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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-11
(45)【発行日】2023-07-20
(54)【発明の名称】光学積層体及び表示装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20230712BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20230712BHJP
   B32B 7/022 20190101ALI20230712BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20230712BHJP
【FI】
G06F3/041 400
G02B5/30
G06F3/041 460
B32B7/022
G09F9/00 366A
G09F9/00 313
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019092334
(22)【出願日】2019-05-15
(65)【公開番号】P2020187595
(43)【公開日】2020-11-19
【審査請求日】2022-04-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】姜 大山
【審査官】石川 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-072995(JP,A)
【文献】特開2016-200956(JP,A)
【文献】特開2018-116543(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/041
G02B 5/30
B32B 7/022
G09F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面板、偏光板、第1粘着剤層、ッチセンサパネル、及び第2粘着剤層をこの順に備える光学積層体であって、
前記前面板は、基材フィルムの少なくとも一方の面にハードコート層が設けられたフィルムであり、
前記偏光板は、前記第1粘着剤層側の最表面に保護層を備え、
前記保護層について、タフネスをa〔mJ/mm〕、厚みをb〔μm〕とすると、下記式(1a)の関係を満た
前記第1粘着剤層の厚みをt1〔μm〕、前記第2粘着剤層の厚みをt2〔μm〕とすると、下記式(3f)の関係を満たす、光学積層体。
a×b≧800 (1a
t1/t2≧0.2 (3f)
【請求項2】
さらに下記式(3a)の関係を満たす、請求項1に記載の光学積層体。
t1/t2≦2 (3a)
【請求項3】
前記保護層は、前記第1粘着剤層側とは反対側の表面上に位相差層が設けられている、請求項1または2に記載の光学積層体。
【請求項4】
前記位相差層は、重合性液晶化合物の硬化物を含む、請求項3に記載の光学積層体。
【請求項5】
前記位相差層は、ポジティブC層または1/4波長層である、請求項3または4に記載の光学積層体。
【請求項6】
前記タッチセンサパネルは、基材層と、前記基材層上に設けられた透明導電層とを備える、請求項1~5のいずれか1項に記載の光学積層体。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の光学積層体を含む表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学積層体及び表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2017-054140号公報(特許文献1)には、光学的表示装置に用いられるタッチパネル積層体が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-054140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、前面板と、偏光板と、タッチセンサパネルとを順に備える光学積層体であって、耐衝撃性に優れた光学積層体、及び当該光学積層体を含む表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下に示す光学積層体及び表示装置を提供する。
【0006】
〔1〕 前面板、偏光板、第1粘着剤層、及びタッチセンサパネルをこの順に備える光学積層体であって、
前記偏光板は、前記第1粘着剤層側の最表面に保護層を備え、
前記保護層について、タフネスをa〔mJ/mm〕、厚みをb〔μm〕とすると、下記式(1a)の関係を満たす、光学積層体。
a×b≧700 (1a)
【0007】
〔2〕 前記タッチセンサパネルの前記第1粘着剤層側とは反対側の表面上に設けられた第2粘着剤層をさらに備え、
前記第1粘着剤層の厚みをt1〔μm〕、前記第2粘着剤層の厚みをt2〔μm〕とすると、下記式(2a)及び下記式(3a)の関係を満たす、〔1〕に記載の光学積層体。
t1/t2≧0.1 (2a)
t1/t2≦2 (3a)
〔3〕 前記保護層は、前記第1粘着剤層側とは反対側の表面上に位相差層が設けられている、〔1〕または〔2〕に記載の光学積層体。
〔4〕 前記位相差層は、重合性液晶化合物の硬化物を含む、〔3〕に記載の光学積層体。
〔5〕 前記位相差層は、ポジティブC層または1/4波長層である、〔1〕~〔4〕のいずれか1項に記載の光学積層体。
〔6〕 前記タッチセンサパネルは、基材層と、前記基材層上に設けられた透明導電層とを備える、〔1〕~〔5〕のいずれか1項に記載の光学積層体。
〔7〕 〔1〕~〔6〕のいずれか1項に記載の光学積層体を含む表示装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、耐衝撃性に優れた光学積層体、及び当該光学積層体を含む表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の光学積層体の一例を示す概略断面図である。
図2】液晶層である位相差層を含む位相差体の一例を模式的に示す概略断面図である。
図3】液晶層である位相差層を含む位相差体の他の例を模式的に示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の全ての図面においては、各構成要素を理解し易くするために縮尺を適宜調整して示しており、図面に示される各構成要素の縮尺と実際の構成要素の縮尺とは必ずしも一致しない。
【0011】
<光学積層体>
図1は、本発明の一実施形態による光学積層体の概略断面図である。図1に示す光学積層体100は、前面板10、貼合層43、偏光板20、第1粘着剤層41、タッチセンサパネル30、及び第2粘着剤層42をこの順に備える。本発明の光学積層体100は、第2粘着剤層42を有しない構成であってもよく、貼合層43を有しない構成であってもよい。
【0012】
偏光板20は、第1粘着剤層41側の最表面に保護層201を備え、さらに偏光子を含む偏光層200を備える。タッチセンサパネル30は、基材層32と、基材層32の第1粘着剤層41側の表面上に設けられた透明導電層31とを備える。タッチセンサパネル30は、基材層32を有しない構成であってもよい。
【0013】
偏光板20の保護層201、及びタッチセンサパネル30の基材層32は、通常は単層であるものの、表面処理層を含む複層、粘着剤層を介することなく積層された複数の層からなる複層については、複層全体で保護層201または基材層32を構成しているものとする。
【0014】
偏光板20の保護層201について、タフネスをa〔mJ/mm〕、厚みをb〔μm〕とすると、下記式(1a)の関係を満たす。本明細書において、タフネスa〔mJ/mm〕は、常温(温度23℃)において、後述の実施例に記載の方法によって測定される値とする。
a×b≧700 (1a)
【0015】
光学積層体において、保護層201が式(1a)の関係を満たすことにより、耐衝撃性を向上させることができる。光学積層体において、耐衝撃性をさらに向上させる観点から、保護層201は式(1b)の関係を満たすことが好ましく、式(1c)の関係を満たすことがより好ましい。保護層201は式(1d)の関係を満たしていてもよい。
a×b≧1000 (1b)
a×b≧2000 (1c)
a×b≦5000 (1d)
【0016】
光学積層体において、耐屈曲性を向上させる観点から、第1粘着剤層41の厚みをt1〔μm〕、第2粘着剤層42の厚みをt2〔μm〕とすると、下記式(2a)及び下記式(3a)の関係を満たすことが好ましい。
t1/t2≧0.1 (2a)
t1/t2≦2 (3a)
【0017】
光学積層体において、耐屈曲性をさらに向上させる観点から、下記式(3b)の関係を満たすことがより好ましく、下記式(3c)の関係を満たすことがさらに好ましく、下記式(3d)の関係を満たすことがさらに好ましい。光学積層体は、下記式(3e)や下記式(3f)の関係を満たしてもよい。
t1/t2≦1.5 (3b)
t1/t2≦1 (3c)
t1/t2≦0.8 (3d)
t1/t2≦0.5 (3e)
t1/t2≧0.2 (3f)
【0018】
光学積層体100は、少なくとも前面板10を外側にした方向に屈曲可能であることが好ましい。屈曲可能とは、前面板10を外側にした方向にクラックを生じさせることなく屈曲させ得ることを意味する。本発明に係る光学積層体は、耐衝撃性に優れており、耐衝撃性とともに耐屈曲性にも優れているものとすることができる。
【0019】
光学積層体100の面方向の形状は、例えば方形形状であってよく、好ましくは長辺と短辺とを有する方形形状であり、より好ましくは長方形である。光学積層体100の面方向の形状が長方形である場合、長辺の長さは、例えば10mm以上1400mm以下であってよく、好ましくは50mm以上600mm以下である。短辺の長さは、例えば5mm以上800mm以下であり、好ましくは30mm以上500mm以下であり、より好ましくは50mm以上300mm以下である。光学積層体100を構成する各層は、角部がR加工されたり、端部が切り欠き加工されたり、穴あき加工されたりしていてもよい。
【0020】
光学積層体100の厚みは、光学積層体に求められる機能及び積層体の用途等に応じて異なるため特に限定されないが、例えば20μm以上1,000μm以下であり、好ましくは50μm以上500μm以下である。
【0021】
光学積層体100は、例えば表示装置等に用いることができる。表示装置は特に限定されず、例えば有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)表示装置、無機エレクトロルミネッセンス(無機EL)表示装置、液晶表示装置、電界発光表示装置等が挙げられる。光学積層体100は、可撓性を有する表示装置に好適である。本発明の光学積層体を含む表示装置は、優れた耐衝撃性を有する。
【0022】
光学積層体100は、前面板10、偏光板20、及びタッチセンサパネル30を備える。光学積層体100は、表示装置に用いられることにより、表示装置の一部となり得る構成であることが好ましく、表示装置が備え得る要素は限定されることなく備えていてもよく、例えば、部分的に形成された着色層、保護フィルム、位相差フィルム等を備えていてもよい。これらの要素は、偏光板20の偏光層200に含まれていてもよい。
【0023】
[前面板]
前面板10は、光を透過可能な板状体であれば、材料および厚みは限定されることはなく、また1層のみから構成されてよく、2層以上から構成されてもよい。その例としては、樹脂製の板状体(例えば樹脂板、樹脂シート、樹脂フィルム等)、ガラス製の板状体(例えばガラス板、ガラスフィルム等)等が挙げられる。前面板は、表示装置の最表面を構成する層であることができる。
【0024】
前面板10の厚みは、例えば30μm以上500μm以下であってよく、好ましくは40μm以上200μm以下であり、より好ましくは50μm以上100μm以下である。本発明において、各層の厚みは、後述する実施例において説明する厚み測定方法にしたがって測定することができる。
【0025】
前面板10が樹脂製の板状体である場合、樹脂製の板状体は、光を透過可能なものであれば限定されることはない。樹脂フィルム等の樹脂製の板状体を構成する樹脂としては、例えばトリアセチルセルロース、アセチルセルロースブチレート、エチレン-酢酸ビニル共重合体、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース、ポリエステル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリ(メタ)アクリル、ポリイミド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリメチルメタアクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアミドイミドなどの高分子で形成されたフィルムが挙げられる。これらの高分子は、単独でまたは2種以上混合して用いることができる。強度および透明性向上の観点から好ましくはポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミドなどの高分子で形成された樹脂フィルムである。
【0026】
前面板10は、基材フィルムの少なくとも一方の面にハードコート層が設けられたフィルムであってもよい。基材フィルムとしては、上記樹脂からできたフィルムを用いることができる。ハードコート層は、基材フィルムの一方の面に形成されていてもよいし、両方の面に形成されていてもよい。ハードコート層を設けることにより、硬度およびスクラッチ性を向上させた樹脂フィルムとすることができる。ハードコート層は、例えば紫外線硬化型樹脂の硬化層である。紫外線硬化型樹脂としては、例えばアクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アミド系樹脂、エポキシ系樹脂等が挙げられる。ハードコート層は、強度を向上させるために、添加剤を含んでいてもよい。添加剤は限定されることはなく、無機系微粒子、有機系微粒子、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0027】
前面板10がガラス板である場合、ガラス板は、ディスプレイ用強化ガラスが好ましく用いられる。ガラス板の厚みは、例えば50μm以上1,000μm以下であってよい。ガラス板を用いることにより、優れた機械的強度および表面硬度を有する前面板10を構成することができる。
【0028】
光学積層体100が表示装置に用いられる場合、前面板10は、表示装置の前面(画面)を保護する機能(ウィンドウフィルムとしての機能)を有するのみではなく、タッチセンサパネル30で検知されるタッチを行う操作面としての機能も有するものであってもよく、さらに、ブルーライトカット機能、視野角調整機能等を有するものであってもよい。
【0029】
[タッチセンサパネル]
タッチセンサパネル30としては、前面板10でタッチされた位置を検出可能なセンサであり、透明導電層31を有する構成であれば、検出方式は限定されることはなく、抵抗膜方式、静電容量方式、光センサ方式、超音波方式、電磁誘導結合方式、表面弾性波方式等のタッチセンサパネルが例示される。その中でも、低コスト、早い反応速度、薄膜化の面で、静電容量方式のタッチセンサパネルが好適に用いられる。タッチセンサパネル30は、耐衝撃性を向上させることができる観点から、基材層32と、基材層32の第1粘着材層41側の表面上に設けられた透明導電層31とを備える構成であることが好ましい。基材層32の表面上に透明導電層31が設けられている構成においては、基材層32と透明導電層31とが互いに接している構成であってもよく(例えば、後述する第1の方法により製造されるタッチセンサパネル)、基材層32と透明導電層31とが互いに接していない構成であってもよい(例えば、後述する第2の方法により製造されるタッチセンサパネル)。タッチセンサパネル30は、基材層32、透明導電層31とは別に、接着層、分離層、保護層等を備えていてもよい。接着層としては、接着剤層、粘着剤層が挙げられる。
【0030】
静電容量方式のタッチセンサパネルの一例は、基材層と、基材層の表面に設けられた位置検出用の透明導電層と、タッチ位置検知回路とにより構成されている。静電容量方式のタッチセンサパネルを有する光学積層体を設けた表示装置においては、前面板10の表面がタッチされると、タッチされた点で人体の静電容量を介して透明導電層が接地される。タッチ位置検知回路が、透明導電層の接地を検知し、タッチされた位置が検出される。互いに離間した複数の透明導電層を有することにより、より詳細な位置の検出が可能となる。
【0031】
透明導電層は、ITO等の金属酸化物からなる透明導電層であってもよく、アルミニウムや銅、銀、金、またはこれらの合金等の金属からなる金属層であってもよい。
【0032】
分離層は、ガラス等の基板上に形成されて、分離層上に形成された透明導電層を分離層とともに、基板から分離するための層であることができる。分離層は、無機物層又は有機物層であることが好ましい。無機物層を形成する材料としては、例えばシリコン酸化物が挙げられる。有機物層を形成する材料としては、例えば(メタ)アクリル系樹脂組成物、エポキシ系樹脂組成物、ポリイミド系樹脂組成物等を用いることができる。
【0033】
タッチセンサパネル30は、透明導電層31に接して導電層を保護する保護層を備えていてもよい。保護層は有機絶縁膜及び無機絶縁膜のうちの少なくとも一つを含み、これらの膜は、スピンコート法、スパッタリング法、蒸着法等によって形成することができる。
【0034】
タッチセンサパネル30は例えば、以下のようにして製造することができる。第1の方法では、まずガラス基板へ接着層を介して基材層32を積層する。基材層32上に、フォトリソグラフィによりパターン化された透明導電層31を形成する。熱を加えることにより、ガラス基板と基材層32とを分離して、透明導電層31と基材層32とからなるタッチセンサパネル30が得られる。
【0035】
第2の方法では、まずガラス基板上に分離層を形成し、必要に応じて、分離層上に保護層を形成する。分離層(または保護層)上に、フォトリソグラフィによりパターン化された透明導電層31を形成する。透明導電層31上に、剥離可能な保護フィルムを積層し、透明導電層31から分離層までを転写して、ガラス基板を分離する。接着層を介して基材層32と分離層とを貼合し、剥離可能な保護フィルムを剥離することで、透明導電層31と分離層と接着層と基材層32とをこの順に有するタッチセンサパネル30が得られる。なお、透明導電層31と分離層とからなる積層体を、基材層32に貼合することなく、タッチセンサパネル30として用いてもよい。
【0036】
タッチセンサパネルの基材層32としては、トリアセチルセルロース、ポリエチレンテレフタレート、シクロオレフィンポリマー、ポリエチレンナフタレート、ポリオレフィン、ポリシクロオレフィン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリイミド、ポリアミド、ポリスチレン、ポリノルボルネンなどの樹脂フィルムが挙げられる。所望のタフネスを有する基材層を構成しやすい観点から、ポリエチレンテレフタレートが好ましく用いられる。
【0037】
タッチセンサパネルの基材層32は、優れた耐屈曲性を有する光学積層体を構成しやすい観点から、厚みが50μm以下であることが好ましく、30μm以下であることがさらに好ましい。タッチセンサパネルの基材層32は、厚みが、例えば5μm以上である。
【0038】
[偏光板]
偏光板20としては、吸収異方性を有する色素を吸着させた延伸フィルム、又は吸収異方性を有する色素を塗布し硬化させた液晶層を偏光子として含むフィルム等が挙げられる。偏光板20は、偏光子に加えて、保護層201を含み、位相差層等をさらに含む。
【0039】
(偏光子)
吸収異方性を有する色素としては、例えば、二色性色素が挙げられる。二色性色素として、具体的には、ヨウ素や二色性の有機染料が用いられる。二色性有機染料には、C.I. DIRECT RED 39などのジスアゾ化合物からなる二色性直接染料、トリスアゾ、テトラキスアゾなどの化合物からなる二色性直接染料が包含される。吸収異方性を有する色素を塗布し硬化させた偏光子は、例えば、液晶性を有する二色性色素を含む組成物又は二色性色素と重合性液晶とを含む組成物を塗布し硬化させて液晶層である。吸収異方性を有する色素を塗布し硬化させた液晶層は、吸収異方性を有する色素を吸着させた延伸フィルムに比べて、屈曲方向に制限がないため好ましい。
【0040】
(1)偏光子が延伸フィルムである偏光板
吸収異方性を有する色素を吸着させた延伸フィルムを偏光子として備える偏光板について説明する。偏光子である、吸収異方性を有する色素を吸着させた延伸フィルムは、通常、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを一軸延伸する工程、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色することにより、その二色性色素を吸着させる工程、二色性色素が吸着されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液で処理する工程、及びホウ酸水溶液による処理後に水洗する工程を経て製造される。かかる偏光子をそのまま偏光板として用いてもよく、その片面又は両面に透明保護フィルムを貼合したものを偏光板として用いてもよい。こうして得られる偏光子の厚みは、好ましくは2μm以上40μm以下である。
【0041】
ポリビニルアルコール系樹脂は、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化することによって得られる。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニルとそれに共重合可能な他の単量体との共重合体が用いられる。酢酸ビニルに共重合可能な他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類、アンモニウム基を有するアクリルアミド類などが挙げられる。
【0042】
ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、通常85モル%以上100モル%以下であり、好ましくは98モル%以上である。ポリビニルアルコール系樹脂は変性されていてもよく、例えば、アルデヒド類で変性されたポリビニルホルマールやポリビニルアセタールも使用することができる。ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、通常1,000以上10,000以下程度であり、好ましくは1,500以上5,000以下の範囲である。
【0043】
このようなポリビニルアルコール系樹脂を製膜したものが、偏光板の原反フィルムとして用いられる。ポリビニルアルコール系樹脂を製膜する方法は、特に限定されるものでなく、公知の方法で製膜することができる。ポリビニルアルコール系原反フィルムの膜厚は、例えば、10μm以上150μm以下程度とすることができる。
【0044】
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの一軸延伸は、二色性色素による染色の前、染色と同時、又は染色の後で行うことができる。一軸延伸を染色の後で行う場合、この一軸延伸は、ホウ酸処理の前に行ってもよいし、ホウ酸処理中に行ってもよい。また、これらの複数の段階で一軸延伸を行うことも可能である。一軸延伸にあたっては、周速の異なるロール間で一軸に延伸してもよいし、熱ロールを用いて一軸に延伸してもよい。また一軸延伸は、大気中で延伸を行う乾式延伸であってもよいし、溶剤を用い、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを膨潤させた状態で延伸を行う湿式延伸であってもよい。延伸倍率は、通常3~8倍程度である。
【0045】
延伸フィルムを偏光子として備える偏光板の厚みは、例えば1μm以上400μm以下であってよく、5μm以上100μm以下であってもよい。
【0046】
偏光子の片面又は両面に貼合される保護フィルムの材料としては、特に限定されるものではないが、例えば、環状ポリオレフィン系樹脂フィルム、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロースのような樹脂からなる酢酸セルロース系樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレートのような樹脂からなるポリエステル系樹脂フィルム、ポリカーボネート系樹脂フィルム、(メタ)アクリル系樹脂フィルム、ポリプロピレン系樹脂フィルムなど、当分野において公知のフィルムを挙げることができる。保護フィルムの厚みは、薄型化の観点から、通常300μm以下であり、200μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましく、また、通常5μm以上であり、20μm以上であることが好ましい。保護フィルムは位相差を有していても、有していなくてもよい。
【0047】
(2)偏光子が液晶層である偏光板
液晶層を偏光子として備える偏光板について説明する。偏光子として用いられる、吸収異方性を有する色素を塗布して形成された液晶層としては、液晶性を有する二色性色素を含む組成物、又は二色性色素と液晶化合物とを含む組成物を基材に塗布し硬化して得られる液晶層等が挙げられる。当該液晶層は、基材を剥離してまたは基材とともに偏光板として用いてもよく、またはその片面又は両面に保護フィルムを有する構成で偏光板として用いてもよい。当該保護フィルムとしては、上記した偏光子が延伸フィルムである偏光板と同一のものが挙げられる。
【0048】
吸収異方性を有する色素を塗布し硬化して得られた液晶層は薄い方が好ましいが、薄すぎると強度が低下し、加工性に劣る傾向がある。当該液晶層の厚さは、通常20μm以下であり、好ましくは5μm以下であり、より好ましくは0.5μm以上3μm以下である。
【0049】
液晶層を偏光子として備える偏光板の厚みは、例えば1μm以上50μm以下であってよい。
【0050】
(位相差層)
偏光板は、1層または2層以上の位相差層を含むことができる。位相差層は、光に所定の位相差を与える層であり、1/2波長層、1/4波長層、ポジティブC層等の光学補償層が例示される。位相差層は、正分散性の位相差層であっても、逆波長分散性の位相差層であってもよい。位相差層は、他の層とともに構成されている位相差体中の要素であってもよい。位相差体中の位相差層以外の層としては、例えば、基材層、配向膜層、保護層等が挙げられる。なお、他の層は位相差の値には影響を及ぼさない。
【0051】
位相差層としては、重合性液晶化合物の硬化物を含む液晶層、又は延伸フィルムが挙げられる。液晶層である位相差層の方が、延伸フィルムである位相差層よりも、一般的に薄膜化が容易である。
【0052】
位相差層が液晶層である場合は、厚さは0.5μm~10μmであることが好ましく、0.5μm~5μmであることがより好ましい。
【0053】
偏光板20の構成として、直線偏光子とともに、二つの位相差層を備える以下の構成が例示される。前面板10に近い側から順に、
i)直線偏光子、1/2波長層、1/4波長層の組み合わせ、
ii)直線偏光子、1/4波長層、ポジティブC層の組み合わせ、
等が挙げられる。上記i)及びii)の構成は円偏光板を提供しうる。光学積層体は、偏光板20として円偏光板を備える構成とすることにより、外部光の反射を防止することができる。
【0054】
1/2波長層は、入射光の電界振動方向(偏光面)にπ(=λ/2)の位相差を与えるものであり、直線偏光の向き(偏光方位)を変える機能を有している。また、円偏光の光を入射させると、円偏光の回転方向を反対回りにすることができる。
【0055】
1/2波長層は、特定の波長λnmにおける面内レターデーション値であるRe(λ)がRe(λ)=λ/2を満足する層である。可視光域の何れの波長においてRe(λ)=λ/2を達成されていればよいが、なかでも波長550nmにおいて達成されることが好ましい。波長550nmにおける面内レターデーション値であるRe(550)は、210nm≦Re(550)≦300nmを満足することが好ましい。また、220nm≦Re(550)≦290nmを満足することがより好ましい。
【0056】
1/4波長層は、入射光の電界振動方向(偏光面)にπ/2(=λ/4)の位相差を与えるものであり、ある特定の波長の直線偏光を円偏光に(又は円偏光を直線偏光に)変換する機能を有している。
【0057】
1/4波長層は、特定の波長λnmにおける面内レターデーション値であるRe(λ)がRe(λ)=λ/4を満足する層であり、可視光域の何れかの波長において達成されていればよいが、なかでも波長550nmで達成されることが好ましい。波長550nmにおける面内レターデーション値であるRe(550)が、100nm≦Re(550)≦160nmを満足することが好ましい。また、110nm≦Re(550)≦150nmを満足することがより好ましい。
【0058】
逆波長分散性とは、短波長での面内レタデーション値の方が長波長での面内レタデーション値よりも小さくなる光学特性であり、好ましくは、下記式(4):
Re(450)≦Re(550)≦Re(650) (4)
を満たすことである。
【0059】
光学補償層としては、例えば、ポジティブA層、ポジティブC層等が挙げられる。ポジティブA層は、その面内における遅相軸方向の屈折率をNx、その面内における進相軸方向の屈折率をNy、その厚み方向における屈折率をNzとしたときに、Nx>Nyの関係を満足するものである。ポジティブA層は、Nx>Ny≧Nzの関係を満足することが好ましい。また、ポジティブA層は1/4波長層としても機能することができる。ポジティブC層は、Nz>Nx≧Nyの関係を満足するものである。
【0060】
位相差層の光学特性は、位相差層を構成する液晶化合物の配向状態、又は位相差層を構成する延伸フィルムの延伸方法により調節することができる。偏光板20中の位相差層の光学特性を適宜調節することにより、反射防止性能を有する偏光板20とすることができる。
【0061】
(1)液晶層である位相差層
位相差層が液晶層である場合について説明する。図2は、液晶層である位相差層と他の層とを含む位相差体の一例を模式的に示す概略断面図である。図2に示すように、位相差体50は、基材層51、配向層52、液晶層である位相差層53がこの順に積層されてなる。位相差体50は、液晶層である位相差層53を含む構成であれば図2に示す構成に限定されることはなく、基材層51が剥離されて配向層52と位相差層53のみからなる構成であってもよく、基材層51と配向層52が剥離されて液晶層である位相差層53のみからなる構成であってもよい。
【0062】
図3は、液晶層である位相差層と他の層とを含む位相差体の他の例を模式的に示す概略断面図である。図3に示す位相差体55は、基材層56、接着層57、位相差層53がこの順に積層されてなる。位相差体55は、図2に示す位相差体50の位相差層53と別の基材層56とを、接着層57を介して貼合し、その後基材層51、または基材層51及び配向層52を剥離して形成される。接着層57としては、接着剤層、粘着剤層が挙げられる。
【0063】
基材層51は、基材層51上に形成される配向層52、及び液晶層である位相差層53を支持する支持層として機能を有する。基材層51は、樹脂材料で形成されたフィルムであることが好ましい。
【0064】
基材層51の樹脂材料としては、例えば、透明性、機械的強度、熱安定性、延伸性等に優れる樹脂材料が用いられる。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ノルボルネン系ポリマー等の環状ポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸メチル等の(メタ)アクリル酸系樹脂;トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース及びセルロースアセテートプロピオネート等のセルロースエステル系樹脂;ポリビニルアルコール及びポリ酢酸ビニル等のビニルアルコール系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリスチレン系樹脂;ポリアリレート系樹脂;ポリスルホン系樹脂;ポリエーテルスルホン系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリイミド系樹脂;ポリエーテルケトン系樹脂;ポリフェニレンスルフィド系樹脂;ポリフェニレンオキシド系樹脂、及びこれらの混合物、共重合物等を挙げることができる。これらの樹脂のうち、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、セルロースエステル系樹脂及び(メタ)アクリル酸系樹脂のいずれか又はこれらの混合物を用いることが好ましい。なお、上記「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸及びメタクリル酸の少なくとも1種」を意味する。
【0065】
基材層51は、上記の樹脂1種類又は2種以上を混合した単層であってもよく、2層以上の複層構造を有していてもよい。
【0066】
樹脂フィルムをなす樹脂材料には、任意の添加剤が添加されていてもよい。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、可塑剤、離型剤、着色防止剤、難燃剤、核剤、帯電防止剤、顔料、及び着色剤等が挙げられる。
【0067】
基材層51の厚さは、特に限定されないが、一般には強度や取扱い性等の作業性の点から5~200μmであることが好ましく、10~200μmであることがより好ましく、10~150μmであることがさらに好ましい。
【0068】
基材層51と配向層52との密着性を向上させるために、少なくとも基材層51の配向層52が形成される側の表面にコロナ処理、プラズマ処理、火炎処理等を行ってもよく、プライマー層等を形成してもよい。なお、基材層51、又は基材層51及び配向層52を剥離して位相差層とする場合には、剥離界面での密着力を調整することによって剥離を容易とすることができる。基材層56の材料、厚さ、処理等については、基材層51の説明が適用される。
【0069】
配向層52は、これらの配向層52上に形成される液晶層の位相差層53に含まれる液晶化合物を所望の方向に配向させる、配向規制力を有する。配向層52としては、配向性ポリマーで形成された配向性ポリマー層、光配向ポリマーで形成された光配向ポリマー層、層表面に凹凸パターンや複数のグルブ(溝)を有するグルブ配向層を挙げることができる。配向層52の厚みは、通常0.01~10μmであり、0.01~5μmであることが好ましい。
【0070】
配向性ポリマー層は、配向性ポリマーを溶剤に溶解した組成物を基材層51に塗布して溶剤を除去し、必要に応じてラビング処理をして形成することができる。この場合、配向規制力は、配向性ポリマーで形成された配向性ポリマー層では、配向性ポリマーの表面状態やラビング条件によって任意に調整することが可能である。
【0071】
光配向ポリマー層は、光反応性基を有するポリマー又はモノマーと溶剤とを含む組成物を基材層51に塗布し、偏光を照射することによって形成することができる。この場合、配向規制力は、光配向ポリマー層では、光配向ポリマーに対する偏光照射条件等によって任意に調整することが可能である。
【0072】
グルブ配向層は、例えば感光性ポリイミド膜表面にパターン形状のスリットを有する露光用マスクを介して露光、現像等を行って凹凸パターンを形成する方法、表面に溝を有する板状の原盤に、活性エネルギー線硬化性樹脂の未硬化の層を形成し、この層を基材層51に転写して硬化する方法、基材層51に活性エネルギー線硬化性樹脂の未硬化の層を形成し、この層に、凹凸を有するロール状の原盤を押し当てる等により凹凸を形成して硬化させる方法等によって形成することができる。
【0073】
液晶層である位相差層53は、光に所定の位相差を与えるものであれば特に限定されず、例えば、1/2波長層、1/4波長層、ポジティブC層などの光学補償層を挙げることができる。
【0074】
液晶層である位相差層53は、公知の液晶化合物を用いて形成することができる。液晶化合物の種類は特に限定されず、棒状液晶化合物、円盤状液晶化合物、及びこれらの混合物を用いることができる。また、液晶化合物は、高分子液晶化合物であってもよく、重合性液晶化合物であってもよく、これらの混合物であってもよい。液晶化合物としては、例えば、特表平11-513019号公報、特開2005-289980号公報、特開2007-108732号公報、特開2010-244038号公報、特開2010-31223号公報、特開2010-270108号公報、特開2011-6360号公報、特開2011-207765号公報、特開2016-81035号公報、国際公開第2017/043438号及び特表2011-207765号公報に記載の液晶化合物が挙げられる。
【0075】
例えば、重合性液晶化合物を用いる場合には、重合性液晶化合物を含む組成物を、配向層52上に塗布して塗膜を形成し、この塗膜を硬化させることによって、位相差層53を形成することができる。このようにして形成される位相差層53は、重合性液晶化合物の硬化物を含むものとなる。位相差層53の厚みは、0.5μm~10μmであることが好ましく、0.5~5μmであることがさらに好ましい。
【0076】
重合性液晶化合物を含む組成物は、液晶化合物以外に、重合開始剤、重合性モノマー、界面活性剤、溶剤、密着改良剤、可塑剤、配向剤等が含まれていてもよい。重合性液晶化合物を含む組成物の塗布方法としては、ダイコーティング法等の公知の方法が挙げられる。重合性液晶化合物を含む組成物の硬化方法としては、活性エネルギー線(例えば紫外線)を照射する等の公知の方法が挙げられる。
【0077】
(2)延伸フィルムである位相差層
位相差層が延伸フィルムである場合について説明する。延伸フィルムは通常、基材を延伸することで得られる。基材を延伸する方法としては、例えば、基材がロールに巻き取られているロール(巻き取り体)を準備し、かかる巻き取り体から、基材を連続的に巻き出し、巻き出された基材を加熱炉へと搬送する。加熱炉の設定温度は、基材のガラス転移温度近傍(℃)~[ガラス転移温度+100](℃)の範囲、好ましくは、ガラス転移温度近傍(℃)~[ガラス転移温度+50](℃)の範囲とする。当該加熱炉においては、基材の進行方向へ、又は進行方向と直交する方向へ延伸する際に、搬送方向や張力を調整し任意の角度に傾斜をつけて一軸又は二軸の熱延伸処理を行う。延伸の倍率は、通常1.1~6倍であり、好ましくは1.1~3.5倍である。
【0078】
また、斜め方向に延伸する方法としては、連続的に配向軸を所望の角度に傾斜させることができるものであれば、特に限定されず、公知の延伸方法が採用できる。このような延伸方法は例えば、特開昭50-83482号公報や特開平2-113920号公報に記載された方法を挙げることができる。延伸することでフィルムに位相差性を付与する場合、延伸後の厚みは、延伸前の厚みや延伸倍率によって決定される。
【0079】
前記基材は通常透明基材である。透明基材とは、光、特に可視光を透過し得る透明性を有する基材を意味し、透明性とは、波長380~780nmにわたる光線に対しての透過率が80%以上となる特性をいう。具体的な透明基材としては、透光性樹脂基材が挙げられる。透光性樹脂基材を構成する樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン;ノルボルネン系ポリマーなどの環状オレフィン系樹脂;ポリビニルアルコール;ポリエチレンテレフタレート;ポリメタクリル酸エステル;ポリアクリル酸エステル;トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネートなどのセルロースエステル;ポリエチレンナフタレート;ポリカーボネート;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリエーテルケトン;ポリフェニレンスルフィドおよびポリフェニレンオキシドが挙げられる。入手のしやすさや透明性の観点から、ポリエチレンテレフタレート、ポリメタクリル酸エステル、セルロースエステル、環状オレフィン系樹脂またはポリカーボネートが好ましい。
【0080】
セルロースエステルは、セルロースに含まれる水酸基の一部または全部が、エステル化されたものであり、市場から容易に入手することができる。また、セルロースエステル基材も市場から容易に入手することができる。市販のセルロースエステル基材としては、例えば、“フジタック(登録商標)フィルム”(富士フィルム(株));“KC8UX2M”、“KC8UY”及び“KC4UY”(コニカミノルタオプト(株))などが挙げられる。
【0081】
ポリメタクリル酸エステル及びポリアクリル酸エステル(以下、ポリメタクリル酸エステル及びポリアクリル酸エステルをまとめて(メタ)アクリル系樹脂ということがある。)は、市場から容易に入手できる。
【0082】
(メタ)アクリル系樹脂としては、例えば、メタクリル酸アルキルエステル又はアクリル酸アルキルエステルの単独重合体や、メタクリル酸アルキルエステルとアクリル酸アルキルエステルとの共重合体などが挙げられる。メタクリル酸アルキルエステルとして具体的には、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレートなどが、またアクリル酸アルキルエステルとして具体的には、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレートなどがそれぞれ挙げられる。かかる(メタ)アクリル系樹脂には、汎用の(メタ)アクリル系樹脂として市販されているものが使用できる。(メタ)アクリル系樹脂として、耐衝撃(メタ)アクリル樹脂と呼ばれるものを使用してもよい。
【0083】
さらなる機械的強度向上のために、(メタ)アクリル系樹脂にゴム粒子を含有させることも好ましい。ゴム粒子は、アクリル系のものが好ましい。ここで、アクリル系ゴム粒子とは、ブチルアクリレートや2-エチルヘキシルアクリレートのようなアクリル酸アルキルエステルを主成分とするアクリル系モノマーを、多官能モノマーの存在下に重合させて得られるゴム弾性を有する粒子である。アクリル系ゴム粒子は、このようなゴム弾性を有する粒子が単層で形成されたものであってもよいし、ゴム弾性層を少なくとも一層有する多層構造体であってもよい。多層構造のアクリル系ゴム粒子としては、上記のようなゴム弾性を有する粒子を核とし、その周りを硬質のメタクリル酸アルキルエステル系重合体で覆ったもの、硬質のメタクリル酸アルキルエステル系重合体を核とし、その周りを上記のようなゴム弾性を有するアクリル系重合体で覆ったもの、また硬質の核の周りをゴム弾性のアクリル系重合体で覆い、さらにその周りを硬質のメタクリル酸アルキルエステル系重合体で覆ったものなどが挙げられる。弾性層で形成されるゴム粒子は、その平均直径が通常50~400nm程度の範囲にある。
【0084】
(メタ)アクリル系樹脂におけるゴム粒子の含有量は、(メタ)アクリル系樹脂100質量部あたり、通常5~50質量部程度である。(メタ)アクリル系樹脂及びアクリル系ゴム粒子は、それらを混合した状態で市販されているので、その市販品を用いることができる。アクリル系ゴム粒子が配合された(メタ)アクリル系樹脂の市販品の例として、住友化学(株)から販売されている“HT55X”や“テクノロイ S001”などが挙げられる。“テクノロイ S001”は、フィルムの形で販売されている。
【0085】
環状オレフィン系樹脂は、市場から容易に入手できる。市販の環状オレフィン系樹脂としては、“Topas”(登録商標)[Ticona社(独)]、“アートン”(登録商標)[JSR(株)]、“ゼオノア(ZEONOR)”(登録商標)[日本ゼオン(株)]、“ゼオネックス(ZEONEX)”(登録商標)[日本ゼオン(株)]および“アペル”(登録商標)[三井化学(株)]が挙げられる。このような環状オレフィン系樹脂を、例えば、溶剤キャスト法、溶融押出法などの公知の手段により製膜して、基材とすることができる。また、市販されている環状オレフィン系樹脂基材を用いることもできる。市販の環状オレフィン系樹脂基材としては、“エスシーナ”(登録商標)[積水化学工業(株)]、“SCA40”(登録商標)[積水化学工業(株)]、“ゼオノアフィルム”(登録商標)[オプテス(株)]および“アートンフィルム”(登録商標)[JSR(株)]が挙げられる。
【0086】
環状オレフィン系樹脂が、環状オレフィンと、鎖状オレフィンやビニル基を有する芳香族化合物との共重合体である場合、環状オレフィンに由来する構造単位の含有割合は、共重合体の全構造単位に対して、通常50モル%以下、好ましくは15~50モル%の範囲である。鎖状オレフィンとしては、エチレンおよびプロピレンが挙げられ、ビニル基を有する芳香族化合物としては、スチレン、α-メチルスチレンおよびアルキル置換スチレンが挙げられる。環状オレフィン系樹脂が、環状オレフィンと、鎖状オレフィンと、ビニル基を有する芳香族化合物との三元共重合体である場合、鎖状オレフィンに由来する構造単位の含有割合は、共重合体の全構造単位に対して、通常5~80モル%であり、ビニル基を有する芳香族化合物に由来する構造単位の含有割合は、共重合体の全構造単位に対して、通常5~80モル%である。このような三元共重合体は、その製造において、高価な環状オレフィンの使用量を比較的少なくすることができるという利点がある。
【0087】
(保護層)
偏光板200に含まれる保護層201は、式(1a)の関係式を満たすものであれば特に限定されない。偏光板200の構成の一例として、図2に示す位相差体50または図3に示す位相差体55を含み、位相差体50の基材層51または位相差体55の基材層56が保護層201である構成が挙げられる。この場合、上述の基材層51,56の説明がそのまま保護層201の説明として当てはまる。例えば、偏光板200が上記i)の構成の円偏光板である場合、保護層201を1/4波長層を支持する基材層51,56とすることができ、保護層201の第1粘着剤層41とは反対側の表面上に1/4波長層が設けられている構成が挙げられる。また、偏光板200が上記ii)の構成の円偏光板である場合、保護層201をポジティブC層を支持する基材層51,56とすることができ、保護層201の第1粘着剤層41とは反対側の表面上にポジティブC層が設けられている構成が挙げられる。上記の構成においては、保護層201の表面上に位相差層が設けられている構成であり、保護層201と位相差層とが互いに接している構成であってもよく(例えば図2に示す位相差体50)、保護層201と位相差層とが違いに接していない構成であってもよい(例えば図3に示す位相差体55)。
【0088】
偏光板200の構成の他の例として、偏光子の第1粘着剤層41側の表面に貼合される保護フィルムが保護層201である構成が挙げられる。この場合、上述の保護フィルムの説明がそのまま保護層201の説明として当てはまる。また、偏光板200の構成の他の例として、偏光板200の第1粘着剤層41側の表面に保護層201を貼合して偏光板200の構成要素とする構成が挙げられる。この場合、保護層201としては、上述の基材層51、または上述の保護フィルムで説明したものと同様のものを用いることができる。
【0089】
[粘着剤層]
第1粘着剤層41は、偏光板20とタッチセンサパネル30との間に介在する層である。第2粘着剤層42は、タッチセンサパネル30の偏光板20側とは反対側の表面上に設けられている層であり、光学積層体100を表示パネル等の他の部材に貼合するために用いることができる。第2粘着剤層42の表面には離型フィルムが貼合されていてもよい。
【0090】
第1粘着剤層41及び第2粘着剤層42は、(メタ)アクリル系、ゴム系、ウレタン系、エステル系、シリコーン系、ポリビニルエーテル系のような樹脂を主成分とする粘着剤組成物で構成することができる。中でも、透明性、耐候性、耐熱性等に優れる(メタ)アクリル系樹脂をベースポリマーとする粘着剤組成物が好適である。粘着剤組成物は、活性エネルギー線硬化型、熱硬化型であってもよい。
【0091】
粘着剤組成物に用いられる(メタ)アクリル系樹脂(ベースポリマー)としては、例えば、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルのような(メタ)アクリル酸エステルの1種又は2種以上をモノマーとする重合体又は共重合体が好適に用いられる。ベースポリマーには、極性モノマーを共重合させることが好ましい。極性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートのような、カルボキシル基、水酸基、アミド基、アミノ基、エポキシ基等を有するモノマーを挙げることができる。
【0092】
粘着剤組成物は、上記ベースポリマーのみを含むものであってもよいが、通常は架橋剤をさらに含有する。架橋剤としては、2価以上の金属イオンであって、カルボキシル基との間でカルボン酸金属塩を形成するもの;ポリアミン化合物であって、カルボキシル基との間でアミド結合を形成するもの;ポリエポキシ化合物やポリオールであって、カルボキシル基との間でエステル結合を形成するもの;ポリイソシアネート化合物であって、カルボキシル基との間でアミド結合を形成するものが例示される。中でも、ポリイソシアネート化合物が好ましい。
【0093】
活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物とは、紫外線や電子線のような活性エネルギー線の照射を受けて硬化する性質を有しており、活性エネルギー線照射前においても粘着性を有してフィルム等の被着体に密着させることができ、活性エネルギー線の照射によって硬化して密着力の調整ができる性質を有する粘着剤組成物である。活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物は、紫外線硬化型であることが好ましい。活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物は、ベースポリマー、架橋剤に加えて、活性エネルギー線重合性化合物をさらに含有する。さらに必要に応じて、光重合開始剤や光増感剤等を含有させることもある。
【0094】
粘着剤組成物は、光散乱性を付与するための微粒子、ビーズ(樹脂ビーズ、ガラスビーズ等)、ガラス繊維、ベースポリマー以外の樹脂、粘着性付与剤、充填剤(金属粉やその他の無機粉末等)、酸化防止剤、紫外線吸収剤、染料、顔料、着色剤、消泡剤、腐食防止剤、光重合開始剤等の添加剤を含むことができる。
【0095】
上記粘着剤組成物の有機溶剤希釈液を基材上に塗布し、乾燥させることにより形成することができる。活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物を用いた場合は、形成された粘着剤層に、活性エネルギー線を照射することにより所望の硬化度を有する硬化物とすることができる。
【0096】
第1粘着剤層41と第2粘着剤層42とは、同じ材料からなるものであっても、異なる材料からなるものであってもよい。第1粘着剤層41の厚みt1、及び第2粘着剤層の厚みt2は、特に限定されることはなく、例えば3μm以上100μm以下であり、5μm以上50μm以下であることが好ましく、20μm以上であってもよい。第1粘着剤層41の厚みt1、及び第2粘着剤層の厚みt2は、上記した式(2a)及び式(3a)を満たすように選択されることが好ましい。
【0097】
第1粘着剤層41および第2粘着剤層42は、温度25℃における貯蔵弾性率が、それぞれ0.005MPa以上1.0MPa以下であることが好ましく、0.01MPa以上0.5MPa以下であることがより好ましく、0.01MPa以上0.2MPa以下であることがさらに好ましい。貯蔵弾性率は、後述の実施例に記載された方法で測定される。
【0098】
[貼合層]
貼合層43は、偏光板20と前面板10の間に介在する層である。貼合層43は、特に限定されることはなく、例えば、粘着剤、水系接着剤、活性エネルギー線硬化型接着剤等から形成することができる。貼合層43が粘着剤から形成される場合、上記した粘着剤組成物を用いることができる。貼合層43の厚さは、0.1μm~50μmであることが好ましく、0.1μm~10μmであることがより好ましく、0.5μm~5μmであることがさらに好ましい。
【0099】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【実施例
【0100】
以下に示す、前面板A1、保護層B1~B4、偏光板C1~C4、タッチセンサパネルD1,D2、粘着剤シートE1~E5を準備した。
【0101】
[前面板]
(前面板A1)
透明の基材フィルム(ポリアミドイミドフィルム、厚み50μm)の表面にハードコート層用組成物をコーティングした後、溶剤を乾燥させUV硬化することで、基材フィルムの両表面に厚み10μmのハードコート層が形成された前面板A1(厚み70μm、弾性率6GPa、縦177mm×横105mm)を作製した。
【0102】
ハードコート層用組成物は、多機能アクリレート(MIWONスペシャルティーケミカル、MIRAMER M340)30重量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルに分散したナノシリカゾル(平均粒径12nm、固形分40%)50重量部、エチルアセテート17重量部、光重合開始剤(Ciba社、I184)2.7重量部、フッ素系添加剤(信越化学工業株式会社、KY1203)0.3重量部を攪拌機を利用して配合し、ポリプロピレン(PP)材質のフィルターを用いて濾過することでハードコート層用組成物を製造した。
【0103】
[保護層]
(保護層B1)
保護層B1として、厚み23μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(SKC社製、商品名:SH34)を準備した。かかるPETフィルムのタフネスを後述の方法により測定したところ、140mJ/mmであった。
【0104】
(保護層B2)
保護層B2として、厚み40μmのトリアセチルセルロース(TAC)フィルム(コニカミノルタ株式会社製、商品名:KC4UAW)を準備した。かかるTACフィルムのタフネスを後述の方法により測定したところ、20mJ/mmであった。
【0105】
(保護層B3)
保護層B3として、厚み60μmのトリアセチルセルロース(TAC)フィルム(コニカミノルタ株式会社製、商品名:KC6UAW)を準備した。かかるTACフィルムのタフネスを後述の方法により測定したところ、18mJ/mmであった。
【0106】
(保護層B4)
保護層B4として、厚み40μmの 環状オレフィン系樹脂(COP)フィルム(日本ゼオン株式会社製、商品名:ZF-16)を準備した。かかるCOPフィルムのタフネスを後述の方法により測定したところ、4mJ/mmであった。
【0107】
(タフネスの測定)
保護層のタフネスは、JIS K7161に準拠して、次のように測定した。保護層から長辺110mm×短辺10mmの長方形の小片をスーパーカッターを用いて切り出した。次いで、引張試験機〔(株)島津製作所製 オートグラフ AG-Xplus試験機〕の上下つかみ具で、つかみ具の間隔が5cmとなるように上記小片の長辺方向両端を挟み、温度23℃、相対湿度55%の環境下、引張速度4mm/分で小片の長辺方向に引張った。タフネスは、初期から破断までの間における、応力-ひずみ曲線の積分値として算出した。
【0108】
[偏光板]
(偏光板C1)
偏光板C1を次のようにして作製した。トリアセチルセルロース(TAC)フィルム(厚み25μm)上に光配向膜を形成した。二色性色素と重合性液晶化合物とを含む組成物を、配向膜上に塗布し、重合性液晶化合物を配向、硬化させて、厚み2μmの偏光子を得た。偏光子上にポリビニルアルコールと水とを含む樹脂組成物を、乾燥後の厚みが1.0μmとなるように塗工した。塗膜を温度80℃で3分間乾燥して、オーバーコート層を形成した。オーバーコート層の表面に粘着剤層を介して以下の位相差積層体を貼合した。位相差積層体は、重合性液晶化合物が硬化した層及び配向膜からなるλ/4板(厚さ3μm)/粘着剤層(厚さ5μm)/重合性液晶化合物が硬化した層及び配向膜からなるポジティブC層(厚さ3μm)/基材層からなる。このようにして、偏光板C1を作製した。位相差積層体における基材層は、第2位相差層(ポジティブC層)を形成するために用いた図2に示す基材層51に相当し、図1に示す保護層201に相当する。偏光板C1においては、基材層51として、保護層B1を用いた。
【0109】
(偏光板C2~C4)
基材層51として、保護層B1の代わりにそれぞれ保護層B2~B4を用いて、偏光板C1と同様にして偏光板C2~C4を作製した。
【0110】
[タッチセンサパネル]
(タッチセンサパネルD1)
透明導電層、分離層、接着剤層、及び基材層がこの順に積層された縦177mm×横105mmのタッチセンサパネルD1を準備した。透明導電層はITO層を含み、分離層はアクリル系樹脂組成物の硬化層を含むものであり、両者の厚みの合計は7μmであった。接着剤層は厚みが2μmであった。基材層は、厚み20μmのポリエチレンテレフタレートフィルムであり、タフネスが69mJ/mmであった。
【0111】
(タッチセンサパネルD2)
透明導電層、分離層がこの順に積層された縦177mm×横105mmのタッチセンサパネルD2を準備した。透明導電層はITO層を含み、分離層はアクリル系樹脂組成物の硬化層を含むものであり、両者の厚みの合計は7μmであった。
【0112】
[貼合層]
表1に示す各成分の割合にて貼合層を形成する粘着剤組成物を調製した。この粘着剤組成物を離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み38μm)の離型処理面に、アプリケータを利用して乾燥後の厚みが25μmになるように塗布した。塗布層を100℃で1分間乾燥して、貼合層を備えるフィルムを得た。その後、貼合層上に、離型処理された別のポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み38μm)を貼合した。その後、温度23℃、相対湿度50%RHの条件で7日間養生させた。
【0113】
【表1】

BA:アクリル酸ブチル
EHA:アクリル酸2-エチルヘキシル
AA:アクリル酸
架橋剤及びシランカップリング剤は以下のものを用いた。
架橋剤:コロネートL(東ソー株式会社製)
シランカップリング(SC)剤:KBM-403(信越化学工業株式会社製)
【0114】
[粘着剤シート]
(粘着シートE1)
(1)(メタ)アクリル系ポリマーの調製
アクリル酸n-ブチル54質量部、アクリル酸2-エチルヘキシル45質量部およびアクリル酸4-ヒドロキシブチル1質量部を共重合させて、(メタ)アクリル系ポリマーを調製した。この(メタ)アクリル系ポリマーの分子量を後述する方法で測定したところ、重量平均分子量(Mw)は80万であった。
【0115】
(2)粘着剤組成物の調製
上記工程で得られた(メタ)アクリル系ポリマー100質量部(固形分換算値;以下同じ)と、熱架橋剤としてのトリメチロールプロパン変性キシリレンジイソシアネート(綜研化学社製、製品名「TD-75」)0.25質量部、およびシランカップリング剤としての3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、製品名「KBM403」)0.2質量部とを混合し、十分に撹拌して、メチルエチルケトンで希釈することにより、粘着剤組成物の塗布溶液を得た。(メタ)アクリル系ポリマーを100質量部(固形分換算値)とした場合の粘着剤組成物の各配合(固形分換算値)を表2に示す。なお、表2に記載の略号等は以下を表す。
BA:アクリル酸n-ブチル
2EHA:アクリル酸2-エチルヘキシル
4HBA:アクリル酸4-ヒドロキシブチル
【0116】
(3)粘着シートE1の製造
得られた粘着剤組成物の塗布溶液を、軽セパレータ(リンテック社製,製品名「SP-PET752150」)の剥離処理面に、ナイフコーターで塗布した。そして、塗布層に対し、90℃で1分間加熱処理して塗布層を形成した。次いで、上記で得られた軽セパレータ上の塗布層と、重セパレータ(リンテック社製、製品名「SP-PET382120」)とを、当該セパレータの剥離処理面が塗布層に接触するように貼合し、23℃、50%RHの条件下で7日間養生することにより、厚さ10μmの粘着剤層を有する粘着シートE1、すなわち、軽セパレータ/粘着剤層(厚さ:10μm)/重セパレータの構成からなる粘着シートE1を作製した。粘着シートE1の粘着剤層を粘着剤層E1とする。粘着シートE1について、測定された貯蔵弾性率を表2に示す。なお、粘着剤層E1の厚さ及び貯蔵弾性率は、後述する方法で測定した値である。
【0117】
(粘着シートE2)
粘着シートE1と同じ粘着剤組成物の塗布溶液を用いて、塗布厚さのみが異なる点以外は、粘着シートE1と同じ方法により軽セパレータ/粘着剤層(厚さ:25μm)/重セパレータの構成からなる粘着シートE2を作製した。粘着シートE2の粘着剤層を粘着剤層E2とする。粘着シートE2は、粘着シートE1と同じ粘着剤組成物を用いて作製しているため、その貯蔵弾性率は粘着シートE1と同じ値である。
【0118】
(粘着シートE3)
粘着シートE1と同じ粘着剤組成物の塗布溶液を用いて、塗布厚さのみが異なる点以外は、粘着シートE1と同じ方法により軽セパレータ/粘着剤層(厚さ:50μm)/重セパレータの構成からなる粘着シートE3を作製した。粘着シートE3の粘着剤層を粘着剤層E3とする。粘着シートE3は、粘着シートE1と同じ粘着剤組成物を用いて作製しているため、その貯蔵弾性率は粘着シートE1と同じ値である。
【0119】
(粘着シートE4)
(1)(メタ)アクリル系ポリマーの調製
(メタ)アクリル系ポリマーを構成する各モノマーの割合を表2に示すように調製し、粘着シートE1の製造工程と同様にして、表2に示す重量平均分子量(Mw)の(メタ)アクリル系ポリマーを調製した。
【0120】
(2)粘着剤組成物の調製
上記工程で得られた(メタ)アクリル系ポリマー100質量部と、熱架橋剤としてのトリメチロールプロパン変性キシリレンジイソシアネート(綜研化学社製、製品名「TD-75」)と、シランカップリング剤としての3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、製品名「KBM403」)とを表2に示す配合割合で混合し、十分に撹拌して、メチルエチルケトンで希釈することにより、粘着剤組成物の塗布溶液を得た。
【0121】
(3)粘着シートE4の製造
得られた粘着剤組成物の塗布溶液を用いて、塗布厚さのみが異なる点以外は、粘着シートE1と同じ方法により軽セパレータ/粘着剤層(厚さ:5μm)/重セパレータの構成からなる粘着シートE4を作製した。粘着シートE4の粘着剤層を粘着剤層E4とする。粘着シートE4について、測定された貯蔵弾性率を表2に示す。なお、粘着剤層E4の厚さ及び貯蔵弾性率は、後述する方法で測定した値である。
【0122】
(粘着シートE5)
粘着シートE4と同じ粘着剤組成物の塗布溶液を用いて、塗布厚さのみが異なる点以外は、粘着シートE1と同じ方法により軽セパレータ/粘着剤層(厚さ:10μm)/重セパレータの構成からなる粘着シートE5を作製した。粘着シートE5の粘着剤層を粘着剤層E5とする。粘着シートE5は、粘着シートE4と同じ粘着剤組成物を用いて作製しているため、その貯蔵弾性率は粘着シートE4と同じ値である。
【0123】
【表2】
【0124】
(粘着剤層の厚み測定)
接触式膜厚測定装置(株式会社ニコン製「MS-5C」)を用いて測定した。
【0125】
(貯蔵弾性率の測定)
粘着剤層を150μmとなるように積層したサンプルを、5mm×30mmの大きさに裁断し、レオメーター(MCR-301、 Anton Parr 社製)を用いて、温度25°、応力1%、周波数1Hzにおける貯蔵弾性率を測定した。測定結果を表2に示す。
【0126】
<実施例1>
前面板A1の一方のハードコート層側の表面と、偏光板C1の両方の表面と、タッチセンサパネルD1の透明導電層側の表面にコロナ処理を施した。コロナ処理は、周波数:20kHz、電圧:8.6kV、パワー:2.5kW、速度:6m/分の条件で行った。そして、「前面板A1/貼合層/偏光板C1/粘着剤層E1/タッチセンサパネルD1/粘着剤層E3」となるように各層を積層して、ロール接合機を用いて貼合して、オートクレーブにて養生を行い、図1に示す光学積層体100と同様の構成の実施例1の光学積層体を得た。得られた光学積層体について、耐衝撃性試験及び耐屈曲性試験を行った。結果を表3に示す。
【0127】
<実施例2~7、比較例1,2>
実施例1において、偏光板、タッチセンサパネル、粘着剤層(第1粘着剤層、第2粘着剤層)として、表3に示すものを用いた点以外は、実施例1と同様にして実施例2~7、比較例1,2の光学積層体を得た。得られた光学積層体について、耐衝撃性試験及び耐屈曲性試験を行った。結果を表3に示す。
【0128】
<耐衝撃性試験>
各実施例および比較例で得られた光学積層体から、長辺150mm×短辺70mmの長方形の大きさの小片をスーパーカッターを用いて切り出し、小片の第2粘着剤層を介してアクリル板に貼合した。そして、23℃、相対湿度55%の環境下で、小片に対して、評価用ペンを小片の前面板の最表面から10cmの高さにペン先が位置しかつペン先が下向きとなるように保持し、その位置から評価用ペンを落下させた。小片の前面板には、タッチセンサパネルの透明導電層のパターンを表記し、評価用ペンはペン先が透明導電層が配置されている位置に接触するように落下させた。評価用ペンとして、重量が11gであり、ペン先の直径が0.7mmのペンを用いた。評価用ペンを落下させた後の小片について、目視での観察及びタッチセンサパネル機能の確認を行い、以下の基準で評価を行った。表3に評価結果を示す。
A:クラックなし。タッチセンサパネル機能維持。
B:クラックあり。タッチセンサパネル機能維持。
C:クラックあり。タッチセンサパネル機能なし。
【0129】
<耐屈曲性試験>
温度25℃において、次に示す手順で屈曲性試験を行った。屈曲試験機(CFT-720C、Covotech社製)に、各実施例及び比較例で得られた光学積層体を平坦な状態(屈曲していない状態)で設置し、タッチセンサパネル側が内側となるようにして屈曲させたときに対向するタッチセンサパネル間の距離が4.0mmとなるように光学積層体を屈曲させた後、元の平坦な状態に戻す屈曲操作を行った。この屈曲操作を1回行ったときを屈曲回数1回と数え、この屈曲操作を繰返し行った。屈曲操作で屈曲した領域においてクラック及び/又は粘着剤層の浮きが発生したときの屈曲回数を限界屈曲回数として確認し、以下のように評価した。表3に評価結果を示す。
A:屈曲回数が20万回に達しても限界屈曲回数に達しなかった、
B:屈曲回数が10万回以上20万回以下で限界屈曲回数に達した、
C:屈曲回数が5万回以上10万回未満で限界屈曲回数に達した、
D:屈曲回数が5万回未満で限界屈曲回数に達した。
【0130】
【表3】
【符号の説明】
【0131】
10 前面板、20 偏光板、30 タッチセンサパネル、31 透明導電層、32 基材層、41 第1粘着剤層、42 第2粘着剤層、43 貼合層、50,55 位相差体、51,56 基材層、52 配向層、53 位相差層、200 偏光層、201 保護層。
図1
図2
図3