(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】ポリエチレン樹脂組成物、積層体および医療容器
(51)【国際特許分類】
C08L 23/04 20060101AFI20230711BHJP
C08F 10/02 20060101ALI20230711BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20230711BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20230711BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20230711BHJP
A61J 1/10 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
C08L23/04
C08F10/02
B32B27/00 H
B32B27/32 E
B65D65/40 D
A61J1/10 330B
A61J1/10 331A
A61J1/10 331C
(21)【出願番号】P 2019156534
(22)【出願日】2019-08-29
【審査請求日】2022-07-14
(31)【優先権主張番号】P 2018170650
(32)【優先日】2018-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中尾 英誉
(72)【発明者】
【氏名】茂呂 義幸
【審査官】西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-200464(JP,A)
【文献】特開2016-178988(JP,A)
【文献】特開2016-074793(JP,A)
【文献】特開昭61-120745(JP,A)
【文献】特開昭61-078644(JP,A)
【文献】特開2012-097201(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
B32B 27/32
A61J 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記特性(a)~(c)を満足する直鎖状低密度ポリエチレン(A)50~89重量部
、下記特性(d)~(f)を満足する高密度ポリエチレン(B)10~40重量部、下記
特性(g)~(i)を満足する高圧法低密度ポリエチレン(C)1~20重量部((A)
、(B)、(C)の合計は100重量部)を含み、下記特性(j)を満足するポリエチレ
ン樹脂組成物。
(a)密度が890~920kg/m
3である。
(b)MFRが3.0~15g/10minである。
(c)数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)の比(Mw/Mn)が2.0~3
.0である。
(d)密度が935~970kg/m
3である。
(e)MFRが3.0~15g/10minである。
(f)数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)の比(Mw/Mn)が2.0~3
.0である。
(g)密度が910~930kg/m
3である。
(h)MFRが0.1~1.0g/10minである。
(i)溶融張力が200~400mNである。
(j)MFRが3.0~9.0g/10minである。
【請求項2】
少なくともA層、B層、C層をこの順に有する3層以上の積層体であって、前記B層が
請求項1に記載のポリエチレン樹脂組成物からなり、A層及びC層が熱可塑性樹脂からな
ることを特徴とする積層体。
【請求項3】
A層及びC層の熱可塑性樹脂がポリエチレンを含む樹脂組成物である請求
項2に記載の積層体。
【請求項4】
121℃滅菌後の光線透過率が70%以上であることを特徴とする請求項2又は3に記
載の積層体。
【請求項5】
請求項2~4のいずれかに記載の積層体よりなることを特徴とする医療容器。
【請求項6】
薬液を収容する収容部を備えた医療容器であって、少なくとも前記収容部は請求項2~
4のいずれかに記載の積層体からなることを特徴とする医療容器。
【請求項7】
121℃で20分間滅菌処理した光線透過率が70%以上であることを特徴とする請求
項5又は6に記載の医療容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエチレン樹脂組成物およびこれを用いた積層体、医療容器に関する。さらに詳しくは、水冷インフレーション成形時の押出特性および成形安定性に優れる樹脂組成物に関するものである。また、この樹脂組成物を成形した輸液バッグのような薬液、血液等を充填する医療容器に好適な積層体およびこれを用いた医療容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
薬液、血液等を充填する医療容器には、異物の混入や薬剤配合による変化を確認するための透明性、薬液の排出を容易にするための柔軟性、容器内への水蒸気や酸素の滲入による薬液等の変質や品質の低下を抑制するためのガスバリア性、さらに容器からの微粒子溶出の低減(低微粒子性)などが要求される。また、これらの容器に内容物を充填した製品には、加熱滅菌処理が行われることが一般的である。特に、直接血液中に投与される輸液製剤などは、無菌状態に保つことが厳しく求められるため、近年、121℃での高温滅菌がグローバルスタンダードとなりつつあり、121℃での滅菌処理に耐えられる耐熱性が強く求められる。
【0003】
従来、このような医療容器としてガラス製容器が使用されていたが、衝撃や落下による容器の破損、薬液投与時の容器内への外気の浸入による汚染等の問題があるため、耐衝撃性に優れ、柔軟で内容液の排出が容易なプラスチック製容器が用いられるようになった。プラスチック製容器としては、軟質塩化ビニル樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリプロピレン樹脂および高圧法低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等のポリエチレン系樹脂が用いられている。しかし、軟質塩化ビニル樹脂は可塑剤が薬液中に溶出するなど衛生面で問題があり、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂は耐熱性に劣る。上述の透明性と耐熱性を満足する容器の原料としてポリプロピレンが広く用いられているが、ポリプロピレンは三級炭素が繰り返し存在し、本質的に酸化劣化しやすいため、酸化防止剤の添加が必須となっている。近年、安全性への要求が高まっていることから、特に医療薬液用の容器では、添加剤無添加のクリーンな材料が好まれるようになりつつある。そのため、ポリプロピレンに代わる添加剤無添加材料を使用した透明性と耐熱性を併せ持つ新たな医療容器の出現が望まれている。また、ポリエチレン系樹脂においても、透明性や柔軟性を満足するために密度を低くすると耐熱性が低下し、耐熱性を満足するために密度を高くすると透明性や柔軟性が低下するなどの問題がある。
【0004】
近年、透明性に優れるシングルサイト系触媒で製造された直鎖状ポリエチレンが開発され、それらを原料としたフィルムを積層させることで前記問題を解決する方法(特許文献1~3参照)が提案されている。しかしながら、それらの積層体においても透明性がなお不十分であり、成形した容器のヒートシール部等の衝撃強度も十分とは言えず改良が望まれていた。
【0005】
このような状況下で、透明性と耐熱性を両立するポリエチレン容器を生産するために、ポリエチレンを主成分とした樹脂組成物や多層容器、さらには特定の物性を有するポリエチレン系樹脂などの種々提案がなされている(例えば特許文献4~7参照)。更に、本発明者らは、特定の物性を有するポリエチレン系樹脂を特定量配合したポリエチレン樹脂組成物を使用することにより、透明性、耐熱性、クリーン性に優れる医療容器を提供し得ることを見出している(例えば、特許文献8参照)。
【0006】
しかし、ポリプロピレンを使用していた事業者が、クリーン性を高めるために前述のようなポリエチレン系樹脂に材料変更を行おうとした場合、ポリプロピレン用に設計された成形機はダイ内部の流路が狭いために樹脂圧力が高くなる問題や、各部での流量のバランスが崩れるために膜厚が幅方向に不均一となる等の問題により成形が困難である場合があった。樹脂圧力を下げるために、ポリエチレン系樹脂の粘度を下げた場合には、溶融張力が低下するために、バブルの変動が大きくなり、ドローレゾナンスが生じる等、成形安定性が低下してしまう課題があった。そのため、医療容器に必要な耐熱性や透明性を有しつつも、ポリプロピレン用の成形機でも安定生産が可能なクリーンなポリエチレン樹脂の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平8-309939号公報
【文献】特開平7-125738号公報
【文献】特開平8-244791号公報
【文献】特開2002-265705号公報
【文献】特開2005-7888号公報
【文献】特開2015-42557号公報
【文献】特開2008-18063号公報
【文献】特開2015-74744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、特に、従来の医療容器用樹脂で両立が困難であった耐熱性、柔軟性、バリアー性およびクリーン性(低微粒子性)に優れ、121℃での滅菌処理後も変形せず、高い透明性が保持され、かつ水冷インフレーション成形における加工性に優れるポリエチレン系樹脂組成物およびこれを用いた医療容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは鋭意検討を行なった結果、特定の物性を有するポリエチレン系樹脂を特定量配合した樹脂組成物を使用することにより、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、以下の[1]乃至[7]に存する。
[1]下記特性(a)~(c)を満足する直鎖状低密度ポリエチレン(A)50~89重量部、下記特性(d)~(f)を満足する高密度ポリエチレン(B)10~40重量部、下記特性(g)~(i)を満足する高圧法低密度ポリエチレン(C)1~20重量部((A)、(B)、(C)の合計は100重量部)を含み、下記特性(j)を満足する医療容器用ポリエチレン樹脂組成物。
(a)密度が890~920kg/m3である。
(b)JIS K 6922-1に準拠し、190℃、荷重21.18Nで測定したメルトマスフローレート(以下、MFRという)が3.0~15g/10minである。
(c)数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)の比(Mw/Mn)が2.0~3.0である。
(d)密度が935~970kg/m3である。
(e)MFRが3.0~15g/10minである。
(f)数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)の比(Mw/Mn)が2.0~3.0である。
(g)密度が910~930kg/m3である。
(h)MFRが0.1~1.0g/10minである。
(i)溶融張力が200~400mNである。
(j)MFRが3.0~9.0g/10minである。
[2] 少なくともA層、B層、C層をこの順に有する3層以上の積層体であって、前記B層が前記[1]に記載のポリエチレン樹脂組成物からなり、A層及びC層が熱可塑性樹脂からなることを特徴とする積層体。
[3] A層及びC層の熱可塑性樹脂がポリエチレンを含む樹脂組成物である前記[1]又は[2]に記載の積層体。
[4] 121℃滅菌後の光線透過率が70%以上であることを特徴とする前記[2]又は[3]に記載の積層体。
[5] 前記[2]~[4]のいずれかに記載の積層体よりなることを特徴とする医療容器。
[6] 薬液を収容する収容部を備えた医療容器であって、少なくとも前記収容部は前記[2]~[4]のいずれかに記載の積層体からなることを特徴とする医療容器。
[7] 121℃で20分間滅菌処理した光線透過率が70%以上であることを特徴とする前記[5]又は[6]に記載の医療容器。
【0011】
以下に、本発明に関わるポリエチレン樹脂、それらを配合してなる樹脂組成物、本発明の積層体およびそれよりなる医療容器について説明する。
(1)直鎖状低密度ポリエチレン(A)
本発明に用いる直鎖状低密度ポリエチレン(A)は、エチレンとα-オレフィンの共重合体である。
本発明に関わる直鎖状低密度ポリエチレン(A)は、JIS K6922-1に準拠し、190℃、荷重21.18Nで測定したメルトフローレートが3.0~15g/10分、好ましくは3.0~10g/10分、さらに好ましくは4.0~7.0g/10分である。MFRが3.0g/10分未満だと、成形加工時に押出機の負荷が大きくなると共に、成形時に幅方向に厚みムラが生じるため好ましくない。また、MFRが15g/10分を超える場合、成形安定性が低下するため好ましくない。
【0012】
本発明に関わる直鎖状低密度ポリエチレン(A)は、JIS K6922-1に準拠した密度が890~920kg/m3、好ましくは900~910kg/m3である。密度が890kg/m3未満だと121℃滅菌処理により容器の変形が生じる等耐熱性が不足し、920kg/m3を超える場合、透明性、柔軟性が低下するため好ましくない。
【0013】
本発明に関わる直鎖状低密度ポリエチレン(A)は、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が2.0~3.0である。Mw/Mnが3.0以下である場合は、得られた積層体を121℃で滅菌処理した際に透明性の低下が小さくなり、また高い強度が得られるため好ましい。Mw/Mnが2.0以上である場合は、成形時の押出負荷が抑えられるため好ましい。
【0014】
本発明に関わる直鎖状低密度ポリエチレン(A)は、例えば、特開2009-275059号公報、特開2013-81494号公報等に記載の方法により、高圧法、溶液法、気相法等の製造法を用いて、シクロペンタジエニル誘導体を含有する有機遷移金属化合物と、これと反応してイオン性の錯体を形成する化合物及び/又は有機金属化合物からなるメタロセン触媒によりエチレンとα-オレフィンを共重合することにより製造することが可能である。
【0015】
α-オレフィンとしては、一般にα-オレフィンと称されているものでよく、プロピレン、ブテン-1、ヘキセン-1、オクテン-1、4-メチル-1-ペンテン等の炭素数3~12のα-オレフィンであることが好ましい。エチレンとα-オレフィンの共重合体としては、例えばエチレン・ヘキセン-1共重合体、エチレン・ブテン-1共重合体、エチレン・オクテン-1共重合体等が挙げられる。
(2)高密度ポリエチレン(B)
本発明に用いる高密度ポリエチレン(B)は、エチレン単独重合体、またはエチレンとα-オレフィンの共重合体である。
【0016】
本発明に関わる高密度ポリエチレン(B)は、JIS K6922-1に準拠し、190℃、荷重21.18Nで測定したMFRが3.0~15g/10分、好ましくは3.0~10g/10分、さらに好ましくは4.0~6.0g/10分である。MFRが3.0g/10分未満だと、成形加工時に押出機の負荷が大きくなると共に、成形時に幅方向に厚みムラが生じるため好ましくない。また、MFRが15g/10分を超える場合、溶融張力が小さくなり、成形安定性が低下するため好ましくない。
【0017】
本発明に関わる高密度ポリエチレン(B)は、JIS K6922-1に準拠した密度が935~970kg/m3、好ましくは950~960kg/m3である。密度が935kg/m3未満だと121℃滅菌処理により容器の変形が生じる等耐熱性が不足し、970kg/m3を超える場合、透明性、柔軟性が低下するため好ましくない。
【0018】
本発明に関わる高密度ポリエチレン(B)は、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が2.0~3.0である。Mw/Mnが3.0以下である場合は、得られた積層体を121℃で滅菌処理した際に透明性の低下が小さくなるため好ましい。Mw/Mnが2.0以上である場合は、成形時の押出負荷が抑えられるため好ましい。
【0019】
本発明に関わる高密度ポリエチレン(B)は、例えば、特開2009-275059号公報、特開2013-81494号公報等に記載の方法により、スラリー法、溶液法、気相法等の製造法を用いて、シクロペンタジエニル誘導体を含有する有機遷移金属化合物と、これと反応してイオン性の錯体を形成する化合物及び/又は有機金属化合物からなるメタロセン触媒によりエチレンを単独重合またはエチレンとα-オレフィンを共重合することにより製造することが可能である。
【0020】
α-オレフィンとしては、一般にα-オレフィンと称されているものでよく、プロピレン、ブテン-1、ヘキセン-1、オクテン-1、4-メチル-1-ペンテン等の炭素数3~12のα-オレフィンであることが好ましい。エチレンとα-オレフィンの共重合体としては、例えばエチレン・ヘキセン-1共重合体、エチレン・ブテン-1共重合体、エチレン・オクテン-1共重合体等が挙げられる。
(3)高圧法低密度ポリエチレン(C)
本発明に関わる高圧法低密度ポリエチレン(C)は、JIS K6922-1に準拠し、190℃、荷重21.18Nで測定したメルトフローレート(以下、MFRという)が0.1~1.0g/10分、好ましくは0.1~0.5g/10分、さらに好ましくは0.2~0.4g/10分である。MFRが0.1g/10分未満だと、成形加工時に押出機の負荷が大きくなると共に、他の原料との粘度差が過大となり、フィッシュアイが生じるため好ましくない。また、MFRが1.0g/10分を超える場合、成形安定性が低下するため好ましくない。
【0021】
本発明に関わる高圧法低密度ポリエチレン(C)は、JIS K6922-1に準拠した密度が910~930kg/m3、好ましくは915~925kg/m3、さらに好ましくは918~922kg/m3である。密度が910kg/m3未満だと121℃滅菌処理により容器の変形が生じる等耐熱性が不足し、930kg/m3を超える場合、透明性、柔軟性が低下するため好ましくない。
【0022】
本発明に関わる高圧法低密度ポリエチレン(C)は、溶融張力が200~400mN、好ましくは220~350mN、さらに好ましくは250~300mNである。溶融張力が200mN未満である場合、成形安定性が低下するため好ましくない。溶融張力が400mNを超える場合は、引取速度を上げると膜切れが発生するため好ましくない。
【0023】
本発明に関わる高圧法低密度ポリエチレン(C)は、市販品として入手したものであってもよく、例えば、東ソー(株)製(商品名)ペトロセン 172等を挙げることができる。
(4)ポリエチレン樹脂組成物
本発明のポリエチレン樹脂組成物は、前述の直鎖状低密度ポリエチレン(A)、高密度ポリエチレン(B)および高圧法低密度ポリエチレン(C)を、従来公知の方法、例えばヘンシェルミキサー、V-ブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーブレンダー等で混合する方法、あるいはこのような方法で得られた混合物をさらに一軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー等で溶融混練した後、造粒することによって得ることができる。
【0024】
本発明の樹脂組成物の直鎖状低密度ポリエチレン(A)と高密度ポリエチレン(B)、高圧法低密度ポリエチレン(C)の配合割合は、直鎖状低密度ポリエチレン(A)が50~89重量部、好ましくは60~80重量部、より好ましくは65~75重量部、高密度ポリエチレン(B)が10~40重量部、好ましくは15~35重量部、より好ましくは15~30重量部、高圧法低密度ポリエチレン(C)が1~20重量部、好ましくは2~15重量部、より好ましくは3~10重量部である。(A)、(B)、(C)の合計は100重量部である。
【0025】
直鎖状低密度ポリエチレン(A)が50重量部未満の場合は得られた積層体の透明性、柔軟性、強度が低下するため好ましくない。直鎖状低密度ポリエチレン(A)が89重量部を超える場合は、成形安定性が低下し、得られた積層体の耐熱性が低下するため好ましくない。
【0026】
高密度ポリエチレン(B)が10重量部未満の場合は得られた積層体の耐熱性が低下し、121℃での滅菌処理後に容器の変形や透明性の低下が生じるため好ましくない。高密度ポリエチレン(B)が40重量部を超える場合は、得られた積層体の柔軟性、透明性、強度が低下するため好ましくない。
【0027】
低密度ポリエチレン(C)が1重量部未満の場合は、水冷インフレーション成形時の成形安定性が低下し、安定して積層体を製造できないため好ましくない。低密度ポリエチレン(C)が20重量部を超える場合は、得られた積層体の透明性、耐熱性、強度が低下するため好ましくない。
【0028】
本発明の樹脂組成物は、MFRが3.0~9.0g/10min、密度が910~925kg/m3の範囲にある場合は、成形安定性が良く、121℃での滅菌処理後の透明性が特に優れるため好ましく、MFRが3.0~5.0g/10min、密度が910~920kg/m3の範囲にある場合はより好ましい。MFRが3.0未満だと押出特性が低下するため好ましくなく、MFRが9.0を超える場合は成形安定性や強度が低下するため好ましくない。
【0029】
本発明のポリエチレン樹脂組成物には、本発明の効果を著しく損なわない範囲において、通常用いられる公知の添加剤、例えば酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、有機系あるいは無機系の顔料、紫外線吸収剤、分散剤等を適宜必要に応じて配合することができる。本発明に関わる樹脂組成物に前記の添加剤を配合する方法は特に制限されるものではないが、例えば、重合後のペレット造粒工程で直接添加する方法、また、予め高濃度のマスターバッチを作製し、これを成形時にドライブレンドする方法等が挙げられる。
【0030】
また、本発明のポリエチレン樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない程度の範囲内で、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体ゴム、ポリ-1-ブテン等の他の熱可塑性樹脂を配合して用いることもできる。
(5)積層体
本発明の積層体は、少なくともA層、B層、C層をこの順に有する3層以上の積層体であって、前記B層が下記のポリエチレン樹脂組成物からなり、A層及びC層が熱可塑性樹脂からなる。
【0031】
下記特性(a)~(c)を満足する直鎖状低密度ポリエチレン(A)50~89重量部、下記特性(d)~(f)を満足する高密度ポリエチレン(B)10~40重量部、下記特性(g)~(i)を満足する高圧法低密度ポリエチレン(C)1~20重量部((A)、(B)、(C)の合計は100重量部)を含み、下記特性(j)を満足するポリエチレン樹脂組成物。
(a)密度が890~920kg/m3である。
(b)MFRが3.0~15g/10minである。
(c)数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)の比(Mw/Mn)が2.0~3.0である。
(d)密度が935~970kg/m3である。
(e)MFRが3.0~15g/10minである。
(f)数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)の比(Mw/Mn)が2.0~3.0である。
(g)密度が910~930kg/m3である。
(h)MFRが0.1~1.0g/10minである。
(i)溶融張力が200~400mNである。
(j)MFRが3.0~9.0g/10minである。
【0032】
本発明の積層体のA層とC層に用いる熱可塑性樹脂は特に限定されないが、透明性と耐熱性のバランスに優れる樹脂を使用することが好ましい。例えば、ポリエチレンを含む樹脂組成物が挙げられ、ポリエチレンとして、東ソー(株)製(商品名)ニポロン-P FY13、ニポロン-P FY11等が衛生性、透明性および耐熱性の観点から好適である。また、本発明の効果を損なわない範囲において、ポリプロピレン等のポリエチレン以外の樹脂をA層またはC層に用いても構わない。
【0033】
本発明の積層体は、A層とB層とC層(C層がヒートシール層)をこの順に有するものであれば、その他の層構成については特に限定されない。層の数については、前記A層/B層/C層からなる三層が最も好ましいが、それに限らず、A層/B層/C層におけるB層の中にさらに層を構成させたA層/B層/中心層/B層/C層という層構成や、A層とB層、またはB層とC層の間に、必要に応じて適宜他の層を設けることができる。そのような他の層としては、接着層、ガスバリア層、紫外線吸収層等が挙げられる。例えば、A層/ガスバリア層/B層/接着層/C層といった五層構造をとることもできる。また、C層のさらに外側に新たな層を設けることもできる。なお、層の間の記号/は、隣接する層であることを表している。
【0034】
尚、接着層を構成する接着剤としては、ポリウレタン系接着剤、酢酸ビニル接着剤、ホットメルト接着剤、あるいは無水マレイン酸変性ポリオレフィン、アイオノマー樹脂等の接着性樹脂が挙げられる。層構成に接着層を含める場合は、外層、中間層、内層等の必須構成層を、これらの接着剤とともに共押出することにより積層することができる。
【0035】
本発明における積層体の全体厚みは特に限定されず、必要に応じて適宜決定することができるが、好ましくは0.01~1mm、より好ましくは0.1~0.5mmである。
【0036】
各層の厚み比は特に限定されないが、滅菌処理等による変形や融着を防ぐため密度を高めた外層や内層は厚みを薄くし、透明性を高めるため密度を低くした中間層の厚みは厚くした方が、透明性と耐熱性のバランスが良くなるため好ましい。各層の厚み比としては、A層:B層:C層=1~30:40~98:1~30程度(但し、全体の合計を100とする)がよい。
【0037】
本発明の積層体は、121℃で20分間滅菌処理を行った、滅菌後の光線透過率が70%以上であることが透明性の観点から好ましい。
【0038】
本発明の積層体の製造方法は特に限定されないが、水冷式または空冷式共押出多層インフレーション法、共押出多層Tダイ法、ドライラミネーション法、押出ラミネーション法等により多層フィルムまたはシートとする方法が挙げられる。これらの中で、水冷式共押出多層インフレーション法または共押出多層Tダイ法を用いるのが好ましい。特に、水冷式共押出多層インフレーション法を用いた場合、透明性、衛生性等の点で多くの利点を有する。
(6)医療容器
本発明の医療容器は、前記積層体からなるものである。また、本発明の医療容器は、薬液を収容する収容部を備えた医療容器であって、少なくとも収容部が前記積層体からなるものである。
【0039】
本発明の医療容器は、121℃で20分間滅菌処理を行った、滅菌後の光線透過率が70%以上であることが透明性の観点から好ましい。
【0040】
前記積層体を、水冷式共押出多層インフレーション法によりフィルム状に成形した場合は、得られたフィルムを2枚重ね合わせて、周辺部をヒートシールすることで、袋状の収容部を成形することができる。また、得られたフィルムを真空成形、圧空成形などの熱板成形により、収容部となる凹部を成形した後、凹部同士が対向するように重ね合わせて、周辺部をヒートシールすることで収容部を成形することもできる。この際、薬液の注出入口となるポート部は、前記収容部の成形時に同時にヒートシールして形成させてもよいし、収容部の形成とポート部の形成を別工程で行なうことも可能である。
【0041】
本発明のポリエチレン製医療容器の用途としては、医療関係全般に用いることができ、例えば血液バッグ、血小板保存バッグ、輸液(薬液)バッグ、医療複室容器、人工透析用バッグ等が挙げられる。
【発明の効果】
【0042】
本発明の樹脂組成物は、水冷インフレーション成形時の成形安定性に優れ、それよりなる積層体は透明性、柔軟性、バリアー性およびクリーン性(低微粒子性)に優れ、さらに121℃での滅菌処理後も透明性を維持できるため、高い透明性と耐熱性が求められる医療輸液バッグのような医療容器に好適に用いることができる。
【実施例】
【0043】
以下に、実施例を示して本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により制限されるものではない。
A.樹脂
実施例、比較例に用いた樹脂の諸性質は下記の方法により評価した。
【0044】
<密度>
密度は、JIS K6922-1に準拠して密度勾配管法で測定した。
【0045】
<MFR>
MFR(メルトフローレート)は、JIS K6922-1に準拠して測定を行った。
【0046】
<分子量、分子量分布>
重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量と数平均分子量の比(Mw/Mn)およびピークトップ分子量(Mp)は、GPCによって測定した。GPC装置(東ソー(株)製(商品名)HLC-8121GPC/HT)およびカラム(東ソー(株)製(商品名)TSKgel GMHhr-H(20)HT)を用い、カラム温度を140℃に設定し、溶離液として1,2,4-トリクロロベンゼンを用いて測定した。測定試料は1.0mg/mlの濃度で調製し、0.3ml注入して測定した。分子量の検量線は、分子量既知のポリスチレン試料を用いて校正した。なお、MwおよびMnは直鎖状ポリエチレン換算の値として求めた。
【0047】
<溶融張力>
溶融張力の測定は、バレル直径9.55mmの毛管粘度計(東洋精機製作所、商品名キャピログラフ)に、長さが8mm,直径が2.095mmのダイスを流入角が90°になるように装着し測定した。温度を160℃に設定し、ピストン降下速度を10mm/分、延伸比を47に設定し、引き取りに必要な荷重(mN)を溶融張力とした。最大延伸比が47未満の場合、破断しない最高の延伸比での引き取りに必要な荷重(mN)を溶融張力とした。
(1)直鎖状低密度ポリエチレン
LL-1
[変性粘土の調製]
水1,500mlに37%塩酸30mlおよびN,N-ジメチル-ベヘニルアミンを106g加え、N,N-ジメチル-ベヘニルアンモニウム塩酸塩水溶液を調製した。平均粒径7.8μmのモンモリロナイト300g(クニミネ工業製、商品名クニピアFをジェット粉砕機で粉砕することによって調製した)を上記塩酸塩水溶液に加え、6時間反応させた。反応終了後、反応溶液を濾過し、得られたケーキを6時間減圧乾燥し、変性粘土化合物370gを得た。
[重合触媒の調製]
窒素雰囲気下の20Lステンレス容器にヘプタン3.3L、トリエチルアルミニウムのヘプタン溶液(20wt%希釈品)をアルミニウム原子当たり1.13mol(0.9L)および上記で得られた変性粘土化合物50gを加えて1時間撹拌した。そこへジフェニルメチレン(4-フェニル-インデニル)(2,7-ジ-t-ブチル-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロライドをジルコニウム原子当たり1.25mmol加えて12時間撹拌した.得られた懸濁系に脂肪族系飽和炭化水素溶媒(出光石油化学製、商品名IPソルベント2835)5.8Lを加えることにより、触媒を調製した。(ジルコニウム濃度0.125mmol/L)
[LL-1の製造]
高温高圧重合用に装備された槽型反応器を用い、エチレンおよび1-ヘキセンを連続的に反応器に圧入して、全圧を90MPa、1-ヘキセン濃度を18mol%、水素濃度を8mol%になるように設定した。そして反応器を1,500rpmで撹拌し、上記により得られた重合触媒を反応器の供給口より連続的に供給し、平均温度を200℃に保ち重合反応を行った。得られた直鎖状低密度ポリエチレンLL-1はMFR=4.0g/10分、密度910kg/m3であった。LL-1の基本特性評価結果を表1に示す。
【0048】
LL-2
[変性粘土の調製]
LL-1と同様の方法により変性粘土化合物を調製した。
[重合触媒の調製]
LL-1と同様の方法により重合触媒を調製した。
[LL-2の製造]
高温高圧重合用に装備された槽型反応器を用い、エチレンおよび1-ヘキセンを連続的に反応器に圧入して、全圧を90MPa、1-ヘキセン濃度を24mol%、水素濃度を6mol%になるように設定した。そして反応器を1,500rpmで撹拌し、上記により得られた重合触媒を反応器の供給口より連続的に供給し、平均温度を200℃に保ち重合反応を行った。得られた直鎖状低密度ポリエチレンLL-2はMFR=5.0g/10分、密度900kg/m3であった。LL-2の基本特性評価結果を表1に示す。
【0049】
LL-3
[変性粘土の調製]
LL-1と同様の方法により変性粘土化合物を調製した。
[重合触媒の調製]
LL-1と同様の方法により重合触媒を調製した。
[LL-3の製造]
高温高圧重合用に装備された槽型反応器を用い、エチレンおよび1-ヘキセンを連続的に反応器に圧入して、全圧を90MPa、1-ヘキセン濃度を19mol%、水素濃度を12mol%になるように設定した。そして反応器を1,500rpmで撹拌し、上記により得られた重合触媒を反応器の供給口より連続的に供給し、平均温度を200℃に保ち重合反応を行った。得られた直鎖状低密度ポリエチレンLL-3はMFR=7.0g/10分、密度910kg/m3であった。LL-3の基本特性評価結果を表1に示す。
【0050】
LL-4
[変性粘土の調製]
LL-1と同様の方法により変性粘土化合物を調製した。
[重合触媒の調製]
LL-1と同様の方法により重合触媒を調製した。
[LL-4の製造]
高温高圧重合用に装備された槽型反応器を用い、エチレンおよび1-ヘキセンを連続的に反応器に圧入して、全圧を90MPa、1-ヘキセン濃度を18mol%、水素濃度を5mol%になるように設定した。そして反応器を1,500rpmで撹拌し、上記により得られた重合触媒を反応器の供給口より連続的に供給し、平均温度を200℃に保ち重合反応をいった。得られた直鎖状低密度ポリエチレンLL-4はMFR=2.0g/10分、密度907kg/m3であった。LL-4の基本特性評価結果を表1に示す。
(2)高密度ポリエチレン
HD-1
[変性粘土化合物の調製]
脱イオン水3L、エタノール3Lの混合溶媒に、ジオレイルメチルアミン;(C18H35)2(CH3)N 532gと37%塩酸125gを加え、ジオレイルメチルアミン塩酸塩溶液を調製した。この溶液を45℃に加熱して、合成ヘクトライト1,000gを加え、60℃にて1時間撹拌した。得られた反応液をろ過した後、固体分を水で十分洗浄した。固体分を乾燥させたところ、1,180gの有機変性粘土化合物を得た。赤外線水分計で測定した結果、含水量は0.8%であった。次に、この有機変性粘土化合物をジェットミル粉砕し、平均粒径を15μmとした。
[重合触媒の調製]
5Lのフラスコに[変性粘土化合物の調製]の項で得た有機変性粘土化合物450g、ヘキサン1.4kgを加え、その後ビス(インデニル)ジルコニウムジクロライド7.06kg(18ミリモル)、およびトリイソブチルアルミニウムのヘキサン20重量%溶液1.78kg(1.8モル)を加え、60℃に加熱して、3時間撹拌した。その後、45℃まで冷却し、2時間静置した後に上澄液を除去した。次に、トリイソブチルアルミニウムのヘキサン1重量%溶液1.78kg(0.09モル)を加え、45℃で30分間撹拌し、2時間静置した後に上澄液を除去する操作を2回行い、トリイソブチルアルミニウムのヘキサン20重量%溶液0.45kg(0.45モル)を加え、ヘキサンで再稀釈して全量を4.5Lとして、重合触媒を調製した。
[HD-1の製造]
内容量300Lの重合器に、ヘキサン135kg/時、エチレンを20.0kg/時、水素を15NL/時、[重合触媒の調製]の項で得られた重合触媒、および助触媒としてトリイソブチルアルミニウムのヘキサン20重量%溶液を液中のトリイソブチルアルミニウムの濃度が0.93ミリモル/kgヘキサンとなる様に、それぞれ連続的に供給した。重合温度は、85℃に制御した。得られた、高密度ポリエチレンHD―1は、MFR=5.0g/10分、密度958kg/m3であった。HD-1の基本特性評価結果を表2に示す。
【0051】
HD-2
[変性粘土の調製]
HD-1と同様の方法により変性粘土化合物を調製した。
[重合触媒の調製]
HD-1と同様の方法により重合触媒を調製した。
[HD-2の製造]
内容量300Lの重合器に、ヘキサン135kg/時、エチレンを20.0kg/時、水素を5NL/時、[重合触媒の調製]の項で得られた重合触媒、および助触媒としてトリイソブチルアルミニウムのヘキサン20重量%溶液を液中のトリイソブチルアルミニウムの濃度が0.93ミリモル/kgヘキサンとなる様に、それぞれ連続的に供給した。重合温度は、85℃に制御した。得られた高密度ポリエチレンHD-2はMFR=1.0g/10分、密度952kg/m3であった。HD-2の基本特性評価結果を表2に示す。
(3)直鎖状低密度ポリエチレン
LD-1:下記市販品を用いた。
【0052】
東ソー(株)製、(商品名)ペトロセン 172(MFR=0.3g/10分、密度=920kg/m3)LD-1の基本特性評価結果を表3に示す。
【0053】
LD-2:下記市販品を用いた。
【0054】
東ソー(株)製、(商品名)ペトロセン 360(MFR=1.6g/10分、密度=919kg/m3)LD-2の基本特性評価結果を表3に示す。
【0055】
LD-3:下記市販品を用いた。
【0056】
東ソー(株)製、(商品名)ペトロセン 176(MFR=1.0g/10分、密度=924kg/m3)LD-3の基本特性評価結果を表3に示す。
【0057】
LD-4:下記市販品を用いた。
【0058】
東ソー(株)製、(商品名)ペトロセン 173(MFR=0.3g/10分、密度=924kg/m3)LD-4の基本特性評価結果を表3に示す。
【0059】
LD-5:下記市販品を用いた。
【0060】
東ソー(株)製、(商品名)ペトロセン 175K(MFR=0.6g/10分、密度=922kg/m3)LD-5の基本特性評価結果を表3に示す。
<樹脂組成物>
上記の直鎖状低密度ポリエチレン(A)、高密度ポリエチレン(B)および高圧法低密度ポリエチレン(C)を実施例、比較例に記載の比率でドライブレンドを行い、これをプラコー社製50mm径単軸押出機にて溶融混合し、評価樹脂ペレットを作製した。バレルの温度はC1:180℃、C2:190℃、C3:200℃、C4:200℃、ダイヘッド:200℃とした。
B.積層体および密封容器
実施例、比較例に用いた積層体および医療容器は下記の方法により製造し、滅菌処理を行なった。
【0061】
<積層体および医療容器の製造>
三層水冷インフレーション成形機(プラコー社製)を用いて、シリンダ温度180℃、水槽温度15℃、引取速度6m/分でフィルム幅135mm、フィルム厚み250μmの三層フィルムを成形した。外層および内層には、東ソー(株)製ポリエチレン(商品名)ニポロン-P FY13(MFR=1.0g/10分、密度=950kg/m3)を使用した。各層の厚みは、外層および内層が20μm、中間層が210μmとなるように成形した。次いで、前記三層フィルムから長さ195mmのサンプルを切出し、一方の端をヒートシールして袋状にした後、超純水を300ml充填し、ヘッドスペースを50ml設けてヒートシールして医療容器を作製した。
【0062】
<滅菌処理>
前記医療容器を、蒸気滅菌装置((株)日阪製作所製)を用いて、温度121℃で20分間滅菌処理を行なった。
【0063】
実施例、比較例に用いた樹脂組成物および積層体、医療容器の諸性質は下記の方法により評価した。
【0064】
<押出特性>
三層水冷インフレーション成形機による成膜時の中間層の押出機の樹脂圧力が20MPa以下である場合に、押出特性が良好な樹脂組成物と評価した。
【0065】
○:押出特性良好(樹脂圧力が20MPa以下)
×:押出特性不良(樹脂圧力が20MPaを超える)
<成形安定性>
三層水冷インフレーション成形機による、成膜時のフィルム(バブル)の安定性を目視により観察、評価した。
【0066】
○:バブル安定性良好
×:バブル変動大
<透明性>
前記三層フィルムおよび滅菌処理後の医療容器から、幅10mm×長さ50mmの試験片を切出し、紫外可視分光光度計(型式220A、日立製作所製)を用いて、純水中で波長450nmにおける光線透過率を測定した。滅菌処理後に70%以上の光線透過率が維持される場合を透明性が良好な医療容器の目安とした。
【0067】
<耐熱性>
滅菌処理後のフィルム表面のシワ、変形および内層間の融着等を目視により評価し、シワ、変形が見られない場合を3点、若干のシワ、変形が見られる場合を2点、顕著なシワ、変形が見られる場合を1点とした。
【0068】
実施例1
表4に示す樹脂組成物を用いて、水冷インフレーション成形機により三層フィルムを成形し、成形安定性およびフィルムの表面平滑性、透明性を評価した。尚、フィルムの厚みは250μmとした。次いで、得られたフィルムをヒートシールし、超純水を充填した医療容器を作製して、121℃で高圧蒸気滅菌を行い、滅菌後のフィルム外観、透明性、柔軟性、透湿度およびクリーン性を評価した。評価結果を表4に示す。
【0069】
実施例2~7、比較例1~10
中間層に用いる樹脂組成物を表4および表5に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして三層フィルムおよび医療容器を作製し、評価を行った。評価結果を表4および表5に示す。
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】