(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】電荷輸送性ワニス
(51)【国際特許分類】
H10K 50/155 20230101AFI20230711BHJP
C09K 11/06 20060101ALI20230711BHJP
H10K 71/15 20230101ALI20230711BHJP
H10K 85/10 20230101ALI20230711BHJP
H10K 85/60 20230101ALI20230711BHJP
C07C 211/54 20060101ALN20230711BHJP
C07C 309/75 20060101ALN20230711BHJP
【FI】
H10K50/155
C09K11/06 690
H10K71/15
H10K85/10
H10K85/60
C07C211/54
C07C309/75
(21)【出願番号】P 2019560518
(86)(22)【出願日】2018-12-19
(86)【国際出願番号】 JP2018046693
(87)【国際公開番号】W WO2019124415
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-12-03
(31)【優先権主張番号】P 2017243550
(32)【優先日】2017-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 歳幸
【審査官】横川 美穂
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/099808(WO,A1)
【文献】特開2007-137801(JP,A)
【文献】国際公開第2015/050253(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/146965(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/188998(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/190326(WO,A1)
【文献】特開2011-022509(JP,A)
【文献】特許第5994213(JP,B2)
【文献】特表2009-510795(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107118206(CN,A)
【文献】国際公開第97/049548(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 50/00-102:20
H05B 33/00-33/28
C09K 11/06
C07C 309/75
C07C 211/54
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アリールスルホン酸エステル化合物、(B)少なくとも1つの窒素原子を有し、かつ全ての窒素原子が3級アリールアミン構造を有する3級アリールアミン化合物、及び(C)有機溶媒を含む電荷輸送性ワニス
であって、
前記アリールスルホン酸エステル化合物が、下記式(1)又は(1')で表されるものであり、
前記3級アリールアミン化合物が、下記式(A1)若しくは(A2)で表される化合物、下記式(A3)で表される化合物、下記式(A4)で表される化合物、式(A5a)で表される繰り返し単位若しくは下記式(A5b)で表される繰り返し単位を含むポリマー、下記式(A6)で表される化合物、又は下記式(A7)で表される化合物である
電荷輸送性ワニス。
【化1】
[式中、A
1
は、置換基を有していてもよい、1つ以上の芳香環を含む炭素数6~20のm価の炭化水素基又は下記式(2)若しくは(3)で表される化合物から誘導されるm価の基であり;
【化2】
(式中、W
1
及びW
2
は、それぞれ独立に、-O-、-S-、-S(O)-若しくは-S(O
2
)-、又は置換基を有していてもよい-N-、-Si-、-P-若しくは-P(O)-である。)
A
2
は、-O-、-S-又は-NH-であり;
A
3
は、炭素数6~20の(n+1)価の芳香族基であり;
X
1
は、炭素数2~5のアルキレン基であり、該アルキレン基の炭素原子間に、-O-、-S-又はカルボニル基が介在していてもよく、該アルキレン基の水素原子の一部又は全部が、更に炭素数1~20のアルキル基で置換されていてもよく;
X
2
は、単結合、-O-、-S-又は-NR-であり、Rは、水素原子又は炭素数1~10の1価炭化水素基であり;
X
3
は、置換基を有していてもよい炭素数1~20の1価炭化水素基であり;
mは、1≦m≦4を満たす整数であり;
nは、1≦n≦4を満たす整数である。]
【化3】
[式中、R
1
及びR
2
は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基若しくはシアノ基、又はハロゲン原子で置換されていてもよい、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数2~20のアルキニル基、炭素数6~20のアリール基若しくは炭素数2~20のヘテロアリール基であり;
Ph
1
は、式(P1)で表される基であり;
Ar
1
は、それぞれ独立に、式(B1)~(B11)のいずれかで表される基であり;
Ar
2
は、それぞれ独立に、式(C1)~(C18)のいずれかで表される基であり;
Ar
3
は、式(D1)~(D8)のいずれかで表される基であり;
pは、1~10の整数であり、qは、1又は2である。
【化4】
(式中、R
3
~R
6
は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基若しくはシアノ基、又はハロゲン原子で置換されていてもよい、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数2~20のアルキニル基、炭素数6~20のアリール基若しくは炭素数2~20のヘテロアリール基である。)
【化5】
(式中、R
7
~R
27
、R
30
~R
51
及びR
53
~R
154
は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基若しくはシアノ基、又はハロゲン原子で置換されていてもよい、ジフェニルアミノ基、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数2~20のアルキニル基、炭素数6~20のアリール基若しくは炭素数2~20のヘテロアリール基であり;
R
28
及びR
29
は、それぞれ独立に、Z
1
で置換されていてもよい、炭素数6~20のアリール基又は炭素数2~20のヘテロアリール基であり;
R
52
は、Z
1
で置換されていてもよい、炭素数6~20のアリール基若しくは炭素数2~20のヘテロアリール基であり;
Z
1
は、ハロゲン原子、ニトロ基若しくはシアノ基、又はZ
2
で置換されていてもよい、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基若しくは炭素数2~20のアルキニル基であり;
Z
2
は、ハロゲン原子、ニトロ基若しくはシアノ基、又はZ
3
で置換されていてもよい、炭素数6~20のアリール基若しくは炭素数2~20のヘテロアリール基であり;
Z
3
は、ハロゲン原子、ニトロ基又はシアノ基であり;
Ar
4
は、それぞれ独立に、各々のアリール基が炭素数6~20のアリール基であるジアリールアミノ基で置換されていてもよい炭素数6~20のアリール基である。)
【化6】
(式中、Ar
4
は前記と同じであり、DPAはジフェニルアミノ基であり;
R
155
は、水素原子、Z
1
で置換されていてもよい炭素数6~14のアリール基、又はZ
1
で置換されていてもよい炭素数2~14のヘテロアリール基であり;
R
156
及びR
157
は、Z
1
で置換されていてもよいフェニル基により置換されていてもよい炭素数6~14のアリール基、Z
1
で置換されていてもよいフェニル基により置換されていてもよい炭素数2~14のヘテロアリール基である。)
【化7】
(式中、DPAはジフェニルアミノ基である。)
【化8】
(式中、rは、2~4の整数であり;
Ar
11
は、置換されていてもよい炭素数6~20のr価の芳香族基であり;
Ar
12
及びAr
13
は、それぞれ独立に、Z
11
で置換されていてもよい炭素数6~20の1価芳香族基であり、Ar
12
とAr
13
とが、互いに結合してこれらが結合する窒素原子と共に環を形成してもよく、また、各Ar
12
及びAr
13
は、互いに同一でも異なっていてもよく;
Z
11
は、ハロゲン原子、ニトロ基若しくはシアノ基、若しくはハロゲン原子で置換されていてもよい、炭素数1~20の1価脂肪族炭化水素基若しくは1価芳香族基、又は重合性基である。)
【化9】
(式中、Ar
21
~Ar
23
は、それぞれ独立に、炭素数6~20の2価芳香族基であり;
Ar
24
~Ar
29
は、それぞれ独立に、Z
21
で置換されていてもよい炭素数6~20の1価芳香族基であり;
Z
21
は、ハロゲン原子、ニトロ基若しくはシアノ基、若しくはハロゲン原子、ニトロ基若しくはシアノ基で置換されていてもよい炭素数1~20の1価脂肪族炭化水素基、-N(Ar
30
)(Ar
31
)、又は重合性基であり、Ar
30
及びAr
31
は、それぞれ独立に、Z
22
で置換されていてもよい炭素数6~20のアリール基であり、これらは互いに結合してこれらが結合する窒素原子と共に環を形成してもよく;
Z
22
は、ハロゲン原子、ニトロ基若しくはシアノ基、若しくはハロゲン原子、ニトロ基若しくはシアノ基で置換されていてもよい炭素数1~20の1価脂肪族炭化水素基である。)
【化10】
(式中、Ar
41
は、炭素数6~20の2価芳香族基であり;
R
301
~R
304
は、それぞれ独立に、炭素数1~20の1価炭化水素基であり、該1価炭化水素基を構成する-CH
2
-の一部が、-O-、-S-、-S(O)-、-S(O
2
)-、-NR'-、カルボニル基、エステル結合又はスルホン酸エステル結合で置換されていてもよく、R'は、水素原子、又は炭素数1~10の1価炭化水素基であり;
R
305
及びR
306
は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~20の1価炭化水素基であるり;
tは、0又は1であり;
m
1
及びm
2
は、それぞれ独立に、0~4の整数であり、m
3
及びm
4
は、それぞれ独立に、0~3の整数である。)
【化11】
(式中、Ar
51
及びAr
52
は、それぞれ独立に、フェニル基、1-ナフチル基又は2-ナフチル基であり;
R
401
及びR
402
は、それぞれ独立に、水素原子、各アリール基が炭素数6~20のアリール基であるジアリールアミノフェニル基、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子であり;
L
21
は、プロパン-2,2-ジイル基又は1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン-2,2-ジイル基を含む2価の連結基であり;
xは、1以上の整数である。)
【化12】
(式中、Ar
61
及びAr
62
は、それぞれ独立に、置換されていてもよい1価芳香族基であり;
Ar
63
~Ar
65
は、それぞれ独立に、置換されていてもよい2価芳香族基であり;
L
31
は、下記式のいずれかで表される連結基である。
【化13】
(式中、Ar
66
~Ar
71
及びAr
74
~Ar
78
は、それぞれ独立に、置換されていてもよい2価芳香族基であり;
Ar
72
及びAr
73
は、それぞれ独立に、置換されていてもよい1価芳香族基であり;
R
501
及びR
502
は、それぞれ独立に、水素原子又は任意の置換基である。))]
【請求項2】
A
1が、フッ素原子で置換された、1つ以上の芳香環を含む炭素数6~20のm価の炭化水素基又は式(2)若しくは(3)で表される化合物から誘導されるm価の基である請求項
1記載の電荷輸送性ワニス。
【請求項3】
前記アリールスルホン酸エステル化合物が、下記式(1-1)~(1-3)のいずれかで表されるものである請求項1
又は2記載の電荷輸送性ワニス。
【化14】
(式中、R
s1~R
s4は、それぞれ独立に、水素原子、又は直鎖状若しくは分岐状の炭素数1~6のアルキル基であり、R
s5は、置換基を有していてもよい炭素数2~20の1価炭化水素基であり;
A
11は、パーフルオロビフェニルから誘導されるm価の基であり、A
12は、-O-又は-S-であり、A
13は、ナフタレン又はアントラセンから誘導される(n+1)価の基であり;
m及びnは、前記と同じである。)
【化15】
(式中、R
s6及びR
s7は、それぞれ独立に、水素原子、又は直鎖状若しくは分岐状の1価脂肪族炭化水素基であり、R
s8は、直鎖状若しくは分岐状の1価脂肪族炭化水素基であるが、R
s6、R
s7及びR
s8の炭素数の合計は6以上
20以下であり;
A
14は、置換基を有していてもよい、1つ以上の芳香環を含む
炭素数6~20のm価の炭化水素基であり、A
15は、-O-又は-S-であり、A
16は、
炭素数6~20の(n+1)価の芳香族基であり;
m及びnは、前記と同じである。)
【化16】
(式中、R
s9~R
s13は、それぞれ独立に、水素原子、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のハロゲン化アルキル基、又は炭素数2~10のハロゲン化アルケニル基であり、
ただし、R
s9
~R
s13
の炭素数の合計は14以下であり、;
R
s14~R
s17は、それぞれ独立に、水素原子、又は直鎖状若しくは分岐状の炭素数1~20の
アルキル基であり;
R
s18は、直鎖状若しくは分岐状の炭素数1~20の1価脂肪族炭化水素基、又は-OR
s19であり、R
s19は、置換基を有していてもよい炭素数2~20の1価炭化水素基であり;
A
17は、-O-、-S-又は-NH-であり;
A
18は、
炭素数6~20の(n+1)価の芳香族基であり;
nは、前記と同じである。)
【請求項4】
前記有機溶媒が、低極性有機溶媒である請求項1~
3のいずれか1項記載の電荷輸送性ワニス。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか1項記載の電荷輸送性ワニスから得られる電荷輸送性薄膜。
【請求項6】
請求項
5記載の電荷輸送性薄膜を備える有機エレクトロルミネッセンス素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電荷輸送性ワニスに関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子には、発光層や電荷注入層として、有機化合物からなる電荷輸送性薄膜が用いられる。特に、正孔注入層は、陽極と、正孔輸送層あるいは発光層との電荷の授受を担い、有機EL素子の低電圧駆動及び高輝度を達成するために重要な機能を果たす。
【0003】
正孔注入層の形成方法は、蒸着法に代表されるドライプロセスとスピンコート法に代表されるウェットプロセスとに大別される。これら各プロセスを比べると、ウェットプロセスの方が大面積に平坦性の高い薄膜を効率的に製造できる。それゆえ、有機ELディスプレイの大面積化が進められている現在、ウェットプロセスで形成可能な正孔注入層が望まれている。
【0004】
このような事情に鑑み、本発明者は、各種ウェットプロセスに適用可能であるとともに、有機EL素子の正孔注入層に適用した場合に優れた特性を実現できる薄膜を与える電荷輸送性材料や、それに用いる有機溶媒に対する溶解性の良好な化合物、及び電荷輸送性ワニスを開発してきている(例えば、特許文献1~5参照)。有機溶媒に可溶な電荷輸送性材料として、特にアリールアミン化合物は広く研究開発されており、更に3級アリールアミン化合物は、ドライプロセス(例えば、非特許文献1参照)、ウェットプロセス(例えば、特許文献5、6参照)の両方で、正孔注入材料として活用されている。
【0005】
前記3級アリールアミン化合物の導電性を発現させる方法として、一般的に、金属酸化物やシアノ化合物と組合せることが知られている(例えば、特許文献5、6、非特許文献1参照)。また、3級アリールアミン化合物をカチオン化させ、アニオン化したスルホン酸化合物と共存させることで、導電性を発現させることもできる(例えば、特許文献6参照)。一方で、中性状態の3級アリールアミン化合物と中性状態のスルホン酸化合物との組合せによる導電性の発現は知られていない。これは、中性状態の3級アリールアミン化合物が可溶な溶媒種(一般的に非極性溶媒)と、中性状態のスルホン酸化合物が可溶な溶媒種(極性溶媒)とが異なることが、主な原因であると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2008/032616号
【文献】国際公開第2008/129947号
【文献】国際公開第2006/025342号
【文献】国際公開第2010/058777号
【文献】国際公開第2015/050253号
【文献】特許第5994213号公報
【文献】特許第5136795号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】Japanese Journal of Applied Physics, Vol. 45, No. 12, pp. 9219-9223 (2006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者は、スルホン酸化合物をエステル化させることにより、極性溶媒だけでなく、非極性溶媒にも可溶化することを報告している(特許文献7)。同報告により、2級アリールアミン化合物がスルホン酸エステル化合物と組合せることで導電性を発現することは明らかとなったが、一方で、3級アリールアミン化合物がスルホン酸エステル化合物により、導電性を発現するかは不明であった。
【0009】
本発明は、前記事情に鑑みなされたものであり、薄膜を形成した際に導電性を発現する、アリールスルホン酸エステル化合物と、3級アリールアミン化合物とを含む電荷輸送性ワニスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、前記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、アリールスルホン酸エステル化合物と、少なくとも1つの窒素原子を有し、全ての窒素原子が3級アリールアミン構造を有する3級アリールアミン化合物とを含む電荷輸送性ワニスを用いて得られる薄膜が、導電性を発現することを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
したがって、本発明は、下記電荷輸送性ワニスを提供する。
1.(A)アリールスルホン酸エステル化合物、(B)少なくとも1つの窒素原子を有し、かつ全ての窒素原子が3級アリールアミン構造を有する3級アリールアミン化合物、及び(C)有機溶媒を含む電荷輸送性ワニス。
2.前記アリールスルホン酸エステル化合物が、フッ素原子含有アリールスルホン酸エステル化合物である1の電荷輸送性ワニス。
3.前記アリールスルホン酸エステル化合物が、下記式(1)又は(1')で表されるものである1の電荷輸送性ワニス。
【化1】
[式中、A
1は、置換基を有していてもよい、1つ以上の芳香環を含む炭素数6~20のm価の炭化水素基又は下記式(2)若しくは(3)で表される化合物から誘導されるm価の基であり;
【化2】
(式中、W
1及びW
2は、それぞれ独立に、-O-、-S-、-S(O)-若しくは-S(O
2)-、又は置換基を有していてもよい-N-、-Si-、-P-若しくは-P(O)-である。)
A
2は、-O-、-S-又は-NH-であり;
A
3は、又は炭素数6~20の(n+1)価の芳香族基であり;
X
1は、炭素数2~5のアルキレン基であり、該アルキレン基の炭素原子間に、-O-、-S-又はカルボニル基が介在していてもよく、該アルキレン基の水素原子の一部又は全部が、更に炭素数1~20のアルキル基で置換されていてもよく;
X
2は、単結合、-O-、-S-又は-NR-であり、Rは、水素原子又は炭素数1~10の1価炭化水素基であり;
X
3は、置換基を有していてもよい炭素数1~20の1価炭化水素基であり;
mは、1≦m≦4を満たす整数であり;
nは、1≦n≦4を満たす整数である。]
4.A
1が、フッ素原子で置換された、1つ以上の芳香環を含む炭素数6~20のm価の炭化水素基又は式(2)若しくは(3)で表される化合物から誘導されるm価の基である3の電荷輸送性ワニス。
5.前記アリールスルホン酸エステル化合物が、下記式(1-1)~(1-3)のいずれかで表されるものである1~4のいずれかの電荷輸送性ワニス。
【化3】
(式中、R
s1~R
s4は、それぞれ独立に、水素原子、又は直鎖状若しくは分岐状の炭素数1~6のアルキル基であり、R
s5は、置換基を有していてもよい炭素数2~20の1価炭化水素基であり;
A
11は、パーフルオロビフェニルから誘導されるm価の基であり、A
12は、-O-又は-S-であり、A
13は、ナフタレン又はアントラセンから誘導される(n+1)価の基であり;
m及びnは、前記と同じである。)
【化4】
(式中、R
s6及びR
s7は、それぞれ独立に、水素原子、又は直鎖状若しくは分岐状の1価脂肪族炭化水素基であり、R
s8は、直鎖状若しくは分岐状の1価脂肪族炭化水素基であるが、R
s6、R
s7及びR
s8の炭素数の合計は6以上であり;
A
14は、置換基を有していてもよい、1つ以上の芳香環を含むm価の炭化水素基であり、A
15は、-O-又は-S-であり、A
16は、(n+1)価の芳香族基であり;
m及びnは、前記と同じである。)
【化5】
(式中、R
s9~R
s13は、それぞれ独立に、水素原子、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のハロゲン化アルキル基、又は炭素数2~10のハロゲン化アルケニル基であり;
R
s14~R
s17は、それぞれ独立に、水素原子、又は直鎖状若しくは分岐状の炭素数1~20の1価脂肪族炭化水素基であり;
R
s18は、直鎖状若しくは分岐状の炭素数1~20の1価脂肪族炭化水素基、又は-OR
s19であり、R
s19は、置換基を有していてもよい炭素数2~20の1価炭化水素基であり;
A
17は、-O-、-S-又は-NH-であり;
A
18は、(n+1)価の芳香族基であり;
nは、前記と同じである。)
6.前記3級アリールアミン化合物が、少なくとも2つの窒素原子を有し、かつ全ての窒素原子が3級アリールアミン構造を有するものである1~5のいずれかの電荷輸送性ワニス。
7.前記有機溶媒が、低極性有機溶媒である1~6のいずれかの電荷輸送性ワニス。
8.1~7のいずれかの電荷輸送性ワニスから得られる電荷輸送性薄膜。
9.8の電荷輸送性薄膜を備える有機EL素子。
【発明の効果】
【0012】
本発明の電荷輸送性ワニス中のスルホン酸エステル化合物は、低分子・高分子を問わず広く3級アリールアミン化合物に作用し、導電性を発現させることができる。またワニス中では前記スルホン酸化合物と導電性材料はともに中性状態であり、アニオンやカチオンを含むワニスとは異なり、インク導電率がゼロとなる。これにより、有機EL素子に適用した場合に優れた素子特性の実現を可能にする、大気安定性に優れた正孔注入性ワニスを提供することができる。
【0013】
また、本発明の電荷輸送性ワニスから得られる薄膜は、高電荷輸送性を示すため、正孔注入層又は正孔輸送層として使用した場合に有機EL素子の駆動電圧を低下させることができる。この薄膜の高平坦性及び高電荷輸送性を利用して、太陽電池の正孔輸送層、燃料電池用電極、コンデンサ電極保護膜、帯電防止膜への応用も可能である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[電荷輸送性ワニス]
本発明の電荷輸送性ワニスは、(A)アリールスルホン酸エステル化合物、(B)少なくとも1つの窒素原子を有し、かつ全ての窒素原子が3級アリールアミン構造を有する3級アリールアミン化合物、及び(C)有機溶媒を含むものである。なお、本発明において電荷輸送性とは、導電性と同義であり、正孔輸送性とも同義である。また、本発明の電荷輸送性ワニスは、それ自体に電荷輸送性があるものでもよく、ワニスを使用して得られる固体膜に電荷輸送性があるものでもよい。
【0015】
[(A)アリールスルホン酸エステル化合物]
(A)成分のアリールスルホン酸エステル化合物は、電子受容性物質前駆体として機能するものである。なお、本発明において電子受容性物質とは、電子輸送能及び成膜均一性を向上させるために用いられるものである。前記アリールスルホン酸エステル化合物は、芳香環上にスルホン酸エステル基が結合したものであれば特に限定されない。
【0016】
本発明の好ましい一態様において、前記アリールスルホン酸エステル化合物の分子量は、好ましくは100以上、より好ましくは200以上であり、好ましくは5,000以下、より好ましくは4,000以下、より一層好ましくは3,000以下、更に好ましくは2,000以下である。本発明の好ましい一態様において、前記アリールスルホン酸エステル化合物が有するスルホン酸エステル基の数は、好ましくは2以上、より好ましくは3以上であり、好ましくは6以下、より好ましくは5以下である。本発明の好ましい一態様において、前記アリールスルホン酸エステル化合物は、好ましくはフッ素で置換された芳香族環を含む。
【0017】
前記アリールスルホン酸エステル化合物としては、下記式(1)又は(1')で表されるものが好ましい。
【化6】
【0018】
式(1)及び(1')中、A
1は、置換基を有していてもよい、1つ以上の芳香環を含む炭素数6~20のm価の炭化水素基、又は下記式(2)若しくは(3)で表される化合物から誘導されるm価の基(すなわち、下記式(2)若しくは(3)で表される化合物の芳香環上のm個の水素原子を取り除いて得られる基)である。
【化7】
(式中、W
1及びW
2は、それぞれ独立に、-O-、-S-、-S(O)-若しくは-S(O
2)-、又は置換基を有していてもよい-N-、-Si-、-P-若しくは-P(O)-である。)
【0019】
前記1つ以上の芳香環を含む炭素数6~20のm価の炭化水素基は、1つ以上の芳香環を含む炭素数6~20の炭化水素からm個の水素原子を取り除いて得られる基である。前記1つ以上の芳香環を含む炭化水素としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、ビフェニル、ナフタレン、アントラセン、ピレン等が挙げられる。これらのうち、前記炭化水素基としては、ベンゼン、ビフェニル等から誘導される基が好ましい。
【0020】
前記炭化水素基は、その水素原子の一部又は全部が、更に置換基で置換されていてもよい。前記置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、アミノ基、シラノール基、チオール基、カルボキシ基、スルホン酸エステル基、リン酸基、リン酸エステル基、エステル基、チオエステル基、アミド基、1価炭化水素基、オルガノオキシ基、オルガノアミノ基、オルガノシリル基、オルガノチオ基、アシル基、スルホ基等で置換されていてもよい。
【0021】
ここで、前記1価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、シクロペンチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基等の炭素数1~10のアルキル基;ビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、イソプロペニル基、1-メチル-2-プロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、ヘキセニル基等の炭素数2~10のアルケニル基;フェニル基、キシリル基、トリル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基等の炭素数6~20のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基等の炭素数7~20アラルキル基等が挙げられる。
【0022】
前記オルガノオキシ基としては、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アリールオキシ基等が挙げられる。これらに含まれるアルキル基、アルケニル基及びアリール基としては、前述したものと同様のものが挙げられる。
【0023】
前記オルガノアミノ基としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、ブチルアミノ基、ペンチルアミノ基、ヘキシルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、ヘプチルアミノ基、オクチルアミノ基、ノニルアミノ基、デシルアミノ基、ドデシルアミノ基等の炭素数1~12のアルキルアミノ基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジペンチルアミノ基、ジヘキシルアミノ基、ジシクロヘキシルアミノ基、ジヘプチルアミノ基、ジオクチルアミノ基、ジノニルアミノ基、ジデシルアミノ基等の各アルキル基が炭素数1~12のアルキル基であるジアルキルアミノ基;モルホリノ基等が挙げられる。
【0024】
前記オルガノシリル基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリプロピルシリル基、トリブチルシリル基、トリペンチルシリル基、トリヘキシルシリル基、ペンチルジメチルシリル基、ヘキシルジメチルシリル基、オクチルジメチルシリル基、デシルジメチルシリル基等の各アルキル基が炭素数1~10のアルキル基であるトリアルキルシリル基が挙げられる。
【0025】
前記オルガノチオ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基、ノニルチオ基、デシルチオ基、ドデシルチオ基等の炭素数1~12のアルキルチオ基が挙げられる。
【0026】
前記アシル基としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ベンゾイル基等の炭素数1~10のアシル基が挙げられる。
【0027】
なお、前記1価炭化水素基、オルガノオキシ基、オルガノアミノ基、オルガノアミノ基、オルガノシリル基、オルガノチオ基及びアシル基の炭素数は、1~8が好ましい。
【0028】
これら各置換基の中でも、フッ素原子、スルホン酸基、アルキル基、オルガノオキシ基、オルガノシリル基がより好ましい。
【0029】
式(1)中、A2は、-O-、-S-又は-NH-である。これらのうち、合成が容易であることから、-O-が好ましい。
【0030】
式(1)中、A3は、炭素数6~20の(n+1)価の芳香族基である。前記芳香族基は、炭素数6~20の芳香族化合物から芳香環上の(n+1)個の水素原子を取り除いて得られる基である。なお、本発明において芳香族化合物は、芳香族炭化水素及び芳香族複素環式化合物を意味する。前記芳香族化合物としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、ビフェニル、ナフタレン、アントラセン、ピレン等が挙げられるが、これらのうち、A3で表される芳香族基としては、ナフタレン又はアントラセンから誘導される基が好ましい。
【0031】
式(1)及び(1')中、X1は、炭素数2~5のアルキレン基である、また、前記アルキレン基は、その炭素原子間に、-O-、-S-又はカルボニル基が介在していてもよく、その水素原子の一部又は全部が、更に炭素数1~20のアルキル基で置換されていてもよい。X1としては、エチレン基、トリメチレン基、メチレンオキシメチレン基、メチレンチオメチレン基等が好ましく、これらの基の水素原子の一部又は全部が、更に炭素数1~20のアルキル基で置換されていてもよい。前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、シクロペンチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、ビシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0032】
式(1)及び(1')中、X2は、単結合、-O-、-S-又は-NR-である。Rは、水素原子又は炭素数1~10の1価炭化水素基である。前記1価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基等のアルキル基が好ましい。X2としては、単結合、-O-又は-S-が好ましく、単結合又は-O-がより好ましい。
【0033】
式(1)及び(1')中、X3は、置換されていてもよい炭素数1~20の1価炭化水素基である。前記1価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、シクロペンチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、ビシクロヘキシル基等の炭素数1~20のアルキル基;ビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、イソプロペニル基、1-メチル-2-プロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、ヘキセニル基等の炭素数2~20のアルケニル基;フェニル基、キシリル基、トリル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、1-アントリル基、2-アントリル基、9-アントリル基、1-フェナントリル基、2-フェナントリル基、3-フェナントリル基、4-フェナントリル基、9-フェナントリル基、2-ビフェニリル基、3-ビフェニリル基、4-ビフェニリル基等の炭素数6~20のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルシクロヘキシル基等の炭素数7~20のアラルキル基等が挙げられる。また、前記1価炭化水素基の水素原子の一部又は全部が、更に置換基で置換されていてもよい。前記置換基としては、A1の説明において述べたものと同様のものが挙げられる。X3としては、炭素数1~20のアルキル基、又は炭素数6~20のアリール基が好ましい。
【0034】
式(1)及び(1')中、mは、1≦m≦4を満たす整数であるが、2が好ましい。nは、1≦n≦4を満たす整数であるが、2が好ましい。
【0035】
式(1)又は(1')で表されるアリールスルホン酸エステル化合物は低極性溶媒を含む広範囲の溶媒に対して高溶解性を示すため、多種多様な溶媒を使用して溶液の物性を調製することが可能であり、塗布特性が高い。そのため、スルホン酸エステルの状態で塗布し、塗膜の乾燥時又は焼成時にスルホン酸を発生させることが好ましい。スルホン酸エステルからスルホン酸が発生する温度は、室温で安定、かつ焼成温度以下であることが好ましいため、40~260℃がよい。更に、ワニス内での高い安定性と焼成時の脱離の容易性を考慮すると、80~230℃が好ましく、120~180℃がより好ましい。
【0036】
式(1)で表されるアリールスルホン酸エステル化合物としては、下記式(1-1)~(1-3)のいずれかで表されるものが好ましい。
【化8】
(式中、m及びnは、前記と同じ。)
【0037】
式(1-1)中、A11は、パーフルオロビフェニルから誘導されるm価の基(すなわち、パーフルオロビフェニルからm個のフッ素原子を取り除いて得られる基)である。A12は、-O-又は-S-であるが、-O-が好ましい。A13は、ナフタレン又はアントラセンから誘導される(n+1)価の基であるが、ナフタレンから誘導される基が好ましい。
【0038】
式(1-1)中、Rs1~Rs4は、それぞれ独立に、水素原子、又は直鎖状若しくは分岐状の炭素数1~6のアルキル基であり、Rs5は、置換されていてもよい炭素数2~20の1価炭化水素基である。
【0039】
前記直鎖状若しくは分岐状のアルキル基としては、特に限定されないが、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ヘキシル基等が挙げられる。これらのうち、炭素数1~3のアルキル基が好ましい。
【0040】
前記炭素数2~20の1価炭化水素基としては、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基等のアルキル基、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基等のアリール基等が挙げられる。
【0041】
Rs1~Rs4のうち、Rs1又はRs3が炭素数1~3の直鎖アルキル基であり、残りが水素原子であることが好ましい。更に、Rs1が炭素数1~3の直鎖アルキル基であり、Rs2~Rs4が水素原子であることが好ましい。前記炭素数1~3の直鎖アルキル基としては、メチル基が好ましい。また、Rs5としては、炭素数2~4の直鎖アルキル基又はフェニル基が好ましい。
【0042】
式(1-2)中、A14は、置換されていてもよい、1つ以上の芳香環を含む炭素数6~20のm価の炭化水素基である。前記炭化水素基は、1つ以上の芳香環を含む炭素数6~20のm価の炭化水素からm個の水素原子を取り除いて得られる基である。前記炭化水素としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ビフェニル、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン等が挙げられる。また、前記炭化水素基は、その水素原子の一部又は全部が、更に置換基で置換されていてもよく、前記置換基としては、A1の説明において述べたものと同様のものが挙げられる。A14として好ましくは、A1の好適例として説明したものと同様のものが挙げられる。
【0043】
式(1-2)中、A15は、-O-又は-S-であるが、-O-が好ましい。
【0044】
式(1-2)中、A16は、炭素数6~20の(n+1)価の芳香族基である。前記芳香族基は、炭素数6~20の芳香族化合物の芳香環上から(n+1)個の水素原子を取り除いて得られる基である。前記芳香族化合物としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、ビフェニル、ナフタレン、アントラセン、ピレン等が挙げられる。これらのうち、A16としては、ナフタレン又はアントラセンから誘導される基であることが好ましく、ナフタレンから誘導される基であることがより好ましい。
【0045】
式(1-2)中、Rs6及びRs7は、それぞれ独立に、水素原子、又は直鎖状若しくは分岐状の1価脂肪族炭化水素基である。Rs8は、直鎖状若しくは分岐状の1価脂肪族炭化水素基である。ただし、Rs6、Rs7及びRs8の炭素数の合計は6以上である。Rs6、Rs7及びRs8の炭素数の合計の上限は、特に限定されないが、20以下が好ましく、10以下がより好ましい。
【0046】
前記直鎖状若しくは分岐状の1価脂肪族炭化水素基としては、特に限定されないが、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、デシル基等の炭素数1~20のアルキル基;ビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、イソプロペニル基、1-メチル-2-プロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、ヘキセニル基等の炭素数2~20のアルケニル基等が挙げられる。
【0047】
Rs6としては、水素原子が好ましく、Rs7及びRs8としては、炭素数1~6のアルキル基が好ましい。この場合、Rs7及びRs8は、同一であっても異なっていてもよい。
【0048】
式(1-2)中、mは、1≦m≦4を満たす整数であるが、2が好ましい。nは、1≦n≦4を満たす整数であるが、2が好ましい。
【0049】
式(1-3)中、Rs9~Rs13は、それぞれ独立に、水素原子、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のハロゲン化アルキル基、又は炭素数2~10のハロゲン化アルケニル基である。
【0050】
前記炭素数1~10のアルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、シクロペンチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基等が挙げられる。
【0051】
前記炭素数1~10のハロゲン化アルキル基は、炭素数1~10のアルキル基の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換された基であれば、特に限定されない。前記ハロゲン化アルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、トリフルオロメチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル基、1,1,2,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロピル基、4,4,4-トリフルオロブチル基、3,3,4,4,4-ペンタフルオロブチル基、2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロブチル基、1,1,2,2,3,3,4,4,4-ノナフルオロブチル基等が挙げられる。
【0052】
前記炭素数2~10のハロゲン化アルケニル基としては、炭素数2~10のアルケニル基の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換された基であれば、特に限定されない。その具体例としては、パーフルオロビニル基、パーフルオロ-1-プロペニル基、パーフルオロ-2-プロペニル基、パーフルオロ-1-ブテニル基、パーフルオロ-2-ブテニル基、パーフルオロ-3-ブテニル基等が挙げられる。
【0053】
これらのうち、Rs9としては、ニトロ基、シアノ基、炭素数1~10のハロゲン化アルキル基、炭素数2~10のハロゲン化アルケニル基等が好ましく、ニトロ基、シアノ基、炭素数1~4のハロゲン化アルキル基、炭素数2~4のハロゲン化アルケニル基等がより好ましく、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、パーフルオロプロペニル基等がより一層好ましい。また、Rs10~Rs13としては、ハロゲン原子が好ましく、フッ素原子がより好ましい。
【0054】
式(1-3)中、A17は、-O-、-S-又は-NH-であるが、-O-が好ましい。
【0055】
式(1-3)中、A18は、炭素数6~20の(n+1)価の芳香族基である。前記芳香族基は、炭素数6~20の芳香族化合物の芳香環上から(n+1)個の水素原子を取り除いて得られる基である。前記芳香族化合物としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、ビフェニル、ナフタレン、アントラセン、ピレン等が挙げられる。これらのうち、A18としては、ナフタレン又はアントラセンから誘導される基であることが好ましく、ナフタレンから誘導される基であることがより好ましい。
【0056】
式(1-3)中、Rs14~Rs17は、それぞれ独立に、水素原子、又は直鎖状若しくは分岐状の炭素数1~20の1価脂肪族炭化水素基である。
【0057】
前記1価脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、シクロペンチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基等の炭素数1~20のアルキル基;ビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、イソプロペニル基、1-メチル-2-プロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、ヘキセニル基等の炭素数2~20のアルケニル基等が挙げられる。これらのうち、炭素数1~20のアルキル基が好ましく、炭素数1~10のアルキル基がより好ましく、炭素数1~8のアルキル基がより好ましい。
【0058】
式(1-3)中、Rs18は、直鎖状若しくは分岐状の炭素数1~20の1価脂肪族炭化水素基、又は-ORs19である。Rs19は、置換されていてもよい炭素数2~20の1価炭化水素基である。
【0059】
Rs18で表される直鎖状又は分岐状の炭素数1~20の1価脂肪族炭化水素基としては、前述したものと同様のものが挙げられる。Rs18が1価脂肪族炭化水素基である場合、Rs18としては、炭素数1~20のアルキル基が好ましく、炭素数1~10のアルキル基がより好ましく、炭素数1~8のアルキル基がより一層好ましい。
【0060】
Rs19で表される炭素数2~20の1価炭化水素基としては、前述した1価脂肪族炭化水素基のうちメチル基以外のもののほか、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基等のアリール基等が挙げられる。これらのうち、Rs19としては、炭素数2~4の直鎖アルキル基又はフェニル基が好ましい。また、前記1価炭化水素基が有していてもよい置換基としては、フルオロ基、炭素数1~4のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基等が挙げられる。
【0061】
式(1-3)中、nは、1≦n≦4を満たす整数であるが、2が好ましい。
【0062】
式(1-3)で表されるアリールスルホン酸エステル化合物としては、特に、下記式(1-3-1)又は(1-3-2)で表されるものが好ましい。
【化9】
【0063】
式中、A17、A18、Rs9~Rs17、Rs19及びnは、前記と同じ。Rs20は、直鎖状又は分岐状の炭素数1~20の1価脂肪族炭化水素基であり、その具体例としては、Rs18の説明において述べたものと同様のものが挙げられる。
【0064】
式(1-3-1)で表されるアリールスルホン酸エステル化合物においては、Rs14~Rs17のうち、Rs14又はRs16が炭素数1~3の直鎖アルキル基であり、残りが水素原子であることが好ましい。更に、Rs14が、炭素数1~3の直鎖アルキル基であり、Rs15~Rs17が水素原子であることが好ましい。前記炭素数1~3の直鎖アルキル基としては、メチル基が好ましい。また、Rs19としては、炭素数2~4の直鎖アルキル基又はフェニル基が好ましい。
【0065】
式(1-3-2)で表されるアリールスルホン酸エステル化合物においては、Rs14、Rs16及びRs20の炭素数の合計は6以上であることが好ましい。Rs14、Rs16及びRs20の炭素数の合計の上限は、20以下が好ましく、10以下がより好ましい。この場合、Rs14としては、水素原子が好ましく、Rs16及びRs20としては、炭素数1~6のアルキル基が好ましい。また、Rs16及びRs20は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0066】
式(1)で表されるアリールスルホン酸エステル化合物は、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0067】
式(1)で表されるアリールスルホン酸エステル化合物は、例えば、下記スキームAに示すように、式(1A)で表されるスルホン酸塩化合物とハロゲン化剤とを反応させて、下記式(1B)で表されるスルホニルハライド化合物を合成し(以下、工程1ともいう。)、該スルホニルハライド化合物と式(1C)で表される化合物とを反応させる(以下、工程2ともいう。)ことで合成することができる。
【化10】
(式中、A
1~A
3、X
1~X
3、m及びnは、前記と同じ。M
+は、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ピリジニウムイオン、4級アンモニウムイオン等の1価のカチオンである。Halは、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子である。)
【0068】
式(1A)で表されるスルホン酸塩化合物は、公知の方法に従って合成することができる。
【0069】
工程1において使用するハロゲン化剤としては、塩化チオニル、塩化オキサリル、オキシ塩化リン、塩化リン(V)等のハロゲン化剤が挙げられるが、塩化チオニルが好適である。ハロゲン化剤の使用量は、スルホン酸塩化合物に対して1倍モル以上であれば限定されないが、スルホン酸塩化合物に対して質量比で2~10倍量用いることが好ましい。
【0070】
工程1において使用される反応溶媒としては、ハロゲン化剤と反応しない溶媒が好ましく、クロロホルム、ジクロロエタン、四塩化炭素、ヘキサン、ヘプタン等を挙げることができる。また、無溶媒でも反応を行うことができ、この場合、反応終了時には均一系溶液となる量以上でハロゲン化剤を用いることが好ましい。また、反応を促進させるため、N,N-ジメチルホルムアミド等の触媒を使用してもよい。反応温度は0~150℃程度とすることができるが、20~100℃、かつ、使用するハロゲン化剤の沸点以下が好ましい。反応終了後、一般的には、減圧濃縮等により得た粗生成物を次工程に用いる。
【0071】
式(1C)で表される化合物としては、例えば、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル等のグリコールエーテル類;2-エチル-1-ヘキサノール、2-ブチル-1-オクタノール、1-オクタノール、3-ノナノール等のアルコール類等が挙げられる。
【0072】
工程2においては、塩基を併用してもよい。使用可能な塩基としては、水素化ナトリウム、ピリジン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等が挙げられるが、水素化ナトリウム、ピリジン、トリエチルアミンが好適である。塩基の使用量は、スルホニルハライド化合物に対して1倍モル~溶媒量が好適である。
【0073】
工程2において使用される反応溶媒としては、各種有機溶媒を用いることができるが、テトラヒドロフラン、ジクロロエタン、クロロホルム、ピリジンが好適である。反応温度は特に限定されないが、0~80℃が好適である。反応終了後、減圧濃縮、分液抽出、水洗、再沈殿、再結晶、クロマトグラフィー等の常法を用いて後処理、精製し、純粋なアリールスルホン酸エステル化合物を得ることができる。なお、得られた純粋なアリールスルホン酸エステル化合物に熱処理等を施すことで、高純度のスルホン酸化合物に導くこともできる。
【0074】
また、式(1)で表されるアリールスルホン酸エステル化合物は、下記スキームBに示すように、式(1D)で表されるスルホン酸化合物から合成することもできる。なお、下記スキームBにおいて、1段目及び2段目の反応で使用するハロゲン化剤、式(1C)で表される化合物、反応溶媒及びその他の成分は、スキームAにおける工程1及び2と同様のものを使用することができる。
【化11】
(式中、A
1~A
3、X
1~X
3、Hal、m及びnは、前記と同じ。)
【0075】
式(1D)で表されるスルホン酸化合物は、公知の方法に従って合成することができる。
【0076】
式(1')で表されるアリールスルホン酸エステル化合物は、従来公知の方法、例えば、特許第5136795号公報に記載された方法に従って合成することができる。
【0077】
[(B)3級アリールアミン化合物]
(B)成分の3級アリールアミン化合物は、少なくとも1つの窒素原子を有し、かつ全ての窒素原子が3級アリールアミン構造を有するものである。換言すれば、前記3級アリールアミン化合物は、少なくとも1つの窒素原子を有し、全ての窒素原子に3つの芳香族基が結合した構造を有するものである。前記3級アリールアミン化合物中、窒素原子は、2つ以上あることが好ましい。(B)成分の3級アリールアミン化合物は、電荷輸送性物質として機能する。
【0078】
前記3級アリールアミン化合物の好適な例としては、例えば、下記式(A1)又は(A2)で表される化合物が挙げられる。
【化12】
【0079】
式(A2)中、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基若しくはシアノ基、又はハロゲン原子で置換されていてもよい、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数2~20のアルキニル基、炭素数6~20のアリール基若しくは炭素数2~20のヘテロアリール基である。
【0080】
前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0081】
前記炭素数1~20のアルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基等の炭素数1~20の直鎖状又は分岐状アルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、ビシクロブチル基、ビシクロペンチル基、ビシクロヘキシル基、ビシクロヘプチル基、ビシクロオクチル基、ビシクロノニル基、ビシクロデシル基等の炭素数3~20の環状アルキル基等が挙げられる。
【0082】
前記炭素数2~20のアルケニル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、ビニル基、n-1-プロペニル基、n-2-プロペニル基、1-メチルビニル基、n-1-ブテニル基、n-2-ブテニル基、n-3-ブテニル基、2-メチル-1-プロペニル基、2-メチル-2-プロペニル基、1-エチルビニル基、1-メチル-1-プロペニル基、1-メチル-2-プロペニル基、n-1-ペンテニル基、n-1-デセニル基、n-1-エイコセニル基等が挙げられる。
【0083】
前記炭素数2~20のアルキニル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、エチニル基、n-1-プロピニル基、n-2-プロピニル基、n-1-ブチニル基、n-2-ブチニル基、n-3-ブチニル基、1-メチル-2-プロピニル基、n-1-ペンチニル基、n-2-ペンチニル基、n-3-ペンチニル基、n-4-ペンチニル基、1-メチル-n-ブチニル基、2-メチル-n-ブチニル基、3-メチル-n-ブチニル基、1,1-ジメチル-n-プロピニル基、n-1-ヘキシニル基、n-1-デシニル基、n-1-ペンタデシニル基、n-1-エイコシニル基等が挙げられる。
【0084】
前記炭素数6~20のアリール基としては、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、1-アントリル基、2-アントリル基、9-アントリル基、1-フェナントリル基、2-フェナントリル基、3-フェナントリル基、4-フェナントリル基、9-フェナントリル基等が挙げられる。
【0085】
前記炭素数2~20のヘテロアリール基としては、2-チエニル基、3-チエニル基、2-フラニル基、3-フラニル基、2-オキサゾリル基、4-オキサゾリル基、5-オキサゾリル基、3-イソオキサゾリル基、4-イソオキサゾリル基、5-イソオキサゾリル基、2-チアゾリル基、4-チアゾリル基、5-チアゾリル基、3-イソチアゾリル基、4-イソチアゾリル基、5-イソチアゾリル基、2-イミダゾリル基、4-イミダゾリル基、2-ピリジル基、3-ピリジル基、4-ピリジル基等が挙げられる。
【0086】
これらの中でも、R1及びR2としては、水素原子、フッ素原子、シアノ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~20のアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数6~20のアリール基、又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2~20のヘテロアリール基が好ましく、水素原子、フッ素原子、シアノ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~10のアルキル基、又はハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル基がより好ましく、水素原子又はフッ素原子がより一層好ましく、水素原子が最適である。
【0087】
式(A1)及び(A2)中、Ph
1は、式(P1)で表される基である。
【化13】
【0088】
式中、R3~R6は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基若しくはシアノ基、又はハロゲン原子で置換されていてもよい、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数2~20のアルキニル基、炭素数6~20のアリール基若しくは炭素数2~20のヘテロアリール基である。これらの具体例としては、前記R1及びR2で説明したものと同様のものが挙げられる。
【0089】
特に、R3~R6としては、水素原子、フッ素原子、シアノ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~20のアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数6~20のアリール基、又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2~20のヘテロアリール基が好ましく、水素原子、フッ素原子、シアノ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~10のアルキル基、又はハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル基がより好ましく、水素原子又はフッ素原子がより一層好ましく、水素原子が最適である。
【0090】
Ph1として好適な基としては、1,4-フェニレン基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0091】
式(A1)中、Ar1は、それぞれ独立に、式(B1)~(B11)のいずれかで表される基であるが、特に、式(B1')~(B11')のいずれかで表される基が好ましい。
【0092】
【0093】
【0094】
式(B1)~(B11)及び式(B1')~(B11')中、R7~R27、R30~R51及びR53~R154は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基若しくはシアノ基、又はハロゲン原子で置換されていてもよい、ジフェニルアミノ基、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数2~20のアルキニル基、炭素数6~20のアリール基若しくは炭素数2~20のヘテロアリール基である。R28及びR29は、それぞれ独立に、Z1で置換されていてもよい、炭素数6~20のアリール基又は炭素数2~20のヘテロアリール基である。R52は、Z1で置換されていてもよい、炭素数6~20のアリール基若しくは炭素数2~20のヘテロアリール基である。
【0095】
Z1は、ハロゲン原子、ニトロ基若しくはシアノ基、又はZ2で置換されていてもよい、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基若しくは炭素数2~20のアルキニル基である。Z2は、ハロゲン原子、ニトロ基若しくはシアノ基、又はZ3で置換されていてもよい、炭素数6~20のアリール基若しくは炭素数2~20のヘテロアリール基である。Z3は、ハロゲン原子、ニトロ基又はシアノ基である。
【0096】
特に、R7~R27、R30~R51及びR53~R154としては、水素原子、フッ素原子、シアノ基、ハロゲン原子で置換されていてもよいジフェニルアミノ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~20のアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数6~20のアリール基、又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2~20のヘテロアリール基が好ましく、水素原子、フッ素原子、シアノ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~10のアルキル基、又はハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル基がより好ましく、水素原子又はフッ素原子がより一層好ましく、水素原子が最適である。
【0097】
R28及びR29としては、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数6~14のアリール基、又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2~14のヘテロアリール基が好ましく、ハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル基、又はハロゲン原子で置換されていてもよいナフチル基がより好ましく、ハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル基がより一層好ましく、フェニル基が更に好ましい。
【0098】
R52としては、水素原子、Z1で置換されていてもよい炭素数6~20のアリール基が好ましく、水素原子、Z1で置換されていてもよいフェニル基、又はZ1で置換されてもよいナフチル基がより好ましく、Z1で置換されていてもよいフェニル基がより一層好ましく、フェニル基が更に好ましい。
【0099】
式(B10)、(B11)、(B10')及び(B11')中、Ar4は、それぞれ独立に、各々のアリール基が炭素数6~20のアリール基であるジアリールアミノ基で置換されていてもよい炭素数6~20のアリール基である。炭素数6~20のアリール基の具体例としては、前記R1及びR2で説明したものと同様のものが挙げられ、前記ジアリールアミノ基の具体例としては、ジフェニルアミノ基、1-ナフチルフェニルアミノ基、ジ(1-ナフチル)アミノ基、1-ナフチル-2-ナフチルアミノ基、ジ(2-ナフチル)アミノ基等が挙げられる。
【0100】
Ar4としては、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、1-アントリル基、2-アントリル基、9-アントリル基、1-フェナントリル基、2-フェナントリル基、3-フェナントリル基、4-フェナントリル基、9-フェナントリル基、p-(ジフェニルアミノ)フェニル基、p-(1-ナフチルフェニルアミノ)フェニル基、p-(ジ(1-ナフチル)アミノ)フェニル基、p-(1-ナフチル-2-ナフチルアミノ)フェニル基、p-(ジ(2-ナフチル)アミノ)フェニル基等が好ましく、p-(ジフェニルアミノ)フェニル基がより好ましい。
【0101】
式(A1)中、Ar
2は、それぞれ独立に、式(C1)~(C18)のいずれかで表される基であるが、特に、式(C1'-1)~(C18'-2)のいずれかで表される基が好ましい。なお、下記式中、Ar
4は前記と同じであり、DPAはジフェニルアミノ基である。
【化16】
【0102】
【0103】
式(C16)、(C16'-1)及び(C16'-2)中、R155は、水素原子、Z1で置換されていてもよい炭素数6~14のアリール基、又はZ1で置換されていてもよい炭素数2~14のヘテロアリール基である。前記アリール基及びヘテロアリール基としては、R1及びR2の説明において述べたものと同様のものが挙げられる。これらのうち、R155としては、水素原子、Z1で置換されていてもよいフェニル基、Z1で置換されていてもよい1-ナフチル基、Z1で置換されていてもよい2-ナフチル基、Z1で置換されていてもよい2-ピリジル基、Z1で置換されていてもよいフェニル基により置換されていてもよい3-ピリジル基、又はZ1で置換されていてもよい4-ピリジル基が好ましく、Z1で置換されていてもよいフェニル基がより一層好ましく、フェニル基又は(2,3,5,6-テトラフルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル)基が更に好ましい。
【0104】
式(C17)、(C17'-1)及び(C17'-2)中、R156及びR157は、Z1で置換されていてもよいフェニル基により置換されていてもよい炭素数6~14のアリール基、Z1で置換されていてもよいフェニル基により置換されていてもよい炭素数2~14のヘテロアリール基である。前記アリール基及びヘテロアリール基としては、R1及びR2の説明において述べたものと同様のものが挙げられる。これらのうち、R156及びR157としては、Z1で置換されていてもよいフェニル基により置換されていてもよい炭素数6~14のアリール基が好ましく、Z1で置換されていてもよいフェニル基により置換されていてもよいフェニル基、Z1で置換されていてもよいフェニル基により置換されていてもよい1-ナフチル基、又はZ1で置換されていてもよい2-ナフチル基がより好ましい。
【0105】
式(A2)中、Ar
3は、式(D1)~(D8)のいずれかで表される基であるが、特に(D1')~(D8')のいずれかで表される基が好ましい。
【化18】
【0106】
【0107】
式(A1)中、pは、1~10の整数であるが、化合物の有機溶媒に対する溶解性を高める観点から、1~5が好ましく、1~3がより好ましく、1又は2がより一層好ましく、1が最適である。式(A2)中、qは、1又は2である。
【0108】
式(A1)で表されるアニリン誘導体及び式(A2)で表されるアニリン誘導体は、例えば、国際公開第2015/050253号に記載の方法に従って製造することができる。
【0109】
前記3級アリールアミン化合物の他の好適な例としては、例えば、下記式(A3)で表される化合物が挙げられる。
【化20】
【0110】
式(A3)中、rは、2~4の整数である。Ar
11は、置換されていてもよい炭素数6~20のr価の芳香族基である。前記芳香族基は、炭素数6~20の芳香族化合物の芳香環上からr個の水素原子を取り除いて得られる基である。前記芳香族基としては、特に、下記式(A3-1)~(A3-8)のいずれかで表される化合物から誘導される基が好ましい。
【化21】
【0111】
式中、L1~L3は、それぞれ独立に、単結合、-(CR201R202)s-、-C(O)-、-O-、-S-、-S(O)-、-S(O2)-又は-NR203-である。sは、1~6の整数である。L4~L13は、それぞれ独立に、単結合、-CR201R202-、-C(O)-、-O-、-S-、-S(O)-、-S(O2)-又は-NR203-である。R201及びR202は、それぞれ独立に、水素原子、又は炭素数1~20の1価炭化水素基であり、R201及びR202は、互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成していてもよい。なお、-(CR201R202)s-において、sが2以上のとき、各R201及びR202は、互いに同一でも異なっていてもよい。R203は、水素原子、又は炭素数1~20の1価炭化水素基である。
【0112】
また、前記芳香族基は、その水素原子の一部又は全部が、更に置換基で置換されていてもよい。前記置換基としては、式(1)中のA1の説明において述べたものと同様のものが挙げられるが、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、又は炭素数1~20の1価炭化水素基が好ましい。
【0113】
Ar11としては、置換されていてもよい、1,4-フェニレン基、フルオレン-2,7-ジイル基、9,9-ジメチルフルオレン-2,7-ジイル基等が好ましく、置換されていてもよい、1,4-フェニレン基又はビフェニル-4,4'-ジイル基がより好ましい。
【0114】
式(A3)中、Ar12及びAr13は、それぞれ独立に、Z11で置換されていてもよい炭素数6~20の1価芳香族基であり、Ar12とAr13とが、互いに結合してこれらが結合する窒素原子と共に環を形成してもよい。また、各Ar12及びAr13は、互いに同一でも異なっていてもよい。Z11は、ハロゲン原子、ニトロ基若しくはシアノ基、若しくはハロゲン原子で置換されていてもよい、炭素数1~20の1価脂肪族炭化水素基若しくは1価芳香族基、又は重合性基である。
【0115】
前記1価芳香族基としては、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、1-アントリル基、2-アントリル基、9-アントリル基、1-フェナントリル基、2-フェナントリル基、3-フェナントリル基、4-フェナントリル基、9-フェナントリル基、2-ビフェニリル基、3-ビフェニリル基、4-ビフェニリル基等のアリール基等が挙げられる。
【0116】
前記1価脂肪族炭化水素としては、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、シクロペンチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基等の炭素数1~20のアルキル基;ビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、イソプロペニル基、1-メチル-2-プロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、ヘキセニル基等の炭素数2~20のアルケニル基等が挙げられる
【0117】
前記重合性基としては、下記式で表されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化22】
【0118】
式中、Raは、水素原子又はメチル基である。Rb及びRdは、それぞれ独立に、水素原子、又は炭素数1~6のアルキル基であるが、メチル基、エチル基が好ましい。Rc、Re及びRfは、それぞれ独立に、単結合、又は酸素原子、硫黄原子若しくは窒素原子を含んでいてもよい炭素数1~8のアルキレン基である。Rg、Rh及びRiは、それぞれ独立に、水素原子、又はメチル基、エチル基、n-プロピル等の炭素数1~10のアルキル基である。
【0119】
Ya及びYbは、それぞれ独立に、単結合、又は炭素数6~20の2価芳香族基である。前記2価芳香族基としては、1,3-フェニレン基、1,4-フェニレン基、1,5-ナフチレン基、1,6-ナフチレン基、1,7-ナフチレン基、2,6-ナフチレン基、4,4'-ビフェニリレン基等が挙げられる。これらのうち、1,3-フェニレン基又は1,4-フェニレン基が好ましい。
【0120】
Araは、置換基を有していてもよい炭素数6~20の1価芳香族基である。前記1価芳香族基としては、前述したものと同様のものが挙げられる。
【0121】
Z
11としては、メチル基、エチル基、下記式で表される重合性基等が好ましい。
【化23】
【0122】
Ar12及びAr13としては、フェニル基、2-メチルフェニル基、3-メチルフェニル基、4-メチルフェニル基、2-エチルフェニル基、3-エチルフェニル基、4-エチルフェニル基、2-ビニルフェニル基、3-ビニルフェニル基、4-ビニルフェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基等が好ましい。
【0123】
式(A3)で表される化合物は、公知の方法で合成することができ、また、市販品を使用することもできる。
【0124】
前記3級アリールアミン化合物の他の好適な例としては、例えば、下記式(A4)で表されるものが挙げられる。
【化24】
【0125】
式(A4)中、Ar21~Ar23は、それぞれ独立に、炭素数6~20の2価芳香族基である。前記2価芳香族基としては、前述した式(A3-1)、(A3-3)又は(A3-4)で表される化合物から誘導される2価の基がより一層好ましい。
【0126】
これらのうち、Ar21~Ar23としては、1,4-フェニレン基、ビフェニル-4,4'-ジイル基、ターフェニル-4,4''-ジイル基等が好ましく、1,4-フェニレン基又はビフェニル-4,4'-ジイル基がより好ましい。
【0127】
式(A4)中、Ar24~Ar29は、それぞれ独立に、Z21で置換されていてもよい炭素数6~20の1価芳香族基である。前記1価芳香族基としては、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、1-アントリル基、2-アントリル基、9-アントリル基、1-フェナントリル基、2-フェナントリル基、3-フェナントリル基、4-フェナントリル基、9-フェナントリル基、2-ビフェニリル基、3-ビフェニリル基、4-ビフェニリル基等のアリール基等が挙げられる。
【0128】
Z21は、ハロゲン原子、ニトロ基若しくはシアノ基、若しくはハロゲン原子、ニトロ基若しくはシアノ基で置換されていてもよい炭素数1~20の1価脂肪族炭化水素基、-N(Ar30)(Ar31)、又は重合性基である。前記炭素数1~20の1価脂肪族炭化水素基としては、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、シクロペンチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基等の炭素数1~20のアルキル基;ビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、イソプロペニル基、1-メチル-2-プロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、ヘキセニル基等の炭素数2~20のアルケニル基等が挙げられる。前記重合性基としては、前述したものと同様のものが挙げられる。
【0129】
Ar30及びAr31は、それぞれ独立に、Z22で置換されていてもよい炭素数6~20のアリール基であり、これらは互いに結合してこれらが結合する窒素原子と共に環を形成してもよい。Z22は、ハロゲン原子、ニトロ基若しくはシアノ基、若しくはハロゲン原子、ニトロ基若しくはシアノ基で置換されていてもよい炭素数1~20の1価脂肪族炭化水素基である。
【0130】
前記炭素数6~20のアリール基及び炭素数1~20の1価脂肪族炭化水素基としては、前述したものと同様のものが挙げられる。
【0131】
Ar30及びAr31としては、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、1-ビフェニリル基が好ましく、フェニル基、1-ビフェニリル基等がより好ましい。
【0132】
特に、-N(Ar30)(Ar31)としては、ジフェニルアミノ基、フェニル(4-ビフェニリル)アミノ基、ビス(4-ビフェニリル)アミノ基、N-カルバゾリル基等が好ましい。
【0133】
Z21としては、炭素数1~10のアルキル基、-N(Ar30)(Ar31)等が好ましい。
【0134】
Ar24~Ar29としては、フェニル基、4-ビフェニリル基、4-ジフェニルアミノフェニル基、4-フェニル(4-ビフェニリル)アミノフェニル基、ビス(4-ビフェニリル)アミノフェニル基、4'-ジフェニルアミノ-4-ビフェニリル基、4-フェニル(4-ビフェニリル)アミノ-4-ビフェニリル基、4'-ビス(4-ビフェニリル)アミノ-4-ビフェニリル基、N-カルバゾリルフェニル基、4'-N-カルバゾリル-4-ビフェニリル基等が好ましい。
【0135】
式(A4)で表される化合物は、公知の方法で合成することができ、また、市販品を使用することもできる。
【0136】
前記3級アリールアミン化合物の他の好適な例としては、例えば、下記式(A5a)で表される繰り返し単位及び下記式(A5b)で表される繰り返し単位を含むポリマーが挙げられる。
【化25】
【0137】
式(A5a)中、Ar41は、炭素数6~20の2価芳香族基である。前記2価芳香族基としては、式(A4)中のAr21~Ar23の説明において述べたものと同様のものが挙げられる。これらのうち、1,4-フェニレン基又はビフェニル-4,4'-ジイル基が好ましい。
【0138】
式(A5a)及び(A5b)中、R301~R304は、それぞれ独立に、炭素数1~20の1価炭化水素基であり、該1価炭化水素基を構成する-CH2-の一部が、-O-、-S-、-S(O)-、-S(O2)-、-NR'-、カルボニル基、エステル結合又はスルホン酸エステル結合で置換されていてもよい。R'は、水素原子、又は炭素数1~10の1価炭化水素基である。前記1価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基等のアルキル基が好ましい。
【0139】
式(A5b)中、R305及びR306は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~20の1価炭化水素基である。前記1価炭化水素基としては、式(1)中のX3の説明において述べたものと同様のものが挙げられる。これらのうち、炭素数1~10のアルキル基が好ましく、炭素数1~6のアルキル基がより好ましい。
【0140】
式(A5a)中、tは、0又は1である。
【0141】
m1及びm2は、それぞれ独立に、0~4の整数であるが、1又は2であることが好ましく、1がより好ましい。m3及びm4は、それぞれ独立に、0~3の整数であるが、0又は1が好ましく、0がより好ましい。
【0142】
また、前記ポリマーの末端が、重合性基で封止されていてもよい。前記重合性基としては、前述したものと同様のものが挙げられる。
【0143】
前記ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、その下限が1,000であることが好ましく、5,000であることがより好ましく、10,000であることがより一層好ましく、15,000であることが更に好ましく、20,000であることが最も好ましい。一方、その上限は、1,000,000が好ましく、500,000がより好ましく、200,000がより一層好ましい。なお、本発明においてMwは、テトラヒドロフランを溶媒として用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算測定値である。
【0144】
前記ポリマーは、式(A5a)で表される繰り返し単位を与えるトリフェニルアミン化合物と、式(A5b)で表される繰り返し単位を与えるフルオレン誘導体とを縮合重合させることで合成することができ、また、市販品を使用することもできる。
【0145】
前記3級アリールアミン化合物の他の好適な例としては、例えば、下記式(A6)で表されるものが挙げられる。
【化26】
【0146】
式中、Ar51及びAr52は、それぞれ独立に、フェニル基、1-ナフチル基又は2-ナフチル基である。R401及びR402は、それぞれ独立に、水素原子、各アリール基が炭素数6~20のアリール基であるジアリールアミノフェニル基、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子である。前記アリール基としては、式(A2)中のR1及びR2の説明において述べたものと同様のものが挙げられる。L21は、プロパン-2,2-ジイル基又は1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン-2,2-ジイル基を含む2価の連結基である。xは、1以上の整数である。
【0147】
式(A6)で表される化合物は、公知の方法で合成することができ、また、市販品を使用することもできる。
【0148】
前記3級アリールアミン化合物の他の好適な例としては、例えば、下記式(A7)で表されるものが挙げられる。
【化27】
【0149】
式(A7)中、Ar
61及びAr
62は、それぞれ独立に、置換されていてもよい1価芳香族基である。Ar
63~Ar
65は、それぞれ独立に、置換されていてもよい2価芳香族基である。L
31は、下記式のいずれかで表される連結基である。
【化28】
【0150】
式中、Ar66~Ar71及びAr74~Ar78は、それぞれ独立に、置換されていてもよい2価芳香族基である。Ar72及びAr73は、それぞれ独立に、置換されていてもよい1価芳香族基である。R501及びR502は、それぞれ独立に、水素原子又は任意の置換基である。前記置換基は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されないが、例えば、式(1)中のA1の説明において述べた置換基と同様のものが挙げられる。
【0151】
式(A7)で表される化合物は、公知の方法で合成することができ、また、市販品を使用することもできる。
【0152】
前記3級アリールアミン化合物は、少なくとも1つの窒素原子を有し、全ての窒素原子が3級アリールアミン構造を有するものであれば、前述したものに限定されない。本発明において使用可能な他の3級アリールアミン化合物としては、例えば、国際公開第2005/094133号に記載されたアリールアミン化合物、国際公開第2011/132702号の段落[0180]に記載されたポリマー、国際公開第2014/073683号に記載された芳香族3級アミン高分子化合物、国際公開第2016/006674号に記載されたフッ素原子含有重合体、特許第5287455号公報に記載されたトリアリールアミン部分構造と重合性基とを有する重合性化合物、特許第5381931号公報に記載された式(11)で表される芳香族3級アミン高分子化合物、特許第5602191号公報に記載されたトリアリールアミン化合物、特許第6177771号公報の段落[0054]に記載された化合物や、これらを構造単位として含むポリマー等が挙げられる。
【0153】
前記3級アリールアミン化合物として好ましくは、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化29】
【0154】
【0155】
【0156】
【0157】
【0158】
【0159】
【0160】
【0161】
【0162】
【0163】
【0164】
【0165】
[(C)有機溶媒]
本発明の電荷輸送性ワニスを調製する際に用いられる有機溶媒としては、前記アリールスルホン酸エステル化合物及び前記3級アリールアミン化合物を良好に溶解し得る高溶解性溶媒を用いることができる。前記3級アリールアミン化合物を溶解させ、かつ非晶質な塗膜を得るためには、低極性溶媒を用いることが好ましい。エステル化されていないスルホン酸化合物を溶解させるためには、少なくとも1種の高極性溶媒を含有させることが必要であるのに対し、前記アリールスルホン酸エステル化合物は、溶媒の極性を問わず、溶媒中に溶解することが可能である。本発明において、低極性溶媒とは周波数100kHzでの比誘電率が7未満のものを、高極性溶媒とは周波数100kHzでの比誘電率が7以上のものと定義する。
【0166】
低極性溶媒としては、例えば、
クロロホルム、クロロベンゼン等の塩素系溶媒;
トルエン、キシレン、テトラリン、シクロヘキシルベンゼン、デシルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、
1-オクタノール、1-ノナノール、1-デカノール等の脂肪族アルコール系溶媒;
テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソール、4-メトキシトルエン、3-フェノキシトルエン、ジベンジルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル等のエーテル系溶媒;
安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸ブチル、安息香酸イソアミル、フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)、マレイン酸ジブチル、シュウ酸ジブチル、酢酸ヘキシル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のエステル系溶媒
等が挙げられる。
【0167】
また、高極性溶媒としては、例えば、
N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルイソブチルアミド、N-メチルピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等のアミド系溶媒;
エチルメチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;
アセトニトリル、3-メトキシプロピオニトリル等のシアノ系溶媒;
エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール等の多価アルコール系溶媒;
ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ベンジルアルコール、2-フェノキシエタノール、2-ベンジルオキシエタノール、3-フェノキシベンジルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール等の脂肪族アルコール以外の1価アルコール系溶媒;
ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒
等が挙げられる。
【0168】
これらの溶媒は、用途に応じて、1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0169】
なお、電荷輸送性物質は、いずれも前記溶媒に完全に溶解しているか、均一に分散している状態となっていることが好ましく、完全に溶解していることがより好ましい。
【0170】
電荷輸送性ワニスの調製法としては、特に限定されないが、例えば、(A)成分及び(B)成分等を任意の順で又は同時に溶媒に加える方法が挙げられる。また、有機溶媒が複数ある場合は、まず(A)成分、(B)成分等を1種の溶媒に溶解させ、そこへ他の溶媒を加えてもよく、複数の有機溶媒の混合溶媒に、(A)成分、(B)成分等を順次又は同時に溶解させてもよい。
【0171】
前記電荷輸送性ワニスは、より平坦性の高い薄膜を再現性よく得る観点から、(A)成分、(B)成分等を有機溶媒に溶解させた後、サブマイクロオーダーのフィルター等を用いてろ過することが望ましい。
【0172】
本発明のワニス中の固形分濃度は、電荷輸送性物質の析出を抑制しつつ十分な膜厚を確保する観点から、通常0.1~20質量%程度、好ましくは0.5~10質量%である。なお、ここでいう固形分とは、ワニスに含まれる成分のうち溶媒以外の成分を意味する。本発明のワニスの粘度は、通常、25℃で1~50mPa・sである。
【0173】
また、前記固形分中、電子受容性物質前駆体の含有量は、モル比で、電荷輸送性物質1に対し、好ましくは0.01~20程度、より好ましくは0.05~15程度である。
【0174】
本発明の電荷輸送性ワニスは、更に有機シラン化合物を含んでもよい。前記有機シラン化合物としては、ジアルコキシシラン化合物、トリアルコキシシラン化合物又はテトラアルコキシシラン化合物が挙げられる。とりわけ、有機シラン化合物としては、ジアルコキシシラン化合物又はトリアルコキシシラン化合物が好ましく、トリアルコキシシラン化合物がより好ましい。有機シラン化合物は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0175】
有機シラン化合物の含有量は、電荷輸送性物質及びドーパントの総質量に対し、通常0.1~50質量%程度であるが、得られる薄膜の電荷輸送性の低下を抑制し、かつ、正孔輸送層や発光層といった陽極とは反対側に正孔注入層に接するように積層される層への正孔注入能を高めることを考慮すると、好ましくは0.5~40質量%程度、より好ましくは0.8~30質量%程度、より一層好ましくは1~20質量%程度である。
【0176】
[電荷輸送性薄膜]
本発明の電荷輸送性ワニスを基材上に塗布して乾燥させることで、基材上に電荷輸送性薄膜を形成させることができる。
【0177】
ワニスの塗布方法としては、ディップ法、スピンコート法、転写印刷法、ロールコート法、刷毛塗り、インクジェット法、スプレー法、スリットコート法等が挙げられるが、これらに限定されない。塗布方法に応じて、ワニスの粘度及び表面張力を調節することが好ましい。
【0178】
また、本発明のワニスを用いる場合、液膜の乾燥条件も特に限定されないが、例えばホットプレートを用いた加熱焼成がある。通常100~260℃程度の範囲内で1分間~1時間程度の加熱焼成により、乾燥膜が得られる。なお、焼成雰囲気も特に限定されない。
【0179】
電荷輸送性薄膜の膜厚は、特に限定されないが、有機EL素子の機能層として用いる場合、5~200nmが好ましい。膜厚を変化させる方法としては、ワニス中の固形分濃度を変化させたり、塗布時の基板上の溶液量を変化させたりする等の方法がある。
【0180】
[有機EL素子]
本発明の有機EL素子は、一対の電極を有し、これら電極の間に、前述した本発明の電荷輸送性薄膜を備えるものである。
【0181】
有機EL素子の代表的な構成としては、下記(a)~(f)が挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記構成において、必要に応じて、発光層と陽極の間に電子ブロック層等を、発光層と陰極の間に正孔(ホール)ブロック層等を設けることもできる。また、正孔注入層、正孔輸送層あるいは正孔注入輸送層が電子ブロック層等としての機能を兼ね備えていてもよく、電子注入層、電子輸送層あるいは電子注入輸送層が正孔ブロック層等としての機能を兼ね備えていてもよい。
(a)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(b)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入輸送層/陰極
(c)陽極/正孔注入輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(d)陽極/正孔注入輸送層/発光層/電子注入輸送層/陰極
(e)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/陰極
(f)陽極/正孔注入輸送層/発光層/陰極
【0182】
「正孔注入層」、「正孔輸送層」及び「正孔注入輸送層」とは、発光層と陽極との間に形成される層であって、正孔を陽極から発光層へ輸送する機能を有するものである。発光層と陽極の間に、正孔輸送性材料の層が1層のみ設けられる場合、それが「正孔注入輸送層」であり、発光層と陽極の間に、正孔輸送性材料の層が2層以上設けられる場合、陽極に近い層が「正孔注入層」であり、それ以外の層が「正孔輸送層」である。特に、正孔注入層及び正孔注入輸送層は、陽極からの正孔受容性だけでなく、それぞれ正孔輸送層及び発光層への正孔注入性にも優れる薄膜が用いられる。
【0183】
「電子注入層」、「電子輸送層」及び「電子注入輸送層」とは、発光層と陰極との間に形成される層であって、電子を陰極から発光層へ輸送する機能を有するものである。発光層と陰極の間に、電子輸送性材料の層が1層のみ設けられる場合、それが「電子注入輸送層」であり、発光層と陰極の間に、電子輸送性材料の層が2層以上設けられる場合、陰極に近い層が「電子注入層」であり、それ以外の層が「電子輸送層」である。
【0184】
「発光層」とは、発光機能を有する有機層であって、ドーピングシステムを採用する場合、ホスト材料とドーパント材料とを含んでいる。このとき、ホスト材料は、主に電子と正孔の再結合を促し、励起子を発光層内に閉じ込める機能を有し、ドーパント材料は、再結合で得られた励起子を効率的に発光させる機能を有する。燐光素子の場合、ホスト材料は主にドーパントで生成された励起子を発光層内に閉じ込める機能を有する。
【0185】
本発明の電荷輸送性ワニスを用いて有機EL素子を作製する場合の使用材料や作製方法としては、下記のようなものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0186】
使用する電極基板は、洗剤、アルコール、純水等による液体洗浄をあらかじめ行って浄化しておくことが好ましく、例えば、陽極基板では使用直前にUVオゾン処理、酸素-プラズマ処理等の表面処理を行うことが好ましい。ただし、陽極材料が有機物を主成分とする場合、表面処理を行わなくともよい。
【0187】
本発明の電荷輸送性ワニスから得られる薄膜が正孔注入層である場合の、本発明の有機EL素子の作製方法の一例は、以下のとおりである。
【0188】
前述の方法により、陽極基板上に本発明の電荷輸送性ワニスを塗布して焼成し、電極上に正孔注入層を作製する。この正孔注入層の上に、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層、陰極をこの順で設ける。正孔輸送層、発光層、電子輸送層及び電子注入層は、用いる材料の特性等に応じて、蒸着法又は塗布法(ウェットプロセス)のいずれかで形成すればよい。
【0189】
陽極材料としては、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)に代表される透明電極や、アルミニウムに代表される金属やこれらの合金等から構成される金属陽極が挙げられ、平坦化処理を行ったものが好ましい。高電荷輸送性を有するポリチオフェン誘導体やポリアニリン誘導体を用いることもできる。
【0190】
なお、金属陽極を構成するその他の金属としては、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、カドミウム、インジウム、スカンジウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ハフニウム、タリウム、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、プラチナ、金、チタン、鉛、ビスマスやこれらの合金等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0191】
正孔輸送層を形成する材料としては、(トリフェニルアミン)ダイマー誘導体、[(トリフェニルアミン)ダイマー]スピロダイマー、N,N'-ビス(ナフタレン-1-イル)-N,N'-ビス(フェニル)-ベンジジン(α-NPD)、N,N'-ビス(ナフタレン-2-イル)-N,N'-ビス(フェニル)-ベンジジン、N,N'-ビス(3-メチルフェニル)-N,N'-ビス(フェニル)-ベンジジン、N,N'-ビス(3-メチルフェニル)-N,N'-ビス(フェニル)-9,9-スピロビフルオレン、N,N'-ビス(ナフタレン-1-イル)-N,N'-ビス(フェニル)-9,9-スピロビフルオレン、N,N'-ビス(3-メチルフェニル)-N,N'-ビス(フェニル)-9,9-ジメチル-フルオレン、N,N'-ビス(ナフタレン-1-イル)-N,N'-ビス(フェニル)-9,9-ジメチル-フルオレン、N,N'-ビス(3-メチルフェニル)-N,N'-ビス(フェニル)-9,9-ジフェニル-フルオレン、N,N'-ビス(ナフタレン-1-イル)-N,N'-ビス(フェニル)-9,9-ジフェニル-フルオレン、N,N'-ビス(ナフタレン-1-イル)-N,N'-ビス(フェニル)-2,2'-ジメチルベンジジン、2,2',7,7'-テトラキス(N,N-ジフェニルアミノ)-9,9-スピロビフルオレン、9,9-ビス[4-(N,N-ビス-ビフェニル-4-イル-アミノ)フェニル]-9H-フルオレン、9,9-ビス[4-(N,N-ビス-ナフタレン-2-イル-アミノ)フェニル]-9H-フルオレン、9,9-ビス[4-(N-ナフタレン-1-イル-N-フェニルアミノ)-フェニル]-9H-フルオレン、2,2',7,7'-テトラキス[N-ナフタレニル(フェニル)-アミノ]-9,9-スピロビフルオレン、N,N'-ビス(フェナントレン-9-イル)-N,N'-ビス(フェニル)-ベンジジン、2,2'-ビス[N,N-ビス(ビフェニル-4-イル)アミノ]-9,9-スピロビフルオレン、2,2'-ビス(N,N-ジフェニルアミノ)-9,9-スピロビフルオレン、ジ-[4-(N,N-ジ(p-トリル)アミノ)-フェニル]シクロヘキサン、2,2',7,7'-テトラ(N,N-ジ(p-トリル)アミノ)-9,9-スピロビフルオレン、N,N,N',N'-テトラ-ナフタレン-2-イル-ベンジジン、N,N,N',N'-テトラ-(3-メチルフェニル)-3,3'-ジメチルベンジジン、N,N'-ジ(ナフタレニル)-N,N'-ジ(ナフタレン-2-イル)-ベンジジン、N,N,N',N'-テトラ(ナフタレニル)-ベンジジン、N,N'-ジ(ナフタレン-2-イル)-N,N'-ジフェニルベンジジン-1,4-ジアミン、N1,N4-ジフェニル-N1,N4-ジ(m-トリル)ベンゼン-1,4-ジアミン、N2,N2,N6,N6-テトラフェニルナフタレン-2,6-ジアミン、トリス(4-(キノリン-8-イル)フェニル)アミン、2,2'-ビス(3-(N,N-ジ(p-トリル)アミノ)フェニル)ビフェニル、4,4',4''-トリス[3-メチルフェニル(フェニル)アミノ]トリフェニルアミン(m-MTDATA)、4,4',4''-トリス[1-ナフチル(フェニル)アミノ]トリフェニルアミン(1-TNATA)等のトリアリールアミン類、5,5''-ビス-{4-[ビス(4-メチルフェニル)アミノ]フェニル}-2,2':5',2''-ターチオフェン(BMA-3T)等のオリゴチオフェン類等の正孔輸送性低分子材料等が挙げられる。
【0192】
発光層を形成する材料としては、トリス(8-キノリノラート)アルミニウム(III)(Alq3)、ビス(8-キノリノラート)亜鉛(II)(Znq2)、ビス(2-メチル-8-キノリノラート)-4-(p-フェニルフェノラート)アルミニウム(III)(BAlq)、4,4'-ビス(2,2-ジフェニルビニル)ビフェニル、9,10-ジ(ナフタレン-2-イル)アントラセン、2-tert-ブチル-9,10-ジ(ナフタレン-2-イル)アントラセン、2,7-ビス[9,9-ジ(4-メチルフェニル)-フルオレン-2-イル]-9,9-ジ(4-メチルフェニル)フルオレン、2-メチル-9,10-ビス(ナフタレン-2-イル)アントラセン、2-(9,9-スピロビフルオレン-2-イル)-9,9-スピロビフルオレン、2,7-ビス(9,9-スピロビフルオレン-2-イル)-9,9-スピロビフルオレン、2-[9,9-ジ(4-メチルフェニル)-フルオレン-2-イル]-9,9-ジ(4-メチルフェニル)フルオレン、2,2'-ジピレニル-9,9-スピロビフルオレン、1,3,5-トリス(ピレン-1-イル)ベンゼン、9,9-ビス[4-(ピレニル)フェニル]-9H-フルオレン、2,2'-ビ(9,10-ジフェニルアントラセン)、2,7-ジピレニル-9,9-スピロビフルオレン、1,4-ジ(ピレン-1-イル)ベンゼン、1,3-ジ(ピレン-1-イル)ベンゼン、6,13-ジ(ビフェニル-4-イル)ペンタセン、3,9-ジ(ナフタレン-2-イル)ペリレン、3,10-ジ(ナフタレン-2-イル)ペリレン、トリス[4-(ピレニル)-フェニル]アミン、10,10'-ジ(ビフェニル-4-イル)-9,9'-ビアントラセン、N,N'-ジ(ナフタレン-1-イル)-N,N'-ジフェニル-[1,1':4',1'':4'',1'''-クォーターフェニル]-4,4'''-ジアミン、4,4'-ジ[10-(ナフタレン-1-イル)アントラセン-9-イル]ビフェニル、ジベンゾ{[f,f']-4,4',7,7'-テトラフェニル}ジインデノ[1,2,3-cd:1',2',3'-lm]ペリレン、1-(7-(9,9'-ビアントラセン-10-イル)-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)ピレン、1-(7-(9,9'-ビアントラセン-10-イル)-9,9-ジヘキシル-9H-フルオレン-2-イル)ピレン、1,3-ビス(カルバゾール-9-イル)ベンゼン、1,3,5-トリス(カルバゾール-9-イル)ベンゼン、4,4',4''-トリス(カルバゾール-9-イル)トリフェニルアミン、4,4'-ビス(カルバゾール-9-イル)ビフェニル(CBP)、4,4'-ビス(カルバゾール-9-イル)-2,2'-ジメチルビフェニル、2,7-ビス(カルバゾール-9-イル)-9,9-ジメチルフルオレン、2,2',7,7'-テトラキス(カルバゾール-9-イル)-9,9-スピロビフルオレン、2,7-ビス(カルバゾール-9-イル)-9,9-ジ(p-トリル)フルオレン、9,9-ビス[4-(カルバゾール-9-イル)-フェニル]フルオレン、2,7-ビス(カルバゾール-9-イル)-9,9-スピロビフルオレン、1,4-ビス(トリフェニルシリル)ベンゼン、1,3-ビス(トリフェニルシリル)ベンゼン、ビス(4-N,N-ジエチルアミノ-2-メチルフェニル)-4-メチルフェニルメタン、2,7-ビス(カルバゾール-9-イル)-9,9-ジオクチルフルオレン、4,4''-ジ(トリフェニルシリル)-p-ターフェニル、4,4'-ジ(トリフェニルシリル)ビフェニル、9-(4-tert-ブチルフェニル)-3,6-ビス(トリフェニルシリル)-9H-カルバゾール、9-(4-tert-ブチルフェニル)-3,6-ジトリチル-9H-カルバゾール、9-(4-tert-ブチルフェニル)-3,6-ビス(9-(4-メトキシフェニル)-9H-フルオレン-9-イル)-9H-カルバゾール、2,6-ビス(3-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル)ピリジン、トリフェニル(4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル)シラン、9,9-ジメチル-N,N-ジフェニル-7-(4-(1-フェニル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)フェニル)-9H-フルオレン-2-アミン、3,5-ビス(3-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル)ピリジン、9,9-スピロビフルオレン-2-イル-ジフェニル-ホスフィンオキサイド、9,9'-(5-(トリフェニルシリル)-1,3-フェニレン)ビス(9H-カルバゾール)、3-(2,7-ビス(ジフェニルホスホリル)-9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)-9-フェニル-9H-カルバゾール、4,4,8,8,12,12-ヘキサ(p-トリル)-4H-8H-12H-12C-アザジベンゾ[cd,mn]ピレン、4,7-ジ(9H-カルバゾール-9-イル)-1,10-フェナントロリン、2,2'-ビス(4-(カルバゾール-9-イル)フェニル)ビフェニル、2,8-ビス(ジフェニルホスホリル)ジベンゾ[b,d]チオフェン、ビス(2-メチルフェニル)ジフェニルシラン、ビス[3,5-ジ(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]ジフェニルシラン、3,6-ビス(カルバゾール-9-イル)-9-(2-エチル-ヘキシル)-9H-カルバゾール、3-(ジフェニルホスホリル)-9-(4-(ジフェニルホスホリル)フェニル)-9H-カルバゾール、3,6-ビス[(3,5-ジフェニル)フェニル]-9-フェニルカルバゾール等が挙げられる。これらの材料と発光性ドーパントとを共蒸着することによって、発光層を形成してもよい。
【0193】
発光性ドーパントとしては、3-(2-ベンゾチアゾリル)-7-(ジエチルアミノ)クマリン、2,3,6,7-テトラヒドロ-1,1,7,7-テトラメチル-1H,5H,11H-10-(2-ベンゾチアゾリル)キノリジノ[9,9a,1gh]クマリン、キナクリドン、N,N'-ジメチル-キナクリドン、トリス(2-フェニルピリジン)イリジウム(III)(Ir(ppy)3)、ビス(2-フェニルピリジン)(アセチルアセトネート)イリジウム(III)(Ir(ppy)2(acac))、トリス[2-(p-トリル)ピリジン]イリジウム(III)(Ir(mppy)3)、9,10-ビス[N,N-ジ(p-トリル)アミノ]アントラセン、9,10-ビス[フェニル(m-トリル)アミノ]アントラセン、ビス[2-(2-ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾラト]亜鉛(II)、N10,N10,N10,N10-テトラ(p-トリル)-9,9'-ビアントラセン-10,10'-ジアミン、N10,N10,N10,N10-テトラフェニル-9,9'-ビアントラセン-10,10'-ジアミン、N10,N10-ジフェニル-N10,N10-ジナフタレニル-9,9'-ビアントラセン-10,10'-ジアミン、4,4'-ビス(9-エチル-3-カルバゾビニレン)-1,1'-ビフェニル、ペリレン、2,5,8,11-テトラ-tert-ブチルペリレン、1,4-ビス[2-(3-N-エチルカルバゾリル)ビニル]ベンゼン、4,4'-ビス[4-(ジ-p-トリルアミノ)スチリル]ビフェニル、4-(ジ-p-トリルアミノ)-4'-[(ジ-p-トリルアミノ)スチリル]スチルベン、ビス[3,5-ジフルオロ-2-(2-ピリジル)フェニル-(2-カルボキシピリジル)]イリジウム(III)、4,4'-ビス[4-(ジフェニルアミノ)スチリル]ビフェニル、ビス(2,4-ジフルオロフェニルピリジナト)テトラキス(1-ピラゾリル)ボレートイリジウム(III)、N,N'-ビス(ナフタレン-2-イル)-N,N'-ビス(フェニル)-トリス(9,9-ジメチルフルオレニレン)、2,7-ビス{2-[フェニル(m-トリル)アミノ]-9,9-ジメチル-フルオレン-7-イル}-9,9-ジメチル-フルオレン、N-(4-((E)-2-(6((E)-4-(ジフェニルアミノ)スチリル)ナフタレン-2-イル)ビニル)フェニル)-N-フェニルベンゼンアミン、fac-イリジウム(III)トリス(1-フェニル-3-メチルベンズイミダゾリン-2-イリデン-C,C2)、mer-イリジウム(III)トリス(1-フェニル-3-メチルベンズイミダゾリン-2-イリデン-C,C2)、2,7-ビス[4-(ジフェニルアミノ)スチリル]-9,9-スピロビフルオレン、6-メチル-2-(4-(9-(4-(6-メチルベンゾ[d]チアゾール-2-イル)フェニル)アントラセン-10-イル)フェニル)ベンゾ[d]チアゾール、1,4-ジ[4-(N,N-ジフェニル)アミノ]スチリルベンゼン、1,4-ビス(4-(9H-カルバゾール-9-イル)スチリル)ベンゼン、(E)-6-(4-(ジフェニルアミノ)スチリル)-N,N-ジフェニルナフタレン-2-アミン、ビス(2,4-ジフルオロフェニルピリジナト)(5-(ピリジン-2-イル)-1H-テトラゾレート)イリジウム(III)、ビス(3-トリフルオロメチル-5-(2-ピリジル)ピラゾール)((2,4-ジフルオロベンジル)ジフェニルホスフィネート)イリジウム(III)、ビス(3-トリフルオロメチル-5-(2-ピリジル)ピラゾレート)(ベンジルジフェニルホスフィネート)イリジウム(III)、ビス(1-(2,4-ジフルオロベンジル)-3-メチルベンズイミダゾリウム)(3-(トリフルオロメチル)-5-(2-ピリジル)-1,2,4-トリアゾレート)イリジウム(III)、ビス(3-トリフルオロメチル-5-(2-ピリジル)ピラゾレート)(4',6'-ジフルオロフェニルピリジネート)イリジウム(III)、ビス(4',6'-ジフルオロフェニルピリジナト)(3,5-ビス(トリフルオロメチル)-2-(2'-ピリジル)ピロレート)イリジウム(III)、ビス(4',6'-ジフルオロフェニルピリジナト)(3-(トリフルオロメチル)-5-(2-ピリジル)-1,2,4-トリアゾレート)イリジウム(III)、(Z)-6-メシチル-N-(6-メシチルキノリン-2(1H)-イリデン)キノリン-2-アミン-BF2、(E)-2-(2-(4-(ジメチルアミノ)スチリル)-6-メチル-4H-ピラン-4-イリデン)マロノニトリル、4-(ジシアノメチレン)-2-メチル-6-ジュロリジル-9-エニル-4H-ピラン、4-(ジシアノメチレン)-2-メチル-6-(1,1,7,7-テトラメチルジュロリジル-9-エニル)-4H-ピラン、4-(ジシアノメチレン)-2-tert-ブチル-6-(1,1,7,7-テトラメチルジュロリジン-4-イル-ビニル)-4H-ピラン、トリス(ジベンゾイルメタン)フェナントロリンユーロピウム(III)、5,6,11,12-テトラフェニルナフタセン、ビス(2-ベンゾ[b]チオフェン-2-イル-ピリジン)(アセチルアセトネート)イリジウム(III)、トリス(1-フェニルイソキノリン)イリジウム(III)、ビス(1-フェニルイソキノリン)(アセチルアセトネート)イリジウム(III)、ビス[1-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-イソキノリン](アセチルアセトネート)イリジウム(III)、ビス[2-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)キノリン](アセチルアセトネート)イリジウム(III)、トリス[4,4'-ジ-tert-ブチル-(2,2')-ビピリジン]ルテニウム(III)・ビス(ヘキサフルオロホスフェート)、トリス(2-フェニルキノリン)イリジウム(III)、ビス(2-フェニルキノリン)(アセチルアセトネート)イリジウム(III)、2,8-ジ-tert-ブチル-5,11-ビス(4-tert-ブチルフェニル)-6,12-ジフェニルテトラセン、ビス(2-フェニルベンゾチアゾラト)(アセチルアセトネート)イリジウム(III)、5,10,15,20-テトラフェニルテトラベンゾポルフィリン白金、オスミウム(II)ビス(3-トリフルオロメチル-5-(2-ピリジン)-ピラゾレート)ジメチルフェニルホスフィン、オスミウム(II)ビス(3-(トリフルオロメチル)-5-(4-tert-ブチルピリジル)-1,2,4-トリアゾレート)ジフェニルメチルホスフィン、オスミウム(II)ビス(3-(トリフルオロメチル)-5-(2-ピリジル)-1,2,4-トリアゾール)ジメチルフェニルホスフィン、オスミウム(II)ビス(3-(トリフルオロメチル)-5-(4-tert-ブチルピリジル)-1,2,4-トリアゾレート)ジメチルフェニルホスフィン、ビス[2-(4-n-ヘキシルフェニル)キノリン](アセチルアセトネート)イリジウム(III)、トリス[2-(4-n-ヘキシルフェニル)キノリン]イリジウム(III)、トリス[2-フェニル-4-メチルキノリン]イリジウム(III)、ビス(2-フェニルキノリン)(2-(3-メチルフェニル)ピリジネート)イリジウム(III)、ビス(2-(9,9-ジエチル-フルオレン-2-イル)-1-フェニル-1H-ベンゾ[d]イミダゾラト)(アセチルアセトネート)イリジウム(III)、ビス(2-フェニルピリジン)(3-(ピリジン-2-イル)-2H-クロメン-2-オネート)イリジウム(III)、ビス(2-フェニルキノリン)(2,2,6,6-テトラメチルヘプタン-3,5-ジオネート)イリジウム(III)、ビス(フェニルイソキノリン)(2,2,6,6-テトラメチルヘプタン-3,5-ジオネート)イリジウム(III)、イリジウム(III)ビス(4-フェニルチエノ[3,2-c]ピリジナト-N,C2)アセチルアセトネート、(E)-2-(2-tert-ブチル-6-(2-(2,6,6-トリメチル-2,4,5,6-テトラヒドロ-1H-ピローロ[3,2,1-ij]キノリン-8-イル)ビニル)-4H-ピラン-4-イリデン)マロノニトリル、ビス(3-トリフルオロメチル-5-(1-イソキノリル)ピラゾレート)(メチルジフェニルホスフィン)ルテニウム、ビス[(4-n-ヘキシルフェニル)イソキノリン](アセチルアセトネート)イリジウム(III)、白金(II)オクタエチルポルフィン、ビス(2-メチルジベンゾ[f,h]キノキサリン)(アセチルアセトネート)イリジウム(III)、トリス[(4-n-ヘキシルフェニル)イソキノリン]イリジウム(III)等が挙げられる。
【0194】
電子輸送層を形成する材料としては、8-ヒドロキシキノリノレート-リチウム、2,2',2''-(1,3,5-ベンジントリル)-トリス(1-フェニル-1-H-ベンズイミダゾール)、2-(4-ビフェニル)5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール、2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン、4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン、ビス(2-メチル-8-キノリノレート)-4-(フェニルフェノラト)アルミニウム、1,3-ビス[2-(2,2'-ビピリジン-6-イル)-1,3,4-オキサジアゾ-5-イル]ベンゼン、6,6'-ビス[5-(ビフェニル-4-イル)-1,3,4-オキサジアゾ-2-イル]-2,2'-ビピリジン、3-(4-ビフェニル)-4-フェニル-5-tert-ブチルフェニル-1,2,4-トリアゾール、4-(ナフタレン-1-イル)-3,5-ジフェニル-4H-1,2,4-トリアゾール、2,9-ビス(ナフタレン-2-イル)-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン、2,7-ビス[2-(2,2'-ビピリジン-6-イル)-1,3,4-オキサジアゾ-5-イル]-9,9-ジメチルフルオレン、1,3-ビス[2-(4-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾ-5-イル]ベンゼン、トリス(2,4,6-トリメチル-3-(ピリジン-3-イル)フェニル)ボラン、1-メチル-2-(4-(ナフタレン-2-イル)フェニル)-1H-イミダゾ[4,5f][1,10]フェナントロリン、2-(ナフタレン-2-イル)-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン、フェニル-ジピレニルホスフィンオキサイド、3,3',5,5'-テトラ[(m-ピリジル)-フェン-3-イル]ビフェニル、1,3,5-トリス[(3-ピリジル)-フェン-3-イル]ベンゼン、4,4'-ビス(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)ビフェニル、1,3-ビス[3,5-ジ(ピリジン-3-イル)フェニル]ベンゼン、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム、ジフェニルビス(4-(ピリジン-3-イル)フェニル)シラン、3,5-ジ(ピレン-1-イル)ピリジン等が挙げられる。
【0195】
電子注入層を形成する材料としては、酸化リチウム(Li2O)、酸化マグネシウム(MgO)、アルミナ(Al2O3)、フッ化リチウム(LiF)、フッ化ナトリウム(NaF)、フッ化マグネシウム(MgF2)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化ストロンチウム(SrF2)、三酸化モリブデン(MoO3)、アルミニウム、リチウムアセチルアセトネート(Li(acac))、酢酸リチウム、安息香酸リチウム等が挙げられる。
【0196】
陰極材料としては、アルミニウム、マグネシウム-銀合金、アルミニウム-リチウム合金、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム等が挙げられる。
【0197】
また、本発明の電荷輸送性ワニスから得られる薄膜が正孔注入層である場合の、本発明の有機EL素子の作製方法のその他の例は、以下のとおりである。
【0198】
前述した有機EL素子作製方法において、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層の真空蒸着操作を行うかわりに、正孔輸送層、発光層を順次形成することによって本発明の電荷輸送性ワニスによって形成される電荷輸送性薄膜を有する有機EL素子を作製することができる。具体的には、陽極基板上に本発明の電荷輸送性ワニスを塗布して前記の方法により正孔注入層を作製し、その上に正孔輸送層、発光層を順次形成し、更に陰極材料を蒸着して有機EL素子とする。
【0199】
使用する陰極及び陽極材料としては、前述のものと同様のものが使用でき、同様の洗浄処理、表面処理を行うことができる。
【0200】
正孔輸送層及び発光層の形成方法としては、正孔輸送性高分子材料若しくは発光性高分子材料、又はこれらにドーパントを加えた材料に溶媒を加えて溶解するか、均一に分散し、それぞれ正孔注入層又は正孔輸送層の上に塗布した後、焼成することで成膜する方法が挙げられる。
【0201】
正孔輸送性高分子材料としては、ポリ[(9,9-ジヘキシルフルオレニル-2,7-ジイル)-co-(N,N'-ビス{p-ブチルフェニル}-1,4-ジアミノフェニレン)]、ポリ[(9,9-ジオクチルフルオレニル-2,7-ジイル)-co-(N,N'-ビス{p-ブチルフェニル}-1,1'-ビフェニレン-4,4-ジアミン)]、ポリ[(9,9-ビス{1'-ペンテン-5'-イル}フルオレニル-2,7-ジイル)-co-(N,N'-ビス{p-ブチルフェニル}-1,4-ジアミノフェニレン)]、ポリ[N,N'-ビス(4-ブチルフェニル)-N,N'-ビス(フェニル)-ベンジジン]-エンドキャップド ウィズ ポリシルセスキオキサン、ポリ[(9,9-ジジオクチルフルオレニル-2,7-ジイル)-co-(4,4'-(N-(p-ブチルフェニル))ジフェニルアミン)](TFB)等が挙げられる。
【0202】
発光性高分子材料としては、ポリ(9,9-ジアルキルフルオレン)(PDAF)等のポリフルオレン誘導体、ポリ(2-メトキシ-5-(2'-エチルヘキソキシ)-1,4-フェニレンビニレン)(MEH-PPV)等のポリフェニレンビニレン誘導体、ポリ(3-アルキルチオフェン)(PAT)等のポリチオフェン誘導体、ポリビニルカルバゾール(PVCz)等が挙げられる。
【0203】
溶媒としては、トルエン、キシレン、クロロホルム等が挙げられる。溶解又は均一分散法としては、攪拌、加熱攪拌、超音波分散等の方法が挙げられる。
【0204】
塗布方法としては、特に限定されず、インクジェット法、スプレー法、ディップ法、スピンコート法、転写印刷法、ロールコート法、刷毛塗り等が挙げられる。なお、塗布は、窒素、アルゴン等の不活性ガス下で行うことが好ましい。
【0205】
焼成方法としては、不活性ガス下又は真空中、オーブン又はホットプレートで加熱する方法が挙げられる。
【0206】
本発明の電荷輸送性ワニスから得られる薄膜が正孔注入輸送層である場合の、本発明の有機EL素子の作製方法の一例は、以下のとおりである。
【0207】
陽極基板上に正孔注入輸送層を形成し、この正孔注入輸送層の上に、発光層、電子輸送層、電子注入層、陰極をこの順で設ける。発光層、電子輸送層及び電子注入層の形成方法及び具体例としては、前述したものと同様のものが挙げられる。
【0208】
陽極材料、発光層、発光性ドーパント、電子輸送層及び電子ブロック層を形成する材料、陰極材料としては、前述したものと同様のものが挙げられる。
【0209】
なお、電極及び前記各層の間の任意の間に、必要に応じてホールブロック層、電子ブロック層等を設けてもよい。例えば、電子ブロック層を形成する材料としては、トリス(フェニルピラゾール)イリジウム等が挙げられる。
【0210】
陽極と陰極及びこれらの間に形成される層を構成する材料は、ボトムエミッション構造、トップエミッション構造のいずれを備える素子を製造するかで異なるため、その点を考慮して、適宜材料を選択する。
【0211】
通常、ボトムエミッション構造の素子では、基板側に透明陽極が用いられ、基板側から光が取り出されるのに対し、トップエミッション構造の素子では、金属からなる反射陽極が用いられ、基板と反対方向にある透明電極(陰極)側から光が取り出される。そのため、例えば陽極材料について言えば、ボトムエミッション構造の素子を製造する際はITO等の透明陽極を、トップエミッション構造の素子を製造する際はAl/Nd等の反射陽極を、それぞれ用いる。
【0212】
本発明の有機EL素子は、特性悪化を防ぐため、定法に従い、必要に応じて捕水剤等と共に封止してもよい。
【実施例】
【0213】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されない。なお、実施例において、試料の調製及び物性の分析に用いた装置は、以下のとおりである。
(1)1H-NMR、19F-NMR:JEOL(株)製、核磁気共鳴装置AL-300
(2)LC/MS:Waters社製、ZQ 2000
(3)基板洗浄:長州産業(株)製、基板洗浄装置(減圧プラズマ方式)
(4)ワニスの塗布:ミカサ(株)製、スピンコーターMS-A100
(5)膜厚測定:(株)小坂研究所製、微細形状測定機サーフコーダET-4000
(6)EL素子の作製:長州産業(株)製、多機能蒸着装置システムC-E2L1G1-N
(7)EL素子の輝度等の測定:(株)イーエッチシー製、多チャンネルIVL測定装置
【0214】
[1]スルホン酸エステル化合物の合成
[合成例1-1]NSO-2-PGEEの合成-1
下記スキームに従って、アリールスルホン酸エステル化合物NSO-2-PGEEを合成した。
【化41】
【0215】
1-ナフトール-3,6-ジスルホン酸ナトリウム11g(31.59mmol)に、窒素雰囲気下で、パーフルオロビフェニル4.8g(14.36mol)、炭酸カリウム4.2g(30.15mol)、及びN,N-ジメチルホルムアミド100mLを順次加え、反応系を窒素置換した後、内温100℃で6時間攪拌した。室温まで放冷後、ろ過により炭酸カリウム残渣を除去し、減圧濃縮した。残存している不純物を除去するために、残渣にメタノール100mLを加え、室温で30分間攪拌した。その後、懸濁溶液をろ過し、NSO-2-Na11.8gを得た(収率83%)。
【0216】
NSO-2-Na2g(2mmol)に、塩化チオニル(8mL)及び触媒としてN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)(0.1mL)を加え、1時間加熱還流した後、塩化チオニルを留去し、NSO-2-Clを含む固体を得た。本化合物はこれ以上精製することなく次工程に使用した。
【0217】
前記固体に、クロロホルム(12mL)及びピリジン(8mL)を加え、0℃にてプロピレングリコールモノエチルエーテル(純正化学(株)製)2.50g(24mmol)を加えた。室温まで昇温し、その後3時間攪拌した。溶媒を留去した後、水を加え、酢酸エチルにて抽出し、有機層を硫酸ナトリウムにて乾燥させた。ろ過、濃縮後、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)で精製することにより、アリールスルホン酸エステル化合物NSO-2-PGEE(以下、NSO-2-PGEE-1という。)1.09gを白色固体として得た(収率44%(NSO-2-Naからの2段階収率))。1H-NMR及びLC/MSの測定結果を以下に示す。
1H-NMR(500MHz, CDCl3): δ 0.92-0.97(m, 12H), 1.34 and 1.40(a pair of d, J=6.5Hz, 12H), 3.32-3.52(m, 16H), 4.80-4.87(m, 4H), 7.37(s, 2H), 8.22(d, J=8.5Hz, 2H), 8.45(s, 2H), 8.61(d, J=8.5Hz, 2H) , 8.69(s, 2H).
LC/MS (ESI+) m/z; 1264 [M+NH4]+
【0218】
[合成例1-2]NSO-2-PGEEの合成-2
下記スキームに従ってスルホン酸エステル化合物NSO-2-PGEEを合成した。
【化42】
【0219】
国際公開第2006/025342号に記載された方法に従って合成したNSO-2 2g(2.2mmol)に、塩化チオニル(8mL)及び触媒としてDMF(85μL)を加え、1時間加熱還流した後、塩化チオニルを留去し、NSO-2-Clを含む固体を得た。本化合物はこれ以上精製することなく次工程に使用した。前記固体に、クロロホルム(12mL)及びピリジン(8mL)を加え、0℃にてプロピレングリコールモノエチルエーテル(純正化学(株)製)2.75g(26.4mmol)を加えた。室温まで昇温し、その後3時間攪拌した。溶媒を留去した後、水を加え、酢酸エチルにて抽出し、有機層を硫酸ナトリウムにて乾燥させた。ろ過、濃縮後、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)で精製することにより、スルホン酸エステル化合物NSO-2-PGEE(以下、NSO-2-PGEE-2という。)1.50gを白色固体として得た(収率54%(NSO-2からの2段階収率))。1H-NMR及びLC/MSの測定結果を以下に示す。
1H-NMR(500MHz, CDCl3): δ 0.92-0.97(m, 12H), 1.34 and 1.40(a pair of d, J=6.5Hz, 12H), 3.32-3.52(m, 16H), 4.80-4.87(m, 4H), 7.37(s, 2H), 8.22(d, J=8.5Hz, 2H), 8.45(s, 2H), 8.61(d, J=8.5Hz, 2H) , 8.69(s, 2H).
LC/MS (ESI+) m/z; 1264 [M+NH4]+
【0220】
[合成例2]4FNS-4-PGEEの合成
下記スキームに従って、スルホン酸エステル化合物4FNS-4-PGEEを合成した。
【化43】
【0221】
国際公開第2015/111654号に記載の方法に従って合成した4FNS-4 4.97g(10mmol)に、塩化チオニル25g及び触媒としてDMF0.4mLを加え、1時間加熱還流した後、塩化チオニルを留去し、4FNS-4-Clを含む固体を得た。本化合物はこれ以上精製することなく次工程に使用した。
【0222】
前記固体にクロロホルム(30mL)及びピリジン(20mL)を加え、0℃にてプロピレングリコールモノエチルエーテル6.24g(60mmol)を加えた。室温まで昇温し、その後1.5時間攪拌した。溶媒を留去した後、水を加え、酢酸エチルにて抽出し、有機層を硫酸ナトリウムにて乾燥させた。ろ過、濃縮後、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)で精製することにより、スルホン酸エステル化合物4FNS-4-PGEE1.32gを白色固体として得た(収率20%(4FNS-4からの2段階収率))。1H-NMR及びLC/MSの測定結果を以下に示す。
1H-NMR(500MHz, CDCl3): δ 0.89-0.95(m, 6H), 1.34 and 1.39(a pair of d, J=6.5Hz, 6H), 3.28-3.50(m, 8H), 4.81-4.87(m, 2H), 7.26(s, 1H), 8.22(d, J=9.0Hz, 1H), 8.47(s, 1H), 8.54(d, J=9.0Hz, 1H) , 8.68(s, 1H).
LC/MS (ESI+) m/z; 687 [M+NH4]+
【0223】
[2]電荷輸送性ワニスの調製
[実施例1-1]
国際公開第2005/094133号記載の方法に従って合成した下記式(H1)で表される化合物H1(12.5mg)と、NSO-2-PGEE-1(12.5mg)との混合物に、クロロホルム(5g)を加えて室温で攪拌して溶解させ、得られた溶液を孔径0.2μmのシリンジフィルターでろ過して、電荷輸送性ワニスA1を得た。
【0224】
【0225】
[比較例1-1]
化合物H1(25mg)に、クロロホルム(5g)を加えて室温で攪拌して溶解させ、得られた溶液を孔径0.2μmのシリンジフィルターでろ過して、電荷輸送性ワニスA2を得た。
【0226】
[実施例1-2]
国際公開第2013/098175号記載の方法に従って合成した下記式(H2)で表される化合物H2(12.5mg)と、NSO-2-PGEE-1(12.5mg)との混合物に、クロロホルム(5g)を加えて、室温で攪拌して溶解させ、得られた溶液を孔径0.2μmのシリンジフィルターでろ過して、電荷輸送性ワニスB1を得た。
【0227】
【0228】
[比較例1-2]
化合物H2(25mg)に、クロロホルム(5g)を加えて室温で攪拌して溶解させ、得られた溶液を孔径0.2μmのシリンジフィルターでろ過して、電荷輸送性ワニスB2を得た。
【0229】
[実施例1-3]
下記式(H3)で表される化合物H3(TFBポリマー、Luminescence Technology社製LT-N148)(12.5mg)と、NSO-2-PGEE-1(12.5mg)との混合物に、クロロホルム(5g)を加えて室温で攪拌して溶解させ、得られた溶液を孔径0.2μmのシリンジフィルターでろ過して、電荷輸送性ワニスC1を得た。
【化46】
【0230】
[比較例1-3]
化合物H3(25mg)に、クロロホルム(5g)を加えて室温で攪拌して溶解させ、得られた溶液を孔径0.2μmのシリンジフィルターでろ過して、電荷輸送性ワニスC2を得た。
【0231】
[比較例1-4]
化合物H1(12.5mg)と、NSO-2(12.5mg)との混合物に、クロロホルム(5g)を加えて、室温、350rpm、60分間攪拌したが、NSO-2は全く溶解しなかった。
【0232】
[比較例1-5]
化合物H2(12.5mg)と、NSO-2(12.5mg)との混合物に、クロロホルム(5g)を加えて、室温、350rpm、60分間攪拌したが、NSO-2は全く溶解しなかった。
【0233】
[比較例1-6]
化合物H3(12.5mg)と、NSO-2(12.5mg)との混合物に、クロロホルム(5g)を加えて、室温、350rpm、60分間攪拌したが、NSO-2は全く溶解しなかった。
【0234】
[実施例1-4]
国際公開第2015/050253号の合成例18に記載の方法に従って合成した下記式(H4)で表される化合物H4(190mg)、及びNSO-2-PGEE-2(337mg)を、3-フェノキシトルエン(5g)及びテトラリン(5g)の混合溶媒に加え、50℃、400rpm、5分間加熱攪拌した。これにより、NSO-2-PGEE-2は完全に溶媒に溶解した。得られた溶液を孔径0.2μmのPTFE製フィルターを用いて濾過し、電荷輸送性ワニスDを得た。
【化47】
【0235】
[実施例1-5]
化合物H4(48mg)、国際公開第2015/050253号の製造例24-2に記載の方法に従って合成した下記式(H5)で表される化合物H5(149mg)、及びNSO-2-PGEE-2(329mg)を、3-フェノキシトルエン(5g)及びテトラリン(5g)の混合溶媒に加え、50℃、400rpm、5分間加熱攪拌した。これにより、NSO-2-PGEE-2は完全に溶媒に溶解した。得られた溶液を孔径0.2μmのPTFE製フィルターを用いて濾過し、電荷輸送性ワニスEを得た。
【化48】
【0236】
[実施例1-6]
化合物H4(190mg)及びNSO-2-PGEE-2(337mg)を、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル(7g)及び安息香酸ブチル(3g)の混合溶媒に加え、50℃、400rpm、5分間加熱攪拌した。これにより、NSO-2-PGEE-2は完全に溶媒に溶解した。得られた溶液を孔径0.2μmのPTFE製フィルターを用いて濾過し、電荷輸送性ワニスFを得た。
【0237】
[実施例1-7]
化合物H4(48mg)、化合物H5(149mg)及びNSO-2-PGEE-2(329mg)を、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル(7g)及び安息香酸ブチル(3g)の混合溶媒に加え、50℃、400rpm、5分間加熱攪拌した。これにより、NSO-2-PGEE-2は完全に溶媒に溶解した。得られた溶液を孔径0.2μmのPTFE製フィルターを用いて濾過し、電荷輸送性ワニスGを得た。
【0238】
[実施例1-8]
化合物H4(190mg)及びNSO-2-PGEE-2(337mg)を、4-メトキシトルエン(7g)及びシクロヘキシルベンゼン(3g)の混合溶媒に加え、50℃、400rpm、5分間加熱攪拌した。これにより、NSO-2-PGEE-2は完全に溶媒に溶解した。得られた溶液を孔径0.2μmのPTFE製フィルターを用いて濾過し、電荷輸送性ワニスHを得た。
【0239】
[実施例1-9]
化合物H4(48mg)、化合物H5(149mg)及びNSO-2-PGEE-2(329mg)を、4-メトキシトルエン(7g)及びシクロヘキシルベンゼン(3g)の混合溶媒に加え、5℃、400rpm、5分間加熱攪拌した。これにより、NSO-2-PGEE-2は完全に溶媒に溶解した。得られた溶液を孔径0.2μmのPTFE製フィルターを用いて濾過し、電荷輸送性ワニスIを得た。
【0240】
[実施例1-10]
化合物H4(190mg)及びNSO-2-PGEE-2(337mg)を、安息香酸エチル(7g)及びジベンジルエーテル(3g)の混合溶媒に加え、50℃、400rpm、5分間加熱攪拌した。これにより、NSO-2-PGEE-2は完全に溶媒に溶解した。得られた溶液を孔径0.2μmのPTFE製フィルターを用いて濾過し、電荷輸送性ワニスJを得た。
【0241】
[実施例1-11]
化合物H4(48mg)、化合物H5(149mg)及びNSO-2-PGEE-2(329mg)を、安息香酸エチル(7g)及びジベンジルエーテル(3g)の混合溶媒に加え、50℃、400rpm、5分間加熱攪拌した。これにより、NSO-2-PGEE-2は完全に溶媒に溶解した。得られた溶液を孔径0.2μmのPTFE製フィルターを用いて濾過し、電荷輸送性ワニスKを得た。
【0242】
[実施例1-12]
化合物H4(270mg)及び4FNS-4-PGEE(257mg)を、3-フェノキシトルエン(3g)及び安息香酸ブチル(7g)の混合溶媒に加え、50℃、350rpm、10分間加熱攪拌した。これにより、4FNS-4-PGEEは完全に溶媒に溶解した。得られた溶液を孔径0.2μmのPTFE製フィルターを用いて濾過し、電荷輸送性ワニスLを得た。
【0243】
[実施例1-13]
化合物H4(105mg)及び4FNS-4-PGEE(100mg)を、ジエチレングリコール(4g、比誘電率:25.2)及びトリエチレングリコールジメチルエーテル(6g、比誘電率:5.1)の混合溶媒に加え、50℃、350rpm、10分間加熱攪拌した。これにより、4FNS-4-PGEEは完全に溶媒に溶解した。得られた溶液を孔径0.2μmのPTFE製フィルターを用いて濾過し、電荷輸送性ワニスMを得た。
【0244】
[比較例1-7]
化合物H4(120mg)及び4FNS-4(85mg)を、ジエチレングリコール(4g)及びトリエチレングリコールジメチルエーテル(6g)の混合溶媒に加え、50℃、350rpm、10分間加熱攪拌した。これにより、4FNS-4は完全に溶媒に溶解した。得られた溶液を孔径0.2μmのPTFE製フィルターを用いて濾過し、電荷輸送性ワニスNを得た。
【0245】
[実施例1-14]
化合物H3(25mg)と、p-トルエンスルホン酸メチル(東京化成工業(株)製)(38mg)との混合物に、クロロホルム(5g)を加えて室温で攪拌して溶解させ、得られた溶液を孔径0.2μmのシリンジフィルターでろ過して、電荷輸送性ワニスOを得た。
【0246】
[実施例1-15]
化合物H3(25mg)と、ベンゼンスルホン酸エチル(東京化成工業(株)製)(38mg)との混合物に、クロロホルム(5g)を加えて室温で攪拌して溶解させ、得られた溶液を孔径0.2μmのシリンジフィルターでろ過して、電荷輸送性ワニスPを得た。
【0247】
[3]単層素子及び特性評価
以下の実施例及び比較例において、ITO基板としては、ITOが表面上に膜厚150nmでパターニングされた25mm×25mm×0.7tのガラス基板を用い、使用前にO2プラズマ洗浄装置(150W、30秒間)によって表面上の不純物を除去したものを使用した。
【0248】
[実施例2-1]
電荷輸送性ワニスA1を、スピンコーターを用いてITO基板に塗布した後、大気下230℃で15分間焼成し、ITO基板上に60nmの薄膜を形成した。
その上に、蒸着装置(真空度2.0×10-5Pa)を用いてアルミニウムの薄膜を積層し、単層素子を得た。蒸着は、蒸着レート0.2nm/秒の条件で行った。アルミニウムの薄膜の膜厚は80nmとした。
なお、空気中の酸素、水等の影響による特性劣化を防止するため、単層素子は封止基板により封止した後、その特性を評価した。封止は、以下の手順で行った。
酸素濃度2ppm以下、露点-85℃以下の窒素雰囲気中で、単層素子を封止基板の間に収め、封止基板を接着材((株)MORESCO製モレスコモイスチャーカットWB90US(P))により貼り合わせた。この際、捕水剤(ダイニック(株)製HD-071010W-40)を単層素子と共に封止基板内に収めた。貼り合わせた封止基板に対し、紫外線を照射(波長365nm、照射量6,000mJ/cm2)した後、80℃で1時間、アニーリング処理して接着材を硬化させた。
【0249】
[比較例2-1]
電荷輸送性ワニスA1のかわりに電荷輸送性ワニスA2を用いた以外は、実施例2-1と同様の方法で単層素子を作製した。
【0250】
[実施例2-2]
電荷輸送性ワニスA1のかわりに電荷輸送性ワニスB1を用いた以外は、実施例2-1と同様の方法で単層素子を作製した。
【0251】
[比較例2-2]
電荷輸送性ワニスA1のかわりに電荷輸送性ワニスB2を用いた以外は、実施例2-1と同様の方法で単層素子を作製した。
【0252】
[実施例2-3]
電荷輸送性ワニスA1のかわりに電荷輸送性ワニスC1を用いた以外は、実施例2-1と同様の方法で単層素子を作製した。
【0253】
[比較例2-3]
電荷輸送性ワニスA1のかわりに電荷輸送性ワニスC2を用いた以外は、実施例2-1と同様の方法で単層素子を作製した。
【0254】
実施例2-1~2-3及び比較例2-1~2-3で作製した各単層素について、駆動電圧5Vにおける電流密度を測定した。結果を表1に示す。
【0255】
【0256】
[4]ホールオンリー素子(HOD)の作製及び特性評価-1
以下の実施例及び比較例において、ITO基板としては、前記と同様のものを使用した。
【0257】
[実施例3-1]
電荷輸送性ワニスA1を、スピンコーターを用いてITO基板に塗布した後、大気下230℃で15分間焼成し、ITO基板上に60nmの薄膜を形成した。
その上に、蒸着装置(真空度2.0×10-5Pa)を用いてα-NPD及びアルミニウムの薄膜を順次積層し、HODを得た。蒸着は、蒸着レート0.2nm/秒の条件で行った。α-NPD及びアルミニウムの薄膜の膜厚は、それぞれ30nm及び80nmとした。
なお、空気中の酸素、水等の影響による特性劣化を防止するため、HODは封止基板により封止した後、その特性を評価した。封止は、以下の手順で行った。
酸素濃度2ppm以下、露点-85℃以下の窒素雰囲気中で、HODを封止基板の間に収め、封止基板を接着材((株)MORESCO製モレスコモイスチャーカットWB90US(P))により貼り合わせた。この際、捕水剤(ダイニック(株)製HD-071010W-40)をHODと共に封止基板内に収めた。貼り合わせた封止基板に対し、紫外線を照射(波長365nm、照射量6,000mJ/cm2)した後、80℃で1時間、アニーリング処理して接着材を硬化させた。
【0258】
[比較例3-1]
電荷輸送性ワニスA1のかわりに電荷輸送性ワニスA2を用いた以外は、実施例3-1と同様の方法でHODを作製した。
【0259】
[実施例3-2]
電荷輸送性ワニスA1のかわりに電荷輸送性ワニスB1を用いた以外は、実施例3-1と同様の方法でHODを作製した。
【0260】
[比較例3-2]
電荷輸送性ワニスA1のかわりに電荷輸送性ワニスB2を用いた以外は、実施例3-1と同様の方法でHODを作製した。
【0261】
[実施例3-3]
電荷輸送性ワニスA1のかわりに電荷輸送性ワニスC1を用いた以外は、実施例3-1と同様の方法でHODを作製した。
【0262】
[比較例3-3]
電荷輸送性ワニスA1のかわりに電荷輸送性ワニスC2を用いた以外は、実施例3-1と同様の方法でHODを作製した。
【0263】
実施例3-1~3-3及び比較例3-1~3-3で作製した各HODについて、駆動電圧5Vにおける電流密度を測定した。結果を表2に示す。
【0264】
【0265】
表1及び2に示したように、アリールスルホン酸エステル化合物を含む本発明の電荷輸送性ワニスは、アリールスルホン酸エステル化合物を含まないものと比べて、高い導電性及び高い正孔輸送性を示した。
【0266】
[5]HODの作製及び特性評価-2
以下の実施例及び比較例において、ITO基板としては、前記と同様のものを使用した。
【0267】
[実施例4-1]
電荷輸送性ワニスDを、スピンコーターを用いてITO基板に塗布した後、大気下で、120℃で1分間仮焼成をし、次いで230℃で15分間本焼成をし、ITO基板上に30nmの正孔注入層薄膜を形成した。
次に、窒素雰囲気のグローブボックス内で、TFBポリマー(Luminescence Technology社製LT-N148)の0.6質量%キシレン溶液を正孔注入層上にスピンコートにより成膜し、130℃で10分間の加熱焼成を行い、40nmの正孔輸送層薄膜を形成した。
その上に、蒸着装置(真空度2.0×10-5Pa)を用いてアルミニウムの薄膜を積層し、HODを得た。蒸着は、蒸着レート0.2nm/秒の条件で行った。アルミニウムの薄膜の膜厚は、80nmとした。
なお、空気中の酸素、水等の影響による特性劣化を防止するため、HODは封止基板により封止した後、その特性を評価した。封止は、以下の手順で行った。
酸素濃度2ppm以下、露点-85℃以下の窒素雰囲気中で、HODを封止基板の間に収め、封止基板を接着材((株)MORESCO製モレスコモイスチャーカットWB90US(P))により貼り合わせた。この際、捕水剤(ダイニック(株)製HD-071010W-40)をHODと共に封止基板内に収めた。貼り合わせた封止基板に対し、紫外線を照射(波長365nm、照射量6,000mJ/cm2)した後、80℃で1時間、アニーリング処理して接着材を硬化させた。
【0268】
[実施例4-2]
電荷輸送性ワニスDのかわりに電荷輸送性ワニスEを用いた以外は、実施例4-1と同様の方法でHODを作製した。
【0269】
[実施例4-3]
電荷輸送性ワニスDのかわりに電荷輸送性ワニスFを用いた以外は、実施例4-1と同様の方法でHODを作製した。
【0270】
[実施例4-4]
電荷輸送性ワニスDのかわりに電荷輸送性ワニスGを用いた以外は、実施例4-1と同様の方法でHODを作製した。
【0271】
[実施例4-5]
電荷輸送性ワニスDのかわりに電荷輸送性ワニスHを用いた以外は、実施例4-1と同様の方法でHODを作製した。
【0272】
[実施例4-6]
電荷輸送性ワニスDのかわりに電荷輸送性ワニスIを用いた以外は、実施例4-1と同様の方法でHODを作製した。
【0273】
[実施例4-7]
電荷輸送性ワニスDのかわりに電荷輸送性ワニスJを用いた以外は、実施例4-1と同様の方法でHODを作製した。
【0274】
[実施例4-8]
電荷輸送性ワニスDのかわりに電荷輸送性ワニスKを用いた以外は、実施例4-1と同様の方法でHODを作製した。
【0275】
[比較例4-1]
正孔注入層を形成しなかったこと以外は、実施例4-1と同様の方法でHODを作製した。
【0276】
実施例4-1~4-8及び比較例4-1で作製した各HODについて、駆動電圧5Vにおける電流密度を測定した。結果を表3に示す。
【0277】
【0278】
表3に示したように、本発明のスルホン酸エステル化合物を含む電荷輸送性ワニスは、高い正孔輸送性を示した。
【0279】
[6]HODの作製及び特性評価-3
以下の実施例及び比較例において、ITO基板としては、前記と同様のものを使用した。
【0280】
[実施例5-1]
電荷輸送性ワニスLを、スピンコーターを用いてITO基板に塗布した後、大気下で、120℃で1分間仮焼成をし、次いで230℃で15分間本焼成をし、ITO基板上に40nmの薄膜を形成した。
その上に、蒸着装置(真空度2.0×10-5Pa)を用いてα-NPD及びアルミニウムの薄膜を順次積層し、HODを得た。蒸着は、蒸着レート0.2nm/秒の条件で行った。α-NPD及びアルミニウムの薄膜の膜厚は、それぞれ30nm及び80nmとした。
なお、空気中の酸素、水等の影響による特性劣化を防止するため、HODは封止基板により封止した後、その特性を評価した。封止は、以下の手順で行った。
酸素濃度2ppm以下、露点-85℃以下の窒素雰囲気中で、HODを封止基板の間に収め、封止基板を接着材((株)MORESCO製モレスコモイスチャーカットWB90US(P))により貼り合わせた。この際、捕水剤(ダイニック(株)製HD-071010W-40)をHODと共に封止基板内に収めた。貼り合わせた封止基板に対し、紫外線を照射(波長365nm、照射量6,000mJ/cm2)した後、80℃で1時間、アニーリング処理して接着材を硬化させた。
【0281】
[実施例5-2]
電荷輸送性ワニスLのかわりに電荷輸送性ワニスMを用いた以外は、実施例5-1と同様の方法でHODを作製した。
【0282】
[比較例5-1]
電荷輸送性ワニスLのかわりに電荷輸送性ワニスNを用いた以外は、実施例5-1と同様の方法でHODを作製した。
【0283】
実施例5-1~5-2及び比較例5-1で作製した各HODについて、駆動電圧4Vにおける電流密度を測定した。結果を表4に示す。
【0284】
【0285】
表4に示したように、本発明のスルホン酸エステル化合物を含む電荷輸送性ワニスは、エステル化していない従来のスルホン酸化合物を含む電荷輸送性ワニスと比べて、高い正孔輸送性を示した。
【0286】
[7]有機EL素子の作製及び特性評価
[実施例6-1]
電荷輸送性ワニスA1を、スピンコーターを用いてITO基板に塗布した後、大気下230℃で15分間焼成し、ITO基板上に60nmの薄膜を形成した。
その上に、蒸着装置(真空度2.0×10-5Pa)を用いてα-NPD 30nm、Alq3 40nmを、順次積層した。この際の蒸着レートは、0.2nm/秒とした。次いで、フッ化リチウム及びアルミニウムの薄膜を順次積層して有機EL素子を得た。この際、蒸着レートは、フッ化リチウムについては0.02nm/秒、アルミニウムについては0.2nm/秒とした。フッ化リチウム及びアルミニウムの薄膜の膜厚は、それぞれ0.5nm及び80nmとした。
なお、空気中の酸素、水等の影響による特性劣化を防止するため、有機EL素子は封止基板により封止した後、その特性を評価した。封止は、以下の手順で行った。
酸素濃度2ppm以下、露点-85℃以下の窒素雰囲気中で、有機EL素子を封止基板の間に収め、封止基板を接着材((株)MORESCO製モレスコモイスチャーカットWB90US(P))により貼り合わせた。この際、捕水剤(ダイニック(株)製HD-071010W-40)を有機EL素子と共に封止基板内に収めた。貼り合わせた封止基板に対し、紫外線を照射(波長365nm、照射量6,000mJ/cm2)した後、80℃で1時間、アニーリング処理して接着材を硬化させた。
【0287】
[比較例6-1]
電荷輸送性ワニスA1のかわりに電荷輸送性ワニスA2を用いた以外は、実施例6-1と同様の方法で有機EL素子を作製した。
【0288】
[実施例6-2]
電荷輸送性ワニスA1のかわりに電荷輸送性ワニスB1を用いた以外は、実施例6-1と同様の方法で有機EL素子を作製した。
【0289】
[比較例6-2]
電荷輸送性ワニスA1のかわりに電荷輸送性ワニスB2を用いた以外は、実施例6-1と同様の方法で有機EL素子を作製した。
【0290】
[実施例6-3]
電荷輸送性ワニスA1のかわりに電荷輸送性ワニスC1を用いた以外は、実施例6-1と同様の方法で有機EL素子を作製した。
【0291】
[実施例6-4]
電荷輸送性ワニスA1のかわりに電荷輸送性ワニスOを用いた以外は、実施例6-1と同様の方法で有機EL素子を作製した。
【0292】
[実施例6-5]
電荷輸送性ワニスA1のかわりに電荷輸送性ワニスPを用いた以外は、実施例6-1と同様の方法で有機EL素子を作製した。
【0293】
[比較例6-3]
電荷輸送性ワニスA1のかわりに電荷輸送性ワニスC2を用いた以外は、実施例6-1と同様の方法で有機EL素子を作製した。
【0294】
実施例6-1~6-5及び比較例6-1~6-3で作製した有機EL素子について、所定の駆動電圧における電流密度と輝度を測定した。結果を表5に示す。
【0295】
【0296】
表5に示したように、アリールスルホン酸エステル化合物を含む本発明の電荷輸送性ワニスは、アリールスルホン酸エステル化合物を含まないものと比べて、高い有機EL特性を示した。