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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-12
(45)【発行日】2023-07-21
(54)【発明の名称】2次元回折格子
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20230713BHJP
   G02B 5/18 20060101ALI20230713BHJP
【FI】
G03F7/20 501
G03F7/20 521
G02B5/18
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2020537634
(86)(22)【出願日】2019-01-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-05-20
(86)【国際出願番号】 EP2019050132
(87)【国際公開番号】W WO2019149467
(87)【国際公開日】2019-08-08
【審査請求日】2021-12-22
(31)【優先権主張番号】18154475.0
(32)【優先日】2018-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504151804
【氏名又は名称】エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】デ グロート,ピーター,クリスティアーン
(72)【発明者】
【氏名】バセルマンズ,ヨハネス,ヤコブス,マシューズ
(72)【発明者】
【氏名】チョン,デリック,ユン,チェク
(72)【発明者】
【氏名】チョードゥリー,ヤシン
【審査官】植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-332586(JP,A)
【文献】特開2011-108696(JP,A)
【文献】特表2011-510480(JP,A)
【文献】特開2013-214637(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
G02B 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
投影システムの収差マップを決定するための位相ステッピング測定システムの2次元回折格子であって、前記回折格子が貫通開口の正方形アレイを備えた基板を備え、前記回折格子は透過性であり、前記回折格子が自立型であり、前記回折格子が透過性支持層を有しない、2次元回折格子。
【請求項2】
前記基板が、
支持層と、
放射吸収層とを備え、
前記貫通開口が前記支持層及び前記放射吸収層の両方を貫通して延在する、請求項1に記載の2次元回折格子。
【請求項3】
前記2次元回折格子のジオメトリが、前記2次元回折格子が50%のデューティサイクルを有する1次元回折格子又は2次元チェッカーボード回折格子を備える第1のパターン領域とともに使用されると想定して、位相ステッピング信号の高調波への寄与数を削減する格子効率マップを生成するように配置される、請求項1に記載の2次元回折格子。
【請求項4】
前記2次元回折格子のジオメトリが、n又はmがゼロでない偶数の場合に(n,m)次回折次数の格子効率を抑える格子効率マップを生成するように配置される、及び/又は、
前記貫通開口が隣接する貫通開口の中心間の距離の半分の長さを有する正方形開口であり、前記正方形開口の辺が前記貫通開口の正方形アレイの軸に平行である、
請求項1に記載の2次元回折格子。
【請求項5】
前記2次元回折格子のジオメトリが、n±mが偶数の場合に(0,0)次回折次数以外の(n,m)次回折次数の格子効率を抑える格子効率マップを生成するように配置される、請求項1に記載の2次元回折格子。
【請求項6】
前記貫通開口が概ね八角形であり、前記貫通開口の正方形アレイの軸に対して45°に配向され、隣接する貫通開口の中心間の距離に一致する対角線寸法を有し、4つのコーナのそれぞれが隣接する貫通開口の各対間に前記基板の概ね矩形の接続部を形成するように先端が切り取られた正方形から形成される、請求項5に記載の2次元回折格子。
【請求項7】
隣接する貫通開口の各対間の前記基板の前記概ね矩形の接続部の幅が、前記隣接する貫通開口の中心間の距離の約10%である、請求項6に記載の2次元回折格子。
【請求項8】
前記2次元回折格子のジオメトリが、n±mが偶数の場合に(n,m)次回折次数である1つ以上の回折次数の格子効率を抑える格子効率マップを生成するように配置される、請求項1に記載の2次元回折格子。
【請求項9】
前記2次元回折格子のジオメトリが、(±2,0)及び(0,±2)回折次数を抑えるように配置される、請求項8に記載の2次元回折格子。
【請求項10】
前記正方形アレイの前記貫通開口が円形であり、前記円形開口の半径と前記隣接する開口の中心間の距離の比が約0.3である、請求項9に記載の2次元回折格子。
【請求項11】
前記2次元回折格子のジオメトリが、(±1,±1)回折次数を抑えるように配置される、請求項8に記載の2次元回折格子。
【請求項12】
前記正方形アレイの前記貫通開口が円形であり、前記円形開口の半径と前記隣接する開口の中心間の距離の比が約0.43である、請求項11に記載の2次元回折格子。
【請求項13】
投影システムの収差マップを決定するための位相ステッピング測定システムの2次元回折格子を設計する方法であって、前記方法が、
少なくとも1つのパラメータを有する前記2次元回折格子の一般的なジオメトリを選択すること、及び
位相ステッピング信号の高調波への寄与を制御するために前記2次元回折格子の格子効率マップを生成する前記少なくとも1つのパラメータの値を選択することを含み、
前記回折格子は透過性であり、前記回折格子が自立型であり、前記回折格子が透過性支持層を有しない、
方法。
【請求項14】
位相ステッピング信号の高調波への寄与を制御するために前記2次元回折格子の格子効率マップを生成する前記少なくとも1つのパラメータの値を選択することが、前記2次元回折格子が50%のデューティサイクルを有する1次元回折格子又は2次元チェッカーボード回折格子を備える第1のパターン領域とともに使用されると想定する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
選択される前記2次元回折格子の前記一般的なジオメトリが、前記2次元回折格子が貫通開口の正方形アレイを備えた基板を備えるように選ばれ、前記2次元回折格子が自立型である、及び/又は、
選択される前記2次元回折格子の前記一般的なジオメトリが、円形開口の正方形アレイであり、前記少なくとも1つのパラメータが前記円形開口の半径と隣接する開口の中心間の距離の比を含む、
請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記少なくとも1つのパラメータの値を選択するステップが、n±mが偶数の場合に(n,m)次回折次数である1つ以上の回折次数の格子効率を最小限に抑える前記少なくとも1つのパラメータの値を選択することを含み、前記少なくとも1つのパラメータの値を選択するステップが、(±2,0)及び(0,±2)回折次数の格子効率を最小限に抑える前記少なくとも1つのパラメータの値を選択することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記少なくとも1つのパラメータの値を選択するステップが、(±1,±1)回折次数の格子効率を最小限に抑える前記少なくとも1つのパラメータの値を選択することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
請求項13から17のいずれか一項に記載の方法に従って設計された2次元回折格子。
【請求項19】
投影システムの収差マップを決定するための測定システムであって、前記測定システムが、
パターニングデバイスと、
放射ビームを受け取り、シヤリング方向に分離されている複数の第1の回折ビームを形成するように配置された第1のパターン領域を備えた前記パターニングデバイスを放射で照明するように配置された照明システムと、
請求項1から12又は請求項18のいずれか一項に記載の2次元回折格子を備えた第2のパターン領域と、放射検出器とを備えたセンサ装置と、を備え、
前記投影システムが前記第1の回折ビームを前記センサ装置に投影するように構成され、前記第2のパターン領域が前記投影システムから前記第1の回折ビームを受け取り、前記第1の回折ビームのそれぞれから複数の第2の回折ビームを形成するように配置され、
前記パターニングデバイス及び前記センサ装置の少なくとも一方を前記シヤリング方向に移動させるように構成された位置決め装置と、
前記放射検出器の各部により受け取られた放射の強度が振動信号を形成するために前記シヤリング方向への移動の関数として変化するように、前記第1のパターニングデバイス及び前記センサ装置の少なくとも一方を前記シヤリング方向に移動させるために前記位置決め装置を制御し、
前記放射検出器から、前記放射検出器上の複数の位置における前記振動信号の高調波の位相を決定し、
前記放射検出器上の前記複数の位置における前記振動信号の高調波の位相から前記投影システムの前記収差マップを特徴付ける1セットの係数を決定する
ように構成されたコントローラと、を備えた測定システム。
【請求項20】
請求項19に記載の測定システムを備えたリソグラフィ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001] この出願は、2018年1月31日出願の欧州特許出願18154475.0の優先権を主張し、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
[0002] 本発明は、投影システムの収差マップを決定するための位相ステッピング測定システム用の2次元回折格子、及びこのような2次元回折格子を設計する方法に関する。具体的には、本発明はシヤリング位相ステッピング干渉測定システム用の2次元回折格子に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003] リソグラフィ装置は、所望のパターンを基板上に付与するように構築された機械である。リソグラフィ装置は、例えば集積回路(IC)の製造に用いることができる。リソグラフィ装置は、例えばパターニングデバイス(例えばマスク)にあるパターンを基板上に設けられた放射感応性材料(レジスト)層上へ投影することができる。
【0004】
[0004] 基板上にパターンを投影するために、リソグラフィ装置は電磁放射を使用することができる。この放射の波長は、その基板上に形成可能なフィーチャの最小サイズを決定する。4~20nmの範囲内、例えば6.7nm又は13.5nmの波長を有する極端紫外線(EUV)放射を使用するリソグラフィ装置は、例えば193nmの波長を有する放射を使用するリソグラフィ装置よりも小さいフィーチャを基板上に形成するのに使用することができる。
【0005】
[0005] パターニングデバイスによりパターン付与された放射は、投影システムを使用して基板上に合焦される。投影システムは、基板上に形成された像を所望の像(例えばパターニングデバイスの回折限界像)から逸脱させる光学収差をもたらす可能性がある。
【0006】
[0006] これらの収差をより良好に制御できるように、投影システムがもたらすこのような収差を正確に測定するための方法及び装置を提供することが望ましい場合がある。
【発明の概要】
【0007】
[0007] 本発明の第1の態様によれば、投影システムの収差マップを決定するための位相ステッピング測定システムの2次元回折格子であって、回折格子が貫通開口の正方形アレイを備えた基板を備え、回折格子が自立型である2次元回折格子が提供される。
【0008】
[0008] 貫通開口の正方形アレイを備えた基板が自立できるように、少なくとも一部の基板材料が各貫通開口及び隣接する貫通開口間に設けられることを理解されたい。
【0009】
[0009] 2次元回折格子は自立できるため、例えば透過性支持層を必要としない。したがって、本発明の第1の態様は、EUV放射を使用する投影システムの収差マップを決定するための位相ステッピング測定システムでの使用において特に有益である。なぜなら、そのような透過性支持層を使用すると、2次元回折格子により透過されるEUV放射の量が大幅に減ることになるためである。
【0010】
[00010] 基板は支持層と、放射吸収層とを備えることができ、貫通開口は支持層及び放射吸収層の両方を貫通して延在することができる。
【0011】
[00011] 支持層は、例えばSiNから形成することができる。例えば放射吸収層は、例えばクロム(Cr)、ニッケル(Ni)又はコバルト(Co)などの金属から形成することができる。
【0012】
[00012] 2次元回折格子のジオメトリは、2次元回折格子が50%のデューティサイクルを有する1次元回折格子を備える第1のパターン領域とともに使用されると想定して、位相ステッピング信号の高調波への閾値より大きい寄与数を削減する格子効率マップを生成するように配置することができる。
【0013】
[00013] 高調波は位相ステッピング信号の第1高調波であってよい。
【0014】
[00014] 2次元回折格子のジオメトリは、2次元回折格子が50%のデューティサイクルを有する2次元チェッカーボード回折格子を備える第1のパターン領域とともに使用されると想定して、位相ステッピング信号の高調波への閾値より大きい寄与数を削減する格子効率マップを生成するように配置することができる。
【0015】
[00015] 高調波は位相ステッピング信号の第1高調波であってよい。
【0016】
[00016] 投影システムの収差マップを決定するための測定システム(又は位相ステッピング横シヤリング干渉測定システム)は概して、投影システムの対物面に配置された第1の格子又はパターン領域と、投影システムの像面に配置された第2の格子又はパターン領域を備えたセンサ装置とを備える。第1の格子により生成された回折ビームは第1の回折ビームと呼ばれることがあり、第2の格子により生成された回折ビームは第2の回折ビームと呼ばれることがある。
【0017】
[00017] 第1及び第2のパターン領域のピッチは、(第1の態様によるものであり得る)第2のパターン領域のシヤリング方向のピッチが第1のパターン領域のシヤリング方向のピッチの整数倍となる、又は代替的に、第1のパターン領域のシヤリング方向のピッチが第2のパターン領域のシヤリング方向のピッチの整数倍となるべきように、投影システムにより適用される任意の縮小係数を考慮に入れてシヤリング方向にマッチングされる。
【0018】
[00018] 第1及び第2のパターン領域の少なくとも1つは、放射検出器の各部により受け取られた放射の強度が、振動信号(位相ステッピング信号としても知られている)を形成するためにシヤリング方向への移動の関数として変化するようにシヤリング方向に移動される。
【0019】
[00019] 例えば、このような振動位相ステッピング信号の第1高調波は、第1のパターン領域の次数が±1だけ異なる回折ビームから生じる(2次元回折格子の)空間的にコヒーレントな回折ビーム間の干渉から生じる寄与にのみ依存する。
【0020】
[00020] 2次元回折格子のジオメトリは、n又はmがゼロでない偶数の場合に(n,m)次回折次数の格子効率を抑える格子効率マップを生成するように配置することができる。
【0021】
[00021] このような格子ジオメトリは、第1のパターン領域であって、上記第1のパターン領域で定められたシヤリング方向及び非シヤリング方向が2次元格子の単位セルに対して45°で配置された第1のパターン領域とともに使用するのに適している。第1のパターン領域は、振動位相ステッピング信号の第1高調波への大きな寄与の数を制限するために、(2次元格子の擬似ピッチと呼ばれることがある)2次元回折格子の上記シヤリング方向のピッチの半分である(投影システムにより適用される任意の縮小係数を考慮した)ピッチを有する。
【0022】
[00022] 繰り返しになるが、50%のデューティサイクルを有する1次元回折格子を備えた第1のパターン領域を想定すると、振動位相ステッピング信号の第1高調波に寄与する第2の回折ビームの全ての対の干渉強度は、第1のパターン領域の±1次回折ビームの散乱効率によって重み付けされた2次元回折格子の散乱効率プロットの第2のコピーに第2のパターン領域の散乱効率プロットを重ね合わせることによって決定することができる。繰り返しになるが、このコピーは、2次元回折格子の(シヤリング方向の)2擬似回折次数(擬似回折次数は擬似ピッチを使用して定められる)に等しい第1の回折格子の1回折次数だけシヤリング方向にシフトされる。
【0023】
[00023] n又はmがゼロでない偶数の場合に(n,m)次回折次数がゼロである限り、振動位相ステッピング信号の第1高調波への4つの干渉寄与のみが存在する。
【0024】
[00024] 貫通開口は、隣接する貫通開口の中心間の距離の半分の長さを有する正方形開口であってよく、正方形開口の辺は貫通開口の正方形アレイの軸に平行である。
【0025】
[00025] この格子ジオメトリはギンガムパターンと呼ばれることがある。このようなジオメトリは、n又はmがゼロでない偶数の場合に(n,m)次回折次数の格子効率がゼロになる。このような2次元格子の単位セルが、2次元回折格子のシヤリング方向のピッチの半分である(投影システムにより適用される任意の縮小係数を考慮した)ピッチを有する第1のパターン領域により定められるシヤリング方向に対して45°を成して配置されるとき、振動位相ステッピング信号の第1高調波への4つの干渉寄与のみが存在する。
【0026】
[00026] 2次元回折格子のジオメトリは、n±mが偶数の場合に(0,0)次回折次数を除いた(n,m)次回折次数の格子効率を抑える格子効率マップを生成するように配置することができる。
【0027】
[00027] チェッカーボード格子を含む2次元回折格子は、n±mが偶数の場合に(n,m)次回折次数の格子効率がゼロである回折効率パターンを有する。このことは、50%のデューティサイクルを有する1次元回折格子を備える第1のパターン領域とともに使用される場合に、同じ干渉強度を有する、位相ステッピング信号の第1高調波への2つの寄与のみが存在する、特に有利な位相ステッピング測定システムをもたらす。
【0028】
[00028] 力学的及び熱的考察に起因して、2次元回折格子のための代替的な一般的なジオメトリを提供することが望ましい可能性があることを理解されたい。ただし、n±mが偶数の場合に1つ以上の(n,m)次回折次数の格子効率を最小限に抑える少なくとも1つのパラメータの値を選択することによって、チェッカーボード格子の場合にはゼロになる1つ以上の回折次数の格子効率が最小限に抑えられる。
【0029】
[00029] 貫通開口は、概ね八角形であり、貫通開口の正方形アレイの軸に対して45°に配向され、隣接する貫通開口の中心間の距離に一致する対角線寸法を有し、4つのコーナのそれぞれが隣接する貫通開口の各対間に基板の概ね矩形の接続部を形成するように先端が切り取られた正方形から形成することができる。
【0030】
[00030] これは、チェッカーボード格子と類似しているが、格子が自立できることを保証する接続部又はサイドバーが設けられた構成を提供する。
【0031】
[00031] 格子が自立できることを保証するために必要なこのような接続部の寸法は、基板の厚さに依存する可能性があることを理解されたい。
【0032】
[00032] 隣接する貫通開口の各対間の基板の概ね矩形の接続部の幅は、隣接する貫通開口の中心間の距離の約10%であってよい。
【0033】
[00033] 例えば、隣接する貫通開口の各対間の基板の概ね矩形の接続部の幅は、隣接する貫通開口の中心間の距離の5%~15%、例えば隣接する貫通開口の中心間の距離の8%~12%であってよい。
【0034】
[00034] 2次元回折格子のジオメトリは、n±mが偶数の場合に(n,m)次回折次数である1つ以上の回折次数の格子効率を抑える格子効率マップを生成するように配置することができる。
【0035】
[00035] 2次元回折格子のジオメトリは(±2,0)及び(0,±2)回折次数を抑えるように配置することができる。例えば、正方形アレイの貫通開口は円形であってよく、円形開口の半径と隣接する開口の中心間の距離の比は約0.3であってよい。
【0036】
[00036] 2次元回折格子のジオメトリは(±1,±1)回折次数を抑えるように配置することができる。例えば、正方形アレイの貫通開口は円形であってよく、円形開口の半径と隣接する開口の中心間の距離の比は約0.43であってよい。
【0037】
[00037] 本発明の第2の態様によれば、投影システムの収差マップを決定するための位相ステッピング測定システムの2次元回折格子を設計する方法であって、方法が、少なくとも1つのパラメータを有する2次元回折格子の一般的なジオメトリを選択すること、及び位相ステッピング信号の高調波への寄与を制御するために2次元回折格子の格子効率マップを生成する少なくとも1つのパラメータの値を選択することを含む方法が提供される。
【0038】
[00038] 本発明の第2の態様による方法は、位相ステッピング信号の高調波への寄与を制御するように2次元回折格子のジオメトリを変化させることができる。高調波は位相ステッピング信号の第1高調波であってよい。例えば所与の一般的なジオメトリの場合、一般に位相ステッピング信号の高調波(例えば第1高調波)への寄与数を削減することが望ましい場合がある。付加的又は代替的に、位相ステッピング信号の高調波(第1高調波)への一定の寄与を向上させる、及び/又は位相ステッピング信号の第1高調波への一定の寄与を抑制することが望ましい場合がある。
【0039】
[00039] 投影システムの収差マップを決定するための測定システムは概して、投影システムの対物面に配置された第1の格子又はパターン領域と、投影システムの像面に配置された第2の格子又はパターン領域を備えたセンサ装置とを備えることを理解されたい。第1の格子により生成された回折ビームは第1の回折ビームと呼ばれることがあり、シヤリング方向に角度を成して分離されてよく、第2の格子により生成された回折ビームは第2の回折ビームと呼ばれることがある。
【0040】
[00040] 第1及び第2のパターン領域のピッチは、(第2の態様による方法を用いて設計され得る)第2のパターン領域のシヤリング方向のピッチが第1のパターン領域のシヤリング方向のピッチの整数倍となる、又は代替的に、第1のパターン領域のシヤリング方向のピッチが第2のパターン領域のシヤリング方向のピッチの整数倍となるべきように、投影システムにより適用される任意の縮小係数を考慮に入れてマッチングされる。
【0041】
[00041] 第1及び第2のパターン領域の少なくとも1つは、放射検出器の各部により受け取られた放射の強度が、振動信号(位相ステッピング信号としても知られている)を形成するためにシヤリング方向への移動の関数として変化するようにシヤリング方向に移動される。
【0042】
[00042] 例えば、このような振動位相ステッピング信号の第1高調波は、第1のパターン領域の次数が±1だけ異なる回折ビームから生じる(2次元回折格子の)空間的にコヒーレントな回折ビーム間の干渉から生じる寄与にのみ依存する。したがって、第2の態様による方法は、一般に第1のパターン領域のジオメトリを考慮に入れることを理解されたい。
【0043】
[00043] 位相ステッピング信号の高調波への寄与を制御するために2次元回折格子の格子効率マップを生成する少なくとも1つのパラメータの値を選択することは、2次元回折格子が50%のデューティサイクルを有する1次元回折格子を備える第1のパターン領域とともに使用されると想定することができる。
【0044】
[00044] このような第1のパターン領域を使用すると、偶数の回折次数(0次回折次数を除く)の効率はゼロである。したがって、次数が±1だけ異なる(したがって、このような振動位相ステッピング信号の第1高調波に寄与する)2対の第1の回折ビームのみが±1次ビームのいずれかを伴う0次ビームである。さらに、第1のパターン領域のこのジオメトリを用いると、散乱効率は対称であり、±1次回折ビームの効率がどちらも同じである。したがって、振動位相ステッピング信号の第1高調波に寄与する第2の回折ビームの全ての対の干渉強度γは以下のように決定することができる。第1のパターン領域の±1次回折ビームの散乱効率により重み付けされた、第2のパターン領域の散乱効率プロットの第2のコピーは、第2のパターン領域の散乱効率プロットが重ね合わせられるが(第1の回折格子の)1回折次数だけシヤリング方向にシフトされる。そして、これらの2つの重ね合わせられた散乱効率プロットの散乱効率の積が決定される。
【0045】
[00045] 本発明の第2の態様による方法は、これらの干渉強度を制御するために2次元回折格子の格子効率マップを生成する少なくとも1つのパラメータの値を選択することを含むことができる。例えば、少なくとも1つのパラメータの値は、閾値より大きい干渉強度の数を削減する、一定の干渉強度を高める(すなわち増大させる)、及び/又は一定の干渉強度を抑える(すなわち減少させる)ように選択することができる。
【0046】
[00046] 代替的に、位相ステッピング信号の高調波への寄与を制御するために2次元回折格子の格子効率マップを生成する少なくとも1つのパラメータの値を選択することは、2次元回折格子が50%のデューティサイクルを有する2次元チェッカーボード回折格子を備える第1のパターン領域とともに使用されると想定することができる。
【0047】
[00047] 2次元回折格子の一般的なジオメトリを選択することは、力学的及び熱的考察を考慮に入れることができる。
【0048】
[00048] 選択される2次元回折格子の一般的なジオメトリは、2次元回折格子が貫通開口の正方形アレイを備えた基板を備えるように選ぶことができ、2次元回折格子は自立型である。
【0049】
[00049] 2次元回折格子は自立型であるため、例えば透過性支持層を必要としない。このような構成は、EUV放射を使用する投影システムの収差マップを決定するための位相ステッピング測定システムでの使用において有益な可能性がある。なぜなら、そのような透過性支持層を使用すると、2次元回折格子により透過されるEUV放射の量が減ることになるためである。
【0050】
[00050] 貫通開口の正方形アレイを備えた基板が自立できるように、少なくとも一部の基板材料は各貫通開口間及び隣接する貫通開口間に設けられることを理解されたい。
【0051】
[00051] また、選択される2次元回折格子の一般的なジオメトリは、各貫通開口及び隣接する貫通開口の間に設けられる基板材料の量が、使用中に2次元回折格子に損傷を与えることなく熱負荷の排出を期待できるほど十分に多くなるように選ぶことができる。
【0052】
[00052] 選択される2次元回折格子の一般的なジオメトリは円形開口の正方形アレイであってよく、少なくとも1つのパラメータは、円形開口の半径と隣接する開口の中心間の距離の比である。
【0053】
[00053] 少なくとも1つのパラメータの値を選択するステップは、n±mが偶数の場合に(n,m)次回折次数である1つ以上の回折次数の格子効率を最小限に抑える少なくとも1つのパラメータの値を選択することを含むことができる。
【0054】
[00054] チェッカーボード格子を含む2次元回折格子は、n±mが偶数の場合に(n,m)次回折次数の格子効率がゼロである回折効率パターンを有する。このことは、50%のデューティサイクルを有する1次元回折格子を備える第1のパターン領域とともに使用される場合に、同じ干渉強度を有する、位相ステッピング信号の第1高調波への2つの寄与のみが存在する、特に有利な位相ステッピング測定システムをもたらす。
【0055】
[00055] 力学的及び熱的考察に起因して、2次元回折格子の代替的な一般的なジオメトリを提供することが望ましい可能性があることを理解されたい。ただし、n±mが偶数の場合に1つ以上の(n,m)次回折次数の格子効率を最小限に抑える少なくとも1つのパラメータの値を選択することによって、チェッカーボード格子の場合にゼロになる1つ以上の回折次数の格子効率が最小限に抑えられる。
【0056】
[00056] 少なくとも1つのパラメータの値を選択するステップは、(±2,0)及び(0,±2)回折次数の格子効率を最小限に抑える少なくとも1つのパラメータの値を選択することを含むことができる。例えば、少なくとも1つのパラメータの値を選択するステップは、円形開口の半径と隣接する開口の中心間の距離の比が約0.3の値を選択することを含むことができる。
【0057】
[00057] 少なくとも1つのパラメータの値を選択するステップは、(±1,±1)回折次数の格子効率を最小限に抑える少なくとも1つのパラメータの値を選択することを含むことができる。例えば、少なくとも1つのパラメータの値を選択するステップは、円形開口の半径と隣接する開口の中心間の距離の比が約0.43の値を選択することを含むことができる。
【0058】
[00058] 本発明の第3の態様によれば、本発明の第2の態様による方法に従って設計された2次元回折格子が提供される。
【0059】
[00059] 本発明の第4の態様によれば、投影システムの収差マップを決定するための測定システムであって、測定システムが、パターニングデバイスと、放射ビームを受け取り、シヤリング方向に分離された複数の第1の回折ビームを形成するように構成された第1のパターン領域を備えたパターニングデバイスを放射で照明するように構成された照明システムと、本発明の第1の態様又は本発明の第3の態様による2次元回折格子を備えた第2のパターン領域と、放射検出器とを備えたセンサ装置と、を備え、投影システムが第1の回折ビームをセンサ装置に投影するように構成され、第2のパターン領域が投影システムから第1の回折ビームを受け取り、第1の回折ビームのそれぞれから複数の第2の回折ビームを形成するように配置され、パターニングデバイス及びセンサ装置の少なくとも一方をシヤリング方向に移動させるように構成された位置決め装置と、放射検出器の各部により受け取られた放射の強度が、振動信号を形成するためにシヤリング方向への移動の関数として変化するように、第1のパターニングデバイス及びセンサ装置の少なくとも一方をシヤリング方向に移動させるために位置決め装置を制御し、放射検出器から、放射検出器上の複数の位置における振動信号の高調波の位相を決定し、放射検出器上の複数の位置における振動信号の高調波の位相から投影システムの収差マップを特徴付ける1セットの係数を決定するように構成されたコントローラと、を備えた測定システムが提供される。
【0060】
[00060] 本発明の第4の態様による測定システムは、EUV放射を使用する投影システムに特に有利である。なぜなら、2次元回折格子は自立型である(したがって、EUV放射を大幅に減衰させることになる透過性支持層を必要としない)、及び/又は位相ステッピング信号の高調波(例えば第1高調波)への寄与をより上手く制御するためである。
【0061】
[00061] したがって、本発明の第4の態様による測定システムは、位相ステッピング信号の第1高調波への寄与をより上手く制御し得るEUV投影システムの収差を測定するための測定システムを提供することができる。そして、このことは投影システムの収差マップを特徴付ける決定された係数セットの誤差を減らすことができる。付加的又は代替的に、放射検出器上の複数の位置における振動信号の第1高調波の位相から投影システムの収差マップを特徴付ける1セットの係数を決定することを単純化することができる。
【0062】
[00062] 本発明の第5の態様によれば、本発明の第4の態様の測定システムを備えたリソグラフィ装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0063】
[00063] 本発明の実施形態を、単なる例として添付の概略図を参照して以下に説明する。
【0064】
図1】リソグラフィ装置及び放射源を備えたリソグラフィシステムを示す。
図2】本発明の実施形態に係る測定システムの概略図である。
図3A-3B】図2の測定システムの一部を構成し得るパターニングデバイス及びセンサ装置の概略図である。
図4】本発明の実施形態に係る、放射を受け、複数の第1の回折ビームを形成するように配置された第1のパターン領域及び第2のパターン領域を備えた測定システムの概略図である。
図5A-5C】第1のパターン領域により形成された異なる第1の回折ビームにより生成された、図4に示す測定システムの第2のパターン領域により形成された異なる第2の回折ビームのセットをそれぞれ示す。
図6A】50%のデューティサイクルを有し、図4に示す測定システムの第1のパターン領域を表し得る1次元回折格子の散乱効率を示す。
図6B】50%のデューティサイクルを有し、図4に示す測定システムの第2のパターン領域を表し得るチェッカーボードの形をとる2次元回折格子の散乱効率を示す。
図6C図6Aに示す第1のパターン領域及び図6Bに示す第2のパターン領域を採用した際の、図4に示す測定システムの干渉強度マップを示す。示されている干渉強度のそれぞれは、振動位相ステッピング信号の第1高調波に寄与し、投影システムPSの開口数を表す円と放射検出器において異なる重なりを有する第2の干渉ビームを表す。
図7A-7B-7C】図4に示す3つの異なる第1の回折ビームで満たされる、図4に示す測定システムの投影システムの開口数の一部分を示す。
図8A-8C】測定システムの投影システムの開口数に対応し、図7Bで表された第1の回折ビームから生じる3つの第2の回折ビームで満たされる、図4に示す測定システムの放射検出器の一部分を示す。
図9A-9C】測定システムの投影システムの開口数に対応し、図7Aで表された第1の回折ビームから生じる3つの第2の回折ビームで満たされる、図4に示す測定システムの放射検出器の一部分を示す。
図10A-10C】測定システムの投影システムの開口数に対応し、図7Cで表された第1の回折ビームから生じる3つの第2の回折ビームで満たされる、図4に示す測定システムの放射検出器の一部分を示す。
図11A】測定システムの投影システムの開口数に対応し、図8B及び図9Aに示す第2の回折ビームの重なり及び図8A及び図10Bに示す第2の回折ビームの重なりを表す、図4に示す測定システムの放射検出器の一部分を示す。
図11B】測定システムの投影システムの開口数に対応し、図8B及び図10Cに示す第2の回折ビームの重なり及び図8C及び図9Bに示す第2の回折ビームの重なりを表す、図4に示す測定システムの放射検出器の一部分を示す。
図12】円形ピンホールのアレイを備え、50%の(エリア別)デューティサイクルを有する格子の単位セルを示す。
図13A】50%のデューティサイクルを有し、図4に示す測定システムの第1のパターン領域を表し得る1次元回折格子の散乱効率を示す。
図13B図12の単位セルを備え、図4に示す測定システムの第2のパターン領域を表し得る2次元回折の散乱効率を示す。
図13C図13Aに示す第1のパターン領域及び図13Bに示す第2のパターン領域を採用した際の、図4に示す測定システムの干渉強度マップを示す。示されている干渉強度のそれぞれは、振動位相ステッピング信号の第1高調波に寄与し、投影システムの開口数を表す円と放射検出器において異なる重なりを有する第2の干渉ビームを表す。
図14】本発明に係る自立格子の第1の実施形態の一部分を示す。
図15A】角度を成して離間した回折ビームの正方形アレイである、図14に示す2次元回折格子の回折パターンの回折効率を示す。この正方形アレイの軸は図14に示す2次元回折格子の単位セルの辺と平行である。
図15B図15Bの軸が図14に示す2次元回折格子の単位セルに対して45°を成して配設されるように図15Aに対して45°回転させた、図14に示す2次元回折格子の回折パターンの回折効率を示す。
図16A】各回折次数が円及び四角形で表される、図14に示す2次元回折格子の回折次数の概略図である。
図16B図16Aに示すのと同じであるが45°回転させた、図14に示す2次元回折格子の回折パターンの概略図を示す。
図17A】50%のデューティサイクルを有し、図4に示す測定システムの第1のパターン領域を表し得る1次元回折格子の散乱効率を示す。
図17B図14に示す単位を備え、図4に示す測定システムの第2のパターン領域を表し得る2次元回折の散乱効率を示す。
図17C図17Aに示す第1のパターン領域及び図17Bに示す第2のパターン領域を採用した際の、図4に示す測定システムの干渉強度マップを示す。示されている干渉強度のそれぞれは、振動位相ステッピング信号の第1高調波に寄与し、投影システムの開口数を表す円と放射検出器において異なる重なりを有する第2の干渉ビームを表す。
図18】本発明に係る自立格子の第2の実施形態の一部分を示す。
図19A図18に示す単位を備え、図4に示す測定システムの第2のパターン領域を表し得る2次元回折の散乱効率を示す。
図19B図6Aに示す第1のパターン領域及び図19Aに示す第2のパターン領域を採用した際の、図4に示す測定システムの干渉強度マップを示す。示されている干渉強度のそれぞれは、振動位相ステッピング信号の第1高調波に寄与し、投影システムの開口数を表す円と放射検出器において異なる重なりを有する第2の干渉ビームを表す。
図20A図4に示す測定システムの第2のパターン領域を表し得る自立2次元回折の第3の実施形態の散乱効率を示す。
図20B図6Aに示す第1のパターン領域及び図20Aに示す第2のパターン領域を採用した際の、図4に示す測定システムの干渉強度マップを示す。示されている干渉強度のそれぞれは、振動位相ステッピング信号の第1高調波に寄与し、投影システムの開口数を表す円と放射検出器において異なる重なりを有する第2の干渉ビームを表す。
図21A図4に示す測定システムの第2のパターン領域を表し得る自立2次元回折の第4の実施形態の散乱効率を示す。
図21B図6Aに示す第1のパターン領域及び図21Aに示す第2のパターン領域を採用した際の、図4に示す測定システムの干渉強度マップを示す。示されている干渉強度のそれぞれは、振動位相ステッピング信号の第1高調波に寄与し、投影システムの開口数を表す円と放射検出器において異なる重なりを有する第2の干渉ビームを表す。
【発明を実施するための形態】
【0065】
[00064] 図1は、放射源SO及びリソグラフィ装置LAを備えたリソグラフィシステムを示している。放射源SOは、EUV放射ビームBを生成し、このEUV放射ビームBをリソグラフィ装置LAに供給するように構成される。リソグラフィ装置LAは、照明システムILと、パターニングデバイスMA(例えばマスク)を支持するように構成された支持構造MTと、投影システムPSと、基板Wを支持するように構成された基板テーブルWTとを備える。
【0066】
[00065] 照明システムILは、EUV放射ビームBがパターニングデバイスMAに入射する前にEUV放射ビームBを調節するように構成される。そのため、照明システムILは、ファセットフィールドミラーデバイス10及びファセット瞳ミラーデバイス11を備えることができる。ファセットフィールドミラーデバイス10及びファセット瞳ミラーデバイス11は共に、EUV放射ビームBに所望の断面形状と所望の強度分布とを与える。照明システムILは、ファセットフィールドミラーデバイス10及びファセット瞳ミラーデバイス11に加えて又はこれらの代わりに、他のミラー又はデバイスを備えることができる。
【0067】
[00066] このように調節された後、EUV放射ビームBはパターニングデバイスMAと相互作用する。この相互作用の結果、パターン付きEUV放射ビームB’が生成される。投影システムPSは、パターン付きEUV放射ビームB’を基板Wに投影するように構成される。この目的のため、投影システムPSは、基板テーブルWTにより保持された基板Wにパターン付きEUV放射ビームB’を投影するように構成された複数のミラー13、14を備えることができる。投影システムPSは、パターン付きEUV放射ビームB’に縮小係数を適用し、これによってパターニングデバイスMAにおける対応するフィーチャよりも小さいフィーチャの像を形成することができる。例えば、4又は8の縮小係数を適用することができる。投影システムPSは、図1では2つのミラー13、14のみを有するものとして示されているが、投影システムPSは様々な数のミラー(例えば6個又は8個のミラー)を備えることができる。
【0068】
[00067] 基板Wは、前もって形成されたパターンを含むことができる。このような場合、リソグラフィ装置LAは、パターン付きEUV放射ビームB’により形成された像を、基板W上に前もって形成されたパターンと位置合わせする。
【0069】
[00068] 相対真空、すなわち大気圧を大きく下回る圧力の少量のガス(例えば水素)を、放射源SO、照明システムIL、及び/又は投影システムPS内に供給することができる。
【0070】
[00069] 放射源SOは、レーザ生成プラズマ(LPP)源、放電生成プラズマ(DPP)源、自由電子レーザ(FEL)又はEUV放射を生成できる他の任意の放射源であってよい。
【0071】
[00070] 一般に、投影システムPSは、基板W上に結像されるパターンに影響を及ぼす可能性がある、非一様であり得る光学伝達関数を有する。非偏光放射については、そのような影響は、その瞳面における位置の関数として投影システムPSから出射する放射の透過(アポダイゼーション)及び相対位相(収差)を表す2つのスカラマップによってかなり上手く記述することができる。透過マップ及び相対位相マップと呼ばれることがあるこれらのスカラマップは、基底関数の完全なセットの線形結合として表現することができる。特に便利なセットがゼルニケ多項式であり、これは、単位円上に定められた直交多項式のセットを形成する。各スカラマップの決定は、そのような展開の係数を決定することを含むことができる。ゼルニケ多項式は単位円上で直交しているので、ゼルニケ係数は、測定されたスカラマップの内積を各ゼルニケ多項式で順に計算し、これをそのゼルニケ多項式のノルムの二乗で割ることによって、測定されたスカラマップから求めることができる。以下では、特に指示のない限り、ゼルニケ係数についての言及はいずれも相対位相マップ(本明細書では収差マップとも呼ばれる)のゼルニケ係数を意味するものと理解される。代替的な実施形態では、基底関数の他のセットを使用できることを理解されたい。例えば一部の実施形態は、例えば遮られた開口システムのためのTatianゼルニケ多項式を使用することができる。
【0072】
[00071] 波面収差マップは、(瞳面内の位置、あるいは放射が投影システムPSの像面に接近する角度の関数として)球面波面から投影システムPSの像面内の点に接近する光の波面の歪みを表すことができる。考察したように、この波面収差マップW(x,y)はゼルニケ多項式の線形結合として表現することができる。
【数1】
式中、x及びyは瞳面上の座標であり、Z(x,y)はn次ゼルニケ多項式であり、cは係数である。以下では、ゼルニケ多項式及び係数は、一般的にNollインデックスと呼ばれるインデックスで標識されることを理解されたい。したがって、Z(x,y)はnというNollインデックスを有するゼルニケ多項式であり、CはnというNollインデックスを有する係数である。ここで波面収差マップは、このような展開においてゼルニケ係数と呼ばれることがある係数Cのセットによって特徴付けることができる。
【0073】
[00072] 有限個のゼルニケ次数のみが考慮されることを理解されたい。位相マップの異なるゼルニケ係数は、投影システムPSに起因する様々な形態の収差についての情報を提供することができる。1というNollインデックスを有するゼルニケ係数は第1のゼルニケ係数と呼ばれ、2というNollインデックスを有するゼルニケ係数は第2のゼルニケ係数と呼ばれることがある、といった具合である。
【0074】
[00073] 第1のゼルニケ係数は、測定される波面の平均値(ピストンと呼ばれることがある)に関係する。第1のゼルニケ係数は投影システムPSの性能とは無関係な場合があり、したがって本明細書に記載の方法を用いて決定されない場合がある。第2のゼルニケ係数は、測定される波面のx方向の傾斜に関係する。波面のx方向の傾斜は、x方向の配置に等しい。第3のゼルニケ係数は、測定される波面のy方向の傾斜に関係する。波面のy方向の傾斜は、y方向の配置に等しい。第4のゼルニケ係数は、測定される波面のデフォーカスに関係する。第4のゼルニケ係数は、z方向の配置に等しい。より高次のゼルニケ係数は、投影システムに起因する他の形態の収差(例えば非点収差、コマ収差、球面収差及び他の効果)に関係する。
【0075】
[00074] 本明細書の全体を通じて、「収差」という用語は、完全な球状波面からの波面のずれのあらゆる形態を含むことが意図されるべきである。つまり、「収差」という用語は、像の配置(例えば第2、第3及び第4のゼルニケ係数)、及び/又は5以上のNollインデックスを有するゼルニケ係数に関係するものなどのより高次の収差に関係する可能性がある。さらに、投影システムの収差マップについての言及はいずれも、像配置に起因するものを含む、完全な球状波面からの波面のずれのあらゆる形態を含むことができる。
【0076】
[00075] 透過マップ及び相対位相マップは、フィールド及びシステムに依存する。すなわち、一般に各投影システムPSは、各フィールドポイントで(すなわち、その像面内の各空間位置で)異なるゼルニケ展開を有することになる。
【0077】
[00076] 以下でさらに詳細に説明されるように、投影システムPSの瞳面内の相対位相は、投影システムPSの対物面(すなわち、パターニングデバイスMAの面)からの放射を投影システムPSを介して投影し、シヤリング干渉計を用いて波面(すなわち、同位相のポイントの軌跡)を測定することによって決定することができる。シヤリング干渉計は、投影システムの像面(すなわち、基板テーブルWT)に、例えば2次元格子などの回折格子を備えると共に、投影システムPSの瞳面と共役な面に干渉パターンを検出するように配置された検出器を備えることができる。
【0078】
[00077] 投影システムPSは複数の光学素子(ミラー13、14を含む)を備える。すでに説明したように、投影システムPSは、図1の2つのミラー13、14のみを有するものとして示されているが、投影システムPSは様々な数のミラー(例えば6個又は8個のミラー)を備えることができる。リソグラフィ装置LAはさらに、収差(フィールド全体の瞳面にわたる任意の種類の位相変化)を補正するために、これらの光学素子を調整するための調整手段PAを備える。これを達成するために、調整手段PAは、投影システムPS内で1つ以上の異なる方法で光学素子を操作するように動作可能であってよい。投影システムは、その光軸がz方向に延びる座標系を有することができる(このz軸の方向は、例えば各ミラー又は光学素子で、投影システムを通る光路に沿って変化することを理解されたい)。調整手段PAは、1つ以上の光学素子の移動、1つ以上の光学素子の傾斜、及び/又は1つ以上の光学素子の変形の任意の組み合わせを行うように動作可能であってよい。光学素子の移動は、任意の方向(x、y、z又はそれらの組み合わせ)であってよい。光学素子の傾斜は、典型的には、x又はy方向の軸の周りを回転することによって光軸に対して垂直な面外であるが、非回転対称の光学素子に対してはz軸の周りの回転を用いることができる。光学素子の変形は、例えばアクチュエータを用いて光学素子の側面に力を働かせることによって、及び/又は加熱素子を用いて光学素子の選択された領域を加熱することによって実行することができる。一般に、アポダイゼーション(瞳面にわたる透過率変化)を補正するように投影システムPSを調整できない可能性がある。投影システムPSの透過マップは、リソグラフィ装置LAのマスクMAを設計する際に使用することができる。
【0079】
[00078] 一部の実施形態では、調整手段PAは、支持構造MT及び/又は基板テーブルWTを移動させるように動作可能であってよい。調整手段PAは、支持構造MT及び/又は基板テーブルWTを(x、y、z方向のいずれか又はこれらを組み合わせた方向に)移動させる及び/又は(x又はy方向の軸の周りに回転させることによって)傾斜させるように動作可能であってよい。
【0080】
[00079] リソグラフィ装置の一部を構成する投影システムPSは、定期的に較正プロセスを受けることができる。例えば、リソグラフィ装置が工場で製造される場合、投影システムPSを構成する光学素子(例えばミラー)は、初期較正プロセスを実行することによってセットアップすることができる。リソグラフィ装置が使用されることになる場所にリソグラフィ装置を設置した後、投影システムPSをもう一度較正することができる。投影システムPSのさらなる較正は、一定の間隔で実行することができる。例えば通常の使用では、投影システムPSは数か月ごと(例えば、3か月ごと)に較正することができる。
【0081】
[00080] 投影システムPSを較正することは、投影システムPSに放射を通過させること、及び結果として生じる投影放射を測定することを含むことができる。投影放射の測定結果を使用して、投影システムPSに起因する投影放射における収差を測定することができる。投影システムPSに起因する収差は、測定システムを使用して測定することができる。測定された収差に応答して、投影システムPSに起因する収差を補正するために投影システムPSを構成する光学素子を調整することができる。
【0082】
[00081] 図2は、投影システムPSに起因する収差を測定するのに使用され得る測定システム10の概略図である。測定システム10は、照明システムIL、測定パターニングデバイスMA’、センサ装置21及びコントローラCNを備える。測定システム10はリソグラフィ装置の一部を構成することができる。例えば、図2に示される照明システムIL及び投影システムPSは、図1に示されるリソグラフィ装置の照明システムIL及び投影システムPSであってよい。説明を容易にするために、図2にはリソグラフィ装置の追加のコンポーネントは示されていない。
【0083】
[00082] 測定パターニングデバイスMA’は、照明システムILから放射を受け取るように配置される。センサ装置21は、投影システムPSから放射を受け取るように配置される。リソグラフィ装置の通常使用中、図2に示される測定パターニングデバイスMA’及びセンサ装置21は、図2に示される位置とは異なる位置に位置する場合がある。例えば、リソグラフィ装置の通常使用中、基板Wに転写されることになるパターンを形成するように構成されるパターニングデバイスMAは、照明システムILから放射を受け取るように位置決めすることができ、基板Wは投影システムPSから放射を受け取るように(例えば、図1に示されるように)位置決めすることができる。測定パターニングデバイスMA’及びセンサ装置21は、投影システムPSに起因する収差を測定するために、図2に示される位置に移動することができる。測定パターニングデバイスMA’は、図1に示される支持構造などの支持構造MTによって支持することができる。センサ装置21は、図1に示される基板テーブルWTなどの基板テーブルによって支持することができる。代替的に、センサ装置21は、基板テーブルWTとは別個の可能性がある測定テーブル(図示せず)によって支持することができる。
【0084】
[00083] 測定パターニングデバイスMA’及びセンサ装置21は、図3A及び図3Bにより詳細に示されている。デカルト座標が、図2図3A及び図3Bにおいて一貫して使用される。図3Aはx-y面における測定パターニングデバイスMA’の概略図であり、図3Bはx-y面におけるセンサ装置21の概略図である。
【0085】
[00084] 測定パターニングデバイスMA’は複数のパターン領域15a~15cを備える。図2及び図3Aに示される実施形態では、測定パターニングデバイスMA’は反射パターニングデバイスMA’である。パターン領域15a~15cはそれぞれ反射回折格子を備える。測定パターニングデバイスMA’のパターン領域15a~15cに入射する放射は少なくとも部分的に散乱され、投影システムPSによって受け取られる。これに対して、測定パターニングデバイスMA’の残りの部分に入射する放射は、投影システムPSに向けて反射又は散乱されない(例えば、測定パターニングデバイスMA’によって吸収される可能性がある)。
【0086】
[00085] 照明システムILは放射で測定パターニングデバイスMA’を照明する。図2には示されていないが、照明システムILは、放射源SOから放射を受け取り、測定パターニングデバイスMA’を照明するために放射を調節することができる。例えば照明システムILは、所望の空間及び角度分布を有する放射を提供するために放射を調節することができる。図2に示された実施形態において、照明システムILは別々の測定ビーム17a~17cを形成するように構成される。各測定ビーム17a~17cは、測定パターニングデバイスMA’のそれぞれのパターン領域15a~15cを照明する。
【0087】
[00086] 投影システムPLに起因する収差の測定を実行するために、別々の測定ビーム17a~17cで測定パターニングデバイスMA’を照明するために照明システムILのモードを変更することができる。例えば、リソグラフィ装置の通常使用中、照明システムILは、放射のスリットでパターニングデバイスMAを照明するように構成することができる。しかしながら、投影システムPLに起因する収差の測定を実行するために、照明システムILが別々の測定ビーム17a~17cを形成するように構成されるように照明システムILのモードを変更することができる。一部の実施形態では、異なるパターン領域15a~15cを異なる時点に照明することができる。例えば、パターン領域15a~15cの第1のサブセットは測定ビーム17a~17cの第1のサブセットを形成するように第1の時点に照明することができ、パターン領域15a~15cの第2のサブセットは測定ビーム17a~17cの第2のサブセットを形成するように第2の時点に照明することができる。
【0088】
[00087] 他の実施形態では投影システムPLに起因する収差の測定を実行するために、照明システムILのモードを変更しないことができる。例えば、照明システムILは、(例えば、基板の露光中に使用される照明エリアと実質的に対応する)放射のスリットで測定パターニングデバイスMA’を照明するように構成することができる。このとき、パターン領域15a~15cのみが投影システムPSに向けて放射を反射又は散乱させるため、別々の測定ビーム17a~17cは測定パターニングデバイスMA’によって形成することができる。
【0089】
[00088] 図において、デカルト座標系は投影システムPSを介して保存されるように示されている。しかしながら、一部の実施形態では、投影システムPSの特性は座標系の変換をもたらす可能性がある。例えば、投影システムPSは、測定パターニングデバイスMA’に関して拡大、回転、及び/又はミラーリングされる測定パターニングデバイスMA’の像を形成することができる。一部の実施形態では、投影システムPSは、測定パターニングデバイスMA’の像をz軸を軸としておよそ180°だけ回転させることができる。このような実施形態では、図2に示される第1の測定ビーム17a及び第3の測定ビーム17cの相対的位置をスワップすることができる。他の実施形態では、像はx-y平面内に存在し得る軸ついてミラーリングすることができる。例えば像は、x軸について又はy軸についてミラーリングすることができる。
【0090】
[00089] 投影システムPSが測定パターニングデバイスMA’の像を回転させる、及び/又は投影システムPSによって像をミラーリングする実施形態では、投影システムは座標系を変換するものと考えられる。すなわち、本明細書で言及される座標系は、投影システムPSにより投影される像に対して定められ、像の任意の回転及び/又はミラーリングは、座標系の対応する回転及び/又はミラーリングを生じさせる。説明を容易にするために、座標系は図において投影システムPSによって保存されるものとして示される。しかしながら、一部の実施形態では、座標系は投影システムPSによって変換することができる。
【0091】
[00090] パターン領域15a~15cは測定ビーム17a~17cを修正する。具体的には、パターン領域15a~15cは測定ビーム17a~17cの空間変調を生じさせ、測定ビーム17a~17cに回折を生じさせる。図3Bに示される実施形態では、パターン領域15a~15cはそれぞれ2つの別個の部分を含む。例えば、第1のパターン領域15aは第1の部分15a’及び第2の部分15a’’を含む。第1の部分15a’はu方向に平行に整列された回折格子を含み、第2の部分15a’’はv方向に平行に整列された回折格子を含む。u方向及びv方向は図3Aに示されている。u方向及びv方向は共に、x方向及びy方向の両方に対しておよそ45°で整列され、互いに垂直に整列される。図3Aに示される第2のパターン領域15b及び第3のパターン領域15cは、第1のパターン領域15aと同一であり、それぞれその回折格子が互いに垂直に整列される第1及び第2の部分を含む。
【0092】
[00091] パターン領域15a~15cの第1及び第2の部分は、異なる時点に測定ビーム17a~17cで照明することができる。例えば、パターン領域15a~15cのそれぞれの第1の部分は、第1の時点に測定ビーム17a~17cによって照明することができる。第2の時点に、パターン領域15a~15cのそれぞれの第2の部分は測定ビーム17a~17cによって照明することができる。前述のように、一部の実施形態では異なるパターン領域15a~15cは異なる時点に照明することができる。例えば、パターン領域15a~15cの第1のサブセットの第1の部分は第1の時点に照明することができ、パターン領域15a~15cの第2のサブセットの第1の部分は第2の時点に照明することができる。パターン領域の第1及び第2のサブセットの第2の部分は、同時又は異なる時点に照明することができる。一般に、パターン領域15a~15cの異なる部分を照明する任意のスケジュールを使用することができる。
【0093】
[00092] 修正された測定ビーム17a~17cは投影システムPSによって受け取られる。投影システムPSは、センサ装置21上にパターン領域15a~15cの像を形成する。センサ装置21は、複数の回折格子19a~19c及び放射検出器23を備える。回折格子19a~19cは、各回折格子19a~19cが、投影システムPLから出力されるそれぞれの修正された測定ビーム17a~17cを受け取るように配置される。回折格子19a~19cに入射する修正された測定ビーム17a~17cは、回折格子19a~19cによってさらに修正される。回折格子19a~19cで透過される修正された測定ビームは放射検出器23に入射する。
【0094】
[00093] 放射検出器23は、放射検出器23に入射する放射の空間強度プロファイルを検出するように構成される。放射検出器23は、例えば個別の検出器要素又はセンシング素子のアレイを備えることができる。例えば、放射検出器23は、例えばCMOS(相補型金属酸化膜半導体)センサアレイなどのアクティブピクセルセンサを備えることができる。代替的に、放射検出器23はCCD(電荷結合素子)センサアレイを備えることができる。回折格子19a~19cと、修正された測定ビーム17a~17cが受け取られる放射センサ23の部分は、検出器領域25a~25cを構成する。例えば、第1の回折格子19a及び第1の測定ビーム17aが受け取られる放射センサ23の第1の部分は共に、第1の検出器領域25aを構成する。所与の測定ビーム17a~17cの測定は、(図示されるように)それぞれの検出器領域25a~25cで行うことができる。前述のように、一部の実施形態では修正された測定ビーム17a~17cと座標系の相対配置は、投影システムPSによって変換することができる。
【0095】
[00094] パターン領域15a~15c及び検出器領域25a~25cの回折格子19a~19cで行われる測定ビーム17a~17cの修正によって、結果として放射検出器23上に干渉パターンが形成される。干渉パターンは、測定ビームの位相の導関数に関連し、投影システムPSに起因する収差に依存する。したがって、干渉パターンは、投影システムPSに起因する収差を測定するのに使用することができる。
【0096】
[00095] 一般に、検出器領域25a~25cのそれぞれの回折格子19a~19cは、2次元透過回折格子を含む。図3Bに示される実施形態では、検出器領域25a~25cはそれぞれ、チェッカーボードの形で構成される回折格子19a~19cを含む。以下でさらに説明するように、本発明の実施形態は、検出器領域25a~25cがそれぞれチェッカーボードの形では構成されない2次元透過回折格子19a~19cを含む構成に特に適用される。
【0097】
[00096] パターン領域15a~15cの第1の部分の照明は、第1の方向の収差に関する情報を提供することができ、パターン領域15a~15cの第2の部分の照明は、第2の方向の収差に関する情報を提供することができる。
【0098】
[00097] 一部の実施形態では、測定パターニングデバイスMA’及び/又はセンサ装置21は、2つの垂直な方向に順次スキャン及び/又はステップ移動される。例えば、測定パターニングデバイスMA’及び/又はセンサ装置21は、互いに関連してu及びv方向にステップ移動することができる。パターン領域15a~15cの第2の部分15a’’~15c’’が照明される間、測定パターニングデバイスMA’及び/又はセンサ装置21はu方向にステップ移動することができ、パターン領域15a~15cの第1の部分15a’~15c’が照明される間、測定パターニングデバイスMA’及び/又はセンサ装置21はv方向にステップ移動することができる。すなわち、測定パターニングデバイスMA’及び/又はセンサ装置21は、照明されている回折格子のアライメントに対して垂直な方向にステップ移動することができる。
【0099】
[00098] 測定パターニングデバイスMA’及び/又はセンサ装置21は、回折格子の格子周期の一部分に対応する距離だけステップ移動することができる。ステップ移動方向の波面に関する情報を得るために、異なるステップ移動位置で行われる測定を分析することができる。例えば、測定された信号(位相ステッピング信号と呼ばれることがある)の第1高調波の位相は、ステップ移動方向の波面の導関数に関する情報を含むことができる。したがって、測定パターニングデバイスMA’及び/又はセンサ装置21のu方向及びv方向の両方向(互いに垂直である)へのステップ移動によって、波面に関する情報を2つの垂直方向で得ることが可能であり(特に、2つの垂直方向のそれぞれの波面の導関数に関する情報を提供する)、それによって全波面を再構成することが可能である。
【0100】
[00099] (前述のように)照明されている回折格子のアライメントに対して垂直な方向への測定パターニングデバイスMA’及び/又はセンサ装置21のステップ移動に加えて、測定パターニングデバイスMA’及び/又はセンサ装置21はまた互いに関連してスキャンすることができる。測定パターニングデバイスMA’及び/又はセンサ装置21のスキャンは、照明されている回折格子のアライメントに平行な方向に実行することができる。例えば、パターン領域15a~15cの第1の部分15a’~15c’が照明される間、測定パターニングデバイスMA’及び/又はセンサ装置21はu方向にスキャンすることができ、パターン領域15a~15cの第2の部分15a’’~15c’’が照明される間、測定パターニングデバイスMA’及び/又はセンサ装置21はv方向にスキャンすることができる。照明されている回折格子のアライメントに平行な方向への測定パターニングデバイスMA’及び/又はセンサ装置21のスキャンによって、測定を回折格子全体にわたって平均化することが可能であり、それによってスキャン方向の回折格子におけるいずれの変化も補償することができる。測定パターニングデバイスMA’及び/又はセンサ装置21のスキャンは、前述の測定パターニングデバイスMA’及び/又はセンサ装置21のステップ移動とは異なる時点に実行することができる。
【0101】
[000100] パターン領域15a~15c及び検出器領域25a~25cの様々な異なる配置構成を、投影システムPSに起因する収差を測定するために使用できることを理解されたい。パターン領域15a~15c及び/又は検出器領域25a~25cは回折格子を備えることができる。一部の実施形態では、パターン領域15a~15c及び/又は検出器領域25a~25cは、回折格子以外のコンポーネントを備えることができる。例えば一部の実施形態では、パターン領域15a~15c及び/又は検出器領域は、それを通って測定ビーム17a~17cの少なくとも一部分が伝搬し得る単一スリット又はピンホール開口を備えることができる。一般に、パターン領域及び/又は検出器領域は、測定ビームを修正する働きをする任意の構成を備えることができる。
【0102】
[000101] コントローラCNは、センサ装置21で行われた測定の結果を受け取り、その測定結果から投影システムPSに起因する収差を測定する。コントローラは、測定システム10の1つ以上のコンポーネントを制御するように構成することができる。例えば、コントローラCNは、センサ装置21及び/又は測定パターニングデバイスMA’を互いに関連して移動させるように動作可能な位置決め装置PWを制御することができる。コントローラは、投影システムPSのコンポーネントを調整するための調整手段PAを制御することができる。例えば調整手段PAは、投影システムPSに起因し、コントローラCNによって測定される収差を補正するように、投影システムPSの光学素子を調整することができる。
【0103】
[000102] 一部の実施形態では、コントローラCNは、支持構造MT及び/又は基板テーブルWTを調整するための調整手段PAを制御するように動作可能であってよい。例えば、調整手段PAは、パターニングデバイスMA及び/又は基板Wの配置誤差に起因する(かつコントローラCNにより測定される)収差を補正するように支持構造MT及び/又は基板テーブルWTを調整することができる。
【0104】
[000103] (投影システムPSに、又はパターニングデバイスMAもしくは基板Wの配置誤差に起因し得る)収差を測定することは、ゼルニケ係数を取得するために、センサ装置21により行われた測定の結果をゼルニケ多項式にフィッティングすることを含むことができる。異なるゼルニケ係数は、投影システムPSに起因する異なる形態の収差に関する情報を提供することができる。ゼルニケ係数は、x方向及び/又はy方向の異なる位置で別個に決定することができる。例えば、図2図3A及び図3Bに示される実施形態では、ゼルニケ係数は各測定ビーム17a~17cについて決定することができる。
【0105】
[000104] 一部の実施形態では、測定パターニングデバイスMA’は3つよりも多くのパターン領域を備えることができ、センサ装置21は3つよりも多くの検出器領域を備えることができ、3つよりも多くの測定ビームを形成することができる。これによって、より多くの位置でゼルニケ係数を決定できる可能性がある。一部の実施形態では、パターン領域及び検出器領域は、x方向及びy方向の両方の様々な位置に分布させることができる。これによって、x方向及びy方向の両方に分離された位置でゼルニケ係数を決定できる可能がある。
【0106】
[000105] 図2図3A及び図3Bに示される実施形態では、測定パターニングデバイスMA’は3つのパターン領域15a~15cを備え、センサ装置21は3つの検出器領域25a~25cを備えるが、他の実施形態では、測定パターニングデバイスMA’は3つより多いか又は少ないパターン領域15a~15cを備えることができる、及び/又はセンサ装置21は3つより多いか又は少ない検出器領域25a~25cを備えることができる。
【0107】
[000106] これから投影システムPSに起因する収差を測定する方法を図4を参照して説明する。
【0108】
[000107] 一般に、測定パターニングデバイスMA’は少なくとも1つの第1のパターン領域15a~15cを備え、センサ装置21は少なくとも1つの第2のパターン領域19a~19cを備える。
【0109】
[000108] 図4は、投影システムPSに起因する収差を測定するのに使用され得る測定システム30の概略図である。測定システム30は図2に示した測定システム10と同一であってよいが、(測定パターニングデバイスMA’にある)第1のパターン領域及び(センサ装置21にある)第2のパターン領域の数が異なる可能性がある。したがって、図4に示す測定システム30は、上記の図2に示した測定システム10のいずれかの特徴を含む可能性があり、これらの特徴は以下でこれ以上説明されない。
【0110】
[000109] 図4では、測定パターニングデバイスMA’に単一の第1のパターン領域31のみが設けられ、センサ装置21に単一の第2のパターン領域32が設けられる。
【0111】
[000110] 測定パターニングデバイスMA’は、照明システムILからの放射33で照射される。理解しやすくするために、(例えば入射放射ビームの主光線などの単一の光線を表し得る)単一の線のみを図4に示す。しかしながら、放射33は測定パターニングデバイスMA’の第1のパターン領域31に入射するある角度範囲を含むことを理解されたい。つまり、測定パターニングデバイスMA’の第1のパターン領域31上の各点は、円錐状の光によって照明することができる。一般に、各点はほぼ同じ角度範囲で照明され、このことは照明システムILの瞳面(図示せず)における放射強度によって特徴付けられている。
【0112】
[000111] 第1のパターン領域31は、放射33を受け取り、複数の第1の回折ビーム34、35、36を形成するように配置される。中央の第1の回折ビーム35は第1のパターン領域31の0次回折ビームに相当し、他の2つの第1の回折ビーム34、36は第1のパターン領域31の±1次回折ビームに相当する。一般に、より多くのより高次の回折ビームが存在することも理解されたい。繰り返しになるが、理解しやすくするために、図4には3つの第1の回折ビーム34、35、36のみが示されている。
【0113】
[000112] 入射放射33が第1のパターン領域31上のある点に集束する円錐状の放射を含むとき、第1の回折ビーム34、35、36のそれぞれも第1のパターン領域31上のその点から分岐する円錐状の放射を含むことも理解されたい。
【0114】
[000113] 第1の回折ビーム34、35、36の生成を達成するために、第1のパターン領域31は回折格子の形態をとってよい。例えば、第1のパターン領域31は、概ね図3Aに示したパターン領域15aの形態をとってよい。具体的には、第1のパターン領域31の少なくとも一部分は、図3Aに示したパターン領域15aの第1の部分15a’、すなわちu方向(図4はz‐v平面に示されていることに留意)に平行に整列される回折格子の形態をとってよい。したがって、第1の回折ビーム34~36は、v方向であるシヤリング方向に分離している。
【0115】
[000114] 第1の回折ビーム34~36は、これから説明するように投影システムPSによって少なくとも部分的に捕捉される。投影システムPSにより捕捉される第1の回折ビーム34~36がどれくらいかは、照明システムILからの入射放射33の瞳フィル、(次に第1のパターン領域31のピッチ及び放射33の波長に依存する)第1の回折ビーム34~36の角度分離、及び投影システムPSの開口数に依存することになる。
【0116】
[000115] 測定システム30は、0次回折ビームに相当する第1の回折ビーム35が、投影システムPSの瞳面37の円形領域により表され得る投影システムPSの開口数をほぼ満たし、±1次回折ビームに相当する第1の回折ビーム34、36が、0次回折ビームに相当する第1の回折ビーム35と大幅に重なるように構成することができる。このような構成によって、0次回折ビームに相当する第1の回折ビーム35のほぼ全て、及び±1次回折ビームに相当する第1の回折ビーム34、36の大部分が投影システムPSによって捕捉され、センサ装置21に投影される。(さらに、このような構成によって、第1のパターン領域31により生成された多数の回折ビームが少なくとも部分的にセンサ装置21に投影される)。
【0117】
[000116] 第1のパターン領域31の役割は、これから検討するように空間コヒーレンスを導入することである。
【0118】
[000117] 一般に、異なる入射角で測定パターニングデバイスMA’の同じ点に入射する、照明システムILからの2つの放射光線33はコヒーレントでない。放射33を受け取り、複数の第1の回折ビーム34、35、36を形成することによって、第1のパターン領域31は、入射する放射錐33の複数のコピー(一般に異なる位相及び強度を有するコピー)を形成すると考えることができる。これらのコピー、又は第1の回折ビーム34、35、36のいずれか1つにおいて、測定パターニングデバイスMA’上の同じ点から異なる散乱角度で生じる2つの放射光線は(照明システムILの特性に起因して)コヒーレントでない。しかしながら、第1の回折ビーム34、35、36のいずれか1つにおける所与の放射光線の場合、他の第1の回折ビーム34、35、36のそれぞれに、当該所与の光線と空間的にコヒーレントな対応する放射光線が存在する。例えば、(入射放射33の主光線に対応する)第1の回折ビーム34、35、36のそれぞれの主光線はコヒーレントであり、結合された場合は振幅レベルで干渉する可能性がある。
【0119】
[000118] このコヒーレンスは、投影システムPSの収差マップを決定するために測定システム30によって利用される。
【0120】
[000119] 投影システムPSは、(投影システムの開口数により捕捉された)第1の回折ビーム34、35、36の一部をセンサ装置21に投影する。
【0121】
[000120] 図4では、センサ装置21は単一の第2のパターン領域32を備える。(図5Aから図5Cを参照して)以下でさらに説明されるように、第2のパターン領域32は、これらの第1の回折ビーム34~36を投影システムPSから受け取り、第1の回折ビームのそれぞれから複数の第2の回折ビームを形成するように配置される。これを達成するために、第2のパターン領域32は2次元透過回折格子を備える。図4では、第2のパターン領域32により透過された全ての放射は単一の矢印38として表される。この放射38は、放射検出器23の検出器領域39によって受け取られ、収差マップを決定するのに使用される。
【0122】
[000121] パターン領域32に入射する第1の回折ビーム34~36のそれぞれは、回折して複数の第2の回折ビームを形成することになる。第2のパターン領域32は2次元回折格子を備えるため、入射する各第1の回折ビームから、第2の回折ビームの2次元アレイが生成される(これらの第2の回折ビームの主光線は、シヤリング方向(v方向)とこれに対して垂直な方向(u方向)との両方に分離されている)。以下では、シヤリング方向(v方向)にn次、かつ非シヤリング方向(u方向)にm次である回折次数は、第2のパターン領域32の(n,m)次回折次数と呼ばれる。以下では、第2の回折ビームが非シヤリング方向(u方向)に何次であるかが重要でない場合は、第2のパターン領域32の(n,m)次回折次数は、単にn次の第2の回折ビームと呼ばれることがある。
【0123】
[000122] 図5Aから図5Cは、第1の回折ビーム34~36のそれぞれにより生成された1セットの第2の回折ビームを示している。図5Aは、第1のパターン領域31の0次回折ビームに相当する第1の回折ビーム35により生成された1セットの第2の回折ビーム35a~35eを示している。図5Bは、第1のパターン領域31の-1次回折ビームに相当する第1の回折ビーム36により生成された1セットの第2の回折ビーム36a~36eを示している。図5Cは、第1のパターン領域31の+1次回折ビームに相当する第1の回折ビーム34により生成された1セットの第2の回折ビーム34a~34eを示している。
【0124】
[000123] 図5Aでは、第2の回折ビーム35aは(第2のパターン領域32の、シヤリング方向の)0次回折ビームに相当するのに対し、第2の回折ビーム35b、35cは±1次回折ビームに相当し、第2の回折ビーム35d、35eは±2次回折ビームに相当する。図5Aから図5Cはv-z平面に示されており、示されている第2の回折ビームは、例えば第2のパターン領域32の非シヤリング方向(すなわちu方向)の0次回折ビームに相当する可能性があることを理解されたい。さらに、図5Aから図5Cの紙面の奥側又は手前側にある、非シヤリング方向のより高次の回折ビームを表すこれらの第2の回折ビームの複数のコピーが存在することを理解されたい。
【0125】
[000124] 図5Bでは、第2の回折ビーム36aは(第2のパターン領域32の、シヤリング方向の)0次回折ビームに相当するのに対し、第2の回折ビーム36b、36cは±1次回折ビームに相当し、第2の回折ビーム36d、36eは±2次回折ビームに相当する。
【0126】
[000125] 図5Cでは、第2の回折ビーム34aは(第2のパターン領域32の、シヤリング方向の)0次回折ビームに相当するのに対し、第2の回折ビーム34b、34cは±1次回折ビームに相当し、第2の回折ビーム34d、34eは±2次回折ビームに相当する。
【0127】
[000126] 図5Aから図5Cより、第2の回折ビームのいくつかが互いに空間的に重なることが分かる。例えば、第1のパターン領域31の0次回折ビーム35から生じる、第2のパターン領域32の-1次回折ビームに相当する第2の回折ビーム35bは、第1のパターン領域31の-1次回折ビーム36から生じる、第2のパターン領域32の0次回折ビームに相当する第2の回折ビーム36aと重なる。図4及び図5Aから図5Cの全ての線は、照明システムILからの単一の入力光線33から生じる単一の放射光線を表すものと考えることができる。したがって、以上で説明したように、これらの線は放射検出器23で空間的に重なる場合に干渉パターンを生成する空間的にコヒーレントな光線を表す。さらに、干渉は(シヤリング方向に離れている)投影システムPSの瞳面37の異なる部分を通過した光線の間にある。したがって、単一の入力光線33から生じる放射の干渉は、瞳面の2つの異なる部分の位相差に依存する。
【0128】
[000127] この放射検出器23での第2の回折ビームの空間的重なり及び空間コヒーレンスは、所与の第1の回折ビームから生じる異なる第2の回折ビーム間の(シヤリング方向の)角度分離が、第2のパターン領域32に集束するときの異なる第1の回折ビーム間の(シヤリング方向の)角度分離と同じになるように、第1及び第2のパターン領域31、32をマッチングさせることによって達成される。この放射検出器23での第2の回折ビームの空間的重なり及び空間コヒーレンスは、シヤリング方向の第1及び第2のパターン領域31、32のピッチをマッチングさせることによって達成される。このシヤリング方向の第1及び第2のパターン領域31、32のピッチをマッチングさせることは、投影システムPSにより適用される任意の縮小係数を考慮に入れることを理解されたい。本明細書で使用するとき、特定方向の2次元回折格子のピッチは以下のように定められる。
【0129】
[000128] 1次元回折格子は、一連の線であって、これらの線に対して垂直な方向の(反射性又は透過性の)反復パターンから形成される一連の線を含むことを理解されたい。これらの線に対して垂直な方向において、反復パターンが形成される最小の非反復セクションは単位セルと呼ばれ、この単位セルの長さは1次元回折格子のピッチと呼ばれる。一般に、このような1次元回折格子は、入射放射ビームを、角度を成して離間された(ただし空間的に重なる可能性がある)回折ビームの1次元アレイを形成するように回折する回折パターンを有することになる。第1のパターン領域31は、このようなシヤリング方向にオフセットされた(角度を成して離間された)角度を成して離間された第1の回折ビーム34~36の1次元アレイを形成する。
【0130】
[000129] 2次元回折格子は、反射性又は透過性の2次元反復パターンを含むことを理解されたい。この反復パターンが形成される最小の非反復セクションは単位セルと呼ばれることがある。単位セルは正方形であってよく、このような2次元回折格子の基本ピッチは、正方形単位セルの長さとして定義することができる。一般に、このような2次元回折格子は、入射放射ビームを、角度を成して離間された(ただし空間的に重なる可能性がある)回折ビームの2次元アレイを形成するように回折する回折パターンを有することになる。この回折ビームの2次元(正方形)アレイの軸は単位セルの辺に平行である。これらの2つの方向の隣接する回折ビーム間の角度分離は、放射の波長と格子のピッチの比により与えることができる。したがって、ピッチが小さければ小さいほど、隣接する回折ビーム間の角度分離が大きくなる。
【0131】
[000130] 一部の実施形態では、2次元の第2のパターン領域32の単位セルの軸は、第1のパターン領域31により定められるシヤリング方向及び非シヤリング方向に対して非ゼロ角度で配置することができる。例えば、2次元の第2のパターン領域32の単位セルの軸は、第1のパターン領域31により定められるシヤリング及び非シヤリング方向に対して45°で配置することができる。前述したように、波面の測定を可能にする放射検出器23での第2の回折ビームの空間的重なり及び空間コヒーレンスは、所与の第1の回折ビームから生じる異なる第2の回折ビーム間の(シヤリング方向の)角度分離が、第2のパターン領域32に集束するときの異なる第1・BR>フ回折ビーム間の(シヤリング方向の)角度分離と同じであることを保証することによって達成される。2次元の第2のパターン領域32の単位セルの軸がシヤリング方向及び非シヤリング方向に対して非ゼロ角度(例えば45°)で配置される構成では、以下のように擬似単位セル及び擬似ピッチを定義することが有用である可能性がある。擬似単位セルは、その辺が(第1のパターン領域31により定められる)シヤリング方向及び非シヤリング方向に平行となるように配向された、回折格子の反復パターンが形成される最小の非反復正方形と定義される。擬似ピッチは、正方形擬似単位セルの長さと定義することができる。これは2次元回折格子のシヤリング方向のピッチと呼ばれることがある。第1のパターン領域31のピッチ(の整数倍又は分数倍)にマッチングさせるべきはこの擬似ピッチである。
【0132】
[000131] 回折格子の回折パターンは、角度を成して離間された(ただし空間的に重なる可能性がある)擬似回折ビームの2次元アレイを形成するものと考えることができ、この擬似回折ビームの2次元(正方形)アレイの軸は擬似単位セルの辺に平行である。この正方形は(回折格子の反復パターンが形成される任意の配向の最小の正方形と定義される)単位セルではないため、擬似ピッチはピッチ(又は基本ピッチ)よりも大きくなる。したがって、(擬似単位セルの辺に平行な方向の)回折パターンの隣接する擬似回折ビーム間の分離は、(単位セルの辺に平行な方向の)回折パターンの隣接する回折ビーム間よりも小さくなる。このことは以下のように理解することができる。擬似回折ビームの一部は回折パターンの回折ビームに対応し、他の擬似回折ビームは物理的でなく、回折格子により生成された回折ビームを表さない(そして真の単位セルよりも大きい擬似単位セルの使用に起因してのみ生じる)。
【0133】
[000132] 投影システムPSにより適用される任意の縮小(又は拡大)係数を考慮すると、第2のパターン領域32のシヤリング方向のピッチが第1のパターン領域31のシヤリング方向のピッチの整数倍であるべきである、又は第1のパターン領域31のシヤリング方向のピッチが第2のパターン領域32のシヤリング方向のピッチの整数倍であるべきである。図5Aから図5Cに示す例では、第1及び第2のパターン領域31、32のシヤリング方向のピッチは(任意の縮小係数を考慮すると)実質的に等しい。
【0134】
[000133] 図5Aから図5Cより分かるように、放射検出器23の検出器領域39上の各点は、一般に、コヒーレントに合計されるいくつかの寄与を受け取ることになる。例えば、第1のパターン領域31の0次回折ビーム35から生じる第2のパターン領域32の-1次回折ビームに相当する第2の回折ビーム35bを受け取る検出器領域39上の点は、(a)第1のパターン領域31の-1次回折ビーム36から生じる第2のパターン領域32の0次回折ビームに相当する第2の回折ビーム36a、及び(b)第1のパターン領域31の+1次回折ビーム34から生じる第2のパターン領域32の-2次回折ビームに相当する第2の回折ビーム34dの両方と重なる。第1のパターン領域31のより高次の回折ビームを考慮する場合、検出器領域39の当該部(例えば、センシング要素の2次元アレイ内の対応するピクセル)で測定される放射の強度を決定するために、検出器領域39上の各点でコヒーレントに合計されるべきより多くのビームが存在することを理解されたい。
【0135】
[000134] 一般に、複数の異なる第2の回折ビームは、検出器領域39の各部で受け取られた放射に寄与する。このようなコヒーレント和からの放射の強度は、次式によって与えられる。
【数2】
ここでDCは(異なる回折ビームのインコヒーレント和と等しい)定数項であり、総和は異なる第2の回折ビームの全ての対に対するものであり、γはその第2の回折ビーム対の干渉強度であり、Δφはその第2の回折ビーム対間の位相差である。
【0136】
[000135] 第2の回折ビーム対間の位相差Δφは、2つの寄与に依存する。(a)第1の寄与は、ビームが生じる投影システムPSの瞳面37の異なる部分に関係し、(b)第2の寄与は、ビームが生じる第1及び第2のパターン領域31、32のそれぞれの単位セル内の位置に関係する。
【0137】
[000136] これらの寄与の第1のものは、異なるコヒーレント放射ビームが投影システムPSの異なる部分を通過した、したがって、測定することが望ましい収差に関連するという事実から生じるものと理解することができる(実際、シヤリング方向に離れた収差マップ内の2つの点の差に関連する)。
【0138】
[000137] これらの寄与の第2のものは、回折格子に入射した単一の光線から生じる複数の放射光線の相対位相が、その格子の単位セルの光線が入射した部分に依存することになるという事実から生じるものと理解することができる。したがって、これは収差に関する情報を含まない。以上で説明したように、一部の実施形態では、測定パターニングデバイスMA’及び/又はセンサ装置21は、シヤリング方向に連続してスキャン及び/又はステップ移動される。これによって、放射検出器23が受け取る干渉放射ビームの全ての対間の位相差は変化する。測定パターニングデバイスMA’及び/又はセンサ装置21が第1及び第2のパターン領域31、32の(シヤリング方向の)ピッチの分数倍に等しい量だけシヤリング方向に連続してステップ移動されるとき、一般に、第2の回折ビームの対間の位相差は全て変化することになる。測定パターニングデバイスMA’及び/又はセンサ装置21が第1及び第2のパターン領域31、32の(シヤリング方向の)ピッチの整数倍に等しい量だけシヤリング方向にステップ移動される場合、第2の回折ビームの対間の位相差は変わらないことになる。したがって、測定パターニングデバイスMA’及び/又はセンサ装置21がシヤリング方向に連続してスキャン及び/又はステップ移動されるとき、放射検出器23の各部が受ける強度は振動することになる。放射検出器23により測定されるこの振動信号(位相ステッピング信号と呼ばれることがある)の第1高調波は、隣接する第1の回折ビーム34~36、すなわち次数が±1だけ異なる第1の回折ビームから生じる方程式(1)への寄与に依存する。次数が異なる数だけ異なる第1の回折ビームから生じる寄与は、このような位相ステッピング技術に起因して放射検出器23により測定された信号のより高次の高調波に寄与することになる。
【0139】
[000138] 例えば、以上で考察した3つの重なり合う第2の回折ビーム(35b、36a及び34d)のうち、これらの回折ビームの3つの可能な対の2つ、すなわち(a)(それぞれ第1のパターン領域31の0次回折ビーム35及び-1次回折ビーム36から生じる)第2の回折ビーム35b及び36a、及び(b)(それぞれ第1のパターン領域31の0次回折ビーム35及び+1次回折ビーム34から生じる)第2の回折ビーム35a及び34dのみが、位相ステッピング信号の第1高調波に寄与することになる。
【0140】
[000139] 第2の回折ビームの各対は、位相ステッピング信号の第1高調波に寄与する方程式(2)に示した形の干渉項、すなわち以下の形の干渉項をもたらすことになる。
【数3】
ここでγは干渉項の振幅、pは第1及び第2のパターン領域31、32の(シヤリング方向の)ピッチ、vは第1及び第2のパターン領域31、32のシヤリング方向の相対位置をパラメータ化し、ΔWは、投影システムPSの瞳面上の、2つの第2の回折ビームが生じる位置に対応する2つの位置における収差マップの値の差である。干渉項の振幅γは、以下でさらに考察するように、2つの第2の回折ビームの合成散乱効率の積に比例する。位相ステッピング信号の第1高調波の周波数は、第1及び第2のパターン領域31、32のシヤリング方向のピッチpの逆数によって与えられる。位相ステッピング信号の位相はΔW(投影システムPSの瞳面上の、2つの第2の回折ビームが生じる位置に対応する2つの位置における収差マップの値の差)によって与えられる。
【0141】
[000140] 1対の第2の回折ビームの干渉強度γは、これから考察するように2つの第2の回折ビームの合成散乱効率の積に比例する。
【0142】
[000141] 一般に、回折格子により生成された回折ビームの散乱効率は、格子のジオメトリに依存することになる。0次回折ビームの効率に正規化され得るこれらの回折効率は、回折ビームの相対強度を記述する。本明細書で使用するとき、第2の回折ビームの合成散乱効率は、発生元の第1の回折ビームの散乱効率と、対応する第2のパターン領域32の回折次数の散乱効率との積によって与えられる。
【0143】
[000142] 図3Aから図5Cに示した実施形態の上記の説明では、図3Aに示したパターン領域15aの第1の部分15a’が照明される場合、シヤリング方向はv方向に一致し、非シヤリング方向はu方向に一致する。図3Aに示したパターン領域15aの第2の部分15a’’が照明される場合、シヤリング方向はu方向に一致し、非シヤリング方向はv方向に一致することを理解されたい。これらの上記実施形態では、(2つのシヤリング方向を定める)u方向及びv方向はともにリソグラフィ装置LAのx方向及びy方向の両方に対して約45°に配向されているが、代替的な実施形態では、2つのシヤリング方向は、(リソグラフィ装置LAの非スキャン方向及びスキャン方向に一致し得る)リソグラフィ装置LAのx方向及びy方向に対して任意の角度に配向できることを理解されたい。一般に、2つのシヤリング方向は互いに対して垂直になる。以下では、2つのシヤリング方向は、x方向及びy方向と呼ばれることになる。しかしながら、これらのシヤリング方向はリソグラフィ装置LAのx方向及びy方向の両方に対して任意の角度に配向できることを理解されたい。
【0144】
[000143] 図6Aは、50%のデューティサイクルを有する、図3Aに示したパターン領域15aの第1の部分15a’の形をとる第1のパターン領域31の散乱効率を示している。水平軸はシヤリング方向の回折次数を表す。図6Aに示す回折効率は0次回折ビームの効率に正規化されており、その結果、0次回折ビームの効率は100%である。このジオメトリ(50%のデューティサイクル)を用いると、(0次回折次数以外の)偶数の回折次数の効率はゼロである。±1次回折ビームの効率は63.7%である。
【0145】
[000144] 図6Bは、50%のデューティサイクルを有する、図3Bに示した回折格子19aの形をとる、すなわちチェッカーボードの形をした第2のパターン領域32の散乱効率を示している。水平軸はシヤリング方向の回折次数を表す。垂直軸は非シヤリング方向の回折次数を表す。図6Bに示す回折効率は(0,0)次回折ビームの効率に正規化されており、その結果、(0,0)次回折ビームの効率は100%である。
【0146】
[000145] 以上で説明したように、振動位相ステッピング信号の第1高調波は、次数が±1だけ異なる第1の回折ビームからの方程式(1)への寄与にのみ依存する。図6Aから分かるように、測定パターニングデバイスMA’に50%デューティサイクル格子を用いると、次数が±1だけ異なる2対の第1の回折ビームのみが±1次ビームのいずれかを伴う0次ビームである。さらに、第1のパターン領域31にこのジオメトリを用いると、散乱効率は対称であり、±1次回折ビームの効率はどちらも同じ(63.7%)である。したがって、振動位相ステッピング信号の第1高調波に寄与する第2の回折ビームの全ての対の干渉強度γは以下のように決定することができる。図6Bに示す第2のパターン領域32の散乱効率プロットの第2のコピーは、第1のパターン領域31の±1次回折ビームの散乱効率によって重み付けされ、次いで図6Bに示す第2のパターン領域32の散乱効率プロットが重ね合わせられるが(第1のパターン領域31の)1対の回折次数の分離だけシヤリング方向にシフトされる。ここで、第1及び第2のパターン領域31、32のシヤリング方向のピッチは(投影システムPSにより適用される任意の縮小係数を考慮すると)等しく、ゆえにこの例では、第2のパターン領域32の散乱効率プロットの第2のコピーは、第2のパターン領域31の1回折次数だけシヤリング方向にシフトされる。そして、これらの2つの重ね合わせられた散乱効率プロットの散乱効率の積が決定される。このような振動位相ステッピング信号の第1高調波に寄与する第2の回折ビームの全ての対の干渉強度γのプロットが図6Cに示されている。
【0147】
[000146] 図6Cに示す干渉強度γのそれぞれは実際に第2の回折ビームの2つの異なる対を表すことに留意されたい。例えば、図6Cに示す左側のピクセルは、(a)第2の回折ビーム35aと34bの干渉、及び(b)第2の回折ビーム35bと36aの干渉の両方を表す。同様に、図6Cに示す右側のピクセルは、(a)第2の回折ビーム35aと36cの干渉、及び(b)第2の回折ビーム35cと34aの干渉の両方を表す。一般に、このようなマップの各ピクセルは、2対の第2の回折ビーム、すなわち(a)第1のパターニングデバイス31の0次回折次数に相当する第1の回折ビーム35から生じた1つの第2の回折ビーム、及び第1のパターン領域31の+1次回折次数に相当する第1の回折ビーム34から生じたもう1つの第2の回折ビームを含む第2の回折ビームの第1の対、並びに(b)第1のパターニングデバイス31の0次回折次数に相当する第1の回折ビーム35から生じた1つの第2の回折ビーム、及び第1のパターン領域31の-1次回折次数に相当する第1の回折ビーム36から生じたもう1つの第2の回折ビームを含む第2の回折ビームの第2の対を表す。
【0148】
[000147] 一般に、図6Cに示す干渉強度γのそれぞれは、第2の回折ビームの2つの異なる対、すなわち(a)(第1のパターン領域31の0次回折ビームに相当する)第1の回折ビーム35により生成されたn次の第2の回折ビームを含む1つの対、及び(b)第1の回折ビーム35により生成された(n+1)次の第2の回折ビームを含むもう1つの対を表す。したがって、各干渉強度γは、寄与する第1の回折ビーム35の2つの回折次数((n,m)次及び(n+1,m)次)によって特徴付けることができ、γn,n+1;mと表すことができる。以下では、m=0であることが明らかである、又はmの値が重要でない場合、この干渉強度はγn,n+1と表すことがある。
【0149】
[000148] 図6Cに示す干渉強度γ(又はγn,n+1;m)のそれぞれは異なる2対の第2の回折ビームを表すが、図6Cに示す干渉強度γのそれぞれは、振動位相ステッピング信号の第1高調波に寄与し、放射検出器23において、これから説明するように投影システムPSの開口数を表す円と異なる重なりを有する第2の回折ビームを表す。
【0150】
[000149] 図7A図7B、及び図7Cは、それぞれ第1の回折ビーム34、35、36により満たされる投影システムPSの開口数に対応する投影システムPSの瞳面37の部分を示している。図7A図7B及び図7Cのそれぞれにおいて、投影システムPSの開口数は円40で表され、第1の回折ビーム34、35、36により満たされる投影システムPSの瞳面37の部分は、それぞれ図7A図7B及び図7Cのこの円40の網掛け領域で示される。図7Bから分かるように、示されている例では、0次回折ビームに相当する中央の第1の回折ビーム35は投影システムPSの開口数を実質的に満たす。図7A及び図7Cから分かるように、第1のパターン領域31の±1次回折ビームに相当する2つの第1の回折ビーム34、36のそれぞれは、開口数を部分的にしか満たさないようにシフトされている。この1次の第1の回折ビーム34、36の開口数に対するシフトは実際には非常に小さく、ここでは理解しやすくするために誇張されていることを理解されたい。
【0151】
[000150] 図8Aから図10Cは、放射検出器23の種々の第2の回折ビームにより満たされる部分を示している。図8Aから図10Cのそれぞれにおいて、投影システムPSの開口数は円40によって表され、この円の第2の回折ビームにより満たされる部分はこの円40の網掛け領域で示されている。図8Aから図8Cは、円40の第1のパターン領域31の0次回折ビームに相当する第1の回折ビーム35から生じる(-1,0)次、(0,0)次及び(1,0)次回折ビーム35b、35a、35cにより満たされる部分を示す。図9Aから図9Cは、円40の第1のパターン領域31の1次回折ビームに相当する第1の回折ビーム34から生じる(-1,0)次、(0,0)次及び(1,0)次回折ビーム34b、34a、34cにより満たされる部分を示す。図10Aから図10Cは、円40の第1のパターン領域31の-1次回折ビームに相当する第1の回折ビーム36から生じる(-1,0)次、(0,0)次及び(1,0)次回折ビーム36b、36a、36cにより満たされる部分を示す。
【0152】
[000151] 図8B図9A図8A及び図10Bから、放射検出器の(a)第2の回折ビーム35aと34bの干渉、及び(b)第2の回折ビーム35bと36aの干渉の両方から寄与を受け取る領域は、図11Aに示されている領域41であることが分かる。同様に、図8B図10C図8C及び図9Bから、放射検出器の(a)第2の回折ビーム35aと36cの干渉、及び(b)第2の回折ビーム35cと34aの干渉の両方から寄与を受け取る領域は、図11Bに示されている領域42であることが分かる。
【0153】
[000152] 一般に、図6Cに示す干渉強度γのそれぞれは、複数の干渉する第2の干渉ビームにより形成された放射ビームを表すものと考えることができ、このような複数の干渉する第2の干渉ビームにより形成された放射ビームはそれぞれ異なる方向に伝搬し、その結果、放射検出器23におけるこのような各放射ビームの、投影システムPSの開口数を表す円との重なりが異なる。
【0154】
[000153] 一般に、第2の回折ビームは複数の放射ビームを形成するものと考えることができ、このような各放射ビームは、干渉する第2の回折ビームの1セットにより形成される。このような各放射ビームは本明細書では干渉ビームと呼ばれることがある。複数の干渉する第2の干渉ビームにより形成されたこのような各干渉ビームは異なる方向に伝搬するものと考えることができ、その結果、放射検出器23における各干渉ビームの、投影システムPSの開口数を表す円との重なりが異なる。干渉ビームは異なる方向に伝搬し、投影システムPSの開口数を表す円と異なる重なりを有すると考えることができるが、放射検出器23において異なる干渉ビーム間の大きな重なりが存在する。図6Cに示す干渉強度γのそれぞれは、(複数の干渉する第2の干渉ビームにより形成された)異なる干渉ビームを表すものと考えることができる。
【0155】
[000154] すでに説明したように、図6Cに示した干渉強度γ(又はγn,n+1;m)のそれぞれは異なる2対の第2の回折ビームを表す。しかしながら、放射検出器上の所与の位置について、これらの2対の寄与する第2の回折ビームの両方は、投影システムPSの瞳面37上の同じ2つの点から生じる2つの干渉する光線を含む。具体的には、放射検出器上の位置(x,y)について(これらの座標は投影システムPSの瞳面37の座標に対応し、x方向はシヤリング方向に対応する)、寄与し、干渉強度γn,n+1;mを有する2対の干渉する第2の回折ビームはそれぞれ、瞳面37上の位置(x-ns,y-ms)から生じた第2の回折ビームの光線、及び瞳面37上の位置(x-(n+1)s,y-ms)から生じた第2の回折ビームの光線を含む(sはシヤリング距離である)。シヤリング距離sは、瞳面37上の隣接する第1の回折ビーム34~36の2つのコヒーレント光線間の距離と一致する。したがって、2対の寄与する第2の回折ビームはともに、式(3)の形の干渉項を生じさせる。式中ΔWは瞳面37上のこれらの2つの位置における収差マップの値の差である。
【0156】
[000155] 図6Cから、50%デューティサイクルチェッカーボードの形をとる第2のパターン領域32を用いると、位相ステッピング信号の第1高調波に寄与する、いずれも25.8%の干渉強度(γ-1,0,γ0,+1)を有する2セットの第2の回折ビームしか存在しないことが分かる。これは、図6Aから分かるように、シヤリング方向に可動する(-1,0)次、(0,0)次及び(1,0)次回折ビームを除いた他の全ての回折ビームが0%の回折効率を有する回折効率プロットをもたらすチェッカーボードジオメトリに起因する。つまり、n±mが偶数の場合に(n,m)次回折次数の格子効率は、(0,0)次回折次数を除いて全てゼロである。これらの格子効率がゼロである結果として、位相ステッピング信号の第1高調波に寄与する全ての干渉強度は、干渉強度γ-1,0及びγ0,+1を除いて0となる。
【0157】
[000156] 図11A及び11Bに示した2つの領域41、42の重なりについて(この重なり領域は小さいシヤリング角度に対して円40の大部分を構成することになる)、振動位相ステッピング信号の第1高調波は、2つの余弦(方程式(2)及び式(3)参照)の和に比例することになる。
【数4】
式中、第1の余弦は、収差マップ中の瞳面上の第1の2つの点の差についてのものであり、第2の余弦は、収差マップ中の瞳面上の第2の2つの点の差についてのものである(ここでは理解を明確にするために、位相ステッピング項は省略されている)。具体的には、放射検出器上の所与の位置(x,y)について(xはシヤリング方向を指す)、第1の2つの点は、瞳面上の対応点(x,y)(方程式(4)ではWと表される)、及びシヤリング距離だけシヤリング方向に沿って第1の方向にシフトされた別の点(x-s,y)(方程式(4)ではW-1と表される)を含む。同様に、第2の2つの点は、瞳面上の対応点(x,y)(方程式(4)ではWと表される)、及びシヤリング距離だけシヤリング方向に沿って第2の方向にシフトされた別の点(x+s,y)(方程式(4)ではW+1と表される)を含む。
【0158】
[000157] 既存の波面再構成技術は、方程式(4)の2つの干渉強度が、この2つの余弦の和を三角関数の公式を用いて、小さいシヤリング距離についてのおよそ1である係数を乗じた、シヤリング距離の2倍だけシヤリング方向に分離した2つの位置の収差マップ中の差の余弦、すなわちcos(W-1-W+1)と書き換えることができるように等しいという事実をうまく利用する。したがって、このような既知の技術は、位相ステッピング信号の第1高調波の位相を、シヤリング距離の2倍だけシヤリング方向に分離した瞳面上の位置の収差マップ中の差と同一視することによる1セットのゼルニケ係数の決定を伴う。収差マップはゼルニケ係数に依存すること(方程式(1)参照)を思い出されたい。これは、放射センサ上の(例えば、アレイの複数のピクセル又は個々のセンシング要素における)複数の位置について、初めは第1のシヤリング方向に、そしてその後は第2の直交方向について行われる。これらの2つのシヤリング直交方向に対する制約は、ゼルニケ係数のセットを見つけるために同時に解決される。
【0159】
[000158] 以上で考察したように、線形格子を備える第1のパターン領域31と2次元チェッカーボードを備える第2のパターン領域32との組み合わせは、(2つの干渉ビームしか位相ステッピング信号の第1高調波に寄与しないため)有利である。チェッカーボードのジオメトリに起因して、チェッカーボード格子は一般的に光透過キャリア又は支持層を備える。しかしながら、EUV放射は大抵の材料によって強く吸収されるため、EUV放射用の良好な透過性材料は存在しない。さらに、このような透過キャリアは、EUVリソグラフィシステムのウェーハ製造環境ですぐに汚染されることになるため望ましくない。これによって透過キャリアはEUVに対して非透過的になる可能性がある。このような汚染問題は、システム稼働率、ひいてはリソグラフィシステムのスループットに影響を及ぼし得る定期的な洗浄動作によってしか対処されない可能性がある。上記の理由により、チェッカーボード格子の構成は、EUV放射を用いるリソグラフィシステムに対する実装が困難である。
【0160】
[000159] このため、EUV放射用の既存の収差測定システムは、第2のパターン領域32として、円形のピンホールアレイを使用するジオメトリを用いる。図12は、50%の(エリア別)デューティサイクルを有するこのような格子の単位セル50を示している。単位セル50は、EUV吸収膜52に設けられた円形開口51を備える。円形開口51は、EUV放射を透過させるEUV吸収膜52のボイドを表す貫通開口である。しかしながら、(図12に示す)このようなピンホールアレイジオメトリは、これより図13Aから図13Bを参照して考察するように、位相ステッピング信号の第1高調波に寄与する望ましくない干渉ビームを生成する。
【0161】
[000160] 図13Aは、図6Aに示したものと同じジオメトリの50%のデューティサイクルを有する、図3Aに示したパターン領域15aの第1の部分15a’の形をとる第1のパターン領域31の散乱効率を示している。繰り返しになるが、回折効率は0次回折ビームの効率に正規化されており、その結果、0次回折ビームの効率は100%である。図13Bは、図12に示した単位セル50を有するピンホールアレイの形をとる第2のパターン領域32の散乱効率を示している。図13Bに示す回折効率は、(0,0)次回折ビームの効率に正規化されており、その結果、(0,0)次回折ビームの効率は100%である。
【0162】
[000161] 図13Cは、振動位相ステッピング信号の第1高調波に寄与する干渉ビームの干渉強度γn,n+1のプロットである(これは、図6A及び6Bの散乱効率から図6Cを構築したのと類似の方法で図13A及び図13Bの散乱効率から構築される)。
【0163】
[000162] 図13Cから、図12に示した単位セル50を有する第2のパターン領域32を用いると、(25.2%の干渉強度γ-1,0、γ0,+1を有する)2つの主干渉ビームに加えて、小さいがゼロでない干渉強度γn,n+1を有する追加の干渉ビームが多数存在する。これらの追加の干渉ビームの干渉強度は、放射検出器23の複数の干渉ビームが重なる領域で同じではないため、振動位相ステッピング信号の第1高調波は、異なる重みを持つ複数の余弦の加重和(方程式(4)参照)に比例することになる。結果として、三角関数の公式を用いて容易に結合することができない。しかしながら、追加の干渉ビームの干渉強度γn,n+1は(干渉強度γ-1,0、γ0,+1と比較して)小さいため、このようなEUV放射用の既知の既存の収差測定システムは、ゼルニケ係数のセットを見つけるための波面の再構成においてこれらの項を無視する(すなわちゼロであると仮定する)。
【0164】
[000163] この仮定は波面測定の精度に影響を及ぼす。次に、このことはシステム撮像、オーバーレイ及びフォーカス性能に悪影響を及ぼす。本発明の実施形態は、EUV放射用の収差測定システムに対する上記の問題に少なくとも部分的に対処するように考案されている。
【0165】
[000164] 本発明の一部の実施形態は、第2のパターン領域32を構成し得る2次元回折格子であって、貫通開口の正方形アレイが設けられた基板を備えた自立格子に関する。具体的には、本発明の実施形態は、このような(例えば、図12に示した単位セル50を用いた格子と比較して)位相ステッピング信号の第1高調波に著しく寄与する干渉ビームの数を削減する自立2次元回折格子に関する。
【0166】
[000165] 開口の正方形アレイは開口の中央部が正方形グリッドを形成するように配置された複数の開口列を含むことを理解されたい。
【0167】
[000166] 貫通開口の正方形アレイを備えた基板が自立できるように、少なくとも一部の基板材料は各貫通開口間及び隣接する貫通開口間に設けられることをさらに理解されたい。
【0168】
[000167] 基板は支持層及び放射吸収層を備えることができる。貫通開口は支持層及び放射吸収層の両方を貫通して延在することができる。貫通開口は、支持層及び放射吸収層から材料を選択的にエッチングすることによって形成することができる。例えばこれは、エッチングプロセスを伴うリソグラフィ技術を用いて達成することができる。支持層は、例えばSiNから形成することができる。例えば放射吸収層は、例えばクロム(Cr)、ニッケル(Ni)又はコバルト(Co)などの金属から形成することができる。
【0169】
[000168] 2次元回折格子は自立型であるため、例えば透過性支持層を必要としない。したがって、本発明のこれらの実施形態は、EUV放射を使用する投影システムの収差マップを決定するための位相ステッピング測定システムでの使用において特に有益である。
【0170】
[000169] 例えば、2次元回折格子は、2次元回折格子が典型的な第1のパターン領域31とともに使用されると想定して、位相ステッピング信号の第1高調波への(例えば閾値より大きい)寄与数を削減する格子効率マップを生成するように配置されたジオメトリを有することができる。典型的な第1のパターン領域31は、50%のデューティサイクルを有する上記の1次元回折格子31を備える。その他の典型的な第1のパターン領域31は、50%のデューティサイクルを有する2次元チェッカーボード回折格子を備える。
【0171】
[000170] 本発明に係る自立格子60の第1の実施形態を図14から図17Cを参照してこれから説明する。図14は、ギンガム形状又はパターンと呼ばれることがあるジオメトリを有する格子60の一部分を示している。図14には、自立格子60の単位セル61も点線で示されている。自立格子60は、図14に示されているよりも少ない又は多い数の単位セル61の繰り返しを有することができることを理解されたい。
【0172】
[000171] 2次元回折格子60は、正方形開口64の正方形アレイを備える。正方形開口64のそれぞれは、隣接する開口64の中心間の距離68の半分の長さ66を有する。ここで、隣接する開口は、正方形開口64により構成された正方形アレイの軸70、72の一方と平行な方向に正方形アレイ内で1つの位置だけずれたもの同士を意味することを意図していることを理解されたい。正方形開口64の辺は、正方形開口64により構成された正方形アレイの軸70、72に平行であることに留意されたい。単位セル61は、隣接する開口64の中心間の距離68に等しい(格子のピッチを定める)長さを有する。
【0173】
[000172] 正方形単位セル61の辺は、正方形開口64により構成された正方形アレイの軸70、72に平行である。したがって、格子60により形成された回折ビームは、軸が正方形開口64により構成された正方形アレイの軸70、72に平行な第2の回折ビームの正方形アレイを形成する。以下でさらに説明されるように、自立格子60は第2のパターン領域32を形成し、図14にはこのような実施形態の(第1のパターン領域31で定められたシヤリング方向及び非シヤリング方向を表し得る)u方向及びv方向を示す軸も示され、単位セル61の辺に対して45°で配置される。
【0174】
[000173] 格子60は、それぞれ50%のデューティサイクルを有し、直交する2つの1次元格子の組み合わせから形成されるものと考えることができる。
【0175】
[000174] 格子60のギンガム格子ジオメトリは、これより図15Aから図17Cを参照して説明するように、第1のパターン領域31であって、上記第1のパターン領域31で定められた(図14においてu軸及びv軸により示された)シヤリング方向及び非シヤリング方向が単位セル61に対して45°で配置され、√2で除した2次元回折格子60のピッチ68に等しい(投影システムPSにより適用される任意の縮小係数を考慮した)ピッチを有する第1のパターン領域31とともに使用するのに適している。
【0176】
[000175] 単位セル61は、2次元回折格子60の反復パターンを形成する最小の非反復セクションである。このような2次元回折格子60の基本ピッチ68は正方形単位セル61の長さである。2次元回折格子60の回折パターンの回折効率74のプロットが図15Aに示されている。図15Aでは、各正方形は2次元回折格子60により生成された異なる回折次数を表す。2次元回折格子60は、入射放射ビームが角度を成して離間された(ただし空間的に重なる可能性がある)回折ビームの2次元アレイを形成するように回折される回折パターンを有することを理解されたい。この回折ビームの2次元(正方形)アレイの軸は単位セル61の辺に平行である。したがって、この回折ビームの2次元(正方形)アレイの軸は、(図14に示した)正方形開口64により構成された正方形アレイの軸70、72と一致し、図15Aではそれぞれy’及びx’と標示される。
【0177】
[000176] 以上で説明したように、格子60は、第1のパターン領域31であって、上記第1のパターン領域31で定められた(図14においてu軸及びv軸で示された)シヤリング方向及び非シヤリング方向が単位セル61に対して45°で配置された第1のパターン領域31とともに使用するのに適している。このように2次元回折格子60の単位セル61の軸がシヤリング方向及び非シヤリング方向に対して45°で配置された構成では、擬似単位セル62及び擬似ピッチ65を以下のように定義することが有用である。擬似単位セル62は、回折格子60の反復パターンを形成する、その辺が第1のパターン領域31で定められる(図14においてu軸及びv軸で示された)シヤリング方向及び非シヤリング方向に平行となるように配向される最小の非反復正方形と定義される。擬似ピッチ65は、正方形擬似単位セル62の長さと定義される。これは2次元回折格子60のシヤリング方向のピッチと呼ばれることがある。第1のパターン領域31のピッチ(の整数倍又は分数倍)にマッチングさせるべきはこの擬似ピッチ62である。
【0178】
[000177] 回折格子60の回折パターンは、角度を成して離間された(ただし空間的に重なる可能性がある)擬似回折ビームの2次元アレイを形成するものと考えることができ、この擬似回折ビームの2次元(正方形)アレイの軸は擬似単位セル62の辺に平行である。2次元回折格子60の回折パターンの回折効率74の別のプロットが図15Bに示されている。図15Bにおいて、各正方形は回折格子60により生成された異なる擬似回折次数を表す。図15A図15Bの関係は、図16A及び図16Bを参照してさらに説明される。
【0179】
[000178] 図16Aは、2次元回折格子60の回折次数の概略図である。具体的には、図16Aは、図15Aに示した破線正方形内の格子効率に対応する2次元回折格子60の回折次数の概略図である。図15Aに示す破線正方形に含まれた格子効率に相当する図15Bにおける擬似回折次数格子効率は、図15Bに示す破線正方形で示される。図15Aに示すように、各回折次数は正方形75で表される。但し、このような各回折次数の方向又は主光線は、(図15Aにも示す)このような各正方形の中心にある円76で表すことができることを理解されたい。
【0180】
[000179] 2次元回折格子60の回折パターンは、角度を成して離間された(ただし空間的に重なる可能性がある)回折ビームの2次元アレイを形成する。この回折ビームの2次元正方形アレイの軸は単位セル61の辺に平行であり、図16Aではそれぞれy’及びx’と標示される。図16Bは、45°回転させた2次元回折格子60の回折パターンの同じ概略図を示す(すなわち、図16Bに示すx軸及びy軸は、図16Aの軸x’及びy’に対してそれぞれ45°回転されている)。x軸及びy軸のスケールを適切に定義することによって、回折パターンは、一部が(円76で示された)回折ビームの1つに対応し、一部がいずれの回折ビームにも対応しない、(破線のグリッドで示される)擬似回折ビームの正方形アレイを形成すると考えることができることを理解されたい。このx軸及びy軸のスケールの定義は、もし擬似単位セル62が格子60の真の単位セルであったならば形成されるはずの回・BR>ワ次数に対応する。
【0181】
[000180] 擬似単位セル62は、2次元回折格子60の真のピッチ68よりも√2倍大きい擬似ピッチ65を定めることを理解されたい。結果として、回折パターンの隣接する擬似回折ビーム間(すなわち、図16Bの隣接する破線正方形間)の分離は、隣接する回折ビーム間(すなわち、図16Aの隣接する正方形75間)の分離よりも√2倍小さくなる。擬似回折ビームの一部は回折パターンの回折ビーム(すなわち、図16Bの円76を含むもの)の1つと対応する一方、擬似回折ビームの一部は物理的でなく、回折格子により生成された回折ビームを表さないことをさらに理解されたい。これらの物理的でない擬似回折次数は、真の単位セル61よりも大きい擬似単位セル62の使用が原因で生じる。このような物理的でない擬似回折次数の1つ((1,1)次)は実線正方形77で示される。図16Bから、n±mが偶数である(すなわち、pが整数の場合に2pに等しい)場合に(n,m)次の擬似回折次数は物理的回折次数に一致するのに対し、n±mが奇数である(すなわち、pが整数の場合に2p+1に等しい)場合の(n,m)次の擬似回折次数は物理的でないことが分かる。
【0182】
[000181] 図17Aは、(図6Aに示したものと同じジオメトリの)50%のデューティサイクルを有し、図3Aに示したパターン領域15aの第1の部分15a’の形をとる第1のパターン領域31の散乱効率を示している。繰り返しになるが、回折効率は0次回折ビームの効率に正規化されており、その結果、0次回折ビームの効率は100%である。図17Bは、図14に示したような擬似単位セル62を有する格子60の形をとる第2のパターン領域32の散乱効率を示している。図17Bに示す回折効率は、(0,0)次の擬似回折ビームの効率に正規化されており、その結果、(0,0)次の擬似回折ビームの効率は100%である。
【0183】
[000182] 図17Aの散乱効率プロットに対応する第1のパターン領域31のピッチは、(投影システムPSにより適用される任意の縮小係数を考慮して)図17Bの散乱効率プロットに対応する2次元回折格子60の擬似ピッチ65の半分であることに留意されたい。同じように、図17Aの散乱効率プロットに対応する第1のパターン領域31のピッチは、(投影システムPSにより適用される任意の縮小係数を考慮して)√2で除した2次元回折格子60の真のピッチ68に等しい。
【0184】
[000183] 図17Aでは、軸は第1のパターン領域31の回折次数を単位にラベル付けされるが、図17Bでは、軸は第2のパターン領域32(2次元回折格子60)の擬似回折次数を単位にラベル付けされることに留意されたい。しかしながら、図17A及び17Bのスケールは、第1のパターン領域31のピッチが(投影システムPSにより適用される任意の縮小係数を考慮して)2次元回折格子60の擬似ピッチ65の半分であるという事実を反映するためにマッチングされる(図17Aは異なる軸スケールを有する以外は図13Aと同じ格子効率プロットであることに留意されたい)。つまり、図17A及び17Bのスケールは、1対の隣接する第1の回折ビーム(例えば0次及び1次の第1の回折ビーム)間の(角度)分離が、1対の隣接する第2の回折ビーム(例えば0次及び1次の第1の回折ビーム)間の分離の2倍になるものである。
【0185】
[000184] このような構成によって、振動位相ステッピング信号の第1高調波に寄与する第2の回折ビームの全ての対の干渉強度は、第1のパターン領域31の±1次回折ビームの散乱効率によって重み付けされた図17Bの散乱効率プロットの第2のコピーに図17Bの散乱効率プロットを重ね合わせることによって決定することができる。繰り返しになるが、このコピーは、2次元回折格子の2擬似回折次数に相当する第1のパターン領域31の1回折次数だけシヤリング方向にシフトされる。
【0186】
[000185] 図17Cは、このように図17A及び17Bの散乱効率から構築された振動位相ステッピング信号の第1高調波に寄与する干渉ビームの干渉強度γn,n+1のプロットである。
【0187】
[000186] 図17Cから、図14に示された擬似単位セル62を備えた格子60を有する第2のパターン領域32を用いると4つの干渉ビーム(いずれも25.8%の同じ干渉強度を有する)だけが寄与することが分かる。したがって、この格子60は、自立型である(したがって、EUVリソグラフィシステム内での使用に適する)が、位相ステッピング信号の第1高調波に寄与する干渉ビームの数を(少なくとも図11に示した単位セル50を有する格子を使用する既知のEUV測定システムと比べて)削減する構成を提供する。
【0188】
[000187] 図17Cは、2次元回折格子60の2擬似回折次数だけシヤリング方向にシフトされた図17Bの回折効率プロットの2つのコピー(1つが63.7%で重み付けされている)を重ね合わせることによって生成できることを思い出されたい。したがって、pがゼロでない整数の場合に、n±mが4pに等しい(すなわち、n±m=...,-12,-8,-4,4,8,12,...)(n,m)次の擬似回折次数の回折効率がゼロであるため、図17Cの4つの寄与のみをもたらすキャンセルが生じることが分かる。したがって、上記の実施形態の変形形態では、自立格子は、pがゼロでない整数の場合に、n±mが4pに等しいもの以外の全ての次数の(n,m)次の擬似回折次数の格子効率を抑える異なるジオメトリを有することができる。さらに、図15A及び図15Bの考慮から、pがゼロでない整数の場合に、n±mが4pに等しい(すなわち、n±m=...,-12,-8,-4,4,8,12,...)(n,m)次の擬似回折次数は、n又はmがゼロでない偶数の場合に(n,m)次の回折次数がゼロである(又は少なくとも抑制される)場合にゼロになる(又は少なくとも抑制される)ことが分かる。
【0189】
[000188] 本発明に係る自立格子80の第2の実施形態を図18から図19Bを参照してこれから説明する。図18は格子80の一部分を示している。図14には、自立格子80の単位セル82も点線で示されている。自立格子80は、図18に示されているよりも少ない又は多い数の単位セル82の繰り返しを有することができることを理解されたい。
【0190】
[000189] 2次元回折格子80は、概ね八角形の貫通開口84の正方形アレイを備える。概ね八角形の貫通開口84は、貫通開口84の正方形アレイの軸86、88に対して45°に配向され、隣接する貫通開口の中心間の距離91に一致する対角線寸法を有し、4つのコーナのそれぞれが、隣接する貫通開口84の各対間に基板の概ね矩形の接続部90を形成するように先端が切り取られた正方形から形成される。
【0191】
[000190] この格子80は、チェッカーボード格子と類似しているが、格子80が自立できることを保証する接続部90又はサイドバーが設けられた構成を提供する。
【0192】
[000191] このような格子80が自立できることを保証するために設けられる接続部90の寸法は基板の厚さに依存する可能性があることを理解されたい。一部の実施形態では、概ね矩形の接続部90の幅92は、隣接する貫通開口84の中心間の距離の約10%である。例えば、隣接する貫通開口の各対間の基板の概ね矩形の接続部90の幅は、隣接する貫通開口84の中心間の距離の5%~15%、例えば隣接する貫通開口84の中心間の距離の8%~12%であってよい。
【0193】
[000192] 自立格子80は第2のパターン領域32を形成し、図18にはこのような実施形態のu方向及びv方向を示す軸も示される。
【0194】
[000193] 図19Aは、図18に示すような単位セル82を有する格子80の形をとる第2のパターン領域32の散乱効率を示している。図19Aに示された回折効率は(0,0)次回折ビームの効率に正規化されており、その結果、(0,0)次回折ビームの効率は100%である。
【0195】
[000194] 図19Bは、50%のデューティサイクルを有する、線形格子の形をとる(すなわち、図6Aに示した散乱効率プロットをもたらすジオメトリの)第1のパターン領域31を想定した、振動位相ステッピング信号の第1高調波に寄与する干渉ビームの干渉強度γn,n+1のプロットである。図19Bは、図6A及び図6Bの散乱効率から図6Cを構築したのと類似の方法で図6A及び図19Aの散乱効率から構築される。
【0196】
[000195] 図19Aから、図18に示された2次元回折格子80は、n±mが偶数の場合に(0,0)次の回折次数を除いた(n,m)次の回折次数の格子効率を抑える格子効率マップを生成することが分かる。これらの回折次数は抑制されているが、真のチェッカーボードと異なり、これらの回折次数の散乱効率は(他の回折次数と比べて小さいが)ゼロでない。
【0197】
[000196] さらに、図18に示す自立格子80の実施形態は、一般にn±mが偶数の場合に全ての(n,m)次の回折次数の格子効率を抑える。一部の代替的な実施形態は、これから考察されるように、n±mが偶数の場合に一部の特定の(n,m)次の回折次数の格子効率を最小限に抑えることを保証するように選択されるジオメトリを有することができる。
【0198】
[000197] 本発明に係る自立格子の第3及び第4の実施形態を図20Aから図21Bを参照してこれから説明する。
【0199】
[000198] 自立格子の第3及び第4の実施形態はどちらも円形開口のアレイを備える。具体的には、自立格子の第3及び第4の実施形態は、どちらも概ね図12に示した単位セル50の形をとるが、これから説明するように修正されたデューティサイクルを有する単位セルを有する。このような格子ジオメトリのデューティサイクルは、円形開口の半径と隣接する開口の中心間の距離の比によって特徴付けることができる。
【0200】
[000199] 自立格子の第3の実施形態は、円形開口の半径と隣接する開口の中心間の距離の比が、(完全なチェッカーボード格子ではどちらもゼロである)(±2,0)及び(0,±2)回折次数を最小限に抑えるように選択された円形開口のアレイを備える。これは円形開口の半径と隣接する開口の中心間の距離の比が約0.3であることによって達成される。図20Aはこのような格子ジオメトリの散乱効率を示している。図20Aに示す回折効率は(0,0)次回折ビームの効率に正規化されており、その結果、(0,0)次回折ビームの効率は100%である。
【0201】
[000200] 図20Bは、50%のデューティサイクルを有する、線形格子の形をとる(すなわち、図6Aに示した散乱効率プロットをもたらすジオメトリの)第1のパターン領域31を想定した、振動位相ステッピング信号の第1高調波に寄与する干渉ビームの干渉強度γn,n+1のプロットである。図20Bは、図6A及び図6Bの散乱効率から図6Cを構築したのと類似の方法で図6A及び図20Aの散乱効率から構築される。
【0202】
[000201] 自立格子の第4の実施形態は、円形開口の半径と隣接する開口の中心間の距離の比が、(完全なチェッカーボード格子ではどちらもゼロである)(±1,±1)回折次数を最小限に抑えるように選択された円形開口のアレイを備える。これは円形開口の半径と隣接する開口の中心間の距離の比が約0.43であることによって達成される。図21Aはこのような格子ジオメトリの散乱効率を示している。図21Aに示す回折効率は(0,0)次回折ビームの効率に正規化されており、その結果、(0,0)次回折ビームの効率は100%である。
【0203】
[000202] 図21Bは、50%のデューティサイクルを有する、線形格子の形をとる(すなわち、図6Aに示した散乱効率プロットをもたらすジオメトリの)第1のパターン領域31を想定した、振動位相ステッピング信号の第1高調波に寄与する干渉ビームの干渉強度γn,n+1のプロットである。図21Bは、図6A及び図6Bの散乱効率から図6Cを構築したのと類似の方法で図6A及び図21Aの散乱効率から構築される。
【0204】
[000203] 図20B及び図21Bから、修正されたデューティサイクルを有する円形開口のアレイを備えた自立格子のこれらの実施形態は、位相ステッピング信号の第1高調波に著しく寄与する干渉ビームの数を削減することが分かる。
【0205】
[000204] 本発明の一部の実施形態は、投影システムPSの収差マップを決定するための位相ステッピング測定システムの2次元回折格子を設計する方法に関する。方法は、2次元回折格子(例えば円形開口のアレイ)の一般的なジオメトリを選択することを含むことができ、一般的なジオメトリは少なくとも1つのパラメータ(例えば、円形開口の半径と隣接する開口の中心間の距離の比)を有する。方法はさらに、位相ステッピング信号の第1高調波への寄与を制御するために、2次元回折格子の格子効率マップを生成する少なくとも1つのパラメータの値を選択することを含むことができる。
【0206】
[000205] 例えば所与の一般的なジオメトリの場合、一般に位相ステッピング信号の第1高調波への寄与数を削減することが望ましい可能性がある。付加的又は代替的に、位相ステッピング信号の第1高調波への一定の寄与を向上させる、及び/又は位相ステッピング信号の第1高調波への一定の寄与を抑制することが望ましい可能性がある。
【0207】
[000206] 位相ステッピング信号の第1高調波への寄与を制御するために、2次元回折格子の格子効率マップを生成する少なくとも1つのパラメータの値を選択することは、第1のパターン領域31の特定のジオメトリを想定することができる。例えば、一般的な第1のパターン領域31を想定することができる。一般的な第1のパターン領域31は、50%のデューティサイクルを有する上記の1次元回折格子31を備える。その他の一般的な第1のパターン領域31は、50%のデューティサイクルを有する2次元チェッカーボード回折格子を備える。
【0208】
[000207] 2次元回折格子の一般的なジオメトリを選択することは、力学的及び熱的考察を考慮に入れることができる。具体的には、2次元回折格子の一般的なジオメトリは、2次元回折格子が自立型であり、貫通開口の正方形アレイを備えた基板を備えるように選択することができる。
【0209】
[000208] また、選択される2次元回折格子の一般的なジオメトリは、各貫通開口及び隣接する貫通開口の間に設けられる基板材料の量が、使用中に2次元回折格子に損傷を与えることなく熱負荷の排出を期待できるほど十分に多くなるように選ぶことができる。
【0210】
[000209] 少なくとも1つのパラメータの値は、n±mが偶数の場合に(n,m)次の回折次数である1つ以上の回折次数の格子効率が最小限に抑えられるように選択することができる。例えば、少なくとも1つのパラメータの値は、(±2,0)及び(0,±2)回折次数の格子効率が(図120A及び20Bを参照して以上で説明した第3の実施形態のように)最小限に抑えられるように選択することができる。代替的に、少なくとも1つのパラメータの値は、(±1,±1)回折次数の格子効率が(図21A及び21Bを参照して以上で説明した第4の実施形態のように)最小限に抑えられるように選択することができる。
【0211】
[000210] 上記の実施形態は位相ステッピング信号の第1高調波を用いているが、代替的な実施形態では、位相ステッピング信号のより高い調波を代替的に用いることができることを理解されたい。
【0212】
[000211] 上記の実施形態は50%のデューティサイクルを有する1次元回折格子31を備えた第1のパターン領域31を用いているが、代替的な実施形態では、他の第1のパターン領域31が異なるジオメトリを用いることができることを理解されたい。例えば一部の実施形態では、第1のパターン領域31は50%のデューティサイクルを有する2次元チェッカーボード回折格子を備えることができる。
【0213】
[000212] 本文ではICの製造におけるリソグラフィ装置の使用に特に言及しているが、本明細書で説明するリソグラフィ装置には他の用途もあり得ることを理解するべきである。他の可能な用途には、集積光学システム、磁気ドメインメモリ用ガイダンス及び検出パターン、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッド等の製造が含まれる。
【0214】
[000213] 本文ではリソグラフィ装置の文脈において本発明の実施形態に特に言及しているが、本発明の実施形態は他の装置でも用いることができる。本発明の実施形態は、マスク検査装置、メトロロジ装置、又は、ウェーハ(もしくは他の基板)もしくはマスク(もしくは他のパターニングデバイス)等の物体を測定もしくは処理する任意の装置の一部を構成することができる。これらの装置は一般にリソグラフィツールと呼ぶことができる。そのようなリソグラフィツールは、真空条件又は周囲(非真空)条件を使用することができる。
【0215】
[000214] 文脈上許される場合、本発明の実施形態は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、又はそれらの任意の組み合わせにおいて実装することができる。本発明の実施形態は、1つ以上のプロセッサにより読み取られて実行され得る、機械可読媒体に記憶された命令として実装することも可能である。機械可読媒体は、機械(例えばコンピューティングデバイス)により読み取り可能な形態で情報を記憶又は伝送するための任意の機構を含むことができる。例えば機械可読媒体は、読み取り専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、磁気記憶媒体、光記憶媒体、フラッシュメモリデバイス、電気、光、音響、又は他の形態の伝搬信号(例えば搬送波、赤外信号、デジタル信号等)、及び他のものを含むことができる。さらに、ファームウェア、ソフトウェア、ルーチン、命令は、特定のアクションを実行するものとして本明細書で説明されることがある。しかしながら、そのような説明は単に便宜上のものであり、そのようなアクションは実際には、ファームウェア、ソフトウェア、ルーチン、命令等を実行するコンピューティングデバイス、プロセッサ、コントローラ、又は他のデバイスから生じ、実行する際、アクチュエータ又は他のデバイスが物質世界と相互作用し得ることを理解すべきである。
【0216】
[000215] 本発明の具体的な実施形態を上述したが、本発明は記載したもの以外でも実施され得ることを理解されたい。上記の記載は限定でなく例示を意図している。したがって、以下に示す特許請求の範囲から逸脱することなく、記載された本発明に対して変更を加え得ることは、当業者には明らかであろう。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B
図12
図13A
図13B
図13C
図14
図15A
図15B
図16A
図16B
図17A
図17B
図17C
図18
図19A
図19B
図20A
図20B
図21A
図21B