(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】表皮、表皮の製造方法、および積層体
(51)【国際特許分類】
D06N 7/00 20060101AFI20230711BHJP
B32B 27/22 20060101ALI20230711BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20230711BHJP
C08J 9/10 20060101ALN20230711BHJP
【FI】
D06N7/00
B32B27/22
B32B27/30 101
B32B27/30 A
C08J9/10 CEV
(21)【出願番号】P 2020510708
(86)(22)【出願日】2019-03-18
(86)【国際出願番号】 JP2019011264
(87)【国際公開番号】W WO2019188520
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2022-02-02
(31)【優先権主張番号】P 2018062873
(32)【優先日】2018-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100150360
【氏名又は名称】寺嶋 勇太
(74)【代理人】
【識別番号】100209679
【氏名又は名称】廣 昇
(72)【発明者】
【氏名】西村 翔太
【審査官】伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-262750(JP,A)
【文献】特開平06-297624(JP,A)
【文献】特開平07-258448(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0025751(US,A1)
【文献】特開平07-228615(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06N 1/00- 7/06
B32B 1/00- 43/00
C08L 1/00-101/14
C08K 5/23
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化ビニル樹脂
(a)と可塑剤(a)とを含む塩化ビニル樹脂成形シート(X)と、
塩化ビニル樹脂(b)と可塑剤(b)とを含む発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)と、
を有
し、前記発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)が配置されている側に発泡ポリウレタン成形体を積層して用いられる表皮であり、
前記塩化ビニル樹脂成形シート(X)中の前記可塑剤(a)の含有量が、前記塩化ビニル樹脂
(a)100質量部あたり50質量部以上であり、
前記発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)は前記塩化ビニル樹脂成形シート(X)の厚み方向の一方側に配置され、
前記発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)の厚みが2.3mm以上
10.0mm以下であ
り、
前記可塑剤(a)および前記可塑剤(b)が、トリメリット酸エステルとエポキシ化大豆油とを含有する、表皮。
【請求項2】
前記発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)がアクリル系重合体を含む、請求項
1に記載の表皮。
【請求項3】
前記アクリル系重合体がメタクリル酸アルキルエステルとアクリル酸アルキルエステルとの共重合体を含む、請求項
2に記載の表皮。
【請求項4】
自動車内装部品の表皮用である、請求項1~
3のいずれかに記載の表皮。
【請求項5】
塩化ビニル樹脂成形シート(X)と発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)とを有
し、前記発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)が配置されている側に発泡ポリウレタン成形体を積層して用いられる表皮の製造方法であり、
塩化ビニル樹脂
(a)と可塑剤
(a)とを含む塩化ビニル樹脂組成物(A)を用いて塩化ビニル樹脂成形シート(X)を形成する第1工程と、
前記塩化ビニル樹脂成形シート(X)の厚み方向の一方側に、
塩化ビニル樹脂(b)と可塑剤(b)とを含む発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)を用いて発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)を形成する第2工程と、を有し、
前記塩化ビニル樹脂組成物(A)中の前記可塑剤
(a)の含有量が、前記塩化ビニル樹脂
(a)100質量部あたり50質量部以上であり、
前記発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)の厚みが2.3mm以上
10.0mm以下であ
り、
前記可塑剤(a)および前記可塑剤(b)が、トリメリット酸エステルとエポキシ化大豆油とを含有する、表皮の製造方法。
【請求項6】
前記発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)が熱分解型発泡剤を含む、請求項
5に記載の表皮の製造方法。
【請求項7】
前記熱分解型発泡剤がアゾ化合物を含む、請求項
6に記載の表皮の製造方法。
【請求項8】
前記熱分解型発泡剤の体積平均粒子径が10μm以下である、請求項
6または7に記載の表皮の製造方法。
【請求項9】
発泡ポリウレタン成形体と、
請求項1~
4のいずれかに記載の表皮と、
を有する積層体であり、
前記発泡ポリウレタン成形体と前記塩化ビニル樹脂成形シート(X)との間に前記発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)が配置される、積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表皮、表皮の製造方法、および積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
塩化ビニル樹脂は、一般に、耐寒性、耐熱性、耐油性などの特性に優れているため、種々の用途に用いられている。
具体的には、例えば、従来、自動車インスツルメントパネル等の自動車内装部品の形成には、塩化ビニル樹脂組成物をシート状に成形した塩化ビニル樹脂成形体(以下、「塩化ビニル樹脂成形シート」と称することがある。)からなる表皮や当該塩化ビニル樹脂成形シートからなる表皮に発泡ポリウレタン等の発泡体を裏打ちしてなる積層体などの自動車内装材が用いられている。
【0003】
そして、塩化ビニル樹脂成形シートの材料としては、塩化ビニル樹脂と可塑剤とを含む塩化ビニル樹脂組成物が使用されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-173974号公報
【文献】特開2012-7026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記従来技術のように、塩化ビニル樹脂成形シートの柔軟性等を向上させる目的で、可塑剤を使用することが一般的である。しかしながら、可塑剤を含む塩化ビニル樹脂成形シートからなる表皮は、発泡ポリウレタン成形体等の発泡体を裏打ちして使用される場合、高温条件下で収縮するため、自動車内装材としての意匠性が損なわれるという問題があった。そのため、発泡ポリウレタン成形体を裏打ちして用いた場合の当該表皮の熱収縮を抑制することが求められる。
【0006】
そこで、本発明は、発泡ポリウレタン成形体を裏打ちして用いた場合の熱収縮を良好に抑制し得る表皮を提供することを目的とする。
さらに、本発明は、当該表皮を備え、熱収縮を良好に抑制し得る積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決することを目的として鋭意検討を行った。そして、本発明者は、可塑剤を含む塩化ビニル樹脂成形シートの厚み方向の一方側に、発泡塩化ビニル樹脂成形シートを配置してなる表皮であれば、発泡ポリウレタン成形体を裏打ちして用いた場合に、表皮の熱収縮を良好に抑制できることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の表皮は、塩化ビニル樹脂と可塑剤とを含む塩化ビニル樹脂成形シート(X)と、発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)と、を有する表皮であり、前記塩化ビニル樹脂成形シート(X)中の前記可塑剤の含有量が、前記塩化ビニル樹脂100質量部あたり50質量部以上であり、前記発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)は前記塩化ビニル樹脂成形シート(X)の厚み方向の一方側に配置されることを特徴とする。このように、可塑剤を含む塩化ビニル樹脂成形シートの厚み方向の一方側に、発泡塩化ビニル樹脂成形シートを配置してなる表皮であれば、発泡ポリウレタン成形体を裏打ちして用いた場合の熱収縮を良好に抑制することができる。
【0009】
ここで、本発明の表皮は、前記発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)の厚みが1.5mm以上であることが好ましい。前記発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)の厚みが上記所定以上であれば、発泡ポリウレタン成形体を裏打ちして用いた場合の熱収縮を更に良好に抑制することができる。
なお、本発明において、発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)の厚みは、光学顕微鏡を用いて測定することができる。
【0010】
また、本発明の表皮は、前記発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)がアクリル系重合体を含むことが好ましい。発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)がアクリル系重合体を含めば、表皮の硬度を低下させることができる。
【0011】
さらに、本発明の表皮は、前記アクリル系重合体がメタクリル酸アルキルエステルとアクリル酸アルキルエステルとの共重合体を含むことが好ましい。前記アクリル系重合体がメタクリル酸アルキルエステルとアクリル酸アルキルエステルとの共重合体を含めば、表皮の硬度を更に低下させることができる。
【0012】
また、本発明の表皮は、自動車内装部品の表皮用であることが好ましい。本発明の表皮を自動車内装部品の表皮として用いれば、発泡ポリウレタン成形体を裏打ちして用いた場合の熱収縮を良好に抑制して、表皮の劣化を防止することができる。
【0013】
また、本発明の表皮の製造方法は、塩化ビニル樹脂成形シート(X)と発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)とを有する表皮の製造方法であり、塩化ビニル樹脂と可塑剤とを含む塩化ビニル樹脂組成物(A)を用いて塩化ビニル樹脂成形シート(X)を形成する第1工程と、前記塩化ビニル樹脂成形シート(X)の厚み方向の一方側に、発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)を用いて発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)を形成する第2工程と、を有し、前記塩化ビニル樹脂組成物(A)中の前記可塑剤の含有量が、前記塩化ビニル樹脂100質量部あたり50質量部以上であることを特徴とする。このように、塩化ビニル樹脂と可塑剤とを含む塩化ビニル樹脂組成物を用いて塩化ビニル樹脂成形シートを形成する工程と、前記塩化ビニル樹脂成形シートの厚み方向の一方側に、発泡性塩化ビニル樹脂組成物を用いて発泡塩化ビニル樹脂成形シートを形成する工程と、を実施すれば、発泡ポリウレタン成形体を裏打ちして用いた場合の熱収縮を良好に抑制し得る表皮を製造することができる。
【0014】
ここで、本発明の表皮の製造方法は、前記発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)が熱分解型発泡剤を含むことが好ましい。前記発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)が熱分解型発泡剤を含めば、得られる表皮に発泡ポリウレタン成形体を裏打ちして用いた場合の熱収縮を更に良好に抑制することができる。
【0015】
また、本発明の表皮の製造方法は、前記熱分解型発泡剤がアゾ化合物を含むことが好ましい。前記熱分解型発泡剤がアゾ化合物を含めば、得られる表皮に発泡ポリウレタン成形体を裏打ちして用いた場合の熱収縮を一層良好に抑制することができる。
さらに、本発明の表皮の製造方法は、前記熱分解型発泡剤の体積平均粒子径が10μm以下であることが好ましい。前記熱分解型発泡剤の体積平均粒子径が10μm以下であれば、得られる表皮の硬度を低下させ、クッション性を高めることができる。
【0016】
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の積層体は、発泡ポリウレタン成形体と、上述したいずれかの表皮と、を有する積層体であり、前記発泡ポリウレタン成形体と前記塩化ビニル樹脂成形シート(X)との間に前記発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)が配置されることを特徴とする。このように、発泡ポリウレタン成形体と、上述したいずれかの表皮とを有し、前記発泡ポリウレタン成形体と前記塩化ビニル樹脂成形シート(X)との間に前記発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)が配置される積層体であれば、熱収縮を良好に抑制することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、発泡ポリウレタン成形体を裏打ちして用いた場合の熱収縮を良好に抑制し得る表皮を提供することができる。
また、本発明によれば、表皮の熱収縮を良好に抑制し得る積層体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
ここで、本発明の表皮は、例えば、本発明の積層体の製造に用いることができる。そして、本発明の表皮は、例えば、自動車インスツルメントパネルなどの自動車内装部品の表皮等の、自動車内装材として好適に用いることができる。なお、本発明の表皮は、本発明の表皮の製造方法により製造することができる。
【0019】
(表皮)
本発明の表皮は、塩化ビニル樹脂と所定量の可塑剤とを含む塩化ビニル樹脂成形シート(X)と、発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)とを有し、発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)が塩化ビニル樹脂成形シート(X)の厚み方向の一方側に配置されることを特徴とする。そして、本発明の表皮は、塩化ビニル樹脂成形シート(X)の厚み方向の一方側に発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)が配置されているため、発泡ポリウレタン成形体を裏打ちして用いた場合、即ち、発泡塩化発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)が配置されている側に発泡ポリウレタン成形体を更に積層して用いた場合に、熱収縮を良好に抑制することができる。したがって、本発明の表皮は、自動車内装部材として、具体的には、例えば、自動車インスツルメントパネルおよびドアトリム等の自動車内装部品の表皮として好適に用いられ、特に、自動車インスツルメントパネルの表皮用に好適に用いられる。
【0020】
<塩化ビニル樹脂成形シート(X)>
塩化ビニル樹脂成形シート(X)は、塩化ビニル樹脂と所定量の可塑剤とを含む塩化ビニル樹脂組成物(A)をシート状に成形することにより得られる。なお、塩化ビニル樹脂成形シート(X)は通常、後述する発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)とは異なり、発泡体ではないものとする。
【0021】
なお、塩化ビニル樹脂成形シート(X)の厚みは、特に限定されないが、0.1mm以上であることが好ましく、0.5mm以上であることがより好ましく、0.7mm以上であることが更に好ましく、1.0mm以上であることが一層好ましく、1.2mm以上であることがより一層好ましく、5.0mm以下であることが好ましく、2.0mm以下であることがより好ましく、1.8mm以下であることが更に好ましく、1.5mm以下であることが一層好ましい。塩化ビニル樹脂成形シート(X)の厚みが上記下限以上であれば、得られる塩化ビニル樹脂成形シート(X)に低温下での良好な引張伸びを付与することができるからである。また、塩化ビニル樹脂成形シート(X)の厚みが上記上限以下であれば、得られる塩化ビニル樹脂成形シート(X)の取り扱い性に優れる他、塩化ビニル樹脂成形シート(X)に発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)を配することがより容易にできるからである。
【0022】
<<塩化ビニル樹脂組成物(A)>>
塩化ビニル樹脂組成物(A)は、塩化ビニル樹脂と、所定量の可塑剤とを含み、任意に、各種の添加剤などを更に含有してもよい。
なお、成形工程で分解し得る成分を除き、塩化ビニル樹脂組成物(A)中の各成分の塩化ビニル樹脂に対する含有量は、塩化ビニル樹脂成形シート(X)中の各成分の塩化ビニル樹脂に対する含有量と一致するものとする。
【0023】
[塩化ビニル樹脂]
ここで、塩化ビニル樹脂組成物(A)が含む塩化ビニル樹脂としては、例えば、1種類または2種類以上の塩化ビニル樹脂粒子を含有することができ、任意に、1種類または2種類以上の塩化ビニル樹脂微粒子を更に含有することができる。中でも、塩化ビニル樹脂は、少なくとも塩化ビニル樹脂粒子を含有することが好ましく、塩化ビニル樹脂粒子および塩化ビニル樹脂微粒子を含有することがより好ましい。
なお、本明細書において、「樹脂粒子」とは、粒子径が30μm以上の粒子を指し、「樹脂微粒子」とは、粒子径が30μm未満の粒子を指す。そして、塩化ビニル樹脂粒子は、通常、マトリックス樹脂(基材)として機能し、塩化ビニル樹脂微粒子は、通常、ダスティング剤(粉体流動性改良剤)として機能する。なお、塩化ビニル樹脂粒子は、懸濁重合法により製造することが好ましく、塩化ビニル樹脂微粒子は、乳化重合法により製造することが好ましい。
また、塩化ビニル樹脂は、懸濁重合法、乳化重合法、溶液重合法、塊状重合法など、従来から知られているいずれの製造法によっても製造され得る。
【0024】
-組成-
塩化ビニル樹脂としては、塩化ビニル単量体単位からなる単独重合体の他、塩化ビニル単量体単位を好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上含有する塩化ビニル系共重合体が挙げられる。塩化ビニル系共重合体を構成し得る、塩化ビニル単量体と共重合可能な単量体(共単量体)の具体例としては、エチレン、プロピレンなどのオレフィン類;塩化アリル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、三フッ化塩化エチレンなどのハロゲン化オレフィン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル類;イソブチルビニルエーテル、セチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;アリル-3-クロロ-2-オキシプロピルエーテル、アリルグリシジルエーテルなどのアリルエーテル類;アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸メチル、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジエチル、無水マレイン酸などの不飽和カルボン酸、そのエステルまたはその酸無水物類;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどの不飽和ニトリル類;アクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライドなどのアクリルアミド類;アリルアミン安息香酸塩、ジアリルジメチルアンモニウムクロライドなどのアリルアミンおよびその誘導体類;などが挙げられる。以上に例示される単量体は、共単量体の一部に過ぎず、共単量体としては、近畿化学協会ビニル部会編「ポリ塩化ビニル」日刊工業新聞社(1988年)第75~104頁に例示されている各種単量体が使用され得る。これらの共単量体は、1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。なお、上記塩化ビニル樹脂には、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、塩素化ポリエチレンなどの樹脂に、(1)塩化ビニルまたは(2)塩化ビニルと前記共単量体とがグラフト重合された樹脂も含まれる。
ここで、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリルおよび/またはメタクリルを意味する。
【0025】
[可塑剤]
塩化ビニル樹脂組成物(A)は所定量の可塑剤を更に含む。塩化ビニル樹脂組成物が可塑剤を含まなければ、塩化ビニル樹脂組成物を用いて塩化ビニル樹脂成形シートを良好に得ることができない。
【0026】
-含有量-
ここで、可塑剤の含有量は、上記塩化ビニル樹脂100質量部に対して50質量部以上であることが必要であり、55質量部以上であることが好ましく、60質量部以上であることがより好ましく、65質量部以上であることが更に好ましく、70質量部以上であることが一層好ましく、85質量部以上であることがより一層好ましく、200質量部以下であることが好ましく、170質量部以下であることがより好ましく、140質量部以下であることが更に好ましく、100質量部以下であることが一層好ましい。可塑剤の含有量が上記下限以上であれば、塩化ビニル樹脂組成物(A)に優れた柔軟性を付与し、例えば、塩化ビニル樹脂成形シート(X)へと加工し易くできると共に、得られる塩化ビニル樹脂成形シート(X)に低温下での良好な引張伸びを付与することができるからである。また、可塑剤の含有量が上記上限以下であれば、得られた塩化ビニル樹脂成形シート(X)の表面のべた付きをより抑制し、表面滑り性をより高めることができるからである。
【0027】
-種類-
可塑剤としては、例えば、国際公開第2016/098344号に記載の一次可塑剤および二次可塑剤などを使用することができる。これらの成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
上述した可塑剤の中でも、塩化ビニル樹脂組成物(A)および塩化ビニル樹脂成形シート(X)を容易に良好に得られる観点から、可塑剤として、少なくとも一次可塑剤を用いることが好ましく、一次可塑剤および二次可塑剤を併用することがより好ましい。具体的には、可塑剤としては、トリメリット酸エステルおよび/またはピロメリット酸エステルを用いることが好ましく、少なくともトリメリット酸エステルを用いることがより好ましく、トリメリット酸エステルとエポキシ化大豆油とを併用することが更に好ましい。
【0028】
[添加剤]
塩化ビニル樹脂組成物(A)は、上述した成分以外に、各種添加剤を更に含有してもよい。添加剤としては、特に限定されることなく、例えば、過塩素酸処理ハイドロタルサイト、ゼオライト、β-ジケトン、脂肪酸金属塩などの安定剤;離型剤;上記塩化ビニル樹脂微粒子以外のその他のダスティング剤;耐衝撃性改良剤;過塩素酸処理ハイドロタルサイト以外の過塩素酸化合物(過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カリウム等);酸化防止剤;防カビ剤;難燃剤;帯電防止剤;充填剤;光安定剤;成形加工性調節剤(シリコーンオイル等);着色剤が挙げられる。
このような添加剤としては、特に限定されることなく、例えば、国際公開第2016/098344号に記載のもの(ただし、発泡剤を除く。)を使用することができる。
【0029】
[塩化ビニル樹脂組成物(A)の調製方法]
塩化ビニル樹脂組成物(A)は、特に制限されることなく、上述した成分を混合して調製することができる。
ここで、上記塩化ビニル樹脂と、所定量の可塑剤と、必要に応じて更に使用される各種添加剤との混合方法としては、特に限定されることなく、例えば、塩化ビニル樹脂微粒子を含むダスティング剤を除く成分をドライブレンドにより混合し、その後、ダスティング剤を添加、混合する方法が挙げられる。ここで、ドライブレンドには、ヘンシェルミキサーの使用が好ましい。また、ドライブレンド時の温度は、特に制限されることなく、50℃以上が好ましく、70℃以上がより好ましく、200℃以下が好ましい。
【0030】
<発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)>
本発明の表皮は、上述した塩化ビニル樹脂成形シート(X)の厚み方向の一方側に配置された発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)を有する。そして、発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)は、本発明の表皮の厚み方向の一方側の表面に位置することが好ましい。なお、本発明の表皮の厚み方向の一方側の表面は、一部が発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)で構成されていてもよいし、全部が発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)で構成されていてもよい。
【0031】
ここで、一般に、可塑剤を含む塩化ビニル樹脂成形シートからなる表皮は、例えば、発泡ウレタン成形体と直接接触した状態で高温条件下に置かれると、表皮中の可塑剤が発泡ウレタン成形体に移行することで、表皮中の可塑剤の量が減少し、表皮の熱収縮が発生すると考えられている。しかしながら、可塑剤を含む塩化ビニル樹脂成形シート(X)の厚み方向の一方側に、発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)を配置してなる本発明の表皮であれば、塩化ビニル樹脂成形シート(X)と発泡ウレタン成形体との間に当該発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)を介在させることで、可塑剤が塩化ビニル樹脂成形シート(X)および発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)から移行して発泡ウレタン成形体に到達することが困難になり、結果として、熱収縮を良好に抑制することができると推測される。
【0032】
発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)は塩化ビニル樹脂成形シート(X)に直接接着していてもよいし、所望の効果が得られる限り、発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)は他の樹脂層等を介して塩化ビニル樹脂成形シート(X)に接着していてもよいが、表皮に発泡ウレタン成形体を裏打ちして用いた場合の熱収縮を更に良好に抑制する観点から、発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)は塩化ビニル樹脂成形シート(X)に直接接着していることが好ましい。
【0033】
なお、発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)の厚みは、特に限定されないが、1.5mm以上であることが好ましく、1.8mm以上であることがより好ましく、2.0mm以上であることが更に好ましく、2.3mm以上であることが一層好ましく、2.5mm以上であることがより一層好ましく、10.0mm以下であることが好ましく、5.0mm以下であることがより好ましく、4.0mm以下であることが更に好ましく、3.0mm以下であることが一層好ましく、2.7mm以下であることがより一層好ましい。発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)の厚みが上記下限以上であれば、得られる表皮に発泡ポリウレタン成形体を裏打ちして用いた場合に、表皮の熱収縮を更に良好に抑制することができると共に、当該表皮の硬度を低下させ、クッション性を高めることができる。一方、発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)の厚みが上記上限以下であれば、得られる表皮は発泡ポリウレタン成形体を裏打ちする際の取り扱い性に優れるものとなる。
【0034】
発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)は、特に限定されないが、通常、発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)を発泡させつつ、シート状に成形することにより得られる。
【0035】
<<発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)>>
発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)は、塩化ビニル樹脂と、発泡剤とを含み、任意に、アクリル系重合体、可塑剤、およびその他の各種添加剤などを更に含有してもよい。
ここで、発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)が含む塩化ビニル樹脂としては、「塩化ビニル樹脂成形シート(X)」の項で上述した塩化ビニル樹脂組成物(A)が含む塩化ビニル樹脂を使用することができる。
【0036】
また、発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)が含み得る可塑剤の種類としても、「塩化ビニル樹脂成形シート(X)」の項で上述した塩化ビニル樹脂組成物(A)中の可塑剤の種類の範囲内で適宜選択することができる。なお、発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)中の可塑剤の含有量は、塩化ビニル樹脂100質量部に対して70質量部以上であることが好ましく、75質量部以上であることがより好ましく、80質量部以上であることが更に好ましく、85質量部以上であることが一層好ましく、200質量部以下であることが好ましく、170質量部以下であることがより好ましく、140質量部以下であることが更に好ましい。発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)中の可塑剤の含有量が上記下限以上であれば、当該表皮の硬度を低下させ、クッション性を高めることができる。一方、発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)中の可塑剤の含有量が上記上限以下であれば、発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)が柔らかくなり過ぎず、得られる表皮は発泡ポリウレタン成形体を裏打ちする際の取り扱い性に優れるものとなる。
【0037】
さらに、発泡剤および可塑剤以外で、発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)が含み得る各種添加剤としても、「塩化ビニル樹脂成形シート(X)」の項で上述した塩化ビニル樹脂組成物(A)が含み得る添加剤を使用することができる。
【0038】
なお、後述する熱分解型発泡剤等の成形工程で分解し得る成分を除き、発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)中の各成分の塩化ビニル樹脂に対する含有量は、発泡塩化ビニル樹脂成形体(Y)中の各成分の塩化ビニル樹脂に対する含有量と一致するものとする。
【0039】
[発泡剤]
発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)は、発泡剤を含む。発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)が発泡剤を含むことにより、発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)を発泡させながら成形して、発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)を良好に得ることができる。
発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)が含む発泡剤としては、化学発泡剤および物理発泡剤などを使用することができる。
【0040】
ここで化学発泡剤の例としては、熱分解型発泡剤、および反応型発泡剤などが挙げられる。
【0041】
そして、熱分解型発泡剤としては、アゾ化合物、ニトロソ化合物、ヒドラジン誘導体、セミカルバジド化合物、テトラゾール化合物、有機酸、等の有機系熱分解型発泡剤;重炭酸塩、炭酸塩、有機酸塩、亜硝酸塩、等の無機系熱分解型発泡剤;などを用いることができる。
【0042】
さらに、アゾ化合物としては、例えば、アゾジカルボンアミド(ADCA)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、バリウムアゾジカルボキシレート、ジアゾアミノベンゼン等が挙げられる。ニトロソ化合物としては、例えば、ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)等が挙げられる。
ヒドラジン誘導体としては、例えば、p,p’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(OBSH)、パラトルエンスルホニルヒドラジド(TSH)、ヒドラゾジカルボンアミド(HDCA)等が挙げられる。
セミカルバジド化合物としては、例えば、p-トルエンスルホニルセミカルバジドが挙げられる。また、テトラゾール化合物としては、例えば、5-フェニルテトラゾール、1,4-ビステトラゾール等が挙げられる。
有機酸としては、例えば、クエン酸、シュウ酸、フマル酸、フタル酸、リンゴ酸、酒石酸等の多価カルボン酸が挙げられる。
【0043】
また、反応型発泡剤としては、イソシアネート化合物と水との組み合わせ、重炭酸ナトリウムと酸との組み合わせ、過酸化水素とイースト菌との組み合わせ、亜鉛粉末と酸との組み合わせ等が挙げられる。
【0044】
一方、物理発泡剤の例としては、フロンガス、炭酸ガス等の気体;水、揮発性炭化水素化合物等の揮発性液体;これらの気体、揮発性液体等を内包する熱膨張性マイクロカプセル;などが挙げられる。
【0045】
上述した発泡剤の中でも、熱分解型発泡剤を用いることが好ましく、アゾ化合物を用いることが更に好ましく、アゾジカルボンアミド(ADCA)を用いることが特に好ましい。発泡剤として熱分解型発泡剤を用いれば、得られる表皮に発泡ポリウレタン成形体を裏打ちして用いた場合の熱収縮を更に良好に抑制することができ、熱分解型発泡剤としてアゾ化合物を用いれば、得られる表皮に発泡ポリウレタン成形体を裏打ちして用いた場合の熱収縮を一層良好に抑制することができる。
【0046】
ここで、熱分解型発泡剤の体積平均粒子径は、30μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましく、10μm以下であることが更に好ましく、7μm以下であることが一層好ましく、5μm以下であることがより一層好ましく、4μm以下であることが更に一層好ましく、3μm以下であることが最も好ましく、1μm以上であることが好ましい。熱分解型発泡剤の体積平均粒子径が上記上限以下であれば、発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)の発泡倍率を向上させ、得られる表皮の硬度を低下させ、クッション性を高めることができる。一方、熱分解型発泡剤の体積平均粒子径が上記下限以上であれば、熱分解型発泡剤はその取り扱い性に優れるものとなる。
なお、本明細書中において、「体積平均粒子径」とは、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置を用いて測定した粒子径分布(体積基準)において、小径側から計算した累積体積が50%となる粒子径(メジアン径)を指す。
【0047】
また、発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)中の熱分解型発泡剤の含有量は、上記塩化ビニル樹脂100質量部に対して、0.7質量部以上であることが好ましく、1.4質量部以上であることがより好ましく、2.1質量部以上であることが更に好ましく、4質量部以下であることが好ましい。熱分解型発泡剤の含有量が、上記下限以上であれば、発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)の発泡倍率を向上させ、得られる表皮の硬度を低下させ、クッション性を高めることができる。一方、熱分解型発泡剤の含有量が、上記上限以下であれば、気泡(セル)の均一性が向上するため、得られる表皮の硬度を場所によらず略均一に低下させ、クッション性を高めることができる。
【0048】
[アクリル系重合体]
発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)は、アクリル系重合体を含むことが好ましい。発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)がアクリル系重合体を含むことにより、発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)中の気泡(セル)の均一性が向上するため、得られる表皮の硬度を場所によらず略均一に低下させ、クッション性を高めることができる。
【0049】
ここで、本発明において、「アクリル系重合体」とは、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、アクリル酸アルコキシアルキルエステル、メタクリル酸アルコキシアルキルエステルなどの、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を含む重合体である。ここで、「(メタ)アクリル酸エステル」とは、「アクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステル」を意味する。そして、アクリル系重合体としては、特に限定されないが、メタクリル酸アルキルエステルとアクリル酸アルキルエステルとの共重合体(メタクリル酸アルキル・アクリル酸アルキル共重合体)を用いることが好ましい。アクリル系重合体として、メタクリル酸アルキルエステルとアクリル酸アルキルエステルとの共重合体を用いれば、発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)中の気泡(セル)の均一性が更に向上するため、得られる表皮の硬度を更に低下させ、クッション性を更に高めることができる。
【0050】
アクリル系重合体は、(メタ)アクリル酸エステルと、任意のその他の化合物とを単量体として含む単量体組成物Cを用いて、重合反応を行なうことにより調製することができる。
そして、アクリル系重合体の調製に使用し得る(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、t-ブチルアクリレー卜、ペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘプチルアクリレート、オクチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート等のアクリル酸アルキルエステル;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、t-ブチルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、ヘプチルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート等のメタクリル酸アルキルエステルなどが挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレートを用いることが好ましい。
【0051】
上記単量体組成物C中の全単量体に占める(メタ)アクリル酸エステル単量体の割合は、50質量%以上95質量%以下であることが好ましい。上記単量体組成物中の全単量体に占める(メタ)アクリル酸エステル単量体の割合が上記下限以上であれば、発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)中の気泡(セル)の均一性が更に向上するため、得られる表皮の硬度を更に低下させ、クッション性を更に高めることができる。一方、上記単量体組成物中の全単量体に占める(メタ)アクリル酸エステル単量体の割合が上記上限以下であれば、アクリル系重合体が熱などにより融着することを防止することができる。
【0052】
また、上記単量体組成物Cが含み得る(メタ)アクリル酸エステル以外の単量体としては、特に限定されないが、例えば、エチレン性不飽和カルボン酸単量体、α,β-不飽和ニトリル単量体などが挙げられる。
【0053】
エチレン性不飽和カルボン酸単量体としては、エチレン性不飽和カルボン酸およびその塩の少なくとも一方を用いることができる。そして、エチレン性不飽和カルボン酸としては、エチレン性不飽和モノカルボン酸およびその誘導体、エチレン性不飽和ジカルボン酸およびその酸無水物並びにそれらの誘導体などが挙げられる。また、エチレン性不飽和カルボン酸塩としては、エチレン性不飽和カルボン酸のナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩などが挙げられる。
なお、エチレン性不飽和カルボン酸およびその塩は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
ここで、エチレン性不飽和モノカルボン酸の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などが挙げられる。そして、エチレン性不飽和モノカルボン酸の誘導体の例としては、2-エチルアクリル酸、イソクロトン酸、α-アセトキシアクリル酸、β-trans-アリールオキシアクリル酸、α-クロロ-β-E-メトキシアクリル酸、β-ジアミノアクリル酸などが挙げられる。
また、エチレン性不飽和ジカルボン酸の例としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などが挙げられる。そして、エチレン性不飽和ジカルボン酸の酸無水物の例としては、無水マレイン酸、ジアクリル酸無水物、メチル無水マレイン酸、ジメチル無水マレイン酸などが挙げられる。さらに、エチレン性不飽和ジカルボン酸の誘導体の例としては、メチルマレイン酸、ジメチルマレイン酸、フェニルマレイン酸、クロロマレイン酸、ジクロロマレイン酸、フルオロマレイン酸、などが挙げられる。
【0054】
また、α,β-不飽和ニトリル単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルが挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
なお、アクリル系重合体としては、市販品を用いることもできる。特に、メタクリル酸アルキルエステルとアクリル酸アルキルエステルとの共重合体として、「メタブレンL-1000」(三菱ケミカル社製)を好適に用いることができる。
【0056】
発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)中のアクリル系重合体の含有量は、上記塩化ビニル樹脂100質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましく、0.09質量部以上であることがより好ましく、0.2質量部以上であることが更に好ましく、1質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以下であることがより好ましい。アクリル系重合体の含有量が、上記所定の範囲内であれば、発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)中の気泡(セル)の均一性が更に向上するため、得られる表皮の硬度を更に低下させ、クッション性を更に高めることができる。
【0057】
[発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)の調製方法]
発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)は、特に制限されることなく、上述した成分を混合して調製することができる。
ここで、上記塩化ビニル樹脂と、発泡剤と、必要に応じて更に使用されるアクリル系重合体、可塑剤、およびその他の各種添加剤との混合方法としては、特に限定されることなく、例えば、塩化ビニル樹脂微粒子を含むダスティング剤と発泡剤とを除く成分をドライブレンドにより混合し、その後、ダスティング剤および発泡剤を添加、混合する方法が挙げられる。ここで、ドライブレンドには、ヘンシェルミキサーの使用が好ましい。また、ドライブレンド時の温度は、特に制限されることなく、50℃以上が好ましく、70℃以上がより好ましく、200℃以下が好ましい。なお、発泡剤を添加する際の温度は、使用する発泡剤の種類に応じ、本発明の所望の効果が得られる範囲内で任意に設定することができる。
【0058】
(表皮の製造方法)
本発明の表皮の製造方法は、塩化ビニル樹脂成形シート(X)と発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)とを有する表皮の製造方法であり、塩化ビニル樹脂と可塑剤とを含む塩化ビニル樹脂組成物(A)を用いて塩化ビニル樹脂成形シート(X)を形成する第1工程と、前記塩化ビニル樹脂成形シート(X)の厚み方向の一方側に、発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)を用いて発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)を形成する第2工程と、を有し、前記塩化ビニル樹脂組成物(A)中の前記可塑剤の含有量が、前記塩化ビニル樹脂100質量部あたり50質量部以上であることを特徴とする。本発明の表皮の製造方法によれば、発泡ポリウレタン成形体を裏打ちして用いた場合の熱収縮を良好に抑制し得る表皮を製造することができる。
【0059】
<第1工程>
第1工程では、塩化ビニル樹脂と所定量の可塑剤とを含む塩化ビニル樹脂組成物(A)を用いて塩化ビニル樹脂成形シート(X)を形成する。そして、通常は、当該塩化ビニル樹脂組成物(A)を既知の成形方法によりシート状に成形することで、塩化ビニル樹脂成形シート(X)を形成する。
ここで、塩化ビニル樹脂組成物(A)としては、「表皮」の項で上述した塩化ビニル樹脂成形シート(X)の形成に用いる塩化ビニル樹脂組成物(A)を使用することができる。
また、成形方法としては、粉体成形を用いることが好ましく、パウダースラッシュ成形を用いることがより好ましい。
【0060】
ここで、パウダースラッシュ成形時の金型温度は、特に制限されることなく、200℃以上とすることが好ましく、220℃以上とすることがより好ましく、300℃以下とすることが好ましく、280℃以下とすることがより好ましい。
【0061】
そして、塩化ビニル樹脂成形シート(X)を製造する際には、特に限定されることなく、例えば、以下の方法を用いることができる。即ち、上記温度範囲の金型に塩化ビニル樹脂組成物(A)を振りかけて、5秒以上30秒以下の間放置した後、余剰の塩化ビニル樹脂組成物(A)を振り落とし、さらに、任意の温度下、30秒以上3分以下の間放置する。その後、得られた塩化ビニル樹脂成形シート(X)は、後述する第2工程の態様に応じて、金型を10℃以上60℃以下に冷却することで、金型から脱型されてもよいし、脱型されなくてもよい。なお、脱型された塩化ビニル樹脂成形シートは、例えば、金型の形状をかたどったシート状の成形体として得られる。
【0062】
<第2工程>
第2工程では、塩化ビニル樹脂成形シート(X)の厚み方向の一方側に、発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)を用いて発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)を形成する。
ここで、発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)としては、「表皮」の項で上述した発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)の形成に用いる発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)を使用することができる。
塩化ビニル樹脂成形シート(X)の厚み方向の一方側に、発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)を用いて発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)を形成する方法としては、特に限定されることはなく、「第1工程」の項で上述した既知の成形方法により、発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)を発泡させながらシート状に成形して、単独の発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)を作製した後、既知の接着方法により、当該発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)を塩化ビニル樹脂成形シート(X)の厚み方向の一方側に接着する方法を採用してもよいが、同一の金型を用いて、第一工程としてのパウダースラッシュ成形と、第2工程としてのパウダースラッシュ成形とを連続して行なう以下の方法(「ダブルスラッシュ成形」と称することがある。)を用いることもできる。
即ち、上述した第1工程としてのパウダースラッシュ成形で、金型から余剰の塩化ビニル樹脂組成物(A)を振り落とし、さらに、任意の温度下、30秒以上3分以下放置した後に、得られた塩化ビニル樹脂成形シート(X)を金型から脱型せず、第2工程として、塩化ビニル樹脂成形シート(X)が付いた状態の金型に、発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)の粉体を振りかけて、発泡させる。なお、発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)の粉体を振りかける時の金型温度は、特に制限されることなく、200℃以上とすることが好ましく、220℃以上とすることがより好ましく、300℃以下とすることが好ましく、280℃以下とすることがより好ましい。そして、5秒以上30秒以下の間放置した後、余剰の発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)を振り落とし、さらに、任意の温度下、30秒以上3分以下の間放置する。その後、金型を10℃以上60℃以下に冷却し、得られた表皮を金型から脱型する。脱型された表皮は、塩化ビニル樹脂成形シート(X)の厚み方向の一方側に発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)が配置されてなり、上記製造方法の一例では、得られた表皮は、全体として金型の形状をかたどったシート状の2層構造の成形体である。このように、本発明の表皮の製造方法における第1工程および第2工程として、同一の金型を用いてパウダースラッシュ成形を連続して2回実施すれば、発泡ポリウレタン成形体を裏打ちして用いた場合の熱収縮を良好に抑制し得る表皮を効率良く製造することができる。
【0063】
なお、上記では、本発明の表皮の製造方法により、塩化ビニル樹脂成形シート(X)の厚み方向の一方側の表面に発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)が直接接着されてなる表皮が製造される場合について説明したが、本発明の表皮の製造方法はこれに限定されることはない。例えば、本発明の表皮の製造方法は、上述した第1工程および第2工程以外の任意の工程を含むことで、塩化ビニル樹脂成形シート(X)と発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)とが他の樹脂層等を介して接着されてなる表皮を製造することもできる。
【0064】
(積層体)
本発明の積層体は、発泡ポリウレタン成形体と、上述した表皮とを有する。そして、本発明の積層体は、発泡ポリウレタン成形体と上述した塩化ビニル樹脂成形シート(X)との間に上述した発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)が配置されてなる構造を有する。なお、通常、発泡ポリウレタン成形体は、表皮における発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)側に裏打ちされており、発泡ポリウレタン成形体と表皮とは積層方向に隣接して(即ち、発泡ポリウレタン成形体と塩化ビニル樹脂成形シート(X)とは発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)を介して積層方向に積層されて)いる。そして、本発明の積層体は、発泡ウレタン成形体と塩化ビニル樹脂成形シート(X)との間に発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)が介在しているため、熱収縮を良好に抑制することができる。したがって、本発明の積層体は、例えば、自動車インスツルメントパネルおよびドアトリム等といった自動車内装部品の自動車内装材として好適に用いられ、特に、自動車インスツルメントパネル用に好適に用いられる。
【0065】
ここで、積層方法は、特に限定されることなく、例えば、以下の方法を用いることができる。即ち、表皮の発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)が配置されている側の表面上で発泡ポリウレタン成形体の原料となるイソシアネート類とポリオール類などとを反応させて重合を行うと共に、公知の方法によりポリウレタンの発泡を行うことにより、表皮上に発泡ポリウレタン成形体を直接形成する。
【実施例】
【0066】
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、量を表す「%」および「部」は、特に断らない限り、質量基準である。
そして、発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)の発泡倍率;発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)の比重およびセルの状態;塩化ビニル樹脂成形シート(X)および発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)の厚み;積層体の硬度および耐熱収縮率;は、下記の方法で測定または評価した。
【0067】
<比重および発泡倍率>
ISO1183に規定される水中置換法により、各製造例で得られた発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)および比較製造例1で得られた非発泡の塩化ビニル樹脂成形シートの比重を測定した。そして、以下の式から、各製造例で使用した発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)の発泡倍率を算出した。
発泡倍率=比較製造例1の比重÷各製造例の比重
【0068】
<セルの状態>
発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)の断面を光学顕微鏡により目視観察し、セルの状態を以下の基準により評価した。
A:セルの径が150μm未満であり、均一な状態である。
B:セルの径が150μm以上である粗いセルが散見される。
C:セルの径が150μm以上である粗いセルが多数観察される。
【0069】
<厚み>
塩化ビニル樹脂成形シート(X)および発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)の断面を光学顕微鏡で観察することにより、厚みを測定した。
【0070】
<硬度>
積層体について、JIS K-6253(1997)に規定するA硬度を測定した。
【0071】
<耐熱収縮率>
積層体に対して、4つの目印を当該積層体の長手方向、短手方向にそれぞれ等間隔で付し、それぞれの目印の間隔を長尺ノギス(ミツトヨ社製「長尺タイプABSデジマチックキャリパCD-60C」)を使用して測定した。その後、長期使用を想定した促進試験として、当該積層体を110℃のギア式オーブン(東洋精機製作所社製「ギアオーブン」)中に保存し、加熱された積層体を1000時間経過後にオーブンから取り出し、積層体の長手方向、および短手方向にそれぞれ付された目印の間隔を上記長尺ノギスで測定した。そして、長手方向および短手方向のそれぞれについて、目印の間隔の実測値の平均値を求め、下記式で示される熱収縮率を算出した。なお、熱収縮率の値が小さいほど、積層体の熱収縮が小さいことを示す。
熱収縮率=(オーブン投入前の実測値-加熱後の実測値)/オーブン投入前の実測値
【0072】
(製造例1)
<発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)の調製>
表1に示す配合成分のうち、可塑剤と、ダスティング剤である塩化ビニル樹脂微粒子と、熱分解型発泡剤とを除く成分をヘンシェルミキサーに入れて混合した。そして、混合物の温度が80℃に上昇した時点で上記可塑剤を全て添加し、更に昇温することにより、ドライアップ(可塑剤が、塩化ビニル樹脂である塩化ビニル樹脂粒子に吸収されて、上記混合物がさらさらになった状態をいう。)させた。その後、ドライアップさせた混合物が温度100℃以下に冷却された時点でダスティング剤である塩化ビニル樹脂微粒子を添加し、さらに温度が80℃まで低下した時点で熱分解型発泡剤であるアゾジカルボンアミド(体積平均粒子径:20μm)を添加して、発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)を調製した。
【0073】
<発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)の形成>
上述で得られた発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)を、温度250℃に加熱したシボ付き金型に振りかけ、8秒~20秒程度の任意の時間放置して溶融および発泡させた後、余剰の発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)を振り落とした。その後、当該発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)を振りかけたシボ付き金型を、温度200℃に設定したオーブン内に静置し、静置から60秒経過した時点で当該シボ付き金型を冷却水で冷却した。金型温度が40℃まで冷却された時点で、縦200mm、横300mmの発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)を金型から脱型した。
そして、上述の方法に従って、得られた発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)の厚み、比重およびセルの状態を測定または評価した。結果を表1に示す。
【0074】
(製造例2~12)
発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)調製時の配合成分を表1のように変更した以外は、製造例1と同様にして、発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)および発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)を製造した。
そして、製造例1と同様の方法により測定および評価を行なった。結果を表1に示す。
【0075】
(比較製造例1)
発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)調製時に熱分解型発泡剤としてのアゾジカルボンアミド(体積平均粒子径:20μm)を使用しなかったこと以外は、製造例1と同様にして、塩化ビニル樹脂組成物および非発泡の塩化ビニル樹脂成形シートを製造した。そして、製造例1と同様の方法により評価を行なった。結果を表1に示す。
さらに、比較製造例1で得られた非発泡の塩化ビニル樹脂成形シートの比重、および上述した製造例1~12で得られた発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)の比重から、各製造例における発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)の発泡倍率を算出した。結果を表1に示す。
【0076】
(実施例1)
<塩化ビニル樹脂組成物(A)の調製>
表2に示す塩化ビニル樹脂組成物(A)用の配合成分のうち、可塑剤と、ダスティング剤である塩化ビニル樹脂微粒子とを除く成分をヘンシェルミキサーに入れて混合した。そして、混合物の温度が80℃に上昇した時点で上記可塑剤を全て添加し、更に昇温することにより、ドライアップ(可塑剤が、塩化ビニル樹脂である塩化ビニル樹脂粒子に吸収されて、上記混合物がさらさらになった状態をいう。)させた。その後、ドライアップさせた混合物が温度100℃以下に冷却された時点でダスティング剤である塩化ビニル樹脂微粒子を添加し、塩化ビニル樹脂組成物(A)を調製した。
【0077】
<表皮の作製>
[第1工程(塩化ビニル樹脂成形シート(X)の形成)]
上述で得られた塩化ビニル樹脂組成物(A)を、温度250℃に加熱したシボ付き金型に振りかけ、8秒~20秒程度の任意の時間放置して溶融させた後、余剰の塩化ビニル樹脂組成物(A)を振り落とした。その後、当該塩化ビニル樹脂組成物(A)を振りかけたシボ付き金型を、温度200℃に設定したオーブン内に60秒間静置した。
【0078】
[第2工程(発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)の形成)]
第1工程に引き続き、塩化ビニル樹脂成形シート(X)が付いた状態のシボ付き金型の当該塩化ビニル樹脂成形シート(X)の上から、製造例1で得られた発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)を更に振りかけ、8秒~20秒程度の任意の時間放置して溶融および発泡させた後、余剰の発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)を振り落とした。その後、当該シボ付き金型を、温度200℃に設定したオーブン内に静置し、静置から60秒経過した時点で当該シボ付き金型を冷却水で冷却した。金型温度が40℃まで冷却された時点で、縦200mm、横300mmの表皮を金型から脱型した。得られた表皮は、塩化ビニル樹脂成形シート(X)の厚み方向の一方側に発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)が積層されてなる、2層構造のシートであった。そして、当該表皮を構成する塩化ビニル樹脂成形シート(X)および発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)のそれぞれの厚みを測定しところ、塩化ビニル樹脂成形シート(X)の厚みは1.2mm、発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)の厚みは2.5mmであった。
【0079】
<積層体の作製(発泡ポリウレタン成形体の形成)>
作製された表皮を、温度100℃に設定したオーブンに2時間静置し、その後縦200mm、横300mm、厚み10mmの金型の中に、シボ付き面を下にして敷いた。
別途、プロピレングリコールのPO(プロピレンオキサイド)・EO(エチレンオキサイド)ブロック付加物(水酸基価28、末端EO単位の含有量=10%、内部EO単位の含有量4%)を50部、グリセリンのPO・EOブロック付加物(水酸基価21、末端EO単位の含有量=14%)を50部、水を2.5部、トリエチレンジアミンのエチレングリコ-ル溶液(東ソー社製、商品名「TEDA-L33」)を0.2部、トリエタノールアミンを1.2部、トリエチルアミンを0.5部、および整泡剤(信越化学工業製、商品名「F-122」)を0.5部混合して、ポリオール混合物を得た。また、得られたポリオール混合物とポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(ポリメリックMDI)とを、イソシアネートインデックスが98になる比率で混合した混合液を調製した。そして、調製した混合液を、上述の通り金型中に敷かれた表皮の上に注いだ。その後、348mm×255mm×10mmのアルミニウム板で上記金型に蓋をして、金型を密閉した。金型を密閉してから5分間放置することにより、表皮の発泡塩化ビニル樹脂シート(Y)側に、発泡ポリウレタン成形体(厚み:6.7mm)が裏打ち(積層)された積層体が、金型内で形成された。
そして、形成された積層体を金型から取り出して、上述の方法に従って、積層体の硬度および耐熱収縮率を測定した。結果を表1に示す。
【0080】
(実施例2および3)
表皮の作製における第2工程(発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)の形成)の際に、実施例2では、製造例5で得られた発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)を使用し、実施例3では、製造例9で得られた発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、表皮および積層体を作製した。そして、実施例1と同様の方法により測定を行なった。結果を表1に示す。
【0081】
(比較例1)
表皮の作製における第2工程(発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)の形成)を実施せず、得られた塩化ビニル樹脂成形シート(X)単独を、積層体の作製時の表皮として使用したこと以外は、実施例1と同様にして、表皮および積層体を作製した。そして、実施例1と同様の方法により測定を行なった。結果を表1に示す。
【0082】
【0083】
【0084】
1)新第一塩ビ社製、製品名「ZEST(登録商標)1000Z」(懸濁重合法、平均重合度:1000、平均粒子径:140μm)
2)新第一塩ビ社製、製品名「ZEST PQLTX」(乳化重合法で調製、平均重合度:800、平均粒子径:1.8μm)
3)花王社製、製品名「トリメックスN-08」
4)ADEKA社製、製品名「アデカサイザー O-130S」
5)協和化学工業社製、製品名「アルカマイザー(登録商標)5」
6)水澤化学工業社製、製品名「MIZUKALIZER DS」
7)昭和電工社製、製品名「カレンズDK-1」
8)堺化学工業社、製品名「SAKAI SZ2000」
9)ADEKA社製、製品名「アデカスタブ LA-72」
10)ADEKA社製、製品名「アデカスタブ 522A」
11)ADEKA社製、製品名「アデカスタブ LS-12」
12)永和化成社製、製品名「ビニホールAC#4-K8」
13)大塚化学社製、製品名「UNIFOAM AZ VI-25」
14)大塚化学社製、製品名「UNIFOAM AZ VI-40」
15)三菱ケミカル社製、製品名「メタブレンL-1000」
16)大日精化社製、製品名「DA PX 1720(A)ブラック」
【0085】
表2より、可塑剤を含む塩化ビニル樹脂成形シートの厚み方向の一方側に、発泡塩化ビニル樹脂成形シートを配置してなる表皮を用いた実施例1~3の積層体は、可塑剤を含む塩化ビニル樹脂成形シート単独を表皮として用いた比較例1の積層体に比して、熱収縮を良好に抑制できることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明によれば、発泡ポリウレタン成形体を裏打ちして用いた場合の熱収縮を良好に抑制し得る表皮を提供することができる。
また、本発明によれば、表皮の熱収縮を良好に抑制し得る積層体を提供することができる。