(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-07
(45)【発行日】2023-07-18
(54)【発明の名称】強化された前面アレイを備えるクライオポンプ
(51)【国際特許分類】
F04B 37/08 20060101AFI20230710BHJP
【FI】
F04B37/08
(21)【出願番号】P 2020526401
(86)(22)【出願日】2018-11-15
(86)【国際出願番号】 US2018061367
(87)【国際公開番号】W WO2019099728
(87)【国際公開日】2019-05-23
【審査請求日】2021-10-20
(32)【優先日】2017-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517316096
【氏名又は名称】エドワーズ バキューム リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】マホーニー ポール ケイ
(72)【発明者】
【氏名】カセロ ジョン ジェイ
【審査官】岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-088881(JP,A)
【文献】特開昭60-003491(JP,A)
【文献】実開平02-035984(JP,U)
【文献】特開昭64-000370(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0008189(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 37/08
B01D 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却ステージとより低温の冷却ステージとを有する極低温冷凍機と、
側部と閉鎖端と閉鎖端の反対側の前面開口部とを有する輻射シールドであって、前記冷却ステージに熱連結され、前記冷却ステージによって冷却される輻射シールドと、
前記より低温の冷却ステージに熱連結され、前記より低温の冷却ステージによって冷却される1次クライオポンピングアレイであって、吸着材料を支持する1次クライオポンピングアレイと、
前記冷却ステージに熱連結され、前記1次クライオポンピングアレイの前面に面する
包絡面から間隔を
おいて
前記包絡面の周りを取り囲む前面アレイであって、前記1次クライオポンピングアレイの輻射負荷を4%未満にするために、前記前面開口部から前記1次クライオポンピングアレイへの輻射の直線経路上にある前面アレイであって、前記前面開口部から引っ込み、前記前面開口部よりも前記1次クライオポンピングアレイに近接している前面アレイと
、を備え、
ことを特徴とするクライオポンプ。
【請求項2】
前記1次クライオポンピングアレイが、前記前面開口部よりもかなり小さい断面積を有し、
前記1次クライオポンピングアレイの包絡面が、中心に向かって前記輻射シールドの前面開口部に周縁部よりも近接していき、
前記前面アレイが、前記輻射シールドからほぼ独立した熱経路を介して前記冷却ステージに熱連結され、その周縁部よりもその中心のところで前記輻射シールド前面開口部により近接した前記前面に面する
包絡面を有している、
請求項1に記載のクライオポンプ。
【請求項3】
前記前面アレイが、前記輻射シールドの全長の少なくとも20%だけ前記前面開口領域の下方に位置決めされている、
請求項
1または2に記載のクライオポンプ。
【請求項4】
前記前面アレイは、頂面が前記輻射シールドの前記前面開口部下方に、50mmから100mmの範囲内に位置決めされている、
請求項1ないし
3のいずれか1項に記載のクライオポンプ。
【請求項5】
前記前面アレイが、前記1次クライオポンピングアレイから25mm未満だけ離れている、
請求項1ないし
4のいずれか1項に記載のクライオポンプ。
【請求項6】
前記1次クライオポンピングアレイの断面が、前記前面開口部の面積の50%未満の前方突出断面積を有する、
請求項1ないし
5のいずれか1項に記載のクライオポンプ。
【請求項7】
前記前面アレイが、前記前面開口部の面積の60%未満であり、前記1次クライオポンピングアレイの断面積より大きい前方突出断面積を有する、
請求項1ないし
6のいずれか1項に記載のクライオポンプ。
【請求項8】
前記1次クライオポンピングアレイの前記前面に面する
包絡面が、ドーム状であり、前記前面アレイの前記前面に面する
包絡面が、ドーム状である、
請求項1ないし
7のいずれか1項に記載のクライオポンプ。
【請求項9】
前記前面アレイが、複数の円環状のルーバーを備える、
請求項1ないし
8のいずれか1項に記載のクライオポンプ。
【請求項10】
前記前面アレイの中心に向く前記複数のルーバーが、周縁部に向く前記複数のルーバーより大きい幅である、
請求項
9に記載のクライオポンプ。
【請求項11】
前記前面アレイが、前記より低温の冷却ステージを包囲する円筒体を介して、前記冷却ステージに連結されている、
請求項1ないし
10のいずれか1項に記載のクライオポンプ。
【請求項12】
前記輻射シールドが、その閉鎖端のところでドーム状であり、前記1次クライオポンピングアレイが、ドーム状の遠位側
包絡面を有する、
請求項1ないし
11のいずれか1項に記載のクライオポンプ。
【請求項13】
少なくとも20%の水素捕捉率を有する、
請求項1ないし
12のいずれか1項に記載のクライオポンプ。
【請求項14】
前記1次クライオポンピングアレイへの前記輻射負荷量が、3%未満である、
請求項1ないし
13のいずれか1項に記載のクライオポンプ。
【請求項15】
前記1次クライオポンピングアレイへの前記輻射負荷量が、2%未満である、
請求項1ないし
14のいずれか1項に記載のクライオポンプ。
【請求項16】
前記1次クライオポンピングアレイへの前記輻射負荷量が、1%未満である、
請求項1ないし
15のいずれか1項に記載のクライオポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願>
本出願は、2017年11月17日出願の米国仮特許出願第62/588,221号の優先権を主張するものである。上記出願の技術の全体が、引用によって本明細書中に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
現在利用可能なクライオポンプは、開放型と閉鎖型とのいずれの極低温サイクルによって冷却されるかに関わらず一般的に同じ設計コンセプトに従っている。通常4~25ケルビンの範囲内で作動する低温第2ステージアレイが、1次排気面である。この面は、通常、65~130ケルビンの温度範囲内で作動される高温円筒体によって包囲され、より低温度のアレイに輻射遮蔽を提供する。輻射シールドは、一般的に、1次排気面と排気されるチャンバとの間に位置決めされた前面アレイのところを除いて閉鎖されたハウジングを有する。このより高温の、第1ステージの、前面アレイは、1型ガスとして知られる水蒸気のような高沸点ガスのための排気場所になる。
【0003】
作動中、水蒸気のような高沸点ガスが、冷却前面アレイ上で凝縮される。低沸点ガスが前面アレイを通過し、輻射シールド内の空間に入る。窒素のような2型ガスは、より低温の第2ステージアレイ上で凝縮する。水素、ヘリウム、ネオンのような3型ガスは、4ケルビンでかなりの蒸気圧を有する。3型ガスを捕捉するために、第2ステージアレイの内面が、炭、ゼオライト、または分子ふるいのような吸着材で被覆されるのがよい。吸着は、極低温温度に保たれた材料によってガスが物理的に捕捉され、これにより、周囲から取り除かれるプロセスである。このように、排気面上でガスが凝縮または吸着されると、真空のみがワークチャンバ内に残される。
【0004】
閉鎖型サイクル冷却機によって冷却されるシステムでは、冷却機は、輻射シールドを貫通するコールドフィンガを有する2段式冷却機であるのが典型的である。冷却機の第2の、より低温の冷却ステージの低温端部は、コールドフィンガの先端にある。1次クライオポンピングアレイ、即ちクライオパネルは、コールドフィンガの第2ステージの最低温端部でヒートシンクに連結される。このクライオパネルは、例えば、引用によって本明細書に組み込まれる米国特許第4,494,381号明細書のように、第2ステージヒートシンクの周りに配置され、このヒートシンクに連結された、単なる金属プレート、カップ、または金属バッフルの円筒状のアレイでもよい。この第2ステージクライオパネルは、前述のように、炭またはゼオライトのような低温凝縮ガス吸着材を更に支持してもよい。
【0005】
冷凍機コールドフィンガは、カップ状の輻射シールドのベースを貫通し、シールドと同心であるのがよい。他のシステムでは、コールドフィンガが輻射シールドの側部を貫通する。このような構成は、時には、クライオポンプの配置に利用可能なスペースによりうまくはまる。
【0006】
輻射シールドは、冷凍機の冷却第1ステージの最低温端部でヒートシンク、即ちヒートステーションに連結される。このシールドは、より低温の冷却第2ステージクライオパネルを、輻射熱からクライオパネルを保護するような方法で包囲する。輻射シールドを閉鎖する前面アレイは、引用によって本明細書中に組み込まれる米国特許第4,356,701号明細書に開示されるように、シールドを介してあるいは熱支柱を介して冷却第1ステージヒートシンクによって冷却される。
【0007】
大量のガスを収集した後に、時々クライオポンプを再生する必要がある。再生は、クライオポンプによって前に捕捉されたガスを解放するプロセスである。再生は、通常、クライオポンプが外気温度に戻ることを可能にすることによって達成され、次いで、第2のポンプによってクライオポンプからガスが取り除かれる。ガスの解放及び除去に続いて、クライオポンプが再起動され、事後再冷却が、大量のガスをワークチャンバから取り除くことを再度可能にする。
【0008】
この先行技術のやり方は、例えば、山形を備える第2ステージ吸着材を包囲することによって第2ステージクライオパネルに配置された吸着材料を保護し、凝縮ガスが凝縮することを防ぎ、したがって吸着材層を遮蔽することであった。このやり方は、層が、窒素、ネオン、またはヘリウムのような非凝縮ガスの吸収を防ぐ。これが、再生サイクルの頻度を減らしている。しかしながら、山形は、吸着材への非凝縮物のアクセス性を減少させる。
【0009】
クライオポンプの良度示数は、水素の捕捉率、ポンプの外側からクライオポンプの開口部に到達する水素分子がアレイの第2ステージで捕捉される確率である。捕捉率は、ポンプによって捕捉される毎秒リットルの水素の排気の速度に直接関連する。従来設計のより速い速度のポンプは、20%かそれより多い水素の捕捉率を有する。
【0010】
種々のポンプの設計が、3型ガスの排気速度を増大させるために提案されてきた。例えば、引用によって本明細書に組み込まれる米国特許第7,313,922号明細書は、非凝縮性ガスを排気することのできる速度を増大させるように設計された第2ステージアレイを示す。クライオパネルのディスクの内側表面に配置された吸着材料への水素、ネオン、またはヘリウムのような非凝縮ガスのより高いアクセス性を可能にするように第2ステージクライオパネルを広げることによって、これを達成する。これは、非凝縮ガスがより早く吸着されることを可能にし、したがって非凝縮物のための排気速度が増大する。この特許で開示された第2ステージアレイは、外縁のところで平面状の径方向に伸び水素流へより開放されるバッフルを有する。この第2ステージクライオパネルアレイは、輻射シールドの直径よりかなり小さい直径を有する。一実施形態では、輻射シールドの直径が304mmである一方で、アレイの直径は134mmである。結果として、1型ガスが輻射シールドの表面にたまったとしても、両者の間に第2ステージクライオパネルにガスの高いコンダクタンスを提供する大きい開口空間が存在する。通常、第2ステージクライオパネルは、輻射シールドの前面開口部の36%未満の面積の前方突出断面積のために、輻射シールドの直径の60%未満の直径を有するのが好ましい。
【0011】
低圧環境下のガス分子は、直線経路に沿って移動し、第1及び第2ステージクライオパネルと輻射シールドとの間に開放空間を備えているので、大量のガスが、輻射シールドの閉鎖されたベースに到達すると予想することができる。1型ガスはそこで凝縮される。
2型及び3型ガスは、表面から余弦定理に従った方向へ再放出される。特許第7,313,922号明細書の示された実施形態では、閉鎖されたベースは、非凝縮ガスを第2ステージクライオパネルに向けて集中させるために湾曲されている。したがって、1型ガスは凝縮されると予想されるが、2型及び3型ガスは、第2ステージ上での凝縮または吸着のために、第2ステージクライオパネルに向けて指向される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】米国特許第4,494,381号明細書
【文献】米国特許第4,356,701号明細書
【文献】米国特許第7,313,922号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
第2ステージアレイの高い捕捉率及び低い輻射負荷を備えた改良されたクライオポンプ遮蔽は、開示された第2ステージアレイ構成で得られてもよい。クライオポンプでは、極低温冷凍機は、冷却(例えば第1)ステージとより低温の冷却(例えば第2)ステージとを備える。側部と閉鎖端と閉鎖端の反対側の前面開口部とを有する輻射シールドは、冷却ステージに熱連結され、このステージによって冷却される。より低温の冷却ステージに熱連結され、このステージによって冷却される1次クライオポンピングアレイは、吸着材料を支持する。冷却ステージに熱連結された前面アレイは、1次クライオポンピングアレイの前面に面する外囲容器から間隔を置いて、この外囲容器に包み込まれる。このように、前面アレイは、1次クライオポンピングアレイの輻射負荷を4%未満にするために、前面開口部から1次クライオポンピングアレイへの輻射の経路上にあるのがよい。
【0014】
前面アレイは、前面開口部から引っ込み、前面開口部よりも1次クライオポンピングアレイに近接してもよい。
【0015】
高いガスコンダクタンスのために、1次クライオポンピングアレイは、前面開口部の断面積よりもかなり小さい断面積を有する。前面アレイが、1次クライオポンピングアレイに包み込まれるのを容易にするため、1次クライオポンピングアレイは、その周縁部よりも中心に向かって輻射シールド前面開口部により近接した前面に面する外囲容器を有するのがよく、前面アレイが、その周縁部よりも中心のところで輻射シールド前面開口部により近接した前面に面する外囲容器を有するのがよい。例えば、1次クライオポンピングアレイの各々の前面に面する外囲容器と前面アレイとが、ドーム状であるのがよい。前面アレイが、輻射シールドからほぼ独立した熱経路を介して冷却ステージに熱連結されるのがよい。例えば、前面アレイが、冷却ステージを包囲する円筒体を介して冷却ステージに連結されるのがよい。
【0016】
前面アレイは、輻射シールドの全長の少なくとも20%だけ前面開口領域の下方に位置決めされるのがよい。前面アレイは、頂面が、前面開口部下方に50mmから100mmの範囲で位置決めされているのがよい。前面開口部は、1次クライオポンピングアレイから25mm未満の間隔を空けてもよい。
【0017】
高いコンダクタンスのために、1次クライオポンピングアレイの断面積が、前面開口部の50%未満の面積の前方突出断面積を有してもよい。前面アレイは、前面開口部の60%未満の面積の、且つ1次クライオポンピングアレイの断面積より大きい前方突出断面積を有するのがよい。
【0018】
前面アレイは、円環状のルーバーを備えるのがよい。前面アレイの中心に向くルーバーは、周縁部に向くルーバーより幅が大きいのがよい。
【0019】
輻射シールドの閉鎖端及び周縁クライオポンピングアレイの遠位側外囲容器は、第2ステージアレイへのガスコンダクタンスを集中させながら、第2ステージの輻射負荷を最小化するためにドーム状であるのがよい。
【0020】
本アレイ構成は、少なくとも20%の水素捕捉率を可能にする。輻射負荷量は、3%未満であればよく、好ましくは2%未満、より好ましくは1%未満である。
【0021】
前記のことは、異なる図にわたって類似の引用記号が同一部品を示す添付の図面に図示されているように、例示の実施形態の後述のより詳細な説明から明確になるだろう。図面は必ずしも縮尺通りではなく、代わりに実施形態を例示することに重点が置かれている。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】従来技術のクライオポンプを示す断面斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態のクライオポンプの断面斜視図である。
【
図3】異なる角度からの
図2のクライオポンプの断面斜視図である。
【
図4】本発明の別の実施形態のクライオポンプの断面斜視図である。
【
図5】
図2ないし
図4の実施形態の各々で使用される前面アレイの拡大斜視図である。
【
図6】本発明の更にもう1つの実施形態の断面斜視図である。
【
図7】
図6の実施形態で使用される前面アレイの拡大斜視図である。
【
図8】本発明の更にもう1つの実施形態の断面斜視図である。
【
図10】本発明の更にもう1つの実施形態の断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
例示の実施形態の説明を以下に示す。
【0024】
上述したように、望まない輻射及びガス汚染から第2ステージアレイを保護する目的のためのクライオポンプ遮蔽は、どのようなクライオポンプの設計でも非常に重要である。大部分のクライオポンプの設計で、平面前面アレイは、アレイにガス分子の流入を許容しながら、第2ステージアレイへの輻射を遮蔽するために使用される。この設計は、成功と共に長年使用されてきたが、最適な遮蔽及び伝達特性に劣る。輻射シールドを介する前面アレイへの熱コンダクタンスも妥協されていた。バッフル「リング」が、コンダクタンスを制限または増やすように追加、あるいは取り除かれ、第2ステージアレイへの輻射負荷に対応する影響をもたらした。
【0025】
図1は、真空容器102に位置決めされた先行技術のクライオポンプを示す。真空容器は、周囲温度であり、典型的にはゲートバルブを介してフランジ104によってプロセスチャンバに取り付けられている。真空容器102内のクライオポンプの構成要素は、2段式極低温冷凍機106によって冷却される。冷凍機は、コールドフィンガの円筒体112、116内を往復運動する第1ステージディスプレーサ110及び第2ステージディスプレーサ114とを備えるコールドフィンガを有する。コールドフィンガは、フランジ118を介して駆動モータに取り付けられ、真空容器102の側部ポート108を貫通する。
【0026】
真空容器内に位置決めされた輻射シールド120が、第1ステージヒートシンク112を介して冷凍機の冷却第1ステージ112によって約65ケルビンで冷却される。前面アレイ124が、支柱128上で支持され放射シールドを介して支柱128によって約80ケルビンまで冷却されるルーバー126で形成される。
【0027】
1次クライオポンピングアレイ130は、極低温コールドフィンガのより低温の第2ステージ116のヒートシンク132に取り付けられる。第2ステージアレイの多くの構成が知られ、本発明で使用できるものとして許容されるが、本実施形態では、第2ステージクライオポンピングアレイは、複数の平坦な径方向に伸びるバッフル134を備えている。バッフルは3型ガスを捕捉するための吸着材料で被覆されている。これらは、約13ケルビンまで冷却できるように、冷凍のより低温の第2ステージのヒートステーション132に熱連結されている。
【0028】
前面アレイの設計は、設計目標のバランスである。より開放された前面アレイは、より多くのガスを、捕捉される輻射シールド内の空間へ流入させることを可能にし、より高い捕捉率をもたらす。例えば、開放型の設計は、水素のより高い捕捉率のために、水素が空間内へよりたやすく流入することを可能にし、多くの用途の欠かせない設計要件となる。一方で、より開放させた設計は、より多くの輻射を第2ステージアレイに直接通過させることを許容し、したがって、第2ステージアレイに望ましくない輻射負荷を生じさせる。第2ステージアレイの輻射負荷量は、第2ステージアレイに直接衝突するアレイの前面開口部で受ける輻射のパーセンテージである。より閉鎖された設計で、輻射は、前面アレイによって遮蔽される、あるいは輻射シールド120への見通し線の列に限定され、第2ステージ輻射負荷量を減少させると考えられる。しかしながら、第2ステージアレイ上で凝縮させようとする、または吸着させようとするガスは、まず前面アレイのルーバー126にぶつかる傾向がある。高い真空環境下では、このようなガスは、プロセスチャンバに向かって戻されると考えられる。
【0029】
特許第7,313,922号明細書及び
図1での前面アレイは、水素のより高い捕捉率のために開放されているが、第2ステージへの輻射負荷量の増加をもたらす。
【0030】
また、輻射負荷量は、輻射シールドの前面開口部で受け入れられた後に第2ステージアレイに固着するプロセスチャンバからのフォトレジストのような汚染物質のパーセンテージの近似値である。このような汚染物質は、高い真空環境下で直線的に移動し、第1の接触表面に固着する。
【0031】
本明細書中に示す設計変更は、多くの従来クライオポンプの設計に対する改良として容易に利用される。前面アレイは、ポンプの入口のところ、即ち、大部分のクライオポンプのように、輻射シールドの前面開口部のところに配置されないが、ポンプの内側深くに配置され、より優れた遮蔽及び目的に合わせたパフォーマンスを提供する。前面アレイは、第2ステージアレイの形状をまねて形作られ、第2ステージアレイに対する2型及び3型ガスのコンダクタンスを改良しながら、望まないガス及び輻射から第2ステージアレイをより良く遮蔽するように寸法決めすることができる。この設計は、改良型の真空パフォーマンスを達成できるように改良された熱コンダクタンスと低減された温度とのための第1ステージヒートステーションから前面アレイへのより短い熱経路を可能にする。この設計は、ガス分子へ開放されるように、しかし、汚染物質及び輻射負荷から第2ステージを隔離するように仕上げられている。
【0032】
図2は、本発明の特徴を表すクライオポンプを示す。真空容器102、108と取付フランジ104と118とは、
図1の従来技術のような設計である。輻射シールド202は、従来技術の設計の輻射シールド120と同一とすることもできるが、本明細書では、遠位側端部をよりドーム形状にしている。ドーム形状は、余弦定理に従って輻射シールドから第2ステージクライオポンピングアレイ130に向かって再放出される2型及び3型分子のより多くの集中化を提供する。追加的な再集中化は、輻射シールドの前面開口部204が前面アレイによって完全に遮られないという本設計に、特に利点をもたらす。結果、輻射だけでなく、はるかに多くのガスが、前面開口部を介して閉鎖端を有する輻射シールドに向かって流入する。
【0033】
図1の従来のクライオポンプのように入口前面アレイを有するのではなく、本実施形態の前面アレイは、第2の、より低温の冷却ステージクライオポンピングアレイ130に近接して輻射シールドの内側に設置される。前面アレイ206が、前面に指向された
第2ステージアレイの包絡面の形状に対応するように形作られ、第2ステージアレイの前面に指向された端部を包み込む。前面アレイ206は、後述するように、従来技術のように輻射シールドを介するのではなく、コールドフィンガの第1の、冷却ステージから直接冷却されるルーバー208で形成されるのが好ましい。この実施形態では、前面アレイ206が、前面に指向された
第2ステージアレイの包絡面のドーム形状に対応するドーム形状である。この実施形態では、ルーバーが、広い中央ルーバー210と、直径が大きくなるが幅Wは減少する連続するルーバー208とを有する。ルーバーは、所定の幅Wとすることもできるが、それは費用を増加させ、同一の輻射負荷量のために分子が流入するのを妨げる。この実施形態では、ルーバー208は、平坦なリングであるが、後述のように、異なる形状、寸法、数にすることもできる。
【0034】
前面アレイ206のルーバー208、210が第2ステージアレイに近接して位置決めされているので、前面開口部204を通過する第2ステージアレイに向かう輻射をより効果的に遮蔽することができる。一方で、ルーバーは、径方向に輻射シールドに向かって面する幅広い間隔を残し、その結果、自由に前面開口部204に流入して輻射シールドの内表面にぶつかるガス分子が、余弦関数に従ってほぼ径方向に、第2ステージクライオポンピングアレイに向けて再放出される。したがって、この構成は、第2ステージアレイの輻射負荷量をかなり削減しながら、ガス分子の捕捉のために非常に開放されている。
【0035】
本実施形態及び他の実施形態では、前面アレイ206が、前面開口部204の下方に、輻射シールドの全長の少なくとも20%だけ、例えば50mmから100mm離れているのが好ましい。第2ステージアレイから25mm未満であることが好ましい。少なくとも20%の水素捕捉率のためには、1次、第2ステージクライオポンピングアレイの前方突出断面積が、前面開口部の50%未満の面積であり、前面アレイの前面突出面積が、前面開口部領域の60%未満であることが最良である。前面アレイが第2ステージアレイに包み込まれた状態で、前面開口部から第2ステージアレイへのほぼ全ての直線の経路上では、4%未満、更には1%未満の輻射負荷量が得られる。
【0036】
図3は、冷凍機コールドフィンガの第1ステージヒートシンク122への第1ステージ前面アレイ206の熱連結を表すための異なる視点からの
図2の実施形態を示す。前面アレイのルーバー210、208は、第1ステージコールドフィンガのヒートシンク122から伸びる改良型シールド円筒体304に連結された伝熱性支柱302に支持され、伝熱性支柱302に熱連結されている。シールド304は、前面アレイ206への熱流入をサポートするようにより多くの伝導率のために、より厚い材料のものである点で
図1のシールド136に関して改良されている。それは、フランジ306を介してヒートシンク122に取り付けられる。
【0037】
図4は、
図1の従来技術で使用された輻射シールドが使用されている点を除いて
図3の実施形態とほぼ同一である別の実施形態を示す。
図4は、反対側からのシステムの断面図も示す。
【0038】
図5は、
図3及び
図4の前面アレイのより詳しい図である。2つのより大きい直径のルーバー208が、第2ステージシールド304を介して第1ステージヒートシンクに更に直接連結されていることが示されている。フランジ306が更に示され、このフランジによりシールド304が、冷凍機コールドフィンガの第1ステージのヒートステーション122に連結されている。
【0039】
図6は代替の実施形態を示す。この実施形態では、従来の輻射シールド120が使用されている。ルーバーの異なる構成が提供される。この実施形態では、中央ルーバー210及び最上部のリングルーバー208が、従来の前面アレイのルーバーにより類似した1組のルーバーに置き換えられている。3つのルーバー608は、改良された支柱604及び追加の支柱606に取り付けられる。ルーバー608は、平面に沿って角度づけられ、それぞれ異なる直径である。しかしながら、従来の前面アレイと異なり、これらのルーバー608は、前方に突出した
第2ステージアレイ130の包絡面に近接して、好ましくは25mm以内に位置決めされ、輻射シールドの前面開口部の十分下方に、好ましくは50~100mm下方に設置される。これらは、
図2の3つの最下部のルーバー208と同様に、ルーバー208によって更に補われ、前面アレイが第2ステージアレイを包み込む。
【0040】
図7は、
図6の前面アレイをより詳細に示す。支柱604は、3つのルーバー608を支持する直線頂部セクション610を有する。
【0041】
図8は、前面アレイの別の実施形態を示す。
図2のように、直径が増加していく追加のリングルーバーによって包囲された中央ルーバー210が存在する。しかしながら、この実施形態では、5つのリングが提供され、各リングが、リングの内径から外径に上方に向かう湾曲を有する。ルーバーのこの設計は、第2ステージアレイに向かってより多くのガスコンダクションをもたらす。
【0042】
図9は
図8のルーバーを断面で示す。ルーバーを支持する支柱は、
図8及び
図9には図示されない。
【0043】
図10は、ルーバーが周縁部の近くで上方に曲げられたプレートである更にもう1つの実施形態である。これらルーバー1002は、
図11により詳細に示される。
図10及び
図11の各々では、支持支柱は図示されない。
【0044】
第2ステージアレイへの2%(1.74%)未満の算出された輻射負荷量は、算出されたガス速度(例えば、より高い水素捕捉率)と比較して、(4.2%)での既存の平面アレイの半分未満である。アレイは、真空パフォーマンスを増大させるためのより優れた熱的及び第1衝突ガス保護で、より深く着座し、第2ステージアレイを包囲する。
【0045】
従来のクライオポンプの設計では、第2ステージアレイは、前面開口部を横断して取り付けられた平面輻射バッフルの入口によって遮蔽される。本設計では、第2ステージアレイがポンプ内側の下方にある前面輻射バッフルアレイで遮蔽され、速度と第2ステージ輻射負荷量とのトレードオフを制限している。この機能強化は、更に入口バッフルを、第2ステージ円筒体の周りのガスシールドを介して第1ステージヒートステーションに直接取付け、その結果、より低温の前面アレイとより優れた真空パフォーマンスとを提供している。熱負荷シミュレーションは、前面アレイが、従来設計の約80ケルビンより、かなり低温の70ケルビン未満になることを示す。
【0046】
この設計は、真空チャンバ内側の元の場所の第2ステージクライオポンプ配置と両立することもできる。従来、「輻射シールド」と入口バッフルは、第2ステージ輻射を制限するために使用されるが、第2ステージへのガス排気を抑制するものであった。この結果、「輻射シールド」は第2ステージアレイの周りのガス伝導を制限し、速度を制限するが、この制限はこの設計では生じない。小さい接地面積及び目的に合わせた設計は、これらのタイプの用途に理想的である。
【0047】
提案された設計は、輻射を制限するように第2ステージアレイに適合するが、アレイへのより優れたガス伝導を可能にする。この「目的に合わせた」アプローチは、費用が少なく、より低い温度で作動し、従来のアレイと関連した嵩張る部品を取り除く。
【0048】
設計コンセプトは、ガス伝導を可能にしながら、より低い熱負荷量及び少ない第2ステージの炭汚染のための次世代のインプラント用途に適している。この設計コンセプトは、増大したガス伝導を可能にしながら輻射及びガス汚染を制限する既存のクライオポンプにも活用できる。
【0049】
本明細書で引用した全ての特許、公開された出願、引用文献の技術は、引用によってその全体が組み込まれる。
【0050】
例示の実施形態が、詳細に示され、説明されてきたが、形態及び詳細の種々の変更が、添付の特許請求の範囲によって包含された実施形態の範囲から離れることなくなされることが当業者に理解されるだろう。