(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-11
(45)【発行日】2023-07-20
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物、ドライフィルム、硬化物、および電子部品
(51)【国際特許分類】
G03F 7/004 20060101AFI20230712BHJP
G03F 7/023 20060101ALI20230712BHJP
C08L 79/04 20060101ALI20230712BHJP
C08K 5/45 20060101ALI20230712BHJP
【FI】
G03F7/004 501
G03F7/023
G03F7/004 512
C08L79/04
C08K5/45
(21)【出願番号】P 2019069327
(22)【出願日】2019-03-29
【審査請求日】2022-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】591021305
【氏名又は名称】太陽ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096714
【氏名又は名称】本多 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124121
【氏名又は名称】杉本 由美子
(74)【代理人】
【識別番号】100176566
【氏名又は名称】渡耒 巧
(74)【代理人】
【識別番号】100180253
【氏名又は名称】大田黒 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100169236
【氏名又は名称】藤村 貴史
(72)【発明者】
【氏名】中村 仁美
(72)【発明者】
【氏名】福島 智美
【審査官】塚田 剛士
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-233877(JP,A)
【文献】国際公開第2009/014112(WO,A1)
【文献】特表2015-529844(JP,A)
【文献】特開2010-106233(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004 - 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリベンゾオキサゾール前駆体またはポリイミド前駆体、(B)感光剤および、(C)エピスルフィド基を有する架橋剤を含有し、
前記(A)ポリベンゾオキサゾール前駆体またはポリイミド前駆体が末端にチオール基と反応性を有する官能基を有
し、
前記(B)感光剤が光酸発生剤であることを特徴とする感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(C)エピスルフィド基を有する架橋剤が、1分子中に2以上のエピスルフィド基を有することを特徴とする請求項1記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
フィルム上に、請求項1または2に記載の感光性樹脂組成物を塗布、乾燥して得られる樹脂層を有することを特徴とするドライフィルム。
【請求項4】
請求項1または2に記載の感光性樹脂組成物または請求項3記載のドライフィルムの樹脂層を硬化して得られることを特徴とする硬化物。
【請求項5】
請求項4に記載の硬化物を有することを特徴とする電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物、ドライフィルム、硬化物、および電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子における再配線用の絶縁材料として、ポリベンゾオキサゾール前駆体やポリイミド前駆体を主成分とする樹脂組成物が用いられている。このポリベンゾオキサゾール前駆体やポリイミド前駆体は、高温(>350℃)で加熱してベンゾオキサゾール環やイミド環へと環化反応させることで剛直な構造となるため、分子間でのパッキング密度が上昇し、耐薬品性、熱特性に優れた硬化膜が得られる。
【0003】
一方で近年、チップを封止剤で封止した後、再配線を形成する、いわゆるチップファースト型ファンアウトウエハレベルパッケージ工法が登場している。そのため、かかる工法に用いられる再配線用の絶縁材料としては、エポキシ樹脂を主成分とする封止材の耐熱性の観点から、220℃程度の温度を上限とし、より低温での硬化可能な材料が求められている。
【0004】
しかしながら、このような低い温度では、ポリベンゾオキサゾール前駆体やポリイミド前駆体を含む樹脂組成物は、ポリベンゾオキサゾール前駆体やポリイミド前駆体の環化反応が十分に進行せず、耐薬品性や熱特性、柔軟性などの機械特性といった種々の特性が低下してしまうという問題があった。
【0005】
これに対し従来、これらの問題を解決すべく、ポリベンゾオキサゾール前駆体やポリイミド前駆体を含む樹脂組成物にエポキシ化合物などの架橋剤を加えるアプローチが種々提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、この特許文献1に記載されたような樹脂組成物では、例えば、アルカリ現像におけるパターン膜が膨潤や溶解してパターン形状が悪化することや、絶縁層と導体(銅)回路層を交互に積層して再配線する場合に、この絶縁層と導体回路層との密着性が十分に得られないことから、PCBT試験のような長期信頼性試験において、絶縁層と導体回路層間で剥がれが生じるという問題があった。
【0008】
そこで、本発明の主たる目的は、ポリベンゾオキサゾール前駆体やポリイミド前駆体を樹脂組成物の主成分としつつ、さらに低い200℃程度の温度でも硬化が可能であり、かつアルカリ現像時のパターン膜の形成、すなわち現像性や銅などの導体回路との密着性に優れる、例えば再配線用の絶縁層として用いて有効なポリベンゾオキサゾール前駆体またはポリイミド前駆体を主成分とする樹脂組成物を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、該組成物から得られる樹脂層を有するドライフィルム、該組成物または該ドライフィルムの樹脂層の硬化物、該硬化物を有する電子部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的の実現に向け鋭意検討した。その結果、ポリベンゾオキサゾール前駆体やポリイミド前駆体を樹脂組成物の主成分とした感光性樹脂組成物において、エピスルフィド基を有する架橋剤を含有することにより、ポリベンゾオキサゾール前駆体やポリイミド前駆体のフェノール性水酸基やカルボキシル基と、架橋剤のエピスルフィド基とが反応し、架橋構造にチオール基を形成することで、銅などの導体回路との密着性が向上し、さらに、ポリベンゾオキサゾール前駆体やポリイミド前駆体の末端にチオール基と反応性を有する官能基を導入することにより、該官能基が前記チオール基と反応することで、アルカリ現像におけるパターン膜の形成が安定し、200℃程度の温度でも優れた特性を有する硬化物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の感光性樹脂組成物は、(A)ポリベンゾオキサゾール前駆体またはポリイミド前駆体、(B)感光剤および、(C)エピスルフィド基を有する架橋剤を含有し、前記(A)ポリベンゾオキサゾール前駆体またはポリイミド前駆体がチオール基と反応性を有する官能基を有することを特徴とするものである。
【0011】
本発明の感光性樹脂組成物は、(C)エピスルフィド基を有する架橋剤が、1分子中に2以上のエピスルフィド基を有することが好ましい。
【0012】
本発明のドライフィルムは、フィルム上に、前記感光性樹脂組成物を塗布、乾燥して得られる樹脂層を有することを特徴とするものである。
【0013】
本発明の硬化物は、前記感光性樹脂組成物または前記ドライフィルムの樹脂層を硬化して得られることを特徴とするものである。
【0014】
本発明の電子部品は、前記硬化物を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ポリベンゾオキサゾール前駆体やポリイミド前駆体を樹脂組成物の主成分としつつ、200℃程度の温度でも硬化が可能であり、かつアルカリ現像時のパターン膜の形成、すなわち現像性や銅などの導体回路との密着性に優れるポリベンゾオキサゾール前駆体またはポリイミド前駆体を主成分とする樹脂組成物を得ることができる。また、本発明によれば、かかる効果に加えて伸び率等の膜物性にも優れた樹脂組成物を提供することができる。さらにまた、本発明によれば、該組成物から得られる樹脂層を有するドライフィルム、該組成物または該ドライフィルムの樹脂層の硬化物、該硬化物を有する電子部品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の感光性樹脂組成物は、(A)ポリベンゾオキサゾール前駆体またはポリイミド前駆体、(B)感光剤および、(C)エピスルフィド基を有する架橋剤を含有し、前記(A)ポリベンゾオキサゾール前駆体またはポリイミド前駆体がチオール基と反応性を有する官能基を有することを特徴とするものである。
【0017】
特に本発明の感光性樹脂組成物は、架橋剤中のエピスルフィド基が、ポリベンゾオキサゾール前駆体やポリイミド前駆体のフェノール性水酸基やカルボキシル基と反応することで、架橋構造にチオール基が形成され、このチオール基により銅などの金属界面との密着性が良好となる。
【0018】
さらに、本発明の感光性樹脂組成物は、エピスルフィド基を有する架橋剤を含むことで低温硬化性に優れ、伸び率等の膜物性にも優れるものとなる。また、このエピスルフィド基を有する架橋剤を含むことで、ポジ型感光性樹脂組成物での塗膜の現像時には、塗膜の未露光部が膨潤するという不具合を抑制することができ、パターン膜の形成にも有利になる。
【0019】
さらにまた、本発明の感光性樹脂組成物は、(A)ポリベンゾオキサゾール前駆体またはポリイミド前駆体がチオール基と反応性を有する官能基を有することで、形成されたチオール基の一部にポリベンゾオキサゾール前駆体またはポリイミド前駆体が結合することで、上記現像時における塗膜の未露光部の現像液による膨潤がより抑制され、パターン膜の形成がさらに向上する。また、前記チオール基の反応によって、さらなる低温硬化が可能になり、前記伸び率等の硬化物性に一層優れることとなる。
【0020】
以下、本発明の感光性樹脂組成物を構成する各成分について詳述する。
【0021】
[(A)ポリベンゾオキサゾール前駆体またはポリイミド前駆体]
本発明の感光性樹脂組成物は、(A)ポリベンゾオキサゾール前駆体またはポリイミド前駆体を含む。以下、(A1)ポリベンゾオキサゾール前駆体、(A2)ポリイミド前駆体の順で詳述する。
【0022】
[(A1)ポリベンゾオキサゾール前駆体]
(A1)ポリベンゾオキサゾール前駆体の合成方法は特に限定されず、公知の方法で合成すればよい。例えば、アミン成分としてジヒドロキシジアミン類と、酸成分としてジカルボン酸ジクロリド、ジカルボン酸、ジカルボン酸エステル等のジカルボン酸成分とを反応させて得ることができる。
【0023】
(A1)ポリベンゾオキサゾール前駆体は、ポリヒドロキシアミドであることが好ましく、下記一般式(1)の繰り返し構造を有するポリヒドロキシアミドであることが好ましい。
(式中、Xは4価の有機基を示し、Yは2価の有機基を示す。nは2以上の整数であり、好ましくは10~200、より好ましくは20~70である。)
【0024】
(A1)ポリベンゾオキサゾール前駆体を上記の合成方法で合成する場合、上記一般式(1)中、Xは、上記ジヒドロキシジアミン類の残基であり、Yは、上記ジカルボン酸成分の残基である。
【0025】
上記の繰り返し構造のジヒドロキシジアミン類としては、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジヒドロキシビフェニル、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)スルホン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン等が挙げられる。中でも、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパンが好ましい。
【0026】
上記の繰り返し構造のジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、テレフタル酸、5-tert-ブチルイソフタル酸、5-ブロモイソフタル酸、5-フルオロイソフタル酸、5-クロロイソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジカルボキシビフェニル、4,4’-ジカルボキシジフェニルエーテル、4,4’-ジカルボキシテトラフェニルシラン、ビス(4-カルボキシフェニル)スルホン、2,2-ビス(p-カルボキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-カルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン等の芳香環を有するジカルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、1,2-シクロブタンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロペンタンジカルボン酸等の脂肪族系ジカルボン酸が挙げられる。中でも、4,4’-ジカルボキシジフェニルエーテルが好ましい。
【0027】
上記一般式(1)中、Xが示す4価の有機基は脂肪族基でも芳香族基でもよいが、芳香族基であることが好ましく、2つのヒドロキシ基と2つのアミノ基がオルト位に芳香環上に位置することがより好ましい。上記4価の芳香族基の炭素原子数は、6~30であることが好ましく、6~24であることがより好ましい。上記4価の芳香族基の具体例としては以下に示す基が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、ポリベンゾオキサゾール前駆体に含まれうる公知の芳香族基を用途に応じて選択すればよい。
【0028】
【0029】
上記4価の芳香族基は、上記芳香族基の中でも以下に示す基であることが好ましい。
【0030】
上記一般式(1)中、Yが示す2価の有機基は脂肪族基でも芳香族基でもよいが、芳香族基であることが好ましく、芳香環上で上記一般式(1)中のカルボニルと結合していることがより好ましい。上記2価の芳香族基の炭素原子数は、6~30であることが好ましく、6~24であることがより好ましい。上記2価の芳香族基の具体例としては以下に示す基が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、ポリベンゾオキサゾール前駆体に含まれる公知の芳香族基を用途に応じて選択すればよい。
【0031】
(式中、Aは単結合、-CH
2-、-O-、-CO-、-S-、-SO
2-、-NHCO-、-C(CF
3)
2-、-C(CH
3)
2-からなる群から選択される2価の基を表す。)
【0032】
上記2価の有機基は、上記芳香族基の中でも以下に示す基であることが好ましい。
【0033】
(A1)ポリベンゾオキサゾール前駆体は、上記のポリヒドロキシアミドの繰り返し構造を2種以上含んでいてもよい。また、(A1)ポリベンゾオキサゾール前駆体は、上記のポリヒドロキシアミドの繰り返し構造以外の構造を含んでいてもよく、例えば、ポリアミド酸の繰り返し構造やベンゾオキサゾール構造を含んでいてもよい。
【0034】
本発明の(A1)ポリベンゾオキサゾールは末端にチオール基と反応性を有する官能基を有する。チオール基と反応性を有する官能基の具体的としては、チオールエン反応を生じるノルボルネン基、ビニル基、ビニルエーテル基、アリル基、アリルエーテル基、スチレン基等の官能基と、マイケル付加反応を生じるアクリレート基、メタクリレート基、アクリロイル基、メタクリロイル基、マレイミド基等の官能基が挙げられる。そして、ポリベンゾオキサゾール前駆体の末端にチオール基と反応性を有する官能基を有するようにする方法としては、例えば、ポリベンゾオキサゾール前駆体の合成にて残存する末端官能基がアミノ基を有する場合は、カルボキシル基またはカルボン酸無水物基と上記チオール基と反応性を有する官能基とを構造中に併せ持つ化合物を、ポリベンゾオキサゾール前駆体の合成にて残存する末端官能基がカルボキシル基を有する場合は、アミノ基と上記チオール基と反応性を有する官能基とを構造中に併せ持つ化合物を反応させる方法があるがこれに限定されない。
【0035】
(A1)ポリベンゾオキサゾール前駆体の数平均分子量(Mn)は、1,000~100,000であることが好ましく、5,000~50,000であることがより好ましい。ここで数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、標準ポリスチレンで換算した数値である。また、(A)ポリベンゾオキサゾール前駆体の重量平均分子量(Mw)は5,000~200,000であることが好ましく、10,000~100,000であることがより好ましい。ここで重量平均分子量は、GPCで測定し、標準ポリスチレンで換算した数値である。Mw/Mnは1~5であることが好ましく、1~3であることがより好ましい。
【0036】
(A1)ポリベンゾオキサゾール前駆体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
[(A2)ポリイミド前駆体]
(A2)ポリイミド前駆体の合成方法は特に限定されず、公知の方法で合成すればよい。例えば、カルボン酸無水物成分とアミン成分及び/又はイソシアネート成分とを反応させて得られる樹脂が挙げられる。イミド化は熱イミド化で行っても、化学イミド化で行ってもよく、またこれらを併用して製造してもよい。
【0038】
カルボン酸無水物成分としては、テトラカルボン酸無水物やトリカルボン酸無水物などが挙げられるが、これらの酸無水物に限定されるものではなく、アミノ基やイソシアネート基と反応する酸無水物基およびカルボキシル基を有する化合物であれば、その誘導体を含め用いることができる。また、これらのカルボン酸無水物成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0039】
テトラカルボン酸無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3-フルオロピロメリット酸二無水物、3,6-ジフルオロピロメリット酸二無水物、3,6-ビス(トリフルオロメチル)ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸二無水物、2,2’-ジフルオロ-3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、5,5’-ジフルオロ-3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、6,6’-ジフルオロ-3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,5,5’,6,6’-ヘキサフルオロ-3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、5,5’-ビス(トリフルオロメチル)-3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、6,6’-ビス(トリフルオロメチル)-3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,5,5’-テトラキス(トリフルオロメチル)-3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,6,6’-テトラキス(トリフルオロメチル)-3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、5,5’,6,6’-テトラキス(トリフルオロメチル)-3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、および2,2’,5,5’,6,6’-ヘキサキス(トリフルオロメチル)-3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,3”,4,4”-テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’”,4,4’”-クァテルフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3””,4,4””-キンクフェニルテトラカルボン酸二無水物、メチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,1-エチニリデン-4,4’-ジフタル酸二無水物、2,2-プロピリデン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,2-エチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,3-トリメチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,4-テトラメチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,5-ペンタメチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-へキサフルオロプロパン二無水物、ジフルオロメチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,1,2,2-テトラフルオロ-1,2-エチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,1,2,2,3,3-ヘキサフルオロ-1,3-トリメチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,1,2,2,3,3,4,4-オクタフルオロ-1,4-テトラメチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5-デカフルオロ-1,5-ペンタメチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、チオ-4,4’-ジフタル酸二無水物、スルホニル-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,3,3-テトラメチルシロキサン二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ベンゼン二無水物、1,4-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ベンゼン二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,3-ビス〔2-(3,4-ジカルボキシフェニル)-2-プロピル〕ベンゼン二無水物、1,4-ビス〔2-(3,4-ジカルボキシフェニル)-2-プロピル〕ベンゼン二無水物、ビス〔3-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕メタン二無水物、ビス〔4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕メタンニ無水物、2,2-ビス〔3-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕プロパン二無水物、2,2-ビス〔4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕プロパン二無水物、2,2-ビス〔3-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2-ビス〔4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕プロパン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジメチルシラン二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8-フェナントレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン-1,2,4,5-テトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物、カルボニル-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、メチレン-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、1,2-エチレン-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、1,1-エチニリデン-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、2,2-プロピリデン-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2,2-プロピリデン-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、オキシ-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、チオ-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、スルホニル-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、3,3’-ジフルオロオキシ-4,4’-ジフタル酸二無水物、5,5’-ジフルオロオキシ-4,4’-ジフタル酸二無水物、6,6’-ジフルオロオキシ-4,4’-ジフタル酸二無水物、3,3’,5,5’,6,6’-ヘキサフルオロオキシ-4,4’-ジフタル酸二無水物、3,3’-ビス(トリフルオロメチル)オキシ-4,4’-ジフタル酸二無水物、5,5’-ビス(トリフルオロメチル)オキシ-4,4’-ジフタル酸二無水物、6,6’-ビス(トリフルオロメチル)オキシ-4,4’-ジフタル酸二無水物、3,3’,5,5’-テトラキス(トリフルオロメチル)オキシ-4,4’-ジフタル酸二無水物、3,3’,6,6’-テトラキス(トリフルオロメチル)オキシ-4,4’-ジフタル酸二無水物、5,5’,6,6’-テトラキス(トリフルオロメチル)オキシ-4,4’-ジフタル酸二無水物、3,3’,5,5’,6,6’-ヘキサキス(トリフルオロメチル)オキシ-4,4’-ジフタル酸二無水物、3,3’-ジフルオロスルホニル-4,4’-ジフタル酸二無水物、5,5’-ジフルオロスルホニル-4,4’-ジフタル酸二無水物、6,6’-ジフルオロスルホニル-4,4’-ジフタル酸二無水物、3,3’,5,5’,6,6’-ヘキサフルオロスルホニル-4,4’-ジフタル酸二無水物、3,3’-ビス(トリフルオロメチル)スルホニル-4,4’-ジフタル酸二無水物、5,5’-ビス(トリフルオロメチル)スルホニル-4,4’-ジフタル酸二無水物、6,6’-ビス(トリフルオロメチル)スルホニル-4,4’-ジフタル酸二無水物、3,3’,5,5’-テトラキス(トリフルオロメチル)スルホニル-4,4’-ジフタル酸二無水物、3,3’,6,6’-テトラキス(トリフルオロメチル)スルホニル-4,4’-ジフタル酸二無水物、5,5’,6,6’-テトラキス(トリフルオロメチル)スルホニル-4,4’-ジフタル酸二無水物、3,3’,5,5’,6,6’-ヘキサキス(トリフルオロメチル)スルホニル-4,4’-ジフタル酸二無水物、3,3’-ジフルオロ-2,2-パーフルオロプロピリデン-4,4’-ジフタル酸二無水物、5,5’-ジフルオロ-2,2-パーフルオロプロピリデン-4,4’-ジフタル酸二無水物、6,6’-ジフルオロ-2,2-パーフルオロプロピリデン-4,4’-ジフタル酸二無水物、3,3’,5,5’,6,6’-ヘキサフルオロ-2,2-パーフルオロプロピリデン-4,4’-ジフタル酸二無水物、3,3’-ビス(トリフルオロメチル)-2,2-パーフルオロプロピリデン-4,4’-ジフタル酸二無水物、5,5’-ビス(トリフルオロメチル)-2,2-パーフルオロプロピリデン-4,4’-ジフタル酸二無水物、6,6’-ジフルオロ-2,2-パーフルオロプロピリデン-4,4’-ジフタル酸二無水物、3,3’,5,5’-テトラキス(トリフルオロメチル)-2,2-パーフルオロプロピリデン-4,4’-ジフタル酸二無水物、3,3’,6,6’-テトラキス(トリフルオロメチル)-2,2-パーフルオロプロピリデン-4,4’-ジフタル酸二無水物、5,5’,6,6’-テトラキス(トリフルオロメチル)-2,2-パーフルオロプロピリデン-4,4’-ジフタル酸二無水物、3,3’,5,5’,6,6’-ヘキサキス(トリフルオロメチル)-2,2-パーフルオロプロピリデン-4,4’-ジフタル酸二無水物、9-フェニル-9-(トリフルオロメチル)キサンテン-2,3,6,7-テトラカルボン酸二無水物、9,9-ビス(トリフルオロメチル)キサンテン-2,3,6,7-テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ〔2,2,2〕オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、9,9-ビス〔4-(3,4-ジカルボキシ)フェニル〕フルオレン二無水物、9,9-ビス〔4-(2,3-ジカルボキシ)フェニル〕フルオレン二無水物、エチレングリコールビストリメリテート二無水物、1,2-(エチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,3-(トリメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,4-(テトラメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,5-(ペンタメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,6-(ヘキサメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,7-(ヘプタメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,8-(オクタメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,9-(ノナメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,10-(デカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,12-(ドデカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,16-(ヘキサデカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,18-(オクタデカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)などが挙げられる。
【0040】
トリカルボン酸無水物としては、例えば、トリメリット酸無水物や核水添トリメリット酸無水物などが挙げられる。
【0041】
アミン成分としては、脂肪族ジアミンや芳香族ジアミンなどのジアミン、脂肪族ポリエーテルアミンなどの多価アミンを用いることができるが、これらのアミンに限定されるものではない。また、これらのアミン成分は、単独でまたは組み合わせて使用してもよい。
【0042】
ジアミンとしては、例えば、p-フェニレンジアミン(PPD)、1,3-ジアミノベンゼン、2,4-トルエンジアミン、2,5-トルエンジアミン、2,6-トルエンジアミンなどのベンゼン核1つのジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテルなどのジアミノジフェニルエーテル類、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、ビス(4-アミノフェニル)スルフィド、4,4’-ジアミノベンズアニリド、3,3’-ジクロロベンジジン、3,3’-ジメチルベンジジン(o-トリジン)、2,2’-ジメチルベンジジン(m-トリジン)、3,3’-ジメトキシベンジジン、2,2’-ジメトキシベンジジン、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジクロロベンゾフェノン、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,2-ビス(3-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-アミノフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホキシド、3,4’-ジアミノジフェニルスルホキシド、4,4’-ジアミノジフェニルスルホキシド、3,3’-ジカルボキシ-4,4’-ジアミノジフェニルメタンなどのベンゼン核2つのジアミン、1,3-ビス(3-アミノフェニル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノフェニル)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)-4-トリフルオロメチルベンゼン、3,3’-ジアミノ-4-(4-フェニル)フェノキシベンゾフェノン、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジ(4-フェニルフェノキシ)ベンゾフェノン、1,3-ビス(3-アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,3-ビス〔2-(4-アミノフェニル)イソプロピル〕ベンゼン、1,4-ビス〔2-(3-アミノフェニル)イソプロピル〕ベンゼン、1,4-ビス〔2-(4-アミノフェニル)イソプロピル〕ベンゼンなどのベンゼン核3つのジアミン、3,3’-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、3,3’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス〔3-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔3-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔3-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔3-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔3-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔3-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔3-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔3-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔3-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔3-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、2,2-ビス〔3-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2-ビス〔3-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2-ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2-ビス〔3-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス〔3-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパンなどのベンゼン核4つのジアミンなどの芳香族ジアミン、1,2-ジアミノエタン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノヘキサン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン、1,11-ジアミノウンデカン、1,12-ジアミノドデカン、1,2-ジアミノシクロヘキサン等の脂肪族ジアミンが挙げられ、脂肪族ポリエーテルアミンとしては、エチレングリコール及び/又はプロピレングリコール系の多価アミン等が挙げられる。また、下記の様に、カルボキシル基を有するアミンを用いることもできる。
【0043】
カルボキシル基を有するアミンとしては、3,5-ジアミノ安息香酸、2,5-ジアミノ安息香酸、3,4-ジアミノ安息香酸等のジアミノ安息香酸類、3,5-ビス(3-アミノフェノキシ)安息香酸、3,5-ビス(4-アミノフェノキシ)安息香酸等のアミノフェノキシ安息香酸類、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジカルボキシビフェニル、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジカルボキシビフェニル、4,4’-ジアミノ-2,2’-ジカルボキシビフェニル、4,4’-ジアミノ-2,2’,5,5’-テトラカルボキシビフェニル等のカルボキシビフェニル化合物類、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジカルボキシジフェニルメタン、3,3’-ジカルボキシ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,2-ビス[3-アミノ-4-カルボキシフェニル]プロパン、2,2-ビス[4-アミノ-3-カルボキシフェニル]プロパン、2,2-ビス[3-アミノ-4-カルボキシフェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’-ジアミノ-2,2’,5,5’-テトラカルボキシジフェニルメタン等のカルボキシジフェニルメタン等のカルボキシジフェニルアルカン類、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジカルボキシジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジカルボキシジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノ-2,2’-ジカルボキシジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノ-2,2’,5,5’-テトラカルボキシジフェニルエーテル等のカルボキシジフェニルエーテル化合物、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジカルボキシジフェニルスルフォン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジカルボキシジフェニルスルフォン、4,4’-ジアミノ-2,2’-ジカルボキシジフェニルスルフォン、4,4’-ジアミノ-2,2’,5,5’-テトラカルボキシジフェニルスルフォン等のジフェニルスルフォン化合物、2,2-ビス[4-(4-アミノ-3-カルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン等のビス[(カルボキシフェニル)フェニル]アルカン化合物類、2,2-ビス[4-(4-アミノ-3-カルボキシフェノキシ)フェニル]スルフォン等のビス[(カルボキシフェノキシ)フェニル]スルフォン化合物等を挙げることができる。
【0044】
イソシアネート成分としては、芳香族ジイソシアネート及びその異性体や多量体、脂肪族ジイソシアネート類、脂環式ジイソシアネート類及びその異性体などのジイソシアネートやその他汎用のジイソシアネート類を用いることができるが、これらのイソシアネートに限定されるものではない。また、これらのイソシアネート成分は、単独でまたは組み合わせて使用してもよい。
【0045】
ジイソシアネートとして、例えば4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ビフェニルジイソシアネート、ジフェニルスルホンジイソシアネート、ジフェニルエーテルジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート及びその異性体、多量体、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、キシシレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート類、あるいは前記芳香族ジイソシアネートを水添した脂環式ジイソシアネート類及び異性体、もしくはその他汎用のジイソシアネート類が挙げられる。
【0046】
(A2)成分であるポリイミド前駆体はアミド結合を有していてもよい。これはイソシアネートとカルボン酸を反応させて得られるアミド結合であってもよく、それ以外の反応によるものでもよい。さらにその他の付加および縮合からなる結合を有していてもよい。
【0047】
(A2)成分であるポリイミド前駆体合成には、公知慣用のカルボキシル基及び/又は酸無水物基を有するアルカリ溶解性ポリマー、オリゴマー、モノマーを用いてもよく、例えばこれらの公知慣用のアルカリ溶解性樹脂類を単独でもしくは上記のカルボン酸無水物成分と組み合わせて、上記のアミン/イソシアネート類と反応させて得られる樹脂であってもよい。
【0048】
本発明の(A2)ポリイミド前駆体は末端にチオール基と反応性を有する官能基を有する。チオール基と反応性を有する官能基は、(A1)ポリベンゾオキサゾール前駆体の項に記載した官能基が挙げられる。そしてポリイミド前駆体末端にチオール基と反応性を有する官能基を有するようにする方法としては、例えば、ポリイミド前駆体の合成にて残存する末端官能基がアミノ基を有する場合は、カルボキシル基またはカルボン酸無水物基と(A1)ポリベンゾオキサゾール前駆体の項に記載したチオール基と反応性を有する官能基を構造中に併せ持つ化合物を、ポリイミド前駆体の合成にて残存する末端官能基がカルボン酸無水物基を有する場合は、アミノ基またはイソシアネート基と(A1)ポリベンゾオキサゾール前駆体の項に記載したチオール基と反応性を有する官能基とを構造中に併せ持つ化合物を反応させる方法があるがこれに限定されない。
【0049】
(A2)成分であるポリイミド前駆体は、その酸価が20~200mgKOH/gであることが好ましく、より好適には60~150mgKOH/gであることが好ましい。この酸価が20mgKOH/g以上の場合、アルカリ現像工程時にアルカリに対する溶解性が増加し、現像性が良好となり、さらには、光照射後の熱硬化成分との架橋度が高くなるため、十分な現像コントラストを得ることができる。また、この酸価が200mgKOH/g以下の場合には、後述する光照射後のPEB工程でのいわゆる熱かぶりを抑制でき、プロセスマージンを大きくすることができる。
【0050】
また、(A2)成分であるポリイミド前駆体の分子量は、現像性と硬化塗膜特性を考慮すると、重量平均分子量1,000~100,000が好ましく、さらに2,000~50,000がより好ましい。この分子量が1,000以上の場合、露光・PEB後に十分な耐現像性と硬化物性を得ることができる。また、分子量が100,000以下の場合、アルカリ溶解性が増加し、現像性を向上させることができる。
【0051】
[(B)感光剤]
本発明の感光性樹脂組成物は、(B)感光剤を含む。(B)感光剤としては、特に制限はなく、光酸発生剤や光塩基発生剤を用いることができる。光酸発生剤は、紫外線や可視光等の光照射により酸を発生する化合物であり、光塩基発生剤は、同様の光照射により分子構造が変化するか、または、分子が開裂することにより1種以上の塩基性物質を生成する化合物である。本発明においては、(B)感光剤として、光酸発生剤を好適に用いることができる。
【0052】
光酸発生剤としては、ナフトキノンジアジド化合物、ジアリールスルホニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、ジアルキルフェナシルスルホニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、アリールジアゾニウム塩、芳香族テトラカルボン酸エステル、芳香族スルホン酸エステル、ニトロベンジルエステル、芳香族N-オキシイミドスルフォネート、芳香族スルファミド、ベンゾキノンジアゾスルホン酸エステル等を挙げることができる。光酸発生剤は、溶解阻害剤であることが好ましい。中でもナフトキノンジアジド化合物であることが好ましい。
【0053】
ナフトキノンジアジド化合物としては、具体的には例えば、トリス(4-ヒドロキシフェニル)-1-エチル-4-イソプロピルベンゼンのナフトキノンジアジド付加物(例えば、三宝化学研究所社製のTS533,TS567,TS583,TS593)や、テトラヒドロキシベンゾフェノンのナフトキノンジアジド付加物(例えば、三宝化学研究所社製のBS550,BS570,BS599)や、4-{4-[1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エチル]-α,α-ジメチルベンジル}フェノールのナフトキノンジアジド付加物(例えば、三宝化学研究所社製のTKF-428,TKF-528)等を使用することができる。
【0054】
[(C)エピスルフィド基を有する架橋剤]
本発明の感光性樹脂組成物は、(C)エピスルフィド基を有する架橋剤を含有する。(C)エピスルフィド基を有する架橋剤は、(A)ポリベンゾオキサゾール前駆体やポリイミド前駆体のフェノール性水酸基やカルボキシル基と架橋反応するため、低温での硬化性が得られる。また、前記架橋反応によりチオール基が形成されることで、基材との密着性も向上する。(C)エピスルフィド基を有する架橋剤としては、特に限定されるものではなく周知のものを使用することができる。特に、1分子中に2以上のエピスルフィド基を有することが好ましく、靱性(柔軟性)の観点から2個のエピスルフィド基を有することがより好ましい。
【0055】
(C)エピスルフィド基を有する架橋剤の合成方法は特に限定されず、例えばチオシアン酸カリウム、チオ尿素等の硫化剤を使用して、エポキシ化合物から合成してもよい。(C)エピスルフィド基を有する架橋剤としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールM型エポキシ樹脂、ビスフェノールP型エポキシ樹脂、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂などのノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、アリールアルキレン型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、フェノキシ型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ノルボルネン型エポキシ樹脂、アダマンタン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、グリシジルメタアクリレート共重合系エポキシ樹脂、シクロヘキシルマレイミドとグリシジルメタアクリレートとの共重合エポキシ樹脂、エポキシ変性のポリブタジエンゴム誘導体、CTBN変性エポキシ樹脂、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、フェニル-1,3-ジグリシジルエーテル、ビフェニル-4,4’-ジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、エチレングリコールまたはプロピレングリコールのジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、トリス(2,3-エポキシプロピル)イソシアヌレート、トリグリシジルトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、フェノキシ樹脂等のエポキシ樹脂や、ビスフェノール型エポキシ樹脂等の芳香環を有するエポキシ樹脂に水添して脂環化したエポキシ樹脂のエポキシ基をエピスルフィド基に変えたエピスルフィド樹脂が挙げられる。
【0056】
(C)エピスルフィド基を有する架橋剤の構造は、芳香環、複素環、脂環といった環状骨格を有するエピスルフィド化合物であっても、鎖状脂肪族などの非環式骨格を有するエピスルフィド化合物であってもよいが、より靱性(柔軟性)に優れた硬化物が得られることから、脂環式骨格や鎖状脂肪族のエピスルフィド化合物が好ましく、脂環式骨格を有するエピスルフィド化合物がより好ましい。脂環式骨格としては、シクロアルカンやシクロアルケンなどが挙げられ、なかでも環構造の炭素数が4~8のシクロアルカンが好ましい。脂環式骨格を有するエピスルフィド化合物としては、例えば上記エポキシ化合物で挙げた各エポキシ化合物のうち脂環式骨格を有するエポキシ化合物のエポキシ基をエピスルフィド基に変えたエピスルフィド化合物が挙げられる。具体的には、水添ビスフェノール型エピスルフィド樹脂、水添ノボラック型エピスルフィド樹脂、水添ビフェニル型エピスルフィド樹脂、水添ビフェニルアラルキル型エピスルフィド樹脂、水添アリールアルキレン型エピスルフィド樹脂、水添テトラフェニロールエタン型エピスルフィド樹脂などが挙げられる。尚、上記において水添とは、水素を添加して芳香族環(例えばベンゼン環)を還元して脂肪族環(例えばシクロヘキサン環)化することを意味するが、本明細書において、例えば「水添ビスフェノール型」などと呼称する場合は、あくまでも水添化した構造、即ち、芳香族環が脂肪族環に置換された構造を有していればよく、水添化せずに合成したものであってもよい。エピスルフィド化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0057】
(C)エピスルフィド基を有する架橋剤の市販品としては、例えば、田岡化学工業(株)製TBIS-AHS、TBIS-FXPS、等が挙げられる。
【0058】
(C)エピスルフィド基を有する架橋剤のエピスルフィド当量は、100~700g/eqが好ましく、200~450g/eqであることがより好ましい。このような範囲とすることで、柔軟性と密着性に優れた硬化物を得ることができる。
【0059】
また、(C)エピスルフィド基を有する架橋剤の配合量は、(A)ポリベンゾオキサゾール前駆体またはポリイミド前駆体の不揮発成分100質量部に対し、0.1~60質量部であることが好ましく、1~25質量部であることがより好ましい。このような範囲とすることで、低温硬化で銅への密着性を十分に発揮し、かつ、保存安定性、柔軟性により優れた硬化物を得ることができる。
【0060】
(その他の成分)
本発明の感光性樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、ポリベンゾオキサゾール前駆体やポリイミド前駆体以外のチオール基と反応性を有する官能基を有する化合物や、(A)ポリベンゾオキサゾール前駆体やポリイミド前駆体のフェノール性水酸基やカルボキシル基と反応する(C)エピスルフィド基を有する架橋剤以外の公知の架橋剤、(A)ポリベンゾオキサゾール前駆体またはポリイミド前駆体の環化反応やイミド化反応を促進するために、公知の可塑剤や熱酸発生剤、光感度を向上させるために公知の増感剤、基材との接着性向上のためシランカップリング剤などの公知の密着剤などを配合することもできる。更に、本発明の感光性樹脂組成物に加工特性や各種機能性を付与するために、その他に様々な有機または無機の低分子または高分子化合物を配合してもよい。例えば、界面活性剤、レベリング剤、微粒子等を用いることができる。微粒子には、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン等の有機微粒子、シリカ、カーボン、層状珪酸塩等の無機微粒子が含まれる。また、本発明の感光性樹脂組成物に各種着色剤および繊維等を配合してもよい。
【0061】
(溶剤)
本発明の感光性樹脂組成物に用いられる溶剤は、(A)ポリベンゾオキサゾール前駆体またはポリイミド前駆体、(B)感光剤および、(C)エピスルフィド基を有する架橋剤、および、他の成分を溶解させるものであれば特に限定されない。一例としては、N,N’-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N,N’-ジメチルアセトアミド、ジエチレングリコールジメチルエーテル、シクロペンタノン、γ-ブチロラクトン、α-アセチル-γ-ブチロラクトン、テトラメチル尿素、1,3-ジメチル-2-イミダゾリノン、N-シクロヘキシル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミド、ピリジン、γ-ブチロラクトン、ジエチレングリコールモノメチルエーテルを挙げることができる。これらは単独で用いても、二種以上を混合して用いてもかまわない。使用する溶剤の量は、塗布膜厚や粘度に応じて適宜に定めることができる。例えば、(A)ポリベンゾオキサゾール前駆体またはポリイミド前駆体100質量部に対し、50~9000質量部の範囲で用いることができる。
【0062】
本発明の感光性樹脂組成物は、ポジ型であることが好ましい。
【0063】
[ドライフィルム]
本発明のドライフィルムは、本発明の感光性樹脂組成物をフィルム(例えば支持(キャリア)フィルム)に塗布後、乾燥して得られる樹脂層を有するものである。この樹脂層を、基材に接するようにラミネートして使用される。
【0064】
本発明のドライフィルムは、フィルムに本発明の感光性樹脂組成物をブレードコーター、リップコーター、コンマコーター、フィルムコーター等の適宜の方法により均一に塗布し、乾燥して、上記した樹脂層を形成し、好ましくはその上にフィルム(いわゆる保護(カバー)フィルム)を積層することにより、製造することができる。保護フィルムと支持フィルムは同一のフィルム材料であっても、異なるフィルムを用いてもよい。
【0065】
本発明のドライフィルムにおいて、支持フィルムおよび保護フィルムのフィルム材料は、ドライフィルムに用いられるものとして公知のものをいずれも使用することができる。
支持フィルムとしては、例えば2~150μmの厚さのポリエチレンテレフタレート等のポリエステルフィルム等の熱可塑性フィルムが用いられる。
保護フィルムとしては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等を使用することができるが、樹脂層との接着力が、支持フィルムよりも小さいものが良い。
【0066】
本発明のドライフィルム上の樹脂層の膜厚は、100μm以下が好ましく、5~50μmの範囲がより好ましい。
【0067】
[硬化物]
本発明の硬化物は、上述した本発明の感光性樹脂組成物を用い所定のステップにて硬化させたものである。その硬化物であるパターン膜は、公知慣用の製法で製造すればよく、例えば、(B)感光剤としての光酸発生剤を含有するポジ型感光性樹脂組成物の場合、次の各ステップにより製造する。
【0068】
まず、ステップ1として、感光性樹脂組成物を基材上に塗布、乾燥することにより、あるいはドライフィルムから樹脂層を基材上に転写することにより、塗膜を得る。感光性樹脂組成物を基材上に塗布する方法としては、従来から感光性樹脂組成物の塗布に用いられていた方法、例えば、スピンコーター、バーコーター、ブレードコーター、カーテンコーター、スクリーン印刷機等で塗布する方法、スプレーコーターで噴霧塗布する方法、さらにはインクジェット法等を用いることができる。塗膜の乾燥方法としては、風乾、オーブンまたはホットプレートによる加熱乾燥、真空乾燥等の方法が用いられる。また、塗膜の乾燥は、感光性樹脂組成物中のポリベンゾオキサゾール前駆体の環化が起こらないような条件で行うことが望ましい。具体的には、自然乾燥、送風乾燥、あるいは加熱乾燥を、70~140℃で1~30分の条件で行うことができる。好ましくは、ホットプレート上で1~20分乾燥を行う。また、真空乾燥も可能であり、この場合は、室温で20分~1時間の条件で行うことができる。
感光性樹脂組成物の塗膜が形成される基材に特に制限はなく、シリコンウエハ等の半導体基材、配線基板、各種樹脂、金属等に広く適用できる。
【0069】
次に、ステップ2として、上記塗膜を、パターンを有するフォトマスクを介して、あるいは直接的に、露光する。露光光線は、(B)感光剤としての光酸発生剤を活性化させることができる波長のものを用いる。具体的には、露光光線は、最大波長が350~440nmの範囲にあるものが好ましい。上述したように、増感剤を適宜に配合することにより、光感度を調製することができる。露光装置としては、コンタクトアライナー、ミラープロジェクション、ステッパー、レーザーダイレクト露光装置等を用いることができる。
【0070】
次いで、ステップ3として、上記塗膜を現像液で処理する。これにより、塗膜中の露光部分を除去して、本発明の感光性樹脂組成物のパターン膜を形成することができる。
【0071】
現像に用いる方法としては、従来知られているフォトレジストの現像方法、例えば回転スプレー法、パドル法、超音波処理を伴う浸せき法等の中から任意の方法を選択することができる。現像液としては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド等の四級アンモニウム塩類等の水溶液を挙げることができる。また、必要に応じて、これらにメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の水溶性有機溶媒や界面活性剤を適当量添加してもよい。その後、必要に応じて塗膜をリンス液により洗浄してパターン膜を得る。リンス液としては、蒸留水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等を単独または組み合わせて用いることができる。また、現像液として上記溶剤を使用してもよい。
【0072】
その後、ステップ4として、パターン膜を加熱して硬化塗膜(硬化物)を得る。この加熱により、ポリベンゾオキサゾール前駆体を環化し、ポリベンゾオキサゾールを得る。加熱温度は、感光性樹脂組成物のパターン膜を硬化可能なように適宜設定する。例えば、不活性ガス中で、150℃以上350℃未満で5~120分程度の加熱を行う。加熱温度のより好ましい範囲は、180~250℃である。本発明の感光性樹脂組成物は、(C)ナフタレン型エポキシ化合物を含むので、環化が促進され、250℃未満、さらには220℃以下の加熱温度とすることができる。加熱は、例えば、ホットプレート、オーブン、温度プログラムを設定できる昇温式オーブンを用いることにより行う。このときの雰囲気(気体)としては空気を用いてもよく、窒素、アルゴン等の不活性ガスを用いてもよい。
【0073】
本発明の感光性樹脂組成物の用途は特に限定されず、例えば、塗料、印刷インキ、または接着剤、あるいは、表示装置、半導体装置、電子部品、光学部品、または建築材料の形成材料として好適に用いられる。具体的には、表示装置の形成材料としては、層形成材料や画像形成材料として、カラーフィルター、フレキシブルディスプレイ用フィルム、レジスト材料、配向膜等に用いることができる。また、半導体装置の形成材料としては、レジスト材料、バッファーコート膜のような層形成材料等に用いることができる。さらに、電子部品の形成材料としては、封止材料や層形成材料として、プリント配線板、層間絶縁膜、配線被覆膜等に用いることができる。さらにまた、光学部品の形成材料としては、光学材料や層形成材料として、ホログラム、光導波路、光回路、光回路部品、反射防止膜等に用いることができる。さらにまた、建築材料としては、塗料、コーティング剤等に用いることができる。
【0074】
本発明の感光性樹脂組成物は、主にパターン形成材料として用いられ、それによって形成されたパターン膜は、例えば、ポリベンゾオキサゾールなどからなる永久膜として耐熱性や絶縁性を付与する成分として機能することから、特に半導体装置、表示体装置および発光装置の表面保護膜、層間絶縁膜、再配線用絶縁膜、フリップチップ装置用保護膜、バンプ構造を有する装置の保護膜、多層回路の層間絶縁膜、受動部品用絶縁材料、ソルダーレジストやカバーレイ膜などのプリント配線板の保護膜、ならびに液晶配向膜等として好適に利用できる。特に、本発明の感光性樹脂組成物は、硬化物の耐薬品性に優れることから、積層される層形成材料、例えば、層間絶縁膜、再配線用絶縁膜の形成材料として好適である。
【実施例】
【0075】
以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。なお、以下において、「部」および「%」とあるのは、特に断りのない限り、すべて質量基準である。
【0076】
(末端にチオール基と反応性を有する官能基を有するポリベンゾオキサゾール前駆体(A1)の合成)
温度計、攪拌機、原料仕込口及び窒素ガス導入口を備えた四つ口セパラブルフラスコに、ヘキサフルオロ-2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン30.0g(0.08119mol)、N-メチル-2-ピロリドン1500gを加え、完全に溶解させた。溶液の温度を0~20℃に保ちながら、ジフェニルエーテル-4、4’-ジカルボン酸ジクロリド22.44g(0.7603mmol)を加えた。その後、反応系の温度を室温に戻し、6時間攪拌した。その後、5-ノルボルネン-2,3―ジカルボン酸無水物1.51g(0.0103mol)を加え、更に40℃で1時間反応した。反応終了後、反応液をイオン交換水2000gに滴下した。沈殿物を濾集し、洗浄した後、真空乾燥を行い、末端にチオール基と反応性を有する官能基を有するポリベンゾオキサゾール前駆体(A1)を得た。GPCによるポリスチレン換算の重量平均分子量は32,000、数平均分子量は12,200であった。「ポリベンゾオキサゾール前駆体」は、以下、「PBO前駆体」とも称する。
【0077】
(末端にチオール基と反応性を有する官能基を有するポリイミド前駆体(A2)の合成)
150mLのスクリュー管瓶に、撹拌子、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)5.54g(13.50mmol)、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(ODA)3.30g(16.48mmol)を加え、20℃、相対湿度20%の環境の下、γ-ブチロラクトン43mLに完全に溶解させた。その後、4,4’-オキシジフタル酸無水物(ODPA)8.38g(27.01mmol)を徐々に加え、室温で16時間反応させた。その後、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物0.985g(6.00mmol)を加え、室温で8時間反応させ、末端にチオール基と反応性を有する官能基を有するポリイミド前駆体(A2)のγ―ブチロラクトン溶液を得た。GPCによるポリスチレン換算の重量平均分子量は23,900、数平均分子量は8,500であった。「ポリイミド前駆体」は、以下、「PI前駆体」とも称する。
【0078】
(末端にチオール基と反応性を有する官能基を有しないポリベンゾオキサゾール前駆体(A3)の合成)
温度計、攪拌機、原料仕込口及び窒素ガス導入口を備えた四つ口セパラブルフラスコに、ヘキサフルオロ-2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン40.3g(0.11mol)、N-メチル-2-ピロリドン1500gを加え、完全に溶解させた。溶液の温度を0~20℃に保ちながら、ジフェニルエーテル-4、4’-ジカルボン酸ジクロリド35.4g(0.12mmol)を加えた。その後、反応系の温度を室温に戻し、6時間攪拌した。その後、純水1.8g(0.1mol)を加え、更に40℃で1時間反応した。反応終了後、反応液をイオン交換水2000gに滴下した。沈殿物を濾集し、洗浄した後、真空乾燥を行い、末端にチオール基と反応性を有する官能基を有しないポリベンゾオキサゾール前駆体(A3)を得た。GPCによるポリスチレン換算の重量平均分子量は32,000、数平均分子量は12,200であった。
【0079】
(末端にチオール基と反応性を有する官能基を有しないポリイミド前駆体(A4)の合成)
150mLのスクリュー管瓶に、撹拌子、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)5.54g(13.50mmol)、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(ODA)3.30g(16.48mmol)を加え、20℃、相対湿度20%の環境の下、γ-ブチロラクトン43mLに完全に溶解させた。その後、4,4’-オキシジフタル酸無水物(ODPA)8.38g(27.01mmol)を徐々に加え、室温で16時間反応させた。その後、無水フタル酸0.889g(6.00mmol)加えて室温で8時間反応させ、末端にチオール基と反応性を有する官能基を有しないポリイミド前駆体(A4)のγ―ブチロラクトン溶液を得た。GPCによるポリスチレン換算の重量平均分子量は23,900、数平均分子量は8,500であった。
【0080】
(実施例1~4および比較例1~4)
上記で合成した末端にチオール基と反応性を有する官能基を有するポリベンゾオキサゾール前駆体(A1)、末端にチオール基と反応性を有する官能基を有するポリイミド前駆体(A2)、末端にチオール基と反応性を有する官能基を有しないポリベンゾオキサゾール前駆体(A3)または末端にチオール基と反応性を有する官能基を有しないポリイミド前駆体(A4)100質量部に対して、表1示す各成分を表1に示す割合で配合し、さらに、(A1)~(A4)100質量部に対して30質量部のγ―ブチロラクトンを加え、完全に溶解させ感光性樹脂組成物のワニスを得た。なお、表1中の配合量はすべて不揮発成分換算の配合量である。
【0081】
このようにして得た実施例1~4および比較例1~4の感光性樹脂組成物について、伸び率、密着性および現像後残膜率の評価を行った。これらの結果を表1中に併せて示す。
【0082】
(伸び率評価)
ワニスを、スピンコーターを用いてシリコンウエハ上に塗布し、120℃で10分間乾燥させ、感光性樹脂組成物の乾燥膜を得た。その後、イナートガスオーブン(光洋サーモシステム(株)製CLH-21CD-S)中、窒素雰囲気下、120℃で5分加熱した後、150℃で30分間保持し、さらに昇温して200℃で60分加熱して膜厚45μmの硬化膜を得た。
このようにして得た硬化膜を、PCT装置を用いて121℃、100%RH、60分の条件下で硬化膜を剥離した後、島津製作所社製のEZ-SXを用いた引張試験により破断伸びを測定した。評価基準は以下の通りとした。
◎:破断伸びが20%以上であった。
○:破断伸びが19~10%であった。
△:破断伸びが9~1%であった。
×:自立膜を得られなかった。
【0083】
(密着性評価)
シリコンウエハ上に銅をスパッタリングし、それぞれ200~500nmの厚みで形成された金属材料層を表面に有する基板(以降、銅スパッタ基板と呼ぶ)を用意した。ワニスを、スピンコーターを用いて銅スパッタ基板上塗布し、次いでホットプレートを用いて120℃で10分間乾燥させ、感光性樹脂組成物の乾燥膜(12μm)を得た。次に、イナートガスオーブン(光洋サーモシステム(株)製CLH-21CD-S)中、窒素雰囲気下、120℃で5分間加熱した後、150℃で30分間保持し、さらに昇温して200℃ で60分加熱して膜厚10μmの硬化膜を得た。
このようにして得た硬化膜に片刃を使用して1mm間隔で100マスの碁盤目状の切り込みをいれ、PCT装置を用いて121℃、2気圧の飽和条件で100時間PCT処理を行なった後、セロテープ(登録商標)による引き剥がしによって100マスのうち何マス剥がれたかを計測した。評価基準は以下の通りとした。
◎:剥がれ個数が0であった。
○:剥がれ個数が1であった。
△:剥がれ個数が2~9であった。
×:剥がれ個数が10~であった。
【0084】
(現像性評価)
ワニスを、スピンコーターを用いて銅スパッタシリコン基板上に塗布し、ホットプレートで120℃10分間乾燥させて得た、厚さ12μmの感光性樹脂組成物の乾燥膜に、露光量800mJ/cm2のi線を照射し露光した後、2.38%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液で80秒間現像し、水でリンスし、ポジ型パターンを得た。
このようにして得たポジ型パターンについて、光学膜厚計を用いて、現像前と現像後の膜厚を計測し、下記式により残膜率を求めた。
未露光部残膜率[%]=(未露光部現像後膜[μm]/未露光部現像前膜厚[μm])×100
現像性の評価基準は以下の通りとした。
○ :未露光部残膜率が110~85%であった。
△ :未露光部残膜率が84~70%であった。
× :未露光部残膜率が69%以下であった。
××:未露光部残膜率が110%超であった。
【0085】
【0086】
(*1):前述の、末端にチオール基と反応性を有する官能基を有するポリベンゾオキサゾール前駆体(A1)
(*2):前述の、末端にチオール基と反応性を有する官能基を有するポリイミド前駆体(A2)、
(*3):前述の、末端にチオール基と反応性を有する官能基を有しないポリベンゾオキサゾール前駆体(A3)
(*4):前述の、末端にチオール基と反応性を有する官能基を有しないポリイミド前駆体(A4)
(*5):(株)三宝化学研究所製TKF-428 (下記B1)
(*6):(株)三宝化学研究所製TKF-525 (下記B2)
(*7):田岡化学工業(株)製TBIS-AHS
(*8):田岡化学工業(株)製TBIS-FXPS
(*9):信越化学工業(株)製KBM-573
【0087】
上記表中に示す結果から、本発明の感光性樹脂組成物は、ポリベンゾオキサゾール前駆体やポリイミド前駆体を樹脂組成物の主成分としつつ、200℃程度の低温でも硬化が可能であり、かつアルカリ現像時のパターン膜の形成、すなわち現像性や銅などの導体回路との密着性に優れる樹脂組成物を得ることができ、また該樹脂組成物は、伸び率等の膜物性にも優れることが分かる。