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特許7313153重合性液晶組成物、偏光膜およびその製造方法、偏光板ならびに表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-13
(45)【発行日】2023-07-24
(54)【発明の名称】重合性液晶組成物、偏光膜およびその製造方法、偏光板ならびに表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20230714BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20230714BHJP
   G02F 1/13363 20060101ALI20230714BHJP
   G02F 1/1337 20060101ALI20230714BHJP
【FI】
G02B5/30
G02F1/1335 510
G02F1/13363
G02F1/1337 510
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019008683
(22)【出願日】2019-01-22
(65)【公開番号】P2019133148
(43)【公開日】2019-08-08
【審査請求日】2021-12-14
(31)【優先権主張番号】P 2018016715
(32)【優先日】2018-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100162710
【弁理士】
【氏名又は名称】梶田 真理奈
(72)【発明者】
【氏名】太田 陽介
(72)【発明者】
【氏名】幡中 伸行
(72)【発明者】
【氏名】村野 耕太
(72)【発明者】
【氏名】▲徳▼田 真芳
【審査官】吉川 陽吾
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/022610(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0003401(US,A1)
【文献】国際公開第2018/012579(WO,A1)
【文献】特表2007-510946(JP,A)
【文献】特開2013-037353(JP,A)
【文献】国際公開第2014/006962(WO,A1)
【文献】特開2014-012836(JP,A)
【文献】特開2012-021068(JP,A)
【文献】特表2000-507362(JP,A)
【文献】特開2011-158671(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
G02F 1/1335
G02F 1/13363
G02F 1/1337
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの重合性基を有し、スメクチック液晶性を示す重合性液晶化合物、二色性色素および酸化防止剤を含む重合性液晶組成物であって、
前記重合性液晶化合物が有する重合性基がラジカル重合性基であって、
前記酸化防止剤が、4-n-オクチルオキシフェノール、4-n-デシルオキシフェノール、4-n-ドデシルオキシフェノール、4,4’-ビフェノール、4-エトキシ-4’-ヒドロキシビフェニル、4-ブトキシ-4’-ヒドロキシビフェニル、4-オクチロキシ-4’-ヒドロキシビフェニル、4-デシロキシ-4’-ヒドロキシビフェニルおよび4-ドデシロキシ-4’-ヒドロキシビフェニルから選択され、かつ、前記重合性液晶化合物との関係において式(1):
0.8℃ ≦ T1-T2 (1)
〔式中、T1は前記重合性液晶化合物を大気中で130℃まで昇温した後、5℃/分で23℃まで冷却しながら相転移温度を測定した際に最も低温度側で発現する液晶相への相転移温度であり、T2は100質量部の前記重合性液晶化合物と1質量部の前記酸化防止剤とからなる混合物を、大気中で130℃まで昇温した後5℃/分で23℃まで冷却しながら相転移温度を測定した際に最も低温度側で発現する液晶相への相転移温度である〕
を満たす、重合性液晶組成物。
【請求項2】
さらに溶剤を含む、請求項1に記載の重合性液晶組成物。
【請求項3】
二色性色素がアゾ色素である、請求項1または2に記載の重合性液晶組成物。
【請求項4】
重合性液晶化合物が有する重合性基がアクリロイルオキシ基である、請求項1~3のいずれかに記載の重合性液晶組成物。
【請求項5】
重合性液晶化合物100質量部に対して0.1~15質量部の酸化防止剤を含む、請求項1~4のいずれかに記載の重合性液晶組成物。
【請求項6】
二色性色素、重合性液晶化合物および酸化防止剤を含む重合性液晶組成物の硬化物である偏光膜であって、
X線回折測定において該偏光膜がブラッグピークを示し、
前記酸化防止剤が、4-n-オクチルオキシフェノール、4-n-デシルオキシフェノール、4-n-ドデシルオキシフェノール、4,4’-ビフェノール、4-エトキシ-4’-ヒドロキシビフェニル、4-ブトキシ-4’-ヒドロキシビフェニル、4-オクチロキシ-4’-ヒドロキシビフェニル、4-デシロキシ-4’-ヒドロキシビフェニルおよび4-ドデシロキシ-4’-ヒドロキシビフェニルから選択され、かつ、前記重合性液晶化合物との関係において式(1):
0.8℃ ≦ T1-T2 (1)
〔式中、T1は前記重合性液晶化合物を大気中で130℃まで昇温した後、5℃/分で23℃まで冷却しながら相転移温度を測定した際に最も低温度側で発現する液晶相への相転移温度であり、T2は100質量部の前記重合性液晶化合物と1質量部の前記酸化防止剤とからなる混合物を、大気中で130℃まで昇温した後5℃/分で23℃まで冷却しながら相転移温度を測定した際に最も低温度側で発現する液晶相への相転移温度である〕
を満たす、偏光膜。
【請求項7】
請求項に記載の偏光膜と位相差フィルムとを備えてなる偏光板。
【請求項8】
位相差フィルムが式(X):
100 ≦ Re(550) ≦ 180 (X)
〔式中、Re(550)は波長550nmにおける面内位相差値を表す〕
を満たし、前記位相差フィルムの遅相軸と前記偏光膜の吸収軸との成す角度が実質的に45°である、請求項に記載の偏光板。
【請求項9】
位相差フィルムが式(Y):
Re(450)/Re(550) < 1 (Y)
〔式中、Re(450)およびRe(550)は、それぞれ、波長450nmおよび550nmにおける面内位相差値を表す〕
を満たす、請求項またはに記載の偏光板。
【請求項10】
位相差フィルムが、重合性液晶化合物の配向状態における重合体から構成される、請求項のいずれかに記載の偏光板。
【請求項11】
請求項に記載の偏光膜、または、請求項10のいずれかに記載の偏光板を備えてなる表示装置。
【請求項12】
請求項1~のいずれかに記載の重合性液晶組成物の塗膜を形成すること、
前記塗膜から溶剤を除去すること、
重合性液晶化合物が液体相に相転移する温度以上まで昇温した後に降温して、該重合性液晶化合物をスメクチック相に相転移させること、および、
前記スメクチック相を保持したまま重合性液晶化合物を重合させること
を含む、偏光膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合性液晶組成物、偏光膜およびその製造方法、並びに、偏光板およびそれを備える表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、偏光板は、液晶表示パネルや有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)表示パネル等の各種画像表示パネルにおいて、液晶セルや有機EL表示素子等の画像表示素子に貼合されて用いられている。このような偏光板として、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムにヨウ素や二色性染料等の二色性を示す化合物を吸着配向させた偏光子の少なくとも一方の面に、接着層を介して、トリアセチルセルロースフィルム等の保護層を積層した構成を有する偏光板が知られている。
【0003】
近年、画像表示パネル等のディスプレイに対して薄型化の継続的な要求が存在しており、その構成要素の1つである偏光板や偏光子に対してもさらなる薄型化が要求されている。このような要求に対して、例えば、重合性液晶化合物と二色性を示す化合物とからなる薄型のホストゲスト型偏光子が提案されている(特許文献1および特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2007-510946号公報
【文献】特開2013-37353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
更に、近年、戸外を含め様々な場所でディスプレイが使用されることに伴い、耐光性に優れた偏光子の開発が求められている。
そこで、本発明は、太陽光に曝された場合の二色性色素の変性に対する高い抑制効果を有し、経時的な偏光性能の低下を抑制し得る偏光膜(偏光子)を形成するのに適した重合性液晶組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下の好適な態様を提供するものである。
[1]少なくとも1つの重合性基を有し、スメクチック液晶性を示す重合性液晶化合物、二色性色素および酸化防止剤を含む重合性液晶組成物であって、
前記重合性液晶化合物が有する重合性基がラジカル重合性基であって、
前記酸化防止剤が、前記重合性液晶化合物との関係において式(1):
0.8℃ ≦ T1-T2 (1)
〔式中、T1は前記重合性液晶化合物を大気中で130℃まで昇温した後、5℃/分で23℃まで冷却しながら相転移温度を測定した際に最も低温度側で発現する液晶相への相転移温度であり、T2は100質量部の前記重合性液晶化合物と1質量部の前記酸化防止剤とからなる混合物を、大気中で130℃まで昇温した後5℃/分で23℃まで冷却しながら相転移温度を測定した際に最も低温度側で発現する液晶相への相転移温度である〕
を満たす、重合性液晶組成物。
[2]さらに溶剤を含む、前記[1]に記載の重合性液晶組成物。
[3]二色性色素がアゾ色素である、前記[1]または[2]に記載の重合性液晶組成物。
[4]重合性液晶化合物が有する重合性基がアクリロイルオキシ基である、前記[1]~[3]のいずれかに記載の重合性液晶組成物。
[5]重合性液晶組成物100質量部に対して0.1~15質量部の酸化防止剤を含む、前記[1]~[4]のいずれかに記載の重合性液晶組成物。
[6]酸化防止剤がフェノール系化合物、脂環式アルコール系化合物およびアミン系化合物からなる群より選択される少なくとも1種である、前記[1]~[5]のいずれかに記載の重合性液晶組成物。
[7]酸化防止剤が式(2)、(3)および(4):
【化1】
〔式(2)および(3)中、R~Rは、それぞれ独立して、-H、-OH、-NH、炭素数1~12の分枝若しくは非分枝アルキル基、または、炭素数1~12の分枝若しくは非分枝アルコキシ基であり、式(2)および(3)において、それぞれ、R~Rの少なくとも1つは-OHまたは-NHである〕
で表されるいずれかの構造を有する、前記[1]~[6]のいずれかに記載の重合性液晶組成物。
[8]酸化防止剤が、式(5):
-L-(A-L)-A (5)
[式中、
およびLは、それぞれ独立して、単結合または二価の連結基であり、
は、式(2)、(3)または(4):
【化2】
〔式(2)および(3)中、R~Rは前記[7]と同様に定義される〕
で表される基であり、
は、式(6)または(7):
【化3】
〔式(6)および(7)中、R~Rは、それぞれ独立して、-H、-OH、-NH、炭素数1~12の分枝若しくは非分枝アルキル基、または、炭素数1~12の分枝若しくは非分枝アルコキシ基である〕
で表される基であり、
は、式(8)または(9):
【化4】
〔式(8)および(9)中、R10~R14は、それぞれ独立して、-H、-OH、-NH、炭素数1~12の分枝若しくは非分枝アルキル基、または、炭素数1~12の分枝若しくは非分枝アルコキシ基である〕
で表される基であり、nは0~2の整数であり、nが2の場合、2つのAは互いに同一であっても異なっていてもよい]
で示される化合物である、前記[7]に記載の重合性液晶組成物。
[9]二色性色素、重合性液晶化合物および酸化防止剤を含む重合性液晶組成物の硬化物である偏光膜であって、
X線回折測定において該偏光膜がブラッグピークを示し、
前記酸化防止剤が、前記重合性液晶化合物との関係において式(1):
0.8℃ ≦ T1-T2 (1)
〔式中、T1は前記重合性液晶化合物を大気中で130℃まで昇温した後、5℃/分で23℃まで冷却しながら相転移温度を測定した際に最も低温度側で発現する液晶相への相転移温度であり、T2は100質量部の前記重合性液晶化合物と1質量部の前記酸化防止剤とからなる混合物を、大気中で130℃まで昇温した後5℃/分で23℃まで冷却しながら相転移温度を測定した際に最も低温度側で発現する液晶相への相転移温度である〕
を満たす、偏光膜。
[10]前記[9]に記載の偏光膜と位相差フィルムとを備えてなる偏光板。
[11]位相差フィルムが式(X):
100 ≦ Re(550) ≦ 180 (X)
〔式中、Re(550)は波長550nmにおける面内位相差値を表す〕
を満たし、前記位相差フィルムの遅相軸と前記偏光膜の吸収軸との成す角度が実質的に45°である、前記[10]に記載の偏光板。
[12]位相差フィルムが式(Y):
Re(450)/Re(550) < 1 (Y)
〔式中、Re(450)およびRe(550)は、それぞれ、波長450nmおよび550nmにおける面内位相差値を表す〕
を満たす、前記[10]または[11]に記載の偏光板。
[13]位相差フィルムが、重合性液晶化合物の配向状態における重合体から構成される、前記[10]~[12]のいずれかに記載の偏光板。
[14]前記[9]に記載の偏光膜、または、前記[10]~[13]のいずれかに記載の偏光板を備えてなる表示装置。
[15]前記[1]~[8]のいずれかに記載の重合性液晶組成物の塗膜を形成すること、
前記塗膜から溶剤を除去すること、
重合性液晶化合物が液体相に相転移する温度以上まで昇温した後に降温して、該重合性液晶化合物をスメクチック相に相転移させること、および、
前記スメクチック相を保持したまま重合性液晶化合物を重合させること
を含む、偏光膜の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、太陽光に曝された場合の二色性色素の変性に対する高い抑制効果を有し、経時的な偏光性能の低下を抑制し得る偏光膜を形成するのに適した重合性液晶組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、本発明の範囲はここで説明する実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲で種々の変更をすることができる。
【0009】
<重合性液晶組成物>
本発明の重合性液晶組成物は、少なくとも1つの重合性基を有し、スメクチック液晶性を示す重合性液晶化合物(以下、「重合性液晶化合物(A)」ともいう)を含む。スメクチック液晶性を示す重合性液晶化合物を用いることにより、配向秩序度の高い偏光膜を形成することができる。重合性液晶化合物(A)の示す液晶状態はスメクチック相(スメクチック液晶状態)であり、より高い配向秩序度を実現し得る観点から、高次スメクチック相(高次スメクチック液晶状態)であることがより好ましい。ここで、高次スメクチック相とは、スメクチックB相、スメクチックD相、スメクチックE相、スメクチックF相、スメクチックG相、スメクチックH相、スメクチックI相、スメクチックJ相、スメクチックK相およびスメクチックL相を意味し、これらの中でも、スメクチックB相、スメクチックF相およびスメクチックI相がより好ましい。液晶性はサーモトロピック性液晶でもリオトロピック性液晶でもよいが、緻密な膜厚制御が可能な点でサーモトロピック性液晶が好ましい。
重合性液晶化合物はモノマーであってもよいが、重合性基が重合したオリゴマーであってもポリマーであってもよい。
【0010】
重合性液晶化合物(A)は、少なくとも1つの重合性基を有する液晶化合物である。ここで、重合性基とは、重合開始剤から発生する活性ラジカルや酸などによって重合反応に関与し得る基のことをいう。
重合性液晶化合物(A)が有する重合性基としては、ビニル基、ビニルオキシ基、1-クロロビニル基、イソプロペニル基、4-ビニルフェニル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、オキシラニル基、オキセタニル基等が挙げられる。中でも、ラジカル重合性基が好ましく、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニル基、ビニルオキシ基がより好ましく、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基が更に好ましく、アクリロイルオキシ基が更により好ましい。
【0011】
重合性液晶化合物(A)としては、少なくとも1つの重合性基を有し、スメクチック液晶性を示す液晶化合物であれば特に限定されず、公知の重合性液晶化合物を用いることができる。
重合性液晶化合物(A)としては、例えば、式(A1)で表される化合物及び該化合物の重合体(以下、該化合物及び該重合体を総称して、「重合性液晶化合物(A1)」ということがある)が挙げられる。
-V-W-X-Y-X-Y-X-W-V-U (A1)
[式(A1)中、
、XおよびXは、互いに独立して、2価の芳香族基または2価の脂環式炭化水素基を表し、ここで、該2価の芳香族基または2価の脂環式炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のフルオロアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、シアノ基またはニトロ基に置換されていてもよく、該2価の芳香族基または2価の脂環式炭化水素基を構成する炭素原子が、酸素原子または硫黄原子または窒素原子に置換されていてもよい。ただし、X、XおよびXのうち少なくとも1つは、置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基または置換基を有していてもよいシクロヘキサン-1,4-ジイル基である。
およびYは、互いに独立して、単結合または二価の連結基である。
は、水素原子または重合性基を表わす。
は、重合性基を表わす。
およびWは、互いに独立して、単結合または二価の連結基である。
およびVは、互いに独立して、置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルカンジイル基を表し、該アルカンジイル基を構成する-CH-は、-O-、-CO-、-S-またはNH-に置き換わっていてもよい。]
【0012】
重合性液晶化合物(A1)において、X、XおよびXは、互いに独立して、好ましくは、置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基、または、置換基を有していてもよいシクロヘキサン-1,4-ジイル基であり、X、XおよびXのうち少なくとも1つは、置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基、または、置換基を有していてもよいシクロヘキサン-1,4-ジイル基である。特に、XおよびXは置換基を有していてもよいシクロヘキサン-1,4-ジイル基であることが好ましく、該シクロへキサン-1,4-ジイル基は、トランス-シクロへキサン-1,4-ジイル基であることがさらに好ましい。置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基、または、置換基を有していてもよいシクロへキサン-1,4-ジイル基が任意に有する置換基としては、メチル基、エチル基およびブチル基などの炭素数1~4のアルキル基、シアノ基および塩素原子、フッ素原子などのハロゲン原子が挙げられる。好ましくは無置換である。また、YおよびYが同一構造である場合、X、XおよびXのうち少なくとも1つが異なる構造であることが好ましい。X、XおよびXのうち少なくとも1つが異なる構造である場合には、スメクチック液晶性が発現しやすい傾向にある。
【0013】
およびYは、互いに独立して、-CHCH-、-CHO-、-CHCHO-、-COO-、-OCOO-、単結合、-N=N-、-CR=CR-、-C≡C-、-CR=N-または-CO-NR-が好ましい。RおよびRは、互いに独立して、水素原子または炭素数1~4のアルキル基を表わす。Yは、-CHCH-、-COO-または単結合であることがより好ましく、Yは、-CHCH-またはCHO-であることがより好ましい。また、X、XおよびXが全て同一構造である場合、YおよびYが互いに異なる構造であることが好ましい。YおよびYが互いに異なる構造である場合には、スメクチック液晶性が発現しやすい傾向にある。
【0014】
は、重合性基である。Uは、水素原子または重合性基であり、好ましくは重合性基である。UおよびUがともに重合性基であることが好ましく、ともにラジカル重合性基であることが好ましい。重合性基としては、重合性液晶化合物(A)が有する重合性基として先に例示した基と同様のものが挙げられる。Uで示される重合性基とUで示される重合性基とは、互いに異なっていてもよいが、同じ種類の基であることが好ましい。
【0015】
およびVで表されるアルカンジイル基としては、メチレン基、エチレン基、プロパン-1,3-ジイル基、ブタン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基、ヘプタン-1,7-ジイル基、オクタン-1,8-ジイル基、デカン-1,10-ジイル基、テトラデカン-1,14-ジイル基およびイコサン-1,20-ジイル基等が挙げられる。VおよびVは、好ましくは炭素数2~12のアルカンジイル基であり、より好ましくは炭素数6~12のアルカンジイル基である。
【0016】
該アルカンジイル基が任意に有する置換基としては、シアノ基およびハロゲン原子等が挙げられるが、該アルカンジイル基は、無置換であることが好ましく、無置換の直鎖状アルカンジイル基であることがより好ましい。
【0017】
およびWとしては、互いに独立に、単結合、-O-、-S-、-COO-または-OCOO-が好ましく、単結合または-O-がより好ましい。
【0018】
重合性液晶化合物(A1)としては、例えば、式(A-1)~式(A-25)で表される化合物が挙げられる。重合性液晶化合物(A1)がシクロヘキサン-1,4-ジイル基を有する場合、そのシクロヘキサン-1,4-ジイル基は、トランス体であることが好ましい。
【0019】
【化5】
【0020】
【化6】
【0021】
【化7】
【0022】
【化8】
【0023】
【化9】
【0024】
これらの中でも、式(A-2)、式(A-3)、式(A-4)、式(A-5)、式(A-6)、式(A-7)、式(A-8)、式(A-13)、式(A-14)、式(A-15)、式(A-16)および式(A-17)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。重合性液晶化合物(A1)として、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
重合性液晶化合物(A1)は、Lub等、Recl.Trav.Chim.Pays-Bas、115、321-328(1996)、または特許第4719156号などに記載の公知の方法で製造できる。
【0026】
本発明の重合性液晶組成物は、本発明の効果を損なわない限り、重合性液晶化合物(A)以外の他の重合性液晶化合物を含んでいてもよい。配向秩序度の高い偏光膜を得る観点から、重合性液晶組成物における全重合性液晶化合物の総質量に対する重合性液晶化合物(A)の割合は、好ましくは51質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上である。
【0027】
本発明の重合性液晶組成物が2種以上の重合性液晶化合物(A)を含む場合、そのうちの少なくとも1種が重合性液晶化合物(A1)であってもよく、その全てが重合性液晶化合物(A1)であってもよい。複数の重合性液晶化合物を組み合わせることにより、液晶-結晶相転移温度以下の温度でも一時的に液晶性を保持することができる場合がある。
【0028】
本発明の重合性液晶組成物における重合性液晶化合物の含有量は、重合性液晶組成物の固形分に対して、好ましくは40~99.9質量%であり、より好ましくは60~99質量%であり、さらに好ましくは70~99質量%である。重合性液晶化合物の含有量が上記範囲内であると、重合性液晶化合物の配向性が高くなる傾向がある。
本明細書において、固形分とは、重合性液晶組成物から溶剤を除いた成分の合計量をいう。
【0029】
本発明の重合性液晶組成物は二色性色素を含む。ここで、二色性色素とは、分子の長軸方向における吸光度と、短軸方向における吸光度とが異なる性質を有する色素を意味する。本発明において用い得る二色性色素は、上記性質を有するものであれば特に制限されず、染料であっても、顔料であってもよい。2種以上の染料または顔料をそれぞれ組み合わせて用いてもよいし、染料と顔料とを組み合わせて用いてもよい。
【0030】
二色性色素としては、300~700nmの範囲に極大吸収波長(λMAX)を有するものが好ましい。このような二色性色素としては、アクリジン色素、オキサジン色素、シアニン色素、ナフタレン色素、アゾ色素およびアントラキノン色素等が挙げられる。
【0031】
アゾ色素としては、モノアゾ色素、ビスアゾ色素、トリスアゾ色素、テトラキスアゾ色素およびスチルベンアゾ色素等が挙げられ、ビスアゾ色素およびトリスアゾ色素が好ましく、例えば、式(I)で表される化合物(以下、「化合物(I)」ともいう。)が挙げられる。
-(-N=N-K-N=N-K (I)
[式(I)中、KおよびKは、互いに独立に、置換基を有していてもよいフェニル基、置換基を有していてもよいナフチル基または置換基を有していてもよい1価の複素環基を表わす。Kは、置換基を有していてもよいp-フェニレン基、置換基を有していてもよいナフタレン-1,4-ジイル基または置換基を有していてもよい2価の複素環基を表わす。pは1~4の整数を表わす。pが2以上の整数である場合、複数のKは互いに同一でも異なっていてもよい。可視域に吸収を示す範囲で-N=N-結合が-C=C-、-COO-、-NHCO-、-N=CH-結合に置き換わっていてもよい。]
【0032】
1価の複素環基としては、キノリン、チアゾール、ベンゾチアゾール、チエノチアゾール、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、オキサゾール、ベンゾオキサゾールなどの複素環化合物から1個の水素原子を除いた基が挙げられる。2価の複素環基としては、前記複素環化合物から2個の水素原子を除いた基が挙げられる。
【0033】
およびKにおけるフェニル基、ナフチル基および1価の複素環基、並びにKにおけるp-フェニレン基、ナフタレン-1,4-ジイル基および2価の複素環基が任意に有する置換基としては、炭素数1~4のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などの炭素数1~4のアルコキシ基;トリフルオロメチル基などの炭素数1~4のフッ化アルキル基;シアノ基;ニトロ基;ハロゲン原子;アミノ基、ジエチルアミノ基、ピロリジノ基などの置換または無置換アミノ基(置換アミノ基とは、炭素数1~6のアルキル基を1つまたは2つ有するアミノ基、あるいは2つの置換アルキル基が互いに結合して炭素数2~8のアルカンジイル基を形成しているアミノ基を意味する。無置換アミノ基は-NHである。)等が挙げられる。
【0034】
化合物(I)の中でも、式(I-1)~式(I-6)のいずれかで表される化合物が好ましい。
【化10】
[式(I-1)~(I-8)中、
~B30は、互いに独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、置換または無置換のアミノ基(置換アミノ基および無置換アミノ基の定義は前記のとおり)、塩素原子またはトリフルオロメチル基を表わす。
n1~n4は、互いに独立に0~3の整数を表わす。
n1が2以上である場合、複数のBは互いに同一でも異なっていてもよく、
n2が2以上である場合、複数のBは互いに同一でも異なっていてもよく、
n3が2以上である場合、複数のBは互いに同一でも異なっていてもよく、
n4が2以上である場合、複数のB14は互いに同一でも異なっていてもよい。]
【0035】
前記アントラキノン色素としては、式(I-9)で表される化合物が好ましい。
【化11】
[式(I-9)中、
~Rは、互いに独立して、水素原子、-R、-NH、-NHR、-NR 、-SRまたはハロゲン原子を表わす。
は、炭素数1~4のアルキル基または炭素数6~12のアリール基を表わす。]
【0036】
前記オキサゾン色素としては、式(I-10)で表される化合物が好ましい。
【化12】
[式(I-8)中、
~R15は、互いに独立して、水素原子、-R、-NH、-NHR、-NR 、-SRまたはハロゲン原子を表わす。
は、炭素数1~4のアルキル基または炭素数6~12のアリール基を表わす。]
【0037】
前記アクリジン色素としては、式(I-11)で表される化合物が好ましい。
【化13】
[式(I-11)中、
16~R23は、互いに独立して、水素原子、-R、-NH、-NHR、-NR 、-SRまたはハロゲン原子を表わす。
は、炭素数1~4のアルキル基または炭素数6~12のアリール基を表わす。]
式(I-9)、式(I-10)および式(I-11)において、Rの炭素数1~6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基およびヘキシル基等が挙げられ、炭素数6~12のアリール基としては、フェニル基、トルイル基、キシリル基およびナフチル基等が挙げられる。
【0038】
前記シアニン色素としては、式(I-12)で表される化合物および式(I-13)で表される化合物が好ましい。
【化14】
[式(I-12)中、
およびDは、互いに独立に、式(I-12a)~式(I-12d)のいずれかで表される基を表わす。
【化15】
n5は1~3の整数を表わす。]
【化16】
[式(I-13)中、
およびDは、互いに独立に、式(I-13a)~式(1-13h)のいずれかで表される基を表わす。
【化17】
n6は1~3の整数を表わす。]
【0039】
本発明の重合性液晶組成物は、偏光膜を形成した際に偏光膜中の二色性色素の光劣化を抑制する効果に優れているため、太陽光における紫外線等の光に弱く、光劣化を生じやすい二色性色素を用いる場合に、本発明の効果を特に顕著に発揮し得る。したがって、本発明の重合性液晶組成物は、光劣化を生じやすい二色性色素を用いる場合に特に有利である。本発明の重合性液晶組成物に含まれる二色性色素は、好ましくはアゾ色素である。
【0040】
本発明の重合性液晶組成物における二色性色素の含有量は、用いる二色性色素の種類などに応じて適宜決定し得るが、重合性液晶化合物100質量部に対して、好ましくは0.1~50質量部であり、より好ましくは0.1~20質量部であり、さらに好ましくは0.1~12質量部である。二色性色素の含有量が、上記範囲内であると、重合性液晶化合物の配向を乱し難く、高い配向秩序度を有する偏光膜を得ることができる。
【0041】
本発明の重合性液晶組成物は酸化防止剤を含む。
本発明の重合性液晶組成物において、酸化防止剤は、該重合性液晶組成物中に含まれる重合性液晶化合物との関係において、式(1):
0.8℃ ≦ T1-T2 (1)
を満たす。
【0042】
式(1)中、T1は、前記重合性液晶組成物中に含まれる重合性液晶化合物を大気中で130℃まで昇温した後、5℃/分で23℃まで冷却しながら相転移温度を測定した際に最も低温度側で発現する液晶相への相転移温度である。
T2は、100質量部の前記重合性液晶化合物と1質量部の前記酸化防止剤とからなる混合物を、大気中で130℃まで昇温した後5℃/分で23℃まで冷却しながら相転移温度を測定した際に最も低温度側で発現する液晶相への相転移温度である。
本発明の重合性液晶組成物が2種以上の重合性液晶化合物を含む場合、上記T1およびT2は、該重合性液晶組成物を構成する重合性液晶化合物と同じ組成からなる重合性液晶化合物(混合物)を用いて測定される。T1およびT2の詳細な測定方法は、後述する実施例に記載の通りである。
【0043】
一般に、優れた偏光性能は、重合性液晶化合物と二色性色素とが高い秩序度をもって配向している場合に得ることができる。しかしながら、そのような配向状態においては二色性色素が重合性液晶化合物に包摂されて存在しているため、酸化防止剤の添加により重合性液晶化合物の配向が乱される結果、偏光性能の低下を引き起こすという問題が生じ得る。
【0044】
本発明の重合性液晶組成物は、上記式(1)を満たす酸化防止剤を含むことにより、偏光膜を形成した際に偏光性能の劣化抑制に高い効果を発揮し得る。
式(1)において、T1-T2は、液晶状態における相転移温度に対する酸化防止剤の影響を表す指標となる。T1-T2の値は大きいほど重合性液晶化合物と酸化防止剤とが分子構造上類似する関係にあり、液晶状態においてより混合した状態で存在し、酸化防止剤が重合性液晶化合物とともに配向されていることを意味する。したがって、T1-T2の値が大きいほど、重合性液晶化合物に包摂された状態で存在する二色性色素と酸化防止剤との分子間距離が近くなり、二色性色素の光劣化に対する高い抑制効果を発揮し得るとともに、重合性液晶化合物の配向を乱し難く、高い配向秩序度を有する偏光膜を得ることができると推定される。
【0045】
本発明の重合性液晶組成物に含まれる酸化防止剤において、上記T1-T2の値は0.8℃以上であり、好ましくは0.9℃以上であり、より好ましくは1.0℃以上であり、さらに好ましくは1.2℃以上であり、特に好ましくは1.5℃以上である。
T1-T2の値が0.8℃未満であると、重合性液晶化合物の分子構造と酸化防止剤の分子構造とが大きく相違し、酸化防止剤を重合性液晶化合物とともに高い秩序度で配向させることが難しい。その結果、二色性色素に対する光劣化抑制効果を十分に発揮することが難しい。一方、T1-T2の値が上記範囲内であれば、重合性液晶化合物に包接された二色性色素の近傍に酸化防止剤を配置させることができ、偏光性能の低下に対する高い抑制効果が期待できる。
本発明において、T1-T2の上限値は特に限定されるものではないが、通常35℃以下であり、好ましくは30℃以下、より好ましくは25℃以下である。
【0046】
重合性液晶組成物において、酸化防止剤は、重合性液晶化合物との間で上記式(1)を満たし、本発明の効果を発揮し得るものであれば特に限定されず、公知の酸化防止剤を用いることができる。二色性色素の光劣化に対する高い抑制効果を有する観点から、ラジカルを捕捉して自動酸化の防止作用を有する、いわゆる一次酸化防止剤が好ましい。したがって、本発明の重合性液晶組成物に含まれる酸化防止剤は、フェノール系化合物、脂環式アルコール系化合物およびアミン系化合物からなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。酸化防止剤は、1種のみを単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
フェノール系化合物、脂環式アルコール系化合物およびアミン系化合物からなる群より選択される酸化防止剤としては、例えば、式(2)、(3)および(4):
【化18】
で表されるいずれかの構造を有する化合物が挙げられる。
【0048】
式(2)および(3)中、R~Rは、それぞれ独立して、-H、-OH、-NH、炭素数1~12の分枝若しくは非分枝アルキル基、または、炭素数1~12の分枝若しくは非分枝アルコキシ基であり、式(2)および(3)において、それぞれ、R~Rの少なくとも1つは-OHまたは-NHである。
【0049】
炭素数1~12の分枝若しくは非分枝アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等が挙げられる。
【0050】
炭素数1~12の分枝若しくは非分枝アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、2-エチルヘキシルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ウンデシルオキシ基、ドデシルオキシ基等が挙げられる。
【0051】
式(2)および(3)において、それぞれ、R~Rの少なくとも1つに存在する-OHまたは-NHはRに存在することが好ましく、この場合R~Rは、-H、炭素数1~12の分枝若しくは非分枝アルキル基、または、炭素数1~12の分枝若しくは非分枝アルコキシ基であることがより好ましく、-Hであることがさらに好ましい。
【0052】
上記式(2)、(3)または(4)で表される構造を有する酸化防止剤としては、例えば、式(5):
-L-(A-L)-A (5)
で示される化合物が挙げられる。
【0053】
式(5)中、LおよびLは、それぞれ独立して、単結合または二価の連結基である。
【0054】
は、上記式(2)、(3)または(4)で表される基である。
【0055】
は、式(6)または(7):
【化19】
〔式(6)および(7)中、R~Rは、それぞれ独立して、-H、-OH、-NH、炭素数1~12の分枝若しくは非分枝アルキル基、または、炭素数1~12の分枝若しくは非分枝アルコキシ基である〕
で表される基である。
は、式(8)または(9):
【化20】
〔式(8)および(9)中、R10~R14は、それぞれ独立して、-H、-OH、-NH、炭素数1~12の分枝若しくは非分枝アルキル基、または、炭素数1~12の分枝若しくは非分枝アルコキシ基である〕
で表される基である。
nは0~2の整数であり、nが2の場合、2つのAは互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0056】
およびLにおける二価の連結基としては、単結合、エーテル基、カルボニル基、エステル基、アミド基およびアゾ基等が挙げられる。LおよびLとしては、酸化防止剤として可視光に吸収のない結合種が好ましく、単結合、エーテル基およびエステル基がより好ましく、単結合およびエーテル基が特に好ましい。
【0057】
としては、上記式(2)、(3)および(4)で表される構造として先に例示した構造と同様の基が挙げられ、式(2)または(4)で表される基であることが好ましく、式(2)で表される基であることがより好ましく、Rが-OHであり、R~Rが、それぞれ独立して-Hまたは-CHであることがさらに好ましく、R~Rがすべて-Hであることが特に好ましい。
【0058】
およびAにおけるR~R14で示される炭素数1~12の分枝アルキル基、炭素数1~12の非分枝のアルキル基、炭素数1~12の分枝アルコキシ基、及び炭素数1~12の非分枝のアルコキシ基としては、AにおけるR~Rとして先に例示した炭素数1~12の分枝アルキル基、炭素数1~12の非分枝のアルキル基、炭素数1~12の分枝アルコキシ基、及び炭素数1~12の非分枝のアルコキシ基と同様の基が挙げられる。
【0059】
において、R~Rは、それぞれ独立して、-Hまたは-CHであることが好ましく、より好ましくは-Hであり、さらに好ましくはR~Rの全てが-Hまたは-CHであり、特に好ましくはR~Rの全てが-Hである。
【0060】
において、R12が炭素数1~12の分枝若しくは非分枝アルキル基、または、炭素数1~12の分枝若しくは非分枝アルコキシ基であり、R10、R11、R13およびR14が、それぞれ独立して、-Hまたは-CHであることが好ましく、R10、R11、R13およびR14の全てが-Hであることが特に好ましい。
【0061】
酸化防止剤の重量平均分子量は600以下であることが好ましく、より好ましくは500以下であり、さらに好ましくは450以下である。
酸化防止剤の重量平均分子量が600以下であると、重合性液晶化合物の配向を大きく乱すことなく、二色性色素の近傍に酸化防止剤を配置させることができるので、二色性色素の光劣化抑制効果をより向上させることができる。さらに、酸化防止剤の重量平均分子量が400以下であると、可視光波長領域に吸収をもちにくくなり、偏光性能の低下をより効果的に低減させることができるので、さらに好ましい。
【0062】
本発明の重合性液晶組成物において、酸化防止剤としては、例えば、以下の化合物が挙げられる。
【0063】
【化21】
【0064】
中でも、分子構造として立体障害が小さく直線性が高い酸化防止剤は、重合性液晶化合物とともに配向しやすく、二色性色素の光劣化抑制効果に優れる傾向にあるので好ましい。本発明の重合性液晶組成物における酸化防止剤としてはこれに限定されるものではないが、4-n-オクチルオキシフェノール、4-n-デシルオキシフェノール、4-n-ドデシルオキシフェノール、4,4’-ビフェノール、4-エトキシ-4’-ヒドロキシビフェニル、4-ブトキシ-4’-ヒドロキシビフェニル、4-オクチロキシ-4’-ヒドロキシビフェニル、4-デシロキシ-4’-ヒドロキシビフェニル、4-ドデシロキシ-4’-ヒドロキシビフェニルが好ましい。
【0065】
本発明の重合性液晶組成物における上記酸化防止剤の含有量は、重合性液晶化合物100質量部に対して好ましくは0.1~15質量部であり、より好ましくは0.3質量部以上、さらに好ましくは0.5質量部以上であり、より好ましくは12質量部以下であり、さらに好ましくは8質量部以下であり、とくに好ましくは4質量部以下である。
酸化防止剤の含有量が上記下限値以上であると、二色性色素の光劣化を効果的に抑制することができる。また、酸化防止剤の含有量が上記上限値以下であると、重合性液晶化合物の配向を乱し難く、かつ、二色性色素の光劣化に対する高い抑制効果を期待できる。
【0066】
本発明の重合性液晶組成物は、重合開始剤を含有していてもよい。
重合開始剤は、重合性液晶化合物の重合反応を開始し得る化合物であり、より低温条件下で、重合反応を開始できる点で、光重合開始剤が好ましい。具体的には、光の作用により活性ラジカルまたは酸を発生できる光重合開始剤が挙げられ、中でも、光の作用によりラジカルを発生する光重合開始剤が好ましい。重合開始剤は単独または二種以上組み合わせて使用できる。
【0067】
重合開始剤としては、ベンゾイン化合物、ベンゾフェノン化合物、アルキルフェノン化合物、アシルホスフィンオキサイド化合物、トリアジン化合物、ヨードニウム塩およびスルホニウム塩等が挙げられる。
【0068】
ベンゾイン化合物としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルおよびベンゾインイソブチルエーテル等が挙げられる。
【0069】
ベンゾフェノン化合物としては、ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’-テトラ(tert-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノンおよび2,4,6-トリメチルベンゾフェノン等が挙げられる。
【0070】
アルキルフェノン化合物としては、ジエトキシアセトフェノン、2-メチル-2-モルホリノ-1-(4-メチルチオフェニル)プロパン-1-オン、2-ジメチルアミノ-2-ベンジル-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1,2-ジフェニル-2,2-ジメトキシエタン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-〔4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル〕プロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンおよび2-ヒドロキシ-2-メチル-1-〔4-(1-メチルビニル)フェニル〕プロパン-1-オンのオリゴマー等が挙げられる。
【0071】
アシルホスフィンオキサイド化合物としては、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイドおよびビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0072】
トリアジン化合物としては、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(4-メトキシナフチル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(4-メトキシスチリル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチ_ル)-6-〔2-(5-メチルフラン-2-イル)エテニル〕-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-〔2-(フラン-2-イル)エテニル〕-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-〔2-(4-ジエチルアミノ-2-メチルフェニル)エテニル〕-1,3,5-トリアジンおよび2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-〔2-(3,4-ジメトキシフェニル)エテニル〕-1,3,5-トリアジン等が挙げられる。
【0073】
重合開始剤には、市販のものを用いることができる。市販の重合開始剤としては、例えば、“イルガキュア(Irgacure)(登録商標)907”、“イルガキュア(登録商標)184”、“イルガキュア(登録商標)651”、“イルガキュア(登録商標)819”、“イルガキュア(登録商標)250”、“イルガキュア(登録商標)369”(チバ・ジャパン(株));“セイクオール(登録商標)BZ”、“セイクオール(登録商標)Z”、“セイクオール(登録商標)BEE”(精工化学(株));“カヤキュアー(kayacure)(登録商標)BP100”(日本化薬(株));“カヤキュアー(登録商標)UVI-6992”(ダウ社製);“アデカオプトマーSP-152”、“アデカオプトマーSP-170”((株)ADEKA);“TAZ-A”、“TAZ-PP”(日本シイベルヘグナー社);および“TAZ-104”(三和ケミカル社)等が挙げられる。
【0074】
重合性液晶組成物が重合開始剤を含有する場合、その含有量は、該重合性液晶組成物に含まれる重合性液晶化合物の種類およびその量に応じて適宜決定すればよいが、重合性液晶化合物100質量部に対して、0.1~30質量部が好ましく、0.5~10質量部がより好ましく、0.5~8質量部がさらに好ましい。重合性開始剤の含有量が上記範囲内であると、重合性液晶化合物の配向を乱すことなく重合させることができる。
【0075】
重合性液晶組成物が光重合開始剤を含有する場合、光増感剤をさらに含有していてもよい。光増感剤を用いることにより重合性液晶化合物の重合反応をより促進させることができる。
光増感剤としては、キサントン、チオキサントンなどのキサントン化合物(2,4-ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントンなど);アントラセン、アルコキシ基含有アントラセン(ジブトキシアントラセンなど)などのアントラセン化合物;フェノチアジンおよびルブレン等が挙げられる。光増感剤は単独または2種以上組み合わせて使用できる。
【0076】
本発明の重合性液晶組成物における光増感剤の含有量は、光重合開始剤および重合性液晶化合物の種類およびその量に応じて適宜決定すればよいが、重合性液晶化合物100質量部に対して、0.1~30質量部が好ましく、0.5~10質量部がより好ましく、0.5~8質量部がさらに好ましい。
【0077】
本発明の重合性液晶組成物は、レベリング剤を含んでいてもよい。レベリング剤は、重合性液晶組成物の流動性を調整し、該重合性液晶組成物を塗布することにより得られる塗膜をより平坦にする機能を有し、具体的には、界面活性剤が挙げられる。レベリング剤としては、ポリアクリレート化合物を主成分とするレベリング剤およびフッ素原子含有化合物を主成分とするレベリング剤からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。レベリング剤は単独または2種以上組み合わせて使用できる。
【0078】
ポリアクリレート化合物を主成分とするレベリング剤としては、“BYK-350”、“BYK-352”、“BYK-353”、“BYK-354”、“BYK-355”、“BYK-358N”、“BYK-361N”、“BYK-380”、“BYK-381”および“BYK-392”(BYK Chemie社)等が挙げられる。
【0079】
フッ素原子含有化合物を主成分とするレベリング剤としては、“メガファック(登録商標)R-08”、同“R-30”、同“R-90”、同“F-410”、同“F-411”、同“F-443”、同“F-445”、同“F-470”、同“F-471”、同“F-477”、同“F-479”、同“F-482”および同“F-483”(DIC(株));“サーフロン(登録商標)S-381”、同“S-382”、同“S-383”、同“S-393”、同“SC-101”、同“SC-105”、“KH-40”および“SA-100”(AGCセイミケミカル(株));“E1830”、“E5844”((株)ダイキンファインケミカル研究所);“エフトップEF301”、“エフトップEF303”、“エフトップEF351”および“エフトップEF352”(三菱マテリアル電子化成(株))等が挙げられる。
【0080】
本発明の重合性液晶組成物におけるレベリング剤の含有量は、重合性液晶化合物100質量部に対して、0.05~5質量部が好ましく、0.05~3質量部がより好ましい。レベリング剤の含有量が前記範囲内であると、重合性液晶化合物を水平配向させやすく、かつ、ムラが生じ難く、より平滑な偏光膜を得られる傾向がある。
【0081】
本発明の重合性液晶組成物は、重合開始剤、光増感剤およびレベリング剤以外の他の添加剤を含有してよい。他の添加剤としては、例えば、離型剤、安定剤、ブルーイング剤等の着色剤、難燃剤および滑剤などが挙げられる。重合性液晶組成物が他の添加剤を含有する場合、他の添加剤の含有量は、重合性液晶組成物の固形分に対して、0%を超えて20質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0%を超えて10質量%以下である。
【0082】
本発明の重合性液晶組成物は溶剤を含んでいてもよい。一般にスメクチック液晶性を示す化合物は粘度が高いため、重合性液晶組成物に溶剤を加えることにより塗布が容易となり、結果として偏光膜の形成がし易くなる場合が多い。溶剤は、重合性液晶化合物および二色性色素の溶解性に応じて適宜選択することができ、例えば、水、メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、乳酸エチル等のエステル溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン溶剤;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素溶剤;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶剤;アセトニトリル等のニトリル溶剤;テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル溶剤;および、クロロホルム、クロロベンゼン等の塩素化炭化水素溶剤;などが挙げられる。
これらの溶剤は、単独または2種以上組み合わせて使用できる。溶剤の含有量は、重合性液晶組成物を構成する固形成分100質量部に対して、好ましくは100~1900質量部であり、より好ましくは150~900質量部であり、さらに好ましくは180~600質量部である。
【0083】
本発明の重合性液晶組成物は、通常、重合性液晶化合物、二色性色素および酸化防止剤、並びに必要に応じて上述の添加剤および溶剤等を混合、撹拌することにより調製することができる。
【0084】
本発明の重合性液晶組成物は、二色性色素の光劣化に対する抑制効果に優れており、偏光性能の経時的な低下が生じ難い偏光膜を得ることができるため、偏光膜の製造に好適に用いることができる。
【0085】
本発明の重合性液晶組成物により配向秩序度の高い偏光膜を製造することができる。
配向秩序度の高い偏光膜は、X線回折測定においてヘキサチック相やクリスタル相といった高次構造由来のブラッグピークが得られる。
ブラッグピークとは、分子配向の面周期構造に由来するピークを意味する。したがって、本発明の重合性液晶組成物から形成される偏光膜において、重合性液晶化合物またはその重合体が、X線回折測定において該偏光膜がブラッグピークを示すように配向していることが好ましく、光を吸収する方向に重合性液晶化合物の分子が配向する「水平配向」であることがより好ましい。本発明においては分子配向の面周期間隔が3.0~6.0Åである偏光膜が好ましい。ブラッグピークを示すような高い配向秩序度は、用いる重合性液晶化合物の種類、酸化防止剤の種類やその量、二色性色素の種類やその量等を制御することにより実現し得る。
【0086】
上述したように、重合性液晶組成物との関係において式(1)を満たす酸化防止剤を配合することにより、重合性液晶化合物の高い配向秩序度を維持したまま、二色性色素の光劣化に対して高い抑制効果が得られるため、優れた偏光性能を有し、かつ、経時的な偏光性能の低下が生じ難い偏光膜を得ることができる。したがって、本発明は、二色性色素、重合性液晶化合物および酸化防止剤を含む重合性液晶組成物の硬化物である偏光膜であって、X線回折測定において該偏光膜がブラッグピークを示し、前記酸化防止剤が、前記重合性液晶化合物との関係において式(1):
0.8℃ ≦ T1-T2 (1)
〔式中、T1は前記重合性液晶化合物を大気中で130℃まで昇温した後、5℃/分で23℃まで冷却しながら相転移温度を測定した際に最も低温度側で発現する液晶相への相転移温度であり、T2は100質量部の前記重合性液晶化合物と1質量部の前記酸化防止剤とからなる混合物を、大気中で130℃まで昇温した後5℃/分で23℃まで冷却しながら相転移温度を測定した際に最も低温度側で発現する液晶相への相転移温度である〕
を満たす、偏光膜も対象とする。
【0087】
本発明の偏光膜を形成するために用いる重合性液晶組成物において、重合性液晶化合物、二色性色素および酸化防止剤としては、本発明の重合性液晶組成物に含まれる重合性液晶化合物、二色性色素および酸化防止剤として先に例示したものと同様のものが挙げられる。本発明の偏光膜を形成するために用いる重合性液晶組成物は、重合開始剤、レベリング剤、その他の添加剤および溶剤等を含んでいてもよい。これらの成分としては、本発明の重合性液晶組成物に含まれる成分として先に例示したものと同様のものが挙げられる。
【0088】
本発明の偏光膜は、例えば、本発明の重合性液晶組成物の塗膜を形成すること、
前記塗膜から溶剤を除去すること、
重合性液晶化合物が液体相に相転移する温度以上まで昇温した後に降温して、該重合性液晶化合物をスメクチック相(スメクチック液晶状態)に相転移させること、および、
前記スメクチック相(スメクチック液晶状態)を保持したまま重合性液晶化合物を重合させること
を含む方法により製造することができる。
【0089】
重合性液晶組成物の塗膜の形成は、基材上や後述する配向膜上などに重合性液晶組成物、特に、溶剤を加えて粘度を調整した重合性液晶組成物(以下、「偏光膜形成用組成物」ともいう)を塗布することにより行うことができる。本発明の偏光板を構成する位相差フィルムやその他の層上に重合性液晶組成物を直接塗布してもよい。
【0090】
基材は、通常、透明基材である。基材が表示素子の表示面に設置されないとき、例えば偏光膜から基材を取り除いた積層体を表示素子の表示面に設置する場合は、基材は透明でなくてもよい。透明基材とは、光、特に可視光を透過し得る透明性を有する基材を意味し、透明性とは、波長380~780nmにわたる光線に対しての透過率が80%以上となる特性をいう。具体的な透明基材としては、透光性樹脂基材が挙げられる。透光性樹脂基材を構成する樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン;ノルボルネン系ポリマーなどの環状オレフィン系樹脂;ポリビニルアルコール;ポリエチレンテレフタレート;ポリメタクリル酸エステル;ポリアクリル酸エステル;トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネートなどのセルロースエステル;ポリエチレンナフタレート;ポリカーボネート;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリエーテルケトン;ポリフェニレンスルフィドおよびポリフェニレンオキシド等が挙げられる。入手のしやすさや透明性の観点から、ポリエチレンテレフタレート、ポリメタクリル酸エステル、セルロースエステル、環状オレフィン系樹脂またはポリカーボネートが好ましい。セルロースエステルは、セルロースに含まれる水酸基の一部または全部が、エステル化されたものであり、市場から容易に入手することができる。また、セルロースエステル基材も市場から容易に入手することができる。市販のセルロースエステル基材としては、“フジタックフィルム”(富士写真フィルム(株));“KC8UX2M”、“KC8UY”および“KC4UY”(コニカミノルタオプト(株))などが挙げられる。
【0091】
基材に求められる特性は、偏光膜の構成によって異なるが、通常、位相差性ができるだけ小さい基材が好ましい。位相差性ができるだけ小さい基材としては、ゼロタック(コニカミノルタオプト株式会社)、Zタック(富士フィルム株式会社)等の位相差を有しないセルロースエステルフィルム等が挙げられる。未延伸の環状オレフィン系樹脂基材も好ましい。偏光膜が積層されていない基材の面には、ハードコート処理、反射防止処理、帯電防止処理等がなされてもよい。
【0092】
基材の厚みは、薄すぎると強度が低下し、加工性に劣る傾向があるため、通常5~300μmであり、好ましくは20~200μm、より好ましくは20~100μmである。
【0093】
偏光膜形成用組成物を基材等に塗布する方法としては、スピンコーティング法、エクストルージョン法、グラビアコーティング法、ダイコーティング法、バーコーティング法、アプリケータ法などの塗布法、フレキソ法などの印刷法などの公知の方法が挙げられる。
【0094】
次いで、偏光膜形成用組成物から得られた塗膜中に含まれる重合性液晶化合物が重合しない条件で、溶剤を乾燥等により除去することにより、乾燥塗膜が形成される。乾燥方法としては、自然乾燥法、通風乾燥法、加熱乾燥および減圧乾燥法等が挙げられる。
【0095】
さらに、重合性液晶化合物を液体相に相転移させるため、重合性液晶化合物が液体相に相転移する温度以上まで昇温した後に降温し、該重合性液晶化合物をスメクチック相(スメクチック液晶状態)に相転移させる。かかる相転移は、前記塗膜中の溶剤除去後に行ってもよいし、溶剤の除去と同時に行ってもよい。
【0096】
重合性液晶化合物のスメクチック液晶状態を保持したまま、重合性液晶化合物を重合させることにより、重合性液晶組成物の硬化膜が偏光膜として形成される。重合方法としては光重合法が好ましい。光重合において、乾燥塗膜に照射する光としては、当該乾燥塗膜に含まれる光重合開始剤の種類、重合性液晶化合物の種類(特に、該重合性液晶化合物が有する重合性基の種類)およびその量に応じて適宜選択される。その具体例としては、可視光、紫外光、赤外光、X線、α線、β線およびγ線からなる群より選択される1種以上の光や活性電子線が挙げられる。中でも、重合反応の進行を制御し易い点や、光重合装置として当分野で広範に用いられているものが使用できるという点で、紫外光が好ましく、紫外光によって光重合可能なように重合性液晶組成物に含有される重合性液晶化合物や光重合開始剤の種類を選択しておくことが好ましい。また、重合時に、適切な冷却手段により乾燥塗膜を冷却しながら光照射することにより、重合温度を制御することもできる。このような冷却手段の採用により、より低温で重合性液晶化合物の重合を実施すれば、基材が比較的耐熱性が低いものを用いたとしても適切に偏光膜を形成できる。光重合の際、マスキングや現像を行うなどによって、パターニングされた偏光膜を得ることもできる。
【0097】
前記活性エネルギー線の光源としては、低圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、カーボンアーク灯、タングステンランプ、ガリウムランプ、エキシマレーザー、波長範囲380~440nmを発光するLED光源、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ等が挙げられる。
【0098】
紫外線照射強度は、通常、10~3,000mW/cmである。紫外線照射強度は、好ましくは光重合開始剤の活性化に有効な波長領域における強度である。光を照射する時間は、通常0.1秒~10分であり、好ましくは1秒~5分、より好ましくは5秒~3分、さらに好ましくは10秒~1分である。このような紫外線照射強度で1回または複数回照射すると、その積算光量は、10~3,000mJ/cm、好ましくは50~2,000mJ/cm、より好ましくは100~1,000mJ/cmである。
【0099】
光重合を行うことにより、重合性液晶化合物は、スメクチック相、好ましくは高次のスメクチック相の液晶状態を保持したまま重合し、偏光膜が形成される。重合性液晶化合物がスメクチック相の液晶状態を保持したまま重合して得られる偏光膜は、前記二色性色素の作用にも伴い、従来のホストゲスト型偏光フィルム、すなわち、ネマチック相の液晶状態からなる偏光膜と比較して、偏光性能が高いという利点がある。さらに、二色性色素やリオトロピック液晶のみを塗布したものと比較して、強度に優れるという利点もある。
【0100】
偏光膜の厚みは、適用される表示装置に応じて適宜選択でき、好ましくは0.1~10μm、より好ましくは0.3~4μm、さらに好ましくは0.5~3μmである。
【0101】
偏光膜は配向膜上に形成されることが好ましい。該配向膜は、重合性液晶化合物を所望の方向に液晶配向させる、配向規制力を有するものである。配向膜としては、重合性液晶化合物を含有する組成物の塗布等により溶解しない溶剤耐性を有し、また、溶剤の除去や重合性液晶化合物の配向のための加熱処理における耐熱性を有するものが好ましい。かかる配向膜としては、配向性ポリマーを含む配向膜、光配向膜および表面に凹凸パターンや複数の溝を有するグルブ配向膜、配向方向に延伸してある延伸フィルム等が挙げられ、配向角の精度および品質の観点から、光配向膜が好ましい。
【0102】
配向性ポリマーとしては、分子内にアミド結合を有するポリアミドやゼラチン類、分子内にイミド結合を有するポリイミドおよびその加水分解物であるポリアミック酸、ポリビニルアルコール、アルキル変性ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリオキサゾール、ポリエチレンイミン、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸およびポリアクリル酸エステルが挙げられる。中でも、ポリビニルアルコールが好ましい。配向性ポリマーは単独または2種以上組み合わせて使用できる。
【0103】
配向性ポリマーを含む配向膜は、通常、配向性ポリマーが溶剤に溶解した組成物(以下、「配向性ポリマー組成物」ということがある)を基材に塗布し、溶剤を除去する、または、配向性ポリマー組成物を基材に塗布し、溶剤を除去し、ラビングする(ラビング法)ことにより得られる。溶剤としては、偏光膜を形成する際に用い得る溶剤として先に例示した溶剤と同様のものが挙げられる。
【0104】
配向性ポリマー組成物中の配向性ポリマーの濃度は、配向性ポリマー材料が、溶剤に完溶できる範囲であればよいが、溶液に対して固形分換算で0.1~20%が好ましく、0.1~10%程度がさらに好ましい。
【0105】
配向性ポリマー組成物として、市販の配向膜材料をそのまま使用してもよい。市販の配向膜材料としては、サンエバー(登録商標、日産化学工業(株)製)、オプトマー(登録商標、JSR(株)製)などが挙げられる。
【0106】
配向性ポリマー組成物を基材に塗布する方法としては、偏光膜形成用組成物を基材へ塗布する方法として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0107】
配向性ポリマー組成物に含まれる溶剤を除去する方法としては、自然乾燥法、通風乾燥法、加熱乾燥および減圧乾燥法等が挙げられる。
【0108】
配向膜に配向規制力を付与するために、必要に応じてラビング処理を行うことができる(ラビング法)。
【0109】
ラビング法により配向規制力を付与する方法としては、ラビング布が巻きつけられ、回転しているラビングロールに、配向性ポリマー組成物を基材に塗布しアニールすることにより基材表面に形成された配向性ポリマーの膜を、接触させる方法が挙げられる。
【0110】
光配向膜は、通常、光反応性基を有するポリマーまたはモノマーと溶剤とを含む組成物(以下、「光配向膜形成用組成物」ともいう)を基材に塗布し、偏光(好ましくは、偏光UV)を照射することにより得られる。光配向膜は、照射する偏光の偏光方向を選択することにより、配向規制力の方向を任意に制御できる点でより好ましい。
【0111】
光反応性基とは、光照射することにより液晶配向能を生じる基をいう。具体的には、光照射により生じる分子の配向誘起または異性化反応、二量化反応、光架橋反応もしくは光分解反応等の液晶配向能の起源となる光反応に関与する基が挙げられる。中でも、二量化反応または光架橋反応に関与する基が、配向性に優れる点で好ましい。光反応性基として、不飽和結合、特に二重結合を有する基が好ましく、炭素-炭素二重結合(C=C結合)、炭素-窒素二重結合(C=N結合)、窒素-窒素二重結合(N=N結合)および炭素-酸素二重結合(C=O結合)からなる群より選ばれる少なくとも1つを有する基が特に好ましい。
【0112】
C=C結合を有する光反応性基としては、ビニル基、ポリエン基、スチルベン基、スチルバゾ-ル基、スチルバゾリウム基、カルコン基およびシンナモイル基等が挙げられる。C=N結合を有する光反応性基としては、芳香族シッフ塩基、芳香族ヒドラゾンなどの構造を有する基が挙げられる。N=N結合を有する光反応性基としては、アゾベンゼン基、アゾナフタレン基、芳香族複素環アゾ基、ビスアゾ基、ホルマザン基、および、アゾキシベンゼン構造を有する基等が挙げられる。C=O結合を有する光反応性基としては、ベンゾフェノン基、クマリン基、アントラキノン基およびマレイミド基等が挙げられる。これらの基は、アルキル基、アルコキシ基、アリ-ル基、アリルオキシ基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、ハロゲン化アルキル基などの置換基を有していてもよい。
【0113】
中でも、光二量化反応に関与する光反応性基が好ましく、光配向に必要な偏光照射量が比較的少なく、かつ、熱安定性や経時安定性に優れる光配向膜が得られやすいという点で、シンナモイル基およびカルコン基が好ましい。光反応性基を有するポリマーとしては、当該ポリマー側鎖の末端部が桂皮酸構造となるようなシンナモイル基を有するものが特に好ましい。
【0114】
光配向膜形成用組成物を基材上に塗布することにより、基材上に光配向誘起層を形成することができる。該組成物に含まれる溶剤としては、偏光膜を形成する際に用い得る溶剤として先に例示した溶剤と同様のものが挙げられ、光反応性基を有するポリマーあるいはモノマーの溶解性に応じて適宜選択することができる。
【0115】
光配向膜形成用組成物中の光反応性基を有するポリマーまたはモノマーの含有量は、ポリマーまたはモノマーの種類や目的とする光配向膜の厚みによって適宜調節できるが、光配向膜形成用組成物の質量に対して、少なくとも0.2質量%とすることが好ましく、0.3~10質量%の範囲がより好ましい。光配向膜の特性が著しく損なわれない範囲で、光配向膜形成用組成物は、ポリビニルアルコールやポリイミドなどの高分子材料や光増感剤を含んでいてもよい。
【0116】
光配向膜形成用組成物を基材に塗布する方法としては、配向性組成物を基材に塗布する方法と同様の方法が挙げられる。塗布された光配向膜形成用組成物から、溶剤を除去する方法としては、自然乾燥法、通風乾燥法、加熱乾燥および減圧乾燥法等が挙げられる。
【0117】
偏光を照射するには、基板上に塗布された光配向膜形成用組成物から溶剤を除去したものに、偏光UVを直接照射する形式でも、基材側から偏光を照射し、偏光を透過させて照射する形式でもよい。当該偏光は、実質的に平行光であると特に好ましい。照射する偏光の波長は、光反応性基を有するポリマーまたはモノマーの光反応性基が、光エネルギーを吸収し得る波長領域のものがよい。具体的には、波長250~400nmの範囲のUV(紫外線)が特に好ましい。当該偏光照射に用いる光源としては、キセノンランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、KrF、ArFなどの紫外光レーザーなどが挙げられ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプおよびメタルハライドランプがより好ましい。これらの中でも、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプおよびメタルハライドランプが、波長313nmの紫外線の発光強度が大きいため好ましい。前記光源からの光を、適当な偏光子を通過して照射することにより、偏光UVを照射することができる。かかる偏光子としては、偏光フィルターやグラントムソン、グランテーラーなどの偏光プリズムやワイヤーグリッドタイプの偏光子を用いることができる。
【0118】
なお、ラビングまたは偏光照射を行う時に、マスキングを行えば、液晶配向の方向が異なる複数の領域(パターン)を形成することもできる。
【0119】
グルブ(groove)配向膜は、膜表面に凹凸パターンまたは複数のグルブ(溝)を有する膜である。等間隔に並んだ複数の直線状のグルブを有する膜に重合性液晶化合物を塗布した場合、その溝に沿った方向に液晶分子が配向する。
【0120】
グルブ配向膜を得る方法としては、感光性ポリイミド膜表面にパターン形状のスリットを有する露光用マスクを介して露光後、現像およびリンス処理を行って凹凸パターンを形成する方法、表面に溝を有する板状の原盤に、硬化前のUV硬化樹脂の層を形成し、形成された樹脂層を基材へ移してから硬化する方法、および、基材に形成した硬化前のUV硬化樹脂の膜に、複数の溝を有するロール状の原盤を押し当てて凹凸を形成し、その後硬化する方法等が挙げられる。
【0121】
配向膜(配向性ポリマーを含む配向膜または光配向膜)の厚さは、通常10~10000nmの範囲であり、好ましくは10~1000nmの範囲であり、より好ましくは500nm以下であり、さらに好ましくは10~200nm、特に好ましい50~150nmの範囲である。
【0122】
本発明は、本発明の偏光膜と位相差フィルムとを備えてなる偏光板(楕円偏光板)を包含する。本発明の偏光板において位相差フィルムは、式(X):
100 ≦ Re(550) ≦180 (X)
〔式中、Re(550)は波長550nmにおける面内位相差値を表す〕
を満たすことが好ましい。位相差フィルムが上記(X)で表される面内位相差値を有すると、いわゆるλ/4板として機能する。前記式(X)は、好ましくは100nm≦Re(550)≦180nm、さらに好ましくは120nm≦Re(550)≦160nmである。なお、Re(550)は実施例に記載の方法により測定できる。
【0123】
本発明の偏光板において、位相差フィルムの遅相軸と偏光膜の吸収軸との成す角度は、好ましくは実質的に45°である。なお、本発明において「実質的に45°」とは、45°±5°を意味する。
【0124】
さらに、位相差フィルムが式(Y):
Re(450)/Re(550) < 1 (Y)
〔式中、Re(450)およびRe(550)はそれぞれ波長450nmおよび550nmにおける面内位相差値を表す〕
を満たすことが好ましい。上記式(Y)を満たす位相差フィルムは、いわゆる逆波長分散性を有し、優れた偏光性能を示す。Re(450)/Re(550)の値は、好ましくは0.93以下であり、より好ましくは0.88以下、さらに好ましくは0.86以下、好ましくは0.80以上、より好ましくは0.82以上である。
【0125】
前記位相差フィルムは、ポリマーを延伸することによって位相差を与える延伸フィルムであってもよいが、偏光板の薄層化の観点から、重合性液晶化合物を含む重合性液晶組成物(以下、「重合性液晶組成物(B)」ともいう)の硬化物であって、前記重合性液晶化合物の配向状態における重合体から構成されることが好ましい。位相差フィルムを形成する重合性液晶化合物(以下、「重合性液晶化合物(B)」ともいう)は、重合性官能基、特に光重合性官能基を有する液晶化合物を意味する。光重合性官能基とは、光重合開始剤から発生した活性ラジカルや酸などによって重合反応に関与し得る基のことをいう。光重合性官能基としては、ビニル基、ビニルオキシ基、1-クロロビニル基、イソプロペニル基、4-ビニルフェニル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、オキシラニル基、オキセタニル基等が挙げられる。中でも、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニルオキシ基、オキシラニル基およびオキセタニル基が好ましく、アクリロイルオキシ基がより好ましい。重合性液晶化合物(B)は、液晶性はサーモトロピック性液晶でもリオトロピック性液晶でもよく、相秩序構造としてはネマチック液晶でもスメクチック液晶でもよい。重合性液晶化合物(B)として、1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0126】
重合性液晶化合物(B)としては、成膜の容易性および前記式(Y)で表される位相差性を付与するという観点から、下記(ア)~(エ)を全て満たす化合物が挙げられる。
【0127】
(ア)サーモトロピック液晶性を有する化合物である;
(イ)該重合性液晶化合物の長軸方向(a)上にπ電子を有する。
(ウ)長軸方向(a)に対して交差する方向〔交差方向(b)〕上にπ電子を有する。
(エ)長軸方向(a)に存在するπ電子の合計をN(πa)、長軸方向に存在する分子量の合計をN(Aa)として式(i)で定義される重合性液晶化合物の長軸方向(a)のπ電子密度:
D(πa)=N(πa)/N(Aa) (i)
と、交差方向(b)に存在するπ電子の合計をN(πb)、交差方向(b)に存在する分子量の合計をN(Ab)として式(ii)で定義される重合性液晶化合物の交差方向(b)のπ電子密度:
D(πb)=N(πb)/N(Ab) (ii)
とが、
0≦〔D(πa)/D(πb)〕≦1
の関係にある〔すなわち、交差方向(b)のπ電子密度が、長軸方向(a)のπ電子密度よりも大きい〕。
上記(ア)~(エ)を全て満たす重合性液晶化合物(B)は、ラビング処理により形成した配向膜上に塗布し、相転移温度以上に加熱することにより、ネマチック相を形成することが可能である。この重合性液晶化合物(B)が配向して形成されたネマチック相では通常、重合性液晶化合物の長軸方向が互いに平行になるように配向しており、この長軸方向がネマチック相の配向方向となる。
【0128】
上記特性を有する重合性液晶化合物(B)は、一般に逆波長分散性を示すものであることが多い。上記(ア)~(エ)の特性を満たす化合物として、例えば、式(II):
【化22】
で表される化合物が挙げられる。前記式(II)で表される化合物は単独または2種以上組み合わせて使用できる。
【0129】
式(II)中、Arは置換基を有していてもよい二価の芳香族基を表す。ここでいう芳香族基とは、平面性を有する環状構造の基であり、該環状構造が有するπ電子数がヒュッケル則に従い[4n+2]個であるものをいう。ここで、nは整数を表す。-N=や-S-等のヘテロ原子を含んで環構造を形成している場合、これらヘテロ原子上の非共有結合電子対を含めてヒュッケル則を満たし、芳香族性を有する場合も含む。該二価の芳香族基中には窒素原子、酸素原子、硫黄原子のうち少なくとも1つ以上が含まれることが好ましい。
【0130】
およびGはそれぞれ独立に、二価の芳香族基または二価の脂環式炭化水素基を表す。ここで、該二価の芳香族基または二価の脂環式炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のフルオロアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、シアノ基またはニトロ基に置換されていてもよく、該二価の芳香族基または二価の脂環式炭化水素基を構成する炭素原子が、酸素原子、硫黄原子または窒素原子に置換されていてもよい。
【0131】
、L、BおよびBはそれぞれ独立に、単結合または二価の連結基である。
【0132】
k、lは、それぞれ独立に0~3の整数を表し、1≦k+lの関係を満たす。ここで、2≦k+lである場合、BおよびB、GおよびGは、それぞれ互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0133】
およびEはそれぞれ独立に、炭素数1~17のアルカンジイル基を表し、ここで、アルカンジイル基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよく、該アルカンジイル基に含まれる-CH-は、-O-、-S-、-Si-で置換されていてもよい。PおよびPは互いに独立に、重合性基または水素原子を表し、少なくとも1つは重合性基である。
【0134】
およびGは、それぞれ独立に、好ましくは、ハロゲン原子および炭素数1~4のアルキル基からなる群より選ばれる少なくとも1つの置換基で置換されていてもよい1,4-フェニレンジイル基、ハロゲン原子および炭素数1~4のアルキル基からなる群より選ばれる少なくとも1つの置換基で置換されていてもよい1,4-シクロヘキサンジイル基であり、より好ましくはメチル基で置換された1,4-フェニレンジイル基、無置換の1,4-フェニレンジイル基、または無置換の1,4-trans-シクロヘキサンジイル基であり、特に好ましくは無置換の1,4-フェニレンジイル基、または無置換の1,4-trans-シクロへキサンジイル基である。複数存在するGおよびGのうち少なくとも1つは、二価の脂環式炭化水素基であることが好ましく、LまたはLに結合するGおよびGのうち少なくとも1つは二価の脂環式炭化水素基であることがより好ましい。
【0135】
およびLはそれぞれ独立に、好ましくは、単結合、炭素数1~4のアルキレン基、-O-、-S-、-Ra1ORa2-、-Ra3COORa4-、-Ra5OCORa6-、Ra7OC=OORa8-、-N=N-、-CR=CR-、または-C≡C-である。ここで、Ra1~Ra8はそれぞれ独立に単結合、または炭素数1~4のアルキレン基を表し、RおよびRは炭素数1~4のアルキル基または水素原子を表す。LおよびLはそれぞれ独立に、より好ましくは単結合、-ORa2-1-、-CH-、-CHCH-、-COORa4-1-、または-OCORa6-1-である。ここで、Ra2-1、Ra4-1、Ra6-1はそれぞれ独立に単結合、-CH-、-CHCH-のいずれかを表す。LおよびLはそれぞれ独立に、さらに好ましくは単結合、-O-、-CHCH-、-COO-、-COOCHCH-、または-OCO-である。
【0136】
本発明の好適な一実施態様において、式(II)中のGおよびGのうち少なくとも1つは二価の脂環式炭化水素基であり、該二価の脂環式炭化水素基が、置換基を有していてもよい二価の芳香族基Arと-COO-であるLおよび/またはLにより結合している重合性液晶化合物が用いられる。
【0137】
およびBはそれぞれ独立に、好ましくは、単結合、炭素数1~4のアルキレン基、-O-、-S-、-Ra9ORa10-、-Ra11COORa12-、-Ra13OCORa14-、またはRa15OC=OORa16-である。ここで、Ra9~Ra16はそれぞれ独立に単結合、または炭素数1~4のアルキレン基を表す。BおよびBはそれぞれ独立に、より好ましくは単結合、-ORa10-1-、-CH-、-CHCH-、-COORa12-1-、または-OCORa14-1-である。ここで、Ra10-1、Ra12-1、Ra14-1はそれぞれ独立に単結合、-CH-、-CHCH-のいずれかを表す。BおよびBはそれぞれ独立に、さらに好ましくは単結合、-O-、-CHCH-、-COO-、-COOCHCH-、-OCO-、または-OCOCHCH-である。
【0138】
kおよびlは、逆波長分散性発現の観点から2≦k+l≦6の範囲が好ましく、k+l=4であることが好ましく、k=2かつl=2であることがより好ましい。k=2かつl=2であると対称構造となるためさらに好ましい。
【0139】
およびEはそれぞれ独立に、炭素数1~17のアルカンジイル基が好ましく、炭素数4~12のアルカンジイル基がより好ましい。
【0140】
またはPで表される重合性基としては、エポキシ基、ビニル基、ビニルオキシ基、1-クロロビニル基、イソプロペニル基、4-ビニルフェニル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、オキシラニル基、およびオキセタニル基等が挙げられる。これらの中でも、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニルオキシ基、オキシラニル基およびオキセタニル基が好ましく、アクリロイルオキシ基がより好ましい。
【0141】
Arは置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環、置換基を有していてもよい芳香族複素環、および電子吸引性基から選ばれる少なくとも1つを有することが好ましい。当該芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等が挙げられ、ベンゼン環、ナフタレン環が好ましい。当該芳香族複素環としては、フラン環、ベンゾフラン環、ピロール環、インドール環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、トリアゾール環、トリアジン環、ピロリン環、イミダゾール環、ピラゾール環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、チエノチアゾール環、オキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、およびフェナンスロリン環等が挙げられる。これらの中でも、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、またはベンゾフラン環を有することが好ましく、ベンゾチアゾール基を有することがさらに好ましい。Arに窒素原子が含まれる場合、当該窒素原子はπ電子を有することが好ましい。
【0142】
式(II)中、Arで表される2価の芳香族基に含まれるπ電子の合計数Nπは8以上が好ましく、より好ましくは10以上であり、さらに好ましくは14以上であり、特に好ましくは16以上である。好ましくは30以下であり、より好ましくは26以下であり、さらに好ましくは24以下である。
【0143】
Arで表される芳香族基としては、例えば式(Ar-1)~式(Ar-23)の基が挙げられる。
【0144】
【化23】
【0145】
式(Ar-1)~式(Ar-23)中、*印は連結部を表し、Z、ZおよびZは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~12のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、炭素数1~12のアルキルスルフィニル基、炭素数1~12のアルキルスルホニル基、カルボキシル基、炭素数1~12のフルオロアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~12のアルキルチオ基、炭素数1~12のN-アルキルアミノ基、炭素数2~12のN,N-ジアルキルアミノ基、炭素数1~12のN-アルキルスルファモイル基または炭素数2~12のN,N-ジアルキルスルファモイル基を表す。
【0146】
およびQは、それぞれ独立に、-CR2’3’-、-S-、-NH-、-NR2’-、-CO-または-O-を表し、R2’およびR3’は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~4のアルキル基を表す。
【0147】
およびJは、それぞれ独立に、炭素原子、または窒素原子を表す。
【0148】
、YおよびYは、それぞれ独立に、置換されていてもよい芳香族炭化水素基または芳香族複素環基を表す。
【0149】
およびWは、それぞれ独立に、水素原子、シアノ基、メチル基またはハロゲン原子を表し、mは0~6の整数を表す。
【0150】
、YおよびYにおける芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナンスリル基、ビフェニル基等の炭素数6~20の芳香族炭化水素基が挙げられる。該芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナンスリル基、ビフェニル基等が挙げられ、フェニル基、ナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。
芳香族複素環基としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を少なくとも1つ含む炭素数4~20の芳香族複素環基が挙げられる。該芳香族複素環基としては、フリル基、ピロリル基、チエニル基、ピリジニル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基等が挙げられ、フリル基、チエニル基、ピリジニル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基が好ましい。
【0151】
およびYは、それぞれ独立に、置換されていてもよい多環系芳香族炭化水素基または多環系芳香族複素環基であってもよい。
多環系芳香族炭化水素基は、縮合多環系芳香族炭化水素基、または芳香環集合に由来する基をいう。多環系芳香族複素環基は、縮合多環系芳香族複素環基、または芳香環集合に由来する基をいう。
【0152】
、ZおよびZは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~12のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、炭素数1~12のアルコキシ基であることが好ましく、Zは、水素原子、炭素数1~12のアルキル基、シアノ基がさらに好ましい。ZおよびZは、水素原子、フッ素原子、塩素原子、メチル基、シアノ基がさらに好ましい。
【0153】
およびQとしては、-NH-、-S-、-NR2’-、及び-O-が好ましく、R2’は水素原子が好ましい。QおよびQとしては、-S-、-O-、-NH-が特に好ましい。
【0154】
式(Ar-1)~(Ar-23)の中でも、式(Ar-6)および式(Ar-7)が分子の安定性の観点から好ましい。
【0155】
式(Ar-17)~(Ar-23)において、Yは、これが結合する窒素原子およびZと共に、芳香族複素環基を形成していてもよい。
芳香族複素環基としては、Arが有していてもよい芳香族複素環として前記したものが挙げられる。ピロール環、イミダゾール環、ピロリン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、インドール環、キノリン環、イソキノリン環、プリン環、ピロリジン環等が挙げられる。この芳香族複素環基は置換基を有していてもよい。Yは、これが結合する窒素原子およびZと共に、前述した置換されていてもよい多環系芳香族炭化水素基または多環系芳香族複素環基であってもよい。該多環系芳香族複素環基として、ベンゾフラン環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環等が挙げられる。前記式(II)で表される化合物は、例えば、特開2010-31223号公報に記載の方法に準じて製造することができる。
【0156】
重合性液晶組成物(B)中の重合性液晶化合物(B)の含有量は、重合性液晶組成物(B)の固形分100質量部に対して、例えば70~99.5質量部であり、好ましくは80~99質量部であり、より好ましくは90~98質量部である。含有量が上記範囲内であると、位相差フィルムの配向性が高くなる傾向がある。
ここで、固形分とは、重合性液晶組成物(B)から溶剤等の揮発性成分を除いた成分の合計量のことをいう。
【0157】
重合性液晶組成物(B)は、重合性液晶化合物(B)の重合反応を開始するための重合開始剤を含んでいてもよい。
重合開始剤としては、重合性液晶組成物(A)において使用し得る重合開始剤として先に例示したものと同様のものが挙げられる。重合性液晶組成物(B)は、必要に応じて、光増感剤、レベリング剤、および、重合性液晶組成物(A)に含まれる添加剤として例示した添加剤等を含有してもよい。光増感剤およびレベリング剤としては、重合性液晶組成物(A)に含まれるものとして先に例示したものと同様のものが挙げられる。
【0158】
位相差フィルムは、重合性液晶化合物(B)および必要に応じて重合開始剤、添加剤等を含む重合性液晶組成物(B)に溶剤を加えて、混合および撹拌することにより調製される組成物(以下、「位相差フィルム形成用組成物」ともいう)を、基材または配向膜上に塗布し、乾燥により溶剤を除去し、得られた塗膜中の重合性液晶化合物(B)を加熱および/または活性エネルギー線によって硬化させることにより得ることができる。位相差フィルムの作製に用いられる基材および/または配向膜としては、本発明の偏光膜を作製する際に用い得るものとして先に例示したものと同様のものが挙げられる。
【0159】
位相差フィルム形成用組成物に用いる溶剤、位相差フィルム形成用組成物の塗布方法、活性エネルギー線による硬化条件等は、いずれも、本発明の偏光膜の作製方法において採用し得るものと同様のものが挙げられる。
【0160】
位相差フィルムの厚みは、適用される表示装置に応じて適宜選択できるが、薄膜化および屈曲性等の観点から、0.1~10μmであることが好ましく、1~5μmであることがより好ましく、1~3μmであることがさらに好ましい。
【0161】
本発明の偏光板は、本発明の偏光膜および位相差フィルムを備えてなり、好ましくは基材、配向膜(特に光配向膜)、本発明の偏光膜および位相差フィルムを備えてなる。本発明の偏光板は、さらにこれら以外の他の層(保護層、粘接着剤層等)を含んでいてもよい。本発明の偏光板において、本発明の偏光膜と位相差フィルムとは接着剤層または粘着剤層を介して貼合されていてもよい。本発明の偏光板において、位相差フィルム形成用組成物を本発明の偏光膜に直接塗布することにより、位相差フィルムが本発明の偏光膜上に直接形成されていてもよい。
【0162】
本発明の偏光板の厚みは、表示装置の屈曲性や視認性の観点から、好ましくは10~300μm、より好ましくは20~200μm、さらに好ましくは25~100μmである。
【0163】
本発明は、本発明の偏光膜または本発明の偏光板を備えてなる表示装置を包含する。
本発明の表示装置は、例えば、粘接着剤層を介して本発明の偏光膜または偏光板を表示装置の表面に貼合することにより得ることができる。
表示装置とは、表示機構を有する装置であり、発光源として発光素子または発光装置を含む。表示装置としては、液晶表示装置、有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置、無機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置、タッチパネル表示装置、電子放出表示装置(電場放出表示装置(FED等)、表面電界放出表示装置(SED))、電子ペーパー(電子インクや電気泳動素子を用いた表示装置)、プラズマ表示装置、投射型表示装置(グレーティングライトバルブ(GLV)表示装置、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)を有する表示装置等)および圧電セラミックディスプレイ等が挙げられる。液晶表示装置は、透過型液晶表示装置、半透過型液晶表示装置、反射型液晶表示装置、直視型液晶表示装置および投写型液晶表示装置等の何れをも含む。これら表示装置は、2次元画像を表示する表示装置であってもよいし、3次元画像を表示する立体表示装置であってもよい。特に、本発明の表示装置としては、有機EL表示装置およびタッチパネル表示装置が好ましく、特に有機EL表示装置が好ましい。
【実施例
【0164】
<重合性液晶組成物(以下、「偏光膜形成用組成物」と称することもある)の調製>
下記の成分を混合し、80℃で1時間攪拌することにより、偏光膜形成用組成物(1)を得た。二色性色素には、特開2013-101328号公報の実施例に記載のアゾ色素を用いた。以下、実施例中の「%」および「部」は、特記ない限り、それぞれ質量%および質量部を意味する。
・重合性液晶化合物:
【化24】
(A-6) 90部
【化25】
(A-7) 10部
・二色性色素:
アゾ色素;
【化26】
(二色性色素 A) 2.5部
【化27】
(二色性色素 B) 2.5部
【化28】
(二色性色素 C) 2.5部
・重合開始剤:
2-ジメチルアミノ-2-ベンジル-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン(イルガキュア369;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製) 6部
・レベリング剤:
ポリアクリレート化合物(BYK-361N;BYK-Chemie社製) 1.2部
・溶剤:
o-キシレン 400部
【0165】
更に、偏光膜形成用組成物(1)に、酸化防止剤として下記記載の化合物を表1に示した量にて混合した以外は偏光膜形成用組成物(1)と同様にして、偏光膜形成用組成物(2)~(18)を得た。
表1中の酸化防止剤の添加量は、偏光膜形成用組成物中の重合性液晶化合物100質量部に対する量を示す。
【0166】
<酸化防止剤の構造>
実施例および比較例に用いた酸化防止剤の構造は以下の通りである。
【化29】
(酸化防止剤A : 4-n-オクチロキシフェノール)
【化30】
(酸化防止剤B : 4,4’-ビフェノール)
【化31】
(酸化防止剤C : 4-エトキシ-4’-ヒドロキシビフェニル)
【化32】
(酸化防止剤D : 4-ブトキシ-4’-ヒドロキシビフェニル)
【化33】
(酸化防止剤E : 4-オクチロキシ-4’-ヒドロキシビフェニル)
【化34】
(酸化防止剤F : ジブチルヒドロキシトルエン)
【化35】
(酸化防止剤G : Tinuvin 770;BASF社製)
【化36】
(酸化防止剤H : スミライザーGP;住友化学株式会社製)
【化37】
(酸化防止剤I : p-メトキシフェノール)
【0167】
【表1】
【0168】
<液晶相転移温度変化 T1-T2の測定>
(1)配向膜の形成
ガラス基材上に、ポリビニルアルコール(ポリビニルアルコール1000完全ケン化型、和光純薬工業株式会社製)の2質量%水溶液をスピンコート法により塗布し、乾燥後、厚み100nmの膜を形成した。続いて、得られた膜の表面にラビング処理を施すことにより配向膜を形成した。ラビング処理は、半自動ラビング装置(商品名:LQ-008型、常陽工学株式会社製)を用いて、布(商品名:YA-20-RW、吉川化工株式会社製)によって、押し込み量0.15mm、回転数500rpm、16.7mm/sの条件で行った。
【0169】
(2)T1の測定
重合性液晶化合物として、式(A-6)で示される化合物90部、式(A-7)で示される化合物10部、およびo-キシレン400部を80℃で1時間撹拌することにより均一に混合した混合組成物を得た。
得られた混合組成物を前記配向膜付きガラス上にスピンコート法により塗布し、130℃のホットプレート上で3分間加熱乾燥することにより溶剤であるo-キシレンを除去した。その後、得られた塗布膜を速やかに室温まで冷却して、重合性液晶化合物の乾燥被膜を得た。この乾燥被膜をホットプレート上で再び130℃まで昇温後、5℃/分の速度で23℃まで降温時において、偏光顕微鏡で観察をすることにより相転移温度を測定した。その結果、113.7℃でネマチック液晶相に相転移し、109.6℃でスメクチックA相に相転移し、92.0℃でスメクチックB相へ相転移し、23℃になるまでスメクチックB相を維持することを確認した。上記過程において最も低温度側で発現する液晶相はスメクチックB相であったことから、T1をスメクチックB相への相転移温度である92.0℃と規定した。
【0170】
(3)T2の測定
上記混合組成物に酸化防止剤A~Iを、それぞれ、重合性液晶化合物100質量部に対して1質量部加えた以外は、上記(2)におけるT1の測定と全く同じ方法により酸化防止剤と重合性液晶化合物の混合物からなる乾燥被膜を得た。上記(2)におけるT1の測定と同様の方法にて相転移温度を測定した結果、全ての混合物において最も低温度側で発現する液晶相はスメクチックB相であった。各酸化防止剤含有時の最も低温度側で発現する液晶相への相転移温度(T2)を表2に記載した。
【0171】
【表2】
【0172】
実施例1
(1)基材上への光配向膜の作製
(i)光配向膜形成用組成物の調製
特開2013-033249号公報記載の下記成分を混合し、得られた混合物を80℃で1時間攪拌することにより、光配向膜形成用組成物を得た。
・光配向性ポリマー:
【化38】
2部
・溶剤:
o-キシレン 98部
【0173】
(ii)光配向膜の形成
基材としてトリアセチルセルロースフィルム(KC8UX2M、コニカミノルタ(株)製)を用い、膜表面にコロナ処理を施した後に、上記光配向膜形成用組成物を塗布して、120℃で乾燥して乾燥被膜を得た。この乾燥被膜上に偏光UVを照射して光配向膜形成し、光配向膜付きフィルムを得た。偏光UV処理は、UV照射装置(SPOT CURE SP-7;ウシオ電機株式会社製)を用いて、波長365nmで測定した強度が100mJである条件で行った。
【0174】
(2)偏光膜の作製
前記のようにして得た光配向膜付きフィルム上に、偏光膜形成用組成物(2)をバーコート法(#9 30mm/s)により塗布し、120℃の乾燥オーブンにて1分間加熱乾燥することにより重合性液晶化合物を液体相に相転移させた後、室温まで冷却して該重合性液晶化合物をスメクチック液晶状態に相転移させた。次いで、UV照射装置(SPOT CURE SP-7;ウシオ電機株式会社製)を用いて、露光量1000mJ/cm(365nm基準)の紫外線を、偏光膜形成用組成物から形成された層に照射することにより、該乾燥被膜に含まれる重合性液晶化合物を、前記重合性液晶化合物のスメクチック液晶状態を保持したまま重合させ、該乾燥被膜から偏光膜を形成した。この際の偏光膜の膜厚をレーザー顕微鏡(オリンパス株式会社製 OLS3000)により測定したところ、2.3μmであった。かくして得られたものは、偏光膜と基材とを含む偏光子である。
この偏光膜に対して、X線回折装置X’Pert PRO MPD(スペクトリス株式会社製)を用いて同様にX線回折測定を行った結果、2θ=20.2°付近にピーク半価幅(FWHM)=約0.17°のシャープな回折ピーク(ブラッグピーク)が得られた。また、ラビング垂直方向からの入射でも同等な結果を得た。ピーク位置から求めた秩序周期(d)は約4.4Åであり、高次スメクチック相を反映した構造を形成することを確認した。
【0175】
(3)偏光膜積層体の作製
さらに上記で得られた偏光子の偏光膜表面にコロナ処理を施した後、コロナ処理を施した表面に、水100部にカルボキシル基変性ポリビニルアルコール〔(株)クラレ製「クラレポバール KL318」〕7部と、熱架橋剤として水溶性ポリアミドエポキシ樹脂〔住化ケムテックス(株)から入手した「スミレーズレジン650」(固形分濃度30質量%の水溶液)〕3.5部を添加した水溶液(粘度:92cP)をワイヤーバーコーター(#30)にて塗布した。80℃で5分間乾燥することにより、前記水溶液を乾燥させて保護層を形成し、保護層付き偏光子を製造した。さらに、保護層上に、感圧式粘着剤(リンテック株式会社製、膜厚25μm)から形成される粘着層を介して、ガラス(コーニング社製、EagleXG)を貼合して実施例1の偏光膜積層体を得た。
【0176】
<偏光度Py、単体透過率Tyの測定>
以下のようにして、実施例1の偏光膜積層体の偏光度Pyおよび単体透過率Tyを測定した。波長380nm~780nmの範囲で透過軸方向の透過率(Ta)および吸収軸方向の透過率(Tb)を、分光光度計(島津製作所株式会社製 UV-3150)に偏光子付フォルダーをセットした装置を用いてダブルビーム法で測定した。該フォルダーのリファレンス側に光量を50%カットするメッシュを設置した。
下記式(式1)ならびに(式2)を用いて、各波長における単体透過率、偏光度を算出し、さらにJIS Z 8701の2度視野(C光源)により視感度補正を行い、視感度補正単体透過率(Ty)および視感度補正偏光度(Py)を算出した。
単体透過率Ty(%)= (Ta+Tb)/2 (式1)
偏光度Py(%) = (Ta-Tb)/(Ta+Tb)×100 (式2)
【0177】
偏光膜形成用組成物(2)の代わりに、表3に示した偏光膜形成用組成物(1)、(3)~(18)をそれぞれ用いた以外は同一の方法にて、実施例2~15、比較例1、比較例2及び参考例1の偏光膜積層体を得た。
【0178】
<耐光性の評価>
実施例1~15、比較例1、比較例2及び参考例1の積層体について、以下の方法に従い耐光性を評価した。結果を表3に示す。
【0179】
上記偏光膜積層体を基材であるトリアセチルセルロースフィルム面を上にして、耐光性試験機(サンテスト XLS+;ATLAS製)へ投入し、積算光量を23070KJ/mの条件で光照射後、改めて積層体の偏光度Py、単体透過率Tyを測定して耐光試験前後における変化率量を算出した。
【0180】
【表3】
【0181】
偏光膜形成用組成物2~16、すなわち本発明の重合性液晶組成物から作製された偏光膜(実施例1~15)は、良好な耐光性能を有することが確認された。
【0182】
実施例16
<円偏光板の作製>
実施例5の偏光膜積層体の作製過程で得られた保護層付き偏光子の保護層上に、感圧式粘着剤(リンテック株式会社製、膜厚25μm)から形成される粘着層を介して、特開2015-143786号の実施例1に従って作製した位相差フィルムを転写した。次いで、感圧式粘着剤(リンテック株式会社製、膜厚25μm)から形成される粘着層を介して、アルミ金属板を貼合して楕円偏光板を得た。
【0183】
<反射色相a*、b*の測定>
得られた楕円偏光板の基材であるトリアセチルセルロースフィルム面の反射色相を分光測色計(CM-3700d、コニカミノルタ株式会社製)にて、L*a*b*(CIE)表色系における色度a*およびb*を測定した。
【0184】
<耐光性の評価>
次いで、基材であるトリアセチルセルロースフィルム面を上にして、耐光性試験機(サンテスト XLS+;ATLAS製)へ投入し、積算光量を23070KJ/mの条件で光照射後、改めて積層体の色度a*およびb*を測定して耐光試験前後における変化率量を算出した。結果を表4に示す。
【0185】
【表4】
【0186】
本発明の偏光膜を備える楕円偏光板は、色度の変化量が小さく、良好な耐光性を有することが確認された。