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特許7310223ポリウレタン系接着剤形成組成物および接着剤
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  • 特許-ポリウレタン系接着剤形成組成物および接着剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】ポリウレタン系接着剤形成組成物および接着剤
(51)【国際特許分類】
   C09J 175/04 20060101AFI20230711BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
C09J175/04
C09J11/04
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019066095
(22)【出願日】2019-03-29
(65)【公開番号】P2020164635
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2022-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】相澤 考宏
(72)【発明者】
【氏名】早川 勇太
【審査官】高崎 久子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭51-001596(JP,A)
【文献】特開2018-135491(JP,A)
【文献】特開2006-097018(JP,A)
【文献】特表平09-503806(JP,A)
【文献】特開2019-026837(JP,A)
【文献】特開昭47-004994(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第00219325(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J
B32B
C08G18/00-18/87;71/00-71/04
C08K3/00-13/08
C08L1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基末端硬化剤(A)と、
イソシアネート基末端プレポリマー(B)と、を含むポリウレタン系接着剤形成組成物であって、
前記水酸基末端硬化剤(A)は、
式(I)で示される第3級アミノ基含有ジオール(a1)と、
平均官能基数3以上のポリオール(a2)と、を含み、
前記第3級アミノ基含有ジオール(a1)の含有量が、前記ポリウレタン系接着剤形成組成物中、0.04mmol/g以上1.2mmol/g以下であり、
前記イソシアネート基末端プレポリマー(B)は、芳香族ポリイソシアネートとポリオールとの反応生成物であり、
前記ポリオール(a2)の含有量が、前記第3級アミノ基含有ジオール(a1)1molに対して、0.2mol以上9.0mol以下であり、
ポリウレタン系接着剤形成組成物中のトリエチレンジアミンの含有量が、0質量%以上0.04質量%以下である、ポリウレタン系接着剤形成組成物:
【化1】
式中、
は、各々独立に、炭素数1~4の直鎖のアルキレン基を示し、
は、炭素数1~4のアルキル基を示す。
【請求項2】
2つのRが、同一である、請求項1に記載のポリウレタン系接着剤形成組成物。
【請求項3】
ポリウレタン系接着剤形成組成物中のトリエチレンジアミンの含有量が、0質量%以上0.02質量%以下である、請求項1または2に記載のポリウレタン系接着剤形成組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のポリウレタン系接着剤形成組成物と、無機フィラー(C)と、を含有する、接着剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタン系接着剤形成組成物および接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車や航空機の分野では燃費向上のために軽量化が進められており、金属を鉄からより軽量のアルミニウムに置き換えようとする動きが活発になっている。このため、アルミニウム同士を強固に接合可能な高性能接着剤が求められている。
【0003】
ここで、ウレタン系接着剤は繊維により強化されたプラスチック(Fiber Reinforced Plastics;以下、FRPと記す)や金属の接着固定に広く使用されている。例えば特許文献1は、ポリイソシアネートと高分子量ポリオールを反応させて得られるプレポリマー、特定のフィラーを構成成分とし、フィラーを所定量含有する第1液;および、分子量の異なる2種のポリオールと、触媒と、を含有する第2液;からなり、各ポリオールを所定の比で含有する、ウレタン接着剤組成物を開示している。特許文献1によれば、このウレタン接着剤組成物は、鋼板同士、および、FRP同士を常温で接着し、高い接着性を発現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2009/047962号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1にかかるウレタン接着剤組成物は、硬化に24時間以上を要しているため、生産性の面で劣っている。
また、例えば、流れ作業で組み立てられる自動車の場合、室温で材料を貼り合わせた後に高い接着力を発現できる室温硬化性が必要となり、かつ、150℃~200℃の高温で実施される塗装工程に耐え得る高温接着性が必要となる。
そこで、本発明の一実施形態は、室温において短時間で優れた接着強度を発現し、かつ、優れた高温接着性を有するポリウレタン系接着剤形成組成物および接着剤を提供することに向けられている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態は、以下の(i)~(iv)に示されるものである。
(i) 水酸基末端硬化剤(A)と、
イソシアネート基末端ポリイソシアネート(B)と、を含むポリウレタン系接着剤形成組成物であって、
前記水酸基末端硬化剤(A)は、
式(I)で示される第3級アミノ基含有ジオール(a1)と、
平均官能基数3以上のポリオール(a2)と、を含み、
前記第3級アミノ基含有ジオール(a1)の含有量が、前記ポリウレタン系接着剤形成組成物中、0.04mmol/g以上1.2mmol/g以下であり、
前記ポリオール(a2)の含有量が、前記第3級アミノ基含有ジオール(a1)1molに対して、0.2mol以上9.0mol以下である、ポリウレタン系接着剤形成組成物:
【0007】
【化1】
【0008】
式中、
は、各々独立に、炭素数1~4の直鎖のアルキレン基を示し、
は、炭素数1~4のアルキル基を示す。
【0009】
(ii) 2つのRが、同一である、(i)に記載のポリウレタン系接着剤形成組成物。
【0010】
(iii)ポリウレタン系接着剤形成組成物中のトリエチレンジアミンの含有量が、0質量%以上0.04質量%以下である、(i)または(ii)に記載のポリウレタン系接着剤形成組成物。
【0011】
(iv) (i)~(iii)のいずれか1項に記載のポリウレタン系接着剤形成組成物と、無機フィラー(C)と、を含有する、接着剤。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一実施形態によれば、室温において短時間で優れた接着強度を発現し、優れた高温接着性を有するポリウレタン系接着剤形成組成物および接着剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例3、参考例1~3の貯蔵弾性率E’の温度変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明者等は、特許文献1にかかるウレタン接着剤組成物について、さらなる検討を重ねた。すると、特許文献1にかかるウレタン接着剤組成物は、高温に曝されることを想定しておらず、実用的に満足できるレベルではないことがわかった。
これに対して本発明者等は、詳細なメカニズムは不明ではあるものの、後述する式(I)で示される第3級アミノ基含有ジオール(a1)を所定量含有するポリウレタン系接着剤形成組成物によって、短時間で優れた室温接着性を発揮し、かつ、高温条件下において接着性の低下が抑制されることを見出した。
【0015】
以下、本発明を実施するための例示的な実施形態を詳細に説明する。
[ポリウレタン系接着剤形成組成物]
本発明の一実施形態にかかるポリウレタン系接着剤形成組成物は、
水酸基末端硬化剤(A)と、
イソシアネート基末端ポリイソシアネート(B)と、を含み、
前記水酸基末端硬化剤(A)は、
式(I)で示される第3級アミノ基含有ジオール(a1)と、
平均官能基数3以上のポリオール(a2)と、を含み、
前記第3級アミノ基含有ジオール(a1)の含有量が、前記ポリウレタン系接着剤形成組成物中、0.04mmol/g以上1.2mmol/g以下であり、
前記ポリオール(a2)の含有量が、前記第3級アミノ基含有ジオール(a1)1molに対して、0.2mol以上9.0mol以下である、ポリウレタン系接着剤形成組成物:
【0016】
【化2】
【0017】
式中、
は、各々独立に、炭素数1~4の直鎖のアルキレン基を示し、
は、炭素数1~4のアルキル基を示す。
【0018】
[水酸基末端硬化剤(A)]
水酸基末端硬化剤(A)は、
式(I)で示される第3級アミノ基含有ジオール(a1)と、
平均官能基数3以上のポリオール(a2)と、を含む:
【0019】
【化3】
【0020】
式中、
は、各々独立に、炭素数1~4の直鎖のアルキレン基を示し、
は、炭素数1~4のアルキル基を示す。
【0021】
[[ジオール(a1)]]
は、具体的にはメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基が挙げられる。Rは、同一であってもよく、異なっていてもよい。Rが同一であると、第3級アミノ基含有ジオール(a1)が簡易に製造でき、低コストとなるため好ましい。
は、直鎖状のアルキル基であっても分岐状のアルキル基であってもよく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基が挙げられる。
【0022】
第3級アミノ基含有ジオール(a1)の具体例としては、N-メチルジエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、N-ブチルジエタノールアミン、N-メチルジプロパノールアミン、N-メチルジブタノールアミン等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。特に樹脂物性の観点から、N-メチルジエタノールアミンが好ましい。
【0023】
第3級アミノ基を有するジオール(a1)の含有量は、ポリウレタン系接着剤形成組成物中、0.04mmol/g以上1.2mmol/g以下であり、好ましくは0.1mmol/g以上1.1mmol/g以下であり、更に好ましくは0.15mmol/g以上1.0mmol/g以下である。第3級アミノ基を有するジオール(a1)の含有量が0.04mmol/g未満では、室温における硬化に長時間を要し、1.2mmol/gを超えると、硬化速度が速く被着体への転写率が低くなる。
【0024】
[[ポリオール(a2)]]
平均官能基数3以上のポリオール(a2)としては、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、N,N-ビスヒドロキシプロピル-N-ヒドロキシエチルアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、エチレンジアミンプロピレンオキサイド変性体のモノマーポリオール、トリメチロールプロパンプロピレンオキサイド変性体のモノマーポリオール、ペンタエリスリトールプロピレンオキシド変性体;ならびに、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等のポリオールを開始剤として、ε-カプロラクトン、β-ブチロラクトン、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトンなどの環状エステル類を開環付加させることにより得られる、ポリカプロラクトンポリオール;等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0025】
平均官能基数3以上のポリオール(a2)の含有量は、第3級アミノ基を有するジオール(a1)1molに対して、0.2mol以上9.0mol以下であり、好ましくは0.3mol以上5.0mol以下であり、更に好ましくは0.7mol以上3.0mol以下である。含有量が9.0molを超えると、平均官能基数3以上のポリオール(a2)に対して第3級アミノ基を有するジオール(a1)が少なく、室温において充分に硬化しない。含有量が0.2mol未満であると、平均官能基数3以上のポリオール(a2)に対して第3級アミノ基を有するジオール(a1)が多く、可使時間が非常に短く、濡れ性を確保できず接着強度が低くなってしまう。
【0026】
[[他のポリオール]]
第3級アミノ基を有するジオール(a1)、平均官能基数3以上のポリオール(a2)と共に、平均官能基数2以下のポリオールも併用することができる。
平均官能基数2以下のポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3-ジメチロールヘプタン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン-1,4-ジオール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール、ダイマー酸ジオール、ビスフェノールA、ビス(β-ヒドロキシエチル)ベンゼン、キシリレングリコール、メチルグリシジルエーテル等のアルキルグリシジルエーテル類、フェニルグリシジルエーテル等のアリールグリシジルエーテル類、テトラヒドロフラン等の環状エーテルモノマーを開環重合することで得られるポリエーテルポリオールを挙げることができる。
【0027】
この他、ポリマーポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等、2個以下のカーボネート結合、エステル結合、エーテル結合、等を有するポリオールが挙げられる。これらの中でも、耐熱性の観点から、ポリカーボネートポリオールが好ましく、更には常温液状で取扱いが可能である液状ポリカーボネートポリオールが特に好ましい。
【0028】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えばエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3-ジメチロールヘプタン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン-1,4-ジオール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ダイマー酸ジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド付加物、ビス(β-ヒドロキシエチル)ベンゼン、キシリレングリコール等のポリオール類の1種類以上と;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネート類、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のアルキレンカーボネート類、ジフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ジアントリルカーボネート、ジフェナントリルカーボネート、ジインダニルカーボネート等のカーボネート類の1種類以上と;の脱アルコール反応や脱フェノール反応から得られるものが挙げられる。これらは1種が含有されていてもよく、2種以上が含有されていてもよい。
【0029】
ポリエステルポリオールとしては、例えばフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、コハク酸、酒石酸、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、グルタコン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,4-シクロヘキシルジカルボン酸、α-ハイドロムコン酸、β-ハイドロムコン酸、α-ブチル-α-エチルグルタル酸、α,β-ジエチルサクシン酸、マレイン酸、フマル酸等のジカルボン酸またはこれらの無水物等の1種類以上と;エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3-ジメチロールヘプタン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン-1,4-ジオール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ダイマー酸ジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド付加物、ビス(β-ヒドロキシエチル)ベンゼン、キシリレングリコール等の1種類以上と;の縮重合反応から得られるものを挙げることができる。また、一部をヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、モノエタノールアミン等の低分子ポリアミンや低分子アミノアルコールに代えて得られるポリエステル-アミドポリオールを使用することもできる。これらは1種が含有されていてもよく、2種以上が含有されていてもよい。
【0030】
ポリエーテルポリオールとしては、例えばエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3-ジメチロールヘプタン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン-1,4-ジオール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール、ダイマー酸ジオール、ビスフェノールA、ビス(β-ヒドロキシエチル)ベンゼン、キシリレングリコール等の低分子ポリオール類;またはエチレンジアミン、プロピレンジアミン、トルエンジアミン、メタフェニレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、キシリレンジアミン等の低分子ポリアミン類;等のような活性水素基を2個有する化合物を開始剤として、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のようなアルキレンオキサイド類を付加重合させることによって得られるポリエーテルポリオール、或いはメチルグリシジルエーテル等のアルキルグリシジルエーテル類、フェニルグリシジルエーテル等のアリールグリシジルエーテル類、テトラヒドロフラン等の環状エーテルモノマーを開環重合することで得られるポリエーテルポリオールを挙げることができる。これらは1種が含有されていてもよく、2種以上が含有されていてもよい。
【0031】
水酸基末端硬化剤(A)の製造方法には特に制限がなく、公知公用の方法を適用することができる。例えば、撹拌容器内に平均官能基数2以下のポリオールを投入後、容器内の温度を40~70℃に保ちながら、第3級アミノ基含有ジオール(a1)、平均官能基数3以上のポリオール(a2)を投入し撹拌する。続いて、攪拌容器内の温度を40℃~70℃に保ちながら、0.5~2時間程度撹拌混合して、水酸基末端硬化剤(A)を得ることができる。また、撹拌混合の際に、必要に応じ、触媒やその他の添加剤を添加することもできる。
【0032】
[イソシアネート基末端ポリイソシアネート(B)]
イソシアネート基末端ポリイソシアネート(B)としては、脂肪族イソシアネート、脂環族イソシアネート、芳香族イソシアネート、芳香脂肪族イソシアネート等の未変性のイソシアネート(b1)とポリオールとで変性して得られるイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーであれば、何ら制限はない。また必要に応じて反応制御剤や酸化防止剤等の添加剤を添加してもよい。なかでも、反応性や粘度の観点から、芳香族イソシアネートと平均官能基数2のポリオール(b2)とを反応させて得られるイソシアネート基末端ポリイソシアネート(B)が好ましい。接着剤に用いられるイソシアネート基末端ポリイソシアネート(B)は常温液状であることから、変性に使用する未変性のイソシアネート(b1)は常温液状であるものが特に好ましい。
【0033】
イソシアネート基末端ポリイソシアネート(B)の製造方法には特に制限がなく、公知公用の方法を適用することができる。例えば、撹拌容器内に4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート/2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート混合物を投入後、容器内の温度を40~70℃に保ちながらアミノ基を含有しない2官能もしくは3官能のポリオールを投入し撹拌する。続いて、攪拌容器内の温度を70~90℃に保ちながら、2~5時間程度ウレタン化反応を進めるとイソシアネート基末端ポリイソシアネート(B)を得ることができる。
【0034】
<脂肪族イソシアネート>
脂肪族イソシアネートとしては、例えばヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、2-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネート、3-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリオキシエチレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、ノナメチレンジイソシアネート、2,2’-ジメチルペンタンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ブテンジイソシアネート、1,3-ブタジエン-1,4-ジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート、1,8-ジイソシアネート-4-イソシアネートメチルオクタン、2,5,7-トリメチル-1,8-ジイソシアネート-5-イソシアネートメチルオクタン、ビス(イソシアネートエチル)カーボネート、ビス(イソシアネートエチル)エーテル、1,4-ブチレングリコールジプロピルエーテル-α,α’-ジイソシアネート、リジンジイソシアネートメチルエステル、2-イソシアネートエチル-2,6-ジイソシアネートヘキサノエート、2-イソシアネートプロピル-2,6-ジイソシアネートヘキサノエート等を挙げることができる。
【0035】
<脂環族イソシアネート>
脂環族イソシアネートとしては、例えばイソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ジシクロヘキシルジメチルメタンジイソシアネート、2,2’-ジメチルジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ビス(4-イソシアネート-n-ブチリデン)ペンタエリスリトール、水素化された水添ダイマー酸ジイソシアネート、2-イソシアネートメチル-3-(3-イソシアネートプロピル)-5-イソシアネートメチル-ビシクロ〔2.2.1〕-ヘプタン、2-イソシアネートメチル-3-(3-イソシアネートプロピル)-6-イソシアネートメチル-ビシクロ〔2.2.1〕-ヘプタン、2-イソシアネートメチル-2-(3-イソシアネートプロピル)-5-イソシアネートメチル-ビシクロ〔2.2.1〕-ヘプタン、2-イソシアネートメチル-2-(3-イソシアネートプロピル)-6-イソシアネートメチル-ビシクロ〔2.2.1〕-ヘプタン、2-イソシアネートメチル-3-(3-イソシアネートプロピル)-5-(2-イソシアネートエチル)-ビシクロ-〔2.2.1〕-ヘプタン、2-イソシアネートメチル-3-(3-イソシアネートプロピル)-6-(2-イソシアネートエチル)-ビシクロ-〔2.2.1〕-ヘプタン、2-イソシアネートメチル-2-(3-イソシアネートプロピル)-5-(2-イソシアネートエチル)-ビシクロ-〔2.2.1〕-ヘプタン、2-イソシアネートメチル-2-(3-イソシアネートプロピル)-6-(2-イソシアネートエチル)-ビシクロ-〔2.2.1〕-ヘプタン、2,5-ビス(イソシアネートメチル)-ビシクロ〔2.2.1〕-ヘプタン、水素化された水添ジフェニルメタンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、水素化された水添トリレンジイソシアネート、水素化された水添キシレンジイソシアネート、水素化された水添テトラメチルキシレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0036】
<芳香族イソシアネート>
芳香族イソシアネートとしては、例えば2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート/2,6-トリレンジイソシアネート混合物、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート/4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート混合物、m-キシリレンジイソシアネート、p-キシリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、2-ニトロジフェニル-4,4’-ジイソシアネート、2,2’-ジフェニルプロパン-4,4’-ジイソシアネート、3,3’-ジメチルジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、4,4’-ジフェニルプロパンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、ナフチレン-1,4-ジイソシアネート、ナフチレン-1,5-ジイソシアネート、3,3’-ジメトキシジフェニル-4,4’-ジイソシアネート等を挙げることができる。
【0037】
<芳香脂肪族イソシアネート>
芳香脂肪族イソシアネートとしては、例えば1,3-または1,4-キシリレンジイソシアネート若しくはその混合物、1,3-または1,4-ビス(1-イソシアナト-1-メチルエチル)ベンゼン若しくはその混合物、ω,ω’-ジイソシアナト-1,4-ジエチルベンゼン等を挙げることができる。
【0038】
イソシアネート基末端ポリイソシアネート(B)は、プレポリマー化後のハンドリングのし易さの観点から、平均官能基数2のポリオール(b2)から得られるものが好ましい。
【0039】
ポリオール(b2)としては、例えばポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール等、2個以上のエーテル結合、エステル結合、カーボネート結合等を有するポリオールを挙げることができる。
【0040】
ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオールとしては、例えば、水酸基末端硬化剤(A)の他のポリオールとして挙げたポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオールと同じものが挙げられる。
【0041】
これらのなかでも、優れた物性を発現する点から、テトラヒドロフラン等の環状エーテルモノマーを開環重合することで得られるポリエーテルポリオール(ポリテトラメチレングリコール)が好ましい。
【0042】
[触媒]
水酸基末端硬化剤(A)とイソシアネート基末端ポリイソシアネート(B)との反応を促進する目的で触媒を使用することもできる。触媒の含有量は、ポリウレタン系接着剤形成組成物中に0.05質量%以下であると、高温(150~200℃)での樹脂の弾性率の低下をさらに抑制でき、より優れた高温接着性を発揮するため、特に好ましい。
触媒としては、イソシアヌレート化触媒、ウレタン化触媒等があり、具体例は以下に示すとおりである。
【0043】
<イソシアヌレート化触媒>
イソシアヌレート化触媒としては、例えばトリエチルアミン、N-エチルピペリジン、N,N’-ジメチルピペラジン、N-エチルモルフォリン、フェノール化合物のマンニッヒ塩基等の第三級アミン、酢酸カリウム等が挙げられる。また、これらのイソシアヌレート化触媒は、単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0044】
<ウレタン化触媒>
ウレタン化触媒としては、公知の触媒から適宜選択して用いることができ、例えばアミン系触媒、イミダソール系触媒、金属触媒系等を挙げることができる。
【0045】
<<アミン系触媒>>
アミン系触媒としては、例えばトリエチレンジアミン、2-メチルトリエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルプロピレンジアミン、N,N,N’,N”,N”-ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N’,N”,N”-ペンタメチル-(3-アミノプロピル)エチレンジアミン、N,N,N’,N”,N”-ペンタメチルジプロピレントリアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルヘキサメチレンジアミン、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル等を挙げることができる。
【0046】
ここで、前述したとおり、特許文献1にかかるウレタン接着剤組成物は充分な高温接着性が得られていない。これについて本発明者等が更なる検討を重ねた結果、特許文献1にかかるウレタン接着剤組成物に含まれるトリエチレエンジアミン(硬化触媒)が、高温条件下において他の成分に何らかの影響を及ぼしているため、充分な高温接着性が得られていないと本発明者等は推測している。
一方、本実施形態にかかるウレタン接着剤組成物の場合、式(1)で示される第3級アミノ基含有ジオール(a1)を所定量含有することで、トリエチレンジアミンがもたらす室温における接着性を担保し、かつ、トリエチレンジアミンが及ぼすような高温における他の成分への影響が高度に抑制されていると本発明者等は推測している。
したがって、トリエチレンジアミンの含有量は、高温でさらに優れた接着性を発揮するため、ウレタン接着剤組成物中0質量%以上0.04質量%以下であることが好ましく、0質量%以上0.02質量%以下であることがより好ましく、0質量%であることが特に好ましい。
【0047】
<<イミダゾール系触媒>>
イミダソール系触媒としては、例えば1-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、1-イソブチル-2-メチルイミダゾール、1-ジメチルアミノプロピルイミダゾール等を挙げることができる。
【0048】
<<金属系触媒>>
金属系触媒としては、例えばスタナスジアセテート、スタナスジオクトエート、スタナスジオレエート、スタナスジラウレート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジクロライド、ジオクチル錫ジラウレート等の有機スズ触媒等を挙げることができる。
【0049】
[その他の添加剤]
ポリウレタン系接着剤形成組成物は、さらに必要に応じて、添加剤として、反応抑制剤、酸化防止剤、消泡剤、等を含んでいてもよい。
【0050】
[接着剤]
本発明の一実施形態にかかる接着剤は、上述したポリウレタン系接着剤形成組成物と、無機フィラー(C)と、を含有する。
【0051】
[無機フィラー(C)]
無機フィラー(C)としては、タルク、ゼオライト、シリカ、マイクロバルーン、クレイ、ガラスバルーン、カーボンブラック等を挙げることができるが、これらに制限されるものではない。これらは、単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、ゼオライトおよびタルクの組み合わせが好ましい。ゼオライトは発泡抑制の効果を有し、タルクは液だれ防止の効果を有する。
【0052】
無機フィラー(C)の含有量は、ポリウレタン系接着剤形成組成物100質量部に対して、5質量部以上60質量部以下であることが好ましく、更に好ましくは20質量部以上40質量部以下である。
【0053】
無機フィラー(C)と、ポリウレタン系接着剤形成組成物と、を混練りする方法としては、3本ロール、プラネタリーミキサー、公転自転撹拌機等で容易に混合することができる。この際、外気による水分混有を防ぐことを目的に窒素雰囲気下で実施することが好ましい。
【0054】
本発明の一実施形態にかかるポリウレタン系樹脂形成組成物および接着剤は、各種被着体の接着へ適用できる。被着体としては、例えば、アルミニウム、チタン、鉄、マグネシウムといった金属やプラスチック、繊維強化樹脂等が挙げられる。なかでもアルミニウムに対する接着性において優れており、アルミニウム-アルミニウム間、アルミニウム-樹脂間、アルミニウム-FRP間の接着が可能である。また、接着剤の中でも構造用接着剤に適しており、特に、自動車用の構造用接着剤としての特性を有し、室温かつ短時間での硬化性に優れ、高温となる塗装工程に耐える耐熱性を有する。例えば、10℃~30℃において、30分以内で2MPa以上の接着強度を備え、ゴム状平坦領域を高温(150℃~200℃)でも維持することが可能である。なお、本開示において、室温とは例えば10℃~30℃、高温とは例えば150℃~200℃、短時間とは例えば30分以下である。
【実施例
【0055】
本発明について、実施例、比較例および参考例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
【0056】
窒素を満たした5Lの攪拌容器内に、表1~表4に示す配合で、2官能ポリオールと、平均官能基数3以上のポリオール(a2)と、第3級アミノ基含有ジオール(a1)と、を投入攪拌し、攪拌容器内の温度を40~70℃に保ちながら、1~3時間程度、混合攪拌することで、各種水酸基末端硬化剤(A)を得た。
【0057】
また、窒素を満たした5Lの攪拌容器内に4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート/2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート混合物(b1)と、平均官能基数2のポリオール(b2)を表1~表4に示す配合比率に従い投入し、攪拌した。その後、攪拌容器内の温度を70~90℃に保ちながら、2~5時間程度ウレタン化反応を進めることで、プレポリマーである各種イソシアネート末端ポリイソシアネート(B)を得た。
【0058】
表1~表4に示す原料の略記号は以下のとおりである。
[原料]
(1)水酸基末端硬化剤(A)
・「MDA」;アミノアルコールMDA(日本乳化剤社製)、
N-メチルジエタノールアミン
水酸基価=942KOHmg/g、f=2
・「MBD」;アミノアルコールMDA(日本乳化剤社製)、
N-ブチルジエタノールアミン
水酸基価=696KOHmg/g、f=2
・「MA-170」;レオコンMA-170(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製)、
N,N-ビスヒドロキシプロピル-N-ヒドロキシエチルアミン、
水酸基価=950KOHmg・g、f=3
・「EDP-300」;アデカポリエーテルEDP-300(ADEKA社製)、
N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、
水酸基価=760KOHmg/g、f=4
・「TMP」;トリメチロールプロパン(三菱ガス化学社製)
トリメチロールプロパン、水酸基価=1255KOHmg/g、f=3
・「HD-402」;サンニックスHD-402(三洋化成工業社製)
ペンタエリスリトールPO付加物、水酸基価=560KOHmg/g、f=4
・「PCD-500」;KurarayPolyol C-590(クラレ社製)、
ポリカーボネートポリオール、水酸基価=224KOHmg/g、f=2
・「P-1000」;アデカポリエーテルP-1000(ADEKA社製)、
ポリプロピレングリコール、水酸基価=112KOHmg/g、f=2
・「1,4-BG」;1,4-ブタンジオール(三菱ケミカル社製)
1,4-ブタンジオール、水酸基価=1245KOHmg/g、f=2
【0059】
(2)イソシアネート基末端ポリイソシアネート(B)
・「NM」;ミリオネートNM(東ソー社製)
4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート/
2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート混合物、
NCO含有量=33.5%、f=2
・「PTMG-850」;PTMG850(三菱ケミカル社製)、
ポリテトラメチレングリコール、水酸基価132KOHmg/g、f=2
【0060】
(3)ウレタン化触媒
・「TEDA」;トリエチレンジアミン(TEDA-L33E、東ソー社製)
【0061】
(4)無機フィラー(C)
・「ゼオライト」;ゼオラムA-3(東ソー社製)
・「タルク」;クラウンタルクR(松村産業社製)
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
【表3】
【0065】
【表4】
【0066】
<接着試験片の調製>
表1~表4に示す処方に従ってイソシアネート基末端ポリイソシアネート(B)に、無機フィラー(C)を添加し、公転自転撹拌機(商品名:カクハンター、写真化学社製)を使用して混合した。ついで、表1~表4に示す処方に従って、水酸基末端硬化剤(A)をステンレス鋼製のヘラで均一になるまで混合し、接着剤を調製した。得られた接着剤をアルミニウム板(縦100mm×横25mm×厚さ1mm;A5052P)に、均一に塗布し、JIS K 6850:1999に準拠した接着試験片を作製した。
【0067】
<試験片の作製と評価基準>
(1)室温硬化性[25℃×30分硬化(25℃環境測定)]
2枚のアルミニウム板(縦100mm×横25mm×厚さ1mm;A5052P)の表面に接着剤を塗布し、アルミニウム板の重なり領域が縦12.5mm×横25mmとなるように接着し、これを25℃の条件下、30分間放置して硬化させることにより、接着試験片を作製した。この際ガラスビーズを用いて、接着層の厚みを0.25mmに調整し、接着試験片を得た。
前記のように作製された接着試験片について、引張試験機(商品名:オートコム万能試験機AC-10kN-C、株式会社ティー・エス・イー製)により、接着部の引張せん断強度を測定した。この測定は、JIS K6850:1999の接着剤の引張りせん断接着強さに準拠して行った。測定条件は、温度25℃、チャック間距離111.5mm、テストスピードは10mm/分とした。
引張せん断強度が5MPa以上の場合は「A(良好)」、2MPa以上5MPa未満の場合は「B(普通)」、2MPa未満の場合は「C(不良)」とした。また、接着試験後の破壊界面は、CF=凝集破壊、AF=界面破壊とした。
【0068】
(2)接着樹脂の耐熱性
接着剤の25℃×16時間硬化後の試験片(接着樹脂)について耐熱性を確認するために、厚さ2mmの接着樹脂となるように、接着剤をステンレス製金型で成型し、得られた接着樹脂(測定サンプル)の動的粘弾性測定を実施した。
測定サンプルは、20mm×5mm×2mmの短冊状の試験片を用い、初期荷重は100mNとした。
動的粘弾性測定は、200℃での貯蔵弾性率(10Hz)と100℃での貯蔵弾性率(10Hz)を、粘弾性測定装置(商品名:DMS-6100、株式会社日立ハイテクサイエンス製)で測定した。
図1は、実施例3、参考例1~3の測定サンプルの貯蔵弾性率E’の温度変化を示すグラフである。実施例3は実線、参考例1は破線、参考例2は一点鎖線、参考例3は点線で示されている。
【0069】
<評価結果>
(1)室温硬化性:[25℃×30分間後接着強度(25℃下測定)で評価]
実施例では、何れも高い室温硬化性を示し良好であった。
比較例1~4では平均官能基数3以上のポリオール(a2)を使用しているが、第3級アミノ基含有ジオール(a1)を含んでおらず、室温硬化性が不十分であり、30分では硬化不良であった。比較例5、6では、第3級アミノ基含有ジオール(a1)を含んでいるが、平均官能基数3以上のポリオール(a2)を含んでおらず、室温硬化性は不十分である。比較例7は第3級アミノ基含有ジオール(a1)を含んでいるものの、ポリウレタン系接着剤形成組成物中の平均官能基数3以上のポリオール(a2)の含有量が、第3級アミノ基含有ジオール(a1)1molに対して9.0molを超えており、濡れ性が悪化し、接着強度は低い。比較例8、比較例10では、平均官能基数2の第3級アミノ基含有ポリオール(a1)の含有量が、1.2mmol/gを超え過剰であり、混合後、直ぐに硬化し接着剤として使用することはできなかった。比較例9では、第3級アミノ基含有ジオール(a1)を含み、かつ触媒も含んでいるが、平均官能基数3以上のポリオール(a2)の含有量が少なく、硬化後の樹脂物性が十分ではなく、接着強度は低い。比較例11では、平均官能基数3以上のポリオール(a2)を十分量含んでおり、かつ触媒も含んでいるが、第3級アミノ基含有ジオール(a1)の含有量が少なく、室温硬化性は不十分である。
【0070】
(2)樹脂の耐熱性
実施例では共に高温までゴム状平坦領域を保っており樹脂の耐熱性が高いことを確認した(図1参照)。
参考例1~3では汎用の触媒として、トリエチレンジアミン(TEDA-L33E)を使用した。この参考例1~3では、室温硬化性の向上に効果が大きいトリエチレンジアミンを含有しているため、室温硬化性は良好である。しかしながら、参考例1~3は、過剰な量のトリエチレンジアミンを含有しているため、200℃付近から貯蔵弾性率は大きく低下し(図1参照)、200℃での貯蔵弾性率と100℃での貯蔵弾性率の比は1/2以下となり、高温に暴露されるような用途には適さない。特に、図1の200℃付近を見ると、参考例1~2は、第3級アミノ基含有ジオール(a1)を含有しておらず、第3級アミノ基含有ジオール(a1)およびトリエチレンジアミンを含有する参考例3と比較しても著しく貯蔵弾性率が低下していることがわかる。
これに対して、実施例では、室温硬化性の向上は第3級アミノ基含有ジオール(a1)で担保しているため、室温硬化性は良好であるとともに、過剰な量のトリエチレンジアミンを含有しておらず、第3級アミノ基含有ジオール(a1)を含有しているため、高温接着性についても極めて良好である。
図1