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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-18
(45)【発行日】2023-07-26
(54)【発明の名称】影響力評価システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/00 20230101AFI20230719BHJP
【FI】
G06Q10/00
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022030948
(22)【出願日】2022-03-01
(62)【分割の表示】P 2019119796の分割
【原出願日】2019-06-27
(65)【公開番号】P2022071073
(43)【公開日】2022-05-13
【審査請求日】2022-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】504202472
【氏名又は名称】大学共同利用機関法人情報・システム研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100205084
【弁理士】
【氏名又は名称】吉浦 洋一
(72)【発明者】
【氏名】水野 貴之
(72)【発明者】
【氏名】土井 翔平
【審査官】宮地 匡人
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-194863(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0330357(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第109428928(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105653689(CN,A)
【文献】Diamandis Theo,Ranking causal influence of financial markets via directed information graphs,2018 52nd Annual Conference on Information Sciences and Systems (CISS),2018年,pp.1-6
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
実体を示すラベルがノードに,前記実体が有する影響力の方向がエッジに,前記実体がほかの実体に対して有する影響力を示す情報を影響力情報とするネットワーク情報において,あるノードの上位のノードを前記エッジを用いて特定し,前記上位のノードを有するノードにおけるラベルについて,前記影響力情報を用いて更新するラベルを特定する更新ラベル特定処理部と,
前記特定したラベルでそのノードを更新するラベル更新処理部と,
前記更新したラベルを用いて影響力を示す指数を算出する指数算出処理部と,
を有することを特徴とする影響力評価システム。
【請求項2】
コンピュータを,
実体を示すラベルがノードに付され,前記実体が有する影響力の方向がエッジで付され,前記実体がほかの実体に対して有する影響力を示す情報を影響力情報とするネットワーク情報において,あるノードの上位のノードを前記エッジを用いて特定し,上位のノードを有するノードにおけるラベルについて,前記影響力情報を用いて更新するラベルを特定する更新ラベル特定処理部,
前記特定したラベルでそのノードを更新するラベル更新処理部,
前記更新したラベルを用いて影響力を示す指数を算出する指数算出処理部,
として機能させることを特徴とする影響力評価プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,会社や人などの実体(entity)が,ほかの実体に対して与える影響力を評価する影響力評価システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ある会社や人物が,第三者に対してどのような影響力を有しているかを数値化して評価することが検討されている。
【0003】
第三者に対する影響力を示す指標の一つとして株式の保有関係がある。会社や人物は,保有する株式の議決権を株主総会で行使することにより,当該株式会社の意思決定に影響を及ぼすことができる。そしてある会社や人物などの実体(entity)が,ほかの実体に対して有する影響力を評価する代表的な手法として,下記非特許文献1の「Shapley-Shubik power index」が知られている。
【0004】
非特許文献1の評価手法は,実体同士の直接の影響力を示す指標,たとえば株式の保有関係に基づく影響力を示す指標として用いられている。これを模式的に示すのが図17である。図17では,A社乃至D社の株式の保有関係とそれに基づく非特許文献1による影響力の指標値を示している。図17(a)では,B社およびC社はA社の株式を30%ずつ,D社はA社の株式を40%保有していることを示している。株式会社の株主総会における通常の意思決定は普通決議で行われる。そして,日本の場合,株式会社における株主総会で普通決議が成立するのは,定款で別段の定めがある場合を除いて,議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し,出席した当該株主の議決権の過半数の賛成があった議案である。議決権を行使できる株主がすべて出席した場合であっても,単独で,議決権を行使できる株式の過半数を保有していれば,その会社の意思決定に対して実質的な影響力を及ぼすことができるといえる。
【0005】
図17(a)では,B社乃至D社は,いずれも単独では過半数の株式を保有していない。また,A社の株式の過半数となる組み合わせは,どの組み合わせでも他社と手を組めば成立する。そうすると,A社に対する影響力について,B社乃至D社は均等であり,いずれも1/3ずつとして評価できる。これを模式的に示すのが図17(b)である。なお,PIは影響力の指数である。影響力の指数の関係を式として示すのが図17(c)である。
【0006】
このように,非特許文献1の評価手法では,二者の実体の直接的な関係のみについて影響力を評価する手法である。また非特許文献2乃至非特許文献4でも非特許文献1と同様に,直接的な関係のみについての影響力の指数について考察がなされているに過ぎない。
【0007】
なお,非特許文献1乃至非特許文献4のいずれにおいても,株主総会における議決権行使の有無は事前にはわからないことが一般であるため,議決権を行使できる株主は全員出席し,議決権を行使する前提で,実体に対する影響力を算出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2011-8375号公報
【非特許文献】
【0009】
【文献】Shapley, Shubik,”Shapley-Shubik power index”,American Political Science Review, 48, p.787-792, 1954
【文献】Manfred J. Holler, Hannu Nurmi , ”Power, Voting,and Voting Power:30 Years After”,Springer Link,2013
【文献】J.M.Gallardo, N. Jimenes, A. Jimenez-Losada,”A Shapley measure of power in hierarchies”,ELSEVIER Inc., 2016
【文献】Norkhairul Hafiz Bajuri, Shanti Chakravarty, Noor Hazarina Hashim,”ANALYSIS OF CORPORATE CONTROL: CAN THE VOTING POWER INDEX OUTSHINE SHAREHOLDING SIZE?”,AAMJAF, Vol.10, No.1, p75-94,2014
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし,現実社会では,親会社,子会社,孫会社のような支配関係があり,ほかの会社などの実体への影響力が及ぶ構造は,より複雑である。たとえば図18に示すように,会社間の株式の保有関係をはじめとして,実体同士の関係について,複数の階層があったり,株式の持ち合いのような循環関係を有する場合もある。図18の場合,A社に対しては,B社乃至D社が直接的に株式を保有して影響力があると評価できるが,C社についてはさらにB社とE社とが株式を保有している。そしてB社がC社の80%の株式を保有し,E社が20%の株式を保有している場合,B社がC社の過半数の株式を保有していることから,C社にはB社のみが影響力を及ぼすことができる。そうすると,A社に対しては,B社が直接保有する30%の株式と,B社が影響力を行使しうるC社を介して保有する30%の株式とで過半数となるので,実質的にはB社のみがA社に対して影響力を行使しうる状態となる。
【0011】
このように,階層構造や循環関係がある場合には,従来の非特許文献1乃至非特許文献4の評価手法で評価することはできなかった。
【0012】
また,特許文献1は,経営上の問題などについて原因分析を行うシステムであって,実体同士の影響力を評価するシステムではない。
【課題を解決するための手段】
【0013】
そこで本発明者らは,上記課題に鑑み,実体同士の関係が複雑な場合,たとえば複数の階層や循環関係を有する場合であっても,実体がほかの実体に対して有する影響力を指数化することのできる影響力評価システムを発明した。
【0014】
第1の発明は,実体を示すラベルがノードに,前記実体が有する影響力の方向がエッジに,前記実体がほかの実体に対して有する影響力を示す情報を影響力情報とするネットワーク情報において,あるノードの上位のノードを前記エッジを用いて特定し,前記上位のノードを有するノードにおけるラベルについて,前記影響力情報を用いて更新するラベルを特定する更新ラベル特定処理部と,前記特定したラベルでそのノードを更新するラベル更新処理部と,前記更新したラベルを用いて影響力を示す指数を算出する指数算出処理部と,を有する影響力評価システムである。
【0015】
本発明を用いることで,実体同士の関係が複雑な場合,たとえば複数の階層や循環関係を有する場合であっても,ほかの実体への影響力を指数化することができる。
【0016】
第1の発明は,本発明のプログラムをコンピュータに読み込ませて実行することで実現することができる。すなわち,コンピュータを,実体を示すラベルがノードに付され,前記実体が有する影響力の方向がエッジで付され,前記実体がほかの実体に対して有する影響力を示す情報を影響力情報とするネットワーク情報において,あるノードの上位のノードを前記エッジを用いて特定し,上位のノードを有するノードにおけるラベルについて,前記影響力情報を用いて更新するラベルを特定する更新ラベル特定処理部,前記特定したラベルでそのノードを更新するラベル更新処理部,前記更新したラベルを用いて影響力を示す指数を算出する指数算出処理部,として機能させる影響力評価プログラムのように構成することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の影響力評価システムを用いることによって,実体同士の関係が複雑な場合であっても,実体が有するほかの実体への影響力を指数化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の影響力評価システムのシステム構成を示すブロック図の一例である。
図2】本発明の影響力評価システムを実現するコンピュータのハードウェア構成の一例を示す図である。
図3】本発明の影響力評価システムの全体の処理プロセスの一例を示すフローチャートである。
図4】本発明の影響力評価システムのノードにおける更新ラベルの特定処理の処理プロセスの一例を示すフローチャートである。
図5】実体同士の影響力の関係性が表現されたネットワーク情報の一例を模式的に示す図である。
図6】各ノードのラベルに乱数を付与した状態のネットワーク情報の一例を模式的に示す図である。
図7】更新するラベルを特定する状態のネットワーク情報の一例を模式的に示す図である。
図8】ノードのラベルを更新した状態のネットワーク情報の一例を模式的に示す図である。
図9】ネットワーク影響力指数の算出処理の一例を模式的に示す図である。
図10】実施例1において,各ノードのラベルに乱数を付与した状態のネットワーク情報の一例を模式的に示す図である。
図11】実施例1において,ノードのラベルを更新した状態のネットワーク情報の一例を模式的に示す図である。
図12】実施例2において,ネットワーク情報として,自社株Eを新たな実体として追加してネットワーク情報を補正する処理の一例を模式的に示す図である。
図13】実施例2において,ネットワーク情報として,自社株Eを控除してネットワーク情報を補正する処理の一例を模式的に示す図である。
図14】実施例3において,重み付けを用いる場合の一例を模式的に示す図である。
図15】実施例5において,初期状態(売買前)のネットワーク情報の一例を模式的に示す図である。
図16】実施例5において,売買後のネットワーク情報の一例を模式的に示す図である。
図17】従来の影響力を評価する手法である,「Shapley-Shubik power index」に基づく指標値の算出を模式的に示す図である。
図18】実際のモデルにおいて,意思決定への影響力が及ぶ構造の一例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の影響力評価システム1では,実体同士の関係性をネットワーク化し,それを数値計算するためにラベル伝搬法を用いてその処理を実行する。
【0020】
本明細書の以下の説明においては,実体同士の関係性を,株式の保有関係としてネットワーク化し,そのネットワークにおいて,ある実体がほかの実体へ有する影響力の評価を行う場合を説明する。この場合の実体としては会社および/または自然人が代表的な例となるが,それらに限らず,実体とは,自然人,会社,人の集合体である団体や組織,ファンド,組合など,ほかの実体の意思決定などに対して関与できる主体を構成できるものであればいかなるものであってもよい。
【0021】
コンピュータはプログラムの演算処理を実行するCPUなどの演算装置70と,情報を記憶するRAMやハードディスクなどの記憶装置71と,ディスプレイなどの表示装置72と,情報の入力を行う入力装置73と,演算装置70の処理結果や記憶装置71に記憶する情報などの各種情報を通信する通信装置74とを有している。なお,コンピュータがタッチパネルディスプレイを備えている場合には表示装置72と入力装置73とが一体的に構成されていてもよい。タッチパネルディスプレイは,携帯電話やスマートフォン,タブレット型コンピュータなどの可搬型通信端末などで利用されることが多いが,それに限定するものではない。
【0022】
タッチパネルディスプレイは,そのディスプレイ上で,直接,所定の入力デバイス(タッチパネル用のペンなど)や指などによって入力を行える点で,表示装置72と入力装置73の機能が一体化した装置である。
【0023】
影響力評価システム1は一台のコンピュータによって実現されていてもよいが,その機能が複数のコンピュータによって実現されていてもよい。この場合のコンピュータとして,たとえばクラウドサーバであってもよい。
【0024】
さらに,本発明の影響力評価システム1における各処理部は,その機能が論理的に区別されているのみであって,物理上あるいは事実上は同一の領域を為していても良い。
【0025】
影響力評価システム1は,ネットワーク情報入力受付処理部10とネットワーク情報記憶部11と更新ラベル特定処理部12とラベル更新処理部13と指数算出処理部14とを有する。
【0026】
ネットワーク情報入力受付処理部10は,本発明を用いて影響力の評価を行いたい実体同士の影響力の関係性が表現されたネットワーク構造に関する情報(ネットワーク情報)の入力を受け付ける。実体同士の影響力の関係性は,図5(a)に示すように,実体をノード(節点),その関係性をエッジ(枝)として表現し,このエッジは影響力を有する方向に有向グラフで表現される。株式の保有関係による影響力を示す場合には,会社や自然人がノードとなり,株主であるノードからその保有する株式の発行会社のノードに有向グラフがエッジとして付される。またほかの実体への影響力を示す情報(影響力情報)として,株式の保有比率がエッジに対応づけられる。図5(a)の例は,株式の保有関係をネットワーク構造で示しており,A社の株式をB社およびC社が30%ずつ,E社が40%保有しており,C社の株式をB社が50%,D社が50%保有していることを示している。なお影響力としては,ほかの実体に対するさまざまな影響力があり,リスクによる影響力なども含まれる。
【0027】
これをネットワーク情報として,具現化した一例を模式的に示す図が図5(b)である。図5(b)では,それぞれのノードにN1,N2のようにノードの識別情報(ノード識別情報)が付され,そのノードにある会社や自然人などの実体の識別情報(ラベル)がノード識別情報の値(数値のほか英数字,記号なども含まれる)として代入される。また,それぞれのエッジはE(X,Y)のように表現され,Xが始点となるノード,Yが終点となるノードで示している。また株式の保有比率がこれらのエッジの値として代入される。なお,ネットワーク構造を表現する方法はこれに限定するものではなく,他の方法によるものであってもよい。図5(b)の場合,各ノードについて,N1=A,N2=E,N3=B,N4=C,N5=Dであり,E(N2,N1)=40%,E(N3,N1)=30%,E(N4,N1)=30%,E(N3,N4)=50%,E(N5,N4)=50%となる。
【0028】
ネットワーク情報入力受付処理部10は,初期状態のネットワーク情報の入力を受け付け,初期状態のネットワーク情報を,後述するネットワーク情報記憶部11に記憶させる。なお,ネットワーク情報は,図5などで示すネットワーク構造を,適宜,コンピュータでの処理に具現化した状態であればよい。
【0029】
ネットワーク情報記憶部11は,ネットワーク情報入力受付処理部10で入力を受け付けたネットワーク情報を記憶する。ネットワーク情報としては,初期状態のネットワーク情報として,ノードとその値(ラベル),エッジとそのノード間の影響力情報,たとえば株式の保有比率などを対応づけて記憶している。またノードとそのラベルの値は,履歴として対応づけて記憶している。
【0030】
更新ラベル特定処理部12は,各ノードにおいて,ラベル伝播法により,伝播するノードのラベルを特定する。これは,あるノードにおける実体に対して,当該ノードの直接的な上位のノードにおける実体のうち,どの実体が影響したかを特定するものである。実際は,どの実体が影響したかを,たとえば,ランダムサンプリングによって反復することで実行する。
【0031】
更新ラベル特定処理部12は,具体的には,以下のような処理を実行するが,伝播するラベルを特定できるのであれば,以下の処理に限定するものではない。
【0032】
あるノードと直接繋がる上位のノードのラベルに,乱数を付与する。そして上位ノードのラベルについて,付与した乱数に基づいて,昇順にソートをする。そして,ソートをしたラベルの順に,ノード間の影響力情報,たとえば株式の保有比率を加算する。この加算した値が所定の閾値,たとえば50%を超えると,その閾値を超えたラベルを,更新(伝播)するラベル(更新ラベル)として特定する。なお,乱数を昇順にソートせずとも,たとえば降順のソートでもよいし,あるいは他の方法であっても,後述する各ノードのラベルの影響力情報を加算する順序をランダムに特定できる方法であれば,如何なる方法であってもよい。また,ノード間の影響力情報は,ソートした順に加算するほか,あらかじめ定めた条件を充足する順番に,影響力情報を任意の演算方法によって演算することで,閾値を超えたラベルを特定してもよい。
【0033】
更新ラベル特定処理部12は,自らより上位のノードを有するすべてのノードについて,更新ラベルの特定処理を実行する。
【0034】
たとえばネットワーク情報が,図5であったとする。このとき,ノードN1のラベルAの上位にはノードN2のラベルE,ノードN3のラベルB,ノードN4のラベルCがあり,それぞれに,乱数として「0.52」,「0.63」,「0.17」が付与される。また,ほかに自らよりも上位のノードを有するノードは,ノードN4のラベルCである。そのため,ノードN4のラベルCの上位のノードN3のラベルB,ノードN5のラベルDに,それぞれ乱数として「0.58」,「0.21」を付与する。この状態を模式的に示すのが図6である。
【0035】
そしてノードAの上位ノードのラベルB,ラベルC,ラベルEについて,それぞれ付与された乱数に基づいて昇順にソートをし,ラベルC,ラベルE,ラベルBの順に並べる。また,ノードCの上位ノードのラベルB,ラベルDについて,同様に昇順にソートをすると,ラベルD,ラベルBの順に並べる。
【0036】
ラベルAの上位ノードのラベルB,ラベルC,ラベルEについて,順に影響力情報を加算をすると,ラベルCが30%,ラベルEが40%であることから,この時点で閾値50%を超えるので,ノードN1を更新するラベルとしてラベルEと特定する。また,ラベルCの上位ラベルB,ラベルDについて,順に影響力情報を加算をすると,ラベルDが50%,ラベルBが50%であることから,この時点で閾値50%を超えることので,ノードN4を更新するラベルとしてラベルBと特定する。これを模式的に示すのが図7である。
【0037】
ラベル更新処理部13は,更新ラベル特定処理部12で特定した更新ラベルで,それぞれのノードのラベルを更新する。
【0038】
更新ラベル特定処理部12で特定した更新ラベルが図7であったとすると,図8のように,ノードのラベルを更新する。そして更新ラベル特定処理部12は,更新したラベルを履歴として記憶する。すなわち,ノードN1についてラベルE,ノードN4についてラベルBに更新した履歴をネットワーク情報記憶部11に記憶させる。
【0039】
そしてこのネットワークの状態(図8の状態)において,再度,更新ラベル特定処理部12およびラベル更新処理部13における処理を実行する。このように,S110乃至S150の処理を,所定回数,たとえば1万回実行する。
【0040】
指数算出処理部14は,ネットワーク情報記憶部11に記憶した,ノードのラベルの履歴に基づいて,本発明によるネットワーク影響力指数(NPI)を算出する。図5のネットワークの場合,ノードN1,ノードN4に上位のノードがあることから,ノードN1,ノードN4においてネットワーク影響力指数(NPI)を算出する。たとえば,1万回の処理を実行した結果,ノードN1におけるラベルの履歴が図9(a),ノードN4におけるラベルの履歴が図9(b)であったとする。このとき,指数算出処理部14は,ネットワーク影響力指数として,NPI(B→C)=0.50,NPI(D→C)=0.50として算出する(有効桁数が下2桁のとき)。また,NPI(B→A)=0.67,NPI(D→A)=0.17,NPI(E→A)=0.16として算出する。これを示すのが図9(c)である。そして,これを実体ごとにネットワーク影響力指数を加算すると,実体A=0,実体B=1.17(=0.50+0.67),実体C=0,実体D=0.67(0.50+0.17),実体E=0.16として実体ごとのネットワーク影響力指数を算出することができる。これを示すのが図9(d)である。
【実施例1】
【0041】
つぎに本発明の影響力評価システム1の処理プロセスの一例を図3および図4のフローチャートを用いて説明する。本実施例においては,株式の保有関係による意思決定への影響力を評価する場合であり,また初期状態のネットワーク情報としては,図5であるとする。また影響力情報を加算した場合の閾値としては50%とする。
【0042】
オペレータは,処理対象とする図5に示す初期状態のネットワーク情報を入力し,それをネットワーク情報入力受付処理部10で受け付ける(S100)。ネットワーク情報入力受付処理部10は,受け付けた初期状態のネットワーク情報をネットワーク情報記憶部11に記憶させる。
【0043】
そして更新ラベル特定処理部12は,自らより上位のノードを有するすべてのノードについて,更新ラベルの特定処理を実行する(S110)。
【0044】
まず,更新ラベル特定処理部12は,ノードN1の上位のノードのノードN2のラベルE,ノードN3のラベルB,ノードN4のラベルCに対して,それぞれ乱数を発生させ,たとえば乱数として「0.52」,「0.63」,「0.17」を付与し,ノードN4の上位のノードN3のラベルB,ノードN5のラベルDに対して,それぞれ乱数を発生させ,たとえば乱数として「0.58」,「0.21」を付与する(S200)(図6)。
【0045】
つぎに更新ラベル特定処理部12は,ノードN1の上位ノードN2乃至N4のラベルB,ラベルC,ラベルEについて,それぞれ付与された乱数に基づいて昇順にソートをし(S210),ラベルC,ラベルE,ラベルBの順とする。また,ノードN4の上位ノードのラベルB,ラベルDについて,同様に昇順にソートをし(S210),ラベルD,ラベルBの順とする。
【0046】
そして,図7に示すように,ノードN1の上位ノードN2乃至N4のラベルB,ラベルC,ラベルEについて,ソートした順に影響力情報を加算をし(S220),ラベルEを加算した時点で閾値50%を超えるので,ノードN1の更新ラベルとしてラベルEを特定する(S230)。また,ノードN4の上位ノードN3およびN5のラベルB,ラベルDについて,ソートした順に影響力情報に基づいて加算をし(S220),ラベルBを加算した時点で閾値50%を超えるので,ノードN4の更新ラベルとしてラベルBを特定する(S230)。
【0047】
以上のように,更新ラベル特定処理部12において,上位のノードがあるすべてのノードについての更新ラベルを特定する処理を実行すると,ラベル更新処理部13は,更新ラベルでノードのラベルを更新し(S120),ネットワーク情報記憶部11に,更新したラベルを履歴として記憶させる(S130)。すなわち,ネットワーク情報記憶部11に,ノードN1について,ラベルEに,ノードN4についてラベルBに更新したことを記憶させる。この状態のネットワーク情報が図8である。
【0048】
仮に,所定回数として1万回の反復処理を行うとすると,処理を実行したのが1回目であるので,再度,S110以降の処理を反復する(S140)。すなわち,図8の状態において,再度,S110以降の処理を実行する。
【0049】
すなわち,更新ラベル特定処理部12は,上述と同様に,自らより上位のノードを有するすべてのノードについて,更新ラベルの特定処理を実行する(S110)。
【0050】
更新ラベル特定処理部12は,ノードN1の上位のノードのノードN2のラベルE,ノードN3のラベルB,ノードN4のラベルBに対して,それぞれ乱数を発生させて,乱数として「0.81」,「0.15」を付与し,ノードN4の上位のノードN3のラベルB,ノードN5のラベルDに対して,それぞれ乱数を発生させて,乱数として「0.08」,「0.98」を付与する(S200)。この状態のネットワーク情報が図10である。なお,ここでノードN3およびノードN4はいずれもラベルBで同一の実体であることを示している。そのため,ノードN3とノードN4には同一の乱数として「0.15」を付与し,以下の昇順の際には一つの実体として処理を行えるようにする。
【0051】
つぎに更新ラベル特定処理部12は,ノードN1の上位ノードN2乃至N4のラベルE,ラベルBについて,それぞれ付与された乱数に基づいて昇順にソートをし(S210),ラベルB,ラベルEの順とする。また,ノードN4の上位ノードのラベルB,ラベルDについて,同様に昇順にソートをし(S210),ラベルB,ラベルDの順とする。
【0052】
ノードN1の上位ノードN2乃至N4のラベルB,ラベルEについて,ソートした順に影響力情報に基づいて加算をし(S220),ノードN3におけるエッジE(N3,N1)の影響力情報が30%,ノードN4におけるエッジE(N4,N1)の影響力情報が30%であるので,ラベルBを加算した時点で影響力情報は60%となり,この時点で閾値50%を超えるので,ノードN1の更新ラベルとしてラベルBを特定する(S230)。また,ノードN4の上位ノードN3およびN5のラベルB,ラベルDについて,ソートした順に影響力情報に基づいて加算をし(S220),ラベルDを加算した時点で閾値50%を超えるので,ノードN4の更新ラベルとしてラベルDを特定する(S230)。
【0053】
以上のように,更新ラベル特定処理部12において,上位のノードがあるすべてのノードについての更新ラベルを特定する処理を実行すると,ラベル更新処理部13は,更新ラベルでノードのラベルを更新し(S150),ネットワーク情報記憶部11に,更新したラベルを履歴として記憶させる(S160)。すなわち,ネットワーク情報記憶部11に,ノードN1について,ラベルBに,ノードN4についてラベルDに更新したことを記憶させる。この状態のネットワーク情報が図11である。
【0054】
仮に,所定回数として1万回の反復処理を行うとすると,処理を実行したのが2回目であるので,再度,S110以降の処理を反復する(S140)。すなわち,図11の状態において,S110からS130までの処理を反復する。
【0055】
このように,S110乃至S130までの処理を所定回数反復した後,指数算出処理部14は,ネットワーク情報記憶部11に記憶した,ノードのラベルの履歴に基づいて,当該ノードがそのラベルになった回数を,所定値,たとえば反復の実行回数や履歴の数,履歴の数から後述のネットワークの最上位階層から最下位階層までの影響を除いた数などで除することで,各ノードにおけるネットワーク影響力指数(NPI)を算出する。そしてそのネットワーク影響力指数(NPI)を実体ごとに合計することで,実体ごとのネットワーク影響力指数を算出する(S150)。
【0056】
たとえば,1万回の処理を実行した結果が,図9(a),(b)であった場合,有効桁数が下2桁とすると,指数算出処理部14は,ネットワーク影響力指数として,NPI(B→C)=0.50(=4957/10000),NPI(D→C)=0.50(=5043/10000)を算出する。また,NPI(B→A)=0.67(=6661/10000),NPI(D→A)=0.17(=1697/10000),NPI(E→A)=0.16(=1642/10000)を算出する。また,これを実体ごとにネットワーク影響力指数を加算すると,実体A=0,実体B=1.17(=0.50+0.67),実体C=0,実体D=0.67(0.50+0.17),実体E=0.16として実体ごとのネットワーク影響力指数を算出することができる。
【0057】
なお,上述のS110乃至S130の処理において,任意のタイミングで各ノードにおけるラベルを,初期状態のネットワーク情報に基づいて,初期状態に戻すようにしてもよい。これによって,初期値依存性によるローカルミニマム問題の発生を回避することができる。
【0058】
各ノードのラベルを初期状態に戻すには,たとえば,S110の処理の前に,乱数pを発生させ,その乱数pが初期化基準値に関する条件を充足した場合には各ノードのラベルを初期状態に戻すようにしてもよい。たとえば乱数pが0≦p≦1のとき,初期状態に戻すための初期化基準値の条件として0≦p≦0.005とすると,乱数pが0≦p≦0.005のときには,初期状態のネットワーク情報を参照し,各ノードを初期状態のラベルに戻して,それを更新ラベルとして特定する。一方,乱数p>0.005のときにはS200以降の処理を実行して更新ラベルを特定するようにしてもよい。
【0059】
なお,初期化基準値については任意に設定することができる。
【0060】
また,ネットワーク情報において,ネットワークの最上位階層から最下位階層まで実体の影響力が伝播するのは,所定回数の試行が必要である。そのため,初回からあらかじめ定めた回数,たとえば19回程度までは,S110乃至S130の処理を実行するものの,更新したラベルを履歴として記憶しないようにしてもよい。あるいは記憶しても,ネットワーク影響力指数の算出に用いるラベルの履歴から除外するようにしてもよい。なお所定回数としては,ネットワークの階層数などの大きさに基づいて,逐次,設定することができる。
【実施例2】
【0061】
実施例1においては,影響力情報として株式の保有比率をそのまま用いたが,自社株をを考慮するようにしてもよい。すなわち,議決権行使を行使できる株式について,その発行をしている会社が保有している場合もある(いわゆる自社株)。日本においては,自社株は議決権行使をすることができないのでその意思決定には影響を及ぼさないが,影響力情報を示す株式の保有比率において,自社株も含まれている場合,それを考慮してもよい。たとえば,図5のネットワーク情報において,実体Eについて,発行済株式のうち,議決権行使ができる株式の50%を実体Fが,残り50%が自社株であった場合,ネットワーク情報として,自社株Eを新たに実体として追加するように,ネットワーク情報を補正してもよい。これを模式的に示すのが図12である。すなわち,本来は,図12(a)のようにノード,エッジ,影響力情報が付されたネットワーク情報であるところ,実体Eの上位ノードが実体Fのみとなり,その影響力情報の合計も100%とはなっていない。そこで,図12(b)に示すように,自社株を示すノードN7を追加し,さらに,ノードN7からノードN2(自社のノード)に対するエッジE(N7,N2)を追加した,ネットワーク情報をネットワーク情報入力受付処理部10が入力を受け付け,実施例1の処理を実行してもよい。
【0062】
また,自社株については,上述のほか,以下のように処理をしてもよい。すなわち,影響力情報を示す株式の保有比率について,自社株を除く発行済株式のうち,議決権行使できる株式の保有比率で影響力情報を算出してもよい。
【0063】
すなわち,ある実体の株式の保有比率について,当該実体の保有する株式数を,議決権行使をできる発行済株式数から自社株数を減算した数で除算することで算出して,実体の株式の保有比率を算出してもよい。たとえば,上述の図12(a)の場合,発行済株式のうち,実体Fが実体Eの議決権行使ができる株式の50%を,残り50%が自社株の場合,実体Fの株式の保有比率を,100%(=Fが保有するEの株式数/(発行済株式総数-自社株数)×100)で算出してもよい。このような処理をしたネットワーク情報の一例を図13に示す。なお,図13では,株式の保有比率の補正について,株式数を用いた算出としているが,保有比率を用いて算出をしてもよい。
【0064】
さらに,いわゆる黄金株(株主総会における特定の決議事項について拒否権を行使できる株式),複数議決権付き株式,無議決権株式などの会社の意思決定に影響を及ぼす種類株式を発行している会社の場合,影響力情報は,株式の保有比率のみに基づいて定められるものではない。そのため,その種類株式を考慮した上で,影響力情報を補正をした上で,ネットワーク情報の初期状態とし,ネットワーク情報入力受付処理部10に入力をしてもよい。
【実施例3】
【0065】
実施例1および実施例2では,更新ラベル特定処理部12において,更新するラベルを特定する際に,各ノードのラベルに付した乱数をソートし,その順番で各ラベルの影響力情報を加算して,所定の閾値を超えたラベルを更新するラベルとして特定をしていたが,この閾値を50%ではなく,ほかの閾値としてもよい。たとえば2/3(67%,66.7%など),3/4(75%)のように設定してもよい。
【0066】
日本の場合,会社の事業の重要な一部の譲渡,定款変更,資本金の額の減少など,会社の重要な事項は,普通決議ではなく,特別決議,特殊決議などで行われることから,それを基準として会社への影響力の基準とする上記の閾値を設定することもできる。
【実施例4】
【0067】
本発明の影響力評価システム1を用いた場合,実体の規模の大小を問わずに,影響力の評価がなされることとなる。そのため,規模が極めて小さい会社の株式を多数保有している実体のほうが,規模のとても大きい会社の株式を少数だけ保有している場合よりもネットワーク影響力指数は高く算出されてしまう場合がある。
【0068】
そこで,指数算出処理部14において,ネットワーク影響力指数を算出する場合,純資産,時価総額などの実体の規模を示す情報で重み付けをした上で,実体ごとの個別の影響力指数を加算してもよい。たとえば,指数算出処理部14において,ノードごとのネットワーク影響力指数NPIを算出し,それに基づいて実体ごとのネットワーク影響力指数NPIを算出する場合,実体の規模が小さい会社に対するNPIはそのまま加算し,実体の規模が大きい会社に対するNPIは,所定の係数を重み付けとして乗算し,その値を加算してもよい。
【0069】
これを模式的に示すのが図14である。たとえば実施例1の図9(c)に示すように,ノードごとのネットワーク影響力指数であり,実体Cの規模がほかの実体よりも大きいことから,実体Cに対する影響力を2倍として重み付けをする場合とする。これを模式的に示すのが図14(a)である。
【0070】
この場合,実体ごとのネットワーク影響力指数は,実体A=0,実体B=1.67(=0.50×2+0.67),実体C=0,実体D=1.17(0.50×2+0.17),実体E=0.16として実体ごとのネットワーク影響力指数を算出することができる。これを模式的に示すのが図14(b)である。このように実体の規模に応じた重み付けをすることで,規模が大きい実体に対してのネットワーク影響力指数をより大きな数値で評価でき,影響力がおよぶ実体の数のみではなく,その規模も加味してネットワーク影響力指数を算出できるので,より実際の影響力に沿った指標を算出することができる。
【0071】
この重み付けは,実体自体の規模やその所属国の規模などに応じて,適宜,設定することができ,また重み付けを規模に応じて複数の段階に分けて設定することもできる。
【0072】
さらに,ネットワーク影響力指数を算出する目的に応じて重み付けを行うこともできる。たとえば,ESG(Environment,Social,Governance)を基準に評価を行う場合には,上述の各実施例の各実体に対して,環境,社会的責任,企業統治に配慮をしているかを所定の基準で重み付けをし,ESGに対する配慮がなされていない実体には重み付けを大きく,ESGに対する配慮がなされている実体には重み付けを小さくして,ESGに対するリスクがある実体(会社)へのネットワーク影響力指数を算出することができる。
【0073】
これによって,たとえば,M&Aや出資先の企業を対象として,予期しない負債の発生やレピュテーションリスクを回避することができる。
【0074】
もちろん,ESGへの配慮がなされている実体には重み付けを大きく,ESGに対する配慮がなされていない実体には重み付けを小さくして,ESGに対する積極性を評価するようにしてもよい。
【実施例5】
【0075】
また,上述の各実施例について,M&Aなどの際の企業価値の評価に用いることができる。
【0076】
たとえば初期状態のネットワーク情報が図15であったとする。このようなネットワーク情報を影響力評価システム1に読み込ませ,実体ごとのネットワーク影響力指数を算出させる。その結果,実体ごとのネットワーク影響力指数が実体A=1.33,実体B=0.33,実体C=0.33であったとする。
【0077】
このとき,実体Bが実体αのすべての株式を,実体Aから購入するとき(すなわち,Bがα社をAから購入する),α社の企業価値の評価に本発明を用いることができる。
【0078】
まず,図16に示すように,実体αを実体Bが購入した後のネットワーク情報を読み込ませ,実体ごとのネットワーク影響力指数を算出させる。その結果,実体ごとのネットワーク影響力指数が実体A=0,実体B=2,実体C=0であったとする。
【0079】
そうすると,売買に伴う実体の価値は,売買の前後でのネットワーク影響力指数の差分で算出できる。図15および図16の場合,売買に伴う実体αの価値は,実体Aにとっては1.33(=|0-1.33|),実体Bにとっては1.67(=|2-0.33|),実体Cにとっては0.33(=|0-0.33|)と評価できる。
【0080】
そのため,ネットワーク影響力指数が1.33~1.66の間に相当する金額で実体αの売買がされれば,実体Aおよび実体Bにとって適正価格であることが分かる。さらに,売買の前後における第三者(実体C)への影響(バタフライ効果)を算出することもできる。
【0081】
すなわち,本実施例のように,本発明の影響力評価システム1を用いることによって,実体の変更の前後でのネットワーク影響力指数を算出し,その差分を比較することで,その実体の変更に伴う実体の価値のほか,第三者への影響(バタフライ効果)を評価することもできる。
【実施例6】
【0082】
上述の各実施例と同様のことは,株式の保有関係,すなわち会社の意思決定への影響力以外のさまざまな分野の意思決定への影響力の算出にも適用することができる。たとえば,国における意思決定への影響力などにも適用することができる。この場合,国会において何らかの立法を行う場合,国会における各政党の議席数が国会における政党(実体)の影響力情報を示している。そして,その政党に対しては,たとえば政党の支持団体(実体)が影響力を保有しており,その影響力は,政治献金の金額,団体の構成員数,その団体出身の国会議員の数などを数値化して影響力情報として設定できる。さらにその支持団体に対する影響力としては,その支持団体内部における派閥(実体)を構成する人員数などを評価することで影響力情報として設定し,その影響力を評価できる。
【0083】
このように,社会における人や会社などの実体同士のつながりはネットワーク構造で表現でき,いずれもその影響力を所定の指標で数値化して影響力情報として設定することで,ある実体がほかの実体に対してどのような影響力を及ぼすかを評価することができる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明の影響力評価システム1を用いることによって,実体同士の関係が複雑な場合であっても,実体が有するほかの実体への影響力を指数化することができる。
【符号の説明】
【0085】
1:影響力評価システム
10:ネットワーク情報入力受付処理部
11:ネットワーク情報記憶部
12:更新ラベル特定処理部
13:ラベル更新処理部
14:指数算出処理部
70:演算装置
71:記憶装置
72:表示装置
73:入力装置
74:通信装置
図1
図2
図3
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図5
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図10
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