(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-07
(45)【発行日】2023-07-18
(54)【発明の名称】自動分析装置
(51)【国際特許分類】
G01N 35/10 20060101AFI20230710BHJP
【FI】
G01N35/10 C
(21)【出願番号】P 2020039524
(22)【出願日】2020-03-09
【審査請求日】2022-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】坂田 健士郎
(72)【発明者】
【氏名】川原 鉄士
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 洋一郎
【審査官】前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-242106(JP,A)
【文献】特開2009-300152(JP,A)
【文献】国際公開第2019/073644(WO,A1)
【文献】特開2014-119291(JP,A)
【文献】特開2003-149094(JP,A)
【文献】特開2010-091469(JP,A)
【文献】米国特許第05270210(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を分注する分注ノズルと、
回転駆動軸を有して前記分注ノズルを水平移動させるアームと、前記分注ノズルの先端が前記液体に接触したことを検知する接触検知器とを有する分注機構と、
第1の側面と、前記第1の側面と所定の角度をなす第2の側面とを有する柱状治具と、
前記分注ノズルを複数の停止位置に移動させる前記アームの移動量を示す位置情報データを格納するデータ格納部と、
前記位置情報データにしたがって前記アームを駆動し、前記分注ノズルを当該位置情報データに対応する停止位置に移動させる制御部と、を有し、
前記制御部は、前記柱状治具の前記第1の側面に前記分注ノズルの先端を接触させたときの前記アームの移動量ならびに前記第1の側面と前記アームへの前記分注ノズルの取り付け位置との位置関係、及び前記柱状治具の前記第2の側面に前記分注ノズルの先端を接触させたときの前記アームの移動量ならびに前記第2の側面と前記アームへの前記分注ノズルの取り付け位置との位置関係に基づき、前記分注ノズルの先端と前記アームへの前記分注ノズルの取り付け位置との位置ずれを補正する補正値を算出する自動分析装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記制御部は、前記複数の停止位置に対応する前記位置情報データのそれぞれを前記補正値により補正し、補正された前記位置情報データにしたがって前記アームを駆動する自動分析装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記制御部は、ユーザメンテナンス終了後のリセット動作を行った後に、前記補正値を算出する自動分析装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記制御部は、前記分注ノズルの先端と前記アームへの前記分注ノズルの取り付け位置との位置ずれが所定量を超える場合には、前記分注ノズルの異常を警告する自動分析装置。
【請求項5】
請求項2において、
前記制御部は、前記複数の停止位置のうち、前記補正値により補正された前記位置情報データにしたがって前記アームを駆動させる場合に、前記分注ノズルの動作範囲を超える停止位置が存在する場合には、前記分注ノズルの異常を警告する自動分析装置。
【請求項6】
請求項1において、
前記位置情報データは、基準位置に対する位置調整値を含み、
前記基準位置は、前記複数の停止位置のあらかじめ定められた配置であり、
前記位置調整値は、前記自動分析装置の据え付け時に、前記分注ノズルの先端が実機で前記複数の停止位置のそれぞれに位置するよう求められた、前記基準位置に対する前記アームの移動量の調整量である自動分析装置。
【請求項7】
請求項6において、
前記柱状治具に関する前記位置情報データとして、前記自動分析装置の据え付け時に、前記分注ノズルの先端が実機で前記柱状治具の中心に位置するよう求められた、前記柱状治具の中心についての前記基準位置に対する前記アームの移動量の調整量である位置調整値を前記データ格納部に格納する自動分析装置。
【請求項8】
請求項1において、
複数の前記分注機構を有し、
前記制御部は、共通の前記柱状治具を用いて、複数の前記分注機構それぞれの前記補正値を算出する自動分析装置。
【請求項9】
請求項1において、
前記分注機構は、上下動可能なシャフトと、前記アームとして第1及び第2のアームを有し、
前記第1のアームの一端は前記シャフトに取り付けられ、前記第2のアームの一端は前記第1のアームの自由端に取り付けられ、前記分注ノズルは、前記第2のアームの他端に取り付けられる自動分析装置。
【請求項10】
請求項1において、
前記分注機構は、リニアステージを有し、
前記アームは、水平方向へ移動可能に、前記リニアステージに取り付けられる自動分析装置。
【請求項11】
請求項1において、
前記分注機構は、上下動可能なシャフトを有し、
前記アームは前記シャフトに取り付けられる自動分析装置。
【請求項12】
請求項1において、
前記柱状治具の材料は、前記接触検知器が前記分注ノズルの先端が接触したことを検知可能な材料である自動分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分注機構を有する自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、分注ノズルの停止位置を定めることのできる自動分析装置を提供するものがある。特許文献1には、各分注ノズルの各停止位置の下方に中心面を合わせて配置した治具の上方に複数の調整位置を設定し、各分注ノズルを複数の調整位置に水平移動させた後に、各液面検出器により検出される複数の検出位置まで下方に移動させて、複数の検出位置の間の距離に対応する移動距離データを生成し、生成した移動距離データに基づいて、検出位置を判断することが記されている。
【0003】
また、特許文献2には分析ユニット検出器がアームの軌道に沿って基準位置から基準距離だけ移動した位置に配置され、移動したアームの移動距離を検出し、基準距離とアームの移動距離との差が補正範囲より大きい場合に分析ユニットが異常な状態であると判定することが記されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-285957号公報
【文献】特開2010-145284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1は、各停止位置を判断するために分注ノズルを各停止位置に水平移動してから、正しい位置に移動できているかの判断を行うため、停止位置が多いほど判断に要する工程数が多くなる。
【0006】
また、特許文献2はアームの軌道に沿った距離差のみでノズルの状態を判定しているため、例えばノズルが回転駆動の場合、回転駆動の半径方向についての歪みを判定することができない。
【0007】
本発明は少なくとも1つの回転駆動軸を有する水平移動機構を備えた分注機構において、分注ノズルを短時間に、かつ変形の状態にかかわらず、位置決め可能とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施の態様である自動分析装置は、液体を分注する分注ノズルと、回転駆動軸を有して分注ノズルを水平移動させるアームと、分注ノズルの先端が液体に接触したことを検知する接触検知器とを有する分注機構と、第1の側面と、第1の側面と所定の角度をなす第2の側面とを有する柱状治具と、分注ノズルを複数の停止位置に移動させるアームの移動量を示す位置情報データを格納するデータ格納部と、位置情報データにしたがってアームを駆動し、分注ノズルを当該位置情報データに対応する停止位置に移動させる制御部と、を有し、制御部は、柱状治具の第1の側面に分注ノズルの先端を接触させたときのアームの移動量ならびに第1の側面とアームへの分注ノズルの取り付け位置との位置関係、及び柱状治具の第2の側面に分注ノズルの先端を接触させたときのアームの移動量ならびに第2の側面とアームへの分注ノズルの取り付け位置との位置関係に基づき、分注ノズルの先端とアームへの分注ノズルの取り付け位置との位置ずれを補正する補正値を算出する。
【発明の効果】
【0009】
少なくとも1つの回転駆動軸を有する水平移動機構を備えた分注機構において、分注ノズルを短時間に、かつ変形の状態にかかわらず、位置決め可能とする。
【0010】
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図3A】分注ノズルが柱に接触する様子を示す図である。
【
図3B】分注ノズルが柱に接触する様子を示す図である。
【
図3C】分注ノズルが柱に接触する様子を示す図である。
【
図4】実施例1の分注ノズルの位置決め方法のフローチャートである。
【
図5】座標系と各アームの初期位置及び寸法を示す図である。
【
図6A】補正値の算出方法を説明するための図である。
【
図6B】補正値の算出方法を説明するための図である。
【
図7A】補正値の算出方法を説明するための図である。
【
図7B】補正値の算出方法を説明するための図である。
【
図7C】補正値の算出方法を説明するための図である。
【
図8】実施例2の分注ノズルの位置決め方法のフローチャートである。
【
図9】座標系とリニアステージ及びアームの初期位置及び寸法を示す図である。
【
図10A】補正値の算出方法を説明するための図である。
【
図10B】補正値の算出方法を説明するための図である。
【
図11A】補正値の算出方法を説明するための図である。
【
図11B】補正値の算出方法を説明するための図である。
【
図11C】補正値の算出方法を説明するための図である。
【
図12】実施例3の分注ノズルの位置決め方法のフローチャートである。
【
図13】座標系とアームの初期位置及び寸法を示す図である。
【
図14A】補正値の算出方法を説明するための図である。
【
図14B】補正値の算出方法を説明するための図である。
【
図15A】補正値の算出方法を説明するための図である。
【
図15B】補正値の算出方法を説明するための図である。
【
図15C】補正値の算出方法を説明するための図である。
【
図16A】複数の分注機構が1つの柱を共有する例である。
【
図16B】複数の分注機構が1つの柱を共有する例である。
【
図17】本実施例の効果を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を実施するための形態を、図面に基づいて詳細に説明する。以下に説明する実施の形態は一例に過ぎず、その構成要素、要素ステップは、特に明示した、あるいは原理的に明らかであるような場合を除いて必須のものではない。
【0013】
図1に自動分析装置の全体構成例を示す。自動分析装置は、主要な構成として、試料搬送機構19、試薬ボトル12が搭載される試薬ディスク11、反応容器2が搭載される反応ディスク1、試料分注機構13, 14、試薬分注機構7, 8, 9, 10、攪拌機構5, 6、分光光度計4、洗浄機構3、洗浄槽15, 16, 30, 31, 32, 33、試薬用ポンプ20、試料用ポンプ21、洗浄用ポンプ22を有している。また、自動分析装置各部を制御する制御部41、各種データを蓄えるデータ格納部42、外部より必要なデータをデータ格納部42に入力する入力部43、分光光度計4で得られる光量から吸光度を算出する測定部44、吸光度から成分量を割り出す解析部45、解析した成分量データなどを外部に表示、出力する出力部46を備えている。
【0014】
試料搬送機構19は、分析対象の試料(液体)を収容した試料容器17を1つ以上搭載可能なラック(搬送部材)18を搬送する。試薬ディスク11上には、試料の分析に用いる試薬(液体)を収容する複数の試薬ボトル12が周方向に並べて配置されている。反応ディスク1上には、試料と試薬とを混合して反応させる複数の反応容器2が周方向に並べて配置されている。試料分注機構13, 14はそれぞれ、試料搬送機構19により試料分注位置に搬送された試料容器17から反応容器2に試料を分注する。試薬分注機構7, 8, 9, 10はそれぞれ、試薬ボトル12から反応容器2に試薬を分注する。攪拌機構5, 6は、反応容器2に分注された試料と試薬との混合液(反応液)を攪拌する。分光光度計4は、図示しない光源から反応容器2の反応液を介して得られる透過光を受光する。洗浄機構3は、使用済みの反応容器2を洗浄する。試料ノズル洗浄槽15, 16はそれぞれ、試料分注機構13, 14の稼動範囲に配置されており、試料ノズル13a, 14aを洗浄水により洗浄する。同様に、試薬ノズル洗浄槽30, 31, 32, 33はそれぞれ、試薬分注機構7, 8, 9, 10の稼動範囲に配置されており、試薬ノズル7a, 8a, 9a, 10aを洗浄水により洗浄する。加えて、試薬分注機構7, 8, 9, 10の近傍には、分注ノズルの位置決めを行う柱状治具(柱)61が配置されている。柱61の構造、柱61を利用した位置決め処理については後述する。
【0015】
試料の成分量の分析は、次のような手順で行われる。まず、試料搬送機構19によって反応ディスク1近くに搬送されたラック18上に載置された試料容器17内の試料を、試料分注機構13 (14)の試料ノズル13a (14a)により反応ディスク1上の反応容器2に分注する。次に、分析に使用する試薬を試薬ディスク11上の試薬ボトル12から試薬分注機構7 (8,9,10)の試薬ノズル7a (8a, 9a, 10a)により先に試料を分注した反応容器2に対して分注する。続いて、攪拌機構5 (6)で反応容器2内の試料と試薬との混合液を攪拌する。その後、測定部44は、光源から発生させた光を攪拌後の混合液の入った反応容器2に透過させ、透過光の光度を分光光度計4により測定し、得られた吸光度データをデータ格納部42に蓄積する。解析部45は、蓄積された吸光度データを検量線データおよびランベルト・ベアーの法則に基づき解析する。この解析により、試料に含まれる成分量を分析できる。自動分析装置各部の制御や分析に必要なデータは、入力部43からデータ格納部42に入力され、また、各種データや解析結果は、出力部46から表示及び/または出力される。
【0016】
なお、以上は自動分析装置が生化学分析を行う場合の構成例であり、自動分析装置が実行する解析内容によって測定機構は異なる。自動分析装置で用いられる測定方法としては、試料中の分析対象成分と反応することによって反応液の色が変わるような試薬を用いる分析方法(比色分析)や、試料中の分析対象成分と直接あるいは間接的に特異的に結合する物質に標識体を付加した試薬を用い、標識体をカウントする分析方法(免疫分析)などが知られているが、いずれも試料容器に収容された試料、あるいは試薬ボトルに収容された試薬を分注機構で反応容器に分注し、混合させる工程を含む。分注工程を含む分析を実行可能な自動分析装置においては、本実施例の分注機構が適用可能である。
【実施例1】
【0017】
図2に、実施例1の分注機構の構成例を示す。本分注機構では、上下(Z軸方向)に駆動可能なシャフト51の上端位置に、θ
1アーム52の一端部が、XY面内で回転可能に取り付けられている。また、θ
2アーム53の一端部は、θ
1アーム52の自由端である他端部に、XY面内で回転可能に取り付けられている。また、θ
2アーム53の自由端である他端部にはZ軸方向下方に延長するように分注ノズル54が取り付けられている。なお、分注ノズル54とシリンジ55とは、チューブ56を介して接続されている。チューブ56は、シャフト51の台座からシャフト51、θ
1アーム52、θ
2アーム53を通り、分注ノズル54の一端側に接続されている。シリンジ55には、その内容積を可変するためのプランジャ57が移動可能に取り付けられている。プランジャ57の移動位置に応じ、分注ノズル54の先端からは試料または試薬の吸引または吐出が行われる。また、分注ノズル54には、静電容量方式の接触検知器58が接続されており、分注ノズル54が試料、試薬などの導電体と接触したことを検出することができる。
【0018】
図3A~Cに、分注ノズル54が柱状治具(柱)61に接触する様子を示す。柱61は分注ノズル54の位置決めを行うための治具であり、自動分析装置の天板上に設置されている(
図1参照)。ここで、
図3A~Cのそれぞれの上段は水平方向から見た図(側面図)であり、それぞれの下段は垂直方向から見た図(上面図)である。分注ノズル54の状態によって、分注ノズル54が柱61の第1の側面61a、第2の側面61bに接触するときの、θ
1アーム52及びθ
2アーム53の移動量は異なる。柱61は固定位置にあり、実施例1では分注ノズル54を柱61に接触させて、水平位置調整値の補正値を決定し、データ格納部42に格納する。
【0019】
図3Aに分注ノズル54が正常な(変形のない)状態を示す。上段に示すように、分注ノズル54は根本54aから先端54bまで直線状であり(曲がりや歪みなどの変形がなく)、シャフト51と平行、かつθ
2アーム53と垂直に配置され、所定の位置に配置されている柱61の第1の側面61aに接触している。分注ノズル54の接触検知器58(
図2参照)が柱61との接触を検知したとき、垂直方向から見ると、下段に示すように分注ノズル根本54aと分注ノズル先端54bは同時に柱61に接している。
【0020】
ここで、ユーザメンテナンス中にユーザが分注ノズル54に接触してしまったり、分注ノズル54の移動中に障害と衝突してしまったりした場合に、分注ノズル54が曲がってしまうことがある。
図3B及び
図3Cにその状態を示す。
図3Bは、変形した分注ノズル54を、
図3Aと同様に、柱61の第1の側面61aに接触させた状態を示している。この場合、分注ノズル54の変形により、垂直方向から見ると、下段に示すように分注ノズル根本54aの位置と分注ノズル先端54bの位置との間にずれが生じる。したがって、このずれの分だけθ
1アーム52及びθ
2アーム53の移動量を補正しなければ、分注ノズル先端54bは所望の位置に移動させることができない。そこで、本実施例では、分注ノズル54が変形した場合におけるアームの移動量、分注ノズル54が柱61に接触したときの柱61の側面と分注ノズル根本54aとの位置関係に基づき、水平位置調整値の補正値を求める。
【0021】
ここで、分注ノズル54の変形はあらゆる向きに対して生じ得る。そこで、
図3Cに示すように、変形した分注ノズル54を柱61の第1の側面61aとは異なる第2の側面61bに接触させる。第1の側面61aと第2の側面61bとがなす角は既知である。このため、水平位置調整値の補正値を求めるにあたっては、分注ノズル54を柱61の互いのなす角が既知である2つの異なる側面に接触させ、それぞれについて、アームの移動量、分注ノズル54が柱61に接触したときの柱61の側面と分注ノズル根本54aとの位置関係を測定する。
【0022】
この例では、柱61は直方体であり、垂直方向に円筒構造62を有している。円筒構造62は例えば柱61に設けられた空洞である。円筒構造62はその中心軸が柱61の中心軸と一致するように形成され、柱61の位置決めのために用いられる。柱61の実際の配置には、製作時や組立て時の誤差が含まれるため、予め決められた配置(基準位置)との間にずれが生じる。そのため、自動分析装置の据え付け段階において、円筒構造62の中心と分注ノズル先端54bとを目視で位置合わせを行い、このときのアームの移動量から解析部45においてアームを柱61(=円筒構造62)の中心位置に分注ノズル54を移動させる水平位置調整値を算出し、位置情報データとしてデータ格納部42に格納しておく。分注機構は、柱61の基準位置に、据え付け時に実機で求めた水平位置調整値で補正した移動量だけアームを移動させることで、分注ノズル先端54bを正しく柱61の中心に移動させることができる。
【0023】
また、柱61は金属製とする。これは、検体や試薬といった液面に分注ノズル54が接触しているか検知するために分注機構に元々搭載されている静電容量方式による接触検知器58を活用するためである。これにより、新たなセンサや回路基板を追加することなく分注ノズル54と柱61との接触を検知することができる。なお、これは一例であって、分注ノズル54と液面との接触を検出するような接触検知器として導通検知器、圧力式、衝突検知式、レーザ変位式などが知られており、本実施例はこれらの場合であっても適用可能であり、柱61の材料には分注機構に搭載された既存の接触検知器が検知可能な材料を用いればよい。
【0024】
以下、実施例1に係るノズル状態検知及び位置決め方法を説明する。実施例1の分注機構は、2つの回転駆動軸を有する水平移動機構を搭載している。
【0025】
図4は、実施例1の分注ノズルの位置決め方法のフローチャートである。本フローの開始(ステップ101)はユーザメンテナンス終了後のリセット動作を行った後に制御部41が自動で開始する。ユーザメンテナンスは、例えば、ユーザが試薬を交換するような作業である。
図1に示したような自動分析装置の各機構は通常動作時は筐体に格納されており、ユーザが各機構に触れることはできない。しかしながら、ユーザメンテナンスのために筐体が開けられると、ユーザが分注ノズルに不注意に触れてしまう可能性が生じる。このため、分注ノズルに異常が生じる可能性のある事象が生じた場合には、自動的に本フローを実行することで、分注ノズルの異常が生じたまま分析を継続することを回避できる。さらに、ユーザが入力部43から任意のタイミングで本フローの実行を指示するようにしてもよい。
【0026】
まず、制御部41はデータ格納部42に格納された位置情報データ(位置調整値)を受け付け、分注ノズル54を柱61の中心に水平移動させる。さらに、θ1アーム52及びθ2アーム53を駆動し、柱61の中心から第1の側面61a方向へ分注ノズル54を移動させる。続いて、分注ノズル先端54bの高さが柱61の上面より低い位置に移動するようにシャフト51を駆動する。その後、θ1アーム52及びθ2アーム53を前記方向と逆方向に駆動させ、分注ノズル54が柱61の第1の側面61aに接触することにより出力される、接触検知器58からの接触検知信号を受けて、θ1アーム52及びθ2アーム53の駆動を停止する(ステップ102)。このときのアームの移動量、第1の側面61aと分注ノズル根本54aとの位置関係をデータ格納部42へ格納する(ステップ103)。この詳細については後述する。
【0027】
続いて、制御部41は、分注ノズル先端54bの高さが柱61上面より高い位置に移動するようにシャフト51を駆動した後、分注ノズル54を柱61の中心に水平移動させる。その後、θ1アーム52及びθ2アーム53を駆動し、柱61の中心から第2の側面61b方向へ分注ノズル54を移動させる。続いて、分注ノズル先端54bの高さが柱61の上面より低い位置に移動するようにシャフト51を駆動する。その後、θ1アーム52及びθ2アーム53を前記方向と逆方向に駆動させ、分注ノズル54が柱61の第2の側面61bに接触することにより出力される、接触検知器58からの接触検知信号を受けて、θ1アーム52及びθ2アーム53の駆動を停止する(ステップ104)。このときのアームの移動量、第2の側面61bと分注ノズル根本54aとの位置関係をデータ格納部42へ格納する(ステップ105)。この詳細についても後述する。
【0028】
制御部41は、データ格納部42に格納されている柱61の2つの側面に分注ノズルを接触させたときのアームの移動量と側面と分注ノズル根本との位置関係に基づいて、分注ノズルの変形に基づく位置ずれを補正する補正値を求める。この詳細についても後述する。求めた補正値を、データ格納部42に格納されている分注ノズル54の停止位置ごとの位置調整値に加算することにより、位置情報データを更新する(ステップ106)。分注機構が正しく動作するよう、柱61について既に説明したのと同様に、自動分析装置の据え付け時に、分注ノズル54の停止位置ごとに、製作時や組立て時の誤差を吸収するための位置調整値が実機で求められ、位置情報データとしてデータ格納部42に格納されている。
【0029】
まず、位置調整値に補正値を加算して分注ノズル54を移動させる場合に予め規定された分注ノズルの動作範囲を超えていないかどうかを判定する(ステップ107)。もし、自動分析装置の動作サイクルにおいて、目的の位置へ移動するために許容される制限時間内に移動できない場合には、動作範囲を超えていると判定する。移動不可能な場合(ステップ107でNO)は出力部46へエラーを出力し、ユーザに分注ノズルの異常を警告する(ステップ109)。
【0030】
移動可能な場合(ステップ107でYES)は、補正値があらかじめ実験によって確認されている分注精度に影響を与えない補正量の範囲以下であるかを判定する(ステップ108)。分注精度に影響を与える場合とは、例えば、分注ノズルの変形により吸引量、吐出量に影響を及ぼすような場合、分注ノズルの洗浄が適正に行えないような場合である。補正値が分注精度に影響を与える補正量に達している場合(ステップ108でNO)は出力部46へ分注・洗浄不能としてエラーを出力し、ユーザに分注ノズルの異常を警告する(ステップ109)。分注・洗浄可能な場合(ステップ108でYES)は出力部46に補正完了であることを出力し、ユーザにエラーなく補正が完了であることを伝える(ステップ110)。なお、ステップ107のチェックとステップ108のチェックの順序は任意であり、逆にしてもよいし、並行して行ってもよい。
【0031】
以下、実施例1における補正値の算出について説明する。
図5に、以下の説明で使用する座標系と各アームの初期位置及び寸法を示している。図に示すように、分注ノズル根本(θ
2アーム53への分注ノズル54の取り付け位置)54aを座標原点とし、θ
2アーム53の軸方向をX軸とする。また、X軸と直交する軸方向をY軸とする。一方、図に示すようにθ
1アーム52の回転軸を座標原点とし、柱61の第1の側面61aと平行で、θ
1アーム52とのなす角が鋭角である方向をX’ 軸とする。また、X’ 軸と直行する軸方向をY’ 軸とする。また、θ
1アーム52のアーム長をl
1とし、θ
2アーム53のアーム長をl
2とする。
【0032】
θ1アーム52及びθ2アーム53はそれぞれステッピングモータにより駆動される。このため、分注ノズル54を移動した後の各アームの角度は、駆動前のθ1アーム52及びθ2アーム53の初期角度と、当該初期角度に対する移動量(回転量)を与える各移動パルス数と、1回のパルスによりアームが回転する角度を示す移動角分解能とから求めることができる。
【0033】
図6Aに示すように、分注ノズル根本54aのX’ Y’ 平面内での座標位置(x’
p1,y’
p1)は、各アームの長さと各アームの角度とにより(数1)により求めることができる。
【0034】
【0035】
また、
図6Bには、分注ノズル先端54bのX’ Y’ 平面内での座標位置(x’
p2,y’
p2)を示す。座標位置(x’
p2,y’
p2)は、各アームの長さと各アームの角度に加え、分注ノズル54とθ
2アーム53とのなす角θと、分注ノズル根本54aと分注ノズル先端54bとの垂直方向から見た距離d(X’ Y’ 平面上に投影した分注ノズル根本54aと分注ノズル先端54bとの距離)とにより(数2)により求めることができる。
【0036】
【0037】
図7Aに、
図4に示すフローチャートのステップ102を実行した状態を示す。ステップ103において、制御部41は、θ
1アーム52のX’ Y’ 平面内でのX’ 軸とのなす角θ
1A、θ
2アーム53のX’ Y’ 平面内でのθ
1アーム52とのなす角θ
2A、及び分注ノズル根本54aと柱61の第1の側面61aとの距離d
Aをデータ格納部42に蓄積する。
図7Aに示すように、距離d
AはY’ 軸方向に沿った距離であり、第1の側面61aのY’ 座標がy’
0、分注ノズル根本54aのY’ 座標がy’
Aであれば、d
A=y’
0-y’
Aで与えられる。
【0038】
図7Bに、
図4に示すフローチャートのステップ104を実行した状態を示す。ステップ105において、制御部41は、θ
1アーム52のX’ Y’ 平面内でのX’ 軸とのなす角θ
1B、θ
2アーム53のX’ Y’ 平面内でのθ
1アーム52とのなす角θ
2B、及び分注ノズル根本54aと柱61の第2の側面61bとの距離d
Bをデータ格納部42に蓄積する。
図7Bに示すように、距離d
BはX’ 軸方向に沿った距離であり、第2の側面61bのX’ 座標がx’
0、分注ノズル根本54aのX’ 座標がx’
Bであれば、d
B=x’
B-x’
0で与えられる。
【0039】
ステップ106では、制御部41はデータ格納部42に蓄積した、角θ
1A、角θ
2A、距離d
A、角θ
1B、角θ
2B、距離d
Bを用いて補正値を算出する。
図7Cは、分注ノズル先端54bの座標位置(x,y)をXY平面上に示したものである。データ格納部42に蓄積した情報を用いて、分注ノズル根本54aの座標位置、第1の側面61a、第2の側面61bをX’ Y’ 平面からXY平面に座標変換することで
図7Cを得ることができる。ここで、分注ノズル先端54bは第1の側面61a及び第2の側面61b上に存在し、かつステップ103で計測したときとステップ105で計測したときとで、分注ノズル根本54aと分注ノズル先端54bとの位置関係は変化しないため、XY平面におけるノズル先端54bの座標位置(x,y)は、XY平面における第1の側面61aと第2の側面61bとの交点に他ならない。XY平面におけるノズル先端54bの座標位置(x,y)は(数3)により算出される。
【0040】
【0041】
XY平面におけるノズル先端54bの座標位置(x,y)は、(数4)により、分注ノズル54とθ
2アーム53とのなす角θ及び分注ノズル根本54aと分注ノズル先端54bとの距離d(
図6B参照)に変換できる。
【0042】
【0043】
制御部41は算出されたdとθに基づいて補正値を算出し、θ
1アーム52とθ
2アーム53を駆動することにより、分注ノズルの変形にかかわらず、分注ノズル先端54bを所望の位置に位置決めすることが可能になる。なお、算出されたdの値が分注ノズル54の設計値から大きく乖離している場合、
図4のフローチャートに示したように、出力部46よりアラームを出力し、ユーザに確認を促す。
【0044】
以上の通り、実施例1では分注機構が2つの回転駆動軸を備える場合において、新規のセンサや回路部品を追加することなく、分注ノズル54の先端を正確かつ短時間に所定位置に位置決めすることを可能にする。
【実施例2】
【0045】
実施例2では、分注機構は、分注ノズル54の水平移動を、1つの直線駆動軸と1つの回転駆動軸との組み合わせにより実現するものとする。実施例2においても、実施例1と同様に、分注ノズル54を柱61の2つの側面に接触させ、水平位置調整値の補正値を決定し、データ格納部42に格納する。実施例2の分注機構は、例えば
図1の試料分注機構13, 14として採用されているような分注機構であり、この例では鉛直方向と水平方向に移動可能なリニアステージに1つの回転駆動軸を有するアームが設けられている。
【0046】
図8は、実施例2の分注ノズルの位置決め方法のフローチャートである。本フローは、分注機構の駆動方法の違いに伴って補正値の算出方法が異なることを除けば、
図4のフローと同じである。
図4のフローと共通する処理内容については、重複する記載を省略する。
【0047】
制御部41はデータ格納部42に格納された位置情報データ(位置調整値)を受け付け、分注ノズル54を柱61の中心に水平移動させる。さらに、リニアステージ及びθアームを駆動し、柱61の中心から第1の側面61a方向へ分注ノズル54を移動させる。続いて、分注ノズル先端54bの高さが柱61の上面より低くなるようにθアームを移動させる。その後、リニアステージ及びθアームを前記方向と逆方向に駆動させ、分注ノズル54が柱61の第1の側面61aに接触することにより出力される、接触検知器58からの接触検知信号を受けて、リニアステージ及びθアームの駆動を停止する(ステップ202)。このときのリニアステージ及びアームの移動量、第1の側面61aと分注ノズル根本54aとの位置関係をデータ格納部42へ格納する(ステップ203)。この詳細については後述する。
【0048】
続いて、制御部41は、分注ノズル先端54bの高さが柱61上面より高くなるようにθアームを移動させた後、分注ノズル54を柱61の中心に水平移動させる。その後リニアステージ及びθアームを駆動し、柱61の中心から第2の側面61b方向へ分注ノズル54を移動させる。続いて、分注ノズル先端54bの高さが柱61の上面より低くなるようにθアームを移動させる。その後、リニアステージ及びθアームを前記方向と逆方向に駆動させ、分注ノズル54が柱61の第2の側面61bに接触することにより出力される、接触検知器58による接触検知信号を受けて、リニアステージ及びθアームの駆動を停止する(ステップ204)。このときのリニアステージ及びアームの移動量、第2の側面61bと分注ノズル根本54aとの位置関係をデータ格納部42へ格納する(ステップ205)。この詳細については後述する。
【0049】
ステップ206~ステップ210の処理は、補正値を求めるためのデータは
図4のフローとは異なるものの、処理内容は
図4のフローにおけるステップ106~ステップ110の処理と同じであるため、詳細な説明は省略する。
【0050】
以下、実施例2における補正値の算出について説明する。
図9に、以下の説明で使用する座標系とリニアステージ及びアームの初期位置及び寸法を示している。図に示すように分注ノズル根本(θアーム72への分注ノズル54の取り付け位置)54aを座標原点とし、θアーム72の軸方向をX軸とする。また、X軸と直交する軸方向をY軸とする。一方、図に示すようにリニアステージ71の可動方向をX’ 軸と一致させる。この例では、柱61は、その第1の側面61aが、リニアステージ71の水平方向についての可動方向と平行となるように配置されている。また、X’ 軸と直交する軸方向をY’ 軸とする。θアーム72のアーム長をlとする。
【0051】
分注ノズル54を移動した後のθアーム72の回転軸の位置は、初期位置(X’ 軸の原点)に対するリニアステージ71の移動量(例えばパルス数)で与えられる。また、θアーム72の角度は、駆動前のθアーム72の初期角度と、当該初期角度に対する移動量(回転量)を与える移動パルス数と移動角分解能とから求めることができる。
【0052】
図10Aに示すように、分注ノズル根本54aのX’ Y’ 平面内での座標位置(x’
p1,y’
p1)は、θアーム72の長さl、θアームの角度θ
21、及びθアーム72の回転軸のX’ 軸上の座標x’
G1により(数5)により求めることができる。
【0053】
【0054】
また、
図10Bには、分注ノズル先端54bのX’ Y’ 平面内での座標位置(x’
p2,y’
p2)を示す。座標位置(x’
p2,y’
p2)は、アームの長さ、アームの角度、アームの回転軸の位置に加え、分注ノズル54とθアーム72とのなす角θと、分注ノズル根本54aと分注ノズル先端54bとの垂直方向から見た距離d(X’ Y’ 平面上に投影した分注ノズル根本54aと分注ノズル先端54bとの距離)とにより(数6)により求めることができる。
【0055】
【0056】
図11Aに、
図8に示すフローチャートのステップ202を実行した状態を示す。ステップ203において、制御部41は、X’ Y’ 平面内でのθアーム72の回転軸の座標x’
A、θアーム72のX’ 軸とのなす角θ
A、及びノズル根本54aと柱61の第1の側面61aとの距離d
Aをデータ格納部42に蓄積する。
図11Aに示すように、距離d
AはY’ 軸方向に沿った距離であり、第1の側面61aのY’ 座標がy’
0、分注ノズル根本54aのY’ 座標がy’
Aであれば、d
A=y’
0-y’
Aで与えられる。
【0057】
図11Bに、
図8に示すフローチャートのステップ204を実行した状態を示す。ステップ205において、制御部41は、X’ Y’ 平面内でのθアーム72の回転軸の座標x’
B、θアーム72のX’ 軸とのなす角θ
B、及びノズル根本54aと柱61の第2の側面61bとの距離d
Bをデータ格納部42に蓄積する。
図11Bに示すように、距離d
BはX’ 軸方向に沿った距離であり、第2の側面61bのX’ 座標がx’
0、分注ノズル根本54aのX’ 座標がx’
Bであれば、d
B=x’
0-x’
Bで与えられる。
【0058】
ステップ206では、制御部41はデータ格納部42に蓄積した、座標x’
A、角θ
A、距離d
A、座標x’
B、角θ
B、距離d
Bを用いて補正値を算出する。
図11Cは、分注ノズル先端54bの座標位置(x,y)をXY平面上に示したものである。データ格納部42に蓄積した情報を用いて、分注ノズル根本54aの座標位置、第1の側面61a、第2の側面61bをX’ Y’ 平面からXY平面に座標変換することで
図11Cを得ることができる。実施例1と同様にして、XY平面におけるノズル先端54bの座標位置(x,y)は(数7)により算出される。
【0059】
【0060】
XY平面におけるノズル先端54bの座標位置(x,y)は、実施例1と同様に、(数4)により、分注ノズル54とθアーム72とのなす角θ及び分注ノズル根本54aと分注ノズル先端54bとの距離d(
図10B参照)に変換できる。
【0061】
以上の通り、実施例2では分注機構が1つの直線駆動軸と1つの回転駆動軸を備える場合において、新規のセンサや回路部品を追加することなく、分注ノズル54の先端を正確かつ短時間に所定位置に位置決めすることを可能にする。
【実施例3】
【0062】
実施例3では、分注機構は、分注ノズル54の水平移動を1つの回転駆動軸により実現するものとする。実施例3においても、実施例1、2と同様に、分注ノズル54を柱61の2つの側面に接触させ、このときのアームの移動量に基づき、データ格納部42に格納される水平位置調整値の補正値を決定する。実施例3の分注機構は、例えば
図2の分注機構において、シャフト51上の2つの回転駆動軸を有するアームを1つの回転駆動軸を有するアームに変更したものに相当する。
【0063】
図12は、実施例3の分注ノズルの位置決め方法の概要を示すフローチャートである。本フローは、分注機構の駆動方法の違いに伴って補正値の算出方法が異なることを除けば、
図4または
図8のフローと同じである。
図4または
図8のフローと共通する処理内容については、重複する記載を省略する。
【0064】
制御部41はデータ格納部42に格納された位置情報データ(位置調整値)を受け付け、分注ノズル54を柱61の中心に水平移動させる。さらに、θアームを駆動し、柱61の中心から第1の側面61a方向へ分注ノズル54を移動させる。続いて、分注ノズル先端54bの高さが柱61の上面より低い位置に移動するようにシャフト51を駆動する。その後、θアームを前記方向と逆方向に駆動させ、分注ノズル54が柱61の第1の側面61aに接触することにより出力される、接触検知器58からの接触検知信号を受けて、θアームの駆動を停止する(ステップ302)。このときのアームの移動量、第1の側面61aと分注ノズル根本54aとの位置関係をデータ格納部42へ格納する(ステップ303)。この詳細については後述する。
【0065】
続いて、制御部41は、分注ノズル先端54bの高さが柱61上面より高い位置に移動するようにシャフト51を駆動した後、分注ノズル54を柱61の中心に水平移動させる。その後θアームを駆動し、柱61の中心から第2の側面61b方向へ分注ノズル54を移動させる。続いて、分注ノズル先端54bの高さが柱61の上面より低い位置に移動するようにシャフト51を駆動する。その後、θアームを前記方向と逆方向に駆動させ、分注ノズル54が柱61の第2の側面61bに接触することにより出力される、接触検知器58による接触検知信号を受けて、θアームの駆動を停止する(ステップ304)。このときのアームの移動量、第2の側面61bと分注ノズル根本54aとの位置関係をデータ格納部42へ格納する(ステップ305)。この詳細については後述する。
【0066】
ステップ306~ステップ310の処理は、補正値を求めるためのデータは
図4または
図8のフローとは異なるものの、処理内容は
図4のフローにおけるステップ106~ステップ110の処理、
図8のフローにおけるステップ206~ステップ210の処理と同じであるため、詳細な説明は省略する。
【0067】
以下、実施例3における補正値の算出について説明する。
図13に、以下の説明で使用する座標系とアームの初期位置及び寸法を示している。図に示すように分注ノズル根本(θアーム81への分注ノズル54の取り付け位置)54aを座標原点とし、θアーム81の軸方向をX軸とする。また、X軸と直交する軸方向をY軸とする。一方、図に示すようにθアーム81の回転軸を座標原点とし、柱61の第1の側面61aと平行で、θアーム81とのなす角が鋭角である方向をX’ 軸とする。また、X’ 軸と直行する軸方向をY’ 軸とする。また、θアーム81のアーム長をl
0とする。θアーム81の角度は、駆動前のθアーム81の初期角度と、当該初期角度に対する移動量(回転量)を与える移動パルス数と移動角分解能とから求めることができる。
【0068】
図14Aに示すように、分注ノズル根本54aのX’ Y’ 平面内での座標位置(x’
p1,y’
p1)は、θアーム81の長さl
0、θアームの角度θ
21により(数8)により求めることができる。
【0069】
【0070】
また、
図14Bには、分注ノズル先端54bのX’ Y’ 平面内での座標位置(x’
p2,y’
p2)を示す。座標位置(x’
p2,y’
p2)は、アームの長さと角度に加え、分注ノズル54とθアーム81とのなす角θと、分注ノズル根本54aと分注ノズル先端54bとの垂直方向から見た距離d(X’ Y’ 平面上に投影した分注ノズル根本54aと分注ノズル先端54bとの距離)とにより(数9)により求めることができる。
【0071】
【0072】
図15Aに、
図12に示すフローチャートのステップ302を実行した状態を示す。ステップ303において、制御部41は、X’ Y’ 平面内でのθアーム81のX’ 軸とのなす角θ
A、及びノズル根本54aと柱61の第1の側面61aとの距離d
Aをデータ格納部42に蓄積する。
図15Aに示すように、距離d
AはY’ 軸方向に沿った距離であり、第1の側面61aのY’ 座標がy’
0、分注ノズル根本54aのY’ 座標がy’
Aであれば、d
A=y’
0-y’
Aで与えられる。
【0073】
図15Bに、
図12に示すフローチャートのステップ304を実行した状態を示す。ステップ305において、制御部41は、X’ Y’ 平面内でのθアーム81のX’ 軸とのなす角θ
B、及びノズル根本54aと柱61の第2の側面61bとの距離d
Bをデータ格納部42に蓄積する。
図15Bに示すように、距離d
BはX’ 軸方向に沿った距離であり、第2の側面61bのX’ 座標がx’
0、分注ノズル根本54aのX’ 座標がx’
Bであれば、d
B=x’
B-x’
0で与えられる。
【0074】
ステップ306では、制御部41はデータ格納部42に蓄積した、角θ
A、距離d
A、角θ
B、距離d
Bを用いて補正値を算出する。
図15Cは、分注ノズル先端54bの座標位置(x,y)をXY平面上に示したものである。データ格納部42に蓄積した情報を用いて、第1の側面61a、第2の側面61bをX’ Y’ 平面からXY平面に座標変換することで
図15Cを得ることができる。実施例1または実施例2と同様にして、XY平面におけるノズル先端54bの座標位置(x,y)は(数7)により算出される。
【0075】
XY平面におけるノズル先端54bの座標位置(x,y)は、実施例1または実施例2と同様に、(数4)により、分注ノズル54とθアーム81とのなす角θ及び分注ノズル根本54aと分注ノズル先端54bとの距離d(
図14B参照)に変換できる。
【0076】
以上の通り、実施例3では分注機構が1つの回転駆動軸を備える場合において、新規のセンサや回路部品を追加することなく、分注ノズル54の先端を正確かつ短時間に所定位置に位置決めすることを可能にする。
【0077】
以上、本発明を3つの実施例を用いて詳細に説明した。以上の実施例では、1つの分注ノズル54を1つの柱状治具61に接触させる例で説明したが、
図16A及び
図16Bに示すように、複数の分注機構に対して1つの柱状治具61を共有させ、水平位置調整値の補正値を決定するようにしてもよい。
図16Aには2つの分注機構が柱61の第1の側面61aに分注ノズルを接触させている状態を、
図16Bには2つの分注機構が柱61の第2の側面61bに分注ノズルを接触させている状態を示している。ここでは実施例1の分注機構の場合を示しているが、実施例2または実施例3の場合も同様である。
【0078】
図17に、実施例1に示した2つの回転駆動軸を有する分注機構である場合に、分注ノズルが停止する各位置に移動するために必要な各アームの移動量(回転角)について、補正前の移動量401と補正後の移動量402を示したものである。本実施例によれば、分注ノズルの停止位置は、例えばノズル洗浄位置、試薬吸引位置、試薬吐出位置等複数存在するが、柱61の2箇所に接触させて補正量を算出することによって、これら複数の分注ノズルの停止位置に対する補正量を1回で求めることができる。
図17の表に示した停止位置は一例であって、これらに限られるものではない。ここでは実施例1の分注機構の場合を示しているが、実施例2または実施例3の場合も同様である。
【0079】
本発明は以上の実施例に限定されるものでなく、様々な変形例が含まれる。例えば、柱状治具61の平面形状は矩形でなくともよい。X’ Y’ 平面において位置が既知である固定された直線が複数あればよい。したがって、分注ノズルを接触させる柱状治具の2つの側面は互いに直角をなしている必要はないし、互いに隣接する側面である必要もない。
【0080】
このように上述した実施例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。また、ある実施例の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成を追加、削除又は置換することも可能である。
【0081】
また、上述した各構成、機能、処理部は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路その他のハードウェアとして実現してもよい。また、上述した各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することにより実現してもよい。すなわち、ソフトウェアとして実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリやハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置、ICカード、SDカード、DVD等の記憶媒体に格納することができる。
【0082】
また、制御線や情報線は、説明上必要と考えられるものを示すものであり、製品上必要な全ての制御線や情報線を表すものではない。実際にはほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えてよい。
【符号の説明】
【0083】
1…反応ディスク、2…反応容器、3…洗浄機構、4…分光光度計、5, 6…攪拌機構、7, 8, 9, 10…試薬分注機構、7a, 8a, 9a, 10a…試薬ノズル、11…試薬ディスク、12…試薬ボトル、13, 14…試料分注機構、13a, 14a…試料ノズル、15, 16, 30, 31, 32, 33…洗浄槽、17…試料容器、18…ラック(搬送部材)、19…試料搬送機構、20…試薬用ポンプ、21…試料用ポンプ、22…洗浄用ポンプ、41…制御部、42…データ格納部、43…入力部、44…測定部、45…解析部、46…出力部、51…シャフト、52…θ1アーム、53…θ2アーム、54…分注ノズル、54a…分注ノズル根本、54b…分注ノズル先端、55…シリンジ、56…チューブ、57…プランジャ、58…接触検知器、61…柱状治具(柱)、61a…第1の側面、61b…第2の側面、71…リニアステージ、72, 81…θアーム。