(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】樹脂組成物およびそれよりなるフィルム
(51)【国際特許分類】
C08L 23/08 20060101AFI20230711BHJP
C08L 23/06 20060101ALI20230711BHJP
C08L 45/00 20060101ALI20230711BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
C08L23/08
C08L23/06
C08L45/00
C08J5/18 CES
(21)【出願番号】P 2022117950
(22)【出願日】2022-07-25
(62)【分割の表示】P 2018057791の分割
【原出願日】2018-03-26
【審査請求日】2022-07-25
(31)【優先権主張番号】P 2017063422
(32)【優先日】2017-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】濱 晋平
【審査官】宮内 弘剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-162965(JP,A)
【文献】特開平07-053795(JP,A)
【文献】特開2006-257399(JP,A)
【文献】特開平06-041361(JP,A)
【文献】特開2015-140420(JP,A)
【文献】特開2017-018290(JP,A)
【文献】特開2009-138029(JP,A)
【文献】国際公開第2012/035956(WO,A1)
【文献】特開2012-131933(JP,A)
【文献】特表2003-508623(JP,A)
【文献】特開2013-100418(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K
C08L
C08J 5/18
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状ポリオレフィン(A)5~95重量部、および下記特性(a)~(d)を満足するエチレン系重合体(B)5~95重量部((A)及び(B)の合計は100重量部)を含む樹脂組成物。
(a)JIS K6922-1に準拠して密度勾配管法で測定した密度が930~960kg/m
3である。
(b)JIS K 6922-1に準拠し、190℃、荷重21.18Nで測定したメルトマスフローレートが0.1~15g/10分である。
(c)ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーによる2つのピークを示し(分子量測定においてピークトップ分子量(Mp)はGPC測定によって得られた分子量分布曲線を2個のピークに分割し、高分子量側のピークと低分子量側のピークのトップ分子量を評価し、その差が100,000以上である場合を2つのMpを有するとする)、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が3.0~7.0の範囲である。
(d)分子量分別した際のMnが10万以上のフラクション中に炭素数6以上の長鎖分岐を主鎖1000炭素数あたり0.15個以上有する。
【請求項2】
前記環状ポリオレフィン樹脂(A)が10~90重量部、前記エチレン系重合体(B)が10~90重量部である請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記環状ポリオレフィン(A)が20~40重量部、前記エチレン系重合体(B)が6
0~80重量部を含む請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記エチレン系重合体(B)のMw/Mnが3.0~6.0の範囲であり、Mnが15,000以上である請求項1乃至3のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記エチレン系重合体(B)の分子量分別した際のMnが10万以上である成分の割合がエチレン系重合体(B)全体の40%未満である請求項1乃至4のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記環状ポリオレフィン樹脂(A)及び前記エチレン系重合体(B)100重量部に対して、下記特性(e)~(g)を満足する高密度ポリエチレン(C)20~300重量部を含む請求項1乃至5のいずれかに記載の樹脂組成物。
(e)JIS K6922-1に準拠して密度勾配管法で測定した密度が940~970kg/m
3である。
(f)JIS K 6922-1に準拠し、190℃、荷重21.18Nで測定したメルトマスフローレートが0.1~15.0g/10分である。
(g)分子量分別した際のMnが10万以上のフラクション中に炭素数6以上の長鎖分岐を主鎖1000炭素数あたり0.14個以下有する。
【請求項7】
樹脂組成物が、前記環状ポリオレフィン樹脂(A)及び前記エチレン系重合体(B)100重量部に対して、前記高密度ポリエチレン(C)80~150重量部を含む請求項6に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記高密度ポリエチレン(C)のMw/Mnが2.0~3.5の範囲であり、Mnが25,000以上である請求項6または7に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の樹脂組成物からなるフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物およびそれよりなるフィルムに関する。さらに詳しくは、輸液や
食品包装に用いられる医療用フィルムないし部材および食品用フィルムないし部材に好適
な樹脂組成物及びそれよりなるフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
薬液、血液等を包装する医療用フィルムないし部材および食品を包装する食品用フィル
ムには、異物の有無を目視確認するための透明性、さらに内容液ないし内容物中の有効成
分の散逸防止性などが要求される。
【0003】
従来、これらの性能を満たす医療用フィルムおよび食品用フィルムにポリオレフィン樹
脂や環状ポリオレフィン樹脂が使用されるが、環状ポリオレフィン樹脂はガラス転移温度
が室温以上であることから、環状ポリオレフィンのみからなるフィルムは衝撃によりひび
割れるなどの問題があり、耐衝撃性の点で課題がある。
【0004】
そこで、フィルムの材料に環状ポリオレフィンへポリエチレンやポリプロピレン等の線
状ポリオレフィンないしスチレンブロック共重合体、イソブチレン共重合体等をブレンド
した樹脂組成物が種々開発され、環状ポリオレフィンと線状ポリオレフィン等からなる樹
脂組成物を用いた医療用フィルムが提案されている(例えば、特許文献1~4参照。)。
【0005】
環状ポリオレフィン樹脂とポリエチレン系樹脂の樹脂組成物からなるフィルムは、透明
性等が低下するなどの問題がある。また、環状ポリオレフィン樹脂とポリプロピレンの樹
脂組成物からなるフィルムは、低温下での耐衝撃性が低下するなどの問題がある。一方、
環状ポリオレフィン樹脂とスチレンブロック共重合体ないしイソブチレン共重合体等の樹
脂組成物からなるフィルムは、フィルムのコストが上昇するなどの問題がある。そのため
、環状ポリオレフィン樹脂の耐衝撃性を改良する樹脂の開発が望まれていた。
【0006】
また、近年、医療用容器の分野において、複数成分の分離収容と、使用直前の上記複数
成分を容器内で混合する処理とが可能な複室容器が多用されている。このような複室容器
では、互いに隣接する収容部間を隔離するための易剥離シール部を形成できるヒートシー
ル温度範囲が広い易剥離シール性を付与することが重要となっている。
【0007】
易剥離シール性を付与するために、多層フィルムが提案されている。多層フィルムには
、易剥離シール性、透明性、加熱滅菌処理に対する耐熱性などの諸物性を満足する設計が
求められる。
【0008】
このような多層フィルムおよびそれを用いた容器として、特許文献2には、環状ポリオ
レフィンと線状ポリオレフィンとを含有する組成物をシーラント層に用いた医療用複室容
器が開示されている。
【0009】
また、特許文献3には、環状ポリオレフィンと、ビニル芳香族炭化水素重合体ブロック
(a)と、ビニル芳香族炭化水素/水素添加共役ジエン共重合体ブロック(b)から構成
され、(a)-(b)-(a)で表される構造を有するブロック共重合体とを含む組成物
をシーラント層に用いた医療用複室容器が開示されている。
【0010】
特許文献4には、環状ポリオレフィンと、スチレン系重合体ブロックとイソブチレン重
合体ブロックとのブロック共重合体を含む組成物をシーラント層に用いた医療用複室容器
が開示されている。
【0011】
特許文献5には、2種の密度の異なる直鎖状低密度ポリエチレンからなる組成物をシー
ラント層に用いた薬液バッグが開示されている。
【0012】
特許文献6には、直鎖状ポリエチレンとプロピレンホモポリマーからなる組成物をシー
ラント層に用いた薬剤容器が開示されている。
【0013】
環状ポリオレフィン樹脂とポリエチレン系樹脂の樹脂組成物からなるフィルムは、透明
性等が低下するなどの問題がある。また、環状ポリオレフィン樹脂とビニル芳香族炭化水
素重合体、スチレンブロック共重合体ないしイソブチレン共重合体等の樹脂組成物からな
るフィルムは、フィルムのコストが上昇するなどの問題がある。一方、2種の密度の異な
る直鎖状低密度ポリエチレンの樹脂組成物からなるフィルムは、加熱滅菌に対する耐熱性
が不足するなどの問題がある。また、直鎖状ポリエチレンとプロピレンホモポリマーから
なる樹脂組成物からなるフィルムは、透明性が不足するなどの問題がある。そのため、易
剥離シール性を具備する樹脂の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】特開平8-192871号公報
【文献】特開2000-70331号公報
【文献】特開2014-195609号公報
【文献】特開2014-196438号公報
【文献】特開2009-248973号公報
【文献】特許5330240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、環状ポリオレフィン樹脂よりなる医療用ないし食品用フィルムの欠点
である耐衝撃性に優れ、かつ、高い透明性が維持された環状ポリオレフィンおよびエチレ
ン系重合体からなる樹脂組成物およびそれよりなるフィルムを提供することにある。
【0016】
また、本発明の目的は、多層フィルムの内層に求められる易剥離シール性を有する環状
ポリオレフィン及びエチレン系重合体からなる樹脂組成物、当該樹脂組成物からなるフィ
ルム、及び当該樹脂組成物を多層フィルムのシーラント層に用いたフィルムを提供するこ
とにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者は鋭意検討を行なった結果、環状ポリオレフィン樹脂に特定の物性を有するポ
リエチレン系樹脂を特定量配合した樹脂組成物を用いることにより、上記課題が解決でき
ることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0018】
すなわち、本発明は以下の[1]及至[10]に存する。
[1]環状ポリオレフィン(A)5~95重量部、および下記特性(a)~(d)を満足
するエチレン系重合体(B)5~95重量部((A)及び(B)の合計は100重量部)
を含む樹脂組成物。
(a)JIS K6922-1に準拠して密度勾配管法で測定した密度が930~960
kg/m3である。
(b)JIS K 6922-1に準拠し、190℃、荷重21.18Nで測定したメル
トマスフローレート(以下、MFRという)が0.1~15g/10分である。
(c)ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(以下、GPCという)による分子
量測定において2つのピークを示し、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の
比(Mw/Mn)が3.0~7.0の範囲である。
(d)分子量分別した際のMnが10万以上のフラクション中に炭素数6以上の長鎖分岐
を主鎖1000炭素数あたり0.15個以上有する。
[2]上記環状ポリオレフィン樹脂(A)が10~90重量部、上記エチレン系重合体(
B)が10~90重量部である上記[1]記載の樹脂組成物。
[3]上記環状ポリオレフィン(A)が20~40重量部、上記エチレン系重合体(B)
が60~80重量部である上記[1]に記載の樹脂組成物。
[4]上記エチレン系重合体(B)のMw/Mnが3.0~6.0の範囲であり、Mnが
15,000以上である上記[1]乃至[3]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[5]上記エチレン系重合体(B)の分子量分別した際のMnが10万以上である成分の
割合がエチレン系重合体(B)全体の40%未満である上記[1]乃至[4]のいずれか
に記載の樹脂組成物。
[6]樹脂組成物が、上記環状ポリオレフィン樹脂(A)及び上記エチレン系重合体(B
)100重量部に対して、下記特性(e)~(g)を満足する高密度ポリエチレン(C)
20~300重量部を含む上記[1]乃至[5]のいずれかに記載の樹脂組成物。
(e)JIS K6922-1に準拠して密度勾配管法で測定した密度が940~970
kg/m3である。
(f)JIS K 6922-1に準拠し、190℃、荷重21.18Nで測定したMF
Rが0.1~15.0g/10分である。
(g)分子量分別した際のMnが10万以上のフラクション中に炭素数6以上の長鎖分岐
を主鎖1000炭素数あたり0.14個以下有する。
[7]樹脂組成物が、上記環状ポリオレフィン樹脂(A)及び上記エチレン系重合体(B
)100重量部に対して、上記高密度ポリエチレン(C)80~150重量部を含む上記
[6]に記載の樹脂組成物。
[8]上記高密度ポリエチレン(C)のMw/Mnが2.0~3.5の範囲であり、Mn
が25,000以上である上記[6]または[7]に記載の樹脂組成物。
[9]上記[1]~[8]のいずれかに記載の樹脂組成物からなるフィルム。
[10]上記[9]に記載のフィルムをシーラント層に用いたフィルム。
【0019】
以下に、本発明に関わる環状ポリオレフィン樹脂、ポリエチレン樹脂、樹脂組成物、そ
れよりなるフィルムについて説明する。
[1]環状ポリオレフィン(A)
本発明に用いる環状ポリオレフィン(A)は、環状オレフィン成分を重合成分として含
むものであり、環状オレフィン成分を主鎖に含むポリオレフィン樹脂であれば、特に限定
されない。例えば下記式(1)で表される繰り返し単位を有するポリマー(以下「ポリマ
ー(1)」と称す場合がある。)及び/又は下記式(2)で表される繰り返し単位を有す
るポリマー(以下「ポリマー(2)」と称す場合がある。)が挙げられる。
【0020】
【0021】
【0022】
(上記式(1)中、Ra、Rbはそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、水素原子
又は有機基を表し、RaとRbは互いに結合して環を形成してもよい。mは1以上の整数
、nは0以上の整数である。
【0023】
上記式(2)中、Rc及びRdはそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、水素原
子又は有機基を表し、RcとRdは互いに結合して環を形成してもよい。x及びzはそれ
ぞれ1以上の整数、yは0以上の整数である。)
なお、上記Ra、Rb、Rc、Rdの有機基としては、炭素数1~8の炭化水素残基、
又はハロゲン、エステル、ニトリル、ピリジル等の極性基が挙げられる。
【0024】
ポリマー(1)は不飽和環状オレフィンモノマーの開環メタセシス重合体の水素添加物
であり、該不飽和環状オレフィンモノマーとしては、例えばシクロブテン、シクロペンテ
ン、シクロオクテン、シクロドデセンなどの単環シクロオレフィンおよび置換基を有する
それらの誘導体や、ノルボルネン環を有する置換および未置換の二環もしくは三環以上の
多環環状オレフィンモノマー(以下、ノルボルネン系モノマーと記載することがある)が
挙げられる。製造適性及び内容物適性の観点から、中でもノルボルネン系モノマーが好適
に用いられる。
【0025】
一方、ポリマー(2)はエチレンとノルボルネン系モノマーとの共重合体である。
【0026】
ポリマー(1)及びポリマー(2)を構成するノルボルネン系モノマーとしてより具体
的には、例えば、ノルボルネン、ノルボルナジエン、メチルノルボルネン、ジメチルノル
ボルネン、エチルノルボルネン、塩素化ノルボルネン、クロロメチルノルボルネン、トリ
メチルシリルノルボルネン、フェニルノルボルネン、シアノノルボルネン、ジシアノノル
ボルネン、メトキシカルボニルノルボルネン、ピリジルノルボルネン、ナヂック酸無水物
、ナヂック酸イミドなどの二環シクロオレフィン;ジシクロペンタジエン、ジヒドロジシ
クロペンタジエンやそのアルキル、アルケニル、アルキリデン、アリール置換体などの三
環シクロオレフィン;ジメタノヘキサヒドロナフタレン、ジメタノオクタヒドロナフタレ
ンやそのアルキル、アルケニル、アルキリデン、アリール置換体などの四環シクロオレフ
ィン;トリシクロペンタジエンなどの五環シクロオレフィン;ヘキサシクロヘプタデセン
などの六環シクロオレフィンなどが挙げられる。また、ジノルボルネン、二個のノルボル
ネン環を炭化水素鎖又はエステル基などで結合した化合物、これらのアルキル、アリール
置換体などのノルボルネン環を含む化合物等を用いることも可能である。
【0027】
ポリマー(1)の製造方法は特に限定されることなく、公知の種々の製造方法が採用可
能である。ポリマー(1)は、例えば、上記の不飽和環状オレフィンモノマー、好ましく
はノルボルネン系モノマーを開環重合した後、生成した重合体が有するオレフィン性不飽
和結合部分を水素化することによって製造することができる。該開環重合は、例えば、不
飽和環状オレフィンモノマーを、遷移金属化合物又は白金族金属化合物と有機アルミニウ
ム化合物等の有機金属化合物を含む触媒系において、必要に応じて脂肪族又は芳香族の第
三級アミン等の添加剤の存在下に、-20~100℃の範囲内の温度、0.01~50k
g/cm2Gの範囲内の圧力で行うことができる。また該水素化は、通常の水素化触媒の
存在下で行うことができる。
【0028】
ポリマー(1)としては、上記式(1)で表される繰り返し単位のうち、異なる構造の
繰り返し単位が複数含まれていてもよい。また、上記式(1)で表されるものの中でも、
下記式(3)で表される繰り返し単位を含むことが好ましく、より具体的には、分子中に
下記式(3)で表されるものが30モル%以上含まれることが好ましい。
【0029】
【0030】
一方、ポリマー(2)に含まれる単量体成分としてのエチレンとノルボルネン系モノマ
ーの割合は、エチレン/ノルボルネン系モノマーのモル比として、エチレン/ノルボルネ
ン系モノマーが80/20~30/70の範囲であることが好ましい。この範囲において
エチレンが少ないほどポリマー(2)のガラス転移温度が高くなり耐熱性に優れたものと
なる傾向にあり、また、この範囲においてエチレンが多いほどポリマー(2)の成形性が
良好となる傾向にあり、また靭性が優れたものとなる傾向にある。
【0031】
ポリマー(2)の製造方法は特に限定されることなく、公知の種々の製造方法を採用す
ることができる。ポリマー(2)は、例えば、エチレン及びノルボルネン系モノマーを、
液相で共重合させることによって製造することができる。該液相での共重合は、例えば、
可溶性バナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなる触媒の存在下、シクロヘキ
サン等の炭化水素溶媒中で、-50~100℃の範囲内の温度、0.01~50kg/c
m2Gの範囲内の圧力で行うことができる。
【0032】
環状ポリオレフィン(A)の数平均分子量又は極限粘度数は、特に限定されることなく
目的等に応じて適宜好適なものを採用することができるが、一般的には、数平均分子量が
10000~500000の範囲内であるか、又はデカリン中135℃で測定した極限粘
度数が0.01~20dL/gの範囲内であることが好ましい。環状ポリオレフィン(A
)の数平均分子量又は極限粘度数が上記上限値以下であると成形性の観点から好ましく、
上記下限値以上であると靭性の観点から好ましい。なお、環状ポリオレフィン(A)がA
STM D1238 (260℃、21.18N)に準拠したMFRでは10~30g/
10min、ISO 1133 (280℃、21.2N))に準拠したMFRでは10
~60g/10min、またISO 1133 (230℃、21.18N))に準拠し
たMVRでは10~60cm3/10minの範囲内であれば、上記の数平均分子量又は
極限粘度数の範囲内にある。
【0033】
このような環状ポリオレフィン(A)は市販品として入手可能であり、ポリマー(1)
としては、例えば、日本ゼオン(株)製の商品名「Zeonex(登録商標)」、「Ze
onor(登録商標)」、JSR(株)製の商品名「ARTON(登録商標)」等が挙げ
られる。
【0034】
また、ポリマー(2)としては、例えば三井化学株式会社製の「アペル(登録商標)」
、TOPAS Advanced Polymers社製の「TOPAS(登録商標)」
等が挙げられる。
【0035】
本発明において、環状ポリオレフィン(A)としては、ポリマー(1)の1種のみを用
いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、ポリマー(2)の1種のみを用いてもよ
く、2種以上を併用してもよい。また、ポリマー(1)の1種又は2種以上とポリマー(
2)の1種又は2種以上を併用してもよい。
[2]エチレン系重合体(B)
本発明に用いるエチレン系重合体(B)は、例えばエチレン単独重合体、エチレン-α
-オレフィン共重合体等のポリマーである。
【0036】
本発明に関わるエチレン系重合体(B)は、JIS K6922-1に準拠し、190
℃、荷重21.18Nで測定したMFRが0.1~15g/10分、好ましくは0.5~
10.0g/10分、より好ましくは1.0~5.0g/10分である。MFRが0.1
g/10分未満だと、成形加工時の押出負荷が大きくなると共に、成形時に表面荒れが発
生するため好ましくない。また、MFRが15g/10分を超える場合、溶融張力が小さ
くなり、成形時の加工安定性が低下するため好ましくない。
【0037】
本発明に関わるエチレン系重合体(B)は、JIS K6922-1に準拠した密度が
930~960kg/m3の範囲であり、好ましくは935~955kg/m3、特に好
ましくは940~950kg/m3の範囲である。密度が930kg/m3未満だと耐熱
性が不足し、960kg/m3を超える場合は透明性が低下するため好ましくない。
【0038】
本発明に関わるエチレン系重合体(B)は、GPCによる分子量測定において2つのピ
ークを示す。ピークトップ分子量(Mp)はGPC測定によって得られた分子量分布曲線
を後述の方法で2個のピークに分割し、高分子量側のピークと低分子量側のピークのトッ
プ分子量を評価し、その差が100,000以上である場合を2つのMpを有するとした
。100,000未満である場合は、実測された分子量分布曲線のトップ分子量を1つの
Mpとした。
【0039】
分子量分布曲線の分割方法は以下のとおりに行った。GPC測定によって得られた、分
子量の対数であるLogMに対して重量割合がプロットされた分子量分布曲線のLogM
に対して、標準偏差が0.30であり、任意の平均値(ピークトップ位置の分子量)を有
する2つの対数分布曲線を任意の割合で足し合わせることによって、合成曲線を作成する
。さらに、実測された分子量分布曲線と合成曲線との同一分子量(M)値に対する重量割
合の偏差平方和が最小値になるように、平均値と割合を求める。偏差平方和の最小値は、
各ピークの割合がすべて0の場合の偏差平方和に対して0.5%以下にした。偏差平方和
の最小値を与える平均値と割合が得られた時に、2つの対数正規分布曲線に分割して得ら
れるそれぞれの対数分布曲線のピークトップの分子量をMpとした。
【0040】
GPCによる分子量測定においてピークが1つのエチレン系重合体は、本発明のポリエ
チレン樹脂組成物を得るための一成分に使用しても、2つのピークを有するエチレン系重
合体(B)を配合した場合のように透明性が高いフィルムが得られない。
【0041】
本発明に関わるエチレン系重合体(B)は、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(
Mn)の比(Mw/Mn)が3.0~7.0、好ましくは3.0~6.5、さらに好まし
くは3.0~6.0である。Mw/Mnが3.0未満の場合は、成形加工時の押出負荷が
大きいばかりでなく、得られたフィルムの外観(表面肌)が悪化するため好ましくない。
Mw/Mnが7.0を超えると得られた容器または部材の強度が低下するばかりか、フィ
ルムとして使用した際に、充填した液中の微粒子が増加する恐れがある。
【0042】
本発明に関わるエチレン系重合体(B)は、GPCにより測定した数平均分子量(Mn
)が15,000以上であることが好ましく、さらに好ましくは15,000~100,
000、特に15,000~50,000が好ましい。Mnが15,000以上である場
合、得られたフィルムの強度が高くなる。
【0043】
本発明に関わるエチレン系重合体(B)は、分子量分別で得られたMnが10万以上の
フラクションの炭素数6以上の長鎖分岐数が主鎖1000炭素数あたり0.15個以上有
する。0.15個未満であるとフィルムを製造する際に、溶融張力が小さくなり、成形安
定性が低下するため、好ましくない。
【0044】
また、本発明に関わるエチレン系重合体(B)は、分子量分別で得られたMnが10万
以上のフラクションの割合が、エチレン系重合体(B)全体の40%未満であることが好
ましい。分子量分別で得られたMnが10万以上のフラクションの割合が、エチレン系重
合体(B)全体の40%未満である場合、成形加工時の押出負荷が小さく、得られたフィ
ルムの外観(表面肌)が良好である。
【0045】
以上、本発明に関わる樹脂組成物からなるフィルムに、エチレン系重合体(B)を上記
範囲内で配合した場合は、フィルムを製造する際の成形安定性が向上すると共に、得られ
たフィルムは、耐衝撃性に優れ、高い透明性を維持することが判明した。
【0046】
本発明に関わるエチレン系重合体(B)は、例えば、特開2012-126862号公
報、特開2012-126863号公報、特開2012-158654号公報、特開20
12-158656号公報、特開2013-28703号公報等に記載の方法により得る
ことができる。
[3]高密度ポリエチレン(C)
本発明に用いる高密度ポリエチレン(C)は、エチレン単独重合体、またはエチレンと
α-オレフィンの共重合体である。
【0047】
本発明に関わる高密度ポリエチレン(C)は、JIS K6922-1に準拠し、19
0℃、荷重21.18Nで測定したメルトマスフローレート(以下、MFRという)が0
.1~15g/10分、好ましくは0.5~10.0g/10分、さらに好ましくは1.
0~5.0g/10分である。成形加工時に押出機の負荷が低くなると共に、成形安定性
が向上するため、MFRが上記0.1~15g/10分であることが好ましい。
【0048】
本発明に関わる高密度ポリエチレン(C)は、JIS K6922-1に準拠した密度
が940~970kg/m3、好ましくは945~970kg/m3、更に好ましくは9
50~965kg/m3である。加熱処理により容器が変形しない等耐熱性が高くなると
共に、透明性の低下が小さくなるため、密度が上記940~970kg/m3であること
が好ましい。
【0049】
本発明に関わる高密度ポリエチレン(C)は、分子量分別した際のMnが10万以上の
フラクション中に長鎖分岐を主鎖1000炭素数あたり0.14個以下有する。
【0050】
本発明に関わる高密度ポリエチレン(B)は、Mw/Mnが2.0~3.5の範囲であ
ると、成形時の膜揺れ等の成形性が良好である、透明性が向上するため好ましい。
【0051】
また、Mnが25000以上であると、透明性が向上するため好ましい。
【0052】
本発明に関わる高密度ポリエチレン(C)としては、市販品として入手したものであっ
てもよく、例えば、東ソー(株)製(商品名)ニポロンハード 5700、8500、8
022等を挙げることができる。
【0053】
また、本発明に関わる高密度ポリエチレン(C)は、例えばスラリー法、溶液法、気相
法等の製造法により製造することが可能である。該高密度ポリエチレン(C)を製造する
際には、一般的にマグネシウムとチタンを含有する固体触媒成分及び有機アルミニウム化
合物からなるチーグラー触媒、シクロペンタジエニル誘導体を含有する有機遷移金属化合
物と、これと反応してイオン性の錯体を形成する化合物及び/又は有機金属化合物からな
るメタロセン触媒、バナジウム系触媒等を用いることができ、該触媒によりエチレンを単
独重合またはエチレンとα-オレフィンを共重合することにより製造可能である。α-オ
レフィンとしては、一般にα-オレフィンと称されているものでよく、プロピレン、ブテ
ン-1、ヘキセン-1、オクテン-1、4-メチル-1-ペンテン等の炭素数3~12の
α-オレフィンであることが好ましい。エチレンとα-オレフィンの共重合体としては、
例えばエチレン・ヘキセン-1共重合体、エチレン・ブテン-1共重合体、エチレン・オ
クテン-1共重合体等が挙げられる。
[4]樹脂組成物
本発明に用いる樹脂組成物の環状ポリオレフィン(A)、エチレン系重合体(B)の配
合割合は、(A)、(B)の合計100重量部中、環状ポリオレフィン(A)が5~95
重量部、好ましくは10~90重量部、より好ましくは20~80重量部、エチレン系重
合体(B)が5~95重量部、好ましくは10~90重量部、より好ましくは20~80
重量部である。
【0054】
また、環状ポリオレフィン(A)及びエチレン系重合体(B)100重量部に対して、
高密度ポリエチレン(C)は、20~300重量部、特に20~250重量部含むことが
好ましい。
【0055】
エチレン系重合体(B)が5重量部未満だと耐衝撃性が低下し、95重量部を超える場
合は耐熱性が不足するため好ましくない。加熱処理により容器が変形しない等耐熱性が高
くなると共に、透明性の低下が小さくなるため、高密度ポリエチレン(C)が上記20~
300重量部であることが好ましい。
【0056】
本発明の樹脂組成物は、前述の環状ポリオレフィン(A)、エチレン系重合体(B)、
高密度ポリエチレン(C)を、従来公知の方法、例えばヘンシェルミキサー、V-ブレン
ダー、リボンブレンダー、タンブラーブレンダー等で混合する方法、あるいはこのような
方法で得られた混合物をさらに一軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー
等で溶融混練した後、造粒することによって得ることができる。
【0057】
本発明の樹脂組成物には、本発明の効果を著しく損なわない範囲において、通常用いら
れる公知の添加剤、例えば酸化防止剤、中和剤、帯電防止剤、滑剤、アンチブロッキング
剤、防曇剤、有機系あるいは無機系の顔料、紫外線吸収剤、分散剤等を適宜必要に応じて
配合することができる。本発明に関わる樹脂組成物に上記の添加剤を配合する方法は特に
制限されるものではないが、例えば、重合後のペレット造粒工程で直接添加する方法、ま
た、予め高濃度のマスターバッチを作製し、これを成形時にドライブレンドする方法等が
挙げられる。
【0058】
また、本発明の樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない程度の範囲内で、高圧法低
密度ポリエチレン、エチレン-プロピレン共重合体ゴム、ポリ-1-ブテン等の他の熱可
塑性樹脂を配合して用いることもできる。
[5]フィルム及び該フィルムをシーラント層に用いたフィルム
本発明のフィルムは、上記樹脂組成物からなるものである。
【0059】
本発明のフィルムの厚みは特に限定されず、必要に応じて適宜決定することができるが
、通常は3~5000μm、好ましくは5~2000μmであり、医療用ないし食品用フ
ィルムとして用いる場合、その厚みは通常10~500μm、好ましくは20~300μ
mである。
【0060】
本発明のフィルムの製造方法は特に限定されないが、押出成形法、ブロー成形法、射出
成型法、カレンダー成形法、プレス成形法、インフレーション成形法等が挙げられる。
【0061】
本発明のフィルムの用途としては、医療関係全般に用いることができ、例えば輸液用フ
ィルム、血液用フィルムが挙げられる。また、本発明の樹脂組成物製フィルムは、食品関
係全般にも用いることができ、例えばレトルト容器用フィルム、シュリンクフィルムなど
の食品用フィルムが挙げられる。
【0062】
本発明のフィルムは、シーラント層に用いることができる。
【発明の効果】
【0063】
本発明の樹脂組成物は衝撃強度が高く、フィルムにした場合、耐衝撃性に優れ、かつ高
い透明性を維持させることができる。また、本発明の樹脂組成物は、フィルムにした場合
、滅菌後にも易剥離シール性を発現させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【
図1】本発明の複室容器の一例を示す平面図である。
【
図2】ヒートシール温度とシール強度の関係の一例として比較例21の結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0065】
10 円筒状インフレフィルムから作製した複室容器
11 易剥離シール部
12 周縁強シール部
13 易剥離シール部で区画された収容室
【実施例】
【0066】
以下に、実施例を示して本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により
制限されるものではない。
A.樹脂
実施例、比較例に用いた樹脂の諸性質は下記の方法により評価した。
【0067】
<分子量、分子量分布>
重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量と数平均分子量の比
(Mw/Mn)およびピークトップ分子量(Mp)は、GPCによって測定した。GPC
装置(東ソー(株)製(商品名)HLC-8121GPC/HT)およびカラム(東ソー
(株)製(商品名)TSKgel GMHhr-H(20)HT)を用い、カラム温度を
140℃に設定し、溶離液として1,2,4-トリクロロベンゼンを用いて測定した。測
定試料は1.0mg/mlの濃度で調製し、0.3ml注入して測定した。分子量の検量
線は、分子量既知のポリスチレン試料を用いて校正した。なお、MwおよびMnは直鎖状
ポリエチレン換算の値として求めた。
【0068】
<分子量分別>
分子量分別は、カラムとしてガラスビーズ充填カラム(直径:21mm、長さ:60c
m)を用い、カラム温度を130℃に設定して、サンプル1gをキシレン30mLに溶解
させたものを注入する。次に、キシレン/2-エトキシエタノールの比率が5/5のもの
を展開溶媒として用い、留出物を除去する。その後、キシレンを展開溶媒として用い、カ
ラム中に残った成分を留出させ、ポリマー溶液を得る。得られたポリマー溶液に5倍量の
メタノールを添加しポリマー分を沈殿させ、ろ過および乾燥することにより、Mnが10
万以上である成分を回収した。
【0069】
<長鎖分岐>
長鎖分岐数は、日本電子(株)製JNM-GSX400型核磁気共鳴装置を用いて、1
3C-NMRによってヘキシル基以上の分岐数を測定した。溶媒はベンゼン-d6/オル
トジクロロベンゼン(体積比30/70)である。主鎖メチレン炭素(化学シフト:30
ppm)1,000個当たりの個数として、α-炭素(34.6ppm)およびβ-炭素
(27.3ppm)のピークの平均値から求めた。
【0070】
<密度>
密度は、JIS K6922-1に準拠して密度勾配管法で測定した。
【0071】
<MFR>
MFRは、JIS K6922-1に準拠して測定を行った。
【0072】
<溶融張力>
溶融張力の測定用試料は、サンプルに耐熱安定剤(チバスペシャリティケミカルズ社製
、イルガノックス1010TM;1,500ppm、イルガフォス168TM;1,50
0ppm)を添加したものを、インターナルミキサー(東洋精機製作所製、商品名ラボプ
ラストミル)を用いて、窒素気流下、190℃、回転数30rpmで30分間混練したも
のを用いた。
【0073】
溶融張力の測定は、バレル直径9.55mmの毛管粘度計(東洋精機製作所、商品名キ
ャピログラフ)に、長さが8mm,直径が2.095mmのダイスを流入角が90°にな
るように装着し測定した。温度を160℃に設定し、ピストン降下速度を10mm/分、
延伸比を47に設定し、引き取りに必要な荷重(mN)を溶融張力とした。最大延伸比が
47未満の場合、破断しない最高の延伸比での引き取りに必要な荷重(mN)を溶融張力
とした。
【0074】
実施例、比較例では、下記の方法により製造した樹脂および市販品を用いた。
(1)環状ポリオレフィン
下記市販品を用いた。
【0075】
(A)-1:三井化学(株) (商品名)アペル APL6509T([MFR(AS
TM D1238 (260℃、21.18N))]=30g/10min)
(A)-2:日本ゼオン(株)製 (商品名)Zeonor 1020R([MFR(
ISO 1133 (280℃、21.2N))]=20g/10min)
(A)-3:TOPAS Advanced Polymers製 (商品名)TOP
AS 9506F-04 ([MVR(ISO 1133 (230℃、21.18N)
)]=6g/10min)
(A)-4:TOPAS Advanced Polymers製 (商品名)TOP
AS 8007F-04 ([MVR(ISO 1133 (230℃、21.18N)
)]=12g/10min)
(2)エチレン系重合体
下記の製造方法で得られたもの又は市販品を用いた。
【0076】
(B)-1:下記の製造方法で得られた。
[変性粘土の調製]
1Lのフラスコに工業用アルコール(日本アルコール販売社製(商品名)エキネンF-
3)300mL及び蒸留水300mLを入れ、濃塩酸18.8g及びジメチルヘキサコシ
ルアミン(Me2N(C26H53)、常法によって合成)49.1g(120mmol
)を添加し、45℃に加熱して合成ヘクトライト(Rockwood Additive
s社製(商品名)ラポナイトRDS)を100g分散させた後、60℃に昇温させてその
温度を保持したまま1時間攪拌した。このスラリーを濾別後、60℃の水600mLで2
回洗浄し、85℃の乾燥機内で12時間乾燥させることにより140gの有機変性粘土を
得た。この有機変性粘土はジェットミル粉砕して、メジアン径を14μmとした。
[重合触媒の調製]
温度計と還流管が装着された300mLのフラスコを窒素置換した後に[変性粘土の調
製]で得られた有機変性粘土25.0gとヘキサンを108mL入れ、次いでジメチルシ
リレン(シクロペンタジエニル)(2、4,7-トリメチル-1-インデニル)ジルコニ
ウムジクロリドを0.4406g、及び20%トリイソブチルアルミニウム142mLを
添加して60℃で3時間攪拌した。45℃まで冷却した後に上澄み液を抜き取り、200
mLのヘキサンにて5回洗浄後、ヘキサンを200ml加えて触媒懸濁液を得た(固形重
量分:12.0重量%)
[(B)-1の製造]
2Lのオートクレーブにヘキサンを1.2L、20%トリイソブチルアルミニウムを1
.0mL、[重合触媒の調製]で得られた触媒懸濁液を75mg(固形分9.0mg相当
)加え、80℃に昇温後、1-ブテンを8.3g加え、分圧が0.85MPaになるよう
にエチレン/水素混合ガスを連続的に供給した(エチレン/水素混合ガス中の水素の濃度
:850ppm)。90分経過後に脱圧し、スラリーを濾別後、乾燥することで58.5
gのポリマーを得た。得られたポリマーのMFRは4.0g/10分、密度は941kg
/m3であった。また、数平均分子量は21,200、重量平均分子量は74,000で
あり、分子量41,500および217,100の位置にピークが観測された。また、分
子量分別した際のMn10万以上のフラクション中に含まれる長鎖分岐数は、主鎖100
0炭素数あたり0.18個であった。また、分子量分別した際のMn10万以上のフラク
ションの割合は、全ポリマーの14.8重量%であった。また、溶融張力は49mNであ
った。評価結果を表1に示す。
【0077】
(B)-2:下記の製造方法で得られた。
[変性粘土の調製]
1Lのフラスコに工業用アルコール(日本アルコール販売社製(商品名)エキネンF-
3)300mL及び蒸留水300mLを入れ、濃塩酸17.5g及びジメチルベヘニルア
ミン(ライオン株式会社製(商品名)アーミンDM22D)49.4g(140mmol
)を添加し、45℃に加熱して合成ヘクトライト(Rockwood Additive
s社製(商品名)ラポナイトRDS)を100g分散させた後、60℃に昇温させてその
温度を保持したまま1時間攪拌した。このスラリーを濾別後、60℃の水600mLで2
回洗浄し、85℃の乾燥機内で12時間乾燥させることにより132gの有機変性粘土を
得た。この有機変性粘土はジェットミル粉砕して、メジアン径を15μmとした。
[重合触媒の調製]
温度計と還流管が装着された300mLのフラスコを窒素置換した後に[変性粘土の調
製]で得られた有機変性粘土25.0gとヘキサンを108mL入れ、次いでジメチルシ
リレン(シクロペンタジエニル)(2,4,7-トリメチルインデニル)ジルコニウムジ
クロリドを0.4406g、及び20%トリイソブチルアルミニウム142mLを添加し
て60℃で3時間攪拌した。45℃まで冷却した後に上澄み液を抜き取り、200mLの
ヘキサンにて5回洗浄後、ヘキサンを200ml加えて触媒懸濁液を得た(固形重量分:
12.4重量%)。
[(B)-2の製造]
2Lのオートクレーブにヘキサンを1.2L、20%トリイソブチルアルミニウムを1
.0mL、[重合触媒の調製]で得られた触媒懸濁液を52mg(固形分6.4mg相当
)加え、70℃に昇温後、1-ブテンを17.6g加え、分圧が0.80MPaになるよ
うにエチレン/水素混合ガスを連続的に供給した(エチレン/水素混合ガス中の水素の濃
度:590ppm)。90分経過後に脱圧し、スラリーを濾別後、乾燥することで61.
8gのポリマーを得た。得られたポリマーのMFRは1.6g/10分、密度は930k
g/m3であった。また、数平均分子量は17,600、重量平均分子量は86,700
であり、分子量30,500および155,300の位置にピークが観測された。また、
分子量分別した際のMn10万以上のフラクション中に含まれる長鎖分岐数は、主鎖10
00炭素数あたり0.27個であった。また、分子量分別した際のMn10万以上のフラ
クションの割合は、全ポリマーの20.1重量%であった。また、溶融張力は75mNで
あった。評価結果を表1に示す。
【0078】
(B)-3:下記の製造方法で得られた。
[変性粘土の調製]
1Lのフラスコに工業用アルコール(日本アルコール販売社製(商品名)エキネンF-
3)300mL及び蒸留水300mLを入れ、濃塩酸15.0g及びジメチルベヘニルア
ミン(ライオン株式会社製(商品名)アーミンDM22D)42.4g(120mmol
)を添加し、45℃に加熱して合成ヘクトライト(Rockwood Additive
s社製(商品名)ラポナイトRDS)を100g分散させた後、60℃に昇温させてその
温度を保持したまま1時間攪拌した。このスラリーを濾別後、60℃の水600mLで2
回洗浄し、85℃の乾燥機内で12時間乾燥させることにより122gの有機変性粘土を
得た。この有機変性粘土はジェットミル粉砕して、メジアン径を15μmとした。
[重合触媒の調製]
温度計と還流管が装着された300mLのフラスコを窒素置換した後に[変性粘土の調
製]で得られた有機変性粘土25.0gとヘキサンを108mL入れ、次いでジメチルシ
リレン(シクロペンタジエニル)(2,4,7-トリメチル-1-インデニル)ジルコニ
ウムジクロリドを0.4406g、及び20%トリイソブチルアルミニウム142mLを
添加して60℃で3時間攪拌した。45℃まで冷却した後に上澄み液を抜き取り、200
mLのヘキサンにて5回洗浄後、ヘキサンを200ml加えて触媒懸濁液を得た(固形重
量分:11.5重量%)。
[(B)-3の製造]
2Lのオートクレーブにヘキサンを1.2L、20%トリイソブチルアルミニウムを1
.0mL、[重合触媒の調製]で得られた触媒懸濁液を70mg(固形分8.4mg相当
)加え、80℃に昇温後、1-ブテンを2.4g加え、分圧が0.90MPaになるよう
にエチレン/水素混合ガスを連続的に供給した(エチレン/水素混合ガス中の水素の濃度
:720ppm)。90分経過後に脱圧し、スラリーを濾別後、乾燥することで63.0
gのポリマーを得た。得られたポリマーのMFRは11.5g/10分、密度は954k
g/m3であった。また、数平均分子量は16,200、重量平均分子量は58,400
であり、分子量28,200および181,000の位置にピークが観測された。また、
分子量分別した際のMn10万以上のフラクション中に含まれる長鎖分岐数は、主鎖10
00炭素数あたり0.16個であった。また、分子量分別した際のMn10万以上のフラ
クションの割合は、全ポリマーの6.8重量%であった。また、溶融張力は38mNであ
った。評価結果を表1に示す。
【0079】
(B)-4:下記の製造方法で得られた。
[変性粘土の調製]
1Lのフラスコに工業用アルコール(日本アルコール販売社製(商品名)エキネンF-
3)300mL及び蒸留水300mLを入れ、濃塩酸20.0g及びジメチルベヘニルア
ミン(ライオン株式会社製(商品名)アーミンDM22D)56.5g(160mmol
)を添加し、45℃に加熱して合成ヘクトライト(Rockwood Additive
s社製(商品名)ラポナイトRDS)を100g分散させた後、60℃に昇温させてその
温度を保持したまま1時間攪拌した。このスラリーを濾別後、60℃の水600mLで2
回洗浄し、85℃の乾燥機内で12時間乾燥させることにより145gの有機変性粘土を
得た。この有機変性粘土はジェットミル粉砕して、メジアン径を15μmとした。
[重合触媒の調製]
温度計と還流管が装着された300mLのフラスコを窒素置換した後に(1)で得られ
た有機変性粘土25.0gとヘキサンを108mL入れ、次いでジメチルシリレン(シク
ロペンタジエニル)(2,4,7-トリメチル-1-インデニル)ジルコニウムジクロリ
ドを0.4406g、及び20%トリイソブチルアルミニウム142mLを添加して60
℃で3時間攪拌した。45℃まで冷却した後に上澄み液を抜き取り、200mLのヘキサ
ンにて5回洗浄後、ヘキサンを200ml加えて触媒懸濁液を得た(固形重量分:11.
2重量%)。
[(B)-4の製造]
2Lのオートクレーブにヘキサンを1.2L、20%トリイソブチルアルミニウムを1
.0mL、[重合触媒の調製]で得られた触媒懸濁液を74mg(固形分8.3mg相当
)加え、65℃に昇温後、1-ブテンを17.5g加え、分圧が0.75MPaになるよ
うにエチレン/水素混合ガスを連続的に供給した(エチレン/水素混合ガス中の水素の濃
度:570ppm)。90分経過後に脱圧し、スラリーを濾別後、乾燥することで51.
5gのポリマーを得た。得られたポリマーのMFRは0.8g/10分、密度は928k
g/m3であった。また、数平均分子量は17,900、重量平均分子量は99,300
であり、分子量28,100および229,100の位置にピークが観測された。また、
分子量分別した際のMn10万以上のフラクション中に含まれる長鎖分岐数は、主鎖10
00炭素数あたり0.26個であった。また、分子量分別した際のMn10万以上のフラ
クションの割合は、全ポリマーの25.4重量%であった。また、溶融張力は90mNで
あった。評価結果を表1に示す。
【0080】
(B)-5:下記の製造方法で得られた。
[変性粘土の調製]
1Lのフラスコに工業用アルコール(日本アルコール販売社製(商品名)エキネンF-
3)300mL及び蒸留水300mLを入れ、濃塩酸15.0g及びジメチルベヘニルア
ミン(ライオン株式会社製(商品名)アーミンDM22D)42.4g(120mmol
)を添加し、45℃に加熱して合成ヘクトライト(Rockwood Additive
s社製(商品名)ラポナイトRDS)を100g分散させた後、60℃に昇温させてその
温度を保持したまま1時間攪拌した。このスラリーを濾別後、60℃の水600mLで2
回洗浄し、85℃の乾燥機内で12時間乾燥させることにより122gの有機変性粘土を
得た。この有機変性粘土はジェットミル粉砕して、メジアン径を15μmとした。
[重合触媒の調製]
温度計と還流管が装着された300mLのフラスコを窒素置換した後に[変性粘土の調
製]で得られた有機変性粘土25.0gとヘキサンを108mL入れ、次いでジメチルシ
リレン(シクロペンタジエニル)(2,4,7-トリメチル-1-インデニル)ジルコニ
ウムジクロリドを0.4406g、及び20%トリイソブチルアルミニウム142mLを
添加して60℃で3時間攪拌した。45℃まで冷却した後に上澄み液を抜き取り、200
mLのヘキサンにて5回洗浄後、ヘキサンを200ml加えて触媒懸濁液を得た(固形重
量分:11.5重量%)。
[(B)-5の製造]
2Lのオートクレーブにヘキサンを1.2L、20%トリイソブチルアルミニウムを1
.0mL、[重合触媒の調製]で得られた触媒懸濁液を90mg(固形分10.4mg相
当)加え、65℃に昇温後、1-ブテンを17.5g加え、分圧が0.75MPaになる
ようにエチレン/水素混合ガスを連続的に供給した(エチレン/水素混合ガス中の水素の
濃度:550ppm)。90分経過後に脱圧し、スラリーを濾別後、乾燥することで61
.4gのポリマーを得た。得られたポリマーのMFRは0.08g/10分、密度は92
6kg/m3であった。また、数平均分子量は21,900、重量平均分子量は127,
000であり、分子量31,300および247,800の位置にピークが観測された。
また、分子量分別した際のMn10万以上のフラクション中に含まれる長鎖分岐数は、主
鎖1000炭素数あたり0.32個であった。また、分子量分別した際のMn10万以上
のフラクションの割合は、全ポリマーの36.9重量%であった。また、溶融張力は14
0mNであった。評価結果を表1に示す。
【0081】
(B)-6:下記の製造方法で得られた。
[変性粘土の調製]
1Lのフラスコに工業用アルコール(日本アルコール販売社製(商品名)エキネンF-
3)300mL及び蒸留水300mLを入れ、濃塩酸15.0g及びジメチルベヘニルア
ミン(ライオン株式会社製(商品名)アーミンDM22D)42.4g(120mmol
)を添加し、45vに加熱して合成ヘクトライト(Rockwood Additive
s社製(商品名)ラポナイトRDS)を100g分散させた後、60℃に昇温させてその
温度を保持したまま1時間攪拌した。このスラリーを濾別後、60℃の水600mLで2
回洗浄し、85℃の乾燥機内で12時間乾燥させることにより122gの有機変性粘土を
得た。この有機変性粘土はジェットミル粉砕して、メジアン径を15μmとした。
[重合触媒の調製]
温度計と還流管が装着された300mLのフラスコを窒素置換した後に[変性粘土の調
製]で得られた有機変性粘土25.0gをヘキサン165mLに懸濁させ、ジメチルシラ
ンジイルビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド0.3485gおよびト
リエチルアルミニウムのヘキサン溶液(1.18M)85mLを添加して60℃で3時間
撹拌した。静置して室温まで冷却後に上澄み液を抜き取り、1%トリイソブチルアルミニ
ウムのヘキサン溶液200mLにて2回洗浄した。洗浄後の上澄み液を抜き出し、5%ト
リイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液にて全体を250mLとした。次いで、別途ジ
フェニルメチレン(1-シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-tert-ブチル-9-
フルオレニル)ジルコニウムジクロライド0.1165gのヘキサン10mL懸濁液に2
0%トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液(0.71M)5mlを加えることによ
り調製した溶液を添加して、室温で6時間撹拌した。静置して上澄み液を除去、ヘキサン
200mLにて2回洗浄後、ヘキサンを200mL加えて触媒懸濁液を得た(固形重量分
:12.0重量%)。
[(B)-6の製造]
2Lのオートクレーブにヘキサンを1.2L、20%トリイソブチルアルミニウムを1
.0mL、[重合触媒の調製]で得られた触媒懸濁液を125mg(固形分15.0mg
相当)加え、85℃に昇温後、1-ブテンを2.4g加え、分圧が0.90MPaになる
ようにエチレンを連続的に供給した。90分経過後に脱圧し、スラリーを濾別後、乾燥す
ることで45.0gのポリマーを得た。得られたポリマーのMFRは4.4g/10分で
あり、密度は951kg/m3であった。数平均分子量は9,100、重量平均分子量は
77,100であり、分子量10,400および168,400の位置にピークが観測さ
れた。また、分子量分別した際のMn10万以上のフラクション中に含まれる長鎖分岐数
は、主鎖1000炭素数あたり0.24個であった。また、分子量分別した際のMn10
万以上のフラクションの割合は、全ポリマーの15.7重量%であった。また、溶融張力
210mNであった。評価結果を表1に示す。
(S)-1:下記市販品を用いた。
【0082】
東ソー(株)製、(商品名)ペトロセン 219(MFR=3.0g/10分、密度=
934kg/m3)(S)-1の基本特性評価結果を表1に示す。
【0083】
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
【0088】
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】
【0093】
【0094】