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特許7310279ポリチオフェン-ポリスチレンスルホン酸共重合体からなる複合体、及びそれを含有する水分散液
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  • 特許-ポリチオフェン-ポリスチレンスルホン酸共重合体からなる複合体、及びそれを含有する水分散液 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】ポリチオフェン-ポリスチレンスルホン酸共重合体からなる複合体、及びそれを含有する水分散液
(51)【国際特許分類】
   C08G 61/12 20060101AFI20230711BHJP
   C08F 12/30 20060101ALI20230711BHJP
   C08F 20/36 20060101ALI20230711BHJP
   C08F 20/38 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
C08G61/12
C08F12/30
C08F20/36
C08F20/38
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019088785
(22)【出願日】2019-05-09
(65)【公開番号】P2020183493
(43)【公開日】2020-11-12
【審査請求日】2022-04-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】西山 正一
【審査官】吉田 早希
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-224721(JP,A)
【文献】国際公開第2013/073259(WO,A1)
【文献】特開2016-188350(JP,A)
【文献】特開2003-320229(JP,A)
【文献】特開2009-286875(JP,A)
【文献】POLYMER MATERIALS SCIENCE AND ENGINEERING,中国,2010年,Vol.26, No.5,p.13-16
【文献】POLYMER MATERIALS SCIENCE AND ENGINEERING,Vol.26, No.8,中国,2010年,p.65-68
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 61/12
C08F 12/30
C08F 20/36
C08F 20/38
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表されるチオフェン繰り返し単位、及び下記式(2)で表されるチオフェン繰り返し単位からなる群より選ばれる少なくとも1種のチオフェン繰り返し単位を含むポリチオフェンと、下記式(3)で表されるスチレンスルホン酸の繰り返し単位、および下記式(4)で表されるスルホベタイン残基を有するビニルモノマーの繰り返し単位からなるポリスチレンスルホン酸共重合体であって、前記ポリスチレンスルホン酸共重合体中の式(3)で表されるスチレンスルホン酸の繰り返し単位の含有量が、70~99.99mol%であるポリスチレンスルホン酸共重合体との複合体。
【化1】
【化2】
(上記式中、Xは、各々独立して、-NH-を表し、Rは、水素原子、炭素数1~8の鎖状若しくは分岐状のアルキル基(該基は、ヒドロキシ基又は炭素数1~8のアルコキシ基を有していてもよい)を表し、Rは、水素原子、炭素数1~8の鎖状若しくは分岐状のアルキル基を表し、R、及びRは、各々独立して、炭素数1~8の鎖状若しくは分岐状のアルキル基を表し、m及びnは、各々独立して、1~6の整数を表し、Mは、各々独立して、水素イオン、Liイオン、Naイオン及びKイオンからなる群より選ばれるアルカリ金属イオン、又はアミン化合物の共役酸を表す。)
【請求項2】
ポリスチレンスルホン酸共重合体中の式(3)で表されるスチレンスルホン酸の繰り返し単位の含有量が、90~99.9mol%であることを特徴とする請求項1に記載の複合体。
【請求項3】
式(3)で表されるスチレンスルホン酸繰り返し単位の数が、式(1)で表されるチオフェン繰り返し単位、及び式(2)で表されるチオフェン繰り返し単位の合計の繰り返し単位の数の1.0倍~3.0倍(mol比)であることを特徴とする請求項1に記載の複合体。
【請求項4】
、R及びRが、各々独立して、メチル基、又はエチル基であることを特徴とする請求項1に記載の複合体。
【請求項5】
ポリスチレンスルホン酸共重合体の重量平均分子量が、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム標準物質換算で、1万~30万であることを特徴とする請求項1に記載の複合体。
【請求項6】
請求項1乃至請求項のいずれか一項に記載の複合体を含む水分散液。
【請求項7】
更に、水酸基を有する水溶性化合物、水溶性のスルホキシド、水溶性アミド化合物、ラクトン構造を有する水溶性化合物から選ばれる少なくとも一つの導電性向上剤を含む請求項に記載の水分散液。
【請求項8】
水を含む溶媒中、上記式(3)で表されるスチレンスルホン酸の繰り返し構造単位、および上記式(4)で表されるスルホベタイン残基を有するビニルモノマーの繰り返し単位を含むポリスチレンスルホン酸共重合体存在下、下記式(5)で表されるチオフェン化合物を、酸化剤の存在下に重合させることを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれか一項に記載の複合体の製造方法。
【化3】
(式中、Rは、水素原子、又は炭素数1~8の鎖状若しくは分岐状のアルキル基(該基は、ヒドロキシ基又は炭素数1~8のアルコキシ基を有していてもよい)を表す)
【請求項9】
下記式(3)で表されるスチレンスルホン酸の繰り返し単位、および下記式(4)で表されるスルホベタイン残基を有するビニルモノマーの繰り返し単位からなるポリスチレンスルホン酸共重合体であって、前記ポリスチレンスルホン酸共重合体中の式(3)で表されるスチレンスルホン酸の繰り返し単位の含有量が、70~99.99mol%であるポリスチレンスルホン酸共重合体
【化4】
(上記式中、Xは、各々独立して、-NH-を表し、Rは、水素原子、炭素数1~8の鎖状若しくは分岐状のアルキル基を表し、R、及びRは、各々独立して、炭素数1~8の鎖状若しくは分岐状のアルキル基を表し、mは、各々独立して、1~6の整数を表し、nは、各々独立して、4、5、又は6を表し、Mは、各々独立して、水素イオン、Liイオン、Naイオン及びKイオンからなる群より選ばれるアルカリ金属イオン、又はアミン化合物の共役酸を表す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規なポリチオフェン-ポリスチレンスルホン酸共重合体からなる複合体、及びそれを含有する水分散液に関する。
【0002】
本発明のポリチオフェン-ポリスチレンスルホン酸共重合体からなる新規複合体は、その高い導電性から帯電防止材料、コンデンサ用固体電解質、各種センサー、有機エレクトロルミネセンス材料、導電性繊維、アクチュエーター及び熱電変換材料電極等に応用展開が可能である。
【背景技術】
【0003】
ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール等に代表されるπ共役二重結合を有するポリマーは、アクセプターやドナーによるドーピングにより導電体(導電性ポリマー)となることが知られており、帯電防止剤、コンデンサの固体電解質、導電性塗料、エレクトロクロミック素子、透明電極、透明導電膜、化学センサ、アクチュエータ等への応用が検討されている。中でも、ポリスチレンスルホン酸(PSS)等の水溶性高分子ドーパントの存在下に、3,4-エチレンジオキシチオフェンを重合させた導電性ポリマーであるポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン):ポリ(4-スチレンスルホン酸)複合体(以下、PEDOT:PSSと略す)は、良好な導電性と成型加工性を兼ね備えているため導電性ポリマーの中で最も開発が進んでいる。特に、固体電解コンデンサ用途において、実用化も図られているが、近年の自動車等の電導化・小型化の進展に伴い、更なる高容量化と低ESR化を進めるべく、今尚、高導電化、基板密着性、及び耐熱性に優れる材料開発が行われている。
【0004】
そこで、上記課題に対応すべくホモポリマーであるPSSからPSSを含む共重合体の検討が行われている。例えば、スチレンスルホン酸(塩)と(メタ)アクリルアミドモノマーとの共重合体(特許文献1,2)、スチレンスルホン酸と(メタ)アクリル酸類モノマーとの共重合体(特許文献3)、スチレンスルホン酸(塩)と不飽和炭化水素含有アルコキシシラン化合物との共重合体(特許文献4)が報告されている。
【0005】
しかし、本発明にかかるスチレンスルホン酸(塩)と不飽和炭化水素結合を有するスルホベタイン残基からなるポリスチレンスルホン酸共重合体の具体的記述、及びそれらとポリチオフェンとの複合体の導電性への影響に関する具体的な記述はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-218483号公報
【文献】特開2017-57267号公報
【文献】特許第5252669号明細書
【文献】特許第5281209号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1~4に記載のチオフェン類は、PSSの共重合体を外部ドーパントとすることにより基板密着性が向上するものの、共重合体中のPSS量の低下に伴い導電率が低下する傾向があった。
【0008】
本発明は、上記の背景技術に鑑みてなされたものであり、その目的は、高い導電性と高い密着性を両立する新規なポリチオフェン-ポリスチレンスルホン酸共重合体及びそれを含む水分散液を提供することである。
【0009】
また、本発明は、高い導電性と高い密着性を両立する導電性高分子を提供するための新規なポリスチレンスルホン酸共重合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、従来公知のポリスチレンスルホン酸ポリマーに代えてスルホベタイン残基を有するビニルモノマーの繰り返し単位を含有するポリスチレンスルホン酸共重合体を用いることによって、ポリチオフェン複合体組成物が高導電化し、密着性が向上するという知見を見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明はポリチオフェン-ポリスチレンスルホン酸共重合体からなる複合体、及びそれを含有する水分散液に関するものである。
[1] 下記式(1)で表されるチオフェン繰り返し単位、及び下記式(2)で表されるチオフェン繰り返し単位からなる群より選ばれる少なくとも1種のチオフェン繰り返し単位を含むポリチオフェンと、下記式(3)で表されるスチレンスルホン酸の繰り返し単位、および下記式(4)で表されるスルホベタイン残基を有するビニルモノマーの繰り返し単位を含むポリスチレンスルホン酸共重合体との複合体。
【0012】
【化1】
【0013】
【化2】
【0014】
(上記式中、Xは、各々独立して、酸素原子、又は-NH-を表し、Rは、水素原子、炭素数1~8の鎖状若しくは分岐状のアルキル基(該基は、ヒドロキシ基又は炭素数1~8のアルコキシ基を有していてもよい)を表し、Rは、水素原子、炭素数1~8の鎖状若しくは分岐状のアルキル基を表し、R、及びRは、各々独立して、炭素数1~8の鎖状若しくは分岐状のアルキル基を表し、m及びnは、各々独立して、1~6の整数を表し、Mは、各々独立して、水素イオン、Liイオン、Naイオン及びKイオンからなる群より選ばれるアルカリ金属イオン、又はアミン化合物の共役酸を表す。)
[2] ポリスチレンスルホン酸共重合体中の式(3)で表されるスチレンスルホン酸の繰り返し単位の含有量が、70~99.99mol%であることを特徴とする[1]に記載の複合体。
[3] ポリスチレンスルホン酸共重合体中の式(3)で表されるスチレンスルホン酸の繰り返し単位の含有量が、90~99.9mol%であることを特徴とする[1]に記載の複合体。
[4] 式(3)で表されるスチレンスルホン酸繰り返し単位の数が、式(1)で表されるチオフェン繰り返し単位、及び式(2)で表されるチオフェン繰り返し単位の合計の繰り返し単位の数の1.0倍~3.0倍(mol比)であることを特徴とする[1]乃至[3]のいずれか一項に記載の複合体。
[5] R、R及びRが、各々独立して、メチル基、又はエチル基であることを特徴とする[1]乃至[4]のいずれか一項に記載の複合体。
[6] ポリスチレンスルホン酸共重合体の重量平均分子量が、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム標準物質換算で、1万~30万であることを特徴とする[1]に記載の複合体。
[7] [1]乃至[6]のいずれか一項に記載の複合体を含む水分散液。
[8] 更に、水酸基を有する水溶性化合物、水溶性のスルホキシド、水溶性アミド化合物、ラクトン構造を有する水溶性化合物から選ばれる少なくとも一つの導電性向上剤を含む[7]に記載の水分散液。
[9] 水を含む溶媒中、上記式(3)で表されるスチレンスルホン酸の繰り返し構造単位、および上記式(4)で表されるスルホベタイン残基を有するビニルモノマーの繰り返し単位を含むポリスチレンスルホン酸共重合体存在下、下記式(5)で表されるチオフェン化合物を、酸化剤の存在下に重合させることを特徴とする[1]乃至[5]のいずれか一項に記載の複合体の製造方法。
【0015】
【化3】
【0016】
(式中、Rは、水素原子、又は炭素数1~8の鎖状若しくは分岐状のアルキル基(該基は、ヒドロキシ基又は炭素数1~8のアルコキシ基を有していてもよい)を表す。)
[10] 下記式(3)で表されるスチレンスルホン酸の繰り返し単位、および下記式(4)で表されるスルホベタイン残基を有するビニルモノマーの繰り返し単位を含むポリスチレンスルホン酸共重合体。
【0017】
【化4】
【0018】
(上記式中、Xは、各々独立して、酸素原子、又は-NH-を表し、Rは、水素原子、炭素数1~8の鎖状若しくは分岐状のアルキル基を表し、R、及びRは、各々独立して、炭素数1~8の鎖状若しくは分岐状のアルキル基を表し、mは、各々独立して、1~6の整数を表し、nは、各々独立して、4、5、又は6を表し、Mは、各々独立して、水素イオン、Liイオン、Naイオン及びKイオンからなる群より選ばれるアルカリ金属イオン、又はアミン化合物の共役酸を表す。)
【発明の効果】
【0019】
本発明のポリチオフェン-ポリスチレンスルホン酸共重合体からなる複合体は、従来のPEDOT-PSSより高い導電性と基板密着性を有することから、固体電解コンデンサの固体電解質として、更なる高容量化と低ESR化に寄与できることが期待される。又、その他、透明電極、透明導電膜、化学センサ、アクチュエータ等への応用も期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施例1で得られたポリスチレンスルホン酸共重合体のH-NMR(DO)スペクトル
図2】実施例2で得られたポリスチレンスルホン酸共重合体のH-NMR(DO)スペクトル
図3】実施例3で得られたポリスチレンスルホン酸共重合体のH-NMR(DO)スペクトル
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0022】
本発明は、上記式(1)で表されるチオフェン繰り返し単位、及び上記式(2)で表されるチオフェン繰り返し単位からなる群より選ばれる少なくとも1種のチオフェン繰り返し単位を含むポリチオフェンと、上記式(3)で表されるスチレンスルホン酸の繰り返し単位、および上記式(4)で表されるスルホベタイン残基を有するビニルモノマーの繰り返し単位を含むポリスチレンスルホン酸共重合体との複合体、それを含有する水分散液、及び上記式(3)で表されるスチレンスルホン酸の繰り返し単位、および上記式(4)で表されるスルホベタイン残基を有するビニルモノマーの繰り返し単位を含むポリスチレンスルホン酸共重合体に係る。
【0023】
上記式(1)及び(2)において、Rは、水素原子、炭素数1~8の鎖状若しくは分岐状のアルキル基(該基は、ヒドロキシ基又は炭素数1~8のアルコキシ基を有していてもよい)を表す。
【0024】
前記の炭素数1~8の鎖状若しくは分岐状のアルキル基としては、特に限定するものではないが、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、又は2-エチルヘキシル基等を挙げることができる。
【0025】
前記の炭素数1~8のアルコキシ基としては、特に限定するものではないが、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、sec-ブトキシ基、t-ブトキシ基、n-ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、又は2-エチルヘキシルオキシ基等を挙げることができる。
【0026】
は、密着性に優れる点で、水素原子、メチル基、エチル基、n-ブチル基、又はn-ヘキシル基であることが好ましく、水素原子、メチル基、又はエチル基であることが好ましい。
【0027】
上式(3)中のMは、各々独立して、水素イオン、Liイオン、Naイオン及びKイオンからなる群より選ばれるアルカリ金属イオン、又はアミン化合物の共役酸を表す。
【0028】
前記アミン化合物の共役酸は、アミン化合物にプロトンが付加したカチオン化合物を表す。当該アミン化合物としては、特に限定するものではないが、例えば、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等(以上、一般式N(R)(R)(R)で表されるアミン化合物)のsp3混成軌道を有するアミン化合物、ピリジン、2-メチルピリジン、3-メチルピリジン、4-メチルピリジンピリジン(以上、ピリジン類)、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-メチルイミダゾール(以上、イミダゾール類)等のsp2混成軌道を有するアミン化合物等が挙げられる。
【0029】
なお、当該R~Rは、各々独立して、水素原子、又は置換基を有していてもよい総炭素数1~18のアルキル基を表わす。このうち、R~Rは、各々独立して、水素原子、又は置換基を有していてもよい総炭素数1~10のアルキル基であることがより好ましく、各々独立して、水素原子、又は炭素数1~6の直鎖状、分岐状、若しくは環状アルキル基であることがさらに好ましい。
【0030】
ここで、置換基を有していてもよい総炭素数1~18のアルキル基としては、特に限定するものではないが、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、2-ヒドロキシエチル基、3-ヒドロキシプロピル基、2-ヒドロキシプロピル基、2,3-ジヒドロキシプロピル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、ヒドロキシエトキシエチル基、ヒドロキシエトキシエトキシエチル基、ベンジル基、フェネチル基、又はアミノエチル基等が挙げられる。
【0031】
前記炭素数1~6の直鎖状、分岐状、若しくは環状アルキル基としては、特に限定するものではないが、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、n-ヘキシル基、又はシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0032】
このうち、置換基R~Rとして、より好ましくは、各々独立して、水素原子、メチル基、エチル基又は、2-ヒドロキシエチル基、3-ヒドロキシプロピル基、2-ヒドロキシプロピル基、2,3-ジヒドロキシプロピル基等のヒドロキシ基を有するアルキル基が挙げられる。
【0033】
については、密着性に優れる点で、各々独立して、水素イオン、Liイオン、Naイオン及びKイオンからなる群より選ばれるアルカリ金属イオン、又はR~Rが、水素原子、メチル基、エチル基又は、2-ヒドロキシエチル基、3-ヒドロキシプロピル基、2-ヒドロキシプロピル基、及び2,3-ジヒドロキシプロピル基から選ばれる基であるN(R)(R)(R)で表されるアンモニウムイオンであることが好ましく、各々独立して、水素イオン、Liイオン、Naイオン、Kイオン、アンモニウムイオン、メチルアンモニウムイオン、ジメチルアンモニウムイオン、トリメチルアンモニウムイオン、エチルアンモニウムイオン、ジエチルアンモニウムイオン、トリエチルアンモニウムイオン、モノエタノールアンモニウムイオン、ジエタノールアンモニウムイオン、又はトリエタノールアンモニウムイオンであることが好ましい。
【0034】
上記式(4)中、Xは、各々独立して、酸素原子、又は-NH-を表す。これらのうち、密着性に優れる点で酸素原子であることが好ましい。
【0035】
上記式(4)中のR、Rは、各々独立して、炭素数1~8の鎖状若しくは分岐状のアルキル基を表す。
【0036】
前記炭素数1~8の鎖状若しくは分岐状のアルキル基としては、特に限定するものではないが、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、又は2-エチルヘキシル基等を挙げることができる。
【0037】
、及びRは、合成、及び入手の容易性から、各々独立して、水素原子、メチル基、エチル基、n-ブチル基、又はn-ヘキシル基であることが好ましく、各々独立して、水素原子、メチル基、又はエチル基であることが好ましい。
【0038】
又、上記式(4)中のRは、各々独立して、水素原子、又は炭素数1~8の鎖状若しくは分岐状のアルキル基を表す。
【0039】
当該炭素数1~8の鎖状若しくは分岐状のアルキル基については、例えば、上述のR、Rで例示した炭素数1~8の鎖状若しくは分岐状のアルキル基と同じ基を挙げることができる。
【0040】
は、合成、及び入手の容易性から、各々独立して、水素原子、メチル基、エチル基、n-ブチル基、又はn-ヘキシル基であることが好ましく、各々独立して、水素原子、メチル基、又はエチル基であることが好ましい。
【0041】
上記式(4)中、m及びnは、各々独立して、1~6の整数を表す。
【0042】
mについては、合成、及び入手の容易性から、2~5であることが好ましく、2、3、又は4であることがより好ましく、3であることがより好ましい。
【0043】
nについては、合成、及び入手の容易性から、3~6であることが好ましく、3、4、又は5であることがより好ましく、3又は4であることがより好ましい。
【0044】
なお、本発明のポリスチレンスルホン酸共重合体につては、新規性の観点から、nが、4、5、又は6であることが好ましく、4、又は5であることがより好ましく、4であることがより好ましい。
【0045】
上記式(3)で表されるスチレンスルホン酸の繰り返し単位、および上記式(4)で表されるスルホベタイン残基を有するビニルモノマーの繰り返し単位を含むポリスチレンスルホン酸共重合体については、特に限定するものではないが、例えば、下記式(8)で表される共重合物を例示することができる。
【0046】
【化5】
【0047】
(式中、R、R、R、m、及びnについては、上記式(4)におけるR、R、R、m、及びnと同義である。a及びbは、任意の正の実数を表す。)
なお、当該式(8)で表される共重合体については、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよい。
【0048】
当該共重合物については、特に限定するものではないが、例えば、以下の式(8-1)~(8-48)で表されるものを具体的に例示することができる。なお、当該共重合体については、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよく、下記a及びbについては、任意の正の実数を表す。
【0049】
【化6】
【0050】
【化7】
【0051】
【化8】
【0052】
【化9】
【0053】
【化10】
【0054】
【化11】
【0055】
【化12】
【0056】
【化13】
【0057】
【化14】
【0058】
【化15】
【0059】
【化16】
【0060】
【化17】
【0061】
なお、式(8)及び式(8-1)~(8-48)において、aとbの関係は、密着性及び導電率向上の観点から、{a÷(a+b)}×100が70~0.01であることが好ましく、{a÷(a+b)}×100が80~0.1であることがより好ましく、{a÷(a+b)}×100が90~0.1であることがより好ましい。
【0062】
上記式(3)で表されるスチレンスルホン酸の繰り返し単位、および上記式(4)で表されるスルホベタイン残基を有するビニルモノマーの繰り返し単位を含むポリスチレンスルホン酸共重合体は、下記式(6)で表されるスチレンスルホン酸モノマー及び下記式(7)で表されるスルホベタイン残基を有するビニルモノマーを、共重合することで製造することができる。
【0063】
【化18】
【0064】
(式中、X、M、R、R、R、m、及びnは、上式(3)及び(4)と同じ定義である。また、好ましい範囲についても同様である。)
上記式(6)で表されるスチレンスルホン酸モノマーとしては、特に限定するものではないが、例えば、p-スチレンスルホン酸リチウム、p-スチレンスルホン酸ナトリウム、又はp-スチレンスルホン酸カリウム等が挙げられ、市販品を用いることができる。
【0065】
上記式(7)で表されるスルホベタイン残基を有するビニルモノマーとしては、特に限定するものではないが、例えば、N-(メタ)アクリロイルオキシアルキル-N,N-ジメチルアンモニウムアルキル-α-スルホベタイン類、N-(メタ)アクリルアミドアルキル-N,N-ジアルキルアンモニウムアルキル-α-スルホベタイン類が挙げられる。
【0066】
N-(メタ)アクリロイルオキシアルキル-N,N-ジメチルアンモニウムアルキル-α-スルホベタイン類としては、N-(メタ)アクリロイルオキシメチル-N,N-ジメチルアンモニウムメチル-α-スルホベタイン、N-(メタ)アクリロイルオキシメチル-N,N-ジメチルアンモニウムエチル-α-スルホベタイン、N-(メタ)アクリロイルオキシメチル-N,N-ジメチルアンモニウムプロピル-α-スルホベタイン、N-(メタ)アクリロイルオキシメチル-N,N-ジメチルアンモニウムブチル-α-スルホベタイン、N-(メタ)アクリロイルオキシエチル-N,N-ジメチルアンモニウムメチル-α-スルホベタイン、N-(メタ)アクリロイルオキシエチル-N,N-ジメチルアンモニウムエチル-α-スルホベタイン、N-(メタ)アクリロイルオキシエチル-N,N-ジメチルアンモニウムプロピル-α-スルホベタイン、N-(メタ)アクリロイルオキシエチル-N,N-ジメチルアンモニウムブチル-α-スルホベタイン、N-(メタ)アクリロイルオキシプロピル-N,N-ジメチルアンモニウムメチル-α-スルホベタイン、N-(メタ)アクリロイルオキシプロピル-N,N-ジメチルアンモニウムエチル-α-スルホベタイン、N-(メタ)アクリロイルオキシプロピル-N,N-ジメチルアンモニウムプロピル-α-スルホベタイン、N-(メタ)アクリロイルオキシプロピル-N,N-ジメチルアンモニウムブチル-α-スルホベタイン、N-(メタ)アクリロイルオキシブチル-N,N-ジメチルアンモニウムメチル-α-スルホベタイン、N-(メタ)アクリロイルオキシブチル-N,N-ジメチルアンモニウムエチル-α-スルホベタイン、N-(メタ)アクリロイルオキシブチル-N,N-ジメチルアンモニウムプロピル-α-スルホベタイン、N-(メタ)アクリロイルオキシブチル-N,N-ジメチルアンモニウムブチル-α-スルホベタインが挙げられる。
【0067】
また、N-(メタ)アクリルアミドアルキル-N,N-ジアルキルアンモニウムアルキル-α-スルホベタイン類としては、N-(メタ)アクリルアミドプロピル-N,N-ジメチルアンモニウムプロピル-α-スルホベタイン、又はN-(メタ)アクリルアミドプロピル-N,N-ジメチルアンモニウムブチル-α-スルホベタイン等が挙げられる。
【0068】
上記式(7)で表されるスルホベタイン残基を有するビニルモノマーとしては、市販品を用いることもできるし、一般公知の製造方法に基づいて製造したものを用いることもできる。
【0069】
上記式(3)で表されるスチレンスルホン酸の繰り返し単位、および上記式(4)で表されるスルホベタイン残基を有するビニルモノマーの繰り返し単位を含むポリスチレンスルホン酸共重合体は、上記式(6)で表されるスチレンスルホン酸モノマー及び上記式(7)で表されるスルホベタイン残基を有するビニルモノマーを、溶媒中、ラジカル開始剤存在下に共重合することで製造することが好ましい。
【0070】
尚、本発明のポリスチレンスルホン酸共重合体については、上記式(6)で表されるスチレンスルホン酸モノマー及び上記式(7)で表されるスルホベタイン残基を有するビニルモノマー以外のモノマー(第三ビニルモノマー)の繰り返し単位を含んだ共重合体であってもよい。
【0071】
前記の第三ビニルモノマーとしては、特に限定するものではないが、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミノエチル、N-ビニルカルバゾール、フェノキシエチルアクリレート、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、ジメチルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、アクリロイルモルフォリン、ヒドロキシエチルアクリルアミド、イソプロピルアクリルアミド、4-t-ブチルシクロヘキシルアクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド塩化メチル4級塩、ジメチルアミノエチルアクリレートベンジルクロライド4級塩等が挙げられる。
【0072】
前記のラジカル重合開始剤については、水溶性ラジカル重合開始剤であることが好ましく、特に限定するものではないが、例えば、過酸化水素、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、4,4’-アゾビス(4-シアノバレリックアシッド)、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリンー2-イル)プロパン]、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’-アゾビス{2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジハイドロクロライド、2,2’-アゾビス{2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジサルフェートジハイドレート、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジハイドロクロライド、2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]テトラハイドレート、2,2’-アゾビス(N,N’-ジメチレンイソブチルアミジン)ジハイドロクロライド、2,2’-アゾビス{2-メチル-N-〔1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル〕プロピオンアミド}等のアゾ系開始剤が挙げられる。
【0073】
前記のラジカル開始剤の使用量は、上記式(6)及び(7)で表されるモノマーの総量に対して、通常、0.001~10mol%の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.01~5mol%の範囲である。
【0074】
前記の溶媒は、水を含む溶媒であることが好ましく、特に限定するものではないが、水のみであってもよいし、水と水溶性有機溶媒との混合物、水と水溶性固形物の水溶液であってもよい。
【0075】
前記の水溶液有機溶媒については、水に溶解可能なものであれば特に制限はないが、アルコール、エーテル化合物、エステル化合物、アミド化合物等が挙げられ、好適にはアルコールである。アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、tert-ブタノール、sec-ブタノール等の低級アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のグリコールを上げることができる。
【0076】
前記の溶媒が、水と水溶性有機溶媒との混合物である場合、水溶性有機溶媒の含有量は、0.1~30wt%であることが好ましく、より好ましくは、1~20wt%である。
【0077】
重合条件は、特に制限するものではないが、不活性ガス雰囲気下、20~150℃で、4~50時間加熱することが好ましく、重合溶媒、モノマー組成、及び水溶性ラジカル重合開始剤種によって適宜調整することが好ましい。
【0078】
ポリスチレンスルホン酸共重合体中において、上式(6)で表されるスチレンスルホン酸モノマーの繰り返し単位の仕込み量は、特に限定するものではないが、仕込みモノマーの全量に対して、70~99.99mol%であることが好ましく、密着性及び導電率向上の観点から80~99.9mol%であることがより好ましく、90~0.1mol%であることがより好ましい。
【0079】
このように得られたポリスチレンスルホン酸共重合体の重量平均分子量は、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム標準物質換算で、数千~50万であることが好ましく、より好ましくは、1万~30万である。更に好ましくは、1万~10万である。
【0080】
さらに、ポリスチレンスルホン酸共重合体は、ポリチオフェンの外部ドーパント及び分散剤として作用させるためには、陽イオン交換樹脂に接触させて酸型に変換するほうが好ましい。ポリスチレンスルホン酸共重合体と陽イオン交換樹脂の接触方法は、カラム法又はバッチ法の何れであってもよい。陽イオン交換樹脂としては、特に制限はないが、強酸性陽イオン交換樹脂が好ましく、更に、スルホン酸型強酸性陽イオン交換樹脂がより好ましい。当該イオン交換樹脂は、市販品を使用することができ、例えば、ダイヤイオン(登録商標)UBK-550、ダイヤイオン(登録商標)SK1B(三菱化学社製)、アンバーライト(登録商標)IR120B、アンバーライト(登録商標)200C、ダウエックス(登録商標)MSC-1(ダウ社製)、デュオライトC26(ローム&ハース社製)、LEWATIT(登録商標)S108H、SP-112(ランクセス社製)等が好適に使用され得る。
【0081】
本発明のポリスチレンスルホン酸共重合体は、ブロック重合体、交互重合体、ランダム重合体、グラフト重合体など、いずれの重合体であってもよい。
【0082】
又、本発明のポリスチレンスルホン酸共重合体は、再沈法、限外ろ過等の分離操作により更に精製してもよい。
【0083】
本発明のポリスチレンスルホン酸共重合体は、密着性に優れる点で、ポリスチレンスルホン酸共重合体中の式(3)で表されるスチレンスルホン酸の繰り返し単位の含有量が、70~99.99mol%であることが好ましく、80~99.9mol%であることがより好ましく、90~99.9mol%であることがより好ましい。
【0084】
本発明の複合体は、上記式(1)で表されるチオフェン繰り返し単位、及び上記式(2)で表されるチオフェン繰り返し単位からなる群より選ばれる少なくとも1種のチオフェン繰り返し単位を含むポリチオフェンと、上記式(3)で表されるスチレンスルホン酸の繰り返し単位、および上記式(4)で表されるスルホベタイン残基を有するビニルモノマーの繰り返し単位を含むポリスチレンスルホン酸共重合体との複合体であるが、当該複合体については、密着性及び導電性に優れる点で、式(3)で表されるスチレンスルホン酸繰り返し単位の数が、式(1)で表されるチオフェン繰り返し単位、及び式(2)で表されるチオフェン繰り返し単位の合計の繰り返し単位の数の1.0倍~3.0倍(mol比)であるという関係を満たす複合体であることが好ましく、同1.5倍~2.5倍(mol比)であるという関係を満たす複合体であることがより好ましい。
【0085】
本発明の複合体は、水を含む溶媒中、上記式(3)で表されるスチレンスルホン酸の繰り返し構造単位、および上記式(4)で表されるスルホベタイン残基を有するビニルモノマーの繰り返し単位を含むポリスチレンスルホン酸共重合体存在下、下記式(5)で表されるチオフェン化合物を、酸化剤の存在下に重合させる(以下、「本重合反応」とする)ことにより製造することができる。
【0086】
【化19】
【0087】
(式中、Rは、水素原子、又は炭素数1~8の鎖状若しくは分岐状のアルキル基(該基は、ヒドロキシ基又は炭素数1~8のアルコキシ基を有していてもよい)を表す。)
上式(5)中のRは、水素原子、炭素数1~8の鎖状若しくは分岐状のアルキル基(該基は、ヒドロキシ基又は炭素数1~8のアルコキシ基を有していてもよい)を表す。
【0088】
前記の炭素数1~8の鎖状若しくは分岐状のアルキル基としては、特に限定するものではないが、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、2-エチルヘキシル基等を挙げることができる。
【0089】
前記の炭素数1~8のアルコキシ基としては、特に限定するものではないが、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、sec-ブトキシ基、t-ブトキシ基、n-ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、2-エチルヘキシルオキシ基等を挙げることができる。
【0090】
本重合反応に用いる溶媒は、水を含む溶媒であり、特に限定するものではないが、水又は水と水溶性溶剤からなる混合物を上げることができる。水としては、例えば、純水が挙げられ、蒸留水、イオン交換水でもよい。水溶性溶剤としては、メタノール、エタノール、プロパノール、n-ブタノール等の1価のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール等の多価アルコール類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン等の非極性溶媒が挙げられる。
【0091】
なお当該溶媒については、脱気して用いてもよいし、窒素等の不活性ガスで置換して用いてもよい。
【0092】
本重合反応に用いる溶媒量は、上記式(5)で表されるチオフェン化合物が溶解又は均一分散できる量であれば、特に限定するものではないが、例えば、上記式(5)で表されるチオフェン化合物の仕込量に対して10~1000重量倍の範囲が好ましく、100~500重量倍の範囲がより好ましい。
【0093】
本重合反応に用いる酸化剤は、酸化的脱水素化反応による酸化重合を進行させるものであることが好ましく、特に限定するものではないが、例えば、過硫酸類、鉄塩(III)、鉄塩(II)、過酸化水素、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、硫酸セリウム(IV)、又は酸素等が挙げられ、これらを単独で使用しても良いし、二種以上を混合して使用しても良い。
【0094】
ここで、過硫酸類としては、特に限定するものではないが、具体的には、過硫酸、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、又は過硫酸カリウム等が例示される。
【0095】
また、鉄塩(III)としては、特に限定するものではないが、具体的には、FeCl、Fe(SO、過塩素酸鉄、又はパラ-トルエンスルホン酸鉄(III)等が例示される。また、鉄塩(II)としては、特に限定するものではないが、具体的には、FeCl、FeSO、又は酢酸鉄(II)等が例示される。これらの鉄塩は、無水物を使用しても、水和物を使用してもよい。
【0096】
また、過マンガン酸塩としては、特に限定するものではないが、具体的には、過マンガン酸ナトリウム、過マンガン酸カリウム、又は過マンガン酸マグネシウム等が例示される。
【0097】
また、重クロム酸塩としては、特に限定するものではないが、具体的には、重クロム酸アンモニウム、又は重クロム酸カリウム等が例示される。
【0098】
これらの酸化剤のうち、FeSO、及びFe(SOのいずれかと過硫酸類との併用系が特に好ましい。
【0099】
本重合反応に用いる酸化剤の量としては、特に限定するものではないが、上記式(5)で表されるチオフェン化合物の仕込モル数に対して、0.5~10倍モルであることが好ましい。より好ましくは、0.8~5.0倍モルである。更に好ましくは、1.0~2.0倍モルである。
【0100】
本重合反応に用いるポリスチレンスルホン酸共重合体の量としては、上式(5)で表されるチオフェン化合物に対して、共重合体中のスチレンスルホン酸残基が0.5~5.0倍モルの範囲となる量であることが好ましく、更に、1.0~3.0倍モルの範囲となる量であることがより好ましい。
【0101】
本重合反応の圧力は、常圧、減圧、加圧のいずれであってもよい。
【0102】
本重合反応の反応雰囲気は、大気中であっても、窒素やアルゴン等の不活性ガス中であってもよい。より好ましくは不活性ガス中である。
【0103】
本重合反応の反応温度は、例えば、上記式(5)で表されるチオフェン化合物を酸化重合できる温度であり、特に限定するものではないが、-10~100℃の範囲が好ましく、10~60℃の範囲が更に好ましい。
【0104】
本重合反応の反応時間は、例えば、上記式(5)で表されるチオフェン化合物の酸化重合が十分進行する時間であり、特に限定するものではないが、0.5~200時間の範囲が好ましく、0.5~80時間の範囲が更に好ましい。
【0105】
本重合反応の反応方法は、特に限定するものではないが、例えば、上記式(5)で表されるチオフェン化合物を、あらかじめ水、又は水と水溶性溶剤からなる混合物に溶解させ、これに酸化剤を一度に又はゆっくりと滴下してもよく、逆に酸化剤の水溶液に上記式(5)で表されるチオフェン化合物の水溶液を一度に又はゆっくりと滴下してもよい。また、2種以上の酸化剤を用いる場合には、各酸化剤を順次添加してもよい。
【0106】
尚、本重合反応は、酸化剤の添加に伴い液粘度が上昇する傾向があるため、液全体を均一に撹拌する必要がある。撹拌翼については、プロペラ翼、パドル翼、マックスブレンド(登録商標)翼(住友重機械プロセス機器社製)、フルゾーン(登録商標)翼(神鋼環境ソリューション社製)、ディスクタービン翼が使用でき、反応容器内をより均一に混合するために、複数枚のバッフルを反応釜の内側に装備してもよい。その他として、乳化や分散に使用されるホモミキサー、ホモジナイザー等も組み合わせて使用してもよい。
【0107】
更に、本重合反応は、外部ドーパントとしてポリスチレンスルホン酸共重合体を使用するが、よりポリチオフェンのキャリア密度を増大させ導電性を向上させるために、アクセプター性のドーパントを更に添加して本重合反応を行ってもよい。
【0108】
アクセプター性ドーパントしては、特に限定するものではないが、例えば、塩酸、硝酸、硫酸等の無機酸、ギ酸、酢酸、シュウ酸、トリフルオロ酢酸等の有機カルボン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸等の有機スルホン酸を例示することができる。
【0109】
本重合反応で得られた本発明の複合体は任意の方法で精製することができる。当該精製の方法としては、特に限定するものではないが、例えば、溶媒洗浄、再沈殿、遠心沈降、限外ろ過、透析、イオン交換樹脂処理等が挙げられる。それぞれ単独で行っても又は組み合わせても良い。
【0110】
本発明の複合体の典型的な単離精製方法は、例えば、重合反応後の水分散液を、そのまま、陽イオン及び/又は陰イオン交換樹脂に接触させる方法、更に必要に応じて、限外ろ過、透析等の膜分離法を用いて脱塩精製すること方法を例示できる。陽イオン交換樹脂としては、先に挙げたスルホン酸型強酸性陽イオン交換樹脂、陰イオン交換樹脂としては、アンバーライト(登録商標) IRA93(オルガノ)、アンバーリスト(登録商標)A21(ダウ・ケミカル)、LEWATIT(登録商標)35A、LEWATIT(登録商標)MP62、LEWATIT(登録商標)MP62WS(LANXESS社製)等を例示できる。
【0111】
本発明の複合体を含む水分散液は、各種用途への成型加工が可能である。
【0112】
上記の水分散液は、必要に応じて、超音波照射、ホモジナイズ処理(例えば、メカニカルホモジナイザー、超音波ホモジナイザ-、高圧ホモジナイザー等の使用)を行ってもよい。ホモジナイズ処理する場合には、ポリマーの熱劣化を防ぐため、冷温しながら行うことが好ましい。
【0113】
又、得られた水分散液を粗濃縮し、アセトン等の貧溶媒に添加して沈殿させることにより粉末としてポリチオフェン-ポリスチレンスルホン酸共重合体を得ることもできる。
【0114】
更に、各種アンモニウム塩との塩を形成させる場合には、例えば、上記酸型のポリチオフェン-ポリスチレンスルホン酸共重合体の水分散液に、各種アミン化合物又はアンモニウム塩の原液若しくはその水溶液又はその他適当な溶媒で希釈したものを加えることで容易にMがNH やN(R)(R)(R)であるアンモニウム塩型光学活性ポリチオフェンに変換することができる。必要に応じて、得られた上記水溶液をアセトン等の貧溶媒に添加して粉末状のアンモニウム塩型ポリチオフェン-ポリスチレンスルホン酸共重合体を得ることもできる。
【0115】
本発明の複合体は、操作性に優れる点で、水を含むものであることが好ましく、水を含んで、水分散液となっていることが好ましい。
【0116】
水分散液中の、本発明の複合体を含む水分散物における複合体の濃度は、特に限定するものではないが、通常20重量%以下であることが好ましく、より好ましくは10重量%以下、粘性の観点からより好ましくは5重量%以下である。
【0117】
また、本発明の複合体の水分散液については、更に、水溶性化合物、水溶性のスルホキシド、水溶性アミド化合物、ラクトン構造を有する水溶性化合物から選ばれる少なくとも一つの導電性向上剤を含むことが好ましい。
【0118】
当該導電性向上剤としては、公知のものが使用できる。例えば、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N-メチルホルムアニリド、N-メチルピロリドン、ピロリドン等のアミド類;テトラメチレンスルホン、ジメチルスルホキシド等のスルホン化合物又はスルホキシド化合物;ソルビトール、マンニトール等の糖アルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等の多価アルコールが挙げられる。
【0119】
導電性向上剤の添加量は、水分散液に対して、0.5~20wt%、好ましくは1.0~10wt%である。
【0120】
本発明の水分散液を用いて導電性被膜を製造することができる。例えば、水分散液を、基材に塗布・乾燥することで導電性被膜が簡単に得られる。基材としては、例えば、ガラス、プラスチック、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリカーボネート、レジスト基板等が挙げられる。塗布方法としては、例えば、キャスティング法、ディッピング法、バーコード法、ロールコート法、グラビアコート法、フレキソ印刷法、スプレーコート法、インクジェット印刷法等が挙げられる。
【実施例
【0121】
本発明を以下の実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定して解釈されるものではない。なお、本実施例で用いた分析機器及び測定方法を以下に列記する。
[NMR測定]
装置:日本電子製 JNM-ECZ400S
[表面抵抗率測定]
装置:三菱化学社製ロレスタGP MCP-T600。
[膜厚測定]
装置:BRUKER社製 DEKTAK XT。
[粒子径測定]
装置:日機装社製 Microtrac Nanotrac UPA-UT151。
[GPC測定]
装置:東ソー社製GPC8020
カラム:G6000PWXL+G3000PWXL (7.8×3000)+ガードカラムPWH
検出器:RI-8020
溶離液:0.2M燐酸緩衝液(pH=6.8)/CHCN=9/1体積比
流 速:0.6mL/min
注入量:50μL(約0.1wt%)
温 度:40℃
標準試料:ポリスチレンスルホン酸ナトリウム(PolymerStandards
Service GmbH)
[粘度測定]
コンプリート型粘度計/BROOKFIELD VISCOMETER DV-1 Prime
[導電率測定]
ポリチオフェン-ポリスチレンスルホン酸共重合体複合体を含む水分散液 1.0mLを30mm角の無アルカリガラス板に塗布し、室温で一晩乾燥した後、ホットプレート上で150℃にて30分加熱して導電性高分子膜を得た。膜厚及び表面抵抗値から、以下の式に基づき算出した。
【0122】
導電率[S/cm]=10/(表面抵抗率[Ω/□]×膜厚[μm])
[密着性試験]
導電率測定と同じ条件で作製した導電性高分子膜について、クロスカット法(JIS K 5600-5-6)による密着性試験を行った。尚、分類0~2を良好判定、分類3~5を不良判定とした。
【0123】
良好:分類0~2
不良:分類3~5
実施例1(ポリスチレンスルホン酸共重合体の合成)
【0124】
【化20】
【0125】
還流冷却管、バドル型攪拌機を取り付けた200mlガラスフラスコに、純水 50.0g、スチレンスルホン酸ナトリウム 3.45g(14.8mmol、東ソー・ファインケム製、以下NaSSと略す)及び3-(メタクリロイルアミノ)プロピルジメチル(4-スルホブチル)アンモニウムハイドロオキシド 4.53g(14.8mmol、X=-NH-、m=3、n=4、R=R=R=メチル基である式(4)で表される繰り返し単位のモノマー、以下コモノマーAと略す)を加えた後、窒素雰囲気下、過硫酸アンモニウム 65.8mgを添加して70℃のオイルバスで20時間加熱した。得られた水溶液 1gをアセトン 40mlに再沈させたところ白色ポリマー(ポリスチレンスルホン酸共重合体)が析出した。当該ポリスチレンスルホン酸共重合体について、濾過・乾燥ののち、GPCで重量平均分子量を測定したところ、Mw=20.1万、多分散度PDIは1.9であった。更に、1H-NMRによりポリスチレンスルホン酸共重合体中のスチレンスルホン酸繰り返し単位の比率は、51.6mol%であった。ポリスチレンスルホン酸共重合体中のスチレンスルホン酸繰り返し単位の比率は、H-NMR(図1参照)上の芳香族プロトン(図1中のA部分)とメチレンプロトン(図1中のB部分)の比率から以下の式により算出した。
【0126】
スチレンスルホン酸繰り返し単位の比率(mol%)=12×[A積分値]/(4×[B積分値]+12×[A積分値])×100
次に、得られた反応液に水を加えて111gの希釈液を調製した後、陽イオン交換樹脂35ml(LANXESS(株)製 商品名Lewatit S108H)に通液した。その結果、5.2wt%のポリスチレンスルホン酸共重合体(共重合体Aと略す)水溶液を128g(共重合体中のスチレンスルホン酸繰り返し単位の含量=39.1重量%)合成した。
【0127】
実施例2 (ポリスチレンスルホン酸共重合体の合成)
NaSS、及びコモノマーAを、各々、6.56g(28.1mmol)、及び0.95g(3.11mmol)に変更した以外は、実施例1と同様な操作を行い、4.51wt%のポリスチレンスルホン酸共重合体(共重合体Bと略す)水溶液を128g合成した。
【0128】
尚、GPCで共重合体の重量平均分子量を測定したところ、Mw=23.9万、多分散度PDIは2.4であった。更に、1H-NMR(図2)によりポリマー中のスチレンスルホン酸繰り返し単位の比率は、91.4mol%であった(共重合体中のポリスチレンスルホン酸繰り返し単位の含量=86.5重量%)。
【0129】
実施例3 (ポリスチレンスルホン酸共重合体の合成)
NaSS、及びコモノマーAを、各々、7.5g(32.1mmol)、及び0.52g(1.69mmol)に変更した以外は、実施例1と同様な操作を行い、4.51wt%のポリスチレンスルホン酸共重合体(共重合体Cと略す)水溶液を114g合成した。
【0130】
得られたポリスチレンスルホン共重合体の重量平均分子量をGPC測定したところ、Mw=23.9万、多分散度PDIは2.4であった。更に、1H-NMR(図3)によりポリマー中のスチレンスルホン酸繰り返し単位の比率を測定したところ、その比率は95.9mol%であった(共重合体中のポリスチレンスルホン酸繰り返し単位の含量=93.4重量%)。
【0131】
実施例4(ポリチオフェン-ポリスチレンスルホン酸共重合体の合成)
窒素導入管、メカニカルスターラーを装着した200mlナス型フラスコに、実施例2で合成した共重合体Bを含む水溶液 20.5g(共重合体B固形分量=0.92g、共重合体B(重量)/3,4-エチレンジオキシチオフェン(重量)=2.31)、ジメチルスルホキシド 0.22g(2.82mmol)、硫酸鉄(III)・nHO 32mg(3,4-エチレンジオキシチオフェンに対して2mol%)、3,4-エチレンジオキシチオフェン 0.40g(2.82mmol、3,4-エチレンジオキシチオフェンは、以下、EDOTと略す)及び水 39.39gを加えた後、系内を窒素置換した。次に、過硫酸アンモニウム 648mg(2.83mmol)及び水 18.8gからなる混合溶液をシリンジにて室温下滴下したのち、20時間、室温下、撹拌した(当該反応液中のEDOT濃度=0.5wt%)。
【0132】
次いで、陽イオン交換樹脂(LANXESS(株)製 商品名Lewatit S108H) 6g、及び陰イオン交換樹脂(LANXESS(株)製 商品名Lewatit MP62WS) 6gを加えて1時間撹拌した。イオン交換樹脂をNo.2濾紙にて濾過したのち、超音波ホモジナイザー(日本精機(株)製US-300T)にて分散処理することにより、0.81wt%のポリチオフェン-ポリスチレンスルホン酸共重合体複合体を含む分散水溶液を148.8g得た。分散水溶液のポリチオフェン-ポリスチレンスルホン酸共重合体複合体の粒径D50は、13.5nmであった。
【0133】
得られた分散水溶液 3gに、エチレングリコール 90mgを添加した液を、33mm角のガラス基板にキヤスト法により塗布して得られた薄膜の導電率測定と密着性試験を行った。導電率は434S/cmであった(膜厚=4.9μm,表面抵抗=4.7Ω/□)。密着性は良好であった。結果を表1に纏める。
【0134】
実施例5 (ポリチオフェン-ポリスチレンスルホン酸共重合体の合成)
窒素導入管、メカニカルスターラーを装着した200mlナス型フラスコに、実施例3で合成した共重合体Cを含む水溶液 18.8g(共重合体C固形分量=0.85g、共重合体C(重量)/EDOT(重量)=2.1)、ジメチルスルホキシド 0.22g(2.82mmol)、硫酸鉄(III)・nHO 32mg(3,4-エチレンジオキシチオフェンに対して2mol%)、3,4-エチレンジオキシチオフェン 0.40g(2.82mmol)及び水53.9gを加えた後、系内を窒素置換した。次に、過硫酸アンモニウム 648mg(2.83mmol)及び水6.0gからなる混合溶液をシリンジにて室温下滴下したのち、20時間、室温下、撹拌した(当該反応液中のEDOT濃度=0.5wt%)。
【0135】
実施例4と同様にイオン交換処理及び分散処理することにより、0.64wt%のポリチオフェン-ポリスチレンスルホン酸共重合体複合体を含む分散水溶液を168.59g得た。分散水溶液のポリチオフェン-ポリスチレンスルホン酸共重合体複合体の粒径D50は、13.4nmであった。
【0136】
得られた分散水溶液 3gに、エチレングリコール 90mgを添加した液を、33mm角のガラス基板にキヤスト法により塗布して得られた薄膜の導電率測定と密着性試験を行った。導電率は578S/cmであった(膜厚=4.36μm,表面抵抗=3.97Ω/□)。密着性は良好であった。結果を表1に纏める。
【0137】
実施例6(ポリチオフェン-ポリスチレンスルホン酸共重合体の合成)
窒素導入管、メカニカルスターラーを装着した200mlナス型フラスコに、実施例3で合成した共重合体Cを含む水溶液 21.31g(共重合体C固形分量=0.96g、共重合体C(重量)/EDOT(重量)=2.4)、ジメチルスルホキシド 0.22g(2.82mmol)、硫酸鉄(III)・nHO 32mg(3,4-エチレンジオキシチオフェンに対して2mol%)、3,4-エチレンジオキシチオフェン 0.40g(2.82mmol)及び水51.4gを加えた後、系内を窒素置換した。次に、過硫酸アンモニウム 648mg(2.83mmol)及び水6.0gからなる混合溶液をシリンジにて室温下滴下したのち、20時間、室温下、撹拌した(当該反応液中のEDOT濃度=0.5wt%)。
【0138】
実施例4と同様にイオン交換処理及び分散処理することにより、0.79wt%のポリチオフェン-ポリスチレンスルホン酸共重合体複合体を含む分散水溶液を159.5g得た。分散水溶液のポリチオフェン-ポリスチレンスルホン酸共重合体複合体の粒径D50は、9.4nmであった。
【0139】
得られた分散水溶液 3gに、エチレングリコール 90mgを添加した液を、33mm角のガラス基板にキヤスト法により塗布して得られた薄膜の導電率測定と密着性試験を行った。導電率は557S/cmであった(膜厚=4.53μm,表面抵抗=3.97Ω/□)。密着性は良好であった。結果を表1に纏める。
【0140】
実施例7(ポリチオフェン-ポリスチレンスルホン酸共重合体の合成)
窒素導入管、メカニカルスターラーを装着した200mlナス型フラスコに、実施例3で合成した共重合体Cを含む水溶液 23.18g(共重合体C固形分量=1.05g、共重合体C(重量)/EDOT(重量)=2.6)、ジメチルスルホキシド 0.22g(2.82mmol)、硫酸鉄(III)・nHO 32mg(3,4-エチレンジオキシチオフェンに対して2mol%)、3,4-エチレンジオキシチオフェン 0.40g(2.82mmol)及び水 49.5gを加えた後、系内を窒素置換した。次に、過硫酸アンモニウム 648mg(2.83mmol)及び水6.0gからなる混合溶液をシリンジにて室温下滴下したのち、20時間、室温下、撹拌した(当該反応液中のEDOT濃度=0.5wt%)。
【0141】
実施例4と同様にイオン交換処理及び分散処理することにより、0.81wt%のポリチオフェン-ポリスチレンスルホン酸共重合体複合体を含む分散水溶液を162.04g得た。分散水溶液のポリチオフェン-ポリスチレンスルホン酸共重合体複合体の粒径D50は、13.7nmであった。
【0142】
得られた分散水溶液 3gに、エチレングリコール 90mgを添加した液を、33mm角のガラス基板にキヤスト法により塗布して得られた薄膜の導電率測定と密着性試験を行った。導電率は517S/cmであった(膜厚=4.52μm,表面抵抗=4.28Ω/□)。密着性は良好であった。結果を表1に纏める。
【0143】
比較例1 (PEDOT-PSSの合成)
ポリスチレンスルホン酸ナトリウム 50g(東ソーファインケム(株)製、商品名ポリナスPS-50、重量平均分子量:約230,000,22質量%水溶液)を水で5倍希釈した水溶液を、陽イオン交換樹脂(LANXESS(株)製 商品名Lewatit S108H) 160mLに通液し、3.4wt%のポリスチレンスルホン酸ホモポリマー水溶液 220gを得た。
【0144】
窒素導入管、メカニカルスターラーを装着した200mlナス型フラスコに、3.4wt%のポリスチレンスルホン酸ホモポリマー水溶液 23.5g(ポリスチレンスルホン酸ホモポリマー(重量)/EDOT(重量)=2.0)、硫酸鉄(III)・nHO 32mg(EDOTに対して2mol%)、EDOT 0.40g(2.82mmol)及び水36.6gを加えた後、系内を窒素置換した。次に、過硫酸アンモニウム 648mg(2.83mmol)及び水 18.8gからなる混合溶液をシリンジにて室温下滴下したのち、20時間、室温下、撹拌した(当該反応液中のEDOT濃度=0.5wt%)。
【0145】
実施例4と同様にイオン交換処理及び分散処理することにより、0.54wt%のポリチオフェン-ポリスチレンスルホン酸ホモポリマー複合体を含む分散水溶液を157.6g得た。分散水溶液のポリチオフェン-ポリスチレンスルホン酸ホモ重合体複合体の粒径D50は、17.1nmであった。
【0146】
得られた分散水溶液 3gに、エチレングリコール 90mgを添加した液を、33mm角のガラス基板にキヤスト法により塗布して得られた薄膜の導電率測定を行った。導電率は325S/cmであった(膜厚=5.1μm,表面抵抗=6.0Ω/□)。結果を表1に纏める。
【0147】
比較例2 (ポリスチレンスルホン酸-メタクリルアミド共重合体、及びポリチオフェンの合成)
【0148】
【化21】
【0149】
実施例1において、スチレンスルホン酸ナトリウム 3.45g(14.8mmol)及び3-(メタクリロイルアミノ)プロピルジメチル(4-スルホブチル)アンモニウムハイドロオキシド 4.53g(14.8mmol)を用いる代わりに、スチレンスルホン酸ナトリウム 6.56g(28.1mmol)、及びN-イソプロピルメタクリルアミド 0.40g(3.11mmol)を用いた以外は、実施例1と同様な操作を行い、5.1wt%のポリスチレンスルホン酸共重合体(共重合体Dと略す)を112.9g合成した。尚、GPCで共重合体の重量平均分子量を測定したところ、Mw=18.3万、多分散度PDIは2.0であった。1H-NMR(図2)によりポリマー中のポリスチレンスルホン酸のモノマー比率は、90.8mol%であった(共重合体中のスチレンスルホン酸繰り返し単位の含量=93.4重量%)。
【0150】
窒素導入管、メカニカルスターラーを装着した200mlナス型フラスコに、上述の共重合体Dを含む水溶液 16.8g(共重合体D固形分量=1.99g、共重合体D(重量)/EDOT(重量)=2.1)、ジメチルスルホキシド 0.22g(2.82mmol)、硫酸鉄(III)・nHO 32mg(3,4-エチレンジオキシチオフェンに対して2mol%)、3,4-エチレンジオキシチオフェン 0.40g(2.82mmol)及び水 43.1gを加えた後、系内を窒素置換した。次に、過硫酸アンモニウム 648mg(2.83mmol)及び水 18.8gからなる混合溶液をシリンジにて室温下滴下したのち、20時間、室温下、撹拌した(当該反応液中のEDOT濃度=0.5wt%)。
【0151】
陽イオン交換樹脂(LANXESS(株)製 商品名Lewatit S108H) 6g、陰イオン交換樹脂(LANXESS(株)製 商品名Lewatit MP62WS) 6gを加えて1時間撹拌した。イオン交換樹脂をNo.2濾紙にて濾過したのち、超音波ホモジナイザー(日本精機(株)製US-300T)にて分散処理することにより、ポリチオフェン-ポリスチレンスルホン酸共重合体複合体を含む分散水溶液を得た。
【0152】
分散水溶液のポリチオフェン-ポリスチレンスルホン酸共重合体複合体の粒径D50は、18.1nmであった。
【0153】
得られた分散水溶液 3gに、エチレングリコール 90mgを添加した液を、33mm角のガラス基板にキヤスト法により塗布して得られた薄膜の導電率測定を行った。導電率は223S/cmであった(膜厚=5.2μm,表面抵抗=8.6Ω/□)。結果を表1に纏める。
【0154】
【表1】
図1
図2
図3