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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-07
(45)【発行日】2023-07-18
(54)【発明の名称】半導体ウェハの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/66 20060101AFI20230710BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20230710BHJP
   H01L 21/208 20060101ALI20230710BHJP
【FI】
H01L21/66 N
H01L21/304 611A
H01L21/208 D
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021569194
(86)(22)【出願日】2020-04-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-29
(86)【国際出願番号】 EP2020061992
(87)【国際公開番号】W WO2020233960
(87)【国際公開日】2020-11-26
【審査請求日】2022-01-06
(31)【優先権主張番号】102019207433.2
(32)【優先日】2019-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】599119503
【氏名又は名称】ジルトロニック アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Siltronic AG
【住所又は居所原語表記】Einsteinstrasse 172,81677 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ボーイ,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ケスター,ルートビヒ
(72)【発明者】
【氏名】ソイカ,エレナ
(72)【発明者】
【氏名】シュトルク,ペーター
【審査官】河合 俊英
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-016312(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/66
H01L 21/304
H01L 21/208
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ウェハの製造方法であって、
シリコンの単結晶ロッドを提供し、
前記単結晶ロッドは結晶片に切断され、
テストウェハを1つの前記結晶片から取り出し、
前記テストウェハは、デバイス加工における熱処理に対応する第1の熱処理方法に供され、
その後、第2の熱処理方法が行われ、
前記第2の熱処理方法は、加熱段階と、保持温度Thでの保持段階と、冷却段階とを含み、
前記第2の熱処理方法は、前記テストウェハ上で中心部と縁部との間に径方向温度差ΔTを引き起こし、前記保持段階における前記径方向温度差ΔTは1K~30Kであり、
前記テストウェハの冷却後、テストウェハは、SIRD測定を用いて応力場に関して分析され、
この結果を利用して、前記結晶片から得られた前記半導体ウェハが不良であるか否かが判断される、半導体ウェハの製造方法。
【請求項2】
前記保持段階の温度Thは、700℃~1410℃ある、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記単結晶ロッドはチョクラルスキー法により引き上げられる、求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記単結晶ロッドは、フロートゾーン法によって引き上げられる、求項1から請求項3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記加熱段階の加熱速度は4K/s未満であり、
前記冷却段階の冷却速度は5K/s未満である、求項1から請求項4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記保持段階における前記前記径方向温度差ΔTの量は2K~5Kである、求項1から請求項5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1と第2の熱処理方法の少なくとも1つ雰囲気は、He、Ar、H、O、N、NH、CH、SiHCl、SiHCl、SiH、SiCl、CHClSi、およびHOからなるリストからの少なくとも1つの化学物質を含む、求項1から請求項6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記加熱段階および前記冷却段階の両方における径方向熱勾配の量は、前記保持段階における径方向熱勾配の量よりも小さい、求項1から請求項7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記第2の熱処理方法は、サセプタを用いて行われ、前記サセプタ上で前記半導体ウェハはその領域全体にわたって置かれる、求項1から請求項8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記保持段階の持続時間は、少なくとも10秒である、求項1から請求項9のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェハの製造方法に関し、特に部品加工における好適性についての結晶片の検査に関する。
【背景技術】
【0002】
単結晶半導体ウェハは、現代のエレクトロニクスの基礎である。前記半導体ウェハ上の部品の製造中、今日では非常に複雑な熱プロセスが実行される。これらのステップが結晶格子において熱応力(以下では「応力」と呼ぶ)をもたらし得ることは、ほとんど驚くべきことではない。半導体ウェハのウェハ支持体上での熱処理中における半導体ウェハの好ましくない取り付けでも、さらなる応力をもたらす可能性があり、最終的には、他の要因とともに、半導体ウェハのコーティングも、さらなる応力場をもたらす可能性がある。
【0003】
上降伏応力τuyとして知られる物理的パラメータは、それを超えると半導体ウェハの変形がもはや弾性的に可逆的ではなく、代わりに塑性的に不可逆的となる応力レベルを示す半導体ウェハのパラメータである。個々の半導体ウェハの上降伏応力は、特定の場合に知識/アクセスがないかまたは不完全である多数のパラメータに依存する。
【0004】
誘起応力がそれぞれの上降伏応力よりも大きい場合、不可逆変形による応力の散逸が、滑り線の形成を含むメカニズムによって起こり得、これは、部品加工中に障害をもたらし得、したがって、デバイスプロセスの部分におけるコストの増加をもたらし得る。
【0005】
単結晶半導体ウェハ、特にシリコン製のウェハは、典型的には、まず、フロートゾーン法(FZ)またはチョクラルスキー法(CZ)によって単結晶ロッドを引き上げることにより製造される。このようにして製造されたロッドは結晶片に分割され、典型的にはワイヤソーまたは内径ソーで半導体ウェハに加工される。研削、研磨、および縁部機械加工の後、エピタキシャル層が、選択肢的に、CVDによって適用されてもよい。このようにして製造されたこれらの半導体ウェハは、その後、さらなるデバイス処理に利用可能となる。
【0006】
半導体ウェハの滑りがデバイス加工における半導体ウェハの熱処理においてのみ認識される場合、特定の製造の垂直範囲によっては、発生するコストは相当になることがある。
【0007】
このため、デバイス加工に投入される半導体ウェハは、デバイス加工時に発生する応力が上降伏応力未満であり、したがって、滑り線が形成されず、その結果、欠陥が発生しないウェハのみを含む必要がある。
【0008】
実際には、特定の半導体ウェハの上降伏応力も、デバイス処理中に生じる応力も、充分な知識はない。
【0009】
原理的には、熱ステップ中に半導体ウェハに生じる応力を低減することが可能である。例えば、US2007/084827 A1は、特に低い表面粗さを有するサセプタであって、その上に半導体ウェハが熱処理される間に載置されるサセプタが、発生する滑り線の数を減少させることができることを教示している。しかしながら、この手段は、例えば非常に大きな加熱および冷却速度によって引き起こされる熱誘起応力の低減は可能にしない。高スループットが利用可能な時間を制限するため、大きな加熱および冷却速度が、典型的には、実際に用いられる。
【0010】
US2004/040632 A1は、高温で処理される半導体ウェハのための平坦な支持面を提供する特殊なサセプタを記載している。このサセプタは、処理中に半導体ウェハの機械的に誘起される応力を低減することができるように見える。ここでも、熱誘起応力の低減はない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
半導体ウェハの上降伏応力、およびデバイス加工中に実際に誘起される半導体ウェハ応力の両方を予測することは非常に困難である。その結果、デバイス加工において半導体ウェハが損傷を受けるか否かを予測することも非常に困難である。
【0012】
そこで、本発明の第1の目的は、製造された半導体ウェハが、デバイス加工時に応力の発生による損傷によって損傷を受けるか否かを示すことができる、半導体ウェハの半導体材料の評価方法を提供することにある。
【0013】
本発明の第2の目的は、ウェハにおける残留応力の大きさおよび方向を判定できる、半導体ウェハの評価方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
これらの目的は、特許請求の範囲の特徴によって達成される。
本発明の方法の好ましい実施形態が、以下の説明において詳細に記載される。個々の特徴は、本発明の実施形態として別々にまたは組み合わせて実現することができる。
【0015】
本発明は、先行技術に従って引き上げられたシリコンの単結晶(ロッド、インゴット)から始まり、まず、ソー、好ましくはバンドソーによって結晶片に切断される。
【0016】
本発明に関して、単結晶は、例えば、ゲルマニウム、ヒ化ガリウム、窒化ガリウム、またはそれらの混合物等の別の半導体材料からなってもよい。また、本発明においては、チョクラルスキー結晶引き上げ法以外にも他の結晶成長法も可能であり、例えばフロートゾーン(FZ)が挙げられる。
【0017】
好ましくは、少なくとも1つの半導体ウェハが、バンドソーまたは内径ソーを用いて、1つの結晶片からテストウェハとして切断され、本発明に従って分析のために供給される。当該結晶片の残りは、分析の結果に従って、半導体ウェハのさらなる製造プロセスに供給される。
【0018】
半導体ウェハのさらなる製造プロセスは、ワイヤソーイング、研削、ラッピング、研磨、縁部丸め、洗浄、およびエッチングのステップを含む。ホモエピタキシャルまたはヘテロエピタキシャルに堆積されるさらなる半導体材料の層の適用は、任意である。
【0019】
単結晶から分離された半導体材料の半導体ウェハは、好ましくは直径150mm、200mm、または好ましくは300mmの単結晶シリコンウェハを含む。
【0020】
半導体ウェハは、表面および裏面と、周縁部も含み、これらは共にこのウェハの表面を形成する。縁部は、一般に、事前の研削およびエッチングプロセスによって平坦化され、ファセットと呼ばれる2つの表面と、頂点またはブラントと呼ばれる、ウェハの表側/裏側に垂直な周方向表面とからなる。半導体材料のウェハの表側は、定義上、後続の部品処理において所望の微細構造が適用される面である。
【0021】
このように採取された半導体ウェハは、本発明に従って、好ましくは第1の熱処理に供され、この熱処理の熱収支は、好ましくはデバイス加工における熱処理に対応する。この第1のステップが実行されるかどうかは、本発明には無関係である。しかしながら、本発明者らは、このステップを実施することにより、測定結果が著しく改善されることを認識している。
【0022】
デバイス加工において、熱処理ステップは、典型的には、例えばコーティングを施すために行われる。温度および時間などの必要とされる熱条件(熱収支)ならびに必要とされる気体組成(環境)は、コーティングの種類に応じて変化する。熱処理中に層が堆積されるかまたは堆積されないかは、本発明の方法に無関係であることが明らかになった。明らかに、デバイス処理の本質的に関連性のある時間/温度プロファイル(熱収支)をシミュレートすれば充分である。
【0023】
この種のデバイス処理は、例えば、東芝試験(780℃で3時間、次いで1000℃で16時間)として知られる試験であり得る。しかしながら、他の熱ステップを用いてもよい。
【0024】
好ましくは、主にデバイス処理で用いられる雰囲気が第1の熱処理ステップにおいて追加的に用いられる場合、本発明の方法の結果は再び著しく改善する。この場合の雰囲気は、好ましくは、He、Ar、H、O、N、NH、SiHCl、SiHCl、SiH、SiCl、CHClSi、CHまたはHOからなる群から選択される1つ以上の気体を含む。
【0025】
第2の熱処理プロセスは、加熱段階、保持段階、および冷却段階を含む。加熱段階は、半導体ウェハを室温から保持段階の所望の温度Th(保持温度)まで加熱する段階である。
【0026】
加熱速度は、室温と保持段階の温度との間の温度差と、それを達成するために必要とされる加熱時間とから形成される比であると理解される。
【0027】
さらに、冷却速度は、保持段階中の温度と室温との間の温度差と、それを達成するために必要とされる冷却時間とから形成される比であると理解される。
【0028】
特に好ましくは、4K/s以下の冷却速度が設定される。好ましい加熱速度は3K/s以下が好ましい。
【0029】
本発明によれば、第2の熱処理プロセスは、保持段階において半導体ウェハ上に温度差が誘起されるように実行される。この温度差は、ここでは半導体ウェハの中心から縁部までの温度勾配として理解され、半導体ウェハの平均温度は保持温度として理解される。
【0030】
700℃~1410℃(より好ましくは900℃~1100℃)の保持温度を設定することが好ましい。保持時間は、10秒~10分の間で変化し得、好ましい保持時間は約60秒である。
【0031】
より好ましくは、保持段階における温度勾配の量は、1~30K、非常に好ましくは2~5Kである。
【0032】
非常に好ましくは、保持段階における温度勾配の量は、加熱段階における温度勾配の量および冷却段階における温度勾配の量の両方よりも大きい。
【発明を実施するための形態】
【0033】
当業者は、温度勾配を測定するための多くの技術を知っている。例えば、1つ以上の高温計を用いて、高温ウェハ上の様々な位置における温度差を直接判定することができる。しかしながら、より高精度では、設定温度勾配は、例えば、SiHClでウェハをコーティングすることによって、間接的に判定することができる。この堆積は反応制限モードで行われ、堆積速度は温度の強い関数である。(例えばエリプソメトリーによって)堆積された層の層厚を測定し、適切な較正曲線を使用した後、ウェハの各点における温度を1つの温度に割り当て、したがって径方向温度勾配を判断することが可能である。
【0034】
応力場は、例えば、SIRD(走査赤外線偏光解消)などの好適な方法によって検出可能な、結晶格子内の局所的または大域的な応力である。SIRDは、直線偏光が機械的応力下にある領域を通過するときに直線偏光の偏光方向が変化する物理的原理を利用する。この場合の偏光解消は、以下のように定義される。
【0035】
【数1】
【0036】
ここで、Iは、検出器に捕捉されるレーザ光の強度であり、元の偏光方向(すなわち、平行)に従って偏光される。Iは、元の偏光方向に直交して検出器に捕捉されるレーザ光の強度である。ここで、偏光解消度Dは、測定部位における半導体ウェハ内の応力の尺度とみなされる。
【0037】
テストウェハにおいて応力を測定するための測定手法としては、SIRDが好ましい。
偏光解消度は、好ましくは、位置ベースの測定値を与えるよう、半導体ウェハの予め規定された領域の位置で測定される。
【0038】
このようにして得られた位置ベースの測定値をカットオフ波長2mmのハイパスフィルタにかける。
【0039】
次いで、これらの位置ベースの測定値の標準偏差
【0040】
【数2】
【0041】
が、以下のように計算される。
【0042】
【数3】
【0043】
ここで、nは測定数であり、xは位置iにおける個々の測定値であり、
【0044】
【数4】
【0045】
は前記領域内のすべての測定値の算術平均である。
第1の計算方法では、好ましくは、ある領域が、ウェハの表面上の中間点と一致する中間点を有するウェハ上の放射状対称リングとして定義される。ここで、この領域の外半径はウェハの半径より小さく、好ましくはウェハの半径の98%未満であり、内半径はウェハの半径の50%より大きく、好ましくはウェハの半径の75%より大きい。
【0046】
評価されたパラメータ
【0047】
【数5】
【0048】
は、ここでは、デバイス処理中の熱処理ステップとの関連でウェハの堅牢性の第1の尺度であると理解される。
【0049】
例えば、第1の計算技術を適用することにより、製造工程が異なる、異なる結晶インゴットからの異なるインゴットセグメントのインゴットセグメントを分析することができる。したがって、半導体ウェハの応力耐性要件を満たすために、結晶引き上げのパラメータの適切な修正を実行することが可能である。
【0050】
第2の計算技術では、ハイパスフィルタを用いて処理された測定データを少なくとも2つの領域に分割する。領域内では、測定値の最大値および最小値の両方に従って探索が行われる。最大値が予め規定された弁別器値DUよりも大きく、最小値が弁別器値DUの負の値よりも小さい場合、領域は「不良」と指定され、そうでない場合「良」と指定される。
【0051】
この第2の方法では、すべての領域に対する良領域の割合は、熱処理に関するウェハの品質に関する半導体ウェハの応力感受性の尺度として理解される。
【0052】
第2の計算技術の適用により、例えば、応力-堅牢性に関して影響を受けやすい領域を特定および/または観察することが可能である。