(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】ストロンチウム吸着剤及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B01J 20/10 20060101AFI20230711BHJP
B01J 20/30 20060101ALI20230711BHJP
B01J 20/28 20060101ALI20230711BHJP
C02F 1/28 20230101ALI20230711BHJP
C01B 33/32 20060101ALI20230711BHJP
G21F 9/12 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
B01J20/10 C
B01J20/30
B01J20/28 Z
C02F1/28 E
C01B33/32
G21F9/12 501B
(21)【出願番号】P 2019065149
(22)【出願日】2019-03-28
【審査請求日】2022-02-14
(31)【優先権主張番号】P 2018069869
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岡庭 宏
【審査官】瀧 恭子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/141931(WO,A1)
【文献】特開2017-170440(JP,A)
【文献】特開2019-014613(JP,A)
【文献】特開2016-210673(JP,A)
【文献】特開2017-148803(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/00-20/28、20/30-20/34
C01F 1/28
G21F 9/12
C01B 33/20-39/54
B01D 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニオブを含有し、
ニオブの他に、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を含有し、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の含有量が、Nbに対するモル比で表してM/Nb≦1.0(Mはアルカリ金属またはアルカリ土類金属を表す。)少なくとも2θ=14.5±0.5°、2θ=28.2±0.3°及び2θ=29.4±0.3°にX線回折ピークを有し、かつ2θ=29.4±0.3°の回折ピーク強度に対する2θ=28.2±0.3°の回折ピーク強度が90%以下であることを特徴とするストロンチウム吸着剤。
【請求項2】
さらにシリコンを含有することを特徴とする
請求項1に記載のストロンチウム吸着剤。
【請求項3】
シリコンの含有量がNbに対するモル比で表してSi/Nb≦0.7である、請求項2に記載のストロンチウム吸着剤。
【請求項4】
以下の
モル組成の反応混合物を80℃以上220℃以下の温度を保持することを特徴とする請求項1~請求項3のいずれかの項に記載のストロンチウム吸着剤の製造方法。
M/Nb=0.5以上、10以下
(Mはアルカリ金属またはアルカリ土類金属を表す。)
Si/Nb=0以上、3以下
H
2O/Nb=10以上、300以下
【請求項5】
ストロンチウムを含有する水を請求項1~請求項3のいずれかの項に記載のストロンチウム吸着剤と接触させることを特徴とするストロンチウムの吸着方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストロンチウム吸着剤及びその製造方法に関する。本発明のストロンチウム吸着剤は、例えば、放射性ストロンチウムに汚染された海水、河川水、地下水から放射性ストロンチウムを選択的に吸着して除害する等の用途に有用である。
【背景技術】
【0002】
福島原発事故により発生した放射性汚染水から放射性元素、特に処理が困難なストロンチウムを選択的に処理できる吸着剤が望まれている。この放射性汚染水には海水が含まれているために、ナトリウム、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ金属、アルカリ土類金属を高濃度で含有しており、イオン交換樹脂などの一般的なイオン交換体ではストロンチウムを吸着除去することができなかった。
【0003】
特許文献1にニオブを含有したストロンチウム吸着剤が開示されている。特許文献1によれば、このストロンチウム吸着剤はシチナカイト構造を有するシリコチタネートであり、なおかつ、CuKα線を線源とする粉末X線回折において、少なくとも2θ=27.8±0.5°、及び2θ=29.4±0.5°に回折ピークを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来のストロンチウム吸着剤よりも、高いストロンチウム吸着性能を有するストロンチウム吸着剤及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の回折ピークを有するニオブ化合物がストロンチウム吸着性能に優れることを見出し、本発明を完成したものである。すなわち、本発明は、ニオブを含有し、少なくとも2θ=14.5±0.5°、2θ=28.2±0.3°及び2θ=29.4±0.3°にX線回折ピークを有し、かつ2θ=29.4±0.3°の回折ピーク強度に対する2θ=28.2±0.3°の回折ピーク強度が90%以下であることを特徴とするストロンチウム吸着剤、並びにストロンチウム吸着剤の製造方法である。
【0007】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0008】
本発明のストロンチウム吸着剤は、ニオブを含有するものである。ニオブを含有することにより、多量のアルカリ金属、アルカリ土類金属を含有する汚染水から微量のストロンチウムを選択的に吸着することができる。本発明のストロンチウム吸着剤は、特にイオン交換により微量のストロンチウムを選択的に吸着するのに好適である。
【0009】
本発明のストロンチウム吸着剤は、少なくとも2θ=14.5±0.5°、2θ=28.2±0.3°及び2θ=29.4±0.3°にX線回折ピークを有するものである。X線回折ピークは、CuKα線(λ=1.5405Å)を線源とする一般的な粉末X線回折装置により測定されたものである。
【0010】
本発明のストロンチウム吸着剤は、2θ=29.4±0.3°の回折ピーク強度に対する2θ=28.2±0.3°の回折ピーク強度が90%以下である。回折ピーク強度が90%を超える場合は、ストロンチウム吸着性能が低いものとなる。好ましくは85%以下、さらに好ましくは80%以下である。下限は特に限定されないが、35%以上、好ましくは40%以上、さらに好ましくは50%以上である。ここに、回折ピーク強度とは、回折X線の強度からベースラインのノイズ強度(バックグラウンド強度)を差し引いたものである。
【0011】
本発明のストロンチウム吸着剤は、ニオブの他に、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を含有することができる。ここに、アルカリ金属とは、例えば、ナトリウム、カリウム等があげられ、アルカリ土類金属とは、例えば、マグネシウム、カルシウム等があげられる。アルカリ金属またはアルカリ土類金属の含有量は、Nbに対するモル比で表してM/Nb≦1.0(Mはアルカリ金属またはアルカリ土類金属を表す。)であることが好ましい。含有するアルカリ金属またはアルカリ土類金属の一部または全てがイオン交換可能であるため、M/Nbの下限は0である。
【0012】
本発明のストロンチウム吸着剤は、含有するアルカリ金属またはアルカリ土類金属の一部を、プロトンなどイオン交換し易いイオンに予めイオン交換して使用することもできる。
【0013】
本発明のストロンチウム吸着剤は、さらにシリコン(Si)を含有することができる。シリコンの含有量は、特に限定されないが、Nbに対するモル比で表してSi/Nb≦0.7が好ましく、Si/Nb≦0.6がさらに好ましい。本発明のストロンチウム吸着剤は、シリコンの含有は必須ではないため、Si/Nbの下限は0である。
【0014】
本発明のストロンチウム吸着剤は、以下の組成の反応混合物を80℃以上220℃以下、好ましくは100℃以上200℃以下の温度を保持することにより製造することができる。
【0015】
M/Nb=0.5以上、10以下(Mはアルカリ金属またはアルカリ土類金属を表す。)
Si/Nb=0以上、3以下
H2O/Nb=10以上、300以下
反応混合物において、好ましいM/Nbは0.8以上、8以下である。
【0016】
反応混合物において、好ましいSi/Nbは0以上、2.5以下である。
【0017】
反応混合物において、好ましいH2O/Nbは15以上、200以下である。
【0018】
ニオブの原料は特に限定されないが、水酸化ニオブ、酸化ニオブ等の安価なニオブ化合物が使用できる。アルカリ金属またはアルカリ土類金属の原料は特に限定されないが、ニオブ原料を溶解するために、少なくともその一部は水に可溶性の水酸化物であることが好ましく、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が使用できる。また、これらアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物と塩化物、炭酸塩等を併用することができる。
シリコンの原料は特に限定されないが、珪酸ナトリウムや珪酸カリウム等の水溶性珪酸塩、水ガラス、反応性の高い無定形シリカ等が使用できる。
【0019】
これらの原料を混合した反応混合物をオートクレーブ等の耐熱耐圧容器に密閉し、80℃以上220℃以下、好ましくは100℃以上200℃以下の温度を保持することにより本発明のストロンチウム吸着剤を製造することができる。反応中は反応系を均一に保つために、内容物の攪拌を行うことが好ましいが、静置であってもかまわない。反応後の生成物は濾過、遠心分離等の一般的な固液分離法を用いて固体を回収、洗浄、乾燥することにより本発明のストロンチウム吸着剤を得る。
【0020】
本発明のストロンチウム吸着剤は、成形体とすることもできる。成形する方法は特に限定されない。成形に使用されるバインダーとしては、例えば、粘土、アルミナ、シリカなどの無機系バインダー等が使用できる。また成形する時には成形助剤としてセルロースなどの有機系助剤、リン酸塩などの無機系助剤等を使用することができる。成形体の形状は、例えば、粒状、球状、円柱状、三つ葉型、楕円状、俵型、リング状等とすることができる。
【0021】
本発明のストロンチウム吸着剤を被処理水(例えば、ストロンチウムを含有する水)と接触させることにより、被処理水中のストロンチウムを吸着除去することができる。本発明のストロンチウム吸着剤を被処理水と接触させる方法は特に限定されない。本発明のストロンチウム吸着剤を被処理水に分散し固液分離する、粉体のまま、あるいは上述のように成形体とした本発明のストロンチウム吸着剤をろ過材として被処理水をろ過する、成形体とした本発明のストロンチウム吸着剤をカラムに充填し被処理水を通過させるなどの一般的な方法が適用可能である。
【発明の効果】
【0022】
本発明のストロンチウム吸着剤は、従来のストロンチウム吸着剤よりも、高いストロンチウム吸着性能を有し、海水等の多量のアルカリ金属、アルカリ土類金属を含有する汚染水から微量のストロンチウムを選択的に吸着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】実施例6で得た生成物のXRDパターンである。
【
図2】実施例7で得た生成物のXRDパターンである。
【
図3】実施例8で得た生成物のXRDパターンである。
【
図4】比較例1の原料水酸化ニオブのXRDパターンである。
【実施例】
【0024】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0025】
実施例中、水酸化ニオブの純度は600℃の強熱減量分を水または水酸基と見なした酸化ニオブ換算の重量%で記載した。すなわち、実施例中の「75%水酸化ニオブ」とは「600℃の強熱減量が25%あった水酸化ニオブ」を表す。
【0026】
<粉末X線回折測定>
粉末X線回折パターンは、銅Kα線を線源とする粉末X線回折装置(商品名:UltimaIV、Rigaku製)により2θ=5°~60°の範囲で測定した。
【0027】
<ストロンチウム吸着試験>
ストロンチウムの吸着試験は、1Lメスフラスコに、10倍希釈の模擬海水(Na:1000ppm、Mg:120ppm、Ca:40ppm)に和光純薬製ICP標準液をストロンチウムの濃度が各1ppmとなる様添加して調製した試験液1Lを入れ、吸着剤を乾燥重量で50mg添加し、25℃の室温下、40mmのスタラーチップにより800rpmで24時間撹拌した。
【0028】
試験後の試験液を0.1μのメンブランフィルターで濾過して吸着剤を分離後、試験液に残存するストロンチウムの濃度をICPにより定量した。
【0029】
<ストロンチウム除去率>
ストロンチウム除去率は以下の式(1)で算出した。
【0030】
ストロンチウム除去率=(初期濃度-吸着試験後濃度)/(初期濃度) …式(1)
実施例1
純水42.2gに48%水酸化ナトリウム溶液7.2g、75%水酸化ニオブ2.4g、含水率50%の沈降法シリカゲル4.3gを加えて以下のモル組成の反応混合物を調製した。
【0031】
Na/Nb=6.6
Si/Nb=2.6
H2O/Nb=205
この反応混合物を容積80mlのステンレス製密閉耐圧容器に入れ、水平軸廻りに45rpmで回転させながら180℃で24時間保持した。
【0032】
生成物をろ過、水洗後、110℃で一晩乾燥し、ストロンチウム吸着剤を得た。乾燥した生成物(ストロンチウム吸着剤)のX線回折パターンから、ピーク位置(2θ)とそのピークの相対強度を求めた結果を表1に示す(表は相対強度20%以上の回折ピークのみ記載)。2θ=29.6°と2θ=28.4°のピーク強度比は80%であった。
【0033】
【0034】
得られたストロンチウム吸着剤の組成は酸化物のモル比で表して以下の通りだった。
【0035】
0.74Na2O:Nb2O5:1.15SiO2
また、ストロンチウム吸着剤のストロンチウム浄化率は63%であった。
【0036】
実施例2
純水41.1gに48%水酸化ナトリウム溶液7.1g、75%水酸化ニオブ3.6g、含水率50%の沈降法シリカゲル4.2gを加えて以下のモル組成の反応混合物を調製した。
【0037】
Na/Nb=4.3
Si/Nb=1.7
H2O/Nb=134
この反応混合物を容積80mlのステンレス製密閉耐圧容器に入れ、水平軸廻りに45rpmで回転させながら180℃で24時間保持した。
【0038】
生成物をろ過、水洗後、110℃で一晩乾燥し、ストロンチウム吸着剤を得た。乾燥した生成物(ストロンチウム吸着剤)のX線回折パターンから、ピーク位置(2θ)とそのピークの相対強度を求めた結果を表2に示す(表は相対強度20%以上の回折ピークのみ記載)。2θ=29.6°と2θ=28.5°のピーク強度比は79%であった。
【0039】
【0040】
得られたストロンチウム吸着剤の組成は酸化物のモル比で表して以下の通りだった。
【0041】
0.77Na2O:Nb2O5:1.09SiO2
また、ストロンチウム吸着剤のストロンチウム浄化率は74%であった。
【0042】
実施例3
純水38.5gに48%水酸化ナトリウム溶液10.8g、75%水酸化ニオブ2.6g、含水率50%の沈降法シリカゲル4.2gを加えて以下のモル組成の反応混合物を調製した。
【0043】
Na/Nb=8.8
Si/Nb=2.3
H2O/Nb=181
この反応混合物を容積80mlのステンレス製密閉耐圧容器に入れ、水平軸廻りに45rpmで回転させながら180℃で24時間保持した。
【0044】
生成物をろ過、水洗後、110℃で一晩乾燥し、ストロンチウム吸着剤を得た。乾燥した生成物(ストロンチウム吸着剤)のX線回折パターンから、ピーク位置(2θ)とそのピークの相対強度を求めた結果を表3に示す(表は相対強度20%以上の回折ピークのみ記載)。2θ=29.3°と2θ=28.2°のピーク強度比は78%であった。
【0045】
【0046】
得られたストロンチウム吸着剤の組成は酸化物のモル比で表して以下の通りだった。
【0047】
0.59Na2O:Nb2O5:0.72SiO2
また、ストロンチウム吸着剤のストロンチウム浄化率は75%であった。
【0048】
実施例4
純水33.5gに48%水酸化ナトリウム溶液10.3g、75%水酸化ニオブ7.4g、含水率50%の沈降法シリカゲル4.8gを加えて以下のモル組成の反応混合物を調製した。
【0049】
Na/Nb=3.0
Si/Nb=0.8
H2O/Nb=60
この反応混合物を容積80mlのステンレス製密閉耐圧容器に入れ、水平軸廻りに45rpmで回転させながら180℃で24時間保持した。
【0050】
生成物をろ過、水洗後、110℃で一晩乾燥し、ストロンチウム吸着剤を得た。乾燥した生成物(ストロンチウム吸着剤)のX線回折パターンから、ピーク位置(2θ)とそのピークの相対強度を求めた結果を表4に示す(表は相対強度20%以上の回折ピークのみ記載)。2θ=29.2°と2θ=28.1°のピーク強度比は68%であった。
【0051】
【0052】
得られたストロンチウム吸着剤の組成は酸化物のモル比で表して以下の通りだった。
【0053】
0.61Na2O:Nb2O5:0.60SiO2
また、ストロンチウム吸着剤のストロンチウム浄化率は75%であった。
【0054】
実施例5
純水26.4gに48%水酸化ナトリウム溶液9.9g、75%水酸化ニオブ15.4g、含水率50%の沈降法シリカゲル4.2gを加えて以下のモル組成の反応混合物を調製した。
【0055】
Na/Nb=1.4
Si/Nb=0.3
H2O/Nb=25
この反応混合物を容積80mlのステンレス製密閉耐圧容器に入れ、水平軸廻りに45rpmで回転させながら180℃で24時間保持した。
【0056】
生成物をろ過、水洗後、110℃で一晩乾燥し、ストロンチウム吸着剤を得た。乾燥した生成物(ストロンチウム吸着剤)のX線回折パターンから、ピーク位置(2θ)とそのピークの相対強度を求めた結果を表5に示す(表は相対強度20%以上の回折ピークのみ記載)。2θ=29.3°と2θ=28.1°のピーク強度比は65%であった。
【0057】
【0058】
得られたストロンチウム吸着剤の組成は酸化物のモル比で表して以下の通りだった。
【0059】
0.63Na2O:Nb2O5:0.58SiO2
また、ストロンチウム吸着剤のストロンチウム浄化率は79%であった。
【0060】
実施例6
純水45.8gに48%水酸化ナトリウム溶液6.3g、75%水酸化ニオブ2.6gを加えて以下のモル組成の反応混合物を調製した。
【0061】
Na/Nb=5.1
Si/Nb=0.0
H2O/Nb=187
この反応混合物を容積80mlのステンレス製密閉耐圧容器に入れ、水平軸廻りに45rpmで回転させながら120℃で18時間保持した。
【0062】
生成物をろ過、水洗後、110℃で一晩乾燥し、ストロンチウム吸着剤を得た。乾燥した生成物(ストロンチウム吸着剤)のX線回折パターンを
図1に示す。X線回折パターンから、ピーク位置(2θ)とそのピークの相対強度を求めた結果を表6に示す(表は相対強度20%以上の回折ピークのみ記載)。2θ=29.4°と2θ=28.2°のピーク強度比は61%であった。
【0063】
【0064】
得られたストロンチウム吸着剤の組成は酸化物のモル比で表して以下の通りだった。
【0065】
0.46Na2O:Nb2O5:0.0SiO2
また、ストロンチウム吸着剤のストロンチウム浄化率は53%であった。
【0066】
実施例7
純水45.8gに48%水酸化ナトリウム溶液6.3g、75%水酸化ニオブ2.6gを加えて以下のモル組成の反応混合物を調製した。
【0067】
Na/Nb=5.1
Si/Nb=0.0
H2O/Nb=187
この反応混合物を容積80mlのステンレス製密閉耐圧容器に入れ、水平軸廻りに45rpmで回転させながら120℃で18時間保持した。
【0068】
密閉耐圧容器を開放し、ここへ含水率50%の沈降法シリカゲル2.9gを加えて反応混合物は総計で以下のモル組成となった。
【0069】
Na/Nb=5.1
Si/Nb=1.5
H2O/Nb=192
再び密閉耐圧容器を密閉し、水平軸廻りに45rpmで回転させながら180℃で24時間保持した。
【0070】
生成物をろ過、水洗後、110℃で一晩乾燥し、ストロンチウム吸着剤を得た。乾燥した生成物(ストロンチウム吸着剤)のX線回折パターンを
図2に示す。X線回折パターンから、ピーク位置(2θ)とそのピークの相対強度を求めた結果を表7に示す(表は相対強度20%以上の回折ピークのみ記載)。2θ=29.4°と2θ=28.2°のピーク強度比は73%であった。
【0071】
【0072】
得られたストロンチウム吸着剤の組成は酸化物のモル比で表して以下の通りだった。
【0073】
0.76Na2O:Nb2O5:1.2SiO2
また、ストロンチウム吸着剤のストロンチウム浄化率は78%であった。
【0074】
実施例8
純水28.4gに48%水酸化ナトリウム溶液10.7g、65%水酸化ニオブ11.8g、含水率60%の沈降法シリカゲル5.2gを加えて以下のモル組成の反応混合物を調製した。
【0075】
Na/Nb=1.5
Si/Nb=0.4
H2O/Nb=25
この反応混合物を容積80mlのステンレス製密閉耐圧容器に入れ、水平軸廻りに45rpmで回転させながら180℃で24時間保持した。
【0076】
生成物をろ過、水洗後、110℃で一晩乾燥し、ストロンチウム吸着剤を得た。乾燥した生成物(ストロンチウム吸着剤)のX線回折パターンを
図3に示す。X線回折パターンから、ピーク位置(2θ)とそのピークの相対強度を求めた結果を表8に示す(表は相対強度20%以上の回折ピークのみ記載)。2θ=29.4°と2θ=28.1°のピーク強度比は60%であった。
【0077】
【0078】
得られたストロンチウム吸着剤の組成は酸化物のモル比で表して以下の通りだった。
【0079】
0.79Na2O:Nb2O5:1.0SiO2
また、ストロンチウム吸着剤のストロンチウム浄化率は86%であった。
【0080】
実施例9
純水20.1gに48%水酸化ナトリウム溶液6.6g、49%水酸化ニオブ24.1g、含水率60%の沈降法シリカゲル4.3gを加えて以下のモル組成の反応混合物を調製した。
【0081】
Na/Nb=0.9
Si/Nb=0.33
H2O/Nb=25
この反応混合物を容積80mlのステンレス製密閉耐圧容器に入れ、水平軸廻りに45rpmで回転させながら180℃で24時間保持した。
【0082】
生成物をろ過、水洗後、110℃で一晩乾燥し、ストロンチウム吸着剤を得た。乾燥した生成物(ストロンチウム吸着剤)のX線回折パターンから、ピーク位置(2θ)とそのピークの相対強度を求めた結果を表9に示す(表は相対強度20%以上の回折ピークのみ記載)。2θ=29.3°と2θ=28.1°のピーク強度比は82%であった。
【0083】
【0084】
得られたストロンチウム吸着剤の組成は酸化物のモル比で表して以下の通りだった。
【0085】
0.75Na2O:Nb2O5:0.69SiO2
また、ストロンチウム吸着剤のストロンチウム浄化率は55%であった。
【0086】
比較例1
原料として使用した水酸化ニオブのX線回折パターンを
図4に示す。X線回折パターンから、ピーク位置(2θ)とそのピークの相対強度を求めた結果を表10に示す(表は相対強度20%以上の回折ピークのみ記載)。2θ=29.3°と2θ=28.1°のピーク強度比は95%であった。
【0087】
【0088】
また、原料の水酸化ニオブのストロンチウム浄化率は15%であった。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明のストロンチウム吸着剤は、例えば、放射性ストロンチウムに汚染された海水、河川水、地下水から放射性ストロンチウムを選択的に吸着して除害する等の用途に有用である。