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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-11
(45)【発行日】2023-07-20
(54)【発明の名称】嫌気硬化性組成物のための硬化促進剤
(51)【国際特許分類】
   C08F 20/26 20060101AFI20230712BHJP
   C08F 4/34 20060101ALI20230712BHJP
   C08K 5/3437 20060101ALI20230712BHJP
【FI】
C08F20/26
C08F4/34
C08K5/3437
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020540676
(86)(22)【出願日】2018-10-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-17
(86)【国際出願番号】 EP2018077044
(87)【国際公開番号】W WO2019072686
(87)【国際公開日】2019-04-18
【審査請求日】2021-10-01
(31)【優先権主張番号】1716517.6
(32)【優先日】2017-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】391008825
【氏名又は名称】ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D-40589 Duesseldorf,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 克博
(72)【発明者】
【氏名】オドワイヤー、 パット
(72)【発明者】
【氏名】コンドロン、 デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】モンギー、 ヒラリー
(72)【発明者】
【氏名】バーケット、 デイヴィッド
【審査官】横山 法緒
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06835762(US,B1)
【文献】特表2012-525417(JP,A)
【文献】米国特許第06897277(US,B1)
【文献】米国特許第06583289(US,B1)
【文献】特公昭51-020555(JP,B2)
【文献】米国特許第03651036(US,A)
【文献】特表2013-508476(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 6/00-246/00
C08F 4/00-4/82
C08F 2/00-2/60
C08K 3/00-13/08
C09J 1/00-5/10
C09J 9/00-201/10
C07D 215/00-215/60
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)(メタ)アクリレート成分;
(b)嫌気性硬化誘導組成物;および
(c)下記に包含される硬化促進剤
を含む、嫌気硬化性組成物:
【化1】
(式中、 およびR は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、および1~12個の炭素原子を有するアルキルからなる群から選択される。)
【請求項2】
嫌気性硬化誘導組成物が、t-ブチルヒドロペルオキシド、p-メタンヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、およびそれらの混合物からなる群から選択されるヒドロペルオキシドを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
少なくとも1種の共促進剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
共促進剤が、アミン、アミンオキシド、スルホンアミド、金属源、酸、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
共促進剤が、トリアジン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N,Nジメチルアニリン、ベンゼンスルファンイミド、シクロヘキシルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミン、サッカリン、N,N-ジエチル-p-トルイジン、N,N-ジメチル-o-トルイジン、アセチルフェニルヒドラジン、マレイン酸、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
少なくとも1種の安定剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
安定剤が、ベンゾキノン、ナフトキノン、アントラキノン、ヒドロキノン、メトキシヒドロキノン、ブチル化ヒドロキシトルエン、エチレンジアミン四酢酸またはその塩、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
硬化促進剤が:
【化4】
である、請求項1に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤およびシーラントなどの嫌気性硬化性組成物に有用な硬化促進剤に関する。硬化促進剤は、下記構造に包含される:
【0002】
【化1】
(式中、XはCH、O、S、NR、CRまたはC=0であり;Rは、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルケニル、またはヒドロキシアルキニルの1種以上であり;R~Rは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、アミノ、カルボキシル、ニトロ、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルケニル、ヒドロキシアルキニル、またはアルカリールから選択され;Rは水素またはCHRであり、ただしRおよびRはそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、アミノ、カルボキシル、ニトロ、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルケニル、ヒドロキシアルキニル、またはアルカリールから選択され;nは0または1である。)。特に望ましい例は、1,2,3,4-テトラヒドロベンゾ-h-キノリン-3-オールである。
【背景技術】
【0003】
関連技術の簡単な説明
嫌気性接着剤組成物は、一般によく知られている。例えば、R.D.Rich,“Anaerobic Adhesives” Handbook of Adhesive Technology,29,467-79,A.PizziおよびK.L.Mittal編,MarcelDekker,Inc.,NewYork(1994)、およびそこで引用されている参考文献を参照されたい。それらの用途は多く、また新しい用途が開発され続けている。
【0004】
従来の嫌気性接着剤は、通常、フリーラジカル重合可能なアクリル酸エステルモノマーを、ペルオキシル開始剤および阻害剤成分と共に含む。多くの場合、そのような嫌気性接着剤組成物は、組成物が硬化する速度を上げるために促進剤成分も含む。
【0005】
硬化を誘導および促進するための望ましい嫌気性硬化誘導組成物は、通常、サッカリン、N,N-ジエチル-p-トルイジン(「DE-p-T」)およびN,N-ジメチル-o-トルイジン(「DM-o-T」)などのトルイジン、アセチルフェニルヒドラジン(「APH」)、マレイン酸の1種以上を含み得る。
サッカリンおよびAPHは、嫌気性接着剤硬化系において標準的な硬化促進剤成分として使用される。しかしながら、これらの成分は、世界の特定の地域では規制当局の監視下にあるため、その代替候補を同定するための努力がなされてきた。
【0006】
嫌気性接着剤のための他の硬化剤の例としては、チオカプロラクタム(例えば、米国特許第5,411,988号)およびチオ尿素[例えば、米国特許第3,970,505号(Hauser)(テトラメチルチオ尿素)、独国特許文献第1 817 989号(アルキルチオ尿素およびN,N’-ジシクロヘキシルチオ尿素)および第2 806 701号(エチレンチオ尿素)、および日本特許出願公開第07-308,757号(アシル、アルキル、アルキリデン、アルキレンおよびアルキルチオ尿素)]が挙げられ、後者のいくつかは約20年前まで商業的に使用されていた。
【0007】
Loctite(R&D)Ltd.は、嫌気性接着剤組成物の硬化剤として有効な、新しい種類の材料であるトリチアジアザペンタレンを発見した。従来の硬化剤(APHなど)に代えてこれらの材料を嫌気性接着剤に添加することにより、驚くべきことに、従来の硬化剤から形成される反応生成物に少なくとも匹敵する硬化速度および物理的特性がもたらされる。米国特許第6,583,289号(McArdle)を参照されたい。
【0008】
米国特許第6,835,762号(Klemarczyk)は、(メタ)アクリレート成分に基づく嫌気硬化性組成物を提供しており、該組成物は、アセチルフェニルヒドラジンおよびマレイン酸を実質的に含まない嫌気性硬化誘導組成物、連結-C(=0)-NH-NH-と有機酸基を同じ分子に有する嫌気性硬化促進剤化合物を含む(ただし、嫌気性硬化促進剤化合物は、1-(2-カルボキシアクリロイル)-2-フェニルヒドラジンは除外する。)。嫌気性硬化促進剤は下記に包含される:
【0009】
【化2】
(式中、R-Rは、それぞれ独立して、水素およびC1-4から選択され;Zは、炭素-炭素単結合または炭素-炭素二重結合であり;qは0または1であり;pは1~5の整数である。)に包含され、その例としては3-カルボキシアクリロイルフェニルヒドラジン、メチル-1-3-カルボキシアクリロイルフェニルヒドラジン、3-カルボキシプロパノイルフェニルヒドラジン、およびメチレン-3-カルボキシプロパノイルフェニルヒドラジンがある。
【0010】
米国特許第6,897,277号(Klemarczyk)は、(メタ)アクリレートに基づき、サッカリンを実質的に含まない嫌気性硬化誘導組成物、および、以下の式に包含される嫌気性硬化促進剤化合物を含む嫌気硬化性組成物を提供している:
【0011】
【化3】
(式中、Rは水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルケニル、カルボキシル、およびスルホネートから選択され、Rは水素、アルキル、アルケニル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルケニル、およびアルカリールから選択される。)、その例としては、フェニルグリシンおよびN-メチルフェニルグリシンが挙げられる。
【0012】
米国特許第6,958,368号(Messana)は、嫌気硬化性組成物を提供している。この組成物は、(メタ)アクリレート成分に基づき、サッカリンを実質的に含まず、以下の構造に包含される嫌気性硬化誘導組成物を含む:
【0013】
【化4】
(式中、Yは芳香環であり、任意で5つまでの位置でC1-6アルキルもしくはアルコキシ、またはハロ基で置換されており;AはC=0、S=0または0=S=0であり;XはNH、0またはSであり、Zは芳香環であり、任意で5つまでの位置でC1-6アルキルもしくはアルコキシ、またはハロ基で置換されているか、またはYとZが一緒になって同じ芳香環または芳香環系に結合していてもよく、ただしXがNHの場合、o-安息香酸スルフィミドは該構造から除外される。)。上記の構造に包含される嫌気性硬化促進剤化合物の例としては、2-スルホ安息香酸環状無水物、および3H-1,2-ベンゾジチオール-3-オン-1,1-ジオキシドが挙げられる。
【0014】
スリーボンド株式会社(東京、日本)は、嫌気性接着剤およびシーラント組成物における成分として、テトラヒドロキノリン(「THQ」)と呼ばれる成分を過去に記載している。
【0015】
そして、より最近では、米国特許第8,362,112号は、下記を含む反応物から調製された反応生成物を記載している:
(a)下記に包含される化合物:
【0016】
【化5】
(式中、Xは、C1-20アルキル、C2-20アルケニル、またはC7-20アルカリールであり、これらはいずれも、1つ以上のヘテロ原子が挿入されていてもよく、かつ、-OH、-N、または-SHから選択される少なくとも1つの基によって官能化されており、zは1~3である。)、および、
(b)少なくとも1種のイソシアネート官能基材料。
【0017】
米国特許第8,481,659号は、下記を含む嫌気性硬化性組成物を記載している:(a)(メタ)アクリレート成分;(b)嫌気性硬化システム;および(c)下記を含む反応物から調製された反応生成物:(i)下記式で表される化合物の群から選択される少なくとも1種の化合物:
【0018】
【化6】
(式中、zは1~3である。);および(b)次のいずれか:(i)下記式で表される化合物の群から選択される少なくとも1種の化合物:
【0019】
【化7】
(式中、Z’’は-0-、-S-、および-NH-から選択され;qは1~4であり;Rは、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、およびチオアルキルからなる群から独立して選択され;そして、nは少なくとも1である。)(ただし、反応生成物は、-OH、-NHおよび-SHから独立して選択される少なくとも2つのペンダント官能基を含む。)、または(ii)アルキル化剤、アルケニル化剤またはアルカリ―ル化剤。
【0020】
最先端の技術水準にもかかわらず、嫌気性硬化促進剤には、既存の製品を差別化し、原料の不足または供給停止の場合に供給を保証するための代替技術を見出すという継続的な要望がある。さらに、従来の嫌気性硬化誘導組成物に使用される特定の原料は、ある程度、規制当局の監視下に置かれる必要があり、サプライチェーンの中断に影響を受ける可能性があるため、嫌気性硬化誘導組成物の代替成分が望ましいであろう。したがって、嫌気硬化性組成物の硬化において硬化成分として機能する新しい材料を特定することが望ましいであろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、接着剤およびシーラントなどの嫌気硬化性組成物に有用な硬化促進剤に関する。
【0022】
硬化促進剤は、下記の構造に包含される:
【0023】
【化8】
(式中、XはCH、O、S、NR、CRまたはC=0であり;Rは、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルケニル、またはヒドロキシアルキニルの1種以上であり;R~Rは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、アミノ、カルボキシル、ニトロ、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルケニル、ヒドロキシアルキニル、またはアルカリールから選択され;Rは水素またはCHRであり、ただしRおよびRはそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、アミノ、カルボキシル、ニトロ、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルケニル、ヒドロキシアルキニル、またはアルカリールから選択され;nは0または1である。)。特に望ましい例は、1,2,3,4-テトラヒドロベンゾ-h-キノリン-3-オールである。
【0024】
これらの硬化促進剤は、(メタ)アクリレート成分および嫌気性硬化誘導成分を含む嫌気硬化性組成物において有用である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】真鍮、重クロム酸亜鉛、ステンレス鋼、軟鋼/黒色酸化物で構成されたM10ナットおよびボルトに対する、対照としての嫌気性接着剤組成物(促進剤として0.9重量%のTHQを含む)と、THQは含まないが、本発明の硬化促進剤としてのTHBQolをさまざまな濃度で含む同等の組成物との24時間静摩擦トルクのプロットを表す。
図2】真鍮、重クロム酸亜鉛、ステンレス鋼、軟鋼/黒色酸化物で構成されたM10ナットおよびボルトに対する、対照としての嫌気性接着剤組成物(促進剤として0.9重量%のTHQを含む)と、THQは含まないが、本発明の硬化促進剤としてのTHBQolをさまざまな濃度で含む同等の組成物との24時間プリベイリングトルクのプロットを表す。
図3】真鍮、重クロム酸亜鉛、ステンレス鋼、軟鋼/黒色酸化物で構成されたM10ナットおよびボルトに対する、対照としての嫌気性接着剤組成物(促進剤として0.9重量%のTHQを含む)と、THQは含まないが、本発明の硬化促進剤としてのTHBQolをさまざまな濃度で含む同等の組成物との1時間静摩擦トルクのプロットを表す。
図4】真鍮、重クロム酸亜鉛、ステンレス鋼、軟鋼/黒色酸化物で構成されたM10ナットおよびボルトに対する、対照としての嫌気性接着剤組成物(促進剤として0.9重量%のTHQを含む)と、THQは含まないが、本発明の硬化促進剤としてのTHBQolをさまざまな濃度で含む同等の組成物との1時間プリベイリングトルクのプロットを表す。
図5】軟鋼で構成されたピンおよびカラーに対する、対照としての嫌気性接着剤組成物(促進剤として0.9重量%のTHQを含む)と、THQは含まないが、本発明の硬化促進剤としてのTHBQolをさまざまな濃度で含む同等の組成物との24時間せん断強度のプロットを表す。
図6】軟鋼で構成されたピンおよびカラーに対する、対照としての嫌気性接着剤組成物(促進剤として0.9重量%のTHQを含む)と、THQは含まないが、本発明の硬化促進剤としてのTHBQolをさまざまな濃度で含む同等の組成物との1時間せん断強度のプロットを表す。
図7】ピンとカラーの間に15mmのギャップで設定した軟鋼で構成されたピンおよびカラーに対する、対照としての嫌気性接着剤組成物(促進剤として0.9重量%のTHQを含む)と、THQは含まないが、本発明の硬化促進剤としてのTHBQolをさまざまな濃度で含む同等の組成物との24時間せん断強度のプロットを表す。
図8】1時間および24時間の硬化後のサンプルCおよびDのせん断強度値の棒グラフを示す。
図9】0.5時間および24時間の硬化後のサンプルCおよびDの静摩擦トルク値の棒グラフを示す。
図10】0.5時間および24時間の硬化後のサンプルCおよびDのプリベイリングトルク値の棒グラフを示す。
図11】1時間および24時間の硬化後のサンプルAおよびBのピンおよびカラーのアセンブリのせん断強度値の棒グラフを示す。
図12】1時間および24時間の硬化後のサンプルAおよびBの静摩擦トルク値の棒グラフを示す。
図13】は、1時間および24時間の硬化後のサンプルAおよびBのプリベイリングトルク値の棒グラフを示す。
【0026】
詳細な説明
本発明は、嫌気性接着剤に、従来の嫌気性硬化促進剤[トルイジン、THQ、および/またはアセチルフェニルヒドラジン(“APH”)など]の量の一部または全部に代えて硬化促進剤を添加することに関し、これは、驚くべきことに、従来の嫌気硬化性組成物で観察されたものと比べて少なくとも同等の硬化速度および物理的特性を、それから形成された反応生成物に提供する。
【0027】
例えば、本発明の硬化促進剤を使用することにより、THQおよび/またはAPHのレベルの低下(例えば、従来の嫌気硬化性組成物で使用されるものの約50重量%以下)が達成され得、望ましくは嫌気硬化性組成物は、THQおよび/またはAPHを実質的に含まない(約10重量パーセント未満、約5重量パーセント未満、または約1重量パーセント未満)か、またはTHQおよび/またはAPHを含まない。本発明の硬化促進剤がTHQおよび/またはAPHの一部または全部の代わりとなる。
【0028】
本発明における(メタ)アクリレート成分として使用するのに適した(メタ)アクリレートモノマーは、幅広い材料から選択することができ、例えば、HC=CGCO(式中、Gは水素、ハロゲン、または1から約4個の炭素原子を有するアルキル基であってよく、Rは1から約16の炭素原子を有するアルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルカリール、アラルキルまたはアリール基から選択されてよく、ただし、これらはいずれも、任意で、シラン、ケイ素、酸素、ハロゲン、カルボニル、ヒドロキシル、エステル、カルボン酸、尿素、ウレタン、カーボネート、アミン、アミド、イオウ、スルホネート、スルホンなどで、場合により置換または中断されていてもよい。)によって表されるものなどである。
【0029】
本発明における(メタ)アクリレート成分として、または反応生成物を製造する際の成分として本明細書において使用するのに適した追加の(メタ)アクリレートモノマーとしては、多官能性(メタ)アクリレートモノマー、たとえば二官能性または三官能性(メタ)アクリレート、例えば、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフラン(メタ)アクリレートおよびジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート(「HPMA」)、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート(「TMPTMA」)、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート(「TRIEGMA」)、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジ-(ペンタメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、テトラエチレンジグリコールジ(メタ)アクリレート、ジグリセロールテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチレンジ(メタ)アクリレート、エチレンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、およびビスフェノールAモノおよびジ(メタ)アクリレート、例えばエトキシル化ビスフェノール-A(メタ)アクリレート(「EBIPMA」)、およびビスフェノール-Fモノおよびジ(メタ)アクリレート、例えばエトキシル化ビスフェノール-A(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0030】
本明細書において使用され得るさらに他の(メタ)アクリレートモノマーとしては、シリコーン(メタ)アクリレート部分(「SiMA」)、例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,605,999号(Chu)によって教示および特許請求されているものなどが挙げられる。
【0031】
他の適切なモノマーとしては、下記式で表されるポリアクリレートエステルが挙げられる:
【0032】
【化9】
(式中、Rは、水素、ハロゲン、または1~約4個の炭素原子のアルキルから選択される基であり;qは、少なくとも1に等しい、好ましくは1~約4に等しい整数であり;そしてXは、少なくとも2個の炭素原子を含み、総結合能がq+1である有機基である。)。Xにおける炭素原子数の上限に関しては、本質的にいかなる値でも実効性のあるモノマーが存在する。しかしながら、実際上の問題として、一般的な上限は約50個の炭素原子、好ましくは30個、最も好ましくは20個である。
【0033】
例えば、Xは、以下の式の有機基であり得る:
【0034】
【化10】
(式中、YおよびYの各々は、少なくとも2個の炭素原子、好ましくは2個~約10個の炭素原子を含有する有機基、例えば、炭化水素基であり、そしてZは、少なくとも1個の炭素原子、好ましくは2~約10個の炭素原子を含有する有機基、好ましくは炭化水素基である。)。
【0035】
他の有用なモノマーの種類は、仏国特許第1,581,361号に開示されているような、ジ-またはトリ-アルキロールアミン(例えば、エタノールアミンまたはプロパノールアミン)とアクリル酸との反応生成物である。
【0036】
有用なアクリレートエステルオリゴマーの例としては、以下の一般式を有するものが挙げられる:
【0037】
【化11】
[式中、Rは、水素、1~約4個の炭素原子の低級アルキル、1~約4個の炭素原子のヒドロキシアルキル、および
【0038】
【化12】
(式中、Rは、水素、ハロゲン、または1~約4個の炭素原子の低級アルキルから選択される基である。)であり;Rは、水素、ヒドロキシル、または
【0039】
【化13】
から選択される基であり、mは、少なくとも1に等しい整数、例えば1~約15またはそれ以上、好ましくは1~約8であり;nは、少なくとも1に等しい整数、例えば1~約40またはそれ以上、好ましくは約2~約10であり;そしてpは、0または1である。]
【0040】
上記一般式に対応するアクリレートエステルオリゴマーの典型的な例としては、ジ-、トリ-、およびテトラエチレングリコールジメタクリレート;ジ(ペンタメチレングリコール)ジメタクリレート;テトラエチレングリコールジアクリレート;テトラエチレングリコールジ(クロロアクリレート);ジグリセロールジアクリレート;ジグリセロールテトラメタクリレート;ブチレングリコールジメタクリレート;ネオペンチルグリコールジアクリレート;および、トリメチロールプロパントリアクリレートが挙げられる。
【0041】
ジ-および他のポリアクリレートエステル、特に前述の項に記載のポリアクリレートエステルが望ましい可能性があるが、また単官能性アクリレートエステル(1つのアクリレート基を含むエステル)を使用してもよい。単官能性アクリレートエステルを扱う場合、比較的極性の高いアルコール部分を有するエステルを使用することが非常に好ましい。このような材料は、低分子量アルキルエステルよりも揮発性が低く、さらに重要なことに、極性基は硬化中および硬化後に分子間引力を提供する傾向があるため、より望ましい硬化特性と、より耐久性のあるシーラントまたは接着剤をもたらす。望ましくは、極性基は、不安定水素、複素環、ヒドロキシ、アミノ、シアノ、およびハロ極性基から選択される。このカテゴリーに含まれる化合物の典型的な例は、シクロヘキシルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、t-ブチルアミノエチルメタクリレート、シアノエチルアクリレート、およびクロロエチルメタクリレートである。
【0042】
別の有用なモノマーの種類は、官能性置換基上に活性水素原子を含有する単官能性置換アルキルまたはアリールアクリレートエステルの反応によって調製される。この単官能性アクリレート末端材料は、すべてのイソシアネート基をウレタンまたはウレイド基に変換するように、適切な比率で有機ポリイソシアネートと反応する。単官能性アルキルおよびアリールアクリレートエステルは、好ましくは、その非アクリレート部分にヒドロキシまたはアミノ官能基を含有するアクリレートおよびメタクリレートである。使用に適したアクリルレートエステルは、下記式の構造を有する:
【0043】
【化14】
[式中、Xは、-O-、または
【0044】
【化15】
(式中、Rは、水素または1~7個の炭素原子の低級アルキルから選択される。)から選択され;Rは、水素、塩素、または、メチルおよびエチル基から選択され;そして、Rは、1~8個の炭素原子の低級アルキレン、フェニレン、またはナフチレンから選択される二価の有機基である。]これらの基は、ポリイソシアネートとの適切な反応により、以下の一般式のモノマーを生成する:
【0045】
【化16】
(式中、nは、2~約6の整数であり;Bは、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、アラルキル、アルカリール、または複素環基から選択される多価有機基(置換および非置換の両方である)であり;R、R、およびXは上に示した意味を有する。)
【0046】
好適なヒドロキシル官能性(メタ)アクリレートの例としては、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート(「HEMA」)、ヒドロキシプロピルメタクリレート(「HPMA」)、ヒドロキシブチルメタクリレートおよびそれらの混合物が挙げられる。他の好適なヒドロキシ官能性(メタ)アクリレートの例としては、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(「HEMA」)、ペンタエリスリトールトリアクリレート(「PETA」)、および4-ヒドロキシブチルアクリレートが挙げられる。
【0047】
ヒドロキシ官能性(メタ)アクリレートは、約80~約1,000グラム/モル、または約100~約800グラム/モル、または約110~約600グラム/モルの数平均分子量を有することができる。
【0048】
当然ながら、これらの(メタ)アクリレートモノマーの組み合わせも使用できる。
【0049】
(メタ)アクリレート成分は、組成物の総重量に基づいて、組成物の約10から約90重量パーセント、例えば約60から約90重量パーセントを構成することができる。
【0050】
嫌気性硬化誘導組成物は、t-ブチルヒドロペルオキシド、p-メタンヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、およびそれらの混合物から選択されるヒドロペルオキシドを含む。
【0051】
上記のとおり、硬化促進剤は、下記構造に包含されるものが提供される:
【0052】
【化17】
式中、XはCH、O、S、NR、CRまたはC=0であり;Rは、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルケニル、またはヒドロキシアルキニルの1種以上であり;R~Rは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、アミノ、カルボキシル、ニトロ、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルケニル、ヒドロキシアルキニル、またはアルカリールから選択され;Rは水素またはCHRであり、ただしRおよびRはそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、アミノ、カルボキシル、ニトロ、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルケニル、ヒドロキシアルキニル、またはアルカリールから選択され;nは0または1である。)。カルボキシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルケニル、ヒドロキシアルキニル、またはアルカリールの各々は、適宜1~12個の炭素原子を含むべきである。
【0053】
より具体的には、硬化促進剤の一実施形態は、下記である:
【0054】
【化18】
(式中、R、RおよびRは、上で定義されたとおりである。)
【0055】
上記の構造には、硬化促進剤の望ましい下記の代替実施形態が含まれる:
【0056】
【化19】
【0057】
これらの3つの代替実施形態の各々において、Rは上で定義したとおりである。
【0058】
特に望ましい実施形態は下記である:
【0059】
【化20】
【0060】
硬化促進剤は、組成物の総重量に基づいて、約0.005から約5重量パーセント、例えば約0.01から約2重量パーセント、望ましくは約0.01から約1.5重量パーセントの量で存在することができる。硬化促進剤は、従来の促進剤(ここでは、共促進剤と呼ぶが、ただし、そのような従来の促進剤よりも低いレベルである。)と組み合わせて用いてもよい。
【0061】
(メタ)アクリレート成分、嫌気性硬化誘導組成物および硬化促進剤の配合物またはその反応生成物のいずれかの物理的特性を変えるために、それらに従来の嫌気性接着剤に含まれていた成分を添加してもよい。例えば、マレイミド成分、耐熱性付与共反応物質、高温条件で反応する希釈成分、モノ-またはポリ-ヒドロキシアルカン、高分子可塑剤およびキレート剤(参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第6,391,993号参照)の1種以上を、配合物の物理的特性および/もしくは硬化プロファイルならびに/または硬化した接着剤の強度もしくは温度耐性を改変するために含んでもよい。
【0062】
使用される場合、マレイミド、共反応物、反応性希釈剤、可塑剤、および/またはモノ-またはポリ-ヒドロキシアルカンは、組成物の総重量に基づいて、約1重量パーセントから約30重量パーセントの範囲内の量で存在し得る。
【0063】
本発明の組成物はまた、フリーラジカル開始剤、フリーラジカル共促進剤、およびフリーラジカル生成阻害剤、ならびに金属触媒などの他の従来の成分を含んでもよい。
【0064】
多くのよく知られているフリーラジカル重合開始剤が本発明に組み込まれ、限定されるものではないが、ヒドロペルオキシドなどのペルオキシド化合物、例えば、クメンヒドロペルオキシド(「CHP」)、パラメンタンヒドロペルオキシド、t-ブチルヒドロペルオキシド(「TBH」)、およびt-ブチルペルベンゾエートが挙げられる。他のペルオキシドとしては、過酸化ベンゾイル、過酸化ジベンゾイル、1,3-ビス(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、過酸化ジアセチル、過酸化ジアセチル、ブチル4,4-ビス(t-ブチルペルオキシ)バレレート、p-クロロベンゾイルペルオキシド、t-ブチルクミルペルオキシド、t-ブチルペルベンゾエート、ジ-t-ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ-t-ブチルペルオキシヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-t-ブチル-ペルオキシヘキサ-3-イン、4-メチル-2,2-ジ-t-ブチルペルオキシペンタン、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0065】
このようなペルオキシド化合物は、典型的には、組成物の総重量に基づいて約0.1~約10重量%の範囲で本発明で用いられ、約1~約5重量%が望ましい。
述べたように、フリーラジカル重合の従来の促進剤も、本発明で使用される硬化促進剤と組み合わせて、ただし過去に使用されていた量より少ない量で使用してもよい。このような促進剤(本明細書では共促進剤と呼ばれる)は、典型的には、米国特許第4,287,350号(Rich)および第4,321,349号(Rich)に開示されているように、多様なヒドラジン(例えば、APH)である。本明細書で使用するための共促進剤としてAPHを選択した場合、通常、マレイン酸も添加されることとなる。本発明の1つの利点は、本発明の嫌気性硬化促進剤が、嫌気性接着剤組成物の調製においてそのような酸の使用を不要にすることである。
【0066】
また、他の共促進剤を本発明の組成物に使用してもよく、例えば、限定されるものではないが、
有機アミドおよびイミド、例えば安息香酸スルフィミド(サッカリンとしても知られている)などが挙げられる(米国特許第4,324,349号を参照されたい)。当然ながら、THQも共促進剤として使用することができる。
【0067】
また、安定剤および阻害剤(ヒドロキノンおよびキノンなどのフェノールなど)を本発明の組成物の早期の過酸化物分解および重合を制御および防止するために、ならびにキレート剤[エチレンジアミン四酢酸(「EDTA」)の四ナトリウム塩など]をそれらからの微量の金属混入物質を捕捉するために、使用してもよい。使用される場合、キレート剤は、通常、組成物の総重量に基づいて、約0.001重量パーセント~約0.1重量パーセントの量で組成物中に存在し得る。
【0068】
金属触媒溶液またはそのプレミックスは、約0.03から約0.1重量パーセントの量で使用される。
【0069】
増粘剤、非反応性可塑剤、充填剤、強化剤(エラストマーおよびゴムなど)および他の良く知られている添加剤などの他の添加剤を、当業者がそうすることが望ましいと考える場合は、組み込んでもよい。
【0070】
また本発明は、本発明の嫌気性接着剤組成物の調製および使用方法、および該組成物の反応生成物を提供する。
【0071】
本発明の組成物は、当業者によく知られている従来の方法を使用して調製してもよい。例えば、本発明の組成物の成分は、該成分が組成物中で果たそうとする役割および機能に沿った任意の好都合な順序で混ぜ合わせることができる。既知の装置を使用した従来の混合技術を用いてもよい。
【0072】
本発明の組成物は、さまざまな基材に適用されて、本明細書に記載される所望の利益および利点を発揮することができる。例えば、適切な基材は、鋼、真鍮、銅、アルミニウム、亜鉛、ならびに他の金属および合金、セラミック、ならびに熱硬化性樹脂から構成され得る。本発明の組成物は、鋼、真鍮、銅および亜鉛に対して特に良好な結合強度を示す。嫌気硬化性組成物用の適切なプライマーを選択した基材の表面に塗布して、硬化速度を高めてもよい。あるいは、本発明の嫌気性硬化促進剤をプライマーとして基材の表面に塗布してもよい。例えば、米国特許第5,811,473号(Ramos)を参照されたい。
【0073】
さらに、本発明は、嫌気硬化性組成物を調製する方法を提供し、そのステップは、(メタ)アクリレート成分、嫌気性硬化誘導組成物、および嫌気性硬化促進剤反応生成物を合わせて混合することを含む。
【0074】
そして、本発明は、(I)嫌気性硬化促進剤化合物を嫌気硬化性組成物に混合すること、または(II)基材の表面に嫌気性硬化促進剤化合物を塗布し、その上に嫌気硬化性組成物を塗布することを含む、嫌気性硬化促進剤化合物を使用する方法を提供する。当然ながら、本発明はまた、本発明の組成物を用いて合わせられた基材の間に形成される結合も提供する。
【0075】
上記の本発明の説明に鑑みて、広範囲の実用的な機会が与えられることは明らかである。以下の例は、例示目的に過ぎず、本明細書の教示を何ら限定するように解釈されるべきではない。
【実施例
【0076】
下記表1に示される量の上記の成分を使用してサンプルBおよびDを配合した。対照として、サンプルAおよびCをそれぞれ使用した。
【0077】
【表1】
【0078】
サンプルの調製では、ステンレス鋼プロペラ型ミキサーを使用して成分を混合した。
【0079】
これらのサンプルを、さまざまな基材上で、静摩擦トルク(breakaway torque)、プリベイリングトルク(prevail torque)、およびせん断強度などのさまざまな強度測定値について評価した。
【0080】
静摩擦トルクは、非固定(non-seated)アセンブリの軸方向荷重を低減または排除するために必要な初期トルクである。結合の初期破壊後のプリベイリングトルクは、ナットの360°回転の間の任意の点で測定される。プリベイリングトルクは、通常、ナットの180°回転で決定される。
【0081】
黒色酸化物のボルトおよび軟鋼ナットを脱脂し、接着剤をボルトに塗布し、ナットをボルトにねじ込んだ。試験した接着剤配合物の各々について5つのナットとボルトの試験体を組み立てた。静摩擦/プリベイリング評価では、組み立て後試験体を1時間および24時間周囲温度に維持した。次いで、静摩擦およびプリベイリングトルク強度(N-m)を、各接着剤配合物の5つの試験体について、それぞれ、周囲温度(25℃)および相対強度45~50%で1時間後および24時間後に記録した。トルク強度は、較正済み自動トルクアナライザーを使用して測定した。静摩擦トルク評価のデータを下記表2Aおよび2Bに示す。
【0082】
【表2】
【0083】
【表3】
【0084】
この表2Aと2Bに示したデータは、基材に塗布して硬化させた場合、サンプルBおよびDが、対照(サンプルAおよびC)と比較して、室温においてほぼ同様の最小トルク(breakloose)性能を示したことを示す。
【0085】
下記表3に、サンプルAおよびBについての追加のデータを提示および記録した。
【0086】
【表4】
【0087】
ほとんどの場合、サンプルB(THBQolを含む)は、対照のサンプルAと少なくとも同程度の性能を示した。これらのデータのグラフ表示については、図11~13を参照されたい。
【0088】
図1~6を参照すると、表3に示したデータ、および、下記表4に示したTHBQolを5つの異なる量(およびなし)で使用した追加サンプルのデータの一部が示されている。
【0089】
【表5】
【0090】
下記表5に、表4に記載のサンプルのプリベイリングトルク測定値を示した。
【0091】
【表6】
【0092】
サンプルAはTHQを1重量パーセントの量で使用していることを念頭に置くと、表4および5に記録されたデータから、代わりにTHBQolを使用することにより、多くの場合0.1重量%という低いレベルで少なくとも許容できる性能が得られることが明らかである。このデータのグラフ表示については、図1および2も参照されたい。
【0093】
また、これらのサンプルについて1時間の静摩擦およびプリベイリング強度測定値を下記表6および7に示し記録した。
【0094】
【表7】
【0095】
【表8】
【0096】
24時間の静摩擦およびプリベイリングトルクのデータと同様に、表6および7に記録した1時間の静摩擦およびプリベイリングトルクのデータから、代わりにTHBQolを使用することにより、多くの場合0.1重量パーセントという低いレベルで少なくとも許容可能な性能が得られ得ることは明らかである。このデータのグラフ表示については、図3および4も参照されたい。
【0097】
また、嫌気硬化性組成物中の促進剤としてのTHBQolの24時間硬化性能について、5つの異なる量をサンプルA(THBQolは含まないが0.9重量%のTHQを含む)と比較した。結果を下記表8に示す。
【0098】
【表9】
【0099】
促進剤としてTHBQolを含む嫌気硬化性組成物は、0.1から1重量パーセントの範囲の量で、24時間の硬化後に、軟鋼ピンおよびカラーに対して優れた性能を示した。図5を参照されたい。
【0100】
また、嫌気硬化性組成物中の促進剤としてのTHBQolの1時間硬化性能について、5つの異なる量をサンプルA(THBQolは含まないが0.9重量%のTHQを含む)と比較した。結果を下記表9に示す。
【0101】
【表10】
【0102】
促進剤としてTHBQolを含む嫌気硬化性組成物は、0.1から1重量パーセントの範囲の量で、1時間の硬化後に、軟鋼ピンおよびカラーに対して優れた性能を示した。図6を参照されたい。
【0103】
また、嫌気硬化性組成物中の促進剤としてのTHBQolのギャップを介した硬化の性能について、2つの異なる量をサンプルA(THBQolは含まないが0.9重量%のTHQを含む)と比較した。結果を下記表10に示す。
【0104】
【表11】
【0105】
促進剤としてTHBQolを含む嫌気硬化性組成物は、0.1から1重量パーセントの範囲の量で、24時間の硬化後に、0.15mmのギャップで軟鋼ピンおよびカラーに対して優れた性能を示した。図7を参照されたい。
【0106】
また、THBQolを硬化促進剤としてのAPHと比較した。したがって、以下の評価では、サンプルAを対照として使用する代わりに、硬化促進剤としてAPHを使用しているサンプルCを対照として使用した。
【0107】
表11に、サンプルCおよびDについて、初めに脱脂しておいた軟鋼ピンおよびカラーに対する1時間および24時間後のせん断強度性能を、5つの複製測定の平均として示す。
【0108】
【表12】
【0109】
このデータは、結合した軟鋼部品において、促進剤としてのTHBQolのせん断強度性能がAPHに少なくとも匹敵することを示している。データのグラフ表示については、図8を参照されたい。
【0110】
表12に、サンプルCおよびBについて、初めに脱脂しておいた黒色酸化物ナットおよびボルトに対する30分後および24時間後のせん断強度性能を、5つの複製測定の平均として示す。
【0111】
【表13】
【0112】
このデータは、結合した黒色酸化物ナットおよびボルトにおいて、促進剤としてのTHBQolの静摩擦トルク性能がAPHに少なくとも匹敵することを示す。データのグラフ表示については図9を参照されたい。
【0113】
表13に、サンプルCおよびDのプリベイリングトルク性能のデータを、初めに脱脂しておいた黒色酸化物のナットおよびボルトにおける5つの複製測定の平均として示す。
【0114】
【表14】
【0115】
このデータは、結合した黒色酸化物ナットおよびボルトにおいて、硬化促進剤としてのTHBQolの静摩擦トルク性能がAPHに少なくとも匹敵することを示す。データのグラフ表示については、図10を参照されたい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13