(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-07
(45)【発行日】2023-07-18
(54)【発明の名称】ガス分離方法、およびガス分離装置
(51)【国際特許分類】
B01D 53/047 20060101AFI20230710BHJP
C01B 23/00 20060101ALI20230710BHJP
【FI】
B01D53/047
C01B23/00 P
(21)【出願番号】P 2022552092
(86)(22)【出願日】2021-09-27
(86)【国際出願番号】 JP2021035248
(87)【国際公開番号】W WO2022065466
(87)【国際公開日】2022-03-31
【審査請求日】2022-11-18
(31)【優先権主張番号】P 2020162196
(32)【優先日】2020-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山脇 正也
【審査官】中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2003/045536(WO,A1)
【文献】特開2003-164720(JP,A)
【文献】特開2010-241686(JP,A)
【文献】特開2003-071231(JP,A)
【文献】特開2005-103400(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/02-12
C01B 23/00
G21F 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス分離装置を用いて、複数のガス成分を含む原料ガスから、第1のガス成分と、第2のガス成分と
を分離する、ガス分離方法であって、
前記ガス分離装置は、
吸着塔を有し、複数のガス成分を含む原料ガスから、前記第1のガス成分と、前記第2のガス成分とを圧力吸着式で分離する分離部と、
前記原料ガスを貯留する原料ガス容器と、
希ガス使用設備から排出される排出ガスを前記原料ガス容器に供給する第1の供給配管と、
前記原料ガス容器と、前記分離部とを接続する第2の供給配管と、
前記分離部で分離された前記第1のガス成分を貯留する第1の分離ガス容器と、
前記分離部で分離された前記第2のガス成分を貯留する第2の分離ガス容器と、
前記第1の分離ガス容器内の前記第1のガス成分を第1の導入ガスとして、前記原料ガスに導入する第1の導入配管と、
前記第2の分離ガス容器内の前記第2のガス成分を第2の導入ガスとして、前記原料ガスに導入する第2の導入配管と、
前記第1の導入配管に設けられた第1の流量制御器と、
前記第2の導入配管に設けられた第2の流量制御器と、
前記第1の供給配管を流れる、前記第1のガス成分と、前記第2のガス成分との情報を取得するためのガス成分情報取得装置と、
前記第1の流量制御器、前記第2の流量制御器、及び前記ガス成分情報取得装置とそれぞれ電気的に接続された演算装置とを備え、
前記ガス成分情報取得装置が、
前記第1の供給配管に設けられた流量計と、
前記第1の供給配管に設けられた前記第1のガス成分の濃度を測定する濃度計、および前記第1の供給配管に設けられた前記第2のガス成分の濃度を測定する濃度計の少なくとも一方とを含み、
前記原料ガスから分離した後の前記第1のガス成分を、
前記第1の導入ガスとして前記原料ガスに導入し、かつ、前記原料ガスから分離した後の前記第2のガス成分を、
前記第2の導入ガスとして前記原料ガスに導入
する工程を具備し、
前記工程において、前記ガス成分情報取得装置により得られる、前記排出ガスに含まれる、前記第1のガス成分と、前記第2のガス成分との各流量に基づいて、下記のガス流量和S
1
及び下記のガス流量和S
2
をそれぞれ一定の値に制御する、ガス分離方法
ガス流量和S
1
:前記排出ガス中の前記第1のガス成分の流量V
F1
と、前記第1の導入ガスの流量V
R1
との合計値
ガス流量和S
2
:前記排出ガス中の前記第2のガス成分の流量V
F2
と、前記第2の導入ガスの流量V
R2
との合計値。
【請求項2】
ガス分離装置を用いて、複数のガス成分を含む原料ガスから、第1のガス成分と、第2のガス成分とを分離するガス分離方法であって、
前記ガス分離装置は、
吸着塔を有し、複数のガス成分を含む原料ガスから、前記第1のガス成分と、前記第2のガス成分とを圧力吸着式で分離する分離部と、
前記原料ガスを貯留する原料ガス容器と、
希ガス使用設備から排出される排出ガスを前記原料ガス容器に供給する第1の供給配管と、
前記原料ガス容器と、前記分離部とを接続する第2の供給配管と、
前記分離部で分離された前記第1のガス成分を貯留する第1の分離ガス容器と、
前記分離部で分離された前記第2のガス成分を貯留する第2の分離ガス容器と、
前記第1の分離ガス容器内の前記第1のガス成分を第1の導入ガスとして、前記原料ガスに導入する第1の導入配管と、
前記第2の分離ガス容器内の前記第2のガス成分を第2の導入ガスとして、前記原料ガスに導入する第2の導入配管と、
前記第1の導入配管に設けられた第1の流量制御器と、
前記第2の導入配管に設けられた第2の流量制御器と、
前記第1の供給配管を流れる、前記第1のガス成分と、前記第2のガス成分との情報を取得するためのガス成分情報取得装置と、
前記第1の流量制御器、前記第2の流量制御器、及び前記ガス成分情報取得装置とそれぞれ電気的に接続された演算装置とを備え、
前記ガス成分情報取得装置が、
前記第1の供給配管に設けられた流量計と、
前記希ガス使用設備から排出される前記第1のガス成分の流量情報を前記希ガス使用設備から電気的に受信する受信機、及び前記希ガス使用設備から排出される前記第2のガス成分の流量情報を前記希ガス使用設備から電気的に受信する受信機の少なくとも一方とを含み、
前記原料ガスから分離した後の前記第1のガス成分を、前記第1の導入ガスとして前記原料ガスに導入し、かつ、前記原料ガスから分離した後の前記第2のガス成分を、前記第2の導入ガスとして前記原料ガスに導入する工程を具備し、
前記工程において、前記ガス成分情報取得装置により得られる、前記排出ガスに含まれる、前記第1のガス成分と、前記第2のガス成分との各流量に基づいて、下記のガス流量和S
1及び下記のガス流量和S
2をそれぞれ一定の値に制御する、ガス分離方法
ガス流量和S
1:前記排出ガス中の前記第1のガス成分の流量V
F1と、前記第1の導入ガスの流量V
R1との合計値
ガス流量和S
2:前記排出ガス中の前記第2のガス成分の流量V
F2と、前記第2の導入ガスの流量V
R2との合計値。
【請求項3】
ガス分離装置を用いて、第1のガス成分と、第2のガス成分と、不可避成分とからなる原料ガスを分離する、ガス分離方法であって、
前記ガス分離装置は、
吸着塔を有し、原料ガスから、前記第1のガス成分と、前記第2のガス成分とを圧力吸着式で分離する分離部と、
前記原料ガスを貯留する原料ガス容器と、
希ガス使用設備から排出される排出ガスを前記原料ガス容器に供給する第1の供給配管と、
前記原料ガス容器と、前記分離部とを接続する第2の供給配管と、
前記分離部で分離された前記第1のガス成分を貯留する第1の分離ガス容器と、
前記分離部で分離された前記第2のガス成分を貯留する第2の分離ガス容器と、
前記第1の分離ガス容器内の前記第1のガス成分を第1の導入ガスとして、前記原料ガスに導入する第1の導入配管と、
前記第2の分離ガス容器内の前記第2のガス成分を第2の導入ガスとして、前記原料ガスに導入する第2の導入配管と、
前記第1の導入配管に設けられた第1の流量制御器と、
前記第2の導入配管に設けられた第2の流量制御器と、
前記第1の供給配管を流れる、前記第1のガス成分と、前記第2のガス成分との情報を取得するためのガス成分情報取得装置と、
前記第1の流量制御器、前記第2の流量制御器、及び前記ガス成分情報取得装置とそれぞれ電気的に接続された演算装置とを備え、
前記ガス成分情報取得装置が、
前記第1の供給配管に設けられた前記第1のガス成分の濃度を測定する濃度計、および前記第1の供給配管に設けられた前記第2のガス成分の濃度を測定する濃度計の少なくとも一方と、
前記希ガス使用設備から排出される前記第1のガス成分の流量情報を、前記希ガス使用設備から電気的に受信する受信機、および前記希ガス使用設備から排出される前記第2のガス成分の流量情報を、前記希ガス使用設備から電気的に受信する受信機の少なくとも一方とを含み、
前記原料ガスから分離した後の前記第1のガス成分を、前記第1の導入ガスとして前記原料ガスに導入し、かつ、前記原料ガスから分離した後の前記第2のガス成分を、前記第2の導入ガスとして前記原料ガスに導入する工程を具備し、
前記工程において、前記ガス成分情報取得装置により得られる、前記排出ガスに含まれる、前記第1のガス成分と、前記第2のガス成分との各流量に基づいて、下記のガス流量和S
1及び下記のガス流量和S
2をそれぞれ一定の値に制御する、ガス分離方法
ガス流量和S
1:前記排出ガス中の前記第1のガス成分の流量V
F1と、前記第1の導入ガスの流量V
R1との合計値
ガス流量和S
2:前記排出ガス中の前記第2のガス成分の流量V
F2と、前記第2の導入ガスの流量V
R2との合計値。
【請求項4】
ガス分離装置を用いて、複数のガス成分を含む原料ガスから、第1のガス成分と、第2のガス成分とを分離する、ガス分離方法であって、
前記ガス分離装置は、
吸着塔を有し、複数のガス成分を含む原料ガスから、前記第1のガス成分と、前記第2のガス成分とを圧力吸着式で分離する分離部と、
前記原料ガスを貯留する原料ガス容器と、
希ガス使用設備から排出される排出ガスを前記原料ガス容器に供給する第1の供給配管と、
前記原料ガス容器と、前記分離部とを接続する第2の供給配管と、
前記分離部で分離された前記第1のガス成分を貯留する第1の分離ガス容器と、
前記分離部で分離された前記第2のガス成分を貯留する第2の分離ガス容器と、
前記第1の分離ガス容器内の前記第1のガス成分を第1の導入ガスとして、前記原料ガスに導入する第1の導入配管と、
前記第2の分離ガス容器内の前記第2のガス成分を第2の導入ガスとして、前記原料ガスに導入する第2の導入配管と、
前記第1の導入配管に設けられた第1の流量制御器と、
前記第2の導入配管に設けられた第2の流量制御器と、
前記第1の供給配管を流れる、前記第1のガス成分と、前記第2のガス成分との情報を取得するためのガス成分情報取得装置と、
前記第1の流量制御器、前記第2の流量制御器、及び前記ガス成分情報取得装置とそれぞれ電気的に接続された演算装置とを備え、
前記ガス成分情報取得装置が、
前記希ガス使用設備から排出される前記第1のガス成分の流量情報を、前記希ガス使用設備から電気的に受信する受信機と、
前記希ガス使用設備から排出される前記第2のガス成分の流量情報を、前記希ガス使用設備から電気的に受信する受信機とを含み、
前記原料ガスから分離した後の前記第1のガス成分を、前記第1の導入ガスとして前記原料ガスに導入し、かつ、前記原料ガスから分離した後の前記第2のガス成分を、前記第2の導入ガスとして前記原料ガスに導入する工程を具備し、
前記工程において、前記ガス成分情報取得装置により得られる、前記排出ガスに含まれる、前記第1のガス成分と、前記第2のガス成分との各流量に基づいて、下記のガス流量和S
1及び下記のガス流量和S
2をそれぞれ一定の値に制御する、ガス分離方法
ガス流量和S
1:前記排出ガス中の前記第1のガス成分の流量V
F1と、前記第1の導入ガスの流量V
R1との合計値
ガス流量和S
2:前記排出ガス中の前記第2のガス成分の流量V
F2と、前記第2の導入ガスの流量V
R2との合計値。
【請求項5】
前記第1のガス成分が、クリプトンまたはキセノンである、請求項1
~4のいずれかに記載のガス分離方法。
【請求項6】
前記第2のガス成分が、水素、窒素、酸素、ヘリウム、ネオン及びアルゴンからなる群から選ばれる少なくとも1種類以上を含む、請求項1
~4のいずれかに記載のガス分離方法。
【請求項7】
前記希ガス使用設備から排出される
前記排出ガスが、第3のガス成分をさらに含み、
前記原料ガスから分離した前記第1のガス成分を、
前記第1の導入ガスとして前記原料ガスに導入し、かつ、前記原料ガスから分離した後の前記第2のガス成分を、
前記第2の導入ガスとして前記原料ガスに導入した後、前記原料ガスから前記第3のガス成分を除去する、請求項1
~4のいずれか記載のガス分離方法。
【請求項8】
前記第3のガス成分が、有機化合物である、請求項
7記載のガス分離方法。
【請求項9】
吸着塔を有し、複数のガス成分を含む原料ガスから、第1のガス成分と、第2のガス成分と圧力吸着式で分離する分離部と、
前記原料ガスを貯留する原料ガス容器と、
希ガス使用設備から排出される排出ガスを前記原料ガス容器に供給する第1の供給配管と、
前記原料ガス容器と、前記分離部とを接続する第2の供給配管と、
前記分離部で分離された前記第1のガス成分を貯留する第1の分離ガス容器と、
前記分離部で分離された前記第2のガス成分を貯留する第2の分離ガス容器と、
前記第1の分離ガス容器内の前記第1のガス成分を第1の導入ガスとして、前記原料ガスに導入する第1の導入配管と、
前記第2の分離ガス容器内の前記第2のガス成分を第2の導入ガスとして、前記原料ガスに導入する第2の導入配管と、
前記第1の導入配管に設けられた第1の流量制御器と、
前記第2の導入配管に設けられた第2の流量制御器と、
前記第1の供給配管を流れる前記第1のガス成分と、前記第2のガス成分との流量の情報を取得するためのガス成分情報取得装置と、
前記第1の流量制御器、前記第2の流量制御器、及び前記ガス成分情報取得装置とそれぞれ電気的に接続された演算装置と、を備
え、
前記第1の供給配管に設けられた流量計:A
前記第1の供給配管に設けられた前記第1のガス成分の濃度を測定する濃度計:B
前記第1の供給配管に設けられた前記第2のガス成分の濃度を測定する濃度計:C
前記希ガス使用設備から排出される前記第1のガス成分の流量情報を、前記希ガス使用設備から電気的に受信する受信機:D
前記希ガス使用設備から排出される前記第2のガス成分の流量情報を、前記希ガス使用設備から電気的に受信する受信機:Eとした場合、
前記ガス成分情報取得装置が、
Aと、BおよびCの少なくとも一方との組み合わせ、
Aと、DおよびEの少なくとも一方との組み合わせ、および
Dと、Eとの組み合わせのうち、少なくとも1つの組み合わせにより構成され、
上記ガス成分情報取得装置により得られる、前記排出ガスに含まれる、前記第1のガス成分と、前記第2のガス成分との各流量に基づいて、前記希ガス使用設備から排出される前記排出ガス中の前記第1のガス成分の流量V
F1
と、前記第1の分離ガス容器から前記第1の導入配管を介して前記原料ガスに導入される前記第1の導入ガスの流量V
R1
との合計値であるガス流量和S
1
が一定の値になるように、前記第1の流量制御器が、前記第1の分離ガス容器から前記第1の導入配管を介して前記原料ガスに導入される前記第1の導入ガスの流量V
R1
を制御し、前記希ガス使用設備から排出される前記排出ガス中の前記第2のガス成分の流量V
F2
と、前記第2の分離ガス容器から前記第2の導入配管を介して前記原料ガスに導入される前記第2の導入ガスの流量V
R2
との合計値であるガス流量和S
2
が一定の値になるように、前記第2の流量制御器が、前記第2の分離ガス容器から前記第2の導入配管を介して前記原料ガスに導入される前記第2の導入ガスの流量V
R2
を制御するガス分離装置。
【請求項10】
吸着塔を有し、第1のガス成分と、第2のガス成分と、不可避成分とからなる原料ガスを分離する分離部と、
前記原料ガスを貯留する原料ガス容器と、
希ガス使用設備から排出される排出ガスを前記原料ガス容器に供給する第1の供給配管と、
前記原料ガス容器と、前記分離部とを接続する第2の供給配管と、
前記分離部で分離された前記第1のガス成分を貯留する第1の分離ガス容器と、
前記分離部で分離された前記第2のガス成分を貯留する第2の分離ガス容器と、
前記第1の分離ガス容器内の前記第1のガス成分を第1の導入ガスとして、前記原料ガスに導入する第1の導入配管と、
前記第2の分離ガス容器内の前記第2のガス成分を第2の導入ガスとして、前記原料ガスに導入する第2の導入配管と、
前記第1の導入配管に設けられた第1の流量制御器と、
前記第2の導入配管に設けられた第2の流量制御器と、
前記第1の供給配管を流れる前記第1のガス成分と、前記第2のガス成分との情報を取得するためのガス成分情報取得装置と、
前記第1の流量制御器、前記第2の流量制御器、及び前記ガス成分情報取得装置とそれぞれ電気的に接続された演算装置と、を備え、
前記第1の供給配管に設けられた前記第1のガス成分の濃度を測定する濃度計:B
前記第1の供給配管に設けられた前記第2のガス成分の濃度を測定する濃度計:C
前記希ガス使用設備から排出される前記第1のガス成分の流量情報を、前記希ガス使用設備から電気的に受信する受信機:D
前記希ガス使用設備から排出される前記第2のガス成分の流量情報を、前記希ガス使用設備から電気的に受信する受信機:Eとした場合、
前記ガス成分情報取得装置がBおよびCの少なくとも一方と、DおよびEの少なくとも一方との組み合わせにより構成され、
上記ガス成分情報取得装置により得られる、前記排出ガスに含まれる、前記第1のガス成分と、前記第2のガス成分との各流量に基づいて、前記希ガス使用設備から排出される前記排出ガス中の前記第1のガス成分の流量V
F1と、前記第1の分離ガス容器から前記第1の導入配管を介して前記原料ガスに導入される前記第1の導入ガスの流量V
R1との合計値であるガス流量和S
1が一定の値になるように、前記第1の流量制御器が、前記第1の分離ガス容器から前記第1の導入配管を介して前記原料ガスに導入される前記第1の導入ガスの流量V
R1を制御し、前記希ガス使用設備から排出される前記排出ガス中の前記第2のガス成分の流量V
F2と、前記第2の分離ガス容器から前記第2の導入配管を介して前記原料ガスに導入される前記第2の導入ガスの流量V
R2との合計値であるガス流量和S
2が一定の値になるように、前記第2の流量制御器が、前記第2の分離ガス容器から前記第2の導入配管を介して前記原料ガスに導入される前記第2の導入ガスの流量V
R2を制御するガス分離装置。
【請求項11】
前記第1の導入配管内の前記第1のガス成分の濃度を測定する第1の濃度計が、前記第1の導入配管にさらに設けられ、前記第1の濃度計も前記演算装置と電気的に接続されている、請求項
9または10に記載のガス分離装置。
【請求項12】
前記第2の導入配管内の前記第2のガス成分の濃度を測定する第2の濃度計が、前記第2の導入配管にさらに設けられ、前記第2の濃度計も前記演算装置と電気的に接続されている、請求項
9または10に記載のガス分離装置。
【請求項13】
前記第1のガス成分が、クリプトンまたはキセノンである、請求項
9または10に記載のガス分離装置。
【請求項14】
前記第2のガス成分が、水素、窒素、酸素、ヘリウム、ネオン及びアルゴンからなる群から選ばれる少なくとも1種類以上を含む、請求項
9または10に記載のガス分離装置。
【請求項15】
前記希ガス使用設備から排出される
前記排出ガスが第3のガス成分をさらに含み、
前記第1の供給配管の、前記第1の
ガス成分の濃度を測定する濃度計の後段に、第3のガス成分を除去する第3ガス除去装置がさらに設けられ、
前記第1の導入配管及び前記第2の導入配管は、前
記濃度計と、前記第3ガス除去装置との間の前記第1の供給配管に接続される、請求項11記載のガス分離装置。
【請求項16】
前記第3のガス成分が、有機化合物である、請求項
15記載のガス分離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス分離方法、およびガス分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
クリプトン、キセノン等の高付加価値ガスは、高周波放電によりプラズマを発生させる産業分野、工業設備等で使用されている。これら高付加価値ガスを精製する方法として、複数のガス成分を含む原料ガスから、第1のガス成分と、第2のガス成分とを圧力吸着式で分離するガス分離方法が知られている(特許文献1)。
特許文献1では、平衡型圧力変動吸着分離法と、速度型圧力変動吸着分離法とを組み合わせることにより、クリプトン、キセノン等を分離精製することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
希ガスは高付加価値ガスであるため、希ガス使用設備の希ガスを含む排出ガスの再利用は経済的な点で重要である。しかし、希ガス使用設備の排出ガス中の各ガス成分の濃度は、希ガス使用設備の運転状態によって大きく変化する。
【0005】
特許文献1は、異なる吸着分離法を組み合わせて、原料ガスの希ガス以外の成分の除去(希ガスの高純度化)と、希ガスの除去(希ガス以外の成分の高純度化)とを両立させているが、希ガス使用設備からの排出ガスにおける各成分の濃度が変わると下記の問題が生じる。
・排出ガス中の希ガス成分の比率が低下し、希ガス成分以外のガス成分の比率が増加した場合、希ガス成分以外のガス成分を除去する吸着分離の吸着剤で吸着除去すべきガス成分の濃度が相対的に増加する。そのため、吸着塔内の圧力が低下するとともに希ガス成分以外のガス成分を充分に除去できなくなる。その結果、分離後の希ガスの純度が低下する。
・排出ガス中の希ガス成分の比率が増加し、希ガス成分以外のガス成分の比率が減少した場合、希ガス成分を除去する吸着分離の吸着剤で吸着除去すべき希ガス成分の濃度が相対的に増加する。そのため、吸着塔内の圧力が低下するとともに希ガス成分を十分に除去できなくなる。その結果、分離後の希ガス以外の成分の純度が低下、つまり希ガスの回収率が低下する。
【0006】
上記の問題点への対策として、吸着塔の分離条件を排出ガスの組成の変動に応じて変更する手法も想定される。しかし、吸着塔の分離条件の制御には、圧縮機の吐出流量のインバータ制御、および吸着工程、再生工程の切替時間の変更を伴う。さらに、切替時間の変更により、特許文献1の特徴である吸着塔の再生工程で排出される各ガス成分の混合ガスを原料ガスに戻すタイミングやガス量が変わる。これにより、原料ガスの組成がより一層変動することになり、結果として非常に煩雑な制御負担が要求される。
以上説明したように、従来のガス分離方法にあっては、希ガス使用設備の排出ガスを再利用しようとすると、分離後の希ガスの純度、希ガスの回収率の両方を安定して高くすることが困難である。
【0007】
本発明は、希ガス使用設備の排出ガスを再利用しながらも、分離後の希ガスの純度および希ガスの回収率の両方を安定して高くすることができるガス分離方法及びガス分離装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は下記ガス分離方法及びガス分離装置を提供する。
[1] 複数のガス成分を含む原料ガスから、第1のガス成分と第2のガス成分とを圧力吸着式で分離する、ガス分離方法であって、前記原料ガスから分離した後の前記第1のガス成分を第1の導入ガスとして前記原料ガスに導入し、かつ、前記原料ガスから分離した後の前記第2のガス成分を第2の導入ガスとして前記原料ガスに導入し、前記第1の導入ガスの流量VR1及び前記第2の導入ガスの流量VR2を、希ガス使用設備から排出される排出ガス中の前記第1のガス成分及び前記第2のガス成分の各流量に基づいてそれぞれ制御することを特徴とする、ガス分離方法。
[2] さらに、下記のガス流量和S1及び下記のガス流量和S2をそれぞれ一定の値に制御する、[1]のガス分離方法。
ガス流量和S1:前記排出ガス中の前記第1のガス成分の流量VF1と、前記第1の導入ガスの流量VR1との合計値。
ガス流量和S2:前記排出ガス中の前記第2のガス成分の流量VF2と、前記第2の導入ガスの流量VR2との合計値。
[3] 前記第1のガス成分が、クリプトンまたはキセノンである、[1]または[2]のガス分離方法。
[4] 前記第2のガス成分が、水素、窒素、酸素、ヘリウム、ネオン及びアルゴンからなる群から選ばれる少なくとも1種類以上を含む、[1]~[3]のいずれかのガス分離方法。
[5] 前記希ガス使用設備から排出される排出ガスが、第3のガス成分をさらに含み、
前記原料ガスから分離した前記第1のガス成分を第1の導入ガスとして前記原料ガスに導入し、かつ、前記原料ガスから分離した前記第2のガス成分を、第2の導入ガスとして前記原料ガスに導入した後、前記原料ガスから前記第3のガス成分を除去する、[1]のガス分離方法。
[6] 前記第3のガス成分が、有機化合物である、[5]のガス分離方法。
[7] 複数のガス成分を含む原料ガスから、第1のガス成分と第2のガス成分とを圧力吸着式で分離する分離部と、前記原料ガスを貯留する原料ガス容器と、希ガス使用設備から排出される排出ガスを前記原料ガス容器に供給する第1の供給配管と、前記原料ガス容器と前記分離部とを接続する第2の供給配管と、前記分離部で分離された前記第1のガス成分を貯留する第1の分離ガス容器と、前記分離部で分離された前記第2のガス成分を貯留する第2の分離ガス容器と、前記第1の分離ガス容器内の前記第1のガス成分を第1の導入ガスとして、前記原料ガスに導入する第1の導入配管と、前記第2の分離ガス容器内の前記第2のガス成分を第2の導入ガスとして、前記原料ガスに導入する第2の導入配管と、前記第1の導入配管に設けられた第1の流量制御器と、前記第2の導入配管に設けられた第2の流量制御器と、前記第1の供給配管を流れる前記第1のガス成分と、前記第2のガス成分との流量の情報を取得するための流量情報取得装置と、前記第1の流量制御器、前記第2の流量制御器及び前記流量情報取得装置とそれぞれ電気的に接続された演算装置と、を備える、ガス分離装置。
[8] 前記流量情報取得装置が、前記第1の供給配管に設けられた流量計、前記第1の供給配管に設けられた第1のガス成分の濃度を測定する濃度計、前記第1の供給配管に設けられた第2のガス成分の濃度を測定する濃度計、前記希ガス使用設備から排気される第1のガス成分の流量情報を前記希ガス使用設備から電気的に受信する受信機、及び前記希ガス使用設備で使用される第2のガス成分の流量情報を前記希ガス使用設備から電気的に受信する受信機からなる群から選ばれる少なくとも1種以上を含む、[7]のガス分離装置。
[9] 前記第1の導入配管内の第1のガス成分の濃度を測定する第1の濃度計が、前記第1の導入配管にさらに設けられ、前記第1の濃度計も前記演算装置と電気的に接続されている、[7]または[8]のガス分離装置。
[10] 前記第2の導入配管内の第2のガス成分の濃度を測定する第2の濃度計が、前記第2の導入配管にさらに設けられ、前記第2の濃度計も前記演算装置と電気的に接続されている、[7]~[9]のいずれかのガス分離装置。
[11] 前記第1のガス成分が、クリプトンまたはキセノンである、[7]~[10]のいずれかのガス分離装置。
[12] 前記第2のガス成分が、水素、窒素、酸素、ヘリウム、ネオン及びアルゴンからなる群から選ばれる少なくとも1種類以上を含む、[7]~[11]のいずれかのガス分離装置。
[13] 前記希ガス使用設備から排出される排出ガスが第3のガス成分をさらに含み、
前記第1の供給配管の、前記第1の濃度計の後段に、第3のガス成分を除去する第3ガス除去装置がさらに設けられ、
前記第1の導入配管及び前記第2の導入配管は、前記第1の濃度計と、前記第3ガス除去装置との間の前記第1の供給配管に接続される、[9]のガス分離装置。
[14] 前記第3のガス成分が、有機化合物である、[13]のガス分離装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、希ガス使用設備の排出ガスを再利用しながらも、分離後の希ガスの純度、希ガスの回収率の両方を安定して高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態にかかるガス分離装置と、希ガスを使用する希ガス使用設備とを説明するための概略図である。
【
図2】
図1のガス分離装置が備える分離部の構成を説明するための模式図である。
【
図3】第2実施形態にかかるガス分離装置と、希ガスを使用する希ガス使用設備とを説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、一実施形態例について図面を参照しながら詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
本明細書において、数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
【0012】
第1実施形態
<ガス分離装置>
以下、
図1、2を参照して本実施形態に係るガス分離装置について説明する。
図1は、本実施形態に係るガス分離装置1と希ガスを使用する希ガス使用設備20とを示す概略図である。
図2は分離部5の構成を説明するための模式図である。
【0013】
ガス分離装置1は、希ガス使用設備20から排出される排出ガスを含む原料ガスから、第1のガス成分と、第2のガス成分とを圧力吸着式で分離する装置である。
ガス分離装置1は、第1の供給配管L1と、流量計2と、濃度計13と、原料ガス容器3と、第1のガス成分の供給源15と、第2の供給配管L2と、圧縮機4と、分離部5と、還流配管L3と、第1の分離配管L4と、第2の分離配管L5と、第1の分離ガス容器6と、第1の導入配管L6と、第2の分離ガス容器7と、第2の導入配管L7と、第1の流量制御器8と、第2の流量制御器9と、第1の導出配管L8と、第2の導出配管L9と、第3の流量制御器10と、第4の流量制御器11と、演算装置12と、受信機14とを備える。
【0014】
希ガス使用設備20は、ガス分離装置1の第1の導出配管L8の第2の端部と接続されている。第1の導出配管L8内にはガス分離装置1で分離された第1のガス成分が流れる。また、希ガス使用設備20は、第1の端部が第2のガス成分の供給設備(図示略)と接続された第3の供給配管L11と接続されている。第3の供給配管L11内には、第2のガス成分が流れる。そのため、希ガス使用設備20は、ガス分離装置1で分離された第1のガス成分と、第2のガス成分供給設備(図示略)より供給される第2のガス成分を使用できる。
希ガス使用設備20は、後述の演算装置12と電気的に接続されていてもよい。また、希ガス使用設備20は希ガス使用設備で使用して排気する第1のガス成分の流量と、第2のガス成分の流量値とを演算装置12に電気信号として送信してもよい。
希ガス使用設備20は、希ガスを使用する設備であれば特に限定されない。例えば、半導体集積デバイス等を製造する装置、検査装置、液晶パネル等の表示装置を製造する設備が挙げられる。
希ガス使用設備20の排出ガスは、精製対象のガス成分として第1のガス成分を含み、除去対象のガス成分として第2のガス成分を含む。第1のガス成分としては、例えば、クリプトン、キセノン等の高付加価値ガスが挙げられる。第2のガス成分としては、水素、窒素、酸素、ヘリウム、ネオン、アルゴンが挙げられる。
【0015】
第1の供給配管L1は、第1の端部が希ガス使用設備20と接続され、第2の端部が原料ガス容器3と接続されている。第1の供給配管L1は、希ガス使用設備20から排出される排出ガスを原料ガス容器3に供給する。
第1の供給配管L1には流量計2が設けられている。流量計2は、第1の供給配管L1内を流れる希ガス使用設備20の排出ガスの流量を測定する。流量計2は、排出ガス中の第1のガス成分の流量VF1と、第2のガス成分の流量VF2との和VF0を測定でき、流量値を電気信号として送信できるものであればよい。例えばマスフローメータ、コリオリ流量計、容積式流量計等が使用できる。流量計2は、演算装置12と電気的に接続されているため、流量VF0の測定値を演算装置12に送信できる。流量計2はVF1およびVF2をそれぞれ測定できてもよい。
【0016】
本実施形態のガス分離装置は、第1の供給配管L1を流れる第1のガス成分と、第2のガス成分との流量の情報を取得するための流量情報取得装置を備える。ガス分離装置1においては、例えば、第1の供給配管L1には濃度計13が設けられている。濃度計13は排出ガス中の第1のガス成分、第2のガス成分、またはその両方の濃度を測定できる。濃度計13は第1のガス成分、第2のガス成分、またはその両方の濃度を測定でき、濃度値を電気信号で発信できるものであればよい。濃度計13としては、例えば超音波式濃度計、質量分析計等が使用できる。濃度計13は、第1のガス成分、第2のガス成分、またはその両方の濃度値を演算装置12に電気信号として送信できる。
【0017】
流量情報取得装置は、VF1およびVF2を情報として取得できればよく、その具体的態様は特に限定されない。他の実施形態において、流量情報取得装置は、例えば、第1の供給配管L1に設けられた流量計、第1の供給配管L1に設けられた第1のガス成分の濃度を測定する濃度計、第1の供給配管L1に設けられた第2のガス成分の濃度を測定する濃度計、希ガス使用設備20から排気される第1のガス成分の流量情報を希ガス使用設備20から電気的に受信する受信機、及び希ガス使用設備20で使用される第2のガス成分の流量情報を希ガス使用設備20から電気的に受信する受信機からなる群から選ばれる少なくとも1種以上を含んで構成可能である。
例えば、ガス分離装置1においては、受信機14が、希ガス使用設備20で排気される第1のガス成分の流量情報を希ガス使用設備20から電気的に受信できる。加えて、受信機14は、希ガス使用設備20で使用される第2のガス成分の流量情報を希ガス使用設備20から電気的に受信する受信機できる。
ただし、流量情報取得装置の構成は以上の例示に限定されない。
【0018】
原料ガス容器3は、分離部5に供給するための原料ガスを貯留する。原料ガス容器3には、第1の供給配管L1の第2の端部、還流配管L3の第2の端部、第1の導入配管L6の第2の端部、及び第2の導入配管L7の第2の端部と接続されている。そのため、原料ガス容器3では、第1の供給配管L1、還流配管L3、第1の導入配管L6、および第2の導入配管L7から供給される各ガスが混合され、これらの混合ガスが原料ガスとして貯留される。原料ガス容器3には、ガス分離装置1内に第1のガス成分を補充するための補充配管L12が接続されていてもよい。補充配管L12は、第1のガス成分の供給源15と接続されている。第1のガス成分の供給源15は、例えば、第1のガス成分が貯留された容器等である。
【0019】
第2の供給配管L2は、第1の端部が原料ガス容器3と接続され、第2の端部が分離部5の一次側と接続されている。第2の供給配管L2には圧縮機4が設けられている。第2の供給配管L2は、原料ガス容器3内の原料ガスを圧縮機4で圧縮して分離部5の一次側に供給する。圧縮機4は、圧力吸着式のガス分離方法に使用される一般的なものでよく、特に限定されない。ただし、圧縮機4としては、分離部5に供給する原料ガスを汚染しないオイルフリー仕様で、空気の巻き込みや原料ガスの漏洩が無い高気密仕様が好ましい。例えばダイアフラム式圧縮機等が使用できる。
【0020】
分離部5は、原料ガスから第1のガス成分と第2のガス成分とを圧力吸着式で分離する。
図2に示すように、分離部5は、第1の吸着塔53Aと、第2の吸着塔53Bとを有する。そして、第2の供給配管L2の分岐した第2の端部のそれぞれは、第1の吸着塔53Aと、第2の吸着塔53Bと接続されている。第2の供給配管L2の分岐した第2の端部のそれぞれには供給弁51A、51Bがそれぞれ設けられている。
【0021】
第1の吸着塔53Aは、原料ガス中の第2のガス成分を吸着する第1の吸着剤(図示略)を内部に有する。第1の吸着剤は、第2のガス成分を吸着できるものであればよく、第2のガス成分に応じて適宜選択できる。例えば、第2のガス成分が窒素である場合、第1の吸着剤としては、Na-A型ゼオライト、カーボンモレキュラーシーブス、メソポーラスシリカ、金属有機構造体(MOF)が好ましい。
【0022】
第1の吸着塔53Aは、原料ガスから第2のガス成分を除去し、第1のガス成分を分離部5の二次側に導出する。第1の吸着塔53Aの二次側は、第1の分離配管L4の第1の端部と接続されている。第1の吸着塔53Aは、第1の分離配管L4内に分離した第1のガス成分を導出する。
【0023】
第1の分離配管L4は、分離部5の第1の吸着塔53Aと、第1の分離ガス容器6とを接続する。第1の分離ガス容器6は、分離部5の第1の吸着塔53Aで分離された第1のガス成分を貯留する。第1の分離ガス容器6には、第1の導入配管L6の第1の端部、第1の導出配管L8の第1の端部が接続されている。
【0024】
第2の吸着塔53Bは、原料ガス中の第1のガス成分を吸着する第2の吸着剤(図示略)を内部に有する。第2の吸着剤は、第1のガス成分を吸着できるものであればよく、第1のガス成分に応じて適宜選択できる。例えば、第1のガス成分がキセノンである場合、第2の吸着剤としては、活性炭、CaA型ゼオライト、Na-X型ゼオライト、Ca-X型ゼオライト、Li-X型ゼオライト、金属有機構造体(MOF)が好ましい。
【0025】
第2の吸着塔53Bは、原料ガスから第1のガス成分を除去し、第2のガス成分を分離部5の二次側に導出する。第2の吸着塔53Bの二次側は、第2の分離配管L5の第1の端部と接続されている。第2の吸着塔53Bは、第2の分離配管L5内に分離した第2のガス成分を導出する。
【0026】
第2の分離配管L5は、分離部5と、第2の分離ガス容器7とを接続する。第2の分離ガス容器7は、分離部5で分離された第2のガス成分を貯留する。第2の分離ガス容器7には、第2の導入配管L7の第1の端部、第2の導出配管L9の第1の端部が接続されている。
【0027】
第1の吸着塔53Aおよび第2の吸着塔53Bの一次側は、還流配管L3の分岐した第1の端部とそれぞれ接続されている。還流配管L3の分岐した第1の端部のそれぞれには排圧弁52A、52Bがそれぞれ設けられている。還流配管L3は、第1の吸着塔53A内から排出される、第1の吸着剤に吸着した第2のガス成分と、第2の吸着塔53B内から排出される、第2の吸着剤に吸着した第1のガス成分との混合ガスを原料ガス容器3に供給する。このように、還流配管L3は、分離部5の一次側から排出される第1のガス成分と、第2のガス成分とを含む混合ガスを原料ガス容器3に還流する。
【0028】
第1の吸着塔53A、第2の吸着塔53Bの二次側は、再生配管57A、57Bとそれぞれ接続されている。再生配管57A、57Bのそれぞれには再生弁56A、56Bがそれぞれ設けられている。再生配管57A、57Bは、第1の吸着塔53A、第2の吸着塔53B内に、各吸着剤を再生するための再生ガスをそれぞれ供給する。
【0029】
第1の吸着塔53A、第2の吸着塔53Bには、圧力計54A、54Bがそれぞれ設けられている。圧力計54A、54Bは、各吸着塔53A、53B内の圧力を測定する。
分離部5は、通常の圧力吸着式のガス分離装置のように、均圧弁が設けられた均圧管をさらに有してもよい。
分離部5は、圧力吸着方式を使用して、第1のガス成分と、第2のガス成分とをそれぞれ分離できるものであればよく、原料ガス中の第1のガス成分を吸着する第2の吸着剤を充填した複数の吸着塔で分離するものでもよい。
【0030】
図1に示すように、第1の導入配管L6の第2の端部は、原料ガス容器3と接続されている。そのため、第1の導入配管L6は、第1の分離ガス容器6内の第1のガス成分を第1の導入ガスとして原料ガスに導入できる。ただし、第1の導入配管L6の第2の端部の接続先は原料ガス容器3に限定されない。他の実施形態においては、第1の導入配管L6の第2の端部は、例えば、分離部5の一次側に接続する第2の供給配管L2であって、圧縮機4の一次側と接続されてもよい。
【0031】
第2の導入配管L7の第2の端部は、原料ガス容器3と接続されている。そのため、第2の導入配管L7は、第2の分離ガス容器7内の第2のガス成分を第2の導入ガスとして原料ガスに導入できる。ただし、第2の導入配管L7の第2の端部の接続先は、原料ガス容器3に限定されない。他の実施形態においては、第2の導入配管L7の第2の端部は、例えば、分離部5の一次側に接続する第2の供給配管L2であって、圧縮機4の一次側と接続されてもよい。
【0032】
第1の導入配管L6には第1の流量制御器8が設けられている。第1の流量制御器8は、電気的に接続された演算装置12の指示にしたがって、第1の分離ガス容器6からの第1の導入ガスの流量VR1を調節して制御する。
第2の導入配管L7には第2の流量制御器9が設けられている。第2の流量制御器9は、電気的に接続された演算装置12の指示にしたがって第2の分離ガス容器7からの第2の導入ガスの流量VR2を調節して制御する。
第1の流量制御器8および第2の流量制御器9は電気信号の指示により流量を制御できるものであればよい。例えばマスフローコントローラなどが使用できる。
【0033】
演算装置12は、第1の流量制御器8、第2の流量制御器9、流量計2、および濃度計13とそれぞれ電気的に接続されている。演算装置12は、流量計2から電気信号として送信された、希ガス使用設備20からの排出ガスの流量値と、濃度計13から電気信号として送信された排出ガス中の第1のガス成分の濃度、または第2のガス成分の濃度値とを基に算出した、排出ガス中の第1のガス成分の流量値VR1、および第2のガス成分の流量値VR2に基づいて、第1の流量制御器8、および第2の流量制御器9のそれぞれに各流量を決定して指示する。
【0034】
流量計2が排出ガス中の第1のガス成分および第2のガス成分のそれぞれの流量を測定できるのであれば、それぞれの流量値に基づいて、第1の流量制御器8および第2の流量制御器9のそれぞれに各流量を決定して指示してもよい。
また、演算装置12が希ガス使用設備20と電気的に接続されており、希ガス使用設備20から電気信号として、排出ガス中の第1のガス成分および第2のガス成分の流量値が送信されるのであれば、演算装置12はこれらの流量値に基づいて、第1の流量制御機8および第2の流量制御9のそれぞれに各流量を決定して指示してもよい。
【0035】
演算装置12は、原料ガス容器3に導入する排出ガスと、第1の導入ガスと、第2の導入ガスとを混合させたガスの流量および組成が一定となるように、第1の導入配管L6による第1のガス成分の導入量および第2の導入配管L7による第2のガス成分の導入量をそれぞれ決定し、第1の流量制御器8および第2の流量制御器9に指示する。
【0036】
第1の導入配管L6には、第1の導入配管L6内の第1のガス成分の濃度を測定する第1の濃度計(図示略)が設けられている。第1の濃度計が演算装置12と電気的に接続されていると、演算装置12は、第1の導入配管L6内の第1のガス成分の濃度に基づいて、第1の導入ガスの流量VR1を第1の流量制御器8に指示できる。その結果、原料ガスの組成をより確実かつ精密な制御でき、分離されるガス成分の純度および回収率がさらに安定しかつ向上する。
【0037】
第2の導入配管L7には、第2の導入配管L7内の第2のガス成分の濃度を測定する第2の濃度計(図示略)が設けられている。第2の濃度計が演算装置12と電気的に接続されていると、演算装置12は、第2の導入配管L7内の第2のガス成分の濃度に基づいて、第2の導入配管L7を流れる第2の導入ガスの流量VR2を第2の流量制御器9に指示できる。その結果、原料ガスの組成をより確実かつ精密な制御ができ、分離されるガス成分の純度および回収率がさらに安定しかつ向上する。
【0038】
第1の導出配管L8は、分離部5で分離された第1のガス成分を希ガス使用設備20に導出する。第1の導出配管L8には、第3の流量制御器10が設けられている。第3の流量制御器10は、第1の導出配管L8を流れる第1のガス成分の流量VO1を調節して制御する。
第2の導出配管L9には、第4の流量制御器11が設けられている。第4の流量制御器11は、第2の導出配管L9を流れる第2のガス成分の流量VO2を調節して制御する。第2の導出配管L9の第2の端部の接続先は特に限定されない。
【0039】
(作用効果)
以上説明したガス分離装置1は、第1の流量制御器8、第2の流量制御器9、流量計2、および濃度計13とそれぞれ電気的に接続された演算装置12を備える。そのためガス分離装置1は、流量計2で測定した流量値および濃度計13で測定した濃度値をもとに算出した、希ガス使用設備20からの排出ガス中の第1のガス成分の流量VF1および第2のガス成分の流量VF2に基づいて、第1の導入配管L6を流れる第1のガス成分の流量VR1および第2の導入配管を流れる第2のガス成分の流量VR2を制御できる。
よって、本実施形態のガス分離装置1によれば、希ガス使用設備の排出ガス中の第2のガス成分の濃度が増加しても、原料ガス中の第1のガス成分の濃度が相対的に高くなるように演算装置12で流量VR1および流量VR2を制御できるため、分離後の第1のガス成分の純度が低下しにくい。
一方、ガス分離装置1によれば、希ガス使用設備の排出ガス中の第1のガス成分の濃度が増加しても、原料ガス中の第1のガス成分の濃度を相対的に低くするように演算装置12で制御できる。その結果、圧力吸着式の分離部の運転条件を変えずとも、分離部の希ガス分離能が安定し、一定のガス分離能が得られ、第1のガス成分の回収率が高くなる。
したがって、本実施形態のガス分離装置1によれば、希ガス使用設備の排出ガスを再利用しながらも、分離後の希ガスの純度、希ガスの回収率の両方を安定して高くすることができる。
【0040】
<ガス分離方法>
以下、
図1および2を参照して本実施形態に係るガス分離方法について説明する。本実施形態に係るガス分離方法では、複数のガス成分を含む原料ガスから、第1のガス成分と、第2のガス成分とを圧力吸着式で分離する分離部5を用いる。
以下の説明においては、第1のガス成分がキセノン(Xe)であり、第2のガス成分が窒素(N
2)である場合を一例に、本発明の実施形態の説明を行うが、本発明はこの一例に限定されない。
【0041】
ここで、第1の吸着塔53Aが吸着工程を行っているものとして以下の説明を開始する。
まず、第1の吸着塔53Aの吸着工程において、希ガス使用設備20の排出ガスが原料ガス容器3に供給される。排出ガス中のキセノンの流量VF1および窒素の流量VF2が流量計2によって測定され、演算装置12に測定値が送信される。原料ガスは、原料ガス容器3から第2の供給配管L2を介して圧縮機4で所定圧力に昇圧される。
【0042】
圧縮機4で昇圧された原料ガスは、供給弁51Aを通って第1の吸着塔53A内に流入する。第1の吸着塔53A内に充填されているNa-A型ゼオライトは、窒素に比べてキセノンを吸着しにくい。そのため、第1の吸着塔53Aに流入した原料ガスの中の易吸着成分である窒素が、優先的にNa-A型ゼオライトに吸着される。難吸着成分であるキセノンが分離され、分離後のキセノンが吸着塔53Aの二次側から、第1の分離配管L4および分離弁55Aを介して、第1の分離ガス容器6内に貯留される。
【0043】
この間、第2の吸着塔53Bは再生工程を行っており、第2の吸着塔53B内で吸着したキセノンが還流配管L3および排圧弁52Bを介して、原料ガス容器3に還流される。
吸着工程と、再生工程との切替時には、通常の圧力吸着式の分離プロセスと同様に、均圧弁を有する均圧配管を使用した均圧操作、および再生弁56Bを有する再生配管57Bを使用したパージ再生操作を行うことができる。
【0044】
第2の吸着塔53Bの再生工程では、塔内の圧力低下により、第2の吸着塔53B内に充填されている活性炭から脱離したキセノンが排出される。このため、再生工程で分離部5の一次側から排出される混合ガスは、ガス分離装置1より廃棄することなく再利用する。具体的には、還流配管L3に放出された混合ガスを圧縮機4の一次側に位置する原料ガス容器3に戻し、原料ガスと混合して再利用する。
【0045】
第1の吸着塔53A内のNa-A型ゼオライトへの窒素の吸着量が飽和量に達し、第1の吸着塔53Aの二次側から窒素が流出する前に、供給弁51A,51B、分離弁55A,55B、および排圧弁52A、52Bが開閉され、吸着塔53A、53Bの工程が切換えられる。つまり、第1の吸着塔53Aが再生工程になり、第2の吸着塔53Bが吸着工程となる。
【0046】
第2の吸着塔53Bの吸着工程について説明する。
圧縮機4で昇圧された原料ガスが供給弁51Bを通って第2の吸着塔53B内に流入する。第2の吸着塔53B内に充填されている活性炭は、キセノンに比べて窒素を吸着しにくい。そのため、第2の吸着塔53Bに流入した原料ガスの中の易吸着成分であるキセノンが優先的に活性炭に吸着され、難吸着成分である窒素が分離され、分離後の窒素が第2の吸着塔53Bの二次側から第2の分離配管L5および分離弁55Bを介して、第2の分離ガス容器7内に貯留される。
【0047】
この間、第1の吸着塔53Aは再生工程を行っており、第1の吸着塔53A内で吸着した窒素が還流配管L3および排圧弁52Aを流れ、原料ガス容器3に還流される。
吸着工程と、再生工程との切替時には、通常の圧力吸着式の分離プロセスと同様に、均圧弁を有する均圧配管を使用した均圧操作、および再生弁56Aを有する再生配管57Aを使用したパージ再生操作を行うことができる。
【0048】
第1の吸着塔53Aの再生工程では、塔内の圧力低下によりNa-A型ゼオライトから脱離した窒素が放出される。加えて、第1の吸着塔53A内のキセノンも排出されるため、再生工程で分離部5の一次側から排出される混合ガスは、ガス分離装置1より廃棄することなく再利用する。具体的には、還流配管L3に放出された混合ガスを圧縮機4の一次側の原料ガス容器3に戻し、原料ガスと混合して再利用する。
【0049】
本実施形態に係るガス分離方法においては、分離部5の第1の吸着塔53Aで原料ガスから分離した後の第1のガス成分であるキセノンを第1の導入ガスとして原料ガスに導入する。また、分離部5の第2の吸着塔53Bで原料ガスから分離した後の第2のガス成分である窒素を第2の導入ガスとして原料ガスに導入する。
分離部5で分離した後のキセノンは、第1の分離ガス容器6から第1の導入配管L6内を流れ、原料ガス容器3に第1の導入ガスとして原料ガスに導入される。分離部5で分離した後の窒素は、第2の分離ガス容器7から第2の導入配管L7内を流れ、原料ガス容器3に第2の導入ガスとして原料ガスに導入される。
【0050】
本実施形態に係るガス分離方法においては、希ガス使用設備20から排出される排出ガス中の第1のガス成分(キセノン)の流量VF1に基づいて、第1の導入ガスの流量VR1を制御する。具体的には、排出ガス中の第1のガス成分(キセノン)の流量VF1に基づいて、演算装置12によって、第1の導入ガスの流量VR1が決定され、演算装置12と、電気的に接続された第1の流量制御器8とによって流量VR1が調節され制御される。
そして、希ガス使用設備20から排出される排出ガス中の第2のガス成分(窒素)の流量VF2に基づいて、第2の導入ガスの流量VR2を制御する。具体的には、排出ガス中の第2のガス成分(窒素)の流量VF2に基づいて、演算装置12によって、第2の導入ガスの流量VR2が決定され、演算装置12と電気的に接続された第2の流量制御器9とによって流量VR2が調節され制御される。
【0051】
(作用効果)
このように本実施形態に係るガス分離方法は、希ガス使用設備20から排出される排出ガス中の第1のガス成分(キセノン)の流量VF1および第2のガス成分(窒素)の流量VF2に基づいて、第1の導入ガスの流量VR1および第2の導入ガスの流量VR2をそれぞれ制御することを特徴とする。
そのため、本実施形態に係るガス分離方法によれば、希ガス使用設備20の排出ガスの組成が変動しても、分離部5に供給される原料ガス中のキセノンおよび窒素の比率が変動しないように、第1の導入ガスの流量VR1および第2の導入ガスの流量VR2を調節できる。よって、本実施形態に係るガス分離方法によれば、少なくとも下記の(1)および(2)の作用効果が得られる。
【0052】
(1)希ガス使用設備20の排出ガス中のキセノンの比率が低下し、窒素の比率が増加した場合には、第1の導入ガスの流量VR1が多くなり、かつ第2の導入ガスの流量VR2が少なくなるように制御することで、第1の吸着塔53Aで除去すべき窒素の濃度の変動を抑制できる。そのため、第1の吸着塔53Aでの窒素の除去性能が安定して高く維持され、窒素を充分に除去でき、分離後のキセノンの純度が安定して高く維持される。
【0053】
(2)希ガス使用設備20の排出ガス中のキセノンの比率が増加し、窒素の比率が低下した場合には、第1の導入ガスの流量VR1が少なくなり、かつ第2の導入ガスの流量VR2が多くなるように制御することで、第2の吸着塔53Bで除去すべきキセノンの濃度の変動を抑制できる。そのため、第2の吸着塔53Bでのキセノンの除去性能が安定して高く維持され、キセノンを十分に除去でき、分離後の窒素の純度が安定して高く維持される。分離後の窒素は再利用しないため、再利用できないキセノンの量が少なくなる。その結果、キセノンの回収率が安定して高く維持される。
【0054】
前記(1)および(2)の作用効果が得られることから、希ガス使用設備20の排出ガスの組成が変化したとしても、原料ガスの組成を安定に維持できる。このため、排ガスの組成の変動に応じて分離部5の運転条件を変更する必要がない。また、仮に希ガス使用設備20の排出ガス中の希ガス(第1のガス成分)の濃度が0~100体積%の範囲内で変動したとしても、演算装置12による、第1の導入ガスの流量VR1および第2の導入ガスの流量VR2の制御が可能であるから、希ガスの純度、回収率をいずれも安定して高くすることができる。
【0055】
さらに本実施形態に係るガス分離方法では、下記のガス流量和S1及び下記のガス流量和S2をそれぞれ一定の値に制御することが好ましい。例えば、演算装置12によってガス流量和S1及びガス流量和S2を一定の値に制御することで、下記の(3)の作用効果がさらに得られる。
ガス流量和S1:排出ガス中のキセノンの流量VF1と、第1の導入ガスの流量VR1との合計値
ガス流量和S2:排出ガス中の窒素の流量VF2と、第2の導入ガスの流量VR2との合計値
【0056】
(3)分離したキセノンを第1の導入ガスとして、窒素を第2の導入ガスとして原料ガスに導入できるため、希ガス使用設備20の排出ガスの組成、流量の急激な変化に追従してガス分離装置を運転できる。そのため、希ガス使用設備20の排出ガスの変動に応じて分離部5の分離条件を急遽、変更する必要もなくなる。
【0057】
本実施形態に開示のガス分離装置1を用いるガス分離方法によれば、前記(1)~(3)の作用効果に加えて、下記の(4)および(5)の作用効果がさらに得られる。
【0058】
(4)ガス分離装置1は、第1の導入配管L6および第2の導入配管L7を備えるため、希ガス使用設備20の急な運転開始及び運転停止に対応できる。
本実施形態においては、第3の流量制御器10および第4の流量制御器11によって、第1の導出配管L8内のキセノンの流量VO1および第2の導出配管L9内の窒素の流量VO2を調節して制御できる。そのため、希ガス使用設備20の運転停止にあわせて、キセノンの流量VO1および窒素の流量VO2をいずれも0とすれば、希ガス使用設備20が稼働していなくても、第1の導入配管L6および第2の導入配管L7をバイパス経路としてガス分離装置1を稼動できる。
一般のガス分離装置においては、ガス分離装置を停止状態から起動する際に、所定の性能を得て高純度の希ガスを準備するまでの間に、原料ガスの供給による準備期間が必要である。これに対して本実施形態に係るガス分離装置1においては、仮に希ガス使用設備20が急停止して希ガスを使用しない状態となっても、ガス分離装置1は停止することなく運転をそのまま継続でき、高純度の希ガスを常備できる。そのためガス分離装置1によれば、希ガス使用設備20の復旧にあわせて、すぐに希ガスの供給を再開できる。その結果、高純度の希ガスを準備するためのガス分離装置1の起動時間が不要となる。
【0059】
(5)ガス分離装置1は、原料タンク3、第1の分離ガス容器6、第2の分離ガス容器7、第1の導入配管L6、および第2の導入配管L7を備えるため、一般のガス分離装置において、停止状態から起動する際に、所定の性能を得て高純度の希ガスを準備するまでの間に必要な原料ガスが不要となり、貴重な希ガスを経済的に利用できる。
原料タンク3、第1の分離ガス容器6、第2の分離ガス容器7、第1の導入配管L6、および第2の導入配管L7を備えないガス分離装置の場合、高純度の希ガスを準備するための準備期間の間、所定の分離性能に達するまで原料ガスから分離した希ガスが廃棄されてしまう。
これに対して、本実施形態のガス分離装置1を停止状態から起動する際には、所定の分離性能に達するまで原料ガスから分離した希ガスを第1の導入配管L6で原料ガス容器3に戻して循環させることができる。そのため、貴重な希ガスを廃棄せずにすみ、経済的な利点がある。加えて、起動操作中の希ガス使用設備20の排出ガスの供給も不要となる。
【0060】
第2実施形態
以下、
図3を参照して本実施形態に係るガス分離装置およびガス分離方法について説明する。
図3は、本実施形態に係るガス分離装置100と、希ガスを使用する希ガス使用設備20とを示す概略図である。
【0061】
本実施形態のガス分離装置100と、上記第1実施形態のガス分離装置1とでは、以下の点で相違する。
第1相違点:上記第1実施形態のガス分離装置1は具備しない第3ガス成分除去装置を、本実施形態のガス分離装置100が具備する点、
第2相違点:上記第1実施形態のガス分離装置1では第1の導入配管L6および第2の導入配管L7の第2の端部が原料ガス容器3に接続しているのに対して、本実施形態のガス分離装置100では第1の供給配管L1に接続する点で相違する。
【0062】
これら点について、以下に詳細に説明する。
第1相違点について:
本実施形態のガス分離装置100では、希ガス使用設備20からの排出ガスが含有する微量成分である第3ガス成分を、上記第3ガス成分除去装置103により除去する。
【0063】
第3のガス成分は、上記第1のガス成分および上記第2のガス成分以外の成分を意味する。第3ガス成分としては有機化合物が挙げられる。
前記有機化合物としては、希ガス使用設備から排出され原料ガスに混入するものであれば特に限定されないが、鎖式又は環式炭化水素化合物、アルコール、カルボニル化合物、有機フッ素化合物等が挙げられる。
鎖式又は環式炭化水素化合物としては、炭素数1~15の鎖式又は環式炭化水素化合物、例えばメタン、エタン、プロパン、n-ブタン、i-ブタン、n-ペンタン、i-ペンタン、ネオペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、ベンゼン、ナフタレン等が挙げられる。
前記有機フッ素化合物としては、フルオロメタン、ジフルオロメタン、トリフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、クロロフルオロカーボン、テトラフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、クロロジフルオロメタン、テトラクロロジフルオロエタン、ジクロロフルオロエタン、クロロジフルオロエタン、ジフルオロエタン等のフルオロカーボン系化合物等が挙げられる。
本実施形態においては、第3ガス成分が、鎖式又は環式炭化水素化合物などの炭化水素化合物又は有機フッ素化合物であることが好ましい。
【0064】
上記第3ガス成分除去装置103は、濃度計13の二次側であり、かつ原料ガス容器3の一次側に位置する第1の供給配管L1に設けられている。このため、希ガス使用設備20からの排ガスは、流量計2および濃度計13を介して、第1の供給配管L1を流れて、第3ガス成分除去装置103に導入される。第3ガス成分除去装置103としては、上記第3ガス成分を除去できるものであれば特に限定されないが、例えば吸着除去装置等が挙げられる。第3のガス成分がフ炭化水素化合物又は有機フッ素化合物である場合、第3ガス成分除去装置103は、活性炭を用いた吸着除去塔であることが好ましい。
【0065】
第2相違点について:
第1の分離ガス容器6に貯留された第1ガス成分を、第1の流量制御器8を介して流す第1の導入配管L6の第2端部は、第1の供給配管L1に接続されている。より詳しくは、第1の導入配管L6の第2端部は、濃度計13と、第3ガス成分除去装置103との間に位置する第1の供給配管L1に接続されている。
第2の分離ガス容器7に貯留された第2ガス成分を、第2の流量制御器9を介して流す第2の導入配管L7の第2端部は、第1の供給配管L1に接続されている。より詳しくは、第2の導入配管L7の第2端部は、濃度計13と、第3ガス成分除去装置103との間に位置する第1の供給配管L1に接続されている。
本実施形態のガス分離装置100においては、上記相違点1および相違点2にかかる構成を具備するため、第3ガス成分除去装置103により、第3ガス成分が除去された排ガスは、原料ガス容器3に貯留される。
【0066】
第1の分離ガス容器6に貯留された第1ガス成分は、第1の流量制御器8を介して第1の導入配管L6を流れ、第1の供給配管L1を流れる排ガスに合流し、次いで第3ガス成分除去装置103に導入される。
第2の分離ガス容器7に貯留された第2ガス成分は、第2の流量制御器9を介して第2の導入配管L7を流れ、第1の供給配管L1を流れる排ガスに合流し、次いで第3ガス成分除去装置103に導入される。
【0067】
(作用効果)
本実施形態のガス分離装置100およびガス分離方法によれば、上記第1実施形態のガス分離装置1およびガス分離方法が有する効果に加え、さらに以下の効果が得られる。
【0068】
・原料ガス条件(流量、組成)が変化しても、より安定して微量成分である第3のガス成分を除去できる。
希ガスを使用する設備の運転条件によって、原料ガス条件(流量、希ガスの濃度)は変化する。微量成分除去を行う吸着剤(前処理吸着剤、一般的には活性炭など)は、微量成分の他、希ガス(特にキセノン)も強く吸着するため、希ガス濃度の変化(例えば0-100%の変化)によって、吸着熱により温度上昇または温度低下する。例えば、希ガス濃度が0%から100%に変化する場合、吸着剤の温度は100℃以上になることも想定される。吸着剤の吸着性能は温度の影響を強く受けるため、この温度変化は、本来の目的である微量成分の吸着が十分にできなくなるほどの影響を及ぼす。
【0069】
これに対し、第2実施形態のガス分離装置100及びガス分離方法によれば、第1の導入ガスの流量VR1および第2の導入ガスの流量VR2を調節したうえで、第1ガス成分は第1の導入配管L6から、第2ガス成分は第2の導入配管L7からそれぞれ第1の供給配管L1に合流するため、希ガス使用設備20の排出ガスの組成が変動した場合であっても、第3ガス成分除去装置103に導入される原料ガス中の第1ガス成分(希ガス)の濃度は変動しないようになっている。
そのため、第3ガス成分除去装置103における吸着剤の温度変化が生じ難くなり、吸着性能の変動が小さくなる結果、第3ガス成分除去装置103での微量不純物の安定した除去が可能となる。
【0070】
・第1の供給配管L1から供給される排出ガスに、一度分離精製した第1ガス成分(希ガス)および第2ガス成分(N2など)を混合するため、排出ガスに含まれる不純物成分の濃度は、さらに低下する。除去すべき不純物濃度が低下するため、上記第3ガス成分除去装置の吸着剤の能力を保つことができる。
【0071】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明はかかる特定の実施の形態に限定されない。また、本発明は特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内で、構成の付加、省略、置換及びその他の変更が加えられてよい。
【0072】
本実施形態では、
図1において流量情報取得装置として、流量計2と、濃度計13(第1ガス成分濃度を測定する第1の濃度計、第2ガス成分濃度を測定する第2の濃度計)とを有する形態例を示したが、この形態例に限定されない。例えば、希ガス使用設備20が、第1ガス成分の流量V
F1及び第2ガス成分の流量V
F2をそれぞれ測定可能な装置を備えており、演算装置12がこれらの情報を電気的に受信する受信機を備えていれば、当該受信機は流量情報取得装置となり得る。また、希ガス使用設備20が、第1ガス成分の流量V
F1または第2ガス成分の流量V
F2を測定可能な装置を備えている場合、流量計2と、演算装置12が有する第1ガス成分の流量V
F1または第2ガス成分の流量V
F2の情報を電気的に受信する受信機とで、流量情報取得装置を構成できる。
流量計2が、混合ガス中の第1ガス成分流量と、第2ガス成分との測定をそれぞれ求められる場合においては、流量計2のみで流量情報取得装置としてもよい。
【実施例】
【0073】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の記載によって限定されない。
【0074】
<実施例1>
図1に示すガス分離装置1を構築した。実施例1で使用したガス分離装置1は、
図2に示す分離部5を備える。
実施例1で使用したガス分離装置の構成の詳細は下記の通りである。
・圧縮機4:吐出流量が0℃、1気圧の条件下で26L/minとなるように設定した。
・第1の吸着塔53A:内径が154mm、長さが650mmの吸着塔であり、内部にNa-A型ゼオライト8.8kgを充填した。
・第2の吸着塔53B:内径が108mm、長さが650mmの吸着塔であり、内部に活性炭2.7kgを充填した。
【0075】
まず、希ガス使用設備の排出ガスを想定した下記の組成1の混合ガスを用いて、原料ガスから第1のガス成分としてキセノンを、第2のガス成分として窒素をそれぞれ分離した。
・組成1:Xeと、N2との混合ガス(Xe濃度:33体積%、N2濃度:67体積%)
・組成1の排出ガスの流量:1.5NL/min
【0076】
ここで、組成1の排出ガスを用いた原料ガスの分離に際しては、第1の導入配管L6による第1の導入ガス(Xe)の原料ガスへの導入、および第2の導入配管L7による第2の導入ガス(N2)の原料ガスへの導入を行わなかった。また、Xeの希ガス使用設備20への供給流量VO1を0.5NL/minに制御し、
N2の流量VO2を1.0NL/minに制御した。
実施例1の組成1の排出ガスを用いた原料ガスの分離結果を以下に示す。
・第1の導出配管L8内のXe純度:99.993体積%
・第1の導出配管L8内の不純物としてのN2濃度:70体積ppm
・第2の導出配管L9内のN2純度:99.988体積%
・第2の導出配管L9内の不純物としてのXe濃度:120体積ppm
・Xe回収率:99.98%。
【0077】
次に、希ガス使用設備の排出ガスを想定した混合ガスの組成を組成1から以下の組成2に変化させた。これは、排出ガスの組成の変化を想定して実験したものである。圧縮機の吐出流量、吸着工程、再生工程の切替時間は同じ値とした。
・組成2: Xeと、N2との混合ガス(Xe濃度:50体積%、N2濃度:50体積%)
・組成2の排出ガスの流量:1.0NL/min
【0078】
組成2の排出ガスを用いた原料ガスの分離に際しては、第1の導入配管L6による第1の導入ガス(Xe)の流量VR1が0NL/minとなり、第2の導入配管L7による第2の導入ガス(N2)の流量VR2が0.5NL/minとなるように、排出ガス中のXe及びN2の各流量に基づいてそれぞれの流量を制御した。また、Xeの希ガス使用設備20への供給流量VO1を0.5NL/minに制御し、N2の流量VO2を0.5NL/minに制御した。
【0079】
実施例1において、組成2の排出ガスを用いた原料ガスの分離結果を以下に示す。以下に示すように、原料ガスの組成を組成1から組成2に変更しても、Xeの高純度を維持したまま、Xe回収率を高くすることができた。
・第1の導出配管L8内のXe純度:99.993体積%
・第1の導出配管L8内の不純物としてのN2濃度:70体積ppm
・第2の導出配管L9内のN2純度:99.988体積%
・第2の導出配管L9内の不純物としてのXe濃度:120体積ppm
・Xe回収率:99.99%
【0080】
次に、希ガス使用設備の排出ガスを想定した混合ガスの組成を、以下の組成3に変化させた。圧縮機の吐出流量、および吸着工程と、再生工程との切替時間は同じ値とした。
・組成3:Xeと、N2との混合ガス(Xe濃度:1体積%、N2濃度:99体積%)
・組成3の排出ガスの流量:1.0NL/min
【0081】
組成3の排出ガスを用いた原料ガスの分離に際しては、第1の導入配管L6による第1の導入ガス(Xe)の流量VR1が0.49NL/minとなり、第2の導入配管L7による第2の導入ガス(N2)の流量VR2が0.01NL/minとなるように、排出ガス中のXe及びN2の各流量に基づいてそれぞれの流量を制御した。また、Xeの希ガス使用設備20への供給流量VO1を0.01NL/minに制御し、N2の流量VO2を0.99NL/minに制御した。
【0082】
組成3の排出ガスを用いた原料ガスの分離結果を以下に示す。以下に示すように、原料ガスの組成を組成2から組成3に変更しても、Xeの純度、回収率を高く維持することができた。
・第1の導出配管L8内のXe純度:99.993体積%
・第1の導出配管L8内の不純物としてのN2濃度:70体積ppm
・第2の導出配管L9内のN2純度:99.988体積%
・第2の導出配管L9内の不純物としてのXe濃度:120体積ppm
・Xe回収率:98.8%
【0083】
<比較例1>
比較例1では、演算装置12、第1の導入配管L6、および第2の導入配管L7を備え付けなかった以外は、実施例1と同様にして分離装置を組み立てた。
実施例1でも使用した希ガス使用設備の排出ガスを想定した下記の組成1の混合ガスを用いて、原料ガスから第1のガス成分としてキセノン(Xe)を、第2のガス成分として窒素(N2)をそれぞれ分離した。
比較例1においても組成1の排出ガスの分離に際し、Xeの希ガス使用設備20への供給流量VO1を0.5NL/minに制御し、N2の流量VO2を1.0NL/minに制御した。
・組成1:Xeと、N2との混合ガス(Xe濃度:33体積%、N2濃度:67体積%)
・組成1の原料ガスの流量:1.5NL/min
【0084】
比較例1の組成1の排出ガスを用いた原料ガスの分離結果を以下に示す。比較例1における組成1の排出ガスを用いた原料ガスの分離結果は、第1の導入ガス(Xe)、第2の導入ガス(N2)を原料ガスに導入しなかった実施例1における組成1の原料ガスの分離結果と一致した。
・第1の導出配管L8内のXe純度:99.993体積%
・第1の導出配管L8内の不純物としてのN2濃度:70体積ppm
・第2の導出配管L9内のN2純度:99.988体積%
・第2の導出配管L9内の不純物としてのXe濃度:120体積ppm
・Xe回収率:99.98%
【0085】
次に、実施例1でも使用した希ガス使用設備の排出ガスを想定した下記の組成2の混合ガスを用いて、原料ガスから第1のガス成分としてキセノン(Xe)を、第2のガス成分として窒素(N2)をそれぞれ分離した。比較例1においても組成2の排出ガスの分離に際し、Xeの希ガス使用設備20への供給流量VO1を0.5NL/minに制御し、N2の流量VO2を0.5NL/minに制御した。圧縮機の吐出流量、および吸着工程と、再生工程との切替時間は同じ値とした。
・組成2: Xeと、N2との混合ガス(Xe濃度:50体積%、N2濃度:50体積%)
・組成2の原料ガスの流量:1.0NL/min
【0086】
比較例1の組成2の排出ガスを用いた原料ガスの分離結果を以下に示す。
・第1の導出配管L8内のXe純度:99.9990体積%
・第1の導出配管L8内の不純物としてのN2濃度:10体積ppm
・第2の導出配管L9内のN2純度:99.6770体積%
・第2の導出配管L9内の不純物としてのXe濃度:3230体積ppm
・Xe回収率:99.68%
比較例1において、組成2の排出ガスを用いた原料ガスの分離を継続して行うと、原料タンク3内の原料ガスが不足し、圧縮機4の吐出流量が低下した。その結果、吸着工程における吸着塔の圧力が低下した。
【0087】
次に、実施例1でも使用した希ガス使用設備の排出ガスを想定した下記の組成3の混合ガスを用いて、原料ガスから第1のガス成分としてキセノン(Xe)を、第2のガス成分として窒素(N2)をそれぞれ分離した。比較例1においても組成3の排出ガスの分離に際し、Xeの希ガス使用設備20への供給流量VO1を0.01NL/minに制御し、N2の流量VO2を0.99NL/minに制御した。
・組成3: XeとN2との混合ガス(Xe濃度:1体積%、N2濃度:99体積%)
・組成3の原料ガスの流量:1.0NL/min
【0088】
比較例1の組成3の排出ガスを用いた原料ガスの分離結果を以下に示す。
・第1の導出配管L8内のXe純度:99.148体積%
・第1の導出配管L8内の不純物としてのN2濃度:8520体積ppm
・第2の導出配管L9内のN2純度:99.6770体積%
・第2の導出配管L9内の不純物としてのXe濃度:100体積ppm
・Xe回収率:99.01%
ここで、比較例1の組成2と同様、原料ガスの分離を継続して行うと、原料タンク3内の原料ガスが不足し、圧縮機4の吐出流量が低下した。その結果、吸着工程における吸着塔の圧力が低下した。
【0089】
比較例1では、排出ガスの組成が組成1、組成2、そして組成3に順次変化するにしたがって、Xeの回収率が低下した。また、第1の導出配管L8内のXeの純度も変動しており、排出ガスのガス成分の組成変化により分離性能が安定しなかった。
【0090】
<実施例2>
図3に示すガス分離装置100を構築した。実施例2で使用したガス分離装置1は、
図2に示す分離部5を備える。
実施例2で使用したガス分離装置の構成は下記の通りである。
・圧縮機4:吐出流量が0℃、1気圧の条件下で26L/minとなるように設定した。
・第1の吸着塔53A:内径が108mm、長さが650mmの吸着塔であり、内部に活性炭2.7kgを充填した。
・第2の吸着塔53B:内径が154mm、長さが650mmの吸着塔であり、内部にNa-A型ゼオライト8.8kgを充填した。
・第3ガス成分除去装置103:活性炭を用いた吸着除去塔
【0091】
まず、希ガス使用設備の排出ガスを想定した下記の組成4の混合ガスを用いて、原料ガスから第1のガス成分としてキセノンを、第2のガス成分として窒素を、第3のガス成分としてn-ブタン(n-C4H10)をそれぞれ分離した。
・組成4:Xeと、N2と、n-ブタン(n-C4H10)との混合ガス(Xe濃度:1体積%、N2濃度:99体積%、n-ブタン(n-C4H10):100体積ppm)
・組成4の排出ガスの流量:1.0NL/min
【0092】
ここで、組成4の排出ガスを用いた原料ガスの分離に際しては、第1の導入配管L6による第1の導入ガス(Xe)の流量VR1が0.49NL/minとなり、第2の導入配管L7による第2の導入ガス(N2)の流量VR2が0.01NL/minとなるように、排出ガス中のXe及びN2の各流量に基づいてそれぞれの流量を制御した。また、Xeの希ガス使用設備20への供給流量VO1を0.01NL/minに制御し、N2の流量VO2を0.99NL/minに制御した。
実施例2の組成4の排出ガスを用いた原料ガスの分離結果を以下に示す。
・第1の導出配管L8内のXe純度:99.993%
・第1の導出配管L8内の不純物としてのN2濃度:70体積ppm
・第1の導出配管L8内の不純物としてのn-ブタン(n-C4H10)濃度:1体積ppm未満
・第2の導出配管L9内のN2純度:99.988体積%
・第2の導出配管L9内の不純物としてのXe濃度:120体積ppm
・Xe回収率:98.8%
なお、第3ガス成分除去装置103の温度は、25℃であった。
【0093】
次に、希ガス使用設備の排出ガスを想定した混合ガスの組成を組成4から以下の組成5に変化させた。圧縮機の吐出流量、吸着工程、再生工程の切替時間は同じ値とした。
・組成5: Xeと、N2と、n-ブタン(n-C4H10)との混合ガス(Xe濃度:50体積%、N2濃度:50体積%、n-ブタン(n-C4H10):100体積ppm)
・組成5の排出ガスの流量:1.0NL/min
【0094】
組成5の排出ガスを用いた原料ガスの分離に際しては、第1の導入配管L6による第1の導入ガス(Xe)の流量VR1が0NL/minとなり、第2の導入配管L7による第2の導入ガス(N2)の流量VR2が0.5NL/minとなるように、排出ガス中のXe及びN2の各流量に基づいてそれぞれの流量を制御した。また、Xeの希ガス使用設備20への供給流量VO1を0.5NL/minに制御し、N2の流量VO2を0.5NL/minに制御した。
【0095】
実施例2において、組成5の排出ガスを用いた原料ガスの分離結果を以下に示す。以下に示すように、原料ガスの組成を組成4から組成5に変更しても、Xeの高純度を維持したまま、Xe回収率を高くすることができた。
・第1の導出配管L8内のXe純度:99.993体積%
・第1の導出配管L8内の不純物としてのN2濃度:70体積ppm
・第1の導出配管L8内の不純物としてのn-ブタン(n-C4H10):1体積ppm未満
・第2の導出配管L9内のN2純度:99.988体積%
・第2の導出配管L9内の不純物としてのXe濃度:120体積ppm
・Xe回収率:99.99%
なお、第3ガス成分除去装置103の温度は、25℃であった。
【0096】
<比較例2>
比較例2では、演算装置12、第1の導入配管L6、第2の導入配管L7を備え付けなかった以外は、実施例2と同様にして分離装置を組み立てた。
実施例2でも使用した希ガス使用設備の排出ガスを想定した下記組成5の混合ガスを用いて、原料ガスから第1のガス成分としてキセノン(Xe)を、第2のガス成分として窒素(N2)を、第3のガス成分としてn-ブタン(n-C4H10)をそれぞれ分離した。
比較例2においても組成5の排出ガスの分離に際し、Xeの希ガス使用設備20への供給流量VO1を0.5NL/minに制御し、N2の流量VO2を0.5NL/minに制御した。
・組成5: Xeと、N2と、n-ブタン(n-C4H10)との混合ガス(Xe濃度:50体積%、N2濃度:50体積%、n-ブタン(n-C4H10):100体積ppm)
・組成5の排出ガスの流量:1.0NL/min
【0097】
比較例2の組成5の排出ガスを用いた原料ガスの分離結果を以下に示す。
・第1の導出配管L8内のXe純度:99.9990体積%
・第1の導出配管L8内の不純物としてのN2濃度:10体積ppm
・第1の導出配管L8内の不純物としてのn-ブタン(n-C4H10)濃度:3.5体積ppm
・第2の導出配管L9内の不純物としてのXe濃度:3230体積ppm
・第2の導出配管L9内のN2純度:99.6770体積%
・Xe回収率:99.68%
なお、第3ガス成分除去装置103の温度は、67℃であった。
比較例2においては、第3ガス成分除去装置103の温度が高くなってn-ブタン(n-C4H10)の除去は困難であり、n-ブタン(n-C4H10)濃度は高かった。
【符号の説明】
【0098】
1、100…ガス分離装置、2…流量計、3…原料ガス容器、4…圧縮機、5…分離部、6…第1の分離ガス容器、7…第2の分離ガス容器、8…第1の流量制御器、9…第2の流量制御器、10…第3の流量制御器、11…第4の流量制御器、12…演算装置、13…濃度計、14…受信機、15…第1のガス成分の供給源、20…ガス使用設備、51A、51B…供給弁、52A、52B…排圧弁、53A、53B…吸着塔、54A、54B…圧力計、55A、55B…分離弁、56A、56B…再生弁、57A、57B…再生配管、L1…第1の供給配管、L2…第2の供給配管、L3…還流配管、L4…第1の分離配管、L5…第2の分離配管、L6…第1の導入配管、L7…第2の導入配管、L8…第1の導出配管、L9…第2の導出配管、L11…第3の供給配管、L12…補充配管、103…第3ガス成分除去装置。