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特許7310513積層体及びその製造方法、並びに光学フィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】積層体及びその製造方法、並びに光学フィルム
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20230711BHJP
【FI】
G02B5/30
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019180838
(22)【出願日】2019-09-30
(65)【公開番号】P2021056419
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-04-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中野 航
【審査官】中村 説志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/003416(WO,A1)
【文献】特開2016-184013(JP,A)
【文献】国際公開第2015/166991(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/064581(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/180649(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0057586(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0154157(US,A1)
【文献】国際公開第2016/158298(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1液晶組成物の硬化物からなる第1異方性層及び第2液晶組成物の硬化物からなる第2異方性層を含む積層体であって、
前記第1液晶組成物は、逆波長分散性の複屈折を発現できる第1重合性液晶化合物を含み、
前記第2液晶組成物は、逆波長分散性の複屈折を発現できる第2重合性液晶化合物を含み、
前記第1異方性層の遅相軸と、前記第2異方性層の遅相軸と、が直交し、
前記第1液晶組成物および前記第2液晶組成物のうち、少なくとも一方が架橋剤を含み
前記第1重合性液晶化合物及び前記第2重合性液晶化合物のうち、少なくとも一方が、下記式(I)で表される化合物である、積層体。
【化1】
(上記式(I)において、
Arは、下記式(II-1)~式(II-4)のいずれかで表される基を表す。
【化2】
(上記式(II-1)~式(II-4)において、E 及びE は、それぞれ独立して、-CR 11 12 -、-S-、-NR 11 -、-CO-及び-O-からなる群より選ばれる基を表す。R 11 及びR 12 は、それぞれ独立して、水素原子、又は、炭素原子数1~4のアルキル基を表す。D ~D は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい非環状基を表すか、又はD 及びD は、一緒になって環を形成する。D は、-C(R )=N-N(R )R 、-C(R )=N-N=C(R )R 、及び、-C(R )=N-N=R からなる群より選ばれる基を表す。R は、水素原子;並びに、メチル基、エチル基、プロピル基、及びイソプロピル基等の、炭素原子数1~6のアルキル基;からなる群より選ばれる基を表す。R は、水素原子;並びに、置換基を有していてもよい炭素原子数1~30の有機基;からなる群より選ばれる基を表す。R は、炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環及び炭素原子数2~30の芳香族複素環からなる群より選ばれる1以上の芳香環を有する、有機基を表す。R は、炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環及び炭素原子数2~30の芳香族複素環からなる群より選ばれる1以上の芳香環を有する、有機基を表す。)
及びZ は、それぞれ独立して、単結合、-O-、-O-CH -、-CH -O-、-O-CH -CH -、-CH -CH -O-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-C(=O)-S-、-S-C(=O)-、-NR 21 -C(=O)-、-C(=O)-NR 21 -、-CF -O-、-O-CF -、-CH -CH -、-CF -CF -、-O-CH -CH -O-、-CH=CH-C(=O)-O-、-O-C(=O)-CH=CH-、-CH -C(=O)-O-、-O-C(=O)-CH -、-CH -O-C(=O)-、-C(=O)-O-CH -、-CH -CH -C(=O)-O-、-O-C(=O)-CH -CH -、-CH -CH -O-C(=O)-、-C(=O)-O-CH -CH -、-CH=CH-、-N=CH-、-CH=N-、-N=C(CH )-、-C(CH )=N-、-N=N-、及び、-C≡C-、からなる群より選ばれるいずれかを表す。R 21 は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基を表す。
、A 、B 及びB は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい環状脂肪族基、及び、置換基を有していてもよい芳香族基、からなる群より選ばれる基を表す。
~Y は、それぞれ独立して、単結合、-O-、-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-NR 22 -C(=O)-、-C(=O)-NR 22 -、-O-C(=O)-O-、-NR 22 -C(=O)-O-、-O-C(=O)-NR 22 -、及び、-NR 22 -C(=O)-NR 23 -、からなる群より選ばれるいずれかを表す。R 22 及びR 23 は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基を表す。
及びG は、それぞれ独立して、炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基;並びに、炭素原子数3~20の脂肪族炭化水素基に含まれるメチレン基(-CH -)の1以上が-O-又は-C(=O)-に置換された基;からなる群より選ばれる有機基を表す。G 及びG の前記有機基に含まれる水素原子は、炭素原子数1~5のアルキル基、炭素原子数1~5のアルコキシ基、または、ハロゲン原子に置換されていてもよい。ただし、G 及びG の両末端のメチレン基(-CH -)が-O-又は-C(=O)-に置換されることはない。
及びP は、それぞれ独立して、重合性基を表す。
p及びqは、それぞれ独立して、0又は1を表す。)
【請求項2】
前記第2異方性層の面内方向のレターデーションRe2に対する、前記第1異方性層の面内方向のレターデーションRe1の比が、下記式(1)を満たす、請求項1に記載の積層体。
0<Re1/Re2≦0.46 (1)
【請求項3】
前記第1異方性層の面内方向のレターデーションRe1が下記式(2)を満たす請求項1または2に記載の積層体。
0<Re1≦118nm (2)
【請求項4】
前記第1異方性層の厚みが1.0μm以上、2.7μm以下であり、前記第2異方性層の厚みが4.0μm以上、5.9μm以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項5】
前記第1重合性液晶化合物及び前記第2重合性液晶化合物のうち、少なくとも一方が、当該重合性液晶化合物の分子中に、主鎖メソゲンと、前記主鎖メソゲンに結合した側鎖メソゲンとを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項6】
Arが、下記式(III-2)で表される基である、請求項1~5のいずれか一項に記載の積層体。
【化3】
(上記式(III-2)において、Rは、水素原子ならびに炭素原子数1~6のアルキル基から選ばれる基を表す。Rは、水素原子、並びに、置換基を有していてもよい炭素原子数1~30の有機基からなる群より選ばれる基を表す。Rは、炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環及び炭素原子数2~30の芳香族複素環からなる群より選ばれる1以上の芳香環を有する、有機基を表す。
【請求項7】
前記第1重合性液晶化合物と、前記第2重合性液晶化合物とが同じ化合物である、請求項1~6のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の積層体の製造方法であって、
前記積層体は、第1液晶組成物の硬化物からなる第1異方性層、及び第2液晶組成物の硬化物からなる第2異方性層を含み、
前記第1液晶組成物は、逆波長分散性の複屈折を発現できる第1重合性液晶化合物を含み、
前記第2液晶組成物は、逆波長分散性の複屈折を発現できる第2重合性液晶化合物を含み、
前記製造方法は、
前記第1異方性層及び前記第2異方性層から選ばれる異方性層を製造する工程Aと、
前記第1異方性層と、前記第2異方性層とを、前記第1異方性層の遅相軸と、前記第2異方性層の遅相軸とが直交するように貼合する工程Bとを含み、
前記工程Aが、
支持面に、液晶組成物の層を形成する工程A1と、
前記液晶組成物の層に含まれる重合性液晶化合物を配向させる工程A2と、
前記液晶組成物の層を硬化させる工程A3と、を含む、積層体の製造方法。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか一項に記載の積層体を備える、光学フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体及びその製造方法、並びに光学フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
光学フィルムの一つとして、液晶化合物を用いて製造される光学フィルムが知られている。このような光学フィルムは、一般に、配向した液晶化合物を含む液晶組成物の硬化物で形成される。このような光学フィルムとして、例えば、特許文献1に記載のものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-3177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の光学フィルムは、長時間光の照射を受けた場合や、高温環境下におかれた場合に、面内レターデーションが変化することがあった。このような面内レターデーションの変化は、光学フィルムが設けられた画像表示装置等の装置における表示品質の低下の原因となりうる。そこで、光学フィルムの耐光性および耐熱性を改善することが望まれる。
【0005】
本発明は、前記の課題に鑑みて創案されたもので、耐光性及び耐熱性の両方に優れる積層体及びその製造方法、ならびに、前記積層体を備える光学フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するべく鋭意検討した。その結果、本発明者は、逆波長分散性の複屈折を発現できる重合性液晶化合物を含む組成物の硬化物からなる第1異方性層及び、逆波長分散性の複屈折を発現できる重合性液晶化合物を含む液晶組成物の硬化物からなる第2異方性層を、第1異方性層の遅相軸と、第2異方性層の遅相軸と、が直交するように積層した積層体では、耐光性及び耐熱性の両方に優れることを見い出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下のものを含む。
【0007】
〔1〕第1液晶組成物の硬化物からなる第1異方性層及び第2液晶組成物の硬化物からなる第2異方性層を含む積層体であって、
前記第1液晶組成物は、逆波長分散性の複屈折を発現できる第1重合性液晶化合物を含み、
前記第2液晶組成物は、逆波長分散性の複屈折を発現できる第2重合性液晶化合物を含み、
前記第1異方性層の遅相軸と、前記第2異方性層の遅相軸と、が直交する、積層体。
〔2〕前記第2異方性層の面内方向のレターデーションRe2に対する、前記第1異方性層の面内方向のレターデーションRe1の比が、下記式(1)を満たす、〔1〕に記載の積層体。
0<Re1/Re2≦0.46 (1)
〔3〕前記第1異方性層の面内方向のレターデーションRe1が下記式(2)を満たす〔1〕または〔2〕に記載の積層体。
0<Re1≦118nm (2)
〔4〕前記第1液晶組成物および前記第2液晶組成物のうち、少なくとも一方が架橋剤を含む、〔1〕~〔3〕のいずれか一項に記載の積層体。
〔5〕前記第1重合性液晶化合物及び前記第2重合性液晶化合物のうち、少なくとも一方が、当該重合性液晶化合物の分子中に、主鎖メソゲンと、前記主鎖メソゲンに結合した側鎖メソゲンとを含む、〔1〕~〔4〕のいずれか一項に記載の積層体。
〔6〕 前記第1重合性液晶化合物及び前記第2重合性液晶化合物のうち、少なくとも一方が、下記式(I)で表される化合物である、〔1〕~〔5〕のいずれか一項に記載の積層体。
【化1】
(上記式(I)において、
Arは、下記式(III-2)で表される基を表す。
【0008】
【化2】
【0009】
(式(III-2)において、Rは、水素原子ならびに炭素原子数1~6のアルキル基から選ばれる基を表す。Rは、水素原子、並びに、置換基を有していてもよい炭素原子数1~30の有機基からなる群より選ばれる基を表す。Rは、炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環及び炭素原子数2~30の芳香族複素環からなる群より選ばれる1以上の芳香環を有する、有機基を表す。)
及びZは、それぞれ独立して、単結合、-O-、-O-CH-、-CH-O-、-O-CH-CH-、-CH-CH-O-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-C(=O)-S-、-S-C(=O)-、-NR21-C(=O)-、-C(=O)-NR21-、-CF-O-、-O-CF-、-CH-CH-、-CF-CF-、-O-CH-CH-O-、-CH=CH-C(=O)-O-、-O-C(=O)-CH=CH-、-CH-C(=O)-O-、-O-C(=O)-CH-、-CH-O-C(=O)-、-C(=O)-O-CH-、-CH-CH-C(=O)-O-、-O-C(=O)-CH-CH-、-CH-CH-O-C(=O)-、-C(=O)-O-CH-CH-、-CH=CH-、-N=CH-、-CH=N-、-N=C(CH)-、-C(CH)=N-、-N=N-、及び、-C≡C-、からなる群より選ばれるいずれかを表す。R21は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基を表す。
、A、B及びBは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい環状脂肪族基、及び、置換基を有していてもよい芳香族基、からなる群より選ばれる基を表す。
~Yは、それぞれ独立して、単結合、-O-、-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-NR22-C(=O)-、-C(=O)-NR22-、-O-C(=O)-O-、-NR22-C(=O)-O-、-O-C(=O)-NR22-、及び、-NR22-C(=O)-NR23-、からなる群より選ばれるいずれかを表す。R22及びR23は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基を表す。
及びGは、それぞれ独立して、炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基;並びに、炭素原子数3~20の脂肪族炭化水素基に含まれるメチレン基(-CH-)の1以上が-O-又は-C(=O)-に置換された基;からなる群より選ばれる有機基を表す。G及びGの前記有機基に含まれる水素原子は、炭素原子数1~5のアルキル基、炭素原子数1~5のアルコキシ基、または、ハロゲン原子に置換されていてもよい。ただし、G及びGの両末端のメチレン基(-CH-)が-O-又は-C(=O)-に置換されることはない。
及びPは、それぞれ独立して、重合性基を表す。
p及びqは、それぞれ独立して、0又は1を表す。)
〔7〕前記第1重合性液晶化合物と、前記第2重合性液晶化合物とが同じ化合物である、〔1〕~〔6〕のいずれか一項に記載の積層体。
〔8〕〔1〕~〔7〕のいずれか一項に記載の積層体の製造方法であって、
前記積層体は、第1液晶組成物の硬化物からなる第1異方性層、及び第2液晶組成物の硬化物からなる第2異方性層を含み、
前記第1液晶組成物は、逆波長分散性の複屈折を発現できる第1重合性液晶化合物を含み、
前記第2液晶組成物は、逆波長分散性の複屈折を発現できる第2重合性液晶化合物を含み、
前記製造方法は、
前記第1異方性層及び前記第2異方性層から選ばれる異方性層を製造する工程Aと、
前記第1異方性層と、前記第2異方性層とを、前記第1異方性層の遅相軸と、前記第2異方性層の遅相軸とが直交するように貼合する工程Bとを含み、
前記工程Aが、
支持面に、液晶組成物の層を形成する工程A1と、
前記液晶組成物の層に含まれる重合性液晶化合物を配向させる工程A2と、
前記液晶組成物の層を硬化させる工程A3と、を含む、積層体の製造方法。
〔9〕 〔1〕~〔7〕のいずれか一項に記載の積層体を備える、光学フィルム。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、耐光性及び耐熱性の両方に優れる積層体及びその製造方法、ならびに、前記の積層体を備える光学フィルムを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について実施形態及び例示物を示して詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施形態及び例示物に限定されるものでは無く、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
【0012】
以下の説明において、複屈折の逆波長分散性とは、別に断らない限り、波長450nmにおける複屈折Δn(450)及び波長550nmにおける複屈折Δn(550)が、下記式(N1)を満たすことをいう。このような逆波長分散性の複屈折を発現できる液晶化合物は、通常、測定波長が長いほど、大きい複屈折を発現できる。
Δn(450)<Δn(550) (N1)
【0013】
以下の説明において、複屈折の順波長分散性とは、別に断らない限り、波長450nmにおける複屈折Δn(450)及び波長550nmにおける複屈折Δn(550)が、下記式(N2)を満たす複屈折をいう。このような順波長分散性の複屈折を発現できる液晶化合物は、通常、測定波長が長いほど、小さい複屈折を発現できる。
Δn(450)>Δn(550) (N2)
【0014】
以下の説明において、あるフィルムまたは層の面内レターデーションReは、別に断らない限り、Re=(nx-ny)×dで表される値である。ここで、nxは、フィルムの厚み方向に垂直な方向(面内方向)であって最大の屈折率を与える方向の屈折率を表す。nyは、フィルムの前記面内方向であってnxの方向に直交する方向の屈折率を表す。dは、フィルムの厚みを表す。レターデーションの測定波長は、別に断らない限り、590nmである。面内レターデーションReは、位相差計(Axometrics社製「AxoScan」)を用いて測定できる。
【0015】
以下の説明において、固有複屈折値が正の樹脂とは、別に断らない限り、延伸方向の屈折率がそれに直交する方向の屈折率よりも大きくなる樹脂を意味する。また、固有複屈折値が負の樹脂とは、別に断らない限り、延伸方向の屈折率がそれに直交する方向の屈折率よりも小さくなる樹脂を意味する。固有複屈折値は、誘電率分布から計算しうる。
【0016】
以下の説明において、ある層の遅相軸とは、別に断らない限り、面内方向の遅相軸をいう。
【0017】
以下の説明において、置換基を有する基の炭素原子数には、別に断らない限り、前記置換基の炭素原子数を含めない。よって、例えば「置換基を有していてもよい炭素原子数1~20のアルキル基」との記載は、置換基の炭素原子数を含まないアルキル基自体の炭素原子数が1~20であることを表す。
【0018】
以下の説明において、「紫外線」とは、別に断らない限り、波長が1nm以上400nm以下である光を意味する。
【0019】
以下の説明において、別に断らない限り、用語「(メタ)アクリロイル」とは、メタクリロイル、アクリロイル及びそれらの組み合わせを包含し、用語「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレート、アクリレート及びそれらの組み合わせを包含する。
【0020】
[1.積層体]
本発明の積層体は、第1液晶組成物の硬化物からなる第1異方性層及び第2液晶組成物の硬化物からなる第2異方性層を含む。第1液晶組成物は、逆波長分散性の複屈折を発現できる第1重合性液晶化合物を含み、第2液晶組成物は、逆波長分散性の複屈折を発現できる第2重合性液晶化合物を含む。
【0021】
[液晶組成物]
第1液晶組成物は、逆波長分散性の複屈折を発現できる第1重合性液晶化合物を含む組成物である。第2液晶組成物は、逆波長分散性の複屈折を発現できる第2重合性液晶化合物を含む組成物である。以下の説明において、第1液晶組成物と第2液晶組成物とを区別して説明するときは、それぞれ「第1液晶組成物」、「第2液晶組成物」と記載し、第1液晶組成物と第2液晶組成物とにおいて共通の事項を説明するときは、「液晶組成物」と記載する。また、第1重合性液晶化合物と第2重合性液晶化合物とを区別して説明するときは、それぞれ「第1重合性液晶化合物」、「第2重合性液晶化合物」と記載し、第1重合性液晶化合物と第2重合性液晶化合物とにおいて共通の事項を説明するときは、「重合性液晶化合物」と記載する。また、第1異方性層と第2異方性層とを区別して説明するときは、それぞれ、「第1異方性層」、「第2異方性層」と記載し、第1異方性層と第2異方性層とにおいて共通する事項を説明するときは、「異方性層」と記載する。
【0022】
液晶組成物は、2種類以上の成分を含む材料だけでなく、1種類の重合性液晶化合物のみを含む材料を包含する。
【0023】
[重合性液晶化合物]
重合性液晶化合物は、液晶性を有するので、通常、当該重合性液晶化合物を配向させた場合に、液晶相を呈することができる。
【0024】
また、重合性液晶化合物は、重合性を有するので、液晶相を呈した状態で重合し、液晶相における分子の屈折率楕円体において最大の屈折率を示す方向を変化させないように重合体となることができる。よって、異方性層において、重合性液晶化合物の配向状態を固定したり、重合性液晶化合物の重合度を高めて異方性層の機械的強度を高めたりすることが可能である。このように重合性を有する重合性液晶化合物の分子は、通常、アクリロイル基、メタクリロイル基、及びエポキシ基等の重合性基を含む。重合性液晶化合物の分子1つ当たりの重合性基の数は、1個でもよいが、2個以上が好ましい。
【0025】
重合性液晶化合物の分子量は、好ましくは300以上、より好ましくは500以上、特に好ましくは800以上であり、好ましくは2000以下、より好ましくは1700以下、特に好ましくは1500以下である。このような範囲の分子量を有する重合性液晶化合物を用いる場合に、液晶組成物の塗工性を特に良好にできる。
【0026】
本発明においては、重合性液晶化合物として、逆波長分散性の複屈折を発現できる重合性液晶化合物を用いる。重合性液晶化合物としては、逆波長分散性の複屈折を発現できる重合性液晶化合物とともに、順波長分散液晶化合物を用いてもよい。以下において、逆波長分散性の複屈折を発現できる重合性液晶化合物を「逆分散液晶化合物」ともいう。
【0027】
逆分散液晶化合物とは、当該液晶化合物の層を形成し、その層において液晶化合物を配向させた際に、逆波長分散性の複屈折を発現する液晶化合物をいう。
【0028】
順分散液晶化合物とは、順波長分散性の複屈折を発現できる液晶化合物である。また、順波長分散性の複屈折を発現できる液晶化合物とは、当該液晶化合物の層を形成し、その層において液晶化合物を配向させた際に、順波長分散性の複屈折を発現する液晶化合物をいう。
【0029】
通常は、液晶化合物をホモジニアス配向させた場合に、液晶化合物の層が示す複屈折の波長分散性を調べることで、その液晶化合物が示す複屈折の波長分散性を確認できる。液晶化合物をホモジニアス配向させる、とは、当該液晶化合物を含む層を形成し、その層における液晶化合物の分子の屈折率楕円体において最大の屈折率の方向を、前記層の面に平行なある一の方向に配向させることをいう。また、前記の層の複屈折は、「(層の面内レターデーション)÷(層の厚み)」から求められる。
【0030】
逆分散液晶化合物は、通常、測定波長が長いほど、大きい複屈折を発現できる。よって、広い波長範囲において、レターデーションを設計の理想値に近くできる。そのため、重合性液晶化合物として逆分散液晶化合物を用いると、レターデーションの理想値からのずれを少なくできる。
【0031】
測定波長590nmにおける重合性液晶化合物の複屈折Δnは、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.03以上であり、好ましくは0.15以下、より好ましくは0.10以下である。このような範囲の複屈折Δnを有する重合性液晶化合物を用いる場合に、配向欠陥の少ない異方性層を得やすい。
【0032】
液晶化合物の複屈折は、例えば、下記の方法により測定できる。
液晶化合物の層を作製し、その層に含まれる液晶化合物をホモジニアス配向させる。その後、その層の面内レターデーションを測定する。そして、「(層の面内レターデーション)÷(層の厚み)」から、液晶化合物の複屈折を求めることができる。この際、面内レターデーション及び厚みの測定を容易にするために、ホモジニアス配向させた液晶化合物の層は、硬化させてもよい。
【0033】
重合性液晶化合物は、芳香環構造を有する側鎖を有することが好ましい。芳香環構造を有する側鎖を構造に導入することによって、複屈折特性の設計が容易になり、重合性液晶化合物に高い複屈折を与えることができる。それによって位相差フィルムを薄くすることができ、硬化ムラなどによるレターデーション変化量の増加を抑えることができる。
【0034】
重合性液晶化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0035】
重合性液晶化合物の好適な例としては、下記式(I)で表される液晶化合物が挙げられる。式(I)で表される液晶化合物は、通常、逆波長分散性の複屈折を発現できる。第1重合性液晶化合物及び第2重合性液晶化合物のうち、少なくとも一方が式(I)で表される化合物であるのが好ましい。
【0036】
【化3】
【0037】
上記式(I)において、Arは、芳香族複素環、複素環、および芳香族炭化水素環の少なくとも1つを有し、置換されていてもよい、炭素原子数6~67の2価の有機基を表す。芳香族複素環としては、例えば、1H-イソインドール-1,3(2H)-ジオン環、1-ベンゾフラン環、2-ベンゾフラン環、アクリジン環、イソキノリン環、イミダゾール環、インドール環、オキサジアゾール環、オキサゾール環、オキサゾロピラジン環、オキサゾロピリジン環、オキサゾロピリダジル環、オキサゾロピリミジン環、キナゾリン環、キノキサリン環、キノリン環、シンノリン環、チアジアゾール環、チアゾール環、チアゾロピラジン環、チアゾロピリジン環、チアゾロピリダジン環、チアゾロピリミジン環、チオフェン環、トリアジン環、トリアゾール環、ナフチリジン環、ピラジン環、ピラゾール環、ピラノン環、ピラン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピロール環、フェナントリジン環、フタラジン環、フラン環、ベンゾ[c]チオフェン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾオキサジアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアジアゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾチオフェン環、ベンゾトリアジン環、ベンゾトリアゾール環、ベンゾピラゾール環、ベンゾピラノン環等が挙げられる。複素環としては、例えば、1,3-ジチオラン環、ピロリジン、ピペラジン等が挙げられる。芳香族炭化水素環としては、例えば、フェニル環、ナフタレン環等が挙げられる。
【0038】
Arの好ましい例としては、例えば、下記式(II-1)~式(II-4)のいずれかで表される基が挙げられる。式(II-1)~式(II-4)において、*は、Z又はZとの結合位置を表す。また、Arは、ベンゾチアゾール環を有することが好ましい。
【0039】
【化4】
【0040】
前記の式(II-1)~式(II-4)において、E及びEは、それぞれ独立して、-CR1112-、-S-、-NR11-、-CO-及び-O-からなる群より選ばれる基を表す。また、R11及びR12は、それぞれ独立して、水素原子、又は、炭素原子数1~4のアルキル基を表す。中でも、E及びEは、それぞれ独立して、-S-であることが好ましい。
【0041】
前記の式(II-1)~式(II-4)において、D~Dは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい非環状基を表す。D及びDは、一緒になって環を形成していてもよい。D~Dが表す基の炭素原子数(置換基の炭素原子数を含む。)は、それぞれ独立して、通常、1~100である。
【0042】
~Dにおける非環状基の炭素原子数は、1~13が好ましい。D~Dにおける非環状基としては、例えば、炭素原子数1~6のアルキル基;シアノ基;カルボキシル基;炭素原子数1~6のフルオロアルキル基;炭素原子数1~6のアルコキシ基;-C(=O)-CH;-C(=O)NHPh;-C(=O)-OR;が挙げられる。中でも、非環状基としては、シアノ基、カルボキシル基、-C(=O)-CH、-C(=O)NHPh、-C(=O)-OC、-C(=O)-OC、-C(=O)-OCH(CH、-C(=O)-OCHCHCH(CH)-OCH、-C(=O)-OCHCHC(CH-OH、及び-C(=O)-OCHCH(CHCH)-C、が好ましい。前記のPhは、フェニル基を表す。また、前記のRは、炭素原子数1~12の有機基を表す。Rの具体例としては、炭素原子数1~12のアルコキシ基、または、水酸基で置換されていてもよい炭素原子数1~12のアルキル基が挙げられる。
【0043】
~Dにおける非環状基が有しうる置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子等の、ハロゲン原子;シアノ基;メチル基、エチル基、プロピル基等の、炭素原子数1~6のアルキル基;ビニル基、アリル基等の、炭素原子数2~6のアルケニル基;トリフルオロメチル基等の、炭素原子数1~6のハロゲン化アルキル基;ジメチルアミノ基等の、炭素原子数1~12のN,N-ジアルキルアミノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の、炭素原子数1~6のアルコキシ基;ニトロ基;-OCF;-C(=O)-R;-O-C(=O)-R;-C(=O)-O-R;-SO;等が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0044】
は、炭素原子数1~6のアルキル基;並びに、炭素原子数1~6のアルキル基若しくは炭素原子数1~6のアルコキシ基を置換基として有していてもよい、炭素原子数6~20の芳香族炭化水素環基;からなる群より選ばれる基を表す。
【0045】
は、置換基を有していてもよい炭素原子数1~20のアルキル基;置換基を有していてもよい炭素原子数2~20のアルケニル基;置換基を有していてもよい炭素原子数3~12のシクロアルキル基;及び、置換基を有していてもよい炭素原子数6~12の芳香族炭化水素環基;からなる群より選ばれる基を表す。
【0046】
における炭素原子数1~20のアルキル基の炭素原子数は、好ましくは1~12、より好ましくは4~10である。Rにおける炭素原子数1~20のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、1-メチルペンチル基、1-エチルペンチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-へキシル基、イソヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基、およびn-イコシル基等が挙げられる。
【0047】
における炭素原子数1~20のアルキル基が有しうる置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子等の、ハロゲン原子;シアノ基;ジメチルアミノ基等の、炭素原子数2~12のN,N-ジアルキルアミノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等の、炭素原子数1~20のアルコキシ基;メトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基等の、炭素原子数1~12のアルコキシ基で置換された炭素原子数1~12のアルコキシ基;ニトロ基;フェニル基、ナフチル基等の、炭素原子数6~20の芳香族炭化水素環基;トリアゾリル基、ピロリル基、フラニル基、チエニル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾール-2-イルチオ基等の、炭素原子数2~20の芳香族複素環基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の、炭素原子数3~8のシクロアルキル基;シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等の、炭素原子数3~8のシクロアルキルオキシ基;テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基、ジオキソラニル基、ジオキサニル基等の、炭素原子数2~12の環状エーテル基;フェノキシ基、ナフトキシ基等の、炭素原子数6~14のアリールオキシ基;トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、-CHCF等の、1個以上の水素原子がフッ素原子で置換された炭素原子数1~12のフルオロアルキル基;ベンゾフリル基;ベンゾピラニル基;ベンゾジオキソリル基;及び、ベンゾジオキサニル基;等が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0048】
における炭素原子数2~20のアルケニル基の炭素原子数は、好ましくは2~12である。Rにおける炭素原子数2~20のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、およびイコセニル基等が挙げられる。
【0049】
における炭素原子数2~20のアルケニル基が有しうる置換基としては、例えば、Rにおける炭素原子数1~20のアルキル基が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0050】
における炭素原子数3~12のシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、及びシクロオクチル基等が挙げられる。中でも、シクロアルキル基としては、シクロペンチル基、及びシクロヘキシル基が好ましい。
【0051】
における炭素原子数3~12のシクロアルキル基が有しうる置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子等の、ハロゲン原子;シアノ基;ジメチルアミノ基等の、炭素原子数2~12のN,N-ジアルキルアミノ基;メチル基、エチル基、プロピル基等の、炭素原子数1~6のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の、炭素原子数1~6のアルコキシ基;ニトロ基;および、フェニル基、ナフチル基等の、炭素原子数6~20の芳香族炭化水素環基;等が挙げられる。中でも、シクロアルキル基の置換基としては、フッ素原子、塩素原子等の、ハロゲン原子;シアノ基;メチル基、エチル基、プロピル基等の、炭素原子数1~6のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の、炭素原子数1~6のアルコキシ基;ニトロ基;および、フェニル基、ナフチル基等の、炭素原子数6~20の芳香族炭化水素環基;が好ましい。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0052】
における炭素原子数6~12の芳香族炭化水素環基としては、例えば、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基等が挙げられる。中でも、芳香族炭化水素環基としては、フェニル基が好ましい。
【0053】
における炭素原子数6~12の芳香族炭化水素環基が有しうる置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子等の、ハロゲン原子;シアノ基;ジメチルアミノ基等の、炭素原子数2~12のN,N-ジアルキルアミノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等の、炭素原子数1~20のアルコキシ基;メトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基等の、炭素原子数1~12のアルコキシ基で置換された炭素原子数1~12のアルコキシ基;ニトロ基;トリアゾリル基、ピロリル基、フラニル基、チオフェニル基等の、炭素原子数2~20の芳香族複素環基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の、炭素原子数3~8のシクロアルキル基;シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等の、炭素原子数3~8のシクロアルキルオキシ基;テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基、ジオキソラニル基、ジオキサニル基等の、炭素原子数2~12の環状エーテル基;フェノキシ基、ナフトキシ基等の、炭素原子数6~14のアリールオキシ基;トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、-CHCF等の、1個以上の水素原子がフッ素原子で置換された炭素原子数1~12のフルオロアルキル基;-OCF;ベンゾフリル基;ベンゾピラニル基;ベンゾジオキソリル基;ベンゾジオキサニル基;等が挙げられる。中でも、芳香族炭化水素環基の置換基としては、フッ素原子、塩素原子等の、ハロゲン原子;シアノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等の、炭素原子数1~20のアルコキシ基;ニトロ基;フラニル基、チオフェニル基等の、炭素原子数2~20の芳香族複素環基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の、炭素原子数3~8のシクロアルキル基;トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、-CHCF等の、1個以上の水素原子がフッ素原子で置換された炭素原子数1~12のフルオロアルキル基;-OCF;が好ましい。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0054】
及びDが一緒になって環を形成している場合、前記のD及びDによって環を含む有機基が形成される。この有機基としては、例えば、下記式で表される基が挙げられる。下記式において、*は、各有機基が、D及びDが結合する炭素と結合する位置を表す。
【0055】
【化5】
【0056】
は、炭素原子数1~3のアルキル基を表す。
**は、炭素原子数1~3のアルキル基、及び、置換基を有していてもよいフェニル基からなる群より選ばれる基を表す。
***は、炭素原子数1~3のアルキル基、及び、置換基を有していてもよいフェニル基からなる群より選ばれる基を表す。
****は、水素原子、炭素原子数1~3のアルキル基、水酸基、及び、-COOR13からなる群より選ばれる基を表す。R13は、炭素原子数1~3のアルキル基を表す。
フェニル基が有しうる置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、シアノ基及びアミノ基が挙げられる。中でも、置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、シアノ基及びアルコキシ基が好ましい。フェニル基が有する置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0057】
前記の式(II-1)~式(II-4)において、Dは、-C(R)=N-N(R)R、-C(R)=N-N=C(R)R、及び、-C(R)=N-N=Rからなる群より選ばれる基を表す。Dが表す基の炭素原子数(置換基の炭素原子数を含む。)は、通常、3~100である。
【0058】
は、水素原子;並びに、メチル基、エチル基、プロピル基、及びイソプロピル基等の、炭素原子数1~6のアルキル基;からなる群より選ばれる基を表す。
【0059】
は、水素原子;並びに、置換基を有していてもよい炭素原子数1~30の有機基;からなる群より選ばれる基を表す。
【0060】
における置換基を有していてもよい炭素原子数1~30の有機基としては、例えば、置換基を有していてもよい炭素原子数1~20のアルキル基;炭素原子数1~20のアルキル基に含まれる-CH-の少なくとも一つが、-O-、-S-、-O-C(=O)-、-C(=O)-O-、又は、-C(=O)-に置換された基(ただし、-O-または-S-がそれぞれ2以上隣接して介在する場合を除く);置換基を有していてもよい炭素原子数2~20のアルケニル基;置換基を有していてもよい炭素原子数2~20のアルキニル基;置換基を有していてもよい炭素原子数3~12のシクロアルキル基;置換基を有していてもよい炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環基;置換基を有していてもよい炭素原子数2~30の芳香族複素環基;-G-Y-F;-SO;-C(=O)-R;-CS-NH-R;が挙げられる。R及びRの意味は、上述した通りである。
【0061】
における炭素原子数1~20のアルキル基の好ましい炭素原子数の範囲及び例示物は、Rにおける炭素原子数1~20のアルキル基と同じである。
【0062】
Rgにおける炭素原子数1~20のアルキル基が有しうる置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子等の、ハロゲン原子;シアノ基;ジメチルアミノ基等の、炭素原子数2~12のN,N-ジアルキルアミノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等の、炭素原子数1~20のアルコキシ基;メトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基等の、炭素原子数1~12のアルコキシ基で置換された炭素原子数1~12のアルコキシ基;ニトロ基;フェニル基、ナフチル基等の、炭素原子数6~20の芳香族炭化水素環基;トリアゾリル基、ピロリル基、フラニル基、チオフェニル基等の、炭素原子数2~20の芳香族複素環基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の、炭素原子数3~8のシクロアルキル基;シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等の、炭素原子数3~8のシクロアルキルオキシ基;テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基、ジオキソラニル基、ジオキサニル基等の、炭素原子数2~12の環状エーテル基;フェノキシ基、ナフトキシ基等の、炭素原子数6~14のアリールオキシ基;1個以上の水素原子がフッ素原子で置換された炭素原子数1~12のフルオロアキル基;ベンゾフリル基;ベンゾピラニル基;ベンゾジオキソリル基;ベンゾジオキサニル基;-SO2Ra;-SRb;-SRbで置換された炭素原子数1~12のアルコキシ基;水酸基;等が挙げられる。Ra及びRbの意味は、上述した通りである。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0063】
における炭素原子数2~20のアルケニル基の好ましい炭素原子数の範囲及び例示物は、Rにおける炭素原子数2~20のアルケニル基と同じである。
【0064】
における炭素原子数2~20のアルケニル基が有しうる置換基としては、例えば、Rにおける炭素原子数1~20のアルキル基が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0065】
における炭素原子数2~20のアルキニル基としては、例えば、エチニル基、プロピニル基、2-プロピニル基(プロパルギル基)、ブチニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、ペンチニル基、2-ペンチニル基、ヘキシニル基、5-ヘキシニル基、ヘプチニル基、オクチニル基、2-オクチニル基、ノナニル基、デカニル基、7-デカニル基等が挙げられる。
【0066】
における炭素原子数2~20のアルキニル基が有しうる置換基としては、例えば、Rにおける炭素原子数1~20のアルキル基が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0067】
における炭素原子数3~12のシクロアルキル基としては、例えば、Rにおける炭素原子数3~12のシクロアルキル基と同じ例が挙げられる。
【0068】
における炭素原子数3~12のシクロアルキル基が有しうる置換基としては、例えば、Rにおける炭素原子数1~20のアルキル基が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0069】
における炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環基としては、例えば、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。中でも、芳香族炭化水素環基としては、フェニル基がより好ましい。
【0070】
における炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環基が有しうる置換基としては、例えば、D~Dにおける非環状基が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0071】
における炭素原子数2~30の芳香族複素環基としては、例えば、1-ベンゾフラニル基、2-ベンゾフラニル基、イミダゾリル基、インドリニル基、フラザニル基、オキサゾリル基、キノリル基、チアジアゾリル基、チアゾリル基、チアゾロピラジニル基、チアゾロピリジル基、チアゾロピリダジニル基、チアゾロピリミジニル基、チエニル基、トリアジニル基、トリアゾリル基、ナフチリジニル基、ピラジニル基、ピラゾリル基、ピラニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピロリル基、フタラジニル基、フラニル基、ベンゾ[c]チエニル基、ベンゾ[b]チエニル基、ベンゾイソオキサゾリル基、ベンゾイソチアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサジアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアジアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾトリアジニル基、ベンゾトリアゾリル基、およびベンゾピラゾリル基等が挙げられる。中でも、芳香族複素環基としては、フラニル基、ピラニル基、チエニル基、オキサゾリル基、フラザニル基、チアゾリル基、及びチアジアゾリル基等の、単環の芳香族複素環基;並びに、ベンゾチアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、キノリル基、1-ベンゾフラニル基、2-ベンゾフラニル基、フタルイミド基、ベンゾ[c]チエニル基、ベンゾ[b]チエニル基、チアゾロピリジル基、チアゾロピラジニル基、ベンゾイソオキサゾリル基、ベンゾオキサジアゾリル基、及びベンゾチアジアゾリル基等の、縮合環の芳香族複素環基;がより好ましい。
【0072】
における炭素原子数2~30の芳香族複素環基が有しうる置換基としては、例えば、D~Dにおける非環状基が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0073】
は、置換基を有していてもよい炭素原子数1~30の2価の脂肪族炭化水素基;並びに、置換基を有していてもよい炭素原子数3~30の2価の脂肪族炭化水素基に含まれる-CH-の少なくとも一つが、-O-、-S-、-O-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-O-、-NR14-C(=O)-、-C(=O)-NR14-、-NR14-、または、-C(=O)-に置換された基(ただし、-O-または-S-がそれぞれ2以上隣接して介在する場合を除く);からなる群より選ばれる有機基を表す。R14は、水素原子、又は、炭素原子数1~6のアルキル基を表す。前記「2価の脂肪族炭化水素基」は、2価の鎖状の脂肪族炭化水素基であることが好ましく、アルキレン基であることがより好ましい。
【0074】
は、-O-、-C(=O)-、-S-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-O-C(=O)-O-、-C(=O)-S-、-S-C(=O)-、-NR15-C(=O)-、-C(=O)-NR15-、-O-C(=O)-NR15-、-NR15-C(=O)-O-、-N=N-、及び、-C≡C-、からなる群より選ばれる基を表す。R15は、水素原子、又は、炭素原子数1~6のアルキル基を表す。中でも、Yとしては、-O-、-O-C(=O)-O-及び-C(=O)-O-が好ましい。
【0075】
は、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環の少なくとも一方を有する有機基を表す。この有機基の炭素原子数は、好ましくは2以上、より好ましくは7以上、更に好ましくは8以上、特に好ましくは10以上であり、好ましくは30以下である。前記の有機基の炭素原子数には、置換基の炭素原子を含まない。
【0076】
における芳香族炭化水素環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環、フルオレン環等の、炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環が挙げられる。Fが、複数の芳香族炭化水素環を有する場合、複数の芳香族炭化水素環は、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0077】
における芳香族炭化水素環は、置換基を有していてもよい。Fにおける芳香族炭化水素環が有しうる置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子等の、ハロゲン原子;シアノ基;メチル基、エチル基、プロピル基等の、炭素原子数1~6のアルキル基;ビニル基、アリル基等の、炭素原子数2~6のアルケニル基;トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基等の、炭素原子数1~6のハロゲン化アルキル基;ジメチルアミノ基等の、炭素原子数2~12のN,N-ジアルキルアミノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の、炭素原子数1~6のアルコキシ基;ニトロ基;-OCF;-C(=O)-R;-C(=O)-O-R;-O-C(=O)-R;等が挙げられる。Rの意味は、上述した通りである。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0078】
における芳香族複素環としては、例えば、1H-イソインドール-1,3(2H)-ジオン環、1-ベンゾフラン環、2-ベンゾフラン環、アクリジン環、イソキノリン環、イミダゾール環、インドール環、オキサジアゾール環、オキサゾール環、オキサゾロピラジン環、オキサゾロピリジン環、オキサゾロピリダジル環、オキサゾロピリミジン環、キナゾリン環、キノキサリン環、キノリン環、シンノリン環、チアジアゾール環、チアゾール環、チアゾロピラジン環、チアゾロピリジン環、チアゾロピリダジン環、チアゾロピリミジン環、チオフェン環、トリアジン環、トリアゾール環、ナフチリジン環、ピラジン環、ピラゾール環、ピラノン環、ピラン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピロール環、フェナントリジン環、フタラジン環、フラン環、ベンゾ[c]チオフェン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾオキサジアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアジアゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾチオフェン環、ベンゾトリアジン環、ベンゾトリアゾール環、ベンゾピラゾール環、ベンゾピラノン環等の、炭素原子数2~30の芳香族複素環が挙げられる。Fが、複数の芳香族複素環を有する場合、複数の芳香族複素環は、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0079】
における芳香族複素環は、置換基を有していてもよい。Fにおける芳香族複素環が有しうる置換基としては、例えば、Fにおける芳香族炭化水素環が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0080】
の好ましい例としては、「芳香族炭化水素環及び芳香族複素環の少なくとも一方を有する、置換基を有していてもよい、炭素原子数2~20の環状基」が挙げられる。以下、この環状基を、適宜「環状基(a)」ということがある。
【0081】
環状基(a)が有しうる置換基としては、例えば、Fにおける芳香族炭化水素環が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0082】
環状基(a)の好ましい例としては、少なくとも一つの炭素原子数6~18の芳香族炭化水素環を有する、置換基を有していてもよい炭素原子数6~20の炭化水素環基が挙げられる。この炭化水素環基を、以下、適宜「炭化水素環基(a1)」ということがある。
【0083】
炭化水素環基(a1)としては、例えば、フェニル基(炭素原子数6)、ナフチル基(炭素原子数10)、アントラセニル基(炭素原子数14)、フェナントレニル基(炭素原子数14)、ピレニル基(炭素原子数16)、フルオレニル基(炭素原子数13)、インダニル基(炭素原子数9)、1,2,3,4-テトラヒドロナフチル基(炭素原子数10)、1,4-ジヒドロナフチル基(炭素原子数10)等の、炭素原子数6~18の芳香族炭化水素環基が挙げられる。
【0084】
前記の炭化水素環基(a1)の具体例としては、下記式(1-1)~(1-21)で表される基が挙げられる。また、これらの基は、置換基を有していてもよい。下記式中、「-」は、環の任意の位置からのびる、Yとの結合手を表す。
【0085】
【化6】
【0086】
環状基(a)の別の好ましい例としては、炭素原子数6~18の芳香族炭化水素環及び炭素原子数2~18の芳香族複素環からなる群から選ばれる1以上の芳香環を有する、置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の複素環基が挙げられる。この複素環基を、以下、適宜「複素環基(a2)」ということがある。
【0087】
複素環基(a2)としては、例えば、フタルイミド基、1-ベンゾフラニル基、2-ベンゾフラニル基、アクリジニル基、イソキノリニル基、イミダゾリル基、インドリニル基、フラザニル基、オキサゾリル基、オキサゾロピラジニル基、オキサゾロピリジニル基、オキサゾロピリダジニル基、オキサゾロピリミジニル基、キナゾリニル基、キノキサリニル基、キノリル基、シンノリニル基、チアジアゾリル基、チアゾリル基、チアゾロピラジニル基、チアゾロピリジニル基、チアゾロピリダジニル基、チアゾロピリミジニル基、チエニル基、トリアジニル基、トリアゾリル基、ナフチリジニル基、ピラジニル基、ピラゾリル基、ピラノンニル基、ピラニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピロリル基、フェナントリジニル基、フタラジニル基、フラニル基、ベンゾ[c]チエニル基、ベンゾイソオキサゾリル基、ベンゾイソチアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアジアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾチオフェニル基、ベンゾトリアジニル基、ベンゾトリアゾリル基、ベンゾピラゾリル基、ベンゾピラノニル基等の、炭素原子数2~18の芳香族複素環基;キサンテニル基;2,3-ジヒドロインドーリル基;9,10-ジヒドロアクリジニル基;1,2,3,4-テトラヒドロキノリル基;ジヒドロピラニル基;テトラヒドロピラニル基;ジヒドロフラニル基;およびテトラヒドロフラニル基;が挙げられる。
【0088】
前記の複素環基(a2)の具体例としては、下記式(2-1)~(2-51)で表される基が挙げられる。また、これらの基は、置換基を有していてもよい。下記式中、「-」は、環の任意の位置からのびる、Yとの結合手を表す。下記式中、Xは、-CH-、-NR-、酸素原子、硫黄原子、-SO-または-SO-を表す。YおよびZは、それぞれ独立して、-NR-、酸素原子、硫黄原子、-SO-または-SO-を表す。Eは、-NR-、酸素原子または硫黄原子を表す。ここで、Rは、水素原子;または、メチル基、エチル基、プロピル基等の、炭素原子数1~6のアルキル基を表す。(但し、各式中において酸素原子、硫黄原子、-SO-、-SO-は、それぞれ隣接しないものとする。)。
【0089】
【化7】
【0090】
の好ましい別の例としては、「芳香族炭化水素環及び芳香族複素環の少なくとも一方を有する、置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の環状基で、少なくとも一つの水素原子が置換され、且つ、前記環状基以外の置換基を有していてもよい、炭素原子数1~18のアルキル基」が挙げられる。この置換されたアルキル基を、以下、適宜「置換アルキル基(b)」ということがある。
【0091】
置換アルキル基(b)における炭素原子数1~18のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基などが挙げられる。
【0092】
置換アルキル基(b)において、「芳香族炭化水素環及び芳香族複素環の少なくとも一方を有する、置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の環状基」としては、例えば、環状基(a)として説明した範囲の基が挙げられる。
【0093】
置換アルキル基(b)において、「芳香族炭化水素環および芳香族複素環の少なくとも一方」は、炭素原子数1~18のアルキル基の炭素原子に、直接に結合していてもよく、連結基を介して結合していてもよい。連結基としては、例えば、-S-、-O-、-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-O-C(=O)-O-、-C(=O)-S-、-S-C(=O)-、-NR15-C(=O)-、-C(=O)-NR15などが挙げられる。R15の意味は、上述した通りである。よって、置換アルキル基(b)における「芳香族炭化水素環及び芳香族複素環の少なくとも一方を有する、置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の環状基」には、フルオレニル基、ベンゾチアゾリル基等の、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環の少なくとも一方を有する基;置換されていてもよい芳香族炭化水素環基;置換されていてもよい芳香族複素環基;連結基を有する置換されていてもよい芳香族炭化水素環よりなる基;連結基を有する置換されていてもよい芳香族複素環よりなる基;が含まれる。
【0094】
置換アルキル基(b)における芳香族炭化水素環基の好ましい例としては、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、ピレニル基、およびフルオレニル基等の、炭素原子数6~20の芳香族炭化水素環基が挙げられる。
【0095】
置換アルキル基(b)における芳香族炭化水素環基は、置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、Fにおける芳香族炭化水素環が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0096】
置換アルキル基(b)における芳香族複素環基の好ましい例としては、フタルイミド基、1-ベンゾフラニル基、2-ベンゾフラニル基、アクリジニル基、イソキノリニル基、イミダゾリル基、インドリニル基、フラザニル基、オキサゾリル基、オキサゾロピラジニル基、オキサゾロピリジニル基、オキサゾロピリダジニル基、オキサゾロピリミジニル基、キナゾリニル基、キノキサリニル基、キノリル基、シンノリニル基、チアジアゾリル基、チアゾリル基、チアゾロピラジニル基、チアゾロピリジル基、チアゾロピリダジニル基、チアゾロピリミジニル基、チエニル基、トリアジニル基、トリアゾリル基、ナフチリジニル基、ピラジニル基、ピラゾリル基、ピラノンニル基、ピラニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピロリル基、フェナントリジニル基、フタラジニル基、フラニル基、ベンゾ[c]チエニル基、ベンゾイソオキサゾリル基、ベンゾイソチアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサジアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアジアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾチエニル基、ベンゾトリアジニル基、ベンゾトリアゾリル基、ベンゾピラゾリル基、ベンゾピラノニル基等の、炭素原子数2~20の芳香複素環基が挙げられる。
【0097】
置換アルキル基(b)における芳香族複素環基は、置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、Fにおける芳香族炭化水素環が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0098】
置換アルキル基(b)における「連結基を有する芳香族炭化水素環よりなる基」及び「連結基を有する芳香族複素環よりなる基」としては、例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基、アントラセニルチオ基、フェナントレニルチオ基、ピレニルチオ基、フルオレニルチオ基、フェニルオキシ基、ナフチルオキシ基、アントラセニルオキシ基、フェナントレニルオキシ基、ピレニルオキシ基、フルオレニルオキシ基、ベンゾイソオキサゾリルチオ基、ベンゾイソチアゾリルチオ基、ベンゾオキサジアゾリルチオ基、ベンゾオキサゾリルチオ基、ベンゾチアジアゾリルチオ基、ベンゾチアゾリルチオ基、ベンゾチエニルチオ基、ベンゾイソオキサゾリルオキシ基、ベンゾイソチアゾリルオキシ基、ベンゾオキサジアゾリルオキシ基、ベンゾオキサゾリルオキシ基、ベンゾチアジアゾリルオキシ基、ベンゾチアゾリルオキシ基、ベンゾチエニルオキシ基、等が挙げられる。
【0099】
置換アルキル基(b)における「連結基を有する芳香族炭化水素環よりなる基」及び「連結基を有する芳香族複素環よりなる基」は、それぞれ、置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、Fにおける芳香族炭化水素環が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0100】
置換アルキル基(b)が有しうる環状基以外の置換基としては、例えば、Fにおける芳香族炭化水素環が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0101】
置換アルキル基(b)の具体例としては、下記式(3-1)~(3-11)で表される基が挙げられる。また、これらの基は、置換基を有していてもよい。下記式中、「-」は、環の任意の位置からのびる、Yとの結合手を表す。また、下記式中、*は、結合位置を表す。
【0102】
【化8】
【0103】
特に、Arが式(II-2)で表される場合、Fは、下記式(i-1)~(i-9)のいずれかで表される基であることが好ましい。また、特に、Arが式(II-3)又は式(II-4)で表される場合、Fは、下記式(i-1)~(i-13)のいずれかで表される基であることが好ましい。下記式(i-1)~(i-13)で表される基は、置換基を有していてもよい。また、下記式中、*は、結合位置を表す。
【0104】
【化9】
【0105】
更には、Arが式(II-2)で表される場合、Fは、下記式(ii-1)~(ii-18)のいずれかで表される基であることが特に好ましい。また、Arが式(II-3)又は式(II-4)で表される場合、Fは、下記式(ii-1)~(ii-24)のいずれかで表される基であることが特に好ましい。下記式(ii-1)~(ii-24)で表される基は、置換基を有していてもよい。下記の式において、Yの意味は、上述した通りである。また、下記式中、*は、結合位置を表す。
【0106】
【化10】
【0107】
【化11】
【0108】
Arが式(II-2)で表される場合、F中の環構造に含まれるπ電子の総数は、8以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましく、20以下であることが好ましく、18以下であることがより好ましい。また、Arが式(II-3)又は式(II-4)で表される場合、F中の環構造に含まれるπ電子の総数は、4以上であることが好ましく、6以上であることがより好ましく、20以下であることが好ましく、18以下であることがより好ましい。
【0109】
上述したものの中でも、Rとしては、置換基を有していてもよい炭素原子数1~20のアルキル基;炭素原子数1~20のアルキル基に含まれる-CH-の少なくとも一つが、-O-、-S-、-O-C(=O)-、-C(=O)-O-、または、-C(=O)-に置換された基(ただし、-O-または-S-がそれぞれ2以上隣接して介在する場合を除く);置換基を有していてもよい炭素原子数3~12のシクロアルキル基;置換基を有していてもよい炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環基;置換基を有していてもよい炭素原子数2~30の芳香族複素環基;並びに、-G-Y-F;が好ましい。その中でも、Rとしては、置換基を有していてもよい炭素原子数1~20のアルキル基;炭素原子数1~20のアルキル基に含まれる-CH-の少なくとも一つが、-O-、-S-、-O-C(=O)-、-C(=O)-O-、または、-C(=O)-に置換された基(ただし、-O-または-S-がそれぞれ2以上隣接して介在する場合を除く);置換基を有していてもよい炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環基;並びに、-G-Y-F;が特に好ましい。
【0110】
は、炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環及び炭素原子数2~30の芳香族複素環からなる群より選ばれる1以上の芳香環を有する、有機基を表す。
【0111】
の好ましい例としては、(1)一以上の炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環を有する、炭素原子数6~40の炭化水素環基、が挙げられる。この芳香族炭化水素環を有する炭化水素環基を、以下、適宜「(1)炭化水素環基」ということがある。(1)炭化水素環基の具体例としては、下記の基が挙げられる。
【0112】
【化12】
【0113】
(1)炭化水素環基は、置換基を有していてもよい。(1)炭化水素環基が有しうる置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子等の、ハロゲン原子;シアノ基;メチル基、エチル基、プロピル基等の、炭素原子数1~6のアルキル基;ビニル基、アリル基等の、炭素原子数2~6のアルケニル基;トリフルオロメチル基等の、炭素原子数1~6のハロゲン化アルキル基;ジメチルアミノ基等の、炭素原子数2~12のN,N-ジアルキルアミノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の、炭素原子数1~6のアルコキシ基;ニトロ基;フェニル基、ナフチル基等の、炭素原子数6~20の芳香族炭化水素環基;-OCF;-C(=O)-R;-O-C(=O)-R;-C(=O)-O-R;-SO;等が挙げられる。R及びRの意味は、上述した通りである。これらの中でも、ハロゲン原子、シアノ基、炭素原子数1~6のアルキル基、および、炭素原子数1~6のアルコキシ基、が好ましい。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0114】
の別の好ましい例としては、(2)炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環及び炭素原子数2~30の芳香族複素環からなる群より選ばれる1以上の芳香環を有する、炭素原子数2~40の複素環基が挙げられる。この芳香環を有する複素環基を、以下、適宜「(2)複素環基」ということがある。(2)複素環基の具体例としては、下記の基が挙げられる。Rは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基を表す。
【0115】
【化13】
【0116】
【化14】
【0117】
【化15】
【0118】
【化16】
【0119】
【化17】
【0120】
【化18】
【0121】
【化19】
【0122】
【化20】
【0123】
(2)複素環基は、置換基を有していてもよい。(2)複素環基が有しうる置換基としては、例えば、(1)炭化水素環基が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0124】
の更に別の好ましい例としては、(3)炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環基及び炭素原子数2~30の芳香族複素環基からなる群より選ばれる1以上の基で置換された、炭素原子数1~12のアルキル基が挙げられる。この置換されたアルキル基を、以下、適宜「(3)置換アルキル基」ということがある。
【0125】
(3)置換アルキル基における「炭素原子数1~12のアルキル基」としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基などが挙げられる。
(3)置換アルキル基における「炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環基」としては、例えば、Rにおける炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環基と同じ例が挙げられる。
(3)置換アルキル基における「炭素原子数2~30の芳香族複素環基」としては、例えば、Rにおける炭素原子数2~30の芳香族複素環基と同じ例が挙げられる。
【0126】
(3)置換アルキル基は、更に置換基を有していてもよい。(3)置換アルキル基が有しうる置換基としては、例えば、(1)炭化水素環基が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0127】
の更に別の好ましい例としては、(4)炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環基及び炭素原子数2~30の芳香族複素環基からなる群より選ばれる1以上の基で置換された、炭素原子数2~12のアルケニル基が挙げられる。この置換されたアルケニル基を、以下、適宜「(4)置換アルケニル基」ということがある。
【0128】
(4)置換アルケニル基における「炭素原子数2~12のアルケニル基」としては、例えば、ビニル基、アリル基などが挙げられる。
(4)置換アルケニル基における「炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環基」としては、例えば、Rにおける炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環基と同じ例が挙げられる。
(4)置換アルケニル基における「炭素原子数2~30の芳香族複素環基」としては、例えば、Rにおける炭素原子数2~30の芳香族複素環基と同じ例が挙げられる。
【0129】
(4)置換アルケニル基は、更に置換基を有していてもよい。(4)置換アルケニル基が有しうる置換基としては、例えば、(1)炭化水素環基が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0130】
の更に別の好ましい例としては、(5)炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環基及び炭素原子数2~30の芳香族複素環基からなる群より選ばれる1以上の基で置換された、炭素原子数2~12のアルキニル基が挙げられる。この置換されたアルキニル基を、以下、適宜「(5)置換アルキニル基」ということがある。
【0131】
(5)置換アルキニル基における「炭素原子数2~12のアルキニル基」としては、例えば、エチニル基、プロピニル基などが挙げられる。
(5)置換アルキニル基における「炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環基」としては、例えば、Rにおける炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環基と同じ例が挙げられる。
(5)置換アルキニル基における「炭素原子数2~30の芳香族複素環基」としては、例えば、Rにおける炭素原子数2~30の芳香族複素環基と同じ例が挙げられる。
【0132】
(5)置換アルキニル基は、更に置換基を有していてもよい。(5)置換アルキニル基が有しうる置換基としては、例えば、(1)炭化水素環基が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0133】
の好ましい具体例としては、下記の基が挙げられる。
【0134】
【化21】
【0135】
の更に好ましい具体例としては、下記の基が挙げられる。
【0136】
【化22】
【0137】
の特に好ましい具体例としては、下記の基が挙げられる。
【0138】
【化23】
【0139】
上述したRの具体例は、更に置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子等の、ハロゲン原子;シアノ基;メチル基、エチル基、プロピル基等の、炭素原子数1~6のアルキル基;ビニル基、アリル基等の、炭素原子数2~6のアルケニル基;トリフルオロメチル基等の、炭素原子数1~6のハロゲン化アルキル基;ジメチルアミノ基等の、炭素原子数2~12のN,N-ジアルキルアミノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の、炭素原子数1~6のアルコキシ基;ニトロ基;-OCF;-C(=O)-R;-O-C(=O)-R;-C(=O)-O-R;-SO;等が挙げられる。R及びRの意味は、上述した通りである。これらの中でも、ハロゲン原子、シアノ基、炭素原子数1~6のアルキル基、および、炭素原子数1~6のアルコキシ基が好ましい。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0140】
は、炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環及び炭素原子数2~30の芳香族複素環からなる群より選ばれる1以上の芳香環を有する、有機基を表す。
【0141】
の好ましい例としては、一以上の炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環を有する、炭素原子数6~40の炭化水素環基が挙げられる。
また、Rの別の好ましい例としては、炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環及び炭素原子数2~30の芳香族複素環からなる群より選ばれる1以上の芳香環を有する、炭素原子数2~40の複素環基が挙げられる。
【0142】
の特に好ましい具体例としては、下記の基が挙げられる。Rの意味は、上述した通りである。
【0143】
【化24】
【0144】
式(II-1)~式(II-4)のいずれかで表される基は、D~D以外に更に置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数1~6のハロゲン化アルキル基、炭素原子数1~6のN-アルキルアミノ基、炭素原子数2~12のN,N-ジアルキルアミノ基、炭素原子数1~6のアルコキシ基、炭素原子数1~6のアルキルスルフィニル基、カルボキシル基、炭素原子数1~6のチオアルキル基、炭素原子数1~6のN-アルキルスルファモイル基、炭素原子数2~12のN,N-ジアルキルスルファモイル基が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0145】
また、式(I)におけるArの好ましい例としては、下記の式(III-1)~式(III-7)で表される基が挙げられる。また、式(III-1)~式(III-7)で表される基は、置換基として炭素原子数1~6のアルキル基を有していてもよい。下記式中、*は、結合位置を表す。本発明において、式(I)におけるArのより好ましい例は、式(III-2)で表される基である。
【0146】
【化25】
【0147】
式(III-1)の特に好ましい具体例としては、下記の基が挙げられる。下記式中、*は、結合位置を表す。
【0148】
【化26】
【0149】
【化27】
【0150】
式(I)において、Z及びZは、それぞれ独立して、単結合、-O-、-O-CH-、-CH-O-、-O-CH-CH-、-CH-CH-O-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-C(=O)-S-、-S-C(=O)-、-NR21-C(=O)-、-C(=O)-NR21-、-CF-O-、-O-CF-、-CH-CH-、-CF-CF-、-O-CH-CH-O-、-CH=CH-C(=O)-O-、-O-C(=O)-CH=CH-、-CH-C(=O)-O-、-O-C(=O)-CH-、-CH-O-C(=O)-、-C(=O)-O-CH-、-CH-CH-C(=O)-O-、-O-C(=O)-CH-CH-、-CH-CH-O-C(=O)-、-C(=O)-O-CH-CH-、-CH=CH-、-N=CH-、-CH=N-、-N=C(CH)-、-C(CH)=N-、-N=N-、及び、-C≡C-、からなる群より選ばれるいずれかを表す。R21は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基を表す。
【0151】
式(I)において、A、A、B及びBは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい環状脂肪族基、及び、置換基を有していてもよい芳香族基、からなる群より選ばれる基を表す。A、A、B及びBが表す基の炭素原子数(置換基の炭素原子数を含む。)は、それぞれ独立して、通常、3~100である。中でも、A、A、B及びBは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素原子数5~20の環状脂肪族基、または、置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の芳香族基が好ましい。
【0152】
、A、B及びBにおける環状脂肪族基としては、例えば、シクロペンタン-1,3-ジイル基、シクロヘキサン-1,4-ジイル基、1,4-シクロヘプタン-1,4-ジイル基、シクロオクタン-1,5-ジイル基等の、炭素原子数5~20のシクロアルカンジイル基;デカヒドロナフタレン-1,5-ジイル基、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基等の、炭素原子数5~20のビシクロアルカンジイル基;等が挙げられる。中でも、置換されていてもよい炭素原子数5~20のシクロアルカンジイル基が好ましく、シクロヘキサンジイル基がより好ましく、シクロヘキサン-1,4-ジイル基が特に好ましい。環状脂肪族基は、トランス体であってもよく、シス体であってもよく、シス体とトランス体との混合物であってもよい。中でも、トランス体がより好ましい。
【0153】
、A、B及びBにおける環状脂肪族基が有しうる置換基としては、例えば、ハロゲン原子、炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数1~5のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基等が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0154】
、A、B及びBにおける芳香族基としては、例えば、1,2-フェニレン基、1,3-フェニレン基、1,4-フェニレン基、1,4-ナフチレン基、1,5-ナフチレン基、2,6-ナフチレン基、4,4’-ビフェニレン基等の、炭素原子数6~20の芳香族炭化水素環基;フラン-2,5-ジイル基、チオフェン-2,5-ジイル基、ピリジン-2,5-ジイル基、ピラジン-2,5-ジイル基等の、炭素原子数2~20の芳香族複素環基;等が挙げられる。中でも、炭素原子数6~20の芳香族炭化水素環基が好ましく、フェニレン基がさらに好ましく、1,4-フェニレン基が特に好ましい。
【0155】
、A、B及びBにおける芳香族基が有しうる置換基としては、例えば、A、A、B及びBにおける環状脂肪族基が有しうる置換基と同じ例が挙げられる。置換基の数は、一つでもよく、複数でもよい。また、複数の置換基は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0156】
式(I)において、Y~Yは、それぞれ独立して、単結合、-O-、-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-NR22-C(=O)-、-C(=O)-NR22-、-O-C(=O)-O-、-NR22-C(=O)-O-、-O-C(=O)-NR22-、及び、-NR22-C(=O)-NR23-、からなる群より選ばれるいずれかを表す。R22及びR23は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基を表す。
【0157】
式(I)において、G及びGは、それぞれ独立して、炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基;並びに、炭素原子数3~20の脂肪族炭化水素基に含まれるメチレン基(-CH-)の1以上が-O-又は-C(=O)-に置換された基;からなる群より選ばれる有機基を表す。G及びGの前記有機基に含まれる水素原子は、炭素原子数1~5のアルキル基、炭素原子数1~5のアルコキシ基、または、ハロゲン原子に置換されていてもよい。ただし、G及びGの両末端のメチレン基(-CH-)が-O-又は-C(=O)-に置換されることはない。
【0158】
及びGにおける炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基の具体例としては、炭素原子数1~20のアルキレン基が挙げられる。
【0159】
及びGにおける炭素原子数3~20の脂肪族炭化水素基の具体例としては、炭素原子数3~20のアルキレン基が挙げられる。
【0160】
式(I)において、P及びPは、それぞれ独立して、重合性基を表す。P及びPにおける重合性基としては、例えば、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基等の、CH=CR31-C(=O)-O-で表される基;ビニル基;ビニルエーテル基;p-スチルベン基;アクリロイル基;メタクリロイル基;カルボキシル基;メチルカルボニル基;水酸基;アミド基;炭素原子数1~4のアルキルアミノ基;アミノ基;エポキシ基;オキセタニル基;アルデヒド基;イソシアネート基;チオイソシアネート基;等が挙げられる。R31は、水素原子、メチル基、又は塩素原子を表す。中でも、CH=CR31-C(=O)-O-で表される基が好ましく、CH=CH-C(=O)-O-(アクリロイルオキシ基)、CH=C(CH)-C(=O)-O-(メタクリロイルオキシ基)がより好ましく、アクリロイルオキシ基が特に好ましい。
【0161】
式(I)において、p及びqは、それぞれ独立して、0又は1を表す。
【0162】
式(I)で表される液晶化合物は、例えば、国際公開第2012/147904号に記載される、ヒドラジン化合物とカルボニル化合物との反応により製造しうる。
【0163】
式(I)で表される液晶化合物としては、具体的には、例えば、下記の式で表される化合物が挙げられる。下記化合物(A-1)~(A-8)は、Arが式(III-2)で表される基である化合物の具体例である。
【0164】
【化28】
【0165】
本発明において、第1重合性液晶化合物及び第2重合性液晶化合物のうち、少なくとも一方は、当該重合性液晶化合物の分子中に、主鎖メソゲンと、主鎖メソゲンに結合した側鎖メソゲンとを含む化合物であることが好ましい。このような化合物としては、例えば、以下の式(Ia)で表される化合物(Ia)が挙げられる。化合物(Ia)は、化合物(I)のArが、置換基を有する2価の有機基である化合物である。下記式(Ia)においてAr-Dは、芳香族複素環、複素環、および芳香族炭化水素環の少なくとも1つを有し、置換されている炭素原子数6~67の2価の有機基を表す。よって、Arは芳香族複素環、複素環、および芳香族炭化水素環の少なくとも1つを有する炭素原子数6~67の有機基を表し、DはArの置換基を表す。式(Ia)中のZ、Z,A、A、B、B、Y~Y、G、G、P,P、pおよびqは、それぞれ、式(I)中のZ、Z,A、A、B、B、Y~Y、G、G、P,P、pおよびqと同じである。
【0166】
【化29】
【0167】
化合物(Ia)は、通常、下記式で表すように、基-G-Y-[B-Y]-A-Z-Ar-Z-A-[Y-B]-Y-G-からなる主鎖メソゲン骨格1a、及び、基>Ar-Dからなる側鎖メソゲン骨格1bの2つのメソゲン骨格を含む。また、これらの主鎖メソゲン骨格1a及び側鎖メソゲン骨格1bは、互いに交差している。
【0168】
【化30】
【0169】
以下に説明するように、化合物(Ia)は、主鎖メソゲン骨格1a及び側鎖メソゲン骨格1bに由来して逆波長分散性の面内レターデーションを示しうる。
主鎖メソゲン骨格1aの長軸方向における屈折率をn1、側鎖メソゲン骨格1bの長軸方向における屈折率をn2とする。この際、屈折率n1の絶対値及び波長分散性は、通常、主鎖メソゲン骨格1aの分子構造に依存する。また、屈折率n2の絶対値及び波長分散性は、通常、側鎖メソゲン骨格1bの分子構造に依存する。ここで、液晶相において化合物(I)は、通常、主鎖メソゲン骨格1aの長軸方向を回転軸として回転運動を行うので、ここでいう屈折率n1及びn2とは、回転体としての屈折率を表している。
【0170】
主鎖メソゲン骨格1a及び側鎖メソゲン骨格1bの分子構造に由来して、屈折率n1の絶対値は屈折率n2の絶対値より大きい。さらに、屈折率n1及びn2は、通常、順波長分散性を示す。ここで、順波長分散性の屈折率とは、測定波長が大きいほど当該屈折率の絶対値が小さくなる屈折率を表す。主鎖メソゲン骨格1aの屈折率n1は、小さい程度の順波長分散性を示す。よって、長波長で測定した屈折率n1は、短波長で測定した屈折率n1よりも小さくなるが、それらの差は小さい。これに対し、側鎖メソゲン骨格1bの屈折率n2は、大きな程度の順波長分散性を示す。よって、長波長で測定した屈折率n2は、短波長で測定した屈折率n2よりも小さくなり、且つ、それらの差は大きい。そのため、測定波長が短いと屈折率n1と屈折率n2との差Δnは小さく、測定波長が長いと屈折率n1と屈折率n2との差Δnが大きくなる。このようにして、主鎖メソゲン骨格1a及び側鎖メソゲン骨格1bに由来して、化合物(Ia)は、ホモジニアス配向した場合に、逆波長分散性の面内レターデーションを示しうる。
【0171】
化合物(Ia)において、Ar-Dの好ましい例としては、上記式(III-2)~式(III-7)で表される基があげられ、より好ましい例としては、式(III-2)で表される基があげられる。化合物(Ia)としては、具体的には上記(A-1)~(A-8)の化合物が好ましい。
【0172】
第1液晶組成物と、第2液晶組成物とは、同じ組成物であるのが好ましい。ここで、「同じ組成物」とは、同じ重合性液晶化合物を含む組成物を意味する。つまり、第1重合性液晶化合物と、第2重合性液晶化合物とが、同じ化合物であれば、当該重合性液晶化合物以外の他の成分が異なっていても、「同じ組成物」に含まれる。よって、第1重合性液晶化合物と、第2重合性液晶化合物とが、同じ化合物であるのが好ましい。
【0173】
[液晶組成物に含まれる他の成分]
液晶組成物は、重合性液晶化合物に組み合わせて、任意の成分を含んでいてもよい。任意の成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組合わせて、用いてもよい。
【0174】
[架橋剤]
第1液晶組成物及び第2液晶組成物のうち少なくとも一方は、架橋剤を含んでいるのが好ましい。架橋剤は、通常、重合性液晶化合物と反応して橋かけ結合を形成できる。よって、架橋剤を用いることにより、異方性層の耐熱性及び機械的強度を向上させることができる。ただし、架橋剤には、前記の重合性液晶化合物は含まれない。架橋剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0175】
架橋剤は、好ましくは多官能性モノマーである。多官能性モノマーとは、重合性の基を1分子中に2個以上有する化合物を意味する。多官能性モノマーが有しうる重合性の基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、ビニル基が挙げられる。多官能性モノマーとしては、例えば、2官能性モノマー(例、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングルコールジアクリレート);3官能性以上の、多官能性モノマー(例、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート)が挙げられる。
【0176】
架橋剤は、より好ましくは、2官能性モノマーである。2官能性モノマーとは、重合性の基を1分子中に2個有する化合物を意味する。
【0177】
架橋剤は、好ましくは脂環式構造を有する化合物であり、より好ましくは脂環式構造を有する2官能性モノマーである。
【0178】
脂環式構造としては、例えば、単環の脂環式構造(例、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環)、2環以上の多環の脂環式構造(例、ビシクロヘプタン環、トリシクロデカン環、ビシクロデカン環)が挙げられる。
【0179】
架橋剤の具体例としては、下記の式(C1)~(C3)で表される化合物が挙げられる。
【0180】
【化31】
【0181】
式(C3)において、c1、c2、c3、c4、c5及びc6は、それぞれ独立して、1以上2以下の整数を表す。
式(C3)において、Yは、アクリロイル基又はヒドロキシ基を表す。Yは、好ましくはアクリロイル基である。式(C3)で表される化合物であってYがアクリロイル基である化合物は、プロポキシ化ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートと称されることがある。
式(C3)において、Xは、下記式(C4)に示す基を表す。
【0182】
【化32】
【0183】
架橋剤の量は、重合性液晶化合物100重量部に対して、好ましくは1重量部以上、より好ましくは3重量部以上、特に好ましくは5重量部以上であり、好ましくは30重量部以下、より好ましくは25重量部以下、特に好ましくは20重量部以下である。架橋剤の量が前記の範囲にある場合、異方性層の耐熱性及び機械的強度を効果的に高めることができる。
【0184】
[界面活性剤]
液晶組成物は、任意の成分として、界面活性剤を含んでいてもよい。界面活性剤を用いることにより、重合性液晶化合物のレベリング性を改善できるので、異方性層の面状態を良好にしたり、配向欠陥の発生を抑制したりできる。界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤が好ましい。また、界面活性剤としては、分子中にフッ素原子を含む界面活性剤が好ましい。
【0185】
界面活性剤としては、例えば、AGCセイミケミカル社製のサーフロンシリーズ(S242、S386、S420など)、DIC社製のメガファックシリーズ(F251、F554、F556、F562、RS-75、RS-76-Eなど)、ネオス社製のフタージェントシリーズ(FTX601AD、FTX602A、FTX601ADH2、FTX650A、209Fなど)等が挙げられる。界面活性剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0186】
界面活性剤の量は、重合性液晶化合物100重量部に対して、好ましくは0.005重量部以上、より好ましくは0.010重量部以上であり、好ましくは1.00重量部以下、より好ましくは0.50重量部以下である。界面活性剤の量が前記の範囲にある場合、異方性層の面状態を良好にしたり、配向欠陥の発生を抑制したりできる。
【0187】
[重合開始剤]
液晶組成物は、任意の成分として、重合開始剤を含んでいてもよい。重合開始剤を用いることにより、重合性液晶化合物の重合を促進できる。重合開始剤としては、熱重合開始剤及び光重合開始剤のいずれを用いてもよい。中でも、本発明の所望の効果を顕著に得る観点では、光重合開始剤を用いることが好ましい。
【0188】
重合開始剤の種類は、液晶組成物に含まれる重合性の化合物の種類に応じて選択しうる。例えば、重合性の化合物がラジカル重合性であれば、ラジカル重合開始剤を使用しうる。また、重合性の化合物がアニオン重合性であれば、アニオン重合開始剤を使用しうる。さらに、重合性の化合物がカチオン重合性であれば、カチオン重合開始剤を使用しうる。重合開始剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0189】
重合開始剤の量は、重合性液晶化合物100重量部に対して、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは0.5重量部以上であり、好ましくは30重量部以下、より好ましくは10重量部以下である。重合開始剤の量が前記範囲にある場合、重合を効率的に進行させることができる。
【0190】
[液晶組成物が含みうるその他の成分]
液晶組成物が含みうる任意の成分としては、例えば、溶媒が挙げられる。溶媒としては、例えば、シクロペンタン、シクロヘキサン等の炭化水素溶媒;シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、N-メチルピロリドン等のケトン溶媒;酢酸ブチル、酢酸アミル等の酢酸エステル溶媒;クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素溶媒;1,4-ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3-ジオキソラン、1,2-ジメトキシエタン等のエーテル溶媒;トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素溶媒;及びこれらの混合物が挙げられる。溶媒の沸点は、取り扱い性に優れる観点から、60℃~250℃であることが好ましく、60℃~150℃であることがより好ましい。溶媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。溶媒の量は、重合性液晶化合物100重量部に対して、好ましくは100重量部以上1000重量部以下である。
【0191】
また、液晶組成物が含みうる任意の成分としては、例えば、酸化防止剤が挙げられる。酸化防止剤を用いることにより、液晶組成物のゲル化を抑制できるので、液晶組成物のポットライフを長くできる。酸化防止剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類状を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。酸化防止剤の量は、重合性液晶化合物100重量部に対して、好ましくは0.001重量部以上、より好ましくは0.005重量部以上、特に好ましくは0.010重量部以上であり、好ましくは5重量部以下、より好ましくは2重量部以下、特に好ましくは1重量部以下である。
【0192】
液晶組成物が含みうるその他の任意の成分としては、例えば、金属;金属錯体;酸化チタン等の金属酸化物;染料、顔料等の着色剤;蛍光材料、燐光材料等の発光材料;レベリング剤;チキソ剤;ゲル化剤;多糖類;赤外線吸収剤;紫外線吸収剤;抗酸化剤;イオン交換樹脂;等が挙げられる。これらの成分の量は、重合性液晶化合物の合計100重量部に対して、各々0.1重量部~20重量部でありうる。
【0193】
[積層体の特性]
積層体は、第1重合性液晶化合物を含む第1液晶組成物の硬化物で形成された第1異方性層と、第2重合性液晶化合物を含む第2液晶組成物の硬化物で形成された第2異方性層とを含む。第1異方性層及び第2異方性層は、それぞれ、重合性液晶化合物を含みうる。
【0194】
液晶組成物の硬化は、通常、当該液晶組成物が含む重合性の化合物の重合によって達成される。よって、異方性層は、通常、液晶組成物が含んでいた成分の一部又は全部の重合体を含む。したがって、異方性層は、重合性液晶化合物の重合体を含みうる。通常、重合によって重合性液晶化合物の液晶性は失われるが、本願においては、そのように重合した重合性液晶化合物も、用語「異方性層に含まれる重合性液晶化合物」に含める。
【0195】
各異方性層においては、一般に、液晶組成物が有していた流動性が失われる。よって、通常、異方性層においては、重合性液晶化合物の配向状態が、固定されうる。用語「配向状態を固定された重合性液晶化合物」には、前記の重合性液晶化合物の重合体が包含される。異方性層は、配向状態を固定された重合性液晶化合物の分子に組み合わせて配向状態を固定されていない重合性液晶化合物の分子を含んでいてもよいが、異方性層に含まれる重合性液晶化合物の分子の全てが配向状態を固定されていることが好ましい。
【0196】
本発明の積層体において、第1異方性層の遅相軸と、第2異方性層の遅相軸と、は直交する。これにより、長時間の光照射を行う前後で面内方向のレターデーションの変化を小さくし、高温環境に置く前後で、面内方向のレターデーション変化を小さくすることができる。このような効果を奏するメカニズムは以下のように推察される。
異方性層の面内レターデーションは、光を照射する前よりも光を照射した後において大きくなる傾向があるが、2つの異方性層の遅相軸が直交していることで、積層体の面内レターデーションの見かけ上の変化を小さくすることができる。その結果、積層体の耐光性を優れたものとすることができる。
異方性層の面内レターデーションは、高温環境下に置く前よりも高温環境下に置いた後において小さくなる傾向があるが、2つの異方性層の遅相軸が直交していることで、積層体の面内レターデーションの見かけ上の変化を小さくすることができる。その結果、積層体の耐熱性を優れたものとすることができる。
【0197】
第1異方性層の遅相軸と、第2異方性層の遅相軸と、が直交するとは、第1異方性層の遅相軸と、第2異方性層の遅相軸とのなす角θ1が80°以上100°以下であることをいう。θ1は、好ましくは85°以上、より好ましくは88°以上であり、好ましくは95°以下、より好ましくは93°以下である。
【0198】
本発明において、第2異方性層の面内方向のレターデーションRe2に対する、第1異方性層の面内方向のレターデーションRe1の比(Re1/Re2)は、下記式(1)を満たすことが好ましい。
0<Re1/Re2≦0.46 (1)
つまり、Re1/Re2は、好ましくは0より大きく、より好ましくは0.2以上であり、好ましくは0.46以下、より好ましくは0.44以下である。積層体に含まれる異方性層の厚みを大きくすることにより、耐光性及び耐熱性を向上することは可能ではあるが、積層体が呈色する(黄色い色相を呈する)ことがある。Re1/Re2が上記範囲内であることにより、異方性層の厚みが小さくても耐光性及び耐熱性を向上できるので、耐光性及び耐熱性が優れ、且つ積層体の呈色を抑制した積層体を提供することができる。
【0199】
第1異方性層の面内方向のレターデーションRe1は下記式(2)を満たすことが好ましい。
0<Re1≦118nm (2)
つまり、Re1は、好ましくは0より大きく、より好ましくは80nm以上であり、好ましくは118nm以下、より好ましくは110nm以下である。Re1が上記範囲内であることにより、第1異方性層の厚みが小さくても耐光性及び耐熱性を向上できる。
【0200】
第2異方性層の面内方向のレターデーションRe2と第1異方性層の面内方向のレターデーションRe1との差は、好ましくは160nm以下、より好ましくは150nm以下である。Re2とRe1との差が上記上限値以下であることにより、積層体の呈色を抑制することができる。
【0201】
第1異方性層の厚みは、好ましくは1.0μm以上、より好ましくは1.6μm以上であり、好ましくは2.7μm以下、より好ましくは2.2μm以下である。
第2異方性層の厚みは、好ましくは4.0μm以上、より好ましくは4.5μm以上であり、好ましくは5.9μm以下、より好ましくは5.1μm以下である。
各異方性層の厚みが下限値以上であることにより、積層体の耐光性及び耐熱性を向上することができ、厚みが上限値以下であることにより、積層体の呈色を抑制することができる。
【0202】
積層体は、透明性に優れることが好ましい。具体的には、積層体の全光線透過率は、好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、特に好ましくは84%以上である。また、積層体のヘイズは、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下、特に好ましくは1%以下である。全光線透過率は、紫外・可視分光計を用いて、波長400nm~700nmの範囲で測定できる。また、ヘイズは、ヘイズメーターを用いて測定できる。
【0203】
積層体の厚みは、レターデーション等の特性を所望の範囲にできるように、適切に設定しうる。具体的には、積層体の厚みは、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1.0μm以上であり、好ましくは10μm以下、より好ましくは7μm以下である。
【0204】
積層体は、単独でまたは、任意の層と組み合わせて光学フィルム等として用いうる。任意の層としては、異方性層の製造に用いる基材;延伸又は未延伸の樹脂フィルム;他の部材と接着するための接着層又は粘着層;フィルムの滑り性を良くするマット層;耐衝撃性ポリメタクリレート樹脂層などのハードコート層;反射防止層;防汚層;等が挙げられる。
【0205】
[2.積層体の製造方法]
本発明の積層体は、例えば、第1異方性層及び前記第2異方性層から選ばれる異方性層を製造する工程Aと、第1異方性層と、第2異方性層とを、第1異方性層の遅相軸と、第2異方性層の遅相軸とが直交するように貼合する工程Bとを含む製造方法により製造しうる。以下、この製造方法について説明する。
【0206】
[工程A]
工程Aは、第1異方性層及び第2異方性層から選ばれる異方性層を製造する工程である。
工程Aは、支持面に、液晶組成物の層を形成する工程A1と、液晶組成物の層に含まれる重合性液晶化合物を配向させる工程A2と、液晶組成物の層を硬化させる工程A3と、を含む。本発明の製造方法では、第1異方性層および第2異方性層のいずれか一方のみを工程Aにより製造してもよいし、両方の異方性層を工程Aにより製造してもよい。本発明では、両方の異方性層を工程Aにより製造することが好ましい。
【0207】
[工程A1]
工程A1は支持面に液晶組成物の層を形成する工程である。
支持面としては、液晶組成物の層を支持できる任意の面を用いうる。この支持面としては、異方性層の面状態を良好にする観点から、凹部及び凸部の無い平坦面を用いることが好ましい。また、異方性層の生産性を高める観点から、前記の支持面としては、長尺の基材の表面を用いることが好ましい。ここで「長尺」とは、幅に対して、5倍以上の長さを有する形状をいい、好ましくは10倍若しくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬される程度の長さを有するフィルムの形状をいう。長さの上限は、特に制限は無く、例えば、幅に対して1万倍以下としうる。
【0208】
基材としては、通常、樹脂フィルム又はガラス板を用いる。特に、配向処理又は加熱処理を行う場合、その処理温度に耐えられる基材を選択するのが好ましい。樹脂としては、通常、熱可塑性樹脂を用いる。中でも、配向規制力の高さ、機械的強度の高さ、及びコストの低さといった観点から、樹脂としては、正の固有複屈折値を有する樹脂が好ましい。更には、透明性、低吸湿性、寸法安定性及び軽量性に優れることから、ノルボルネン系樹脂等の、脂環式構造含有重合体を含む樹脂を用いることが好ましい。基材に含まれる樹脂の好適な例を商品名で挙げると、ノルボルネン系樹脂として、日本ゼオン社製「ゼオノア」を挙げられる。
【0209】
支持面としての基材の表面には、液晶組成物の層における重合性液晶化合物の配向を促進するため、配向規制力を付与するための処理が施されていることが好ましい。配向規制力とは、液晶組成物に含まれる重合性液晶化合物等の液晶化合物を配向させることができる、面の性質をいう。支持面に配向規制力を付与するため処理としては、例えば、配向膜形成処理、光配向処理、ラビング処理、イオンビーム配向処理、延伸処理などが挙げられる。
【0210】
工程A1において、液晶組成物は、通常、流体状で用意される。そのため、通常は、支持面に液晶組成物を塗工して、液晶組成物の層を形成する。第1異方性層を製造する場合は液晶組成物として、第1液晶組成物を用い、第2異方性層を製造する場合は液晶組成物として第2液晶組成物を用いる。液晶組成物を塗工する方法としては、例えば、カーテンコーティング法、押し出しコーティング法、ロールコーティング法、スピンコーティング法、ディップコーティング法、バーコーティング法、スプレーコーティング法、スライドコーティング法、印刷コーティング法、グラビアコーティング法、ダイコーティング法、ギャップコーティング法、及びディッピング法が挙げられる。
【0211】
[工程A2]
工程A2は、工程A1を行った後、液晶組成物の層に含まれる重合性液晶化合物を配向させる工程である。工程A2を行う際には、通常、液晶組成物の層を、所定の温度条件に所定の時間だけ保持する。これにより、液晶組成物の層において、重合性液晶化合物等の液晶化合物が配向する。この配向処理の条件は、使用する液晶組成物の性質に応じて適切に設定しうる。配向処理の条件の具体例を挙げると、50℃~160℃の温度条件において、30秒間~5分間処理する条件としうる。
【0212】
[工程A3]
工程A3は、工程A2を行った後、液晶組成物の層を硬化させる工程である。工程A3では、通常、液晶組成物に含まれる重合性の化合物の重合により、液晶組成物の層を硬化させる。よって、重合性液晶化合物の一部又は全部は、この工程A3において重合する。硬化によって、硬化前の流動性が失われるので、通常、得られる異方性層では、重合性液晶化合物の配向状態は、固定されうる。
【0213】
重合方法としては、液晶組成物に含まれる成分の性質に適合した方法を選択しうる。重合方法としては、例えば、活性エネルギー線を照射する方法、及び、熱重合法が挙げられる。中でも、加熱が不要であり、室温で重合反応を進行させられるので、活性エネルギー線を照射する方法が好ましい。ここで、照射される活性エネルギー線には、可視光線、紫外線、及び赤外線等の光、並びに電子線等の任意のエネルギー線が含まれうる。
【0214】
なかでも、操作が簡便なことから、紫外線等の光を照射する方法が好ましい。紫外線照射時の温度は、基材のガラス転移温度以下とすることが好ましく、好ましくは150℃以下、より好ましくは100℃以下、特に好ましくは80℃以下である。紫外線照射時の温度の下限は、15℃以上としうる。紫外線の照射強度は、好ましくは0.1mW/cm以上、より好ましくは0.5mW/cm以上であり、好ましくは10000mW/cm以下、より好ましくは5000mW/cm以下である。紫外線の照射量は、好ましくは0.1mJ/cm以上、より好ましくは0.5mJ/cm以上であり、好ましくは10000mJ/cm以下、より好ましくは5000mJ/cm以下である。
【0215】
[任意工程]
異方性層を製造する工程Aは、工程A3を行った後に、さらに熱処理を施す工程(工程A4)を含んでいてもよい。熱処理を施すことにより、異方性層の耐熱性を更に向上させることができる。
【0216】
工程A4における熱処理温度は、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上、特に好ましくは100℃以上であり、好ましくは180℃以下、より好ましくは170℃以下、特に好ましくは160℃以下である。熱処理温度が前記範囲の下限値以上である場合、積層体の耐熱性を効果的に高めることができる。また、熱処理温度が前記の範囲の上限値以下である場合、耐熱性の低い基材を用いることが可能となり、基材の選択の自由度を高めることができる。
【0217】
熱処理時間は、好ましくは1秒以上、より好ましくは2秒以上、特に好ましくは3秒以上であり、好ましくは15分以下、より好ましくは12分以下、特に好ましくは10分以下である。熱処理時間が前記範囲の下限値以上である場合、積層体の耐熱性を効果的に高めることができる。また、熱処理時間が前記範囲の上限値以下である場合、積層体の生産効率を高めることができる。
【0218】
また、工程Aは、例えば、液晶組成物の層を硬化させる工程A3の前に、液晶組成物の層を乾燥させる工程を含んでいてもよい。かかる乾燥は、自然乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥、減圧加熱乾燥等の乾燥方法で達成しうる。かかる乾燥により、液晶組成物の層から、溶媒を除去することができる。
【0219】
前記のような工程Aによれば、長尺の基材を用いて、長尺の異方性層を得ることができる。このような長尺の異方性層は、連続的な製造が可能であり、生産性に優れる。また、長尺の異方性層は、他の層や他のフィルムとの貼り合わせを、ロールトゥロールによって行うことができるので、この点でも、生産性に優れる。通常、長尺の異方性層は、巻き取られてロールの状態で保存及び運搬がなされる。
【0220】
[工程B]
工程Bは、第1異方性層と、第2異方性層とを、第1異方性層の遅相軸と、第2異方性層の遅相軸とが直交するように貼合する工程である。第1異方性層の遅相軸と、第2異方性層の遅相軸と、が直交するとは、第1異方性層の遅相軸と、第2異方性層の遅相軸とのなす角θ1が80°以上100°以下であることをいう。
【0221】
工程Bでは、第1異方性層と、第2異方性層とを、第1異方性層の遅相軸と、第2異方性層の遅相軸とが直交するように配置して、積層を行う。これにより本発明の積層体が得られる。
【0222】
異方性層として工程Aで製造した異方性層を用いる場合、工程Aで製造した異方性層は基材上に形成されているので、工程Bを行う前に、基材を剥離する工程を行ってもよい。また、工程Aで製造した異方性層は、基材を付けた状態で、工程Bを行ってもよい。
【0223】
第1異方性層と、第2異方性層との積層には、必要に応じて、接着剤及び粘着剤を用いてもよい。また、基材上に形成された一方の異方性層と、他方の異方性層とを貼り合わせた場合には、2つの異方性層積層した後、必要に応じて基材を剥離してもよい。
【0224】
[3.光学フィルム]
本発明の光学フィルムは本発明の積層体を備える。光学フィルムは、任意の層を含んでいてもよい。このような任意の層としては、異方性層の製造に用いる基材;延伸又は未延伸の樹脂フィルム;他の部材と接着するための接着層又は粘着層;フィルムの滑り性を良くするマット層;耐衝撃性ポリメタクリレート樹脂層などのハードコート層;反射防止層;防汚層;等が挙げられる。このような本発明の光学フィルムは、位相差フィルム等として用いうる。
【0225】
[本発明の作用・効果]
本発明において、積層体は、第1液晶組成物の硬化物からなる第1異方性層及び第2液晶組成物の硬化物からなる第2異方性層を含み、各液晶組成物は、逆分散液晶化合物を含む。また、本発明の積層体においては、第1異方性層の遅相軸と、第2異方性層の遅相軸と、が直交する。
第1異方性層及び第2異方性層は、いずれも、光を照射する前よりも光を照射した後において、面内レターデーションが大きくなる傾向がある。本発明の積層体では、2つの異方性層の遅相軸が直交しているので、光照射の前後における面内レターデーションの見かけ上の変化を小さくすることができる。その結果、積層体の耐光性を優れたものとすることができる。
第1異方性層及び第2異方性層は、いずれも、高温環境下に置く前よりも高温環境下に置いた後において、面内レターデーションが小さくなる傾向がある。本発明の積層体では、2つの異方性層の遅相軸が直交しているので、高温環境下に置く前後における面内レターデーションの見かけ上の変化を小さくすることができる。その結果、積層体の耐熱性を優れたものとすることができる。
以上より、本発明によれば、耐光性及び耐熱性の両方に優れる積層体及びその製造方法、ならびに、光学フィルムを提供できる。
【実施例
【0226】
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
【0227】
以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、別に断らない限り、重量基準である。また、以下に説明する操作は、別に断らない限り、常温常圧大気中において行った。
【0228】
[評価方法]
以下、各実施例及び比較例で行った評価方法を説明する。以下に説明する評価は、別に断らない限り、耐光性試験及び耐熱性試験を実施する前に行った。
【0229】
[異方性層の面内レターデーションの測定方法]
各例で製造した複層フィルムの異方性層を、基材から剥がし、異方性層単体で、位相差計(Axometorics社製「AxoScan」)を用いて面内レターデーションを測定した。
【0230】
[厚みの測定]
各例で製造した複層フィルムの異方性層を、基材から剥がし、異方性層単体の厚みを、膜厚測定装置(フィルメトリクス社製「フィルメトリクス」)を用いて、測定した。
【0231】
[積層体の耐熱性の評価方法]
実施例又は比較例で製造した積層体の評価サンプルの、耐熱性試験前の面内レターデーションRe0を、位相差計(Axometorics社製「AxoScan」)を用いて、測定波長590nmで測定した。前記の評価サンプルにおいて、粘着層及びガラス板は光学等方性を有するので、評価サンプルを用いて測定された面内レターデーションは、液晶硬化層自体の面内レターデーションを表す。
【0232】
その後、前記評価サンプルを、85℃に設定されたオーブンに150時間入れて加熱する耐熱試験(劣化促進試験)を実施した。耐熱試験後に評価サンプルをオーブンから取り出した。
【0233】
その後、耐熱性試験前のレターデーションRe0の測定と同じ方法により、耐熱試験後の評価サンプルの面内レターデーションRe100を測定した。
そして、下記の式(F1)により、耐熱試験による面内レターデーションReの変化率(%)(Re変化率(T))を算出した。この変化率が0%に近いほど、耐熱性試験によるレターデーションの変化を効果的に抑制できていることを表す。
Re変化率(T)={(Re100-Re0)/Re0}×100 (F1)
【0234】
[積層体の耐光性の評価方法]
実施例又は比較例で製造した積層体の評価サンプルの、耐光性試験前の面内レターデーションRe0を、位相差計(Axometorics社製「AxoScan」)を用いて、測定波長590nmで測定した。前記の評価サンプルにおいて、粘着層及びガラス板は光学等方性を有するので、評価サンプルを用いて測定された面内レターデーションは、液晶硬化層自体の面内レターデーションを表す。
【0235】
その後、前記評価サンプルの耐光性試験を実施した。この耐光性試験では、カーボンアーク試験機(スガ試験機社製「紫外線フェードメーター U48」)を用い、評価サンプルの液晶面を5時間、紫外線に暴露した。
【0236】
その後、対光性試験前のレターデーションRe0の測定と同じ方法により、耐光試験後の評価サンプルの液晶面の面内レターデーションRe5hを測定した。
そして、下記の式(F2)により、耐光試験による面内レターデーションReの変化率(%)を算出した。この変化率が0%に近いほど、耐光性試験によるレターデーションの変化を効果的に抑制できていることを表す。
Re変化率(対光試験)={(Re5h-Re0)/Re0}×100 (F2)
【0237】
[色相b*の測定]
実施例又は比較例で製造した積層体の評価サンプルの、可視領域(380nmから780nmまで)の透過率を1.0nm間隔で分光光度計(日本分光社製「V-550」)により測定した。測定結果を用いて、色相b*を算出した。この時の観測条件は、視野2°、光源D65、データ間隔2nmとした。
【0238】
[製造例1.基材の製造]
各異方性層の製造に用いる基材を以下の方法により製造した。
(P1-1.延伸前基材の製造)
脂環式構造含有重合体を含むペレット状の熱可塑性ノルボルネン樹脂(日本ゼオン社製、ガラス転移温度Tg=126℃)を、90℃で5時間乾燥させた。乾燥させた樹脂を押し出し機に供給し、押し出し機内で溶融させた。溶融した樹脂を、ポリマーパイプ及びポリマーフィルターを通した後、Tダイからキャスティングドラム上に、シート状に押し出した。この押し出されたシート状の樹脂を冷却して、延伸前基材を得た。この延伸前基材を、マスキングフィルム(トレデガー社製「FF1025」)で保護しながら巻取り、厚み80μm、幅800mmの延伸前基材のロールを得た。
【0239】
(P1-2.基材の製造)
(P1-1)で製造した延伸前フィルムのロールから延伸前基材を繰り出し、長手方向に搬送しながら、以下の処理を行った。
繰り出された延伸前フィルムから連続的にマスキングフィルムを剥離して、テンター延伸機に供給した。このテンター延伸機を用いて、延伸前基材を斜め方向に延伸して、幅手方向に対して45°(長手方向に対して45°)の角度をなす遅相軸を有する基材を得た。その後、基材の幅手方向の両端をトリミングし、幅600mmで長尺状の基材を得た。得られた基材の測定波長590nmにおける面内レターデーションは143nm、厚みは77μmであった。得られた基材は、新たなマスキングフィルム(トレデガー社製「FF1025」)で保護しながら巻取り、基材のロールを得た。
【0240】
[調製例1.液晶組成物X1の調製]
各例の異方性層の製造に用いる液晶組成物を以下の方法により調製した。
下記式(A-1)で表される重合性液晶化合物19.18部、架橋剤(トリシクロデカンジメタノールジアクリレート;式(C1)で表される化合物、新中村化学工業社製、商品名「NKエステルA-DCP」)1.92部(重合性液晶化合物100部に対して10部)、界面活性剤(DIC社製、商品名「メガファックF-562」)0.06部、光重合開始剤(BASF社製、商品名「IrgacureOXE04」)0.84部(重合性液晶化合物100部に対して4部)、ならびに、シクロペンタノンおよび1,3-ジオキソランの混合溶媒(シクロペンタノン:1,3-ジオキソラン=40:60(重量比))78部を混合し、液晶組成物(X1)を調製した。式(A-1)で表される化合物は、逆波長分散性重合性液晶化合物である。
【0241】
【化33】
【0242】
[実施例1:積層体の製造]
(1.第1異方性層の製造)
(1-1.液晶組成物の層の形成)
製造例1で製造した基材のロールから基材を繰り出し、長手方向に搬送しながら、以下の処理を行った。
繰り出された基材から連続的にマスキングフィルムを剥離した。基材のマスキングフィルムが貼合されていた面に、調製例1で調製した液晶組成物(X1)を、ダイコーターを用いて直接に塗布し、液晶組成物の層を形成した。
【0243】
(1-2.配向処理)
(1-1)を行った後、基材上の液晶組成物の層を、110℃で2分加熱した。この加熱により、液晶組成物の層に含まれる重合性液晶化合物を配向させる配向処理が行われた。
【0244】
(1-3.硬化工程)
次に、窒素雰囲気下で、(1-2)を行った後の液晶組成物の層に、積算照度700mJ/cm(照射強度350mW/cm、照射時間2秒)以上の紫外線を照射した。紫外線の光源としては、アイグラフィック社製「水銀ランプ」を用いた。この紫外線の照射により、重合性液晶化合物の重合が進行して、液晶組成物の層が硬化した。これにより、乾燥膜厚2.2μmの、ホモジニアス配向した液晶組成物の硬化物からなる第1異方性層が形成され、(基材)/(第1異方性層)の層構成を有する複層フィルム1-1を得た。得られた複層フィルム1をロール状に巻き取り複層フィルム1-1のフィルムロールとした。
【0245】
(2.第2異方性層の製造)
乾燥膜厚が5.04μmの液晶組成物の硬化物からなる層が得られるように、(1-1)の、繰り出された基材に塗布する液晶組成物(X1)の量を調整したこと以外は、(1.第1異方性層の製造)の(1-1)~(1-3)と同じ操作を行った。これにより、乾燥膜厚5.04μmの、ホモジニアス配向した液晶組成物の硬化物からなる第2異方性層が形成され、(基材)/(第2異方性層)の層構成を有する複層フィルム1-2を得た。得られた複層フィルム1-2をロール状に巻き取り複層フィルム1-2のフィルムロールとした。
【0246】
(3.積層体の製造)
粘着材(日東電工社製「CS9621T」)を貼合したガラス板に、複層フィルム1-1の、第1異方性層側の面を貼合した。その後、基材を剥離した。これにより、第1異方性層/粘着層/ガラス板の層構成を有する複層体を得た。この複層体の第1異方性層側の面に、複層フィルム1-2の第2異方性層側の面を貼り合わせた。複層体と複層フィルム1-2との貼り合わせの際には、複層体の第1異方性層の遅相軸と、複層フィルム1-2の第2異方性層の遅相軸とが直交するように配置した。複層体に貼り合わせた後の複層フィルム1-2から基材を剥離した。これにより、第2異方性層/第1異方性層/粘着層/ガラス板の層構成を有する積層体を得た。この積層体を評価サンプルとして、耐熱性の評価試験、耐光性の評価試験および色相b*の測定を行った。
【0247】
[実施例2]
(第1異方性層の製造)
乾燥膜厚が1.60μmの液晶組成物の硬化物からなる層が得られるように、実施例1の(1-1)の、繰り出された基材に塗布する液晶組成物(X1)の量を調整したこと以外は、実施例1の(1-1)~(1-3)と同じ操作を行った。これにより、乾燥膜厚1.60μmの、ホモジニアス配向した液晶組成物の硬化物からなる第1異方性層が形成され、(基材)/(第1異方性層)の層構成を有する複層フィルム2-1を得た。得られた複層フィルム2-1をロール状に巻き取り複層フィルム2-1のフィルムロールとした。
【0248】
(第2異方性層の製造)
乾燥膜厚が4.50μmの液晶組成物の硬化物からなる層が得られるように、実施例1の(1-1)の、繰り出された基材に塗布する液晶組成物(X1)の量を調整したこと以外は、実施例1の(1-1)~(1-3)と同じ操作を行った。これにより、乾燥膜厚4.50μmの、ホモジニアス配向した液晶組成物の硬化物からなる第2異方性層が形成され、(基材)/(第2異方性層)の層構成を有する複層フィルム2-2を得た。得られた複層フィルム2-2をロール状に巻き取り複層フィルム2-2のフィルムロールとした。
【0249】
(積層体の製造)
実施例1の(3.積層体の製造)において、複層フィルム1-1に代えて複層フィルム2-1を用いたこと、複層フィルム1-2に代えて複層フィルム2-2を用いたこと以外は実施例1の(3.積層体の製造)同じ操作を行い、これにより、第2異方性層/第1異方性層/粘着層/ガラス板の層構成を有する積層体を得た。この積層体を評価サンプルとして、耐熱性の評価試験、耐光性の評価試験および色相b*の測定を行った。
【0250】
[実施例3]
(第1異方性層の製造)
乾燥膜厚が2.70μmの液晶組成物の硬化物からなる層が得られるように、実施例1の(1-1)の、繰り出された基材に塗布する液晶組成物(X1)の量を調整したこと以外は、実施例1の(1-1)~(1-3)と同じ操作を行った。これにより、乾燥膜厚2.70μmの、ホモジニアス配向した液晶組成物の硬化物からなる第1異方性層が形成され、(基材)/(第1異方性層)の層構成を有する複層フィルム3-1を得た。得られた複層フィルム3-1をロール状に巻き取り複層フィルム3-1のフィルムロールとした。
【0251】
(第2異方性層の製造)
乾燥膜厚が5.88μmの液晶組成物の硬化物からなる層が得られるように、実施例1の(1-1)の、繰り出された基材に塗布する液晶組成物(X1)の量を調整したこと以外は、実施例1の(1-1)~(1-3)と同じ操作を行った。これにより、乾燥膜厚5.88μmの、ホモジニアス配向した液晶組成物の硬化物からなる第2異方性層が形成され、(基材)/(第2異方性層)の層構成を有する複層フィルム3-2を得た。得られた複層フィルム3-2をロール状に巻き取り複層フィルム3-2のフィルムロールとした。
【0252】
(積層体の製造)
実施例1の(3.積層体の製造)において、複層フィルム1-1に代えて複層フィルム3-1を用いたこと、複層フィルム1-2に代えて複層フィルム3-2を用いたこと以外は実施例1の(3.積層体の製造)同じ操作を行い、これにより、第2異方性層/第1異方性層/粘着層/ガラス板の層構成を有する積層体を得た。この積層体を評価サンプルとして、耐熱性の評価試験、耐光性の評価試験および色相b*の測定を行った。
【0253】
[比較例1]
乾燥膜厚が2.86μmの液晶組成物の硬化物からなる層が得られるように、実施例1の(1-1)の、繰り出された基材に塗布する液晶組成物(X1)の量を調整したこと以外は、実施例1の(1-1)~(1-3)と同じ操作を行った。これにより、乾燥膜厚2.86μmの、ホモジニアス配向した液晶組成物の硬化物からなる異方性層が形成され、(基材)/(異方性層)の層構成を有する複層フィルムC1を得た。得られた複層フィルムC1をロール状に巻き取り複層フィルムC1のフィルムロールとした。
【0254】
粘着材(日東電工社製「CS9621T」)を貼合したガラス板に、複層フィルムC1の、異方性層側の面を貼合した。その後、基材を剥離した。これにより、異方性層/粘着層/ガラス板の層構成を有する複層体を得た。複層体は異方性層を1層のみ含む。この複層体を評価サンプルとして、耐熱性の評価試験、耐光性の評価試験および色相b*の測定を行った。
【0255】
上述した実施例及び比較例の結果を、下記の表1に示す。表1には、比較例1の複層体に含まれる1つの異方性層は、第2異方性層として記載した。
【0256】
【表1】
【0257】
表1に示す結果から、本発明の積層体では、耐光試験前後のRe変化率が小さく、対熱試験前後のRe変化率が小さいことが分かる。これより、本発明によれば、耐光性及び耐熱性の両方に優れる積層体を提供することができるということがわかる。