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特許7314927熱電変換モジュール用部材、熱電変換モジュール及び熱電変換モジュール用部材の製造方法
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  • 特許-熱電変換モジュール用部材、熱電変換モジュール及び熱電変換モジュール用部材の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-18
(45)【発行日】2023-07-26
(54)【発明の名称】熱電変換モジュール用部材、熱電変換モジュール及び熱電変換モジュール用部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H10N 10/817 20230101AFI20230719BHJP
   H10N 10/851 20230101ALI20230719BHJP
   H10N 10/01 20230101ALI20230719BHJP
   H10N 10/852 20230101ALI20230719BHJP
   H02N 11/00 20060101ALI20230719BHJP
【FI】
H10N10/817
H10N10/851
H10N10/01
H10N10/852
H02N11/00 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020503415
(86)(22)【出願日】2019-02-19
(86)【国際出願番号】 JP2019005974
(87)【国際公開番号】W WO2019167709
(87)【国際公開日】2019-09-06
【審査請求日】2021-12-20
(31)【優先権主張番号】P 2018032925
(32)【優先日】2018-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113000
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 亨
(74)【代理人】
【識別番号】100151909
【弁理士】
【氏名又は名称】坂元 徹
(72)【発明者】
【氏名】土居 篤典
(72)【発明者】
【氏名】島野 哲
【審査官】上田 智志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0103381(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0213447(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0024154(US,A1)
【文献】特表2015-502043(JP,A)
【文献】特開2006-128522(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0096809(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10N 10/01、10/817、
10/851、10/852、
H02N 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱電変換層と、前記熱電変換層に接する拡散防止層とを備える熱電変換モジュール用部材であって、
前記熱電変換層が、25℃において、空間群R3mに帰属される結晶構造を有するGeTeを主相とする材料、空間群R-3mに帰属される結晶構造を有するGeBi Te 4 を主相とする材料、又は空間群P-3m1に帰属される結晶構造を有するGeBi 4 Te 7 を主相とする材料である熱電変換材料を含有する層であり、
前記拡散防止層が、金属および前記熱電変換層に含有される熱電変換材料と同一の熱電
変換材料を含有する層であり、
前記拡散防止層における前記熱電変換材料の量が、前記金属100重量部に対して25
45重量部である、前記熱電変換モジュール用部材。
【請求項2】
一対の電極と、前記一対の電極間に設けられた請求項1に記載の熱電変換モジュール用部材とを備える熱電変換モジュール。
【請求項3】
熱電変換層と、前記熱電変換層に接する拡散防止層とを備える熱電変換モジュール用部材の製造方法であって、
成形型に下記材料(1)及び下記材料(2)のうちの一方又はその焼結体を配置することにより、第一の層を形成する第一の工程と、
前記成形型に前記材料(1)及び前記材料(2)のうちの他方又はその焼結体を、前記第一の工程で形成された第一の層と接するように配置することにより、第二の層を形成し、積層体を得る第二の工程と、
第二の工程で得られた積層体を焼結することにより、前記熱電変換モジュール用部材を
得る焼結工程とを有する、前記熱電変換モジュール用部材の製造方法。
材料(1):25℃において、空間群R3mに帰属される結晶構造を有するGeTeを主相とする材料、空間群R-3mに帰属される結晶構造を有するGeBi Te 4 を主相とする材料、又は空間群P-3m1に帰属される結晶構造を有するGeBi 4 Te 7 を主相とする材料
材料(2):金属および前記材料(1)と同一の熱電変換材料を前記金属100重量部に対して前記熱電変換材料2545重量部の割合で含有する組成物
【請求項4】
熱電変換層と、前記熱電変換層に接する拡散防止層とを備える熱電変換モジュール用部
材の製造方法であって、
成形型に下記材料(1)及び下記材料(2)のうちの一方又はその焼結体を配置するこ
とにより、第一の層を形成する第一の工程と、
前記成形型に前記材料(1)及び前記材料(2)のうちの他方又はその焼結体を、前記
第一の工程で形成された第一の層と接するように配置することにより、第二の層を形成し
、積層体を得る第二の工程と、
第二の工程で得られた積層体を焼結することにより、前記熱電変換モジュール用部材を
得る焼結工程と
を有し、
前記第二の工程において、更に、前記材料(1)及び前記材料(2)のうち、前記第一
の層と同一の材料又はその焼結体を、前記第一の層の反対側に、前記第二の層と接するよ
うに配置することにより第三の層を形成し、積層体を得ることを含む、熱電変換モジュール用部材の製造方法。
材料(1):ケイ素元素またはテルル元素を有する熱電変換材料
材料(2):金属および前記材料(1)と同一の熱電変換材料を前記金属100重量部に
対して前記熱電変換材料10~50重量部の割合で含有する組成物
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱電変換モジュール用部材、熱電変換モジュール及び熱電変換モジュール用部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱エネルギーを有効に利用するためのモジュールとして、一対の電極を形成し、電極の一方を高温、他方を低温に維持して温度差を作り、かかる温度差に対応させて起電力が発生するゼーベック効果を利用し、熱を電力に変換する、熱電変換モジュールが知られている。
【0003】
一般に、熱電変換モジュールは、一対の電極と、前記電極間に設けられた熱電変換層とを備え、高温環境において使用される。そのため、熱電変換層と電極との間の相互物質拡散や耐熱性が問題となる。こうした問題を解決するため、拡散防止層を導入することが検討されている。
【0004】
例えば、特許文献1において、電極層と熱電変換層とNiなどの金属のみを含む拡散防止層とを備えた熱電変換モジュールが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平10-74986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の熱電変換モジュールは、熱電変換層と拡散防止層との接合性、及び、耐熱性が十分ではない。
【0007】
そこで、本発明の目的は、熱電変換層と拡散防止層との接合性が高く、耐熱性にも優れる熱電変換モジュール用部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
即ち、本発明は以下の[1]~[5]を提供する。
[1] 熱電変換層と、前記熱電変換層に接する拡散防止層とを備える熱電変換モジュール用部材であって、
前記熱電変換層が、ケイ素元素またはテルル元素を有する熱電変換材料を含有する層であり、
前記拡散防止層が、金属および前記熱電変換層に含有される熱電変換材料と同一の熱電変換材料を含有する層であり、
前記拡散防止層における前記熱電変換材料の量が、前記金属100重量部に対して10~50重量部である、前記熱電変換モジュール用部材。
[2] 前記熱電変換材料が、25℃において、空間群R-3mに帰属される結晶構造を有するBiTe3-xSe(0<x<3)を主相とする材料、空間群R-3mに帰属される結晶構造を有するBi2-ySbTe(0≦y≦2)を主相とする材料、空間群R3mに帰属される結晶構造を有するGeTeを主相とする材料、空間群R-3mに帰属される結晶構造を有するGeBiTeを主相とする材料、空間群P-3m1に帰属される結晶構造を有するGeBiTeを主相とする材料、空間群Fm-3mに帰属される結晶構造を有するSnTeを主相とする材料、空間群Fm-3mに帰属される結晶構造を有するPbTeを主相とする材料、CaF型の結晶構造を有するMgSi1-zSn(0≦z<1)を主相とする材料、空間群Cmcaに帰属される結晶構造を有するFeSiを主相とする材料、チムニーラダー型の結晶構造を有するMnSiγ(1.7≦γ≦1.8)を主相とする材料、および、B20型の結晶構造を有するCoSiを主相とする材料からなる群より選ばれる少なくとも1つの材料である[1]に記載の熱電変換モジュール用部材。
[3] 一対の電極と、前記一対の電極間に設けられた[1]または[2]に記載の熱電変換モジュール用部材とを備える熱電変換モジュール。
[4] 熱電変換層と、前記熱電変換層に接する拡散防止層とを備える熱電変換モジュール用部材の製造方法であって、
成形型に下記材料(1)及び下記材料(2)のうちの一方又はその焼結体を配置することにより、第一の層を形成する第一の工程と、
前記成形型に前記材料(1)及び前記材料(2)のうちの他方又はその焼結体を、前記第一の工程で形成された第一の層と接するように配置することにより、第二の層を形成し、積層体を得る第二の工程と、
第二の工程で得られた積層体を焼結することにより、前記熱電変換モジュール用部材を得る焼結工程と
を有する、前記熱電変換モジュール用部材の製造方法。
材料(1):ケイ素元素またはテルル元素を有する熱電変換材料
材料(2):金属および前記材料(1)と同一の熱電変換材料を前記金属100重量部に対して前記熱電変換材料10~50重量部の割合で含有する組成物
[5] 前記第二の工程において、更に、前記材料(1)及び前記材料(2)のうち、前記第一の層と同一の材料又はその焼結体を、前記第一の層の反対側に、前記第二の層と接するように配置することにより第三の層を形成し、積層体を得ることを含む、[4]に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、熱電変換材料層と拡散防止層との接合性が高く、耐熱性にも優れる熱電変換モジュール用部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態である熱電変換モジュール用部材(a)の構造を示す図である。
図2】本発明の一実施形態である熱電変換モジュールの構造を示す模式断面図である。
図3】本発明の一実施形態である熱電変換モジュールの構造を示す模式断面図である。
【0011】
次に、本発明の実施形態についてさらに詳細に説明する。なお、参照される各図面は、発明が理解できる程度に、構成要素の形状、大きさおよび配置が概略的に示されているに過ぎない。本発明は以下の記述によって限定されるものではなく、各構成要素は本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、本発明の実施形態にかかる構成は、必ずしも図面に示された配置で、製造されたり、使用されたりするわけではない。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書において、熱電変換層に含まれる熱電変換材料の各パラメータは下記式(1)および(2)で表される。
熱電変換材料の最大の熱効率ηoptは下記式(1)で表される。下記式(1)中、Tは高温端の温度[単位:K]、Tは低温端の温度[単位:K]、TaveはTとTの平均[単位:K]、Zは利用する温度領域における熱電変換材料の熱電変換性能指数zの平均[単位:1/K]である。
【0013】
【数1】
ある温度T[単位:K]における熱電変換材料の熱電変換性能指数z[単位:1/K]は、下記式(2)で表される。ここで、ある温度Tにおけるゼーベック係数α[単位:V/K]、抵抗率ρ[単位:Ω・m]、熱伝導率κ[単位:W/(m・K)]である。
【0014】
【数2】
【0015】
熱電変換材料の物性値zTが大きいほど、熱電変換で得られる最大の熱効率ηoptが高いことを意味する。熱効率を高めるためには、広い温度領域で高い熱電変換性能指数zが得られることが望まれる。
【0016】
<熱電変換モジュール用部材>
本発明の熱電変換モジュール用部材は、熱電変換層と、前記熱電変換層に接する拡散防止層とを備える熱電変換モジュール用部材である。該熱電変換モジュール用部材は、前記熱電変換層または前記拡散防止層を、各々、2層以上備えていてもよい。
【0017】
<熱電変換層>
本発明の熱電変換モジュール用部材が備える熱電変換層は、ケイ素元素またはテルル元素を有する熱電変換材料を含有する層である。
前記熱電変換材料としては、25℃において、空間群R-3mに帰属される結晶構造を有するBiTe3-xSe(0<x<3)を主相とする材料、空間群R-3mに帰属される結晶構造を有するBi2-ySbTe(0≦y≦2)を主相とする材料、空間群R3mに帰属される結晶構造を有するGeTeを主相とする材料、空間群R-3mに帰属される結晶構造を有するGeBiTeを主相とする材料、空間群P-3m1に帰属される結晶構造を有するGeBiTeを主相とする材料、空間群Fm-3mに帰属される結晶構造を有するSnTeを主相とする材料、空間群Fm-3mに帰属される結晶構造を有するPbTeを主相とする材料、CaF型の結晶構造を有するMgSi1-zSn(0≦z<1)を主相とする材料、空間群Cmcaに帰属される結晶構造を有するFeSiを主相とする材料、チムニーラダー型の結晶構造を有するMnSiγ(1.7≦γ≦1.8)を主相とする材料、および、B20型の結晶構造を有するCoSiを主相とする材料からなる群より選ばれる少なくとも1つの材料であることが好ましい。
【0018】
前記熱電変換材料は、半導体である。キャリアが電子である熱電変換材料は、n型の熱電変換材料と称され、キャリアがホールである熱電変換材料は、p型の熱電変換材料と称される。前記熱電変換材料は、熱電変換材料中の電子またはホールのキャリア密度を増加させる元素(本明細書において、ドーパント元素と呼ぶことがある。)を含んでいてもよく、熱電変換材料に含まれるドーパント元素の種類によって、n型の熱電変換材料にも、p型の熱電変換材料にもなり得る。
【0019】
n型の熱電変換材料に含まれるドーパント元素としてはIが、p型の熱電変換材料に含まれるドーパント元素としてはNaが挙げられる。
【0020】
n型の熱電変換材料としては、空間群R-3mに帰属される結晶構造BiTe3-xSe(0<x<3)を主相とする材料が挙げられる。
キャリアがホールであるp型の熱電変換材料としては前記空間群R-3mに帰属される結晶構造を有するBi2-ySbTe(0≦y≦2)を主相とする材料と前記チムニーラダー型の結晶構造を有するMnSiγ(1.7≦γ≦1.8)を主相とする材料が挙げられる。
熱電変換材料に含まれるドーパント元素の種類によって、n型の熱電変換材料にも、p型の熱電変換材料にもなり得る熱電変換材料としては、空間群R3mに帰属される結晶構造を有するGeTeを主相とする材料、空間群R-3mに帰属される結晶構造を有するGeBiTeを主相とする材料、空間群P-3m1に帰属される結晶構造を有するGeBiTeを主相とする材料、空間群Fm-3mに帰属される結晶構造を有するSnTeを主相とする材料、空間群Fm-3mに帰属される結晶構造を有するPbTeを主相とする材料、CaF型の結晶構造を有するMgSi1-zSn(0≦z<1)を主相とする材料、空間群Cmcaに帰属される結晶構造を有するFeSiを主相とする材料、および、B20型の結晶構造を有するCoSiを主相とする材料が挙げられる。
【0021】
前記空間群R-3mに帰属される結晶構造を有するBiTe3-xSe(0<x<3)を主相とする材料は、前記主相を構成するBi、TeおよびSe以外の元素を含んでいてもよく、2種類以上含んでいてもよい。Bi、TeおよびSe以外の元素としては、硫黄元素やハロゲン元素を含んでいてもよい。ハロゲン元素としては、本発明の熱電変換モジュール用部材に含まれる熱電変換材料の物性値zTの向上の観点から、I、BrまたはClであることが好ましい。
【0022】
前記空間群R-3mに帰属される結晶構造を有するBiTe3-xSe(0<x<3)を主相とする材料に含まれるBi、TeおよびSe以外の元素の含有量は、熱電変換モジュール用部材の耐熱性の観点から、BiTe3-xSeを主相とする材料に含まれるBiの物質量を100モル%としたとき、一つの元素につき10モル%以下であることが好ましく、5モル%以下であることがより好ましい。
【0023】
前記空間群R-3mに帰属される結晶構造を有するBi2-ySbTe(0≦y≦2)を主相とする材料は、前記主相を構成するBi、SbおよびTe以外の元素を含んでいてもよく、2種類以上含んでいてもよい。Bi、SbおよびTe以外の元素としては、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素を含んでいてもよい。アルカリ金属元素としては、Li、NaまたはKが挙げられ、アルカリ土類金属元素としては、Mg、CaまたはBaが挙げられる。本発明の熱電変換モジュール用部材に含まれる熱電変換材料の物性値zTの向上の観点から、MgまたはCaを含むことが好ましい。
【0024】
前記空間群R-3mに帰属される結晶構造を有するBi2-ySbTe(0≦y≦2)を主相とする材料に含まれるBi、SbおよびTe以外の元素の含有量は、熱電変換モジュール用部材の耐熱性の観点から、Bi2-ySbTeを主相とする材料に含まれるBiの物質量を100モル%としたとき、一つの元素につき10モル%以下であることが好ましく、5モル%以下であることがより好ましい。
【0025】
前記空間群R3mに帰属される結晶構造を有するGeTeを主相とする材料は、前記主相を構成するGeおよびTe以外の元素を含んでいてもよく、2種類以上含んでいてもよい。GeおよびTe以外の元素としては、第14族元素、第15族元素、第16族元素または遷移金属元素を含んでいてもよい。第14族元素としては、Pb、SnまたはSiが挙げられ、PbまたはSnが格子熱伝導度を低減できる観点から好ましい。第15族元素としては、As、BiまたはSbが挙げられ、本発明の熱電変換モジュール用部材に含まれる熱電変換材料の物性値zTの向上の観点から、BiまたはSbを含むことが好ましい。第16族元素としては、SまたはSeが挙げられ、本発明の熱電変換モジュール用部材に含まれる熱電変換材料の物性値zTの向上の観点から、Seを含むことが好ましい。遷移金属元素としては、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Mo、Rh、AgまたはHfが挙げられ、本発明の熱電変換モジュール用部材に含まれる熱電変換材料の物性値zTの向上の観点から、CuまたはAgを含むことが好ましい。
【0026】
前記空間群R3mに帰属される結晶構造を有するGeTeを主相とする材料に含まれるGeおよびTe以外の元素の含有量は、熱電変換モジュール用部材の耐熱性の観点から、GeTeを主相とする材料に含まれるTeの物質量を100モル%としたとき、一つの元素につき30モル%以下であることが好ましく、20モル%以下であることが好ましい。
【0027】
前記空間群R3mに帰属される結晶構造を有するGeTeを主相とする材料に含まれるGeおよびTe以外の元素が、2種類以上である場合、本発明の熱電変換モジュール用部材に含まれる熱電変換材料の物性値zTの向上の観点から、Sb、Ag、BiおよびCuからなる群より選ばれる少なくとも2種類の元素であることが好ましい。
【0028】
前記空間群R3mに帰属される結晶構造を有するGeTeを主相とする材料に含まれるGeおよびTe以外の元素が、BiおよびCuである場合、本発明の熱電変換モジュール用部材に含まれる熱電変換材料の物性値zTを向上させる観点から、GeTeを主相とする材料に含まれるTeの物質量を100モル%としたとき、BiまたはCuの含有量は20モル%以下であることが好ましく、10モル%以下であることがより好ましく、該材料に含まれるBiおよびCuの結晶の最長径が2.0μm未満であることが好ましい。
【0029】
空間群R-3mに帰属される結晶構造を有するGeBiTeを主相とする材料は、前記主相を構成するGe、BiおよびTe以外の元素を含んでいてもよい。
【0030】
前記空間群P-3m1に帰属される結晶構造を有するGeBiTeを主相とする材料は、前記主相を構成するGe、BiおよびTe以外の元素を含んでいてもよく、Ge、BiおよびTe以外の元素としては、CuまたはSbを含んでいてもよい。
【0031】
前記空間群P-3m1に帰属される結晶構造を有するGeBiTeを主相とする材料に含まれるGe、BiおよびTe以外の元素の含有量は、本発明の熱電変換モジュール用部材に含まれる熱電変換材料の物性値zTの向上の観点から、GeBiTeを主相とする材料に含まれるGeの物質量を100モル%としたとき、Cuの含有量は0.20モル%以下であることが好ましく、Sbの含有量は50モル%以下であることが好ましい。
【0032】
空間群Fm-3mに帰属される結晶構造を有するSnTeを主相とする材料は、前記主相を構成するSnおよびTe以外の元素を含んでいてもよく、2種類以上含んでいてもよい。SnおよびTe以外の元素としてはSeまたはIを含んでいてもよい。
【0033】
前記空間群Fm-3mに帰属される結晶構造を有するSnTeを主相とする材料に含まれるSnおよびTe以外の元素の含有量は、本発明の熱電変換モジュール用部材に含まれる熱電変換材料の物性値zTの向上の観点から、SnTeを主相とする材料に含まれるSnの物質量を100モル%としたとき、Seは30モル%以下であることが好ましく、Iは5モル%以下であることがより好ましい
【0034】
前記空間群Fm-3mに帰属される結晶構造を有するPbTeを主相とする材料は、前記主相を構成するPbおよびTe以外の元素を含んでいてもよく、2種類以上含んでいてもよい。PbおよびTe以外の元素としてはNaまたはIを含んでいてもよい。
【0035】
前記空間群Fm-3mに帰属される結晶構造を有するPbTeを主相とする材料に含まれるNaの元素の含有量は、熱電変換モジュール用部材の耐熱性の観点から、PbTeを主相とする材料に含まれるPbの物質量を100モル%としたとき、5モル%以下であることが好ましい。
【0036】
前記空間群Fm-3mに帰属される結晶構造を有するPbTeを主相とする材料に含まれるIの元素の含有量は、熱電変換モジュール用部材の耐熱性の観点から、PbTeを主相とする材料に含まれるPbの物質量を100モル%としたとき、1モル%以下であることが好ましい。
【0037】
前記CaF型の結晶構造を有するMgSi1-zSn(0≦z<1)を主相とする材料は、前記主相を構成するMg、SiおよびSn以外の元素を含んでいてもよく、2種類以上含んでいてもよい。Mg、SiおよびSn以外の元素としてはBi、Sb、TeまたはGeを含んでいてもよい。
【0038】
前記CaF型の結晶構造を有するMgSi1-zSn(0≦z<1)を主相とする材料に含まれるMg、SiおよびSn以外の元素の含有量は、本発明の熱電変換モジュール用部材に含まれる熱電変換材料の物性値zTの向上の観点から、MgSi1-zSn(0≦z<1)を主相とする材料に含まれるMgの物質量を100モル%としたとき、一つの元素につき20モル%以下であることが好ましく、より好ましくは10モル%以下である。
【0039】
前記空間群Cmcaに帰属される結晶構造を有するFeSiを主相とする材料は、前記主相を構成するFeおよびSi以外の元素を含んでいてもよく、2種類以上含んでいてもよい。FeおよびSi以外の元素としてはCr、Coを含んでいてもよい。
【0040】
前記空間群Cmcaに帰属される結晶構造を有するFeSiを主相とする材料に含まれるFeおよびSi以外の元素の含有量は、本発明の熱電変換モジュール用部材に含まれる熱電変換材料の物性値zTの向上の観点から、FeSiを主相とする材料に含まれるFeの物質量を100モル%としたとき、一つの元素につき10モル%以下であることが好ましい。
【0041】
前記チムニーラダー型の結晶構造を有するMnSiγ(1.7≦γ≦1.8)を主相とする材料は、前記主相を構成するMnおよびSi以外の元素を含んでいてもよく、2種類以上含んでいてもよい。MnおよびSi以外の元素としてはAl、Ge、CrまたはFeを含んでいてもよい。
【0042】
前記チムニーラダー型の結晶構造を有するMnSiγ(1.7≦γ≦1.8)を主相とする材料に含まれるMnおよびSi以外の元素の含有量は、本発明の熱電変換モジュール用部材に含まれる熱電変換材料の物性値zTの向上の観点から、MnSiγ(1.7≦γ≦1.8)を主相とする材料に含まれるMnの物質量を100モル%としたとき、一つの元素につき20モル%以下であることが好ましく、10モル%以下であることがより好ましい。
【0043】
前記B20型の結晶構造を有するCoSiを主相とする材料は、前記主相を構成するCoおよびSi以外の元素を含んでいてもよく、2種類以上含んでいてもよい。CoおよびSi以外の元素としてはAl、Ni、Pd、PtまたはCuを含んでいてもよい。前記B20型の結晶構造を有するCoSiを主相とする材料は、ドーパント元素としてNiまたはPdを含む場合、n型の熱電変換材料となり、ドーパント元素としてAlを含む場合、p型の熱電変換材料となる。
【0044】
前記B20型の結晶構造を有するCoSiを主相とする材料に含まれるCoおよびSi以外の元素の含有量は、本発明の熱電変換モジュール用部材に含まれる熱電変換材料の物性値zTの向上の観点から、CoSiを主相とする材料に含まれるCoの物質量を100モル%としたとき、一つの元素につき10モル%以下であることが好ましい。
【0045】
本発明の熱電変換モジュール用部材に含まれる熱電変換材料としては、耐熱性および耐久性の観点から、25℃において、空間群R3mに帰属される結晶構造を有するGeTeを主相とする材料、空間群R-3mに帰属される結晶構造を有するGeBiTeを主相とする材料、空間群P-3m1に帰属される結晶構造を有するGeBiTeを主相とする材料、空間群Fm-3mに帰属される結晶構造を有するSnTeを主相とする材料、CaF型の結晶構造を有するMgSi1-zSn(0≦z<1)を主相とする材料、チムニーラダー型の結晶構造を有するMnSiγ(1.7≦γ≦1.8)を主相とする材料が好ましく、空間群R3mに帰属される結晶構造を有するGeTeを主相とする材料、チムニーラダー型の結晶構造を有するMnSiγ(1.7≦γ≦1.8)を主相とする材料がより好ましく、Ge0.95Bi0.05Cu0.03Te、MnSi1.73が更に好ましい。
熱電変換層中の熱電変換材料は、一種単独で含まれていても二種以上含まれていてもよい。
【0046】
本発明の熱電変換モジュール用部材が備える熱電変換層は、熱電変換材料ではない「熱電変換材料以外のその他の材料」を含んでいてもよく、かかる材料としては、例えば、Al、SiO等の酸化物が挙げられる。
熱電変換層中の熱電変換材料以外のその他の材料は、一種単独で含まれていても二種以上含まれていてもよい。
【0047】
本発明の熱電変換モジュール用部材が備える熱電変換層中の前記熱電変換材料の含有量は、前記熱電変換層中の全ての化合物の合計量を100質量%としたとき、本発明の熱電変換モジュール用部材に含まれる熱電変換材料の物性値zTの向上の観点から、95質量%以上であることが好ましい。
【0048】
本発明の熱電変換モジュール用部材が備える熱電変換層中の前記「熱電変換材料以外のその他の材料」は、前記熱電変換層中の全ての化合物の合計量を100質量%としたとき、本発明の熱電変換モジュール用部材に含まれる熱電変換材料の物性値zTの向上の観点から、5質量%以下であることが好ましい。
【0049】
前記熱電変換層の膜厚としては、特に制限はないが、本発明の熱電変換モジュールの熱電変換効率が向上する観点から、100μm以上であることが好ましく、500μm以上であることがより好ましく、1000μm以上であることが更に好ましく、力学的な耐久性に優れる観点から、5cm以下であることが好ましく、2cm以下であることがより好ましく、1cm以下であるであることが更に好ましい。上記の上限値および下限値は任意に組み合わせることができる。
【0050】
<拡散防止層>
本発明の熱電変換モジュール用部材が備える拡散防止層は、金属および前記熱電変換層に含有される熱電変換材料と同一の熱電変換材料を含有する層である。
拡散防止層中の熱電変換材料は、一種単独で含まれていても二種以上含まれていてもよい。
前記拡散防止層において、前記熱電変換材料の量は、前記金属100重量部に対して10~50重量部であり、11~45重量部であることが好ましく、25重量部~45重量部であることがより好ましく、35重量部~43重量部であることが特に好ましい。
【0051】
本発明の熱電変換モジュール用部材が備える拡散防止層に含まれる金属としては、熱電変換層と拡散防止層との間の接合性の観点から、Alまたは遷移金属が挙げられ、遷移金属であることが好ましい。
該遷移金属の中でも、融点が500℃以上である遷移金属が好ましく、3d遷移金属、4d遷移金属またはTaがより好ましく、3d遷移金属または4d遷移金属が更に好ましく、3d遷移金属(中でも、Ni)が特に好ましい。3d遷移金属としては、例えば、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、NiまたはCuが挙げられ、Mn、Fe、Co、NiまたはCuが好ましく、Fe、CoまたはNiがより好ましい。4d遷移金属としては、例えば、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、PdまたはAgが挙げられ、Nb、Mo、PdまたはAgが好ましい。
【0052】
前記拡散防止層中に含まれる金属は、異種の金属で構成される合金であってもよい。中でも、遷移金属で構成された合金が好ましく、3d遷移金属で構成された合金が好ましい。具体的には、Cr-Ni、Co-Fe、Fe-Cr、Fe-NiまたはNi-Co合金などが挙げられる。
拡散防止層中の金属は、一種単独で含まれていても二種以上含まれていてもよい。
【0053】
前記拡散防止層中の熱電変換材料と金属とは、海島状相分離構造を形成していることが好ましい。
海島状相分離構造とは、互いに非相溶である海状の熱電変換材料の領域と、島状の金属の領域とを有する相分離構造である。
海状の熱電変換材料の領域は、前記熱電変換材料が存在する領域であり、島状の金属の領域は、前記金属の粒子、またはその粒子の凝集体が存在する領域(以下、島状相と呼ぶことがある。)である。
このような構造を有することで、熱電変換層と拡散防止層の間の接合性が向上する。
【0054】
海島状相分離構造を観察する方法としては、例えば、拡散防止層断面を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察する方法が挙げられる。また、電子線照射により発生する特性X線を検出し、エネルギーで分光することで、元素分析や組成分析を行う手法であるSEM-EDX法(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy、エネルギー分散型X線分光法)により、組成についての情報を得ることができる。
【0055】
前記島状相の形状は球状または歪んだ球状など、特に制限はない。島状相を構成する前記金属は粒子状であることが好ましい。粒子状であることにより、上記海島状相分離構造が形成されやすくなり、本発明の熱電変換モジュール用部材が備える熱電変換層と拡散防止層との間の接合性が向上する。該金属の粒子径は、特に制限はないが、200μm以下であることが好ましく、150μm以下であることがより好ましい。
【0056】
前記拡散防止層の膜厚としては、特に制限はないが、本発明の熱電変換モジュール用部材が備える熱電変換層と拡散防止層との間の接合性が向上する観点から、100μm以上5000μm以下であることが好ましく、200以上2000μm以下であることがより好ましく、250μm以上1000μm以下であることが特に好ましい。
【0057】
前記拡散防止層中の前記金属および前記熱電変換材料以外の「その他の成分」として、熱電変換材料ではない酸化物を含んでいてもよく、例えば、Al、SiOが挙げられる。前記拡散防止層が該熱電変換材料ではない酸化物を含むことにより、熱電変換材料モジュール用部材の硬度を向上させることが可能となる。
拡散防止層中のその他の成分は、一種単独で含まれていても二種以上含まれていてもよい。
【0058】
本発明の熱電変換モジュール用部材が備える拡散防止層中の前記「その他の材料」は、前記拡散防止層中の全ての化合物の合計量を100質量%としたとき、本発明の熱電変換モジュール用部材に含まれる熱電変換材料の物性値zTの向上の観点から、5質量%以下であることが好ましい。
【0059】
<熱電変換モジュール用部材>
本発明の熱電変換モジュール用部材は、少なくとも一層の熱電変換層と少なくとも一層の拡散防止層とを有しており、各層は接している。
本発明の熱電変換モジュール用部材において、熱電変換層及び拡散防止層が、各々、二層以上存在する場合、少なくとも一層の熱電変換層に含有される熱電変換材料と、該熱電変換層と接する少なくとも一層の拡散防止層に含有される熱電変換材料とが、同一であればよい。また、本発明の熱電変換モジュール用部材において、熱電変換層及び/又は拡散防止層に含有される熱電変換材料が二種以上である場合、熱電変換層に含有される少なくとも一種の熱電変換材料と、該熱電変換層と接する拡散防止層に含有される少なくとも一種の熱電変換材料とが、同一であればよい。
図1は、本発明の一実施形態である熱電変換モジュール用部材(a)の構造を示す模式断面図である。この熱電変換モジュール用部材は、拡散防止層2と熱電変換層3とが、この順に隣接して接合した積層体である。
【0060】
本発明の他の実施形態において、熱電変換モジュール用部材(b)は、拡散防止層と、熱電変換層と、拡散防止層が、この順に隣接して接合した積層体である。このとき、熱電変換層に隣接する2つの拡散防止層は、それぞれ互いに同一であっても異なっていてもよく、熱電変換層に含有される熱電変換材料と、該熱電変換層と接する少なくとも一層の拡散防止層に含有される熱電変換材料とが、同一であればよい。
【0061】
本発明の他の実施形態において、熱電変換モジュール用部材(c)は、拡散防止層と、熱電変換層と、熱電変換層とが、この順に隣接して接合した積層体である。このとき、隣接する2つの熱電変換層は、それぞれ互いに同一であっても異なっていてもよい。前記2つの熱電変換層中の熱電変換材料が、それぞれ互いに異なる場合、拡散防止層に含有される熱電変換材料と、該拡散防止層に接する熱電変換層に含有される熱電変換材料とが、同一であればよい。
【0062】
本発明の他の実施形態において、熱電変換モジュール用部材(d)は、熱電変換層と、拡散防止層と、熱電変換層とが、この順に隣接して接合した積層体である。拡散防止層に隣接する2つの熱電変換層は、それぞれ互いに同一であっても異なっていてもよい。前記2つの熱電変換層中の熱電変換材料が、それぞれ互いに異なる場合、前記拡散防止層中の熱電変換材料が、該拡散防止層に接する前記2つの熱電変換層のうち少なくとも一方の熱電変換層に含有される熱電変換材料と同一であればよく、前記拡散防止層中の熱電変換材料が、2つ熱電変換層のそれぞれに含まれる熱電変換材料を任意で配合した熱電変換材料であってもよい。
【0063】
本発明の他の実施形態において、熱電変換モジュール用部材(e)は、熱電変換層と、拡散防止層と、拡散防止層とが、この順に隣接して接合した積層体である。隣接する2つの拡散防止層は、それぞれ互いに同一であっても異なっていてもよく、熱電変換層に含有される熱電変換材料と、該熱電変換層と接する拡散防止層に含有される熱電変換材料とが、同一であればよい。2つの拡散防止層のうち、熱電変換層と接する拡散防止層中の熱電変換材料の含有量が、他方の拡散防止層中の熱電変換材料の含有量よりも高い場合、熱電変換モジュール用部材(e)を備える熱電変換モジュールは、熱線膨張率の変化が小さくなるため加熱による剥離が生じにくく、各層間での接合性が向上する。
【0064】
本発明の他の実施形態において、熱電変換モジュール用部材(f)は、熱電変換層と、拡散防止層と、熱電変換層と、拡散防止層と、熱電変換層とが、この順に隣接して接合した積層体である。2つの拡散防止層は、それぞれ互いに同一であっても異なっていてもよい。3つの熱電変換層は、それぞれ互いに同一であっても異なっていてもよい。前記3つの熱電変換層のうち、2つのうち一方の拡散防止層と接する2つ熱電変換層中の熱電変換材料が、それぞれ互いに異なる場合、前記拡散防止層中の熱電変換材料が、該拡散防止層に接する前記2つの熱電変換層のうち該拡散防止層のみと接する熱電変換層に含有される熱電変換材料と同一であればよく、該拡散防止層に接する前記2つ熱電変換層のそれぞれに含まれる熱電変換材料を任意で配合した熱電変換材料であってもよい。
【0065】
本発明の熱電変換モジュール用部材は、熱電変換層及び拡散防止層以外の層を備えていてもよい。
【0066】
<熱電変換モジュール>
本発明の熱電変換モジュールは、一対の電極と、前記一対の電極間に設けられた前記熱電変換モジュール用部材とを備える。また、本発明の熱電変換モジュールは、一対の電極及び熱電変換モジュール用部材以外の要素を備えていてもよい。
図2及び図3は、本発明の一実施形態である熱電変換モジュールの構造を示す模式断面図である。図2の熱電変換モジュール5-bは、加熱する側の電極(本明細書において、高温側電極と呼ぶことがある。)4-aを加熱すると、温度差により加熱されない側の電極(本明細書において、低温側電極と呼ぶことがある。)4-bと高温側電極4-aとの間に電位差が生じる。例えば、熱電変換モジュール5-aの熱電変換層に含まれる熱電変換材料において、キャリアがホールであるp型熱電変換材料の場合、低温側電極4-bが高温側電極4-aよりも高電位となる。このとき、高温側電極4-aと低温側電極4-bとの間に外部負荷6を配線7および8によって電気的に接続することによって、配線8から外部負荷6を経由して配線7の方向に電流が流れることとなる。
【0067】
本発明の一実施形態において、熱電変換モジュールは、高温側電極と、拡散防止層と、熱電変換層と、熱電変換層と、低温側電極とが、この順に隣接して接合した積層体である。2つの熱電変換層は、それぞれ互いに同一であっても異なっていてもよい。
本発明の一実施形態において、熱電変換モジュールは、高温側電極と、拡散防止層と、熱電変換層と、拡散防止層と、熱電変換層と、低温側電極とが、この順に隣接して接合した積層体である。2つの拡散防止層は、それぞれ互いに同一であっても異なっていてもよい。2つの熱電変換層は、それぞれ互いに同一であっても異なっていてもよい。
本発明の一実施形態において、熱電変換モジュールは、高温側電極と、拡散防止層と、熱電変換層と、拡散防止層と、熱電変換層と、拡散防止層と、低温側電極とが、この順に隣接して接合した積層体である。3つの拡散防止層は、それぞれ互いに同一であっても異なっていてもよい。2つの熱電変換層は、それぞれ互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0068】
本発明の熱電変換モジュールが備える前記一対の電極としては、特に制限されないが、電気伝導性の高い金属が用いられる。例えば、Alや遷移金属が挙げられる。遷移金属としては、3d遷移金属が好ましく、Fe、CuまたはNiがより好ましい。
前記一対の電極は、同一の金属であっても異なる金属であってもよい。
【0069】
本発明の熱電変換モジュールが備える電極と熱電変換モジュール用部材とは、半田、ロウ付けまたは溶接で固定されていてもよい。半田としては、例えば、Inを含有する半田(例えば、In-Ga半田)、Pbを含有する半田またはSnを含有する半田が挙げられる。ロウ付けに用いられるロウ材としては、例えばAgを含有するロウ材、Pbを含有するロウ材、Snを含有するロウ材またはAlを含有するロウ材が挙げられる
【0070】
本発明の一実施形態において、熱電変換モジュールは、電極を介して複数の熱電変換層が電気的に接続されたものであってもよく、このような熱電変換モジュールとしては、例えば、図3の熱電変換モジュールが挙げられる。
図3に示す熱電変換モジュール5-cには、キャリアがホールであるp型の熱電変換材料を用いたp型熱電変換層3-aと拡散防止層2-aとを備えるp型熱電変換モジュール用部材1-aと、キャリアが電子であるn型の熱電変換材料を用いたn型熱電変換層3-bと拡散防止層2-bとを備えるn型熱電変換モジュール用部材1-bとが、高温側電極4-aを介してπ型に並べられたものである。図3の熱電変換モジュール5-cの高温側電極4-a側を加熱すると、温度差により低温側電極4-bが低温側電極4-b′よりも高電位となる。このとき、低温側電極4-bと低温側電極4-b′との間に外部負荷6を配線7と配線8により電気的に接続することにより、配線8から外部負荷6を介して配線7の方向に電流が流れることとなる。
【0071】
<熱電変換モジュール用部材の製造方法>
本発明の熱電変換モジュール用部材の製造方法は、
熱電変換層と、前記熱電変換層に接する拡散防止層とを備える熱電変換モジュール用部材の製造方法であって、
成形型に下記材料(1)及び下記材料(2)のうちの一方又はその焼結体を配置することにより、第一の層を形成する第一の工程と、
前記成形型に前記材料(1)及び前記材料(2)のうちの他方又はその焼結体を、前記第一の工程で形成された第一の層と接するように配置することにより、第二の層を形成し、積層体を得る第二の工程と、
第二の工程で得られた積層体を焼結することにより、前記熱電変換モジュール用部材を得る焼結工程と
を有する、前記熱電変換モジュール用部材の製造方法である。
材料(1):ケイ素元素またはテルル元素を有する熱電変換材料
材料(2):金属および前記材料(1)と同一の熱電変換材料を前記金属100重量部に対して前記熱電変換材料10~50重量部の割合で含有する組成物
【0072】
材料(1)は、すでに説明した上述の熱電変換モジュール用部材が備える熱電変換層中のケイ素元素またはテルル元素を有する熱電変換材料と同様である。
【0073】
材料(1)において、前記熱電変換材料の平均粒径は、100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましい。平均粒径が上記範囲である熱電変換材料を有する熱電変換層は、熱伝導率が低減し、該熱電変換層を備える熱電変換モジュールの熱電変換効率が向上する。
材料(1)において、熱電変換材料は、一種単独で含まれていても二種以上含まれていてもよい。
【0074】
材料(2)は、金属および前記材料(1)と同一の熱電変換材料を前記金属100重量部に対して前記熱電変換材料10~50重量部、好ましくは11~45重量部、より好ましくは25~45重量部、更に好ましくは35~43重量部の割合で含有する組成物である。
【0075】
材料(2)の金属は、すでに説明した上述の熱電変換モジュール用部材が備える拡散防止層に含まれる金属と同様である。
【0076】
材料(2)において、前記金属は粒子状であることが好ましい。該金属の粒子径は、特に制限されないが、200μm以下であることが好ましく、150μm以下であることがより好ましい。材料(2)は、金属粒子を用いることで、海状の材料(1)の領域と、島状の金属の領域とを有する相分離構造である前記海島状相分離構造を形成しやすくなる。このような材料(2)を用いる製造方法により得られる熱電変換モジュール用部材は、熱電変換層と拡散防止層との間の接合性が向上する。
材料(2)において、熱電変換材料及び金属は、各々、一種単独で含まれていても二種以上含まれていてもよい。
【0077】
材料(2)において、材料(1)の熱電変換材料の粒子径は、材料(2)が前記海島状相分離構造を形成しやすくなる観点から、100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましい。このような材料(2)を用いる製造方法により得られる熱電変換モジュール用部材は、熱電変換層と拡散防止層との間の接合性が向上する。
【0078】
材料(2)において、前記熱電変換材料の量は、熱電変換モジュール用部材の耐熱性の観点から、前記金属100重量部に対して、11~45重量部であることが好ましく、15重量部~45重量部であることがより好ましく、25重量部~45重量部であることが特に好ましい。前記金属と前記熱電変換材料の割合がこの範囲である材料(2)を用いる製造方法により得られる熱電変換モジュール用部材は、熱電変換層と拡散防止層との接合性が向上する。
【0079】
材料(2)において、前記金属および前記材料(1)を均一に混合する場合、その方法としては、特に限定はされないが、ボールミルを用いる方法が挙げられる。ボールミルで粉砕することにより、均一な組成物が得られるとともに、各成分を所望の粒子径に調整することができる。
【0080】
焼結体とは、焼結処理によって得られる成形体である。
【0081】
焼結処理としては、特に限定はされないが、ホットプレス焼結法、放電プラズマ焼結法などの処理方法が挙げられる。ホットプレス焼結法としては、高周波ホットプレスが好ましく、放電プラズマ焼結法としては、処理対象物に電流を印加して内部加熱により焼結する放電プラズマ焼結法が好ましい。高密度の焼結体を得られる観点から、ホットプレス焼結法が好ましい。前記ホットプレス焼結法または放電プラズマ焼結法において、加圧する場合、印加圧力としては30MPa以上であることが好ましい。焼結温度としては、絶対温度で材料(1)の融点の2/3以上の温度で実施することが好ましい。焼結時間は、特に制限されないが、5分以上であることが好ましい。
このような焼結方法により高密度の焼結体が得られ、この焼結体を用いて製造される熱電変換モジュール用部材は、拡散防止層と熱電変換層との接合性が向上する。
【0082】
成形型としては、特に制限はないが、カーボン製の放電プラズマ焼結用のダイおよびパンチ、あるいは金型等が挙げられる。
【0083】
本発明の熱電変換モジュール用部材の製造方法としては、例えば、下記製造方法(a-1)~(a-4)であってもよい。
製造方法(a-1):成形型に前記材料(1)及び前記材料(2)のうちの一方の粉末を配置することにより、第一の層を形成する第一の工程と、
前記成形型に前記材料(1)及び前記材料(2)のうちの他方の焼結体を、前記第一の工程で形成された第一の層と接するように配置することにより、第二の層を形成し、積層体を得る第二の工程と、
第二の工程で得られた積層体を焼結することにより、前記熱電変換モジュール用部材を得る焼結工程と、を有する熱電変換モジュール用部材の製造方法。
【0084】
製造方法(a-2):成形型に前記材料(1)及び前記材料(2)のうちの一方の焼結体を配置することにより、第一の層を形成する第一の工程と、
前記成形型に前記材料(1)及び前記材料(2)のうちの他方の粉末を、前記第一の工程で形成された第一の層と接するように配置することにより、第二の層を形成し、積層体を得る第二の工程と、
第二の工程で得られた積層体を焼結することにより、前記熱電変換モジュール用部材を得る焼結工程と、を有する熱電変換モジュール用部材の製造方法。
【0085】
製造方法(a-3):成形型に前記材料(1)及び前記材料(2)のうちの一方の粉末を配置することにより、第一の層を形成する第一の工程と、
前記成形型に前記材料(1)及び前記材料(2)のうちの他方の粉末を、前記第一の工程で形成された第一の層と接するように配置することにより、第二の層を形成し、積層体を得る第二の工程と、
第二の工程で得られた積層体を焼結することにより、前記熱電変換モジュール用部材を得る焼結工程と、を有する熱電変換モジュール用部材の製造方法。
【0086】
製造方法(a-4):成形型に前記材料(1)及び前記材料(2)のうちの一方の焼結体を配置することにより、第一の層を形成する第一の工程と、
前記成形型に前記材料(1)及び前記材料(2)のうちの他方の焼結体を、前記第一の工程で形成された第一の層と接するように配置することにより、第二の層を形成し、積層体を得る第二の工程と、
第二の工程で得られた積層体を焼結することにより、前記熱電変換モジュール用部材を得る焼結工程と、を有する熱電変換モジュール用部材の製造方法。
【0087】
本発明の熱電変換モジュール用部材の製造方法は、第二の工程において、更に、前記材料(1)及び前記材料(2)のうち、前記第一の層と同一の材料又はその焼結体を、前記第一の層の反対側(即ち、第一の層から見て第二の層を挟んで反対側)に、前記第二の工程で得られた積層体の前記第二の層と接するように配置することにより第三の層を形成し、積層体を得ることを含む製造方法であってもよい。
【0088】
本発明の熱電変換モジュール用部材の製造方法としては、例えば、下記製造方法(b-1)~(b-8)であってもよい。
製造方法(b-1):成形型に前記材料(1)及び前記材料(2)のうちの一方の粉末を配置することにより、第一の層を形成する第一の工程と、
前記成形型に前記材料(1)及び前記材料(2)のうちの他方の粉末を、前記第一の工程で形成された第一の層と接するように配置することにより、第二の層を形成し、積層体を得る第二の工程と、
前記成形型に前記材料(1)または前記材料(2)の粉末を、前記第二の工程で得られた積層体の前記第二の層と接するように配置することにより第三の層を形成し、積層体を得る第三の工程と、
第三の工程で得られた積層体を焼結することにより、前記熱電変換モジュール用部材を得る焼結工程と、を有する熱電変換モジュール用部材の製造方法。
製造方法(b-2):成形型に前記材料(1)及び前記材料(2)のうちの一方の焼結体を配置することにより、第一の層を形成する第一の工程と、
前記成形型に前記材料(1)及び前記材料(2)のうちの他方の粉末を、前記第一の工程で形成された第一の層と接するように配置することにより、第二の層を形成し、積層体を得る第二の工程と、
前記成形型に前記材料(1)または前記材料(2)の粉末を、前記第二の工程で得られた積層体の前記第二の層と接するように配置することにより第三の層を形成し、積層体を得る第三の工程と、
第三の工程で得られた積層体を焼結することにより、前記熱電変換モジュール用部材を得る焼結工程と、を有する熱電変換モジュール用部材の製造方法。
製造方法(b-3):成形型に前記材料(1)及び前記材料(2)のうちの一方の粉末を配置することにより、第一の層を形成する第一の工程と、
前記成形型に前記材料(1)及び前記材料(2)のうちの他方の焼結体を、前記第一の工程で形成された第一の層と接するように配置することにより、第二の層を形成し、積層体を得る第二の工程と、
前記成形型に前記材料(1)または前記材料(2)の粉末を、前記第二の工程で得られた積層体の前記第二の層と接するように配置することにより第三の層を形成し、積層体を得る第三の工程と、
第三の工程で得られた積層体を焼結することにより、前記熱電変換モジュール用部材を得る焼結工程と、を有する熱電変換モジュール用部材の製造方法。
製造方法(b-4):成形型に前記材料(1)及び前記材料(2)のうちの一方の粉末を配置することにより、第一の層を形成する第一の工程と、
前記成形型に前記材料(1)及び前記材料(2)のうちの他方の粉末を、前記第一の工程で形成された第一の層と接するように配置することにより、第二の層を形成し、積層体を得る第二の工程と、
前記成形型に前記材料(1)または前記材料(2)の焼結体を、前記第二の工程で得られた積層体の前記第二の層と接するように配置することにより第三の層を形成し、積層体を得る第三の工程と、
第三の工程で得られた積層体を焼結することにより、前記熱電変換モジュール用部材を得る焼結工程と、を有する熱電変換モジュール用部材の製造方法。
製造方法(b-5):成形型に前記材料(1)及び前記材料(2)のうちの一方の焼結体を配置することにより、第一の層を形成する第一の工程と、
前記成形型に前記材料(1)及び前記材料(2)のうちの他方の焼結体を、前記第一の工程で形成された第一の層と接するように配置することにより、第二の層を形成し、積層体を得る第二の工程と、
前記成形型に前記材料(1)または前記材料(2)の粉末を、前記第二の工程で得られた積層体の前記第二の層と接するように配置することにより第三の層を形成し、積層体を得る第三の工程と、
第三の工程で得られた積層体を焼結することにより、前記熱電変換モジュール用部材を得る焼結工程と、を有する熱電変換モジュール用部材の製造方法。
製造方法(b-6):成形型に前記材料(1)及び前記材料(2)のうちの一方の焼結体を配置することにより、第一の層を形成する第一の工程と、
前記成形型に前記材料(1)及び前記材料(2)のうちの他方の粉末を、前記第一の工程で形成された第一の層と接するように配置することにより、第二の層を形成し、積層体を得る第二の工程と、
前記成形型に前記材料(1)または前記材料(2)の焼結体を、前記第二の工程で得られた積層体の前記第二の層と接するように配置することにより第三の層を形成し、積層体を得る第三の工程と、
第三の工程で得られた積層体を焼結することにより、前記熱電変換モジュール用部材を得る焼結工程と、を有する熱電変換モジュール用部材の製造方法。
製造方法(b-7):成形型に前記材料(1)及び前記材料(2)のうちの一方の粉末を配置することにより、第一の層を形成する第一の工程と、
前記成形型に前記材料(1)及び前記材料(2)のうちの他方の焼結体を、前記第一の工程で形成された第一の層と接するように配置することにより、第二の層を形成し、積層体を得る第二の工程と、
前記成形型に前記材料(1)または前記材料(2)の焼結体を、前記第二の工程で得られた積層体の前記第二の層と接するように配置することにより第三の層を形成し、積層体を得る第三の工程と、
第三の工程で得られた積層体を焼結することにより、前記熱電変換モジュール用部材を得る焼結工程と、を有する熱電変換モジュール用部材の製造方法。
製造方法(b-8):成形型に前記材料(1)及び前記材料(2)のうちの一方の焼結体を配置することにより、第一の層を形成する第一の工程と、
前記成形型に前記材料(1)及び前記材料(2)のうちの他方の焼結体を、前記第一の工程で形成された第一の層と接するように配置することにより、第二の層を形成し、積層体を得る第二の工程と、
前記成形型に前記材料(1)または前記材料(2)の焼結体を、前記第二の工程で得られた積層体の前記第二の層と接するように配置することにより第三の層を形成し、積層体を得る第三の工程と、
第三の工程で得られた積層体を焼結することにより、前記熱電変換モジュール用部材を得る焼結工程と、を有する熱電変換モジュール用部材の製造方法。
【0089】
本発明の熱電変換モジュール用部材の製造方法としては、前記熱電変換層と前記拡散防止層との接合性の観点から、前記第一の工程と第二の工程とからなる前記熱電変換モジュール用部材の製造方法において、前記製造方法(a-1)~(a-3)、(b-1)~(b-4)または(b-6)が好ましく、前記製造方法(b-1)がより好ましい。
上述の製造方法において、第一の工程及び/又は第二の工程で成形型中に配置された粉末は、その工程中に焼結処理してもよい。
本発明の熱電変換モジュール用部材の製造方法において、第一の層が拡散防止層であり、第二の層が熱電変換層であることが好ましく、第一の層が拡散防止層であり、第二の層が熱電変換層であり、第三の層が拡散防止層であることがより好ましい。
本発明の熱電変換モジュール用部材の製造方法は、第一の工程及び/又は第二の工程の前後にその他の工程を有していてもよい。
【実施例
【0090】
以下に本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0091】
<材料(1)の作製>
[材料1-1]
純度99.9%以上の原料元素(Ge、Te、Cu、Bi)、(Ge;フルウチ化学製、TeとBi;大阪アサヒメタル製、Cu;高純度化学製)を組成式Ge0.95Bi0.05Cu0.03Teとなるように所定の組成比で混合し、石英管中で真空封管(2×10-4Pa)し、電気炉内(950℃×5時間)で溶融した後、水で急冷した。得られた試料をメノウ乳鉢で粉砕し、多結晶体の粉末状のGe0.95Bi0.05Cu0.03Teを材料1-1として得た。
【0092】
[材料1-2]
豊島製作所製のMnSi1.73をメノウ乳鉢で粉砕し、粉末状のMnSi1.73を材料1-2として得た。
【0093】
<材料(2)の作製>
[材料2-1]
金属Ni粉(フルウチ化学製、純度99.9%以上、-100mesh)を材料2-1とした。即ち、材料2-1は、材料(1):金属Ni=0:100(重量基準)である。
【0094】
[材料2-2]
材料1-1(0.10g)に、金属Ni粉(1.90g、フルウチ化学製、純度99.9%以上、-100mesh)を混合し材料2-2を得た。即ち、材料2-2は、材料(1):金属Ni=5:95(重量基準)である。
【0095】
[材料2-3]
材料1-1(0.16g)に、金属Ni粉(1.44g、フルウチ化学製、純度99.9%以上、-100mesh)を混合し材料2-3を得た。即ち、材料2-3は、材料(1):金属Ni=10:90(重量基準)である。
【0096】
[材料2-4]
材料1-1(0.45g)に、金属Ni粉(1.05g、フルウチ化学製、純度99.9%以上、-100mesh)を混合し材料2-4を得た。即ち、材料2-4は、材料(1):金属Ni=30:70(重量基準)である。
【0097】
[材料2-5]
材料1-1(1.74g)に、金属Ni粉(1.74g、フルウチ化学製、純度99.9%以上、-100mesh)を混合し材料2-5を得た。即ち、材料2-5は、材料(1):金属Ni=50:50(重量基準)である。
【0098】
[材料2-6]
材料1-2(0.10g)に、金属Ni粉(0.90g、フルウチ化学製、純度99.9%以上、-100mesh)を混合し材料2-6を得た。即ち、材料2-6は、材料(1):金属Ni=10:90(重量基準)である。
【0099】
<熱電変換モジュール用部材の作製>
参考例1
放電プラズマ焼結用のカーボン製のダイの中にカーボン製のパンチを入れ、材料2-3を0.3g充填し、材料1-1を2.5g充填し、材料2-3を0.3g充填した後、カーボン製のパンチで蓋をした。下記条件で放電プラズマ焼結にて焼結処理し、熱電変換モジュール用部材を得た。
装置:ドクターシンターラボSPS-511S(富士電波工機社製)
ダイ:カーボン製ダイ内径10mmφ
雰囲気:アルゴン0.05MPa
印加圧力:40MPa
加熱温度:550℃
保持時間:10分間
【0100】
[実施例2]
放電プラズマ焼結用のカーボン製のダイの中にカーボン製のパンチを入れ、材料2-4を0.3g充填し、材料1-1を2.5g充填し、材料2-4を0.3g充填した後、カーボン製のパンチで蓋をした。放電プラズマ焼結にて焼結処理し、熱電変換モジュール用部材を得た。放電プラズマ焼結は、参考例1と同様の条件でおこなった。
【0101】
[参考例2]
放電プラズマ焼結用のカーボン製のダイの中にカーボン製のパンチを入れ、材料2-6を0.3g充填し、材料1-2を1.1g充填し、材料2-6を0.3g充填した後、カーボン製のパンチで蓋をした。放電プラズマ焼結にて焼結処理し、熱電変換モジュール用部材を得た。放電プラズマ焼結は、加熱温度を800℃とした以外は参考例1と同様の条件でおこなった。
【0102】
[比較例1]
放電プラズマ焼結用のカーボン製のダイの中にカーボン製のパンチを入れ、材料2-1を0.3g充填し、材料1-1を2.5g充填し、材料2-1を0.3g充填した後、カーボン製のパンチで蓋をした。放電プラズマ焼結にて焼結処理し、熱電変換モジュール用部材を得た。放電プラズマ焼結は、参考例1と同様の条件でおこなった。
【0103】
[比較例2]
放電プラズマ焼結用のカーボン製のダイの中にカーボン製のパンチを入れ、材料2-2を0.3g充填し、材料1-1を2.5g充填し、材料2-2を0.3g充填した後、カーボン製のパンチで蓋をした。放電プラズマ焼結にて焼結処理し、熱電変換モジュール用部材を得た。放電プラズマ焼結は、参考例1と同様の条件でおこなった。
【0104】
[比較例3]
放電プラズマ焼結用のカーボン製のダイの中にカーボン製のパンチを入れ、材料2-5を0.3g充填し、材料(1-1)を2.5g充填し、材料2-5を0.3g充填した後、カーボン製のパンチで蓋をした。放電プラズマ焼結にて焼結処理し、熱電変換モジュール用部材を得た。放電プラズマ焼結は、参考例1と同様の条件でおこなった。
【0105】
[比較例4]
参考例1において、材料2-3を充填しなかった以外は、参考例1と同様にして、熱電変換モジュール用部材を得た。
【0106】
実施例2、参考例1及び参考例2、比較例1~4で作製した各熱電変換モジュール用部材について、熱電変換層と拡散防止層との間の剥離の有無を目視で観察した。剥離が認められない場合、接合性が優れていると評価し、剥離が認められた場合、接合性が劣ると評価した。
【0107】
<耐熱性評価>
実施例2、参考例1及び参考例2、比較例4で作製した各熱電変換モジュール用部材の初期抵抗率ρ(0)測定した。抵抗率測定は、以下の方法で実施した。拡散防止層を底面として、高さ、幅、奥行きの長さがそれぞれ、高さ5~6mm、幅1~3mm、奥行き1~3mmの範囲内となるように直方体状に切り出した熱電変換モジュール用部材について、高さ方向の抵抗値を2端子法で測定した。端子には銅板を用い、In-Ga半田にて端子と該熱電変換モジュール用部材とを電気的に接続した。得られた抵抗値から、熱電変換モジュール用部材の初期抵抗率ρ(0)を算出した。次に、In-Ga半田をセラミックス板に均一に塗布し、その上に直方体状の熱電変換モジュール用部材を拡散防止層が底面となるようにして置くことによりサンプルを作製した。このサンプルを500℃に熱したオーブンに入れ、12時間が経過した後にサンプルを取り出し、セラミックス板から熱電変換モジュール用部材を取り外して、熱電変換モジュール用部材の抵抗率(12h)を上記と同様の方法で測定した。ここで、初期抵抗率ρ(0)と抵抗率ρ(12h)との比が小さいほど、熱電変換モジュール用部材の耐熱性が高いと評価できる。得られた結果を表1に示す。Inは高純度化学社製の純度99.999%の試薬(型番:INE13GB)を用い、Gaは高純度化学社製の純度99.9999%の試薬(型番:GAE14PB)を用い、InとGaの重量比率が25:75となるように秤量してホットプレートで加熱しながら攪拌することで均一なIn-Ga半田を得た。
【0108】
[表1]
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明の熱電変換モジュール用部材は、例えば、自動車、船舶、トラック、バスなどの移動体のエンジン用の排熱発電のための熱電変換発電装置の部材;鉄鋼、非鉄金属、鋳物、化学製品などの製造工場、発電所や焼却場の排熱発電のための熱電変換発電装置の部材として用いることができる。更に、本発明の熱電変換モジュール用部材は、地熱や太陽熱などの自然発生熱源からの発電用途、燃料の燃焼熱からの発電用途などの種々の分野に応用することができる。
【符号の説明】
【0110】
1:熱電変換モジュール用部材(a)
1-a:p型熱電変換モジュール用部材
1-b:n型熱電変換モジュール用部材
2、2-a、2-b:拡散防止層
3:熱電変換層
3-a:p型熱電変換層
3-b:n型熱電変換層
4-a:高温側電極
4-b、4-b′:低温側電極
5-b、5-c:熱電変換モジュール
6:外部負荷
7、8:配線
図1
図2
図3