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特許7312264動作環境における反射フォトリソグラフィマスクのパターン要素の配置を決定するためのデバイスおよびその方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-11
(45)【発行日】2023-07-20
(54)【発明の名称】動作環境における反射フォトリソグラフィマスクのパターン要素の配置を決定するためのデバイスおよびその方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/84 20120101AFI20230712BHJP
   G03F 1/24 20120101ALI20230712BHJP
   G03F 1/70 20120101ALI20230712BHJP
【FI】
G03F1/84
G03F1/24
G03F1/70
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021546253
(86)(22)【出願日】2020-02-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-01
(86)【国際出願番号】 EP2020052984
(87)【国際公開番号】W WO2020161235
(87)【国際公開日】2020-08-13
【審査請求日】2021-10-05
(31)【優先権主張番号】102019201497.6
(32)【優先日】2019-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】503263355
【氏名又は名称】カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100158469
【弁理士】
【氏名又は名称】大浦 博司
(72)【発明者】
【氏名】ブレージング-バンガート カローラ
【審査官】今井 彰
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/153654(WO,A1)
【文献】特開2008-103512(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0255065(US,A1)
【文献】特開2010-152031(JP,A)
【文献】特表2017-517759(JP,A)
【文献】特表2015-513223(JP,A)
【文献】特開2007-150287(JP,A)
【文献】特開2007-150286(JP,A)
【文献】特開2009-253119(JP,A)
【文献】特開2004-031954(JP,A)
【文献】特開平08-250394(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/20-7/24、9/00-9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動作環境(450)における反射フォトリソグラフィマスク(400)のパターン要素(350)の配置を決定するためのデバイス(1000)であって、
a. 前記反射フォトリソグラフィマスク(400)の前記動作環境(450)と対応しない測定環境(150)において、前記反射フォトリソグラフィマスク(400)の後面(315)の表面凹凸データ(420)、および/または前記反射フォトリソグラフィマスク(400)の載置部(900)の表面凹凸データ(930)を決定するように構成された少なくとも1つの第1の手段(1010、1100、1200、1500)と、
b. 前記測定環境(150)において前記パターン要素(350)の配置データを決定するように構成された少なくとも1つの第2の手段(1020、1200)と、
c. 前記後面(315)および/または前記載置部(900)の前記決定された表面凹凸データ(420、930)、ならびに前記決定された配置データから、前記動作環境(450)における前記反射フォトリソグラフィマスク(400)の前記パターン要素(350)の配置を計算するように構成された少なくとも1つの計算ユニット(1040)と、
を備え
前記少なくとも1つの第1の手段(1010、1100、1200)は、前記動作環境(450)に対応しない環境(150)において前記後面(315)の表面凹凸データ(420)を確認するように構成された第1の測定ユニット(1100)を備え、
前記少なくとも1つの第2の手段(1020、1200)は、前記動作環境(450)に対応しない環境(150)において前記パターン要素(350)の配置データを確認するように構成された第2の測定ユニット(1200)を備え、
前記第2の測定ユニット(1200)は、前記反射フォトリソグラフィマスク(400)の前面(325)上に実質的に垂直に放射するように構成され、前記第1の測定ユニット(1100)は、前記反射フォトリソグラフィマスク(400)の前記後面(315)上に実質的に垂直に放射するように構成される、
デバイス(1000)。
【請求項2】
前記少なくとも1つの第2の手段(1020、1200)は、前記反射フォトリソグラフィマスク(400)の前記前面(325)の表面凹凸データを決定するように更に構成され、前記計算ユニット(1040)は、前記パターン要素(350)の配置を計算するとき、前記前面(325)の前記決定された表面凹凸データを考慮するように更に構成される、請求項1に記載のデバイス(1000)。
【請求項3】
前記少なくとも1つの第1の手段(1010)および/または少なくとも1つの第2の手段(1020)は、1つまたは複数の外部測定デバイスから、前記後面(315)、前記前面(325)、および/または前記載置部(900)の前記表面凹凸データ(420、930)、ならびにまた前記パターン要素の配置を取得するように構成される、請求項1または2に記載のデバイス(1000)。
【請求項4】
前記計算ユニット(1040)は、前記動作環境(450)における前記反射フォトリソグラフィマスク(400)の前記載置部(430)に対する前記パターン要素(350)の配置を決定するように構成される、請求項1~のいずれか1項に記載のデバイス(1000)。
【請求項5】
前記計算ユニット(1040)は、前記動作環境(450)における設計データに対する前記パターン要素(350)の配置の少なくとも1つのずれを決定するように構成される、請求項1~のいずれか1項に記載のデバイス(1000)。
【請求項6】
前記少なくとも1つのずれおよび/または前記後面(315)の表面凹凸データ(420)を補正するピクセルの少なくとも1つの配列を前記反射フォトリソグラフィマスク(400)の基板(310)に導入するように構成されたレーザシステムを更に備え、前記計算ユニット(1040)は、前記パターン要素(350)の配置の前記少なくとも1つのずれ、および/または前記決定された表面凹凸データ(420)から、前記ピクセルの少なくとも1つの配列を決定するように更に構成される、請求項に記載のデバイス。
【請求項7】
前記計算ユニット(1040)は、前記動作環境(450)において理想的には平坦であると仮定される表面を有する静電チャック(430)に対する前記フォトリソグラフィマスク(400)の前記パターン要素(350)の配置を決定するように構成される、請求項1~のいずれか1項に記載のデバイス(1000)。
【請求項8】
前記第1の測定ユニット(1100)は、可視波長範囲のための第1の光源(1110)、および/または深紫外波長範囲のための第2の光源(1110)を含む、請求項のいずれか1項に記載のデバイス(1000)。
【請求項9】
前記第2の測定ユニット(1200)は、可視波長範囲のための第3の光源(1210)、および/または深紫外波長範囲のための第4の光源(1210)を含む、請求項のいずれか1項に記載のデバイス(1000)。
【請求項10】
前記反射フォトリソグラフィマスク(400)の位置を変えることなく、前記第1の測定ユニット(1100)は前記後面(315)の前記表面凹凸データ(420)を取得し、前記第2の測定ユニット(1200)は前記パターン要素(350)の前記配置データを取得する、請求項に記載のデバイス(1000)。
【請求項11】
前記計算ユニット(1040)は、前記測定環境(150)における前記反射フォトリソグラフィマスク(400)の保持による前記反射フォトリソグラフィマスク(400)の変形を考慮するように構成される、請求項10に記載のデバイス(1000)。
【請求項12】
前記デバイス(1000)は、前記反射フォトリソグラフィマスク(400)を保持するための3点載置部(140)を備える、請求項1~11のいずれか1項に記載のデバイス(1000)。
【請求項13】
前記少なくとも1つの第1の手段(1010)は、共焦点技法、レーザ表面形状測定、および白色光干渉分光法の少なくとも1つの技法を用いることができる表面形状測定装置を含む少なくとも1つの第3の測定ユニット(1500)を備える、請求項1~12のいずれか1項に記載のデバイス(1000)。
【請求項14】
前記計算ユニット(1040)は、前記動作環境(450)における前記パターン要素(350)の配置を、前記動作環境(450)における前記反射フォトリソグラフィマスク(400)の前記載置部(430)の平坦な表面(460)に関係付けるように構成される、請求項1~13のいずれか1項に記載のデバイス(1000)。
【請求項15】
前記計算ユニット(1040)は、前記配置データを確認するプロセス中、および/または前記表面凹凸データ(420)を確認するプロセス中に、前記反射フォトリソグラフィマスク(400)の重力効果を決定するように構成される、請求項1~14のいずれか1項に記載のデバイス(1000)。
【請求項16】
動作環境(450)における反射フォトリソグラフィマスク(400)のパターン要素(350)の配置を決定するための方法(1600)であって、前記方法(1400)は、以下のステップ、すなわち、
a. 前記反射フォトリソグラフィマスク(400)の前記動作環境(450)と対応しない測定環境(150)において、前記反射フォトリソグラフィマスク(400)の後面(315)の表面凹凸データ(420)、および/または前記反射フォトリソグラフィマスク(400)の載置部(900)の表面凹凸データ(930)を決定するステップ(1620)と、
b. 前記測定環境(150)において前記パターン要素(350)の配置データを決定するステップ(1630)と、
c. 前記後面(315)および/または前記載置部(900)の前記決定された表面凹凸データ(420、930)、ならびに前記決定された配置データから、前記動作環境(450)における前記パターン要素(350)の配置を計算するステップ(1640)と、
を含
前記表面凹凸データ(420)を決定することは、前記動作環境(450)に対応しない環境(150)において前記後面(315)の表面凹凸データ(420)を確認するために前記反射フォトリソグラフィマスク(400)の前記後面(315)上に実質的に垂直に放射することを含み、
前記パターン要素(350)の配置データを決定することは、前記動作環境(450)に対応しない環境(150)において前記パターン要素(350)の配置データを確認するために前記反射フォトリソグラフィマスク(400)の前面(325)上に実質的に垂直に放射することを含む、
方法(1600)。
【請求項17】
前記表面凹凸データ(420)を決定することは、第1の測定ユニット(1100)によって前記表面凹凸データ(420)を取得することを含み、前記配置データを決定することは、第2の測定ユニット(1200)によって前記パターン要素(350)の前記配置データを取得することを含み、前記表面凹凸データ(420)および前記配置データは、共通測定プロセスにおいて確認される、請求項16に記載の方法(1600)。
【請求項18】
前記表面凹凸データ(420)を決定することは、前記反射フォトリソグラフィマスク(400)の温度調節段階において実行される、請求項16または17に記載の方法(1600)。
【請求項19】
レーザを用いて、前記動作環境(450)における前記パターン要素(350)の配置および/または前記後面(315)の表面凹凸データ(420)の少なくとも1つのずれを補正するピクセルの少なくとも1つの配列を前記反射フォトリソグラフィマスク(400)の基板(310)に導入するステップを更に含む、請求項1618のいずれか1項に記載の方法(1600)。
【請求項20】
コンピュータシステムによって実行されると、前記コンピュータシステムに、請求項1619のいずれか1項に記載の方法を実行させる命令を含むコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、参照によりその全体が本出願に援用される、2019年2月6日にドイツ特許商標庁に出願された、ドイツ特許出願第10 2019 201 497.6号の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、動作環境における反射フォトリソグラフィマスク(reflective photolithographic mask:反射性フォトリソグラフィマスク)のパターン要素の配置を決定するための方法およびデバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
半導体産業における集積密度の増大の結果として、フォトリソグラフィマスクは、ウェハ上にますます小さな構造を結像(image)しなくてはならない。この傾向を考慮するために、リソグラフィ装置の露光波長は、更に短い波長へとシフトされている。将来のリソグラフィシステムは、おそらくは、少なくとも部分的に、極紫外(EUV)範囲内(必ずしもそうではないが好ましくは6nmから15nmまでの範囲内)で作動することになる。EUV波長範囲は、将来のリソグラフィシステムのビーム経路内の光学要素の精度に対して膨大な要求を課している。光学要素は間違いなく反射光学要素になり、このため、EUV波長範囲のフォトリソグラフィマスクも同様である。しかしながら、反射光学要素は他の波長にも使用可能である。
【0004】
フォトマスク、特にEUVマスクの場合、フォトマスクのパターン要素が、半導体コンポーネントの設計によって予め定められた構造要素をウェハ上のフォトレジスト内に厳密に結像することが重要である。この方式でのみ、複数の連続処理プロセスおよび異なる複数のマスクを用いた露光プロセスによって、ナノメートル範囲の寸法を有する構造がウェハ上に再現可能に生成され得ることが可能となる。ITRS(国際半導体技術ロードマップ)によれば、将来の技術ノードのためのフォトリソグラフィマスクのオーバレイ要件を満たすことは、リソグラフィにおける最も困難な課題のうちの1つである。
【0005】
それらの層状の構造に起因して、EUV波長範囲のためのフォトリソグラフィマスクは内部応力を有する。ここで、多層構造は、通常、内部歪みに対する個別の最大の寄与となる。EUVマスクの内部歪みは、その表面の湾曲につながる。通常、EUVマスクの内部歪みは、マスク前面、すなわち、多層構造およびパターン要素が配列される表面の凸面につながる。
【0006】
DE 10 2016 204 535 A1は、フォトリソグラフィマスクの誤差修正のために用いられる、測定マイクロスコープの誤差修正データを確認するために較正マスクおよび自己較正アルゴリズムを用いる測定マイクロスコープを較正するための方法について記載している。
【0007】
現行では、従来の透過型(transmissive)フォトマスクのパターン要素の配置が、生成されたフォトマスクが光学的に測定されることにより測定される。測定中、透過型フォトマスクは、通常、3つの半球上に装着され、重力効果によって適所に維持される。固有の質量(inherent weight)によって生じる新たに生成されたマスクの撓み(sagging:たわみ、たるみ)は、有限要素シミュレーションを用いることにより確認され、透過型マスクの撓みによって生じる吸収体構造のパターン要素の配置誤差は、計算によって補正される。
【0008】
DE 10 2017 202 945 A1は、反射マスクの異なる載置部(mounts:マウント)またはマウンティング(mountings)間の遷移時のパターン要素の位置における内部応力および重力の効果を決定することができる方法を記述している。
【0009】
EUVマスクは、予測可能な未来において更に用いられるようになるであろう。この場合、EUVマスクは、共通のマスクセットにおいて従来の透過型マスクと共に用いられる(ミックスアンドマッチ(mix-and-match)応用)。EUVマスクは、特に、ウェハ上に重要な構造要素を結像するために用いられるため、OPO(オンプロダクトオーバレイ)バジェットへの寄与がますます大きくなっている。
【0010】
EUVステッパにおいて、EUVマスクは通常、静電クランプデバイスまたは静電チャック(ESC:electrostatic chuck)上に保持される。この目的で、EUVマスクの後面には、導電層が設けられる。この後面層も同様に、EUVマスクにおいて応力を引き起こす。更に、EUVマスクの後面は小さな凹凸(不均一性)(unevennesses)を有する。前記凹凸は、マスク基板の後面の不完全な平面性によって、および/または後面マスク表面の完全に平坦でない導電性コーティングによって生じる可能性がある。前記凹凸は、静電クランプデバイスによって、EUVマスクの動作中にEUVマスクの前面に少なくとも部分的に伝達される。
【0011】
DE 10 2004 010 002 A1は、個々に電気的にバイアス可能であるように各サポート要素が具現化された、マスクのための多数のサポート要素を有するEUVマスクのためのマスクホルダについて記述している。
【0012】
以下に例として引用される文書は、EUVマスクの後面凹凸について分析している。P. Vukkadala, D. Patil and R.I. Engelstad: "Overview of IP error compensation techniques for EUVL", Proc. of SPIE, Vol. 7545, 26th European Mask and Lithography Conference, 75404-1 - 75404-11、O. Tanaka et al.: "Overlay accuracy of EUV1 using compensation method for nonflatness of mask", EUVL Symposium, MA-P07, Oct. 2010、K. Ballman. C. Lee, T. Dunn and A. Bean: "Error analysis of overlay compensation methodologies and proposed functional tolerances of EUV photomask flatness", Proc. of SPIE, Vol. 9984, XXIII Symposium on Photomask and Next-Generation Lithography Mask Technology, May 2016, doi: 10.1117/12.2242282、および G. Brandstetter and S. Govindjee: "Analytical treatment of the deformation behavior of extreme-ultraviolet lithography masks during electrostatic chucking", J. of Micro/Nanolithography, MEMS, and NOEMS, Vol. 11(4), Oct.-Dec. 2012, pages 043005-1 - 043005-10。
【0013】
EUVマスクのパターン要素の配置を確認し、EUVマスクの前面および後面の凹凸を再現可能に決定することは、計測上の課題となっている。
【0014】
本発明は、記述した課題を少なくとも部分的に満たすことを可能にするデバイスおよび方法を指定する問題に対処する。
【発明の概要】
【0015】
本発明の1つの例示的な実施形態によれば、この問題は、請求項1に記載のデバイスおよび請求項17に記載の方法によって解決される。1つの実施形態において、動作環境における反射フォトリソグラフィマスクのパターン要素の配置を決定するためのデバイスは、(a)反射フォトリソグラフィマスクの動作環境と対応しない測定環境において、反射フォトリソグラフィマスクの後面の表面凹凸データ(surface unevenness data)、および/または反射フォトリソグラフィマスクの載置部(マウント)の表面凹凸データを決定するように構成された少なくとも1つの第1の手段と、(b)測定環境においてパターン要素の配置データを決定するように構成された少なくとも1つの第2の手段と、(c)後面および/または載置部の決定された表面凹凸データ、ならびに決定された配置データから、動作環境における反射フォトリソグラフィマスクのパターン要素の配置を計算するように構成された少なくとも1つの計算ユニットと、を備える。
【0016】
本発明によるデバイスは、反射フォトリソグラフィマスクの後面凹凸を決定することを可能にする。通常、本発明によるデバイスは、測定環境から動作環境への遷移時の、EUVマスク、および/または測定環境においてEUVマスクを保持もしくは固定するために用いられるEUVマスクのホルダの凹凸の、反射フォトリソグラフィマスクの動作環境におけるパターン要素の位置に対する影響を考慮することを可能にする。結果として、OPO(オンプロダクトオーバレイ)バジェットへの反射フォトリソグラフィマスクの寄与をより高い精度で決定することができる。反射フォトマスクは、マスクスタック内のパターン要素の構造寸法に起因した重大なプロセスステップのために主に用いられるため、パターン要素配置がより高い精度で求められた反射フォトマスクに基づいて、2つ以上の反射フォトマスクのオーバレイおよび/または1つもしくは複数の反射マスクと1つもしくは複数の透過型フォトマスクとのオーバレイを最適化することが可能である。したがって、結果として、例えば、ミックスアンドマッチマスクセットに基づいて半導体コンポーネントの製造プロセスの歩留まりを増大させることが可能である。
【0017】
反射フォトリソグラフィマスクの後面は、パターン要素を有する、反射フォトリソグラフィマスクの前面の反対にある。
【0018】
本発明によるデバイスは、あらゆる種類の従来の透過型フォトマスクのパターン要素の配置を決定するために用いることもできる。
【0019】
少なくとも1つの第2の手段は、反射フォトリソグラフィマスクの前面の表面凹凸データを決定するように更に構成することができ、計算ユニットは、パターン要素の配置を計算するために、前面の決定された表面凹凸データを考慮するように更に構成することができる。
【0020】
少なくとも1つの第1の手段および/または少なくとも1つの第2の手段は、1つまたは複数の外部測定デバイスから、反射リソグラフィマスクの後面、前面、および/または載置部の表面凹凸データ、ならびにまたパターン要素の配置を取得するように構成することができる。少なくとも1つの第1の手段および/または少なくとも1つの第2の手段は、メモリから、反射リソグラフィマスクの後面、前面、および/または載置部の表面凹凸データ、ならびにまたパターン要素の配置を取得することができる。
【0021】
第1の例示的な実施形態において、本出願において定義されるデバイスは、デバイスが、1つまたは複数の外部測定デバイスから、測定データ、例えば、反射リソグラフィマスクの後面および/もしくは前面の表面凹凸データ、ならびに/または反射リソグラフィマスクの載置部の表面凹凸データを取得することができるインタフェースを備えることができる。インタフェースは、有線または無線インタフェースを含むことができる。更に、デバイスは、更なる外部の測定デバイスから、パターン要素の配置を記述する測定データを取得することができる。
【0022】
反射フォトリソグラフィマスクの載置部はチャックを備えることができる。チャックは、真空チャック(VC:vacuum chuck)または静電チャック(ESC)を備えることができる。載置部は、反射フォトリソグラフィマスクを保持するための表面を有することができる。反射フォトリソグラフィマスクを保持または固定するための表面は、平坦な表面を含むことができる。反射フォトリソグラフィマスクを保持するための表面は、凹凸を有することができる。載置部の表面の凹凸は、局所的凹凸を含むことができる。局所的凹凸は、0.1nm~20nmの範囲内の載置部の平均表面に対するずれ(deviations)を有することができる。
【0023】
測定環境において、EUVマスクは2つの異なる方式で保持または固定することができる。測定環境において、第1に、EUVマスクは3点載置部(three-point mount:3点マウント)に装着することができ、第2に、EUVマスクはチャックを用いることにより固定することができる。
【0024】
少なくとも1つの第1の手段は、動作環境に対応していない環境における表面凹凸データを確認するように構成された第1の測定ユニットを備えることができる。
【0025】
その動作環境において、反射フォトマスクは、通常、静電チャックによって適所に保持される。この構成において、反射フォトリソグラフィマスクの後面凹凸を直接決定することは可能でない。
【0026】
少なくとも1つの第1の手段は、載置部の表面凹凸データを決定するように構成された少なくとも1つの第3の測定ユニットを備えることができる。少なくとも1つの第3の測定ユニットは、表面形状測定装置を含むことができる。表面形状測定装置は、触覚的または光学的方法を用いることができる。表面形状測定装置は、以下の群、すなわち、共焦点技法、レーザ表面形状測定、および白色光干渉分光法からの少なくとも1つの技法を用いることができる。載置部の表面凹凸データを決定するための少なくとも1つの第3の測定ユニットは、干渉計を備えることができる。
【0027】
少なくとも1つの第2の手段は、動作環境に対応していない環境におけるパターン要素の配置データを確認するように構成された第2の測定ユニットを備えることができる。
【0028】
既に上記で説明したように、動作環境における反射マスクは、静電チャックによって標準として適所に保持される。対照的に、マスク製造プロセスの一部の間、反射マスクは、通常、重力の作用によって3点載置部において固定される。
【0029】
第2の測定デバイスは、反射フォトリソグラフィマスクのパターン要素の座標を決定するように構成することができる。
【0030】
第2の測定ユニットは、動作環境に少なくとも部分的に対応する環境においてパターン要素の配置データを確認するように構成することができる。
【0031】
第2の測定ユニットが、その動作環境における反射マスクの固定に実質的に対応する方式で反射フォトリソグラフィマスクを固定するチャックを有することが可能である。更に、第2の測定ユニットは、反射フォトリソグラフィマスクの動作環境の1つまたは複数の更なるパラメータをシミュレートするように構成することができる。動作環境の更なるパラメータは、動作環境の温度、空気圧および/または空気湿度とすることができる。動作環境が真空環境に対応する場合、空気圧および空気湿度は、真空環境における残存する残留圧力および残存する残留湿度に関する。
【0032】
本明細書のこの箇所および他の箇所において、「実質的に」という表現は、先行技術による測定器具を用いて測定変数を決定する場合の、従来の測定誤差内の測定変数の指示を表す。
【0033】
反射フォトリソグラフィマスクのパターン要素の配置を決定するためのデバイスの少なくとも1つの第2の手段は、反射フォトリソグラフィマスクの前面の表面凹凸データを決定するように構成することができる。少なくとも1つの第2の手段は、動作環境に対応していない環境における反射フォトリソグラフィマスクの前面の表面凹凸データを確認するように構成された第4の測定ユニットを備えることができる。第4の測定ユニットは、動作環境に対応する環境における前面の表面凹凸データを確認するように構成することができる。第1の測定ユニットは第4の測定ユニットを備えることができる。更に、第2の測定ユニットは第4の測定ユニットを備えることができる。
【0034】
計算ユニットは、表面凹凸データを決定するために、および配置データを決定するために、後面、前面および/または載置部の取得された表面凹凸データ、ならびに取得された配置データを変換するように構成することができる。
【0035】
後面および/または前面の表面凹凸データ、および配置データが、異なるユニットまたは異なる測定ユニットによって確認される場合、2つの計量器具の測定データを厳密に互いに関係付けてコンバートすることが必要とされる。
【0036】
計算ユニットは、動作環境における反射フォトリソグラフィマスクの載置部に対するパターン要素の配置を決定するように構成することができる。
【0037】
計算ユニットは、動作環境における設計データに対するパターン要素の配置の少なくとも1つのずれを決定するように構成することができる。
【0038】
計算ユニットは、パターン要素の配置の少なくとも1つのずれ、および/または決定された表面凹凸データから、少なくとも1つのずれおよび/または後面の表面凹凸を補正するピクセルの少なくとも1つの配列を決定するように更に構成することができる。
【0039】
このため、上記で説明したデバイスの1つの実施形態は、1つまたは複数のパターン要素の目標となる横方向の変位によって、設計によって予め定義された配置に対する反射フォトリソグラフィマスクのパターン要素の配置の決定されたずれを補正するために用いることができる。ここで、マスクがマスクの動作環境において用いられているため、補正をこの環境に関係付けることが有利である。代替的にまたは加えて、ピクセルの1つまたは複数の配列をマスク基板に導入するかまたは書き込むことによって、決定された後面の表面凹凸を補うことが可能である。
【0040】
計算ユニットは、動作環境における反射フォトリソグラフィマスクの載置部の表面に対するパターン要素の配置を決定するように構成することができる。動作環境における反射フォトリソグラフィマスクの載置部は静電チャックを備えることができる。
【0041】
計算ユニットは、動作環境において理想的には平坦であると仮定される表面を有する静電チャックに対する反射フォトリソグラフィマスクのパターン要素の配置を決定するように構成することができる。
【0042】
マスクが静電チャックまたは真空チャックに固定される場合、チャックは、前記マスクの後面がチャックの表面の実質的に全域にわたって載るような大きさを有する力を反射マスクに加えることができることが仮定される。これは、反射マスクがチャック内で固定される場合、マスクの後面の表面凹凸が、チャックの表面凹凸によって隠されるかまたはなくなることを意味する。
【0043】
上記で説明したように、反射マスクは、測定環境において、例えば3点載置部によって、またはチャックによって保持することができる。反射フォトリソグラフィマスクを保持または固定するチャックの表面は、完全に平坦ではない。チャックの表面の凹凸は、少なくとも減衰した形態において、マスクを通って伝播し、EUVマスクの前面に装着されたパターン要素の配置の変化につながる。
【0044】
上記で既に説明したのと同様に、反射フォトリソグラフィマスクは通常、動作中、すなわち動作環境内で、すなわちリソグラフィデバイスの露光システムにおいて、静電チャックによって保持される。動作環境における反射フォトリソグラフィマスクの固定は、多くの場合、理想的には平坦であると仮定されるESCの表面に関係付けられる。反射マスクがVCまたはESCを用いることにより測定環境において固定される場合、上記で指定されたデバイスは、確認された配置データを、ESCの、動作環境において理想的には平面状であると仮定される表面に変換する。これは、測定環境におけるチャックの既存の表面凹凸が、動作環境において用いられるESCの、理想的には平坦であると仮定される表面に対し計算的に補正されることを意味する。
【0045】
後面、前面および/または載置部の表面凹凸データ、ならびに配置データを決定することは、これらのデータを外部デバイスから取得することを含むことができ、かつ/または後面、前面および/または載置部の表面凹凸データ、ならびに配置データを、デバイスの1つまたは複数の測定ユニットによって確認することを含むことができる。
【0046】
パターン要素の配置を決定するためのデバイスは、その前面および後面が交換されるように反射フォトリソグラフィマスクを位置決めするように構成されたマスク回転ユニットを更に備えることができる。
【0047】
反射フォトマスクを回転またはフリップするとき、前記フォトマスクは、その活性領域における反射マスクの汚染または欠陥の生成を回避するために、特定の領域においてのみ保持されることを許可されることを検討に入れるべきである。
【0048】
第1の測定ユニットおよび/または第4の測定ユニットは、反射フォトリソグラフィマスクの表面凹凸データを確認するように構成されたフォーカスシステムを備えることができる。
【0049】
それぞれ、後面および/または前面の凹凸を決定するために反射フォトマスクの後面および/または前面上に光ビームを合焦することにより、反射マスクの後面および/または前面の比較的大きな領域にわたる光ビームの平均化が生じないため、高い横方向の分解能で凹凸を確認することが可能になる。マスクの後面および/またはマスクの前面の凹凸を決定するときの正確度は、走査点の横方向の間隔の選択によって設定することができる。
【0050】
第2の測定ユニットは、パターン要素の配置データを確認するように構成されたフォーカスシステムを備えることができる。
【0051】
第2の測定ユニットは、反射フォトマスクの後面および/または前面の表面凹凸データ、ならびにその配置データを自動的に確認するように構成することができる。
【0052】
反射フォトリソグラフィマスクは後面の導電性コーティングを有することができる。
【0053】
第1、第2および/または第4の測定ユニットのフォーカスシステムは、後面、前面の凹凸データ、および/またはパターン要素の配置データを自動的に確認するためのオートフォーカスシステムを備えることができる。代替的な実施形態では、第1、第2および/または第4の測定ユニットは、フォーカススタック測定によって、後面、前面の凹凸データ、および/またはパターン要素の配置データを決定することができる。
【0054】
導電性コーティングは、静電チャックによって、動作環境において反射マスクを装着または固定する役割を果たす。導電性コーティングは、通常、金属または金属合金を備える。反射マスクの後面の導電性コーティングは、通常、電磁スペクトルの可視波長範囲または紫外波長範囲からの光のためのミラーとして機能する。
【0055】
反射フォトリソグラフィマスクは、極紫外(EUV)波長範囲のためのフォトリソグラフィマスクを備えることができる。現時点において、EUV範囲内で、10nm~15nmの波長範囲が用いられることが好ましい。
【0056】
反射フォトリソグラフィマスクの前面は、パターン要素の配置データを確認するために用いられるマークまたは位置合わせマークを含むことができる。位置合わせマークは、反射マスク上で規則的格子または不規則的格子状に装着することができる。位置合わせマークは、単独で、またはパターン要素の配置データを確認するためのパターン要素と組み合わせて用いることができる。しかしながら、反射フォトリソグラフィマスク上での位置を確認するために、パターン要素自体を排他的に用いることも可能である。
【0057】
第1の測定ユニットは、可視波長範囲のための第1の光源、および/または深紫外波長範囲のための第2の光源を含むことができる。
【0058】
第2の測定ユニットは、可視波長範囲のための第3の光源、および/または深紫外波長範囲のための第4の光源を含むことができる。
【0059】
第1、第2、第3および/または第4の光源は、レーザシステムまたはランプ、例えばLED(発光ダイオード)を備えることができる。第1および第3の光源は、ヘリウムネオンレーザを備えることができる。第2および第4の光源はフッ化アルゴンレーザを備えることができる。第1、第2、第3および/または第4の光源は、0.1~0.98、好ましくは0.1~0.95、より好ましくは0.1~0.92および最も好ましくは0.1~0.9の範囲の開口数(NA)を含むことができる。現時点において、0.1~0.4の範囲のNAを有する可視波長スペクトルにおける光源、または深紫外(DUV)波長範囲内の光源、例えば193nmで放射し、0.4~0.9の範囲のNAを有するレーザシステムが使用されることが好ましい。
【0060】
第1および/または第3の光源は、10nm~15nmの範囲の波長を含み、1nm未満の線幅を有することができる。第1および第3の光源または第2および第4の光源が、1つの光源として具現化することができる。
【0061】
反射マスクのパターン要素の配置を確認し、反射マスクの後面および/または前面の表面凹凸を確認するための可能な限り最も短い波長を有する光子を用いることが有利である。なぜなら、デバイスまたは測定デバイスの分解能は、用いられる光源の波長が短くなるほど増大するためである。現時点において、EUV光源が利用可能でないことは、依然として、反射マスクの化学線波長において動作する測定デバイスの使用を大幅に妨げている。
【0062】
第1の測定ユニットは少なくとも1つの第1の検出器を備えることができ、第2の測定ユニットは少なくとも1つの第2の検出器を備えることができる。少なくとも1つの第1の検出器および少なくとも1つの第2の検出器は、CCD(電荷結合デバイス)検出器を備えることができる。
【0063】
反射フォトリソグラフィマスクの位置を変更することなく、第1の測定ユニットは後面の表面凹凸データを確認することができ、第2の測定ユニットはパターン要素の配置データを確認することができる。更に、反射フォトリソグラフィマスクの位置または場所を変更することなく、第1の測定ユニットが、後面の表面凹凸データを決定し、第2の測定ユニットが、パターン要素の配置データを決定し、第4の測定ユニットとしての機能において、前面の表面凹凸データを決定することが可能である。
【0064】
上記で定義されたデバイスのこれらの実施形態は、測定データを単純な方式で互いに関係付けることができるという利点を有する。更に、これらの実施形態は、全ての測定を反射フォトリソグラフィマスクの同じ装着状態において行うことができ、結果としていくつかの潜在的誤差原因が生じ得なくなるため、有利である。
【0065】
計算ユニットは、測定環境における反射フォトリソグラフィマスクの保持による反射フォトリソグラフィマスクの変形を考慮するように構成することができる。測定環境において、反射フォトリソグラフィマスクは、例えば3点載置部によって、またはチャックによって保持することができる。後面および/もしくは前面の表面凹凸データ、ならびに/または反射フォトリソグラフィマスクの配置データは、測定環境において決定することができる。
【0066】
マスクの3点載置部の場合、検討中のマスクのタイプにかかわらず、固有の質量によりフォトマスクの撓みが生じ、この現象は、当該技術分野において「マスク撓み」と呼ばれる。透過型フォトマスクの場合、デバイスの計算ユニットは、3点載置部の場合のマスクの撓みを決定するために、マスク基板の有限要素シミュレーションを実行することができる。反射マスクの場合、第2の測定ユニットは、マスクの高さプロファイルを決定することができる。第2の測定ユニットは、反射マスクの前面および/または後面の高さプロファイルを確認することができる。更に、第2の測定ユニットは、第4の測定ユニットとしての機能において、反射フォトリソグラフィマスクの前面の表面の凹凸を決定することができる。第1の測定ユニットは、同様に、反射マスクの後面の高さプロファイルを確認するように構成することができる。
【0067】
反射フォトリソグラフィマスクがVCまたはESCによって固定される場合、パターン要素の配置を決定するために、測定環境において第1または第2の測定ユニットを使用することが可能である。
【0068】
第2の測定ユニットが、反射マスクのパターン要素の座標、すなわち、xy座標のみでなく、高さ情報、すなわちz座標も測定することが好ましい。次に、確認された3次元測定データセットを、計算ユニットによって、パターン要素の配置を計算するために用いることができる。
【0069】
第2の測定ユニットは、パターン要素の座標を確認するプロセスと同時に、反射マスクの高さプロファイルまたは表面輪郭を決定するプロセスを実行することができる。しかしながら、第2の測定ユニットが別個の測定によって高さプロファイルを確認するプロセスを実行することも可能である。高さプロファイルを確認し、任意で反射フォトマスクの前面の表面の凹凸を決定することは、デバイスにおける反射フォトリソグラフィマスクの温度調節に期間中に実行することができる。
【0070】
更に、第2の測定ユニットが、配置データを確認するプロセス中に反射マスクの高さプロファイルを自動的に同時に測定することが可能である。配置測定が、所定の精度で高さプロファイルを決定するのに十分な測定点を含まない場合、反射マスクの表面輪郭は、別個の測定において、例えば、第2の測定ユニットによって行われる焦点測定によって、決定することができる。高さプロファイルの別個の決定は、例えば、デバイスまたは第2の測定ユニットにおけるEUVマスクの温度調節段階中に行うことができるため、表面輪郭を決定することは、通常、デバイスにおける反射マスクの測定時間を長引かせることにつながらない。
【0071】
第2の測定ユニットは、反射フォトリソグラフィマスクの前面上に実質的に垂直に放射するように構成することができ、第1の測定ユニットは、反射フォトリソグラフィマスクの後面上に実質的に垂直に放射するように構成することができる。
【0072】
上記で定義されたデバイスのこの実施形態により、マスクの位置または場所を変更することなく、パターン要素の配置を確認し、反射マスクの後面凹凸を確認することが可能である。これにより、2つのデータセットのコンバート、または共通平面もしくは共通座標系への2つのデータセットの変換が容易になる。
【0073】
デバイスは、反射フォトリソグラフィマスクを保持するための3点載置部を備えることができる。更に、デバイスは、測定環境において反射フォトリソグラフィマスクを保持するための静電チャックを備えることができる。
【0074】
少なくとも1つの第1の手段は、測定環境において反射フォトリソグラフィマスクの載置部の表面凹凸データを受信するように更に構成することができる。
【0075】
計算ユニットは、動作環境においてパターン要素の配置を計算するときに、測定環境における反射フォトリソグラフィマスクの載置部の凹凸データを考慮するように更に構成することができる。
【0076】
計算ユニットは、反射マスクの動作環境においてパターン要素の配置を計算する目的で取得されたこれらのデータを組み合わせるために、測定環境において反射マスクを保持または固定するESCまたはVCの凹凸データを取得することができる。
【0077】
計算ユニットは、配置データを確認するプロセス中、ならびに/または後面および/もしくは前面の表面凹凸データを確認するプロセス中の反射フォトリソグラフィマスクに対する重力の影響を考慮するように構成することができる。
【0078】
計算ユニットは、有限要素シミュレーションを実行することによって反射フォトリソグラフィマスクに対する重力の影響を決定するように構成することができる。
【0079】
内部応力に加えて、重力の影響は、上記で定義したデバイスにおける3点載置部の場合の反射フォトリソグラフィマスクの変形にも寄与する。個々が反射マスクの変形に寄与し、かつ、全体変形が反射マスクの線形変形範囲内にあるため、個々の寄与は、互いに無関係に決定し、それらの効果の観点で互いに無関係に考慮することができる。
【0080】
計算ユニットは、パターン要素の配置を計算する目的で、反射フォトリソグラフィマスクの動作環境に対応しない測定環境から動作環境への遷移時に反射フォトリソグラフィマスクの中立軸(neutral axis)の位置の変化を決定するように構成することができる。反射フォトリソグラフィマスクの動作環境に対応しない測定環境において、反射フォトリソグラフィマスクは、3点載置部によって固定することができる。
【0081】
本体において、中立軸とは、例えば、ビームまたはプレート、圧縮応力が引張応力に遷移する平面を表す。中立軸には力がかからない。フォトマスクの中立面は、x方向およびy方向における勾配または局所正接によってマスクの各点において記述することができる。
【0082】
中立軸の位置の変化は、3次元配置データに基づいて確認することができる。
【0083】
第1に、フォトリソグラフィマスクの内部応力の変化は、反射マスクの表面におけるパターン要素の位置の変化につながる。第2に、反射マスクの応力状態の変化は、高さプロファイルの変化において現れ、結果として反射マスクの中立軸の位置においても現れる。したがって、表面輪郭の変化から、動作環境におけるパターン要素の配置を計算するために用いることができる中立軸の位置の変化を推論することが可能である。
【0084】
3点載置部の場合に中立軸の位置の変化を決定することは、動作環境に対する測定環境またはデバイスにおける反射マスクの倍率の変化を確認することを含むことができる。倍率の変化を確認することは、等方拡大係数を決定することを含むことができ、かつ/またはデバイスにおける反射マスクの異方倍率をカバーすることができる少なくとも2つの拡大係数を決定することを含むことができる。中立軸の位置の変化を決定することは、デバイスの計算ユニットによって実行することができる。
【0085】
計算ユニットは、更に、パターン要素の配置を計算するとき、後面および/または前面の取得および確認された表面凹凸データを考慮するように構成することができる。計算ユニットは、更に、パターン要素の配置を計算するとき、取得および確認された配置データを考慮するように構成することができる。
【0086】
中立軸の位置の変化を決定することは、様々なタイプの反射フォトリソグラフィマスクの中立軸の位置を含むデータベースから、中立軸の位置の変化を読み出すことができる。
【0087】
反射フォトリソグラフィマスクのパターンの配置を決定するためのデバイスは、不揮発性メモリを含むことができる。様々なタイプの反射マスクのためのモデルを不揮発性メモリに記憶することができ、前記モデルは、3点載置部における反射マスクの後面の凹凸が、動作環境における反射マスクのパターン要素の配置にどのように影響を及ぼすかを記述する。計算ユニットは、反射マスクのパターン要素の配置を計算するために、記憶されたモデルを用いることができる。
【0088】
反射フォトリソグラフィマスクのパターン要素の配置を決定するためのデバイスは、デバイスに存在する媒体の屈折率を決定するためのユニットを更に備えることができる。前記ユニットは、例えばZerodur(登録商標)から構成されたエタロンを備えることができる。屈折率決定の精度を上げるために、材料の経年変化の結果として、および/または圧力依存の圧縮の結果としてのエタロンの長さの変化を計算的に考慮することができる。材料の経年変化は、最大で0.15ppm/a(百万分率/年)であり、可能な限り常に考慮されるべきである。媒体は空気を含むことができる。少なくとも、屈折率を決定するためのユニットは、少なくとも1つの干渉計を備えることができる。
【0089】
更に、デバイスは、ピクセルの少なくとも1つの配列を反射フォトリソグラフィマスクの基板に導入するように構成されたレーザシステムを備えることができる。レーザシステムは、ピコ秒範囲からフェムト秒範囲に及ぶ持続時間を有する光パルスを生成するように構成することができる。更に、レーザシステムは、マスク基板において所定の深度で光ビームの焦点を配列するように構成された合焦ユニットを備えることができる。更に、レーザシステムは、ピクセルの少なくとも1つの配列を生成するために、反射フォトリソグラフィマスクの基板の所定の位置にレーザシステムの光パルスを向けるように構成された走査ユニットを備えることができる。
【0090】
1つの実施形態において、動作環境における反射フォトリソグラフィマスクのパターン要素の配置を決定するための方法は、以下のステップ、すなわち、(a)動作環境と対応しない測定環境において、反射フォトリソグラフィマスクの後面の表面凹凸データ、および/または反射フォトリソグラフィマスクの載置部の表面凹凸データを決定するステップと、(b)測定環境においてパターン要素の配置データを決定するステップと、(c)後面および/または載置部の決定された表面凹凸データ、ならびに決定された配置データから、動作環境におけるパターン要素の配置を計算するステップと、を含む。
【0091】
表面凹凸データを決定することは、第1の測定ユニットによって表面凹凸データを確認することを含むことができ、配置データを決定することは、第2の測定ユニットによってパターン要素の配置データを確認することを含むことができ、表面凹凸データおよび配置データは、共通測定プロセスにおいて確認することができる。
【0092】
表面凹凸データを決定することは、反射フォトリソグラフィマスクの後面および/または前面の表面凹凸データを確認することを含むことができる。
【0093】
表面凹凸データを決定することは、反射フォトリソグラフィマスクの温度調節段階において実行することができる。反射フォトリソグラフィマスクの温度調節段階は、上記で定義したデバイスにおいて有効にすることができる。反射フォトリソグラフィマスクの温度調節段階は、上記で定義したデバイスの第1の測定ユニットおよび/または第2の測定ユニットにおいて有効にすることができる。
【0094】
表面凹凸データを決定すること、および配置データを決定することは、反射フォトリソグラフィマスクの位置の変更なしで行うことができる。
【0095】
反射フォトリソグラフィマスクのパターン要素の配置を決定するための方法は、反射フォトリソグラフィマスクの前面の表面凹凸データを決定するステップを更に含むことができる。
【0096】
加えて、反射フォトリソグラフィマスクのパターン要素の配置を決定するための方法は、動作環境におけるパターン要素の配置および/または後面の表面凹凸の少なくとも1つのずれを補正するピクセルの少なくとも1つの配列を反射フォトリソグラフィマスクの基板に導入するステップを含むことができる。
【0097】
コンピュータプログラムは、コンピュータシステムによって実行されると、コンピュータシステムに、上記の態様のうちの1つによる方法を実行させる命令を含むことができる。
【0098】
以下の詳細な説明は、図面を参照して、本発明の現時点で好ましい例示的な実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0099】
図1】上側の部分図において、従来技術による、従来の透過型フォトリソグラフィマスクを通る断面図を概略的に示し、前記マスクは3つの半球上に装着され、下側の部分図において、重力効果による撓みが補正された、上側の部分図からのフォトリソグラフィマスクを提示する。
図2】3点載置部における透過型フォトリソグラフィマスクの撓みまたは表面変形を提示する。
図3】極紫外(EUV)波長範囲に理想的な反射フォトリソグラフィマスクを通る断面図を概略的に示す。
図4】上側部分図において、3点載置部によって固定された実際の反射マスクを通る断面図を概略的に提示し、下側部分図において、静電チャック上に装着された、上側部分図からの反射マスクを示す。
図5】従来技術から、図4の上側部分図からの湾曲したEUVマスクの面外歪み(OPD)を概略的に説明する。
図6】従来技術から、図4の上側部分図からの湾曲したEUVマスクの面内歪み(IPD)を概略的に定義する。
図7】従来技術から、図4の上側部分図からのEUVマスクを再現し、マスクの湾曲を特徴付けるいくつかの変数が追加で示されている。
図8】従来技術から、図7からのEUVマスクを再現し、前記マスクは静電チャックによって保持されている。
図9】上側部分図において、表面が凹凸を有するチャックによって保持された反射フォトマスクを通る断面図を概略的に示し、下側部分図において、表面が理想的には平坦であると仮定される静電チャックによる固定を再現する。
図10】フォトリソグラフィマスクのパターン要素の配置を決定するためのデバイスのいくつかのコンポーネントを通じた概略断面図を提示する。
図11】特にEUVマスクのフォトリソグラフィマスクの後面の凹凸を測定するための第1の測定ユニットを通じた概略断面図を再現する。
図12】特にEUVマスクのフォトリソグラフィマスクのパターン要素の配置を測定するための第2の測定ユニットを通じた概略断面図を再現する。
図13】パターン要素の配置と、マスクの後面の凹凸との双方を測定することができる第2の測定ユニットの第2の例示的な実施形態を示す。
図14図11からの第1の測定ユニットと、図12からの第2の測定ユニットとを結合した結合デバイスを示す。
図15】測定環境における反射フォトリソグラフィマスクの載置部の表面の凹凸を測定するための第3の測定ユニットを通る概略断面図を表す。
図16】動作環境における、特にEUVマスクのフォトリソグラフィマスクのパターン要素の配置を決定するための方法の流れ図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0100】
本発明によるデバイスおよび本発明による方法の現時点で好ましい実施形態の説明が、そのパターン要素が吸収材料を含む、極紫外(EUV)波長範囲のための反射フォトリソグラフィマスクに基づいて以下で与えられる。しかしながら、反射フォトリソグラフィマスクのパターン要素の配置を決定するための本発明によるデバイスは、以下で論考する例に限定されない。むしろ、前記デバイスは、異なるタイプのEUVマスクのパターン要素の配置を決定するために、特に、位相シフトEUVマスクのパターン要素の配置を決定するために、同じ方式で用いられてもよい。更に、反射フォトマスクはEUV波長範囲に限定されない。その上、本発明によるデバイスは、通常、反射フォトマスクの動作環境におけるパターン要素の配置を決定するために用いることができ、配置は、動作環境に対応しない環境において決定される。最後に、本発明によるデバイスおよび本発明による方法は、あらゆるタイプの従来の透過型フォトマスクの配置を決定するのに適している。
【0101】
上側部分図105において、図1は、従来技術による従来の透過型フォトマスク100を通る断面図を示す。フォトマスク100は、例えば、石英から構成された透過型基板105と、マスク100の前面110に配列された吸収剤パターン要素115および120とを備える。通常、透過型フォトマスク100の基板105は、6.35mmの厚みを有する。従来のフォトマスク100は、多くの場合に、152mm×152mmの横方向の寸法(すなわち、マスク平面における寸法)を有する。好ましくは、現時点において、パターン要素115、120をウェハ上に結像するために、最大で142mm×142mmのエリアが用いられる(フォトマスク100の活性エリア)。パターン要素115および120は、この領域内に配列される。
【0102】
透過型フォトマスク100は、多くの場合、パターン要素115、120の生成中、および生成されたパターン要素115、120の位置の測定中に、3つの球または半球上に点状形式で装着される。図1の上側部分図105は、3つの半球または静止球(resting sphere)145のうちの2つを通る断面図を再現する。3つの半球または静止球145は、フォトマスク100を固定する3点載置部140の一部である。通常、3点載置部140は、第1に、その製造中、および製造されたフォトマスク100の測定中に用いられ、このため、測定環境150に対応する。第2に、透過型マスク100は、スキャナにおける動作中に3点マウンティング(three-point mounting)または3点載置部140によって保持され、すなわち、3点載置部140は、透過型マスク100の動作環境において同様に用いられる。破線の矢印155および160は、フォトマスク100に対する化学線の入射を示す。吸収剤パターン要素115、120上に入射する放射155は吸収される。マスク100の基板105上に入射する放射160は、基板105またはマスク100を貫通し、実質的に減衰することなくその後面125から出る。
【0103】
マスク100の後面125の近傍に破線130によって示すように、フォトマスク100は、マスク100の生成中、パターン要素115、120の測定中、およびマスク100の動作中に、重力効果に起因して質量により曲がる。3点載置部におけるマスクの撓みは、当該技術分野において、「マスク撓み」と呼ばれる。フォトマスク100の曲げにより、基板105の曲げも湾曲もないマスク100と比較して、パターン要素115、120の位置がわずかに変化する。図1からの下側部分図195は、その基板105が平面状である上側部分図105からのフォトマスク100を提示する。下側部分図195からのフォトマスク100のパターン要素115、120は、図1の上側部分図105に示されるフォトマスク100との比較により、小さな横方向の変位を有する。
【0104】
図1における垂直な矢印170は、フォトマスク100の基板105の有限要素シミュレーション180をシンボル化する。フォトマスク100の基板105の有限要素シミュレーション180が行われ、図1の上側部分図105に示されるフォトマスク100の3点載置部140におけるフォトマスク100の基板105に対する重力の影響が決定される。同時に、有限要素シミュレーション180を用いて、上側部分図105において測定されたパターン要素115、120に基づいてマスクの平坦な前面110におけるパターン要素115、120の位置を確認する。マスク100の撓みの補正の結果として、パターン要素115、120の配置は、マスク100の平面状の基板105に関係付けられる。
【0105】
有限要素シミュレーション180を行うとき、従来のフォトマスク100は、その基板105による良好な近似と置き換えることができる。
【0106】
図2における図200は、測定された撓み、および3点載置部140における透過型マスクの表面変形を再現する。3つの支承点に関係して、透過型マスクは、領域内で概ね1μmの撓みを有する。図12の文脈において説明される第2の測定ユニットは、マスクの高さプロファイルまたは表面輪郭を測定するために用いることができる。
【0107】
図3は、EUV波長範囲に理想的な吸収反射マスク300を通る断面図を概略的に提示する。EUV波長範囲のための反射マスクは、以下でEUVマスクまたはEUVフォトマスクとも呼ばれる。例示的な理想的なEUVマスク300は、13.5nmの領域内の露光波長のために設計される。EUVマスク300は、例えば石英等の低い熱膨張係数を有する材料から作成された基板310を有する。他の誘電体、ガラス材料、または半導体材料も同様に、例えばZERODUR(登録商標)、ULE(登録商標)またはCLEARCERAM(登録商標)等のEUVマスク300のための基板310として用いることができる。EUVマスク300の基板310の後面312または後面表面315は、EUVマスク300の生成中、およびリソグラフィ装置のステッパにおけるその動作中に基板310を保持する役割を果たす。好ましくは、基板310を静電チャック(ESC)上に保持するための薄い導電層320が基板310の後面312に施される。チャックは図3に示されていない。
【0108】
以下でMoSi層とも呼ばれる、交互のモリブデン(Mo)330およびシリコン(Si)層335の20~80個の対を含む多層フィルムまたは多層構造370が、基板310の前面322に堆積される。多層構造370を保護するために、例えば二酸化シリコンから作成されたキャッピング層(capping layer)340が、最上シリコン層335に施される。例えば、ルテニウム(Ru)等の他の材料も、同様に、キャッピング層340を形成するために用いることができる。モリブデンの代わりに、MoSi層のために、例えばコバルト(Co)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、レニウム(Re)、ジルコニウム(Zn)またはイリジウム(Ir)等の高質量数を有する他の要素から構成された層を用いることも可能である。多層構造370の堆積は、例えばイオンビーム蒸着(IBD)によって行うことができる。
【0109】
基板310、多層構造370およびキャッピング層340は、以下でマスクブランク375とも呼ばれる。しかしながら、EUVマスク300の全ての層を有するが、全域吸収体層360の構造化を伴わない構造もマスクブランク375と呼ばれる場合がある。
【0110】
マスクブランク375からEUVマスク300を生成するために、キャッピング層上にバッファ層345が堆積される。可能なバッファ層材料は、石英(SiO2)、シリコン酸窒化物(SiON)、Ru、クロム(Cr)、および/または窒化クロム(CrN)である。バッファ層345上には吸収層350が堆積される。吸収層350に適した材料は、数ある中でも、Cr、窒化チタン(TiN)、および/または窒化タンタル(TaN)である。吸収層350上には、例えば、酸窒化タンタル(TaON)から作製された反射防止層355を施すことができる。
【0111】
吸収層350は、全域吸収層360から吸収パターン要素350の構造が生成されるように、例えば、電子ビームまたはレーザビームを用いて構造化される。バッファ層345は、吸収体層360を構造化するとき、すなわち、パターン要素350を生成するときに多層構造370を保護する役割を果たす。
【0112】
EUV光子380は、EUVマスク300上に入射する。入射EUV光子380は、パターン要素350の領域内で吸収され、EUV光子380少なくとも大部分が、吸収パターン要素350が不在の領域内で多層構造370によって反射される。
【0113】
多層構造370は、例えば、モリブデン層330およびシリコン層335の層厚が、多層構造370上に予め決められた入射角で入射するEUV光子380のための化学線波長のλ/2の光学的厚みに対応するように設計されるべきである。この条件からのずれは、ブラッグの反射条件の局所的違反、したがって、EUV波長範囲における局所反射光の変化につながる。非常に短い波長に起因して、EUV範囲は、多層構造370の個々の層の均一性と、多層構造370におけるパターン要素350の配置とに対して厳しい要件を課す。
【0114】
図3は、理想的なEUVマスク300を示す。図4の上側部分図405におけるEUVマスク400は、実際のEUVマスク400を通る断面図を概略的に示す。EUVマスク400は、3点載置部140の2つの半球145上に装着される。3点載置部140は、EUVマスク400の測定環境150の一部であり、この測定環境150においてEUVマスク400が生成され、少なくとも部分的に測定され、この測定環境150は前記マスクの動作環境に対応しない。3点載置部140に加えて、測定環境150は、定義された環境条件、例えば、所定の温度、所定の空気圧、および所定の空気湿度を有する。
【0115】
図3の理想的なEUVマスク300と異なり、図4の測定環境150における実際のEUVマスク400は、全体的な湾曲410を有する。全体的なマスクの湾曲410、曲げ、または屈曲は、当該技術分野において、「マスク反り(mask bow)」と呼ばれる。高さプロファイルの最大高さ差は、当該技術分野において、山対谷を表すPVによって表される。図4に示す例において、多層構造370およびパターン要素350が施される、基板の前面325の全体的な湾曲または曲げ410は、凸形状を有する。内部応力は、EUVマスク400内で、特にその基板310内で、約200℃の温度での基板310上への多層構造370の堆積の結果として生じる。多層構造370および基板310の材料の膨張係数が異なることにより、この材料の組み合わせの冷却プロセス中に、基板310および多層構造370の組み合わせにおいて内部応力が蓄積されることになる。3点載置部140において、EUVマスク400の内部応力によって生じる湾曲410と、3点載置部140におけるマスクの固有の質量によって生じる変形との組み合わせが存在する。図4の上側部分図405に示す例において、重力が、内部応力によって生じる湾曲に対抗する。
【0116】
吸収体層360を堆積し、パターン要素350を構造化し、EUVマスク400の個々の照射野の境界において黒枠を生成することも同様に、EUVフォトマスク400において、マスク生成プロセス中の内部応力または内部変化に寄与する。更に、薄型の、全域導電性の後面層320は、フォトリソグラフィマスク400の内部応力に寄与する。図3における導電性の後面層320は、図4において、明確性の理由から示されていない。通常、EUVマスク400の内部応力への最大の寄与は、多層構造370の多数のMoSi層330、335から生じる。吸収EUVマスク400の内部応力は、通常、100MPa~5GPaの範囲、特に300MPa~500MPaの範囲にある。
【0117】
EUVマスク400の全体的な湾曲410に加えて、EUVマスク400の後面315は、平均湾曲410に対する凹凸420を有する。EUVマスク400の後面表面315の凹凸420は、説明のために、図4において大きく誇張して示される。EUVマスク400の凹凸420は、完全に平面状になるように研磨されていないEUVマスク400の基板310の後面312から生じる場合がある。基板310の凹凸420は、薄型の後面導電層320によって平滑にされるか、またはそうでない場合増幅され得る。平均後面表面からの後面表面315の局所的ずれは、2桁ナノメートルの範囲内とすることができる。
【0118】
EUVマスク400のパターン要素350の配置、すなわち位置は、図4の上側部分図405における測定環境150内で測定される。図4の上側部分図405に示される例示的な測定環境150において、重力または引力が、湾曲したEUVマスク400の3点載置部140によるEUVマスク400の湾曲410に対抗する。測定環境150において決定された測定データ、例えば、パターン要素350の配置データおよび/または測定環境150の上述した環境条件は、次に、EUVマスク300の動作環境450に変換されることが意図される。
【0119】
図4の下側部分図495は、動作環境450における上側部分図405からのEUVマスク400を示す。動作環境450において、EUVマスク400は、静電チャック430によって固定される。矢印490は、EUVマスク400の測定環境150からその動作環境450への遷移を示す。以下で、静電チャック430の表面460は実質的に平面状であると仮定される。以下で、ESC430が、EUVマスク400の後面315がESC430の表面460上に実質的に全域にわたって載るように前記マスクの前記後面を変形するのに十分な力をEUVマスク400に加えることが更に仮定される。これらの前提条件の下で、ESC430は、EUVマスク400の全体的湾曲410を実質的に相殺する。更に、ESC430の静電気引力は、EUVマスク400の後面315の凹凸420を実質的に補う。
【0120】
しかしながら、ESC430の力の影響下で、EUVマスク400の後面凹凸420は、マスク400を少なくとも部分的に通って伝播し、EUVマスク400の前面325の凹凸470として現れる。しかしながら、EUVマスク400の前面325の局所的凹凸470は、EUVマスク400のパターン要素350の位置における局所的変化につながる。このため、本出願は、動作環境450におけるEUVマスク400のパターン要素350の配置を決定するとき、EUVマスク400の後面315の局所的凹凸420によって生じる、パターン要素450の位置の変化を考慮する問題に対処する。
【0121】
EUVマスク400が3点載置部140において固定される測定環境150におけるEUVマスク400の生成および測定、ならびに前記マスクが静電的にチャックされた、すなわち静電チャック430によって保持される動作環境450におけるEUVマスク400の動作の、上述した問題分野に関する背景技術の課題のうちのいくつかが、図5図8を参照して以下に論考される。
【0122】
図5は、反射されたEUV照射のビームオフセット550を結果として生じる、湾曲したマスク表面325の第1の効果を概略的に説明する。ビームオフセット550は、EUVマスク400の前面325への化学線の非直交入射と、湾曲したEUVマスク400の高さ変動との組み合わせにより生じる。ビームオフセットは、図4の下側部分図495に示す非湾曲EUVマスク400のパターン要素350の位置と異なる位置への測定されたパターン要素350の変位をもたらす。EUVマスク400の全体的湾曲410の結果としての、マスク平面におけるx方向、すなわち1つの方向におけるビームオフセット550は、当該技術分野において面外歪み(OPD)と呼ばれる。OPDは以下の式によって捕えられる。
【数1】
(1)
【0123】
通常、EUVスキャナにおけるEUV光510は、EUVマスク400の法線に対し5°~9°の角度でEUVマスク400の表面325に入射する。図5に示す例において、Φ=6°の角度が選択された。図5のEUVマスクは、その全体的湾曲410により、EUVマスクのエリアにわたって高さ変化Δzを有する。EUV波長範囲のためのスキャナの投影光学ユニットは、多くの場合、1/4~1/8の範囲の倍率を有する。図5の例において、スキャナの投影光学ユニットは、EUVマスクのパターン要素350を4分の1に低減する。
【0124】
パターン要素350の測定された配置における局所的に湾曲したマスク表面325の第2の効果が、図6を参照して概略的に説明される。図6の上側部分図605は、図5からの湾曲したEUVマスクを概略的に提示する。EUVマスクの表面の局所的湾曲は、正接Δz/Δxによって記述される。正接は、同様に、式tanα=Δz/Δxに従って、角度αによって表すこともできる。
【0125】
湾曲したEUVマスクにおける破線610は、図6の双方の部分図605および695におけるEUVマスクの中立軸610を示す。中立軸610は、それに沿って(本体が負荷を受ける場合に)圧縮応力が引張応力に遷移する本体内のエリアを記述する。図6のEUVマスクにおいて、破線610の上の部分は引張応力を受け、破線の下の部分は圧縮応力を受ける。EUVマスクは、中立軸610の2次元平面における内部歪みがない。
【0126】
図6の下側部分図695は、図6の上側部分図605からの湾曲したEUVマスクからの拡大図を示す。中立軸610の位置の変化と、EUVマスク400の湾曲によって生じる表面325におけるパターン要素350の変位との間の関係が部分図695を参照して説明される。EUVマスクを通る交差部620の破線は、中立軸610と垂直に交わり、このため、実質的に、前面表面325および後面表面315とも直角に交わる。EUVマスクの前面表面325に対する中立軸610の交点630の垂線は、長さK・Tを有する。ここで、Tは、EUVマスクの厚みを記述する。EUVマスクの基板は、通常、(上記で説明したように)6.35mmの厚みを有する。パラメータkは、マスク厚みTの一部として中立軸610の位置を定義する。内部歪みのないEUVマスク、例えば図3からの理想的なEUVマスク300の場合、kは値0.5を有する。歪んだEUVマスク400の場合、パラメータkは、図6の下側部分図に指定された定義に従って、通常、1/2<k<2/3の間隔内にある。
【0127】
EUVマスク400の前面表面325におけるパターン要素350の変位、またはx方向におけるIPD(面内歪み)は、交差線620の交点660と、交点630に対する垂線K・Tと表面325との交点670との間の距離650によって決まる。このため、距離650は、EUVマスク400の局所的湾曲によるパターン要素350の変位を決定する。これにより、ウェハに対するIPDxについて以下が得られる。
【0128】
【数2】
(2)
ここで、Mは、EUVスキャナの投影光学ユニットの拡大係数を表す。EUVマスク400のパターン要素350の変位650の方向および大きさは、EUVマスク400の湾曲により、局所的湾曲
【数3】
に比例し、EUVマスクの厚みT、およびパラメータkによって記述される中立軸610の位置の変化に比例し、EUVステッパの投影ミラーの拡大または縮小と共にスケーリングする。
【0129】
図7は、再び、図4の上側部分図405からの湾曲したEUVマスク400を再現する。マスク400のパターン要素350は、図7において、明確性の理由から示されていない。更に、略図700は、図5および図6の論考中に紹介した変数のうちのいくつかを示す。破線の曲線610は、図6と同様に、EUVマスク400の中立軸610を示す。文字TはEUVマスク400の厚みを記述する。より厳密に言うと、Tは、EUVマスク400の平均厚みを特定する。変数k・Tは、EUVマスク400の中立軸610の位置を特徴付ける。
【0130】
角度
【数4】
は、局所的湾曲を記述する。EUVマスクの場合、全体的湾曲410は、通常、測定された高さプロファイルに当てはめられた二次多項式によって決定される。
【数5】
(3)
【0131】
図8図800は、図4からの下側部分図495を概略的に再現する。ここで、EUVマスク400は、静電チャック430によって所定の位置に保持される。式(3)によって記述されるEUVマスク400の全体的湾曲410は、静電チャック430にクランプされたEUVマスク400によって実質的に除去される。結果としてパターン要素350が変位される。パターン要素350の変位、ならびにマスクの後面(rear side)315およびマスクの前面(front side)325の平坦性から結果として生じる残留局所勾配から、IPD誤差が結果として生じる。
【0132】
局所勾配(local slope)は以下のように定義することができる(front:前,back:後)。
【数6】
(4)
ここで、Δxは、式(3)における2次当てはめの格子点の間隔を表す。局所勾配は、通常、μrad単位で示される。代替的に、局所勾配に、選択された格子間隔を乗算することによって、表面凹凸を定義することも可能である。
【0133】
ESC430の静電気引力の結果として、EUVマスク400の後面315が変形され、結果として、EUVマスク400が実質的に全域にわたって静電チャック430の表面460の上に載ることとなる。EUVマスク400の後面315の凹凸420は、基板310および多層構造370の硬い構造によって、EUVマスク400の前面325に少なくとも部分的に伝達される。EUVマスク400の前面325の結果として生じる更なる凹凸470は、EUVマスク400の前面325におけるパターン要素350の変位につながる。パターン要素350の総変位850は、像配置誤差(IPE)とも呼ばれる。像配置誤差は以下のように記述される。
【数7】
(5)
ここで、変数は上記で紹介した意味を有し、φはマスクの後面の局所勾配(local slopeback)315を表す。
【0134】
図9の上側部分図905は、測定環境150における第2の実施形態において反射フォトマスク400を固定するための、載置部900を通る概略断面図を提示する。図9の例示的な実施形態において、載置部900は、チャック900の形態で具現化される。チャック900は、真空チャック(VC)の形態で、または静電チャック(ESC)として具現化することができる。反射マスク400を保持または固定するように構成された載置部900の表面910は凹凸920を有し、凹凸920は、説明のために図9において大きく誇張されて示される。チャック900の表面910の凹凸920は、測定ユニットによって表面凹凸データ930として決定することができる。この測定プロセスは、以下に図15との関連で説明される。
【0135】
チャック900の表面910の凹凸920は、チャック900の表面910の研磨プロセスから生じる場合がある。研磨プロセスは、2桁ナノメートルの範囲の残留凹凸を有する表面を生成し得る。チャック900の熱応力は、同様に表面910の凹凸920に寄与し得る。
【0136】
測定環境150において、反射フォトリソグラフィマスク400は、載置部900の表面910に固定される。反射マスク400の後面315の表面凹凸420は、載置部900の表面910の凹凸920によって隠されるかまたはなくされる。図8の文脈において説明されるように、これは同様に反射マスク400の内部応力にも当てはまる。
【0137】
EUVマスク400のパターン要素350の配置、すなわち位置は、図9の上側部分図905における測定環境150内で測定される。固定マスク400の前面325の凹凸940も同様に、図4の上側部分図905に示す例示的な測定環境150において測定することができる。測定環境150において決定された測定データ、例えば、パターン要素350の配置データ、マスク400の前面325の測定された凹凸940、および/または測定環境150の上述した環境条件は、次に、EUVマスク400の動作環境450に変換されることが意図される。変換プロセスは、図9における矢印990によって示される。載置部によるマスク400の変形は、マスク400の線形変形領域内にある。したがって、載置部900から外された後、反射マスク400は実質的に再び元の形状を取ることが仮定される。
【0138】
図9の下側部分図995は、動作環境450にある上側部分図905からのEUVマスク400を示す。EUVマスク400は、動作環境450において静電チャック430によって固定される。載置部900と対照的に、このとき、(図4の論考において既に説明したように)静電チャック430の表面460が実質的に平面状であることが仮定される。以下で、ESC430が、反射マスク400の後面315がESC430の表面460上に実質的に全域にわたって載るように前記後面を変形するのに十分な力をEUVマスク400に加えることが更に仮定される。これらの前提条件の下で、ESC430は、後面の凹凸、およびEUVマスク400の全体的湾曲410を実質的に補う。
【0139】
しかしながら、図4との関連で既に説明したように、ESC430の力の影響下で、EUVマスク400の後面凹凸420は、少なくとも減衰した形態でマスク400を通って伝播し、EUVマスク400の前面325の凹凸940として現れる。EUVマスク400の前面325の局所的凹凸940は、EUVマスク400のパターン要素350の位置における局所的変化につながる。本出願は、動作環境450におけるEUV400のパターン要素350の配置を決定するとき、EUVマスク400の載置部900の表面910の局所的凹凸920によって生じる、パターン要素450の位置の変化を考慮する。
【0140】
ここで、動作環境450におけるEUV400のパターン要素350の配置を決定するとき、EUVマスク400の後面凹凸420を考慮することを可能にするデバイスの様々な実施形態の説明が以下に与えられる。
【0141】
図10は、動作環境450における反射フォトリソグラフィマスク400のパターン要素350の配置を決定するためのデバイス1000のいくつかの構成要素を通る断面図を概略的に示す。デバイス1000は、EUVマスク400の後面315の表面凹凸データ420および/または反射フォトリソグラフィマスク400の載置部900の表面凹凸データ920を決定することができる第1の手段1010を備える。
【0142】
第1の単純な実施形態において、第1の手段1010はインタフェース1015を有する。インタフェース1015は、無線または有線とすることができる。インタフェース1015を介して、第1の手段1010は、図10には示されていない外部の第1の測定デバイスおよび/または外部の第3の測定デバイスからデータを取得する。データは、測定データ、もしくは測定データから導出された、EUVマスク400の後面315の凹凸420に関するデータ、および/または測定環境150における反射マスク400の載置部900の凹凸に関するデータを含む。第1の手段1010は、取得されているデータを、適切な場合、対応する処理の後、接続1025を介してデバイス1000の評価ユニット1040に転送する。
【0143】
更に、デバイス1000は、EUVマスク400のパターン要素350の配置データを決定することができる第2の手段1020を有し、EUVマスク400は3点載置部140に固定される。3点載置部140は、EUVマスク400の測定環境150に対応し、前記測定環境は、EUVマスク400がESC430によって保持される動作環境と同一でない。更に、第2の手段1020は、反射マスク400の前面325の凹凸データを決定することができ、反射マスク400は、3点載置部140によって保持することができるか、またはチャック900によって固定することができる。
【0144】
第1の実施形態において、第2の手段1020はインタフェース1025を有する。インタフェース1015と同様の方式で、インタフェース1025は、無線または有線とすることもできる。インタフェース1025を介して、第2の手段1020は、第1の測定ユニット、または図10には示されていない第2の外部の測定デバイスによって測定されたパターン要素350の配置データを取得することができる。加えて、デバイス1000の第2の手段1020は、図10には示されていない外部の第4のまたは第2の測定デバイスから取得された反射マスク400の前面325の凹凸940に関するデータを取得することができる。マスク400の前面315の取得された配置データおよび/または表面凹凸データ940は、EUVマスク400の測定環境150および/または動作環境450に記録することができる。第2の手段1020は、取得されている配置データを、適切な場合、対応する処理の後、接続1030を介してデバイス1000の計算ユニット1040に転送する。
【0145】
計算ユニット1040は不揮発性メモリ1050を備える。様々なタイプのEUVマスク400のためのモデルを不揮発性メモリ1050に記憶することができる。モデルは、様々なタイプのEUVマスクのための湾曲410を記述することができる。更に、モデルは、動作環境450におけるEUVマスク400のパターン要素350の位置の変化への、様々なタイプのEUVマスクの後面凹凸の伝達をシミュレートすることができる。
【0146】
計算ユニット1040は、接続1025および1030を介して取得された、後面および/または前面の表面凹凸データ、ならびに配置データから、動作環境450における反射マスク400のパターン要素350の配置を計算するアルゴリズムを含むことができる。計算ユニット1040は、EUVマスク400のパターン要素350の配置の計算の特定の部分または実質的に全ての部分を実行するために特に設計された専用ハードウェアコンポーネント1070を備えることができる。ハードウェアコンポーネント1070は、ASIC(特定用途向け集積回路)を備えることができる。
【0147】
デバイス1000の計算ユニット1040は、パターン要素350の配置データ、ならびにEUVマスク400の後面315および/または前面325の表面凹凸データ420、940を、共通座標系にコンバートすることができる。パターン要素350の配置データ、ならびに後面315および/または前面325の表面凹凸データ420、940に加えて、計算ユニット1040は、測定環境150の環境条件を特徴付けるパラメータを取得することができる。
【0148】
計算ユニット1040はインタフェース1045を有することができ、コンピューティングユニット1040は、このインタフェース1045を介してデータを送受信することができる。例として、計算ユニット1040は、静電チャック430の表面または表面の平坦性に関するデータを取得することができる。ESC430の表面は、通常、完全に平面状であると仮定される。しかしながら、計算ユニット1040が、インタフェース1045を介して静電チャック430の表面の平坦性に関するデータを受信し、EUVマスク400の動作環境450におけるパターン要素350の配置の計算において前記データを考慮することも可能である。
【0149】
デバイス1000は、接続1055を介して計算ユニット1040からデータを受信するスクリーン1060を更に備えることができる。パターン要素350の計算された配置は、スクリーン1060上に表示することができる。更に、未加工データ、すなわち、表面凹凸データ420および配置データもスクリーン1060上に表すことができる。加えて、更なるデータ、例えば、測定環境150および/または動作環境450を特徴付ける更なるパラメータをスクリーン1060上に表示することができる。
【0150】
図11は、第1の手段1010の第2の例示的な実施形態を概略的に示す。EUVマスク400の後面315の凹凸420を決定するために、EUVマスク400は3点載置部140上に固定される。3点載置部140は、図11には示されていない高精度の対象物ステージの上に載置される。対象物ステージは、3つの並進方向および3つの回転方向に移動可能である。更に、全6自由度での対象物ステージの移動は、能動的に監視および調節される。図11の第1の測定ユニット1100において、対象物ステージは、唯一の可動コンポーネントである。しかしながら、第1の測定ユニット1100の対象物ステージと対物部(objective:対物系、対物レンズ等)1140との間で動きを共有することも可能である。
【0151】
EUVマスク400の前面325は、図11において上方を向く。前記マスクの後面315は、以下で説明される測定のための導電性コーティング320を有することができる。しかしながら、測定は、導電性コーティング320なしで実行することもできる。第1の測定ユニット1100は、EUVマスク400の後面315の凹凸420を決定するために用いることができる。
【0152】
第1の測定ユニット1100は光源1110を備える。測定ユニット1100は、レーザシステムを光源1110として用いる。レーザシステムは、深紫外(DUV)波長範囲で放射するレーザを備えることができる。レーザシステムは、約193nmの波長の電磁放射を放出するArF(フッ化アルゴン)レーザを備えることができる。しかしながら、レーザシステムは、電磁スペクトルの可視部分において光を放射するレーザも備えることができる。しかしながら、光源1110は、EUV光源(図11に示されていない)とすることもできる。
【0153】
光源1110からの光は、図11における例示的なデバイス1100においてオートフォーカスシステム1120として具現化されたフォーカスシステムを通過する。前記システムは、光源1110からの光をEUVマスク400の後面315に合焦させるように設計される。部分的透過型偏向ミラー1130は、光源1110からの光を対物部1140上に向ける。対物部1140は、光源1110からの光ビームを、EUVマスク400の後面315上に合焦させる。通常動作中、光源1110が可視波長範囲内で電磁放射を用いる場合、結像対物部1140は、0.1~0.2の開口数(NA)を有する。光源1110がDUV波長範囲内の光を用いる場合、結像対物部は、好ましくは、0.5~0.9の範囲内のNAを有する。必要な場合、測定ユニット1100の分解能は、対物部1140のNAを増大させることによって増大させることができる。可視光またはDUV光の合焦により、EUVマスク400の後面において小さなスポット直径の光を生成することが可能になる。これにより、高い横方向の空間分解能でEUVマスク400の後面凹凸420を走査することが可能になる。
【0154】
EUVマスク300の後面315から反射された光の一部は、少なくとも、対物部1140および部分的透過型偏向ミラー1131を備える光学ユニットを通過し、検出器150に当たる。例として、CCD(電荷結合デバイス)カメラは、検出器1150として用いることができる。検出器1150は、信号処理ユニット1160への接続1155を介して測定データを通信し、信号処理ユニット1160は、検出器1150の測定データから像を生成する。信号処理ユニット1160は、検出器1150の測定データをコンピュータシステム1170に更に転送する。コンピュータシステム1170は、図10からの計算ユニット1040を含むことができる。しかしながら、コンピュータシステム1170が、検出器1150の測定データを、インタフェース1170を介して更なる処理のためにデバイス1000の計算ユニット1040に送信することも可能である。
【0155】
デバイス1100は、マスク平面、すなわちxy平面内で3点載置部140を担持する対象物ステージの変位の結果として、EUVマスク400の活性領域にわたってEUVマスク400の後面表面315の走査を可能にする走査ユニットを備えることができる。走査ユニットは、図11には再現されていない。代替的な実施形態において、走査ユニットは、EUVマスク400の後面表面315にわたって対物部1140を走査することができる。対象物ステージまたは3点載置部140、および対物部1140の組み合わされた動きも同様に可能である。
【0156】
図11において、第1の測定ユニット1100は、EUVマスク400の後面凹凸420を測定する。しかしながら、全ての種類の従来の透過型フォトマスク100の後面を検査するために第1の測定ユニット1100を用いることも可能である。更に、第1の測定ユニット1100は、EUVマスク400の前面凹凸を決定することができる。この目的で、マスク400は、3点載置部において反転され、その前面315が対物部1140の方向を向くようにされる。これは、第1の測定ユニット1100を、第4の測定ユニット、すなわち、反射マスク400の前面325の凹凸を決定する測定ユニットとして用いることもできることを意味する。
【0157】
図12は、第2の手段1020の第2の例示的な実施形態を概略的に示す。図12は、測定環境150におけるEUVマスク400上のパターン要素350の位置を測定するのに用いることができる第2の測定ユニット1200の機能図を通る断面図を示す。図11と同様の方式で、測定環境150における反射マスク400は、高精度の対象物ステージにおける3点載置部140の3つの半球145に装着される。図11に類似して、EUVマスク400の曲げまたは湾曲は、明確性の理由から、図12には示されていない。図12には再現されていない対象物ステージは、3つの並進方向および3つの回転方向において移動可能である。加えて、全6自由度での対象物ステージの移動は、能動的に監視および調節される。図12の第2の測定ユニット1200において、対象物ステージは、ここでもまた、唯一の可動コンポーネントである。
【0158】
第2の測定ユニット1200は、光源1210としてエキシマレーザを用い、前記レーザは、約193nmのDUV波長において光を放射する。結像対物部1240は、標準として、通常0.5~0.9の開口数(NA)を有する。対物部1240のNAは、測定ユニット1200の分解能を増大させるために拡張することができる。
【0159】
CCD(電荷結合デバイス)カメラが検出器1250として用いられ、前記検出器は、EUVマスク400によって反射される光を測定する。検出器1250は、信号処理ユニット1260への接続1255を介して測定データを送信し、信号処理ユニット1260は、検出器1250の測定データから像を生成する。信号処理ユニット1260によって生成された像は、コンピュータシステム1270および/またはデバイス1000のスクリーン1060上に表示することができる。更に、信号処理ユニット1260は、EUVマスク400のパターン要素350の配置データを含む検出器1250の測定データを計算ユニット1040に送信する。通信ユニット1040は、コンピュータシステム1270の一部またはデバイス1000の一部とすることができる。
【0160】
図1との関連で論考されるように、従来のフォトマスク100は、既に、3点載置部140下で撓み(「マスク撓み」)を呈する。EUVマスク400は、内部応力による湾曲410を更に有する。したがって、第2の測定ユニット1200は、図12における例示的な実施形態において、図12に示されていないオートフォーカス(AF)システム1220として設計されたフォーカスシステムを有する。AFシステム1220は、EUVマスク400のパターン要素350の配置データを測定するためのプロセスを支援する。特に、AFシステム1220を用いて、EUVマスク400の高さプロファイルを生成することができる。AFシステム1220を用いることにより、測定ユニット1200は、パターン要素350の位置を記録しながら、EUVマスク400の高さプロファイルを測定することができる。これらの測定データが不十分である場合、測定ユニット1200は、別個の測定において、AFシステム1220によってEUVマスク400の高さプロファイルを確認することができる。この測定は、測定環境150におけるEUVマスク400の温度調節間隔(浸漬時間)中に第2の測定ユニット1200によって行うことができ、EUVマスク400の高さプロファイルの測定が、第2の測定ユニット1200のスループットまたはマスクスループットを実質的に低減しないという結果が得られる。更に、第2の測定ユニット1200は、反射マスク400の前面315の表面凹凸データ470を決定することができる。このため、第2の測定ユニット1200は、第4の測定ユニットとして用いることができる。
【0161】
ミラー1225および部分的透過型ミラー1215は、レーザビームを、光源1210から対物部1240上に向ける。
【0162】
測定ユニット1200は、EUVマスク400のパターン要素350を粗く位置合わせするための光学補助システム1290を更に備える。更に、測定ユニット1200は、EUVマスク400の近傍において優勢な環境条件を測定する更なる補助システム(図12には示されていない)を更に備えることができる。環境条件を測定する補助システムは、干渉計、特にレーザ干渉計を備えることができる。測定されたパラメータは、例えば、温度、空気圧および空気湿度を含むことができる。測定されたパラメータは、同様に、計算ユニット1040に送信される。
【0163】
コンピュータシステム1270は、信号処理ユニット1260によって計算された像を、コンピュータシステム1270のスクリーン1260上に表示することができる。図11における第1の測定ユニット1100と類似した方式で、コンピュータシステム1270は、光源1210、対象物ステージの動き、対物部1240および/またはAFシステム1220を制御することができる。更に、コンピュータシステム1270は、計算ユニット1040を備えることができる。
【0164】
図12に示す例において、計算ユニット1040は、コンピュータシステム1270の一部である。代替的な実施形態において、計算ユニット1040は、データまたは測定データを、データ接続を介して信号処理ユニット1260および/またはコンピュータシステム1270と交換することができる独立ユニットとして具現化することができる。
【0165】
反射マスク400に加えて、第2の測定デバイス1200は、様々なタイプの従来の透過型フォトマスク100のパターン要素120、130を測定することもできることは言うまでもない。
【0166】
図13は、図12からの第2の測定ユニット1200も第1の測定ユニット1100として動作することができる第2の手段1020の第3の例示的な実施形態を示す。この実施形態において、第2の測定ユニット1200は、マスク400の前面325および後面315を交換することができるフリップユニットを有する。第2の測定ユニット1200の前記フリップユニットは図13に示されていない。フリップユニットは、フリップ中、特に、3点載置部140への装着中に、EUVマスク400の前面315を汚染しない、または更には損傷しないように設計される。
【0167】
第2の測定ユニット1200は、DUV光源1110、オートフォーカスシステム1220、対物部1240および検出器1550を有するため、パターン要素350の配置の測定のみでなく、EUVマスク400の後面315の凹凸420の確認のためにも用いることができる。
【0168】
図14は、第1の測定ユニット1100または第1の手段1010と、第2の測定ユニット1200または第2の手段1020とを結合する結合デバイス1400の1つの例示的な実施形態を示す。結合デバイス1400は、EUVマスク420の装着状態を変更することなく、EUVマスク400の後面315の凹凸420を確認し、パターン要素350の配置を確認することを可能にするため有利である。それによって、第1の測定ユニット1100および第2の測定ユニット1200の測定データの、共通基準系または座標系への変換が容易にされる。
【0169】
図14に再現される結合デバイス1400は、2つの信号処理システム1160、1260および2つのコンピュータシステム1170、1270を有する。結合デバイス1400は、1つの信号処理ユニット1260および1つのコンピュータシステム1270を用いれば済むことは言うまでもない。更に、結合デバイス1400は2つの光源1110および1210を有する。2つのオートフォーカスシステム1120および1220に供給するために1つの光源1210を用いることが可能である。加えて、2つのオートフォーカスシステム1120、1220のうちの1つは、結合デバイス1400において省略することができる。
【0170】
図15は、第3の測定ユニット1500の形態の第1の手段1010の第3の例示的な実施形態を概略的に提示する。第3の測定ユニット1500は、載置部900またはチャック900の表面910の凹凸920を決定し、測定されたデータを、表面凹凸データ930として図10からのデバイス1000の計算ユニット1040に転送するように設計される。第3の測定ユニット1500は、通常、測定環境150において動作する。
【0171】
図15における例示的な測定ユニット1500は、光ビーム1520を載置部900の表面910上に向ける干渉計1510を備える。干渉計はレーザ干渉計を備えることができる。載置部900の表面910から反射された放射1530は、干渉計1510によって検出される。光ビーム1520および1530を用いることにより、干渉計1510は、チャック900の表面920上の光ビーム1520の入射点1540と、干渉計1500の基準面との間の距離を確認する。チャック900の表面920にわたって光ビームの入射点1540を走査することによって、その表面凹凸データ930を決定することが可能である。干渉計1510は、ビーム軸に沿って、すなわちz方向において、ナノメートル以下の範囲空間分解能で表面920を確認することができる。
【0172】
図4の論考との関連で説明したように、測定環境150からEUVマスク400の動作環境450への遷移時のマスクの後面表面の局所的凹凸420は、そのパターン要素350の局所的変位につながる可能性がある。パターン要素350のこの局所的変位は、少なくとも部分的に防止および/または補正することができる。これに関して、例えば、ピクセルの1つまたは複数の配列を、後面312の近傍においてマスクの基板310に導入することによって、局所的後面凹凸420を可能な限り最大限まで平滑化し、結果として、パターン要素350の局所的な横方向の変位が実質的に生じないようにすることが可能である。代替的にまたは加えて、ピクセルの1つまたは複数の配列を、多層構造370が堆積される前面322の近傍においてマスク基板310内に導入することが可能である。最後に述べた前記ピクセルの配列は、測定環境150から動作環境450への遷移時に生じるパターン要素350の局所的変位を補う。ピクセルの配列を決定し、マスク400の基板310に導入することに関する詳細は、本出願人の名前での米国特許第9658527号および同第9753366号の明細書に指定されている。
【0173】
最後に、図16における流れ図1600は、動作環境450における反射フォトリソグラフィマスク400のパターン要素350の配置を決定するための方法のシーケンスの概観を与える。方法は、ステップ1610において開始する。ステップ1620は、反射フォトリソグラフィマスク400の動作環境450と対応しない測定環境150において、反射フォトリソグラフィマスク400の後面315の表面凹凸データ420、および/または反射フォトリソグラフィマスク400の載置部900の表面凹凸データ930を決定することを伴う。このステップは、例えば、第1の測定ユニット1100および/または第3の測定ユニット1500によって実行することができる。指定された方法は、デバイス1000によって実行することができる。
【0174】
次のステップ1630は、測定環境150においてパターン要素350の配置データを決定することを伴う。第2の測定ユニット1200は、例えばこのステップを実行することができる。
【0175】
ステップ1640は、後面315および/または載置部900の決定された表面凹凸データ420、930、ならびに決定された配置データから、動作環境450におけるパターン要素350の配置を計算することを伴う。デバイス1000の計算ユニット1040は、このステップを実行するように設計される。最後に、この方法はステップ1650で終了する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図16