(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-11
(45)【発行日】2023-07-20
(54)【発明の名称】熱硬化性樹脂組成物、硬化物、電子部品
(51)【国際特許分類】
C08G 75/08 20060101AFI20230712BHJP
C08G 75/12 20160101ALI20230712BHJP
C08G 65/26 20060101ALI20230712BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20230712BHJP
H01L 23/31 20060101ALI20230712BHJP
【FI】
C08G75/08
C08G75/12
C08G65/26
H01L23/30 R
(21)【出願番号】P 2019159909
(22)【出願日】2019-09-02
【審査請求日】2022-06-10
(73)【特許権者】
【識別番号】591021305
【氏名又は名称】太陽ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105315
【氏名又は名称】伊藤 温
(72)【発明者】
【氏名】國土 萌衣
(72)【発明者】
【氏名】石川 信広
【審査官】中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-071308(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G75/00-75/32
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オキセタン含有化合物と、エピスルフィド含有化合物と、有機系強塩基化合物とを含む熱硬化性樹脂組成物であって、
前記有機系強塩基化合物は、25℃における前記有機系強塩基化合物の水溶液のpKaが11以上、又は、25℃における前記有機系強塩基化合物のアセトニトリル溶液のpKaが20以上であり、
前記熱硬化性樹脂組成物中の前記オキセタン
含有化合物のオキセタニル基と前記エピスルフィド含有化合物のエピスルフィド基との当量比(オキセタニル:エピスルフィド)が1:1~1:3であることを特徴とする、熱硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の硬化性樹脂組成物が、硬化されてなることを特徴とする、硬化物。
【請求項3】
請求項2に記載の硬化物を備えることを特徴とする、電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性樹脂組成物、硬化物、電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品の分野に使用される熱硬化性樹脂材料には、一般的に耐熱性、耐薬品性、電気的特性、機械的特性等が求められ、中でも半導体デバイスのアンダーフィル材のような液状の熱硬化性樹脂材料には、上記特性に加えて低粘度であることが必要とされる。
【0003】
従来、このような液状の熱硬化性樹脂材料としては、例えば、エポキシ樹脂を主成分とし、酸無水物、イミダゾール系硬化促進剤、改質剤及びフィラーを含有するアンダーフィル用液状熱硬化性樹脂組成物が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
かかる特許文献1に記載された熱硬化性樹脂組成物によれば、確かに、低粘度であって、その硬化物は、低弾性、高靭性の特性を有するものを提供することができる。
【0006】
しかしながら、このようなエポキシ樹脂を主成分とする熱硬化性樹脂組成物では、より微細な構造を有する電子部品への用途においては、低粘度(高流動性)が十分ではなく、その結果、電子部品の細部にまで樹脂組成物を充填させることができず、硬化物中にボイドを残存するといった問題が生じやすいことに、発明者らは気付いた。
【0007】
そこで、本発明の目的は、エポキシ樹脂系以外の化合物を主成分とする硬化系であって、低粘度かつ低温硬化性を両立できる、電子部品に用いて好適な(耐熱性などの諸特性に優れる)液状の熱硬化性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的の実現に向け鋭意検討するなかで、まず、電子部品に用いられる熱硬化性樹脂組成物の硬化反応において、ラジカル硬化系では、酸素阻害を受け易く、密着性に劣る傾向があり、カチオン硬化系では、低温硬化性に優れるものの、導体回路の腐食の問題があることに気付き、アニオン硬化系の組成物に着目した。
そして、本発明者らは、このアニオン硬化系の組成物について、低粘度化および低温硬化性化に向けて鋭意研究した結果、有機系強塩基化合物を用いた特定のアニオン硬化系の組成物により、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、
オキセタン含有化合物と、エピスルフィド含有化合物と、有機系強塩基化合物とを含むことを特徴とする、熱硬化性樹脂組成物を提供する。
【0010】
本発明は、前記硬化性樹脂組成物が、硬化されてなることを特徴とする、硬化物を提供する。
【0011】
本発明は、前記硬化物を備えることを特徴とする、電子部品を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、エポキシ樹脂系以外の化合物を主成分とする硬化系であって、低粘度かつ低温硬化性を両立できる、電子部品に用いて好適な(耐熱性などの諸特性に優れる)液状の熱硬化性樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
なお、説明した化合物に異性体が存在する場合、特に断らない限り、存在し得る全ての異性体が本発明において使用可能である。
【0014】
本願における組成物の固形分とは、溶媒(特に有機溶媒)以外の組成物を構成する成分、又はその質量や体積を意味する。
【0015】
<<<<熱硬化性樹脂組成物>>>>
<<<熱硬化性樹脂組成物が含有する成分>>>
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、オキセタン含有化合物と、エピスルフィド含有化合物と、有機系強塩基化合物とを含む。本発明の熱硬化性樹脂組成物によれば、オキセタン含有化合物とエピスルフィド含有化合物とをアニオン重合させることが可能であり、銅回路の腐食の原因となる酸成分を使用せずとも(カチオン重合させずとも)、低温硬化性と、低粘度化による高い流動性と、を達成することができる。また、本発明によれば、このような熱硬化性樹脂組成物は、硬化物の硬度を高めることも可能である。
【0016】
また、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、必要に応じてその他の成分を含んでいてもよい。以下、各々の成分について説明する。
【0017】
<<オキセタン含有化合物>>
オキセタン含有化合物は、1分子中に1個または2個以上のオキセタニル基を有する化合物であり、従来公知のものを使用可能である。
【0018】
1分子中に1個のオキセタニル基を有する単官能オキセタン化合物としては、例えば、3-メチルオキセタン、3-エチルオキセタン、3-ヒドロキシメチルオキセタン、3-メチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタンなどが挙げられる。
【0019】
1分子中に2個以上のオキセタニル基を有する多官能オキセタン化合物としては、例えば、ビス[(3-メチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、1,4-ビス[(3-メチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、(3-メチル-3-オキセタニル)メチルアクリレート、(3-エチル-3-オキセタニル)メチルアクリレート、(3-メチル-3-オキセタニル)メチルメタクリレート、(3-エチル-3-オキセタニル)メチルメタクリレートやそれらのオリゴマー又は共重合体等の多官能オキセタン類等が挙げられる。
【0020】
また、その他にも、オキセタンと、ノボラック樹脂、ポリ(p-ヒドロキシスチレン)、カルド型ビスフェノール類、カリックスアレーン類、カリックスレゾルシンアレーン類、又はシルセスキオキサンなどの水酸基を有する樹脂とのエーテル化物などが挙げられる。その他、オキセタン環を有する不飽和モノマーとアルキル(メタ)アクリレートとの共重合体なども挙げられる。
【0021】
オキセタン含有化合物は、脂肪族であることが好ましい。このようなオキセタン含有化合物を使用することで、硬化時の黄変を抑制することができる。
【0022】
オキセタン含有化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0023】
<<エピスルフィド含有化合物>>
エピスルフィド含有化合物は、1分子中に2個以上のエピスルフィド基を有する多官能の化合物であり、従来公知のものを使用可能である。
【0024】
エピスルフィド化合物としては、例えば、
ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールE、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールAD、テトラメチルビスフェノールS、テトラブロモビスフェノールA等のビスフェノール類をチオグリシジル化したビスフェノール型エピスルフィド樹脂、
上記ビスフェノール類の水添化物をチオグリシジル化した水添ビスフェノール型エピスルフィド樹脂、
ビフェノール、ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシアントラセン、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン等のその他の2価フェノール類をチオグリシジル化したエピスルフィド樹脂
1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、4,4-(1-(4-(1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル)フェニル)エチリデン)ビスフェノール等のトリスフェノール類をチオグリシジル化したエピスルフィド樹脂
1,1,2,2-テトラキス(4-ヒドロキシフェニル)エタン等のテトラキスフェノール類をチオグリシジル化したエピスルフィド樹脂
フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ビスフェノールAノボラック、臭素化フェノールノボラック、臭素化ビスフェノールAノボラック等をチオグリシジル化したノボラック型エピスルフィド樹脂、
グリセリンやポリエチレングリコール等の多価アルコールをチオグリシジル化した脂肪族エーテル型エピスルフィド樹脂、
p-オキシ安息香酸、β-オキシナフトエ酸等のヒドロキシカルボン酸をチオグリシジル化したエーテルエステル型エピスルフィド樹脂、
フタル酸、テレフタル酸のようなポリカルボン酸をチオグリシジル化したエステル型エピスルフィド樹脂、4,4-ジアミノジフェニルメタンやm-アミノフェノール等のアミン化合物のチオグリシジル化物やトリグリシジルイソシアヌレート等のアミン型エピスルフィド樹脂、
3,4-エピチオシクロヘキシルメチル-3’,4’-エピチオシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4-エピチオシクロヘキシル)アジペート、1,2-エピチオ-4-ビニルシクロヘキサン等の脂環式エピスルフィド、
ジエチレントリアミンやトリエチレンテトラミン等のポリアルキレンポリアミンとアジピン酸等のジカルボン酸とのポリアミドポリアミンのチオグリシジル化物、
オルガノポリシロキサンとエピスルフィド樹脂やフェノールノボラック型エピスルフィド樹脂との反応で得られるシリコーン変性エピスルフィド樹脂、
チオグリシジルメタクリレートや3,4-エピチオシクロヘキシルメチルメタクリレート、プロピレンスルフィド、シクロヘキサンスルフィド等のエピスルフィド化合物及びその重合体、
ビス(2,3-エピチオプロピル)スルフィド、ビス(2,3-エピチオプロピルチオ)エタン、ビス(5,6-エピチオ-3-チオヘキサン)スルフィド等
が挙げられる。
【0025】
エピスルフィド含有化合物は、低温硬化性と低粘度化のバランスに優れることからビスフェノール型エピスルフィド樹脂、及び/又は、水添ビスフェノール型エピスルフィド樹脂であることが好ましい。また、エピスルフィド含有化合物は、低粘度化により優れることから、脂肪族であることが好ましい。エピスルフィド含有化合物は、水添ビスフェノール型エピスルフィド樹脂であることがより好ましい。
【0026】
エピスルフィド含有化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0027】
<<有機系強塩基化合物>>
有機系強塩基化合物は、強塩基として使用可能な有機化合物であり、従来公知のものを使用可能である。
有機系強塩基は、25℃、水溶液にてpKaが11以上であることが好ましい。
なお、水溶液として測定ができない有機系強塩基化合物に限り、25℃、アセトニトリル溶液にて、pKaが20以上であることが好ましい。
【0028】
有機系強塩基としては、例えば、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7(DBU)(pKa:12.5(水溶液))、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン-5(DBN)(pKa:12.7(水溶液))、ピロリジン(pKa:11.1(水溶液))、ピペリジン(pKa:11.2(水溶液))、テトラメチルグアニジン(pKa:13.6(水溶液))等のアミン;テトラメチルアンモニウムハイドロキサイド、テトラエチルアンモニウムハイドロキサイド、テトラプロピルアンモニウムハイドロキサイド等のテトラアルキルアンモニウムハイドロキサイド;2-tert-ブチルイミノ-2-ジエチルアミノ-1,3-ジメチルパーヒドロ-1,3,2-ジアザホスフォリン(BEMP)(pKa:27.6(アセトニトリル溶液))、1-tert-ブチル-2,2,2-トリ(ピロリジノ)ホスファゼン(BTPP)(pKa:28.4(アセトニトリル溶液))等のホスファゼン塩基、等を挙げることができる。中でも求核性が低く、アニオン重合に寄与しやすいためDBUであることがより好ましい。
【0029】
<<その他の成分>>
熱硬化性樹脂組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲内で、その他の成分として、通常の熱硬化性樹脂組成物に配合され得る公知慣用の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、例えば、樹脂及びエラストマー、重合開始剤、無機フィラー、硬化触媒、着色剤、分散剤、消泡剤・レベリング剤、揺変剤、カップリング剤、難燃剤などが挙げられる。
【0030】
また、熱硬化性樹脂組成物は、有機溶剤を含まずとも十分な低粘度を示すが、必要に応じて、有機溶剤などを含んでいてもよい。
【0031】
なお、硬化後の硬化物において、熱寸法安定性、耐熱性、放熱性等の性能を向上させたい場合には、熱硬化性樹脂組成物が無機フィラーを含むことが好ましい。
【0032】
無機フィラーとしては、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、無定形シリカ、結晶性シリカ、溶融シリカ、球状シリカ、タルク、クレー、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム等が挙げられる。これらの無機フィラーは、単独又は混合して用いることができる。これらの無機フィラーの中でも、比重が小さく、組成物中に高い割合で配合可能であり、低熱膨張性に優れる点から、シリカ、中でも、球状シリカが好ましい。無機フィラーの平均粒径は3μm以下であることが好ましく、1μm以下がさらに好ましい。なお、無機フィラーの平均粒径は、レーザ回折式粒子径分布測定装置により求めることができる。
【0033】
<<<熱硬化性樹脂組成物が含有する各成分の含有量>>>
熱硬化性樹脂組成物中、オキセタン含有化合物のオキセタニル基とエピスルフィド含有化合物のエピスルフィド基との当量比は、低粘度(高流動性)の観点から1:1~1:3であることが好ましく、1:1~1:2であることがより好ましく、1:1~1:1.5であることが更に好ましく、1:1~1:1.3であることが特に好ましい。
【0034】
熱硬化性樹脂組成物中、オキセタン含有化合物の含有量及びエピスルフィド含有化合物の含有量の合計は、5質量%以上、10質量%以上、30質量%以上、50質量%以上、70質量%以上、80%質量以上、90%質量以上、95質量%以上、又は、97質量%以上であることが好ましい。上限値は特に限定されないが、例えば99質量%である。
【0035】
また、別の観点として、熱硬化性樹脂組成物が無機フィラーを含む場合、上述したオキセタン含有化合物の含有量及びエピスルフィド含有化合物の含有量の合計は、無機フィラーの含有量を除外した熱硬化性樹脂組成物の全量に対して、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、又は95質量%以上としてもよい。上限値は特に限定されないが、例えば99質量%である。
【0036】
有機系強塩基化合物の含有量は、オキセタン含有化合物の含有量及びエピスルフィド含有化合物の含有量の合計を100質量部とした場合に、1~10質量部、1~8質量部、又は、1~5質量部であることが好ましい。
【0037】
なお、熱硬化性樹脂組成物が無機フィラーを含む場合、熱硬化性樹脂組成物中、無機フィラーの含有量は、その用途に応じて適宜変更可能であるが、1質量%以上、5質量%以上、10質量%以上、30質量%以上、又は、50質量%以上とすることができる。上限値は特に限定されないが、例えば、90質量%、80質量%、70質量%、又は60質量%である。
【0038】
<<<熱硬化性樹脂組成物の物性/性質>>>
熱硬化性樹脂組成物は、従来のエピスルフィド系の熱硬化性組成物と比較して、優れた低粘度特性を有する。
【0039】
具体的には、熱硬化性樹脂組成物は、コーンプレート型粘度計(例えば、東機産業社製TVH-33H)にて、25℃、50rpmで測定された粘度を、300mPa・s以上、500mPa・s以上、700mPa・s以上、又は、900mPa・s以上とすることが可能である。
【0040】
<<<熱硬化性樹脂組成物の製造方法>>>
熱硬化性樹脂組成物は、各原料を混合及び分散することにより得られる。
【0041】
<<<熱硬化性樹脂組成物の使用方法>>>
熱硬化性樹脂組成物は、従来公知の用途にて使用することができる。以下、熱硬化性樹脂組成物を使用して得られる、硬化物、電子部品について説明する。
【0042】
<<硬化物>>
硬化物は、上述した硬化性樹脂組成物を硬化することで得られる。
【0043】
硬化性樹脂組成物から硬化物を得るための方法は、特に限定されるものではなく、硬化性樹脂組成物の組成に応じて適宜変更可能である。一例として、上述したような基材上に硬化性樹脂組成物の塗布(例えば、アプリケーター等による塗工)する工程を実施した後、必要に応じて硬化性樹脂組成物を乾燥させる乾燥工程を実施し、加熱(例えば、イナートガスオーブン、ホットプレート、真空オーブン、真空プレス機等による加熱)により硬化性樹脂硬化と硬化剤を熱硬化させる熱硬化工程を実施すればよい。なお、各工程における実施の条件(例えば、塗布膜厚、乾燥温度及び時間、加熱温度及び時間等)は、硬化性樹脂組成物の組成や用途等に応じて適宜変更すればよい。
【0044】
<<電子部品>>
本発明の硬化性樹脂組成物は、優れた低温硬化性と高流動性を有するため、発光ダイオードの封止材といった低温硬化性が要求される材料、毛細管現象により狭小部に充填するアンダーフィル材等に好適に用いることができる。また、このような硬化性樹脂組成物からなる硬化物は、銅回路等を腐食性することがないため、回路に接する保護膜や接着剤として広く利用することが可能である。中でも、プリント配線板における層間絶縁材料、半導体素子のアンダーフィル材といった電子部品、発光ダイオードの封止剤等の光学電子部品に用いられる。
【実施例】
【0045】
次に、実施例により本発明の熱硬化性樹脂組成物について説明するが、本発明はこれらには何ら限定されない。
【0046】
<<<実施例1~5、比較例1~4>>>
表1に開示された配合にて、実施例1~5及び比較例1~4に係る熱硬化性樹脂組成物を調製した。
【0047】
【0048】
表1に記載されているように、本実施例においては、有機系強塩基化合物として、DBU、DBN、ホスファゼン塩基(BTPP)を使用した。
【0049】
表1に示されたエピスルフィド含有化合物、および、オキセタン含有化合物の具体的な構造を表2に示す。
【0050】
【0051】
<<<評価>>>
各実施例および比較例に係る熱硬化性樹脂組成物に対して、評価試験を行った。各評価試験の評価結果を表1に示す。
【0052】
<<粘度>>
組成物の調整直後の粘度[mPa・s]を25℃、50rpmの条件にてコーンプレート型粘度計(東機産業社製TVH-33H)で測定した。
【0053】
なお、比較例1については粘度が増大しすぎたため他の評価に供することが困難であったため、他の評価を実施していない。
【0054】
<<低温硬化性>>
各熱硬化性樹脂組成物を使用して、膜厚100μmとなるようにガラス基板に塗布して塗膜を形成した。次に、この塗膜を、130℃、2時間の条件で加熱し、以下のように評価した。
×:上記硬化条件にて硬化しなかった。
○:上記硬化条件にて硬化した。
【0055】
<<表面硬度>>
上記低温硬化性評価で硬化した塗膜については、JIS K 5600-5-4に準拠して、その硬化塗膜の鉛筆硬度を測定した。
【0056】
<<ガラス転移点>>
上記低温硬化性評価で硬化したものについては、その硬化塗膜をガラス基板から剥離し、示差走査熱量測定(DSC)によりガラス転移点を測定した。
【0057】
<<透明性>>
上記低温硬化性評価で硬化したものについては、その硬化塗膜の透明性を目視で確認し、以下のように評価した。
×:黄変が生じ、透明性を有していなかった。
○:黄変は生じたが、透明性を有していた。
◎:黄変があまり生じなかった、又は、黄変が全く生じなかった。