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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-18
(45)【発行日】2023-07-26
(54)【発明の名称】撮像装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 23/667 20230101AFI20230719BHJP
   G03B 9/36 20210101ALI20230719BHJP
   G03B 15/00 20210101ALI20230719BHJP
   G03B 7/091 20210101ALI20230719BHJP
   G03B 5/00 20210101ALI20230719BHJP
   H04N 23/55 20230101ALI20230719BHJP
   H04N 23/73 20230101ALI20230719BHJP
   H04N 23/60 20230101ALI20230719BHJP
【FI】
H04N23/667
G03B9/36 Z
G03B15/00 H
G03B7/091
G03B5/00 J
H04N23/55
H04N23/73
H04N23/60 500
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019079397
(22)【出願日】2019-04-18
(65)【公開番号】P2020178241
(43)【公開日】2020-10-29
【審査請求日】2022-03-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】水井 研吾
【審査官】▲徳▼田 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-251382(JP,A)
【文献】特開2007-193155(JP,A)
【文献】特開2002-176588(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 23/667
G03B 9/36
G03B 15/00
G03B 7/091
G03B 5/00
H04N 23/55
H04N 23/73
H04N 23/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体から入射した光を光電変換した電荷を蓄積する複数の画素を有し、前記被写体の像を撮像する撮像部と、
連続した複数回の前記撮像を、操作することにより指示する操作部と、
前記撮像部へ入射する光を遮る幕を有し、前記幕を移動させて前記撮像部への光の入射を制御するシャッタと、
前記画素の電荷の蓄積を制御する制御部と、
前記連続した複数回の撮像において、前記シャッタにより前記撮像部への前記光の入射を開始させることで前記撮像を開始する第1制御と、前記制御部により電荷の蓄積を開始することにより前記撮像を開始する第2制御とのいずれかを設定する設定部と、
前記被写体の明るさに基づいて前記撮像の時間を演算する演算部と、
を備え、
前記設定部は、演算された前記撮像の時間が所定の時間より短いと前記第1制御を設定し、前記撮像の時間が前記所定の時間よりも長いと前記第2制御を設定し、前記複数回の撮像のうち、最初の撮像と2回目以降の撮像とで前記所定の時間を変更する撮像装置。
【請求項2】
請求項1に記載の撮像装置において、
前記設定部は、前記第1制御による撮像の次の撮像における前記所定の時間である第1時間を、前記第2制御による撮像の次の撮像における前記所定の時間である第2時間よりも長くする撮像装置。
【請求項3】
請求項2に記載の撮像装置において、
前記設定部は、前記複数回の撮像のうち最初の撮像における前記所定の時間を、前記第2時間以上かつ前記第1時間以下とする撮像装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の撮像装置において、
前記撮像部は、光学系を通過した前記被写体からの光を撮像し、
前記設定部は、前記光学系の特性により前記第1時間および前記第2時間の少なくとも一つを変更する撮像装置。
【請求項5】
請求項2から4のいずれか一項に記載の撮像装置において、
前記設定部は、前記演算部が前記演算に用いる演算方式により前記第1時間および前記第2時間の少なくとも一つを変更する撮像装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の撮像装置において、
前記複数回の撮像による画像を合成することで1つの画像を生成し、
前記設定部は、前記合成することで1つの画像を生成するための撮像において、前記第1制御と前記第2制御とを設定する撮像装置。
【請求項7】
請求項6に記載の撮像装置において、
前記設定部は、画像を合成する前記複数回の撮像に対してそれぞれに設定された撮像の時間の中央値および前記所定の時間に基づいて、前記第1制御と前記第2制御とを設定する撮像装置。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか一項に記載の撮像装置において、
前記シャッタは、移動することにより前記撮像部を遮光するシャッタ先幕とシャッタ後幕とを有し、
前記制御部は、前記第1制御において前記シャッタ先幕により前記光電変換を開始させ、前記シャッタ後幕で前記撮像部を遮光する撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
メカニカルシャッタと、撮像素子の電子シャッタ制御とを用いて露光制御を行う第1のシャッタ制御方式と、メカニカルシャッタを用いずに電子シャッタ制御を用いて露光制御を行う第2のシャッタ制御方式とを、シャッタスピードにより切替える技術が知られている(特許文献1参照)。このような切替え方式の改善が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-213520号公報
【発明の概要】
【0004】
本発明の第1の態様による撮像装置は、被写体から入射した光を光電変換した電荷を蓄積する複数の画素を有し、前記被写体の像を撮像する撮像部と、連続した複数回の前記撮像を、操作することにより指示する操作部と、前記撮像部へ入射する光を遮る幕を有し、前記幕を移動させて前記撮像部への光の入射を制御するシャッタと、前記画素の電荷の蓄積を制御する制御部と、前記連続した複数回の撮像において、前記シャッタにより前記撮像部への前記光の入射を開始させることで前記撮像を開始する第1制御と、前記制御部により電荷の蓄積を開始することにより前記撮像を開始する第2制御とのいずれかを設定する設定部と、前記被写体の明るさに基づいて前記撮像の時間を演算する演算部と、を備え、前記設定部は、演算された前記撮像の時間が所定の時間より短いと前記第1制御を設定し、前記撮像の時間が前記所定の時間よりも長いと前記第2制御を設定し、前記複数回の撮像のうち、最初の撮像と2回目以降の撮像とで前記所定の時間を変更する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】カメラシステムの要部構成を説明する模式図である。
図2】撮像素子の撮像面とシャッタ装置の先幕および後幕を示す模式図である。
図3】ハイブリッド露光制御における電子先幕の走行タイミングと、後幕の走行タイミングを説明する模式図である。
図4】シャッタスピードと露光制御の関係を例示する図である。
図5】シャッタスピードと露光制御の関係を例示する図である。
図6図6(a)および図6(b)は、電子先幕と後幕とがY軸方向に一定の間隔で走行したときの撮像素子に入射する光束を示した図である。
図7】ボケ欠けについて説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。
図1は、発明の一実施の形態によるカメラシステム1の要部構成を説明する模式図である。カメラシステム1は、カメラボディ2に着脱可能な撮影レンズ(交換レンズ3と称する)を装着した例を説明するが、カメラボディ2と交換レンズ3を一体に構成したカメラとしても構わない。
なお、図1において交換レンズ3の光軸Oと交差する面内の水平方向をX軸とし、鉛直方向をY軸とする。また、Y軸の+方向を上方向、Y軸の‐方向を下方向とする。
【0007】
<カメラボディ>
カメラボディ2は、ボディ側制御部230、ボディ側通信部240、シャッタ装置250、撮像素子260、信号処理部270、操作部材280、および表示部290を有する。ボディ側制御部230は、ボディ側通信部240、シャッタ装置250、撮像素子260、信号処理部270、操作部材280および表示部290と接続される。
【0008】
ボディ側制御部230は、マイクロコンピュータおよびその周辺回路等から構成される。ボディ側制御部230は、ボディ側制御部230が実行する制御プログラム等を記憶する記憶部235と、露光制御方式を設定する設定部230aと、撮像素子260を蓄積制御する蓄積制御部230bと、被写体の明るさに基づいて露出演算を行う露出演算部230cと、撮像素子260に撮像を指示する指示部230dとを含む。
ボディ側制御部230は、記憶部235に記憶されている制御プログラムを実行してカメラボディ2内の各部を制御する。記憶部235は、ボディ側制御部230によってデータの記録と読み出しが制御される。
【0009】
ボディ側通信部240は、交換レンズ3のレンズ側通信部340との間で所定の通信を行う。ボディ側通信部240は、ボディ側制御部230と接続される。
【0010】
撮像素子260は、例えばCMOSイメージセンサやCCDイメージセンサ等の固体撮像素子である。撮像素子260は、ボディ側制御部230の蓄積制御部230bからの制御信号および指示部230dからの撮像の指示信号に基づき、後述する撮影光学系360により、撮像面260Sに形成される被写体の像を撮像して信号を出力する。具体的には、撮像素子260には光電変換部を有する複数の画素が2次元に配置されている。撮像素子260は、画素内の光電変換部で光を受光し、電荷に変換して蓄積する。蓄積された電荷は、電圧に変換されて信号として読みだされる。撮像素子260は、動画撮影と静止画撮影とが可能である。動画撮影には、動画を記録する他、表示部290で連続的にモニタ用の画像を表示させるための、いわゆるスルー画(ライブビュー画像とも称される)の撮影も含む。
撮像素子260から出力される信号は、信号処理部270によってライブビュー画像の画像データ、動画像の画像データ、および静止画の画像データの生成に用いられる。撮像素子260は、ボディ側制御部230と接続される。
【0011】
信号処理部270は、撮像素子260から出力された信号に対して所定の画像処理を行って画像データを生成する。生成された画像データは、不図示の記憶媒体(メモリーカード等)に所定のファイル形式で記録されたり、撮影前のライブビュー画像の表示や撮影後の確認画像の表示に用いられたりする。信号処理部270は、ボディ側制御部230と接続される。
【0012】
露出演算部230cは、撮像素子260から出力される信号を基に算出した被写体の明るさに関する情報(測光の情報)から、ユーザが設定した露出または適正な露出を得るためのシャッタスピード、絞り値、撮像素子260の感度を算出する露出演算を行う。シャッタスピードとは、露出演算により設定される撮像素子260による被写体の像の撮像の時間、または、ユーザにより設定される撮像素子260による被写体の像の撮像の時間である。「シャッタスピードが速い、高速である」とは撮像の時間が短いことを表し、「シャッタスピードが遅い、低速である」とは、撮像の時間が長いことを表す。また、被写体の明るさに関する情報は、撮像素子260とは異なる素子で取得されてもよい。
【0013】
シャッタ装置250は、撮像素子260の撮像面260Sへの光の入射側(後述する撮影光学系360側)に配置されるフォーカルプレーンシャッタであり、シャッタ装置250に設けられた開口部200と、開口部200を開閉するための先幕250aおよび後幕250bと、これらを駆動する不図示のアクチュエータ機構とを有する。シャッタ装置250は、先幕250a及び後幕250bを上下方向に移動させて、シャッタ装置250の開口部200を開閉させる。シャッタ装置250は、ボディ側制御部230によって開閉制御される。先幕250aおよび後幕250bはそれぞれ複数のシャッタ羽根からなる。
【0014】
先幕250aはシャッタ装置250の開口部200の下方に備えられ、後幕250bは開口部200の上方に備えられる。図1は、撮像素子260の撮像によるスルー画表示を行う場合のシャッタ装置250の状態を示している。先幕250aの全てのシャッタ羽根が下方で待機し、後幕250bの全てのシャッタ羽根が上方で待機している状態(全開状態)を例示している。
【0015】
後述するレリーズボタンにより撮影が指示されると、先幕250aは、シャッタ羽根を図1の上方向に移動し開口部200を閉じて撮像素子260を遮光し、遮光した状態からシャッタ羽根を下方向に移動させ開口部200を開くことで撮像素子260の露光を開始する。後幕250bは、開口部200が開かれた状態からシャッタ羽根を下方向に移動させ開口部200を閉じることで撮像素子260の遮光を開始する。
光学ファインダーを備える一眼レフカメラにて、撮像素子260が遮光されている方が好ましい時は、レリーズボタンによる撮影の指示が行われる前のシャッタ装置250は、先幕250aで開口部200を閉じている状態とするとよい。
【0016】
このように、開口部200を閉じていた先幕250aが下方へ移動すると、交換レンズ3を透過した被写体からの光が撮像面260Sに導かれる。また、シャッタ装置250の後幕250bが下方へ移動し開口部200を閉じると、被写体からの光が遮光される。シャッタ装置250は、ボディ側制御部230と接続される。
【0017】
レリーズボタンや操作スイッチ等を含む操作部材280は、カメラボディ2の外装面に設けられる。操作部材280は、ユーザの操作に応じた操作信号をボディ側制御部230へ送出する。ユーザは、操作部材280を操作することにより、撮影開始の指示や撮影条件の設定指示等を行う。また、ユーザは、操作部材280によって、後述する露光制御方式をカメラが自動で選択する指示を行うことができる。
【0018】
表示部290は、有機EL表示パネルや液晶表示パネルによって構成される。表示部290は、ボディ側制御部230からの制御信号により、信号処理部270によって処理された画像データに基づく画像や、操作メニュー画面等を表示する。また、表示部290にタッチパネルを備え、操作部材280の一部としてのタッチ操作部材290Aを構成しても良い。表示部290は、ボディ側制御部230と接続される。
【0019】
<交換レンズ>
交換レンズ3は、レンズ側制御部330、レンズ側通信部340、撮影光学系360、レンズ駆動部370、および絞り駆動部380を有する。レンズ側制御部330は、レンズ側通信部340、レンズ駆動部370、絞り駆動部380と接続される。
【0020】
レンズ側制御部330は、マイクロコンピュータおよびその周辺回路等から構成される。レンズ側制御部330は、内部に記憶されている制御プログラムを実行し、自動焦点調節制御など、交換レンズ3の各部を制御する。
【0021】
レンズ側通信部340は、ボディ側通信部240との間で所定の通信を行う。レンズ側通信部340とボディ側通信部240との間で行われる通信により、後述する撮影光学系360などを移動させる指示等が、カメラボディ2から交換レンズ3へ送信される。また、レンズ側通信部340とボディ側通信部240との間で行われる通信により、撮影光学系360の駆動状態などの情報が交換レンズ3からカメラボディ2へ送信される。
【0022】
撮影光学系360は、複数のレンズと絞り部材362とを含み、カメラボディ2の撮像素子260の撮像面260Sに被写体からの光を導く。上記複数のレンズには、フォーカスレンズ361が含まれる。
フォーカスレンズ361は、レンズ駆動部370により、光軸O方向に移動が可能に構成されている。フォーカスレンズ361が移動することにより、撮影光学系360により形成される被写体の像の光軸O方向の位置が変更される。これにより被写体の像を撮像素子260の撮像面260Sに移動させる合焦動作が行われる。
【0023】
絞り362は、撮像素子260に入射する光量を調節する。絞り362は、絞り駆動部380や手動操作により、絞り羽根が駆動され開口径(絞り値)を変化させることが可能に構成されている。
【0024】
フォーカスレンズ361の移動方向や移動量、移動速度などの駆動指示は、ボディ側制御部230から指示する。または、ボディ側制御部230からの情報に基づいてレンズ側制御部330から指示することとしてもよい。
【0025】
カメラボディ2は、交換レンズ3との通信により、フォーカスレンズ361の駆動指示であるフォーカスレンズ駆動信号、絞り駆動信号、カメラボディ2の情報(撮像モード情報、ISO感度情報等)などを、交換レンズ3へ送る。交換レンズ3は、カメラボディ2からの駆動信号に基づいて、レンズ駆動部370によりフォーカスレンズ361を駆動する。
【0026】
一方、交換レンズ3は、カメラボディ2との通信により、撮影光学系360の光学特性の情報、フォーカスレンズ361の位置情報、絞り362の開口径の情報などを、カメラボディ2へ送信する。
【0027】
<露光制御方式>
上述したように、カメラシステム1は、操作部材280によって露光制御方式を選択する指示を行うことが可能である。本実施の形態では、(A)シャッタ装置250(メカニカルシャッタとも称される)を用いる露光制御と、(B)ハイブリッド露光制御とのうち一方の露光制御方式に設定される。はじめに、各露光制御方式について説明する。
【0028】
(A)シャッタ装置を用いる露光制御
シャッタ装置を用いる露光制御は、シャッタ装置の先幕250aおよび後幕250bにより撮像素子260を露光および遮光することで露光制御を行う。
図2は、撮像素子260の撮像面260Sと、シャッタ装置250の先幕250aおよび後幕250bとを示す模式図である。図2において、撮像素子260の短辺方向をY軸とし、Y軸の+方向を上方向、Y軸の-方向を下方向とする。撮像面260Sの光軸Oに対応する位置を像高Y=0とする。また、撮像面260Sの短辺方向(画像の縦方向)はY=-aから+aまでとする。
【0029】
シャッタ装置250の先幕250aおよび後幕250bはそれぞれ、図2のY軸に沿って走行する。図2は、先幕250aの全てのシャッタ羽根が開口部200の下側にあり、かつ、後幕250bの全てのシャッタ羽根が開口部200の上側にあり、開口部200を開いている状態である。すなわち、図2は、撮像面260Sが露出している様子を示している。
【0030】
ボディ側制御部230は、レリーズボタンが全押し操作されると、シャッタ装置250の先幕250aを上方向に移動し開口部200を閉じ撮像素子260を遮光する。撮像素子260が遮光された状態で、光電変換により蓄えられていた電荷を排出し、新たに電荷の蓄積を開始する。それから先幕250aを下方向へ移動し、開口部200を開かせる(シャッタリリース)。
先幕250aは、シャッタリリース前に撮像面260Sの全面を覆って遮光しており、先幕250aの上端はY=+aよりも高い(上方向)位置にある。ボディ側制御部230からシャッタ装置250に先幕250aをリリースする信号が入力されると、先幕250aが下方へ移動し始める。そして、先幕250aの上端が撮像面260Sの上端(像高Y=+a)の位置を通過し、その後、撮像面260Sの中央(像高Y=0)の位置を通過し、さらに、撮像面260Sの下端(像高Y=-a)を通過して(Y=-aよりも低い(下方向)位置まで移動)停止する(図2の状態)。
【0031】
撮像面260Sを覆っていた先幕250aが下へ移動することで開口部200が上から開き、撮像面260の上部から撮影光学系360による光束の入射(露光)が開始される。撮像面260Sの露光開始は、顔出しとも称される。顔出し後は、先幕250aの上端が下向きに移動するに伴って、撮像面260のY=+aからY=-aに向かって順に露光が始まる。つまり、露光が開始されると、撮影光学系360を透過した光束の電荷蓄積が開始する。換言すると、撮影光学系360による像の撮像が開始する。
【0032】
電荷蓄積動作は、以下の通りである。図示を省略するが、撮像面260Sには複数の光電変換部(画素とも称される)が二次元状に配置されている。各光電変換部では、蓄積制御部230bからの制御信号に基づいて光電変換部が入射光を光電変換して電荷を生成する。生成される電荷量は、入射光が強いほど大きく、露光時間が長いほど大きくなる。
【0033】
続いてボディ側制御部230は、露出演算部230cで設定されたシャッタスピードに基づくタイミングで、シャッタ装置250の後幕250bで開口部200を閉じ、撮像面260を遮光させる。後幕250bの下端が下へ移動するに伴って、撮像面260SはY=+aからY=-aに向かって順に遮光される。つまり、露光が終了され、撮影光学系360による光束の電荷蓄積が終了する。換言すると、撮影光学系360による像の撮像が終了する。
【0034】
撮像面260SのY軸方向の同じ位置にあるX軸方向に並んだ複数の画素は、同じタイミングで露光が開始され終了される。撮像面260SのX方向に配置された画素が、シャッタ装置250の先幕250aにより露光が開始されてから後幕250bで遮光されるまで時間が、シャッタ装置250を用いる露光制御における露光時間、言い換えると、撮像の時間である。撮像面260Sに配置された各光電変換部で生成された電荷は、それぞれ対応するFD(フローティング拡散)領域へ転送される。各FD領域は、受け取った電荷を蓄積して電圧に変換する。各FD領域の電位に応じた信号はそれぞれ増幅され、出力信号線を介して信号処理部270へ送出される。
【0035】
なお、上記シャッタスピードが速く撮像の時間が短い場合は、シャッタ装置250の先幕250aが開口部200を全て開き終わるのを待たずに後幕250bが閉じ始めるように、ボディ側制御部230がシャッタ装置250を制御する。
【0036】
(B)ハイブリッド制御を用いる露光制御
ハイブリッド露光制御は、後述する電子先幕走行により撮像を開始し、シャッタ装置250の後幕250bの走行による撮像素子260の遮光により撮像を終了させる制御である。
ハイブリッド露光制御では、シャッタ装置250の先幕250aおよび後幕250bが図2に示す状態、すなわち開口部200が開いた状態に制御される。
【0037】
以下は電子先幕走行について説明する。
撮像素子260において、複数の画素の各FD領域と光電変換部に蓄積されている電荷を排出するリセット動作をすることが可能に構成されている。蓄積制御部230bは、撮像素子260に対し、所定のタイミングで上記FD領域と光電変換部とをリセットさせる。リセット後の光電変換部は、再び電荷の蓄積を始める。
【0038】
ハイブリッド露光制御における上記リセットのタイミングは、上記(A)シャッタ装置250を用いる露光制御時において先幕250aを移動し撮像素子260を露光させる場合と同様に、撮像面260Sの上端(像高Y=+a)から下端(像高Y=-a)へ向かって行ごとに順に行う。そのため、撮像面260Sの上端(像高Y=+a)から下端(像高Y=-a)へ向かうリセット動作を、電子先幕走行という。ハイブリッド露光制御では、電子先幕走行によって撮像素子260が撮像を開始する。
【0039】
ハイブリッド露光制御では、シャッタ装置250の後幕250bの走行による撮像素子260の遮光により撮像を終了させる。つまりハイブリッド制御を用いる露光制御は、(A)シャッタ装置を用いる露光制御における先幕250aの走行に代えて、電子先幕走行を行う露光制御方式である。
【0040】
図3は、ハイブリッド制御による露光制御における電子先幕の走行タイミングと、シャッタ装置250の後幕250bの走行タイミングを説明する模式図である。図3において横軸は時間を示す。また、縦軸は撮像素子260の縦(短辺)方向の位置を示し、Y軸とする。Y軸の+方向を上方向、Y軸のマイナス方向を下方向とする。曲線31は、電子先幕の走行曲線を示す。曲線42は、後幕250bの走行曲線を示す。曲線41は、先幕250aの走行曲線を示す。
【0041】
(電子先幕走行)
蓄積制御部230bは、レリーズボタンが全押し操作されると、電子先幕走行を開始させる。これにより、時刻t1において電子先幕が撮像面260Sの上端(像高Y=+a)の位置を通過する。その後、時刻t2において電子先幕は撮像面260Sの中央(像高Y=0)の位置を通過し、時刻t3において電子先幕は撮像面260Sの下端(像高Y=-a)の位置へ到達する。時刻t1から時刻t3までの時間は、電子先幕が撮像面260Sの全面を通過する時間である。
【0042】
(シャッタ後幕走行)
後幕250bの下端は、シャッタリリース前は、Y=+aよりも上にある。ボディ側制御部230からシャッタ装置250に後幕250bをリリースする信号が入力されると、時刻t11において後幕250bが下方に移動を始める。そして、時刻t12において後幕250bの下端が撮像面260Sの上端(像高Y=+a)の位置を通過する。その後、時刻t13において後幕250bの下端は撮像面260Sの中央(像高Y=0)の位置を通過し、時刻t14において後幕250bの下端は撮像面260Sの下端(像高Y=-a)の位置へ到達する。後幕250bの最先端はさらに、Y=-aよりも下まで移動して時刻t15において停止する。時刻t12から時刻t14までの時間は、後幕250bが撮像面260Sの全面を通過する時間である。
【0043】
電子先幕走行から後幕250bが閉じるまでの時間Tが撮像の時間に相当し、ハイブリッド露光制御における露光時間である。
撮像素子260は、露光が終了すると次の撮像までに撮像素子260で蓄積された電荷に応じた電圧の信号が読み出される。なお、電子先幕走行は、予め実験などにより得られた後幕250bの走行に合わせて制御されると良い。
【0044】
続いて、上述した(A)シャッタ装置を用いる露光制御と(B)ハイブリッド露光制御との特徴について説明する。
上述した(A)シャッタ装置を用いる露光制御では、以下の問題が発生する。先幕250aの走行に伴う振動及び先幕250aの停止時に発生する振動により撮像中の被写体の像が振れ、画像の像ブレの要因になることがある。とくに、撮像の時間が上記振動の周期に比べて長い場合には、上記振動に起因する像ブレの影響を受けやすくなり問題となる。一方、(B)ハイブリッド露光制御では、先幕250aが動かない為この問題は起こらない。
【0045】
上述した(B)ハイブリッド露光制御では、撮像の時間が短い場合には、以下で説明する「露光むら」と「ボケ欠け」の問題が発生する。光軸O方向における後幕250bの位置と撮像面260Sとの位置が異なる事に起因する問題である。
図6(a)および図6(b)は、電子先幕と後幕250bとがY軸方向に一定の間隔Sで走行したときの撮像素子260に入射する光束を示した図で、露光むらについて説明する図である。Y軸は撮像素子260の短辺方向を示し、電子先幕と後幕250bとは、+から‐方向に走行する。図の符号360’は撮影光学系360の射出瞳を示す。図6(a)は電子先幕がY=h1にあるときの図である。後幕250bは、Y=h1からY軸方向に間隔S離れた位置にある。この時、撮像面260SのY=h1の位置には、射出瞳360’を通過した全ての光束が入射する。図6(b)は電子先幕がY=‐h1にあるときの図である。後幕250bは、Y=‐h1よりもY軸方向に間隔S離れた位置にあるとする。この時、撮像面260SのY=‐h1には、射出瞳360’を通過した光束の一部が後幕250bにより遮られ、一部の光束が入射する。つまり、Y=‐h1では、暗い像となる。このように、撮像面260SのY軸方向の位置により像の明るさが異なる露光むらが生じる。
電子先幕走行は、後幕250bの走行に合わせた上で、撮影光学系360の射出瞳に関する情報を得られる場合には、露光むらを軽減するように適切に補正して制御することが可能であるが、撮影光学系360の射出瞳に関する情報を得られない場合には、上述の露光むらが生じてしまう。
【0046】
図7は、電子先幕と後幕250bとがY軸方向に一定の間隔S2で走行したときに、撮像素子260の撮像面260Sと異なる位置で結像した光束が撮像面260Sに入射するのを示した図で、ボケ欠けについて説明する図である。Y軸は撮像素子260の短辺方向を示し、電子先幕と後幕250bとは、+から‐方向に走行し、電子先幕と後幕250bの間隔はS2である。図の符号360’は撮影光学系360の射出瞳を示す。図7は電子先幕がY=h2にあるときの図である。Y=h2は、後幕250bがボケ像の遮光を開始するときに対応した電子先幕の位置である。つまり、図7は、光線R1が後幕250bによりケラれる瞬間の電子先幕及び後幕250bの位置である。光線R1が撮像素子260の撮像面260Sに入射する位置は、Y=h2よりも-側である。つまり、電子先幕による撮像の開始が行われるより前に、後幕250bにより光線R1が遮光されてしまう。そのため、Y=h2の位置より-側のボケ像は、間隔S2が短い場合には、電子先幕による撮像の開始よりも先に後幕250bにより遮光され撮像されない。その結果、ボケ像が欠けたような形に撮影されるボケ欠けが生じる。上述のような「露光むら」と「ボケ欠け」は撮像の時間が短い時に起こりやすい。一方(A)シャッタ装置を用いる露光制御では、先幕250aと後幕250bの光軸O方向の位置は同一ではないが、電子先幕と後幕250bの位置差に比べて十分に小さく、「露光むら」と「ボケ欠け」の問題は起こりにくい。
【0047】
(露光制御の設定)
本実施形態では、上記(A)シャッタ装置を用いる露光制御と上記(B)ハイブリッド露光制御とのいずれかを、撮像の時間(シャッタスピード)に応じて設定する制御を行う。つまり、撮像の開始を先幕250aの走行により制御するか、電子先幕走行により制御するかのいずれかの設定を行う。前述したように、シャッタスピードとはユーザまたは露出演算部230cにより設定された被写体の像の撮像の時間である。
【0048】
設定部230aは、シャッタスピードが所定の時間よりも遅い場合には、(B)ハイブリッド露光制御を設定し、シャッタスピードが所定の時間よりも速い場合には、上記(A)シャッタ装置を用いる露光制御を設定する。このように制御することで、それぞれの露光制御で起こりうる問題を回避することができる。
【0049】
設定部230aは、撮像ごとに露光制御を設定する。図4は、シャッタスピードと露光制御の関係を例示する図である。設定部230aは、シャッタスピードが、1/500秒よりも速い(高速側にある)と(A)シャッタ装置を用いる露光制御を設定し、シャッタスピードが1/500秒か1/500よりも遅い(低速側にある)と(B)ハイブリッド露光制御を設定する。以降、露出制御を異なる制御に切り替える閾値となるシャッタスピードを、切替時間と呼ぶ。図4では、切替時間は1/500秒である。
【0050】
上記のシャッタスピードによる露出制御の設定は、シャッタスピードがユーザの操作によって決定される場合(例えばシャッタ速度優先自動露出モード、マニュアル設定モードなど)と、シャッタスピードが露出演算部230cによる露出演算の結果に基づいて決定される場合(例えば絞り優先自動露出モード、プログラム自動露出モードなど)とにおいて同様に行う。
ただし、切替時間(例えば、1/500秒)は、露出演算部230cが演算を行う露出演算方式(シャッタ速度優先自動露出モード、マニュアル設定モード、絞り優先自動露出モード、プログラム自動露出モードなど)により異なる値に変更してもよい。このように構成することにより、それぞれの露出演算方式におけるシャッタスピードに適した露光制御に設定することができる。例えば、特に「ボケ欠け」が目立つ撮影である場合は、切替時間を1/125秒とし、シャッタスピードが1/125秒より速い場合に(A)シャッタ装置を用いる露光制御を行うようにしてもよい。また、特にブレが目立つ撮影である場合は、切替時間を1/2000秒としてもよい。
【0051】
設定部230aは、上記露光制御の設定は、1回のレリーズ操作により1コマの撮影を行う単写の場合だけでなく、1回のレリーズ操作により複数コマの撮影を続けて行う連写の場合でも同様に設定を行う。但し、連写の1コマ目の撮影時と2コマ目以降の撮影時とで、切替時間を変更してもよい。詳しくは、次に述べる。ここで、コマとは撮像の回数を表す。連写において2コマ目とは、連写を開始して2回目の撮影のことである。
【0052】
(連写おいて撮影ごとに露光制御を設定する)
シャッタスピードが露出演算部230cによる露出演算の結果に基づいて決定され、被写体の明るさに応じてシャッタスピードが変化する場合の制御について説明する。
設定部230aは、複数コマの撮影を続けて行う場合には、1コマ目だけでなく2コマ目以降も各コマの撮影ごとに、(A)シャッタ装置を用いる露光制御と(B)ハイブリッド露光制御とのいずれかを、設定されたシャッタスピードに応じて設定する。
【0053】
(連写の撮影における1回目と2回目以降の撮影とで切替時間を変える)
設定部230aは、露光制御の設定の他に、露光制御を設定するための切替時間の設定も行う。連写における1コマ目の切替時間は、単写における切替時間と同じに値に設定する。2コマ目以降の切替時間は、1コマ目の切替時間と異なる値に設定する。設定部230aは、2コマ目以降の切替時間を前のコマで設定されている露光制御に応じて設定する。具体的には、前コマの撮影が(A)シャッタ装置を用いる露光制御が設定されている場合と、(B)ハイブリッド露光制御が設定されている場合とで、切替時間を異なる値にする。
【0054】
図5は、シャッタスピードと露光制御の関係を例示する図である。1コマ目の切替時間が1/500秒である場合について説明する。2コマ目以降において設定部230aは、前コマの撮影が(A)シャッタ装置を用いる露光制御が設定されている場合に切替時間を1/400秒とし、前コマの撮影が(B)ハイブリッド露光制御が設定されている場合に切替時間を1/640秒とする。本実施の形態では、2コマ目以降において、(A)シャッタ装置を用いる露光制御から(B)ハイブリッド露光制御への切替時間である第1時間を、1コマ目の切替時間(1/500秒)より低速に(長く)し、(B)ハイブリッド露光制御から(A)シャッタ装置を用いる露光制御への切替時間である第2時間を、1コマ目の切替時間(1/500秒)より高速に(短く)する。
【0055】
仮に、2コマ目以降のコマにおいて第1時間と第2時間とを区別せずに、1コマ目と同様に1/500秒を境に露光制御を設定しようとすると、各コマのシャッタスピードが1/500秒付近でばらつく場合には露光制御が頻繁に切替わることになる。露光制御が頻繁に切替わると、複数コマの撮影中に先幕250aの走行音が聞こえない状態((B)ハイブリッド露光制御に設定されて電子先幕走行が行われる場合)と、先幕250aの走行音が聞こえる状態((A)シャッタ装置を用いる露光制御に設定されて先幕250aの走行が行われる場合)とが頻繁に入れ替わり、ユーザの使用感が低下する。
しかしながら、第1時間と第2時間とを異ならせることにより、2コマ目以降にコマごとのシャッタスピードが1/500秒付近でばらついたとしても、露光制御の設定が頻繁に行われなくなるために、先幕250aの走行音が聞こえる状態と聞こえない状態とが頻繁に入れ替わることを防止できる。
【0056】
2コマ目以降において第1時間および第2時間のうち少なくとも一方の値は、露出演算部230cが演算を行う露出演算方式(絞り優先自動露出モード、プログラム自動露出モードなど)により異なる値に変更してもよい。このように構成することにより、それぞれの露出演算方式におけるシャッタスピードに適した露光制御に設定することができる。
【0057】
(連写撮影とブラケット撮影)
上述したように複数コマを続けて撮影することには、連写撮影する場合とブラケット撮影する場合とを含む。連写撮影は、レリーズボタンの全押し操作が継続されている間に複数コマの撮影を続けて行うことをいう。ブラケット撮影は、あらかじめ決められた条件で設定を変えながら複数コマの撮影を続けて行うことをいう。ブラケット撮影には、コマごとに露出値をずらす露出ブラケット撮影、コマごとにピント位置をずらすフォーカスブラケット撮影、コマごとにホワイトバランス調整値をずらす色温度ブラケット撮影などがある。連写撮影するモードおよび各種ブラケット撮影するモードを選択する指示は、例えば、ユーザが操作部材280を操作することによって行うことができる。
【0058】
以上説明した実施の形態によれば、以下の作用効果が得られる。
(1)撮像装置としてのカメラシステム1は、被写体からの光を光電変換した電荷を蓄積する複数の画素を有し、被写体の像を撮像する撮像素子260と、連続した複数回の撮像を、操作することにより指示する操作部材280と、撮像素子260へ入射する光を遮る先幕250a、後幕250bを有し、先幕250a、後幕250bを移動させて撮像素子260への光の入射を制御するシャッタ装置250と、画素の電荷の蓄積を制御する蓄積制御部230bと、連続した複数回の撮像において、シャッタ装置250により撮像素子260への光の入射を開始させることで撮像を開始する、(A)シャッタ装置250を用いる露光制御(第1制御と称する)と、蓄積制御部230bにより電荷の蓄積を開始することにより撮像を開始する、(B)ハイブリッド露光制御(第2制御と称する)とのいずれかを設定する設定部230aとを備える。
このように構成したので、例えば、連写中における各コマで露光制御方式としての上記第1制御と上記第2制御との設定を適切に行うことができる。
【0059】
(2)被写体の明るさに基づいて撮像の時間を演算する露出演算部230cを備え、設定部230aは、露出演算部230cで演算された撮像の時間が所定の時間(例えば、1/500秒)より短いと上記第1制御を設定し、撮像の時間が上記所定の時間よりも長いと上記第2制御を設定する。このように構成したので、撮像の時間に適した露光制御方式に設定することができる。
【0060】
(3)設定部230aは、複数回の撮像のうち、1コマ目の撮像と2コマ目以降の撮像とで上記所定の時間を変更する。このように構成したので、連写の2コマ目以降の場合と単写を繰り返す場合との双方において、それぞれの撮像の時間に適した露光制御方式に設定することができる。
【0061】
(4)設定部230aは、上記第1制御による撮像の次の撮像における上記所定の時間である第1時間(例えば、1/400秒)を、上記第2制御による撮像の次の撮像における上記所定の時間である第2時間(例えば、1/640秒)よりも長くする。このように構成したので、例えば連写の2コマ目以降の撮像の時間が1/500秒付近でばらついても、露光制御方式が頻繁に切替わることがなくなるので、ユーザの使用感の低下を防ぐことができる。
【0062】
(5)設定部230aは、複数回の撮像のうち1コマ目の撮像における上記所定の時間を、第2時間以上かつ第1時間以下とする。このように構成したので、上述したように露光制御方式が頻繁に切替わることがなくなるので、ユーザの使用感の低下を防ぐことができる。
【0063】
(6)設定部230aは、露出演算部230cが演算に用いる露出演算方式により第1時間および第2時間の少なくとも一つを変更する。このように構成したので、それぞれの露出演算方式における撮像の時間に適した露光制御に設定することができる。
【0064】
(7)シャッタ幕は、移動することにより撮像素子260を遮光する先幕250aと後幕250bとを有し、蓄積制御部230bは、上記第1制御において先幕250aの走行により光電変換を開始させ、後幕250bで撮像素子260を遮光する。
【0065】
本発明は上述した内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
(変形例1)
<ブラケット撮影の場合の変形>
設定部230aは、ブラケット撮影において複数コマの撮影を続けて行う場合には、全コマを同じ露光制御方式により撮像することが好ましいという考え方に基づき、1コマ目において設定した露光制御方式を2コマ目以降の撮像に採用してもよい。この場合、露出制御方式を1コマ目と2コマ目以降に設定された複数の撮像の時間に基づいて決定する。
【0066】
変形例1としてHDR画像を出力するモードを例に説明する。露出ブラケット撮影によって同じ被写体を撮影し、露出ブラケット撮影で得られた露出違いの複数コマの画像を信号処理部270によって1つの画像に合成させると、いわゆるHDR(High Dynamic Range)画像を得ることができる。信号処理部270は、撮像素子260から出力された複数コマの信号を先に合成してから1つのHDR画像のデータを生成する、または、撮像素子260から出力された各コマの信号に対して所定の画像処理を行うことによって先に複数コマの画像のデータを生成し、後から複数コマの画像のデータを合成して1つのHDR画像のデータを生成する。
【0067】
露出ブラケット撮影においては、コマ間の露出をずらすために各コマに異なるシャッタスピード(撮像の時間)が設定される。設定部230aは、設定された複数のシャッタスピード(撮像の時間)の中央値と切替時間に基づいて(A)シャッタ装置を用いる露光制御と(B)ハイブリッド露光制御とのいずれかを設定する。つまり、設定された複数のシャッタスピードの中央値が切替時間に対して高速であるか低速であるかにより露光制御を設定する。
【0068】
また、設定部230aは、設定された複数のシャッタスピードの最小値または最大値と切替時間とに基づいて、(A)シャッタ装置を用いる露光制御と(B)ハイブリッド露光制御とのいずれかを設定してもよい。または、設定された複数のシャッタスピードの平均値と切替時間に基づいて、(A)シャッタ装置を用いる露光制御と(B)ハイブリッド露光制御とのいずれかを設定してもよい。
【0069】
変形例1によると、以下の作用効果が得られる。
(1)設定部230aは、複数回の撮像による画像を合成することで1つのHDR画像を出力するモードにおける連写撮影の場合は、(A)シャッタ装置を用いる露光制御、および、(B)ハイブリッド露光制御のいずれかの制御による撮像を行う。このように構成したので、全コマを同じ露光制御方式により撮像することが好ましいという考え方に基づいて、1コマ目において設定した露光制御方式を2コマ目以降の撮像にも適用することができる。
【0070】
(2)設定部230aは、画像を合成する複数回の撮像に対してそれぞれに設定されたシャッタスピードの中央値および、切替時間に基づいて、(A)シャッタ装置を用いる露光制御、および、(B)ハイブリッド露光制御のいずれかの制御による撮像を行う。このように構成したので、設定された複数のシャッタスピードの中央値と切替時間とに基づき、(A)シャッタ装置を用いる露光制御と(B)ハイブリッド露光制御とを設定する判定を適切に行うことができる。
【0071】
(変形例2)
<絞り値による切替時間の変更>
設定部230aは、切替時間を、絞り362の開口径(絞り値)に応じて変化させてもよい。上述したように、射出瞳径が大きくなるほど、撮像面260Sにおいて「ボケ欠け」が生じやすくなる。絞り362を開き開口径を大きくするほど撮影光学系360の射出瞳径が大きくなるので、設定部230aは、絞り362を開くほど切替時間を低速側に変更してもよい。このようにすることで、シャッタスピードがより低速である場合でも、(A)シャッタ装置を用いる露光制御となる。
【0072】
撮影光学系360の射出瞳の径が小さくなるほど「ボケ欠け」が生じにくくなる。絞り362を絞り開口径を小さくするほど撮影光学系360の射出瞳径が小さくなるので、設定部230aは、絞り362を絞るほど切替時間を高速側に変更してもよい。このようにすることで、シャッタスピードがより高速である場合でも、(B)ハイブリッド露光制御を用いる露光制御となる。
【0073】
変形例2によれば、設定部230aが、切替時間(第1時間および第2時間を含む)を、撮影光学系360の光学特性の一つとしての絞り値に応じて変更するので、上記現象による影響を回避しながら、上記切替時間を適切に変更することができる。なお、切替時間、第1時間および第2時間は、全てを変更する必要はなく、少なくとも一つを変更してもよい。
【0074】
(変形例3)
<射出瞳による切替時間の変更>
交換レンズ3から撮影光学系360の射出瞳に関する情報を取得できたかできないかにより、切替時間を異ならせてもよい。交換レンズ3から射出瞳の情報を取得できると、電子先幕及び後幕250bの走行を射出瞳の情報により最適化し、露光むらの現象を少なくすることができる。設定部230は、交換レンズ3から撮影光学系360の射出瞳に関する情報を取得できる場合は、切替時間(第1時間および第2時間を含む)を射出瞳の情報を取得できない場合よりも高速側に設定する。すなわち、射出瞳に関する情報を取得できると、より高速側のシャッタスピードが設定された場合でも(B)ハイブリット露光制御を行う。
交換レンズ3から撮影光学系360の射出瞳に関する情報を取得できたかできないか、に代えて、交換レンズ3から電子先幕走行に関する情報を取得できるかできないかにより、切替時間を変えてもよい。また、交換レンズ3が切替時間に関する情報を保持している場合は交換レンズ3からの情報に応じて切替時間を設定してもよい。
【0075】
また、設定部230aは、交換レンズ3から撮影光学系360の射出瞳に関する情報を取得できた場合に、切替時間(第1時間および第2時間を含む)を射出瞳距離に応じて変化させてもよい。射出瞳距離が短いほど撮像面260Sの上部において「ボケ欠け」が生じやすくなる。設定部230aは射出瞳距離が短いほど切替時間を低速側にしてもよい。撮影光学系360の射出瞳距離の情報が得られずに、焦点距離情報が得られた場合には、設定部230aは、焦点距離が短いほど切替時間を低速側にしてもよい。一般に、撮影光学系360の焦点距離が短いほど射出瞳距離が短いことが多いからである。
【0076】
変形例3によれば、設定部230aが、切替時間(第1時間および第2時間を含む)を、撮影光学系360の光学特性の一つとしての射出瞳情報が得られた否か、またその値に応じて変更するので、上記現象による影響を回避しながら、露光制御を適切に変更することができる。なお、切替時間、第1時間および第2時間は、全てを変更する必要はなく、少なくとも一つを変更してもよい。
【0077】
(変形例4)
<防振機能の有無及び防振機能の性能による変更>
交換レンズ3が、カメラシステム1に加えられる振れにより生じる被写体の像の振れを防ぐように駆動する防振機構を備えて防振機能を利用している場合と、防振機能を利用していない場合とで切替時間を異なる値に設定してもよい。交換レンズ3から防振機能を備えていると、先幕250aの走行に伴い生じる振動による像ブレを少なくすることができる。設定部230は、防振機能を有効にしている場合は、切替時間(第1時間および第2時間を含む)を有効にしていない場合よりも低速側に設定する。すなわち、防振機能が有効であると、より低速側のシャッタスピードが設定された場合でも(A)シャッタ装置を用いる露光制御を行う。撮像素子260を駆動することによる防振機能でも同様である。
【0078】
露光制御方式を設定する設定部230aは、設定した露光制御の方式を露出演算部230cに通知する。露出演算部230cは、露光制御方式を設定する設定部230aから通知された露光制御の方式と、撮像素子260から出力される信号とを用いて露出演算を行うとよい。露光制御方式は、(A)シャッタ装置を用いる露光制御と、(B)ハイブリッド露光制御と、撮像素子260への露光の開始及び終了を撮像素子260へのリセット制御と読み出し制御とにより行う(C)電子シャッタ制御と、のいずれかを通知するとよい。露光制御方式により、撮像面260S内での露光むらが発生する量や、撮像面260S内の場所での露光時間のずれが発生する量が異なる。露光制御方式を加味して露出演算をすることで、より正確な露出演算が可能になる。特にシャッタスピードが短い撮像により得られた信号から露出演算をする場合に、正確な値を算出することができ、撮像画像から露出演算を行う高速連写時などに特に有効である。
【0079】
本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、各変形例の任意の組み合わせや種々変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0080】
1…カメラシステム、2…カメラボディ、3…交換レンズ、200…開口部、230…ボディ側制御部、230a…設定部、230c…露出演算部、240…ボディ側通信部、250…シャッタ装置、250a…先幕、250b…後幕、260…撮像素子、280…操作部材、330…レンズ側制御部、340…レンズ側通信部、360…撮影光学系、362…絞り
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7