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特許7310821環状オレフィン開環共重合体およびその製造方法、ゴム組成物ならびにゴム架橋物
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  • 特許-環状オレフィン開環共重合体およびその製造方法、ゴム組成物ならびにゴム架橋物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】環状オレフィン開環共重合体およびその製造方法、ゴム組成物ならびにゴム架橋物
(51)【国際特許分類】
   C08G 61/08 20060101AFI20230711BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20230711BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20230711BHJP
   C08L 65/00 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
C08G61/08
C08K3/04
C08K3/36
C08L65/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020537374
(86)(22)【出願日】2019-06-24
(86)【国際出願番号】 JP2019024915
(87)【国際公開番号】W WO2020036001
(87)【国際公開日】2020-02-20
【審査請求日】2022-05-19
(31)【優先権主張番号】P 2018153377
(32)【優先日】2018-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】角替 靖男
(72)【発明者】
【氏名】奥野 晋吾
【審査官】内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】特開昭54-050599(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 61/08
C08K 3/04
C08K 3/36
C08L 65/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単環の環状オレフィン由来の構造単位および2-ノルボルネン由来の構造単位を含む環状オレフィン開環共重合体であって、
JIS K7121にしたがって求められる補外ガラス転移終了温度(Teg)と補外ガラス転移開始温度(Tig)との差(ΔTg)が30℃以下であり、
重量平均分子量(Mw)が50,000~1,000,000である環状オレフィン開環共重合体。
【請求項2】
前記環状オレフィン開環共重合体中の全繰返し構造単位に対して、前記単環の環状オレフィン由来の構造単位の含有割合が20~90質量%であり、2-ノルボルネン由来の構造単位の含有割合が10~80質量%である請求項1に記載の環状オレフィン開環共重合体。
【請求項3】
JIS K7121にしたがって求められるガラス転移温度(Tmg)が、-80℃~10℃である請求項1または2に記載の環状オレフィン開環共重合体。
【請求項4】
請求項1~のいずれか一項に記載の環状オレフィン開環共重合体、ならびに、シリカおよび/またはカーボンブラックを含むゴム組成物。
【請求項5】
請求項に記載のゴム組成物を架橋してなるゴム架橋物。
【請求項6】
請求項1~のいずれか一項に記載の環状オレフィン開環共重合体を製造する製造方法であって、
前記単環の環状オレフィンおよび2-ノルボルネン、ならびに、開環重合触媒の一方または両方を、連続的または断続的に、重合反応器に添加しながら、前記単環の環状オレフィンおよび2-ノルボルネンを共重合させる工程を含む製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状オレフィン開環共重合体およびその製造方法、環状オレフィン開環共重合体を含むゴム組成物ならびにゴム架橋物に関し、さらに詳しくは、耐屈曲疲労性、耐摩耗性、ウェットグリップ性、および低発熱性に優れるゴム架橋物を与える環状オレフィン開環共重合体およびその製造方法、ならびに、環状オレフィン開環共重合体を用いて得られるゴム組成物およびゴム架橋物に関する。
【背景技術】
【0002】
単環の環状オレフィンとノルボルネン化合物からなる環状オレフィン開環共重合体は、機械強度に優れたゴムに用いられることが知られている。例えば、特許文献1には、単環の環状オレフィンであるシクロペンテンとノルボルネン化合物であるジシクロペンタジエンの共重合体組成物からなる加硫ゴムが引張強度に優れていることが記載されている。また、特許文献2には、単環の環状オレフィンであるシクロペンテンと種々のノルボルネン化合物との共重合体組成物からなる加硫ゴムが、タイヤ用ゴムとして低燃費性とウェットグリップ性に優れることが記載されている。
【0003】
しかしながら、特許文献1および2に記載された環状オレフィン開環共重合体からなる加硫ゴムは、機械強度や低燃費性、ウェットグリップ性が十分とはいえず、さらなる特性の向上が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭51-122187号公報
【文献】国際公開第2014/133028号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、耐屈曲疲労性、耐摩耗性、ウェットグリップ性、および低発熱性に優れるゴム架橋物を与える環状オレフィン開環共重合体およびその製造方法を提供すること、ならびに、このような環状オレフィン開環共重合体を用いて得られるゴム組成物およびゴム架橋物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するための検討において、まず、単環の環状オレフィンとノルボルネン化合物との重合反応性の相違に着目した。そうしたところ、両者の重合反応性の相違に起因して、得られる環状オレフィン開環共重合体は、モノマーの組成分布が広く、分子量分布も広いこと、および、ガラス転移温度が制御し難いことが判明した。モノマーの組成分布は、直接同定することは困難であるが、示差走査熱量計(DSC)でガラス転移温度(Tmg)を測定した時の補外ガラス転移開始温度(Tig)と補外ガラス転移終了温度(Teg)との差(ΔTg)で代用することができる。すなわち、モノマーの組成分布および分子量分布が広いほど、ΔTgは大きくなる。実際、特許文献1,2で製造される環状オレフィン開環共重合体について、示差走査熱量測定をしたところ、ΔTgが十分に小さいとは言い難いものであった。
【0007】
本発明者らは、さらに検討を続けたところ、環状オレフィン開環共重合体のモノマーの組成分布および分子量分布が広いと、機械強度や低燃費性、ウェットグリップ性などの性能が十分に引き出されているとは言えないことも、あわせて見出された。
【0008】
本発明者らは、以上の知見に基づき、環状オレフィン開環共重合体の補外ガラス転移開始温度(Tig)と補外ガラス転移終了温度(Teg)との差(ΔTg)、および、重量平均分子量(Mw)を極めて限定された範囲に調整することによって、耐屈曲疲労性、耐摩耗性、ウェットグリップ性、および低発熱性に優れたゴム架橋物が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明によれば、単環の環状オレフィン由来の構造単位およびノルボルネン化合物由来の構造単位を含む環状オレフィン開環共重合体であって、JIS K7121にしたがって求められる補外ガラス転移終了温度(Teg)と補外ガラス転移開始温度(Tig)との差(ΔTg)が30℃以下であり、重量平均分子量(Mw)が50,000~1,000,000である環状オレフィン開環共重合体が提供される。
【0010】
本発明の環状オレフィン開環共重合体において、前記環状オレフィン開環共重合体中の全繰返し構造単位に対して、前記単環の環状オレフィン由来の構造単位の含有割合が20~90質量%であり、前記ノルボルネン化合物由来の構造単位の含有割合が10~80質量%であることが好ましい。
本発明の環状オレフィン開環共重合体において、JIS K7121にしたがって求められるガラス転移温度(Tmg)が、-80℃~10℃であることが好ましい。
本発明の環状オレフィン開環共重合体において、前記ノルボルネン化合物が、2-ノルボルネンであることが好ましい。
【0011】
また、本発明によれば、上記の環状オレフィン開環共重合体、ならびにシリカおよび/またはカーボンブラックを含むゴム組成物が提供される。
【0012】
また、本発明によれば、上記のゴム組成物を架橋してなるゴム架橋物が提供される。
【0013】
また、本発明によれば、上記の環状オレフィン開環共重合体を製造する製造方法であって、前記単環の環状オレフィンおよび前記ノルボルネン化合物、ならびに、開環重合触媒の一方または両方を、連続的または断続的に、重合反応器に添加しながら、前記単環の環状オレフィンおよび前記ノルボルネン化合物を共重合させる工程を含む製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、耐屈曲疲労性、耐摩耗性、ウェットグリップ性、および低発熱性に優れるゴム架橋物を与える環状オレフィン開環共重合体およびその製造方法、ならびに、このような環状オレフィン開環共重合体を含むゴム組成物およびゴム架橋物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、実施例1で得られたシクロペンテン/ジシクロペンタジエン開環共重合体のDSC曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<環状オレフィン開環共重合体>
本発明の環状オレフィン開環共重合体は、単環の環状オレフィン由来の構造単位およびノルボルネン化合物由来の構造単位を含むものである。
【0017】
本発明における単環の環状オレフィンとしては、環状構造を1個のみ有するオレフィンであれば特に限定されないが、たとえば、シクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、メチルシクロペンテン、シクロヘキセン、メチルシクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどの環状モノオレフィン;シクロヘキサジエン、メチルシクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、メチルシクロオクタジエンなどの環状ジオレフィン;などを挙げることができる。
【0018】
単環の環状オレフィンは、1種類を単独で使用しても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。単環の環状オレフィンとしては、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンおよびシクロオクタジエンが好ましく、本発明の効果がより得られやすいという観点より、シクロペンテンおよびシクロオクタジエンがより好ましい。
【0019】
本発明におけるノルボルネン化合物は、ノルボルネン環構造を持つ化合物であり、下記一般式(1)で表されるノルボルネン化合物であることが好ましい。
【化1】
【0020】
式中、R~Rは水素原子、炭素数1~20の炭化水素基、または、ハロゲン原子、ケイ素原子、酸素原子もしくは窒素原子を含む置換基を示し、RとRは互いに結合して環構造を形成していてもよく、mは0~2の整数である。
【0021】
上記一般式(1)で表されるノルボルネン化合物の具体例としては、たとえば、以下の化合物が挙げられる。
【0022】
2-ノルボルネン、5-メチル-2-ノルボルネン、5-エチル-2-ノルボルネン、5-ブチル-2-ノルボルネン、5-ヘキシル-2-ノルボルネン、5-デシル-2-ノルボルネン、5-シクロヘキシル-2-ノルボルネン、5-シクロペンチル-2-ノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-ビニル-2-ノルボルネン、5-プロペニル-2-ノルボルネン、5-シクロヘキセニル-2-ノルボルネン、5-シクロペンテニル-2-ノルボルネン、5-フェニル-2-ノルボルネン、テトラシクロ[9.2.1.02,10.03,8]テトラデカ-3,5,7,12-テトラエン(1,4-メタノ-1,4,4a,9a-テトラヒドロ-9H-フルオレンともいう)、テトラシクロ[10.2.1.02,11.04,9]ペンタデカ-4,6,8,13-テトラエン(1,4-メタノ-1,4,4a,9,9a,10-ヘキサヒドロアントラセンともいう)、ジシクロペンタジエン、メチルジシクロペンタジエン、およびジヒドロジシクロペンタジエン(トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ-8-エン)などの無置換または炭化水素置換基を有するビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン類;
【0023】
テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、9-メチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、9-エチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、9-シクロヘキシルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、9-シクロペンチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、9-メチレンテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、9-エチリデンテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、9-ビニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、9-プロペニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、9-シクロヘキセニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、9-シクロペンテニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、および9-フェニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エンなどの無置換または炭化水素置換基を有するテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン類;
【0024】
5-ノルボルネン-2-カルボン酸メチル、5-ノルボルネン-2-カルボン酸エチル、2-メチル-5-ノルボルネン-2-カルボン酸メチル、2-メチル-5-ノルボルネン-2-カルボン酸エチルなどのアルコキシカルボニル基を有するビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン類;
テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-9-エン-4-カルボン酸メチル、および4-メチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-9-エン-4-カルボン酸メチルなどのアルコキシカルボニル基を有するテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン類;
【0025】
5-ノルボルネン-2-カルボン酸、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸、および5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物などのヒドロキシカルボニル基または酸無水物基を有するビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン類;
テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-9-エン-4-カルボン酸、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-9-エン-4,5-ジカルボン酸、およびテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-9-エン-4,5-ジカルボン酸無水物などのヒドロキシカルボニル基または酸無水物基を有するテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン類;
【0026】
5-ヒドロキシ-2-ノルボルネン、5-ヒドロキシメチル-2-ノルボルネン、5,6-ジ(ヒドロキシメチル)-2-ノルボルネン、5,5-ジ(ヒドロキシメチル)-2-ノルボルネン、5-(2-ヒドロキシエトキシカルボニル)-2-ノルボルネン、および5-メチル-5-(2-ヒドロキシエトキシカルボニル)-2-ノルボルネンなどのヒドロキシル基を有するビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン類;
テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-9-エン-4-メタノール、およびテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-9-エン-4-オールなどのヒドロキシル基を有するテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン類;
【0027】
5-ノルボルネン-2-カルバルデヒドなどのヒドロカルボニル基を有するビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン類;
テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-9-エン-4-カルバルデヒドなどのヒドロカルボニル基を有するテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン類;
【0028】
3-メトキシカルボニル-5-ノルボルネン-2-カルボン酸などのアルコキシカルボニル基とヒドロキシカルボニル基とを有するビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン類;
【0029】
酢酸5-ノルボルネン-2-イル、酢酸2-メチル-5-ノルボルネン-2-イル、アクリル酸5-ノルボルネン-2-イル、およびメタクリル酸5-ノルボルネン-2-イルなどのカルボニルオキシ基を有するビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン類;
酢酸9-テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エニル、アクリル酸9-テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エニル、およびメタクリル酸9-テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エニルなどのカルボニルオキシ基を有するテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン類;
【0030】
5-ノルボルネン-2-カルボニトリル、および5-ノルボルネン-2-カルボキサミド、5-ノルボルネン-2、3-ジカルボン酸イミドなどの窒素原子を含む官能基を有するビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン類;
テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-9-エン-4-カルボニトリル、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-9-エン-4-カルボキサミド、およびテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-9-エン-4,5-ジカルボン酸イミドなどの窒素原子を含む官能基を有するテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン類;
【0031】
5-クロロ-2-ノルボルネンなどのハロゲン原子を有するビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン類;
9-クロロテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エンなどのハロゲン原子を有するテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン類;
【0032】
5-トリメトキシシリル-2-ノルボルネン、5-トリエトキシシリル-2-ノルボルネンなどのケイ素原子を含む官能基を有するビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン類;
4-トリメトキシシリルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-9-エン、4-トリエトキシシリルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-9-エンなどのケイ素原子を含む官能基を有するテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン類;
【0033】
上記一般式(1)で表されるノルボルネン化合物としては、上記一般式(1)において、mが0または1である一般式で表されるものが好ましく、mが0である一般式で表されるものがより好ましい。また、上記一般式(1)において、R~Rは、同一であっても異なっていてもよい。
【0034】
また、上記一般式(1)で表されるノルボルネン化合物のなかでも、得られるゴム架橋物を、耐屈曲疲労性、耐摩耗性、ウェットグリップ性、および低発熱性により優れるものとすることができるという観点より、上記一般式(1)におけるR~Rが、水素原子、炭素数1~20の鎖状炭化水素基、または、ハロゲン原子、ケイ素原子、酸素原子もしくは窒素原子を含む置換基であることが好ましい。この場合において、R~Rは、互いに結合せず、環を形成しない基であればよく、特に限定されず、同一であっても異なっていてもよく、R~Rとしては、水素原子または炭素数1~3のアルキル基が好ましい。また、この場合においても、mが0または1である一般式で表されるものが好ましく、mが0である一般式で表されるものがより好ましい。
【0035】
上記一般式(1)におけるR~Rが、水素原子、炭素数1~20の鎖状炭化水素基、または、ハロゲン原子、ケイ素原子、酸素原子もしくは窒素原子を含む置換基であるノルボルネン化合物としては、無置換または炭化水素置換基を有するビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン類およびテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン類が好ましく、なかでも、2-ノルボルネン、5-メチル-2-ノルボルネン、5-エチル-2-ノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネンおよびテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エンがより好ましく、本発明の効果がより得られやすいという観点より、2-ノルボルネン、5-メチル-2-ノルボルネンおよびテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エンがさらに好ましく、2-ノルボルネンおよびテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エンが特に好ましい。
【0036】
また、上記一般式(1)で表されるノルボルネン化合物として、RとRとが互いに結合して環を形成している化合物を用いる場合における、環構造の具体例としては、シクロペンタン環、シクロペンテン環、シクロヘキサン環、シクロへキセン環、ベンゼン環などが好適に挙げられ、これらは多環構造を形成していてもよく、さらには、置換基を有するものであってもよい。これらのなかでも、シクロペンタン環、シクロペンテン環、ベンゼン環が好ましく、特に、シクロペンテン環を単独で有する化合物、またはシクロペンタン環とベンゼン環との多環構造を有する化合物が好ましい。なお、環構造を形成するR、R以外のR、Rは、同一であっても異なっていてもよく、水素原子または炭素数1~3のアルキル基が好ましい。また、この場合においては、mが0である一般式で表されるものが好ましい。
【0037】
とRとが互いに結合して環を形成している化合物としては、無置換または炭化水素置換基を有するビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン類が好ましく、なかでも、ジシクロペンタジエン、メチルジシクロペンタジエン、ジヒドロジシクロペンタジエン、1,4-メタノ-1,4,4a,9a-テトラヒドロ-9H-フルオレン、1,4-メタノ-1,4,4a,9,9a,10-ヘキサヒドロアントラセンが好ましく、ジシクロペンタジエン、1,4-メタノ-1,4,4a,9a-テトラヒドロ-9H-フルオレンがより好ましい。
【0038】
本発明におけるノルボルネン化合物は、1種類を単独で使用しても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
本発明の環状オレフィン開環共重合体における、単環の環状オレフィン由来の構造単位の含有割合は、全繰返し構造単位に対して、好ましくは20~90質量%であり、より好ましくは30~80質量%であり、さらに好ましくは35~75質量%であり、特に好ましくは35~60質量%である。単環の環状オレフィン由来の構造単位の含有割合を上記範囲とすることにより、得られるゴム架橋物を、耐屈曲疲労性、耐摩耗性、ウェットグリップ性、および低発熱性により優れるものとすることができる。
【0040】
本発明の環状オレフィン開環共重合体における、ノルボルネン化合物由来の構造単位の含有割合は、全繰返し構造単位に対して、好ましくは10~80質量%であり、より好ましくは20~70質量%であり、さらに好ましくは25~65質量%であり、特に好ましくは40~65質量%である。ノルボルネン化合物由来の構造単位の含有割合を上記範囲とすることにより、得られるゴム架橋物を、耐屈曲疲労性、耐摩耗性、ウェットグリップ性、および低発熱性により優れるものとすることができる。
【0041】
また、本発明の環状オレフィン開環共重合体は、単環の環状オレフィンおよびノルボルネン化合物に加えて、これらと共重合可能な他の単量体を共重合したものであってもよい。このような他の単量体としては、芳香環を有する多環のシクロオレフィンなどが例示される。芳香環を有する多環のシクロオレフィンとしては、フェニルシクロオクテン、5-フェニル-1,5-シクロオクタジエン、フェニルシクロペンテンなどが挙げられる。本発明の環状オレフィン開環共重合体中における、他の単量体由来の構造単位の含有割合は、全繰り返し構造単位に対して、好ましくは40質量%以下であり、より好ましくは30質量%以下であり、本発明の環状オレフィン開環共重合体としては、他の単量体由来の構造単位が実質的に含まれていないものであることが特に好ましい。
【0042】
本発明の環状オレフィン開環共重合体の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定される、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)の値として、50,000~1,000,000であり、好ましくは60,000~800,000であり、より好ましくは70,000~700,000、さらに好ましくは80,000~600,000である。重量平均分子量(Mw)を上記範囲とすることにより、製造および取扱いを良好なものとしながら、得られるゴム架橋物を、耐屈曲疲労性、耐摩耗性、ウェットグリップ性、および低発熱性により優れるものとすることができる。また、本発明の環状オレフィン開環共重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定される、ポリスチレン換算の、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、好ましくは1.0~5.0、より好ましくは1.5~2.9、さらに好ましくは1.5~2.5であり、特に好ましくは1.5~2.3である。
【0043】
本発明の環状オレフィン開環共重合体のシス/トランス比は、好ましくは0/100~60/40であり、より好ましくは5/95~55/45であり、さらに好ましくは10/90~50/50であり、特に好ましくは15/85~39/61である。上記のシス/トランス比とは、本発明の環状オレフィン開環共重合体を構成する繰返し単位中に存在する二重結合のシス構造とトランス構造との含有割合(シス/トランスの比率)である。シス/トランス比を上記範囲とすることにより、得られるゴム架橋物を、耐屈曲疲労性、耐摩耗性、ウェットグリップ性、および低発熱性により優れるものとすることができる。
【0044】
本発明の環状オレフィン開環共重合体は、JIS K7121にしたがって示差走査熱量測定(DSC)を用いて昇温速度10℃/分、0.13℃ごとに測定し、得られたDSC曲線から求めた補外ガラス転移終了温度(Teg)と補外ガラス転移開始温度(Tig)との差(ΔTg)が30℃以下であり、好ましくは20℃以下であり、より好ましくは15℃以下であり、さらに好ましくは10℃以下である。ΔTgを上記範囲とすることにより、得られるゴム架橋物を、耐屈曲疲労性、耐摩耗性、ウェットグリップ性、および低発熱性により優れるものとすることができる。
【0045】
本発明の環状オレフィン開環共重合体は、ガラス転移温度(Tmg)が、好ましくは-80~10℃であり、より好ましくは-75~0℃、さらに好ましくは-70~-10℃である。ガラス転移温度(Tmg)を上記範囲とすることにより、得られるゴム架橋物を、耐屈曲疲労性、耐摩耗性、ウェットグリップ性、および低発熱性により優れるものとすることができる。
【0046】
補外ガラス転移開始温度(Tig)、補外ガラス転移終了温度(Teg)およびガラス転移温度(Tmg)は、JIS K7121に従って求める。補外ガラス転移開始温度(Tig)と補外ガラス転移終了温度(Teg)との差(ΔTg)は、以下の式で算出する。
ΔTg=Teg-Tig
【0047】
補外ガラス転移開始温度(Tig)、補外ガラス転移終了温度(Teg)およびガラス転移温度(Tmg)は、たとえば、重合に用いる単環の環状オレフィンおよびノルボルネン化合物の添加方法、開環重合触媒の添加方法などを、後述するように工夫することによって、制御することができる。
【0048】
本発明の環状オレフィン開環共重合体のムーニー粘度(ML1+4,100℃)は、好ましくは20~150、より好ましくは22~120、さらに好ましくは25~90である。ムーニー粘度を上記範囲とすることにより、常温および高温での混練を容易なものとすることができ、これにより加工性を良好なものとすることができる。
【0049】
<環状オレフィン開環共重合体の製造方法>
上記したように、本発明の環状オレフィン開環共重合体は、補外ガラス転移終了温度(Teg)と補外ガラス転移開始温度(Tig)との差(ΔTg)が非常に小さく、したがって、モノマー組成分布および分子量分布が比較的狭い共重合体であると考えられる。
【0050】
本発明者らが鋭意検討したところ、このような特徴を備える環状オレフィン開環共重合体が、単環の環状オレフィンとノルボルネン化合物とを重合させる際に、これら単量体の添加方法、重合に用いる開環重合触媒の添加方法などを工夫することによって、製造できることが見出された。
【0051】
すなわち、本発明の環状オレフィン開環共重合体は、単環の環状オレフィンおよびノルボルネン化合物、ならびに、開環重合触媒の一方または両方を、連続的または断続的に、重合反応器に添加しながら、単環の環状オレフィンおよびノルボルネン化合物を共重合させる工程を含む製造方法により、好適に製造することができる。
【0052】
本発明の環状オレフィン開環共重合体の製造方法において、単環の環状オレフィンおよびノルボルネン化合物を連続的に重合反応器に添加する時間は、通常15分間以上であり、上限は特に限定されず、重合反応が完了するまで連続的に添加してよく、たとえば、15分間以上3時間以下であってよく、30分間以上2時間以下であってよい。
【0053】
本発明の環状オレフィン開環共重合体の製造方法において、開環重合触媒を断続的に重合反応器に添加する回数は、通常2回以上であり、重合反応を行っている間であれば、何回であっても構わないが、2回以上5回以下であってよい。
【0054】
単環の環状オレフィンおよびノルボルネン化合物の重合反応器への添加方法は、特に限定されず、たとえば、単環の環状オレフィンおよびノルボルネン化合物を、それぞれ別個に、重合反応器に添加してもよいし、予め両者を混合することにより単量体混合物を調製してから、重合反応器に添加してもよい。それぞれ別個に添加する場合は、単環の環状オレフィンおよびノルボルネン化合物が重合反応器内で混合して単量体混合物が形成され、共重合反応が進行する。
【0055】
上記の製造方法は、単環の環状オレフィンとノルボルネン化合物とを含有する単量体混合物を調製する工程を含むことができる。予め単量体混合物を調製しておくことによって、共重合反応を円滑に進めることができるとともに、差(ΔTg)の小さい環状オレフィン開環共重合体を容易に製造することができる。
【0056】
また、上記の製造方法は、開環重合触媒を含む溶液を調製する工程を含むことが好ましい。予め開環重合触媒を含む溶液を調製しておくことによって、共重合反応を円滑に進めることができるとともに、差(ΔTg)の小さい環状オレフィン開環共重合体を容易に製造することができる。上記溶液は、たとえば、開環重合触媒を、重合に用いる溶媒の一部に溶解させることにより調製できる。
【0057】
上記の製造方法は、通常、単環の環状オレフィンとノルボルネン化合物とを重合反応器に添加した後、開環重合触媒を添加することによって、共重合反応を開始する開始工程を含む。開始工程の後、開環重合触媒の存在下で単環の環状オレフィンとノルボルネン化合物との共重合反応が継続する。
【0058】
上記の製造方法は、開始工程の後においても、単環の環状オレフィンおよびノルボルネン化合物または開環重合触媒を、連続的または断続的に、重合反応器に添加するところに、特徴の一つがある。開始工程の後に添加する単環の環状オレフィンおよびノルボルネン化合物として、予め調製した単量体混合物を用いてもよい。開始工程の後に添加する開環重合触媒として、予め調製した開環重合触媒を含む溶液を用いてもよい。また、単環の環状オレフィンおよびノルボルネン化合物、ならびに、開環重合触媒のいずれか一方を添加してもよいし、単環の環状オレフィンおよびノルボルネン化合物および開環重合触媒の両方を添加してもよい。
【0059】
単環の環状オレフィンおよびノルボルネン化合物、ならびに、開環重合触媒の両方を添加する場合には、両者を同時に添加してもよいし、異なるタイミングで添加してもよい。また、単環の環状オレフィンおよびノルボルネン化合物、ならびに、開環重合触媒の両方を添加する場合には、両者を分けて、別個の投入口から添加することが、共重合反応を円滑に進めることができるとともに、差(ΔTg)の小さい環状オレフィン開環共重合体を容易に製造することができることから好ましい。重合反応器に添加する前に、予め単環の環状オレフィンおよびノルボルネン化合物、ならびに、開環重合触媒の両方を混合してしまうと、差(ΔTg)の小さい環状オレフィン開環共重合体を得ることが困難になるおそれがある。
【0060】
上記の製造方法では、単環の環状オレフィンおよびノルボルネン化合物、または開環重合触媒を、開始工程の後に、複数回に分けて添加することによって、あるいは、添加を継続することによって、所望の時間をかけて添加する必要がある。単環の環状オレフィンおよびノルボルネン化合物、または開環重合触媒の添加の終了と、共重合反応の停止とは、同時であってもよいし、添加終了後も共重合反応を継続してもよい。単環の環状オレフィンおよびノルボルネン化合物、ならびに、開環重合触媒の添加にかける添加継続時間は、たとえば、単量体の転化率や重合反応系の温度を基準に設定することができる。また、開始工程の後に添加する単環の環状オレフィンおよびノルボルネン化合物、ならびに、開環重合触媒の、全添加量に対する割合は、単量体の転化率を基準に設定することができる。
【0061】
また、単環の環状オレフィンおよびノルボルネン化合物、ならびに、開環重合触媒のいずれか一方または両方とともに、分子量調整剤を、連続的または断続的に、重合反応器に添加しながら、単環の環状オレフィンおよびノルボルネン化合物を共重合させてもよい。分子量調整剤の連続的または断続的な添加によって、差(ΔTg)が小さい環状オレフィン開環共重合体の製造がより容易になることがある。分子量調整剤は、上記した単量体混合物に予め添加しておいてもよい。
【0062】
本発明の環状オレフィン開環共重合体の製造方法における、単環の環状オレフィンの使用量の割合は、単環の環状オレフィンおよびノルボルネン化合物の使用量の合計に対して、好ましくは20~90質量%であり、より好ましくは30~85質量%であり、さらに好ましくは35~80質量%であり、特に好ましくは35~70質量%である。単環の環状オレフィンの使用量の割合を上記範囲内とすることにより、耐屈曲疲労性、耐摩耗性、ウェットグリップ性、および低発熱性により優れるゴム架橋物を与える環状オレフィン開環共重合体を一層容易に製造することができる。また、単環の環状オレフィンの使用量の割合を上記範囲とすることにより、差(ΔTg)の小さい環状オレフィン開環共重合体を一層容易に製造することができる。
【0063】
本発明の環状オレフィン開環共重合体の製造方法における、ノルボルネン化合物の使用量の割合は、単環の環状オレフィンおよびノルボルネン化合物の使用量の合計に対して、好ましくは10~80質量%であり、より好ましくは15~70質量%であり、さらに好ましくは20~65質量%であり、特に好ましくは30~65質量%である。ノルボルネン化合物の使用量の割合を上記範囲内とすることにより、耐屈曲疲労性、耐摩耗性、ウェットグリップ性、および低発熱性により優れるゴム架橋物を与える環状オレフィン開環共重合体を一層容易に製造することができる。また、ノルボルネン化合物の使用量の割合を上記範囲とすることにより、差(ΔTg)の小さい環状オレフィン開環共重合体を一層容易に製造することができる。
【0064】
開環重合に用いる開環重合触媒としては、特に限定されず、単環の環状オレフィンおよびノルボルネン化合物を開環重合できるものである限りにおいて特に限定されないが、ハロゲン化金属化合物を含むものを用いることが好ましい。このようなハロゲン化金属化合物を含むものとしては、たとえば、ハロゲン原子を含有する周期表第6族遷移金属化合物や、ハロゲン原子を含有するルテニウムカルベン錯体などを好適に用いることができる。
【0065】
本発明で用いることができる周期表第6族遷移金属化合物は、周期表(長周期型周期表、以下同じ)第6族遷移金属原子を有する化合物、具体的には、クロム原子、モリブデン原子、またはタングステン原子を有する化合物であり、モリブデン原子を有する化合物、またはタングステン原子を有する化合物が好ましく、特に、単環の環状オレフィンに対する溶解性が高いという観点より、タングステン原子を有する化合物がより好ましい。
【0066】
このようなハロゲン原子を含有する周期表第6族遷移金属化合物(以下、適宜、「周期表第6族遷移金属化合物」という。)の具体例としては、モリブデンペンタクロリド、モリブデンオキソテトラクロリド、モリブデン(フェニルイミド)テトラクロリドなどのモリブデン化合物;タングステンヘキサクロリド、タングステンオキソテトラクロリド、タングステン(フェニルイミド)テトラクロリド、モノカテコラートタングステンテトラクロリド、ビス(3,5-ジターシャリブチル)カテコラートタングステンジクロリド、ビス(2-クロロエテレート)テトラクロリドなどのタングステン化合物;などが挙げられる。
【0067】
周期表第6族遷移金属化合物の使用量は、「開環重合触媒中の第6族遷移金属原子:開環重合に用いる単量体」のモル比で、好ましくは1:100~1:200,000、より好ましくは1:200~1:150,000、さらに好ましくは1:500~1:100,000の範囲である。周期表第6族遷移金属化合物の使用量が少なすぎると、重合反応が十分に進行しない場合がある。一方、多すぎると、得られる環状オレフィン開環共重合体からの触媒残渣の除去が困難となり、得られるゴム架橋物の各種特性が劣るものとなってしまう。
【0068】
また、開環重合触媒として、周期表第6族遷移金属化合物を使用する場合には、周期表第6族遷移金属化合物は、下記一般式(2)で示される有機アルミニウム化合物と組み合わせて用いることが好ましい。有機アルミニウム化合物は、上述した周期表第6族遷移金属化合物とともに開環重合触媒として作用する。
(R3-xAl(OR (2)
上記一般式(2)中、RおよびRは、炭素数1~20の炭化水素基であり、好ましくは、炭素数1~10の炭化水素基である。また、xは、0<x<3である。
【0069】
およびRの具体例としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n-プロピル基、イソブチル基、n-ブチル基、t-ブチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、n-オクチル基、n-デシル基などのアルキル基;フェニル基、4-メチルフェニル基、2,6-ジメチルフェニル基、2,6-ジイソプロピルフェニル基、ナフチル基などのアリール基;などが挙げられる。
【0070】
また、上記一般式(2)において、xは、0<x<3である。すなわち、一般式(2)においては、RとORとの組成比は、それぞれ0<3-x<3、および0<x<3の各範囲において、任意の値をとることができるが、重合活性を高くできるという点より、xは、0.5<x<1.5であることが好ましい。
【0071】
上記一般式(2)で表される有機アルミニウム化合物は、たとえば、下記一般式(3)に示すように、トリアルキルアルミニウムと、アルコールとの反応によって合成することができる。
(RAl + xROH → (R3-xAl(OR + (RH (3)
【0072】
なお、上記一般式(2)中のxは、上記一般式(3)に示すように、対応するトリアルキルアルミニウムとアルコールの反応比を規定することによって、任意に制御することが可能である。
【0073】
有機アルミニウム化合物の使用量は、用いる有機アルミニウム化合物の種類によっても異なるが、周期表第6族遷移金属化合物を構成する周期表第6族遷移金属原子に対して、好ましくは0.1~100倍モル、より好ましくは0.2~50倍モル、さらに好ましくは0.5~20倍モルの割合である。有機アルミニウム化合物の使用量が少なすぎると、重合活性が不十分となる場合があり、多すぎると、開環重合時において、副反応が起こりやすくなる傾向にある。
【0074】
また、本発明で用いることができるハロゲン原子を含有するルテニウムカルベン錯体(以下、適宜、「ルテニウムカルベン錯体」という。)の具体例としては、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、ビス(トリフェニルホスフィン)-3,3-ジフェニルプロペニリデンルテニウムジクロリド、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)t-ブチルビニリデンルテニウムジクロリド、ジクロロ-(3-フェニル-1H-インデン-1-イリデン)ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム、ビス(1,3-ジイソプロピルイミダゾリン-2-イリデン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、ビス(1,3-ジシクロヘキシルイミダゾリン-2-イリデン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、(1,3-ジメシチルイミダゾリン-2-イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、(1,3-ジメシチルイミダゾリジン-2-イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)エトキシメチリデンルテニウムジクロリド、(1,3-ジメシチルイミダゾリジン-2-イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)エトキシメチリデンルテニウムジクロリドが挙げられる。
【0075】
ルテニウムカルベン錯体の使用量は、(ルテニウムカルベン錯体:開環重合に用いる単量体)のモル比で、通常1:500~1:2,000,000、好ましくは1:700~1:1,500,000、より好ましくは1:1,000~1:1,000,000の範囲である。
【0076】
周期表第6族遷移金属化合物や、ルテニウムカルベン錯体などの開環重合触媒は、1種を単独で用いてもよいし、2種類以上混合して用いてもよい。
【0077】
また、単環の環状オレフィンおよびノルボルネン化合物を含む単量体を開環重合させる際には、必要に応じて、得られる環状オレフィン開環共重合体の分子量を調整するために、分子量調整剤として、オレフィン化合物またはジオレフィン化合物を重合反応系に添加してもよい。
【0078】
オレフィン化合物としては、エチレン性不飽和結合を有する有機化合物であれば特に限定されないが、たとえば、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテンなどのα-オレフィン類;スチレン、ビニルトルエンなどのスチレン類;アリルクロライドなどのハロゲン含有ビニル化合物;エチルビニルエーテル、i-ブチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリクロロシラン、スチリルトリメトキシシランなどのケイ素含有ビニル化合物;2-ブテン、3-ヘキセンなどの二置換オレフィン;などが挙げられる。
【0079】
ジオレフィン化合物としては、1,4-ペンタジエン、1,4-ヘキサジエン、1,5-ヘキサジエン、1,6-ヘプタジエン、2-メチル-1,4-ペンタジエン、2,5-ジメチル-1,5-ヘキサジエンなどの非共役ジオレフィンが挙げられる。
【0080】
分子量調整剤としてのオレフィン化合物およびジオレフィン化合物の使用量は、製造する環状オレフィン開環共重合体の分子量に応じて適宜選択すればよいが、重合に用いる環状オレフィンを含む単量体に対して、モル比で、通常1/100~1/100,000、好ましくは1/200~1/50,000、より好ましくは1/500~1/10,000の範囲である。
【0081】
重合反応は、無溶媒中で行ってもよく、溶液中で行ってもよいが、溶液中で行うことが好ましい。溶液中で共重合する場合、用いられる溶媒は重合反応において不活性であり、共重合に用いる単環の環状オレフィンやノルボルネン化合物、開環重合触媒などを溶解させ得る溶媒であれば特に限定されないが、炭化水素系溶媒またはハロゲン系溶媒を用いることが好ましい。炭化水素系溶媒としては、たとえば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素;ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタンなどの脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、シクロペンタン、メチルシクロヘキサンなどの脂環族炭化水素;などを挙げることができる。また、ハロゲン系溶媒としては、たとえば、ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロアルカン;クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどの芳香族ハロゲン;などを挙げることができる。これらの溶媒は、一種を単独で用いてもよいし、2種類以上混合して用いてもよい。
【0082】
重合反応温度の下限は、特に限定されないが、好ましくは-100℃以上であり、より好ましくは-50℃以上、さらに好ましくは0℃以上、特に好ましくは20℃以上である。また、重合反応温度の上限は特に限定されないが、好ましくは120℃未満であり、より好ましくは100℃未満、さらに好ましくは90℃未満、特に好ましくは80℃未満である。重合反応時間も、特に限定されないが、好ましくは1分間~72時間、より好ましくは10分間~20時間である。重合反応により、環状オレフィン開環共重合体を含有する重合溶液が得られる。得られる重合溶液は、重合反応完了後に回収してもよいし、単環の環状オレフィンおよびノルボルネン化合物、ならびに、開環重合触媒の一方または両方を、連続的または断続的に添加する一方で、一定量の重合溶液を連続的に抜き出すことにより回収してもよい(連続重合方式)。
【0083】
重合反応により得られる環状オレフィン開環共重合体には、所望により、フェノール系安定剤、リン系安定剤、イオウ系安定剤などの老化防止剤を添加してもよい。老化防止剤の添加量は、その種類などに応じて適宜決定すればよい。さらに、所望により、伸展油を配合してもよい。重合溶液として環状オレフィン開環共重合体を得た場合において、重合溶液から環状オレフィン開環共重合体を回収するためには、公知の回収方法を採用すればよく、たとえば、スチームストリッピングなどで溶媒を分離した後、固体をろ別し、さらにそれを乾燥して固形状の環状オレフィン開環共重合体を取得する方法などが採用できる。
【0084】
<ゴム組成物>
本発明のゴム組成物は、上述した本発明の環状オレフィン開環共重合体、ならびに、シリカおよび/またはカーボンブラックを含む。
【0085】
本発明におけるシリカとしては、例えば、乾式法ホワイトカーボン、湿式法ホワイトカーボン、コロイダルシリカ、特開昭62-62838号公報に開示されている沈降シリカが挙げられる。これらの中でも、含水ケイ酸を主成分とする湿式法ホワイトカーボンが好ましい。また、カーボンブラック表面にシリカを担持させたカーボン-シリカデュアル・フェイズ・フィラーを用いてもよい。これらのシリカは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0086】
シリカの窒素吸着比表面積(ASTM D3037-81に準じBET法で測定される。)は、好ましくは50~400m/gであり、より好ましくは100~220m/gである。また、シリカのpHは、pH7未満であることが好ましく、pH5~6.9であることがより好ましい。これらの範囲であると、開環共重合体とシリカとの親和性が特に良好となる。
【0087】
シリカを用いる場合は、環状オレフィン開環共重合体とシリカとの親和性をより向上させる目的で、本発明のゴム組成物に、シランカップリング剤をさらに配合することが好ましい。シランカップリング剤としては、たとえば、ビニルトリエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド、ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)ジスルフィドなどや、特開平6-248116号公報に記載されているγ-トリメトキシシリルプロピルジメチルチオカルバミルテトラスルフィド、γ-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアジルテトラスルフィドなどのテトラスルフィド類を挙げることができる。なかでも、テトラスルフィド類が好ましい。これらのシランカップリング剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。シランカップリング剤の配合量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは0.1~30質量部、より好ましくは1~15質量部である。
【0088】
シリカを用いる場合における、シリカの配合量は、ゴム組成物中のゴム成分100質量部に対して、好ましくは1~150質量部、より好ましくは10~120質量部、さらに好ましくは15~100質量部、特に好ましくは20~80質量部である。シリカの配合量を上記範囲とすることにより、耐屈曲疲労性、耐摩耗性、ウェットグリップ性、および低発熱性に一層優れるゴム架橋物となるゴム組成物を得ることができる。
【0089】
本発明におけるカーボンブラックとしては、例えば、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、グラファイトなどが挙げられる。これらの中でも、ファーネスブラックが好ましく、その具体例としては、SAF、ISAF、ISAF-HS、ISAF-LS、IISAF-HS、HAF、HAF-HS、HAF-LS、FEFなどが挙げられる。これらのカーボンブラックは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0090】
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは5~200m/gであり、より好ましくは70~120m/gであり、ジブチルフタレート(DBP)吸着量は、好ましくは5~300ml/100gであり、より好ましくは80~160ml/100gである。
【0091】
カーボンブラックを用いる場合における、カーボンブラックの配合量は、ゴム組成物中のゴム成分100質量部に対して、好ましくは1~150質量部、より好ましくは2~120質量部、さらに好ましくは15~100質量部、特に好ましくは15~80質量部である。カーボンブラックの配合量を上記範囲とすることにより、耐屈曲疲労性、耐摩耗性、ウェットグリップ性、および低発熱性に一層優れるゴム架橋物となるゴム組成物を得ることができる。
【0092】
また、本発明におけるゴム組成物が、シリカとカーボンブラックとの両方を含有する場合には、シリカとカーボンブラックとの合計量は、ゴム組成物中のゴム成分100質量部に対して、好ましくは25~200質量部であり、より好ましくは30~150質量部である。
【0093】
本発明のゴム組成物は、ゴム成分として、上述した環状オレフィン開環共重合体以外のゴムを含んでいてもよい。上述した環状オレフィン開環共重合体以外のゴムとしては、たとえば、天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、乳化重合SBR(スチレン-ブタジエン共重合ゴム)、溶液重合ランダムSBR(結合スチレン5~50質量%、ブタジエン部分の1,2-結合含有量10~80%)、高トランスSBR(ブタジエン部のトランス結合含有量70~95%)、低シスBR(ポリブタジエンゴム)、高シスBR、高トランスBR(ブタジエン部のトランス結合含有量70~95%)、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、スチレン-イソプレン共重合ゴム、ブタジエン-イソプレン共重合ゴム、乳化重合スチレン-アクリロニトリル-ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル-ブタジエン共重合ゴム、高ビニルSBR-低ビニルSBRブロック共重合ゴム、ポリイソプレン-SBRブロック共重合ゴム、ポリスチレン-ポリブタジエン-ポリスチレンブロック共重合体、アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム、フッ素ゴム、シリコンゴム、エチレン-プロピレンゴム、ウレタンゴムなどが挙げられる。なかでも、NR、BR、IR、EPDM、SBRが好ましく、SBRが特に好ましく用いられる。これらのゴムは、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。また、環状オレフィン開環共重合体以外のゴムは、重合体末端に変性基を有するものであってもよい。
【0094】
本発明のゴム組成物中の環状オレフィン開環共重合体の含有割合は、ゴム成分の全量に対して、10質量%以上とすることが好ましく、20質量%以上とすることがより好ましく、30質量%以上とすることが特に好ましく、100質量%以下であってよく、90質量%以下であってもよい。この割合が低すぎると、耐屈曲疲労性、耐摩耗性、ウェットグリップ性、および低発熱性の向上効果が得られなくなるおそれがある。
【0095】
本発明のゴム組成物には、上記成分の他に、常法に従って、架橋剤、架橋促進剤、架橋活性化剤、無機材料以外の充填剤、老化防止剤、活性剤、プロセス油、可塑剤、滑剤などの配合剤をそれぞれ必要量配合できる。
【0096】
架橋剤としては、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄などの硫黄;一塩化硫黄、二塩化硫黄などのハロゲン化硫黄;ジクミルパーオキシド、ジターシャリブチルパーオキシドなどの有機過酸化物;p-キノンジオキシム、p,p’-ジベンゾイルキノンジオキシムなどのキノンジオキシム;トリエチレンテトラミン、ヘキサメチレンジアミンカルバメート、4,4’-メチレンビス-o-クロロアニリンなどの有機多価アミン化合物;メチロール基をもったアルキルフェノール樹脂;などが挙げられる。これらの中でも、硫黄が好ましく、粉末硫黄がより好ましい。これらの架橋剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。架橋剤の配合量は、ゴム組成物中のゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1~15質量部、より好ましくは0.5~5質量部である。
【0097】
架橋促進剤としては、たとえば、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-(tert-ブチル)-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N’-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミドなどのスルフェンアミド系架橋促進剤;1,3-ジフェニルグアニジン、1,3-ジオルトトリルグアニジン、1-オルトトリルビグアニジンなどのグアニジン系架橋促進剤;ジエチルチオウレアなどのチオウレア系架橋促進剤;2-メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィド、2-メルカプトベンゾチアゾール亜鉛塩などのチアゾール系架橋促進剤;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィドなどのチウラム系架橋促進剤;ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛などのジチオカルバミン酸系架橋促進剤;イソプロピルキサントゲン酸ナトリウム、イソプロピルキサントゲン酸亜鉛、ブチルキサントゲン酸亜鉛などのキサントゲン酸系架橋促進剤;などが挙げられる。なかでも、スルフェンアミド系架橋促進剤を含むものが好ましく、N-(tert-ブチル)-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミドを含むものが特に好ましい。これらの架橋促進剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。架橋促進剤の配合量は、ゴム組成物中のゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1~15質量部、より好ましくは0.5~5質量部である。
【0098】
架橋活性化剤としては、たとえば、ステアリン酸などの高級脂肪酸や酸化亜鉛などを用いることができる。架橋活性化剤の配合量は適宜選択されるが、高級脂肪酸の配合量は、ゴム組成物中のゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.05~15質量部、より好ましくは0.5~5質量部であり、酸化亜鉛の配合量は、ゴム組成物中のゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.05~10質量部、より好ましくは0.5~3質量部である。
【0099】
プロセス油としては、鉱物油や合成油を用いてよい。鉱物油は、アロマオイル、ナフテンオイル、パラフィンオイルなどが通常用いられる。その他の配合剤としては、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、シリコーンオイルなどの活性剤;炭酸カルシウム、タルク、クレーなどの無機材料以外の充填剤;石油樹脂、クマロン樹脂などの粘着付与剤;ワックスなどが挙げられる。
【0100】
本発明のゴム組成物は、常法に従って各成分を混練することにより得ることができる。たとえば、架橋剤および架橋促進剤を除く配合剤と環状オレフィン開環共重合体などのゴム成分とを混練後、その混練物に架橋剤と架橋促進剤とを混合してゴム組成物を得ることができる。架橋剤および架橋促進剤を除く配合剤と環状オレフィン開環共重合体などのゴム成分との混練温度は、好ましくは20~200℃、より好ましくは30~180℃であり、その混練時間は、好ましくは30秒間~30分間である。架橋剤と架橋促進剤との混合は、通常100℃以下、好ましくは80℃以下で行われる。
【0101】
<ゴム架橋物>
本発明のゴム架橋物は、上述した本発明のゴム組成物を架橋してなるものである。
本発明のゴム架橋物は、本発明のゴム組成物を用い、例えば、所望の形状に対応した成形機、たとえば、押出機、射出成形機、圧縮機、ロールなどにより成形を行い、加熱することにより架橋反応を行い、架橋物として形状を固定化することにより製造することができる。この場合においては、予め成形した後に架橋しても、成形と同時に架橋を行ってもよい。成形温度は、通常、10~200℃、好ましくは25~120℃である。架橋温度は、通常、100~200℃、好ましくは130~190℃であり、架橋時間は、通常、1分~24時間、好ましくは2分~12時間、特に好ましくは3分~6時間である。
【0102】
また、ゴム架橋物の形状、大きさなどによっては、表面が架橋していても内部まで十分に架橋していない場合があるので、さらに加熱して二次架橋を行ってもよい。
【0103】
加熱方法としては、プレス加熱、スチーム加熱、オーブン加熱、熱風加熱などのゴムの架橋に用いられる一般的な方法を適宜選択すればよい。
【0104】
このようにして得られる本発明のゴム架橋物は、引張強度、伸び特性、および耐熱老化性に優れるものである。そして、本発明のゴム架橋物は、このような特性を活かし、たとえば、タイヤにおいて、キャップトレッド、ベーストレッド、カーカス、サイドウォール、ビード部などのタイヤ各部位の材料;ホース、ベルト、マット、防振ゴム、その他の各種工業用品の材料;樹脂の耐衝撃性改良剤;樹脂フィルム緩衝剤;靴底;ゴム靴;ゴルフボール;玩具;などの各種用途に用いることができる。また、本発明のゴム架橋物は、オールシーズンタイヤ、高性能タイヤ、およびスタッドレスタイヤなどの各種タイヤにおいて、トレッド、カーカス、サイドウォール、およびビード部などのタイヤ各部位に好適に用いることができる。
【実施例
【0105】
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。なお、以下において、「部」は、特に断りのない限り質量基準である。また、試験、評価は下記によった。
【0106】
<分子量>
ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)システム「HLC-8220」(東ソー社製)により、Hタイプカラム「HZ-M」(東ソー社製)二本を直列に連結して用い、テトラヒドロフランを溶媒として、カラム温度40℃で測定した。検出器は示差屈折計「RI-8320」(東ソー社製)を用いた。環状オレフィン開環共重合体の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)は、ポリスチレン換算値として測定した。
【0107】
<単環の環状オレフィン由来の構造単位およびノルボルネン化合物由来の構造単位の割合>
環状オレフィン開環共重合体中の単量体組成比を、H-NMRスペクトル測定から求めた。
【0108】
<ガラス転移温度(Tmg)、補外ガラス転移開始温度(Tig)、補外ガラス転移終了温度(Teg)>
JIS K7121にしたがって、示差走査熱量計(DSC)を用いて、昇温速度10℃/分、0.13℃ごとに測定し、得られたDSC曲線から求めた。
【0109】
<耐屈曲疲労性>
実施例および比較例で調製したゴム組成物1を、150℃で25分間プレス架橋することでゴム架橋物シートを作製した。架橋物シートの耐屈曲疲労性を、JIS K6260で規定される屈曲き裂発生試験で評価した。屈曲き裂発生試験は、室温雰囲気下でおこなった。JIS K6260で規定されるき裂3級に達するのに必要な屈曲回数を測定し、表にまとめた。この屈曲回数の値が大きいほど耐屈曲疲労性が良好であることを示している。
【0110】
<DIN摩耗試験>
実施例および比較例で調製したゴム組成物1を、150℃で25分間プレス架橋することでゴム架橋物シートを作製した。架橋物シートを用いて、JIS K 6264-2:2005で規定されるDIN摩耗試験を行い、比摩耗体積を求めた。比摩耗体積が小さいほど、耐摩耗性に優れていることを示す。
【0111】
<低発熱性評価>
実施例および比較例で調製したゴム組成物2を、160℃で20分間プレス架橋することにより、架橋された試験片を作製し、この試験片について、粘弾性測定装置(商品名「ARES-G2」、TAインスツルメント社製)を用い、せん断歪み2.5%、周波数10Hzの条件で60℃におけるtanδを測定した。
【0112】
<ウェットグリップ性>
実施例および比較例で調製したゴム組成物2を、160℃で20分間プレス架橋することにより、試験片を作製し、得られた試験片について、レオメトリックス社製ARESを用い、動的歪み0.5%、10Hzの条件で0℃におけるtanδを測定した。
【0113】
《比較例1》
(環状オレフィン開環共重合体の製造)
窒素雰囲気下、攪拌機を備えたガラス反応容器に、単環の環状オレフィンとしてシクロペンテン(CPE)300部、ノルボルネン化合物としてジシクロペンタジエン(DCPD)100部、トルエン740部および1-ヘキセン0.28部を加えた。ここに(1,3-ジメシチルイミダゾリジン-2-イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド0.022部をトルエン20部に溶解した重合触媒溶液を10秒間以内加えて、25℃で4時間重合反応を継続した。4時間の重合反応後、耐圧ガラス反応容器内の溶液を、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール(BHT)を含む大過剰のメタノールに注いだ。次いで、沈殿したポリマーを回収し、メタノールで洗浄後、40℃で3日間、真空乾燥することにより、270部CPE/DCPD開環共重合体を得た。得られたCPE/DCPD開環共重合体の重量平均分子量(Mw)は404,000、分子量分布(Mw/Mn)は2.96、CPE/DCPD組成比は68/32であった。ガラス転移温度(Tmg)は-40℃であり、ΔTgは35℃であった。
【0114】
(ゴム組成物1の調製)
上記にて得られたCPE/DCPD開環共重合体100部を容積250mlのバンバリーミキサーで30秒素練りし、次いで、ステアリン酸1部、酸化亜鉛3部、およびカーボンブラック(商品名「IRB#7」、CONTINENTAL CARBON社製)50部を添加して、110℃にて、180秒混練した後、ラムの上部に残った配合剤をクリーニングした後、さらに150秒混練し、ミキサーから混練物を排出させた。次いで、混練物を、室温まで冷却した後、23℃のオープンロールで、得られた混練物と、硫黄1.75部、および架橋促進剤としてのN-(tert-ブチル)-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(大内新興化学工業社製、商品名「ノクセラーNS-P」)1部とを混練した後、シート状のゴム組成物1を得た。そして、得られたゴム組成物1について、上記方法に従い、耐屈曲疲労性評価とDIN摩耗試験を行なった。結果を表1に示す。
【0115】
(ゴム組成物2の調製)
上記にて得られたCPE/DCPD開環共重合体100部を容積250mlのバンバリーミキサーで素練りし、次いで、シリカ(商品名「Zeosil 1165MP」、ソルベイ社製)40部、プロセスオイル(商品名「アロマックス T-DAE」、新日本石油社製)10部、およびシランカップリング剤(ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド、商品名「Si69」、デグッサ社製)4.8部を添加して、110℃を開始温度として1.5分間混練した。次いで、得られた混練物に、シリカ(商品名「Zeosil 1165MP」、ソルベイ社製)20部、酸化亜鉛(亜鉛華1号)3部、ステアリン酸(商品名「SA-300」、旭電化工業社製)2部、および老化防止剤(N-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン、商品名「ノクラック6C」、大内新興化学工業社製)2部を添加し、3分間混練して、バンバリーミキサーから混練物を排出させた。混練終了時のゴム組成物の温度は150℃であった。そして、得られた混練物を、室温まで冷却した後、再度バンバリーミキサー中で、3分間混練した後、バンバリーミキサーから混練物を排出させた。次いで、50℃のオープンロールで、得られた混練物と、硫黄1.6部、および架橋促進剤(シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(大内新興化学工業社製、商品名「ノクセラーCZ-G」)1.4部と、1,3-ジフェニルグアニジン(商品名「ノクセラーD」、大内新興化学工業社製)1.4部との混合物)2.8部とを混練した後、シート状のゴム組成物2を取り出した。そして、得られたゴム組成物2について、上記方法に従い、低発熱性およびウェットグリップ性を評価した。結果を表1に示す。なお、低発熱性およびウェットグリップ性の値は、比較例1の試験片を基準サンプル(指数100)とし、実施例1~4を比較例1の指数として示す。
【0116】
《実施例1》
(環状オレフィン開環共重合体の製造)
比較例1と同様にして、攪拌機を備えたガラス反応容器に、シクロペンテン(CPE)60部、ジシクロペンタジエン(DCPD)20部、トルエン740部および1-ヘキセン0.28部を加えた。ここに(1,3-ジメシチルイミダゾリジン-2-イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド0.022部をトルエン20部に溶解した重合触媒溶液のうち、5部を10秒間以内に加え、重合を開始した。重合開始から15分後に、CPE240部とDCPD80部の混合液を45分間掛けて添加するとともに、残りの重合触媒溶液を15分毎に5部ずつ3回に分けて添加した後、25℃で3時間重合反応を継続し、比較例1と同様にして、312部のCPE/DCPD開環共重合体を得た。得られたCPE/DCPD開環共重合体の重量平均分子量(Mw)は402,000、分子量分布(Mw/Mn)は2.55、CPE/DCPD組成比は72/28であった。ガラス転移温度(Tmg)は-48℃であり、ΔTgは7℃であった。ガラス転移温度(Tmg)およびΔTgを特定するために用いたDSC曲線を図1に示す。
【0117】
(ゴム組成物1、2の調製)
比較例1と同様にして、ゴム組成物1,2を作製し、耐屈曲疲労性、DIN摩耗試験、低発熱性およびウェットグリップ性を評価した。結果を表1に示す。低発熱性およびウェットグリップ性の値は、比較例1の試験片を基準サンプル(指数100)とする指数で示し、低発熱性の値が小さいほど、低発熱性に優れることを示し、ウェットグリップ性の値が大きいほど、ウェットグリップ性に優れることを示す。
【0118】
《実施例2》
(環状オレフィン開環共重合体の製造)
比較例1と同様にして、攪拌機を備えたガラス反応容器に、シクロペンテン(CPE)60部、ジシクロペンタジエン(DCPD)20部、トルエン740部および1-ヘキセン0.28部を加えた。ここに(1,3-ジメシチルイミダゾリジン-2-イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド0.022部をトルエン20部に溶解した重合触媒溶液を10秒間以内に加え、重合を開始した。重合開始から15分後に、CPE240部とDCPD80部の混合液を1時間掛けて添加した後、25℃で3時間重合反応を継続し、比較例1と同様にして、304部のCPE/DCPD開環共重合体を得た。得られたCPE/DCPD開環共重合体の重量平均分子量(Mw)は424,000、分子量分布(Mw/Mn)は2.60、CPE/DCPD組成比は70/30であった。ガラス転移温度(Tmg)は-44℃であり、ΔTgは8℃であった。
【0119】
(ゴム組成物1、2の調製)
比較例1と同様にして、ゴム組成物1,2を作製し、耐屈曲疲労性、DIN摩耗試験、低発熱性およびウェットグリップ性を評価した。結果を表1に示す。低発熱性およびウェットグリップ性の値は、比較例1の試験片を基準サンプル(指数100)とする指数で示し、低発熱性の値が小さいほど、低発熱性に優れることを示し、ウェットグリップ性の値が大きいほど、ウェットグリップ性に優れることを示す。
【0120】
《実施例3》
(環状オレフィン開環共重合体の製造)
比較例1と同様にして、攪拌機を備えたガラス反応容器に、シクロペンテン(CPE)300部、ジシクロペンタジエン(DCPD)100部、トルエン740部および1-ヘキセン0.28部を加えた。ここに(1,3-ジメシチルイミダゾリジン-2-イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド0.022部をトルエン20部に溶解した重合触媒溶液を、15分毎に5部ずつ4回に分けて添加した後、25℃で3時間重合反応を継続し、比較例1と同様にして、315部のCPE/DCPD開環共重合体を得た。得られたCPE/DCPD開環共重合体の重量平均分子量(Mw)は411,000、分子量分布(Mw/Mn)は2.63、CPE/DCPD組成比は71/29であった。ガラス転移温度(Tmg)は-49℃であり、ΔTgは11℃であった。
【0121】
(ゴム組成物1、2の調製)
比較例1と同様にして、ゴム組成物1,2を作製し、耐屈曲疲労性、DIN摩耗試験、低発熱性およびウェットグリップ性を評価した。結果を表1に示す。低発熱性およびウェットグリップ性の値は、比較例1の試験片を基準サンプル(指数100)とする指数で示し、低発熱性の値が小さいほど、低発熱性に優れることを示し、ウェットグリップ性の値が大きいほど、ウェットグリップ性に優れることを示す。
【0122】
《実施例4》
(環状オレフィン開環共重合体の製造)
比較例1と同様にして、攪拌機を備えたガラス反応容器に、シクロペンテン(CPE)60部、80重量%ジシクロペンタジエン(DCPD)/トルエン溶液25部、トルエン715部および1-ヘキセン0.28部を加えた。ここに(1,3-ジメシチルイミダゾリジン-2-イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド0.022部をトルエン20部に溶解した重合触媒溶液のうち、5部を10秒間以内に加え、重合を開始した。重合開始から15分後に、CPE240部と80重量%DCPD/トルエン溶液100部とを、両者を予め混合することなく、それぞれ別個にガラス反応容器に45分間かけて添加するとともに、残りの重合触媒溶液を15分毎に5部ずつ3回に分けて添加した後、25℃で3時間重合反応を継続し、比較例1と同様にして、324部のCPE/DCPD開環共重合体を得た。得られたCPE/DCPD開環共重合体の重量平均分子量(Mw)は408,000、分子量分布(Mw/Mn)は2.53、CPE/DCPD組成比は72/28であった。ガラス転移温度(Tmg)は-50℃であり、ΔTgは9℃であった。
【0123】
(ゴム組成物1、2の調製)
比較例1と同様にして、ゴム組成物1,2を作製し、耐屈曲疲労性、DIN摩耗試験、低発熱性およびウェットグリップ性を評価した。結果を表1に示す。低発熱性およびウェットグリップ性の値は、比較例1の試験片を基準サンプル(指数100)とする指数で示し、低発熱性の値が小さいほど、低発熱性に優れることを示し、ウェットグリップ性の値が大きいほど、ウェットグリップ性に優れることを示す。
【0124】
【表1】
【0125】
《比較例2》
(環状オレフィン開環共重合体の製造)
窒素雰囲気下、攪拌機を備えたガラス反応容器に、単環の環状オレフィンとしてシクロペンテン(CPE)200部、ノルボルネン化合物として2-ノルボルネン(NB)200部、トルエン380部および1-ヘキセン0.48部を加えた。次に、トルエン20部に溶解したジクロロ-(3-フェニル-1H-インデン-1-イリデン)ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム0.024部を10秒間以内に加え、室温で4時間重合反応を継続した。重合反応後、過剰のビニルエチルエーテルを加えることにより重合を停止した。
【0126】
重合溶液を2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール(BHT)を含む大過剰のメタノールに注ぎ、沈殿した重合体を回収し、メタノールで洗浄した後、50℃で3日間、真空乾燥して、CPE/NB開環共重合体248部を得た。得られたCPE/NB開環共重合体の重量平均分子量(Mw)は271,000、分子量分布(Mw/Mn)は2.35、CPE/NB組成比は38/62であった。ガラス転移温度(Tmg)は-25℃であり、ΔTgは36℃であった。
【0127】
(ゴム組成物1、2の調製)
比較例1と同様にして、ゴム組成物1,2を作製し、耐屈曲疲労性、DIN摩耗試験、低発熱性およびウェットグリップ性を評価した。結果を表2に示す。低発熱性およびウェットグリップ性の値は、比較例2の試験片を基準サンプル(指数100)とし、実施例5および6を比較例2の指数として示す。
【0128】
《実施例5》
(環状オレフィン開環共重合体の製造)
比較例2と同様にして、攪拌機を備えたガラス反応容器に、シクロペンテン(CPE)40部、2-ノルボルネン(NB)40部、トルエン380部および1-ヘキセン0.48部を加えた。次に、トルエン20部に溶解したジクロロ-(3-フェニル-1H-インデン-1-イリデン)ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム0.024部を10秒間以内に加え、重合を開始した。重合開始から15分後に、CPE160部とNB160部の混合液を1時間掛けて添加して重合を行った。その後、室温で2時間重合反応を継続した後、比較例2と同様にして、292部のCPE/NB開環共重合体を得た。得られたCPE/NB開環共重合体の重量平均分子量(Mw)は259,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.94、CPE/NB組成比は39/61であった。ガラス転移温度(Tmg)は-23℃であり、ΔTgは15℃であった。
【0129】
(ゴム組成物1、2の調製)
比較例2と同様にして、ゴム組成物1,2を作製し、耐屈曲疲労性、DIN摩耗試験、低発熱性およびウェットグリップ性を評価した。結果を表2に示す。低発熱性およびウェットグリップ性の値は、比較例2の試験片を基準サンプル(指数100)とする指数で示す。
【0130】
《実施例6》
(環状オレフィン開環共重合体の製造)
比較例2と同様にして、攪拌機を備えたガラス反応容器に、シクロペンテン(CPE)40部、2-ノルボルネン(NB)40部、トルエン380部を加えた。次に、トルエン20部に溶解したジクロロ-(3-フェニル-1H-インデン-1-イリデン)ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム0.024部を10秒間以内に加え、重合を開始した。重合開始から15分後に、CPE160部、NB160部および1-ヘキセン0.48部の混合液を1時間掛けて添加して重合を行った。その後、室温で2時間重合反応を継続した後、比較例2と同様にして、288部のCPE/NB開環共重合体を得た。得られたCPE/NB開環共重合体の重量平均分子量(Mw)は264,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.90、CPE/NB組成比は40/60であった。ガラス転移温度(Tmg)は-29℃であり、ΔTgは8℃であった。
【0131】
(ゴム組成物1、2の調製)
比較例2と同様にして、ゴム組成物1,2を作製し、耐屈曲疲労性、DIN摩耗試験、低発熱性およびウェットグリップ性を評価した。結果を表2に示す。低発熱性およびウェットグリップ性の値は、比較例2の試験片を基準サンプル(指数100)とする指数で示す。
【0132】
【表2】
【0133】
《比較例3》
(環状オレフィン開環共重合体の製造)
窒素雰囲気下、攪拌機を備えたガラス反応容器に、1.0重量%のWCl/トルエン溶液17.4部、および2.5重量%のジイソブチルアルミニウムモノ(n-ヘキソキシド)/トルエン溶液8.6部を加え、15分間攪拌することにより、触媒溶液を得た。そして、窒素雰囲気下、攪拌機付き耐圧ガラス反応容器に、単環の環状オレフィンとしてシクロペンテン(CPE)300部、ノルボルネン化合物としてテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン(TCD)100部、トルエン380部および1-ヘキセン0.42部を加え、ここに、上記にて調製した触媒溶液26部を30秒間以内で加えて、25℃で6時間重合反応を継続した。6時間の重合反応後、ガラス反応容器に、過剰のメタノールを加えて重合を停止した後、ガラス反応容器内の溶液を、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール(BHT)を含む大過剰のメタノールに注いだ。次いで、沈殿したポリマーを回収し、メタノールで洗浄後、40℃で3日間、真空乾燥することにより、296部のCPE/TCD開環共重合体を得た。得られたCPE/TCD開環共重合体の重量平均分子量(Mw)は262,000、分子量分布(Mw/Mn)は2.34、CPE/TCD組成比は72/28であった。ガラス転移温度(Tmg)は-22℃であり、ΔTgは32℃であった。
【0134】
(ゴム組成物1、2の調製)
比較例1と同様にして、ゴム組成物1,2を作製し、耐屈曲疲労性、DIN摩耗試験、低発熱性およびウェットグリップ性を評価した。結果を表3に示す。なお、低発熱性およびウェットグリップ性の値は、比較例3の試験片を基準サンプル(指数100)とし、実施例7および8を比較例3の指数として示す。
【0135】
《実施例7》
(環状オレフィン開環共重合体の製造)
窒素雰囲気下、攪拌機を備えたガラス反応容器に、トルエン382部、シクロペンテン(CPE)90部、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン(TCD)30部、1-ヘキセン0.42部および2.5重量%のジイソブチルアルミニウムモノ(n-ヘキソキシド)/トルエン溶液8.6部を加えた後、1.0重量%のWCl/トルエン溶液4.4部を添加して重合を開始した。その後、CPE210部とTCD70部の混合液を1時間掛けて加えるとともに、1.0重量%のWCl/トルエン溶液4.4部を20分毎に3回添加した。その後、25℃で4時間の重合反応を継続した後、比較例3と同様にして、320部のCPE/TCD開環共重合体を得た。得られたCPE/TCD開環共重合体の重量平均分子量(Mw)は244,000、分子量分布(Mw/Mn)は2.13、CPE/TCD組成比は73/27であった。ガラス転移温度(Tmg)は-26℃であり、ΔTgは14℃であった。
【0136】
(ゴム組成物1、2の調製)
比較例3と同様にして、ゴム組成物1,2を作製し、耐屈曲疲労性、DIN摩耗試験、低発熱性およびウェットグリップ性を評価した。結果を表3に示す。低発熱性およびウェットグリップ性の値は、比較例3の試験片を基準サンプル(指数100)とする指数で示す。
【0137】
《実施例8》
(環状オレフィン開環共重合体の製造)
窒素雰囲気下、攪拌機を備えたガラス反応容器に、トルエン382部、シクロペンテン(CPE)90部、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン(TCD)30部、および2.5重量%のジイソブチルアルミニウムモノ(n-ヘキソキシド)/トルエン溶液8.6部を加えた後、1.0重量%のWCl/トルエン溶液4.4部を添加して重合を開始した。その後、CPE210部、TCD70部および1-ヘキセン0.42部の混合液を1時間掛けて加えるとともに、1.0重量%のWCl/トルエン溶液4.4部を20分毎に3回添加した。その後、25℃で4時間の重合反応を継続した後、比較例3と同様にして、328部のCPE/TCD開環共重合体を得た。得られたCPE/TCD開環共重合体の重量平均分子量(Mw)は276,000、分子量分布(Mw/Mn)は2.02、CPE/TCD組成比は74/26であった。ガラス転移温度(Tmg)は-31℃であり、ΔTgは11℃であった。
【0138】
(ゴム組成物1、2の調製)
比較例3と同様にして、ゴム組成物1,2を作製し、耐屈曲疲労性、DIN摩耗試験、低発熱性およびウェットグリップ性を評価した。結果を表3に示す。低発熱性およびウェットグリップ性の値は、比較例3の試験片を基準サンプル(指数100)とする指数で示す。
【0139】
【表3】
図1