(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-12
(45)【発行日】2023-07-21
(54)【発明の名称】EUV光源においてデブリを制御するための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20230713BHJP
H05G 2/00 20060101ALI20230713BHJP
【FI】
G03F7/20 503
G03F7/20 521
H05G2/00 K
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022110370
(22)【出願日】2022-07-08
(62)【分割の表示】P 2019556350の分割
【原出願日】2018-04-03
【審査請求日】2022-07-13
(32)【優先日】2017-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504151804
【氏名又は名称】エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】エルショフ,アレクサンダー,イーゴレヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】スチュワート フォース,ジョン,トム
(72)【発明者】
【氏名】フォメンコフ,イゴール,ウラジーミロヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】ベレンドセン,クリスチアヌス,ウィルヘルムス,ヨハンネス
【審査官】田中 秀直
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-537779(JP,A)
【文献】国際公開第2016/037786(WO,A1)
【文献】特表2017-528758(JP,A)
【文献】国際公開第2015/118687(WO,A1)
【文献】特開2010-161318(JP,A)
【文献】特開2011-003887(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/20
H05G 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器におけるEUV放射の発生を制御する方法であって、
前記EUV放射の少なくとも1つの動作パラメータを測定し、かつ、前記動作パラメータの値を示す第1の信号を発生させるステップと、
前記容器内の位置における温度を測定し、かつ、前記測定した温度の値を示す温度信号を発生させるステップと、
少なくとも部分的に前記測定した温度及び前記第1の信号に基づいて制御信号を発生させるステップと、
前記制御信号をレーザステアリングシステム及びターゲット材料ステアリングシステムのうち少なくとも1つに提供して、レーザ放射が前記容器内の照射領域において前記ターゲット材料に当たる角度を調整するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記位置は、前記容器内に位置付けられたEUV光学要素の重力的に上方である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記EUV光学要素はコレクタミラーを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記温度が測定される前記位置は前記容器の内壁上である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記容器内の位置における温度を測定し、かつ、前記測定した温度の値を示す温度信号を発生させる前記ステップは、熱電対を使用して実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
第2の位置における前記容器内の第2の温度を測定し、かつ、前記第2の測定した温度の値を示す第2の温度信号を発生させるステップを更に含み、制御信号を発生させる前記ステップは、少なくとも部分的に前記第2の測定した温度に基づいて前記制御信号を発生させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
容器におけるEUV放射の発生を制御する方法であって、
前記容器内の第1の位置における第1の温度を測定するステップと、
前記容器内の第2の位置における第2の温度を測定するステップと、
少なくとも部分的に前記第1の測定した温度及び前記第2の測定した温度に基づいて制御信号を発生させるステップと、
少なくとも部分的に前記制御信号に基づいて、レーザ放射が前記容器内の照射領域においてターゲット材料に当たる角度を調整するステップと、
を含む方法。
【請求項8】
前記第1の位置は、前記容器内のEUV光学要素の重力的に上方である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の位置は前記容器の内壁上であり、前記第2の位置は前記容器の前記内壁上である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
第1の温度を測定する前記ステップは第1の熱電対を使用して実施され、第2の温度を測定する前記ステップは第2の熱電対を使用して実施される、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
容器におけるEUV放射の発生を制御する方法であって、
レーザビームを発生させるステップと、
前記レーザビームをターゲット材料に当てることによって前記容器内でEUV放射を発生させるステップと、
前記容器内の位置における温度を測定するステップと、
少なくとも部分的に前記温度に基づいて前記レーザビームの傾斜を調整するステップと、
を含む方法。
【請求項12】
前記傾斜は前記温度を所定の最大値未満に維持するように調整される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記温度が測定される前記位置は、前記容器内に位置付けられたEUV光学要素の重力的に上方である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記EUV光学要素はコレクタミラーを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記温度が測定される前記位置は前記容器の内壁上である、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記容器内の第2の位置における第2の温度を測定するステップを更に含み、少なくとも部分的に前記温度に基づいて前記レーザビームの傾斜を調整する前記ステップは、少なくとも部分的に前記第2の温度に基づいて前記レーザビームの前記傾斜を調整することを更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
温度を測定する前記ステップは第1の熱電対を使用して実施され、第2の温度を測定する前記ステップは第2の熱電対を使用して実施される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記容器内の第2の位置における第2の温度を測定するステップと、
少なくとも部分的に前記第2の温度に基づいて前記レーザビームの傾斜を調整するステップと、
を更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
前記第2の位置は前記容器内のEUV光学要素の重力的に上方に配置される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記第2の温度の各々は熱電対を使用して測定される、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
[0001] 本出願は、2017年5月12日に出願された米国出願第15/593,732号の優先権を主張する。これは援用により全体が本願に含まれる。
【0002】
[0002] 本開示は、容器内のターゲット材料の放電又はレーザアブレーションによって生成されたプラズマから極端紫外線(「EUV」:extreme ultraviolet)放射を発生するための装置及び方法に関する。このような適用例では、例えば半導体フォトリソグラフィ及び検査での使用向けに放射を収光し誘導するため、光学要素が使用される。
【背景技術】
【0003】
[0003] 例えば、約13.5nmの波長の放射を含む、約50nm以下の波長を有する(時として軟x線とも称される)電磁放射のような極端紫外線放射は、フォトリソグラフィプロセスで用いて、シリコンウェーハのような基板に極めて小さいフィーチャを生成することができる。
【0004】
[0004] EUV放射を発生する方法は、ターゲット材料をプラズマ状態に変換することを含む。ターゲット材料は好ましくは、電磁スペクトルのEUV部分に1つ以上の輝線を有する、例えばキセノン、リチウム、又はスズのような少なくとも1つの元素を含む。ターゲット材料は、固体、液体、又は気体である場合がある。そのような方法の1つであり、しばしばレーザ生成プラズマ(「LPP」:laser produced plasma)と呼ばれる方法では、レーザビームを用いて、必要な線発光元素を有するターゲット材料を照射することにより、必要なプラズマを生成することができる。
【0005】
[0005] 1つのLPP技法は、ターゲット材料小滴の流れを発生することと、この小滴の少なくとも一部を1つ以上のレーザ放射パルスで照射することと、を含む。このようなLPP源は、少なくとも1つのEUV放出元素を有するターゲット材料にレーザエネルギを結合し、数10eVの電子温度を有する高度に電離したプラズマを生成することによって、EUV放射を発生する。
【0006】
[0006] この目的のため、プラズマは典型的に、例えば真空チャンバのような密閉容器内で生成され、これによって得られるEUV放射は様々なタイプのメトロロジ機器を用いて監視される。EUV放射の発生に加えて、プラズマを発生するため使用されるプロセスは通常、プラズマチャンバ内で望ましくない副生成物も発生させる。この副生成物は、帯域外の放射、高エネルギのイオン、並びに、例えば残留ターゲット材料の原子及び/又は塊(clump)/微液滴(microdroplet)のようなデブリを含む可能性がある。
【0007】
[0007] エネルギ放射は、プラズマから全方向に放出される。1つの一般的な構成では、放射の少なくとも一部を集光し、中間位置へ誘導するため、いくつかの構成では更に集束するため、近法線入射ミラー(「コレクタミラー」又は単に「コレクタ」と称されることが多い)が位置決めされている。集光された放射は次いで中間位置から、光学系のセット、レチクル、検出器へ、最終的にはシリコンウェーハへと送ることができる。
【0008】
[0008] スペクトルのEUV部分においては、コレクタ、イルミネータ、及び投影光ボックスを含むシステムの光学要素のために、反射光学系を使用することが必要であると一般的に考えられている。これらの反射光学系は、前述のような法線入射光学系として又はかすめ入射光学系として実施することができる。関連する波長において、コレクタは多層ミラー(「MLM」:multi-layer mirror)として実施すると有利である。その名前が示す通り、このMLMは一般に、基盤又は基板の上に交互に配置された材料層から成る。また、システム光学系は、MLMとして実施されない場合であっても、コーティングされた光学要素として構成することができる。
【0009】
[0009] 光学要素は、EUV放射を集光し方向転換させるため、プラズマと共に容器内に配置しなければならない。チャンバ内の環境は光学要素にとって有害であり、例えば光学要素の反射率を低下させてその耐用年数を制限する。環境内の光学要素は、ターゲット材料の高エネルギのイオン又は粒子に露呈され得る。実質的にレーザ蒸発プロセスからのデブリであるターゲット材料の粒子は、光学要素の露呈された表面を汚染させる可能性がある。また、ターゲット材料の粒子は、MLM表面に対して物理的損傷及び局所加熱を引き起こす恐れがある。
【0010】
[00010] いくつかのシステムでは、デブリ軽減のためのバッファガスとして、0.5~3mbarの範囲内の圧力のH2ガスが真空チャンバ内で使用される。ガスが存在しない場合、真空圧では、照射領域から放出されるターゲット材料デブリからコレクタを適切に保護することが難しい。水素は、約13.5nmの波長を有するEUV放射に対して比較的透明であり、このため、He、Ar、又は約13.5nmで高い吸収を示す他のガスのような他の候補のガスよりも好適である。
【0011】
[00011] H2ガスは、真空チャンバ内に導入されて、プラズマによって生じたターゲット材料の高エネルギのデブリ(イオン、原子、及び塊)を低速化する。デブリはガス分子との衝突によって低速化する。この目的のため、使用されるH2ガスの流れは、デブリ軌道と逆向きでありコレクタから離れる方向とすることができる。これは、コレクタの光学コーティングに対するターゲット材料の堆積、インプラント、及びスパッタリングの損傷を軽減させるように作用する。
【0012】
[00012] また、EUV光を発生するプロセスによって、ターゲット材料が容器の壁にも堆積する可能性がある。容器の壁のターゲット材料堆積を最小限に抑えることは、生産に使用されているEUV源の満足できる長さの寿命を達成するために重要である。また、照射場所からのターゲット材料フラックスの方向と、バッファガス内への電力損失の方向性を維持することは、廃棄ターゲット材料軽減システムが目的通りに動作し、ターゲット材料の蒸発に伴う副生成物を容認できる程度に確実に管理可能とするために重要である。
【発明の概要】
【0013】
[00013] 以下は、1つ以上の実施形態の基本的な理解を得るため、それらの実施形態の簡略化された概要を示す。この概要は、想定される全ての実施形態を広く概観するものではなく、全ての実施形態の重要な要素又は不可欠な要素を識別することは意図しておらず、また、いずれかの又は全ての実施形態の範囲に限定を設定することも意図していない。その唯一の目的は、後に提示される更に詳細な記載の前置きとして、1つ以上の実施形態のいくつかの概念を簡略化した形態で示すことである。
【0014】
[00014] 一態様に従って、最適なEUV発生条件に過度な影響を与えることなくデブリフラックスを維持すると共に最適化するように放射源制御ループが確立される。例えば熱電対のような1つ以上の温度センサを容器内に設置して各局所ガス温度を測定することができる。1つ以上の熱電対によって測定された各局所温度を、放射源制御ループに対する1つ以上の入力として使用できる。放射源制御ループは次いで、EUV生成に影響を与えることなくデブリの発生と堆積の最適化を可能とするように、ドライブレーザターゲット設定すなわちターゲット材料を蒸発させるため使用されるレーザのターゲット設定を調整し、これによって放射源及びそのコレクタの寿命を延ばすことができる。
【0015】
[00015] 一態様に従って、EUV放射を発生するための装置が開示される。この装置は、容器と、レーザ放射を発生するように適合されたレーザと、レーザ放射を受容するように配置され、レーザ放射を容器内の照射領域に誘導するように適合されたレーザステアリングシステムと、を含む。装置は、レーザによって照射される照射領域にターゲット材料を送出するように適合されたターゲット材料デリバリシステムも含む。レーザによるターゲット材料の照射がEUV放射を発生する。ターゲット材料ステアリングシステムは、照射領域内のターゲット材料の位置を調整するためのものであり、ターゲット材料デリバリシステムに結合されている。装置は、EUV放射の少なくとも1つの動作パラメータを測定するように、かつ、動作パラメータの値を示す第1の信号を発生するように適合されたEUV放射メトロロジシステムと、容器内の位置に配置され、位置における容器内の温度を測定するように、かつ、測定した温度の値を示す温度信号を発生するように適合された温度センサと、第1の信号及び温度信号を受信し、少なくとも部分的に測定した温度に基づいて制御信号を発生し、更に、制御信号をレーザステアリングシステム及びターゲット材料ステアリングシステムのうち少なくとも1つに提供して照射領域におけるレーザ放射とターゲット材料との相互作用を調整するように適合されたコントローラと、も含む。
【0016】
[00016] 装置は、容器内に位置付けられたEUV光学要素を更に含み、温度センサが配置されている位置はEUV光学要素の重力的に上方であり得る。EUV光学要素はコレクタミラーとすることができる。温度センサは容器の内壁上に配置され得る。温度センサは熱電対であるか又は熱電対を含むことができる。装置は、容器内の第2の位置に配置され、第2の位置における容器内の第2の温度を測定するように、かつ、第2の測定した温度の値を示す第2の温度信号を発生するように適合された第2の温度センサを更に含み、コントローラは、第2の温度信号を受信するように、かつ、少なくとも部分的に第2の測定した温度に基づいて制御信号を発生するように適合することができる。
【0017】
[00017] 別の態様に従って、EUV放射を発生するための装置が開示される。この装置は、容器と、レーザ放射を発生するように適合されたレーザと、レーザ放射を受容するように配置され、レーザ放射を容器内の照射領域に誘導するように適合されたレーザステアリングシステムと、を含む。装置は、レーザによって照射される照射領域にターゲット材料を送出するように適合されたターゲット材料デリバリシステムも含む。レーザによるターゲット材料の照射がEUV放射を発生する。また、EUV光学要素が容器内に位置付けられている。第1の温度センサは、EUV光学要素の重力的に上方の容器内の第1の位置に配置され、第1の位置における容器内の第1の測定温度を測定するように、かつ、第1の測定温度の値を示す第1の温度信号を発生するように適合されている。第2の温度センサは、容器内の第2の位置に配置され、第2の位置における容器内のガスの第2の温度を測定するように、かつ、第2の測定温度の値を示す第2の温度信号を発生するように適合されている。コントローラは、第1の信号及び温度信号を受信するように、かつ、少なくとも部分的に第1の測定温度及び第2の測定温度に基づいて制御信号を発生して、制御信号をレーザステアリングシステムに提供して、レーザ放射が照射領域においてターゲット材料に当たる角度を調整するように適合されている。EUV光学要素はコレクタミラーであるか又はコレクタミラーを含むことができる。第1の温度センサは容器の内壁上に配置し、第2の温度センサは容器の内壁上に配置することができる。第1の温度センサは熱電対であり、第2の温度センサは第2の熱電対であり得る。
【0018】
[00018] 別の態様に従って、EUV放射を発生するための装置が開示される。この装置は、容器と、レーザビームを発生するように適合されたレーザと、レーザビームを受容するように配置され、レーザビームを容器内の照射領域に誘導すると共に照射領域におけるレーザビームの傾斜を調整するように適合されたレーザステアリングシステムと、を含む。装置は、レーザビームによって照射される照射領域にターゲット材料を送出するように適合されたターゲット材料デリバリシステムであって、レーザビームによるターゲット材料の照射がEUV放射を発生する、ターゲット材料デリバリシステムと、容器内の位置に配置され、位置における容器内の温度を測定するように、かつ、測定した温度の値を示す温度信号を発生するように適合された温度センサと、温度信号を受信し、少なくとも部分的に温度信号の値に基づいて制御信号を発生し、更に、制御信号をレーザステアリングシステムに提供してレーザビームの傾斜を調整するように適合されたコントローラと、も含む。傾斜は、温度を所定の最大値未満に維持するように調整することができる。装置は、容器内の第2の位置に配置され、第2の位置における容器内の第2の温度を測定するように、かつ、測定した温度の第2の値を示す第2の温度信号を発生するように適合された第2の温度センサも含み、コントローラは更に、第2の温度信号を受信し、少なくとも部分的に第2の温度信号の第2の値に基づいて制御信号を発生し、制御信号をレーザステアリングシステムに提供してレーザビームの傾斜を調整するように適合することができる。
【0019】
[00019] 特許請求される装置は、容器内に位置付けられたEUV光学要素も含むことができ、温度センサが配置されている位置はEUV光学要素の重力的に上方である。EUV光学要素は、コレクタミラーであるか又はコレクタミラーを含むことができる。温度センサが配置されている位置は容器の内壁上である。温度センサは熱電対であるか又は熱電対を含むことができる。
【0020】
[00020] 別の態様に従って、EUV放射を発生するための装置が開示される。この装置は、容器と、レーザビームを発生するように適合されたレーザと、レーザビームを受容するように配置され、レーザビームを容器内の照射領域に誘導すると共に照射領域におけるレーザビームの傾斜を調整するように適合されたレーザステアリングシステムと、を含む。装置は、レーザビームによって照射される照射領域にターゲット材料を送出するように適合されたターゲット材料デリバリシステムも含み、レーザビームによるターゲット材料の照射がEUV放射18を発生する。装置は、容器内の各位置に配置され、各位置における容器内の温度を測定するように、かつ、測定した温度の値を示す複数の温度信号を発生するように適合された複数の温度センサと、複数の温度信号を受信し、少なくとも部分的に温度信号の値に基づいて制御信号を発生し、更に、制御信号をレーザステアリングシステムに提供してレーザビームの傾斜を調整するように適合されたコントローラと、も含む。装置は、容器内に位置付けられたEUV光学要素も含み、複数の温度センサのうち少なくとも1つが配置されている位置はEUV光学要素の重力的に上方であり得る。複数の温度センサの各々は熱電対であるか又は熱電対を含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】[00021] 本発明の一態様に従ったレーザ生成プラズマEUV放射源システムの全体的な広い概念を示す、一定の縮尺通りでない概略図である。
【
図2】[00022]
図1のシステムの一部の、一定の縮尺通りでない概略図である。
【
図3】[00023]
図1のシステムのようなシステムにおいてレーザビームとターゲット材料小滴との間に起こり得る相互作用のジオメトリの図である。
【
図4】[00024] 本発明の一態様に従ったレーザ生成プラズマEUV放射源システムにおいて用いられる容器内の温度センサの可能な構成を示す、一定の縮尺通りでない斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[00025] これより図面を参照して様々な実施形態について記載する。図面全体を通して、同様の参照番号を用いて同様の要素を指し示す。以下の記載では、説明の目的で、1つ以上の実施形態の完全な理解を促進するために多数の具体的な詳細事項について述べる。しかしながら、いくつかの又は全ての場合においては、以下に記載されるいずれの実施形態も、以下に記載されるそのような具体的な設計上の詳細事項を採用することなく実施可能であることは明らかであろう。場合によっては、1つ以上の実施形態の記載を容易にするため、周知の構造及びデバイスはブロック図の形態で示される。
【0023】
[00026] まず
図1を参照すると、本発明の実施形態の一態様に従った、例えばレーザ生成プラズマEUV放射源10のような例示的なEUV放射源の概略図が示されている。図示のように、EUV放射源10はパルス又は連続レーザ源22を含むことができる。これは例えば、10.6μm又は1μmの放射ビーム12を生成するパルスガス放電CO
2レーザ源とすればよい。パルスガス放電CO
2レーザ源は、高パワーかつ高パルス繰り返し率で動作するDC又はRF励起を有し得る。
【0024】
[00027] EUV放射源10は、ターゲット材料を液滴又は連続液体流の形態で送出するためのターゲットデリバリシステム24も含む。この例ではターゲット材料は液体であるが、固体又は気体であってもよい。ターゲット材料はスズ又はスズ化合物で構成することができるが、他の材料も使用可能である。図示されているシステムにおいてターゲット材料デリバリシステム24は、ターゲット材料の小滴14を、真空チャンバ26の内部の照射領域28へ導入する。ここでターゲット材料を照射してプラズマを生成することができる。場合によっては、ターゲット材料に電荷を与えて、ターゲット材料を照射領域28へ向かうよう又は照射領域28から離れるよう誘導できるようにする。本明細書で用いる場合、照射領域は、ターゲット材料照射が発生する可能性のある領域であり、実際には照射が発生していない時であっても照射領域であることに留意するべきである。EUV光源はビームステアリングシステム32も含むことができる。これについては
図2に関連付けて以下で詳述する。
【0025】
[00028] 図示されているシステムにおけるコンポーネントは、小滴14が実質的に水平方向に進むよう配置されている。レーザ源22から照射領域28へ向かう方向、すなわちビーム12の公称伝搬方向を、Z軸と考えることができる。小滴14がターゲット材料デリバリシステム24から照射領域28まで進む経路を、X軸と考えることができる。従って、
図1の図はXZ面に対して垂直である。EUV放射源10の配向は、好ましくは図示のように重力に対して回転させる。矢印Gは、重力の下方に関して好ましい配向を示す。この配向はEUV源に適用されるが、必ずしもスキャナ等の光学的に下流のコンポーネントに適用されるわけではない。また、小滴14が実質的に水平方向に進むシステムが図示されているが、小滴が垂直方向に進むか、又は重力に対して90度(水平方向)と0度(垂直方向)との間の(これらの角度を含む)角度で進む他の構成も使用可能であることは、当業者によって理解されよう。
【0026】
[00029] EUV放射源10は、EUV光源コントローラシステム60も含むことができる。これは、ビームステアリングシステム32と共にレーザ発射制御システム65を含み得る。また、EUV放射源10は、1つ以上の小滴結像器(droplet imager)70を含み得るターゲット位置検出システムのような検出器も含むことができる。小滴結像器は、例えば照射領域28に対するターゲット小滴の絶対位置又は相対位置を示す出力を発生し、この出力をターゲット位置検出フィードバックシステム62に提供する。
【0027】
[00030] ターゲット位置検出フィードバックシステム62は、小滴結像器70の出力を用いてターゲットの位置及び軌道を計算することができ、それらからターゲット誤差を計算できる。ターゲット誤差は、小滴ごとに、又は平均値として、又は他の何らかの基準で計算され得る。次いで、ターゲット誤差を光源コントローラ60に対する入力として提供することができる。これに応答して光源コントローラ60は、レーザ位置、方向、又はタイミング補正信号のような制御信号を発生し、この制御信号をレーザビームステアリングシステム32に提供することができる。レーザビームレーザビームステアリングシステム32は、制御信号を用いて、チャンバ26内のレーザビーム焦点スポットの位置及び/又は集光力を変更できる。レーザビームステアリングシステム32は、制御信号を用いて、ビーム12及び小滴14の相互作用のジオメトリを変更することも可能である。例えばビーム12は、小滴14の中心を外して、すなわち真正面以外の入射角で小滴14に衝突させることができる。
【0028】
[00031]
図1に示されているように、ターゲット材料デリバリシステム24はターゲットデリバリ制御システム90を含むことができる。ターゲットデリバリ制御システム90は、例えば上述したターゲット誤差、又はシステムコントローラ60によって与えられたターゲット誤差から導出された何らかの量のような信号に応答して動作し、照射領域28を通るターゲット小滴14の経路を調節する。これは例えば、ターゲットデリバリ機構92がターゲット小滴14を解放するポイントを再位置決めすることによって達成できる。小滴解放ポイントは、例えばターゲットデリバリ機構92を傾斜させること又はターゲットデリバリ機構92をシフトさせることにより再位置決めできる。ターゲットデリバリ機構92はチャンバ26内まで延出しており、好ましくは外部からターゲット材料と、ターゲットデリバリ機構92内のターゲット材料を圧力下に置くためのガス源とが供給される。
【0029】
[00032] 引き続き
図1を見ると、放射源10は1つ以上の光学要素も含むことができる。以下の検討では、そのような光学要素の一例としてコレクタ30が使用されるが、以下の検討は他の光学要素にも当てはまる。コレクタ30は法線入射リフレクタとすることができ、例えばMLMとして実施され、例えばB
4C、ZrC、Si
3N
4、又はCのような追加の薄いバリア層が各界面に堆積されて、熱的に誘導される層間拡散を効果的に阻止する。アルミニウム(Al)又はシリコン(Si)のような他の基板材料も使用可能である。コレクタ30は、扁長楕円(prolate ellipsoid)の形態とすることができ、中央の開口がレーザ放射12を通過させて照射領域28に到達させる。コレクタ30は例えば、第1の焦点が照射領域28にあり、第2の焦点がいわゆる中間ポイント40(中間焦点40とも呼ばれる)にある楕円形である。中間ポイント40において、EUV放射はEUV放射源10から出力し、集積回路リソグラフィスキャナ50に入力することができる。集積回路リソグラフィスキャナ50は、この放射を使用して、例えばレチクル又はマスク54を用いた既知の方法でシリコンウェーハワークピース52を処理する。次いでシリコンウェーハワークピース52は、集積回路デバイスを得るため既知の方法で更に処理される。
【0030】
[00033]
図1の構成は温度センサ34も含む。これは例えば、局所温度、すなわちこのセンサにおけるチャンバ26内のガスの温度を測定するため、チャンバ26内に配置された熱電対である。
図1は1つの温度センサを示すが、追加の温度センサを使用できることは認められよう。温度センサ34は、測定温度を示す信号を発生し、これをコントローラ60に対する追加入力として供給する。コントローラ60は、少なくとも部分的にこの温度信号に基づいて、ビームステアリングシステム32に供給する制御信号を発生する。
【0031】
[00034] 以下で検討するように、小滴の質量中心に対する小滴に衝突するビームのオフセット(「傾斜」)を制御することで、EUV発生性能を犠牲にすることなくデブリ制御を最適化できることがわかっている。具体的には、負の傾斜(意図的に、小滴の質量中心からわずかに一方側にずらして小滴にビームを衝突させる)によって、EUV放射生成に大きく影響を及ぼすことなく、ターゲット材料の堆積を回避することが望ましいチャンバ26のエリア内でターゲット材料堆積を最小限に抑制できることがわかっている。また、チャンバ内の温度分布はターゲット材料デブリの分布と相関があることもわかっている。従ってコントローラ60は、制御信号を発生するための少なくとも部分的な基礎として温度センサ34からの入力を使用する。これは、EUV発生の最適化を担う制御ループと併用される。デブリ生成及びEUV発生を実質的に分離することで、デブリ生成を制限しながら良好なEUV生成を達成できることがわかっている。
【0032】
[00035] 続いて
図2を見ると、ビームステアリングシステム32は1つ以上のステアリングミラー32a、32b、及び32cを含み得ることがわかる。3つのミラーが図示されているが、ビームを誘導するため4つ以上のステアリングミラー又は1つだけのステアリングミラーを用いてもよいことは認められよう。更に、ミラーが図示されているが、プリズムのような他の光学系が使用され得ること、及びステアリング光学系のうち1つ以上がチャンバ26内部に位置決めされてプラズマ発生デブリに露呈され得ることは認められよう。例えば、2006年2月21日に出願された「LASER PRODUCED PLASMA EUV LIGHT SOURCE」と題する米国特許第7,598,509号を参照のこと。この全体的な内容は援用により本願に含まれる。図示されている実施形態では、ステアリングミラー32a、32b、及び32cの各々は、ステアリングミラー32a、32b、及び32cの各々を2つの次元の一方又は双方に個別に移動させ得る可動アクチュエータ(tip-tilt actuator)36a、36b、及び36c上に搭載することができる。
【0033】
[00036] CO
2レーザビームのY軸傾斜の極めて小さい変化は、EUV発生に影響を及ぼすことなくターゲット材料堆積に極めて大きい変化を引き起こす可能性があることに留意するべきである。
図3は、CO
2レーザビーム12と小滴14の相互作用のジオメトリに適用されるY傾斜の概念を示す図である。Z軸は、レーザビームの公称(Y傾斜なし)伝搬に沿った方向である。小滴は、Z軸に対して垂直でありグローバル座標系(global frame of reference)において水平方向であるX軸に沿って進む。小滴進行経路のZ座標はZ=0である。Y傾斜によって、ビームは、ビーム焦点スポットを通過する際に小滴中心からわずかに一方側にずれて当たる。従って
図3に示されている状況では、ビーム12は、小滴14の一方側(公称ビーム経路又はZ軸よりも下方)にずれて小滴に当たる(この一方側に焦点を有する)。これは負のY傾斜として記載される。Y傾斜は、ビームがY傾斜ゼロの条件で小滴に当たる位置からのビームが小滴に当たる位置の変位として測定される。例えば、負のY傾斜の値は典型的に-10ミクロン程度であり得る。
図3において、小滴は球形に示されているが、小滴の形状は必ずしも球形でなく、例えばプレパルスによって平坦化された場合は他の形状をとり得ることは理解されよう。従って、この変位は小滴の質量中心から測定される。
【0034】
[00037] CO2ビームと小滴の相対的な配向が、ターゲット材料デブリの流れを制御する。CO2ビームが小滴のちょうど中心にある場合、ターゲット材料デブリはZ軸に平行なビーム伝搬方向に伝搬する傾向がある。ビーム中心を小滴中心に対してシフトさせると、デブリフラックスは傾斜する、すなわちZ軸に対して垂直な成分を持って伝搬する。ビームの実際のY傾斜は、レーザと小滴のミスアライメントによって生じるターゲット材料デブリフラックスの傾斜に比べて無視できる程度に小さい。20マイクロラジアン程度の実際のY傾斜が、0.1ラジアン程度すなわち5000倍大きいデブリ方向のシフトを引き起こすことがわかっている。
【0035】
[00038] ビームと小滴のミスアライメントをどのように達成するかはそれほど重要でない。これは、ビームを誘導することでビーム中心の位置をシフトさせることによって達成できるか、又は、小滴の解放ポイントを操作することで小滴の位置をシフトさせることによって達成できる。また、小滴の軌道が垂直成分を有する場合、パルスタイミングに対する小滴解放のタイミングを単独で、又は小滴の変位及び/又はレーザシフトと併用して制御することによって、所望の変位/ミスアライメントを達成することも可能である。
【0036】
[00039] 負のY傾斜では、容器の所与の部分におけるターゲット材料堆積率を、正のY傾斜での堆積率よりも著しく低減できることがわかっている。温度センサによって測定され、ターゲット材料堆積率を示す温度は、高い堆積率の正のY傾斜条件よりも、低い堆積率の負のY傾斜条件の方が低かった。同時に、関連するY傾斜の量(約10ミクロン)はEUV生成に影響を及ぼさなかった。従って、温度センサの位置から離れる方へCO2ビームを傾斜させている負の傾斜では、ターゲット材料堆積率は極めて小さくなるが、正のY傾斜(温度センサの位置へ近付く方へ)では、ターゲット材料蓄積率は極めて高い値に達する。
【0037】
[00040] 現在、プラズマから温度センサ位置までの距離は約200mm~約250mmの範囲内であることが好ましい。温度センサは、環境に露呈された金属接合を有する「むき出しの(bare)」熱電対である可能性がある。このような熱電対を構成するもののような材料は、Hラジカルに対する高い再結合確率を有し、結果としてこのタイプの熱電対は、ガス温度と、Hラジカル再結合に起因する余分な熱との和である高い温度値を測定する。他のタイプは「ガラス」熱電対であり、この場合、金属接合はガラス毛細管に挿入されて環境との直接接触からこれを保護する。ガラス上でのHラジカルの再結合確率はむき出しの金属よりもはるかに低く(約1000分の1である)、このためガラス熱電対は、ガス温度のみによって決定される低い値を示す。しかしながら現実問題として、熱電対がデブリ蓄積に露呈される適用例では、ガラス熱電対は比較的迅速にターゲット材料デブリで覆われるので、測定される温度の差は大きくない。現在好適な実施形態では、むき出しの熱電対が使用される。
【0038】
[00041] 所望の制御ループを生成するため、少なくとも1つの熱電対は、デブリ蓄積を最小限に抑えることが望ましい容器内のエリア、すなわちそのエリアへ向かうデブリの流れを最小限に抑えることが望ましい容器内のエリアに設置しなければならない。一例として、そのようなエリアの1つはコレクタの直上の容器の壁である。このエリアにおけるターゲット材料デブリ蓄積は、ターゲット材料がコレクタ上に落ちるリスクを引き起こす。
図4は、熱電対34が回転対称の容器26の内壁44の周囲で、コレクタ30と中間位置40との間の位置に位置決めされている例を示す。
図4は6つの熱電対34が使用されている構成を示すが、これより少ないか又は多い熱電対を使用してもよいこと、及び、熱電対の異なる構成及び位置決めを使用してもよいことは理解されよう。各熱電対は好ましくは、壁44からガス内に約2cm突出する小径ワイヤ(直径1mm未満)として構成される。このような熱電対では、ワイヤがEUV伝搬経路内に少し突出した場合であっても、全体のEUV損失は無視できる程度である。
図4の黒く塗りつぶした二重の矢印は、デブリ伝搬方向を示している。白い矢印は、H
2をコレクタ30から離れる方へ流すための好ましい構成を示す。要素42は、H
2から汚染物質を除去するためのスクラバである。矢印Gは重力の方向を示す。また、放射源10とスキャナ50との間の境界を画定するラインも示されている。
【0039】
[00042] 熱電対の温度読み取り値は、入力としてコントローラ60に供給される。
図4は1つのそのような接続46を示しているが、熱電対34の各々が信号をコントローラ60に供給するように接続されていることは理解されよう。次いでコントローラ60は、デブリ蓄積を最小限に抑えることが望ましいエリアに設置された熱電対からの読み取り値を最小限に抑えるように、ビーム傾斜を調整するようビームステアリングシステム32を制御する。一実施形態において、熱電対、コントローラ、及びビームステアリングシステムで構成された制御ループは、以下の関係に従って誤差信号Y
errを最小限に抑えるよう動作するものとして概念化できる。
[00043] Y
err=Σ(T
i,protected)/Σ(T
i,all)
[00044] ここで、Σ(T
i,protected)はコレクタの直上のエリアにおける温度読み取り値の和であり、Σ(T
i,all)は壁周囲の全ての読み取り値の和である。
【0040】
[00045] 制御ループは、誤差信号を最小限に抑えるようにY傾斜を調整する。合計の傾斜Ytilt CO2は、EUV生成を最適化するよう動作している主要制御システムによって設定されたY傾斜値Ytilt EUVと、上述のように「デブリループ」によって設定されたY傾斜値補正Ytilt Debrisの和である。従って、以下が成り立つ。
[00046] Ytilt CO2=Ytilt EUV+Ytilt Debris
【0041】
[00047] 好ましくは、Ytilt Debrisの最大絶対値は、好ましくは約10ミクロン~約20ミクロンの範囲内の所定値に制限しなければならない。むろん、好適な値は「傾斜」の実施に応じて異なる。例えばターゲットが平坦である場合、平坦なターゲットの中点とビームが当たる場所との間で変位を生成することにより「傾斜」を実施して、デブリ分布を変化させることが可能である。
【0042】
[00048] 局所温度の測定は、Snの局所濃度に関する有用な情報を与えると考えられる。対流及び拡散の物理方程式は、熱及びSn濃度の双方に当てはまる。また、熱源及びSn源は照射場所において概ね一致する。従って、測定された温度がSn濃度の指示を与えると推論することは理にかなっている。この相関は必ずしも均一でないが、相関が高いことが予想できる位置で確実に温度を測定するよう注意するならば、制御ループに対する入力を与えるには充分である。原理上、必要なのは、メトロロジ及びコントローラにとって大きい信号対雑音が存在する位置に温度センサを配置することだけである。
【0043】
[00049] 例えば、入射するEUV放射から熱電対を遮蔽して、誤った温度の検知を防止することが好ましい。また、壁における境界条件は相関を壊す可能性がある。Snが壁で凝縮することができるか又は凝縮した場合、壁におけるSn濃度はゼロに近付く可能性があるが、壁は温度制御される可能性がある。従って、熱電対を最も近い壁から充分に離して配置して、壁における境界条件が温度測定を過度にゆがめるのを防止することが望ましい。現在、温度は壁から約2cmの位置で測定することが望ましいが、温度は壁から25cm又はそれ以上離れた位置で測定してもよい。各熱電対は好ましくは、好適な長さだけガス内に突出する小径ワイヤ(直径1mm未満)として構成される。また、いくつかの用途では、別の熱電対をチャンバの反対側に位置決めして、より高いか又はより低いSN濃度の存在下で壁の近傍の温度測定を行うことが好ましい場合がある。
【0044】
[00050] 上述のように、入射ビームとターゲット材料との間の相互作用は、チャンバ内のターゲット材料の分散に影響を与えるように制御される。所与の位置の温度が、その位置におけるターゲット材料濃度の指示として測定される。測定された温度は次いで、その位置で所望のターゲット材料濃度を得るためビーム/ターゲット材料の相互作用を制御する制御ループに対する入力として使用される。
【0045】
[00051] Snの小滴を用いたいくつかのシステムにおける例として、レーザは各小滴に2つのパルスを順次供給する。第1のパルスはプレパルスと呼ばれ、第2のパルスはメインパルスと呼ばれる。プレパルスの目的は小滴のプリコンディション(precondition)であり、メインパルスの目的は、プレパルスによる調節の後に小滴を蒸発させることである。例えばプレパルスが小滴に正面から当たった場合、ターゲットは平坦に拡大して、傾斜していないメインパルスに平坦な面を向ける「平坦ターゲット」と呼ばれるものになる。小滴が蒸発する位置は、好ましくはコレクタの一次焦点である。言い換えると、スキャナにリレーされる蒸発イベントの良好な合焦像を得るためには、一次焦点でメインパルスをターゲットに衝突させることが好ましい。
【0046】
[00052] 上述のように、プレパルスが小滴に衝突する位置を変位させることによって「傾斜」を達成できる。これはターゲットをある角度に拡大させ、これによってメインパルスのための傾斜ターゲットが生じる。変位を生成するため、小滴を衝突の時に一次焦点に置くと共にレーザを変位させるか、又はレーザを一次焦点に誘導すると共に小滴と一次焦点との間で変位を生じることができる。傾斜は、「傾斜した」デブリ放出を決定するものである。しかしながら、イオン分布に影響を及ぼす異なる方法もある(例えばターゲット形状、ターゲット傾斜、メインパルス変位)。どの方法を使用する場合であっても、熱電対によって測定されるデブリパターンが制御ループにおけるフィードバックとして使用される。
【0047】
[00053] 言い換えると、ビームと小滴の相互作用は、CO2ビームのポインティング(傾斜)を調整することによって変更できる。また、ビームと小滴の相互作用は、ビームが小滴に当たる水平方向又は垂直方向の位置を調整することによって調整可能である。これは、ターゲットデリバリ機構92が小滴の解放ポイントを変えるようにターゲットデリバリ制御システム90を制御することによって達成できる。また、これは、小滴が垂直方向に進むシステムにおいて小滴解放とパルス発生の相対的なタイミングを変えることによっても達成できる。このように小滴/ビームの相互作用を制御することは、制御ループの動作によって生じるプラズマ位置のシフト量を低減する利点を有することができる。
【0048】
[00054] CO2ビームのY傾斜又は小滴/ビーム相互作用の位置のいずれかを調整した後、プラズマ位置の調整が望ましい場合は、CO2ビームと小滴/ビーム相互作用の位置の双方を同時に新しい位置に移動させる(傾斜又はシフトさせる)ことができる(これら2つの間のアライメントに影響を及ぼすことなく)。このY傾斜と小滴/ビーム相互作用位置の同時シフトは、デブリフラックス又はEUV生成に影響を与えない。しかしながら、ループのいずれかにおいて更に調整が必要な場合は、プロセスを繰り返すことができる。
【0049】
[00055] 更に別の実施形態では、温度読み取り値を用いて、例えばZ軸と同一線上のような予測できる方向にデブリの流れを誘導して、容器内の全ての場所で壁に対するターゲット材料堆積を最小限に抑えることができる。この場合、制御ループは以下の値を最小限に抑えるように動作する。
[00056] Yerr=Σ(Ti,all)
【0050】
[00057] また、この制御ループを用いてコレクタ上のデブリフラックスを最小限に抑えることも可能である。この場合、1つ以上の温度センサの位置をコレクタの方へ(Z軸に沿って)シフトさせなければならない。また、計算流体力学(CFD:computational fluid dynamics)シミュレーションに基づいて最も敏感なデブリの指標であると決定されたエリア内に温度センサを設置することも可能である。
【0051】
[00058] 従って、EUV源内で熱電対のような極めて小型かつ簡単な温度センサを用いることにより、H2流に伴うターゲット材料デブリを安定化し、最小限に抑え、誘導することを可能とするデブリ制御ループを設計できる。コレクタの重力的に上方に位置決めされた表面から離れる方へ流れを誘導する能力は、特にコレクタ寿命を延長するため使用することができる。
【0052】
[00059] 上述の記載は1つ以上の実施形態の例を含む。むろん、上述の実施形態を説明する目的でコンポーネント又は方法の全ての考えられる組み合わせを記載することは不可能であり、様々な実施形態の多くの別の組み合わせ及び並べ換えが可能であることは当業者には認められよう。従って、記載されている実施形態は、添付の特許請求の範囲の精神及び範囲内に該当する全てのそのような代替、修正、及び変形を包含することが意図される。更に、「含む(include)」という用語が発明を実施するための形態又は特許請求の範囲のいずれかで使用される限り、このような用語は、「備える(comprising)」という用語が特許請求項において移行語として使用される場合に解釈されるのと同様に、包括的(inclusive)であることが意図される。更に、記載されている態様及び/又は実施形態の要素は単数形で記載又は特許請求され得るが、単数に対する限定が明示的に述べられていない限り、複数形も想定される。更に、特に明記しない限り、任意の態様及び/又は実施形態の全て又は一部を、任意の他の態様及び/又は実施形態の全て又は一部と共に利用することができる。本発明の他の態様は以下の番号を付けた条項に述べられている。
【0053】
条項1
EUV放射を発生するための装置であって、
容器と、
レーザ放射を発生するように適合されたレーザと、
レーザ放射を受容するように配置され、レーザ放射を容器内の照射領域に誘導するように適合されたレーザステアリングシステムと、
レーザによって照射される照射領域にターゲット材料を送出するように適合されたターゲット材料デリバリシステムであって、レーザによるターゲット材料の照射がEUV放射を発生する、ターゲット材料デリバリシステムと、
照射領域内のターゲット材料の位置を調整するための、ターゲット材料デリバリシステムに結合されたターゲット材料ステアリングシステムと、
EUV放射の少なくとも1つの動作パラメータを測定するように、かつ、動作パラメータの値を示す第1の信号を発生するように適合されたEUV放射メトロロジシステムと、
容器内の位置に配置され、位置における容器内の温度を測定するように、かつ、測定した温度の値を示す温度信号を発生するように適合された温度センサと、
第1の信号及び温度信号を受信し、少なくとも部分的に測定した温度に基づいて制御信号を発生し、更に、制御信号をレーザステアリングシステム及びターゲット材料ステアリングシステムのうち少なくとも1つに提供して照射領域におけるレーザ放射とターゲット材料との相互作用を調整するように適合されたコントローラと、
を備える装置。
【0054】
条項2
容器内に位置付けられたEUV光学要素を更に備え、温度センサが配置されている位置はEUV光学要素の重力的に上方である、条項1に記載の装置。
【0055】
条項3
EUV光学要素はコレクタミラーを含む、条項2に記載の装置。
【0056】
条項4
温度センサが配置されている位置は容器の内壁上である、条項1に記載の装置。
【0057】
条項5
温度センサは熱電対を含む、条項1に記載の装置。
【0058】
条項6
容器内の第2の位置に配置され、第2の位置における容器内の第2の温度を測定するように、かつ、第2の測定した温度の値を示す第2の温度信号を発生するように適合された第2の温度センサを更に備え、コントローラは、第2の温度信号を受信するように、かつ、少なくとも部分的に第2の測定した温度に基づいて制御信号を発生するように適合されている、条項1に記載の装置。
【0059】
条項7
EUV放射を発生するための装置であって、
容器と、
レーザ放射を発生するように適合されたレーザと、
レーザ放射を受容するように配置され、レーザ放射を容器内の照射領域に誘導するように適合されたレーザステアリングシステムと、
レーザによって照射される照射領域にターゲット材料を送出するように適合されたターゲット材料デリバリシステムであって、レーザによるターゲット材料の照射がEUV放射を発生する、ターゲット材料デリバリシステムと、
照射領域内のターゲット材料の位置を調整するための、ターゲット材料デリバリシステムに結合されたターゲット材料ステアリングシステムと、
容器内に位置付けられたEUV光学要素と、
EUV光学要素の重力的に上方の容器内の第1の位置に配置され、第1の位置における容器内の第1の測定温度を測定するように、かつ、第1の測定温度の値を示す第1の温度信号を発生するように適合された第1の温度センサと、
容器内の第2の位置に配置され、第2の位置における容器内のガスの第2の温度を測定するように、かつ、第2の測定温度の値を示す第2の温度信号を発生するように適合された第2の温度センサと、
第1の信号及び温度信号を受信するように、かつ、少なくとも部分的に第1の測定温度及び第2の測定温度に基づいて制御信号を発生して、制御信号をレーザステアリングシステムに提供して、レーザ放射が照射領域においてターゲット材料に当たる角度を調整するように適合されたコントローラと、
を備える装置。
【0060】
条項8
EUV光学要素はコレクタミラーを含む、条項7に記載の装置。
【0061】
条項9
第1の温度センサは容器の内壁上に配置され、第2の温度センサは容器の内壁上に配置されている、条項7に記載の装置。
【0062】
条項10
第1の温度センサは第1の熱電対を含み、第2の温度センサは第2の熱電対を含む、条項7に記載の装置。
【0063】
条項11
EUV放射を発生するための装置であって、
容器と、
レーザビームを発生するように適合されたレーザと、
レーザビームを受容するように配置され、レーザビームを容器内の照射領域に誘導すると共に照射領域におけるレーザビームの傾斜を調整するように適合されたレーザステアリングシステムと、
レーザビームによって照射される照射領域にターゲット材料を送出するように適合されたターゲット材料デリバリシステムであって、レーザビームによるターゲット材料の照射がEUV放射を発生する、ターゲット材料デリバリシステムと、
容器内の位置に配置され、位置における容器内の温度を測定するように、かつ、測定した温度の値を示す温度信号を発生するように適合された温度センサと、
温度信号を受信し、少なくとも部分的に温度信号の値に基づいて制御信号を発生し、更に、制御信号をレーザステアリングシステムに提供してレーザビームの傾斜を調整するように適合されたコントローラと、
を備える装置。
【0064】
条項12
傾斜は温度を所定の最大値未満に維持するように調整される、条項11に記載の装置。
【0065】
条項13
容器内の第2の位置に配置され、第2の位置における容器内の第2の温度を測定するように、かつ、測定した温度の第2の値を示す第2の温度信号を発生するように適合された第2の温度センサを更に備え、コントローラは更に、第2の温度信号を受信し、少なくとも部分的に第2の温度信号の第2の値に基づいて制御信号を発生し、制御信号をレーザステアリングシステムに提供してレーザビームの傾斜を調整するように適合されている、条項11に記載の装置。
【0066】
条項14
容器内に位置付けられたEUV光学要素を更に備え、温度センサが配置されている位置はEUV光学要素の重力的に上方である、条項13に記載の装置。
【0067】
条項15
EUV光学要素はコレクタミラーを含む、条項14に記載の装置。
【0068】
条項16
温度センサが配置されている位置は容器の内壁上である、条項14に記載の装置。
【0069】
条項17
温度センサは熱電対を含み、第2の温度センサは熱電対を含む、条項13に記載の装置。
【0070】
条項18
EUV放射を発生するための装置であって、
容器と、
レーザビームを発生するように適合されたレーザと、
レーザビームを受容するように配置され、レーザビームを容器内の照射領域に誘導すると共に照射領域におけるレーザビームの傾斜を調整するように適合されたレーザステアリングシステムと、
レーザビームによって照射される照射領域にターゲット材料を送出するように適合されたターゲット材料デリバリシステムであって、レーザビームによるターゲット材料の照射がEUV放射を発生する、ターゲット材料デリバリシステムと、
容器内の各位置に配置され、各位置における容器内の温度を測定するように、かつ、測定した温度の値を示す複数の温度信号を発生するように適合された複数の温度センサと、
複数の温度信号を受信し、少なくとも部分的に温度信号の値に基づいて制御信号を発生し、更に、制御信号をレーザステアリングシステムに提供してレーザビームの傾斜を調整するように適合されたコントローラと、
を備える装置。
【0071】
条項19
容器内に位置付けられたEUV光学要素を更に備え、複数の温度センサのうち少なくとも1つが配置されている位置はEUV光学要素の重力的に上方である、条項18に記載の装置。
【0072】
条項20
複数の温度センサの各々は熱電対を含む、条項18に記載の装置。