(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-14
(45)【発行日】2023-07-25
(54)【発明の名称】化合物、潜在性塩基発生剤、該化合物を含有する感光性樹脂組成物、及び硬化物
(51)【国際特許分類】
C07D 209/14 20060101AFI20230718BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20230718BHJP
C09K 3/00 20060101ALI20230718BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20230718BHJP
G03F 7/038 20060101ALN20230718BHJP
【FI】
C07D209/14 CSP
G03F7/004 503Z
C09K3/00 K
G03F7/20 501
G03F7/038 503
G03F7/038 504
(21)【出願番号】P 2019559669
(86)(22)【出願日】2018-12-11
(86)【国際出願番号】 JP2018045550
(87)【国際公開番号】W WO2019117162
(87)【国際公開日】2019-06-20
【審査請求日】2021-11-22
(31)【優先権主張番号】P 2017239097
(32)【優先日】2017-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018174136
(32)【優先日】2018-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】有吉 智幸
(72)【発明者】
【氏名】岡田 光裕
【審査官】奥谷 暢子
(56)【参考文献】
【文献】仏国特許発明第02244499(FR,A)
【文献】国際公開第2015/152153(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/078678(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/141014(WO,A1)
【文献】国際公開第2005/080337(WO,A1)
【文献】BUCHMANN,G. et al.,Chemistry of 2-phenylindoles. III. Hydroxylated 2-phenylindoles and their reactivity,Journal fuer Praktische Chemie(Leipzig),1966年,Vol.32, No.1-2,p.1-11
【文献】WALTON,J.C.,Functionalised oximes: emergent precursors for carbon-, nitrogen- and oxygen-centred radicals,Molecules,2016年,Vol.21, No.1,p.63/1-63/23
【文献】角岡正弘,光酸・塩基発生剤を利用する光架橋システムの最近の進歩,ネットワークポリマー,1997年,Vol.18,No.1,p.27-35
【文献】角岡正弘 他,光酸・塩基発生剤の開発とその新規フォトポリマー設計における活用,日本写真学会誌,2003年,66巻4号,p.355-366
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
G03F
C09K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表される化合物。
【化1】
(式中、R
1は
、シアノ基、無置換若しくは置換基を有している炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基又は無置換若しくは置換基を有している炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基を表し、
R
2、R
4、R
5、R
6及びR
7は、それぞれ独立に、水素原子、シアノ基、ニトロ基、-OR
8、-COOR
8、-CO-R
8、-SR
8、ハロゲン原子、無置換若しくは置換基を有している炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基、無置換若しくは置換基を有している炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基又は複素環を含有し且つ無置換若しくは置換基を有している炭素原子数2~20の基を表し、
R
3は、無置換若しくは置換基を有している炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基、無置換若しくは置換基を有している炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基又は複素環を含有し且つ無置換若しくは置換基を有している炭素原子数2~20の基を表し、
R
8は、水素原子、無置換若しくは置換基を有している炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基、無置換若しくは置換基を有している炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基又は複素環を含有し且つ無置換若しくは置換基を有している炭素原子数2~20の基を表し、
X
1は、-NR
11R
12、下記(a)又は下記(b)で表される基であり、
R
11及びR
12は、それぞれ独立に、水素原子、無置換若しくは置換基を有している炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基又は無置換若しくは置換基を有している炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基であるか、
R
11及びR
12が互いに連結して、無置換若しくは置換基を有し且つ水素原子、窒素原子及び炭素原子からなる炭素原子数1~20の環、又は無置換若しくは置換基を有し且つ水素原子、酸素原子、窒素原子及び炭素原子からなる炭素原子数1~20の環を形成しており、
nは、0又は1を表す。)
【化2】
(式中、R
13、R
14、R
15、R
16、R
17、R
18、R
19、R
20、R
21及びR
22は、それぞれ独立に、水素原子、無置換若しくは置換基を有している炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基又は無置換若しくは置換基を有している炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基であるか、
R
13とR
14、R
15とR
16、R
17とR
18、R
19とR
20及びR
21とR
22のうちの少なくとも一組が互いに連結して、無置換若しくは置換基を有し且つ水素原子、窒素原子及び炭素原子からなる炭素原子数1~20の環、又は無置換若しくは置換基を有し且つ水素原子、酸素原子、窒素原子及び炭素原子からなる炭素原子数1~20の環を形成しており、
*は結合手を表す。)
【請求項2】
下記一般式(I)で表される化合物。
【化3】
(式中、R
1
は、シアノ基、無置換若しくは置換基を有している炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基又は無置換若しくは置換基を有している炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基を表し、
R
2
、R
4
、R
5
、R
6
及びR
7
は、それぞれ独立に、水素原子、シアノ基、ニトロ基、-OR
8
、-COOR
8
、-CO-R
8
、-SR
8
、ハロゲン原子、無置換若しくは置換基を有している炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基、無置換若しくは置換基を有している炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基又は複素環を含有し且つ無置換若しくは置換基を有している炭素原子数2~20の基を表し、
R
3
は、無置換若しくは置換基を有している炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基、無置換若しくは置換基を有している炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基又は複素環を含有し且つ無置換若しくは置換基を有している炭素原子数2~20の基を表し、
R
8
は、水素原子、無置換若しくは置換基を有している炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基、無置換若しくは置換基を有している炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基又は複素環を含有し且つ無置換若しくは置換基を有している炭素原子数2~20の基を表し、
X
1
は、-NR
11
R
12
、下記(a)又は下記(b)で表される基であり、
R
11
及びR
12
は、それぞれ独立に、水素原子、無置換若しくは置換基を有している炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基又は無置換若しくは置換基を有している炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基であるか、
R
11
及びR
12
が互いに連結して、無置換若しくは置換基を有し且つ水素原子、窒素原子及び炭素原子からなる炭素原子数1~20の環、又は無置換若しくは置換基を有し且つ水素原子、酸素原子、窒素原子及び炭素原子からなる炭素原子数1~20の環を形成しており、
nは、0又は1を表す。
ただし、以下の条件(i)及び(ii)のうち、少なくとも1つを満たす。
(i)R
1
は、無置換若しくは置換基を有している炭素原子数6~20の脂肪族炭化水素基を表す。
(ii)nが1であり、かつR
1
は、無置換若しくは置換基を有している炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基を表す。)
【化4】
(式中、R
13
、R
14
、R
15
、R
16
、R
17
、R
18
、R
19
、R
20
、R
21
及びR
22
は、それぞれ独立に、水素原子、無置換若しくは置換基を有している炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基又は無置換若しくは置換基を有している炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基であるか、
R
13
とR
14
、R
15
とR
16
、R
17
とR
18
、R
19
とR
20
及びR
21
とR
22
のうちの少なくとも一組が互いに連結して、無置換若しくは置換基を有し且つ水素原子、窒素原子及び炭素原子からなる炭素原子数1~20の環、又は無置換若しくは置換基を有し且つ水素原子、酸素原子、窒素原子及び炭素原子からなる炭素原子数1~20の環を形成しており、
*は結合手を表す。)
【請求項3】
上記一般式(I)中のR
2、R
3、R
4、R
5、R
6及びR
7のうち、少なくとも一つがニトロ基、ベンゾイル基又はo-メチルベンゾイル基を置換基として有している基である請求項1
又は2に記載の化合物。
【請求項4】
上記一般式(I)中のR
2、R
3、R
4、R
5、R
6及びR
7のうち、少なくとも一つが、下記一般式(II)で表される基である請求項1
~3の何れか1項に記載の化合物。
【化5】
(式中、R
25、R
26、R
27、R
28及びR
29は、それぞれ独立に、水素原子、シアノ基、ニトロ基、-OR
30、-COOR
30、-CO-R
30、-SR
30、ハロゲン原子、無置換若しくは置換基を有している炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基、無置換若しくは置換基を有している炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基又は複素環を含有し且つ無置換若しくは置換基を有している炭素原子数2~20の基又は下記一般式(III)で表される基を表し、
R
30は、無置換若しくは置換基を有している炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基、無置換若しくは置換基を有している炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基又は複素環を含有し且つ無置換若しくは置換基を有している炭素原子数2~20の基を表し、
R
25、R
26、R
27、R
28及びR
29のうち、少なくとも一つが、ニトロ基、-CO-R
30又は下記一般式(III)で表される基を表し、
*は結合手を表す。)
【化6】
(式中、R
31は、無置換若しくは置換基を有している炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基又は無置換若しくは置換基を有している炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基を表し、
X
2は、-NR
32R
33、下記(a’)又は下記(b’)で表される基であり、
R
32及びR
33は、それぞれ独立に、水素原子、無置換若しくは置換基を有している炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基又は無置換若しくは置換基を有している炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基であるか、
R
32及びR
33が互いに連結して、無置換若しくは置換基を有し且つ水素原子、窒素原子及び炭素原子からなる炭素原子数1~20の環、又は無置換若しくは置換基を有し且つ水素原子、酸素原子、窒素原子及び炭素原子からなる炭素原子数1~20の環を形成しており、
mは0又は1を表し、*は、結合手を表す。)
【化7】
(式中、R
34、R
35、R
36、R
37、R
38、R
39、R
40、R
41、R
42及びR
43は、それぞれ独立に、水素原子、無置換若しくは置換基を有している炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基又は無置換若しくは置換基を有している炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基であるか、
R
34とR
35、R
36とR
37、R
38とR
39、R
40とR
41及びR
42とR
43のうちの少なくとも一組が互いに連結して、無置換若しくは置換基を有し且つ水素原子、窒素原子及び炭素原子からなる炭素原子数1~20の環、又は無置換若しくは置換基を有し且つ水素原子、酸素原子、窒素原子及び炭素原子からなる炭素原子数1~20の環を形成しており、
*は結合手を表す。)
【請求項5】
請求項1~
4の何れか1項に記載の化合物を含む潜在性塩基発生剤。
【請求項6】
請求項1~
4の何れか1項に記載の化合物を含む重合開始剤。
【請求項7】
請求項
6に記載の重合開始剤(A)及び感光性樹脂(B)を含有する感光性樹脂組成物。
【請求項8】
上記感光性樹脂(B)がエポキシ樹脂又はフェノール樹脂である請求項
7に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項9】
請求項
7又は8に記載の感光性樹脂組成物の硬化物。
【請求項10】
請求項
7又は8に記載の感光性樹脂組成物にエネルギー線を照射する工程を有する硬化物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物に用いられる重合開始剤として有用な新規化合物、該化合物を含有する潜在性塩基発生剤、感光性樹脂に該化合物を含有させてなる感光性樹脂組成物、及び該感光性樹脂組成物の硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、感光性樹脂組成物は、感光性樹脂に光重合開始剤を加えたものであり、エネルギー線(光)照射により重合硬化、又は現像させることが出来るため、光硬化性インキ、感光性印刷版、各種フォトレジスト、光硬化性接着剤等に用いられている。
【0003】
光重合開始剤は、エネルギー線(光)照射により発生する活性種の違いで、光ラジカル発生剤、光酸発生剤、光塩基発生剤に分けられる。光ラジカル発生剤は、硬化速度が速く、硬化後に活性種が残存しない等の長所がある一方、酸素による硬化阻害が起こるため薄膜の硬化においては酸素を遮断する層等を設けなければならないという短所がある。光酸発生剤は、酸素による阻害を受けないという長所がある一方、活性種の酸が残存することで金属基板を腐食させたり、硬化後の樹脂を変性させたりする等の短所がある。光塩基発生剤は、前記の酸素による硬化阻害及び残存活性種による腐食といった問題を生じにくいため注目されているが、概して光酸発生剤と比較すると低感度(低硬化性)という問題があった。光塩基発生剤は、例えば特許文献1~4等により開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】US6551761
【文献】US8957212
【文献】WO2010/064632
【文献】US9594302
【発明の概要】
【0005】
従って、本発明の目的は、長波長の紫外線(特に、365nm)に十分な吸収を示し、満足できる感度(塩基発生能)を有する新規な化合物、該化合物を含有する潜在性塩基発生剤、該化合物を重合開始剤として含有してなる感光性樹脂組成物及びその硬化物を提供することにある。
【0006】
本発明者は、鋭意検討を行い、特定の構造を有する化合物が重合開始剤として、高い感度(塩基発生能)を有することを知見した。
【0007】
本発明は、下記[1]~[9]を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0008】
[1]下記一般式(I)で表される化合物。
【化1】
(式中、R
1は、水素原子、シアノ基、無置換若しくは置換基を有している炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基又は無置換若しくは置換基を有している炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基を表し、
R
2、R
4、R
5、R
6及びR
7は、それぞれ独立に、水素原子、シアノ基、ニトロ基、-OR
8、-COOR
8、-CO-R
8、-SR
8、ハロゲン原子、無置換若しくは置換基を有している炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基、無置換若しくは置換基を有している炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基又は無置換若しくは置換基を有している炭素原子数2~20の複素環を含有する基を表し、
R
3は、無置換若しくは置換基を有している炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基、無置換若しくは置換基を有している炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基又は複素環を含有し且つ無置換若しくは置換基を有している炭素原子数2~20の基を表し、
R
8は、水素原子、無置換若しくは置換基を有している炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基、無置換若しくは置換基を有している炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基又は複素環を含有し且つ無置換若しくは置換基を有している炭素原子数2~20の基を表し、
X
1は、-NR
11R
12、下記(a)又は下記(b)で表される基であり、
R
11及びR
12は、それぞれ独立に、水素原子、無置換若しくは置換基を有している炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基又は無置換若しくは置換基を有している炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基であるか、
R
11及びR
12が互いに連結して、無置換若しくは置換基を有し且つ水素原子、窒素原子及び炭素原子からなる炭素原子数1~20の環、又は無置換若しくは置換基を有し且つ水素原子、酸素原子、窒素原子及び炭素原子からなる炭素原子数1~20の環を形成しており、
nは、0又は1を表す。)
【化2】
(式中、R
13、R
14、R
15、R
16、R
17、R
18、R
19、R
20、R
21及びR
22は、それぞれ独立に、水素原子、無置換若しくは置換基を有している炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基又は無置換若しくは置換基を有している炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基であるか、
R
13とR
14、R
15とR
16、R
17とR
18、R
19とR
20及びR
21とR
22のうちの少なくとも一組が互いに連結して、無置換若しくは置換基を有し且つ水素原子、窒素原子及び炭素原子からなる炭素原子数1~20の環、又は無置換若しくは置換基を有し且つ水素原子、酸素原子、窒素原子及び炭素原子からなる炭素原子数1~20の環を形成しており、
*は結合手を表す。)
【0009】
[2]上記一般式(I)中のR2、R3、R4、R5、R6及びR7のうち、少なくとも一つがニトロ基、ベンゾイル基又はo-メチルベンゾイル基を置換基として有している基である[1]に記載の化合物。
【0010】
[3]上記一般式(I)中のR
2、R
3、R
4、R
5、R
6及びR
7のうち、少なくとも一つが、下記一般式(II)で表される基である[1]又は[2]に記載の化合物。
【化3】
(式中、R
25、R
26、R
27、R
28及びR
29は、それぞれ独立に、水素原子、シアノ基、ニトロ基、-OR
30、-COOR
30、-CO-R
30、-SR
30、ハロゲン原子、無置換若しくは置換基を有している炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基、無置換若しくは置換基を有している炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基又は複素環を含有し且つ無置換若しくは置換基を有している炭素原子数2~20の基又は下記一般式(III)で表される基を表し、
R
30は、無置換若しくは置換基を有している炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基、無置換若しくは置換基を有している炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基又は複素環を含有し且つ無置換若しくは置換基を有している炭素原子数2~20の基を表し、
R
25、R
26、R
27、R
28及びR
29のうち、少なくとも一つが、ニトロ基、-CO-R
30又は下記一般式(III)で表される基を表し、
*は結合手を表す。)
【化4】
(式中、R
31は、無置換若しくは置換基を有している炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基又は無置換若しくは置換基を有している炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基を表し、
X
2は、-NR
32R
33、下記(a’)又は下記(b’)で表される基であり、
R
32及びR
33は、それぞれ独立に、水素原子、無置換若しくは置換基を有している炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基又は無置換若しくは置換基を有している炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基であるか、
R
32及びR
33が互いに連結して、無置換若しくは置換基を有し且つ水素原子、窒素原子及び炭素原子からなる炭素原子数1~20の環、又は無置換若しくは置換基を有し且つ水素原子、酸素原子、窒素原子及び炭素原子からなる炭素原子数1~20の環を形成しており、
mは0又は1を表し、*は、結合手を表す。)
【化5】
(式中、R
34、R
35、R
36、R
37、R
38、R
39、R
40、R
41、R
42及びR
43は、それぞれ独立に、水素原子、無置換若しくは置換基を有している炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基又は無置換若しくは置換基を有している炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基であるか、
R
34とR
35、R
36とR
37、R
38とR
39、R
40とR
41及びR
42とR
43のうちの少なくとも一組が互いに連結して、無置換若しくは置換基を有し且つ水素原子、窒素原子及び炭素原子からなる炭素原子数1~20の環、又は無置換若しくは置換基を有し且つ水素原子、酸素原子、窒素原子及び炭素原子からなる炭素原子数1~20の環を形成しており、
*は結合手を表す。)
【0011】
[4][1]~[3]の何れか1項に記載の化合物を含む潜在性塩基発生剤。
【0012】
[5][1]~[3]の何れか1項に記載の化合物を含む重合開始剤。
【0013】
[6][5]に記載の重合開始剤(A)及び感光性樹脂(B)を含有する感光性樹脂組成物。
【0014】
[7]上記感光性樹脂(B)がエポキシ樹脂又はフェノール樹脂である[6]に記載の感光性樹脂組成物。
【0015】
[8][6]又は[7]に記載の感光性樹脂組成物から得られる硬化物。
【0016】
[9][6]又は[7]に記載の感光性樹脂組成物にエネルギー線を照射する工程を有する硬化物の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
本発明の新規化合物は、上記一般式(I)で表されるカルバモイルオキシム化合物である。該カルバモイルオキシム化合物には、オキシムの二重結合による幾何異性体が存在するが、上記一般式(I)はこれらを区別したものではない。
即ち、本明細書において、上記一般式(I)で表される化合物、並びに後述する該化合物の好ましい形態である化合物及び例示化合物は、幾何異性体の混合物又はどちらか一方を表し、示した構造の異性体に限定するものではない。
尚、一般式(I)中のR1~R8、R11~R22で表される基中のメチレン基が、炭素原子を含む基により置換されている場合、それらの炭素原子数を含めた数が規定の炭素原子数となる。
【0018】
上記一般式(I)中のR1~R8、R11~R22で表される無置換の炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、アミル、イソアミル、t-アミル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、イソオクチル、2-エチルヘキシル、t-オクチル、ノニル、イソノニル、デシル、イソデシル、ウンデシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、イコシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘキシルメチル等が挙げられる。また、R1~R8、R11~R22は、これらの脂肪族炭化水素基中のメチレン基が、-O-、-COO-、-OCO-、-CO-、-CS-、-S-、-SO-、-SO2-、-NR-、-NR-CO-、-CO-NR-、-NR-COO-、-OCO-NR-又は-SiRR’-で置換された基であってもよい。但し、これら置換する2価の基は隣り合わないものとする。
R及びR’は、無置換の脂肪族炭化水素基であり、無置換の脂肪族炭化水素基としては、上記のR1~R8、R11~R22で表される無置換の炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基として例示したものと同様の基が挙げられる。
【0019】
上記一般式(I)中のR1~R8、R11~R22で表される無置換の炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基としては、フェニル、ナフチル、フェナントリル、ピレニル及びビフェニル、並びに脂肪族炭化水素基により置換されたフェニル、ナフチル、フェナントリル、ピレニル及びビフェニル等が挙げられる。また、R1~R8、R11~R22は、これらの芳香族炭化水素基中のアルキレン部分又は芳香族環と脂肪族炭化水素基との結合部のメチレン基が、-O-、-COO-、-OCO-、-CO-、-CS-、-S-、-SO-、-SO2-、-NR-、-NR-CO-、-CO-NR-、-NR-COO-、-OCO-NR-又は-SiRR’-で置換された基であってもよい。但し、これら置換する2価の基は隣り合わないものとする。
上記脂肪族炭化水素基としては、上記のR1~R8、R11~R22で表される無置換の炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基として例示したものと同様の基が挙げられる。
R及びR’は、無置換の脂肪族炭化水素基であり、無置換の脂肪族炭化水素基としては、上記のR1~R8、R11~R22で表される無置換の炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基として例示したものと同様の基が挙げられる。
【0020】
R1~R8、R11~R22で表される置換基を有している炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基及びR1~R8、R11~R22で表される置換基を有している炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基としては、上記で説明した無置換体の水素原子が、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シアノ基、ニトロ基、水酸基、チオール基、-COOH又は-SO2Hで置換されているものが挙げられる。
【0021】
R11及びR12、R13とR14、R15とR16、R17とR18、R19とR20及びR21とR22、並びにR32とR33、R34とR35、R36とR37、R38とR39、R40とR41及びR42とR43のうちの少なくとも一組が互いに連結して形成する、炭素原子数1~20の水素原子、窒素原子及び炭素原子からなる環としては、結合している窒素原子を含めた基として、ピロール基、ピロリジン基、イミダゾール基、イミダゾリジン基、イミダゾリン基、ピラゾール基、ピラゾリジン基、ピペリジン基、ピペラジン基等が挙げられ、これらの環の水素原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シアノ基、ニトロ基、水酸基、チオール基、-COOH、-SO2H又は脂肪族炭化水素基により置換されていてもよい。
上記脂肪族炭化水素基としては、上記のR1~R8、R11~R22で表される無置換の炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基として例示したものと同様の基が挙げられる。
【0022】
R11及びR12、R13とR14、R15とR16、R17とR18、R19とR20及びR21とR22、並びにR32とR33、R34とR35、R36とR37、R38とR39、R40とR41及びR42とR43のうちの少なくとも一組が互いに連結して形成する、炭素原子数1~20の水素原子、酸素原子、窒素原子及び炭素原子からなる環としては、結合している窒素原子を含めた基として、モルホリン基、オキサゾール基、オキサゾリン基、オキサジアゾール基等が挙げられ、これらの環の水素原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シアノ基、ニトロ基、水酸基、チオール基、-COOH、-SO2H又は脂肪族炭化水素基により置換されていてもよい。
上記脂肪族炭化水素基としては、上記のR1~R8、R11~R22で表される無置換の炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基として例示したものと同様の基が挙げられる。
【0023】
上記一般式(I)中の、R2~R8で表される無置換の炭素原子数2~20の複素環を含有する基としては、テトラヒドロフラン基、ジオキソラニル基、テトラヒドロピラニル基、モルホリルフラン基、チオフェン基、メチルチオフェン基、ヘキシルチオフェン基、ベンゾチオフェン基、ピロール基、ピロリジン基、イミダゾール基、イミダゾリジン基、イミダゾリン基、ピラゾール基、ピラゾリジン基、ピペリジン基及びピペラジン基、並びに脂肪族炭化水素基で置換されたテトラヒドロフラン基、ジオキソラニル基、テトラヒドロピラニル基、モルホリルフラン基、チオフェン基、メチルチオフェン基、ヘキシルチオフェン基、ベンゾチオフェン基、ピロール基、ピロリジン基、イミダゾール基、イミダゾリジン基、ピラゾール基、ピラゾリジン基、ピペリジン基及びピペラジン基等が挙げられる。また、R2~R8は、これらの複素環を含有する基中のアルキレン部分及び複素環とアルキル基との結合部のメチレン基が、-O-、-COO-、-OCO-、-CO-、-CS-、-S-、-SO-、-SO2-、-NR-、-NR-CO-、-CO-NR-、-NR-COO-、-OCO-NR-又は-SiRR’-で置換された基であってもよい。但し、これら置換する2価の基は隣り合わないものとする。
なお、本明細書において、「炭素原子数2~20の複素環を含有する基」における「2~20」は、「複素環」ではなく「複素環を含有する基」の炭素原子数を規定する。
上記脂肪族炭化水素基としては、上記のR1~R8、R11~R22で表される無置換の炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基として例示したものが挙げられる。
R及びR’は、無置換の脂肪族炭化水素基であり、無置換の脂肪族炭化水素基としては、上記のR1~R8、R11~R22で表される無置換の炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基として例示したものと同様の基が挙げられる。
【0024】
R2~R8で表される置換基を有している炭素原子数2~20の複素環を含有する基としては、上記で説明した無置換の複素環を含有する基の水素原子が、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シアノ基、ニトロ基、水酸基、チオール基、-COOH又は-SO2Hで置換されているものが挙げられる。尚、置換される基が炭素原子を含む場合、及び置換基を有する場合には、それらの炭素原子数を含めた数が規定の炭素原子数となる。
【0025】
上記一般式(I)で表される新規化合物としては、感光性樹脂組成物に用いた場合、UV感度、硬化性に優れる点から、X1が、-NR11R12で表される基であり、R11又はR12がフェニル基である化合物、R11及びR12が炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基である化合物、R11及びR12が互いに連結して水素原子、窒素原子及び炭素原子からなる炭素原子数1~20の環を形成している化合物、又はR11及びR12が互いに連結して水素原子、酸素原子、窒素原子及び炭素原子からなる炭素原子数1~20の環を形成している化合物が好ましい。
また、UV感度に優れ、吸収波長の長波長化及び樹脂への溶解性に優れる点から、R2、R3、R4、R5、R6及びR7の少なくとも一つが、ニトロ基、シアノ基、水酸基、カルボキシル基又はチオール基であるか、或いはこれらの基を置換基として有している基である化合物が好ましく、ニトロ基又はニトロ基を置換基として有している基である化合物がより好ましく、特に、R3が、ニトロ基を置換基として有している基である化合物が好ましい。ニトロ基を置換基として有している基としては、ニトロフェニル基が好ましい。
さらに、重合開始剤として用いた場合、感度に優れる点から、R2、R3、R4、R5、R6及びR7の少なくとも一つが、ベンゾイル基、o-メチルベンゾイル基又はトリフルオロメチル基であるか、これらの基を置換基として有している基である化合物も好ましく、特に、R3が、ベンゾイル基を置換基として有している基である化合物が好ましい。ベンゾイル基を置換基として有している基としては、ベンゾイルフェニル基が好ましい。
上記一般式(I)中のR2、R3、R4、R5、R6及びR7のうち、少なくとも一つがニトロ基、ベンゾイル基又はo-メチルベンゾイル基を置換基として有している基である化合物は、吸収波長域が長波長化(365nm)し、重合開始剤として用いた場合、感度に優れることから好ましい。
【0026】
本発明においては、以下の化合物が、感光性樹脂組成物に用いた場合のUV感度及び硬化性に優れ、また重合開始剤として用いた場合の感度に優れることから好ましい。
上記一般式(I)において、R1が炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基であり、R2、R4、R5、R6及びR7が水素原子であり、X1が、-NR11R12で表される基であり且つR11及びR12が炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基であるか、又はR11及びR12が互いに連結して水素原子、窒素原子及び炭素原子からなる炭素原子数1~20の環、若しくは水素原子、酸素原子、窒素原子及び炭素原子からなる炭素原子数1~20の環を形成しており、R3が、ニトロ基又はベンゾイル基を置換基として有している基である化合物。
【0027】
上記一般式(I)中のR2、R3、R4、R5、R6及びR7のうち、少なくとも一つが、上記一般式(II)で表される基である化合物は、吸収波長域が長波長化(365nm)し、重合開始剤として用いた場合、感度に優れることから好ましい。
一般式(II)中、R25~R43で表される炭素原子数1~20の無置換若しくは置換されている脂肪族炭化水素基及び炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基としては、上記のR1~R8、R11~R22で表される無置換若しくは置換されている炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基及び無置換若しくは置換されている炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基として例示したものとそれぞれ同様の基が挙げられる。
一般式(II)中、R25~R30で表される炭素原子数2~20の無置換若しくは置換されている複素環を含有する基としては、上記のR2~R8で表される炭素原子数2~20の無置換若しくは置換されている複素環を含有する基と同様の基が挙げられる。
【0028】
上記一般式(I)中のR2、R3、R4、R5、R6及びR7のうち、一つが上記一般式(II)で表される基であり、その他が水素原子、無置換若しくは置換基を有している炭素原子数1~6の脂肪族炭化水素基又は無置換若しくは置換基を有している炭素原子数6~12の芳香族炭化水素基である化合物は、感度に優れ、製造しやすい点で好ましい。
【0029】
上記一般式(I)中のR1が無置換若しくは置換基を有している炭素原子数1~12の脂肪族炭化水素基又は無置換若しくは置換基を有している炭素原子数6~12の芳香族炭化水素基である化合物は、製造しやすさの点で好ましい。
【0030】
上記一般式(I)中のnが0である化合物は、重合開始剤として用いた場合、感度に優れることから好ましい。
【0031】
上記一般式(I)中のnが1である化合物は、重合開始剤として用いた場合、透明性に優れる硬化物が得られることから好ましい。
【0032】
上記一般式(I)で表される新規化合物のうち、nが0である化合物の具体例としては、以下の化合物No.1~No.74が挙げられる。但し、本発明は以下の化合物により何ら制限を受けるものではない。
【0033】
【0034】
【0035】
【0036】
【0037】
【0038】
【0039】
【0040】
【0041】
【0042】
上記一般式(I)で表される新規化合物のうち、nが1である化合物の具体例としては、以下の化合物No.75~No.152が挙げられる。但し、本発明は以下の化合物により何ら制限を受けるものではない。
【0043】
【0044】
【0045】
【0046】
【0047】
【0048】
【0049】
【0050】
【0051】
【0052】
上記一般式(I)で表される本発明のカルバモイルオキシム化合物は、特に限定されないが、n=0の場合、下記反応式1に従って、以下の方法により製造することができる。
即ち、公知であり、市販されているインドール化合物1とハロゲン化アリールもしくは、ハロゲン化アルキル化合物を反応させることにより、インドール化合物2を得る。このインドール化合物2と酸クロリドと反応させることによりケトン化合物を得、ケトン化合物と塩酸ヒドロキシルアミンを反応させることにより、オキシム化合物を得る。続いて、オキシム化合物に、トリエチルアミン存在下でクロロギ酸4-ニトロフェニル及び1級もしくは2級アミンを反応させることにより、上記一般式(I)で表される本発明のカルバモイルオキシム化合物を得る。
なお、下記反応式1では、X1が-NR11R12の場合を示しているが、使用するアミンを変更することで、X1が上記(a)又は(b)で表される基である化合物も製造できる。
オキシム化合物及びカルバモイルオキシム化合物は、特許4223071号公報に記載の方法でも製造できる。
【0053】
反応式1
【化24】
(式中、R
1~R
12は、上記一般式(I)と同じである。)
【0054】
また、上記一般式(I)においてn=1である化合物は、特に限定されないが、下記反応式2に従って、以下の方法により製造することができる。
即ち、上記インドール化合物2と酸クロリドと反応させることによりケトン化合物2を得、ケトン化合物と亜硝酸イソブチルを反応させることにより、オキシム化合物2を得る。続いて、オキシム化合物2に、トリエチルアミン存在下でクロロギ酸-4-ニトロフェニル及び1級もしくは2級アミンを反応させることにより、上記一般式(I)で表される本発明のカルバモイルオキシム化合物2を得る。
なお、下記反応式2では、X1が-NR11R12の場合を示しているが、使用するアミンを変更することで、X1が上記(a)又は(b)で表される基である化合物も製造できる。
オキシム化合物及びカルバモイルオキシム化合物は、特許4223071号報に記載の方法でも製造できる。
【0055】
反応式2
【化25】
(式中、R
1~R
12は、上記一般式(I)と同じである。)
【0056】
本発明の新規化合物は、感光性樹脂の硬化性に優れる点、エネルギー線に対する感度が高い点から、以下で説明する光塩基発生剤である重合開始剤として好適に用いることができるほか、化学増幅型レジスト等に用いることができる。
【0057】
次に、本発明の重合開始剤、潜在性塩基発生剤及び本発明の感光性樹脂組成物について説明する。尚、特に説明しない点については、本発明の新規化合物における説明が適宜適用される。
【0058】
<潜在性塩基発生剤>
本発明の潜在性塩基発生剤は、上記一般式(I)で表される化合物を少なくとも1種含んでいるものである。重合開始剤中における上記一般式(I)で表される化合物の含有量は、好ましくは1~100質量%、より好ましくは50~100質量%である。
潜在性塩基発生剤とは、光又は熱によって塩基を発生するものであって、重合開始剤、塩基触媒、pH調整剤として使用することができる。本発明においては、操作性に優れることから、光を照射することによって塩基を発生する潜在性光塩基発生剤がより好ましい。
【0059】
<重合開始剤(A)>
本発明の重合開始剤及び本発明の感光性樹脂組成物において、重合開始剤(A)は上記一般式(I)で表される化合物を少なくとも1種含んでいるものである。重合開始剤中における上記一般式(I)で表される化合物の含有量は、好ましくは1~100質量%、より好ましくは50~100質量%である。
本発明の感光性樹脂組成物において、重合開始剤(A)の含有量は、感光性樹脂(B)100質量部に対して、好ましくは1~20質量部、より好ましくは1~10質量部である。重合開始剤(A)の含有量が、1質量部以上であることで、感度不足による硬化不良を防止しやすいため好ましく、20質量部以下とすることで、光照射時又は加熱時の揮発物を抑制できるため好ましい。
【0060】
<感光性樹脂(B)>
本発明で用いられる感光性樹脂(B)は、アニオン重合性官能基、又は塩基を触媒とし硬化温度が低温化する樹脂を示し、紫外線等のエネルギー線を照射することにより重合して硬化する感光性樹脂又は硬化温度が低温化する硬化樹脂である。上記アニオン重合性官能基とは、紫外線等の活性エネルギー線によって光塩基発生剤から発生する塩基により重合しうる官能基を意味し、例えば、エポキシ基、エピスルフィド基、環状モノマー(δ-バレロラクトン、ε-カプロラクタム)、イソシアネートとアルコールによるウレタン結合形成の触媒、(メタ)アクリル基のマイケル付加触媒、シリコーン樹脂の架橋反応の触媒等が挙げられる。感光性樹脂(B)としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ナイロン樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、速やかに反応が進行することや接着性が良好であるという点から、エポキシ樹脂とフェノール樹脂の組み合わせが好適である。
【0061】
上記エポキシ樹脂としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ピロカテコール、フロログルクシノール等の単核多価フェノール化合物のポリグリシジルエーテル化合物;ジヒドロキシナフタレン、ビフェノール、メチレンビスフェノール(ビスフェノールF)、メチレンビス(オルトクレゾール)、エチリデンビスフェノール、イソプロピリデンビスフェノール(ビスフェノールA)、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン、イソプロピリデンビス(オルトクレゾール)、テトラブロモビスフェノールA、1,3-ビス(4-ヒドロキシクミルベンゼン)、1,4-ビス(4-ヒドロキシクミルベンゼン)、1,1,3-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,2,2-テトラ(4-ヒドロキシフェニル)エタン、チオビスフェノール、スルホビスフェノール、オキシビスフェノール、フェノールノボラック、オルソクレゾールノボラック、エチルフェノールノボラック、ブチルフェノールノボラック、オクチルフェノールノボラック、レゾルシンノボラック、テルペンフェノール等の多核多価フェノール化合物のポリグリシジルエーテル化合物;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ポリグリコール、チオジグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ビスフェノールA-エチレンオキシド付加物等の多価アルコール類のポリグリシジルエーテル;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、コハク酸、グルタル酸、スベリン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸、トリマー酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸等の脂肪族、芳香族又は脂環族多塩基酸のグリシジルエステル類、及びグリシジルメタクリレートの単独重合体又は共重合体;N,N-ジグリシジルアニリン、ビス(4-(N-メチル-N-グリシジルアミノ)フェニル)メタン、ジグリシジルオルトトルイジン等のグリシジルアミノ基を有するエポキシ化合物;ビニルシクロヘキセンジエポキシド、ジシクロペンタンジエンジエポキサイド、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル-6-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)アジペート等の環状オレフィン化合物のエポキシ化物;エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化アクリロニトリル-ブタジエン共重合物、エポキシ化スチレン-ブタジエン共重合物等のエポキシ化共役ジエン重合体、トリグリシジルイソシアヌレート等の複素環化合物が挙げられる。また、これらのエポキシ樹脂は末端イソシアネートのプレポリマーによって内部架橋されたもの或いは多価の活性水素化合物(多価フェノール、ポリアミン、カルボニル基含有化合物、ポリリン酸エステル等)で高分子量化したものでもよい。
上記エポキシ樹脂の中では、硬化性に優れる点から、グリシジル基を有するものが好ましく、2官能以上のグリシジル基を有するものがより好ましい。
【0062】
上記フェノール樹脂としては、1分子中に2個以上のヒドロキシ基を有するフェノール樹脂が好ましく、一般に公知のものを用いることができる。フェノール樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型フェノール樹脂、ビスフェノールE型フェノール樹脂、ビスフェノールF型フェノール樹脂、ビスフェノールS型フェノール樹脂、フェノールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック型フェノール樹脂、グリシジルエステル型フェノール樹脂、アラルキルノボラック型フェノール樹脂、ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂、クレゾールノボラック型フェノール樹脂、多官能フェノール樹脂、ナフトール樹脂、ナフトールノボラック樹脂、多官能ナフトール樹脂、アントラセン型フェノール樹脂、ナフタレン骨格変性ノボラック型フェノール樹脂、フェノールアラルキル型フェノール樹脂、ナフトールアラルキル型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、ビフェニル型フェノール樹脂、脂環式フェノール樹脂、ポリオール型フェノール樹脂、リン含有フェノール樹脂、重合性不飽和炭化水素基含有フェノール樹脂及び、水酸基含有シリコーン樹脂類が挙げられるが、特に制限されるものではない。これらのフェノール樹脂は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0063】
上記ポリアミド樹脂としては、酸二無水物としてはエチレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2,3,3-ビフェニルテトラカルボン酸無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、ジアミンとしては、(o-,m-若しくはp-)フェニレンジアミン、(3,3'-若しくは4,4’-)ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノベンゾフェノンノン、(3,3’-若しくは4,4’-)ジアミノジフェニルメタン等を原料とする樹脂が挙げられる。
【0064】
上記ポリウレタン樹脂としては、ジイソシアネートとして、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の多官能イソシアネートと、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール等のポリオール(多官能アルコール)とを原料とする樹脂等が挙げられる。
また、上記ナイロン樹脂としては、ε-カプロラクタム、ラウリルラクタム等の環状モノマーを原料とした樹脂等が挙げられる。
また、上記ポリエステル樹脂としては、δ-バレロラクトン、β―プロピオラクトン等の環状モノマーを原料とした樹脂等が挙げられる。
また、上記シリコーン樹脂としてはメチルシリコーンレジン、メチル/フェニルシリコーンレジン、有機樹脂変性シリコーンレジン等が挙げられる。
【0065】
<添加剤>
本発明の感光性樹脂組成物には、任意成分として、無機化合物、色材、潜在性エポキシ硬化剤、連鎖移動剤、増感剤、溶剤等の添加剤を用いることができる。
【0066】
上記無機化合物としては、例えば、酸化ニッケル、酸化鉄、酸化イリジウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化カリウム、シリカ、アルミナ等の金属酸化物;層状粘土鉱物、ミロリブルー、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、コバルト系、マンガン系、ガラス粉末(特にガラスフリット)、マイカ、タルク、カオリン、フェロシアン化物、各種金属硫酸塩、硫化物、セレン化物、アルミニウムシリケート、カルシウムシリケート、水酸化アルミニウム、白金、金、銀、銅等が挙げられる。これらの無機化合物は、例えば、充填剤、反射防止剤、導電材、安定剤、難燃剤、機械的強度向上剤、特殊波長吸収剤、発インク剤等として用いられる。
【0067】
上記色材としては、顔料、染料、天然色素等が挙げられる。これらの色材は、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0068】
上記顔料としては、例えば、ニトロソ化合物;ニトロ化合物;アゾ化合物;ジアゾ化合物;キサンテン化合物;キノリン化合物;アントラキノン化合物;クマリン化合物;フタロシアニン化合物;イソインドリノン化合物;イソインドリン化合物;キナクリドン化合物;アンタンスロン化合物;ペリノン化合物;ペリレン化合物;ジケトピロロピロール化合物;チオインジゴ化合物;ジオキサジン化合物;トリフェニルメタン化合物;キノフタロン化合物;ナフタレンテトラカルボン酸;アゾ染料、シアニン染料の金属錯体化合物;レーキ顔料;ファーネス法、チャンネル法又はサーマル法によって得られるカーボンブラック、或いはアセチレンブラック、ケッチェンブラック又はランプブラック等のカーボンブラック;上記カーボンブラックをエポキシ樹脂で調整又は被覆したもの、上記カーボンブラックを予め樹脂溶液中で分散処理し、20~200mg/gの樹脂を吸着させたもの、上記カーボンブラックを酸性又はアルカリ性表面処理したもの、平均粒径が8nm以上でDBP吸油量が90ml/100g以下のカーボンブラック、950℃における揮発分中のCO及びCO2から算出した全酸素量が、表面積100m2当たり9mg以上であるカーボンブラック;黒鉛、黒鉛化カーボンブラック、活性炭、炭素繊維、カーボンナノチューブ、カーボンマイクロコイル、カーボンナノホーン、カーボンエアロゲル、フラーレン;アニリンブラック、ピグメントブラック7、チタンブラック;酸化クロム緑、ミロリブルー、コバルト緑、コバルト青、マンガン系、フェロシアン化物、リン酸塩群青、紺青、ウルトラマリン、セルリアンブルー、ピリジアン、エメラルドグリーン、硫酸鉛、黄色鉛、亜鉛黄、べんがら(赤色酸化鉄(III))、カドミウム赤、合成鉄黒、アンバー等の有機又は無機顔料を用いることができる。これらの顔料は単独で、或いは複数を混合して用いることができる。
【0069】
上記顔料としては、市販の顔料を用いることもでき、例えば、ピグメントレッド1、2、3、9、10、14、17、22、23、31、38、41、48、49、88、90、97、112、119、122、123、144、149、166、168、169、170、171、177、179、180、184、185、192、200、202、209、215、216、217、220、223、224、226、227、228、240、254;ピグメントオレンジ13、31、34、36、38、43、46、48、49、51、52、55、59、60、61、62、64、65、71;ピグメントイエロー1、3、12、13、14、16、17、20、24、55、60、73、81、83、86、93、95、97、98、100、109、110、113、114、117、120、125、126、127、129、137、138、139、147、148、150、151、152、153、154、166、168、175、180、185;ピグメントグリ-ン7、10、36;ピグメントブルー15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:5、15:6、22、24、56、60、61、62、64;ピグメントバイオレット1、19、23、27、29、30、32、37、40、50等が挙げられる。
【0070】
上記染料としては、アゾ染料、アントラキノン染料、インジゴイド染料、トリアリールメタン染料、キサンテン染料、アリザリン染料、アクリジン染料スチルベン染料、チアゾール染料、ナフトール染料、キノリン染料、ニトロ染料、インダミン染料、オキサジン染料、フタロシアニン染料、シアニン染料等の染料等が挙げられ、これらは複数を混合して用いてもよい。
【0071】
上記潜在性エポキシ硬化剤としては、例えば、ジシアンジアミド、変性ポリアミン、ヒドラジド類、4,4'-ジアミノジフェニルスルホン、三フッ化ホウ素アミン錯塩、イミダゾール類、グアナミン類、イミダゾール類、ウレア類及びメラミン等が挙げられる。
【0072】
上記連鎖移動剤又は増感剤としては、一般的に硫黄原子含有化合物が用いられる。例えばチオグリコール酸、チオリンゴ酸、チオサリチル酸、2-メルカプトプロピオン酸、3-メルカプトプロピオン酸、3-メルカプト酪酸、N-(2-メルカプトプロピオニル)グリシン、2-メルカプトニコチン酸、3-[N-(2-メルカプトエチル)カルバモイル]プロピオン酸、3-[N-(2-メルカプトエチル)アミノ]プロピオン酸、N-(3-メルカプトプロピオニル)アラニン、2-メルカプトエタンスルホン酸、3-メルカプトプロパンスルホン酸、4-メルカプトブタンスルホン酸、ドデシル(4-メチルチオ)フェニルエーテル、2-メルカプトエタノール、3-メルカプト-1,2-プロパンジオール、1-メルカプト-2-プロパノール、3-メルカプト-2-ブタノール、メルカプトフェノール、2-メルカプトエチルアミン、2-メルカプトイミダゾール、2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプト-3-ピリジノール、2-メルカプトベンゾチアゾール、メルカプト酢酸、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)等のメルカプト化合物、該メルカプト化合物を酸化して得られるジスルフィド化合物、ヨード酢酸、ヨードプロピオン酸、2-ヨードエタノール、2-ヨードエタンスルホン酸、3-ヨードプロパンスルホン酸等のヨード化アルキル化合物、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトイソブチレート)、ブタンジオールビス(3-メルカプトイソブチレート)、ヘキサンジチオール、デカンジチオール、1,4-ジメチルメルカプトベンゼン、ブタンジオールビスチオプロピオネート、ブタンジオールビスチオグリコレート、エチレングリコールビスチオグリコレート、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、ブタンジオールビスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート、トリスヒドロキシエチルトリスチオプロピオネート、ジエチルチオキサントン、ジイソプロピルチオキサントン、下記化合物No.C1、トリメルカプトプロピオン酸トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート等の脂肪族多官能チオール化合物、昭和電工社製カレンズMT BD1、PE1、NR1等が挙げられる。
【0073】
【0074】
上記溶剤としては、通常、前記の各成分(重合開始剤(A)及び感光性樹脂(B)等)を溶解又は分散しえる溶剤、例えば、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、ジエチルケトン、アセトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン等のケトン類;エチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸-n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸シクロヘキシル、乳酸エチル、コハク酸ジメチル、テキサノール等のエステル系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のセロソルブ系溶剤;メタノール、エタノール、イソ-又はn-プロパノール、イソ-又はn-ブタノール、アミルアルコール等のアルコール系溶剤;エチレングリコールモノメチルアセテート、エチレングリコールモノエチルアセテート、プロピレングリコール-1-モノメチルエーテル-2-アセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、エトキシエチルプロピオネート等のエーテルエステル系溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレン等のBTX系溶剤;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤;テレピン油、D-リモネン、ピネン等のテルペン系炭化水素油;ミネラルスピリット、スワゾール#310(コスモ松山石油(株))、ソルベッソ#100(エクソン化学(株))等のパラフィン系溶剤;四塩化炭素、クロロホルム、トリクロロエチレン、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン等のハロゲン化脂肪族炭化水素系溶剤;クロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素系溶剤;カルビトール系溶剤;アニリン;トリエチルアミン;ピリジン;酢酸;アセトニトリル;二硫化炭素;N,N-ジメチルホルムアミド;N,N-ジメチルアセトアミド;N-メチルピロリドン;ジメチルスルホキシド;水等を用いることができ、これらの溶剤は1種で又は2種以上の混合溶剤として使用することができる。
これらの中でも、アルカリ現像性、パターニング性、製膜性、溶解性の点から、ケトン類又はエーテルエステル系溶剤、特に、プロピレングリコール-1-モノメチルエーテル-2-アセテート又はシクロヘキサノンが好ましく用いられる。
本発明の感光性樹脂組成物において、溶剤の含有量は、特に制限されず、各成分が均一に分散又は溶解され、また本発明の感光性樹脂組成物が各用途に適した液状ないしペースト状を呈する量であればよいが、通常、本発明の感光性樹脂組成物中の固形分(溶剤以外の全成分)の量が10~90質量%となる範囲で溶剤を含有させることが好ましい。
【0075】
また、本発明の感光性樹脂組成物は、有機重合体を用いることによって、硬化物の特性を改善することもできる。該有機重合体としては、例えば、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレート-エチルアクリレート共重合体、ポリ(メタ)アクリル酸、スチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸-メチルメタクリレート共重合体、エチレン-塩化ビニル共重合体、エチレン-ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル樹脂、ABS樹脂、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、ウレタン樹脂、ポリカーボネートポリビニルブチラール、セルロースエステル、ポリアクリルアミド、飽和ポリエステル、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂等が挙げられる。
上記有機重合体を使用する場合、その使用量は、感光性樹脂(B)100質量部に対して、好ましくは10~500質量部である。
【0076】
本発明の感光性樹脂組成物には、更に、界面活性剤、シランカップリング剤、メラミン化合物等を併用することができる。
【0077】
上記界面活性剤としては、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルカルボン酸塩等のフッ素系界面活性剤;高級脂肪酸アルカリ塩、アルキルスルホン酸塩、アルキル硫酸塩等のアニオン系界面活性剤;高級アミンハロゲン酸塩、第四級アンモニウム塩等のカチオン系界面活性剤;ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリド等の非イオン界面活性剤;両性界面活性剤;シリコーン系界面活性剤等の界面活性剤を用いることができ、これらは組み合わせて用いてもよい。
【0078】
上記シランカップリング剤としては、例えば信越化学社製シランカップリング剤を用いることができ、その中でも、KBE-9007、KBM-502、KBE-403等の、イソシアネート基、メタクリロイル基又はエポキシ基を有するシランカップリング剤が好適に用いられる。
【0079】
上記メラミン化合物としては、(ポリ)メチロールメラミン、(ポリ)メチロールグリコールウリル、(ポリ)メチロールベンゾグアナミン、(ポリ)メチロールウレア等の窒素化合物中の活性メチロール基(CH2OH基)の全部又は一部(少なくとも2つ)がアルキルエーテル化された化合物等を挙げることができる。
ここで、アルキルエーテルを構成するアルキル基としては、メチル基、エチル基又はブチル基が挙げられ、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、アルキルエーテル化されていないメチロール基は、一分子内で自己縮合していてもよく、二分子間で縮合して、その結果オリゴマー成分が形成されていてもよい。
具体的には、ヘキサメトキシメチルメラミン、ヘキサブトキシメチルメラミン、テトラメトキシメチルグリコールウリル、テトラブトキシメチルグリコールウリル等を用いることができる。
これらの中でも、溶剤への溶解性、感光性樹脂組成物から結晶析出しにくいという点から、ヘキサメトキシメチルメラミン、ヘキサブトキシメチルメラミン等のアルキルエール化されたメラミンが好ましい。
【0080】
本発明の感光性樹脂組成物において、(A)重合開始剤及び感光性樹脂(B)以外の任意成分(但し、無機化合物、色材、及び溶剤は除く)の使用量は、その使用目的に応じて適宜選択され特に制限されないが、好ましくは、感光性樹脂(B)100質量部に対して合計で50質量部以下とする。
【0081】
本発明の感光性樹脂組成物は、エネルギー線を照射して硬化物とすることができる。該硬化物は、用途に応じた適宜な形状として形成される。例えば膜状の硬化物を形成する場合には、本発明の感光性樹脂組成物は、スピンコーター、ロールコーター、バーコーター、ダイコーター、カーテンコーター、各種の印刷、浸漬等の公知の手段で、ソーダガラス、石英ガラス、半導体基板、金属、紙、プラスチック等の支持基体上に適用することができる。また、一旦フィルム等の支持基体上に施した後、他の支持基体上に転写することもでき、その適用方法に制限はない。
【0082】
本発明の感光性樹脂組成物を硬化させる際に用いられるエネルギー線の光源としては、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、水銀蒸気アーク灯、キセノンアーク灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、蛍光灯、タングステンランプ、エキシマーランプ、殺菌灯、発光ダイオード、CRT光源等から得られる2000オングストローム~7000オングストロームの波長を有する電磁波エネルギーや電子線、X線、放射線等の高エネルギー線を利用することができるが、好ましくは、波長300~450nmの光を発光する超高圧水銀ランプ、水銀蒸気アーク灯、カーボンアーク灯、キセノンアーク灯等が用いられる。
【0083】
更に、露光光源にレーザー光を用いることにより、マスクを用いずに、コンピューター等のデジタル情報から直接画像を形成するレーザー直接描画法が、生産性のみならず、解像性や位置精度等の向上も図れることから有用であり、そのレーザー光としては、340~430nmの波長の光が好適に使用されるが、エキシマーレーザー、窒素レーザー、アルゴンイオンレーザー、ヘリウムカドミウムレーザー、ヘリウムネオンレーザー、クリプトンイオンレーザー、各種半導体レーザー及びYAGレーザー等の可視から赤外領域の光を発するものも用いることができる。これらのレーザー光を使用する場合には、好ましくは、可視から赤外の当該領域を吸収する増感色素が加えられる。
【0084】
また、本発明の感光性樹脂組成物の硬化には、上記エネルギー線の照射後、加熱することが通常必要であり、40~150℃程度の加熱が硬化率の点で好ましい。
【0085】
本発明の感光性樹脂組成物は、光硬化性塗料又はワニス;光硬化性接着剤;金属用コーティング剤;プリント基板;カラーテレビ、PCモニタ、携帯情報端末、デジタルカメラ等のカラー表示の液晶表示素子におけるカラーフィルタ;CCDイメージセンサのカラーフィルタ;プラズマ表示パネル用の電極材料;粉末コーティング;印刷インク;印刷版;接着剤;歯科用組成物;ゲルコート;電子工学用のフォトレジスト;電気メッキレジスト;エッチングレジスト;ドライフィルム;はんだレジスト;種々の表示用途用のカラーフィルタを製造するための或いはプラズマ表示パネル、電気発光表示装置、及びLCDの製造工程においてそれらの構造を形成するためのレジスト;電気及び電子部品を封入するための組成物;ソルダーレジスト;磁気記録材料;微小機械部品;導波路;光スイッチ;めっき用マスク;エッチングマスク;カラー試験系;ガラス繊維ケーブルコーティング;スクリーン印刷用ステンシル;ステレオリトグラフィによって三次元物体を製造するための材料;ホログラフィ記録用材料;画像記録材料;微細電子回路;脱色材料;画像記録材料のための脱色材料;マイクロカプセルを使用する画像記録材料用の脱色材料;印刷配線板用フォトレジスト材料;UV及び可視レーザー直接画像系用のフォトレジスト材料;プリント回路基板の逐次積層における誘電体層形成に使用するフォトレジスト材料又は保護膜等の各種の用途に使用することができ、その用途に特に制限はない。
【0086】
本発明の感光性樹脂組成物は、液晶表示パネル用スペーサーを形成する目的及び垂直配向型液晶表示素子用突起を形成する目的で使用することもできる。特に垂直配向型液晶表示素子用の突起とスペーサーを同時に形成するための感光性樹脂組成物として有用である。
【0087】
上記の液晶表示パネル用スペーサーは、(1)本発明の感光性樹脂組成物の塗膜を基板上に形成する工程、(2)該塗膜に所定のパターン形状を有するマスクを介してエネルギー線(光)を照射する工程、(3)露光後のベーク工程、(4)露光後の被膜を現像する工程、(5)現像後の該被膜を加熱する工程により好ましく形成される。
【0088】
色材を添加した本発明の感光性樹脂組成物は、カラーフィルタにおけるRGB等の各画素を構成するレジストや、各画素の隔壁を形成するブラックマトリクス用レジストとして好適に用いられる。更に、撥インク剤を添加するブラックマトリクス用レジストの場合、プロファイル角が50°以上であるインクジェット方式カラーフィルタ用隔壁に好ましく用いられる。該撥インク剤としては、フッ素系界面活性剤及びフッ素系界面活性剤を含有する組成物が好適に用いられる。
【0089】
上記インクジェット方式カラーフィルタ用隔壁に用いた場合、本発明の感光性樹脂組成物から形成された隔壁が被転写体上を区画し、区画された被転写体上の凹部にインクジェット法により液滴を付与して画像領域を形成する方法により光学素子が製造される。この際、上記液滴が着色剤を含有し、上記画像領域が着色されていることが好ましく、その場合には、上記の製造方法により作製された光学素子は、基板上に複数の着色領域からなる画素群と該画素群の各着色領域を離隔する隔壁を少なくとも有するものとなる。
【0090】
本発明の感光性樹脂組成物は、保護膜又は絶縁膜用組成物としても用いることができる。この場合、紫外線吸収剤、アルキル化変性メラミン及び/又はアクリル変性メラミン、分子中にアルコール性水酸基を含有する1又は2官能の(メタ)アクリレートモノマー及び/又はシリカゾルを含有することができる。
【0091】
上記絶縁膜は、剥離可能な支持基材上に絶縁樹脂層が設けられた積層体における該絶縁樹脂層に用いられ、該積層体は、アルカリ水溶液による現像が可能なものであり、絶縁樹脂層の膜厚が10~100μmであることが好ましい。
【0092】
本発明の感光性樹脂組成物は、無機化合物を含有させることで、感光性ペースト組成物として用いることができる。該感光性ペースト組成物は、プラズマディスプレイパネルの隔壁パターン、誘電体パターン、電極パターン及びブラックマトリックスパターン等の焼成物パターンを形成するために用いることができる。
【実施例】
【0093】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0094】
〔製造例1〕オキシム体1の合成
<ステップ1>
200mLの四つ口フラスコにインドールを1.0eq.、4-フルオロニトロベンゼン1.2eq.、炭酸カリウム3.0eq.及びN,N-ジメチルホルムアミド(理論収量の500重量%)を入れ、20mL/minの窒素流通下130℃で3時間加熱撹拌した。室温まで冷却後、イオン交換水50gを加えて1時間撹拌した。析出物をろ取した後、50℃で恒量まで減圧乾燥し、N-ニトロフェニルインドールを収率85%で得た。
<ステップ2>
200mLの四つ口フラスコにステップ1で得られたN-ニトロフェニルインドール1.0eq.、塩化アルミニウム2.5eq.及びジクロロエタン(理論収量の500重量%)を入れ、氷浴上5℃で撹拌を行った。そこにミリストイルクロリド1.3eq.を滴下して加えた。室温まで昇温後、3時間撹拌し、イオン交換水50g加えて有機層を分離した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を留去し、エタノールを加えて晶析を行った。ろ過して得られた結晶を50℃で恒量まで減圧乾燥し、ケトン化合物1を収率65%で得た。
<ステップ3>
100mLの四つ口フラスコにステップ2で得られたケトン化合物を1.0eq.、塩酸ヒドロキシルアミン2.0eq.及びピリジン(理論収量の200重量%)を入れ、20mL/minの窒素流通下95℃で2.5時間加熱撹拌した。室温まで冷却後、イオン交換水50gを加えて有機層を分離した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を留去し、50℃で恒量まで減圧乾燥して、オキシム体1を収率88%で得た。
【0095】
〔製造例2〕オキシム体2の合成
製造例1中<ステップ1>の4-フルオロニトロベンゼンを4-フルオロベンゾフェノンに、<ステップ2>のミリストイルクロリドをn-オクタノイルクロリドに変えた以外は、同様の操作を行い、オキシム体2を全収率11%で得た。
【0096】
〔実施例1〕化合物No.1の合成
100ml四つ口フラスコに窒素フローし、オキシム体1を1.0eq.と、ジクロロメタン(理論収量の500重量%)と、トリエチルアミン2.0eq.を加え、氷浴上5℃で撹拌を行った。そこにクロロギ酸4-ニトロフェニル1.1eq.をジクロロメタンに溶かしたものを滴下して加えた。滴下終了後、室温で30分撹拌した。再び氷浴上5℃まで冷却後、ピペリジン1.1eq.を滴下して加えた。室温で3時間撹拌し、減圧下で溶媒を留去した。そこに酢酸エチルと5質量%NaOH水溶液を加えて有機層を分離した。有機層をイオン交換水で3回水洗後、濃縮した。残渣にメタノールを加えて晶析を行い、化合物No.1を黄色粉状化合物として、収率70%で得た。得られた固体のTG-DTA(融点/℃)、1H-NMRを分析した。結果を〔表1〕及び〔表2〕に示す。
【0097】
〔実施例2〕化合物No.2の合成
実施例1に記載のオキシム体1をオキシム体2に変えた以外は、実施例1と同様の操作を行い、化合物No.2を収率54%で得た。得られた固体のTG-DTA(融点/℃)、1H-NMRを分析した。結果を〔表1〕及び〔表2〕に示す。
【0098】
〔製造例3〕オキシム体3の合成
製造例1中<ステップ1>の4-フルオロニトロベンゼンを4-フルオロベンゾフェノンに、<ステップ2>のミリストイルクロリドをn-オクタノイルクロリドに変えた以外は、同様の操作を行い、ケトン化合物2を得た。
<ステップ3>
100mL四つ口フラスコに上記ケトン化合物2を1.0eq.、DMF(理論収量の300重量%)、塩酸1.2eq.の順で加え、氷浴上5℃で撹拌を行った。そこに亜硝酸イソブチル1.2eq.を滴下して加えた。室温まで昇温後、6時間撹拌した。その後イオン交換水50g及び酢酸エチルを加えて有機層を分離した。有機層を水で3回水洗し、エバポレータで減圧濃縮してオキシム体3を得た。得られたオキシム体3は精製せずに次の反応に用いた。
【0099】
〔実施例3〕化合物No.75の合成
100ml四つ口フラスコに窒素フローし、オキシム体3を1.0eq.と、ジクロロメタン(理論収量の500重量%)と、トリエチルアミン2.0eq.を加え、氷浴上5℃で撹拌を行った。そこにクロロギ酸4-ニトロフェニル1.1eq.をジクロロメタンに溶かしたものを滴下して加えた。滴下終了後、室温で30分撹拌した。再び氷浴上5℃まで冷却後ピペリジン1.1eq.を滴下して加えた。室温で5時間撹拌し、減圧下で溶媒を留去した。そこに酢酸エチルと5質量%NaOH水溶液を加え、有機層を分離した。有機層をイオン交換水で3回水洗後、濃縮を行った。残渣にメタノールを加えて晶析を行い、化合物No.75を黄色粉状化合物として、収率30%で得た。得られた固体のTG-DTA(融点/℃)、1H-NMRを分析した。結果を〔表1〕及び〔表2〕に示す。
【0100】
〔実施例4〕化合物No.76の合成
実施例3に記載のピぺリジンをモルホリンに変えた以外は実施例3と同様の操作を行い、化合物No.76を収率51%で得た。得られた固体のTG-DTA(融点/℃)、1H-NMRを分析した。結果を〔表1〕及び〔表2〕に示す。
【0101】
〔実施例5〕化合物No.77の合成
実施例3に記載のピぺリジン1.1eq.をピペラジン0.50eq.に変えた以外は実施例3と同様の操作を行い、化合物No.77を収率43%で得た。得られた固体のTG-DTA(融点/℃)、1H-NMRを分析した。結果を〔表1〕及び〔表2〕に示す。
【0102】
〔実施例6〕化合物No.152の合成
実施例3に記載のピぺリジンをジブチルアミンに変えた以外は実施例3と同様の操作を行い、化合物No.152を収率38%で得た。得られた固体のTG-DTA(融点/℃)、1H-NMRを分析した。結果を〔表1〕及び〔表2〕に示す。
【0103】
〔比較例1〕下記比較化合物No.1を用いた。
【0104】
【0105】
【0106】
〔評価例1~5及び比較評価例1〕光分解能の評価
化合物No.1、No.75、No.76、No.77、No.152及び下記比較化合物No.1をアセトニトリル溶液1.0×10-4molに調整して蓋付き石英セルに入れた。このサンプルに超高圧水銀ランプを光源とする紫外光を100mJ/cm2、500mJ/cm2、1000mJ/cm2(365nmにおける積算光量)の条件で照射し、分解性を調べた。分解性の評価には、HPLCを用いて未照射時のピークを0として分解した量を%で表した。結果を〔表3〕に示す。
HPLC:日立ハイテクノロジー社製、UV検出器 Chrom master5430
展開溶媒:アセトニトリル/水/酢酸アンモニウム
=90/10/0.2(体積比率)
流速:1ml/min
カラム:Inertsil ODS-2
カラム温度:40℃
検出:254nm
【0107】
【0108】
【0109】
上記〔表3〕の結果より、本発明の新規化合物は、UV光に対し高い分解性を有しており、よって、分解によって発生する塩基量が多く、感光性樹脂組成物において高感度の硬化性を示すものである。
【0110】
〔実施例7~12及び比較例1〕感光性組成物の調製
〔表4〕に記載の配合を行い、感光性組成物No.1~No.6及び比較感光性組成物No.1を得た。尚、表中の配合の数値は質量部を表す。
また、表中の各成分の符号は、下記の成分を表す。
A-1 化合物No.1
A-2 化合物No.2
A-3 化合物No.75
A-4 化合物No.76
A-5 化合物No.77
A-6 化合物No.152
A’-1 比較化合物No.1
B-1 EPPN-201
(フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ当量193g/eq.、
日本化薬社製)
B-2 TRR-5010G
(クレゾールノボラック型フェノール樹脂、水酸基当量120g/eq.、
Mw=8,000、旭有機材工業社製)
C-1 FZ-2122
(ポリエーテル変性ポリシロキサン、東レダウコーニング社製)
D-1 シクロペンタノン(溶剤)
【0111】
【0112】
〔評価例6~17、並びに比較評価例2及び3〕感光性組成物及び硬化物の評価
感光性組成物No.1~No.6及び比較感光性組成物No.1並びにそれらの硬化物について、線幅感度、硬化物の残膜率の評価を、下記の手順で行った。結果を〔表5〕に併記する。
【0113】
[評価サンプルの作成方法及び評価方法]
感光性組成物No.1~No.6及び比較感光性組成物No.1(塗布量約2.0cc)をそれぞれ、ガラス基材にスピンコーター(500rpm×2秒→1800rpm×15秒→slope×5秒)で塗膜し、ホットプレート上でプリベイクをした(90℃×120秒)。
その後、トプコン露光機を用いて紫外光を分割露光した(60,120mJ/cm2、gap:20μm、照度:20.0mW/cm2)。
露光後、ホットプレート上でポストベイクを行い(120℃×5分)、PGMEAで現像し(温度:23℃、200rpm×10秒)、IPA(イソプロピルアルコール)洗浄した(200rpm×10秒→乾燥:500rpm×5秒)。
得られたサンプルについて、各露光量におけるマスク開口20μmのパターンの線幅・残膜率を測定した。
【0114】
【0115】
上記〔表5〕の結果より、本発明の感光性組成物は、比較感光性組成物と比較して、大きな線幅(高感度)、高い残膜率(硬化性が高い)を示したことから、本発明の化合物は、重合開始剤として優れていることは明白である。
【0116】
〔実施例13~15、並びに比較例2及び3〕感光性組成物の調製
〔表6〕に記載の配合を行い、感光性組成物No.7~No.9、並びに比較感光性組成物No.2及びNo.3を得た。尚、表中の配合の数値は質量(g)を表す。
また、表中の各成分の符号は、下記の成分を表す。
A’-2 比較化合物No.2
B-3 KR-300
(メチル/フェニルシリコーンレジン、50%キシレン溶液、信越化学工業社製)
B-4 テトラエトキシシラン
【0117】
【0118】
【0119】
〔評価例18~20、並びに比較評価例4及び5〕感光性組成物及び硬化物の評価
感光性組成物No.7~No.9、比較感光性組成物No.2及びNo.3並びにそれらの硬化物について、タック性、透明性の評価を、下記の手順で行った。結果を〔表7〕に併記する。
【0120】
[評価サンプルの作成方法及び評価方法]
感光性組成物No.7~No.9及び比較感光性組成物No.2及びNo.3(塗布量約4.0cc)をそれぞれ、ガラス基材にスピンコーター(500rpm×2秒→1800rpm×15秒→slope×5秒)で塗膜し、ホットプレート上でプリベイクをした(90℃×120秒)。
その後、トプコン露光機を用いて紫外光を露光した(1000mJ/cm2、gap:20μm、照度:20.0mW/cm2)。
露光後、ホットプレート上でポストベイクを行った(120℃×5分)。
得られたサンプルについて、表面を綿棒でこすりタックが残るか確認した。タックが残らないものを〇、タックが残ったものを×とした。評価が〇の化合物は、硬化性が高いことから重合開始剤として好ましい。
また、得られたサンプルについて、分光光度計を用いて紫外・可視吸収スペクトルを測定し400nmの透過率を比較した。透過率が80%以上の化合物は、透明性が高いことから重合開始剤として好ましく、透過率が80%未満の化合物は、透明性が低いことから透明性が要求される用途の重合開始剤として好ましくない。
分光光度計:日立ハイテク社製 分光光度計U-3900
【0121】
【0122】
上記〔表7〕の結果より、本発明の化合物は、シリコーンレジンを用いた組成物において硬化性及び透明性に優れる重合開始剤であることは明らかである。
【0123】
〔実施例16及び17、並びに比較例4〕感光性組成物の調製
〔表8〕に記載の配合を行い、感光性組成物No.10及びNo.11、並びに比較感光性組成物No.4を得た。尚、表中の配合の数値は質量(g)を表す。
また、表中の各成分の符号は、下記の成分を表す。
A’-3 比較化合物No.3
B-5 PEMP
(4官能チオールモノマー、SC有機化学社製)
【0124】
【0125】
【0126】
〔評価例21及び22、並びに比較評価例6〕感光性組成物及び硬化物の評価
感光性組成物No.10及びNo.11、並びに比較感光性組成物No.4、及びそれらの硬化物について、感度の評価を、下記の手順で行った。結果を〔表9〕に記載する。
【0127】
[評価サンプルの作成方法及び評価方法]
感光性組成物No.10及びNo.11、並びに比較感光性組成物No.4(塗布量約4.0cc)をそれぞれ、ガラス基材にスピンコーター(500rpm×2秒→1800rpm×15秒→slope×5秒)で塗膜し、ホットプレート上でプリベイクをした(90℃×120秒)。
その後、ステップタブレットを塗膜上に置き、LED露光機を用いて紫外光(365nm、385nm、395nm)を露光した(3000mJ/cm2、照度:20.0mW/cm2)。
露光後、ホットプレート上でポストベイクを行い(100℃×20分)、PGMEAで現像し(30秒)、IPA(イソプロピルアルコール)で洗浄した(10秒)。
得られたサンプルについて、現像で膜が残った段数を記録した。段数が5以上の感光性樹脂組成物は、感度に優れることから好ましく、段数が10段以上の物は特に好ましい。
【0128】
【0129】
上記〔表9〕の結果より、本発明の化合物は、エポキシ樹脂及び硬化剤にチオールを用いた組成物において硬化性に優れる重合開始剤であることは明らかである。
【0130】
〔実施例18及び19、並びに比較例5〕感光性組成物の調製
〔表10〕に記載の配合を行い、感光性組成物No.12及びNo.13、並びに比較感光性組成物No.5を得た。尚、表中の配合の数値は質量(g)を表す。
また、表中の各成分の符号は、下記の成分を表す。
B-6 ポリアミック酸
(N,N-ジメチルアセトアミド中で3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とビス(4-アミノフェニル)エーテルを反応させて得られたもの。重量平均分子量は約10000。)
D-2 NMP(溶剤)
【0131】
【0132】
〔評価例23~26、並びに比較評価例7及び8〕感光性組成物及び硬化物の評価
感光性組成物No.12及びNo.13、並びに比較感光性組成物No.5、及びそれらの硬化物について、線幅感度、硬化物の残膜率の評価を、下記の手順で行った。結果を〔表11〕に併記する。
【0133】
[評価サンプルの作成方法及び評価方法]
感光性組成物No.12及びNo.13、並びに比較感光性組成物No.5(塗布量約4.0cc)をそれぞれ、ガラス基材にスピンコーター(500rpm×2秒→1800rpm×15秒→slope×5秒)で塗膜し、ホットプレート上でプリベイクをした(100℃×10分)。
その後、トプコン露光機を用いて紫外光を分割露光した(1000,3000mJ/cm2、gap:20μm、照度:20.0mW/cm2)。
露光後、ホットプレート上でポストベイクを行い(100℃30分)、IPAで現像(温度:23℃、200rpm×10秒→乾燥:500rpm×5秒)した後、更に300℃で1時間加熱した。
得られたサンプルについて、各露光量におけるマスク開口20μmのパターンの線幅・残膜率を測定した。
【0134】
【0135】
上記〔表12〕の結果より、本発明の化合物は、ポリアミック酸を用いた樹脂組成物において硬化性に優れる重合開始剤であることは明らかである。
【0136】
また、本発明の化合物は、熱塩基発生剤として用いることもできる。
〔参考例1〕
上記感光性組成物No.11を用いて上記と同様の方法で塗膜を作製した。その塗膜を、オーブンを用いて150℃で60分間加熱した。得られた膜をIPAで現像したところ、残膜率が40.5%であり、硬化したことが確認できた。
【0137】
〔参考例2〕
A-1(化合物No.1)を添加しない組成物を用いた以外は、参考例1と同様にして加熱及び現像を行ったところ、膜は残らなかった。
【0138】
これらの結果より、本発明の化合物は、熱塩基発生剤としても用いることができることは明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0139】
本発明の新規化合物は、重合開始剤として用いた場合、従来の光塩基発生剤よりも効率的に塩基を発生させることができるため、低露光量においても感光性樹脂を硬化させることができる。