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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】製氷機および製氷システム
(51)【国際特許分類】
   F25C 1/22 20180101AFI20230711BHJP
   F25C 1/12 20060101ALI20230711BHJP
   F25C 1/25 20180101ALI20230711BHJP
   F25D 19/00 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
F25C1/22 301A
F25C1/12 Z
F25C1/12 301Z
F25C1/25 A
F25C1/25 303A
F25D19/00 522D
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019033375
(22)【出願日】2019-02-26
(65)【公開番号】P2019148412
(43)【公開日】2019-09-05
【審査請求日】2022-02-10
(31)【優先権主張番号】P 2018032526
(32)【優先日】2018-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 発行所名:一般社団法人近畿冷凍空調工業会 刊行物名:近冷工これからの技術情報 第7号p46~p49 発行日:平成30年1月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000148357
【氏名又は名称】株式会社前川製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】391043505
【氏名又は名称】アイスマン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100211122
【弁理士】
【氏名又は名称】白石 卓也
(72)【発明者】
【氏名】神戸 雅範
(72)【発明者】
【氏名】山岡 弘明
(72)【発明者】
【氏名】横山 卓史
(72)【発明者】
【氏名】忽那 都志夫
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 伸之介
(72)【発明者】
【氏名】秋山 知昭
【審査官】森山 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-172416(JP,A)
【文献】特開2000-337668(JP,A)
【文献】実開昭57-145965(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25C 1/22
F25C 1/12
F25C 1/25
F25D 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製氷するための冷媒として液化炭酸ガスを用いた製氷機であって、
前記冷媒が循環する冷媒通路が内部に形成され、上方に起立して配置された製氷板と、
前記製氷板の上方から前記製氷板の表面に冷水を散水する散水機構と、
前記製氷板の裏面に熱媒を供給する熱媒供給機構と、
前記冷媒を循環させる冷媒循環機構と、を備え、
前記冷媒循環機構は、
前記冷媒を貯留するレシーバタンクと、
前記レシーバタンクに貯留されている前記冷媒を前記製氷板の上部に導入するポンプと、を備え、
前記熱媒供給機構は、
前記製氷板の前記裏面の上部に前記熱媒を供給する第一熱媒供給手段と、
前記製氷板の前記裏面の上下中央部に前記熱媒を供給する第二熱媒供給手段とを備えることを特徴とする製氷機。
【請求項2】
前記製氷板として、水平方向で互いに対向する第一製氷板と第二製氷板とが設けられ、
前記第一製氷板は、鉛直面に沿う第一表面を有し、
前記第二製氷板は、鉛直面に沿い、水平方向で前記第一表面とは反対側に配置された第二表面を有し、
前記散水機構は、
前記第一表面に散水する第一散水手段と、
前記第二表面に散水する第二散水手段と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の製氷機。
【請求項3】
前記第一製氷板は、水平方向で前記第一表面とは反対側に配置された第一裏面を有し、
前記第二製氷板は、水平方向で前記第二表面とは反対側に配置され、前記第一裏面と間隔をあけて対向する第二裏面を有し、
前記熱媒供給機構は、前記第一裏面と前記第二裏面とに前記熱媒を供給することを特徴とする請求項2に記載の製氷機。
【請求項4】
前記散水機構から散布された前記冷水を循環させる冷水循環ラインと、
前記冷水循環ラインとは別個独立に設けられ、前記熱媒供給機構から供給された前記熱媒を循環させる熱媒循環ラインと、を更に備えることを特徴とする請求項3に記載の製氷機。
【請求項5】
前記レシーバタンクは、前記製氷板の下方に配置されていることを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の製氷機。
【請求項6】
前記製氷板の前記表面に所定量の氷を作るために必要な基準熱量以上の熱量を有する前記冷媒を前記製氷板の内部に循環させるように前記ポンプを制御する制御部を更に備えることを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の製氷機。
【請求項7】
請求項1からのいずれか一項に記載の製氷機と、
前記レシーバタンクに貯留されている前記冷媒を冷却する冷凍機と、を備えることを特徴とする製氷システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製氷機および製氷システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷媒や寒剤によって冷却された製氷板の表面に散水することにより氷を生成し、一定の厚さまで氷を成長させた後、製氷板を加温することにより脱氷を行う製氷システムが知られている。
例えば、特許文献1には、製氷板内を液冷媒が循環する液循環方式の製氷システムが開示されている。特許文献1の製氷システムでは、冷媒としてフロンを用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6215742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、冷媒としてフロンを用いた製氷システムにおいては、省エネルギー化を図りつつ、高品質の氷を作る上で改善の余地があった。
すなわち、冷媒としてフロンを用いた直膨方式(以下「フロン直膨方式」ともいう。)においては、冷媒に含まれる冷凍機油が伝熱を阻害するため伝熱効率が落ちるおそれがある。加えて、フロン直膨方式は過熱度をとる必要があり製氷板の冷媒出口に向かうにつれて冷媒が気化するため、製氷板の冷媒入口と冷媒出口で温度差が生じ、製氷ムラの原因となる。加えて、フロン直膨方式においては、冷凍機油が製氷板内に留まるため伝熱面積が減少する可能性が高い。
【0005】
フロン直膨方式の他に、プロピレングリコールやエチレングリコール等のブライン(以下「ブライン」ともいう。)を用いた製氷システムが知られている。しかし、ブラインは粘弾性が高いため製氷板内での圧力損失が大きくなりやすい。製氷板内での圧力損失が大きくなると、製氷板内で偏流しやすくなるため流量を大きくする必要があり、搬送動力が増大する。加えて、ブラインは毒性があるため食品に用いる氷等には適さない。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明は、省エネルギー化を図りつつ、高品質の氷を作ることが可能な製氷機および製氷システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る製氷機は、製氷するための冷媒として液化炭酸ガスを用いた製氷機であって、前記冷媒が循環する冷媒通路が内部に形成され、上方に起立して配置された製氷板と、前記製氷板の上方から前記製氷板の表面に冷水を散水する散水機構と、前記製氷板の裏面に熱媒を供給する熱媒供給機構と、前記冷媒を循環させる冷媒循環機構とを備え、前記冷媒循環機構は、前記冷媒を貯留するレシーバタンクと、前記レシーバタンクに貯留されている前記冷媒を前記製氷板の上部に導入するポンプとを備え、前記熱媒供給機構は、前記製氷板の裏面の上部に前記熱媒を供給する第一熱媒供給手段と、前記製氷板の裏面の上下中央部に前記熱媒を供給する第二熱媒供給手段とを備えることを特徴とする。なお、液化炭酸ガスを用いる場合、フロンなどの冷媒と区別するために、これを寒剤ともいう。本明細書では便宜的に、液化炭酸ガス等も冷媒と称する。
【0008】
この構成によれば、製氷するための冷媒として液化炭酸ガスを用いることで、フロン直膨方式と異なり、製氷板の内部に冷凍機油が循環しないため、製氷板の伝熱性能が落ちない。加えて、製氷機の内部には液化炭酸ガスが循環することで、フロン直膨方式と異なり、製氷板の内部は過熱度がゼロの状態になるため、製氷板の伝熱性能がフロン直膨方式より向上する。このように製氷板の伝熱性能が向上することにより、省エネルギー化を図ることができる。加えて、フロン直膨方式と異なり、製氷板の上部および下部において氷の厚みを均一にすることができる。これは、液化炭酸ガスの潜熱を利用する方式なので製氷板の上部と下部とで温度差が生じない(均一温度となる)ためである。加えて、フロン直膨方式と異なり、氷の透明度を高くすることができる。この理由として、液化炭酸ガスの潜熱を利用するため製氷面に氷が生成される際の凍結速度が遅いこと、また製氷板の上部と下部とが均一温度となったことで水流の乱れが少なくなり気泡が発生しづらくなったことが挙げられる。凍結速度が遅く、水流の乱れが少ないほど氷中に取り込まれる気泡が少なくなる。したがって、気泡の混入量が少ない透明度の高い高品質の氷を作ることができる。さらに、冷媒としてフロンを用いる従来技術では、冷媒が圧縮と膨張を繰り返すため、圧縮機潤滑剤の冷凍機油が混入し伝熱性能を低下させる。これに対し、本発明では、二次冷媒(寒剤)としてCOを用いることにより、圧縮と膨張を経ずに熱交換による液化・気化を繰り返すため、CO冷媒(寒剤)に冷凍機油が混入せず、伝熱性能の低下を防ぐことができる。
【0009】
加えて、散水機構により、製氷板の上方から製氷板の表面に散水することで、製氷板の表面上部から表面下部にわたって水が伝わるため、製氷板の表面全体に一定の厚みの氷を作ることができる。
加えて、冷媒を貯留するレシーバタンクを備えることで、レシーバタンクを製氷機の外部に別個独立に設けた構成と比較して、冷媒を製氷機の内部に溜めておくことができるため、冷媒の使用量を削減することができる。加えて、レシーバタンクと製氷機とを接続する配管等をコンパクトにすることができるため、製氷機の小型化を図ることができる。
加えて、ポンプにより、レシーバタンクに貯留されている冷媒が製氷板の上部に導入されることで、製氷板の上部に導入された冷媒は、重力の作用により製氷板の内部を下方に流れる。製氷板の内部を下方に流れた冷媒をレシーバタンクに戻すことにより、製氷板の内部に冷媒を自動的に循環させることができる。この際、液化炭酸ガスはブラインと比較して粘弾性が低いためポンプにかかる動力を小さくすることができる。
【0010】
本発明の一態様において、前記製氷板として、水平方向で互いに対向する第一製氷板と第二製氷板とが設けられ、前記第一製氷板は、鉛直面に沿う第一表面を有し、前記第二製氷板は、鉛直面に沿い、水平方向で前記第一表面とは反対側に配置された第二表面を有し、前記散水機構は、前記第一表面に散水する第一散水手段と、前記第二表面に散水する第二散水手段と、を備えていてもよい。
この構成によれば、第一製氷板および第二製氷板のそれぞれの表面に一定の厚みの氷を作ることができるため、一つの製氷板のみを備えた構成と比較して、単位時間当たりの製氷能力が向上する。
【0011】
本発明の一態様において、前記第一製氷板は、水平方向で前記第一表面とは反対側に配置された第一裏面を有し、前記第二製氷板は、水平方向で前記第二表面とは反対側に配置され、前記第一裏面と間隔をあけて対向する第二裏面を有し、前記熱媒供給機構は、前記第一裏面と前記第二裏面とに熱媒を供給してもよい。
この構成によれば、第一製氷板および第二製氷板のそれぞれの裏面に熱媒を供給することにより、第一製氷板および第二製氷板が加温されるため、第一製氷板および第二製氷板から氷を剥離し、氷を自重により落下させることができる。
【0012】
本発明の態様では、前記熱媒供給機構は、前記製氷板の上部に熱媒を供給する第一熱媒供給手段と、前記製氷板の上下中央部に熱媒を供給する第二熱媒供給手段とを備えている。熱媒供給手段が製氷板の上部のみに設けられた構成の場合、製氷板の上部に供給された熱媒が製氷板の裏面上部から裏面下部に伝わるまでに冷めてしまい、製氷板の下部を十分に加温できない可能性がある。これに対し、この構成によれば、第一熱媒供給手段および第二熱媒供給手段を備えることで、製氷板の上部および上下中央部のそれぞれに熱媒が供給されるため、製氷板の裏面下部に伝わる熱媒が冷め難くなり、製氷板の裏面全体を十分に加温することができる。
【0013】
本発明の一態様において、前記散水機構から散布された冷水を循環させる冷水循環ラインと、前記冷水循環ラインとは別個独立に設けられ、前記熱媒供給機構から供給された前記熱媒を循環させる熱媒循環ラインと、を更に備えていてもよい。
この構成によれば、冷水循環ラインと熱媒循環ラインとが別個独立に配置され、互いに交わることはないため、冷水および熱媒のそれぞれの温度管理が容易となる。
【0014】
本発明の一態様において、前記レシーバタンクは、前記製氷板の下方に配置されていてもよい。
この構成によれば、レシーバタンクと製氷機とを接続する配管等をより一層コンパクトにすることができるため、製氷機の小型化をより効果的に図ることができる。
【0015】
本発明の一態様において、前記製氷板の前記表面に所定量の氷を作るために必要な基準熱量以上の熱量を有する前記冷媒を前記製氷板の内部に循環させるように前記ポンプを制御する制御部を更に備えていてもよい。
この構成によれば、製氷板の表面において製氷負荷に応じた冷媒流量に調整できるため、製氷板の表面全体において氷の厚みを均一にしつつ、氷の透明度を高くすることができる。
【0016】
本発明の一態様に係る製氷システムは、上記製氷機と、前記レシーバタンクに貯留されている前記冷媒を冷却する冷凍機と、を備えることを特徴とする。
この構成によれば、上記製氷機を備えることで、省エネルギー化を図りつつ、高品質の氷を作ることが可能な製氷システムを提供することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、省エネルギー化を図りつつ、高品質の氷を作ることが可能な製氷機および製氷システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態に係る製氷システムの概略図。
図2】実施形態に係る製氷機の前面斜視図。
図3】実施形態に係る製氷機の後面斜視図。
図4】実施形態に係る製氷機の配管系統図。
図5】実施形態に係る製氷機の冷媒循環ラインの説明図。
図6】実施形態に係る製氷板対における冷媒循環ラインの説明図。
図7】実施形態に係る冷水循環ラインおよび温水循環ラインの説明図。
図8】実施形態に係る製氷板の前面図。
図9】実施形態に係る製氷板の表面の部分拡大図。
図10図9のX-X断面を含む図。
図11】実施形態に係る製氷板の部分斜視図。
図12】本発明の製氷システムの実施例で生成された氷の偏向顕微鏡写真。
図13】従来例のフロン直膨方式製氷システムで生成された氷の偏向顕微鏡写真。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。各図において、同一構成については同一の符号を付す。実施形態においては、製氷システムの一例として、液化炭酸ガスを冷却する冷媒としてアンモニア冷媒を用い、二次冷媒(寒剤ともいう)として液化炭酸ガスを用いた製氷システムを挙げて説明する。
【0020】
[製氷システム1]
図1に示すように、製氷システム1は、製氷するための冷媒として液化炭酸ガスを用いた製氷機2と、製氷機2に接続された冷凍機3と、を備える。
【0021】
冷凍機3は、アンモニア冷媒で液化炭酸ガスを冷却する間接冷却方式を採用する。冷凍機3は、アンモニア冷媒を液体から気体へ、また気体から液体に変化させる一連の繰り返し(冷凍サイクル)を行う。アンモニア冷媒は、液体が気体に変わるときに周囲から蒸発熱(気化熱)を奪い、気体から液体に変わるときに凝縮熱を排出する。図1において、符号4はアンモニア冷媒循環ライン(一次冷媒循環ライン)、符号5は蒸発器、符号6は圧縮機、符号7は凝縮器をそれぞれ示す。
【0022】
[製氷機2]
図2に示すように、製氷機2は、液化炭酸ガスが循環する冷媒通路15(図10参照)が内部に形成された複数の製氷板を有する製氷板群(製氷ユニット)10と、製氷板の表面に散水する散水機構20(図6参照)と、液化炭酸ガスを循環させる冷媒循環機構30(図4参照)と、製氷板の裏面に熱媒(加熱用の熱媒体)を供給する熱媒供給機構40(図6参照)と、製氷機2の構成要素を制御する制御盤50(制御部)と、製氷機2の構成要素を支持するフレーム60と、フレーム60を支持する脚部61と、を備える。複数の製氷板は、水平方向に間隔をあけて配置されている。
【0023】
以下の説明においては、上下方向のうち、脚部61側を下方、脚部61とは反対側を上方として説明する。また、上下方向に直交する方向において、制御盤50側を前方とし、制御盤50とは反対側を後方とする。また、上下方向および前後方向のそれぞれに直交する方向を左右方向とする。
【0024】
[製氷板群10]
図2に示すように、製氷板群10は、製氷機2の上部に配置されている。製氷板群10は、上方に起立して配置されている。製氷板群10は、前後方向に間隔をあけて配置された三つの製氷板対11を備える。
【0025】
図6に示すように、製氷板対11は、前後方向で対向する一対の製氷板12,13を備える。一対の製氷板12,13は、前後方向で互いに対向する第一製氷板12と第二製氷板13とである。
【0026】
第一製氷板12は、鉛直面に沿う第一表面12aと、前後方向で第一表面12aとは反対側に配置された第一裏面12bと、を有する。
第二製氷板13は、鉛直面に沿い、前後方向で第一表面12aとは反対側に配置された第二表面13aと、前後方向で第二表面13aとは反対側に配置され、第一裏面12bと間隔をあけて対向する第二裏面13bと、を有する。
第一製氷板12および第二製氷板13は、互いに同一の構造を有する。以下、第一製氷板12および第二製氷板13を総称して単に「製氷板」ともいう。
【0027】
[製氷板]
図8に示すように、製氷板12(図8では第一製氷板12を図示)は、互いに対向する一対のステンレス製の平板14(以下「ステンレス平板14」ともいう。)を備える(図10参照)。一対のステンレス平板14は、対向する面同士が千鳥状に配置された複数の円形状の接合部14a(以下「円形接合部14a」ともいう。)で接合されている(図9参照)。一対のステンレス平板14は、周縁部14b(図8参照)に沿って水密に接合されている。
【0028】
例えば、円形接合部14aの直径は5mm~15mm程度、円形接合部14aの中心間の間隔(中心間距離)は35mm~45mm程度とされている。図10の断面視で、円形接合部14aの周囲は外方に隆起し、円形接合部14aを底部とする多角形状の凹部を形成している。隣接する多角形状の凹部によって、製氷板の製氷面は波打った形状を有している。図11に示すように、円形接合部14aの周囲に形成された空間が冷媒通路15(液化炭酸ガスの流路)となる。
【0029】
図8に示すように、製氷板12の上端部の一側面には、製氷板12の内部に液化炭酸ガスを導入するための冷媒導入管16が設けられている。製氷板12の下端部の一側面には、製氷板12の内部から液化炭酸ガスを排出するための冷媒排出管17が設けられている。
【0030】
[散水機構20]
散水機構20は、製氷板の上方から製氷板の表面に散水する。図6に示すように、散水機構20は、第一表面12aに散水する第一散水手段21と、第二表面13aに散水する第二散水手段22と、散水するための冷水を貯留する冷水タンク23(図2参照)と、冷水タンク23に貯留されている冷水を冷水供給管24(図7参照)および散水ヘッダー25(図3参照)を通じて第一散水手段21および第二散水手段22のそれぞれに送る冷水ポンプ26(図2参照)と、を備える。図6において矢印W1は、第一散水手段21および第二散水手段22から製氷板の上部表面に向けて散布される冷水の散水方向を示す。
【0031】
図6に示すように、製氷板の上部表面に散布された冷水は、製氷板の表面に沿って製氷板の下部に向けて流れる。図7に示すように、製氷板の下部に流れた冷水は、ドレンパン51に流入し、ドレンパン51の底部上面51aに沿って流れ、冷水排出管27を介して冷水ポンプ26に戻る。冷水供給管24、ドレンパン51の底部上面51aおよび冷水排出管27は、散水手段21,22から供給された冷水を循環させる冷水循環ライン28を構成する。図7において符号W2は、冷水循環ライン28における冷水の流れを示す。
【0032】
[冷媒循環機構30]
図4に示すように、冷媒循環機構30は、液化炭酸ガスを貯留するレシーバタンク31と、レシーバタンク31に貯留されている液化炭酸ガスを製氷板の上部に導入するポンプ32と、レシーバタンク31とポンプ32とを接続するステンレス製の冷媒配管33と、を備える。冷媒配管33は、液化炭酸ガスを循環させる冷媒循環ライン34を構成する。
【0033】
[レシーバタンク31]
図2に示すように、レシーバタンク31は、製氷板(製氷板群10)の下方に配置されている。レシーバタンク31は、T字状をなしている。レシーバタンク31は、左右方向に直線状に延在する第一タンク31aと、第一タンク31aの左右中央部から下方に直線状に延在する第二タンク31bと、を備える。レシーバタンク31の上部(第一タンク31aの左部)は、接続配管35を介して冷凍機3(図1参照)に接続されている。冷凍機3は、レシーバタンク31に貯留されている液化炭酸ガス(二次冷媒、寒剤ともいう)を、アンモニア冷媒(一次冷媒)により冷却する。
【0034】
図4において、符号70はレシーバタンク31の上部(第一タンク31aの左部)に配管71を介して接続された圧力発信器、符号72は配管71上に設けられた止め弁、符号73はレシーバタンク31の上部(第一タンク31aの右部)に配管74を介して接続された安全弁、符号75は配管74上に設けられた止め弁、符号76はレシーバタンク31の下部(第二タンク31bの下端部)に接続されたドレン管、符号77はドレン管76上に設けられたボールバルブをそれぞれ示す。
【0035】
[ポンプ32]
図2に示すように、ポンプ32は、製氷機2の下部に配置されている。図4に示すように、ポンプ32は、レシーバタンク31に貯留されている液化炭酸ガスを、冷媒配管33、冷媒導入管16を介して製氷板(第一製氷板12および第二製氷板13)の上部に供給する。図5において矢印B1は、ポンプ32の作用によりレシーバタンク31の下部から製氷板の上部に向かう液化炭酸ガスの流れ(冷媒循環ライン34におけるレシーバタンク31から製氷板への液化炭酸ガスの導入方向)を示す。
【0036】
製氷板の上部に導入された液化炭酸ガスは、重力の作用により製氷板の内部を下方に流れる。製氷板の内部を下方に流れた液化炭酸ガスは、冷媒排出管17、冷媒配管33を介してレシーバタンク31に戻る。図5において矢印B2は、製氷板の下部からレシーバタンク31の上部に向かう液化炭酸ガスの流れ(製氷板からレシーバタンク31への液化炭酸ガスの排出方向)を示す。
【0037】
図4において、符号79は冷媒配管33上に設けられた止め弁、符号80は冷媒配管33上に設けられたストレーナ、符号81は冷媒配管33から分岐する配管82に接続された圧力発信器、符号83は配管82上に設けられた止め弁、符号84は冷媒配管33から分岐する配管85と冷媒配管33から分岐する配管86とに接続された差圧計、符号87は配管85上に設けられたボールバルブ、符号88は配管86上に設けられたボールバルブ、符号89は冷媒配管33から分岐してレシーバタンク31の上部(第一タンク31aの右部)に接続されたバイパス管、符号90はバイパス管89上に設けられた止め弁をそれぞれ示す。
【0038】
[熱媒供給機構40]
熱媒供給機構40は、製氷板の裏面に熱媒として温水を供給する。図6に示すように、熱媒供給機構40は、第一裏面12bと第二裏面13bとに温水を供給する。図7に示すように、熱媒供給機構40は、製氷板の上部に温水を供給する第一熱媒供給手段41と、製氷板12(図8では第一製氷板12を図示)の上下中央部に温水を供給する第二熱媒供給手段42と、温水を貯留する温水タンク43(図2参照)と、温水タンク43に貯留されている温水を、温水供給管44を通じて第一熱媒供給手段41および第二熱媒供給手段42のそれぞれに送る温水ポンプ45と、を備える。図6図7において矢印H1は、第一熱媒供給手段41および第二熱媒供給手段42から製氷板の裏面に向けて供給される温水の散布方向を示す。
【0039】
製氷板の裏面に向けて散布された温水は、製氷板の裏面に沿って製氷板の下部に向けて流れる。図7に示すように、製氷板の下部に流れた温水は、製氷板対11の底部上面11aに沿って流れ、温水排出管46を介して温水タンク43(図2参照)に戻り、温水ポンプ45によって温水供給管44へと供給される。温水供給管44、製氷板対11の底部上面11aおよび温水排出管46は、熱媒供給手段41,42から供給された温水を循環させる温水循環ライン47(熱媒循環ライン)を構成する。温水循環ライン47は、冷水循環ライン28とは別個独立に設けられている。
【0040】
図7において矢印H2は、温水循環ライン47における温水の流れを示す。図7において、温水循環ライン47における製氷板対11の底部上面11aに沿う温水の流れ方向H2と、冷水循環ライン28におけるドレンパン51の底部上面51aに沿う冷水の流れ方向W2とは、互いに反対方向に指向している。
【0041】
例えば、製氷板対11の底部上面11aは、温水の流れ方向H2の下流側(図7の紙面左側)ほど下方に位置するように傾斜していてもよい。これにより、製氷板対11の底部上面11aを流れる温水を温水ポンプ45に向けてスムーズに流すことができる。
【0042】
例えば、ドレンパン51の底部上面51aは、冷水の流れ方向W2の下流側(図7の紙面右側)ほど下方に位置するように傾斜していてもよい。これにより、ドレンパン51の底部上面51aを流れる温水を冷水ポンプ26に向けてスムーズに流すことができる。
【0043】
[制御盤50]
図2に示すように、制御盤50は、製氷機2の上部前側に配置されている。制御盤50は、製氷板の表面に所定量の氷を作るために必要な基準熱量以上の熱量を有する液化炭酸ガスを製氷板の内部に循環させるようにポンプ32を制御する。例えば、制御盤50は、一つの製氷板対11の両表面(図6に示す第一表面12aおよび第二表面13aの両面)に24時間当たり合計1000kg(三つの製氷板対11を備える製氷板群10全体で24時間当たり3000kg)の氷を作るために必要な基準熱量の1倍以上3倍以下の熱量を有する液化炭酸ガスを製氷板の内部に循環させるようにポンプ32を制御する。例えば、液化炭酸ガスの熱量の上限値は、ポンプ32に過度の負荷がかからない範囲で設定する。より好ましくは、液化炭酸ガスの熱量は、前記基準熱量の1.9倍以上2.1倍以下の熱量とする。実施形態においては、液化炭酸ガスの熱量は、前記基準熱量の2倍程度の熱量とする。
【0044】
[製氷方法]
以下、実施形態に係る製氷システム1を用いて製氷を行う方法の一例を説明する。製氷システム1の各動作は、制御盤50により制御される。
まず、制御盤50は、ポンプ32に、レシーバタンク31に貯留されている液化炭酸ガスを製氷板の上部に導入させる。液化炭酸ガスの導入は、各製氷板12,13のそれぞれに行う(図5参照)。
加えて、制御盤50は、冷凍機3に、レシーバタンク31に貯留されている液化炭酸ガスを冷却させる。例えば、液化炭酸ガスの冷却温度は、-12℃以上-10℃以下の温度とする。
【0045】
次に、制御盤50は、散水機構20に、製氷板12、13の上方から製氷板12,13の表面12a,13aに散水させる(図6参照)。これにより、製氷板12,13の表面12a,13a(製氷面)が氷結し、一定の厚みに成長する。
【0046】
制御盤50は、製氷面上の氷が一定の厚みに成長した後、ポンプ32の駆動を停止する。これにより、製氷板の内部に導入されている液化炭酸ガスは重力の作用により下方に流れ、冷媒排出管17を通じて排出される(図5参照)。
【0047】
制御盤50は、製氷板の内部の液化炭酸ガスが排出された後、熱媒供給機構40に、製氷板12,13の裏面12b,13bに温水を供給させる(図6参照)。これにより、製氷板が加温され、製氷板から板状のプレートアイス(不図示)が剥離し、自重により落下する(脱氷)。例えば、温水の温度は、30℃程度の温度とする。
【0048】
実施形態の製氷板は、一対のステンレス平板14が複数の円形接合部14aで接合されることで形成されているため、複数の円形接合部14aを通じて温水の熱を製氷面側に伝えることができる(図10参照)。加えて、製氷板および冷媒配管33のそれぞれがステンレス製であることで、冷媒としてフロンよりも圧力が高い液化炭酸ガスを用いた場合でも、十分な耐圧性能を確保することができる。
【0049】
脱氷は、製氷板対11ごとに順次行われる。
製氷板から落下したプレートアイスは、製氷板の下方に配置されたスクリューコンベア(不図示)により破砕されて次工程に搬送される。図3において符号52は、スクリューコンベアを駆動するためのクラッシャーモーターを示す。
【0050】
以上説明したように、上記実施形態に係る製氷機2は、製氷するための冷媒として液化炭酸ガスを用いた製氷機2であって、冷媒が循環する冷媒通路15が内部に形成され、上方に起立して配置された製氷板と、製氷板の上方から製氷板の表面に散水する散水機構20と、冷媒を循環させる冷媒循環機構30と、を備え、冷媒循環機構30は、冷媒を貯留するレシーバタンク31と、レシーバタンク31に貯留されている冷媒を製氷板の上部に導入するポンプ32と、を備える。
【0051】
この構成によれば、製氷するための冷媒として液化炭酸ガスを用いることで、フロン直膨方式と異なり、製氷板の内部に冷凍機油が循環しないため、製氷板の伝熱性能が向上する。加えて、製氷機2の内部には液化炭酸ガスが循環することで、フロン直膨方式と異なり、製氷板の内部は過熱度がゼロの状態になるため、製氷板の伝熱性能がフロン直膨方式より向上する。このように製氷板の伝熱性能が向上することにより、省エネルギー化を図ることができる。加えて、フロン直膨方式と異なり、製氷板の上部および下部において氷の厚みを均一にすることができる。これは、液化炭酸ガスの潜熱を利用する方式なので製氷板の上部と下部とで温度差が生じない(均一温度となる)ためである。加えて、フロン直膨方式と異なり、氷の透明度を高くすることができる。これは、製氷板の伝熱性能が向上し、液化炭酸ガスと着氷面との平均温度差が小さくなったためと考えられる。したがって、省エネルギー化を図りつつ、高品質の氷を作ることができる。
加えて、散水機構20により、製氷板の上方から製氷板の表面に散水することで、製氷板の表面上部から表面下部にわたって水が伝わるため、製氷板の表面全体に一定の厚みの氷を作ることができる。
【0052】
加えて、冷媒を貯留するレシーバタンク31を備えることで、レシーバタンク31を製氷機2の外部に別個独立に設けた構成と比較して、冷媒を製氷機2の内部に溜めておくことができるため、冷媒の使用量を削減することができる。加えて、レシーバタンク31と製氷機2とを接続する配管(冷媒配管33)等をコンパクトにすることができるため、製氷機2の小型化を図ることができる。
加えて、ポンプ32により、レシーバタンク31に貯留されている冷媒が製氷板の上部に導入されることで、製氷板の上部に導入された冷媒は、重力の作用により製氷板の内部を下方に流れる。製氷板の内部を下方に流れた冷媒をレシーバタンク31に戻すことにより、製氷板の内部に冷媒を自動的に循環させることができる。この際、液化炭酸ガスはブラインと比較して粘弾性が低いためポンプにかかる動力を小さくすることができる。
【0053】
上記実施形態において、製氷板として、水平方向で互いに対向する第一製氷板12と第二製氷板13とが設けられ、第一製氷板12は、鉛直面に沿う第一表面12aを有し、第二製氷板13は、鉛直面に沿い、水平方向で第一表面12aとは反対側に配置された第二表面13aを有し、散水機構20は、第一表面12aに散水する第一散水手段21と、第二表面13aに散水する第二散水手段22と、を備えることで、以下の効果を奏する。
この構成によれば、第一製氷板12および第二製氷板13のそれぞれの表面に一定の厚みの氷を作ることができるため、一つの製氷板のみを備えた構成と比較して、単位時間当たりの製氷能力が向上する。
【0054】
上記実施形態において、第一製氷板12は、水平方向で第一表面12aとは反対側に配置された第一裏面12bを有し、第二製氷板13は、水平方向で第二表面13aとは反対側に配置され、第一裏面12bと間隔をあけて対向する第二裏面13bを有し、第一裏面12bと第二裏面13bとに熱媒を供給する熱媒供給機構40を更に備えることで、以下の効果を奏する。
この構成によれば、第一製氷板12および第二製氷板13のそれぞれの裏面に熱媒を供給することにより、第一製氷板12および第二製氷板13が加温されるため、第一製氷板12および第二製氷板13から氷を剥離し、氷を自重により落下させることができる。
【0055】
上記実施形態において、熱媒供給機構40は、製氷板の上部に熱媒を供給する第一熱媒供給手段41と、製氷板の上下中央部に熱媒を供給する第二熱媒供給手段42と、を備えることで、以下の効果を奏する。
ところで、熱媒供給手段が製氷板の上部のみに設けられた構成の場合、製氷板の上部に供給された熱媒が製氷板の裏面上部から裏面下部に伝わるまでに冷めてしまい、製氷板の下部を十分に加温できない可能性がある。これに対し、この構成によれば、第一熱媒供給手段41および第二熱媒供給手段42を備えることで、製氷板の上部および上下中央部のそれぞれに熱媒が供給されるため、製氷板の裏面下部に伝わる熱媒が冷め難くなり、製氷板の裏面全体を十分に加温することができる。
【0056】
上記実施形態において、散水機構20から散布された冷水を循環させる冷水循環ライン28と、冷水循環ライン28とは別個独立に設けられ、熱媒供給機構40から供給された熱媒を循環させる熱媒循環ライン47と、を更に備えることで、以下の効果を奏する。
この構成によれば、冷水循環ライン28と熱媒循環ライン47とが別個独立に配置され、互いに交わることはないため、冷水および熱媒のそれぞれの温度管理が容易となる。
【0057】
上記実施形態において、レシーバタンク31は、製氷板の下方に配置されていることで、以下の効果を奏する。
この構成によれば、レシーバタンク31と製氷機2とを接続する配管等をより一層コンパクトにすることができるため、製氷機2の小型化をより効果的に図ることができる。
【0058】
上記実施形態において、製氷板の表面に所定量の氷を作るために必要な基準熱量以上の熱量を有する冷媒を製氷板の内部に循環させるようにポンプ32を制御する制御部50を更に備えることで、以下の効果を奏する。
この構成によれば、製氷板の表面において温度のバラツキを抑えることができるため、製氷板の表面全体において氷の厚みを均一にしつつ、氷の透明度を高くすることができる。
【0059】
上記実施形態において、上記製氷機2と、レシーバタンク31に貯留されている冷媒を冷却する冷凍機3と、を備えることで、以下の効果を奏する。
この構成によれば、上記製氷機2を備えることで、省エネルギー化を図りつつ、高品質の氷を作ることが可能な製氷システム1を提供することができる。
【0060】
本発明者は、上記製氷板群10を用いて実証実験を実施した結果、凝縮温度32℃、製氷原水(冷水)の温度15℃、着氷厚(製氷板の表面の氷の厚み)15mmの条件において、下記の事項(1)、(2)を確認した。
(1)冷凍機1台の100%運転(24時間フル稼働)により、24時間当たりの製氷能力は3000kgであった。
(2)従来のフロン(HFC404A)を使用した冷凍機に比べて、システムCOP(Coefficient Of Performance)は20%以上、向上した。
【0061】
なお、上記実施形態では、製氷板群10が三つの製氷板対11を備える例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、製氷板群10は、一つの製氷板対11のみを備えていてもよいし、二つまたは四つ以上の製氷板対11を備えていてもよい。例えば、製氷板群10は、一つの製氷板のみを備えていてもよいし、複数の製氷板を備えていてもよい。製氷板の設置数は、要求仕様に応じて適宜変更することができる。
【0062】
また、上記実施形態では、製氷板が上方に起立して配置されている例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、製氷板は、水平方向の一方側ほど上方に位置するように、鉛直面に対して傾斜して配置されていてもよい。すなわち、製氷板は、製氷板の上部に導入された冷媒が重力の作用により製氷板の内部を下方に流れるように構成されていればよい。
【0063】
また、上記実施形態では、製氷板が鉛直面に沿う表面を有する例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、製氷板は、鉛直面に対して傾斜する表面を有していてもよい。すなわち、製氷板は、製氷板の表面上部に散布された冷水が重力の作用により製氷板の表面を下方に流れるように構成されていればよい。
【0064】
また、上記実施形態では、レシーバタンク31が製氷板の下方に配置されている例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、レシーバタンク31は、製氷板の上方に配置されていてもよいし、製氷板の前後外方または左右側方に配置されていてもよい。すなわち、レシーバタンク31は、製氷機2に組み込まれていればよい。
【0065】
また、上記実施形態では、製氷板対11の両方の表面に製氷する例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、製氷板対11の一方の表面のみに製氷してもよい。製氷板の製氷領域は、要求仕様に応じて適宜変更することができる。
【0066】
また、上記実施形態では、製氷システム1として1台の製氷機2に1台の冷凍機3をアッセンブリした例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、1台の製氷機2に2台以上の冷凍機3をアッセンブリしてもよい。すなわち、冷凍機3の設置台数は、要求仕様に応じて適宜変更することができる。
【0067】
また、上記実施形態では、製氷板から落下したプレートアイスは、製氷板の下方に配置されたスクリューコンベアにより破砕されて次工程に搬送される例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、製氷板から落下したプレートアイスを、そのままプレートアイスとして用いてもよい。例えば、製氷板から落下したプレートアイスを、砕氷機で粉砕した後、ゲレンデに噴射することにより人工雪としてもよい。例えば、製氷システム1は、人口降雪システムの一部として適用してもよいし、食品などの冷蔵プロセスまたは化学プロセスなどに適用してもよい。
【実施例
【0068】
実施例として、前述した本発明の製氷システム1を用いて氷(以下「ノンフロン氷」ともいう。)を生成するとともに、従来例として、従来型のフロン直膨方式の製氷システムを用いて氷(以下「フロン氷」ともいう。)を生成した。
従来例のフロン直膨方式の製氷システムは、製氷機として三菱電機株式会社製の水冷式コンデンシングユニット「RP-15CW」(商品名)を用い、熱源機として三菱電機株式会社製の「ERW-SP600A」(商品名)を用い、圧縮機として半密閉式シングルスクリュー(単段)を用いた。また、従来例の製氷システムでは、冷媒としてフロン「R-404A」を用い、給水温度は27℃、外気温度は26℃、蒸発温度は-21.6℃、製氷能力は15.408kg、脱氷には温水を用い、脱氷時間は4分間、製氷時間は27分間、冷却能力は209.5kwであった。
【0069】
一方、実施例の製氷システム1は、先に説明したとおりの製氷機、熱源機、および密閉式スクロール圧縮機を用いたNH/COチルド小型パッケージ空冷方式とし、圧縮機として密閉式スクロール圧縮機を用いた。また、実施例の製氷システムでは、冷媒としてCO冷媒「R744」を用い、給水温度は20℃、外気温度は25℃、蒸発温度は-12.6℃、製氷能力は3.000kg、脱氷には温水を用い、脱氷時間は2分間、製氷時間は30分間、冷却能力は24.1kwであった。
実施例により得られたノンフロン氷と、比較例により得られたフロン氷について氷質の比較試験を行った。良質な氷は、透明度が高い、硬い、融けにくい、等の特徴を有するものであるから、比較試験は、結晶粒度の観察、密度測定、硬度測定、および融解速度測定の4項目について行った。
【0070】
[結晶粒度観察]
実施例によるノンフロン氷と、比較例によるフロン氷からそれぞれプレート氷を取り出し、プレート氷の厚さ方向の中央付近を厚さ1mm以下の平板状に削り、偏光顕微鏡により写真撮影した。図12は実施例によるノンフロン氷の偏光顕微鏡写真であり、図13は比較例によるフロン氷の偏光顕微鏡写真である。図中の同一明度の領域がそれぞれ氷の単結晶を示し、明度の違いは単結晶の向きが異なることを示している。図12図13の比較から明らかなように、実施例によるノンフロン氷のほうが、比較例によるフロン氷よりも単結晶が大きかった。この理由は、実施例のほうが製氷時に単結晶が生成される際の凍結速度が遅いことと、生成領域での水流の乱れが少ないことと考えられる。氷を構成する単結晶の平均粒径が大きいほど、結晶粒界が少なく、氷中に混入する気泡や不純物が少なくなり、透明度が高く解けにくい氷となる。結晶観察の結果、実施例で得られたノンフロン氷のほうが比較例で得られたフロン氷よりも平均粒径が大きな単結晶で構成されており、高品質な氷であった。
【0071】
[密度測定]
実施例によるノンフロン氷と、比較例によるフロン氷のそれぞれを、油の入ったメスシリンダーに入れ、メスシリンダーの容積増加分と、予め計測した氷の重量から密度を求めた。測定は各3回行い、平均値を算出した。表1は、実施例によるノンフロン氷と、比較例によるフロン氷の密度測定結果を示す(単位:g/cm3)。ノンフロン氷のほうがフロン氷より密度が高かった。その結果、ノンフロン氷のほうがフロン氷より氷中の気泡混入量が少なく、透明度が高い高品質な氷であった。
【0072】
【表1】
【0073】
[硬度測定]
実施例によるノンフロン氷と、比較例によるフロン氷のそれぞれについて、果物硬度計(株式会社藤原製作所製商品名「KM-1」)で硬度を3回ずつ測定し、平均を求めた。表2は硬度測定の結果を示し、ノンフロン氷のほうがフロン氷よりも硬度が高かった。この理由は、結晶粒度観察からもわかったとおり、ノンフロン氷の結晶粒界がフロン氷よりも少ないことにある。この結果から、ノンフロン氷のほうがフロン氷よりも硬く高品質な氷であった。
【0074】
【表2】
【0075】
[融解速度測定]
実施例によるノンフロン氷と、比較例によるフロン氷のそれぞれから同重量(1000g)かつほぼ同形状のサンプル氷を取り出し、透明なプラスチックコップにそれぞれ入れ、室温23~24℃の無風の部屋に静置して1時間40分後に溶解重量を測定した。この実験をそれぞれ3回行い平均値を求め、ノンフロン氷とフロン氷の融解速度を測定した。結果を表3に示す。表3に示すように、ノンフロン氷のほうがフロン氷よりも融解速度が遅かった。この結果から、ノンフロン氷のほうが融けにくい高品質な氷であることがわかった。
【0076】
【表3】
【0077】
以上の氷質の比較試験から、ノンフロン氷はフロン氷より大きな単結晶で構成されるため、氷全体に対して気泡や不純物の混入量が少ない高品質な氷であることがわかった。
【0078】
なお、本発明の技術範囲は上述した実施形態および実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0079】
1…製氷システム、2…製氷機、3…冷凍機、12…第一製氷板(製氷板)、12a…第一表面、12b…第一裏面、13…第二製氷板(製氷板)、13a…第二表面、13b…第二裏面、15…冷媒通路、20…散水機構、21…第一散水手段、22…第二散水手段、28…冷水循環ライン、30…冷媒循環機構、31…レシーバタンク、32…ポンプ、40…熱媒供給機構、41…第一熱媒供給手段、42…第二熱媒供給手段、47…温水循環ライン(熱媒循環ライン)、50…制御盤(制御部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13