IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東京エレクトロン株式会社の特許一覧 ▶ セントラル硝子株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-エッチング方法およびエッチング装置 図1
  • 特許-エッチング方法およびエッチング装置 図2
  • 特許-エッチング方法およびエッチング装置 図3
  • 特許-エッチング方法およびエッチング装置 図4
  • 特許-エッチング方法およびエッチング装置 図5
  • 特許-エッチング方法およびエッチング装置 図6
  • 特許-エッチング方法およびエッチング装置 図7
  • 特許-エッチング方法およびエッチング装置 図8
  • 特許-エッチング方法およびエッチング装置 図9
  • 特許-エッチング方法およびエッチング装置 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-13
(45)【発行日】2023-07-24
(54)【発明の名称】エッチング方法およびエッチング装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/302 20060101AFI20230714BHJP
【FI】
H01L21/302 201A
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019111110
(22)【出願日】2019-06-14
(65)【公開番号】P2020205304
(43)【公開日】2020-12-24
【審査請求日】2022-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002200
【氏名又は名称】セントラル硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099944
【弁理士】
【氏名又は名称】高山 宏志
(72)【発明者】
【氏名】宮田 一史
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 信博
(72)【発明者】
【氏名】折居 武彦
(72)【発明者】
【氏名】古谷 俊太
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 聖唯
【審査官】高柳 匡克
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-037815(JP,A)
【文献】特開2013-225604(JP,A)
【文献】特開2016-143781(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/302
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Siと、SiGe、Ge、SiO 、SiNから選択される少なくとも一種からなる他の物質とを有する基板を設ける工程と、
前記基板にゲルマニウム化合物ガスからなるエッチングガスのみ、または、ゲルマニウム化合物ガスからなるエッチングガスと不活性ガスとを供給し、前記Siを前記他の物質に対して選択的にエッチングする工程と、
を有する、エッチング方法。
【請求項2】
前記ゲルマニウム化合物ガスは、ゲルマニウムと水素またはハロゲンとの化合物ガスである、請求項1に記載のエッチング方法。
【請求項3】
前記ゲルマニウムと水素またはハロゲンとの化合物ガスは、GeFガス、GeFClガス、GeClガス、GeHガスの少なくとも一種である、請求項2に記載のエッチング方法。
【請求項4】
前記他の物質はSiGeまたはGeである、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のエッチング方法。
【請求項5】
前記SiがSi膜であり、前記SiGeまたはGeが、SiGe膜またはGe膜である、請求項4に記載のエッチング方法。
【請求項6】
前記SiGe膜、前記Ge膜、および前記Si膜は、エピタキシャル法により形成されたものである、請求項5に記載のエッチング方法。
【請求項7】
前記基板は、前記Si膜と前記SiGe膜または前記Ge膜とが交互に積層されてなる積層構造部を有する、請求項5または請求項6に記載のエッチング方法。
【請求項8】
前記エッチングする工程における圧力は、1.33~39990Paの範囲である、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のエッチング方法。
【請求項9】
前記エッチングする工程における基板の温度は、-20℃以上、300℃以下である、請求項1から請求項8いずれか一項に記載のエッチング方法。
【請求項10】
前記エッチングする工程における基板の温度は、150℃以下である、請求項9に記載のエッチング方法。
【請求項11】
前記エッチングする工程に先立って行われる、基板の表面の自然酸化膜を除去する工程をさらに有する、請求項1から請求項10のいずれか一項に記載のエッチング方法。
【請求項12】
前記エッチングする工程の後に残存する残存物を除去する工程をさらに有する、請求項1から請求項11のいずれか一項に記載のエッチング方法。
【請求項13】
前記エッチングする工程は、前記エッチングガス、または前記エッチングガスと前記不活性ガスとをプラズマ化せずに前記基板に供給するノンプラズマエッチングにより行う、請求項1から請求項12のいずれか1項に記載のエッチング方法。
【請求項14】
Siと、SiGe、Ge、SiO 、SiNから選択される少なくとも一種からなる他の物質とを有する基板を収容するチャンバーと、
前記チャンバー内で前記基板を載置する載置台と、
前記チャンバー内にゲルマニウム化合物ガスからなるエッチングガスのみ、または、ゲルマニウム化合物ガスからなるエッチングガスと不活性ガスとを供給するガス供給部と、
前記チャンバー内を排気する排気部と、
前記載置台上の基板の温度を調節する温調部と、
制御部と、
を具備し、
前記制御部は、前記基板にゲルマニウム化合物ガスからなるエッチングガスのみ、または、ゲルマニウム化合物ガスからなるエッチングガスと不活性ガスとが供給され、前記Siが前記他の物質に対して選択的にエッチングされるように、前記ガス供給部と、前記排気部と、前記温調部とを制御する、エッチング装置。
【請求項15】
前記ゲルマニウム化合物ガスは、ゲルマニウムと水素またはハロゲンとの化合物ガスである、請求項14に記載のエッチング装置。
【請求項16】
前記ゲルマニウムと水素またはハロゲンとの化合物ガスは、GeFガス、GeFClガス、GeClガス、GeHガスの少なくとも一種である、請求項15に記載のエッチング装置。
【請求項17】
前記他の物質はSiGeまたはGeである、請求項14から請求項16のいずれか一項に記載のエッチング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エッチング方法およびエッチング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、半導体素子の製造プロセスにおいては、シリコン(Si)を他の膜に対して高い選択性でエッチングする技術が求められている。例えば、特許文献1には、Siとシリコンゲルマニウム(SiGe)とが共存する基板にFガスとNHガスを供給することによりSiをSiGeに対して選択的にエッチング可能であることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-143781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、Siと他の物質が存在する基板において、Siをシンプルなガス系により高選択比でエッチングすることができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係るエッチング方法は、Siと、SiGe、Ge、SiO 、SiNから選択される少なくとも一種からなる他の物質とを有する基板を設ける工程と、前記基板にゲルマニウム化合物ガスからなるエッチングガスのみ、または、ゲルマニウム化合物ガスからなるエッチングガスと不活性ガスとを供給し、前記Siを前記他の物質に対して選択的にエッチングする工程と、を有する。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、Siと他の物質が存在する基板において、Siをシンプルなガス系により高選択比でエッチングすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一実施形態に係るエッチング方法を示すフローチャートである。
図2】一実施形態のエッチング方法が適用されるウエハの構造例を示す断面図である。
図3図2の構造のウエハにおいて、Si膜を部分的にエッチングした状態を示す断面図である。
図4図2の構造のウエハにおいて、Si膜を全てエッチングした状態を示す断面図である。
図5】他の実施形態に係るエッチング方法を示すフローチャートである。
図6】さらに他の実施形態に係るエッチング方法を示すフローチャートである。
図7】さらにまた他の実施形態に係るエッチング方法を示すフローチャートである。
図8】一実施形態に係るエッチング方法に用いる処理システムの一例を示す概略構成図である。
図9】一実施形態に係るエッチング方法を実施するためのエッチング装置を示す断面図である。
図10】実験例の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照しながら、実施形態について説明する。
【0009】
<経緯および概要>
最初に、本開示の一実施形態に係るエッチング方法の経緯および概要について説明する。
近時、半導体素子の製造プロセスにおいては、Siと他の物質が存在する基板において、Siを選択的にエッチングすることが要求されるプロセスが存在する。この要求に対応する技術として、例えば、上記特許文献1には、SiとSiGeとが共存する基板にFガスとNHガスを供給することによりSiをSiGeに対して選択的にエッチングできることが記載されている。
【0010】
しかし、特許文献1は、FガスとNHガスの比率を変化させることにより、SiGeに対するSiの選択的エッチングと、Siに対するSiGeの選択的エッチングの両方ができることを主眼としており、Siをエッチングする際の選択比を十分に高くすることが困難である。また、同じガス系でSiとSiGeの一方を他方に対して選択的にエッチングするため、ガス比率を厳密に調整する必要がある。
【0011】
そこで、発明者らがSiをシンプルなガス系により高選択比でエッチングすることができる技術を検討した結果、エッチングガスとしてゲルマニウム(Ge)を含むガスを用いることが有効であることを見出した。
【0012】
すなわち、発明者らは、特表2009-510750号公報に記載されている、ClFガスを用いてSiGeをSiに対して選択的にエッチングする技術による実験の過程で、反応によりGeFガスが発生し、それがSiをエッチングする現象を発見した。そして、GeFガスはGeSi等のSi以外の物質をエッチングし難いことが見出された。このような知見に基づき、エッチングガスとしてGeFガスのようなGeを含むガスを用いてSiをSiGe等に対して高選択比でエッチングできる技術に想到した。
【0013】
<エッチング方法の実施形態>
次に、具体的な実施形態について説明する。図1は、一実施形態に係るエッチング方法を示すフローチャートである。
【0014】
最初に、表面部分にSiと他の物質を有する基板を、エッチング処理を行うためのチャンバー内に設ける(ステップ1)。
【0015】
他の物質としては、通常半導体装置に用いられる物質であれば特に限定されないが、SiGe、Ge、SiO、SiN等を挙げることができる。これらの中で、SiGe、Geは、近時、Siと共存する構造を構成するものとして注目されている。
【0016】
SiGeのSiおよびGeの割合は任意であるが、Geが20at%以上であることが好ましい。また、SiGe、Ge、Siの形態は特に限定されないが、膜として形成されたものが例示され、膜としてはエピタキシャル法で形成されたものが例示される。基板についても特に限定されないが、半導体ウエハ(以下単にウエハと記す)が例示される。
【0017】
SiとSiGeまたはGeとが共存する場合、その構造は特に限定されないが、例えばSi膜とSiGe膜またはGe膜とを交互に積層した構造であってよい。
【0018】
このようなSi膜とSiGe膜またはGe膜とを交互に積層した積層構造を有する基板としては、図2に示すような構造のウエハWが例示される。図2のウエハWは、例えばSi上に特定の保護膜(例えばSiO、SiN)が形成された基体10の表面に、Si膜11と、SiGe膜12とが交互に積層された積層構造部13を有している。SiGe膜12の代わりにGe膜を用いてもよい。積層構造部13の最上層はSiGe膜12であり、その上に例えばSiOまたはSiNで構成されたマスク層15が形成されている。積層構造部13にはプラズマエッチングにより形成された凹部14が形成されており、凹部14には交互に積層されたSi膜11とSiGe膜12の側面が露出している。
【0019】
次に、基板にエッチングガスとしてGeを含むガスを供給し、基板の表面部分のSiを他の物質に対して選択的にエッチングする(ステップ2)。
【0020】
Geを含むガスとしては、Geと水素(H)またはハロゲンとの化合物ガスを用いることができる。このような化合物ガスとしては、例えば、GeFガス、GeFClガス、GeClガス、GeHガスを挙げることができ、これらの少なくとも一種を用いることができる。
【0021】
これにより、他の物質に対してSiを高選択比でエッチングすることができる。例えば、GeFガスでは、Geが20at%以上のSiGeがSiと共存する場合に、SiをSiGeに対して50以上の選択比でエッチングすることができる。また、Geに対しては、100以上という極めて高い選択比を得ることができる。さらに、SiO、SiNに対してもSiを100以上の極めて高い選択比でエッチングすることができる。
【0022】
例えば、上記図2のウエハWにエッチングガスとしてGeFガス等のGe含有ガスを供給することにより、図3に示すように、Si膜11がサイドエッチングされ、Si膜11がSiGe膜12に対して選択的にエッチングされる。この場合、Si膜11は、図3のように部分的にエッチングされても、図4のように全てエッチングされてもよい。全てエッチングされても、残存するSiGe膜12はSiN等からなる支持柱16により支持される。
【0023】
エッチングガスとしてのGe含有ガスの他に、エッチングガスを希釈する希釈ガスを供給してもよい。希釈ガスとしては、Nガスや、Arガスのような希ガス等の不活性ガスを用いることができる。希釈ガスの流量比率は、エッチング条件や要求されるエッチングの程度に応じて適宜設定してよい。GeFガスの流量は、例えば、10~1000sccmの範囲とすることができ、希釈ガスの流量は、例えば、50~1000sccmの範囲とすることができる。
【0024】
ステップ2のエッチングにおけるチャンバー内の圧力は、1.33~39990Pa(0.01~300Torr)の範囲が好ましい。この範囲の圧力で例えば以下に示す(1)の反応が進行しやすくなる。より好ましくは、6.67~1333.2Pa(0.05~10Torr)の範囲である。
【0025】
ステップ2のエッチングにおける処理温度(ウエハ温度)は-20℃以上、300℃以下であることが好ましい。GeFの沸点は-36.5℃であるから、低温でもガスエッチングを行うことができる。温度が高いほど例えば以下に示す(1)の反応は進行しやすくエッチングレートが高くなるが、選択比が低下する傾向となる。低温ではエッチングレートは低下するが、選択比が高くなる傾向にある。したがって、高選択比でSiをエッチングする観点からは低温のほうが好ましく、150℃以下、さらには50℃以下が好適である。
【0026】
このときのエッチングは、ノンプラズマのガスケミカルエッチングであってもよいし、プラズマを用いてもよいが、ノンプラズマエッチングを用いることにより、プラズマによるダメージがなく、より高いエッチングの選択性を得ることができ、装置をシンプルにできる利点がある。
【0027】
Ge含有ガスによるSiのエッチング作用は、GeFガスを例にとると、以下の(1)式によるものと推測される。
Si + 2GeF → SiF↑ + 2GeF↑ …(1)
(1)式の反応は、上記他の物質に対してはほとんど生じず、したがって、Siのみが選択的にエッチングされるものと考えられる。他の物質がSiGeの場合はSiが含まれているものの、Geにより保護されてGeFガスではほとんどエッチングされない。SiO、SiNもSiが酸素または窒素と強固に結合しているため、同様にほとんどエッチングされない。また、他の物質がGeの場合は、Siが含まれておらず、GeはGeFとは反応しないため、さらにエッチングされ難い。
【0028】
従来は、Siを他の物質に対して選択的にエッチングする場合、特に、SiGeやGeに対して選択的にエッチングする場合、特許文献1に示すように、処理ガスとしてFガスとNHガスが用いられていた。しかし、特許文献1はFガスとNHガスの比率を変化させることにより、SiGeに対するSiの選択的エッチングと、Siに対するSiGeの選択的エッチングの両方ができることを主眼としており、SiをSiGeに対して高選択比でエッチングを行うことまでは指向していない。つまり、特許文献1では、SiをSiGeに対して選択的にエッチングする場合は、NH/(F+NH)を18~50流量%とし、SiGeをSiに対してエッチングする場合は、NH/(F+NH)を0~15流量%とする。これにより、2以上の選択比が得られるに過ぎない。ガスの比率を調整することによりさらに選択比を高めることができるが、選択比は高々10程度である。また、ガス比率が変化すると、SiおよびSiGeのうちエッチングされる側が入れ替わるため、ガス比率を厳密に調整する必要がある。
【0029】
これに対して、本実施形態は、処理条件を最適化することにより、エッチングガスとしてGeFガス等のGe含有ガスのみを用いるシンプルなガス系により、Siを他の物質に対して50以上、さらには100以上の高い選択比でエッチングすることができる。特に、近時注目されているSiとSiGeまたはGeとが共存した構造を有する基板、例えば、Si膜とSiGe膜またはGe膜とを交互に積層した構造を有する基板に対して有効である。
【0030】
上記実施形態では、ステップ1およびステップ2によりエッチングを行ったが、図5に示すように、必要に応じて、ステップ2のエッチングの後に、残存物を除去する工程(ステップ3)を行ってもよい。残存物を除去する手法は特に限定されないが、例えば、加熱処理により行うことができる。残存物としては、エッチング残渣やエッチングによる反応生成物が含まれる。特に、上記(1)式の反応で生成するGeFは、沸点が130℃と比較的高いため、エッチング処理が130℃より低い温度で行われると、基板中に反応生成物としてGeFが残存する。このため、この場合はステップ3によりGeFを昇華させる処理が必要となる。
【0031】
また、基板(積層構造部13)の表面には自然酸化膜が薄く形成されていることがあり、このような場合は、エッチングに先立って自然酸化膜を除去する工程を実施することが好ましい。自然酸化膜の除去は、例えば、HFガスとNHガスを供給することにより行われる。図6に示すように、自然酸化膜の除去工程(ステップ4)を、基板をチャンバー内に設けるステップ1の後にチャンバー内で行ってもよいし、図7に示すように、基板をチャンバーに設ける前に別のチャンバーで行ってもよい。もちろん、自然酸化膜の除去とエッチング後の残存物の除去を両方行ってもよい。
【0032】
ステップ2のエッチングは、GeFガスを含む処理ガスの供給と、チャンバー内のパージ(真空引きまたは真空引き+パージガスの供給)とを繰り返すサイクルエッチングであってもよい。また、反応生成物等の除去が必要な場合に、GeFガスを含む処理ガスの供給と、ステップ3の残存物除去処理(加熱処理)とを繰り返し行ってもよい。これらにより、エッチング残渣や反応生成物の残存量をより少なくすることができる。
【0033】
<処理システムの一例>
次に、一実施形態に係るエッチング方法に用いる処理システムの一例について説明する。図8は、処理システムの一例を示す概略構成図である。
【0034】
図8に示すように、処理システム100は、例えば上記図2に示す構造を有するウエハWを搬入出する搬入出部102と、搬入出部102に隣接させて設けられた2つのロードロック室103と、各ロードロック室103にそれぞれ隣接して設けられた、ウエハWに対して熱処理を行なう熱処理装置104と、各熱処理装置104にそれぞれ隣接して設けられた、ウエハWに対してエッチングを行うエッチング装置105と、制御部106とを備えている。
【0035】
搬入出部102は、ウエハWを搬送する第1ウエハ搬送機構111が内部に設けられた搬送室112を有している。第1ウエハ搬送機構111は、ウエハWを略水平に保持する2つの搬送アーム111a,111bを有している。搬送室112の長手方向の側部には、載置台113が設けられており、この載置台113には、FOUP等の複数枚のウエハWを収容するキャリアCが例えば3つ接続できるようになっている。また、搬送室112に隣接して、ウエハWのアライメントを行うアライメントチャンバ114が設けられている。
【0036】
搬入出部102において、ウエハWは、搬送アーム111a,111bによって保持され、第1ウエハ搬送機構111の駆動により略水平面内で直進移動、また昇降させられることにより、所望の位置に搬送させられる。そして、載置台113上のキャリアC、アライメントチャンバ114、ロードロック室103に対してそれぞれ搬送アーム111a,111bが進退することにより、搬入出させられるようになっている。
【0037】
各ロードロック室103は、搬送室112との間にそれぞれゲートバルブ116が介在された状態で、搬送室112にそれぞれ連結されている。各ロードロック室103内には、ウエハWを搬送する第2ウエハ搬送機構117が設けられている。また、ロードロック室103は、所定の真空度まで真空引き可能に構成されている。
【0038】
第2ウエハ搬送機構117は、多関節アーム構造を有しており、ウエハWを略水平に保持するピックを有している。この第2ウエハ搬送機構117においては、多関節アームを縮めた状態でピックがロードロック室103内に位置し、多関節アームを伸ばすことにより、ピックが熱処理装置104に到達し、さらに伸ばすことによりエッチング装置105に到達することが可能となっており、ウエハWをロードロック室103、熱処理装置104、およびエッチング装置105間で搬送することが可能となっている。
【0039】
制御部106は、典型的にはコンピュータからなり、処理システム100の各構成部を制御するCPUを有する主制御部と、入力装置(キーボード、マウス等)、出力装置(プリンタ等)、表示装置(ディスプレイ等)、記憶装置(記憶媒体)を有している。制御部106の主制御部は、例えば、記憶装置に内蔵された記憶媒体、または記憶装置にセットされた記憶媒体に記憶された処理レシピに基づいて、処理システム100に、所定の動作を実行させる。
【0040】
このような処理システム100では、上記構造が形成されたウエハWを複数枚キャリアC内に収納して処理システム100に搬送する。処理システム100においては、大気側のゲートバルブ116を開いた状態で搬入出部102のキャリアCから第1ウエハ搬送機構111の搬送アーム111a、111bのいずれかによりウエハWを1枚ロードロック室103に搬送し、ロードロック室103内の第2ウエハ搬送機構117のピックに受け渡す。
【0041】
その後、大気側のゲートバルブ116を閉じてロードロック室103内を真空排気し、次いでゲートバルブ154を開いて、ピックをエッチング装置105まで伸ばしてウエハWをエッチング装置105へ搬送する。
【0042】
その後、ピックをロードロック室103に戻し、ゲートバルブ154を閉じ、エッチング装置105において上述したエッチング方法により、Si膜のエッチング処理を行う。
【0043】
エッチング処理が終了した後、ゲートバルブ122、154を開き、必要に応じて、第2ウエハ搬送機構117のピックによりエッチング処理後のウエハWを熱処理装置104に搬送し、エッチング残渣や反応生成物等の残存物を加熱除去する。
【0044】
エッチング処理が終了した後、またはエッチング処理後、熱処理装置104における熱処理が終了した後、第1ウエハ搬送機構111の搬送アーム111a、111bのいずれかによりキャリアCに戻す。これにより、一枚のウエハの処理が完了する。
【0045】
なお、エッチング残渣等を除去する必要がない場合には、熱処理装置104を設けなくともよく、その場合には、エッチング処理が終了した後のウエハWを第2ウエハ搬送機構117のピックによりロードロック室103に退避させ、第1ウエハ搬送機構111の搬送アーム111a、111bのいずれかによりキャリアCに戻せばよい。
【0046】
<エッチング装置>
次に、一実施形態に係るエッチング方法を実施するためのエッチング装置105の一例について詳細に説明する。
図9はエッチング装置105の一例を示す断面図である。図9に示すように、エッチング装置105は、処理空間を規定する処理容器としての密閉構造のチャンバー140を備えており、チャンバー140の内部には、ウエハWを略水平にした状態で載置させる載置台142が設けられている。また、エッチング装置105は、チャンバー140にエッチングガスを供給するガス供給部143、チャンバー140内を排気する排気部144を備えている。
【0047】
チャンバー140は、チャンバー本体151と蓋部152とによって構成されている。チャンバー本体151は、略円筒形状の側壁部151aと底部151bとを有し、上部は開口となっており、この開口が蓋部152で閉止される。側壁部151aと蓋部152とは、シール部材(図示せず)により密閉されて、チャンバー140内の気密性が確保される。蓋部152の天壁には上方からチャンバー140内に向けてガス導入ノズル161が挿入されている。
【0048】
側壁部151aには、熱処理装置104との間でウエハWを搬入出する搬入出口153が設けられており、この搬入出口153はゲートバルブ154により開閉可能となっている。
【0049】
載置台142は、平面視略円形をなしており、チャンバー140の底部151bに固定されている。載置台142の内部には、載置台142の温度を調節する温度調節器165が設けられている。温度調節器165は、例えば温度調節用媒体(例えば水など)が循環する管路を備えており、このような管路内を流れる温度調節用媒体と熱交換が行なわれることにより、載置台142の温度が調節され、載置台142上のウエハWの温度制御がなされる。
【0050】
ガス供給部143は、エッチングガスとしてのGe含有ガスであるGeFガスを供給するGeFガス供給源175、不活性ガスであるArガスを供給するArガス供給源176を有している。これら供給源にはそれぞれ配管171および172の一端が接続されている。配管171および172の他端は、共通配管162に接続され、共通配管162が上述したガス導入ノズル161に接続されている。
【0051】
したがって、エッチングガスであるGeFガス、不活性ガスであるArガスは、それぞれ、GeFガス供給源175、Arガス供給源176から、配管171および172を経て、共通配管162に至り、ガス導入ノズル161からチャンバー140内のウエハWに向けて吐出される。GeFガスはエッチングのためのガスとして供給され、Arガスは希釈ガスおよびパージガスとして供給される。エッチングガスとしてのGe含有ガスとしては、GeFガスに限らず、他のガス、例えば上述しGeFClガス、GeClガス、GeHガスであってもよい。また、希釈ガスやパージガスとして用いられる不活性ガスとしては、他の希ガスやNガスを用いてもよい。
【0052】
配管171および172には、流路の開閉動作および流量制御を行う流量制御部179が設けられている。流量制御部179は例えば開閉弁およびマスフローコントローラ等の流量制御機器により構成されている。
【0053】
なお、本例のエッチング装置105は、チャンバー140の上部にシャワープレートを設け、シャワープレートを介してガスをシャワー状に供給してもよい。
【0054】
チャンバー140内でウエハWの自然酸化膜を除去するようにすることができ、その場合は、ガス供給部143を、さらにHFガスとNHガスを供給可能に構成すればよい。
【0055】
排気部144は、チャンバー140の底部151bに形成された排気口181に繋がる排気配管182を有しており、さらに、排気配管182に設けられた、チャンバー140内の圧力を制御するための自動圧力制御弁(APC)183およびチャンバー140内を排気するための真空ポンプ184を有している。
【0056】
チャンバー140の側壁には、チャンバー140内の圧力を計測するための圧力計として2つのキャパシタンスマノメータ186a,186bが、チャンバー140内に挿入されるように設けられている。キャパシタンスマノメータ186aは高圧力用、キャパシタンスマノメータ186bは低圧力用となっている。載置台142に載置されたウエハWの近傍には、ウエハWの温度を検出する温度センサ(図示せず)が設けられている。
【0057】
エッチング装置105の各構成部は、処理システム100の制御部106により制御される。制御部106の主制御部は、例えば、記憶装置に内蔵された記憶媒体、または記憶装置にセットされた記憶媒体に記憶された処理レシピに基づいて、以下に説明するエッチング方法が行われるように、エッチング装置105の各構成部を制御する。
【0058】
このようなエッチング装置105においては、例えば図2に示された構造のウエハWをチャンバー140内に搬入し、載置台142に載置する。そして、チャンバー140内の圧力を、好ましくは、1.33~39990Pa(0.01~300Torr)の範囲、より好ましくは、6.67~1333.2Pa(0.05~10Torr)の範囲とする。また、載置台142の温度調節器165によりウエハWを-20℃以上、300℃以下、好ましくは150℃以下、より好ましくは50℃以下とする。
【0059】
次いで、エッチングガスとしてのGeFガスを、例えば10~1000sccmの流量で、チャンバー140内に供給して、Siを他の物質に対して選択的にエッチングする。図2の例では、Si膜をSiGe膜に対して選択的にエッチングする。このとき、必要に応じて、希釈ガスとしてArガスを、例えば50~1000ccmの流量で供給してエッチング性を調整してもよい。
【0060】
このように、エッチングガスとしてGeFガスのようなGe含有ガスを用いることにより、上述したように、SiをSiGeやGe等の他の物質に対して高選択比でエッチングすることができる。
【0061】
なお、エッチング装置105で自然酸化膜除去処理を行う場合は、ウエハWをチャンバー140に搬入して載置台142に載置した後、エッチングに先立って、HFガスとNHガスをチャンバー140内に供給した後、ウエハWを加熱すればよい。これにより、HFガスとNHガスが自然酸化膜と反応し、ケイフッ化アンモニウムが生成され、その後の加熱によりケイフッ化アンモニウムが昇華される。なお、処理温度が高ければ、処理中にケイフッ化アンモニウムを揮発させることもできる。
【0062】
<実験例>
次に、実験例について説明する。
ここでは、ベアウエハにそれぞれSi膜、SiGe膜(Ge30at%)、熱酸化膜(ThO膜)(SiO膜)、SiN膜、Ge膜を形成したサンプルを準備し、GeFガスによりエッチングを行った。エッチング後の重量変化から換算してエッチングレートを求めた。エッチング条件としては、エッチングが進行しやすい以下の条件とした。
【0063】
・エッチング条件
ガス:100%-GeF
ガス流量:10~50sccm
圧力:50~150Torr
処理温度(ウエハ温度):25~300℃
【0064】
まず、処理温度(ウエハ温度)150℃としたときの結果を図10に示す。図10に示すように、Si膜の換算エッチングレートは498.8nm/minであったのに対し、SiGe膜(Ge30at%)は8nm/minであり、過酷なエッチング条件にもかかわらず、SiGe膜に対する選択比が62と高い値となることが確認された。また、ThO膜(SiO膜)、SiN膜の換算エッチングレートは、それぞれ1.84、0.86であり、SiO膜、SiN膜に対して100以上の高い選択比でSi膜をエッチングできることが確認された。さらに、Ge膜の換算エッチングレートはほぼ0であり、Ge膜に対してほぼ無限大に近い選択比でSi膜をエッチングできることが確認された。
【0065】
また、より低い温度である25℃、50℃でエッチングした場合には、Si膜の換算エッチングレートは、それぞれ0.6nm/minおよび10nm/minと150℃の場合よりも低い値となった。一方、これらの温度でのSiGe膜、ThO膜、SiN膜、Ge膜の換算エッチングレートは、いずれもほぼ0であった。これにより、50℃以下の低温で、SiGe膜、ThO膜、SiN膜、Ge膜に対してSi膜をほぼ無限大の選択比でエッチングできることが確認された。
【0066】
<他の適用>
以上、実施形態について説明したが、今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の特許請求の範囲およびその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【0067】
例えば、図2に示す基板の構造例はあくまで例示であり、処理ガスが接触可能な部分にSiと他の物質とを有する基板であれば適用可能である。また、上記処理システムやエッチング装置の構造についても例示に過ぎず、種々の構成のシステムや装置を用いることができる。例えば、上記実施形態では、エッチング装置としてノンプラズマの装置を例示したが、適宜の手段で処理ガスをプラズマ化するものであってもよい。また、基板として半導体ウエハを用いた場合について示したが、半導体ウエハに限らず、LCD(液晶ディスプレイ)用基板に代表されるFPD(フラットパネルディスプレイ)基板や、セラミックス基板等の他の基板であってもよい。
【符号の説明】
【0068】
10;半導体基体
11;Si膜
12;SiGe膜
13;積層構造部
14;凹部
15;マスク層
100;処理システム
105;エッチング装置
142;載置台
143;処理ガス供給部
144;排気部
165;温度調節器
W;半導体ウエハ(基板)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10