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特許7312536感光性樹脂組成物、ドライフィルム、硬化物、および電子部品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-12
(45)【発行日】2023-07-21
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物、ドライフィルム、硬化物、および電子部品
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/004 20060101AFI20230713BHJP
   G03F 7/023 20060101ALI20230713BHJP
   C08L 77/10 20060101ALI20230713BHJP
   C08K 5/28 20060101ALI20230713BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20230713BHJP
   C08K 5/103 20060101ALI20230713BHJP
   C08G 69/32 20060101ALI20230713BHJP
【FI】
G03F7/004 501
G03F7/004 512
G03F7/023
C08L77/10
C08K5/28
C08L63/00 A
C08K5/103
C08G69/32
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018186053
(22)【出願日】2018-09-28
(65)【公開番号】P2020056845
(43)【公開日】2020-04-09
【審査請求日】2021-08-26
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591021305
【氏名又は名称】太陽ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096714
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 一郎
(72)【発明者】
【氏名】イム ヨンジョン
(72)【発明者】
【氏名】秋元 真歩
(72)【発明者】
【氏名】福島 智美
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼嶋 脩平
【審査官】川口 真隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-111718(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004
G03F 7/023
C08L 77/10
C08K 5/28
C08L 63/00
C08K 5/103
C08G 69/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリベンゾオキサゾール前駆体、(B)感光剤、(C)2官能以上のエポキシ化合物、および、(D)(メタ)アクリロイル基を有する可塑剤を含み、
前記(B)感光剤が、ナフトキノンジアジド化合物であり、
前記(D)(メタ)アクリロイル基を有する可塑剤が、ジオールのアルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレートでり、
前記ジオールのアルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレートが下記に示す構造を有することを特徴とする感光性樹脂組成物。
(式中、m+nは2以上である。)
【請求項2】
請求項1記載の感光性樹脂組成物をフィルムに塗布、乾燥して得られる樹脂層を有することを特徴とするドライフィルム。
【請求項3】
請求項1記載の感光性樹脂組成物または請求項2記載のドライフィルムの樹脂層を硬化して得られることを特徴とする硬化物。
【請求項4】
請求項3記載の硬化物を有することを特徴とする電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物、ドライフィルム、硬化物、および電子部品に関する。
【0002】
従来、半導体素子における再配線用の絶縁材料として、ポリベンゾオキサゾール前駆体(以下、「PBO前駆体」とも称する)を主成分とする樹脂組成物が用いられている。このPBO前駆体は、高温(>350℃)で加熱してベンゾオキサゾール環へと環化反応させることで剛直な構造となり、また分子間でのパッキング密度も上昇することから、このPBO前駆体を含む樹脂組成物によれば、耐薬品性、熱特性および柔軟性などの機械特性に優れた硬化膜が得られる。
【0003】
一方で近年、チップを封止剤で封止した後、再配線を形成する、いわゆるモールディングファースト型ファンアウトウエハレベルパッケージ工法が登場している。そのため、かかる工法に用いられる再配線用の絶縁材料としては、エポキシ樹脂を主成分とする封止材の耐熱性の観点から、220℃程度の低温で硬化可能な材料が求められている。
【0004】
しかしながら、このような低い温度では、PBO前駆体を含む樹脂組成物は、PBO前駆体の環化が十分に進行せず、耐薬品性や熱特性、柔軟性などの機械特性といった種々の特性が低下してしまうという問題があった。
【0005】
これに対し従来、これらの問題を解決すべく、PBO前駆体を含む樹脂組成物にエポキシ化合物などの架橋剤を加えるアプローチが種々提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2014-111718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、架橋剤を配合すると、硬化物に形成される架橋構造によって、低温硬化時でも耐薬品性等の物性は向上するが、柔軟性が低下してしまうという二律背反の問題があった。
【0008】
また、架橋剤としてエポキシ化合物を配合すると、未露光部の耐現像性が向上するものの、良好なパターン形成のためには露光部の現像性に改良の余地があった。
【0009】
そこで本発明の主たる目的は、露光部の現像性に優れ、220℃程度の低温で硬化を行った場合であっても、耐薬品性及び柔軟性に優れた絶縁膜が得られる、再配線用の絶縁膜に用いて好適な感光性樹脂組成物を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、該組成物から得られる樹脂層を有するドライフィルム、該組成物または該ドライフィルムの樹脂層の硬化物、該硬化物を有する電子部品を提供することにある。
【0010】
本発明者らは、上記目的の実現に向け鋭意検討した。その結果、PBO前駆体を含む感光性樹脂組成物において、架橋剤として2官能以上のエポキシ化合物を用い、自己重合性基を有する可塑剤を組み合わせて配合することにより、上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明の感光性樹脂組成物は、(A)ポリベンゾオキサゾール前駆体、(B)感光剤、(C)2官能以上のエポキシ化合物、および、(D)自己重合性基を有する可塑剤を含むことを特徴とするものである。
【0012】
本発明の感光性樹脂組成物は、前記(D)自己重合性基を有する可塑剤が、2官能(メタ)アクリル化合物であることが好ましい。
【0013】
本発明の感光性樹脂組成物は、さらに、自己重合性基を有さない可塑剤を含むことが好ましい。
【0014】
本発明の感光性樹脂組成物は、前記自己重合性基を有さない可塑剤が、スルホンアミド化合物、フタル酸エステル化合物、および、マレイン酸エステル化合物の少なくとも何れか一種であることが好ましい。
【0015】
本発明の感光性樹脂組成物は、さらに、熱酸発生剤を含むことが好ましい。
【0016】
本発明の感光性樹脂組成物は、前記熱酸発生剤が、スルホン酸エステル化合物であることが好ましい。
【0017】
本発明の感光性樹脂組成物は、前記(C)2官能以上のエポキシ化合物が、ナフタレン構造を有することが好ましい。
【0018】
本発明の感光性樹脂組成物は、さらに、トリアジン環構造を有する架橋剤を含むことが好ましい。
【0019】
本発明のドライフィルムは、フィルム上に、前記感光性樹脂組成物を塗布、乾燥して得られる樹脂層を有することを特徴とするものである。
【0020】
本発明の硬化物は、前記感光性樹脂組成物または前記ドライフィルムの樹脂層を硬化して得られることを特徴とするものである。
【0021】
本発明の電子部品は、前記硬化物を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、露光部の現像性に優れ、220℃程度の低温で硬化を行った場合であっても、耐薬品性及び柔軟性に優れた硬化膜が得られる、再配線用の絶縁膜に用いて好適な感光性樹脂組成物を提供することができる。また、本発明によれば、該組成物から得られる樹脂層を有するドライフィルム、該組成物または該ドライフィルムの樹脂層の硬化物、該硬化物を有する電子部品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の感光性樹脂組成物が含有する成分について詳述する。
【0024】
[(A)ポリベンゾオキサゾール前駆体]
本発明の感光性樹脂組成物は、(A)ポリベンゾオキサゾール前駆体を含む。(A)ポリベンゾオキサゾール前駆体の合成方法は特に限定されず、公知の方法で合成すればよい。例えば、アミン成分としてジヒドロキシジアミン類と、酸成分としてジカルボン酸ジクロリド、ジカルボン酸、ジカルボン酸エステル等のジカルボン酸成分とを反応させて得ることができる。
【0025】
(A)ポリベンゾオキサゾール前駆体は、ポリヒドロキシアミドであることが好ましく、下記一般式(1)の繰り返し構造を有するポリヒドロキシアミドであることが好ましい。
(式中、Xは4価の有機基を示し、Yは2価の有機基を示す。nは2以上の整数であり、好ましくは10~200、より好ましくは20~70である。)
【0026】
(A)ポリベンゾオキサゾール前駆体を上記の合成方法で合成する場合、上記一般式(1)中、Xは、上記ジヒドロキシジアミン類の残基であり、Yは、上記ジカルボン酸成分の残基である。
【0027】
上記の繰り返し構造のジヒドロキシジアミン類としては、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジヒドロキシビフェニル、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)スルホン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン等が挙げられる。中でも、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパンが好ましい。
【0028】
上記の繰り返し構造のジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、テレフタル酸、5-tert-ブチルイソフタル酸、5-ブロモイソフタル酸、5-フルオロイソフタル酸、5-クロロイソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジカルボキシビフェニル、4,4’-ジカルボキシジフェニルエーテル、4,4’-ジカルボキシテトラフェニルシラン、ビス(4-カルボキシフェニル)スルホン、2,2-ビス(p-カルボキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-カルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン等の芳香環を有するジカルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、1,2-シクロブタンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロペンタンジカルボン酸等の脂肪族系ジカルボン酸が挙げられる。中でも、4,4’-ジカルボキシジフェニルエーテルが好ましい。
【0029】
上記一般式(1)中、Xが示す4価の有機基は脂肪族基でも芳香族基でもよいが、芳香族基であることが好ましく、2つのヒドロキシ基と2つのアミノ基がオルト位に芳香環上に位置することがより好ましい。上記4価の芳香族基の炭素原子数は、6~30であることが好ましく、6~24であることがより好ましい。上記4価の芳香族基の具体例としては以下に示す基が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、ポリベンゾオキサゾール前駆体に含まれうる公知の芳香族基を用途に応じて選択すればよい。
【0030】
【0031】
上記4価の芳香族基は、上記芳香族基の中でも以下に示す基であることが好ましい。
【0032】
上記一般式(1)中、Yが示す2価の有機基は脂肪族基でも芳香族基でもよいが、芳香族基であることが好ましく、芳香環上で上記一般式(1)中のカルボニルと結合していることがより好ましい。上記2価の芳香族基の炭素原子数は、6~30であることが好ましく、6~24であることがより好ましい。上記2価の芳香族基の具体例としては以下に示す基が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、ポリベンゾオキサゾール前駆体に含まれる公知の芳香族基を用途に応じて選択すればよい。
【0033】
(式中、Aは単結合、-CH-、-O-、-CO-、-S-、-SO-、-NHCO-、-C(CF-、-C(CH-からなる群から選択される2価の基を表す。)
【0034】
上記2価の有機基は、上記芳香族基の中でも以下に示す基であることが好ましい。
【0035】
(A)ポリベンゾオキサゾール前駆体は、上記のポリヒドロキシアミドの繰り返し構造を2種以上含んでいてもよい。また、(A)ポリベンゾオキサゾール前駆体は、上記のポリヒドロキシアミドの繰り返し構造以外の構造を含んでいてもよく、例えば、ポリアミド酸の繰り返し構造やベンゾオキサゾール構造を含んでいてもよい。
【0036】
(A)ポリベンゾオキサゾール前駆体の数平均分子量(Mn)は、1,000~100,000であることが好ましく、5,000~50,000であることがより好ましい。ここで数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、標準ポリスチレンで換算した数値である。また、(A)ポリベンゾオキサゾール前駆体の重量平均分子量(Mw)は5,000~200,000であることが好ましく、10,000~100,000であることがより好ましい。ここで重量平均分子量は、GPCで測定し、標準ポリスチレンで換算した数値である。Mw/Mnは1~5であることが好ましく、1~3であることがより好ましい。
【0037】
(A)ポリベンゾオキサゾール前駆体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
[(B)感光剤]
本発明の感光性樹脂組成物は、(B)感光剤を含む。(B)感光剤としては、特に制限はなく、光酸発生剤や光塩基発生剤を用いることができる。光酸発生剤は、紫外線や可視光等の光照射により酸を発生する化合物であり、光塩基発生剤は、同様の光照射により分子構造が変化するか、または、分子が開裂することにより1種以上の塩基性物質を生成する化合物である。本発明においては、(B)感光剤として、光酸発生剤を好適に用いることができる。
【0039】
光酸発生剤としては、ナフトキノンジアジド化合物、ジアリールスルホニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、ジアルキルフェナシルスルホニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、アリールジアゾニウム塩、芳香族テトラカルボン酸エステル、芳香族スルホン酸エステル、ニトロベンジルエステル、芳香族N-オキシイミドスルフォネート、芳香族スルファミド、ベンゾキノンジアゾスルホン酸エステル等を挙げることができる。光酸発生剤は、溶解阻害剤であることが好ましい。中でもナフトキノンジアジド化合物であることが好ましい。
【0040】
ナフトキノンジアジド化合物としては、具体的には例えば、トリス(4-ヒドロキシフェニル)-1-エチル-4-イソプロピルベンゼンのナフトキノンジアジド付加物(例えば、三宝化学研究所社製のTS533,TS567,TS583,TS593)や、テトラヒドロキシベンゾフェノンのナフトキノンジアジド付加物(例えば、三宝化学研究所社製のBS550,BS570,BS599)や、4-{4-[1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エチル]-α,α-ジメチルベンジル}フェノールのナフトキノンジアジド付加物(例えば、三宝化学研究所社製のTKF-428,TKF-528)等を使用することができる。
【0041】
また、光塩基発生剤としては、イオン型光塩基発生剤でもよく、非イオン型光塩基発生剤でもよいが、イオン型光塩基発生剤の方が組成物の感度が高く、パターン膜の形成に有利になるので好ましい。塩基性物質としては、例えば、2級アミン、3級アミンが挙げられる。
【0042】
イオン型の光塩基発生剤としては、例えば、芳香族成分含有カルボン酸と3級アミンとの塩や、和光純薬社製イオン型PBGのWPBG-082、WPBG-167、WPBG-168、WPBG-266、WPBG-300等を用いることができる。
【0043】
非イオン型の光塩基発生剤としては、例えば、α-アミノアセトフェノン化合物、オキシムエステル化合物や、N-ホルミル化芳香族アミノ基、N-アシル化芳香族アミノ基、ニトロベンジルカーバメイト基、アルコオキシベンジルカーバメート基等の置換基を有する化合物等が挙げられる。その他の光塩基発生剤として、和光純薬社製のWPBG-018(商品名:9-anthrylmethyl N,N’-diethylcarbamate)、WPBG-027(商品名:(E)-1-[3-(2-hydroxyphenyl)-2-propenoyl]piperidine)、WPBG-140(商品名:1-(anthraquinon-2-yl)ethyl imidazolecarboxylate)、WPBG-165等を使用することもできる。
【0044】
(B)感光剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。(B)感光剤の配合量は、(A)ポリベンゾオキサゾール前駆体の不揮発成分100質量部に対し、3~30質量部であることが好ましい。
【0045】
[(C)2官能以上のエポキシ化合物]
本発明の感光性樹脂組成物は、架橋剤として(C)2官能以上のエポキシ化合物を含有する。(C)2官能以上のエポキシ化合物は、上記ポリベンゾオキサゾール前駆体の水酸基と熱反応し、架橋構造を形成する。(C)2官能以上のエポキシ化合物の官能基数は、2~4であることが好ましい。
【0046】
(C)2官能以上のエポキシ化合物としては、エポキシ化植物油;ビスフェノールA型エポキシ化合物;ハイドロキノン型エポキシ化合物;ビスフェノール型エポキシ化合物;チオエーテル型エポキシ化合物;ブロム化エポキシ化合物;ノボラック型エポキシ化合物;ビフェノールノボラック型エポキシ化合物;ビスフェノールF型エポキシ化合物;水添ビスフェノールA型エポキシ化合物;グリシジルアミン型エポキシ化合物;ヒダントイン型エポキシ化合物;脂環式エポキシ化合物;トリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ化合物;ビキシレノール型もしくはビフェノール型エポキシ化合物またはそれらの混合物;ビスフェノールS型エポキシ化合物;ビスフェノールAノボラック型エポキシ化合物;テトラフェニロールエタン型エポキシ化合物;複素環式エポキシ化合物;ジグリシジルフタレート化合物;テトラグリシジルキシレノイルエタン化合物;ナフタレン骨格を有するエポキシ化合物;ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ化合物;グリシジルメタアクリレート共重合系エポキシ化合物;シクロヘキシルマレイミドとグリシジルメタアクリレートの共重合エポキシ化合物;エポキシ変性のポリブタジエンゴム誘導体;CTBN変性エポキシ化合物等が挙げられるが、これらに限られるものではない。(C)2官能以上のエポキシ化合物は、1種を単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0047】
(C)2官能以上のエポキシ化合物のなかでも、ナフタレン骨格を有する2官能以上のエポキシ化合物が好ましい。柔軟性および耐薬品性により優れた絶縁膜が得られるだけでなく、柔軟性と二律背反の関係にある低CTE化が可能となり、絶縁膜の反りやクラックの発生を抑制することができる。また、ビスフェノールA型エポキシ化合物も柔軟性の観点から好適に用いることができる。
【0048】
ナフタレン骨格を有する2官能以上のエポキシ化合物としては、ナフタレン骨格を有し、エポキシ基を2以上有する化合物であれば特に限定されず、例えば、1,2-ジグリシジルナフタレン、1,5-ジグリシジルナフタレン、1,6-ジグリシジルナフタレン、1,7-ジグリシジルナフタレン、2,7-ジグリシジルナフタレン、トリグリシジルナフタレン、及び1,2,5,6-テトラグリシジルナフタレン、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格変性クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、メトキシナフタレン変性クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、メトキシナフタレンジメチレン型エポキシ樹脂等の変性ナフタレン型エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0049】
市販品としては、DIC社製HP-4032D、HP-4700、HP-4770、HP-5000、HP-6000、HP-4710、日本化薬社製NC-7000L、NC-7300L等が挙げられる。
【0050】
ナフタレン骨格を有する2官能以上のエポキシ化合物は、構造に柔軟鎖を有していても、有さずともよいが、柔軟鎖を有さずとも本発明の感光性樹脂組成物の硬化物の柔軟性を向上することができることから、例えば、エポキシ基の間に原子数5~10、さらには3~5の直鎖構造を有さずともよい。
【0051】
(C)2官能以上のエポキシ化合物のエポキシ当量は100~500g/eqが好ましく、100~300g/eqがより好ましい。
【0052】
(C)2官能以上のエポキシ化合物の配合量は、(A)ポリベンゾオキサゾール前駆体の不揮発成分100質量部に対し、好ましくは0.1~50質量部、より好ましくは0.1~30質量部である。このような範囲とすることで、(A)ポリベンゾオキサゾール前駆体に対して適切な架橋密度を保つことができる。
【0053】
(その他の架橋剤)
本発明の感光性樹脂組成物は、(C)2官能以上のエポキシ化合物以外の架橋剤を含有することができる。本明細書において、その他の架橋剤は、上記のエポキシ化合物以外で、ポリベンゾオキサゾール前駆体のフェノール性水酸基と反応し、架橋構造を形成する化合物であることが好ましい。ここで、ポリベンゾオキサゾール前駆体のフェノール性水酸基と反応する官能基としては、エポキシ基などの環状エーテル基、エピスルフィド基などの環状チオエーテル基、メチロール基などの炭素数1~12のアルキレン基にヒドロキシル基が結合したアルコール性水酸基が挙げられる。
【0054】
その他の架橋剤としては、なかでも、トリアジン環構造を有する架橋剤が好ましく、本発明においては、硬化物の伸び率をさらに向上させることができる。このトリアジン環構造を有する架橋剤としては、特に限定されないが、下記一般式(2)で表される架橋剤であることが好ましい。
(式中、R21A、R22A、R23A、R24A、R25AおよびR26Aはそれぞれ独立に炭素数1~3のアルキレン基であることが好ましい。R21B、R22B、R23B、R24B、R25BおよびR26Bはそれぞれ独立に水素原子、または、炭素数1~3のアルキル基であることが好ましい。)
【0055】
上記一般式(2)中、R21A、R22A、R23A、R24A、R25AおよびR26Aはそれぞれメチレン基であることがより好ましい。また、R21B、R22B、R23B、R24B、R25BおよびR26Bはそれぞれ独立にメチル基または水素原子であることがより好ましい。
【0056】
その他の架橋剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。架橋によって現像性を損なわないためにもその他の架橋剤の配合量は、ポリベンゾオキサゾール前駆体の不揮発成分100質量部に対し、0.1~30質量部であることが好ましい。また、0.1~20質量部がより好ましい。
【0057】
((D)自己重合性基を有する可塑剤)
本発明の感光性樹脂組成物は、(D)自己重合性基を有する可塑剤を含有する。可塑剤としては、可塑性を向上する化合物であれば特に限定されず、また、自己重合性基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等が挙げられる。尚、本明細書において、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基、メタクリロイル基およびそれらの混合物を総称する用語であり、他の類似の表現についても同様である。本発明においては、(D)自己重合性基を有する可塑剤を配合することによって、(A)ポリベンゾオキサゾール前駆体の環化反応が促進され、低温硬化性がより向上し、耐薬品性に優れた硬化物を得ることができる。本来、220℃程度の低温硬化では、(A)ポリベンゾオキサゾール前駆体の環化率は低く、また、架橋剤を配合すると低温硬化性を向上することができるが、環化反応が生じる官能基と架橋剤が反応するため、環化率はさらに低下し得る。詳しいメカニズムは明らかではないが、本発明においては、可塑剤の可塑作用、すなわち、ポリマー分子鎖間の凝集作用を削減し、分子鎖間の移動性、柔軟性が向上したことによって、(A)ポリベンゾオキサゾール前駆体の熱分子運動が向上し、環化反応が促進されたと考えられる。また、本発明においては、可塑剤を配合することによって、柔軟性により優れた硬化物を得ることができる。さらに、本発明においては(C)2官能以上のエポキシ化合物の配合によって未露光部の耐現像性に優れるところ、可塑剤を配合すると露光部の現像性が向上し、フォトリソグラフィによってより良好なパターン形成が可能となる。また、可塑剤が自己重合性基を有することで、硬化物の柔軟性をさらに向上することができる。(D)自己重合性基を有する可塑剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。(D)自己重合性基を有する可塑剤は、組成物中の他の成分と架橋反応しない可塑剤であることが好ましい。また、(D)自己重合性基を有する可塑剤は、熱酸発生の機能を有さないことが好ましい。
【0058】
(D)自己重合性基を有する可塑剤としては、2官能(メタ)アクリル化合物であることが好ましい。2官能(メタ)アクリル化合物は、組成物中の他の成分と架橋構造を形成しない化合物であることが好ましい。また、2官能(メタ)アクリル化合物は、自己重合により直鎖構造を形成する化合物であることが好ましい。
【0059】
2官能(メタ)アクリル化合物としては、(メタ)アクリロイル基を2つ有する化合物であれば特に限定されず、具体例としては、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,9-ノナンジオールジアクリレート、1,10-デカンジオールジアクリレートなどのジオールのジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールにエチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドの少なくともいずれか1種を付加して得たジオールのジアクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレートなどのグリコールのジアクリレート、ビスフェノールA EO(エチレンオキサイド)付加物ジアクリレート、ビスフェノールA PO(プロピレンオキサイド)付加物ジアクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルアクリル酸付加物、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートビスフェノールAにエチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドの少なくともいずれか1種を付加して得たジオールのジアクリレート、水添ジシクロペンタジエニルジアクリレート、シクロヘキシルジアクリレートなどの環状構造を有するジアクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ジアクリレートなどのイソシアヌル酸のジアクリレート、2官能のポリエステルアクリレート、および、これらに対応するメタクリレートなどが挙げられる。
【0060】
市販品としては、ライトアクリレート1,6HX-A、1,9ND-A、3EG-A、4EG-A(共栄社化学社製の商品名)、HDDA、1,9-NDA、DPGDA、TPGDA(ダイセル・オルネクス社製の商品名)、ビスコート#195、#230、#230D、#260、#310HP、#335HP、#700HV、#540(大阪有機化学工業社製の商品名)、アロニックスM-208、M-211B、M-215、M-220、M-225、M-240、M-270、M-6200、M-6250、M-6500(東亞合成社製の商品名)、NKエステルBPE-200、BPE-500、BPE-900(新中村化学社製の商品名)などが挙げられる。
【0061】
2官能の(メタ)アクリル化合物の中でも、ジオールの(エチレンオキサイドやプロピレンオキサイドなどの)アルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレートや2官能のポリエステル(メタ)アクリレートが好ましく、2官能のポリエステル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0062】
ジオールのアルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレートとしては、具体的にはジオールをアルキレンオキシド変性した後に末端に(メタ)アクリレートを付加させたものが好ましく、ジオールに芳香環を有するものがさらに好ましい。例えば、ビスフェノールA EO(エチレンオキサイド)付加物ジアクリレート、ビスフェノールA PO(プロピレンオキサイド)付加物ジアクリレートなどが挙げられる。ジオールのアルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレートの具体的な構造を下記に示すがこれに限定されるものではない。
【0063】
(式中、m+nは2以上であり、2~40であることが好ましく、3.5~25であることがより好ましい。)
【0064】
2官能のポリエステル(メタ)アクリレートとしては、M-6200、M-6250、M-6500(東亞合成社製の商品名)が好ましい。
【0065】
(D)自己重合性基を有する可塑剤の配合量は、ポリベンゾオキサゾール前駆体の不揮発成分100質量部に対し、3~40質量部であることが好ましく、低温硬化において十分な薬品耐性をより発揮することができる。
【0066】
(自己重合性基を有さない可塑剤)
本発明の感光性樹脂組成物は、自己重合性基を有さない可塑剤を含有することで、硬化物の耐薬品性を更に向上することができる。自己重合性基を有さない可塑剤は、組成物中の他の成分と架橋反応しない可塑剤であることが好ましい。また、自己重合性基を有さない可塑剤は、熱酸発生の機能を有さないことが好ましい。自己重合性基を有さない可塑剤としては、N-ブチルベンゼンスルホンアミド、N-エチル-p-トルエンスルホンアミド等のスルホンアミド化合物、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジ(2-エチルヘキシル)などのフタル酸エステル化合物、マレイン酸ジ(2-エチルヘキシル)などのマレイン酸エステル化合物、トリス(2-エチルヘキシル)トリメリテートなどのトリメリット酸エステル、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジブチルなどの脂肪族二塩基酸エステル、トリメチルホスフェート、トリス(ブトキシエチル)ホスフェートなどのリン酸エステル、(CO)P(O)OCC(CHOP(O)(OCで表されるような芳香族縮合リン酸エステル、クラウンエーテルなどのエーテル化合物などが挙げられる。なかでも、スルホンアミド化合物、フタル酸エステル化合物、マレイン酸エステル化合物が好ましい。
【0067】
前記スルホンアミド化合物は、下記一般式(3)で表されるベンゼンスルホンアミド化合物であることが好ましい。
【0068】
(一般式(3)中、R31は、有機基、ニトロ基、ハロゲン原子、スルホ基、スルホニル基、アミノ基またはアミド基であり、R32は、水素原子または有機基であり、nは0~5の整数である。nが2以上の場合、R31はそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。)
【0069】
前記マレイン酸エステル化合物は、下記一般式(4)で表される化合物であることが好ましい。
【0070】
(一般式(4)中、R41およびR42は、それぞれ独立に水素原子、有機基、ニトロ基、ハロゲン原子、スルホ基、スルホニル基、アミノ基またはアミド基であり、R41とR42は、結合して環を形成してもよい。R43は水素原子または有機基であり、R44は、水素原子または有機基である。)
【0071】
尚、一般式(3)および(4)、並びに後述する一般式(5)および(6)において、有機基とは、炭素原子を含む基である。有機基としては、炭素数1~12のアルキル基などが挙げられ、直鎖であっても分岐を有していてもよい。
【0072】
自己重合性基を有さない可塑剤の配合量は、ポリベンゾオキサゾール前駆体の不揮発成分100質量部に対し、1~50質量部であることが好ましく、10~50質量部であることがさらに好ましい。配合量が1質量部以上であれば、可塑効果が表れやすく、50質量部以下であれば、得られた硬化膜の特性を損なうことがない。
【0073】
(熱酸発生剤)
本発明の感光性樹脂組成物は、熱酸発生剤を含有することが好ましい。本発明においては、(A)ポリベンゾオキサゾール前駆体のフェノール性水酸基と(C)2官能以上のエポキシ化合物のエポキシ基が反応し、架橋構造を形成すると考えられるが、水酸基とエポキシ基の反応では、架橋構造に水酸基が生じることで誘電特性が悪化するため、絶縁材用途としては改善の余地がある。詳しいメカニズムは明らかではないが、本発明において熱酸発生剤を配合すると、(A)ポリベンゾオキサゾール前駆体の環化反応の触媒として作用することによって、低温での環化反応が促進され、上記架橋構造の水酸基の数が減少することで誘電特性が向上し、さらに、環化反応促進によって耐薬品性や耐熱性がより優れた硬化物を得ることができる。熱酸発生剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0074】
熱酸発生剤は熱によって酸が発生すれば特に限定されない。また、発生する酸としては、例えば、スルホン酸、カルボン酸、酢酸、塩酸、硝酸、臭素酸、ヨウ素酸が挙げられるが、環化の効率の観点から強酸が好ましく、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸などのアリールスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ノナフルオロブタンスルホン酸、カンファースルホン酸などのパーフルオロアルキルスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ブタンスルホン酸などのアルキルスルホン酸などのスルホン酸が好ましい。これらの酸は、熱酸発生剤として、例えば、オニウム塩としての塩や、イミドスルホナートのような共有結合によって潜在化した化合物として感光性樹脂組成物に配合される。
【0075】
熱酸発生剤の具体例としては、スルホン酸エステル化合物、スルホンイミド化合物、スルホニウム塩、2-スルホ安息香酸無水物、p-トルエンスルホン酸無水物、ベンゾチアゾリウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、スルホン酸塩などが挙げられる。これらの中でも、スルホン酸エステル化合物、スルホン酸塩が好ましい。また、熱酸発生剤として、熱により強酸(水中の酸解離定数pKaが0以下)を発生する化合物であることが好ましい。
【0076】
スルホン酸エステル化合物としては、メタンスルホン酸エチル、メタンスルホン酸メチル、メタンスルホン酸2-メトキシエチル、メタンスルホン酸2-イソプロポキシエチル、4-メチルベンゼンスルホン酸シクロヘキシル、(1R,2S,5R)-5-メチル-2-(プロパン-2-イル)シクロヘキシル 4-メチルベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸フェニル、p-トルエンスルホン酸エチル、p-トルエンスルホン酸メチル、p-トルエンスルホン酸2-フェニルエチル、p-トルエンスルホン酸n-プロピル、p-トルエンスルホン酸n-ブチル、p-トルエンスルホン酸t-ブチル、p-トルエンスルホン酸n-ヘキシル、p-トルエンスルホン酸n-ヘプチル、p-トルエンスルホン酸n-オクチル、p-トルエンスルホン酸2-メトキシエチル、p-トルエンスルホン酸プロパルギル、p-トルエンスルホン酸3-ブチニル、トリフルオロメタンスルホン酸エチル、トリフルオロメタンスルホン酸n-ブチル、パーフルオロブタンスルホン酸エチル、パーフルオロブタンスルホン酸メチル、ベンジル(4-ヒドロキシフェニル)メチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ベンジル(4-ヒドロキシフェニル)メチルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリメチルスルホニウムメチルスルファート、トリ-p-スルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、ピリジニウム-p-トルエンスルホナート、パーフルオロオクタンスルホン酸エチル、1,4-ブタンスルトン、2,4-ブタンスルトン、1,3-プロパンスルトン、フェノールレッド、ブロモクレゾールグリーン、ブロモクレゾールパープル等が挙げられる。
【0077】
前記スルホン酸エステル化合物としては、下記一般式(5)で表される化合物が好ましい。
【0078】
(一般式(5)中、R51は、水素原子またはアルキル基を表し、R52は、水素原子または有機基を表す。)
【0079】
51がとりうるアルキル基は、直鎖であっても分岐を有していてもよい。また、炭素原子数が1~10であることが好ましく、1~6であることがより好ましい。
【0080】
52がとりうる有機基は、直鎖であっても分岐を有していてもよく、環状構造を有していてもよい。炭素原子数が1~16であることが好ましく、1~11であることがより好ましい。
【0081】
前記スルホン酸塩としては、下記一般式(6)で表される化合物が好ましい。
【0082】
(一般式(6)中、R61は水素原子またはアルキル基を表し、R62、R63はそれぞれ独立に水素原子または有機基を表す。R62とR63は結合して環を形成してもよい。)
【0083】
61がとりうるアルキル基は直鎖であっても分岐を有していても良い。また、炭素原子数は1~10であることが好ましく、1~6であることがより好ましい。
【0084】
62、R63がとりうる有機基は直鎖であっても分岐を有していてもよい。
【0085】
熱酸発生剤のなかでも、120~220℃で酸を発生する熱酸発生剤が好ましい。120℃以上で酸が発生する熱酸発生剤の場合、プリベーク時に反応が進行しにくく、現像残渣が生じにくい。さらには、150~220℃で酸を発生する熱酸発生剤が好ましい。酸の発生は、TG-DTAによる重量減少温度にて確認することができる。
【0086】
熱酸発生剤の配合量は、ポリベンゾオキサゾール前駆体の不揮発成分100質量部に対し、0.1~30質量部であることが好ましく、0.1~10質量部であることがより好ましく、さらに好ましくは1~3質量部である。
【0087】
(増感剤、密着剤、その他の成分)
本発明の感光性樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、更に光感度を向上させるために公知の増感剤や、基材との接着性向上のためシランカップリング剤などの公知の密着剤などを配合することもできる。更に、本発明の感光性樹脂組成物に加工特性や各種機能性を付与するために、その他に様々な有機または無機の低分子または高分子化合物を配合してもよい。例えば、界面活性剤、レベリング剤、微粒子等を用いることができる。微粒子には、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン等の有機微粒子、シリカ、カーボン、層状珪酸塩等の無機微粒子が含まれる。また、本発明の感光性樹脂組成物に各種着色剤および繊維等を配合してもよい。
【0088】
(溶剤)
本発明の感光性樹脂組成物に用いられる溶剤は、(A)ポリベンゾオキサゾール前駆体、(B)感光剤、(C)2官能以上のエポキシ化合物、(D)自己重合性基を有する可塑剤、および、他の添加剤を溶解させるものであれば特に限定されない。一例としては、N,N’-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N,N’-ジメチルアセトアミド、ジエチレングリコールジメチルエーテル、シクロペンタノン、γ-ブチロラクトン、α-アセチル-γ-ブチロラクトン、テトラメチル尿素、1,3-ジメチル-2-イミダゾリノン、N-シクロヘキシル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミド、ピリジン、γ-ブチロラクトン、ジエチレングリコールモノメチルエーテルを挙げることができる。これらは単独で用いても、二種以上を混合して用いてもかまわない。使用する溶剤の量は、塗布膜厚や粘度に応じて適宜に定めることができる。例えば、(A)ポリベンゾオキサゾール前駆体100質量部に対し、50~9000質量部の範囲で用いることができる。
【0089】
本発明の感光性樹脂組成物は、ポジ型であることが好ましい。
【0090】
[ドライフィルム]
本発明のドライフィルムは、本発明の感光性樹脂組成物をフィルム(例えば支持(キャリア)フィルム)に塗布後、乾燥して得られる樹脂層を有するものである。この樹脂層を、基材に接するようにラミネートして使用される。
【0091】
本発明のドライフィルムは、フィルムに本発明の感光性樹脂組成物をブレードコーター、リップコーター、コンマコーター、フィルムコーター等の適宜の方法により均一に塗布し、乾燥して、上記した樹脂層を形成し、好ましくはその上にフィルム(いわゆる保護(カバー)フィルム)を積層することにより、製造することができる。保護フィルムと支持フィルムは同一のフィルム材料であっても、異なるフィルムを用いてもよい。
【0092】
本発明のドライフィルムにおいて、支持フィルムおよび保護フィルムのフィルム材料は、ドライフィルムに用いられるものとして公知のものをいずれも使用することができる。
支持フィルムとしては、例えば2~150μmの厚さのポリエチレンテレフタレート等のポリエステルフィルム等の熱可塑性フィルムが用いられる。
保護フィルムとしては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等を使用することができるが、樹脂層との接着力が、支持フィルムよりも小さいものが良い。
【0093】
本発明のドライフィルム上の樹脂層の膜厚は、100μm以下が好ましく、5~50μmの範囲がより好ましい。
【0094】
[硬化物]
本発明の硬化物は、上述した本発明の感光性樹脂組成物を用い所定のステップにて硬化させたものである。その硬化物であるパターン膜は、公知慣用の製法で製造すればよく、例えば、(B)感光剤としての光酸発生剤を含有するポジ型感光性樹脂組成物の場合、次の各ステップにより製造する。
【0095】
まず、ステップ1として、感光性樹脂組成物を基材上に塗布、乾燥することにより、あるいはドライフィルムから樹脂層を基材上に転写することにより、塗膜を得る。感光性樹脂組成物を基材上に塗布する方法としては、従来から感光性樹脂組成物の塗布に用いられていた方法、例えば、スピンコーター、バーコーター、ブレードコーター、カーテンコーター、スクリーン印刷機等で塗布する方法、スプレーコーターで噴霧塗布する方法、さらにはインクジェット法等を用いることができる。塗膜の乾燥方法としては、風乾、オーブンまたはホットプレートによる加熱乾燥、真空乾燥等の方法が用いられる。また、塗膜の乾燥は、感光性樹脂組成物中のポリベンゾオキサゾール前駆体の環化が起こらないような条件で行うことが望ましい。具体的には、自然乾燥、送風乾燥、あるいは加熱乾燥を、70~140℃で1~30分の条件で行うことができる。好ましくは、ホットプレート上で1~20分乾燥を行う。また、真空乾燥も可能であり、この場合は、室温で20分~1時間の条件で行うことができる。
感光性樹脂組成物の塗膜が形成される基材に特に制限はなく、シリコンウエハ等の半導体基材、配線基板、各種樹脂、金属等に広く適用できる。
【0096】
次に、ステップ2として、上記塗膜を、パターンを有するフォトマスクを介して、あるいは直接的に、露光する。露光光線は、(B)感光剤としての光酸発生剤を活性化させることができる波長のものを用いる。具体的には、露光光線は、最大波長が350~440nmの範囲にあるものが好ましい。上述したように、増感剤を適宜に配合することにより、光感度を調製することができる。露光装置としては、コンタクトアライナー、ミラープロジェクション、ステッパー、レーザーダイレクト露光装置等を用いることができる。
【0097】
次いで、ステップ3として、上記塗膜を現像液で処理する。これにより、塗膜中の露光部分を除去して、本発明の感光性樹脂組成物のパターン膜を形成することができる。
【0098】
現像に用いる方法としては、従来知られているフォトレジストの現像方法、例えば回転スプレー法、パドル法、超音波処理を伴う浸せき法等の中から任意の方法を選択することができる。現像液としては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド等の四級アンモニウム塩類等の水溶液を挙げることができる。また、必要に応じて、これらにメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の水溶性有機溶媒や界面活性剤を適当量添加してもよい。その後、必要に応じて塗膜をリンス液により洗浄してパターン膜を得る。リンス液としては、蒸留水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等を単独または組み合わせて用いることができる。また、現像液として上記溶剤を使用してもよい。
【0099】
その後、ステップ4として、パターン膜を加熱して硬化塗膜(硬化物)を得る。この加熱により、ポリベンゾオキサゾール前駆体を環化し、ポリベンゾオキサゾールを得る。加熱温度は、感光性樹脂組成物のパターン膜を硬化可能なように適宜設定する。例えば、不活性ガス中で、150℃以上350℃未満で5~120分程度の加熱を行う。加熱温度のより好ましい範囲は、180~250℃である。本発明の感光性樹脂組成物は、(C)2官能以上のエポキシ化合物および(D)自己重合性基を有する可塑剤を含むので、環化が促進され、250℃未満、さらには220℃以下の加熱温度とすることができる。加熱は、例えば、ホットプレート、オーブン、温度プログラムを設定できる昇温式オーブンを用いることにより行う。このときの雰囲気(気体)としては空気を用いてもよく、窒素、アルゴン等の不活性ガスを用いてもよい。
【0100】
本発明の感光性樹脂組成物の用途は特に限定されず、例えば、塗料、印刷インキ、または接着剤、あるいは、表示装置、半導体装置、電子部品、光学部品、または建築材料の形成材料として好適に用いられる。具体的には、表示装置の形成材料としては、層形成材料や画像形成材料として、カラーフィルター、フレキシブルディスプレイ用フィルム、レジスト材料、配向膜等に用いることができる。また、半導体装置の形成材料としては、レジスト材料、バッファーコート膜のような層形成材料等に用いることができる。さらに、電子部品の形成材料としては、封止材料や層形成材料として、プリント配線板、層間絶縁膜、配線被覆膜等に用いることができる。さらにまた、光学部品の形成材料としては、光学材料や層形成材料として、ホログラム、光導波路、光回路、光回路部品、反射防止膜等に用いることができる。さらにまた、建築材料としては、塗料、コーティング剤等に用いることができる。
【0101】
本発明の感光性樹脂組成物は、主にパターン形成材料として用いられ、それによって形成されたパターン膜は、例えば、ポリベンゾオキサゾールなどからなる永久膜として耐熱性や絶縁性を付与する成分として機能することから、特に半導体装置、表示体装置および発光装置の表面保護膜、層間絶縁膜、再配線用絶縁膜、フリップチップ装置用保護膜、バンプ構造を有する装置の保護膜、多層回路の層間絶縁膜、受動部品用絶縁材料、ソルダーレジストやカバーレイ膜などのプリント配線板の保護膜、ならびに液晶配向膜等として好適に利用できる。特に、本発明の感光性樹脂組成物は、硬化物の耐薬品性に優れることから、積層される層形成材料、例えば、層間絶縁膜、再配線用絶縁膜の形成材料として好適である。
【実施例
【0102】
以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。なお、以下において、「部」および「%」とあるのは、特に断りのない限り、すべて質量基準である。
【0103】
(ポリベンゾオキサゾール前駆体(A1)の合成)
温度計、攪拌機、原料仕込口及び窒素ガス導入口を備えた四つ口セパラブルフラスコに2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン40.3g(0.11モル)をN-メチル-2-ピロリドン1500gに溶解した後、ジフェニルエーテル-4、4’-ジカルボン酸ジクロリド35.4g(0.12モル)を反応系の温度を0~5℃に冷却しながら滴下した。
滴下終了後、反応系の温度を室温に戻し、そのまま6時間攪拌した。その後、純水1.8g(0.1モル)を加えて、更に40℃で1時間反応した。反応終了後、反応液を純水2000gに滴下した。沈殿物を濾集し、洗浄した後、真空乾燥を行い、以下に示す繰り返し構造を有するポリベンゾオキサゾール前駆体であるアルカリ可溶性ポリヒドロキシアミド(A1)を得た。重量平均分子量は32,000、数平均分子量は12,500、PDIは2.56であった。
【0104】
【0105】
(ポジ型感光性樹脂組成物の調製)
上記で合成したポリベンゾオキサゾール前駆体(A1)100質量部に対して、下記表1に記載の割合で、光酸発生剤(B1)、エポキシ化合物(C1~C3)、および、各成分を配合した後、ポリマーが30質量%になるようにγ-ブチロラクトンを加えてワニスとした。尚、各エポキシ化合物は、ポリベンゾオキサゾール前駆体(A1)のフェノール性OHに対し、エポキシ基の比が5:1になるように配合した。
【0106】
(伸び率の評価)
上記で調製したワニスをシリコンウエハ上にスピンコートして、110℃で3分間加熱し、膜厚40μmの塗膜を形成した。その後、前記塗膜をイナートガスオーブン中、窒素雰囲気下、120℃で10分加熱した後、4℃/min.で昇温し、220℃で60分加熱して硬化膜を得た。次にPCT装置(エスペック社製HAST SYSTEM TPC-412MD)を用いて、121℃、100%RH、60分の条件下で硬化膜を剥離した後、破断伸び等の膜物性を調べた。破断伸びは島津製作所社製のEZ-SXを用いて、引張試験より求め、つかみ具間距離は30mm、引張速度は3mm/min、測定は5回行い、そのうちの最大値を破断伸びとした。以下の基準に従って、伸び率を評価した。
A+:30%以上
A :20%以上30%未満
B :10%以上20%未満
C :10%未満
【0107】
(耐薬品性試験)
上記で調製したワニスをシリコンウエハ上にスピンコートして、110℃で3分間加熱し、膜厚40μmの塗膜を形成した。その後、前記塗膜をイナートガスオーブン中、窒素雰囲気下、120℃で10分加熱した後、4℃/min.で昇温し、220℃で60分加熱して硬化膜を得た。得られたサンプルの上に、それぞれ、γ-ブチロラクトン(GBL)に25℃10分間浸漬し、浸漬前後で変化を評価した。
A+:0.5%未満
A :0.5以上1.0%未満
B :1.0%以上5%未満
C :5%以上
【0108】
(未露光部残膜率と露光部溶解速度の測定)
上記で調製したワニスを、スピンコーターを用いて銅スパッタを施したシリコン基板上に塗布した。ホットプレートで100℃3分乾燥させ、感光性樹脂組成物の厚さ10μmの乾燥膜を得た。得られた乾燥膜に高圧水銀ランプを用いパターンが刻まれたマスクを介して800mJ/cmのi線を照射した。露光後2.38%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液で現像し、水でリンスし、ポジ型パターンを得た。
露光部の残膜が0になる時点の未露光部の残膜厚から残膜率(%)を計算し、下記の基準で評価した。
A+:95%以上
A :90%以上95%未満
B :80%以上90%未満
C :80%未満
また、乾燥膜厚(nm)/露光部の残膜が0になった時間(sec)を露光部の溶解速度として計算した。
【0109】
【表1】
【0110】
<(B)感光剤>
(B1)ナフトキノンジアジド化合物(三宝化学研究所社製TKF-428)
【0111】
<(C)2官能以上のエポキシ化合物>
(C1)EPICLON860(DIC社製)
(C2)HP4032D(DIC社製)
(C3)HP4700(DIC社製)
【0112】
<(D)自己重合性基を有する可塑剤>
(D1)アロニックスM-6250(2官能ポリエステルアクリレート、東亞合成社製)
(D2))NKエステルBPE-900(2官能メタクリレート、新中村化学社製)
【0113】
<自己重合性基を有さない可塑剤>
*1:N-ブチルベンゼンスルホンアミド(大八工業化学製)
【0114】
<熱酸発生剤>
*2:WPAG618(富士フィルム和光純薬工業社製)
【0115】
<トリアジン環構造を有する架橋剤>
*3:MW390(三和ケミカル社製)
【0116】
<有機溶剤>
*4:GBL(γ-ブチロラクトン)
【0117】
上記表中に示す結果から、本発明の感光性樹脂組成物は、露光部の現像性に優れ、220℃程度の低温で硬化を行った場合であっても、耐薬品性および柔軟性に優れた硬化膜が得られることが分かる。