(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-14
(45)【発行日】2023-07-25
(54)【発明の名称】検体搬送装置
(51)【国際特許分類】
G01N 35/04 20060101AFI20230718BHJP
G01N 35/02 20060101ALI20230718BHJP
B65G 54/02 20060101ALI20230718BHJP
【FI】
G01N35/04 G
G01N35/02 C
B65G54/02
(21)【出願番号】P 2021534536
(86)(22)【出願日】2020-03-24
(86)【国際出願番号】 JP2020012858
(87)【国際公開番号】W WO2021014688
(87)【国際公開日】2021-01-28
【審査請求日】2022-01-13
(31)【優先権主張番号】P 2019134328
(32)【優先日】2019-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】鬼澤 邦昭
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 洋
【審査官】永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-069604(JP,A)
【文献】特表2015-502525(JP,A)
【文献】特開2003-020110(JP,A)
【文献】特開2001-054459(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体の識別子が取付けられた検体容器を保持するとともに、搬送用磁性体が設けられた検体ホルダと、
搬送面の下に配置され、前記搬送用磁性体を吸引または反発することで前記検体ホルダを搬送する複数の電磁石と、
を備えた検体搬送装置において、
前記検体ホルダは、位置決め用磁性体をさらに有し、
前記搬送用磁性体の磁束中心が、前記検体容器の中心軸に対して偏心し
、
前記位置決め用磁性体の磁束中心が、前記検体容器の中心軸の位置にあることを特徴とする検体搬送装置。
【請求項2】
請求項1に記載の検体搬送装置において、
前記検体ホルダは、水平断面が円形状で
あることを特徴とする検体搬送装置。
【請求項3】
請求項2に記載の検体搬送装置において、
複数の前記電磁石のうち、前記位置決め用磁性体の直下にある第1電磁石により、前記位置決め用磁性体を吸引しながら、
前記第1電磁石の周囲にある第2電磁石により、前記搬送用磁性体を順次吸引または反発することで、
前記検体ホルダを回転させることを特徴とする検体搬送装置。
【請求項4】
請求項3に記載の検体搬送装置において、
前記搬送用磁性体は、前記位置決め用磁性体よりも磁束密度が高いことを特徴とする検体搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
血液、尿などの生体サンプルの分析を自動で行う検体処理システムは、一般に、検査のために採取した血液等の検体の投入,開栓,遠心分離,分注,ラベリングなどを行う検体前処理装置と、検体前処理装置で処理された検体を分析する自動分析装置と、を有する。これらの処理や分析は、多種のものがあるため、それぞれを複数のユニットで構成し、各ユニットを搬送ラインで接続することにより、ユニット間で検体の搬送が行われる。
【0003】
また、採血管などの検体容器には、個体を識別するためのバーコードラベルが貼付けられており、バーコードリーダによってバーコードラベルが読み取られるようになっている。ここで、検体容器を保持する検体ホルダは、搬送を円滑にすべく水平断面が円形状となっているため、バーコードラベルの周方向位置を特定するのが困難である。そのため、検体ホルダや検体容器を専用の回転装置により回転させることで、バーコードラベルの読み取りを行っている。
【0004】
例えば、特許文献1には、「バーコードスキャニングユニットは、回転装置の回転運動中に、バーコードラベルをスキャンする」(段落0049)ことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1のように、搬送ラインに回転装置を別途設け、スキャンの度に検体ホルダを回転させていると、装置が大型化したり、処理能力が低下したりする。
【0007】
本発明の目的は、装置の大型化や処理能力の低下を抑制しつつ、検体の識別子が読み取り可能な検体搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、検体容器を保持するとともに搬送用磁性体が設けられた検体ホルダと、前記搬送用磁性体を吸引または反発することで前記検体ホルダを搬送する複数の電磁石と、を備えた検体搬送装置において、前記検体ホルダは、位置決め用磁性体をさらに有し、前記搬送用磁性体の磁束中心を、前記検体容器の中心軸に対して偏心させ、前記位置決め用磁性体の磁束中心を、前記検体容器の中心軸に位置させた。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、装置の大型化や処理能力の低下を抑制しつつ、検体の識別子が読み取り可能な検体搬送装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施例1に係る検体搬送装置を示す模式図。
【
図2】本発明の実施例1に係る検体ホルダに設けられた磁性体の配置を示す模式図。
【
図3】本発明の実施例1に係る検体ホルダとその周辺の電磁石を示す水平断面の模式図。
【
図4】本発明の実施例2に係る検体搬送装置を示す模式図。
【
図5】本発明の実施例3に係る検体搬送装置を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施例に係る検体搬送装置について、
図1~
図5を用いて詳細に説明する。
【実施例1】
【0012】
図1は、本実施例の検体搬送装置を示す模式図である。本実施例の検体搬送装置は、前処理装置と分析装置との間を接続する搬送ラインや、前処理装置内の各ユニット間を接続する搬送ライン等に適用されるものである。ここで、前処理装置は、患者から採血管に採取した生体試料(検体)に対して、遠心,開栓,分注などの前処理をする装置であり、分析装置は、前処理の行われた検体の分析処理を行う装置である。
【0013】
図1に示す通り、本実施例の検体搬送装置は、検体容器101を保持するとともに、搬送用磁性体201が設けられた検体ホルダ103と、搬送面301の下に配置され、搬送用磁性体201を吸引または反発することで検体ホルダ103を搬送する複数の電磁石310,320,330と、を備えている。各電磁石310,320,330は、コアと、このコアの外周に巻かれた巻線と、により構成されており、巻線に電流が供給されると、搬送面301上に磁場を発生させるものである。
【0014】
ここで、検体容器101の側面には、検体識別情報をコード化した識別子としてバーコードが印字された、バーコードラベル102が貼付されている。なお、検体容器101に貼付されるものは、バーコードに限らず、二次元コードやRFIDなど他の識別子であっても良い。また、検体ホルダ103は、検体容器101を1本搭載できるものであり、複数の磁性体を有している。この磁性体としては、ネオジウムやフェライトなどの永久磁石が望ましいが、その他の磁石や軟磁性体でも良い。
【0015】
図2は、検体ホルダ103に設けられた磁性体の配置を示す模式図である。
図2に示すように、本実施例の検体ホルダ103は、水平断面が円形状であって、その底面には、搬送用磁性体(磁石)201と、位置決め用磁性体(磁石)202と、が設けられている。搬送用磁性体201の磁束中心は、検体ホルダ103の中心、すなわち、検体容器101の中心軸の位置、に対して偏心している。一方、位置決め用磁性体202の磁束中心は、検体容器101の中心軸の位置と、ほぼ一致している。なお、本実施例では、搬送用磁性体201の中心が、検体容器101の中心軸と空間的にずれているが、検体容器101の中心軸と空間的に一致していても、搬送用磁性体201の磁束中心の位置が、検体容器101の中心軸と磁気的にずれた位置にあれば良い。
【0016】
まず、検体ホルダ103を所定位置まで搬送するときの動作について、説明する。例えば、検体ホルダ103が電磁石320上にあった場合、検体搬送装置は、所定位置に向かって隣接する電磁石310の巻線に電流を供給し、搬送用磁性体201を吸引するような磁場を搬送面301上に発生させる。そして、検体ホルダ103が電磁石310上に到達したとき、検体搬送装置は、さらに隣接する電磁石330の巻線に電流を供給し、搬送用磁性体201を吸引するような磁場を発生させる。これを繰り返すことで、検体ホルダ103を所定位置まで搬送することができる。なお、搬送先にある電磁石の吸引力に加え、搬送元にある電磁石の反発力を用いて、検体ホルダ103の推力を得るようにしても良い。
【0017】
このように、検体ホルダ103を搬送する際、搬送用磁性体201は、搬送面301上の磁場に吸引または反発されて、検体ホルダ103の中心よりも常に搬送先に寄った位置となる。したがって、水平断面が円形状の検体ホルダ103であっても、搬送用磁性体201が位置する側面を、常に、搬送方向の先頭の向きに位置させることができる。つまり、搬送終了時の検体ホルダ103の向きを、一定の向きに定めることが可能となる。
【0018】
例えば、図示しないバーコードリーダ(識別子読取装置)が、搬送してくる向きの更に先の場所にある場合、バーコードラベル102が搬送用磁性体201のある側に位置するよう、検体容器101を検体ホルダ103に対して予め配置しておく。すると、所定位置まで搬送が完了したときには、検体容器101のうちバーコードラベル102のある面が、バーコードリーダを向く状態となっている。このため、回転装置を別途設けて検体ホルダ103等を回転させなくても、バーコードの読み取りが可能となり、装置の大型化や処理能力の低下を抑制できる。
【0019】
ここで、バーコードリーダは、検体容器101に付されたバーコードラベル102に対して光源から光を照射し、バーコードから得られる光の情報を検出することで、バーコードが有する検体情報を読み取るものである。しかし、読み取り方式は特に制限されるものではなく、例えば、CCD方式、レーザー方式のいずれも用いることができる。
【0020】
次に、
図3を用いて、検体ホルダ103を回転させるときの動作について、説明する。
図3は、検体ホルダ103とその周辺の電磁石を示す水平断面の模式図である。ここでは、検体ホルダ103が、電磁石310の上にある場合を想定している。
【0021】
まず、電磁石310の巻線に電流が供給され、発生する磁場によって位置決め用磁性体202が吸引されると、検体ホルダ103の中心が電磁石310の真上付近で固定される。この状態で、電磁石310に隣接する電磁石の1つである電磁石311の巻線にも電流が供給され、搬送用磁性体201に吸引力が付加されると、検体ホルダ103は、その中心位置を保ったまま、搬送用磁性体201の取付面が電磁石311のある側を向く。さらに、電磁石310による位置決め用磁性体202の吸引は保ったまま、電磁石310,311と隣接する電磁石の1つである電磁石312の巻線に電流が供給されると、同様に、搬送用磁性体201の取付面が電磁石312のある側を向く。その後も、電磁石313,314,315,316,317,318,311と同様の動作を順次繰り返すことにより、検体ホルダ103が電磁石310上で回転する。
【0022】
このように、本実施例では、複数の電磁石のうち、位置決め用磁性体202の真下にある第1電磁石により、位置決め用磁性体202を吸引しながら、第1電磁石の周囲にある第2電磁石により、搬送用磁性体201を順次吸引することで、検体ホルダ103を回転できる。つまり、回転装置を別途設けなくても、検体ホルダ103を回転できるので、装置の大型化を抑制することが可能となる。なお、第2電磁石としては、第1電磁石に隣接した位置にあるものに限られず、第1電磁石から離れた位置にある電磁石を利用しても良い。また、搬送用磁性体201を吸引する力の他に、搬送用磁性体201を反発する力を利用して検体ホルダ103を回転させても良いが、反発力は作用する向きが不確定であるため、主として吸引力を利用するのが望ましい。
【0023】
ここで、搬送用磁性体201と位置決め用磁性体202とは、互いに磁力の異なる磁性体や、互いに極性の異なる磁性体が用いられる。但し、搬送用磁性体201を主として使い、位置決め用磁性体202は補助的に使った方が、搬送効率が向上するため、搬送用磁性体201の磁力を位置決め用磁性体202よりも大きくしておくのが望ましい。搬送用磁性体201の磁力を大きくする方法としては、搬送用磁性体201の形状を大きくしたり、搬送用磁性体201として磁束密度の高い磁性体を用いたり、することが考えられる。
【実施例2】
【0024】
図4は、実施例2の検体搬送装置を示す模式図である。本実施例は、実施例1と異なり、搬送用磁性体201を複数設けたものである。具体的には、2つの搬送用磁性体201が、位置決め用磁性体202に対して対称の位置、すなわち、位置決め用磁性体202を挟んで互いに反対の位置に設けられている。
【0025】
本実施例では、検体ホルダ103を回転させる際、検体ホルダ103の位置決め用磁性体202の真下にある電磁石を挟んで、互いに反対の位置にある2つの電磁石の巻線に電流を供給する。つまり、検体ホルダ103を回転させる力として、2つの搬送用磁性体201による吸引力を利用しているので、検体ホルダ103の回転動作を安定させることが可能である。また、これら2つの吸引力が、検体ホルダ103の中心に対して互いに反対方向に加わるため、径方向の力が打ち消し合い、位置決め用磁性体202が検体ホルダ103の中心を維持しようとする力に打ち勝って搬送されてしまうのを抑制できる。
【実施例3】
【0026】
図5は、実施例3の検体搬送装置を示す模式図である。本実施例も、実施例2と同様に、搬送用磁性体201を複数設けたものであるが、搬送用磁性体201の個数を4つとしたものである。本実施例によれば、検体ホルダ103の回転動作を一層安定させることが可能である。
【その他】
【0027】
なお、本発明は、上述の実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。上述の実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることも可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることも可能である。
【0028】
例えば、上述の実施例では、搬送用磁性体201および位置決め用磁性体202として、水平断面が円形状のものを用いているが、これらは棒状であっても良いし、円形状と棒状の組み合わせであっても良い。また、円形状とは、厳密な円の形に限られず、楕円その他の形状であっても構わない。
【符号の説明】
【0029】
101・・・検体容器
102・・・バーコードラベル
103・・・検体ホルダ
201・・・搬送用磁性体
202・・・位置決め用磁性体
301・・・搬送面
310~318・・・電磁石