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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-11
(45)【発行日】2023-07-20
(54)【発明の名称】エッチング装置及びエッチング方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/302 20060101AFI20230712BHJP
【FI】
H01L21/302 201A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020219460
(22)【出願日】2020-12-28
(65)【公開番号】P2022104319
(43)【公開日】2022-07-08
【審査請求日】2021-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100144211
【弁理士】
【氏名又は名称】日比野 幸信
(72)【発明者】
【氏名】隣 嘉津彦
【審査官】宇多川 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-179921(JP,A)
【文献】特表2014-504805(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/302
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ化水素とアンモニアとを含む処理ガスと、水蒸気とを用いてシリコン酸化膜をエッチングするためのエッチング装置であって、
前記シリコン酸化膜を表面に有する基板が配置されることが可能なチャンバと、
前記処理ガス又は前記処理ガスの前駆体ガスを前記チャンバに供給することが可能なガス供給部と、
水蒸気を前記チャンバ内の前記基板の表面全体に供給することが可能な水蒸気供給部と、
エッチング処理時に、前記処理ガス又は前記前駆体ガス、及び前記水蒸気を前記チャンバに供給するように、前記ガス供給部及び前記水蒸気供給部を制御する制御部と、
を具備し、
前記ガス供給部は、
水素を含むガスから水素ラジカルを生成するラジカル生成部を有し、水素ラジカルを含む第1の前駆体ガスを前記チャンバに供給することが可能な第1のガス供給ラインと、
フッ素を含む第2の前駆体ガスを前記チャンバに供給することが可能な第2のガス供給ラインと、を有し、
前記フッ化水素は、前記チャンバ内で前記第1の前駆体ガスと前記第2の前駆体ガスとが反応することで生成される
エッチング装置。
【請求項2】
請求項1に記載のエッチング装置であって、
前記制御部は、0.1Pa以上100Pa以下の分圧で水蒸気を前記チャンバに供給するように、前記水蒸気供給部を制御する
エッチング装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のエッチング装置であって、
前記チャンバは、
前記基板が配置されることが可能な処理室と、
前記ガス供給部に接続されたガス供給室と、
複数の貫通孔を含み、前記ガス供給室と前記処理室との間に配置されたシャワープレートと、を有する
エッチング装置。
【請求項4】
請求項3に記載のエッチング装置であって、
前記水蒸気供給部は、前記ガス供給室に接続される
エッチング装置。
【請求項5】
請求項3に記載のエッチング装置であって、
前記水蒸気供給部は、前記処理室に接続される
エッチング装置。
【請求項6】
請求項5に記載のエッチング装置であって、
前記基板を支持する支持面を有する基板支持部をさらに具備し、
前記水蒸気供給部は、前記支持面の周縁に沿って配置された複数の水蒸気供給口を有する
エッチング装置。
【請求項7】
フッ化水素とアンモニアとを含む処理ガスと、水蒸気とを用いてシリコン酸化膜をエッチングするためのエッチング方法であって、
前記シリコン酸化膜を表面に有する基板が配置されたチャンバに、前記処理ガス又は前記処理ガスの前駆体ガスを供給し、
水蒸気を前記チャンバ内の前記基板の表面全体に供給し、
前記水蒸気が供給された前記チャンバにおいて、前記処理ガスを用いて前記シリコン酸化膜をエッチングする
エッチング方法であって、
水素ラジカルを含む第1の前駆体ガスを、第1のガス供給ラインから前記チャンバに供給し、
フッ素を含む第2の前駆体ガスを、第2のガス供給ラインから前記チャンバに供給し、
前記チャンバ内で前記第1の前駆体ガスと前記第2の前駆体ガスとを反応させることで、前記フッ化水素を生成する
エッチング方法。
【請求項8】
請求項7に記載のエッチング方法であって、
0.1Pa以上100Pa以下の分圧で水蒸気を前記チャンバに供給する
エッチング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン酸化膜をエッチングするためのエッチング装置及びエッチング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン基板の表面に形成されたシリコン酸化膜をエッチングするための装置及び方法が知られている。例えば特許文献1には、真空槽と、アンモニアガスと窒素ガスとの混合ガスを供給する第1ガス供給部と、三フッ化窒素ガスを供給する第2ガス供給部と、を備えた酸化膜除去装置が開示されている。この酸化膜除去装置では、フッ素と水素とを含むエッチャント(例えばNF)によってシリコン酸化膜が除去される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-17661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のように、フッ素と水素とを含むエッチャントを用いてシリコン酸化膜をエッチングした場合、基板の面内におけるエッチング量の分布が不均一となることがあった。
【0005】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、シリコン酸化膜のエッチング量の基板の面内における均一性を向上させることが可能なエッチング装置及びエッチング方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係るエッチング装置は、フッ化水素とアンモニアとを含む処理ガスを用いてシリコン酸化膜をエッチングするためのエッチング装置である。
前記エッチング装置は、チャンバと、ガス供給部と、水蒸気供給部と、制御部と、を具備する。
前記チャンバは、前記シリコン酸化膜を表面に有する基板が配置されることが可能に構成される。
前記ガス供給部は、前記処理ガス又は前記処理ガスの前駆体ガスを前記チャンバに供給することが可能に構成される。
前記水蒸気供給部は、水蒸気を前記チャンバに供給することが可能に構成される。
前記制御部は、エッチング処理時に、前記処理ガス又は前記前駆体ガス、及び前記水蒸気を前記チャンバに供給するように、前記ガス供給部及び前記水蒸気供給部を制御する。
【0007】
前記制御部は、0.1Pa以上100Pa以下の分圧で水蒸気を前記チャンバに供給するように、前記水蒸気供給部を制御してもよい。
【0008】
前記ガス供給部は、
水素を含むガス又は水素ラジカルの少なくとも一方を含む第1の前駆体ガスを前記チャンバに供給することが可能な第1のガス供給ラインと、
フッ素を含むガス又はフッ素ラジカルの少なくとも一方を含む第2の前駆体ガスを前記チャンバに供給することが可能な第2のガス供給ラインと、を有し、
前記フッ化水素は、前記チャンバ内で前記第1の前駆体ガスと前記第2の前駆体ガスとが反応することで生成されてもよい。
【0009】
この場合、前記第1のガス供給ラインは、水素を含むガスから水素ラジカルを生成するラジカル生成部を有していてもよい。
【0010】
前記チャンバは、
前記基板が配置されることが可能な処理室と、
前記ガス供給部に接続されたガス供給室と、
複数の貫通孔を含み、前記ガス供給室と前記処理室との間に配置されたシャワープレートと、を有していてもよい。
【0011】
この場合、前記水蒸気供給部は、前記ガス供給室に接続されてもよい。
【0012】
本発明の他の形態に係るエッチング方法は、フッ化水素とアンモニアとを含む処理ガスを用いてシリコン酸化膜をエッチングするためのエッチング方法である。
前記シリコン酸化膜を表面に有する基板が配置されたチャンバに、前記処理ガス又は前記処理ガスの前駆体ガスが供給される。
水蒸気が前記チャンバに供給される。
前記水蒸気が供給された前記チャンバにおいて、前記処理ガスを用いて前記シリコン酸化膜がエッチングされる。
【0013】
さらに、0.1Pa以上100Pa以下の分圧で水蒸気が前記チャンバに供給されてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、シリコン酸化膜のエッチング量の基板の面内における均一性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1の実施形態に係るエッチング装置を示す模式的な断面図である。
図2】上記エッチング装置を用いたエッチング方法を説明するフロー図である。
図3】上記実施形態の実施例に係るエッチング処理において、基板の面内のエッチング量の分布を示すグラフである。
図4】上記実施形態の比較例に係るエッチング処理において、基板の面内のエッチング量の分布を示すグラフである。
図5】本発明の第2の実施形態に係るエッチング装置を示す模式的な断面図である。
図6】本発明の第3の実施形態に係るエッチング装置を示す模式的な断面図である。
図7】本発明の第4の実施形態に係るエッチング装置を示す模式的な断面図である。
図8】本発明の第5の実施形態に係るエッチング装置を示す模式的な断面図である。
図9】本発明の第6の実施形態に係るエッチング装置を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[本発明の概要]
本発明は、フッ化水素(HF)とアンモニア(NH)とを含む処理ガスを用いてシリコン酸化膜をエッチングするためのエッチング装置及びエッチング方法に関する。
【0017】
上記処理ガスは、シリコン酸化膜を表面に有する基板が配置されたチャンバ内に供給される。上記処理ガスでは、HFとNHとが反応して、以下のような反応が生じる。
HF+NH→NHF…(1)
これにより、アンモニアフッ化物(NHF)が生成される。生成されたNHFは、基板の表面のシリコン酸化膜と反応する。この反応は、以下の式(2)で表される。
SiO+6NHF→(NHSiF+2HO+4NH…(2)
【0018】
このように、NHFとシリコン酸化膜のSiOとが反応することで、基板の表面に、100~200℃で容易に熱分解するアンモニア錯体からなる反応生成物((NHSiF)が生成される。これにより、シリコン酸化膜がエッチングされる。
【0019】
式(2)の反応では、上記反応生成物とともに、HOとNHが生成される。このHOは、基板の表面で生成されるため、HOの分布量は、例えば基板の中央部よりも周縁部において少なくなり得る。
【0020】
本発明者らの知見によると、式(2)の反応は、主に、NHFから電離したフッ素(F)がSiOにアタックすることで生じ、HOは、このフッ素の電離に関与するものと考えられる。このため、基板の表面におけるHOの分布の偏りによって、基板の面内におけるエッチング量の偏りが生じると考えられる。
【0021】
そこで、本発明では、上記エッチング処理において、上記処理ガスに加えて、水蒸気(HOガス)をチャンバ内に供給することを特徴とする。これにより、詳細を後述するように、HOの基板の表面における分布の偏りが抑制され、基板の面内におけるエッチング量の均一性が向上する。
【0022】
なお、基板の表面においては、供給又は生成されたHOの一部が液体となり得る。このため、気体のHOガスを示す際には「水蒸気」と表記し、気体及び液体のHOを示す場合には「HO」と表記する。
【0023】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。図面に記載されたX軸、Y軸及びZ軸は、相互に直交する方向を示す。
【0024】
<第1の実施形態>
[エッチング装置の構成]
図1は、本発明の第1の実施形態に係るエッチング装置100を示す模式的な断面図である。
図1に示すように、エッチング装置100は、チャンバ10と、ガス供給部20と、水蒸気供給部30と、制御部40と、を備える。エッチング装置100は、HFとNHとを含む処理ガスを用いてシリコン酸化膜をエッチングするためのドライエッチング装置であって、例えば、チャンバ10の外部でラジカルを生成することが可能なリモートプラズマエッチング装置である。
【0025】
チャンバ10は、シリコン酸化膜を表面に有する基板Wが配置されることが可能に構成される。チャンバ10は、本実施形態において、チャンバ本体11と、基板支持部12と、を有する。
【0026】
チャンバ本体11は、例えば金属製の真空槽として構成される。チャンバ本体11は、底部111と、天板112と、側壁113とを含む。チャンバ本体11は、天板112が分離可能に構成されてもよいし、底部111、天板112及び側壁113が一体に構成されてもよい。さらに、チャンバ本体11は、真空ポンプに接続された排気口114を有し、当該排気口114から排気されることが可能に構成される。排気口114は、例えば底部111に配置される。
【0027】
天板112は、底部111とZ軸方向に対向して配置される。本実施形態において、天板112には、後述するガスヘッド13が取り付けられている。天板112は、例えば、後述する第1のガス供給ライン21と接続されZ軸方向に開口した開口を有していてもよい。
【0028】
基板支持部12は、例えば、基板Wを配置することが可能なステージとして構成される。基板支持部12は、基板Wを配置する支持面121を含む。支持面121は、例えば、天板112とZ軸方向に対向するように配置される。
【0029】
チャンバ10は、本実施形態において、シャワープレート131を有するガスヘッド13によって内部が区画される。すなわち、チャンバ10は、さらに、基板Wが配置されることが可能な処理室14と、後述するガス供給部20に接続されたガス供給室15と、処理室14とガス供給室15との間に配置されたシャワープレート131と、を有する。ガス供給室15は、本実施形態において、支持面121とZ軸方向に対向して配置される。
【0030】
シャワープレート131は、本実施形態において、ガスヘッド13の一部として構成される。ガスヘッド13は、シャワープレート131と、ヘッド本体132とを含む。
【0031】
シャワープレート131は、複数の貫通孔133を有する。貫通孔133は、ガス供給室15から処理室14へ向けてガスを噴出するガス噴出孔として機能する。シャワープレート131は、例えば、複数の貫通孔133が支持面121とZ軸方向に対向するように配置される。
【0032】
ヘッド本体132は、シャワープレート131と天板112との間に配置される。ヘッド本体132とシャワープレート131との間に形成されたガスヘッド13の内部空間が、ガス供給室15を形成する。ヘッド本体132は、例えば、後述する第1のガス供給ライン21と接続されZ軸方向に開口した開口134と、シャワープレート131と対向するプレート対向面135と、プレート対向面135と開口134とを接続し、開口134の周囲に配置された環状のテーパ面136と、を含む。
【0033】
ガス供給部20は、上記処理ガス又は処理ガスの前駆体ガスをチャンバ10に供給することが可能に構成される。
処理ガスは、上述のように、HFとNHとを含む反応性のガスである。
前駆体ガスは、処理ガスの前駆体を含むガスである。
ガス供給部20は、HFガスとNHガスをチャンバ10に供給してもよい。あるいは、ガス供給部20は、前駆体ガスをチャンバ10に供給してもよい。後者の場合、例えば、ガス供給部20によって供給された前駆体ガスがチャンバ10内で反応することで、処理ガスが生成される。
なお、処理ガス及び前駆体ガスは、通常の気体だけでなく、ラジカル状態の原子を含んでいてもよい。
【0034】
ガス供給部20は、本実施形態において、第1のガス供給ライン21と、第2のガス供給ライン22と、を有する。
【0035】
第1のガス供給ライン21は、水素を含むガス又は水素ラジカルの少なくとも一方を含む第1の前駆体ガスをチャンバ10に供給することが可能に構成される。「水素を含むガス」は、ラジカル状態でない水素ガス(H)又は水素化合物を含むガスを意味し、「水素ラジカル」は、ラジカル状態の水素ガス(H)を意味する。第1の前駆体ガスは、例えば、H及びNHガスを含む。
【0036】
第1のガス供給ライン21は、例えば、水素を含むガスから水素ラジカルを生成するラジカル生成部211と、チャンバ10に開口した第1の供給口212と、ラジカル生成部211と第1の供給口212とを接続する第1の配管213と、を含む。
【0037】
ラジカル生成部211は、リモートプラズマ源として構成される。ラジカル生成部211は、具体的には、マイクロ波プラズマ源、高周波プラズマ源、容量結合プラズマ源、誘導結合プラズマ源等であってもよい。本実施形態において、ラジカル生成部211は、マイクロ波プラズマ源として構成され、例えば、放電管と、マイクロ波源と、を含む。放電管には、図示しないガス源から水素を含むガスが導入される。放電管は、第1の配管213に接続される。マイクロ波源は、例えば、励起したマイクロ波を放電管に照射する。ラジカル生成部211に導入される「水素を含むガス」は、例えば、NHガスとキャリアガスである窒素(N)ガスとの混合ガスである。
【0038】
第1の供給口212は、本実施形態において、ガス供給室15に開口する。第1の供給口212は、例えば、シャワープレート131とZ軸方向に対向する位置に開口し、ヘッド本体132の開口134と接続される。
【0039】
第2のガス供給ライン22は、フッ素を含むガス又はフッ素ラジカルの少なくとも一方を含む第2の前駆体ガスをチャンバ10に供給することが可能に構成される。「フッ素を含むガス」は、ラジカル状態でないフッ素ガス(F)又はフッ素化合物を含むガスを意味し、「フッ素ラジカル」は、ラジカル状態のフッ素ガス(F)を意味する。第2の前駆体ガスは、例えば、三フッ化窒素(NF)ガスである。
【0040】
第2のガス供給ライン22は、例えば、チャンバ10に開口した第2の供給口221と、第2の供給口221に接続された第2の配管222と、を含む。
第2の供給口221は、本実施形態において、ガス供給室15に開口する。第2の供給口221は、例えば、ヘッド本体132のテーパ面136に開口する。第2のガス供給ライン22は、複数の第2の供給口221を含んでいてもよく、これらの第2の供給口221が、第1の供給口212を囲むようにテーパ面136に配置されていてもよい。
【0041】
本実施形態では、第1のガス供給ライン21と第2のガス供給ライン22とがガス供給室15に接続される。これにより、ガス供給室15内で第1の前駆体ガス及び第2の前駆体ガスが反応して上述のエッチングのための処理ガスが生成されるとともに、当該処理ガスがガス供給室15内で拡散する。したがって、当該処理ガスが、シャワープレート131を介して基板W上に均一に供給される。
【0042】
水蒸気供給部30は、水蒸気をチャンバ10に供給することが可能に構成される。水蒸気は、エッチング促進ガスとして機能する。水蒸気供給部30によって水蒸気がチャンバ10に供給されることで、基板Wの表面全体に水蒸気が供給され、基板Wの面内におけるHOの分布の偏りが抑制される。したがって、基板Wの面内におけるエッチング量の均一性が向上する。
【0043】
水蒸気供給部30は、例えば、チャンバ10に開口した第3の供給口31と、第3の供給口31に接続された第3の配管32と、を含む。
【0044】
第3の供給口31は、本実施形態において、ガス供給室15に開口する。第3の供給口31は、図1に示す例では、ヘッド本体132のテーパ面136に開口する。水蒸気供給部30は、複数の第3の供給口31を含んでいてもよく、これらの第3の供給口31が、第1の供給口212を囲むようにテーパ面136に配置されていてもよい。図1に示す例では、第3の供給口31は、第2の供給口221の下流側に配置される。
第3の配管32には、例えば、液体の水から水蒸気を生成する気化器が接続されていてもよい。
【0045】
本実施形態では、水蒸気供給部30がガス供給室15に接続されることで、水蒸気がガス供給室15内で拡散する。これにより、水蒸気が、シャワープレート131を介して基板W上に均一に供給される。したがって、基板Wの面内におけるHOの分布の偏りがより効果的に抑制され、基板Wの面内におけるエッチング量の均一性がより向上する。
【0046】
制御部40は、エッチング処理時に、処理ガス又は前駆体ガス、及び水蒸気をチャンバ10に供給するように、ガス供給部20及び水蒸気供給部30を制御する。
制御部40は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等のコンピュータに用いられるハードウェア要素および必要なソフトウェアにより実現される。制御部40は、少なくともガス供給部20及び水蒸気供給部30を制御できればよいが、エッチング装置100全体を制御するように構成されてもよい。
【0047】
[エッチング方法]
図2は、本実施形態のエッチング方法を説明するためのフロー図である。
以下、上記構成のエッチング装置100を用いたエッチング方法について説明する。
【0048】
まず、図1に示すように、チャンバ10には、シリコン酸化膜を表面に有する基板Wが配置される。基板Wは、例えばシリコン基板である。シリコン酸化膜は、自然酸化膜であってもよいし、酸化処理等によって形成された膜であってもよい。チャンバ10は、所定の圧力まで減圧される。
【0049】
そして、図2に示すように、ガス供給部20が、基板Wが配置されたチャンバ10に、HFとNHとを含む処理ガス又は当該処理ガスの前駆体ガスを供給する(ステップS1)。つまり、制御部40が、処理ガス又は前駆体ガスを供給するように、ガス供給部20を制御する。
【0050】
ステップS1では、例えば制御部40が、水素を含むガス又は水素ラジカルの少なくとも一方を含む第1の前駆体ガスをチャンバ10に供給するように、第1のガス供給ライン21を制御する。
第1のガス供給ライン21では、例えば、原料ガスとして、NHガス及びNガスの混合ガスがラジカル生成部211に導入される。ラジカル生成部211では、NHガス及びNガスの一部がラジカル状態となってH及びNが生成される。この結果、第1の前駆体ガスは、例えば、NHガス、H、Nガス及びNを含む。
【0051】
また、例えば制御部40が、フッ素又はフッ素ラジカルを含む第2の前駆体ガスをチャンバ10に供給するように、第2のガス供給ライン22を制御する。第2の前駆体ガスは、例えばNFガスである。
【0052】
本実施形態では、チャンバ10のガス供給室15において第1の前駆体ガスと第2の前駆体ガスとが混合し、以下の式(3)の反応が生じる。
+NF→HF+NF…(3)
これにより、ガス供給室15では、HFと、第1のガス供給ライン21でラジカル状態とならなかったNHとを含む処理ガスが生成される。上記反応で生じたHFは、反応性が高い状態である。
【0053】
一方で、図2に示すように、水蒸気供給部30が、水蒸気をチャンバに供給する(ステップS2)。つまり、制御部40が、水蒸気を供給するように、水蒸気供給部30を制御する。本実施形態では、水蒸気がガス供給室15に供給され、シャワープレート131を介して処理室14へ供給される。ステップS2における好適な条件等については、後述する。
【0054】
続いて、図2に示すように、水蒸気が供給されたチャンバ10において、HFとNHとを含む処理ガスを用いてシリコン酸化膜がエッチングされる(ステップS3)。本ステップでは、制御部40が、エッチング処理時に、処理ガス又は前駆体ガス、及び水蒸気をチャンバ10に供給するように、ガス供給部20及び水蒸気供給部30を制御する。
【0055】
ガス供給室15では、処理ガスに含まれるHFとNHによって、上述の式(1)の反応が生じ、アンモニアフッ化物(NHF)が生成される。式(1)を再掲する。
HF+NH→NHF…(1)
生成されたNHFは、例えばシャワープレート131を介して処理室14へ供給される。
【0056】
処理室14へ供給されたNHFは、基板Wの表面のシリコン酸化膜と反応する。NHFとシリコン酸化膜のSiOとが反応することで、上述の式(2)の反応が生じ、基板Wの表面に、アンモニア錯体からなる反応生成物((NHSiF)が生成される。式(2)を再掲する。
SiO+6NHF→(NHSiF+2HO+4NH…(2)
【0057】
本実施形態における「シリコン酸化膜のエッチング」とは、上記反応生成物が生成されることを意味する。この反応生成物は、後に基板Wを所定温度(例えば100~200℃)で加熱することにより、熱分解して除去される。反応生成物の除去は、同一のチャンバ10で行ってもよいし、異なるチャンバで行ってもよい。
ステップS3においては、反応生成物を効率よく生成する観点から、基板Wを-5℃以上50℃以下に維持してもよい。
【0058】
式(2)で生じたHOは、反応生成物とともに基板Wの表面で生成されるため、基板Wの外側では生成されない。つまり、この反応由来のHOの分布量は、基板Wの周縁部において中央部よりも少なくなる。上述のように、HOは、NHFによるシリコン酸化膜のエッチングに関与すると考えられる。基板Wの表面におけるHOの分布の偏りがある場合、反応生成物の生成量に偏りが生じ、基板Wの面内においてエッチング量の偏りが生じ得る。
【0059】
そこで、本実施形態では、水蒸気供給部30によって水蒸気が供給されたチャンバ10において、上記エッチング処理が行われる。これにより、エッチング処理中に水蒸気がチャンバ10内に拡散し、基板Wの面内全体に万遍なく供給される。したがって、基板Wの面内において一様に、上記式(2)の反応が促進される。この結果、基板Wの面内において、反応生成物の生成量の偏りが抑制され、エッチング量の均一性が向上する。
【0060】
ステップS2では、制御部40が、例えば、0.1Pa以上100Pa以下の分圧で水蒸気をチャンバ10に供給するように、水蒸気供給部30を制御する。これにより、基板Wの面内全体に拡散するために十分な量の水蒸気がチャンバ10内に供給され、基板Wの面内におけるHOの分布の偏りがより効果的に解消される。したがって、基板Wの面内におけるエッチング量の均一性がより向上する。
なお、ステップS3におけるエッチング処理において、チャンバ10内の圧力は、例えば、10Pa以上1000Pa以下とすることができ、さらに10Pa以上500Pa以下とすることもできる。
【0061】
ステップS2において、制御部40は、ガス供給部20によるガスの供給と同時に、水蒸気の供給を開始するように、水蒸気供給部30を制御してもよい。これにより、エッチング処理の開始とともに水蒸気が基板Wの面内全体に拡散し、基板Wの面内のエッチング量の偏りがより確実に抑制される。
【0062】
[実施例]
以下、実施例及び比較例を用いて、本実施形態の作用効果を具体的に説明する。
【0063】
実施例として、図1に示すような水蒸気供給部を有するエッチング装置を用いて、表面にシリコン酸化物を有するシリコン基板をエッチングした。シリコン基板は、半径約150mmの円形の基板とした。
第1のガス供給ラインに、原料ガスとして、NHガス及びNガスの混合ガスを導入した。ラジカル生成部におけるマイクロ波の周波数は2.45GHz、放電電力は1800kWとした。
第2のガス供給ラインに、NFを導入した。
水蒸気供給部に、水蒸気を導入した。
エッチング処理中のチャンバ内の圧力は約500Paに調整した。NHガスの分圧は約56Pa、Nガスの分圧は約430Pa、NFガスの分圧は約12Pa、水蒸気の分圧は約2Paとなるように調整した。
エッチング処理中の基板の温度は、約20℃とした。
【0064】
比較例として、水蒸気供給部を有さないエッチング装置を用いて、水蒸気をチャンバ内に供給せずに、表面にシリコン酸化物を有するシリコン基板をエッチングした。
第1のガス供給ラインと第2のガス供給ラインには、実施例と同一のガスを導入した。ラジカル生成部における放電条件及びエッチング処理中の基板の温度も同一とした。
エッチング処理中のチャンバ内の圧力は約500Paに調整した。NHガスの分圧は約56Pa、Nガスの分圧は約432Pa、NFガスの分圧は約12Paとなるように調整した。
【0065】
図3及び図4は、実施例及び比較例のエッチング処理における基板の面内のエッチング量の分布を示すグラフであり、横軸が基板内における位置(mm)、縦軸がエッチング量(nm)を示す。図3は、実施例の結果を示し、図4は比較例の結果を示す。
【0066】
図4に示すように、水蒸気を供給していない比較例のエッチング処理では、基板の周縁部において、エッチング量が大きく変化していた。
それに対し、図3に示すように、水蒸気を供給した実施例のエッチング処理では、比較例の結果と比較して、基板の周縁部におけるエッチング量の変化が抑制されていた。
【0067】
これらの結果から、HFとNHとを含む処理ガスを用いてシリコン酸化膜をエッチングする際に、チャンバ内に水蒸気を供給することによって、基板の面内のエッチング量の均一性が向上することがわかった。
【0068】
<第2の実施形態>
図5は、本発明の第2の実施形態に係るエッチング装置100Aを示す模式的な断面図である。
同図に示すように、エッチング装置100Aは、第1の実施形態と同様のチャンバ10と、ガス供給部20と、制御部40と、を備えるが、第1の実施形態とは異なる水蒸気供給部30Aを備える。
以下の各実施形態において、上述の第1の実施形態と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略し、異なる部分を主に説明する。
【0069】
水蒸気供給部30Aは、例えば、チャンバ10に開口した第3の供給口31Aと、第3の供給口31Aに接続された第3の配管32Aと、を含む。
【0070】
第3の供給口31Aは、例えば、ヘッド本体132のプレート対向面135に開口する。図5に示す例では、水蒸気供給部30Aが、プレート対向面135に開口した複数の第3の供給口31Aを含んでいるが、単一の第3の供給口31Aを含んでいてもよい。
【0071】
これによっても、水蒸気がガス供給室15内で拡散し、シャワープレート131を介して基板Wの面内全体に均一に供給される。したがって、基板Wの面内のエッチング量の均一性が十分に向上する。
【0072】
<第3の実施形態>
図6は、本発明の第3の実施形態に係るエッチング装置100Bを示す模式的な断面図である。
同図に示すように、エッチング装置100Bは、第1の実施形態と同様のチャンバ10と、ガス供給部20と、制御部40と、を備えるが、第1の実施形態とは異なる水蒸気供給部30Bを備える。
【0073】
図6に示すように、水蒸気供給部30Bは、第1の配管213に開口した第3の供給口31Bと、第3の供給口31Bに接続された第3の配管32Bと、を含む。本実施形態では、水蒸気が、第3の配管32Bと、第1のガス供給ライン21の第1の配管213の一部と、を通ってチャンバ10に供給される。
【0074】
これにより、水蒸気がガス供給室15の上流から供給され、ガス供給室15内でより均一に拡散できる。したがって、シャワープレート131を介して、水蒸気が基板Wの面内全体により均一に供給され、基板Wの面内のエッチング量の均一性がより一層向上する。
【0075】
<第4の実施形態>
図7は、本発明の第4の実施形態に係るエッチング装置100Cを示す模式的な断面図である。
同図に示すように、エッチング装置100Cは、第1の実施形態と同様のチャンバ10と、ガス供給部20と、制御部40と、を備えるが、第1の実施形態とは異なる水蒸気供給部30Cを備える。
【0076】
図7に示すように、水蒸気供給部30Cは、第2の配管222に開口した第3の供給口31Cと、第3の供給口31Cに接続された第3の配管32Cと、を含む。つまり、本実施形態では、水蒸気が、第3の配管32Cと、第2のガス供給ライン22の第2の配管222の一部と、を通ってチャンバ10に供給される。図7に示す例では、水蒸気供給部30Cが、単一の第3の供給口31Cを含むが、複数の第2の配管222に接続された複数の第3の供給口31Cを含んでいてもよい。
【0077】
これによっても、水蒸気がガス供給室15の上流から供給され、ガス供給室15内でより均一に拡散できる。したがって、シャワープレート131を介して、水蒸気が基板Wの面内全体により均一に供給され、基板Wの面内のエッチング量の均一性がより一層向上する。
【0078】
<第5の実施形態>
図8は、本発明の第5の実施形態に係るエッチング装置100Dを示す模式的な断面図である。
同図に示すように、エッチング装置100Dは、第1の実施形態と同様のチャンバ10と、ガス供給部20と、制御部40と、を備えるが、第1の実施形態とは異なる水蒸気供給部30Dを備える。
【0079】
図8に示すように、水蒸気供給部30Dは、例えば、チャンバ10の処理室14に開口した第3の供給口31Dと、第3の供給口31Dに接続された第3の配管32Dと、を含む。
【0080】
図8に示すように、第3の供給口31Dは、例えばチャンバ10の側壁113に開口する。図8に示す例では、水蒸気供給部30Dが、単一の第3の供給口31Dを含むが、複数の第3の供給口31Dを含んでいてもよい。
【0081】
これによっても、水蒸気がチャンバ10の処理室14に供給され、処理室14内で拡散できる。したがって、水蒸気が基板Wの面内全体に拡散でき、基板Wの面内のエッチング量の均一性が向上する。
【0082】
<第6の実施形態>
図9は、本発明の第6の実施形態に係るエッチング装置100Eを示す模式的な断面図である。
同図に示すように、エッチング装置100Eは、第1の実施形態と同様のチャンバ10と、ガス供給部20と、制御部40と、を備えるが、第1の実施形態とは異なる水蒸気供給部30Eを備える。
【0083】
図9に示すように、水蒸気供給部30Eは、例えば、チャンバ10の処理室14に開口した第3の供給口31Eと、第3の供給口31Eに接続された第3の配管32Eと、を含む。
【0084】
図9に示すように、第3の供給口31Eは、基板支持部12の支持面121に開口する。図9では、水蒸気供給部30Eが複数の第3の供給口31Eを含む。複数の第3の供給口Dは、例えば、支持面121の周縁に沿って配置されている。
【0085】
これにより、反応生成物((NHSiF)の生成に伴って生成されるHOの分布量の少ない基板Wの周縁部に、より直接的に水蒸気を供給することができる。したがって、基板Wの面内におけるエッチング量の均一性がより確実に向上する。
【0086】
<他の実施形態>
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加えることができる。
【0087】
チャンバ10は、上述の構成に限定されない。
例えば、ガス供給室15は、支持面121とZ軸方向に対向する配置ではなく、支持面121の側方、すなわちチャンバ10の側壁113に沿って配置されていてもよい。この場合、シャワープレート131は、複数の貫通孔133がX軸方向又はY軸方向に沿って延びるように配置されていてもよい。
あるいは、チャンバ10は、ガスヘッド13を有さず、シャワープレート131のみによって処理室14とガス供給室15とが区画されていてもよい。
また、チャンバ10は、処理室14とガス供給室15とが区画されておらず、チャンバ10の内部全体が処理室14として構成されてもよい。この場合、処理室14の天板、側壁等にガス供給部20が直接接続されていてもよい。
【0088】
また、ガス供給部20の第1のガス供給ライン21と第2のガス供給ライン22も、上述の構成に限定されず、図示の例とは異なる位置にそれぞれ接続されていてもよい。
あるいは、ガス供給部20は、処理ガスの前駆体ガスがチャンバ10に供給される構成に限定されず、例えばチャンバ10の外部でHFとNHとを含む処理ガスが生成され、生成された処理ガスがチャンバ10に供給されてもよい。
【符号の説明】
【0089】
100,100A,100B,100C,100D,100E…エッチング装置
10…チャンバ
20…ガス供給部
21…第1のガス供給ライン
22…第2のガス供給ライン
30,30A,30B,30C,30D,30E…水蒸気供給部
40…制御部
図1
図2
図3
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図5
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図8
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