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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-13
(45)【発行日】2023-07-24
(54)【発明の名称】基板の欠陥を低減するための乾燥環境
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20230714BHJP
【FI】
H01L21/304 651G
H01L21/304 651H
H01L21/304 648A
H01L21/304 648G
H01L21/304 651J
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021552550
(86)(22)【出願日】2020-02-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-26
(86)【国際出願番号】 US2020019521
(87)【国際公開番号】W WO2020180523
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2021-11-01
(31)【優先権主張番号】62/813,658
(32)【優先日】2019-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/423,661
(32)【優先日】2019-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ベラスケス, エドウィン
(72)【発明者】
【氏名】アトキンソン, ジム ケロッグ
【審査官】平野 崇
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-534162(JP,A)
【文献】特開平04-186623(JP,A)
【文献】特開2000-306881(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥環境であって、
第1のドライヤ開口部と第2のドライヤ開口部とを有するリッドを備えるドライヤであって、前記リッドが、前記第1のドライヤ開口部を通して少なくとも1つの基板を前記ドライヤ内に収容しかつ前記少なくとも1つの基板が前記第2のドライヤ開口部を通して前記ドライヤから出ることを可能とするよう構成される、ドライヤと、
前記乾燥環境内の前記ドライヤの上方に位置する上部であって、前記乾燥環境とファクトリインタフェースとの間の乾燥環境開口部を有する上部と、
長さ及び幅を有する少なくとも1つのスライドドアであって、前記乾燥環境内に配置されており、前記少なくとも1つの基板が前記乾燥環境内にある間に、前記少なくとも1つのスライドドアの前記長さが前記乾燥環境開口部の全体をカバーするような位置まで上方に移動するよう構成され、かつ前記少なくとも1つのスライドドアの前記長さが完全に前記乾燥環境開口部より下方にあるような位置まで下方に移動するよう構成される、少なくとも1つのスライドドアと、
前記上部内の回転プラットフォームであって、前記乾燥環境開口部を通して前記少なくとも1つの基板を前記ファクトリインタフェースに移送するよう構成された回転プラットフォームと
を備える、乾燥環境。
【請求項2】
前記ドライヤは、前記少なくとも1つの基板が前記ドライヤに入ると当該少なくとも1つの基板を受け取るよう構成されたクレードルをさらに備える、請求項1に記載の乾燥環境。
【請求項3】
前記ドライヤが、当該ドライヤから前記少なくとも1つの基板を持ち上げるよう構成されたプッシャをさらに備え、前記プッシャは、前記クレードルから前記少なくとも1つの基板を受け取る、請求項2に記載の乾燥環境。
【請求項4】
前記回転プラットフォームが、前記少なくとも1つの基板が前記ドライヤを出ると前記プッシャから前記少なくとも1つの基板を受け取るよう構成されたキャッチャをさらに備える、請求項3に記載の乾燥環境。
【請求項5】
前記回転プラットフォームが、前記少なくとも1つの基板を前記回転プラットフォームに固定するよう構成されたフィンガをさらに備える、請求項4に記載の乾燥環境。
【請求項6】
乾燥環境であって、
ドライヤであって、
第1のドライヤ開口部と第2のドライヤ開口部とを有するリッドであって、前記第1のドライヤ開口部を通して少なくとも1つの基板を前記ドライヤ内に収容しかつ前記少なくとも1つの基板が前記第2のドライヤ開口部を通して前記ドライヤから出ることを可能とするよう構成されたリッド、
液体の管を有するリンス部、及び
前記液体の前記管の真上に位置する複数のスプレーバーを有する乾燥部
を含むドライヤと、
前記乾燥環境内の前記ドライヤの上方に位置する上部であって、前記乾燥環境とファクトリインタフェースとの間の乾燥環境開口部を有する上部と、
前記乾燥環境内に配置された、長さ及び幅を有するスライドドアであって、前記少なくとも1つの基板が前記複数のスプレーバーの下方にある間に、前記長さの少なくとも一部分が前記乾燥環境開口部より下方にあるように配置され、前記少なくとも1つの基板が前記複数のスプレーバーを通り越して持ち上げられている間、前記スライドドアは、当該スライドドアの前記長さが前記乾燥環境開口部の全体をカバーするように配置される、スライドドアと、
前記上部内の回転プラットフォームであって、前記少なくとも1つの基板を前記乾燥環境開口部を通して前記ファクトリインタフェースに移送するよう構成された回転プラットフォームと
を備える、乾燥環境。
【請求項7】
前記複数のスプレーバーが、前記少なくとも1つの基板にイソプロピルアルコール(IPA)蒸気を噴霧するよう構成される、請求項6に記載の乾燥環境。
【請求項8】
前記スライドドアの前記長さが、前記スライドドアの前記幅よりも大きい、請求項6に記載の乾燥環境。
【請求項9】
前記ドライヤは、前記少なくとも1つの基板が前記ドライヤに入ると当該少なくとも1つの基板を受け取るよう構成されたクレードルをさらに備える、請求項6に記載の乾燥環境。
【請求項10】
基板を乾燥させる方法であって、
ドライヤの中へと第1のドライヤ開口部を通して第1の基板を移送することであって、その間に、長さ及び幅を有するスライドドアが、当該スライドドアの全長が乾燥環境開口部より下方にあるように乾燥環境内に配置されており、前記ドライヤが前記乾燥環境内に位置しており、前記乾燥環境開口部が前記乾燥環境とファクトリインタフェースとの間に存在する、第1の基板を移送することと、
前記スライドドアの前記長さが前記乾燥環境開口部を部分的にカバーするような位置まで、前記スライドドアを上昇させることであって、その間に、前記第1の基板が、前記ドライヤ内に位置する複数のスプレーバーの真下の位置に移される、前記スライドドアを上昇させることと、
前記スライドドアの全長が前記乾燥環境開口部をカバーするような位置に前記スライドドアがある間に、前記複数のスプレーバーを通り越して前記第1の基板を上昇させて第2のドライヤ開口部を通して前記ドライヤから出すことによって、前記第1の基板を乾燥させることと、
前記第1の基板が前記乾燥環境内の回転プラットフォーム上へとロードされている間に、前記スライドドアを、当該スライドドアの前記長さが前記乾燥環境開口部を部分的にカバーするような位置まで下げることと、
前記スライドドアの全長が前記乾燥環境開口部より下方にあるような位置に前記スライドドアがある間に、前記第1の基板を前記乾燥環境開口部を通して前記ファクトリインタフェースに移送し、同時に、第2の基板を前記第1のドライヤ開口部を通して前記ドライヤの中へと移送すること
を含む、基板を乾燥させる方法。
【請求項11】
前記第1の基板が、前記ドライヤ内に位置するプッシャによって前記複数のスプレーバーの真下の位置に移され、前記プッシャが、前記ドライヤ内に位置するクレードルから前記第1の基板を受け取る、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の基板は、前記第1の基板が前記ドライヤを出ると前記プッシャから前記第1の基板を受け取るよう構成されたキャッチャによって、前記回転プラットフォーム上へとロードされる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記回転プラットフォームが、前記第1の基板を前記回転プラットフォームに固定するよう構成されたフィンガをさらに備える、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記複数のスプレーバーが、前記第1の基板にイソプロピルアルコール(IPA)蒸気を噴霧するよう構成される、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記スライドドアが、取り付けアームに取り付けられたアクチュエータによって昇降させられ、前記取り付けアームが、前記スライドドアに取り付けられている、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載の1つ以上の実施形態は、概して、半導体処理システムに関し、より詳細には、半導体処理システム内の乾燥環境に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子の外状が縮小し続けるにつれ、超洗浄処理の重要性が増している。浴液のタンク(又は浴槽)内での水洗浄、それに続く(例えば、別個のタンク内での、又は洗浄タンク液の交換による)リンス槽が使用されうる。リンス槽から取り出した後に、乾燥装置を使用しないと、浴液が基板の表面から蒸発して、ストリーキング、スポッティングが生じ、及び/又は基板の表面上に浴液残留物が残りうる。このようなストリーキング、スポッティング、及び残留物はその後、素子の欠陥を生じさせる可能性がある。従って、水槽から基板が取り出されるときに基板を乾燥させるための改善された方法に多くの注意が向けられている。
【0003】
マランゴニ乾燥として知られる方法は、表面張力の勾配を作り出して、基板に実質的に浴液が残らないように基板から浴液を流し、このようにして、ストリーキング、スポッティング、及び残留物のマークを防止することができる。具体的には、マランゴニ乾燥中に、浴液との混和性がある溶媒(例えば、イソプロピルアルコール(IPA:isopropyl alcohol)蒸気)が、液体メニスカスであって、基板が浴槽から引き上げられるとき又は浴液が基板を通り越して流されるときに形成される液体メニスカスへと導入される。溶媒の蒸気は、液体の表面に沿って吸収され、吸収された蒸気の濃度によって、浴液のバルクよりもメニスカスの先端で表面張力が低くなり、浴液が、乾燥メニスカスからバルク浴液に向かって流される。このような流れは、「マランゴニ流(Marangoni flow)」として知られており、基板上のストリーキング、スポッティング、又は浴液残留物を低減しつつ、基板の乾燥を実現するために使用されうる。
【0004】
しかしながら、基板の均一なマランゴニ乾燥を実現することは、ファクトリインタフェースからドライヤ内に流れる空気のために、部分的に困難となりうる。従来の方法では、ファクトリインタフェースと基板プロセス環境との間にオープンアクセスが存在する。多くの場合に、ファクトリインタフェースは、大きな気流をもたらすより高い圧力で動作する必要がある。この大きな気流が、基板が乾燥されている間に基板の上に直接進入し、基板の欠陥に寄与する。
【0005】
したがって、基板の欠陥がより少なくなる乾燥環境が必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本明細書における1つ以上の実施形態は、半導体処理システム内の乾燥環境に関する。
【0007】
一実施形態において、乾燥環境が、
第1のドライヤ開口部と第2のドライヤ開口部とを有するリッドを備えるドライヤであって、リッドが、第1のドライヤ開口部を通して少なくとも1つの基板を前記ドライヤ内に収容し、かつ少なくとも1つの基板が第2のドライヤ開口部を通してドライヤから出ることを可能とするよう構成される、ドライヤと、
乾燥環境内のドライヤの上方に位置する上部であって、乾燥環境とファクトリインタフェースとの間の乾燥環境開口部を有する上部と、
長さ及び幅を有する少なくとも1つのスライドドアであって、乾燥環境内に配置されており、少なくとも1つの基板が乾燥環境内にある間に、少なくとも1つのスライドドアの長さが乾燥環境開口部の全体をカバーするような位置まで上方に移動するよう構成され、かつ少なくとも1つのスライドドアの長さが完全に乾燥環境開口部より下方にあるような位置まで下方に移動するよう構成される、少なくとも1つのスライドドアと、
上部内の回転プラットフォームであって、ドライヤ環境開口部を通して少なくとも1つの基板をファクトリインタフェースに移送するよう構成された回転プラットフォームと
を備える。
【0008】
他の実施形態において、乾燥環境が、
ドライヤであって、
第1のドライヤ開口部と第2のドライヤ開口部とを有するリッドであって、第1のドライヤ開口部を通して少なくとも1つの基板をドライヤ内に収容しかつ少なくとも1つの基板が第2のドライヤ開口部を通してドライヤから出ることを可能とするよう構成されたリッド、
液体の管を有するリンス部、及び
液体の管の真上に位置する複数のスプレーバーを有する乾燥部
を含むドライヤと、
乾燥環境内のドライヤの上方に位置する上部であって、乾燥環境とファクトリインタフェースとの間の乾燥環境開口部を有する上部と、
乾燥環境内に配置された、長さ及び幅を有するスライドドアであって、少なくとも1つの基板が複数のスプレーバーの下方にある間に、長さの少なくとも一部分が乾燥環境開口部より下方にあるように配置され、
少なくとも1つの基板が複数のスプレーバーを通り越して、持ち上げられている間、スライドドアは、当該スライドドアの長さが乾燥環境開口部の全体をカバーするように配置される、スライドドアと、
上部内の回転プラットフォームであって、少なくとも1つの基板をドライヤ環境開口部を通してファクトリインタフェースに移送するよう構成された回転プラットフォームと
を備える。
【0009】
本明細書に記載する1つ以上の実施形態は、基板を乾燥させる方法に関する。
【0010】
一実施形態において、基板を乾燥させる方法が、
ドライヤの中へと第1のドライヤ開口部を通して第1の基板を移送することであって、その間に、長さ及び幅を有するスライドドアが、当該スライドドアの全長が乾燥環境開口部より下方にあるように乾燥環境内に配置されており、ドライヤが乾燥環境内に位置しており、乾燥環境開口部が乾燥環境とファクトリインタフェースとの間に存在する、第1の基板を移送することと、
スライドドアの長さが前記乾燥環境開口部を部分的にカバーするような位置まで、スライドドアを上昇させることであって、その間に、第1の基板が、ドライヤ内に位置する複数のスプレーバーの真下の位置に移される、スライドドアを上昇させることと、
前記スライドドアの全長が乾燥環境開口部をカバーするような位置にスライドドアがある間に、複数のスプレーバーを通り越して第1の基板を上昇させて第2のドライヤ開口部を通してドライヤから出すことによって、第1の基板を乾燥させることと、
第1の基板が乾燥環境内の回転プラットフォーム上へとロードされている間に、スライドドアを、当該スライドドアの長さが乾燥環境開口部を部分的にカバーするような位置まで下げることと、
スライドドアの全長が乾燥環境開口部より下方にあるような位置にスライドドアがある間に、第1の基板を乾燥環境開口部を通してファクトリインタフェースに移送し、同時に、第2の基板を第1のドライヤ開口部を通してドライヤの中へと移送すること
を含む。
【0011】
本開示の上述の特徴を詳細に理解できるように、先に簡単に要約されている本開示のより詳細な説明が、実施形態を参照することによって得られ、それらの実施形態の一部が添付の図面に示される。しかしながら、本開示は他の等しく有効な実施形態も許容しうることから、添付の図面は本開示の典型的な実施形態のみを示しており、従って、本開示の範囲を限定すると見なすべきではないことに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】従来技術によるシステムの概略図である。
図2】本明細書に記載の少なくとも1つの実施形態に係るシステムの概略図である。
図3】本明細書に記載の少なくとも1つの実施形態に係る乾燥環境の断面図である。
図4】本明細書に記載の少なくとも1つの実施形態に係る方法のフローチャートである。
図5A図4に記載の方法の各ステップにおける乾燥環境を示す。
図5B図4に記載の方法の各ステップにおける乾燥環境を示す。
図5C図4に記載の方法の各ステップにおける乾燥環境を示す。
図5D図4に記載の方法の各ステップにおける乾燥環境を示す。
図5E図4に記載の方法の各ステップにおける乾燥環境を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の明細書の記載において、本開示の実施形態のより完全な理解をもたらすために、数多くの具体的な詳細が記載されている。しかしながら、1つ以上の上記具体的な詳細がなくとも、当業者には、本開示の実施形態の1つ以上が実施されうることが明らかであろう。他の例では、本開示の1つ以上の実施形態を不明確にしないために、周知の特徴は説明されていない。
【0014】
本明細書に記載する1つ以上の実施形態は、概して、半導体処理システム内の乾燥環境に関する。上記実施形態では、基板がファクトリインタフェースを離れ、次いで、材料が基板の表面上に堆積されて、半導体素子が形成される。基板の表面に材料が堆積された後で、基板が洗浄され、ファクトリインタフェースに戻る前に乾燥環境において乾燥される。上述したように、乾燥プロセス及び乾燥環境は、半導体素子の性能にとって重要である。上記実施形態では、基板の表面上に形成されるストリーキング、スポッティング、及び浴液残留物の悪影響を低減するために、マランゴニドライヤを使用して基板を乾燥させる。しかしながら、ファクトリインタフェースと乾燥環境との間にある開口部により、ファクトリインタフェースから乾燥環境への気流が、乾燥プロセスの有効性を低下させることがしばしばある。ファクトリインタフェースからの気流は、基板が乾燥されている間基板の上に直接流れ、結果的に、半導体素子の性能を低下させる基板の欠陥を生じさせる。
【0015】
本明細書に記載される実施形態では、ファクトリインタフェースと乾燥環境との間の開口部が遮断され、基板が乾燥されているときにファクトリインタフェースからの気流が乾燥環境に進入することが阻止される。乾燥環境内に位置するライヤの乾燥部に基板が入ると、気流が、閉鎖位置まで上昇するスライドドアによって遮断される。乾燥環境に空気が流入するのを阻止することによって、有利に、基板の欠陥が減少し、半導体素子の性能が向上する。基板がドライヤから出た後で、かつ基板がファクトリインタフェースに入る前に、スライドドアは、基板がファクトリインタフェースに入れるように、開放位置まで下降する。基板がファクトリインタフェースに入り、スライドドアが開放位置にある間、他の基板が乾燥環境に入ることが可能である。基板が乾燥しているときにはスライドドアが閉じられるが、基板がファクトリインタフェースに入っているときにはスライドドアが開かれ他の基板が同時に乾燥環境に入っているような形で同期されて、上記のプロセスが繰り返されうる。したがって、これらのプロセスによって、複数の基板をシステム内で迅速かつ一貫して乾燥させることが可能となり、全体を通じて改善され、コストが削減される。
【0016】
図1は、従来技術に係るシステム100の概略図である。システム100は、乾燥環境102及びファクトリインタフェース106を含む。基板は、ファクトリインタフェース106の隣に位置するカセット116内に格納されることが多い。その後、基板は、ファクトリインタフェース106に移送され、次いでシステム100の処理領域へと移送され、そこで、材料が基板の表面上に堆積させられて、半導体素子が形成される。半導体プロセスが完了する前に、基板はスプレージェットモジュール118及びブラシボックスモジュール120にしばしば移送され、そこで基板が洗浄される。洗浄後に、基板が乾燥環境102に移送される。乾燥環境102は、上部103とドライヤ104とを含む。ドライヤ104は、マランゴニドライヤとすることができる。上述のように、マランゴニドライヤは、基板を乾燥させるための「マランゴニ流」を生成するために使用され、基板の表面上に形成されるストリーキング、スポッティング、及び浴液残留物の悪影響を低減するのを助ける。基板112といった基板がマランゴニドライヤ内で乾燥されるが、基板は、矢印114で示すように、ドライヤ104から乾燥環境102の上部103の中へと引き上げられるが、これについては、以下でより詳細に説明する。
【0017】
従来の実施形態では、ファン108から流れる空気が、矢印110で示すように、ファクトリインタフェース106から乾燥環境開口部105を通って乾燥環境102の上部103の中へと移動する。乾燥環境102に流入した空気は、基板112が乾燥されている間に基板112の上に直接進入して、乾燥プロセスの有効性を低下させる。基板112は、乾燥プロセスの後に気流に起因した欠陥をしばしば含み、半導体の性能が下がる。したがって、図1に示す構成にはしばしば問題があり、改善が必要である。
【0018】
図2は、本明細書に記載の少なくとも1つの実施形態に係るシステム200の概略図である。本実施形態では、システム200は、乾燥環境202及びファクトリインタフェース206を含む。基板は、ファクトリインタフェース206の隣に位置するカセット216内に格納されることが多い。その後、基板は、ファクトリインタフェース206に移送され、次いでシステム200の処理領域へと移送され、そこで、材料が基板の表面上に堆積させられて、半導体素子が形成される。半導体プロセスが完了する前に、基板はスプレージェットモジュール218及びブラシボックスモジュール220にしばしば移送され、そこで基板が洗浄される。洗浄後、基板は乾燥環境202に移送される。乾燥環境202は、上部203とドライヤ204とを含む。ドライヤ204は、マランゴニドライヤとすることができる。上述のように、マランゴニドライヤは、基板を乾燥させるための「マランゴニ流」を生成するために使用され、基板の表面上に形成されるストリーキング、スポッティング、及び浴液残留物の悪影響を低減するのを助ける。基板212といった基板がマランゴニドライヤ内で乾燥している間、基板は、矢印214で示すように、ドライヤ204から乾燥環境202の上部203の中へと引き上げられるが、これについては、以下でより詳細に説明する。
【0019】
図1に示した従来の実施形態と同様に、ファン208から流れる空気が、矢印210で示すように、ファクトリインタフェース206を通って乾燥環境開口部205の中へと移動する。しかしながら、従来の実施形態とは異なって、本明細書に記載の実施形態は、スライドドア222を含む。スライドドア222は、長さ224及び幅226を有する。上記実施形態において、長さ224が、幅226よりも大きい。スライドドア222は、図2に示すように、スライドドア222が閉鎖位置まで上昇させられたときに、気流が乾燥環境202の上部203に進入することを阻止するよう作用する。スライドドア222の閉鎖位置は、スライドドア222の長さ224が乾燥環境開口部205全体にわたって延在するような位置であり、空気が乾燥環境202に進入することを完全に阻止する。したがって、基板212が乾燥している間、ファクトリインタフェース206からの気流は乾燥環境202の外に留まり、乾燥プロセスの有効性を増大させる。このように、上記実施形態は、乾燥プロセスが完了した後に基板212上の欠陥を低減するように作用し、半導体性能を向上させる。
【0020】
図3は、本明細書に記載の少なくとも1つの実施形態に係る乾燥環境202の断面図である。図3では、乾燥環境202は、乾燥環境202内に基板が存在しない状態で示されている。上記実施形態では、乾燥環境202は、上述したように、上部203及びドライヤ204を含む。ドライヤ204は、第1のドライヤ開口部320及び第2のドライヤ開口部322を有するリッド301を含む。以下で図4図5Eにおいてさらに詳細に説明するように、少なくとも1つの基板は、第1のドライヤ開口部320を通ってドライヤ204に入り、第2のドライヤ開口部322を通ってドライヤ204から出ることが可能である。
【0021】
上記実施形態において、ドライヤ204は、リンス部302と、乾燥部304と、オーバーフロー堰306とを含む。リンス部302は、基板がドライヤ204に入ったときに基板をリンスするよう作用する、浴液といった液体318を含む。浴液供給源といった液体源303が、ドライヤ204のリンス部302に浴液を供給するよう作用する。リンス部302内には、クレードル324及びプッシャ326が存在する。クレードル324は、基板がリンス部302に入ると基板を受け取るよう構成されている。その後、クレードル324は、矢印325で示すように、プッシャ326に基板を移す。プッシャ326は、基板をリンス部302から乾燥部304の中へと持ち上げるよう構成されている。液体318の表面の真上の乾燥部304内には、スプレーバー316が存在する。スプレーバー316は、IPA蒸気といった蒸気流を、基板が液体318から引き上げられるときに基板上に向ける。IPA蒸気は、流体メニスカスであって、基板が液体318から引き上げられて液体318が基板から流されるときに形成される流体メニスカスへと導入される。溶媒の蒸気が、液体318の表面に沿って吸収され、吸収された蒸気の濃度によって、液体318のバルクよりもメニスカスの先端で表面張力が低くなり、液体318が、乾燥メニスカスから液体318のバルクに向かって流される。このような流れは、「マランゴニ流(Marangoni flow)」として知られており、基板上のストリーキング、スポッティング、又は浴液残留物を低減しつつ、基板の乾燥を実現するために使用することが可能である。
【0022】
オーバーフロー堰306がドライヤのリンス部302を取り囲んでおり、これにより、流体318が、オーバーフロー堰306にオーバーフローすることができる。流体318は、流体源303によって連続的に供給することができ、これにより、流体が、オーバーフロー堰306に連続的にオーバーフローする。排気ポート308を、排気部310に出力するドライヤ204の底部に連結することができる。追加的に、ドレインポート312を、ドレイン314に出力するドライヤ204の底部に連結することができ、このドレインポート312は、ドライヤ204からの液体318の排出を容易にするように作用しうる。
【0023】
上記実施形態において、乾燥環境202は、回転プラットフォーム328も含む。回転プラットフォーム328は、乾燥環境202の上部203内に位置している。回転プラットフォーム328は、第2の乾燥開口部322から出た後でドライヤ204を出た基板を受け取るよう構成されている。その後、回転プラットフォーム328は、矢印321によって示されるように回転し、基板を乾燥環境開口部205からファクトリインタフェース206へと移送するように作用する。回転プラットフォーム328は、キャッチャ330及びフィンガ332を含む。キャッチャ330は、基板がプッシャ326によって持ち上げられた後にドライヤ204を出た基板を受け取るよう構成されている。幾つかの実施形態において、キャッチャ330が、各端部にストッパを有するリニアボールスライド(図示せず)上に取り付けられうる。キャッチャ330は、重力によってリニアボールスライドの底部に移動する。基板がドライヤ204の乾燥部304を出ると、基板はキャッチャ330を押し、キャッチャ330を重力に抗して上方へと移動させる。キャッチャ330がその頂点に達したときには、フィンガ332が、図4図5Eに更に詳細に記載するように、基板を回転プラットフォーム328上でロックして固定するよう構成される。
【0024】
さらに、乾燥環境202は、上述のようにスライドドア222を含む。本明細書では、1つのスライドドア222が示され記載されているが、他の実施形態では、2つ以上のスライドドア222があってもよい。スライドドア222は、取り付けアーム340上に取り付けられている。取り付けアーム340は、アクチュエータ342に取り付けられている。上記実施形態では、アクチュエータ342は、図3の矢印334によって示されるように、開放位置と閉鎖位置との間でスライドドア222を昇降させるよう作用する空気圧スライドシリンダである。幾つかの実施形態において、アクチュエータ342は電動式とすることができる。加えて、アクチュエータは、乾燥プロセスに対するスライドドア222の位置決めを検出するセンサ(図示せず)を含むことができる。スライドドア222が開放位置にあるときには、スライドドア222の長さ224は、完全に乾燥環境開口部205より下方にある。スライドドア222が閉鎖位置にあるときには、スライドドア222の長さ224が乾燥環境開口部205の全体をカバーしている。上述したように、スライドドア222は、閉鎖位置にあるときにはファクトリインタフェース206からの気流が乾燥環境202に進入することを阻止して、乾燥環境202内の基板の乾燥プロセスを向上させ、基板の欠陥をより少なくする。さらに、スライドドア222は、点検及び保守中にファクトリインタフェース206内のロボットが偶発的に進入することも防止する。
【0025】
図4は、本明細書に記載の少なくとも1つの実施形態に係る方法400のフローチャートである。上記実施形態において、方法400は、図1図3に記載したシステム及び装置を用いて実行されるが、これらのシステム及び装置には限定されず、他の同様のシステム及び装置を用いて実行することが可能である。図5A図5Eは、図4に記載される方法400の各ステップにおける乾燥環境202を示す。
【0026】
ブロック402では、図5Aに示すように、スライドドア222の長さ224が完全に乾燥環境開口部205より下方に配置されている間に、第1の基板502が第1のドライヤ開口部320を通ってドライヤ204内に移送される。ブロック402でのスライドドア222は、乾燥環境202が乾燥環境開口部205を介してファクトリインタフェース206に露出されるように、開放位置にある。クレードル324が、図5Aに示すように、第1の基板502がリンス部302に入ると第1の基板502を受け取る。
【0027】
ブロック404では、図5Bに示すように、第1の基板502がドライヤ204内に位置する複数のスプレーバー316の真下の位置に移される間に、スライドドア222は、当該スライドドア222の長さ224が乾燥環境開口部205を部分的にカバーするような位置まで(矢印504で図示)上昇させられる。第1の基板502は、クレードル324からプッシャ326に移されている。プッシャ326は、図5Bに示すように、第1の基板502をスプレーバー316の真下の液体318の表面近くまで持ち上げる。
【0028】
ブロック406では、図5Cに示すように、スライドドア222の全長224が乾燥環境開口部205をカバーするような位置にスライドドア222がある間に、第1の基板502に複数のスプレーバー316を通過させ第2のドライヤ開口322を通ってドライヤ204から引き上げることによって、第1の基板502を乾燥させる。ブロック406でのスライドドア222は、ファクトリインタフェース206から乾燥環境開口部205に流入する気流が乾燥環境202に進入することを阻止するように、閉鎖位置にある。第1の基板502は、上述したように、スプレーバー316を越えて引き上げられる間、マランゴニ乾燥プロセスによって乾燥させられる。プッシャ326が、回転プラットフォーム328のキャッチャ330と係合するように、第2のドライヤ開口部322を通して第1の基板502をドライヤ204から持ち上げ続ける。キャッチャ330は、図5Cに示すように、第1の基板502を最初に受け取るときには、回転プラットフォーム328の底部に位置している。
【0029】
ブロック408では、図5Dに示すように、第1の基板502が乾燥環境202内で回転プラットフォーム328上にロードされる間に、スライドドア222は、スライドドア222の長さ224が乾燥環境開口部205を部分的にカバーするような位置まで(矢印506で図示)下げられる。第1の基板502は、当該第1の基板502がキャッチャ330を押してキャッチャ330を重力に抗して上方に移動させるように、上昇させられる。キャッチャ330がその頂点に達すると、フィンガ332は、図5Dに示すように、第1の基板502を回転プラットフォーム328上でロックし固定するよう構成される。
【0030】
ブロック410では、図5Eに示すように、スライドドア222の全長224が乾燥環境開口部205の下にあるような位置にスライドドア222がある間に、第1の基板502が乾燥環境開口部205を通ってファクトリインタフェース206に移送される。同時に、第2の基板508が、第1のドライヤ開口部320を通ってドライヤ204の中へと移送される。ブロック410でのスライドドア222は、ブロック402と同様に、乾燥環境202が乾燥環境開口部205を介してファクトリインタフェース206に露出されるように、開放位置にある。スライドドア222の開放位置によって、第1の基板502を、乾燥環境開口部205を通して回転プラットフォーム328によってファクトリインタフェース206に移送することが可能となる。回転プラットフォーム328は、第1の基板502が水平方向を向くように90度回転し、これにより、ファクトリインタフェース206内の移送ロボット(図示せず)上にロードすることができる。さらに、第1の基板502が乾燥環境202を出ると、第2の基板508が乾燥環境202に入るという形で同期させられた、繰り返し可能なプロセスがもたらされる。
【0031】
方法400は有利に、スライドドア222が(第1の基板502といった)基板が乾燥しているときには閉じられるが、(第1の基板502といった)基板がファクトリインタフェース206に移送されて(第2の基板508といった)他の基板が同時に乾燥環境202に移送されるときには開かれるようなプロセスを提供する。したがって、上記プロセスによって、複数の基板をプロセスシステム200内で迅速かつ一貫して乾燥することが可能となり、全体を通して改善され、コストが削減する。
【0032】
以上の説明は本発明の実施形態を対象としているが、本発明の基本的な範囲を逸脱することなく、本発明の他の実装形態及び更なる別の実装形態が考案されてよく、本発明の範囲が、以下の特許請求の範囲により定められる。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E