(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-07
(45)【発行日】2023-07-18
(54)【発明の名称】成形体の製造のための近赤外反射体を含む焼結粉末
(51)【国際特許分類】
B29C 64/153 20170101AFI20230710BHJP
B29C 64/264 20170101ALI20230710BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20230710BHJP
【FI】
B29C64/153
B29C64/264
B33Y10/00
(21)【出願番号】P 2020519779
(86)(22)【出願日】2018-10-01
(86)【国際出願番号】 EP2018076684
(87)【国際公開番号】W WO2019068658
(87)【国際公開日】2019-04-11
【審査請求日】2021-09-30
(32)【優先日】2017-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】ガブリエル,クラウス
(72)【発明者】
【氏名】マイアー,トマス
(72)【発明者】
【氏名】ヘルレ,ナタリー ベアトリス ジャニン
(72)【発明者】
【氏名】フェアベレン,レンダー
(72)【発明者】
【氏名】ノアク,カラ アン
【審査官】坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-524640(JP,A)
【文献】特表2016-505409(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/10,64/153,64/20,64/264,
64/268,64/30,64/40
B33Y 10/00,30/00,50/00,70/00,80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形体を製造するための方法であって、
i)以下の成分:
(A)少なくとも1種の半結晶性ポリアミド、
(B)少なくとも1種の非晶質ポリアミド、
(C)少なくとも1種の近赤外反射体
を含む焼結粉末(SP)の層を用意する工程と、
ii)工程i)において用意した焼結粉末(SP)の層を曝露する工程と
を含み、前記焼結粉末(SP)が、それぞれの場合に前記焼結粉末(SP)の総質量に対して、50質量%から94.95質量%の範囲の成分(A)、5質量%から40質量%の範囲の成分(B)、および0.05質量%から10質量%の範囲の成分(C)を含む、方法。
【請求項2】
成分(C)が、780nmから2.5μmの範囲の波長を有する放射線を少なくとも60%まで反射する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
成分(C)が、近赤外反射顔料からなる群から選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
工程ii)において曝露する工程が、レーザーおよび赤外線源からなる群から選択される放射線源で行われる、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
成分(A)が、PA4、PA6、PA7、PA8、PA9、PA11、PA12、PA46、PA66、PA69、PA6.10、PA6.12、PA6.13、PA6/6.36、PA12.12、PA13.13、PA6T、PA6T/6、PAMXD6、PA6/66、PA6/12およびこれらのコポリアミドからなる群から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
成分(B)が、PA6I/6T、PA6IおよびPA6/3Tからなる群から選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
工程i)と工程ii)の間に、
i-1)工程i)において用意した焼結粉末(SP)の層の少なくとも一部に、少なくとも1種のIR吸収インクを適用する工程
が実施される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記焼結粉末(SP)が、前記焼結粉末(SP)の総質量に対して0.1質量%から10質量%の範囲の、抗核形成剤、安定剤および末端基官能化剤からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤をさらに含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記焼結粉末(SP)における成分(C)が、成分(A)および/または成分(B)でコーティングされている、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
焼結粉末(SP)を製造するための方法であって、
a)以下の成分:
(A)少なくとも1種の半結晶性ポリアミド、
(B)少なくとも1種の非晶質ポリアミド、
(C)少なくとも1種の近赤外反射体
を混合する工程と、
b)工程a)において得られた混合物を粉砕して、前記焼結粉末(SP)を得る工程と
を含み、前記焼結粉末(SP)が、それぞれの場合に前記焼結粉末(SP)の総質量に対して、50質量%から94.95質量%の範囲の成分(A)、5質量%から40質量%の範囲の成分(B)、および0.05質量%から10質量%の範囲の成分(C)を含む、方法。
【請求項11】
それぞれの場合に前記焼結粉末(SP)の総質量に対して、50質量%から94.95質量%の範囲の成分(A)、5質量%から40質量%の範囲の成分(B)、および0.05質量%から10質量%の範囲の成分(C)を含む、請求項10に記載の方法により
得れた焼結粉末(SP)。
【請求項12】
以下の成分:
(A)少なくとも1種の半結晶性ポリアミド、
(B)少なくとも1種の非晶質ポリアミド、
(C)少なくとも1種の近赤外反射体
を含む焼結粉末(SP)において、
前記焼結粉末(SP)を曝露することにより前記焼結粉末(SP)から成形体を製造する際に反りを減少させるために、近赤外反射体を使用する方法。
【請求項13】
以下の成分:
(A)少なくとも1種の半結晶性ポリアミド、
(B)少なくとも1種の非晶質ポリアミド、
(C)少なくとも1種の近赤外反射体
を含む焼結粉末(SP)を、焼結プロセスに使用する方法であって、前記焼結粉末(SP)が、それぞれの場合に前記焼結粉末(SP)の総質量に対して、50質量%から94.95質量%の範囲の成分(A)、5質量%から40質量%の範囲の成分(B)、および0.05質量%から10質量%の範囲の成分(C)を含む、方法。
【請求項14】
請求項1から9のいずれか一項に記載の方法により
得られた成形体であって、前記焼結粉末(SP)が、それぞれの場合に前記焼結粉末(SP)の総質量に対して、50質量%から94.95質量%の範囲の成分(A)、5質量%から40質量%の範囲の成分(B)、および0.05質量%から10質量%の範囲の成分(C)を含む、成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形体を製造するための方法であって、工程i)において、とりわけ少なくとも1種の近赤外反射体を含む焼結粉末(SP)の層を用意し、工程ii)において、工程i)で用意した層を曝露する、方法に関する。本発明は、焼結粉末(SP)を製造するための方法、およびこの方法により得ることができる焼結粉末(SP)、および焼結粉末(SP)において近赤外反射体を使用する方法にさらに関する。本発明は、本発明の方法により得ることができる成形体にも関する。
【背景技術】
【0002】
プロトタイプの迅速な提供は、ごく最近よく取り組まれている課題である。このいわゆる「ラピッドプロトタイピング」に特に好適なプロセスの1つは、選択的レーザー焼結(SLS)である。これは、チャンバ内のプラスチック粉末にレーザービームを選択的に照射することを伴う。粉末が溶融し、溶融した粒子が合体し、再凝固する。プラスチック粉末およびその後のレーザーを用いた照射を繰り返し適用することにより、3次元成形体のモデリングが可能になる。
【0003】
粉状ポリマーから成形体を製造するための、選択的にレーザー焼結する方法は、米国特許第6,136,948号および国際公開第96/06881号の特許明細書に詳細に記載されている。
【0004】
選択的レーザー焼結は、多くの場合、比較的多数の成形体を製造するには時間がかかりすぎるので、高速焼結(HSS)またはHPの「マルチジェットフュージョン技術」(MJF)を使用して、比較的大きい体積の成形体を製造することが可能である。焼結される成分断面に赤外線吸収インクを噴霧適用し、続いて赤外線源に曝露することによる高速焼結では、選択的レーザー焼結と比較して、より速い加工速度が達成される。
【0005】
しかし、高速焼結の欠点は、粉末を、焼結される成形体断面の外側で焼結してはならず、くっつけてもならないことである。したがって、製造する際にできるだけ低い構成空間温度を使用することが必要である。この影響は、多くの場合、成形体の溶融が、焼結される成形体断面において良好ではないこと、および/または生じた成分の反りが大きいことである。
【0006】
多くの場合、成分の反りは選択的レーザー焼結でも存在する。さらなる成分が焼結粉末ならびに純粋ポリアミド、または別の純粋半結晶性ポリマーとして存在する場合、焼結粉末の焼結ウィンドウは、多くの場合、選択的レーザー焼結作業で減少する。焼結ウィンドウの減少は、多くの場合、選択的レーザー焼結による製造中に成形体の反りを引き起こす。この反りは、事実上、成形体の使用またはさらなる加工を妨げる。成形体の製造中でさえ、反りは、さらなる層の適用を不可能にし、したがって製造プロセスを止めなければならないほど重度になることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許第6,136,948号
【文献】国際公開第96/06881号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、従来技術に記載されている方法の前述の欠点を、例えあったとしても、より低い程度にしか有さない成形体を製造するための方法を提供することである。この方法は、さらに、簡単かつ安価な手段で行うことが可能なはずである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、成形体を製造するための方法であって、
i)以下の成分:
(A)少なくとも1種の半結晶性ポリアミド、
(B)少なくとも1種の非晶質ポリアミド、
(C)少なくとも1種の近赤外反射体
を含む焼結粉末(SP)の層を用意する工程と、
ii)工程i)において用意した焼結粉末(SP)の層を曝露する工程と
を含む、方法により達成される。
【0010】
本発明の方法では、とりわけ本発明の方法が、高速焼結プロセスまたはマルチジェットフュージョンプロセスである場合、従来技術に記載されているプロセスより高い構成空間温度を使用することが可能であることが意外にも見出された。結果として、従来技術に記載されているプロセスと比較して、焼結される断面における成分の溶融はより良好であり、反りは明瞭に減少した。さらに、本発明に従って使用される焼結粉末(SP)は、良好な熱酸化安定性を有し、これにより、焼結粉末(SP)の再使用性が良好になる、すなわち構成空間からのリサイクル性が良好になる。
【0011】
より詳細には、本発明の方法は、本発明に従って使用される焼結粉末(SP)が、広い焼結ウィンドウを有するので、選択的レーザー焼結プロセスとしても、良好な適合性がある。
【0012】
さらに、本発明の方法により、良好な機械的性質、とりわけ高い弾性率および良好な引張強さを有する成形体が得られる。
【0013】
少なくとも1種の近赤外反射体が、着色顔料または色素である場合、製造後に粉砕され、かつ/または研磨されたときでさえも色を保つ、均質に着色された成形体も得られる。
【0014】
少なくとも1種の近赤外反射体が、黒色顔料である場合、本発明の方法で、特に濃い黒色の成形体が得られる。この種の濃い黒色は、多くの場合、従来技術に記載されている焼結粉末(SP)を用いて、できたとしても辛うじて達成可能なだけにすぎない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、加熱運転(H)および冷却運転(C)を含むDSCダイアグラムを例として示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の方法を、以下に詳細に記載する。
【0017】
工程i)
工程i)において、焼結粉末(SP)の層を用意する。
【0018】
焼結粉末(SP)の層は、当業者に公知であるいずれかの方法により用意する。典型的には、焼結粉末(SP)の層は、構成プラットフォームにおける構成空間において用意する。構成空間温度は、任意に制御してよい。
【0019】
構成空間は、例えば、焼結粉末(SP)の融点(TM)を下回る、1から100K(ケルビン)、好ましくは5から50K、とりわけ好ましくは10から25Kの温度を有する。
【0020】
構成空間は、例えば、150から250℃の範囲、好ましくは160から230℃の範囲、とりわけ好ましくは170から210℃の範囲の温度を有する。
【0021】
焼結粉末(SP)の層は、当業者に公知であるいずれかの方法により用意する。例えば、焼結粉末(SP)の層は、構成空間において達成される厚さで、コーティングバーまたはロールによって用意する。
【0022】
工程i)において用意した焼結粉末(SP)の層の厚さは、所望通りにできる。例えば、これは、50から300μmの範囲、好ましくは70から200μmの範囲、とりわけ好ましくは90から150μmの範囲である。
【0023】
焼結粉末(SP)
本発明によれば、焼結粉末(SP)は、成分(A)として少なくとも1種の半結晶性ポリアミド、成分(B)として少なくとも1種の非晶質ポリアミド、および成分(C)として少なくとも1種の近赤外反射体を含む。
【0024】
本発明に関して、用語「成分(A)」および「少なくとも1種の半結晶性ポリアミド」は、同義で使用され、したがって同じ意味を有する。
【0025】
同じことが、用語「成分(B)」および「少なくとも1種の非晶質ポリアミド」にも当てはまる。これらの用語は、本発明に関して、やはり同義で使用され、したがって同じ意味を有する。
【0026】
同じように、用語「成分(C)」および「少なくとも1種の近赤外反射体」も、本発明に関して、同義で使用され、同じ意味を有する。
【0027】
焼結粉末(SP)は、成分(A)、(B)および(C)をある望ましい量で含み得る。
【0028】
例えば、焼結粉末(SP)は、それぞれの場合に成分(A)、(B)および(C)の質量パーセントの総計に対して、好ましくは焼結粉末(SP)の総質量に対して、50質量%から94.95質量%の範囲の成分(A)、5質量%から40質量%の範囲の成分(B)、および0.05質量%から10質量%の範囲の成分(C)を含む。
【0029】
好ましくは、焼結粉末(SP)は、それぞれの場合に成分(A)、(B)および(C)の質量パーセントの総計に対して、好ましくは焼結粉末(SP)の総質量に対して、60質量%から94.9質量%の範囲の成分(A)、5質量%から30質量%の範囲の成分(B)、および0.1質量%から8質量%の範囲の成分(C)を含む。
【0030】
最も好ましくは、焼結粉末(SP)は、それぞれの場合に成分(A)、(B)および(C)の質量パーセントの総計に対して、好ましくは焼結粉末(SP)の総質量に対して70質量%から91.9質量%の範囲の成分(A)、8質量%から25質量%の範囲の成分(B)および、0.1質量%から5質量%の範囲の成分(C)を含む。
【0031】
したがって、本発明は、焼結粉末(SP)が、それぞれの場合に焼結粉末(SP)の総質量に対して、50質量%から94.95質量%の範囲の成分(A)、5質量%から40質量%の範囲の成分(B)、および0.05質量%から10質量%の範囲の成分(C)を含む、方法も提供する。
【0032】
焼結粉末(SP)は、少なくとも1種の添加剤をさらに含み得る。例えば、少なくとも1種の添加剤は、抗核形成剤、安定剤、流動促進剤および末端基官能化剤からなる群から選択される。
【0033】
好適な抗核形成剤の例は、塩化リチウムである。
【0034】
好適な安定剤は、例えば、フェノール、ホスファイトおよび銅安定剤である。
【0035】
好適な末端基官能化剤は、例えば、テレフタル酸、アジピン酸およびプロピオン酸である。
【0036】
好適な流動促進剤は、例えば、シリカまたはアルミナである。好ましい流動促進剤は、アルミナである。好適なアルミナの例は、EvonikのAeroxide(登録商標)Alu Cである。
【0037】
例えば、焼結粉末(SP)は、それぞれの場合に焼結粉末(SP)の総質量に対して、0.1質量%から10質量%の範囲、好ましくは0.2質量%から5質量%の範囲、とりわけ好ましくは0.3質量%から2.5質量%の範囲の、少なくとも1種の添加剤を含む。
【0038】
したがって、本発明は、焼結粉末(SP)が、焼結粉末(SP)の総質量に対して0.1質量%から10質量%の範囲の、抗核形成剤、安定剤および末端基官能化剤からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤をさらに含む、方法も提供する。
【0039】
好ましくは、焼結粉末(SP)は、少なくとも1種の強化剤もさらに含む。
【0040】
例えば、焼結粉末(SP)は、それぞれの場合に焼結粉末(SP)の総質量に対して、5質量%から60質量%の範囲、好ましくは10質量%から50質量%の範囲、とりわけ好ましくは15質量%から40質量%の範囲の、少なくとも1種の強化剤を含む。
【0041】
成分(A)、(B)および(C)、ならびに任意に少なくとも1種の添加剤、ならびに少なくとも1種の強化剤の質量パーセントは、典型的には、100質量%まで添加する。
【0042】
本発明に関して、「少なくとも1種の強化剤」は、ちょうど1種の強化剤、または2種以上の強化剤の混合物を意味する。
【0043】
本発明に関して、強化剤は、本発明の方法により製造された成形体の機械的性質を、強化剤を含まない成形体と比較して、改善する材料を意味すると理解される。
【0044】
強化剤は、そのような点から当業者に公知である。例えば、少なくとも1種の強化剤は、球形態、小板形態または繊維形態であり得る。
【0045】
好ましくは、少なくとも1種の強化剤は、小板形態または繊維形態である。
【0046】
「繊維状強化剤」は、繊維状強化剤の長さ対繊維状強化剤の直径の比が、2:1から40:1の範囲、好ましくは3:1から30:1の範囲、とりわけ好ましくは5:1から20:1の範囲である強化剤を意味すると理解され、繊維状強化剤の長さおよび繊維状強化剤の直径は、灰化後の試料に対する画像評価での顕微鏡法により決定され、この評価は、灰化後の繊維状強化剤少なくとも70000部を用いる。
【0047】
繊維状強化剤の長さは、この場合、典型的には5から1000μmの範囲、好ましくは10から600μmの範囲、とりわけ好ましくは20から500μmの範囲であり、灰化した後の画像評価による顕微鏡法によって決定される。
【0048】
直径は、この場合、例えば、1から30μmの範囲、好ましくは2から20μmの範囲、とりわけ好ましくは5から15μmの範囲であり、灰化した後の画像評価による顕微鏡法によって決定される。
【0049】
さらなる好ましい実施形態では、少なくとも1種の強化剤は、小板形態である。本発明に関して、「小板形態で」は、少なくとも1種の強化剤の粒子が、灰化した後の画像評価による顕微鏡法によって決定して、4:1から10:1の範囲の直径対厚さの比を有することを意味すると理解される。
【0050】
好適な強化剤は、当業者に公知であり、例えば、カーボンナノチューブ、炭素繊維、ホウ素繊維、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカ繊維、セラミック繊維、玄武岩繊維、アルミノシリケート、アラミド繊維およびポリエステル繊維からなる群から選択される。
【0051】
好ましくは、少なくとも1種の強化剤は、アルミノシリケート、ガラス繊維および炭素繊維からなる群から選択される。
【0052】
より好ましくは、少なくとも1種の強化剤は、ガラス繊維および炭素繊維からなる群から選択される。これらの強化剤は、さらにアミノシラン官能化されていてよい。
【0053】
好適なシリカ繊維は、例えば珪灰石である。
【0054】
好適なアルミノシリケートは、そのような点から当業者に公知である。アルミノシリケートは、Al2O3およびSiO2を含む化合物を指す。構造的な観点では、アルミノシリケート間の共通因子は、ケイ素原子が、酸素原子により四面体配位され、アルミニウム原子は、酸素原子により八面体配位されることである。アルミノシリケートは、さらなる元素を含み得る。
【0055】
好ましいアルミノシリケートは、シート状シリケートである。特に好ましいアルミノシリケートは、か焼したアルミノシリケート、とりわけ好ましくはか焼したシート状シリケートである。アルミノシリケートは、さらにアミノシラン官能化されていてよい。
【0056】
少なくとも1種の強化剤がアルミノシリケートである場合、アルミノシリケートは、いかなる形態でも使用できる。例えば、これは、純粋アルミノシリケートの形態で使用できるが、アルミノシリケートを、無機形態で使用することもやはり可能である。好ましくは、アルミノシリケートは、無機形態で使用される。好適なアルミノシリケートは、例えば、長石、ゼオライト、方ソーダ石、珪線石、紅柱石およびカオリンである。カオリンは、好ましいアルミノシリケートである。
【0057】
したがって、本発明は、焼結粉末(SP)が、少なくとも1種の強化剤としてカオリンをさらに含む、方法も提供する。
【0058】
カオリンは、粘板岩の1種であり、本質的に無機カオリナイトを含む。カオリナイトの実験式は、Al2[(OH)4/Si2O5]である。カオリナイトは、シート状シリケートである。カオリナイトと同様に、カオリンは、典型的には、さらなる化合物、例えば二酸化チタン、酸化ナトリウムおよび酸化鉄も含む。本発明によれば好ましいカオリンは、カオリンの総質量に対して、少なくとも98質量%のカオリナイトを含む。
【0059】
焼結粉末(SP)は、粒子を含む。これらの粒子は、例えば、10から250μmの範囲、好ましくは15から200μmの範囲、より好ましくは20から120μmの範囲、とりわけ好ましくは20から110μmの範囲の大きさを有する。
【0060】
本発明の焼結粉末(SP)は、例えば、
10から60μmの範囲のD10、
25から90μmの範囲のD50、および
50から150μmの範囲のD90を有する。
【0061】
好ましくは、本発明の焼結粉末(SP)は、
20から50μmの範囲のD10、
40から80μmの範囲のD50、および
80から125μmの範囲のD90を有する。
【0062】
したがって、本発明は、焼結粉末(SP)が、
10から60μmの範囲のD10、
25から90μmの範囲のD50、および
50から150μmの範囲のD90を有する、方法も提供する。
【0063】
本発明に関して、「D10」は、粒子の合計体積に対して10体積%の粒子が、D10より小さい、またはそれに等しい粒径、および、粒子の合計体積に対して90体積%の粒子が、D10より大きい粒径を意味すると理解される。同様に、「D50」は、粒子の合計体積に対して50体積%の粒子が、D50より小さい、またはそれに等しい粒径、および、粒子の合計体積に対して50体積%の粒子が、D50より大きい粒径を意味すると理解される。同じように、「D90」は、粒子の合計体積に対して90体積%の粒子が、D90より小さい、またはそれに等しい粒径、および、粒子の合計体積に対して10体積%の粒子が、D90より大きい粒径を意味すると理解される。
【0064】
粒径を決定するために、焼結粉末(SP)を乾燥状態で、圧縮空気を使用して、または溶媒、例えば水またはエタノール中で懸濁し、この懸濁液を分析する。D10、D50およびD90値は、Malvern Mastersizer 3000を使用したレーザー回折により決定される。評価は、Fraunhofer回折による。
【0065】
焼結粉末(SP)は、典型的には、160から280℃の範囲の溶融温度(TM)を有する。好ましくは、焼結粉末(SP)の溶融温度(TM)は、170から265℃の範囲、とりわけ好ましくは175から245℃の範囲である。
【0066】
したがって、本発明は、焼結粉末(SP)が、160から280℃の範囲の溶融温度(TM)を有する、方法も提供する。
【0067】
溶融温度(T
M)は、本発明に関して、示差走査熱量測定(DSC)によって決定される。典型的には、加熱運転(H)および冷却運転(K)が、それぞれ、20K/minの加熱速度/冷却速度にて測定される。これにより、例として
図1に示されるDSCダイアグラムが得られる。このとき、溶融温度(T
M)は、DSCダイアグラムの加熱運転(H)の溶融ピークが最大値を示す温度を意味すると理解される。
【0068】
焼結粉末(SP)は、典型的には、120から250℃の範囲の結晶化温度(TC)も有する。好ましくは、焼結粉末(SP)の結晶化温度(TC)は、130から240℃の範囲、とりわけ好ましくは140から235℃の範囲である。
【0069】
したがって、本発明は、焼結粉末(SP)が、120から250℃の範囲の結晶化温度(TC)を有する、方法も提供する。
【0070】
結晶化温度(T
C)は、本発明に関して、示差走査熱量測定(DSC)によって決定される。これは、典型的には、加熱運転(H)および冷却運転(K)を、それぞれ20K/minの加熱速度/冷却速度にて測定することを伴う。これにより、例として
図1に示されるDSCダイアグラムが得られる。このとき、結晶化温度(T
C)は、DSC曲線の結晶化ピークの最小値における温度である。
【0071】
焼結粉末(SP)は、典型的には、焼結ウィンドウ(WSP)も有する。焼結ウィンドウ(WSP)は、以下に記載するように、溶融開始温度(TM
開始)と結晶化開始温度(TC
開始)との間の差である。溶融開始温度(TM
開始)および結晶化開始温度(TC
開始)は、以下に記載するように決定される。
【0072】
焼結粉末(SP)の焼結ウィンドウ(WSP)は、例えば、10から40K(ケルビン)の範囲、より好ましくは15から35Kの範囲、とりわけ好ましくは18から30Kの範囲である。
【0073】
焼結粉末(SP)は、好ましくは、近赤外領域内の波長を有する放射線を反射する。近赤外領域の波長は、典型的には、780nmから2.5μmの範囲である。
【0074】
焼結粉末(SP)は、好ましくは、780nmから2.5μmの範囲の波長を有する放射線を、20%から95%まで、より好ましくは25%から93%まで、とりわけ好ましくは30%から91%まで反射する。
【0075】
焼結粉末(SP)の反射は、150mmウルブリヒト球を有するPerkinElmer UV/VIS/NIR Lambda 950分光計で決定される。使用される標準は、LabsphereのSpectralon白色標準である。
【0076】
焼結粉末(SP)は、当業者に公知のいかなる方法でも製造できる。例えば、成分(A)、(B)および(C)、ならびに任意に少なくとも1種の添加剤、ならびに少なくとも1種の強化剤は、互いに粉砕してよい。
【0077】
粉砕は、当業者に公知のいかなる方法によっても実施でき、例えば、成分(A)、(B)および(C)、ならびに任意に少なくとも1種の添加剤、ならびに少なくとも1種の強化剤は、ミル中に導入され、そこで粉砕される。
【0078】
好適なミルは、当業者に公知のミルすべて、例えば分級ミル、対向ジェットミル、ハンマーミル、ボールミル、バイブレーターミルまたはローターミルを含む。
【0079】
ミルにおける粉砕は、やはり当業者に公知のいかなる方法によっても行うことができる。例えば、粉砕は、不活性ガス下で、および/または液体窒素を用いた冷却中に行ってよい。液体窒素を用いた冷却が、好ましい。粉砕における温度は、所望通りであり、液体窒素の温度にて粉砕を実施することが好ましい。粉砕中の成分の温度は、この場合、例えば-40から-30℃の範囲である。
【0080】
好ましくは、成分は、最初に互いに混合され、次いで粉砕される。焼結粉末(SP)を製造するための方法は、この場合、好ましくは、
a)以下の成分:
(A)少なくとも1種の半結晶性ポリアミド、
(B)少なくとも1種の非晶質ポリアミド、
(C)少なくとも1種の近赤外反射体
を混合する工程と、
b)工程a)において得られた混合物を粉砕して、焼結粉末(SP)を得る工程と
を含む。
【0081】
したがって、本発明は、焼結粉末(SP)を製造するための方法であって、
a)以下の成分:
(A)少なくとも1種の半結晶性ポリアミド、
(B)少なくとも1種の非晶質ポリアミド、
(C)少なくとも1種の近赤外反射体
を混合する工程と、
b)工程a)において得られた混合物を粉砕して、焼結粉末(SP)を得る工程と
を含む、方法も提供する。
【0082】
さらなる好ましい実施形態では、焼結粉末(SP)を製造するための方法は、
ai)以下の成分:
(A)少なくとも1種の半結晶性ポリアミド、
(B)少なくとも1種の非晶質ポリアミド、
(C)少なくとも1種の無機難燃剤
を混合する工程と、
bi)工程ai)において得られた混合物を粉砕して、ポリアミドを得る工程と、
bii)工程bi)において得られたポリアミド粉末と流動促進剤を混合して、焼結粉末(SP)を得る工程と
を含む。
【0083】
好適な流動促進剤は、例えば、シリカまたはアルミナである。好ましい流動促進剤は、アルミナである。好適なアルミナの例は、EvonikのAeroxide(登録商標)Alu Cである。
【0084】
焼結粉末(SP)が、流動促進剤を含む場合、流動促進剤は、好ましくは、方法の工程bii)で添加される。一実施形態では、焼結粉末(SP)は、それぞれの場合に焼結粉末(SP)および流動促進剤の総質量に対して、0.1質量%から1質量%、好ましくは0.2質量%から0.8質量%、より好ましくは0.3質量%から0.6質量%の流動促進剤を含む。
【0085】
したがって、本発明は、工程b)が、
bi)工程a)において得られた混合物を粉砕して、ポリアミド粉末を得る工程、
bii)工程bi)において得られたポリアミド粉末と流動促進剤を混合して、焼結粉末(SP)を得る工程
を含む、方法もさらに提供する。
【0086】
工程a)において配合する(混合する)ためのプロセスは、そのような点から当業者に公知である。例えば、混合は、押出機で、とりわけ好ましくは二軸押出機で行うことができる。
【0087】
したがって、本発明は、成分が、工程a)において二軸押出機で混合される、焼結粉末(SP)を製造するための方法も提供する。
【0088】
工程b)における粉砕については、上記の詳細および優先が、同じように粉砕に適用可能である。
【0089】
したがって、本発明は、本発明の方法により得ることができる焼結粉末(SP)もさらに提供する。
【0090】
本発明の一実施形態では、焼結粉末(SP)における成分(C)は、成分(A)および/または成分(B)でコーティングされている。
【0091】
したがって、本発明は、焼結粉末(SP)における成分(C)が、成分(A)および/または成分(B)でコーティングされている、方法も提供する。
【0092】
成分(C)は、典型的には、焼結粉末(SP)が、上に記載されている工程a)およびb)を含む方法により製造されている場合、成分(A)、(B)および(C)が、最初に互いに配合された際、成分(A)および/または成分(B)でコーティングされている。
【0093】
本発明のさらなる実施形態では、焼結粉末(SP)は、混合物の形態である。言い換えれば、この実施形態では、成分(C)は、成分(A)および(B)内に存在する。
【0094】
成分(C)は、この場合、典型的には、成分(A)および(B)と同格で存在する。成分(C)は、典型的には、焼結粉末(SP)が、事前の配合なしで成分(A)、(B)および(C)を互いに粉砕することにより製造されている場合、成分(A)および(B)と同格で存在する。
【0095】
したがって、本発明は、焼結粉末(SP)が混合物の形態である、方法も提供する。
【0096】
成分(C)の一部は、成分(A)および/または成分(B)でコーティングされていること、ならびに、別の成分(C)の一部は、成分(A)および/または成分(B)でコーティングされていないことも考えられる点も認識される。
【0097】
成分(A)
発明によれば、成分(A)は、少なくとも1種の半結晶性ポリアミドである。
【0098】
本発明に関して、「少なくとも1種の半結晶性ポリアミド」は、ちょうど1種の半結晶性ポリアミド、または2種以上の半結晶性ポリアミドの混合物を意味する。
【0099】
「半結晶性」は、本発明に関して、ポリアミドが、ISO11357-4:2014に従って、示差走査熱量測定(DSC)によって測定されたそれぞれの場合に45J/g超、好ましくは50J/g超、とりわけ好ましくは55J/g超の融解エンタルピーΔH2(A)を有することを意味する。
【0100】
本発明の少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(A)は、したがって、典型的には、ISO11357-4:2014に従って、示差走査熱量測定(DSC)によって測定されたそれぞれの場合に45J/g超、好ましくは50J/g超、とりわけ好ましくは55J/g超の融解エンタルピーΔH2(A)を有する。
【0101】
本発明の少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(A)は、典型的には、ISO11357-4:2014に従って、示差走査熱量測定(DSC)によって測定されたそれぞれの場合に200J/g未満、好ましくは150J/g未満、とりわけ好ましくは100J/g未満の融解エンタルピーΔH2(A)を有する。
【0102】
好適な半結晶性ポリアミド(A)は、一般的に、ISO307:2013-8に従って測定して、25℃にて、96質量%の硫酸の0.5質量%溶液中で決定して、90から350mL/gの範囲、好ましくは100から275mL/gの範囲、とりわけ好ましくは110から250mL/gの範囲の粘度数(VN(A))を有する。
【0103】
したがって、本発明は、成分(A)が、25℃にて、96質量%の硫酸中の成分(A)の0.5質量%溶液中で決定して、90から350mL/gの範囲の粘度数(VN(A))を有する、方法も提供する。
【0104】
本発明の成分(A)は、典型的には、溶融温度(TM(A))を有する。好ましくは、成分(A)の溶融温度(TM(A))は、ISO11357-3:2014に従って決定して、170から280℃の範囲、より好ましくは180から265℃の範囲、とりわけ好ましくは185から245℃の範囲である。
【0105】
したがって、本発明は、成分(A)が、溶融温度(TM(A))を有し、溶融温度(TM(A))が170から280℃の範囲である、方法も提供する。
【0106】
好適な成分(A)は、500から2000000g/molの範囲、好ましくは10000から90000g/molの範囲、とりわけ好ましくは20000から70000g/molの範囲の質量平均分子量(MW(A))を有する。質量平均分子量(MW(A))は、Chi-san Wu 「Handbook of size exclusion chromatography and related techniques」、19頁によれば、SEC-MALLS(サイズ排除クロマトグラフィー多角度レーザー光散乱)によって決定される。
【0107】
少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(A)としては、例えば、4から12環員を有するラクタムに由来する半結晶性ポリアミド(A)が好適である。ジカルボン酸とジアミンの反応により得られる半結晶性ポリアミド(A)も、同じく好適である。ラクタムに由来する少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(A)の例は、ポリカプロラクタム、ポリカプリロラクタムおよび/またはポリラウロラクタムに由来するポリアミドを含む。
【0108】
少なくとも、ジカルボン酸およびジアミンから得ることができる半結晶性ポリアミド(A)が使用される場合、使用されるジカルボン酸は、6から12個の炭素原子を有するアルカンジカルボン酸であり得る。芳香族ジカルボン酸も好適である。
【0109】
ジカルボン酸の例は、ここでは、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸およびドデカンジカルボン酸を含む。
【0110】
好適なジアミンの例は、4から12個の炭素原子を有するアルカンジアミン、および芳香族または環状ジアミン、例えばm-キシリレンジアミン、ジ(4-アミノフェニル)メタン、ジ(4-アミノシクロヘキシル)メタン、2,2-ジ(4-アミノフェニル)プロパンまたは2,2-ジ(4-アミノシクロヘキシル)プロパンを含む。
【0111】
好ましい成分(A)は、ポリカプロラクタム(ナイロン-6)およびナイロン-6/6,6コポリアミドである。ナイロン-6/6,6コポリアミドは、ナイロン-6/6,6コポリアミドの総質量に対して、好ましくは5質量%から95質量%の比率のカプロラクタム単位を有する。
【0112】
少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)としては、上および下で言及されている2種以上のモノマーを共重合することにより得ることができるポリアミド、またはある望ましい混合比の複数のポリアミドの混合物が、同じく好適である。ナイロン-6と他のポリアミド、とりわけナイロン-6/6,6コポリアミドの混合物が特に好ましい。
【0113】
以下の非包括的なリストは、前述のポリアミド、およびさらなる好適な半結晶性ポリアミド(A)、ならびに存在するモノマーを含む。
【0114】
AB ポリマー:
PA4 ピロリドン
PA6 ε-カプロラクタム
PA7 エナントラクタム
PA8 カプリロラクタム
PA9 9-アミノペラルゴン酸
P11 11-アミノウンデカン酸
P12 ラウロラクタム
AA/BB ポリマー:
PA46 テトラメチレンジアミン、アジピン酸
PA66 ヘキサメチレンジアミン、アジピン酸
PA69 ヘキサメチレンジアミン、アゼライン酸
PA610 ヘキサメチレンジアミン、セバシン酸
PA612 ヘキサメチレンジアミン、デカンジカルボン酸
PA613 ヘキサメチレンジアミン、ウンデカンジカルボン酸
PA1212 ドデカン-1,12-ジアミン、デカンジカルボン酸
PA1313 トリデカン-1,13-ジアミン、ウンデカンジカルボン酸
PA6T ヘキサメチレンジアミン、テレフタル酸
PAMXD6 m-キシリレンジアミン、アジピン酸
PA6/66 (PA6およびPA66を参照されたい)
PA6/12 (PA6およびPA12を参照されたい)
PA6/6,36 ε-カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミン、C36二量体酸
PA6T/6 (PA6TおよびPA6を参照されたい)
【0115】
好ましくは、成分(A)は、PA4、PA6、PA7、PA8、PA9、PA11、PA12、PA46、PA66、PA69、PA6.10、PA6.12、PA6.13、PA6/6.36、PA12.12、PA13.13、PA6T、PA6T/6、PAMXD6、PA6/66、PA6/12、およびこれらのコポリアミドからなる群から選択される。
【0116】
したがって、本発明は、成分(A)が、PA4、PA6、PA7、PA8、PA9、PA11、PA12、PA46、PA66、PA69、PA6.10、PA6.12、PA6.13、PA6/6.36、PA12.12、PA13.13、PA6T、PA6T/6、PAMXD6、PA6/66、PA6/12、およびこれらのコポリアミドからなる群から選択される、方法も提供する。
【0117】
より好ましくは、成分(A)は、ナイロン-6、ナイロン-6/6,6、ナイロン-6,10およびナイロン-6,6からなる群から選択される。
【0118】
最も好ましくは、成分(A)は、ナイロン-6およびナイロン-6/6,6からなる群から選択される。
【0119】
成分(B)
成分(B)は、少なくとも1種の非晶質ポリアミドである。
【0120】
本発明に関して、「少なくとも1種の非晶質ポリアミド」は、ちょうど1種の非晶質ポリアミド、または2種以上の非晶質ポリアミドの混合物を意味する。
【0121】
「非晶質」は、本発明に関して、ポリアミドが、ISO11357に従って測定して、示差走査熱量測定(DSC)でいかなる融点も有さないことを意味する。
【0122】
「融点がない」は、非晶質ポリアミドの融解エンタルピーΔH2(B)が、ISO11357-4:2014に従って、示差走査熱量測定(DSC)によって測定されたそれぞれの場合に10J/g未満、好ましくは8J/g未満、とりわけ好ましくは5J/g未満であることを意味する。
【0123】
本発明の少なくとも1種の非晶質ポリアミド(B)は、したがって、典型的には、ISO11357-4:2014に従って、示差走査熱量測定(DSC)によって測定されたそれぞれの場合に10J/g未満、好ましくは8J/g未満、とりわけ好ましくは5J/g未満の融解エンタルピーΔH2(B)を有する。
【0124】
好適な非晶質ポリアミドは、一般的に、ISO307:2013-08に従って、25℃にて、96質量%の硫酸中の成分(B)の0.5質量%溶液中で決定して、60から200mL/gの範囲、好ましくは70から150mL/gの範囲、とりわけ好ましくは75から125mL/gの範囲の粘度数(VN(B))を有する。
【0125】
本発明の成分(B)は、典型的には、ガラス転移温度(TG(B))を有し、ガラス転移温度(TG(B))は、典型的には、ISO11357-2:2014によって決定して、100から180℃の範囲、好ましくは110から160℃の範囲、とりわけ好ましくは120から155℃の範囲である。
【0126】
好適な成分(B)は、5000から35000g/molの範囲、好ましくは10000から30000g/molの範囲、とりわけ好ましくは15000から25000g/molの範囲の質量平均分子量(MW(B))を有する。質量平均分子量は、Chi-San Wu「Handbook of Size Exclusion Chromatography and the Related Techniques」、19頁によれば、SEC-MALLS(サイズ排除クロマトグラフィー多角度レーザー光散乱)によって決定される。
【0127】
好ましくは、成分(B)は、非晶質半芳香族ポリアミドである。この種の非晶質半芳香族ポリアミドは、当業者に公知であり、例えば、PA6I/6T、PA6IおよびPA6/3Tからなる群から選択される。
【0128】
したがって、本発明は、成分(B)が、PA6I/6T、PA6IおよびPA6/3Tからなる群から選択される、方法も提供する。
【0129】
ポリアミド6I/6Tが、成分(B)として使用される場合、成分(B)は、6Iおよび6Tの構造単位を、ある望ましい比率で含み得る。好ましくは、6I構造単位対6T構造単位のモル比は、1:1から3:1の範囲、より好ましくは1.5:1から2.5:1の範囲、とりわけ好ましくは1.8:1から2.3:1の範囲である。
【0130】
成分(B)のMVR(275℃/5kg)(溶融体積流量)は、好ましくは、50mL/10minから150mL/10minの範囲、より好ましくは95mL/10minから105mL/10minの範囲である。
【0131】
成分(B)のゼロせん断速度粘度η0は、例えば、770から3250Pasの範囲である。ゼロせん断速度粘度η0は、TA Instrumentsの、直径25mmのプレート-プレート形状を有し、プレート間隔が1mmである「DHR-1」回転粘度計で決定される。成分(B)の非平衡試料は、減圧下で80℃にて7日間乾燥させ、次いで、これらを、角周波数が500から0.5rad/sの範囲である時間依存周波数掃引(シークエンステスト)で分析する。以下のさらなる分析パラメーターを使用した。変形:1.0%、分析温度:240℃、分析時間:20min、試料製造後の予熱時間:1.5min。
【0132】
成分(B)は、好ましくは30から45mmol/kgの範囲、とりわけ好ましくは35から42mmol/kgの範囲であるアミノ末端基濃度(AEG)を有する。
【0133】
アミノ末端基濃度(AEG)の決定では、1gの成分(B)を、30mLのフェノール/メタノール混合物(フェノール:メタノールの体積比75:25)に溶解し、次いで、水中の0.2N塩酸で電位差滴定に供する。
【0134】
成分(B)は、好ましくは60から155mmol/kgの範囲、とりわけ好ましくは80から135mmol/kgの範囲であるカルボキシル末端基濃度(CEG)を有する。
【0135】
カルボキシル末端基濃度(CEG)の決定では、1gの成分(B)を、30mLのベンジルアルコール中に溶解する。その後、120℃にて、水中0.05N水酸化カリウム溶液での目視滴定を行う。
【0136】
成分(C)
本発明によれば、成分(C)は、少なくとも1種の近赤外反射体である。
【0137】
本発明に関して、「少なくとも1種の近赤外反射体」は、ちょうど1種の近赤外反射体、または2種以上の近赤外反射体の混合物を意味する。
【0138】
本発明に関して、近赤外反射体は、近赤外領域内の波長を有する放射線を反射する化合物を意味すると理解される。
【0139】
近赤外の波長は、典型的には、780nmから2.5μmの範囲である。
【0140】
成分(C)は、この放射線を、好ましくは少なくとも60%まで、より好ましくは少なくとも65%まで、とりわけ好ましくは少なくとも70%まで反射する。
【0141】
成分(C)は、780nmから2.5μmの範囲の波長を有する放射線を、50%から99%まで、好ましくは50%から95%まで、とりわけ55%から92%まで反射することが好ましい。
【0142】
したがって、本発明は、成分(C)が、780nmから2.5μmの範囲の波長を有する放射線を少なくとも60%まで反射する、方法も提供する。
【0143】
反射は、150mmウルブリヒト球を有するPerkinElmer UV/VIS/NIR Lambda 950分光計で決定される。使用される標準は、LabsphereのSpectralon白色標準である。
【0144】
好適な成分(C)は、当業者に公知の近赤外反射体すべてである。近赤外反射顔料が好ましい。近赤外反射黒色顔料が特に好ましい。
【0145】
成分(C)が、焼結粉末(SP)に存在する、少なくとも1種のある添加剤、および少なくとも1種の強化剤と異なることは明らかである。
【0146】
好ましくは、焼結粉末(SP)は、780nmから2.5μmの範囲の波長を有する放射線を、少なくとも60%まで、より好ましくは少なくとも65%まで、とりわけ好ましくは少なくとも70%まで反射する成分を、成分(C)以外に一切含まない。
【0147】
さらに好ましくは、焼結粉末(SP)は、780nmから2.5μmの範囲の波長を有する放射線を、55%から92.5%まで、好ましくは50%から95%まで、とりわけ好ましくは50%から99%まで反射する成分を、成分(C)以外に一切含まない。
【0148】
本発明に関して、近赤外反射顔料は、近赤外領域内の波長を有する放射線を反射し、成分(A)および(B)に不溶性である着色剤を意味すると理解される。
【0149】
したがって、本発明は、成分(C)が、近赤外反射顔料からなる群から選択される、方法も提供する。
【0150】
好適な近赤外反射顔料は、例えば、酸化クロム鉄、酸化チタン、ペリレン色素またはアルミニウム顔料である。
【0151】
好適な近赤外反射黒色顔料は、例えば、酸化クロム鉄またはペリレン色素である。
【0152】
好ましい近赤外反射体は、酸化クロム鉄およびペリレン色素からなる群から選択される。
【0153】
好ましい酸化クロム鉄は、例えば、BASF SEからSicopal Black(登録商標)K0095の商品名で得ることができる。
【0154】
好ましいペリレン色素は、例えば、BASF SEからLumogen(登録商標)Black K0087およびLumogen(登録商標)Black FK 4281の商品名で、またはBASF SEからPaliogen(登録商標)Black S 0084の商品名で入手できる。
【0155】
好ましい二酸化チタンは、例えば、Kronos 2220(登録商標)の商品名で、およびKronos 2222(登録商標)の商品名で、それぞれKronosから入手できる。
【0156】
好ましいアルミニウム顔料は、例えば、EckartからIReflex(登録商標)5000 Whiteの商品名で入手できる。
【0157】
成分(C)は、好ましくは、カーボンブラックではない。成分(C)は、さらに好ましくは、カオリンではない。
【0158】
したがって、本発明は、成分(C)がカーボンブラックを含まない、方法も提供する。
【0159】
本発明は、成分(C)がカオリンを含まない方法もさらに提供する。
【0160】
工程ii)
工程ii)において、工程i)において用意した焼結粉末(SP)の層を曝露する。
【0161】
曝露の際、焼結粉末(SP)の層の少なくともいくつかを溶融する。溶融した焼結粉末(SP)は合体し、均質な溶融物を形成する。曝露した後で、焼結粉末(SP)の層の溶融した部分を再度冷却させ、均質な溶融物を再凝固させる。
【0162】
曝露の好適な方法は、当業者に公知の方法すべてを含む。好ましくは、工程ii)における曝露は、放射線源で行われる。放射線源は、好ましくは、赤外線源およびレーザーからなる群から選択される。とりわけ好ましい赤外線源は、近赤外線源である。
【0163】
したがって、本発明は、工程ii)において曝露する工程が、レーザーおよび赤外線源からなる群から選択される放射線源で行われる、方法も提供する。
【0164】
好適なレーザーは、当業者に公知であり、例えばファイバーレーザー、Nd:YAGレーザー(ネオジムドープイットリウムアルミニウムガーネットレーザー)または二酸化炭素レーザーである。
【0165】
工程ii)における曝露に使用される放射線源がレーザーである場合、工程i)において用意した焼結粉末(SP)の層は、典型的には、局所的に、かつ短時間でレーザービームに曝露する。これは、レーザービームに曝露した焼結粉末(SP)の一部のみを選択的に溶融する。工程ii)においてレーザーが使用される場合、本発明の方法は、選択的レーザー焼結とも呼ばれる。選択的レーザー焼結は、それ自体、当業者に公知である。
【0166】
工程ii)における曝露に使用される放射線源が赤外線源、とりわけ近赤外線源である場合、放射線源が放射する波長は、典型的には、780nmから1000μmの範囲、好ましくは780nmから50μmの範囲、とりわけ780nmから2.5μmの範囲である。
【0167】
工程ii)において曝露する際、この場合、焼結粉末(SP)の層全体を、典型的には曝露する。曝露の際に焼結粉末(SP)の望ましい領域のみを溶融するように、赤外線吸収インク(IR吸収インク)が、典型的には、溶融する領域に適用される。
【0168】
成形体を製造するための方法は、この場合、好ましくは、工程i)と工程ii)の間に、工程i)において用意した焼結粉末(SP)の層の少なくとも一部に、少なくとも1種のIR吸収インクを適用する工程i-1)を含む。
【0169】
したがって、本発明は、工程i)と工程ii)の間に、
i-1)工程i)において用意した焼結粉末(SP)の層の少なくとも一部に、少なくとも1種のIR吸収インクを適用する工程
が実施される、方法も提供する。
【0170】
したがって、本発明は、成形体を製造するための方法であって、
i)以下の成分:
(A)少なくとも1種の半結晶性ポリアミド、
(B)少なくとも1種の非晶質ポリアミド、
(C)少なくとも1種の近赤外反射体
を含む焼結粉末(SP)の層を用意する工程と、
i-1)工程i)において用意した焼結粉末(SP)の層の少なくとも一部に、少なくとも1種のIR吸収インクを適用する工程と、
ii)工程i)において用意した焼結粉末(SP)の層を曝露する工程と
を含む、方法もさらに提供する。
【0171】
好適なIR吸収インクは、当業者に公知のIR吸収インクすべて、とりわけ、高速焼結用の当業者に公知のIR吸収インクである。
【0172】
IR吸収インクは、典型的には、IR放射線、好ましくはNIR放射線(近赤外線放射)を吸収する少なくとも1種の吸収剤を含む。工程ii)において焼結粉末(SP)の層を曝露する際に、IR吸収インクに存在するIR吸収剤による、IR放射線、好ましくはNIR放射線の吸収で、焼結粉末(SP)の層の一部が選択的に加熱され、そこにIR吸収インクが適用されている。
【0173】
IR吸収インクは、少なくとも1種の吸収剤に加えて、キャリア液を含み得る。好適なキャリア液は、当業者に公知であり、例えば、油または溶媒である。
【0174】
少なくとも1種の吸収剤は、キャリア液に溶解または分散させてよい。
【0175】
工程ii)における曝露が、赤外線源から選択される放射線源で行われ、また、工程i-1)が実施される場合、本発明の方法は、高速焼結またはマルチジェットフュージョンプロセスとも呼ばれる。これらの方法は、それ自体、当業者に公知である。
【0176】
工程ii)の後で、焼結粉末(SP)の層は、典型的には、工程i)において用意した焼結粉末(SP)の層の層厚のぶん薄くなり、焼結粉末(SP)のさらなる層が適用される。続いて、これを工程ii)において再度曝露する。
【0177】
これは、最初に、焼結粉末(SP)の上層を、焼結粉末(SP)の下層に結合させ、さらに、上層内の焼結粉末(SP)の粒子を、融合により互いに結合させる。
【0178】
本発明の方法では、工程i)ならびにii)、および任意にi-1)は、このように繰り返してよい。
【0179】
粉末床の低下、焼結粉末(SP)の適用および曝露、ひいては焼結粉末(SP)の溶融を繰り返すことにより、3次元成形体が製造される。例えばキャビティーも有する成形体を製造することが可能である。追加の担持材料は、溶融されていない焼結粉末(SP)自体が担持材料として作用するので、必須ではない。
【0180】
したがって、本発明は、本発明の方法により得ることができる成形体もさらに提供する。
【0181】
本発明の方法において、特に重要なのは、焼結粉末(SP)の溶融範囲であり、これを焼結粉末(SP)の焼結ウィンドウ(WSP)という。
【0182】
焼結粉末(SP)の焼結ウィンドウ(WSP)は、例えば示差走査熱量測定(DSC)により決定できる。
【0183】
示差走査熱量測定では、試料、すなわちこの場合焼結粉末(SP)の試料の温度、および標準の温度が、経時的に直線的に変化する。この目的のために、熱は、試料および標準に加えられる/それらから除去される。試料を標準と同一の温度にて維持するのに必要な熱量Qが決定される。標準に加えられる/そこから除去される熱量QRは、参照値としての機能を果たす。
【0184】
試料に吸熱相変換を施す場合、試料を標準と同一の温度にて保持するために、追加の熱量Qが加えられなければならない。発熱相変換を行う場合、試料を標準と同一の温度にて維持するために、熱量Qが除去されなければならない。測定により、試料に加えられる/そこから除去される熱量Qが、温度Tに応じてプロットされているDSCダイアグラムが得られる。
【0185】
測定は、典型的には、最初に、加熱運転(H)を行うことを伴う、すなわち試料および標準が直線的に加熱される。試料の溶融(固相/液相変換)中、試料を標準と同一の温度にて維持するために、追加の熱量Qが加えられなければならない。DSCダイアグラムでは、溶融ピークとして知られるピークが、その結果観察される。
【0186】
加熱運転(H)の後で、冷却運転(C)が、典型的には測定される。これは、試料および標準を直線的に冷却することを伴う、すなわち熱が試料および標準から除去される。試料の結晶化/凝固(液相/固相変換)中は、熱が結晶化/凝固の経過中に解放されるので、試料を標準と同一の温度にて維持するために、より大きい熱量Qが除去されなければならない。冷却運転(C)のDSCダイアグラムでは、結晶化ピークといわれるピークが、次いで、溶融ピークと反対方向で観察される。
【0187】
本発明に関して、加熱運転中の加熱は、典型的には、20K/minの加熱速度で行われる。冷却運転中の冷却は、本発明に関して、典型的には、20K/minの冷却速度で行われる。
【0188】
加熱運転(H)および冷却運転(C)を含むDSCダイアグラムは、例として、
図1に示す。DSCダイアグラムを使用して、溶融開始温度(T
M
開始)および結晶化開始温度(T
C
開始)を決定できる。
【0189】
溶融開始温度(TM
開始)を決定するために、接線を、溶融ピークを下回る温度における加熱運転(H)のベースラインに対して引く。第2の接線を、溶融ピークの最高点における温度を下回る温度にて溶融ピークの第1の変曲点に対して引く。2本の接線は、それらが交差するまで外挿する。温度軸に対する交差の垂直外挿は、溶融開始温度(TM
開始)を表す。
【0190】
結晶化開始温度(TC
開始)を決定するために、接線を、結晶化ピークを上回る温度における冷却運転(C)のベースラインに対して引く。第2の接線を、結晶化ピークの最小点における温度を上回る温度での結晶化ピークの変曲点に対して引く。2本の接線は、それらが交差するまで外挿する。温度軸に対する交差の垂直外挿は、結晶化開始温度(TC
開始)を示す。
【0191】
焼結ウィンドウ(W)は、溶融開始温度(TM
開始)と結晶化開始温度(TC
開始)との間の差に起因する。したがって、
W=TM
開始-TC
開始。
【0192】
本発明に関して、用語「焼結ウィンドウ(WSP)」、「焼結ウィンドウ(WSP)の大きさ」および「溶融開始温度(TM
開始)と結晶化開始温度(TC
開始)との間の差」は、同じ意味を有し、同義で使用される。
【0193】
本発明の焼結粉末(SP)は、特に、焼結プロセスにおける使用に好適である。
【0194】
したがって、本発明は、以下の成分:
(A)少なくとも1種の半結晶性ポリアミド、
(B)少なくとも1種の非晶質ポリアミド、
(C)少なくとも1種の近赤外反射体
を含む焼結粉末(SP)を、焼結プロセスに使用する方法も提供する。
【0195】
成形体
本発明の方法により、成形体が得られる。成形体は、工程ii)における曝露で溶融した焼結粉末(SP)の凝固後に、粉末床から直接除去できる。最初に成形体を冷却し、次いで粉末床から除去のみすることもやはりできる。溶融されていない焼結粉末のある付着粒子は、公知の方法により、表面から機械的に除去できる。成形体を表面処理するための方法は、例えば、振動粉砕またはバレル研磨、また、サンドブラスト、ガラスビーズブラストまたはマイクロビーズブラストも含む。
【0196】
得られた成形体をさらなる加工に供すること、または例えば、表面処理することもできる。
【0197】
したがって、本発明は、本発明の方法により得ることができる成形体をさらに提供する。
【0198】
得られた成形体は、典型的には、それぞれの場合に成形体の総質量に対して、50質量%から94.95質量%の範囲の成分(A)、5質量%から40質量%の範囲の成分(B)、および0.05質量%から10質量%の範囲の成分(C)を含む。
【0199】
好ましくは、成形体は、それぞれの場合に成形体の総質量に対して、60質量%から94.9質量%の範囲の成分(A)、5質量%から30質量%の範囲の成分(B)、および0.1質量%から8質量%の範囲の成分(C)を含む。
【0200】
最も好ましくは、成形体は、それぞれの場合に成形体の総質量に対して、70質量%から91.9質量%の範囲の成分(A)、8質量%から25質量%の範囲の成分(B)および0.1質量%から5質量%の範囲の成分(C)を含む。
【0201】
本発明によれば、成分(A)は、焼結粉末(SP)に存在した成分(A)である。成分(B)は、やはり焼結粉末(SP)に存在した成分(B)であり、成分(C)は、やはり焼結粉末(SP)に存在した成分(C)である。
【0202】
焼結粉末(SP)が、少なくとも1種の添加剤および/または少なくとも1種の強化剤を含む場合、本発明に従って得られた成形体は、典型的には、少なくとも1種の添加剤および/または少なくとも1種の強化剤も含む。
【0203】
工程i-1)が実施された場合、成形体は、IR吸収インクをさらに含み得る。
【0204】
焼結粉末(SP)の曝露の結果として、成分(A)、(B)および(C)、ならびにある少なくとも1種の添加剤および少なくとも1種の強化剤は、化学反応に加えることができ、結果として変更できることが当業者には明らかである。そのような反応は、当業者に公知である。
【0205】
好ましくは、成分(A)、(B)および(C)、ならびにある少なくとも1種の添加剤および少なくとも1種の強化剤は、工程ii)における曝露の際に、いずれの化学反応にも加えず、その代わり、焼結粉末(SP)が溶融するのみである。
【0206】
焼結粉末において近赤外反射体(成分(C))を使用する方法は、焼結粉末(SP)を曝露することにより焼結粉末(SP)から成形体を製造する際に反りを減少させる。
【0207】
したがって、本発明は、
以下の成分:
(A)少なくとも1種の半結晶性ポリアミド、
(B)少なくとも1種の非晶質ポリアミド、
(C)少なくとも1種の近赤外反射体
を含む焼結粉末(SP)において、
焼結粉末(SP)を曝露することにより焼結粉末(SP)から成形体を製造する際に反りを減少させるために、近赤外反射体を使用する方法も提供する。
【0208】
本発明は、以下で実施例により詳細に説明するが、それらに制約されない。
【実施例】
【0209】
以下の成分を使用する。
- 半結晶性ポリアミド(成分(A))
(P1)ナイロン-6/6,6(Ultramid C33、BASF SE)
- 非晶質ポリアミド(成分(B))
(AP1)ナイロン-6I/6T(Grivory G16、EMS)、6I:6Tのモル比は1.9:1
- 近赤外反射体(成分(C))
(C1)二酸化チタン(Kronos 2220、Kronos)
(C2)酸化クロム鉄(Sicopal Black K0095、BASF SE)
(C3)二酸化チタン(Kronos 2222、Kronos)
(C4)ペリレン顔料(Lumogen Black FK 4281、BASF SE)
(C5)ペリレン顔料(Lumogen Black K 0087、BASF SE)
(C6)ペリレン顔料(Paliogen Black S 0084、BASF SE)
(C7)アルミニウム顔料(IReflex 5000 White、Eckart)
- 強化剤
(VS1)カオリン(Translink 445、BASF SE)
- 添加剤
(A1)フェノール系酸化防止剤(Irganox 1098(N,N’-ヘキサン-1,6-ジイルビス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニルプロピオンアミド)))、BASF SE)
(A2)Special black 4(カーボンブラック CAS No.1333-86-4、Evonik)
(A3)Alu C(流動促進剤、Evonik)、BET表面積100±15m2/gおよびpH4.5から5.5
(A4)Irgaphos 168(ホスファイト系酸化防止剤、BASF)
【0210】
表1は、使用される半結晶性ポリアミド(成分(A))の必須パラメーターを示し、表2は、使用される非晶質ポリアミド(成分(B))の必須パラメーターを示す。
【0211】
【0212】
【0213】
AEGは、アミノ末端基濃度を示す。これは、滴定によって決定される。アミノ末端基濃度(AEG)の決定では、1gの成分(半結晶性ポリアミドまたは非晶質ポリアミド)は、30mLのフェノール/メタノール混合物(フェノール:メタノールの体積比75:25)に溶解させ、次いで、水中0.2N塩酸で目視滴定に供する。
【0214】
CEGは、カルボキシル末端基濃度を示す。これは、滴定によって決定される。カルボキシル末端基濃度(CEG)の決定では、1gの成分(半結晶性ポリアミドまたは非晶質ポリアミド)は、30mLのベンジルアルコールに溶解し、次いで、120℃にて、水中0.05N水酸化カリウム溶液で目視滴定に供する。
【0215】
半結晶性ポリアミドの溶融温度(TM)およびすべてのガラス転移温度(TG)は、それぞれ、示差走査熱量測定によって決定された。
【0216】
上に記載した溶融温度(TM)の決定では、20K/minの加熱速度にて、最初の加熱運転(H1)を測定した。このとき、溶融温度(TM)は、最初の加熱運転(H1)の溶融ピークの最高値における温度に対応していた。
【0217】
ガラス転移温度(TG)の決定では、最初の加熱運転(H1)後に、冷却運転(C)、続いて第2の加熱運転(H2)を測定した。冷却運転は、20K/minの冷却速度にて測定した。第1の加熱運転(H1)および第2の加熱運転(H2)は、20K/minの加熱速度にて測定した。次いで、ガラス転移温度(TG)を、第2の加熱運転(H2)の段差の半分で決定した。
【0218】
ゼロせん断速度粘度η0を、TA Instrumentsの、直径25mmのプレート-プレート形状を有し、プレート間隔が1mmである「DHR-1」回転粘度計で決定した。非平衡試料を、減圧下で80℃にて7日間乾燥させ、次いで、これらを、角周波数が500から0.5rad/sの範囲である時間依存周波数掃引(シークエンステスト)で分析した。以下のさらなる分析パラメーターを使用した。変形:1.0%、分析温度:240℃、分析時間:20min、試料製造後の予熱時間:1.5min。
【0219】
二軸押出機での焼結粉末の製造
焼結粉末の製造では、表3に示す成分は、二軸押出機(ZE25)で、20kg/hのスループット、230rpmの速度、40の長さ対直径比、および245℃のバレル温度にて、表3に示す比で配合し、次いで、液体窒素を用いて冷却したピン付きディスクミルで加工して、粉末(粒径分布10から100μm)を得た。
【0220】
【0221】
粉末では、溶融温度(TM)を上に記載したように決定した。
【0222】
結晶化温度(TC)を、示差走査熱量測定(DSC)によって決定した。この目的のために、第1の加熱運転(H)を、20K/minの加熱速度にて、次いで、冷却運転(C)を、20K/minの冷却速度にて測定した。結晶化温度(TC)は、結晶化ピークの極値における温度である。
【0223】
複素せん断粘度の大きさは、0.5rad/s角周波数および240℃の温度にて、プレート-プレート回転レオメーターによって決定された。TA Instrumentsの、直径25mmを有し、プレート間隔が1mmである「DHR-1」回転粘度計を使用した。非平衡試料を、減圧下で80℃にて7日間乾燥させ、次いで、これらを、角周波数が500から0.5rad/sの範囲である時間依存周波数掃引(シークエンステスト)で分析した。以下のさらなる分析パラメーターを使用した。変形:1.0%、分析時間:20min、試料製造後の予熱時間:1.5min。
【0224】
焼結ウィンドウ(W)を、上に記載したように、溶融開始温度(TM
開始)と結晶化開始温度(TC
開始)との間の差として決定した。
【0225】
焼結粉末の熱酸化安定性を決定するために、新しく製造した焼結粉末、ならびに、0.5%酸素および195℃にて16時間オーブンエージングした後の焼結粉末の複素せん断粘度を決定した。保存後(エージング後)の粘度対保存前(エージング前)の粘度の比を決定した。粘度は、0.5rad/sの測定周波数、240℃の温度にて、回転レオロジーによって測定される。
【0226】
D10、D50およびD90として報告されている粒径分布は、上に記載したように、Malvern Mastersizerで決定した。
【0227】
か焼残渣は、灰化後に重量測定法で決定した。
【0228】
結果を表4に示す。
【0229】
【0230】
焼結粉末(SP)では、その反射を、近赤外線波長の範囲でさらに決定した。決定は、150mmウルブリヒト球を有するPerkinElmer UV/VIS/NIR Lambda 950分光計で行った。標準:LabsphereのSpectralon白色標準、キュベット:石英ガラスでできている特殊な繊維性材料のキュベット(d=0.5cm)、データ区間:1.0nm、ギャップ幅:UV/VIS(200~800nm)=2.0nm、NIR(810~2100nm):サーボ、積分時間:UV/VIS:0.2s、NIR:0.2s、ゲイン:UV/VIS:オート、NIR:15、測定速度:UV/VIS/NIR:285nm/min、波長範囲:300~2500nm、グロストラップ:閉鎖。
【0231】
結果を表5に示す。
【0232】
【0233】
本発明の焼結粉末(SP)は、近赤外領域における放射線の良好な反射を示すことが明らかである。
【0234】
さらに、本発明の焼結粉末(SP)で、黒色成形体を製造することができ、焼結粉末は、NIR領域における高い反射を同時に示す。
【0235】
レーザー焼結実験
焼結粉末(SP)を、表6に示す温度にて、0.1mmの層厚でキャビティーに導入した。焼結粉末を、続いて、表6に示すレーザーパワー出力、および、指定されている点間隔を有するレーザーに曝露し、曝露中における試料に対するレーザー速度は、15m/秒であった。点間隔は、レーザー間隔またはレーン間隔としても公知である。選択的レーザー焼結は、典型的には、ストライプ状のスキャンを伴う。点間隔により、ストライプの中心の間に、すなわち、ストライプ2つに対するレーザービームの中心2つの間に距離が生じる。
【0236】
【0237】
続いて、得られた引張棒(焼結棒)の性質を決定した。得られた引張棒(焼結棒)は、減圧下で、80℃にて336時間乾燥させた後で、乾燥状態でテストした。結果を表7に示す。
【0238】
シャルピー試験片も製造し、これもやはり乾燥形態でテストした(ISO179-2/1 eU:1997+Amd.1:2011、およびISO179-2/1 eA(F):1997+Amd.1:2011に従って)。
【0239】
引張テストをISO527-2:2012に従って実施した。
【0240】
熱たわみ温度(HDT)は、1.8N/mm2のエッジ繊維応力を用いる方法A、および、0.45N/mm2のエッジ繊維応力を用いる方法Bの両方を使用して、ISO75-2:2013に従って決定した。
【0241】
【0242】
表8は、条件付けられた状態の成形体の性質を示す。条件付けに関して、上記の乾燥後に成形体を70℃および62%相対湿度にて336時間保存した。
【0243】
【0244】
小型押出機での粉末の製造
近赤外反射体に関しては、また、成分(A2)(Special black 4)に関しては、反射は、上に記載した近赤外線波長の範囲で決定した。
【0245】
この結果を表9に示す。
【0246】
【0247】
続いて、粉末の製造に関しては、表10に示す成分を、DSM 15cm3小型押出機(DSM-Micro15マイクロコンパウンダー)で、表10に示す比で、250℃、混合時間3min(分)、速度80rpm(分当たりの回転数)にて配合し、次いで<200μmの粒径に粉砕した。
【0248】
【0249】
次いで、得られた焼結粉末(SP)に関しては、近赤外線波長の範囲における反射を決定した。決定は、上に記載したように行った。
【0250】
結果を表11に示す。
【0251】
【0252】
焼結粉末(SP)における本発明の近赤外反射体は、近赤外反射体を有さない焼結粉末(比較例V6)と比較して、とりわけ波長範囲800から2500nm(800nmから2.5μm)以内で反射の向上を達成することが明らかである。
【0253】
高速焼結HSSにおける実験(マルチジェットフュージョン、HP)
高速焼結のための焼結粉末の製造に関して、表12に示す成分は、表3以前に上に記載したように、そこに示す比で配合し、次いで粉砕した。
【0254】
【0255】
【0256】
【0257】
粉末V2は、焼結される成分の表面と、周囲の粉末の表面との間に大幅な温度差はないので、HSSで加工して成分を得ることはできない。
【0258】
粉末B18は、黒色にもかかわらず、大幅な温度差で、きわめて効率的に加工できる。
【0259】
【0260】
HSS実験で得られた成形体の機械的性質は、高速試験片(タイプ2、ISO8256による、またはISO527-2:2012タイプCWによる、23℃、テスト速度1mm/minおよび50%相対湿度にて、減圧下で、80℃にて試験片の乾燥から336時間後)で決定した。