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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】樹脂被膜付き磁心の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 41/02 20060101AFI20230711BHJP
   H01F 27/24 20060101ALI20230711BHJP
   H01F 27/255 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
H01F41/02 J
H01F41/02 D
H01F41/02 C
H01F27/24 Q
H01F27/255
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022114868
(22)【出願日】2022-07-19
(62)【分割の表示】P 2020171609の分割
【原出願日】2016-12-28
(65)【公開番号】P2022137266
(43)【公開日】2022-09-21
【審査請求日】2022-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】内川 晃夫
【審査官】井上 健一
(56)【参考文献】
【文献】特表昭59-125606(JP,A)
【文献】特開平8-138948(JP,A)
【文献】特開2010-016217(JP,A)
【文献】再公表特許第2013/108735(JP,A1)
【文献】特開2014-175580(JP,A)
【文献】特開平11-197585(JP,A)
【文献】特開2000-140733(JP,A)
【文献】特開平11-162745(JP,A)
【文献】特開2004-306032(JP,A)
【文献】特開2016-054287(JP,A)
【文献】特開平10-337515(JP,A)
【文献】特開昭63-237512(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0357118(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0162118(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0274847(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 41/02
H01F 27/24
H01F 27/255
B05D 1/24
B05D 3/02
B05D 7/14
B05D 7/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱された円環状の磁心の中空部に回転ロールを通し、
前記回転ロールにより前記磁心を吊り下げ、
前記回転ロールにより前記磁心を回転させつつ、粉体流動槽に収められた熱硬化性樹脂の粉末に前記磁心の一部を浸漬し、前記磁心の表面を、前記熱硬化性樹脂の粉末が溶融して成る溶融樹脂でコーティングし、
前記磁心を加熱して前記熱硬化性樹脂を硬化させて、前記磁心の表面に樹脂被膜を形成し、
前記磁心の一部を前記熱硬化性樹脂の粉末に浸漬するとき、前記磁心の吊り下げ方向における前記磁心の外径側から内径側にわたって前記熱硬化性樹脂の粉末に浸漬し、前記回転ロールは前記熱硬化性樹脂の粉末に浸漬しない、
樹脂被膜付き磁心の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の樹脂被膜付き磁心の製造方法であって、
複数の前記磁心の中空部に前記回転ロールを通し、
複数の前記磁心が前記回転ロールの軸方向において間隔を持った状態で、前記回転ロールにより複数の前記磁心を吊り下げ、
複数の前記磁心を前記熱硬化性樹脂の粉末に浸漬する、
樹脂被膜付き磁心の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の樹脂被膜付き磁心の製造方法であって、
前記回転ロールにより吊り下げられた前記磁心の下端側の内周面から前記回転ロールの外周面までの間隔が2mm以上である、
樹脂被膜付き磁心の製造方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂被膜付き磁心の製造方法であって、
前記磁心に用いる磁性材料が、磁歪定数λsの絶対値が30×10 -6 以下の金属磁性材料である、
樹脂被膜付き磁心の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の樹脂被膜付き磁心の製造方法であって、
前記磁心はFe基アモルファス合金の粉末とCuの粉末を含み、Fe基アモルファス合金の粉末とCuの粉末の総量を100質量%とするとき、Cuの粉末を7質量%以下含む、
樹脂被膜付き磁心の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランスやリアクトルに用いられる円環状の磁心に熱硬化性樹脂を塗装する樹脂被膜付き磁心の製造方法と樹脂被膜付き磁心に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、家電機器、産業機器、車両など多種多様な用途において、インダクタ、トランス、チョーク、モータ等のコイル部品が用いられている。一般的なコイル部品は、磁心(磁性コア)と、その磁心の周囲に巻回されたコイルで構成される場合が多い。かかる磁心には磁性材料として、磁気特性、形状自由度、価格に優れるソフトフェライトが広く用いられている。
【0003】
近年、電子機器等の電源装置の小型化が進んだ結果、小型・低背で、かつ大電流に対しても使用可能なコイル部品の要求が強くなり、ソフトフェライトと比較して飽和磁束密度が高い金属系磁性材料を使用した磁心の採用が進んでいる。金属系磁性材料としては、例えばFe-Si系、Fe-B-Si系、Fe-Ni系、Fe-Si-Cr系、Fe-Si-Al系、Fe-Al-Cr系などのFe系の磁性合金粉末や、Fe基やCo基のアモルファス合金の粉末や薄帯、ファインメット(登録商標)等のナノ結晶軟磁性合金の粉末や薄帯が用いられている。
【0004】
フェライトや金属系磁性材料を使用した磁心は、耐衝撃性や絶縁性、耐候性の向上を図るように、磁心の外面を樹脂で塗装して樹脂被膜を形成することが行なわれる。磁心への樹脂塗装には流動浸漬法による塗装を採用する場合が多い。その一例として特許文献1に示された従来の流動浸漬法による塗装方法について図5を用いて説明する。
ロッド120に円環状の磁心100の中空部が通されていて、磁心100は自重でロッド120に吊り下がった状態となっている。磁心100の内周面100bは図示上方側でロッド120の外周面と当接し、図示下方側ではロッド120の外周面との間で空間を形成する。磁心100はロッド120から与えられる回転力によって回転し、また、図中にて矢印で例示するように前記ロッド120に設けられた噴気孔130から気体を噴出させた状態で、磁心100の全体を前記ロッド120とともに図示しない粉体流動槽内の樹脂粉末中に浸漬して塗装が行なわれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平11-197585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1ではロッド120に形成された噴気孔130から気体を噴出させながら粉体塗装することで、樹脂粉末が磁心100の内周面100bに堆積するのを防止し、樹脂粉末が硬化した内周面100bの樹脂被膜の膜厚が大きくなるのを防いでいる。しかしながらこの方法では複数の磁心100をロッド120に通し、並べて塗装を行なう場合に幾つかの問題がある。1つは図5に示すように複数の磁心100をロッド120に通して並べる場合に、隣り合う磁心100間に空間Sが形成される。空間Sから外方へ噴出する気体によって、空間Sに樹脂粉体が流入するのが阻害され、磁心の両側面100c、100dの樹脂被膜の膜厚が磁心の外周側100aの厚みに対して薄くなって不均一となり易い問題がある。空間Sを広くとれば樹脂粉体の流入阻害は改善されるが、ロッド120に通す磁心100の数を減らさざるを得ない。
【0007】
また、磁心100の内周面100bとロッド120との間を通る気体によって、気体を噴出させない場合と比べて磁心100とロッド120との間の接触抵抗が小さくなりやすい。そのため、磁心100の形状や重量バランスの影響を受け易く、磁心を回転させるとロッド120の軸方向にも動いて、隣り合う磁心100が次第に接近して空間Sが狭まり、ついには磁心100同士が接触するなどして磁心側面100c、100dの塗装が十分に行なわれず、外観品質を損なう場合があった。ロッド120の軸方向における磁心の移動を制限するには、仕切りや位置決めのための段差や突起を設けることが有効だが、磁心の内周側への樹脂粉体の流入が一層阻害されて樹脂粉体の供給不足となり、樹脂被膜の膜厚不均一さが増すといった問題が懸念される。
【0008】
また、樹脂被膜の膜厚が不均一であると、局所的に生じる応力差によって磁心の磁気特性の劣化や樹脂被膜の割れが生じる問題がある。加えて樹脂被膜の収縮や磁心との熱膨張係数差による応力の影響による磁気特性の劣化についても考慮する必要があった。また、磁心の磁性材料として、Fe基アモルファス合金のような磁歪が大きな材料を用いる場合に磁気特性劣化の影響が大きいといった問題がある。
【0009】
そこで本発明の目的は、円環状の磁心に熱硬化性樹脂を塗装する樹脂被覆工程を備えた樹脂被膜付き磁心の製造方法であって、磁心の内周面、外周面および両側面に対して均一な膜厚の樹脂被膜を形成できる樹脂被膜付き磁心の製造方法と、磁気特性に優れた樹脂被膜付き磁心を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、円環状の磁心に流動浸漬法により粉状の熱硬化性樹脂を塗装する樹脂被覆工程を備えた、樹脂被膜付き磁心の製造方法であって、前記樹脂被覆工程は、前記磁心を熱硬化性樹脂が溶融する温度以上に加熱する第1工程と、前記熱硬化性樹脂の溶融温度よりも低い温度に調整された回転ロールに複数の磁心を通し、前記回転ロールに支持され軸方向に間隔を持って吊り下がった状態の磁心に、前記回転ロールによって回転力を付与して前記磁心を回転状態とし、磁心の吊り下げ方向において、容器内で流動する粉状の熱硬化性樹脂に磁心の外径側から内径側にわたって浸漬させ、かつ、回転ロールの全体を浸漬させないで塗装する第2工程と、前記第2工程を経た磁心を加熱し、塗装した熱硬化性樹脂を硬化して樹脂被膜とする第3工程を有し、前記熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂に無機充填材を含ませたエポキシ系樹脂であり、前記樹脂被膜の平均厚みが200μm以上500μm以下の樹脂被膜付き磁心の製造方法である。
【0011】
本発明の樹脂被膜付き磁心の製造方法においては、面取りを施した磁心を用いるのが好ましい。
【0012】
本発明の樹脂被膜付き磁心の製造方法においては、前記第3工程において、200℃以上の温度にて10分以上連続して加熱するのが好ましい。
【0013】
本発明の樹脂被膜付き磁心の製造方法においては、前記第3工程において、磁心を回転ロールに吊り下げた状態で熱硬化性樹脂を硬化しても良いし、磁心を回転ロールから取り外して熱硬化性樹脂を硬化しても良い。またその両方を行なっても良い。
【0014】
本発明の樹脂被膜付き磁心の製造方法においては、前記磁心に用いる磁性材料が、磁歪定数λsの絶対値が30×10-6以下の金属磁性材料であるのが好ましい。更に好ましくは、金属磁性材料をFe基アモルファス合金とし、前記磁心は金属CuをCuの粉末として含み、Fe基アモルファス合金の粉末とCuの粉末の総量を100質量%とするとき、Cuの粉末を7質量%以下とするのが好ましい。Cuを含むことで磁心の占積率が向上
し、透磁率を維持しながら磁心損失を低減することが出来る。また、非磁性体であるCuの粉末が7質量%を超えると、占積率の向上によって維持されていた透磁率が低下を始め、得られる飽和磁束密度も低下する。また、前記Fe基アモルファスの粉末と樹脂被膜の熱膨張係数の差は70ppm/℃以内であるのが好ましい。熱膨張係数の差が小さいほど磁心に作用する応力を小さく出来て磁心損失の増加を抑制し、また樹脂被膜にクラック等の欠陥が生じるのを防ぐことが出来る。
【0015】
本発明の樹脂被膜付き磁心の製造方法においては、樹脂被膜の平均厚みが200μm以上500μm以下であるのが好ましい。樹脂被膜の厚みが150μm未満であるとピットが生じやすくなって樹脂被膜に期待する諸特性(耐衝撃性や絶縁性、耐候性)が得られない場合があり、150μm以上の厚みで、平均厚みとしては200μm以上であるのが好ましい。
また、樹脂被膜の平均厚みを500μm超としても、前記諸特性の向上は僅かであるし、外形寸法が大きくなり、内周側の領域が狭まって巻線が困難になる場合がある。また、樹脂被膜の厚みが増せば磁心に与えられる応力も増加し磁心損失の増加を招くため、磁歪の小さな磁性材料を使用するなどの制限が生じ、材料選択の自由度を狭めてしまうため、平均厚みは500μm以下とするのが好ましい。
【0016】
本発明の樹脂被膜付き磁心の製造方法においては、前記無機充填材は樹脂被膜に低熱膨張性を与え、絶縁性や耐燃性であれば特には限定されないが、特にはCaCO又はSiOの粉末であるのが好ましい。前記無機充填材の粉末の平均粒径は形成する樹脂被膜の厚みやその強度、熱硬化樹脂への混合・分散性等を考慮して適宜設定され得るが、得ようとする樹脂被膜の平均厚みが500μm以下であれば、平均粒径が0.2μm~5μmであって、樹脂被膜の平均厚みの10%以上の粗粒を篩で分級して除くのが好ましい。また、無機充填材の含有量は、樹脂被膜の強度や溶融時の流動性から熱硬化性樹脂に対して10質量%から60質量%であるのが好ましい。
【0017】
また本発明は、磁心の表面全体を熱硬化性樹脂で被覆した樹脂被膜付き磁心であって、前記磁心は、磁歪定数λsが絶対値として30×10-6以下のFe基アモルファス合金の金属磁性材料を主体とし、外径が20~75mm、内径が10~50mm、高さが5~25mmの円環状であって、前記熱硬化性樹脂は無機充填材を、含み、前記磁心表面に直接被覆された樹脂被膜の平均厚みが200μm以上500μm以下であって、最大磁束密度150mT、周波数20kHzの条件で磁心損失Pcvが190kW/m未満である樹脂被膜付き磁心である。
【0018】
樹脂被膜付き磁心の樹脂被膜に含む無機充填材は、0.2~5μmの平均粒径を有する粉末であるのが好ましい。また、前記無機充填材が、酸化チタン、アルミナ、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムのいずれかであるのが好ましい。また、前記無機充填材は、前記熱硬化性樹脂の全固形分中の10~60質量%であるのが好ましい。
【0019】
樹脂被膜付き磁心に用いる磁心は、Fe基アモルファス合金の粉末とCuの粉末を含み、Fe基アモルファス合金の粉末とCuの粉末の総量を100質量%とするとき、Cuの粉末を7質量%以下含み、磁心の占積率が75%以上であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、円環状の磁心に熱硬化性樹脂を塗装する樹脂被覆工程を備えた樹脂被膜付き磁心の製造方法であって、磁心の内周面、外周面および両側面に対して均一な膜厚の樹脂被膜を形成できる樹脂被膜付き磁心の製造方法と、磁気特性に優れた樹脂被膜付き磁心を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係る樹脂被膜付き磁心の製造方法の工程を示す図である。
図2】(a)~(d)は、本発明の一実施形態に係る樹脂被膜付き磁心の製造方法の第2工程において、塗装装置の動作を説明するための要部拡大断面図である。
図3図2(c)のa-a’断面矢視図である。
図4】(a)は本発明の一実施形態に係る樹脂被膜付き磁心の製造方法で得られる樹脂被膜付磁心を示す正面図であり、(b)は(a)におけるb-b’断面を示す斜視図である。
図5】従来例に示された流動浸漬法による塗装装置の動作を説明するための要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態に係る樹脂被膜付き磁心の製造方法について具体的に説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。なお、図の一部又は全部において、説明に不要な部分は省略し、また説明を容易にするために拡大または縮小等して図示した部分がある。また説明において示される寸法や形状、構成部材の相対的な位置関係等は特に断わりの記載がない限りは、それのみに限定されない。さらに説明においては、同一の名称、符号については同一又は同質の部材を示していて、図示していても詳細説明を省略する場合がある。
【0023】
本発明の樹脂被膜付き磁心の製造方法は、流動浸漬法により環状の磁心をコーティングするための方法であって、加熱された円環状の磁心の中空部に回転ロールを通し、回転ロールにより磁心を回転させつつ、容器内の所定の深さまで、且つ所定の時間で粉状の熱硬化性樹脂に浸漬させ、加熱した磁心の熱により熱硬化性樹脂の粉末を溶融するとともに、磁心表面を溶融樹脂でコーティングする。その後、磁心を所定温度で所定の時間加熱して、熱硬化性樹脂を硬化させて樹脂被膜とする。
【0024】
図1は本発明の一実施形態に係る樹脂被膜付き磁心の製造方法の工程を示す図である。また図2(a)~(d)は、本発明の一実施形態に係る樹脂被膜付き磁心の製造方法の第2工程において、塗装装置の動作を説明するための要部拡大断面図である。図3図2(c)のa-a’断面矢視図である。また、図4(a)、(b)は本発明の一実施形態に係る樹脂被膜付き磁心の製造方法で得られる磁心を示す正面図と一部断面を示す斜視図である。
【0025】
樹脂被膜付き磁心の製造方法では円環状の磁心に流動浸漬法により熱硬化性樹脂を塗装する。前記樹脂被覆工程は複数の工程に分かれ、大別すれば図1に示した第1~第3工程に区分される。第1工程では磁心を熱硬化性樹脂が溶融する温度に加熱する。次いで第2工程では磁心のもつ余熱で熱硬化性樹脂の粉末を溶融して磁心の表面を塗装する。そして第3工程では塗装した熱硬化性樹脂を硬化して樹脂被膜を完成する。
【0026】
塗装される磁心の材質は、前述のソフトフェライトや金属系磁性材料など特に制限されない。またその形態も材質に応じて焼結体、巻磁心、積層磁心、圧粉磁心などのいずれであっても良い。好ましくは、飽和磁束密度や磁心損失に優れる圧粉磁心であって、用いる磁性材料は、例えば磁歪定数λsが30×10-6以下のFe基アモルファス合金を用いるのが好ましい。Fe基アモルファス合金は例えばFe-B-Si系の合金である。Fe基アモルファス合金は粉末にして用いられるが、更にCuの粉末を加えて、Cuの粉末をFe基アモルファス合金の粉末の間に分散させ、エポキシ系等の樹脂バインダーで結着して構成しても良い。Fe基アモルファス合金の粉末とCuの粉末の総量100質量%に対してCuの粉末を7質量%以下とすれば、Cuの粉末は非磁性であるものの、成形時の圧
縮性を高めて占積率を高め透磁率の低下を抑えつつ磁心損失を低減することが出来る。より好ましく0.1質量%~1.5質量%である。また、Fe-Si系、Fe-Ni系、Fe-Si-Cr系、Fe-Si-Al系、Fe-Al-Cr系などのFe系の磁性合金のアトマイズ粉末を用いても良い。また金属系磁性材料を用いる磁心では、体積に占める磁性体の割合で表される占積率が75%以上であるのが好ましい。
【0027】
磁心2の形状は中空部を有する実質的な円環状であれば良く、ここで実質的な円環状とは磁心の内周側(中空部)や磁心2の外周部が、円、あるいは楕円形状や多角形状であっても円に近似可能な形状となっていて、回転ロール50の回転に伴って回転可能な形状であれば良く、凹凸などの変形が加えられていてもかまわない。また寸法は本発明の効果が得られる範囲で適宜設定され得るが、回転ロール50の径寸法や、与えられる回転力などを考慮すれば、外径20~75mm、内径10~50mm、高さ5~25mm程度であるのが望ましい。
【0028】
第1工程において、磁心2を熱硬化性樹脂が溶融する温度以上の高温となるように加熱する。加熱温度は熱硬化性樹脂の種類や磁心材質等に応じて適宜設定され得るが、例えば、130~350℃程度の範囲から選択できる。加熱炉は、恒温槽やリフロー炉等、周知の装置が利用出来る。
【0029】
第2工程において、磁心の余熱を利用し熱硬化性樹脂の粉末を溶融して塗装する。図2に示すように、塗装には複数の磁心2を挿通可能な回転ロール50と、前記回転ロール50を回転させるための回転機構(図示せず)と、熱硬化性樹脂の粉体が収められた容器である粉体流動槽150と、前記磁心2を熱硬化性樹脂の粉体に浸漬するため、回転ロール50又は粉体流動槽150を上下動させる昇降手段(図示せず)と、前記回転ロール50の温度調整を行なう冷却機構(図示せず)を備えた塗装装置200を用いるのが好ましい。粉体流動槽150内では、図3に示すように、その下部の気体流路135から多孔質板125を介して気体が送り込まれていて、熱硬化性樹脂の粉体は流動状態となっている。
【0030】
次に第2工程について作業順に詳細に説明を行なう。
まず、串状の回転ロール50に複数の磁心2を通す(図2(a)~(b))。その際、回転ロール50は回転状態であっても良いが、回転を停止した状態で作業を行う方が容易で好ましい。回転ロール50は熱硬化性樹脂の溶融温度よりも低い温度に保たれている。回転ロール50を温度調整することで、回転ロール50自体に熱硬化性樹脂が溶着するのを防いでいる。また回転ロール50と磁心2の内周面との間に巻き込んだ熱硬化性樹脂の粉末は、回転ロール50及び磁心2の回転とともに余剰分として容器に排出されて、磁心2の内周側の樹脂被膜厚みが無用に厚くなるのを防いでいる。そのため回転ロール50の温度は、熱硬化性樹脂の溶融温度Tmよりも低く、10℃~80℃で調整するのが好ましい。また、回転ロール50に吊り下がった状態の磁心2の下端側の内周面2bから回転ロール50の外周面50aまでの間隔が狭いと、回転ロール50と磁心2の内周面2bとの間に入り込んだ熱硬化性樹脂の粉末の余剰分が排出されにくくなって、磁心2の回転を妨げる場合もあるので、前記間隔は2mm以上となるように構成するのが好ましい。
【0031】
軸方向の間隔Sを持って回転ロール50に支持され吊り下がった状態の複数の磁心2は、前記回転ロール50によって回転力を付与される。回転ロール50からの回転力で磁心2が回転するが、磁心の回転速度が遅いと樹脂被膜の厚みが不均一になりやすく、速いと熱硬化性樹脂の粉末を回転ロール50と磁心2の内周面との間に巻き込み易くなる。そのため回転ロール50の回転は樹脂被膜の状態に応じて適宜設定されるが、前述した磁心の寸法であれば、磁心に25~300rpm程度の回転速度を与える設定であるのが好ましい。
【0032】
回転ロール50の根元側は塗装装置200の内部にまで及び、塗装装置200内の図示しないモータの回転がギア等の伝達手段を介して回転ロール50に与えられる。また、塗装装置200内に冷却機構を設けて、回転ロール50をその根元側から空冷あるいは水冷して温度調整を行なうのが好ましい。また冷却水を通す回転式ヒートパイプ構造としても良い。回転ロール50の材質は、強度や熱伝導性等によるが、例えばステンレスであるのが好ましい。回転ロール50を、開口した中空状としたスリーブと、そこに熱伝導性に優れるCuなどの良熱伝導性金属を埋めた一体構造体として熱伝導性を改善しても良い。
【0033】
回転ロール50の外径は、磁心を支持し、熱硬化性樹脂の粉末の中で磁心を回転させるに十分な駆動力を与えることが出来る寸法であることが必要である。また、熱硬化性樹脂の粉末が磁心2の内径側へ流入するのを阻害せず、且つ巻き込みを防ぐには、前述した回転ロールの外周と磁心の内周との間隔を確保すれば良いが、更には回転ロールの外径D1が磁心の内径D2よりも十分に小さいことが望ましい。好ましくは回転ロールの外径D1と磁心の内径D2の比D1/D2が、0.2以上0.96以下であるのが好ましい。
【0034】
次に磁心2を回転状態のまま粉体流動槽150内で流動する熱硬化性樹脂の粉末170に浸漬した後、引き上げる(図2(c)~(d))。回転ロール50又は粉体流動槽150が図示しない昇降手段によって上下動が可能であって、どちらかを移動させることで、磁心2を熱硬化性樹脂の粉末170に浸漬することが出来る。昇降手段を制御することで、粉体流動槽150内で流動する熱硬化性樹脂の粉末170に磁心2を回転させながら所定の浸漬深さで所定の時間、浸漬することが出来る。
【0035】
に示したように磁心2の熱硬化性樹脂の粉末170への浸漬深さDは、磁心2の外周の吊り下げ方向の下端から粉体流動槽150から現われる熱硬化性樹脂の粉末170の表面175までの距離で規定される。通常熱硬化性樹脂の粉末170は流動状態であって、その表面は不規則に波打っている。従って本発明においては、磁心の吊り下げ方向において磁心の外径側から内径側にわたって容器内で流動する粉状の熱硬化性樹脂に浸漬している状態を「磁心2の内径側を超えて浸漬する」とする。また回転ロール50の下端側50aが硬化性樹脂の粉末に完全に埋もれない状態であれば「回転ロールは浸漬しない」とする。いずれも状態も目視確認により判断すれば良い。
【0036】
磁心2の浸漬深さの上限位置(これ以上は浸漬させない位置)を規定し、磁心2全体を熱硬化性樹脂の粉末170に浸漬させないようにすることで、粉末に浸漬することで生じる抵抗を低減し、もって磁心2の回転を安定に維持し、浸漬する磁心の部位を回転にムラなく更新することが出来る。
【0037】
また磁心2の一部のみを粉末に浸漬するので浸漬深さを浅くすることが出来るので、所定の浸漬深さで磁心2を保持し、保持時間によって樹脂被膜の厚みをコントロールするのが容易となる。この場合、粉末に浸漬する、あるいは引き出す速度が遅いと、自ずと磁心が粉末に浸漬している時間も長くなるので、ともに浸漬する速度を6m/分以上とするのが望ましい。また時間にすれば0.5秒未満とするのが望ましい。また、浸漬深さで磁心2を保持することなく、浸漬させたい深さに至るまでの速度や引き出す速度によって塗装時間をコントロールして所望の樹脂被膜厚みとしても良い。
【0038】
浸漬時間は、得ようとする被膜の厚みによって調整され得るが、500μm以下の平均厚みであれば5秒未満であるのが好ましい。ここで浸漬時間は、磁心2の外周側が熱硬化性樹脂の粉末170と接触している全体の時間とする。被膜の厚みが全体的に厚くなるほど表面の樹脂が半融解状態になりやすく被膜の面粗さが粗くなって、再び熱を加えて表面の樹脂を完全に溶かす処理が必要となり、被膜厚みの均一性が得られ難くなる場合がある。
【0039】
用いる熱硬化性樹脂の粉末は、エポキシ樹脂に無機充填材を含ませたエポキシ系樹脂とするのが好ましい。熱硬化性樹脂の粉末の粒径は磁心の外形寸法にもよるが、流動性や被膜厚みの均一性から10μm~300μmであるのが好ましい。無機充填材は熱硬化性樹脂の樹脂被膜の機械的強度の向上と低熱膨張化に寄与するものであれば特に限定されない。更に絶縁性を向上するものあれば一層好ましい。無機充填材は、例えば酸化チタン、アルミナ、シリカ等の酸化物や、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩等を用いることが出来る。無機充填材の含有量は、熱硬化性樹脂の全固形分中の10質量%~60質量%であるのが好ましい。無機充填材が多いと溶融した熱硬化性樹脂の流動性が悪くて、被膜の厚みにばらつきが生じる場合がある。また少ないと、機械的強度の向上と低熱膨張化への寄与が十分に成されない場合がある。磁心に用いる磁性材料にFe基アモルファス合金の粉末を用いる場合には、Fe基アモルファス合金と樹脂被膜の熱膨張係数の差が70ppm/℃以内であるのが好ましい。
【0040】
エポキシ樹脂は特には限定されないが、ビスフェノールA型エポキシ樹脂をはじめ、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールノボラック型エポキシ樹脂等を用いても良い。
【0041】
エポキシ系樹脂は硬化剤を含み更に硬化促進剤を含んでも良い。硬化剤は例えばフェノールノボラック樹脂、アルキルフェノールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂等のフェノール系硬化剤を用いても良い。硬化促進剤も特に限定されないが、熱硬化性樹脂を構成する樹脂成分と相溶性のあるイミダゾール化合物であるのが好ましい。
【0042】
第3工程では前記第2工程を経た磁心を加熱して熱硬化性樹脂を硬化して樹脂被膜10を完成する。磁心が持つ余熱だけでは熱硬化性樹脂の硬化が不十分である場合があるので、第1工程の温度よりも高温で加熱するのが好ましい。特にはエポキシ樹脂に無機充填材を含むエポキシ系樹脂は硬化に必要な時間が長くなり易いため、例えば200℃以上の温度にて、10分以上連続して加熱するのが望ましい。
【0043】
得られる磁心の樹脂被膜10は、外周側10a、内周側10b、第1側面側10c、第2側面側10dの全体において200μm以上500μm以下の平均厚みであるのが好ましい。
【0044】
また樹脂被膜付き磁心1に導線を巻く場合、磁心に面取りされない角部があると、被膜厚みが薄くなって、そこに導線が当たって局部的に応力が集中し易く、樹脂被膜10の割れが生じる場合がある。そのため、磁心はその内周側及び外周側の角部を面取りしたものを使用するのが好ましい。図4(b)に示すように、磁心2の内外周の角部に面取り設けることによって、磁心2の回転を妨げるバリが除去される点でも好ましい。
【実施例
【0045】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明する。また説明においては、磁心に用いる磁性材料をFe基アモルファス合金とするが、特に限定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれに限定する趣旨のものではない。
【0046】
(磁心の作製)
Fe基アモルファス合金として、日立金属株式会社製Metglas(登録商標)2605SA1材とエプソンアトミックス株式会社製のFe7411Si11Cr材(アトマイズ粉末;平均粒径D50=6μm)を用いた。2605SA1材は厚みが25μmの薄帯で供給され、これを粉砕した。得られた粉砕粉末を目開き106μm(対角150μm)の篩に通し、次いで目開き35μm(対角49μm)の篩により通過する粉砕
粉末を除去した。篩で分級した粉砕粉末にTEOS(テトラエトキシシラン、Si(OC)処理してシリコン酸化物被膜が形成された粉末を得た。また、Cuの粉末は日本アトマイズ加工株式会社製HXR-Cu材、平均粒径(D50)5μmの球状粉末を用いた。なお磁心の構成主体であるFe基アモルファス合金の2605SA1材の熱膨張係数は7.6×10-6/℃、磁歪は27×10-6である。後述するように、磁心はFe基アモルファス合金の粉砕粉末を主体とするものであるので、本発明者の知見によれば、磁心の熱膨張係数や磁歪は2605SA1材の値を参考に出来て、2605SA1材の占める割合が90質量%以上であれば磁心の値と見なすことが出来る。
【0047】
Fe基アモルファス合金の粉砕粉末を91.5質量%、アトマイズ粉末を7質量%およびCuの粉末を1.5質量%として、その総量が100質量%となるように秤量した。さらに、それ等の粉末、合計100質量%に対して、高温用バインダーとしてフェニルメチルシリコーン(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製SILRES H44)を1質量%、有機バインダーとしてアクリル樹脂(昭和高分子株式会社製ポリゾールAP-604)を1.5質量%とし、前記粉砕粉末等とともに混合した後、120℃で10時間乾燥し混合粉とした。
【0048】
得られた混合粉を目開き425μmの篩を通して造粒粉を得て、この造粒粉にステアリン酸亜鉛40gを混合した後、プレス機を使用して、外径33mm、内径20mm、高さ12.5mmの円環状になるように、圧力2GPa、保持時間2秒で圧粉成形した。得られた成形体の内周側角部、外周側角部をC1.5の面取りを施した。面取り後の成形体に恒温槽にて、大気雰囲気中、ピーク温度400℃、保持時間1時間の熱処理を施して、占積率が79%の磁心を得た。
【0049】
(樹脂被覆工程)
(第1工程)
磁心を加熱処理して試料温度で170℃以上となるように、メッシュベルト式の連続熱処理炉を使ってピーク温度215℃で5分間加熱した。
【0050】
(第2工程)
図2及び図3に示した塗装装置を用いて流動浸漬法により熱硬化性樹脂を塗装した。
熱硬化性樹脂は次の3種を準備した。一つ(試料No.1)は住友ベークライト株式会社製のエポキシ樹脂粉体塗料、スミライトレジン(登録商標)ECPシリーズで、シリカを無機充填材とした溶融温度が100℃、硬化後の熱膨張係数が45ppm/℃の熱硬化性樹脂の粉末(以下樹脂粉末Aとする)である。
二つ目(試料No.2)は、炭酸カルシウムを無機充填材とした溶融温度が155℃、硬化後の熱膨張係数が40ppm/℃の熱硬化性樹脂の粉末(以下樹脂粉末Bとする)である。
三つ目(試料No.4,5)は、ソマール株式会社製のエポキシ樹脂粉体塗料エピフォームF-235を用い、溶融温度が80℃、硬化後の熱膨張係数が65ppm/℃の熱硬化性樹脂の粉末(以下樹脂粉末Cする)である。比較例として用いたエピフォームF-235は無機充填材を含まない。
【0051】
外径がφ10mmで20℃に調整された回転ロール50に磁心2に通して、20mmの間隔をもって6個並べた。回転ロール50の外周と磁心2の内周の吊り下げ方向(鉛直方向)の間隔は10mmである。回転ロール50を回転して磁心2の回転速度を40rpmとし、浸漬深さDは、*No.3を除いて吊り下げ方向の下端側の磁心内周面と回転ロールの外周面の間の略中間とし、*No.3については磁心全体を熱硬化性樹脂の粉末に浸漬される2条件とし、浸漬深さを維持する浸漬時間をNo.1、*No.4、を3.5秒とし、No.2では4秒とし、*No.3では2秒とし、*No.5では5秒として流動
浸漬することにより塗装した。
【0052】
(第3工程)
熱硬化性樹脂を塗装した磁心を加熱処理し、メッシュベルト式の連続熱処理炉を使ってピーク温度220℃で10分間加熱して硬化処理して樹脂被膜付き磁心1を得た。
作製した樹脂被膜付き磁心について表1に条件を纏める。表中、比較例の試料にはNo.に*を付与して区別している。
【0053】
【表1】
【0054】
(評価方法および結果)
以上の工程により作製した各樹脂被膜付き磁心について、磁心損失、膜厚の評価を行った。
【0055】
(磁心損失Pcv)
磁心を被測定物とし、一次側巻線と二次側巻線とをそれぞれ51ターンと17ターン巻回し、岩通計測株式会社製B-HアナライザーSY-8232により、最大磁束密度150mT、周波数20kHzの条件で磁心損失Pcv(kW/m)を室温で測定した。
【0056】
(膜厚)
図4に示すように、樹脂被膜付き磁心10を切断機で中心を通る径方向に切断し、分割された円弧状の磁心10の一方側の断面にて観察される外周側の樹脂被膜10a、内周側の樹脂被膜10b、第1側面の樹脂被膜10c、第2側面の樹脂被膜10dの厚みを、万能投影機を使用して計測した。被膜の厚みは磁心表面を基準とする被膜の最も厚い部分までの距離とした。
【0057】
表2に試料No.1,2,及び*No.4,5の平均被膜厚みと磁心損失の関係を示す。平均被膜厚みは、1試料における二側面と内外周面の厚みの平均値である。無機充填材を含む樹脂粉末A(No.1),B(No.2)を用いた樹脂被膜付き磁心は、無機充填材を含まない樹脂粉末Cを用いた樹脂被膜付き磁心(*No.4、*No.5)よりも低損失となった。
【0058】
【表2】
【0059】
浸漬深さを異ならせた試料No.1と*No.3について、表3に試料数n=12での被膜厚みの平均値(試料全体での二側面側と内外周面側の樹脂被膜の厚みの平均)と標準偏差σ、磁心の内周側被膜厚みの平均値(Tia)と外周側被膜厚みの平均値(Toa)との差(Tia- Toa)を示す。試料No.1の被膜厚みのばらつきは*No.3と較べて小さく、内外周での被膜厚みの差も小さいものとなった。
【0060】
【表3】
【0061】
実施例の試料No.1では、比較例の試料*No.3に比べて、被膜厚みの最大値と最小値の差が小さく、磁心全体で均一な厚みの樹脂被膜を形成できる。また磁心の全体を樹脂粉末に浸漬しなくても、樹脂被膜の表面は滑らかでピットは認められなかった。本発明によれば磁心にピットが無く全体で均一な膜厚の樹脂被膜を形成できる。また得られた樹脂被膜付き磁心は耐衝撃性や絶縁性、耐候性に優れるとともに、磁心損失に優れたものとなる。
【符号の説明】
【0062】
1 樹脂被膜付き磁心
2 磁心
10 樹脂被膜
50 回転ロール
120 ロッド
125 多孔質板
130 噴気孔
135 気体流路
150 粉体流動槽
200 塗装装置

図1
図2
図3
図4
図5