方向からよくフローマークが見える
C:観察面に対して1メートル以内に近づき、どの方向からでもよくフローマークが見える
D:観察面に対して1メートル以上離れても、よくフローマークが見える
【0092】
【表4】
【0093】
【表5】
【0094】
表4、5に示す結果から、実施例の液晶ポリエステル樹脂組成物を用いて作製された成形体(オーブンウェア)は、フローマークの発生が抑制されていることが確認できる。
【0095】
以上より、本発明を適用した実施例の液晶ポリエステル樹脂組成物は、意匠性が高く、かつ、フローマークの発生を抑制できることが確認できる。